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20190117 プレバト!!俳句紹介【冬のバス停】

2019年1月17日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。

●お題:冬のバス停

◆1位 才能アリ72点 内田恭子
遅延証明書の列や 雪の朝

【本人談】
まだ会社員だった時に、通勤中に雪が降ってきて交通機関が遅れている時になぜか遅延証明書をもらう為に列をなしてて、自分ももらおうかと思うが必要ないかなと思いながら通り過ぎて、かれこれ都心は雪に弱いなというのを思い出して。

柴田 私大好きです、この句「遅延証明書」で何が起きたかわかるし、その「列」でどういう状態かわかるし、「雪の朝」でどういう気持ちかどういう寒さか全部わかるから、こんな短いのに凄いなって。
北山 基本的な型を崩しているじゃないですか。攻めているのに全体として説明できているのが素晴らしい

夏井先生
特待生2人ともちゃんとわかっている。素晴らしい
遅延証明書」というおおよそ俳句になりにくいような長い言葉は調べを作りにくい
前半は句またがりの形でぴったり12音となっている。最後に「雪の朝」で5音という展開。
柴田さんが言ったように、「遅延証明書」という言葉でどういう状況で、何が起こっているのか。結構言葉の経済効率は良い
しかも「列」で映像化される。「や」はすぐ上の言葉を強調する。何と長い列が続いているんだろう。カットが切れて雪の朝だとわかる
俳句というのは必要な事だけを述べれば良いというのが、わかっている人じゃないと作れない
お見事。直しは要りません。


添削なし


◆2位 才能アリ70点 向井慧(パンサー)
雪濡らす バス待つ我の 単語帳

【本人談】
入試やセンター試験の時、雪が降るというニュースを良く聞く。バスを待っている時に少しでも覚えたいから単語帳を開いているが、雪が単語帳に落ちて濡れてしまっているという情景。

柴田 「単語帳」っていうところに学生さんの新鮮さが出ていて、受験生だなってわかるから好きですね、この句。
北山 綺麗な句とは思うんですが、まあちょっと単純かな
本人 ちょっと待ってください。才能アリなのよ!
北山 向井君とここには大きな壁があるから。

夏井先生
ちゃんとできた句。
発想としてこういう句がないことはないが、きちんと光景が描けている
」という季語、「濡らす」という状態、「バス」という乗り物、「」という人物、最後に「単語帳」という物に焦点が絞られていく。
光景を絞っていくやり方もとても正しい。
最後の「単語帳」によって、これが濡れていて、季語によってだとわかり、雪という季語が再度クローズアップされる。そういうところも勉強している。
このままでも勿論良いが、「濡らす」をあえて字余りにして強調することもできる
自分の意図によるが、「雪濡らす」とする。何に濡れているか、「雪が濡らしている」となり、雪の印象が際立ってくる。
字余りにすると、ゆっくりと過ぎ行く時間の情緒も表現できる
こういう強調の仕方もあると1つアドバイス。これ出来たら上等。

本人 ありがとうございます。

[ここがポイント]
助詞「が」(で強調する)

添削後
濡らす バス待つ我の 単語帳

◆3位 凡人65点 升毅
傘の浪 白息吐息 画狂人
※「画狂人(がきょうじん)」とは浮世絵師 葛飾北斎のこと。北斎の気持ちで詠んだ一句。

【本人談】
考えても出てこなかったが、兼題写真が突然一枚の絵に見えた。その瞬間に北斎が降りてきて「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏(なみうら)」という一番有名な絵にかぶった。傘の列が浪に見えて。でもこれは俺の作品としては評価は低い。こんなの描いてちゃダメだぞ、という気持ちになった。

柴田 発想の飛ばし方は凄いとこ飛んでったんだなぁと。もし説明なしにこの俳句をもらったら、すごいな~と思いながら何日も考えちゃうかも知れない

夏井先生
発想という観点に於いては間違いなく才能のある人。
何が損しているか。「傘の浪(なみ)」から始まる語順が損
沢山の傘を浪と比喩している。「白息吐息」は傘を差している人々の白い息・ため息だと人々は読む。そういう光景だと思うと、いきなり「画狂人」が出てくるので、画狂人どこにいた?と混乱する
「画狂人」から始めるだけ。今のお話聞いたら「白息」という季語も別の季語の方が良いやる気が出てきました
「画狂人」という人物。北斎とわかる人にはわかる。「吐息」とくれば画狂人の吐く息となる。これで1つ混乱がなくなる。
比喩の「」に行き、「為(な)す」と持ってくる。吐息がまるで浪を為しているかのようだとなる。
最後に「雪の傘」として季語を入れて映像にする。
こうすると、画狂人の吐息も浪のようであり、浪のようなのは本当は雪の日に傘を差す人々の列が浪を為している、となる。
久しぶりに燃えた
こういうことを思いつくあなたは発想として才能ある方。ちょっとだけ技術学んでください。そしてまた来てください

パンサー向井 俺の本(御婆ちゃんの形見として父から授かった俳句の本)貸しましょうか。貸したら技術上がりますよ。
本人 あ~いやいや。

添削後
画狂人 吐息浪為す 雪の傘

◆4位 凡人60点 松原智恵子
牡丹雪 列ほんのりと バス待つ子

(発表待ちシートでの会話)
浜田 松原さん、どうでした?難しかったですか?
本人 私自身は経験したことがないんですけど・・。
浜田 何をですか?
本人 バス停で待つ。
浜田 あ~。
本人 でも、子どもが学校行くときに送って行った。バス停まで。そういう経験はあります。
浜田 何を言うてんの?松原さんは並んだことはないけれども、この光景はお子さんの時に見ていると。お子さんを送っていって。
本人 はい。
浜田 で、難しかったんか?簡単やったんか?それを言え!
向井 イライラしないでください。
本人 難しかったです。
浜田 はい、わかりました。

【本人談】
私はバスを雪の日に待ったことがないので(浜田:聞きました)、子どもをバス停まで送って(浜田:聞きました)いって、その時の情景を思い出して詠んでみました。

浜田 終わったよ。ここ(発表待ちシート)で言うてたことや~!
北山 すごい綺麗な句だと思うんですが、「ほんのり」というのがどっちに転ぶかっていうのが問題かな。
浜田 おっ、言ったねぇ。
北山 特待生っぽくないすか?
向井 ぽいぽい。

夏井先生
北山君えらい!
加減を表す「ほんのり」は良い所と損する所2つ併せ持っている。
まず季語の問題。「牡丹雪」は冬の終わりにゴワゴワと降る雪を指す春の季語。そのため春の光景になる。だからダメというわけではない。
「ほんのりと」は牡丹雪の気分には似合っている。ただ、「ほんのりと」は「バス待つ子」の方に掛かってくるので「ほんのり」とした子かなと読み手は迷う。
ご自身の子どもとして書く方が、親の視点がはっきりする。「ほんのりと」は今回諦め、目の前にある光景を描写して曖昧さを解消する。
「牡丹雪」の後、すぐ光景の「バス待つ」に行く。「列に」として、自身の子を「吾子(あこ)」と2音で言える。「の傘」と明確に書く。
列の中であそこにうちの子がいるという、親の目線・気持ちが「吾子の傘」の映像で出てくる。焦点が絞られる。

本人 もう一回書き直して、自分のお家に置いておきます
浜田 そうしてください

[ここがポイント]
映像で表現する

添削後
牡丹雪 バス待つ列に 吾子の傘

◆最下位 才能ナシ35点 原田龍二
焼き芋の 鐘に我が家の 暖想う

【本人談】
寒い中に焼き芋売り場の鐘を聞いて、暖かい家の中で焼き芋を頬張るのを想像して寒さを我慢しようという状況を表現した。

北山 大体最初、想っちゃうんですよね
浜田 何々想う。ほうほう。
北山 大体そういう人失敗してるんですよ

夏井先生
おっしゃる通り。
才能ナシの人達すぐ想いたがる
全部が悪いわけではない。途中までは「おっ!」と思った
焼き芋」という季語の後に「鐘」という音が出て、「に」で”鐘によって”何か展開があると読める。ここまでは良かった。
ここから後「我が家の暖想う」は全部いらない
観客席 あ~あ。
夏井先生 「あ~あ」なんて言う必要ない。
せっかく「焼き芋」という季語の現場に立って鐘の音まで聞いているわけでしょ。寒さに耐えて自分を励ましながら家に帰るまでの時間を、という気分なんでしょ。
それを現場として書くべき。例えば季語の後に人物を1つ入れる。「売り子
「の鐘に」の後、「励まさる」とすれば、焼き芋を食べて励まされながら、あともう一息頑張るぞと、そんな感じになる。

添削後
焼き芋の 売り子の鐘に 励まさる

★特待生昇格試験★

北山 千賀(1級)は足元が見えてるんで。
浜田 そうやな。ここの頑張り次第ですね。
北山 楽屋で俳句の作り合いとかしてるんで。
柴田 すごいね。
浜田 アイドルですよ。
北山 一個一個大事なんです。歌もダンスもそして俳句も大事


◆『息白く 独身寂し 空へ嗚呼
 北山宏光(Kis-My-Ft2)

本人 (浜田へ)「嗚呼(ああ)」覚えてますか?
浜田 覚えてます。
→夏の食堂のお題の回で、才能ナシになった本人の俳句を夏井先生に「箸止めて見入る球児の夏よ嗚呼」と添削されている。

【本人談】
列に並ぶこの写真を最初見た時に「寂しいな」と。自身も独身でその寂しい気持ちが繋がって。あと、夏井先生に過去直された句の中で「嗚呼」というストックがずっとあって、「嗚呼」はカッコいいし、今だ!と。
浜田 ここで使おうと。
本人 全てが繋がった。今だ!と。

夏井先生
この句の評価のポイントはここ「寂し」です。

■査定結果
5級で現状維持

理由:「寂し」と言うな

夏井先生
やろうとしていることは伝わる。
独身という一種の寂しさを「息白く」という季語で表現しようとしている判断は良い
さらに、ストックしてた「嗚呼」。これはカッコよくできている
空へ向かって。「」という助詞は、空という方向「へ」向かってなので、「空に」にしなかったところも勉強している
ただ読んだ時に、十分寂しい。「寂し」と言わなくても伝わる。
サビの所から行くべき。「空へ嗚呼」。この人は何を空へ向かって嗚呼と言っているんだろう
読み手はこの句の世界に十分引き込まれる
さらに、自分だという事を明確にする。漢字が続くのを避けて平仮名で「われ」とする。
最後に「息白し」と言い切る。言い切ることで季語が締まる。そうするとこの息が空へ向かって嗚呼と放たれていく
「寂し」なんて言わなくても十分寂しい良い句になる。

浜田 降格しとくか?
本人 いやいや。「維持」て書いてあるから。

添削後
空へ嗚呼 われ独身 息白

浜田 自信のほどはいかがでしょう。
柴田 あくまでも自分の実感を伴うように、丁寧に作ったつもりです(真顔で)。
浜田 なるほど、わかりました。
柴田 はい。
浜田 これぐらい(特待生の下位)になると緊張感あるよね。名人クラスになると(梅沢の様に)こんなん(足組んだり肘付いたり)やってるから。

◆『頬ゆるめ 仰ぐ鈍空(にびぞら) 鰤起し 柴田理恵
※大雪の光景から故郷富山県の冬に発想を飛ばした一句。

【本人談】
季語「鰤起(ぶりおこ)し」は私の故郷の富山(北陸地方)の方の冬の雷のことで、雷が鳴ると普通は寒くて嫌だなと思うが、あっちの人は「おっ!鰤来た!」と叫ぶ。鰤が一杯獲れると。そうすると嬉しい顔をして空を見る。その感じが出ればなと思って詠んだ句。

夏井先生
この句の評価のポイントは上五「頬ゆるめ」です。

■査定結果
5級で現状維持

理由:要らない言葉が多い

夏井先生
季語「鰤起し」は渋い。使った時の迫力があり、地域性もしっかり見えてくる。1~2月の日本海側で、鰤起しの雷が鳴る頃には鰤が獲れる
季語だけで地域性や空の感じ・季節の冷たい感じが一気に立ち上がってくる
「仰ぐ」という言葉を使うか使わないかは判断が分かれる。「空」が出てくるし、「鰤起し」で雷が連想できるので仰いでいるのではないかという考え方が1つ。使おうと思ったら使うことはできる。
鈍空(にびぞら)」という言い方は、普通は「鈍色の空」というが、縮めて自分の故郷の空を表現しようとした。せっかくなので、めずにしっかりと空の映像を書いた方が良い。なぜなら「鰤起し」は雷なので、空の印象・映像をしっかり書いた方が得
「仰ぐ」は(仰ぐ)とカッコにしておき、使いたかったら使う道はあるけど、丁寧に描くのであれば「鈍色の空」から始め、悠々と空の映像を見せる。読み手は振り仰ぐ。
一番の問題は「頬(ほお)ゆるめ」。人の表情を書いて鰤起しを待っている期待感を言おうとした。しかし、頬を緩めるという描写が「鈍色の空」「鰤起し」という上の方向に向いているのに対して、ここだけがアップの光景になっている。ここが損。「頬ゆるめ」なんて書かなくても期待感は言える。簡単な事。
「鈍色の空や」の後、「いよいよ」として「鰤起し」。鰤起しの下で見上げている人たちはみんな「あ、鰤の季節が来たぞ」とこういう状態になる。

本人 なるほど。やっぱり難しいですね、ここまで来ると。向井君、簡単に言うもんじゃないわよ
向井 感じてました、それ。
本人 大変。
向井 でも、気持ちいいですね。みなさん、ちゃんと先生の言う事を噛み締めてるから。梅沢さんとか「なんだババァ」とか。
浜田 確かにね。
向井 しっかり噛み締めてる。

添削後
色の 空やいよいよ 鰤起し

編集後記
今回は「冬のバス停」というお題。寒空や雪の中、バスを待つという光景は待っている間の事象から俳句が作りやすいシチュエーションに思えますが、果たしてどうでしょうか。
1位の句は、破調が成功した例でした。「遅延証明書」という言葉を堂々と持ってくるのは流石ですが、残り9音しかないところに季語を入れて表現するとなると案外発想が似通いそうにも思いました。
2位の句は、受験生の心境を「単語帳」で表現した一句。村上名人に似た発想でした。亡き祖母の俳句の本に感謝したいところですが、3位の升さんに簡単に譲るなんてもってのほかですね。
3位の句は、先生をやる気にさせた句。「画狂人」という一単語の力が強いですね。本人の説明にも情がこもっていましたが、次コーナーで同名の舞台をやる告知がされたので、それと自身を重ね合わせたようです。
4位の句は、浜田さんがいじるのが大好きな松原さんですが、「ほんのり」がどちらにかかるのか曖昧な句になってしまいました。しかし、所作はやはり丁寧でした。「牡丹雪」が春のイメージというのは面白いですね。
最下位は、浜田さんからの往復ビンタを免れた原田さんですが、「想う」というのがやはりかという感じ。過去にも「想う」と書いている人は結構いますが凡人が多く、この句は日本語として意味は通っているので才能ナシは厳しい査定でした。今回も全体としてレベルは高かった印象です。
特待生昇格試験は2人とも初の昇格試験でした。
平場18回挑戦と最も下積みが長く、なんとか認定されたキスマイ北山さんは、「寂し」で現状維持。過去にもキスマイメンバーでは、二階堂さんが「窓際に寂しさ残る桜草」と詠んで惜しくも凡人に下がり、宮田さんが「空梅雨やてるてる坊主寂しげに」と詠んで才能ナシに沈んでいます。一種の感情語は使うべきではないですね。ただ、本人は横尾・千賀両氏を追っているようで意識は高いですが、調子に乗ると平場転落がある「崖っぷち」状況は変わらないので次回が勝負です。
さて、特待生認定から22週と最も長いスパンで初査定にようやく挑んだ柴田さんですが、「頬ゆるめ」など言葉の無駄を指摘されこちらも現状維持。「頬」もこの番組ではよく詠まれていますが、成功句は過去2句しかありません。ただ、柴田さんは自身の出身地に特化した俳句が多い印象で、他の特待生にはない特徴だけに今後の頑張りに期待しましょう。
今回は梅沢御大がいないだけに若干真面目な展開でしたが、パンサー向井さんとキスマイ北山さんの仲の良さ、そして浜ちゃんと松原さんの掛け合いが良かった感じです。
まだ、特待生昇格試験では今年の昇格は出ていません。そろそろ【秀句2019】の記事を書こうかと思っていますが、初昇格が誰になるのか、そちらも注目したいところ。

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コメント

No title

これだけ補足させてください。
柴田さんの「頬ゆるめ」ですが、これも二階堂とアンミカさんも使ってました。

頬緩む気長に一陽の嘉節(二階堂さん)
夫婦して取り合う納豆ほお緩む(アンミカさん)

後者に至っては、凡人から才能ナシに降格されていましたし、毎週欠かさず見ている人にとっては、一目で分かる現状維持ではなかったでしょうか?

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