2019年4月4日放送 プレバト!! 俳句春光戦決勝結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
春の季節に行われる第3回春光戦・で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
春光戦予選の詳細はこちら。▼過去大会は以下のページから。
第2回 俳桜戦 / 炎帝戦予選・炎帝戦決勝 / 金秋戦予選・金秋戦決勝 / 冬麗戦予選・冬麗戦決勝●お題:コーヒー(順位クリックでリンク内移動します)
1位 | 村上健志(フルーツポンチ) | 名人8段 | サイフォンに潰れる炎花の雨 | さいふぉんにつぶれるほのおはなのあめ |
2位 | 東国原英夫 | 名人10段 | 缶コーヒー啓蟄のつちくれに置く | かんこーひーけいちつのつちくれにおく |
3位 | 横尾渉(Kis-My-Ft2) | 名人3段 | リハ室のコーヒー苦し八重桜 | りはしつのこーひーにがしやえざくら |
4位 | 梅沢富美男 | 名人10段 | 鷹鳩と化すカフェオレの白き髭 | たかはととかすかふぇおれのしろきひげ |
5位 | 鈴木光 | 4級 | 馬の仔の立ちて十勝の缶コーヒー | うまのこのたちてとかちのかんこーひー |
6位 | 千原ジュニア | 3級 | ふらここを待つ我が子見つ飲むコーヒー | ふらここをまつわがこみつのむこーひー |
7位 | 藤本敏史(FUJIWARA) | 名人10段 | 卒業のコーヒー少し酸っぱくて | そつぎょうのこーひーすこしすっぱくて |
8位 | 中田喜子 | 名人初段 | 焙煎香ふんぷん春陰を飛ばす | ばいせんかふんぷんしゅんいんをとばす |
最下位 | 千賀健永(Kis-My-Ft2) | 1級 | カフェ色の濁流を吐く春の山 | かふぇいろのだくりゅうをはくはるのやま |
番外 | ミッツ・マングローブ | 3級 | 沈黙の春尽く角砂糖ひとつ | ちんもくのはるつくかくざとうひとつ |
[順位発表順] 2位→8位→7位→6位→5位→3位→最下位→4位→1位●挑戦者談話梅沢名人(夏・秋の優勝者) 私が優勝してタイトルを獲るというこの映像が
一番視聴率が上がるんじゃないの。そこだけで
17%はいくんじゃないかなあ。
名人という屋号は私だけだから。他はてんぷら名人(見掛け倒し)だから。
(春と冬は)
負けたと思ってませんよ。意気込みが違いますもん。この大会に関しては。
誰に負けたくないって、この程度はどうってことない。やっぱり、
東さんには負けたくない。
御着物見てくださいよ。毎回毎回何百万もする着物、
総絞りですよ!
100万は下らない。
細かく絞ったものを湯通しして…。
東国原名人(春・冬の優勝者) 獲りたいですよね、
ディフェンディングチャンピオン(前回王者)としてはね。
100m走なら、コンマ何秒の差。
(梅沢)御大は負けた気がしないと。
勝ってる気がしない。ほとんど同体の勝負だと思ってる。
藤本名人タイトル戦ということで肩に力が入っている。今回は
リラックスして肩の力を抜いて作った。
村上名人今回のメンバーの中で優っているものがある。俳句作る
時間がメチャクチャある。
→梅沢名人に「時間があればいいってもんじゃない。視聴率男と言われたこの私が時間のない中で作ってこそ俳句だ。馬鹿者」と説教され、言い返せず無表情になる。
携帯電話の
待ち受け画面をお題の写真にした。一番時間がある。
本当に
タイトルが欲しいです。これしかないんですよ、僕。
中田名人特待生の時は2句詠んでいたので、予選だけで息切れして決勝はいつも下の方でした。今回
一句に集中できて最高でした。
横尾名人勝って梅沢師匠に
「良かったな」と言わせたい。
鈴木次(決勝)も
勝つつもりで頑張る。
2句作らないといけなかったが、こっちの句の方が自分の中で
自信がある。頑張ります。
村上名人を倒したい。
→千原ジュニアに「もう倒してるよ」と言われ、村上は「全然倒れてない」と不満げに言い返す。
ジュニア上位行きたいですね。
千賀しっかり梅沢名人を
潰しにいきます!●敗退者の優勝者予想円楽 | 志らく | ミッツ | 岩永 | 大和田 |
鈴木 | 鈴木 | 梅沢名人 | 鈴木 | 鈴木 |
円楽 やはり
光ちゃんにいってもらいたい。
志らくの天敵だから。
志らく 彼女の場合は見た目はホントに可愛らしいんだけど、
俳句モンスターなんですよ。名人2人が負ける姿を見てみたい。
玉巻アナ ミッツさんの予想は
トミザワさん。
→浜田が振り返り、玉巻アナに頼むのポーズ
梅沢名人 梅沢だ!(立ち上がって)梅沢だ!玉巻アナ 本当に失礼しました。
藤本名人 富美沢梅男!
浜田 ミッツは
トミザワさん。
ミッツ 強いでしょ、梅沢さんは。
岩永 (鈴木さんは)
勢いがあるので。さっきのピチピチ(予選のピチカートの句に掛けて)した感じで。
大和田 もうね、(彼女は)パァーっと
見事に飛び立つと。
浜田 ミッツだけが…
トミザワさん。
梅沢名人 ここから(番組を)見た人が俺を
トミザワだと思うわ。
藤本名人 梅男さん。
梅沢名人 梅男じゃないよ。
→順位が書かれたパンフを見た浜田は思わず「スゲーなこれ」と叫ぶ。
●残り4人となって→ランキングシートは1位の他、3位・4位・最下位が残っている。
梅沢名人 悩むことないだろ、お前たち。(2位の)
東さんの句よりうまく書けてるわけないだろ。そしたら、3位か4位か最下位だろ。
何悩んでんだお前ら。
→首をかしげる千賀
浜田 千賀言うたれ!
梅沢名人 さっさと行け!最下位に。千賀 もう1回いいですか?
梅沢名人 何?
千賀 何て言われました?
梅沢名人 だから、
東くんの俳句に勝ったと思ってんのか?って聞いてんの。
千賀 あ~、はいはいはいはい…。梅沢名人 超えたと思ってんのか?思わなかったら悩むことはないだろ~。
千賀 あ~そうですね。→苦笑いの横尾とうつむいたままの村上
梅沢名人 気持ちよく受け入れなさい。
千賀 はいはい。藤本名人 ブチ切れられるで!浜田 バカにしてる感じやった、今。
●残り3人となって梅沢名人 お前たち2人(村上・千賀)でどっちか最下位に行くんだ。
光ちゃん、よく見てなさい。これが現実だ。
コイツ(村上)が最下位に行ったら、お前が言ってることはおかしいことになるんだ。
鈴木 はい。うっふふ。
梅沢名人 目標変えなきゃ!
なっ、行け!浜田 何か今俺に言われたんか?
梅沢名人 (村上が)最下位に。
浜田 あ~そうですか。では最下位を見ます。
梅沢名人 行け!さっさと行け!●いよいよ梅沢vs村上の最終決戦梅沢名人 まだ無理だから。お前が俺を超えるのは。
村上名人 今日はもう…。
梅沢名人 お前、
3時間スペシャルだぞ!誰が主役だと思ってんだ?
俺だぞ!浜田 みんなや!みんな。
梅沢名人 お前が優勝したからって、お客さんは喜ばないから。
電気消すぞ!浜田 電気消すってなんやねん!
1位◆『サイフォンに 潰れる炎 花の雨』 村上健志(フルーツポンチ)【本人談】サイフォンコーヒーというのがある。
【コーヒーサイフォン】 水の蒸気圧を利用してコーヒーを淹れるガラス製の器具 |
フラスコみたいに、アルコールランプで作るコーヒーだが、アルコールランプの火はフラスコの丸底の形に潰れていく。火って、危なっかしいものだけどもずっと見ていられる不思議な力があって、ビジュアルとしても美しいけど、サイフォンコーヒーの途中を見ていると音が特徴的。最後にお湯が上のコーヒーに上がってって「ゴボッ」と。その音、ビジュアル。そして、外では桜に雨が降っている。コーヒー好きなんで、恩返しのつもりで作りました。
鈴木 「潰れる」っていう表現は、なかなか出てこない。本当に美しいなあ、と思います。
梅沢名人 ……(少し考えて)
負けました。
その辺にあるような光景を詠ませたら日本一って言ったけど、その通りだね。
夏井先生これは
本当に良くできている。
まず「サイフォン」が出てくる。独特の形のガラスの器というかガラス器具ですね。
「に」という助詞に誘導されながら、
動詞「潰れる」が出てくる。「サイフォンに潰れる」って何?「え?」と一瞬思う。
「え?」って思わせるのも大事。0コンマ0秒の間に脳は「サイフォンに潰れるもの?」と思う。
そしたら、「炎」という漢字一字がスッと出てくる。その瞬間にあの映像、
フラスコの底に炎がパッと広がっていく。
あれをこの人は「潰れる」と表現する。
詩的な表現だが、映像もきちんと再生していく。
この炎の温度のようなものを感じさせて、「
花の雨」という美しい季語が出てくる。咲き満ちる桜の花に降る雨のこと。
外には花の雨が降っている。震える桜の映像も見える。ちょっとひんやりとした皮膚感も伝わってくる。
アルコールランプの炎の色、やがて水が沸いてくる小さな音、そしてコーヒーの匂い。
五感全部をゆっくりと刺激しながら1つの時間と空間が出てくる。いいね!
いいけども、あんたのその(ニヤニヤした)
顔がどうもチラチラして。
直しはいらない。
浜田 というわけで、
春光戦優勝は村上さ~ん!
添削なし2位◆『缶コーヒー 啓蟄の つちくれに置く』 東国原英夫※「啓蟄(けいちつ)」は冬眠していた生き物が暖かさに誘われ穴から出てくる頃を指す時候の季語。
【本人談】仕事をして缶コーヒーを飲んで、外の地面で啓蟄の土がもっこりした所に置いたら、春の訪れを感じた。缶コーヒーが持つホッとした感じをつちくれ(土の塊のこと。漢字で「土塊」)に託した。
浜田 富美男ちゃん、どうですか?
梅沢名人 これから視聴率が
グングン上がってますよ。この難しい俳句に勝てるには
この連中には無理。
私しかおりませんから!これで私が1位じゃ…
浜田 誰がそういうこと言えって言ってる?この句に対してどうですか?
梅沢名人 だから
東さん級でないとなかなか詠めない。
夏井先生これも上手い。ホントに。
光景、場面、動作が全部浮かぶ。
缶コーヒーで1回カットが切れて、時候の季語「
啓蟄」が出て、つちくれにさっきの缶コーヒーがすっと置かれていくという場面。
読み終わった瞬間に、
自分がどっか野原のような場所に座って、缶が傾かないような場所を探し、ちょっと置く。
置いたけど、缶コーヒーは微かに傾きながら置かれている。
手の感触までありありと思った。
俳句はね、
下手なことゴチャゴチャやらない。これでいいんです。流石だなと作者が分かって思った。直しはいらない。
添削なし3位◆『リハ室の コーヒー苦し 八重桜』 横尾渉(Kis-My-Ft2)【本人談】コーヒーの苦みを感じたときに、ジュニア時代のリハーサルの辛さを思い出した。八重桜は普通の桜より開花が遅い。キスマイもデビューが遅かったが、遅くても綺麗な花は咲くのだということを言っている句。
円楽 自分が苦労しながらも咲いたという今の解説聞いて、なるほどと思った。
情景がパッと浮かんだ。
夏井先生褒めるべきは、
「リハ室」から場面が展開していく点。きちんと「リハーサル室」と言うべきだと考える人もいるかもしれないが、日常的に
「リハ室」と呼んでいるのではないかと思わせる省略の仕方。
しかも場面、場所、ここで何をしているか、
稽古をしているに違いない。人も見えてくる。
これだけの言葉でそういう情報を一気に引き出している。
そして「コーヒー苦し」。休憩時間の一息のコーヒー。コーヒーが単純に苦いのではなく、
リハーサル室での稽古がうまくいってないのではないかな?と読み手はくみ取ってくれる。
最後の季語「
八重桜」
とした点を最も褒めたい。開花は遅く4月末から5月上旬の桜。横尾さんなりに色んな思いを込めているようだが、リハーサル室の窓の向こうに大きな八重桜があって、
コーヒーを飲みながら眺めて心を癒している場面かなと思った。
そして、「八重桜」は少し遅めに咲く絢爛(けんらん)な花だからいつか実っていく。そういうこともあるのではないかと読み手はゆっくりと想像する。
取り合わせが分かってきましたね。
添削なし4位◆『鷹鳩と化す カフェオレの 白き髭』 梅沢富美男※季語「鷹(たか)鳩(はと)と化す」は獰猛な鷹が鳩になるほどの春の麗らかな陽気。
【本人談】これは
私しか詠めないでしょ。恐ろしい鷹のような獰猛な鳥が鳩のように大人しく優しくなる、そういう春を表す季語。カフェオレは大好きなんですよ。飲むと白い泡が口の上につくじゃん、ね。それが白き髭(ひげ)。
夏井先生悪くはない。なにせ4位だから。
「
鷹鳩と化す」という
難しい季語を軽やかに取り合わせてくる。これは手馴れだなと思った。
おっちゃんかもしれないな、というのはちょっとだけ思ったが、やっぱりおっちゃんだったと改めて思った。
鷹が鳩になってしまいそうな、春の麗らかな陽気という意味。これ全部が季語なので、季語の比重が凄く強い。バランスが取りにくい。
そこを「カフェオレ」を持ってくるあたり、
中々度胸がある。「カフェオレ」と重量感のある字面を取り合わせるために、「髭」を持ってきた。
「
鷹が鳩になるような春ですもの。私に白い髭が生えて、お爺さんみたいになっちゃいました」という取り合わせをやっている。
かなり
絶妙なバランスでやっているところは褒めたい。
もったいないのは、ミルクとかカフェオレとかを飲んだときに、ここに
くっつくのを髭という喩えは少しあるかなとは思う。
これだけのバランスを取れるのは、やっぱりおっちゃんの力。
直す必要はないんです。
本人 じゃあ1位にすりゃいいだろ!じゃあ1位にすりゃいいだろ!夏井先生 黙れ!1位の句を見てから言え!
添削なし5位◆『馬の仔の 立ちて十勝の 缶コーヒー』 鈴木光梅沢名人 「出る杭は波に打たれる」この事だよ。
→予選1位で決勝に進出したが、決勝で5位に沈んだ鈴木を比喩する
浜田 (無視して)
さあいきましょう!※缶コーヒーの写真から北海道の牧場に想いを馳せた一句。
【本人談】酪農家の視点で一句作った。仔馬の出産に立ち会う気持ちで書いていて、生まれてきて立つまでが容態などを気にしないといけないが、ようやく馬の仔が立って安心して十勝の平野で缶コーヒーを飲めるという句。
志らく あんな若い子が
酪農家の視点に立ってというところに
ビックリ。
実体験か何かではなく、そういう視点に立てますか?普通?
東国原名人 いや、
良い句です。しかし、公式とか法則とかには
限界がある。そこを超えてこれるかどうかというところ。
素晴らしい句です。
夏井先生今の指摘は
なかなか興味深かった。
俳句にはいろんな型があり、
型に言葉を当てはめていくとある程度の句が成立する。
一番失敗しにくいのは、
自分の経験で俳句を作ること。経験であることでオリジナリティとリアリティが一気に手に入る。
そういう所の
酪農家の視点に立ったのが、少しだけ足りてないところかもしれないなと。
それは、志らくさんも少し思っているかもしれない。
非常にうまく作れている。
「
馬の仔」が季語で仔馬のこと。見た瞬間に馬の仔が走っているところかなと思うが、「立ちて」で
出産の場面だとあっという間にわかる。
最後「缶コーヒー」とあれば「飲む」と書かなくてもやれやれと安堵の気持ちで飲んでいると伝わる。
悩みどころは
「十勝」の地名。「立ちて」までは出産の生々しい、かなり近いところで見ている。
そこからいきなり十勝に大きく光景が広がる。次の瞬間、缶コーヒーでまた狭い場面に戻る。
ひょっとすると、この「十勝」というのは
牧場の気分を添えたくて割と気軽に置いた気がする。
→先生の指摘にうなずく本人
予選の句の「明石」は読みを誘導して効果的だったが、この
「十勝」は気分を作ろうとしてそこで損した。
そうなった時に、「十勝」の3音をどう使うかという話になる。
3音に泣いた句の例。
大きな地名ではなく、
もう少し狭い場面にできる。
例えば、馬の仔が立った時の時間。「
未明」はどうか。一晩かかって出産に立ち会った。
人物入れても良い。
藤本名人 思いつくねえ。
浜田 お前、偉そうに言うな。
夏井先生ここに「
獣医」と入れる。人物も3音で言える。こっちの方がより映像ではないですか?
本人 ちょっと
改善して次は頑張ります。
東国原名人 カイゼン?藤本名人 凄ーい。優等生やな。
添削後
『馬の仔の 立ちて未明の 缶コーヒー』
『馬の仔の 立ちて獣医の 缶コーヒー』6位◆『ふらここを 待つ我が子見つ 飲むコーヒー』 千原ジュニア【本人談】歳時記見ていたら、季語に「ふらここ」というブランコを指す季語を見つけ、絶対使いたいと思った。ちょっと前に子どもを公園に連れて行った。ブランコに乗っている兄ちゃんを見ながら、コーヒーを飲んでるという暖かい春の日を詠んだ。
梅沢名人 中七がちょっと気になる。これ変えてみたらどうなのかなあ。
浜田 どういう風に?
梅沢名人 わかんないですけど。
浜田 なんなん?光ちゃんどう思われますか。
鈴木 「見つ」が文法的に「見つつ」が正しい形で、詰めちゃったのかなという気がしてそこが気になる。
夏井先生偉いね!あなた。そこは最初に変えないといけないところ。ホントにそうです。
→鈴木光に拍手が送られる。
浜田 (梅沢名人を指さし)
アンタが言うことじゃないの?
梅沢名人 いやいや、だから中七変えたらどうかって。
浜田 分からへんって言うたじゃないですか。
梅沢名人 なっちゃんの顔を立てて。
浜田 いやいや、
光ちゃんはちゃんと言いましたよ。
梅沢名人 この子は今回初めてだからタイトル戦。
気を遣うことを知らない!(一同笑い)
梅沢名人 (鈴木に)
気遣え!ホントに。
鈴木 (両手を合わせ)すみません。
夏井先生 気を遣わなくていいから
さっさと言えと言いたい。
浜田 そうですよ。
夏井先生場面が優しい句。ブランコの順番を待っている我が子をちょっと離れた所から眺めて缶コーヒーを飲むのかなと思った。
優しいほのぼのとした場面だと思って、その場面を上手に書こうとしている。
問題なのは
「見つ」の小さなところ。「見つ
つ」ともう1つ「つ」がいると。
そうすると、中七が字余りになる。8音になるというところもあったんだと思う。
もう1点。「我が子」は3音。「
吾子(あこ)」と2音で言う言い方もある。
「待つ吾子見つつ」とやることはできる。
さらに「
子」だけでもよその子を見るのではなく、自分の子を見るのではないかと読み手は想像できる。
「待つ子を見つつ」と「を」によって対象がはっきりする。
もう1つ褒めたいのは、「待つ」「見る」「飲む」と
動詞を3つも入れると大体はせわしなくなる。
この句の時間は
ゆったりとほのぼのとした時間を描いている。
動詞3つでこういう世界が描けるというのは、強く褒めたいところ。
しかも作者がこの人に驚いた。
本人 ありがとうございます。
→メットを取り、かぶる動作
浜田 メットを取るな。
添削後
『ふらここを 待つ吾子見つつ 飲むコーヒー』
『ふらここを 待つ子を見つつ 飲むコーヒー』7位◆『卒業の コーヒー少し 酸っぱくて』 藤本敏史(FUJIWARA)【本人談】大学生が卒業式を終えて、家に帰ってきて落ち着いていると一気に現実が押し寄せる。将来の希望や不安とか。いつも飲んでいるコーヒーがちょっと酸っぱく感じたというのをストレートに。
大和田 コーヒーが「酸っぱい」っていうのが良い。大体「ほろ苦い」とか。
学生時代の酸っぱい思い出みたいな。
本人 そうなんですよ。青春時代の1ページを。
円楽 すっぱい作(失敗作)?
本人 すっぱい作じゃないです。ダジャレ、大丈夫です。
東国原名人 ちょっと
散文的だったのと、
「少し」がポイントだったかな~という感じはする。
夏井先生卒業式が終わった後のコーヒー。それが
「酸っぱい」という展開がナイーブで良い。
コーヒーの味で「卒業」という季語を表現しようとしたのも良い。
もったいないのは
「少し」の3音。東国原名人の言う通り、
3音を疎かにする者は3音に泣く。
3音をどこにくっつけるかによって展開はどんどん変わる。
例えば「卒業」にくっつけて、「卒業の
日の」「卒業の
空や」ということもできる。
「コーヒー」に展開する。「酸っぱくて」にくっつけるなど色々やれる。
今、話を聞いたら
「酸っぱくて」の後に動詞をもっていけば色んな事がやれる。
例えば「
泣ける」。
今まで酸っぱいと思ってなかったのに、卒業の日にコーヒー飲んだら酸っぱくて泣ける。
あるいは「
笑う」。逆方向で、「
まだ私大人にはなかなかなれない」と動詞で酸っぱいことの感情をもうちょっとはっきりと表現するというやり方もある。
本人 僕
先生のブログ(夏井いつきの「いつき組日誌」)すごい見てるんですが、ブログにいつも季節のお花の写真を載っけるんですよ。その写真見ていつも癒されてます。
→先生を褒めて1位の席に移動しようとする。
浜田 おいおい、何してんの?
[ここがポイント]3音をおろそかにしない
※「少し」の3音はなくても成立する句。この3音で登場人物の感情まで鮮やかに表現できるのです。
添削後
『卒業の コーヒー酸っぱくて 泣ける』
『卒業の コーヒー酸っぱくて 笑う』8位◆『焙煎香(ばいせんか)ふんぷん 春陰を飛ばす』 中田喜子→順位発表で本人はあっけらかんと仰天した顔になり「ウソ」とブービーに信じられない様子に。
藤本名人 殺人現場みたい。
浜田 ホンマや。何ちゅう顔してんの。
ジュニア 6人殺されてる!※季語「春陰」は春の曇りがちな空模様。「芬々(ふんぷん)」は強く匂うさま。
【本人談】コーヒー豆販売店のお店で焙煎(ばいせん)をしている。とても良い香りだが強くもある。春の曇り空を良い香りで飛ばすかのような、という
句を詠んだんですが(→急に泣き出しそうな声に)志らく もう
顔が衝撃的で…。
浜田 確かに。あの顔凄かったですよね。
志らく 「渡る世間(は鬼ばかり)」で
見たことない顔をしていた。でも
とてもきれいな句だとは思う。
梅沢名人 もったいないですね。「ふんぷん」って凄い香りが飛んでくるんですよ。
「焙煎香」っていったら香ってるんですから「ふんぷん」はいらないですよ。無駄な言葉を使いましたね。
夏井先生おっちゃんの言うところは
当たってなくもない大事なポイントではある。
「春陰を飛ばす」という発想が一番良い。「
春陰」は春の曇りがちなお天気。「春陰を飛ばす」ことができる風に、焙煎の香りを嗅いで思った。そこに
オリジナリティのある発想。体験もある。ここを褒めたい。
前半がちょっとやりすぎている。
「焙煎香」も寸詰まりな感じがするが、「ふんぷん」を入れたかった意図が読める。
これを入れることで、上もちょっと押してしまうし、大事な肝の表現に行く前に
悪目立ちし、後半が生きなくなる。
「ふんぷん」という言葉を控えるだけ。
「
焙煎の香の立ち」と普通に言えば調べが整う。すっと背骨が立ったような表現になり、「立ち」と「飛ばす」が釣り合う。
「春陰を飛ばす」は
強引な表現なので、そこにいくための伏線が「立ち」という動詞になる。
本当に
もったいない。
浜田 中田さん、毎回言われてますよね。
もったいない。ただ
あの顔は何回か使いましょうね。
本人 やめて下さい、本当に。
浜田 CM前に入れたら良い![ここがポイント]言葉のバランスを考える
※焙煎の香りが春陰を飛ばすという大胆な発想。それを活かすには「ふんぷん」が目立ちすぎます。前半を「香の立ち」と控えめな表現にすることで、「春陰を飛ばす」という肝の部分が引き立ちます。
添削後
『焙煎の香の立ち 春陰を飛ばす』最下位◆『カフェ色の 濁流を吐く 春の山』 千賀健永(Kis-My-Ft2)本人 決勝は2回連続最下位ですね~。マジか。
【本人談】昔、家族で良く岐阜県中津川に行った。嵐の次の日に行ったら、川が濁流になっていた。健やかな山なのに濁流が出ているのが印象的で、濁流とコーヒーの色を掛けた句。
梅沢名人 「春の山」という大きな季語を使ったのはわかる。だけど、
「春の山」を使うのは雪解け水だから。(コーヒーの)こんな色してないから。
村上名人 今、ちょっと集中……(発表待ちが残り2人となり順位が気が気でない)
ジュニア そこで集中したって何もならへんって。出してんねんから。意味ないて。
村上名人 わかりました。
全然ダメです。
夏井先生「カフェ色」というのがどうしても引っかかる。
ご本人がやろうとしたことが悪いわけではない。
「春の山」という
生命観に満ちたものが濁流を吐き出す。豪雨か何かが降ったような濁流だと私は読んだ。
雪解け水の方向ではなく。そうじゃないと、
濁流がコーヒーの色にはならないだろうと、そう思ったから。
順番として「春の山」から始めて、穏やかな明るい光景を描き、最後に濁流って持ってきた方が映像として分かりやすく、読み手に親切。
音数の関係で「春山が」として「吐く」。何か?「濁流の」とし、ここから。
「カフェ」はないと思うんだよね~。
本人が言ったように「珈琲色」と直す。こうすると、少なくとも
最後に珈琲色に視点が良くので、緊迫感や臨場感みたいなものが出てくると思う。
「カフェ」ってオシャレな句かと思ったら、こういう展開になるとは思いにくかった。
浜田 千賀、言われてるよ。
本人 ちょっと、
濁流吐いていいですか?
→ゲロを吐く仕草をする千賀
浜田 (表情を変えず)
千賀、それいらんよ!千賀、
そういうのいらない!ジュニア 手数多いな、今日。
藤本名人 いいよ、いいよ。負けるな!負けるな!やっていけ!やっていけ!思いついたらやったらエエねん!ジュニア・藤本名人 俺らも濁流吐くか!オエ~!藤本名人 同期の濁流。添削後
『春山が 吐く濁流の 珈琲色』番外編(予選敗退者のうち、夏井先生がどうしても世に出したい傑作句)
夏井先生 (ミッツに)あなた、何をやってるんですか、予選。決勝に残ってたら、結構な所まで行ったのに!何が「乗込鯛」だっていう。
◆『沈黙の 春尽く 角砂糖ひとつ』 ミッツ・マングローブ喫茶店で向かい合う2人に重く漂う沈黙。その沈黙を破ったのは角砂糖をかき混ぜるスプーンの音だったという一句。
夏井先生これ良い句じゃないですか。季語が
ここの位置(中七)に入ってくるのは凄く難しいんですよ。それをさらっとやっている。
本人 そうですか。ちなみにこれ決勝だったら何位ですか?
夏井先生 決勝だったら
2位・3位を争っていました。
本人 (悔しそうに)そうですか…。
添削なし編集後記今回の決勝はコーヒーの写真。液面の様子が宇宙の星空のようにも見える不思議な一枚でした。
初優勝を決めたのは村上名人。サイフォンコーヒーの着眼点と潰れる炎の洞察力と表現力、そして花の雨との取り合わせに五感を刺激する想像力と優勝にふさわしい句でした。「雨」については、五月雨と彫刻刀を取り合わせたこともありましたが、鈴木光さんが目標にするのも理解できますし、ニヤニヤと楽しそうに語っているときは大体高評価ですね。最近は通常査定に出ないのですが、早く10段に駆け上がってほしいところ。
2位は春3連覇がかかっていた東国原名人。「啓蟄」という時候の季語に缶コーヒーを取り合わせて定型を崩す形に挑戦しました。いきなり呼ばれたのには正直ビックリしましたが、いつも最後の方まで残していたので浜田さんも趣向を変えたかったのかもしれません。
3位は横尾名人。実体験を見事に一句にまとめ上げ、「八重桜」の季語も効果的でした。コーヒーが苦いほど八重桜の色が強くはっきり出ていく風にも受け取れました。
4位は梅沢名人。最後まで順位を明かされないのは毎度のことですが、今回の独特の季語は以前新緑の高尾山でも「ゆるゆると鷹鳩と化す日のリフト」でも詠まれているので、先生もおっちゃんの句だと見破っていました。1位から4位までは発想力の点で差がついていた印象もありました。
5位は優勝予想人気トップの鈴木さん。大変計算しつくされた俳句ですが、地名がもったいないという指摘でした。酪農家の視点に立つとは凡人には出来ないですね。俳句の型にパズルのように言葉を当てはめていくかのように句を論理的に作っている印象があり、夏井先生も東大生相手に真剣に挑んでいる感じが解説でも大変伝わってきました。
6位はジュニアさん。「ふらここ」俳句ですが、家族の実体験を句にしました。鈴木さんに動詞の活用ミスを指摘されましたのは仕方ないところ。動詞3つと多いため、一句が窮屈になっている印象を受けましたが、先生は逆にそこを逆手に褒めていましたね。
7位は藤本名人。率直に詠んだ肩の力を抜いた俳句ということでしたが、無駄な言葉が入ってしまう傾向が強いですね。10段としての貫禄をもっと見せてほしいです。
8位はまさかの顔を見せた中田名人。タイトル戦では破調句が多く、今回は嗅覚に訴える内容でしたが、やりすぎているという指摘を受けました。前回はカリブ海の仕事を断ってまでプレバト!!に力を入れていたようですが、ショックの大きさが今回の意気込みを物語っているともいえそうです。
最下位は2連続最下位の千賀さん。前回のホノルルよりはマシな句ですが、リアクションも滑ってしまいました。「カフェ色」が引っかかるという先生の指摘でしたが、カフェオレ色ならまだしもカフェだけだと店だと誤読されてしまいます。名人がまだ遠そうです。
本編の句は全員がコーヒー・カフェやそれを示す言葉を使っていたのですが、番外編として使われたミッツさんは、コーヒー・カフェの字面から一歩離れて「角砂糖」でそのシチュエーションを表現していたのが流石。季語が中七にあるのは2位の東国原名人もそうですが、恋や微妙な心情を見事に書き上げる方のが得意ですよね。良い時と悪い時の差が激しいのですが、早く段位を返り咲いてほしいところ。
梅沢名人の貫禄はいつも十分ですが、鈴木さんを意識しすぎている発言が多かった印象。村上名人は最近のタイトル戦は調子がよかったので初タイトルを手にして大変嬉しそうでした。また、玉巻アナのトミザワ発言ですが、夏井先生も過去にやらかしていたのを思い出します。当時はまだ特待生制度がなく、梅沢名人がブチ切れて靴を投げてしまいました。
さて、当ブログもおかげ様で開設1年を迎えました。皆様閲覧いただき、本当にありがとうございます。このブログは今後とも細々とやっていく所存ですのでよろしくお願いいたします。
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