「プレバト!!」で披露された芸人 フルーツポンチ村上健志 フルポン村上の全俳句一覧です。
永世名人(名人10段★5) 村上健志(むらかみけんじ) 合計92句
成績(2023年9月21日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ2回
<特待生時代>
2ランク昇格1回、
1ランク昇格13回、
現状維持5回、
1ランク降格1回
【永世名人への道】★★★★★ 前進 9回、
現状維持 4回(うち星持ち4回)、
後退 4回(添削があれば即降格)
【永世名人のお手本】暫定32句・残り18作(50句で句集出版決定)
認定22句+
掲載決定 10句、
ボツ 6句
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第1回俳桜戦5位、第1回炎帝戦9位(最下位)、第1回金秋戦6位、第1回冬麗戦5位
第2回炎帝戦決勝2位、第2回金秋戦決勝2位、第2回冬麗戦決勝3位
第3回春光戦優勝、
第3回炎帝戦優勝、第3回金秋戦7位、第3回冬麗戦予選2位・決勝3位
第4回春光戦決勝6位、第4回炎帝戦予選B1位・決勝5位、第4回金秋戦予選C2位、第4回冬麗戦2位
第5回春光戦予選2位・決勝4位、第5回炎帝戦3位・第5回金秋戦決勝5位、第5回冬麗戦9位
第6回春光戦予選C1位・
決勝3位、(第6回炎帝戦15位)、
第6回金秋戦決勝2位、第6回冬麗戦10位
第7回春光戦決勝4位、浜田杯2位、第7回炎帝戦7位俳句甲子園'17対外試合で6-5で
判定勝ち、俳句甲子園'18対外試合で4-7で
判定負け、俳句甲子園'19対外試合で4-7で
判定負け春の他流試合SPで松山東高校に27-28で
判定負け通信教育査定で
よく頑張ってる!査定1回
ふるさと戦(写真俳句)で
茨城編優勝(PRポスター掲載決定)、千葉編2位査定とは別に2017年月間MVH受賞(3月)、2018年度月間MVH受賞(7月)
●通算昇格率 62.3%(33/53) 掲載率:63%(10/16) 前進率:53%(9/17) 昇格率:70%(14/20)◆添削なし秀句 51句/89句(俳句甲子園は除く)
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人物紹介◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 | 才能アリ | コスモスや女子を名字でよぶ男子 |
2 | 才能アリ | テーブルに君の丸みのマスクかな |
3 | 2ランク昇格 | 初日記とめはねに差すひかりかな |
4 | 1ランク降格 | 寒紅やトンネルを行く夜行バス |
5 | 1ランク昇格 | 春の月消しゴムのカスあたたかし |
6 | 1ランク昇格 | 卒業の駐輪シール並ぶ朝 |
7 | 俳桜①5位 | エルボーの子の迎え撃つ花吹雪 |
8 | 1ランク昇格 | うららかやからっぽの校庭の猫 |
9 | 現状維持 | 五月雨や彫刻刀を持ち替える |
10 | 炎帝①9位 | 渋滞の後部座席の浮き袋 |
11 | 現状維持 | 水ヨーヨー透かす夜店の灯かな |
12 | 1ランク昇格 | 夜晴れにペリッと剥がせそうな月 |
13 | 俳句甲子園①○ | 野球部の従兄は素振り盆の月 |
14 | 金秋①6位 | 龍よりも緋い紅葉を探す子ら |
15 | 現状維持 | 黄落やよろついているピルエット |
16 | 冬麗①5位 | 春永やサイドミラーの透ける空 |
17 | 1ランク昇格 | オルゴールのネジ巻く妊婦窓の雪 |
18 | 1ランク昇格 | 元素記号ふたつ忘れて春の風 |
19 | 1ランク昇格 | 象の糞豊かに崩れ穀雨かな |
20 | 現状維持 | 林道の朽ちし廃バス額の花 |
21 | 1ランク昇格 | 給茶機の上の軋めく扇風機 |
22 | 炎帝②決勝2位 | 村祭ラジカセが笛担当す |
23 | 1ランク昇格 | 八月の海を置き去るバイクかな |
24 | 1ランク昇格 | 作家別に揃え直して夜は長し |
25 | 1ランク昇格 | 真夜中の花屋の灯り秋澄めり |
26 | 俳句甲子園②× | 西日へと坊っちゃん列車転回す |
27 | 金秋②決勝2位 | 無月なり紙ナプキンの置き手紙 |
28 | 現状維持 | 縄跳びの子に反応す自動ドア |
29 | 冬麗②決勝3位 | まだ白い明日が並ぶ初日記 |
30 | 春光③決勝1位 | サイフォンに潰れる炎花の雨 |
31 | 春の他流試合× | 花の夜や靴履き終えて無言の汝 |
32 | 1ランク昇格 | 扇川また見失い緑さす |
33 | 1ランク昇格 | 記念樹の若葉へホース伸ばしけり |
34 | 1つ前進 | エルメスの騎士像翳りゆき驟雨 |
35 | 炎帝③決勝1位 | 行間に次頁の影夕立晴 |
36 | 1つ前進 | 八月の機内に点る読書灯 |
37 | 俳句甲子園③× | 湯上りの夜の道後よ秋めきぬ |
38 | 1つ後退 | リレーバトン空のケースにいぼむしり |
39 | 金秋③決勝7位 | 廃校の名の信号機秋の蝶 |
40 | 1つ前進 | 代役の衣装合わせや虎落笛 |
41 | 冬麗③予選2位 | 抜型を重ねて仕事納めかな |
42 | 冬麗③決勝3位 | 双六の駒にポン酢の蓋のあり |
43 | 1つ後退 | 風花や額縁買って帰る午後 |
44 | 1つ前進 | 観覧車の列に春ショールの教師 |
45 | 春光④決勝6位 | ネーブルの君の爪痕から潤む |
46 | 頑張ってる! | くっついたままの餃子を食う遅日 |
47 | 炎帝④予選B1位 | 二枚目はベランダで読む手紙かな |
48 | 炎帝④決勝5位 | 蛾の骸ポイントカードで掬いけり |
49 | 1つ前進 | 秋朝やバタにフォークの穴四つ |
50 | 金秋④予選C2位 | 秋麗チョコスプレーの淡き影 |
51 | 冬麗④2位 | 一月やゴム動力のプロペラ機 |
52 | 春光⑤予選A2位 | 海苔篊の等間隔に暮れかかる |
53 | 春光⑤決勝4位 | けいどろの牢に鐘楼花の寺 |
54 | 1つ後退 | 若葉風寝言は母国語の庭師 |
55 | 炎帝⑤3位 | まだマシなTシャツを貸す夜の雷 |
56 | 現状維持- | エンターキー中指で押し涼新た |
57 | 現状維持- | 車庫入れの誘導は父秋日和 |
58 | 金秋⑤決勝5位 | 発電機運ぶ赤鬼村祭 |
59 | 現状維持- | ふりかけに詳しきナース黄落期 |
60 | 1つ後退 | 銀杏のひかり肴に一口目 |
61 | 1つ前進 | 冴ゆる夜やショウウインドウに黄の鞄 |
62 | 冬麗⑤9位 | 寅の尾を目指す迷路よ年賀状 |
63 | 1つ前進 | 白鳥の波紋や御御籤をひらく |
64 | 春光⑥予選C1位 | 卒業や階段に階段の影 |
65 | 春光⑥決勝3位 | 光風や控え選手のペンの減り |
66 | 1つ前進 | 春の色絵本の並ぶ美容院 |
67 | 現状維持- | 空焼きの中華鍋背に胡瓜噛む |
68 | 1つ前進 | 夕立や楽譜にカンマ書き入れる |
69 | ボツ | 延長の末に引き分け夏の月 |
70 | ボツ | ディッシャーを持って無敵な素足の子 |
71 | 炎帝⑥15位 ※番組解説なし | 風鈴鳴る千の躊躇を弔って |
72 | 掲載決定 | 吠えたけるアシカのミリア夏の雲 |
73 | 掲載決定 | 炎天やドットの粗き標識車 |
74 | ふるさと戦(茨城)1位 ※PRポスターに掲載
| 秋夕焼へ音失っていく列車 |
75 | 掲載決定 | ピザ窯の奥に小さき火朝寒し |
76 | 金秋⑥決勝2位 | 大谷の球大谷が打つ案山子 |
77 | ボツ | 暖房や(間奏約30秒) |
78 | 掲載決定 | 補助席に場札と蜜柑バスの旅 |
79 | 掲載決定 | 垂直にシャンパンの泡クリスマス |
80 | 冬麗⑥10位 | 雪晴やチャームへ託す運選ぶ |
81 | ふるさと戦(千葉)2位 | てふてふの過るトロッコ列車かな |
82 | 掲載決定 | 立てかけて清しき巻き簾節替り |
83 | ボツ | 富士山の胴へふらここ漕ぐ少女 |
84 | 春光⑦決勝4位 | 保護シール剥がす手応え啄木忌 |
85 | ボツ | 春愁や廻る木馬の目の潤み |
86 | ボツ | 青き踏む影の少なき無人駅 |
87 | 浜田杯2位 | 扇風機衣装脱ぎつつ出前表 |
88 | 掲載決定 | 薄暑のシンク鯖缶の蓋の反り |
89 | 掲載決定 | 木漏れ日を動かして鳴るラムネ玉 |
90 | 炎帝⑦7位 | じゃあそれとガツ刺し夕涼の酒場 |
91 | 掲載決定 | 吊橋に四つの碇鰯雲 |
92 | 掲載決定 | 蕎麦猪口の藍に濃淡水の秋 |
▼人物紹介「プレバト!!」では詩的発想力が評価されるやいなや夏井先生に「この人は本物の詩人です」と言わしめてわずか2回の査定で通算11人目の特待生昇格を決めた自称「スーパールーキー」。
その後も俳句査定初の2ランク昇格を決め、段位上では数々の特待生を追い抜き、特待生となってわずか8回(通算10回)の査定で番組史上5人目の名人昇格を決めた(これは名人到達最少記録である)。
紹介時のBGMは特待生となったお題「冬の新宿駅」のモチーフとなったアニメ映画『君の名は』のテーマ曲「前前前世」である。
句の特徴は、青春を過ごす人物の心情描写や日常のさりげない場面の切り取り方と描写力。まるでショートムービーを再現したかのような想像のふくらみを持たせる句が特徴的である。人物の場合は女性や子どもに焦点のある句が中心で、月や夜などに発想を飛ばして場面を描写する句も見られる。カタカナ語も全体的に多い。また、「や」「かな」「けり」の切れ字を初期から多く使用しており、俳句の型の基本に忠実に挑んでいる。
兼題写真が来るとスケジュールを確保して実際にその場所に出向き、何十句と絞り出して考えることを番組内で発言しており、特待生昇格前に「俳句が手を取って色んな所に連れて行ってくれる」と名言も残している。
自身の句の紹介時では、自己陶酔のごとく顔がニヤけながら世界観を解説するため、司会の浜田から注意を受けやすく、良い評価を受けた後の表情においても、夏井先生から指摘を受けることがある。そのナルシストぶりは女性特待生の中田からも嫌われてしまうほど。
また、言葉の選択ミスで評価が大きく落ちると、ふてくされる態度をとることがあり、1年目のタイトル戦では最高5位にとどまるなど大舞台に弱い印象があった。しかし、その後のタイトル戦は一矢報いるほど好調。第2回炎帝戦・金秋戦では見事梅沢名人に次ぐ2位、冬麗戦も3位と名人として期待に応える成績を残し、春光戦で遂に念願のタイトルを獲得し、続く炎帝戦も制覇した。金秋戦ではまさかの7位に沈み、次回決勝シードを失うも、冬麗戦予選で2位通過と10段の意地を見せ、決勝ではシード権を獲得する3位に入る。続く春光戦で6位と再びシード権を失い、炎帝戦予選では堂々の1位通過・決勝はシード権獲得ならずの5位、金秋戦予選では2位につけるも惜しく決勝を逃すなど最近は波乱万丈である。予選決勝形式では安定した成績だが、優勝賞金を獲得できる形式に移行してからは1度も優勝できていない。
夏井先生からは、「何気ない場面を詩的に切り取ることは誰にも真似できないほど長けており、最近は変な無理をせず、自分の持ち味を理解しているのが強みである」「他人を羨ましがらないとはっきりと腹をくくってから上手くなっており、小さなドラマを構築させたら右に出る者はいない」と高評価を受けており、最近は梅沢名人も「日常のことを詠ませたら日本一」と評価することが多く、東国原名人や夏井先生は「ポエム男子」と評したことがある。
基本的には「フルポン村上」の呼称で親しまれているが、東国原名人からは「村上ポンチ君」と呼ばれていじられている。
また、女性特待生からの人気が高く、「日常的な場面を詩にできるセンスが素晴らしい」と語る鈴木光、「言葉選びが素敵」と語る皆藤愛子、「言葉遣いが色っぽい」と語る森口瑤子が尊敬する名人に名を挙げており、本人の解説時には観覧の女性客からも反応があることが多い。
俳句は上手いがトークが下手くそであることを自覚しているようで、タイトル戦では浜田から論評のフリを受けるのが恒例行事となっているが、レベルの高い句になると全く指摘できないようにも見受けられる。さらに、自身の句も狭い視野で限定的に話すことがあるため、夏井先生から必要以上に語らないよう注意されたこともある。
さらに、通常査定やタイトル戦では好成績な一方、対外試合では判定負けに喫すことが多く、他の審査員からの共感が得られにくい。
NHKでは短歌の番組にも出演するなど活躍機会も多く、最近では他メディアの連載企画「フルポン村上の俳句修行」で毎月様々な句会で鍛えて着実に成長しており、村上の俳句に陶酔するファンも多い。
うなぎ上りの実力は記録面でも大いに表れている。名人初段から5段までは史上最少回数の6回(42週)で到達し、5段から8段まではわずか3回(10週)と名人最速・最短ペース。まさに破竹の勢いで段位を駆け上がり、遂に番組4人目となる10段を達成。5級から査定20回での到達は、27回で到達した東国原・藤本両名人の記録を凌駕する最少記録。また、5級から129週での到達も名人最速記録である。
10段までの昇格率は7割と驚異の確率で10段の4名人中トップ、添削なし率も唯一5割を超えるなど、名人としての風格は抜群。いよいよ梅沢名人をも射程圏内に捉え、永世名人への挑戦も期待が大きいといえよう。
永世名人への道は名人10段の4番手として満を持して合計17回挑戦。無傷の2連続前進後、一進一退の攻防となり一時はトップタイとなるも梅沢・東国原名人に先を越されてしまう。添削なしの現状維持も経て、星3つから一時星1つまで後退と悪戦苦闘。しかし、連続前進を経て遂に3人目の永世名人をつかみ取った。
永世名人達成時に22句の掲載が認められている句集への挑戦はここまで16度挑戦。初回査定はボツに終わり、早速シュレッダーの洗礼を受けた。3回目の挑戦から3回連続掲載と調子が良かったが、久々の挑戦で3回目のボツに。その後も掲載決定を先行させていたが、2023年に3回連続のボツ査定。その後も4回連続掲載と調子の良し悪しが激しいが、現時点のシュレッダー率は約4割となっている。
ちなみに、[20]の句が三省堂の中学3年生用の教科書に、夏井先生の添削例として掲載が決定している。さらに、[42]の句が石寒太氏の歳時記に掲載された。
さらに、2021年4月に俳句関連書籍『フルーツポンチ村上健志の俳句修行』も刊行されるなど、多方面で目覚ましい活躍を見せている。
2022年9月放送の「ふるさと戦」では茨城出身のメンツを発揮して優勝。1位となった句が県の観光PRポスターに掲載される運びとなった。一方、2023年1月放送の千葉編では惜しくも2位と隣県制覇とはならなかった。
2023年8月9日、さらば青春の光オフィシャルYouTubeチャンネル内の企画動画にて一般女性との結婚を発表した。
●[1] @16/09/29◆お題:コスモス畑
『コスモスや女子を名字でよぶ男子』才能アリ1位75点
添削なし
聴覚情報に絞り、湿りっ気のない小学校高学年の男女の関係を表現し、季語「コスモス」のもつ女性のイメージを引き立てている句。微妙の心情変化の表現力を絶賛。「この人はまだまだ化けるかもしれない」とまで太鼓判を押された。
●[2] @16/11/24◆お題:冬の新宿駅
『テーブルに君の丸みのマスクかな』才能アリ1位78点
添削なし
季語は「マスク」。触れたいけど触れられない、外して丸みの形を残している人物のマスクに思いを馳せた一句。思いを寄せていた女性がデートか何で席を外して行ってしまったが、テーブル上の眼前のマスクで、いない人が余計に浮かび上がり、冬の寂しさと重なるとニヤケて語った。先生は「感心した。素晴らしい」と評し、冬の季語「マスク」で作者の切ない恋心を表現したと褒め、17音のメカニズムと季語の力を存分に発揮した一句と大絶賛した。先生から「この人は本物です。本物の詩人です。他の特待生を蹴落とすかもしれない」と稀有な才能をもつとまで評価され、特待生に昇格した。
[ここから特待生として査定]●[3] @17/01/05◆お題:新春の富士山(特待生のみの昇級昇段試験)
『初日記とめはねに差すひかりかな』3級へ
2ランク昇格添削なし
「かな」という詠嘆が見事で「とにかく巧い」と評された一句。発想だけでなく技術もしっかりしていると大絶賛され、俳句査定初の2ランク昇格という快挙。「とめはね」を意識する初日記に朝の光と新年の新しい光を想像できる句。多作多捨の姿勢も絶賛された。
●[4] @17/01/26◆お題:横浜 スケートリンク
『寒紅やトンネルを行く夜行バス』4級へ
1ランク降格添削後
『口紅を赤く寒夜の長距離バス』『口紅を赤く聖夜の長距離バス』
夏井先生が本人談を聞いて降格か現状維持かを判断した一句。「言葉の選び方が下手」と評され、季語「寒紅」によって女の逃避行を感じる暗い句に感じられると先生は解説。季語が遠距離恋愛をする若い女性の意図と全く合わないことが降格の決め手で、大幅に添削された。
●[5] @17/02/09◆お題:梅と太宰府天満宮
『春の月消しゴムのカスあたたかし』3級へ
1ランク昇格添削なし
受験生に発想を飛ばし、「春の月」が受験という厳しさの中に温かさを感じると語った。「人物を想像させるのが巧み」とし、季語は2つあるが、「あたたか」は消しゴムの表情を描写したため、時候の季語の力がなく技術が評価された一句。
●[6] @17/03/09◆お題:卒業式
『卒業の駐輪シール並ぶ朝』2級へ
1ランク昇格添削なし
2017年3月月間MVH受賞句
卒業の日の朝にもう並ぶことのない学校指定の駐輪シールが貼られた自転車が並ぶ様子を詠んだ一句。千原ジュニア・特待生石田・名人梅沢から中七の表現で非難を浴びることになるが、「細部のリアリティーがお見事」と褒められ、先生は中七の目の付け所を賞賛。映像の作り方が大変うまい見事な作家だと絶賛された一句。
●[7] @17/04/06◆お題:満開の桜
『エルボーの子の迎え撃つ花吹雪』第1回俳桜戦5位
添削後
『花吹雪くるエルボーで迎え撃つ』
桜吹雪に対して子供が肘を立てて戦っているという様子を描写した句。フジモンから小賢しい感じがすると指摘され、先生から面白い発想を語順で損していると評された。写真の人物になり切って、子どもと限定しない形で花吹雪の迫力を出すような語順に添削された。
●[8] @17/04/13◆お題:校庭とチューリップ
『うららかやからっぽの校庭の猫』1級へ
1ランク昇格添削なし
季語は「麗らか」。初めて定型崩しに挑戦し、授業中の教室から見える校庭の猫の光景に発想を飛ばした句。「内容とリズムが似合っている」と評され、破調の調べが成功。途中まで何も映像が出てこないが、人のいない光景にうららかな春の光が訪れ、最後に出てくる猫がクローズアップされる語順も大したもんだと高評価。
●[9] @17/06/22◆お題:学校の傘立て
『五月雨や彫刻刀を持ち替える』1級で
現状維持添削後
『彫刻刀持ち替え五月雨を彫らん』
村上ならではの発想。雨の不穏さから彫刻刀を持ち替える危うさの描写と版画の細い雨を描いているイメージを込めた句。作者の狙いが実現できておらず、「あと一歩足りない」と評された。発想は良く、五月雨の湿気や彫る時の木の感触が変化する感じを読み手が受け止める一句と褒められ、読者を信じたのも良いと評された。本人が語った、版画で細い雨を掘るというイメージを描写すべきと添削された。
●[10] @17/06/29◆お題:海
『渋滞の後部座席の浮き袋』第1回炎帝戦9位(最下位)添削後
『渋滞の座席を弾む浮き袋』『渋滞の座席にしぼむ浮き袋』
季語は「浮き袋」。海水浴へ向かう車が渋滞し、その車内の膨らんだ浮き袋に子どものワクワク感を表現しようとした句。海へ行く途中なのか、帰ってくる時なのか不明と評され、言葉の無駄に気づかないことを叱責されて名人目前の大きな失敗と言われ、タイトル戦最下位に。
●[11] @17/07/20◆お題:夏祭り
『水ヨーヨー透かす夜店の灯(あかり)かな』1級で
現状維持添削後
『夜店の灯(ひ)透けて水ヨーヨーの青』
季語は「夜店」で、今回は50句以上作ったと語った。夏祭りの美しい夜店の灯りを主役にしてあげたいと思い立った句。水ヨーヨーって薄いから灯りが透け、その灯りが夜店の灯りならその様子が何とも美しいとニヤケながら語った。「描写が甘い」と評され、本人は「キビシー」と感想を述べるも先生から「名人を目指す人間がこの程度で厳しいと言ってたら将来真っ暗」と咎められた。査定ポイントの「かな」の詠嘆が活きておらず、「俳句が分かるようになると何でも"透かし"てみたくなる」とダメ出しし、「月の光」「太陽」に"透かす"など凡人的試みだと解説。より描写の精度を上げるべきで、「透かす」の動作ではなく、「透けて」の映像で、色を用いて添削した。ヨーヨーの透明感のある青の向こうに夜店の灯りを認識できる映像化に「綺麗~」という女性陣の声が上がる。先生は村上の不貞腐れた顔を注意し、「この押さえが浮かばないうちは名人は無理」と説教することに。
●[12] @17/09/21◆お題:月と鎌倉大仏
『夜晴れにペリッと剥がせそうな月』名人初段へ
1ランク昇格添削後
『夜を晴れてペリッと剥がせそうな月』
晴れた夜の満月はあまりに美しくて取ってつけたかのようだと描写した句。「リアリティーがあり魅力的」と評され、「ペリっと」という擬態語が成功。「剥がせそう」という能動態の言い方や語順の選び方も上手いと褒められ、瑞々しさが戻ってきて、3度目の正直で遂に名人に。
●[13] @17/09/21◆お題:子規と野球(俳句甲子園'17延長戦)
『野球部の従兄は素振り盆の月』審査員11人中6票で開成高校に
判定勝ち添削なし
野球部で素振りをする従兄をお盆で集まった親戚一同が温かく見守る様子を描写した句。開成高校に「夏井先生なら素振りをしない野球部員がいたら連れてこいと言う」「盆の月という季語が動き、凡人の域に収まった」と厳しい指摘を受けたが、結果は判定勝ち。村上に票を入れた審査員の一人は「盆の月という渋い季語の中で、今を時めく青春を過ごす人をクローズアップし、従兄へのあこがれが先祖たちへ静かにつながっていく所が大きな家族を感じさせる良い句」と称賛。「野球部」が説明臭いと評価が下がるようで、夏井先生は票を入れなかった。
●[14] @17/10/12◆お題:紅葉
『龍よりも緋(あか)い紅葉を探す子ら』第1回金秋戦6位
添削後
『緋(ひ)の紅葉探す龍の鱗を探すかに』
子どもの頃に、完璧な綺麗な赤の紅葉を探す様子がレッドドラゴンの鱗を探す冒険の様だと表現した一句。ファンタジーは面白いが、龍が赤い龍だとイメージできず、句の行く先を見失うと先生に評された。字面で言いたいことが表現できておらず、龍と紅葉の大小の対比が激しすぎると酷評。紅葉と大きさで釣り合うのは龍の「鱗」だと指摘されて大幅な字余りに添削され、タイトル戦は3度連続下位に沈む。
●[15] @17/11/09◆お題:ベンチの銀杏
『黄落やよろついているピルエット』名人初段で
現状維持添削後
『黄落やひかりに傾(かし)ぐピルエット』
銀杏が散る中でバレエの回るピルエットをしたくなるほど美しいさまだと語った句。先生から「ヘタ」と評され、取り合わせのセンスは褒められたが、村上の作品とピルエットそのものが「ヘタ」であるのが勿体ないと評された。季語を立てながら、本人が語ったように、黄落の美しさに触発されてピルエットをするという描写になるよう中七を添削された。
●[16] @18/01/04◆お題:雪と青空
『春永やサイドミラーの透ける空』第1回冬麗戦5位
添削後
『春永やサイドミラーの小さき空』『春永やサイドミラーを弾く空』『春永やサイドミラーを走る空』
新年ののどやかな空気をさす季語を用いて、サイドミラーの空に正月のめでたい気分まで映るというイメージを込めた句。大きなマイナスはないが、「透ける」という描写の弱点を指摘され、車が動いているかと待っているか不明であり、動きがわかる描写をし具体的に映像化すべきと評された。
●[17] @18/01/18◆お題:犬と雪
『オルゴールのネジ巻く妊婦窓の雪』名人2段へ
1ランク昇格添削なし
妊婦さんが胎教に良いオルゴールのネジを巻く様子を描写し、出産の美しさや不安な様子を雪に託したと語った句。東国原名人から「村上ポンチくん節」と評され、先生から「心情の表現が見事」であり、五感を刺激する丁寧な語順を高評価。「雪の窓」ではなく「窓の雪」と最後に雪に焦点をもってきたことで、妊婦の幸福感ではなく不安・アンニュイな心情表現を描写できていると絶賛された。
●[18] @18/02/22◆お題:春風と女性
『元素記号ふたつ忘れて春の風』名人3段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「春の風」。高校化学で習う元素記号を取り合わせ、受験後に元素記号を忘れるかのようなのどかな春の風をイメージした一句。梅沢名人から「詩になるか、降格だよ」と痛烈に非難を浴びたが、先生から「見本になる句」と絶賛。詩になりにくい元素記号を取り込んで俳句にした姿勢を高評価。受験勉強で一生懸命覚えて合格して、やれやれと思った人物が想像でき、春の訪れや進学の喜びまで感じ取れる句だと評された。
●[19] @18/04/26◆お題:
春の動物園『象の糞豊かに崩れ穀雨かな』名人4段へ
1ランク昇格添削後
『象の糞豊かに崩れゆく穀雨』
動物園に行って詠んだ句。穀物を濡らす温かい雨を指す晩春の季語「穀雨」と、大きい象の糞が目の前で崩れていくという、春が深く生命力の大きい2つを取り合わせただけの俳句と語った。「付かず離れずの感覚が◎」と評され、季語と季語以外の距離感がちょうどいい塩梅で、意味の上ではつながらないがイメージの上で似合っていると絶賛。穀物を育てる雨と食後の豊かな糞の取り合わせが高評価。小さな添削を受けたが、上位3名人にすぐ追いつくと後押しされた。
●[20] @18/06/21◆お題:
紫陽花とバス停『林道の朽ちし廃バス額の花』名人4段で
現状維持添削後
『林道に廃バス錆色に紫陽花』
季語は「額の花」。2ランクアップを狙ったと意気込み、人里離れた山奥に発想を飛ばし、林道で廃車として置き去りになっているバスと額紫陽花を取り合わせ、悲しげでもあり美しいと語ったジブリのような世界観の句。紫陽花は錆色になって枯れていくイメージと廃バスとの取り合わせが良いと自画自賛したが、梅沢名人は「朽ちし」が不要で「2ランク降格しろ」と一蹴する。「まだ情報が足せる」と評し、「朽ちし」を捨て石の動詞とせず、「錆色」になる紫陽花の色のイメージを活かす添削され、素晴らしい発想を朽ちさせたと評された。
※三省堂中学教科書掲載句●[21] @18/07/12◆お題:
夏の食堂『給茶機の上の軋めく扇風機』名人5段へ
1ランク昇格添削なし
2018年7月月間MVH受賞句
個人経営の食堂で給茶機の上に置いてきしめいている「扇風機」に焦点を当て、食堂の古くて汚いけど居心地がいい空気をイメージした夏の1ページと語った句。珍しく梅沢名人も日常のことをお題にして俳句を作る名人だと絶賛する。助詞「の」の使い方が上手く、「視線の誘導が見事」と評され、場面をありありと再生させる的確な描写力を絶賛した。
●[22] @18/08/09◆お題:
ラジカセ『村祭ラジカセが笛担当す』第2回炎帝戦決勝2位添削なし
季語「祭」で人手がいない田舎の村祭の様子を描写した句。村上の句が好きと語るミッツは「ノスタルジックで過疎化な村となる現代の世相を切り取っている句」と太鼓判。発想がユニークでありながら、過疎の村の現実を描いていると先生も高評価。中七「が」の強調が活きており、下五の擬人化もさりげなく、俳句はこれぐらいでよいと絶賛され、タイトル戦初の準優勝。
●[23] @18/08/30◆お題:
夏休みの終わり『八月の海を置き去るバイクかな』名人6段へ
1ランク昇格添削なし
季語「八月」に夏の名残惜しさがあり、八月の海をバイクが置き去っていく描写に夏が終わるイメージを重ねた一句。先生から「かな」を理解していると評され、「かな」が単なる詠嘆ではなく、判断の揺らぎを読者に託すニュアンスも表現されていると絶賛。また、「八月」は原爆忌・終戦・お盆といった「生き死に」のイメージをもつ季語でもあり、本人はバイクが行った後の空白も込めたかったと語り、イメージだけの季語を見事に引き立てた。いよいよ名人としての風格が立ち上がってきたと先生から背中を押された。
●[24] @18/09/13◆お題:
古書店街『作家別に揃え直して夜は長し』名人7段へ
1ランク昇格添削なし
読書の秋に、バラバラになっている本棚を作家別に揃え直す行為を楽しく思えるが、揃え直ってもまだまだ夜は長く、本を手に取る行為が止まらないのが秋の夜長に似合うと本人が楽しそうに語った句。梅沢名人に季語「夜長」を崩したのが気に入らないと痛烈に言われるが、先生からその点も工夫の一つと評され、見事3回連続昇格。「動作に心情が良く表れている」と評し、本が好きな人特有な動作を上手く表現した。「並べ直して」ではなく、「揃え直して」としたセンスも褒められた。梅沢名人の指摘も一理あるが、季語「夜長」「長き夜」ではなく「夜は長し」としたことで、「は」の指差す効果が長い夜の強調に合っていると高評価。名人になって1年足らずで7段となった。
●[25] @18/09/20◆お題:
駅の花屋『真夜中の花屋の灯り秋澄めり』名人8段へ
1ランク昇格添削なし
夜道で見つけた灯りが、深夜営業や閉店後のライトアップしている花屋なら素敵だと感じ取れて、その感覚が「秋澄めり」という季語に跳ね返ってぐるぐる回るかのような様子だと語り、東国原名人から「ポエム男子」と言われた一句。「秋澄む」という「季語の選択が見事」と絶賛され、4回連続昇格を決めた。夜の発想と小さな嬉しさを詠む切り取り方を高評価。真夜中なのに夜の大気が澄み切っていることに気づき、作者は心から灯りが美しいと感じていると伝わる季語を選びとったと絶賛。1年前が特待生1級だったとは思えない勢いでのスピード出世である。
●[26] @18/09/20◆お題:
俳都・松山(俳句甲子園'18延長戦)
『西日へと坊っちゃん列車転回す』審査員11人中4票で徳山高校に
判定負け添削なし
人力で転回する列車を「西日」という季語で切り取った句。松山高校から「へと」という助詞をなぜ使ったのか指摘され、転回した後にその先も西日へ向かっていくという意味を込めたと反論したが、残念ながら敗北。夏井先生から負けたのは気の毒だったと慰められた。
●[27] @18/09/27◆お題:
郵便ポスト『無月なり紙ナプキンの置き手紙』第2回金秋戦決勝2位添削なし
季語は「無月」。喫茶店にいるカップルの片方が紙ナプキンにメッセージを書いた様子を表現した句だが、本人が非現実的なニュアンスを語りすぎて特待生ミッツや円楽から厳しく突っ込まれ、夏井先生から「もうしゃべんなさんな」と叱責を受けてしまった句。「無月」という季語の取り合わせと物語の幅は広いのは高評価で2度目となるタイトル戦準優勝だが後味の悪い形に。
●[28] @18/11/29◆お題:
冬のスーパー『縄跳びの子に反応す自動ドア』名人8段で
現状維持添削後
『縄跳びの子に自動ドア開く閉じる』
冬の季語「縄跳び」で母親の買い物を待つ子どもの様子を描写した句。発想力は褒められたが、「反応す」が説明的とダメ出しされ、「自動ドア」が開閉する様子を描写するように添削され、久々の現状維持。
●[29] @19/01/03◆お題:
結露『まだ白い明日が並ぶ初日記』第2回冬麗戦決勝3位添削なし
季語の「初日記」を17音全てを使って表現し、まだ書かれていない日記の白いページが並ぶ様子を描写した句。「まだ」による期待感、「白い明日」という比喩が良く、ポエム男子と高評価を受けた。好き嫌いはあれど、作者の世界観を尊重すべきであると評されて添削なしの3位となり、タイトル戦は3戦連続TOP3と好調ぶりを発揮した。
●[30] @19/04/04◆お題:
コーヒー『サイフォンに潰れる炎花の雨』第3回春光戦優勝句
添削なし
季語「花の雨」は桜の時期の雨のこと。喫茶店のサイフォンコーヒーへ着想し、水を沸かすフラスコの底に当たる炎を「潰れる」と描写した。「大好きなコーヒーへの恩返しのつもりで作った」と語り、王者を自負していた梅沢名人は「その辺の俳句を詠ませたら日本一」と降参。村上名人の俳句のセンスに憧れる鈴木光は「"潰れる"の表現が美しい」と称賛し、先生もその点も大事だと押さえる。一瞬何かと思わせる展開をしながら、「炎」の一字で映像化が促され、炎の温度と季語の冷たい皮膚感が伝わる上、炎の色・水の音・コーヒーの匂いと「五感をゆっくり刺激しながら時間と空間が出てくる句。イイネ!」と世界観を絶賛。念願の初タイトルを手にした。
●[31] @19/04/18◆お題:
自動ドア『花の夜や靴履き終えて無言の汝(な)』春の他流試合SP第1試合27-28で
判定負け添削後
『花の夜の無言や靴を履き終えて』
季語は「花の夜」。夜桜は誰かにとっては場違いな美しさで、別れ話の後に部屋を出た女性が靴を履き終えるも、未練がましい感情が残る無言の静けさの場面を描いたと語った一句。志らくは「想像が広がる美しい句」と称賛するも、対戦する高校生は「思わせぶりな終わり方を良しとするか」と指摘し、梅沢名人も村上に罵声を浴びせる。結果は「春はひらく立ち止まること許されず」と詠んだ高校生に判定負け。宇多先生は「句が喋り過ぎている」、井上先生は「汝(なれ)の発想は面白いが、物語にしようとしたのが惜しい」と指摘。唯一村上名人に満点を入れた高野先生は「恋愛より、同僚や友人との別れの後の印象。十分良い句」と逆張り。夏井先生は「ドラマを作ろうとしたが、情報量が多い」と指摘し、人物を消す添削を行った。個人戦では唯一高校生に敗北を喫した。
●[32] @19/05/09◆お題:
5月の鎌倉・小町通り『扇川また見失い緑さす』名人9段へ
1ランク昇格添削なし
季語「緑さす」は初夏の目覚めるような若葉をさす。「扇川(おうぎがわ)」は鎌倉にある小川で、川沿いを歩くと川が地中に潜って急に無くなったり、また出てきたりと繰り返す様子を描写。川を見失った時に視点を上に向けると初夏の新緑が盛んで、美しいじゃありませんかと語った。発表前も説明中もニヤけ顔で「笑うな」と浜田から注意され、志らくに「何かが物足りない。梅沢にあってないものが」と言われ、本人は不貞腐れた顔になるが、8ヶ月ぶりに昇格。ポイントの中七が「一見説明臭いが的確」と判断力を評価した先生は、「扇川」を知らずとも中七の表現でどんな体験をしたか手に取るように分かったと解説し、「また」が機能したと添えた。「何と素晴らしい季節だろう」と季語を打ち出す姿勢も称賛。的確な描写で実感もあると褒め、名人の風格があると語ったところで「笑うな」と本人を牽制した。遂に4人目の10段に王手をかけた。
●[33] @19/05/16◆お題:
学校の蛇口『記念樹の若葉へホース伸ばしけり』名人10段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「若葉」。「今の村上はゾーンに入っている」とジュニアに羨ましがれ、俳句は覚醒モードと好調な本人。卒業生から寄贈された記念樹の方向へ、ホースを伸ばす動作が清々しく、ホースが伸びながら這っていくさまを描写したと語った。ジュニアは「"記念樹"で校庭とわかり、"若葉"と"伸ばす"で成長を感じる」とべた褒めし、昇格に梅沢名人も賛辞を呈す。「助詞"へ"によって描かれる映像」と評す先生は、「記念樹」のもつ情報量の多さを解説。査定ポイントである助詞「へ」の選択について本人に問うと、「迷った助詞"に"では若葉一点に対し、若葉の方向"へ"の方が広い」と語り、先生は拍手。作者が振り返ると既に伸ばしたホースがあるが、さらに伸ばす状況が「へ」「けり」の叙述で描けていると称賛。判断の確かさを称え「10段になっていい」と認めた。本人は漢字の「十」を両腕で表現し、「10段!」と叫ぶ寒いギャグを披露。俳句四天王の一角として永世名人を目指す図式に変わることとなった。
●[34] @19/07/04◆お題:
梅雨明けの銀座『エルメスの騎士像翳りゆき驟雨』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
夕立・にわか雨を指す「驟雨(しゅうう)」が夏の季語。最近ゾーン状態で自分でも怖いと語る本人は、風景を通じて自画像を描く感覚で俳句を詠むと発言し、浜田が引いてしまう。自画自賛する句は、銀座メゾンエルメスのビル屋上にある騎士像を見上げ、急に天候が陰ったかと思うと驟雨が降る光景を描写。降雨の前後の時間経過に焦点があり、銀座ならではの句だと独特の節で主張した。「季語を生かす描写が素晴らしい」と評す先生は、「騎士像」が「翳(かげ)る」ではなく、季語で種明かしされる語順を評価。査定ポイントの「翳りゆき」の効果により、夕立の黒い雲を連れ、雨の匂いも背後に感じ取れると思うと、驟雨が騎士像から自分の方へ降ってくると味わいを解説し、短い時間の映像・距離・皮膚感を全て伝えたと称賛。「ゆく」ではなく、「ゆき」で時間が滑らかに季語に流れ込む丁寧な工夫を見破ると「その顔は本当にイラつくけど」と最後に添え、浜田もナルシストの顔芸を非難。「全部お見通しだ」と感心する本人に、小藪は「イラ立ちと感心って共存するんやな」と吐き捨てた。
●[35] @19/07/25◆お題:
夏の波紋[緑の映る水紋]『行間に次頁の影夕立晴』第3回炎帝戦優勝句
添削なし
季語は「夕立晴(ゆだちばれ)」。電車内で文庫本を読んでいると、日差しで文と文の行間に次頁(ページ)の陰影がスッと入る光景を綺麗だと思い、影から周囲の明るさに気づくと、外は既に晴れていた情景を描写。小さな発見はそれ以外の大きな世界を広げる典型的な俳句だとニヤケながら語った。2位の梅沢御大は「やられましたね」と負けを認め、「この中七、たまらない」と褒めるも、「ポッチン(波紋)を詠んでないじゃないか。"波紋"で勝負してほしかった」と食い下がる。先生は「やられたな」と思う句と評し「行間」の複数のニュアンスを解説。慣用句の意味合いかと思うと、中七で印刷物の映像とわかる展開を"化学変化"に喩え、それを引き起こした季語の使い方を見事と称賛。暗く激しい雨だったが、晴れたと分かったのは、美しい影が出てきたからだと作者の意図をたどり、夕立の間に没頭するほどの読書だったに違いないと味わいを語る。眼球から30cmの半径でも俳句が作れる人だと実力を認めた。春に続きタイトル戦を2連覇し、その勢いは留まるところを知らない。
●[36] @19/08/22◆お題:
夏の終わり・夕方の空港『八月の機内に点る読書灯』名人10段★2へ
1つ前進添削なし
季語「八月」には、原爆・お盆・終戦などの意味も含まれる。飛行機の内部にある読書灯が点(とも)る様子を描写し、「何てピースフルだろう」と感じると、今後も8月が平和であってほしいという心情を込めた。「遂に天井見えたな」と梅沢名人は「日常の風景を詠む専門に飽きたわ。名人の俳句じゃない」と厳しく評す。査定ポイントは「機内に」で、結果後の2名人の反応が対照的となる。「映像に思いが託されている」と評す先生は、複雑な思いを持つ難しい季語と取り合わせて表現する詩の感覚が見事だと称賛。「に」で自分が点すのではなく、「点る」のささやかな光景に作者は平和を感じ取ったと分かると解説。「この映像だけを切り取りたい意図が伝わった」と述べた。梅沢名人は「"平和"とは言ってない」と大口で叩くが、「"ピースフル"が平和。おっちゃん英語ダメだから…」と返す先生。「言葉に作者の思いが全て入っている。添削してはいけない」と添えた。「おめでとう」と梅沢名人が不貞腐れるも、「ここまで言われると照れ臭えわ」とニヤケる本人に「腹立つわ~」と浜田が司会席の台を叩く。対外試合の敗北以来、5句連続で負け知らずとなった。
●[37] @19/09/19◆お題:
道後温泉(俳句甲子園'19延長戦)
『湯上りの夜の道後よ秋めきぬ』審査員11人中4票で弘前高校に
判定負け添削なし
季語は「秋めく」。温泉に入り秋を感じたというシンプルな情景を詠んだ一句。弘前高校からの「要素を入れすぎ。中七『夜の道後』が気になるが、季語の『秋めく』だけで十分涼しさが出る」というもっともな指摘に反論できずにたじろぐ本人。苦し紛れに「どうしても、夜を感じてほしかった」と返すが、会場が一瞬静まり返ってしまう。先鋒戦は「湯冷めして脳に吸はれてゆくやうな」と詠んだ高校生に敗北し、高野ムツオ先生は「少し気分が良すぎる。道後温泉の人は喜ぶような、ポスターに使える俳句。こういうのは村上さんに似合わない」と評し、会場は笑いに包まれる。夏井先生は「これは致し方ない。相手が悪かった」と評した。対外試合の戦績は昨年の俳句甲子園から3連敗となった。
●[38] @19/09/26◆お題:
運動会[父転ぶ写真]『リレーバトン空のケースにいぼむしり』名人10段★1へ
1つ後退添削後
『リレー練習バトンケースにいぼむしり』
「いぼむしり」は秋の季語で蟷螂(かまきり)の古名。「みんなに見てほしくて」というほど早く出したかったという一句。運動会のリレー用バトンはケースに収納されていたが、空(から)のために運動会の練習・本番中かもしれないと読み取れ、それを言わずにリレーの熱気がありありとイメージできる。季語は「秋の日差し」とせず、敢えての"カマキリ"と両手を「く」の字に曲げ、終始陶酔しながら語った。「発想はさすが」と褒める先生は、「厳しい」と初の後退に不貞腐れてぼやく本人を「厳しいなんてもんじゃない、普通」と問いただす。査定ポイントより「『空の』はいらない」と評し、"リレーの練習の場面を先に描き、バトンケースにいぼむしりがいる"とあれば絶対に不要と語り、本人が語った「練習」を上五に置いて、2カットの映像へと添削した。浜田も同意し「やってるという事はもう"空に"なってる事だ」と鋭く理解する。「観客にも分かるだろ?この効果」と先生は念押しし、カメラワークの動きを解説。リレーの練習光景からカメラがズームアウトして手前のバトンケースに移り、その中のカマキリに焦点がいく遠近感を演出するおかげで季語が効果的に見えると語り、「面白い光景見つけたのに星をドブに捨てた」と結論付けた。本人は「厳しいわ!こんな感じ?これが10段」と厳格査定の洗礼を思い知らされた。
●[39] @19/10/10◆お題:
歩行者信号『廃校の名の信号機秋の蝶』第3回金秋戦決勝7位(次回決勝シード権なし)添削後
『廃校名残る信号秋の蝶』
季語は「秋の蝶」。タイトル戦3連覇ならず低評価に沈んだ一句は、なくなった学校名が書かれた地点名標識のある信号機の描写に挑み、季語に寂しさと希望を託した。鈴木光は「凄くまとまっていて上手。上五と下五が両方とも強く焦点がぶれて戸惑うのでは」と指摘し、梅沢名人は7位に終わった本人をけなす。先生は、意図は悪くないとし、「秋の蝶」が見上げる視線に入る工夫を褒めるも、意味を理解するのに時間がかかるという問題点を指摘する。捨て石の動詞として敢えて「残る」を加え、助詞の「の」と「機」を諦める形で意味が分かりやすくなるよう添削した。わずかな技術の取りこぼしで決勝シードを失う結果に本人は「もう1回やらせてください」とやり直しを懇願し、春夏連覇の分の賞金の清算までねだる姑息な言い訳で笑いをとる羽目に。
●[40] @19/12/05◆お題:
洋服の試着『代役の衣装合わせや虎落笛』名人10段★2へ
1つ前進添削なし
季語「虎落笛(もがりぶえ)」は風が笛のように音を立てることを指す。舞台やドラマで本来の演者が降板し、急遽代役が衣装合わせをする場面を描写。不安が募る一方で、チャンス到来ともとれる人物の心情を込め、季語は「虎落笛」が良いかなとニヤけて語った。査定ポイントは季語の効果の是非だが、前進に思わず足を上げて喜ぶ本人。先生は、情報量を込めたフレーズをコンパクトにまとめた力量を褒め、病気や不祥事を思わす上五、現場の慌ただしさや時間との戦いにある人物の動きを描写した中七を解説。どんな季語を取り合わせるかが問題で、季語と残りのフレーズとの距離感が俳句では大切だと続ける。分かりやすいのは"ベタつき"と嫌われるが、離れすぎると意味が分からないと「これぞつかず離れず!」と評した理由を解説し、不安や厳しさ・緊迫感を表現した季語で、距離感の計算が出来ているのはさすが10段だと称賛した。
●[41] @19/12/26◆お題:
年末年始の駅弁売り場『抜型を重ねて仕事納めかな』第3回冬麗戦予選2位(決勝進出)添削なし
季語は「仕事納め」。「抜(ぬき)型」は野菜やクッキーの型を取る金属製の刃物。駅弁にも花びらの形の人参などがあることから発想し、それらを作る職人が年の暮に複数の抜型を重ねる動作と仕事納めの取り合わせが良いなとニヤニヤしながら語った。先生は「上手い」と前置きし、「抜型」で仕事の種類が想像され、弁当屋以外にも菓子屋の可能性もあると一単語の情報量の多さを解説。「重ねて」もさり気ない動詞だが、的確な動作だと最後の季語で判明する流れにあるとし、「かな」の詠嘆もゆったりとしみじみとしており、安堵に近い気持ちも表現できたと解説。「納め」の送り仮名も柔らかさを出し、さすがだと称賛した。腹立つ表情を藤本名人に注意された本人は「逆に予選に出てごめんなさい」と上から目線で嬉しさを表現した。
●[42] @20/01/03◆お題:
お鍋『双六の駒にポン酢の蓋のあり』第3回冬麗戦決勝3位(次回シード権あり)添削なし(作者との距離感が近い場合の添削例が示された)
『双六の駒にポン酢の蓋の白』
「双六(すごろく)」は新年の季語。本人が「(字面)そのままの句」と語ったため浜田に進行されそうになるが、凄い物語が17音に含まれると続ける。正月にお鍋を食べていた親戚一同が双六で遊ぶが、その駒が足りずに開封したポン酢の蓋で代用したという内容。藤本名人は「良いなぁ。『ポン酢』で鍋だと分かる」と褒めるが、「(世界が)小さい。目の距離感30cmばかり。決勝の大舞台で小さい句しか詠めない。3位でもラッキー」と梅沢名人が批判すると、本人は梅沢の予選の句を挙げて「小さかったですよ、『ポリ茶瓶』」と反撃に出る。「とても良いあるある感」と評す先生は、季語で複数の親類・家族が集まっていると伝わり、中七以降の展開を褒め、蓋という物や鍋で囲む背景も見えると解説。「のあり」の解釈は、作者は双六に参加せずに蓋に気付く印象と語り、仮に自身が蓋を駒にして遊んでいるならば、「蓋の白」とより近い距離感にすべきと添削例を示す。切り取り方の巧さを褒めるも、双六が身近だった世代にとって、駒を別の物で代用するという発想がありがちだという類想の点を指摘。「マッチ箱」「飴玉」を例に挙げ、勿体ないと添えるも、「ポン酢の蓋」の発想は良く、添削なしを許容した。
※歳時記掲載句●[43] @20/01/23◆お題:
冬の新宿駅『風花や額縁買って帰る午後』名人10段★1へ
1つ後退添削後
『風花を帰る額縁買った午後』
季語は晴空を雪がひらひら舞う様子の「風花(かざはな)」。かつて特待生となった得意のお題「新宿駅」は、吉本劇場の講演でも通いつめ、バイトも7年勤めた本人ゆかりのお題。新宿に本店をもつ画材・文房具店「世界堂」から発想し、"額縁"の持つ言葉のパワーがハッピーであり、冬寒の青空を雪がちらつく中に額縁を買って帰る午後があると陶酔しながら語り、さらに「寒いけど冬って悪くないじゃん」とニヤケたところを「さっきからタメ口や!」と浜田に怒られる。査定ポイントは上五「や」の是非。「季語と時間の長さが合っていない」と評す先生は、後半「買う」「帰る」「午後」という時間がダラダラと長くなるのが問題だと指摘。「風花」は僅かな時間しか雪が飛ばないはずだと続け、語順を変えて時間軸を短くすべきと指南し、「や」を「を」に変更。2つの動詞も分断して、時間が一瞬に重なる効果を生む添削に「星すぐ獲るじゃん。無理だよ星5つって」と語っていた本人は、「良くするのヤメてくれよ!先生が良くしちゃうと俺が間違ってたとバレちゃう。ヤメてくれ~」と査定企画の主旨を再確認するボケをかまし、浜田に突っ込まれた。
●[44] @20/02/13◆お題:
観覧車『観覧車の列に春ショールの教師』名人10段★2へ
1つ前進添削なし
季語は「春ショール」。「こういう俳句も楽しいじゃん」という一句は、遊園地の観覧車の順番を待つ列に先生が並んでいる様子を描写した。ケチを付けたい梅沢名人は「身近な世界を詠めば良いのに」と口火を切り、グダグダと指摘し合いケンカする二名人をよそに「終わったら教えて」と呆れて水を飲む浜田。ひとまず中七の助詞「に」を指摘し、査定ポイントと被る。先生は、とても良く出来ている句と評し、前半で映像を確保し、後半の季語と人物と情報が被らない言葉の配置はさすがと褒める。助詞「に」の選択が何より見事で、本人の狙い通りだと称賛する。「の」なら後半の「教師」に焦点が絞られる効果があり、「へ」なら列に向かう教師の動作が読み取れ、「を」なら列をウロウロして生徒を並ばせる教師の行動が読み取れ、「や」なら2カットに映像が切り替わる効果があると解説。「に」としたことで、制服を着る生徒の列に並ぶ「春ショール」の教師が鮮やかに映像化される効果があるとし、「全部考えたに違いないと信じる」と総括した。
●[45] @20/04/09◆お題:
不動産屋さん『ネーブルの君の爪痕から潤む』第4回春光戦決勝6位(次回シード権なし)添削後
『ネーブルは君の爪痕から潤む』
季語は「ネーブル」。兼題から同棲生活をイメージし、ネーブルに君が爪を立てて剥こうとしている情景を描写。君という存在がいることで、当たり前のことが際立ち、凄く小さな世界のはずだが、爪を立てたところから出た果汁により、ネーブルの春の香りが辺りを包む。あら、大きな世界になったという良い俳句だと語るも、特待生森口から「嫌らしい~」とけなされる。東国原名人から、上五の助詞「の」が誤解を生むと指摘され、梅沢名人から厳しく追及を受けるも、本人は「は」だと一般論になると意図を語り口論となる。先生は、兼題からの発想の仕方はさすがで、動詞「潤む」が、立てた爪からの小さな飛沫と香りが弾けるように広がるのは素敵と称賛。しかし、両名人が指摘した助詞を問題に挙げ、本人の語った「は」が正解だと指摘。「の」は"ネーブルのような君"と誤読を生むが、この句は、"ネーブルという物「は」、君の爪痕から香りを建てるような果実だ”という語りで良く、強調した季語を主役とし、「君」も活きると解説。わずか1音の取りこぼしで上位陣の争いから脱落し、「考えすぎ」という評に本人は「辛いです」と語った。
●[46] @20/04/30◆お題:
おうちの冷凍食品(通信添削・おうちで俳句)
『くっついたままの餃子を食う遅日』名人10段★2で
よく頑張ってる!添削なし
季語「遅日(ちじつ)」は、日暮れが遅くなることを表現する春の季語。兼題から冷凍ギョーザへと着想した一句。陽が落ちるのが遅くなると、夕ご飯の時間でも外が明るい。皮がくっついたギョーザを剥がさずに2個いっぺんに同時に食べる様子を描写。「いいじゃん、春」と思ったと語る。「村上さんらしい丁寧な観察眼」と評す先生は、取り合わせはさすがで、季語「遅日」は3音のため「遅日かな」と最後に置かれがちだが、使い方が上手いと褒める。前半の餃子の描写も良い意味でのあるある感で、観察の効いた言葉とし、もったりした感じと季語の持つ空気感が"付かず離れず"の距離と解説する。「食う」は本来不要だが、この句は捨て石の動詞として季語へ繋がっていき、この判断もさすがだと終始称賛した。
●[47] @20/07/23◆お題:
封筒『二枚目はベランダで読む手紙かな』第4回炎帝戦予選B1位(決勝進出)添削なし
「ベランダ」は夏の季語。「皆さん、場所を変えて読みたくなる手紙を貰ったことはありますか?」と自己陶酔しながら問いかける一句は、恋文や家族・友達から来た手紙を1枚読み終わった後、内容に相応しい場所で自分を整えて2枚目を読みたくなる心情を描写。予選1位となるも、「好きじゃない(梅沢名人)」「メチャクチャ腹立つ(藤本名人)」「押し寄せるナルシシズム(ジュニア名人)」と総スカンを食らう。先生は、本人のもつ世界観を気持ちよく描写して詠んだ一句と前置きし、上五「は」の使い方を称賛。一枚目はリビングなどで何気なく封を切ったが、二枚目だけは場所を変え、ベランダでしみじみと読むかもしれないと味わいを語る。手紙の内容ではなく、季語と「は」だけで読み方を伝えようと挑戦し、「かな」の詠嘆も嫌味なく手紙を見せていると終始絶賛した。名人10段としては唯一予選からの参加となったが、余裕の1位で決勝を決めた。
●[48] @20/08/06◆お題:
ポイントカード『蛾の骸(むくろ)ポイントカードで掬いけり』第4回炎帝戦決勝5位(次回シード権なし)添削後
『蛾の骸掬うポイントカードの端(は)』
季語は「蛾」。生きているような綺麗な蛾の死骸があった。蛾の感触が嫌なためティッシュで握って捨てたくない時、あまり使ってない平べったいポイントカードで死骸を掬って乗っけてゴミ箱に捨てる光景を詠んだ。「日常にある死をこんなにリアリズムで描けますか!?」と低評価にキレてしまう本人。東国原名人が2つの弱点を的中させる。先生は「目の付け所はさすが」と評し、中七を8音にしてまで手段の助詞「で」を入れる是非と、最後の詠嘆「けり」がどこまで効いているかの是非の2つを問題点に挙げ、ほんの小さな傷レベルの問題だと解説。「で」「けり」を同時に解消することは可能とし、「蛾の骸」のアップから始めた後、次に掬う動作を入れるのが得策だとして語順を変える。「端(は)」を最後に置き、ポイントカードの端のアップで一句が終われば、ダントツで1位だったと語った。今回もシード権を獲得できずに終わった。
●[49] @20/09/03◆お題:
お箸『秋朝やバタにフォークの穴四つ』名人10段★3へ
1つ前進添削なし
季語は「秋朝(しゅうちょう)」。爽やかな秋の朝食で、パンに塗るバターにフォークで刺した穴が開いているだけの描写句。フォークで切り取った場面や、パンに塗ってフォークを離した時の場面など、どんな物語かは僕からの余白のプレゼントだと村上節に語った。査定ポイントは、バターではなく「バタ」を選択した是非。「生活感が薄まっておしゃれ」と評す先生は、「穴四つ」が俳句のタネになるのを作者は良く知っていると認め、「バタ」と敢えてする理由を2つ挙げる。①中八を避ける、②生活感が微妙に変わり、日常感が弱まる効果がある、と解説し、「スウプ(スープ)」「スプン(スプーン)」などの表記も同じ効果があると例示。「バタ」は爽やかで美しいお洒落な食卓のイメージを演出した効果があり、「穴四つ」に焦点を絞っていく語順も褒める。季語が動く(別の季語でも良い)と思う視聴者に対し、村上ワールドとして選ばれた季語だと考えるべきと呼びかけた。初の星3つに到達し、東国原名人に並んだ。
●[50] @20/11/05◆お題:
ポンプのノズル『秋麗チョコスプレーの淡き影』第4回金秋戦予選C2位(予選敗退)添削後
『秋麗チョコスプレーに淡き影』
季語は「秋麗(うらら)」。ドーナツやチョコバナナなどに振りかかっているカラフルなチョコスプレーの影に着目した一句。良い天気の日だとドーナツの影は下にできるが、そこにチョコスプレーの影は(明確に)出ない。物体のチョコスプレーは絶対に影があるはずで、チョコスプレーの影があると気付ける麗らかさは良くないかと思って詠んだとハニカミながら語った。浜田すら黙る展開に、「せんせ~い」とセルフで勝手に進行する本人だったが、梅沢名人に中七の助詞「の」が悪く、「に」が良いと指摘される。先生は、兼題写真からの発想の企みにより、他人が絶対に思わないものを書くのはさすが名人だと褒め、秋の麗らかさの中で小さなチョコスプレーに淡い影がある気付きが良いと「発見」を俳句にする姿勢を称賛。しかし、作者の話を聞いての判断で迷った点が「の」だと指摘し、梅沢名人に拍手を送る。「の」でも映像化され、チョコスプレーの淡い・濃い・小さい・大きい影と様々な影の中の「淡い影」に着目した句で、十二分に成立していると押さえる。ところが、本人は「こんな小さな影に気付くことのできる自分に少し嬉しくなった」と語ったため、その表現であれば助詞を「に」にすべきだと添削例を示した。本人は「違うんです。それは思いであって着地点は『の』です」と反論するが、「うん、お疲れ」と返して先生は解説を終わらせた。本人の解説と表現とに齟齬があると判断される形で、補足2位の中で進出句の候補に入るが、ジュニア名人にその座を明け渡され、悲運の予選敗退に終わった。
●[51] @21/01/14◆お題:
輪ゴム『一月やゴム動力のプロペラ機』第4回冬麗戦2位添削なし
季語は「一月」。ゴム動力のプロペラ機の映像があるが、1年の始まりである1月の中にエネルギーと動きがむき出しなプロペラ機が飛ぶことに思いを馳せるのに凄い詩があると思ったと語った。藤本名人は「『一月』じゃなくてもいい。季語が動く。『二月』『五月』『七月』でも良いんじゃないかな、うん。それを変えれば優勝」だと提案し、本人と口論する。先生は「そこは大事な議論の点」と同意し、後半のフレーズに対して季語は色んな風に動く点を押さえる。「一月」は四音で、他に「三月」「六月」「七月」「八月」「十月」と候補が6択になるが、「三月」は春の明るさ、「六月」は梅雨の湿っぽさ、「八月」は終戦や原爆のイメージがあり、「プロペラ機」が他の意味を持ち始めると解説する。「一月」を自信を持って選ぶことが作者の一番大事な決断で、「プロペラ機」の物を提示しただけだが、新年の気配を含んだ1月の空へ向かってゴムを巻く動作や指の感触を読み手は思い浮かべると作者の選択を絶賛。「この人はここからきっと本物になる」と述べ、本人は「いや~、本物間近です」とナルシスト風に返した。
●[52] @21/02/18◆お題:
雲丹の軍艦巻き『海苔篊の等間隔に暮れかかる』第5回春光戦予選A2位添削なし
季語「海苔篊(のりひび)」は海苔の養殖に使われる資材。それが等間隔に並んで夕陽が暮れようとしている光景を詠んだ一句。単純にそれだけのデッサンだと本人が語ると、ジュニア名人も「デッサン」と本人の台詞をいじるが、梅沢名人や先生から「置きに来た」と言われ、図星の本人。先生は、海苔篊の養殖の発想を褒め、「等間隔に」までで広さが表現され、「暮れかかる」の複合動詞で時間経過も表現できたと押さえる。丁寧に季語にデッサンしようとする配慮を褒め、このような風景を詠んだ句が無いわけではないと弱点を指摘する。光景を言葉で"デッサン"できる実力をいじりながら認める先生だが、本人は今回も予選補欠に回ることに。
●[53] @21/03/25◆お題:
じゃんけん『けいどろの牢に鐘楼花の寺』第5回春光戦決勝4位(次回シード権あり)添削後
『けいどろの牢は鐘楼花の寺』
季語「花」は桜のこと。「けいどろ」は警察チームが泥棒を捕まえたら牢に入れる子どもの遊び。牢と言われるところが、寺の鐘楼で、「鐘楼」とあれば、「寺」は不要と捉えられると思うと語ると、擬音で誤魔化し始める本人。梅沢名人は助詞「に」の誤用を鋭く指摘する。先生は、「鐘楼」とあれば「寺」だというのは分かり、言葉の重複を指摘する人もいるが、「鐘楼」に子どもたちがいる少し狭い画角に対し、「花の寺」が大きくバンと映る映像効果は見事だと称賛。問題点は御大の指摘した中七「に」で、「牢に」では文脈が「牢に鐘楼を使ってます」となり、散文的に意味合いになると指摘する。何の助詞に直すべきか問う先生に、梅沢名人は最初と戸惑いながらも正解を答える。「は」に直すことで「牢は鐘楼です」という文脈になり、しかも小さな可愛さも出てくると解説。ミスがなければ、今日は1位だったと残念そうに語った。本人は「牢に鐘楼が使われていることを気付けた自分を表すには、『に』だという説明が前にあったんで、あえて『に』だったんですけど」と食い下がるが、先生は「秋麗チョコスプレーの淡き影」の句を「に」に添削した時に、「私が『に』って言ったから安易に『に』だなと考えたんだと」と感触を述べると、「安易じゃないです」と本人は笑って返した。
●[54] @21/05/06◆お題:
昼寝『若葉風寝言は母国語の庭師』名人10段★2へ
1つ後退添削後
『母国語の寝言庭師へ若葉風』
季語は「若葉風」。流暢な日本語を喋る外国人の庭師が、昼食後の昼寝で語る寝言だけは、母国語を使うことに着目して詠んだ一句。査定ポイントは助詞「は」「の」の叙述の是非。結果は3度目のボツ査定。「季語に対して配慮が足りない!」と評す先生は、素材の良さ、「若葉風」の季語の持つ優しい感触、後半の状況に詩がある着眼点を称賛する。問題点は、季語をどこまで主役に出来ているかという小さな配慮の欠如と指摘し、ワンポイントアドバイスを行う。言葉には質量があるが、季語「若葉風」に対して「寝言」「母国語」「庭師」の方が重いという点、最初に「若葉風」・最後に「庭師」がくることで、読み切った際に季語の印象が弱まる点から、語順の転換を指南する。「ちゃんと風を吹かせてくれたら今日は大拍手だった」と述べる先生は、「母国語の寝言」と「庭師へ若葉風」と2カットに添削。方向を示す助詞「へ」によって、若葉風がスーッと吹くのが大事なポイントだったと残念そうに述べた。食い下がる本人は持論を展開し、「は」を添削で消したくかったことを告白。寝言以外は、母国語ではないことを「は」で表現したかったと意図を述べるが、「いや、言わなくても分かります」と評す先生に成す術なし。本人は最終的に先生に謝罪する展開に。
●[55] @21/07/22◆お題:
Tシャツ『まだマシなTシャツを貸す夜の雷』第5回炎帝戦3位(60名中)添削なし
季語は「夜の雷(らい)」。他人が家に来た際に、Tシャツを貸すことがあるが、あいにく綺麗なTシャツがないため一番マシなシャツをその人に貸す。「これを貸すよ」と手渡す瞬間にピカっと雷で窓の外が光り、一瞬の沈黙の後に雷の音が鳴るが、この2人が一体何を思うのかは読者の想像次第だと語った。ジュニア名人は「村上らしくて上手いが、好きではない」とあっさり。先生は上五・中七のフレーズに非常にリアリティがあると述べる。「まだマシな」と普通の言葉を用いた自信も良いとし、特に「貸す」の動詞の選択を褒める。借りる方と貸す方の2人の人物がいると分かり、最後の季語により「びしょ濡れ」の状態で部屋にやってきたのではないかと読みを深めると解説。これは下五で評価が分かれ、なぜ貸すかという原因・理由が説明されるタイプの句で、ここが損をしていると判断される可能性もあるが、物語が動き出す起点になると判断したと語る先生。作品の評価の分かれ目がハッキリしている句だと総括した。
●[56] @21/08/26◆お題:
宿題『エンターキー中指で押し涼新た』名人10段★2で
現状維持-添削なし
季語は「涼新た」。パソコンで作句も行う本人の一句。キーボード右側にあるエンター(=Enter)キーは普通は小指で押すが、「はい、終了!」と達成感のある時は中指でエンターキーを押す。作業が終わると、初秋の少し涼しくなる季節をより強く感じ出すと語った。森口瑤子は解放感に実感がある点を褒める。査定ポイントは「で」「押し」の叙述の是非。「評価が分かれる句」と評す先生は、問題点に中七の「で」「押し」の散文的叙述を挙げる。しかし、季語「涼新た」により、作者が意図的に書いた点も読み取れると述べる。映像を持たない皮膚感に訴える時候の季語を置き、敢えて指の感触を示すフレーズと取り合わせたと分析した先生は、作者の意図を尊重し、添削はせずに星を取らないでおく優しい判断だと総評を述べた。悔しそうな本人は、「俺だったら2つくらい星取るぞ」と梅沢名人に罵倒される羽目に。
●[57] @21/09/02◆お題:
実家の柱『車庫入れの誘導は父秋日和』名人10段★2で
現状維持-添削されず
季語は「秋日和」。車の免許取り立ての子が父親に車を借りて車庫入れの練習をし、父が誘導する場面を詠んだ一句。あまり話さなくなった父が「運転に関してはオレの方が先輩だぞ」と威厳を取り戻しており、それが「秋日和」と相性が良いだろうと語った。査定ポイントは季語「秋日和」の是非。「季語が印象に残らない!」と評す先生は、上五・中七で状況が全て伝わる上手さを褒める。本人が思い描いた通りの映像をありありと書いているのは10段だと認めるが、ポイントは「秋日和」の季語の評価だと語る。可もなく不可もないが、主役になる季語としては少し弱い印象があり、10段で星を狙う立場であれば再考して欲しいと提案する。「星獲りましょうか」と言い出す浜田に、「おかしい。そんな風に星やり取りするのヤバイですって」と某ギャンブル漫画を彷彿とさせる台詞を吐く本人。添削はされない結果となったが、「これでもね、じゃあ何がベストって正解がないのが難しいんです」と本人は納得しながらも考えこむことに。初めて星持ち現状維持が2回続く厳しい結果になった。
●[58] @21/09/30◆お題:
バッテリー切れ間近(携帯電話の電池残量)『発電機運ぶ赤鬼村祭』第5回金秋戦決勝5位(次回シード権なし)添削なし
季語は「村祭」。お祭りで人手が足りないのか、鬼役の人がバッテリーの発電機を運んでいる内容の一句。「赤鬼」とあるから「鬼役と分からない」ではないかと言われれば、それはそれで面白いかもしれないと語った。自身の1つ下の順位の梅沢名人は「普通の俳句」だと評す。先生は語順を考えられた句だと評す。「発電機」という物、「運ぶ」動作に続け、「赤鬼」が出る小さな意外性があり、最後に「村祭」の光景だと分かると解説。添削が必要な句ではないが、色んな村の行事・町の催しで、神主や天狗役の人が運ぶという発想がないことはなく、タイトル戦においての類想感が損したと総評する。しかし、急に梅沢名人が「ヒドいんじゃない!俺の時はガンガン直しといてさ。これも直せば良いじゃん!」と未練たらたらに反論するも、「俺のは直さないといけないから直しただけです」の先生の言葉にぐぅの音も出なくなる梅沢名人だった。
●[59] @21/10/14◆お題:
弁当の店頭販売『ふりかけに詳しきナース黄落期』名人10段★2で
現状維持-添削なし
季語は「黄落期」。兼題から病院の食事に発想を飛ばした一句。病院の食事はたいそうではないが、ふりかけでグレードアップする看護師がおり、病院食が物足りない患者にふりかけを教えることもある。ご飯自体が美味しくなる、会話で病気やけがを治す以外に、看護師さんの美しさがあるのではないかと感じたと語った。査定ポイントは季語「黄落期」との取り合わせ。「意図は分かるが…」と評す先生は、フレーズの作り方に言及し、前半の12音だけで意図する場面を切り取れる力量を褒める。フレーズに対し、季語「黄落期」との取り合わせが良いか否かが議論すべき点だと述べる。「黄落期」で黄色い"のりたま"のような感じがし、このミスマッチが少し面白いという先生自身の見解を語るも、季語が主役に立っていないと考える読み手が多いとも述べる。当たり障りのない形が「現状維持」だと総評を述べた。平場最下位となったくっきー!は「『黄落期』惜しいですね。韻踏んだ方が良かったかも」と自身の失敗句になぞらえて笑いをとった。3回連続の星持ち現状維持と厳しい査定が続く結果となった。
●[60] @21/11/25◆お題:
秋の東京駅『銀杏のひかり肴に一口目』名人10段★1へ
1つ後退添削後
『ぎんなんのひかり一粒まず一献(こん)』
季語は「銀杏(ぎんなん)」。見るだけでなく、食べても美味しい銀杏は粒自体に光沢があり、それを見て「うわ~良い季節になったじゃん!」と言いながら、光をつまみに酒をグイっと飲む様子だと語った。"じじいの一言"と前置きして「食べ物は美味しそうに書け」と指摘する梅沢名人は、「一口目」が酒ではなく銀杏だと思い込み本人に追及される。査定ポイントは「肴に一口目」という叙述の是非。「後半が雑!」と評す先生は、「肴に」の言い方が雑で「今回、手を抜いてきたんじゃないかと思うくらい雑だった」と厳しく窘める。「銀杏の光そのものを肴にするというイメージ」だと本人に確認する先生は、光を映像として見せるよう提案。「肴に」を消して、下五を操作して酒を飲むことが読み手が分かるように書くべきだと指南する。上五を「ぎんなんの」と平仮名にし、一粒手に取る印象を「ひかり一粒」として、光の映像がアップに寄るような味わいに。最後に「まず一献(いっこん)」と添削し、「もうちょっと上手になってから一緒に酒を飲みましょう」と反省を促したが、不貞腐れた本人は「飲むか!」と即座に否定し、浜田に怒られる羽目に。一時星3つあったが、現状維持を挟みながらも番組初めて星を2連続で獲られてしまった。
●[61] @21/12/16◆お題:
ヒートテック『冴ゆる夜やショウウインドウに黄の鞄』名人10段★2へ
1つ前進添削なし
「冴ゆ」は寒さで空気が澄み切った感じを示す冬の季語。寒さが醸し出す透明感のある冴ゆる夜、ショーウインドーに黄色のカバンがポツリと光が当てられただけの景色だが、ショーウインドーに灯りが残る黄色のカバンが、冴ゆる夜をなんとも綺麗にしてくれる、と自己陶酔して語った。梅沢名人は「ちまちました俳句」と述べて中八を指摘し、気に入らない様子に。査定ポイントは「黄」という色の選択の是非。「やっと季語を信じてくれた!」と評す先生は、「冴ゆ」の季語を最初に解説。冷え切った空気の中で感じる寒さに加え、「夜」でさらに気温は低くなり、「や」の詠嘆で"ああ、なんと冷え冷えと冷え切っている夜だろう"という意味でカットが切れると解説。「ショウウインドウ」で、夜に浮かぶ光の箱のようなものがあり、そこに黄色の鞄がポツンとある光景を描き、ライトの中に浮かび上がるこの黄色と、「冴ゆる夜」との対比を狙った点を紐解く。査定ポイントとなった選ばれる色の種類として、青・紫・黒など寒色系を選ぶか、赤・黄・橙など暖色系を選びかで一句の表情は物凄く変わると解説。「黄」を選ぶことで「黄」と「夜」の対比は狙い通りにしっかりとあり、透明感のあるものというところも作者は分かってやっていると述べて称賛した。1年ぶりに星を1つ獲り返すことに成功した。
●[62] @22/01/13◆お題:
人生ゲーム『寅の尾を目指す迷路よ年賀状』第5回冬麗戦9位(14名中)添削後
『寅の尾がゴール年賀状の迷路』
兼題から正月の季語「年賀状」に描かれる迷路へ発想した一句。年賀状を手書きで描いた子どもの頃、干支の中身を迷路にして、描いた絵を送っていた過去を述べる本人。「寅の尾を目指す迷路」で年賀状のおめでたさを表現したと語った。先生は、「年賀状」の絵柄を見ていない読み手には映像が立ち上がりにくい問題点を挙げる。説明的な「目指す」を削除し、本人が語った「寅の尾がゴール」を用いて添削した。兼題に対して文句を言っていた本人は「もう~、ちゃんと直すのやめてよ、もう~」と馴れ馴れしくコメント。タイトル戦は9位と不本意な成績に終わった。
●[63] @22/01/27◆お題:
肉まん『白鳥の波紋や御御籤をひらく』名人10段★3へ
1つ前進添削なし
季語は「白鳥」。兼題の肉まんを見ていたら真っ白なフワフワ感から白鳥に見えて来たと嬉しそうに語る本人。白鳥の周りにある波紋は美しいが、おみくじを開く時のゆっくり加減や祈りなどの印象を取り合わせることで、魔法がかかると独特な節で述べた。査定ポイントは句またがりの「や」を選んだ是非。喜びのあまり俳句を叫ぶ本人。「鮮やかな映像展開!」と評す先生は、兼題写真の「肉まん」から白鳥を発想した点が謎だったことを明かすが、良い句に間違いないと述べる。「白鳥の波紋や」で"なんと美しい波紋だろう"と詠嘆し、カットが切り替わった瞬間、おみくじのアップの映像で、おみくじをゆっくり開くささやかな時間が切り取られた効果を称賛。「や」によって季語「白鳥」と「御御籤」という関係ないものが取り合わされ、本人の述べた"魔法"が、言葉同士が火花を散らすということだと解説した。本当の季語を信じるというのはこういう句で、大変嬉しいと述べた。連続前進で遂に星3つを取り戻した。
●[64] @22/03/17◆お題:
階段orエスカレーター『卒業や階段に階段の影』第6回春光戦予選C1位(決勝進出)添削なし
季語「卒業」と階段に階段の影がかかる映像をシンプルに書いた一句。階段は学校の象徴として素敵で、未来感や過去感、ループ感があり、影があることに学校生活の過去と未来へ続く明るさというものを表現したと語った。東国原名人は「決勝なら3位以内に入る」と褒める。先生は、季語+「や」+12音の基本中の基本の型を守り、季語「卒業」をまっすぐ主役として押し出した効果を解説。卒業の日に今まで何気なく毎日利用した階段をしみじみと見る印象で、当たり前の光景への気づきと季語との取り合わせの接点がある点を称賛する。「卒業や/階段の影/階段に」なら定型になるが、「に」で終わるより「影」で終わる方がずっと印象が深く、五五七の型が成功したと述べる。階段が持つ未来・過去のイメージに「影」が入ることで卒業の別れのイメージや切なさなどが印象として微かに触れ合うため、「に」で終わるより「影」で終わる方が映像的にも得だと解説。「全部わかってやっているのだから、ホント嫌味な男だよね」と最後にツッコミを入れるも、見事に有無を言わせぬ形で決勝進出を決めた。
●[65] @22/03/31◆お題:
ハプニング『光風や控え選手のペンの減り』第6回春光戦決勝3位(シード権なし)添削後
『風光る控え選手のペンの減り』『春風や控え選手のペンの減り』
季語「光風」は「風光る」の傍題。試合中にハプニングが起きれば出番が来る可能性のある「控え選手」に発想した一句。試合に出場できないが、データの分析など大切な役割を担う一人という思いを、「控え選手のペンの減り」の映像と「光風」という明るいイメージの季語と取り合わせることで表現したと語った。皆藤名人は着眼点を褒めるも、梅沢名人が季語が似合っているか微妙だと指摘。先生は「描写がキチンとできている」と評し、スポーツ名は不要でも伝わると作者は分かっていると述べる。評価の分かれ目は「光風や」で、「や」の切れの必要性や詠嘆の強い思いがある本人の意図を汲むが、「控え選手」に対しては素直に「風光る」で良いと解説。詠嘆を用いるなら「春風や」が似合っていると述べた。ここで、指摘を当ててご満悦の梅沢名人がカメラ目線にご機嫌ポーズを取るが、目に触った先生が梅沢名人を邪魔だと注意し、一方的に撥ね退ける。自宅療養でVTR出演となった本人は「凄い良いと思ったんだけどな。何か3位なのに何かなぁ、もっといっぱい褒めていいけどなあ」と納得いかず、シード権も得られない結果に落胆した。
●[66] @22/04/21◆お題:
美容院『春の色絵本の並ぶ美容院』名人10段★4へ
1つ前進添削なし
季語「春の色」は「春光」の傍題で、光り輝く春の日差しや春の風・景色などのこと。美容院に子を連れてきたお母さんが髪を切っているが、そのような所に絵本があり、「絵本が並ぶ美容院」で人物を描かずに明るさを描きたかったと語った。査定ポイントは季語「春の色」の効果の是非。「(本当に上手い)」と評す先生は、季語の問題を最初に挙げ、「春の色」「春光」「春景色」のどれでも句の全体の意味が変わらない点を押さえる。その理由として、後半のフレーズ「絵本の並ぶ美容院」がとても秀逸な点を挙げ、小さな部分をスケッチできる能力を称賛する。上五を「春光や」とすると詠嘆が強すぎて、後半とのバランスが少し崩れてしまい、「春景色」だと景色が大きすぎて後半が損すると述べ、「春の色」が適切だと判断できると解説する。"春らしい色合いの絵本が並んでいる"、"若い子ども連れのママが集う美容院"と読み取れる点も褒め、季語の選択を吟味の上で確信を持って使ったに違いないと結論付けた。いよいよ永世名人まで星1つに迫った。
●[67] @22/05/19◆お題:
町中華『空焼きの中華鍋背に胡瓜噛む』名人10段★4で
現状維持-添削されず(別案「
中華鍋空焼き蒜を剥きつつ」)
季語は「胡瓜」。「空焼き」は中華鍋の表面に塗られた錆止めを焼き落とす作業。空焼きは凄く強い火で長い時間焼くが、その間に胡瓜を噛む光景だという本人。凄い炎の状態と胡瓜の瑞々しさの相性が良いと思うと語った。厨房の熱や音が伝わると褒めるは藤本名人。査定ポイントは「空焼きの中華鍋」「胡瓜噛む」の言葉の質量のバランスの是非。「胡瓜が軽い」と評す先生は、「空焼き」「中華鍋」がどちらも重い質量・熱量を持ち、「胡瓜」にカリカリとした気持ち良さ・冷たさがあると解説。明らかに対比を狙っており、狙い通りに言葉がきた点を褒める。しかし、永世名人認定への迷いが残ると述べる先生。言葉の質量をもう少し寄り添わせる季語を持ってくるべきとし、別案「中華鍋空焼き/蒜(にんにく)を剥きつつ」を提案。にんにくを剥き、空焼きが済んで支度が整ったらこの人が何の料理を作るかを思わせられ、季語の質量が釣り合うと解説。永世名人に向けて、文句無しの一句を待ちたいと期待を述べた。永世名人認定へ王手の状況を続けたまま、次回挑戦に持ち越された。
●[68] @22/06/02◆お題:
突然の雨『夕立や楽譜にカンマ書き入れる』永世名人(22句)へ
1つ前進添削なし
季語は「夕立」「カンマ(,)」は演奏の息継ぎ・休止を意味する記号。楽譜にカンマを書き入れている静かさと、外が夕立であるという感じが取り合わせに凄く似合うと語った。ちまちました俳句が気に入らないと述べる梅沢名人と応酬に。査定ポイントは「楽譜にカンマ書き入れる」と季語「夕立」がどう響き合うか?。「季語の力を信じている!」と評す先生は、「カンマ」など未知の単語は、読者の誠意として調べるものだと前置き。作曲家が意志を持って書き入れている時は、作曲家の脳内には音楽が溢れているはずで、夕立の強い雨の気配が押し寄せてくると、カンマを書き入れる指先に夕立の力が及ぶような感触があると語る。季語を信じており、「夕立や」の詠嘆がちゃんと響き合うと称賛した。さらに、「楽譜」「カンマ」「書き」の「か」の音をポンポンと入れ、「か音」で韻律を作る隠れ技も評価した先生の解説に、本人は「見つかっちゃったよ」とハニカミながら対応。番組3人目の永世名人となり、梅沢名人からも祝福された。50句の句集完成に向けて、22句の傑作が認定された。
●[69] @22/06/23◆お題:
ガッツポーズ『延長の末に引き分け夏の月』永世名人22句で掲載
ボツ添削後
『延長の末に引き分け月涼し』
『延長に引き分け夏の月赤し』
季語は「夏の月」。「どっちが勝つんだ?」と見守った試合が結局引き分け、試合の熱気が収まって夏の月の涼しさにも気づく光景だと語った。梅沢・ジュニア名人に普通の俳句だと指摘され、両者から「冗談ポパイのほうれん草」「あっさり村上チンゲン菜」と揶揄される。「フツー」と評す先生は、普通以外の何物でもないタイプの句だと前置き。引き分けが残念なのか、善戦したのか、その心情を季語で表現してこその永世名人だと忠告する。季語を傍題の「月涼し」に変えれば、勝負にこだわってない様子や、「よく引き分けた」と肯定的な印象を与えると解説。一方、悔しさをにじませるならば、語順を変えて「夏の月赤し」で着地し、暑苦しい・不快な印象を出すべきだと添削。最後に「永世名人をね、あなた舐めたらいけませんよ」と叱責した。本人は「舐めてないですよ」と言い返すも、初めてのシュレッダーを食らった本人は、「いや、やっぱり不愉快ですね。なんで、あんなことするんですかね。」と演出に不満をこぼした。
●[70] @22/07/14◆お題:
アイス売り場『ディッシャーを持って無敵な素足の子』永世名人22句で掲載
ボツ添削後
『ディッシャーを手に無敵なる日焼の子』
季語は「素足」。丸くアイスを掬い取る器具「ディッシャー」を子どもの頃に使いたかったと述べる本人。家で大きい箱のアイスをディッシャーで掬う際、器具を持つだけで無敵になった印象で、「素足」でさらに夏の元気さが出るシンプルな映像だと語った。「店員なの?お客なの?」と評す先生はさらに、「アイスクリーム売り場か?家の中か?」も合わせて聞きたいと述べる。パッと読むと、店内に並ぶアイスクリームを「どれでも掬って良いよ」「アイス盛り放題」と言われた時の無敵感のような印象だが、アイス売り場だと「素足」が似合わず、場所で読みを迷ったと指摘する。「無敵」の表現はさすがで、子の表情・心情が全部伝わるが、それだけに季語「素足」と「無敵」のバランスが釣り合っていないと指摘を続ける。バランスは考えて頂きたいと忠告する先生は、「無敵」に釣り合う腕白そうな季語を尋ねると、本人はすぐさま「『日焼』」ですか?」と正解を答える。終始不貞腐れる本人だったが、「素足」にした理由を先生に問われると、「なんか、素足の方が好きなんですもん」と急にはにかむ。2回連続のシュレッダーとなり、「ちょっと永世名人なってフォーム崩れてます」と反省する本人だった。
●[71] @22/07/21◆お題:
メール『風鈴鳴る千の躊躇を弔って』第6回炎帝戦15位(58名中)添削されず
季語は「風鈴」。メールの文面を作るときの迷いや躊躇を風鈴が弔って鳴いているのではないかという思いを詠んだ一句。先生は、持っている詩の純度は決して悪くないと述べた上、「千の躊躇を」の観念に「弔って」という比喩が来たことで、「風鈴」という季語が少し弱くなったことが勿体ないと指摘。もう少し兼題のテーマ性にも寄せるべきだったと減点ポイントを述べた。さらに、「最後に七七をくっつけて短歌に仕上げると凄く良い作品になる」とも忠告した。タイトル戦で出演者中最下位となり、俳句も番組内で発表されない屈辱を初めて味わった。
●[72] @22/07/28◆お題:
水族館『吠えたけるアシカのミリア夏の雲』永世名人23句目に
掲載決定
添削なし
季語は「夏の雲」。実際に都内の水族館のアシカショーを見て詠んだという一句。「ミリア」はアシカの名前で、「吠えたける」と「夏の雲」の生命力が似合うと語った。初の掲載決定で自身も吠えたける動作を見せる。「カメラワークが巧み」と評す先生は、語順も考えられておりさすがだと褒める。「アシカ」が出た瞬間に読み手の脳内に再生され、「ミリア」の名があるため飼育されているものだと分かり、アシカショーの光景がありありと出てくると解説。遠近感・奥行きの作り方においても、ミリアに焦点を当てた後、ポンと背後の主役の季語「夏の雲」をドンと映せるのが、永世名人の句だと称賛した。
●[73] @22/08/18◆お題:
サービスエリア『炎天やドットの粗き標識車』永世名人24句目に
掲載決定
添削なし
季語は「炎天」。標識車は「事故」「工事中」などと電光掲示板で表示する車。標識車の掲示板のドットが粗い光景だが、渋滞で車があまり進まないからドットに注目できたのか、暑さによってイラつきがドットを粗く感じさせたのか。俳句を読んだ人が思える、みんなのスイッチになればと思って作ったと語った。志らく名人は「見た光景をそのまま書いている」と素朴さを評価。「やっと季語を信じてくれたね」と評す先生は、兼題写真から色んな種類の車への発想の方向性を押さえる。標識車の表示は遠くにいるほど明確に見えるが、「粗い」という気づきこそが俳句の種だと解説。暑苦しいオレンジ・赤の色合いがイメージされる上に、渋滞でイライラするマイナスの気持ちを後半で描き、季語「炎天」を表現して季語を主役にしたと述べる。さらに、今まで季語が嫌いだと言っていたが、やっと季語が好きになったと信じたいと先生は添えた。本人は嬉しそうに「ホント、(自分の気持ちを)仰ってくれてるなあと思って。季語大好き!」と無邪気に喜んだ。
●[74] @22/09/22◆お題:
[霞ヶ浦の鉄道]北浦橋梁を走る列車(茨城県)『秋夕焼へ音失っていく列車』ふるさと戦①(茨城)1位★
添削なし
季語は「秋夕焼」。列車が遠ざかれば当然音が小さくなっていく。写真に入れたい情報が音だと思い、そもそも音なんて持ってない列車なんじゃないかという映像だけが残ると語った。梅沢名人は「へ」を入れたのが上手いと褒める。先生は、あえて字余りしてでも入れる「へ」が大きな効果があると述べる。自分の位置より遥か向こうの秋夕焼の方向「へ」向かい、「音失っていく列車」で光景が立ち上がるのが見事だと称賛。さらに、写真と組み合わせた"写真俳句"でも、列車の姿を見せながらその後の静けさも表現され、「これならば、ポスターを飾られても茨城に迷惑かけることはない」と1位のPRポスター掲載を祝福。「茨城県ふるさと俳人」の証として黄金のタスキを「あんこう」の髪飾りを載せた女性に贈呈された。
●[75] @22/10/06◆お題:
店のオープン『ピザ窯の奥に小さき火朝寒し』永世名人25句目に
掲載決定
添削なし
季語は「朝寒し」。ピザ屋の朝の開店準備の光景。まずピザ窯に火をつけるが、小さい火の状態の時に秋の「朝寒し」という季語が似合うとハニカミながら語った。才能ナシのニューヨーク嶋佐に状況をそのまま詠んでいるだけだと酷評されるが、結果は掲載決定。「季語で場面が展開している!」と評す先生は、「奥に」の場所と「小さき火」と描写した点を褒める。ピザ窯の奥にある小さな火は、前の日の熾火(おきび)のように灰を被ったものがあり、朝の空気によってパッと火が戻り、そこに新しい薪がドンドン入れられて用意が整っていく光景に読んだと語る。季語の冷たさや窯に残るほんのりとした熱、「小さき火」と思った時に、季語が鮮やかに立ち上がってくる句として評価をしたと称賛。最後に「季語を信じてくれてありがとう」とエールを送り、3連続掲載を祝福した。
●[76] @22/10/13◆お題:
大谷翔平『大谷の球大谷が打つ案山子』第6回金秋戦決勝2位(シード権あり)添削なし
季語は「案山子(かかし)」。毎年開催の案山子コンクールで時の人となった人物も案山子として披露されるが、二刀流の大谷選手の場合はピッチャー・バッターと両方の姿があり、夢の大谷vs大谷が実現されている光景。案山子は農作の神様の扱いもあり、その豊かさも季語に含まれていると語った。横尾名人はユーモアがあると称賛。先生は、二刀流としてはあり得ない場面で、下五で「案山子」だと明かすアイデアがさすがだと褒める。これだけの活躍をしている選手のため、案山子アートが全国にどれだけ並ぶかという世相が表現された点も称賛する。順位付けに本当に悩んだと述べる先生は、類想の点を指摘。俳句の世界で、先に「ゴジラ」「マンモス」などを出して、最後に案山子だと明かす「案山子オチ」のような発想が全くないわけではないと述べ、そこが賜杯を逃した点だと指摘。「ホントにケチでもつけないと順位がつけられない」と述べ、7位に沈んだ御大に対し、「おっちゃんがゴミの句をちゃんと作らなかったからだと思う」と牽制した。優勝できない悔しさのあまり、ランキングシートに登る際ズッコケて装飾を破壊する「ヒザ神」ぶりが発揮され、足の痛みだけが残ることとなった。
●[77] @22/12/01◆お題:
カラオケ『暖房や(間奏約30秒)』永世名人25句で掲載
ボツ添削後
『暖房が熱い(間奏30秒)』
季語は「暖房」。1番と2番の間に間奏があり、カラオケのモニターに「(間奏約30秒)」と出てくる光景だが、「暖房」でその時間が暖かいなどと意識するなど、季語にこの場面を託したと語った。ジュニア名人は芸人らしい切り取り方を褒めるが、梅沢名人は「約」が不要と指摘して真っ向から本人と対立する。「まじめさで損している」と評す先生は、発想の面白さを強く褒め、カラオケと書かずにカラオケを思わせる手法として大変良いアイデアだと述べる。勿体ない点はズバリ「約」だと指摘して、梅沢名人がカメラで映すように訴える。作者は事実に誠実に書くべきと判断したが、俳句では文芸上の小さな嘘が作品として力を持ち出すことがあると解説し、フィクションに寄せて季語を補強すべきだと指摘。添削は「暖房が"熱"い」と念押し。先生は、歌詞の一番を熱く歌った照れも含めて「熱」の字にした方が俳句としての面白みが増えると述べた。本人はシュレッダー中に「アイデアは素敵だったって覚えといて下さい」と悔しそうに語った。
●[78] @22/12/15◆お題:
観光バス『補助席に場札と蜜柑バスの旅』永世名人26句目に
掲載決定
添削なし
季語は「蜜柑」。「場札」はカードゲームで場に置かれる札。貸切バスの旅でワイワイとトランプで遊ぶ際に、補助席を場札を置く机代わりにし、そこに蜜柑もあるというシンプルな光景だと語った。ジュニア名人が下五の情報の重複が気になると指摘。「『場札』が効果的!」と評す先生は、「補助席」でバスと分かるが「バスの旅」を可とするかが評価の分かれ目だと押さえる。中七の賑やかさを補填する意味で「バスの旅」だと念押しする働きとしてマイナスにならないため許容できると述べる。「場札」で色んなカードゲームを思い、トランプ・UNO(ウノ)なら程度若い世代だが、花札なら缶ビールを飲むオジサン世代の空気感が生まれ、さらに「蜜柑」を中七に置いて主役にできる確かな技を称賛する。最後にハニカミポーズをとる本人を注意した。イラっとする顔が気に入らない浜田にシュレッダーボタンを押すと脅されるも、句集完成まで残り24句とした。
●[79] @22/12/22◆お題:
イルミネーション『垂直にシャンパンの泡クリスマス』永世名人27句目に
掲載決定
添削なし
季語は「クリスマス」。大きな季語に包括される一つである"シャンパン"が、自分の中で光の生まれ変わりだと述べる本人。グラスに注いだシャンパンの中に泡がパーッと垂直に立っていくのが凄く良いと語った。「泡」が引っ掛かると述べる梅沢名人は、「泡が出ないシャンパンがあったら持ってこい」と吐き捨て、シャンパンを開栓する動作に思うとコメント。「『近い』と思わせないテクニック!」と評す先生は、季語「クリスマス」に対して「シャンパン」の取り合わせの距離が「近い」と感じる人もいると前置き。しかし、近さを薄めた工夫の一つが「垂直に」で、立っている何か硬いものを人間の脳は瞬時に思うが、「シャンパン」「泡」と展開する語順により内容が理解できる小技があり、これこそ本人の得意技だと称賛。梅沢名人の指摘については、グラスの中の垂直に上がる泡という小さな発見を大事にすべきだとして退ける。さらに、栓を抜いてバーッとやるのは情緒もへったくれもないと梅沢名人を非難した。見事に連続掲載を決めて2022年を締めくくった。
●[80] @23/01/12◆お題:
ラッキー『雪晴やチャームへ託す運選ぶ』第6回冬麗戦10位(15名中)添削後
『雪晴や金運のチャームきらきら』
季語は「雪晴」。ペンダントの先につけるチャームは幸運をモチーフにしていることが多く、金運をイメージするものなど色々な種類があると語った。森口名人は「雪晴れのキラキラした感じとチャームは凄く良いが、リズムが悪い」と指摘。先生は「雪晴」の綺麗な青空とキラキラする「チャーム」の取り合わせの良さを褒める。問題点は「託す」「選ぶ」の叙述が散文的だと指摘。具体的にどんな運を明確にすべきだと指南し、「金運のチャーム」の後、季語「雪晴」と近寄らせる「きらきら」で描写した。最後に、テーマに沿わせる意識が強く出過ぎて、詩の部分をうっかり落としたというケースだと評した。本人は「だってテーマに一回沿ってないってスゲー」とタメ口で喋り出すが、「『だって』って誰に言うてんねん!」と浜田から厳しいお𠮟りを受けた。
●[81] @23/01/26◆お題:
小湊鉄道(千葉県)『てふてふの過るトロッコ列車かな』ふるさと戦⑤(千葉)2位
添削後
『蝶よぎりゆく吹き抜けの展望車』
季語は「蝶」。小湊鉄道に窓のない展望車があり、蝶が吹き抜けの車両に入って通り過ぎていく長閑さを思って詠んだという一句。藤本名人は写真の「菜の花」に対し、「てふてふ」がベタだと述べる。先生は、藤本名人の指摘に賛同しつつ、季語の探し方は決して悪くないとフォローする。ただ、写真俳句として主役のトロッコ列車が写っているため、後半の情報がダブる方が損だと指摘する。本人が語った「展望車」を句に書いた方が写真俳句として面白くなると指南。「蝶よぎりゆく」の後に「吹き抜けの展望車」と添削した。自分が展望車に乗って「あ、蝶が入って来たわ」と体験することが出来れば、写真と俳句とが何倍もの効果を発揮し、添削例なら1位だったと評した。
●[82] @23/02/02◆お題:
節分『立てかけて清しき巻き簾節替り』永世名人28句目に
掲載決定
添削なし
季語「節替(せつがわ)り」は季節の変わり目で、特に立春の前日「節分」を指す。恵方巻を作る際に用いた巻き簾(す)を洗って乾かすために立てかけるが、その清らかさがまさに「明日から立春を迎える」という空気感と合うと思って詠んだと語った。志らく名人は「清しき」が良いか分からないとコメント。「(謎解きが楽しい句)」と評す先生は、語順の秀逸さを褒める。「立てかけて」から読者が考え始め、中七で映像「巻き簾」を確保し、最後に季語が出た瞬間に、立春の前日に恵方巻を作る際に用いた巻き簾であると読者の謎が解ける展開で、読み手に謎を解く楽しさを提供できた点を称賛する。査定で失敗した他の2名に「俳句は季語とあと1つの物があれば材料として十分」と再確認させた。解説中のにやけ顔を浜田に注意された本人は、先生の解説をメモしない名人らを注意すべきだと話題をすり替えた。
●[83] @23/02/23◆お題:
富士山[横浜の景色]『富士山の胴へふらここ漕ぐ少女』永世名人28句で掲載
ボツ添削後
『富士山の胴を蹴らんと漕ぐぶらんこ』
季語は「ふらここ」。富士山が眼前に大きく見える公園でブランコを漕いでいる少女が、まさに富士山の胴体へ向かっていくような光景だと語った。梅沢名人は「読んでて違和感がある」とほのめかす。「胴と少女どっちが優先?」と評す先生は、富士山とブランコの取り合わせの句を折々見ると述べ、「胴へ向かって」の富士山とブランコの距離の違和感を指摘。さらに、強く漕ぐイメージから、優しい「ふらここ」という言い方と「少女」でテイストがやんわりと変化する点を指摘する。富士山の「胴」を活かすなら「蹴る」など強い動詞にすべきだと忠告する先生は、"蹴ろうとして"を意味する「蹴らんと」を挿入。下五は「漕ぐぶらんこ」と添削した。「胴」が明確に見え、蹴るかのように勢いよいイメージでやりたかったはずだと述べ、はにかむ本人に「そのへらへら笑い」と最後に注意。久しぶりにボツの洗礼を受けてしまった。
●[84] @23/03/30◆お題:
給与明細『保護シール剥がす手応え啄木忌』第7回春光戦決勝4位(シード権なし)添削後
『保護シール剥がす啄木忌の明細』
『保護シール強し啄木忌の明細』
季語「啄木忌」は明治の俳人・石川啄木の命日(4月13日)。啄木の生活苦・庶民の感じの雰囲気と、明細の個人情報保護シールを剥がすときの何とも言えない感触との取り合わせの相性が良いと思って詠んだと語った。藤本名人は兼題から「保護シール」への着眼を褒め、先生も同感。難しい忌日の季語へのチャレンジも悪くないと先生は前置きし、「手応え」が悩ましいと述べる。兼題写真を見れば、シールを剥がすときの指の感触だと無条件に思うが、文字面だけでは給与の多さを期待する意味合いの「手応え」として、金銭的に苦労した啄木に対しての皮肉めいた読み方に誤読され、作者の思いとかけ離れるのが勿体ないと指摘する。「手応え」を諦め、「啄木忌の明細」とストレートに書くことで、保護シールの感触を再現できると解説。さらに「剥がす」も「強(こは)し」(※「堅い」の意味)ならさらに詩の純度が上がったと解説した。本人は「いや~、いいところに目ぇつけたなぁと思いますね」と先生の言葉を繰り返して自己陶酔に浸った。
●[85] @23/04/27◆お題:
遊園地『春愁や廻る木馬の目の潤み』永世名人28句で掲載
ボツ添削後
『春愁の木馬よ青く潤む目よ』
『春愁の木馬よ雨に潤む目よ』
季語は「春愁(しゅんしゅう)」。季語の持つ不安・悲しさのニュアンスと、メリーゴーラウンドの木馬の目のツヤツヤさが潤みに見えることの取り合わせを詠んだ一句。「かつての村上さんらしさがないよね」と評す先生は、季語と「木馬」の取り合わせの感覚は褒めつつも、欲張りなことや余計なことを句に盛り込んで安全策に打って出る最近の作者の傾向を批判する。「廻る」「潤み」と2つを同時に入れたのが問題点だと指摘。「春愁」という心の動きを表現する際、「廻る木馬」だけで心に押し寄せる思いは十分に表現され、かつ「潤み」も春愁の心の鬱屈のようなものが表現されるため、「廻る」「潤み」の二つを安全を考えて入れた疑いがあると再び本人を牽制する。添削は「潤み」を生かし、「春愁の木馬よ」の詠嘆の後に、「○○○潤む目よ」と整え、余った3音は「青く」「雨に」といった例を挙げた。最後に「この3音の使い方こそが、ポンチ村上がやれる技。目を覚まして!」と永世名人の姿勢を正すよう窘めた。守りに入った疑惑の本人は仮に「掲載決定」なら3月のWBCで一時流行したペッパーミルポーズをとる予定だったことをジュニア名人に暴露される羽目に。2回連続のボツ査定により、句集への道は6勝5敗となった。
●[86] @23/05/04◆お題:
無人駅『青き踏む影の少なき無人駅』永世名人28句で掲載
ボツ添削後
『青き踏む影のみ増ゆる無人駅』
季語「青き踏む」は、春に芽生えた青草を踏みながら楽しむこと。晩春に野原を散策しながら、屋根が少なくその影も少ない無人駅を訪れる光景を詠んだ一句。「策に溺れた」とコメントする梅沢名人は「"無人駅"なら影が少ないのは当たり前」だと指摘。「あと4音攻めて!」と評す先生は「少なき」を指摘する。「無人駅」は詩になる空気感がある5音の単語のため、俳句の世界で物凄く使われると前置きし、オリジナリティーを上げていくかが大事なポイントだと述べる。「影」が駅舎の影あるいは人の影の分量という2つの意味を込めたのは理解できるが、「影の少なき」は無人駅の範疇を超えていないフレーズなのが問題点だと指摘。永世名人として「少なき」の4音を攻めるべきで、ヒントとして影だけが増えていく「影のみ増ゆる」をアドバイス。この駅はかつては賑やかな駅だったが、亡き人の影が増えたのかもしれない場所を、生命感を満ちた春の野を歩いているという意味にとれば、詩の分量が増えると解説。最後に「私はポンチ君に、ポンチ君らしく覚醒してほしいと強く願っている」とエールを送った。自身初となる3連続ボツに本人は悔しい表情を見せた。
●[87] @23/05/11◆お題:
浜田雅功『扇風機衣装脱ぎつつ出前表』浜田杯2位(20名中)添削なし
季語は「扇風機」。大阪にある吉本の劇場「なんばグランド花月」の近くに「信濃そば」という芸人がこぞって行く蕎麦屋があり、浜田も好きだとの噂を聞いていて、浜田も若い頃にあの劇場に立っていた風景を想像して表現したという一句。ジュニア名人は「匂いまで感じ取れて素晴らしい。いつもの村上の嫌な感じがしない」と褒める。先生は、人物がありありと見えてくるのが上手いと評す。「衣装」で舞台かドラマの関係者と連想させるこの一手が良く、それを脱ぎながら「出前表」を見ているせっかちな人物像を思わせると解説。季語が主役に立っており、兼題と「出前表」の距離感も良いと称賛。最後に「いつも肩の力をスッと抜いてくれるとうれしい」と忠告した。浜田杯は梅沢名人に続く2位につけた。
●[88] @23/05/25◆お題:
鯖の弁当『薄暑のシンク鯖缶の蓋の反り』永世名人29句目に
掲載決定
添削なし
季語「薄暑」は少し汗ばむくらいの初夏の頃の暑さ。薄暑の頃の台所のシンクに、開封した鯖缶の蓋が反れ曲がった状態で置かれているだけの光景だが、初夏の気だるさや節約生活など、ここに書かれていない余白を埋めたくなるような旅をしてほしいと自惚れながら語った。梅沢名人は村上名人らしさを絶賛。「さすが村上節」と評す先生は、元の村上に戻ってくれたことに安心したと述べる。「薄暑のシンク」で台所だと分かり、細かく缶の描写をしていくが、台所の温度・空気の匂い・手触りがありありと見えてくると解説。さらに、七五五のリズムが鬱屈な寂し気な調べで、どこか憂鬱な憂いを含んだ「薄暑」となり、自分の思いと調べを連動させているのも良いと称賛。本人は特待生を目指す小籔の前で決めポーズを披露し、句集完成に一歩近づいた。
●[89] @23/06/29◆お題:
木漏れ日『木漏れ日を動かして鳴るラムネ玉』永世名人30句目に
掲載決定
添削なし
季語は「ラムネ」。ラムネを飲むと瓶の内部のガラス玉が鳴るが、そこに映える光と影は動いていき、それが木漏れ日ならより美しい光景に思うと自己陶酔しながら語った。「言い切ることで詩を生み出す!」と評す先生は、木漏れ日とラムネ玉の存在に関係性はないものの、あたかも関係があるように言い切ることで詩を発生させる技を見事に使ったと称賛。句の中に種類の違う木漏れ日・ラムネ玉・瓶の3種類の光が混ざり合う効果があり、ここを大変褒めたいと述べる先生。しかし、褒められるたびにニヤケ顔になる本人に「この男の表情何とかして下さい」と注意する事態に浜田も同感する。詩的な表現が成功し、句集30句目の大台を連続掲載で決めた。
●[90] @23/08/03◆お題:
行きつけのお店『じゃあそれとガツ刺し夕涼の酒場』第7回炎帝戦7位添削後
『じゃあそれとガツ刺し夕涼の屋台』
『じゃあそれとガツ刺し夕涼の中洲』
季語は「夕涼」。焼きトンが好物だという本人。常連客として行くと、店員が「今日美味しい部位入ってるよ」と教えてくれるため、「じゃあ、それとガツ刺し」とついでにガツ刺しも一緒に頼む行きつけのお店の風景だと語った。森迫永依は、季語との取り合わせを褒めるが、梅沢名人は屋内を匂わす「酒場」と季語「夕涼」が似合わないと痛烈に批判する。先生は、客の台詞で行きつけ感を表現するタイプの句だと前置きし、梅沢名人の意見に賛同する。「酒場」は外で飲める場所もあるが、屋内のイメージが強いため、季語「夕涼」を活かすには「屋台」とするか「中洲」など地名を入れる方法があると指南。作品点が俄然上がり、順位も大きく変わっていたと述べた。口論した梅沢名人が「コイツね、外でも飲める酒場があるとか、能書き言ったんですよ俺に!怒ってやってください」と先生に叱責を促すが、先生は「はい」と一言、生返事で対応した。
●[91] @23/08/10◆お題:
吊り橋『吊橋に四つの碇鰯雲』永世名人31句目に
掲載決定
添削なし
季語は「鰯雲」。吊り橋のワイヤーを留めるアンカーブロックを「四つの碇」とし、「鰯雲」と取り合わせた一句。最初の意気込みでタメ口を叩いたことを浜田から注意され、咄嗟に清水アナを「コイツ」呼ばわりしてしまう。先生は、吊り橋のアンカーブロックを「四つ」と書いたことで形状が映像化された点に言及。「碇」の一字が重要なポイントで、船の碇・船のイメージが季語の「鰯」と微かに触れ合う効果があり、この匙加減が分かっていると評した。いよいよ句集完成まで10句台に突入した。
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