20190110 プレバト!!俳句紹介【書初(かきぞめ)】
- 2019/01/10
- 20:01
2019年1月10日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
●お題:書初(かきぞめ)
◆1位 才能アリ70点 山口もえ
『筆始 祖父の遺した 硯箱』
【本人談】
祖父が書道が大好きで、毎年書初めを一緒に書いていた。その祖父が亡くなり、祖父の遺した硯箱(すずりばこ)で書初めをするという作品にした。
夏井先生
こういう作品に出合うと、五七五は本当に美しい調べだと改めて思う。
中七下五で物がハッキリと見えてくる。
「硯箱」というものは祖父が愛用していたものだと。「遺」という字で祖父が亡くなったと十分わかる。
自分が大事にしているということも全部伝わる。
「筆始(ふではじめ)」はお正月初めて書くという意味の季語。これも内容にひとまず似合っている。
こっから上を目指す時に、この季語と以下のフレーズは似合っているが、ちょっと似合いすぎている。俳句では「近い」って言い方をする。季語と季語以外のフレーズのイメージの距離が近い。
季語をイメージが離れた季語にすると、一句の世界の奥行きが出来たり色が生まれたりする。
例えば、お正月の季語「初明かり」とすると、お正月の光が差し込んできてそこに祖父の硯箱があるという感じ。
新年の季語「福寿草」は元日草とも言われるキンポウゲ科の多年草。背の低い黄色い花を咲かせる。硯箱の横に小さな鉢の福寿草が置いてあるという感じもする。
梅沢名人 あ~良い!
浜田 うるさいな!
夏井先生 ホントにこれは、よく勉強した。
本人 ありがとうございます。
[ここがポイント]
季語との距離感を保つ
添削後
『初明かり 祖父の遺した 硯箱』
『福寿草 祖父の遺した 硯箱』
◆2位 凡人67点 西郷輝彦
『二日はや あれもう小腹の たちにけり』
【本人談】
去年もいろいろあったけれど、「今年は絶対怒りを抑えるぞ」と正月の二日にすでに小腹を立ててしまった。
志らく 「あれもう」というのが、「あれ」「もう」と2つ入っているのが余計な気がします。
梅沢名人 良いこと言うね。誰に小腹を立てているのか分からない。これ先輩、誰に小腹を立てたんですか?奥様ですか?
本人 あ、まぁそれはそうと、きっとね。
梅沢名人 なら「奥様」と書けばいい。
夏井先生
おっちゃん、エラい。その通りです。
この句自身は飄々として良い。
浜田 点数も(67点と)良いですもんね。
夏井先生 はい。良いですよ。
「二日」というのはお正月の二日のこと。お正月は明けてから「元日」「二日」「三日」…と全て季語。「七日」まで全て季語になる。
観覧席 へぇ~。
夏井先生 「へぇ~」じゃないよ!それぐらい覚えときなさい。
浜田 (観覧席を指差し)怒られた。
夏井先生
このまま鑑賞することも十分できるが、特待生の指摘の通り「あれもう」が勿体ない。
二日「はや」の部分に、「あれもう」は入っている。そういうこと。
→本人はパン!と足を叩いてしまったようにうつむく。
浜田 メッチャ叩いた。
本人 やっぱりそうか。
夏井先生
「あれもう」を捨てれば、おっちゃんが言ったように、奥さんなら「嫁に」「妻に」でも良い。
ひとまず「妻に」とする。後半は「小腹に」とこのままでも良いし、「小腹を」としてもよい。
「立てにけり」と漢字のほうが良いかもしれません。
こういう隙間が出てくると何でも言える。
例えば、お金に対してイライラしたなら、「金に小腹を立てにけり」。
世の中だったら「この世に小腹立てにけり」。4音節約出来たら色々できる。
俳諧味がこれだけ言えるっていうのは才能アリは目の前。
本人 先生、ここまで何とかなりませんか?(2位まで才能アリにしてと訴える)
夏井先生 それは努力してから言ってください。
[ここがポイント]
無駄な言葉は省く
添削後
『二日はや 妻に小腹を 立てにけり』
『二日はや 金に小腹を 立てにけり』
『二日はや この世に小腹 立てにけり』
◆3位 凡人50点 杉本彩
『書初めの 艶に込める 女ごころよ』
【本人談】
兼題写真の書初めをしている手が女性の手で、50代くらいの女性なら「艶(つや)」という字を書くのではないか。その「艶」に込める女心ってどうなんだろうっていう自分の想いとも重ねた句。
浜田 あんた、こんなんばっかりやな。
梅沢名人 「艶に」っていうのが意味がつながらない。書初めで何を書こうとしているんだかっていうバランスが悪い。
浜田 なるほど。とりあえず、足組むのやめろ。
夏井先生
発想は悪くない。ただ、読んだときに「艶」という文字を書いたとは読み解けない。
書初めで書いた墨の字の艶に女心がこもっている、と読めてしまう。
五六六のリズムも損している。
「女ごころ」を諦めればサラサラっと行くが、諦めたくないですよね?
本人 そうなんです。
夏井先生
わかる。作者が分かったから諦めてはいけない。
この内容を全部入れるなら字余りにしないといけない。
「女ごころ」から始め、さっさと「込め」る。そして「書初めの」に続け、ここからが勝負。
「 」(かぎかっこ)をつければ文字を書いたとわかる。「艶」とする。
「~という」ということを俳句では「てふ」と書くと、"ちょう"と発音して、「艶という」という意味になる。
最後に「文字」とすると、文字に最後焦点が当たる。こうなると、言いたいことはひとまず言える。
浜田 今の直しで全員が「はぁ~」。
志らく 絶対にできないですよ。
→梅沢名人もうなずく
浜田 こんな直しのやり方あるんや。
[ここがポイント]
文語独特の言葉を知る
添削後
『女ごころ 込め書初めの 「艶」てふ文字』
◆4位 才能ナシ37点 二階堂高嗣(Kis-My-Ft2)
『七福神詣で 気分良く笑顔』
※書初めから新年の七福神詣でに発想を飛ばした一句。
(紹介時のトーク)
本人 俳句やった中で一番挑戦してる。
浜田 (笑いながら)投げちゃった?
本人 メッチャ振りかぶりました。
浜田 変化球、投げちゃったか~。
本人 それでも才能アリ獲れるかもしれない。自信はある。
(残り3人で)
本人 メッチャ発想を飛ばしました。
梅沢名人 どこまで飛ばしたんだ?
浜田 そうなんですよ、どんな球投げた?まさかこんな感じ?(真横に球を飛ばす仕草をする)
本人 でも、なるほどって思うはず。
浜田 真下に行ったんとちゃう?(真下目がけて投げる仕草)
本人 僕は真っ直ぐ投げたつもりですよ。
浜田 ホント?
(結果発表後)
梅沢名人 真下だ。
浜田 何なん、お前。中途半端な。
本人 わかんねぇや、俺。
【本人談】
七福神が祀ってある社寺を巡礼して気分が良くなった。書初めはその七福神の絵を描いてる。笑顔で。良くないですか?
志らく 破調でしょ?五七五で詠んでない。破調が大失敗した例。「笑顔」が「気分が良い」のは当たり前。
夏井先生
どこに発想飛ばしたか聞いてみたい。字面だけでは発想が極めて乏しい。
「七福神詣で」というマニアックな季語を持ってきた。ここまでは「おっ」と思った。
神社仏閣にお参りして気分が良くなりましたなんて、誰でも考えそうなこと。
思い切り真上にジャンプして2cm真横に落ちたくらいの。それぐらいの距離しか(発想が)飛んでない。
どこ振っても新しい材料は入れようがない。どうでも良いんだけどさ。
晴れ晴れとしたなら、中七を「晴れやかなる」くらいにしか直しようがない。こうすると、ちょっと調べはできる。
でも、最後に本人が語ったことの方が発想はずっと面白い。
七福神の絵を墨で描いたんでしょ?なんでそれを書かずに、こんなどうでも良いようなこと書きやがって。
「詣で来て七福神を墨で描く」くらいなら、少なくとももっともっと上に行く。
本人 「七福神詣で七福神を墨で描く」。
夏井先生 アホ!
一同 (笑)
本人 分かんない、分かんない。
浜田 なかなか出えへんで。夏井先生の「アホ!」は。
本人 どういうこと、どういうこと?「絵描く」って言ったほうが良いってことですか?
夏井先生
「詣で来て七福神を墨で描く」ぐらいにしたら、もっと上に行ってた。
添削後
『七福神詣で 晴れやかなる笑顔』
『詣で来て 七福神を 墨で描く(本人談)』
◆最下位 才能ナシ30点 髙橋ひかる
『筆を手に 迷ったあげく お年玉』
【本人談】
毎年、書初めで何書こうと思った結果、小学校でお手本で書かれるのが「お年玉」。それを思い出して「お年玉」と書いている光景を詠んだ。
梅沢名人 17歳の娘が俳句を詠んだわけだから、あまりキツいこと言うのもなんだけど、これ全然意味が分からない。書いているうちにお年玉を貰いにいこうと行ったかもしれない。
夏井先生
季語らしきものは「お年玉」しかないので、普通に読むとおっちゃんの読みに皆落ち着いていく。
筆を手に何かを書いていて迷ったんだけど、誰かが「お年玉あげるよ」「お年玉貰いにじいちゃんばあちゃんとこ行こう」と。筆を迷った挙句置いて、お年玉の方に行ったと。そういう風にしか読めない。
書初めならそう書くしかない。「お年玉」と書いたならカギかっこでくくる。
「筆を手に」と悠長に言ってる場合じゃない。迷ってる場合でもないので全部消す。
季語の「書初め」と書いて、何書こうか迷ったならそう書く。「何書こう」とする。
『「お年玉」と書こう』。「書こう」と韻を踏んでみたが、小学校1年生くらいだととても良い作品。
添削後
『書初め何書こう 「お年玉」と書こう』
★特待生昇格試験★
志らく (前回の番組対抗戦で)東大生に負けた。東大には勝てないんだけども悔しくて悔しくてね。現状維持なんてのはあり得ない。
梅沢名人 いいね。
◆『走馬灯に 駆け込む 書初めの午』 立川志らく
【本人談】
書初めで子どもの書いた「午(うま)」という字に物凄く躍動感があって、この午がどこに行くのか想像した時に、草原だと才能ナシだし、競馬場だと凡人だろうと。走馬灯に入って、バァーっと駆け抜けていたら俳句としては綺麗かなと思った。
夏井先生
この句の評価のポイントは「走馬灯」です。
梅沢名人 「走馬灯」が引っかかってる。
■査定結果
3級で現状維持
理由:読み手を混乱させている
夏井先生
混乱の原因は「走馬灯」。実は「走馬灯」は夏の季語(江戸時代に夏の納涼玩具として広まる)。
季重なりがダメということではない。先に走馬灯が出てくると、これが季語だとわかっている人は夏の気分でこの句を読み始める。
夏に走馬灯が何かに駆け込むんだ、と。いい感じだなと思うと「書初め」で新年だったのか、と。ここで混乱をする。
季重なりで走馬灯まで書くなら、「書初め」から始めれば良いだけのこと。語順を変える。
「書初めの」とくる。そしてこの「うし」という…あ、「うま」か。
浜田 おい!
二階堂 いいじゃないですか。
夏井先生
ええやん!ちょっと(牛と午で)突き抜けているかどうかでしょ。
「午」とカギかっこをつけたほうが良い。
『「午」駆け込まん』とすれば「駆け込むに違いない」となる。
最後に「走馬灯」が来ると、新年のイメージから始まるので、本物というよりはイメージの中の走馬灯となり、季語の力がグーっと薄まる。こうしてれば結構いけてた。
本人 そうなんですね。夏の季語と分かってたので、思い切り破調にした方が良いだろうと詠んだ。さっきの二階堂くんの破調をバカにした罰でしたね。
添削後
『書初めの 「午」駆け込まん 走馬灯』
★永世名人への道★
梅沢名人
今回は、役者 梅沢富美男にしか詠めないぞと、そういう俳句にチャレンジした。「300年に1人の名人」梅沢富美男…。
浜田 誰が300年や…。
◆『札止めの 墨色の濃さ 初芝居』 梅沢富美男
【本人談】
大入り札止めと看板が出る。そうすると役者の気持ちがパァーっと。私は今人気者ですから毎日ですけど。
浜田 やかましいわ。
本人 今日は初日から非常に縁起の良いお正月だな、ということで季語「初芝居」と。
夏井先生
この句の評価のポイントは「濃さ」です。
本人 え?…何言ってんだ。
浜田 ブツブツ言わないで。
本人 よくあんた…。
■査定結果
名人10段で現状維持
理由:言葉を学べ!
本人 「言葉を学べ」? コンチキショウ!名人に対して失礼だぞ。
夏井先生
「失礼だろ」と言われただけで今ムカッと腹が立った。
良いところは沢山ある。「初芝居」という季語のよろしさというのは出てくるが、「札止めの墨の色」を言うだけで、それがどうだこうだではなく「色が濃い」というだけで、「初芝居」の活気や賑わいを言おうとする。それ以外のことをごちゃごちゃ言わない。まさに名人の判断。「初」の字も艶やかで華やかで良い。
おっちゃん、何で中七を濃「さ」にしたのか。言葉の根本的なところがわかってないから、「さ」にしたんでしょ?
本人 違うよ!
夏井先生 何だよ!
浜田 ケンカをすな!ケンカを!
本人 なっちゃんが言ったじゃないか。”視聴者をバカにするな”って。わかりやすく「さ」にしたんだよ!
夏井先生
「さ」にするからわかりにくくなってんのよ。冷静に聞きなさい。
本人 はい。
夏井先生
「濃さ」っていうのは名詞になるので、この墨色の濃さが「ちょうど良い」「ちょっと薄い」とかそういう説明がここにくっついている可能性ができてしまう。だから、ここは「濃い」のだと言わないといけない。この「さ」が間違い。
普通に言えば「濃し」となる。「濃い」というのをストレートに言うだけ。これで良い。
ただ、初芝居の活気を強く言ったほうが良い。人気者のおっちゃんなんでしょ?
本人 はい。客は満杯だ、コンチキショウ!
浜田 うるさいな!
夏井先生
客が満杯の活気にもっていくには、「墨色ぞ」と強めたら、下は文法的に「濃き」となる(係り結び)。こう来るわけです。
浜田 こっちのが良いな!
本人 年明けでの番組だぞ!一年を占う大事なコーナーだ!
夏井先生 文句があるなら、言葉をちゃんと勉強して出直してきなさい。
本人 細かいとこじゃないか。「ぞ」とか「き」とか、後で俺の楽屋に来ればいいだろ!
添削後
『札止めの 墨色の濃し 初芝居』
『札止めの 墨色ぞ濃き 初芝居(強調)』
編集後記
今回は新年明けての「書初め」が季語でした。玉巻映美アナ初参加の回でした。
1位の句は、祖父の思い出という実感のこもった句。季語とそれ以外のフレーズの取り合わせの距離が近いということでしたが、パッと映像が浮かぶ分かりやすさが良かった印象です。国語辞典を購入した成果が出ていました。
2位の句は、「あれもう」が句を分かりにくくしてしまいましたが、さらっと日常のことを書いているのが高評価でした。「小腹」は空くという言い方もあるので、誤読もありそうです。
3位の句は、今回で7回目となる杉本さん。艶やかな方向に発想を持ってきましたが、かつて「白雪に想うは君の赤い襦袢(じゅばん)」と詠んでいてそのイメージが強いですね。「艶」と書初めで書いた人は今年全国に何人いたのでしょうか。
4位の句は、18回目の二階堂さんです。同じキスマイの北山さんは18回目で才能アリを7回獲得して特待生になりましたが、逆に二階堂さんは7回目の才能ナシ。未だに「笑顔」と書いて「良くないですか」と言える当たり、万年平場を押し通すかと思いますが、夏井先生を慕う姿勢もあり、浜田さんからも可愛がられている感じ。不器用な側面が強いですね。
最下位は、初心者にありがちなニュアンスが字面で伝わっていない句でした。心情を書くよりも、場面描写に徹するということがポイントですね。
昇格試験は2名とも厳しい結果に。
「ミスター昇格」と言われている志らくさんは初めての現状維持。今回は説明からして取ってつけたような感じだったので詰めが甘い印象がありました。語順がおかしいのは分かりやすかったですね。現時点で昇格率100%なのは松岡さんのみに。
対する梅沢名人は今回で5連続の現状維持。文法的な部分を指摘されてしまいました。この辺りは舞台役者で中卒の梅沢名人には厳しい部分ですね。そろそろ前進しても良い頃合いではないでしょうか。
さて、アシスタント交代で浜田さんから「お前!誰や」が飛び出しました。まだ慣れてない感じが伝わってきますが、豊崎アナと声質が似ている印象です。また、二階堂さんは詠唱後に夏井先生から「アホ!」と言われましたが、これは初めてのことではありません。
全俳句一覧も少しずつ改修していきますので、2019年も当ブログをよろしくお願いします。

出演者が詠んだ俳句を紹介します。
●お題:書初(かきぞめ)
◆1位 才能アリ70点 山口もえ
『筆始 祖父の遺した 硯箱』
【本人談】
祖父が書道が大好きで、毎年書初めを一緒に書いていた。その祖父が亡くなり、祖父の遺した硯箱(すずりばこ)で書初めをするという作品にした。
夏井先生
こういう作品に出合うと、五七五は本当に美しい調べだと改めて思う。
中七下五で物がハッキリと見えてくる。
「硯箱」というものは祖父が愛用していたものだと。「遺」という字で祖父が亡くなったと十分わかる。
自分が大事にしているということも全部伝わる。
「筆始(ふではじめ)」はお正月初めて書くという意味の季語。これも内容にひとまず似合っている。
こっから上を目指す時に、この季語と以下のフレーズは似合っているが、ちょっと似合いすぎている。俳句では「近い」って言い方をする。季語と季語以外のフレーズのイメージの距離が近い。
季語をイメージが離れた季語にすると、一句の世界の奥行きが出来たり色が生まれたりする。
例えば、お正月の季語「初明かり」とすると、お正月の光が差し込んできてそこに祖父の硯箱があるという感じ。
新年の季語「福寿草」は元日草とも言われるキンポウゲ科の多年草。背の低い黄色い花を咲かせる。硯箱の横に小さな鉢の福寿草が置いてあるという感じもする。
梅沢名人 あ~良い!
浜田 うるさいな!
夏井先生 ホントにこれは、よく勉強した。
本人 ありがとうございます。
[ここがポイント]
季語との距離感を保つ
添削後
『初明かり 祖父の遺した 硯箱』
『福寿草 祖父の遺した 硯箱』
◆2位 凡人67点 西郷輝彦
『二日はや あれもう小腹の たちにけり』
【本人談】
去年もいろいろあったけれど、「今年は絶対怒りを抑えるぞ」と正月の二日にすでに小腹を立ててしまった。
志らく 「あれもう」というのが、「あれ」「もう」と2つ入っているのが余計な気がします。
梅沢名人 良いこと言うね。誰に小腹を立てているのか分からない。これ先輩、誰に小腹を立てたんですか?奥様ですか?
本人 あ、まぁそれはそうと、きっとね。
梅沢名人 なら「奥様」と書けばいい。
夏井先生
おっちゃん、エラい。その通りです。
この句自身は飄々として良い。
浜田 点数も(67点と)良いですもんね。
夏井先生 はい。良いですよ。
「二日」というのはお正月の二日のこと。お正月は明けてから「元日」「二日」「三日」…と全て季語。「七日」まで全て季語になる。
観覧席 へぇ~。
夏井先生 「へぇ~」じゃないよ!それぐらい覚えときなさい。
浜田 (観覧席を指差し)怒られた。
夏井先生
このまま鑑賞することも十分できるが、特待生の指摘の通り「あれもう」が勿体ない。
二日「はや」の部分に、「あれもう」は入っている。そういうこと。
→本人はパン!と足を叩いてしまったようにうつむく。
浜田 メッチャ叩いた。
本人 やっぱりそうか。
夏井先生
「あれもう」を捨てれば、おっちゃんが言ったように、奥さんなら「嫁に」「妻に」でも良い。
ひとまず「妻に」とする。後半は「小腹に」とこのままでも良いし、「小腹を」としてもよい。
「立てにけり」と漢字のほうが良いかもしれません。
こういう隙間が出てくると何でも言える。
例えば、お金に対してイライラしたなら、「金に小腹を立てにけり」。
世の中だったら「この世に小腹立てにけり」。4音節約出来たら色々できる。
俳諧味がこれだけ言えるっていうのは才能アリは目の前。
本人 先生、ここまで何とかなりませんか?(2位まで才能アリにしてと訴える)
夏井先生 それは努力してから言ってください。
[ここがポイント]
無駄な言葉は省く
添削後
『二日はや 妻に小腹を 立てにけり』
『二日はや 金に小腹を 立てにけり』
『二日はや この世に小腹 立てにけり』
◆3位 凡人50点 杉本彩
『書初めの 艶に込める 女ごころよ』
【本人談】
兼題写真の書初めをしている手が女性の手で、50代くらいの女性なら「艶(つや)」という字を書くのではないか。その「艶」に込める女心ってどうなんだろうっていう自分の想いとも重ねた句。
浜田 あんた、こんなんばっかりやな。
梅沢名人 「艶に」っていうのが意味がつながらない。書初めで何を書こうとしているんだかっていうバランスが悪い。
浜田 なるほど。とりあえず、足組むのやめろ。
夏井先生
発想は悪くない。ただ、読んだときに「艶」という文字を書いたとは読み解けない。
書初めで書いた墨の字の艶に女心がこもっている、と読めてしまう。
五六六のリズムも損している。
「女ごころ」を諦めればサラサラっと行くが、諦めたくないですよね?
本人 そうなんです。
夏井先生
わかる。作者が分かったから諦めてはいけない。
この内容を全部入れるなら字余りにしないといけない。
「女ごころ」から始め、さっさと「込め」る。そして「書初めの」に続け、ここからが勝負。
「 」(かぎかっこ)をつければ文字を書いたとわかる。「艶」とする。
「~という」ということを俳句では「てふ」と書くと、"ちょう"と発音して、「艶という」という意味になる。
最後に「文字」とすると、文字に最後焦点が当たる。こうなると、言いたいことはひとまず言える。
浜田 今の直しで全員が「はぁ~」。
志らく 絶対にできないですよ。
→梅沢名人もうなずく
浜田 こんな直しのやり方あるんや。
[ここがポイント]
文語独特の言葉を知る
添削後
『女ごころ 込め書初めの 「艶」てふ文字』
◆4位 才能ナシ37点 二階堂高嗣(Kis-My-Ft2)
『七福神詣で 気分良く笑顔』
※書初めから新年の七福神詣でに発想を飛ばした一句。
(紹介時のトーク)
本人 俳句やった中で一番挑戦してる。
浜田 (笑いながら)投げちゃった?
本人 メッチャ振りかぶりました。
浜田 変化球、投げちゃったか~。
本人 それでも才能アリ獲れるかもしれない。自信はある。
(残り3人で)
本人 メッチャ発想を飛ばしました。
梅沢名人 どこまで飛ばしたんだ?
浜田 そうなんですよ、どんな球投げた?まさかこんな感じ?(真横に球を飛ばす仕草をする)
本人 でも、なるほどって思うはず。
浜田 真下に行ったんとちゃう?(真下目がけて投げる仕草)
本人 僕は真っ直ぐ投げたつもりですよ。
浜田 ホント?
(結果発表後)
梅沢名人 真下だ。
浜田 何なん、お前。中途半端な。
本人 わかんねぇや、俺。
【本人談】
七福神が祀ってある社寺を巡礼して気分が良くなった。書初めはその七福神の絵を描いてる。笑顔で。良くないですか?
志らく 破調でしょ?五七五で詠んでない。破調が大失敗した例。「笑顔」が「気分が良い」のは当たり前。
夏井先生
どこに発想飛ばしたか聞いてみたい。字面だけでは発想が極めて乏しい。
「七福神詣で」というマニアックな季語を持ってきた。ここまでは「おっ」と思った。
神社仏閣にお参りして気分が良くなりましたなんて、誰でも考えそうなこと。
思い切り真上にジャンプして2cm真横に落ちたくらいの。それぐらいの距離しか(発想が)飛んでない。
どこ振っても新しい材料は入れようがない。どうでも良いんだけどさ。
晴れ晴れとしたなら、中七を「晴れやかなる」くらいにしか直しようがない。こうすると、ちょっと調べはできる。
でも、最後に本人が語ったことの方が発想はずっと面白い。
七福神の絵を墨で描いたんでしょ?なんでそれを書かずに、こんなどうでも良いようなこと書きやがって。
「詣で来て七福神を墨で描く」くらいなら、少なくとももっともっと上に行く。
本人 「七福神詣で七福神を墨で描く」。
夏井先生 アホ!
一同 (笑)
本人 分かんない、分かんない。
浜田 なかなか出えへんで。夏井先生の「アホ!」は。
本人 どういうこと、どういうこと?「絵描く」って言ったほうが良いってことですか?
夏井先生
「詣で来て七福神を墨で描く」ぐらいにしたら、もっと上に行ってた。
添削後
『七福神詣で 晴れやかなる笑顔』
『詣で来て 七福神を 墨で描く(本人談)』
◆最下位 才能ナシ30点 髙橋ひかる
『筆を手に 迷ったあげく お年玉』
【本人談】
毎年、書初めで何書こうと思った結果、小学校でお手本で書かれるのが「お年玉」。それを思い出して「お年玉」と書いている光景を詠んだ。
梅沢名人 17歳の娘が俳句を詠んだわけだから、あまりキツいこと言うのもなんだけど、これ全然意味が分からない。書いているうちにお年玉を貰いにいこうと行ったかもしれない。
夏井先生
季語らしきものは「お年玉」しかないので、普通に読むとおっちゃんの読みに皆落ち着いていく。
筆を手に何かを書いていて迷ったんだけど、誰かが「お年玉あげるよ」「お年玉貰いにじいちゃんばあちゃんとこ行こう」と。筆を迷った挙句置いて、お年玉の方に行ったと。そういう風にしか読めない。
書初めならそう書くしかない。「お年玉」と書いたならカギかっこでくくる。
「筆を手に」と悠長に言ってる場合じゃない。迷ってる場合でもないので全部消す。
季語の「書初め」と書いて、何書こうか迷ったならそう書く。「何書こう」とする。
『「お年玉」と書こう』。「書こう」と韻を踏んでみたが、小学校1年生くらいだととても良い作品。
添削後
『書初め何書こう 「お年玉」と書こう』
★特待生昇格試験★
志らく (前回の番組対抗戦で)東大生に負けた。東大には勝てないんだけども悔しくて悔しくてね。現状維持なんてのはあり得ない。
梅沢名人 いいね。
◆『走馬灯に 駆け込む 書初めの午』 立川志らく
【本人談】
書初めで子どもの書いた「午(うま)」という字に物凄く躍動感があって、この午がどこに行くのか想像した時に、草原だと才能ナシだし、競馬場だと凡人だろうと。走馬灯に入って、バァーっと駆け抜けていたら俳句としては綺麗かなと思った。
夏井先生
この句の評価のポイントは「走馬灯」です。
梅沢名人 「走馬灯」が引っかかってる。
■査定結果
3級で現状維持
理由:読み手を混乱させている
夏井先生
混乱の原因は「走馬灯」。実は「走馬灯」は夏の季語(江戸時代に夏の納涼玩具として広まる)。
季重なりがダメということではない。先に走馬灯が出てくると、これが季語だとわかっている人は夏の気分でこの句を読み始める。
夏に走馬灯が何かに駆け込むんだ、と。いい感じだなと思うと「書初め」で新年だったのか、と。ここで混乱をする。
季重なりで走馬灯まで書くなら、「書初め」から始めれば良いだけのこと。語順を変える。
「書初めの」とくる。そしてこの「うし」という…あ、「うま」か。
浜田 おい!
二階堂 いいじゃないですか。
夏井先生
ええやん!ちょっと(牛と午で)突き抜けているかどうかでしょ。
「午」とカギかっこをつけたほうが良い。
『「午」駆け込まん』とすれば「駆け込むに違いない」となる。
最後に「走馬灯」が来ると、新年のイメージから始まるので、本物というよりはイメージの中の走馬灯となり、季語の力がグーっと薄まる。こうしてれば結構いけてた。
本人 そうなんですね。夏の季語と分かってたので、思い切り破調にした方が良いだろうと詠んだ。さっきの二階堂くんの破調をバカにした罰でしたね。
添削後
『書初めの 「午」駆け込まん 走馬灯』
★永世名人への道★
梅沢名人
今回は、役者 梅沢富美男にしか詠めないぞと、そういう俳句にチャレンジした。「300年に1人の名人」梅沢富美男…。
浜田 誰が300年や…。
◆『札止めの 墨色の濃さ 初芝居』 梅沢富美男
【本人談】
大入り札止めと看板が出る。そうすると役者の気持ちがパァーっと。私は今人気者ですから毎日ですけど。
浜田 やかましいわ。
本人 今日は初日から非常に縁起の良いお正月だな、ということで季語「初芝居」と。
夏井先生
この句の評価のポイントは「濃さ」です。
本人 え?…何言ってんだ。
浜田 ブツブツ言わないで。
本人 よくあんた…。
■査定結果
名人10段で現状維持
理由:言葉を学べ!
本人 「言葉を学べ」? コンチキショウ!名人に対して失礼だぞ。
夏井先生
「失礼だろ」と言われただけで今ムカッと腹が立った。
良いところは沢山ある。「初芝居」という季語のよろしさというのは出てくるが、「札止めの墨の色」を言うだけで、それがどうだこうだではなく「色が濃い」というだけで、「初芝居」の活気や賑わいを言おうとする。それ以外のことをごちゃごちゃ言わない。まさに名人の判断。「初」の字も艶やかで華やかで良い。
おっちゃん、何で中七を濃「さ」にしたのか。言葉の根本的なところがわかってないから、「さ」にしたんでしょ?
本人 違うよ!
夏井先生 何だよ!
浜田 ケンカをすな!ケンカを!
本人 なっちゃんが言ったじゃないか。”視聴者をバカにするな”って。わかりやすく「さ」にしたんだよ!
夏井先生
「さ」にするからわかりにくくなってんのよ。冷静に聞きなさい。
本人 はい。
夏井先生
「濃さ」っていうのは名詞になるので、この墨色の濃さが「ちょうど良い」「ちょっと薄い」とかそういう説明がここにくっついている可能性ができてしまう。だから、ここは「濃い」のだと言わないといけない。この「さ」が間違い。
普通に言えば「濃し」となる。「濃い」というのをストレートに言うだけ。これで良い。
ただ、初芝居の活気を強く言ったほうが良い。人気者のおっちゃんなんでしょ?
本人 はい。客は満杯だ、コンチキショウ!
浜田 うるさいな!
夏井先生
客が満杯の活気にもっていくには、「墨色ぞ」と強めたら、下は文法的に「濃き」となる(係り結び)。こう来るわけです。
浜田 こっちのが良いな!
本人 年明けでの番組だぞ!一年を占う大事なコーナーだ!
夏井先生 文句があるなら、言葉をちゃんと勉強して出直してきなさい。
本人 細かいとこじゃないか。「ぞ」とか「き」とか、後で俺の楽屋に来ればいいだろ!
添削後
『札止めの 墨色の濃し 初芝居』
『札止めの 墨色ぞ濃き 初芝居(強調)』
編集後記
今回は新年明けての「書初め」が季語でした。玉巻映美アナ初参加の回でした。
1位の句は、祖父の思い出という実感のこもった句。季語とそれ以外のフレーズの取り合わせの距離が近いということでしたが、パッと映像が浮かぶ分かりやすさが良かった印象です。国語辞典を購入した成果が出ていました。
2位の句は、「あれもう」が句を分かりにくくしてしまいましたが、さらっと日常のことを書いているのが高評価でした。「小腹」は空くという言い方もあるので、誤読もありそうです。
3位の句は、今回で7回目となる杉本さん。艶やかな方向に発想を持ってきましたが、かつて「白雪に想うは君の赤い襦袢(じゅばん)」と詠んでいてそのイメージが強いですね。「艶」と書初めで書いた人は今年全国に何人いたのでしょうか。
4位の句は、18回目の二階堂さんです。同じキスマイの北山さんは18回目で才能アリを7回獲得して特待生になりましたが、逆に二階堂さんは7回目の才能ナシ。未だに「笑顔」と書いて「良くないですか」と言える当たり、万年平場を押し通すかと思いますが、夏井先生を慕う姿勢もあり、浜田さんからも可愛がられている感じ。不器用な側面が強いですね。
最下位は、初心者にありがちなニュアンスが字面で伝わっていない句でした。心情を書くよりも、場面描写に徹するということがポイントですね。
昇格試験は2名とも厳しい結果に。
「ミスター昇格」と言われている志らくさんは初めての現状維持。今回は説明からして取ってつけたような感じだったので詰めが甘い印象がありました。語順がおかしいのは分かりやすかったですね。現時点で昇格率100%なのは松岡さんのみに。
対する梅沢名人は今回で5連続の現状維持。文法的な部分を指摘されてしまいました。この辺りは舞台役者で中卒の梅沢名人には厳しい部分ですね。そろそろ前進しても良い頃合いではないでしょうか。
さて、アシスタント交代で浜田さんから「お前!誰や」が飛び出しました。まだ慣れてない感じが伝わってきますが、豊崎アナと声質が似ている印象です。また、二階堂さんは詠唱後に夏井先生から「アホ!」と言われましたが、これは初めてのことではありません。
全俳句一覧も少しずつ改修していきますので、2019年も当ブログをよろしくお願いします。

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