2018年12月20日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
●お題:こたつとみかん
◆1位
才能アリ73点 坂下千里子
「
夕空を ドクターヘリや 落葉焚」
※こたつから窓に目を向けて見えてきた光景を詠んだ一句。
【本人談】夕日の中をヘリが飛んでる。子どもは「あ、ヘリコプター」と指を指す。私も「本当だ、ヘリコプターだね」って言ったらそれがドクターヘリだった。そのドクターヘリに目をやると落ち葉焚きの煙が上がっていたっていう冬の夕空を詠んだ一句。
夏井先生「
夕空」という視線が上に行くもの。夕空を見上げる。
「
ドクターヘリ」が出てくると姿と一緒に轟音も出てくる。「
や」で「ドクターヘリ」を強調。
最後に季語「
落葉焚」が出てくると、
ドクターヘリを見上げた視線に落葉焚の煙が目に入ってきて、一度視線を下して「落葉焚いてたんだ」と。
そして、
あのドクターヘリどこ行ったんだろう、と思う気持ちがまた視線を上にあげてドクターヘリのいない夕空が最後に映像として残る。
助詞「を」の使い方なんかも上手いもんですね!
直す必要はない。これ以上発想飛ばしたら、
どっかに落ちますからね。
添削なし
◆2位
凡人60点 二階堂高嗣(Kis-My-Ft2)「
手酌酒 祖父の背中や 年歩む」
※こたつから発想を飛ばし、実家で見た光景を詠んだ一句。
【本人談】シンプルに。年越しでおせちとかを従兄弟や祖母がバタバタと作っている。祖父が1人だけこたつで自分でお酒を注いで飲んでる。祖父は1人で年を越す。年がまた1つ増える。
円楽 この辺から始めれば、
18回(※実際は17回目)も出れば(成績は)上がっていくはず。これは景色見えるし映像見えるし、じいちゃんの背中の丸さまで見えるし。
夏井先生いやー、これだったんだ。良かった良かった。ホッとしたよ。
「手酌酒」で手酌をしている人物。物も見えてくる。その人物が具体的に「祖父」だとわかる。そして「背中」という体の部位も出てくる。
最後に「
年歩む」という季語も出てくる。
よく季語調べたねぇ。
もったいない所もちょっとだけある
。「手酌酒」で一回プチっと切れて、「祖父の背中や」で大きく切れて、「年歩む」という風にプツプツと切れた感じがもったいない(三段切れ)。
ここの問題だけクリアしとけば
70点くらいいった。
「手酌酒」を名詞で切らずに、中七にくっつけるだけで良い。
やり方は2つある。どっちがいいか選んで。
(1)「手」を諦めて「
酒を酌む」。
(2)「酒」を諦めて「
手酌せる」。「せる」は「している」。
どっちが好き?
本人 2つ目(手酌せる)で。
浜田 おい。お前
そんな言葉出てけえへんやろ!
本人 俳句って面白いな!
浜田 聞いてんのか!
俺の話聞かんかい!
夏井先生なぜ「
せる」にするかといったら、中七「や」で
文語の言い方しているから。
こうすると、
しらべが流れ始めるでしょ?何が得をするかといったら
「や」の強調。
「や」はすぐ上の言葉を強調する。
「
手酌せる祖父の背中」で、手酌する祖父の背中に映像が寄っていく。そしてカットが切れる。
「
年歩む」というのは、大きな時候の季語。これ自体に強い映像はないが、この季語を選ぶことで「
祖父の人生そのものがどっしりと年が歩んでいくかのようなそんな人生を歩まれた方ではないか」と読み手は勝手に想像し始める。
本人 すげぇー。
[ここがポイント]三段切れは避ける
※一句を3つに切ってしまう三段切れの俳句はしらべが分断され、焦点が分散してしまいます。
添削後
「
手酌せる 祖父の背中や 年歩む」
◆3位
凡人40点 研ナオコ(当初4位から変更)
「
ぬくぬくと ミカンほおばり 止まらない」
【本人談】まんま。夏井先生発想が
極めて凡。
日本人の心の中にはこういうテンプレート・ひな形がみんなある。
その光景を堂々と
己のものであるかのように書き放つ。
この根性に
ささやかな感動すら覚えた。
直そうと思えば直せるが、どんなに直しても
偉大なる凡であることには変わらない。
あえて清々しい40点としてこのまんま置いときましょう。
浜田 この先々一応
見本にはなりますもんね?
夏井先生 そうそう。こういうのを堂々と書き放つと40点ですよという
見本として保存しておきたい。
[ここがポイント]発想を膨らませる
※まずは写真からどんなことが連想されるか10個ほど考えてみましょう。最初に出たものほどありきたりな可能性が高いので注意。
添削不可能
◆4位
才能ナシ35点 酒井美紀(当初は
凡人3位50点)
「
湯気まとう 母の背もまた 雪景色」
こたつから実家の風景へ発想を飛ばした一句。
【本人談】実家に帰省しこたつに私が座っていて、目線の先の台所で母が料理している。母が湯気をまとっているようで母も年をとると雪景色のようにずっしりと美しいな、と思った一句。
志らく 研ナオコの
偉大なる凡の後
だからものすごく良い句のように・・・
レイザーラモンHG 見えますよね。
研 「見えますよね」
じゃねえよ。
円楽 今の説明があってもその景色は
見えない。
夏井先生うーん、これはね。ちょっと
確認させて下さいよ。
これを読んだ時に、「湯気まとう」で母の背中が出てきて、「また」とあって最後に「雪景色」と外の光景が出てくるので、「
露天風呂の湯気があって母がご高齢で雪景色だけど周りも雪景色だ」
とそういう風にしか読めない。
浜田 お母さん、
台所におるんですって。
夏井先生台所はねぇ。どこを振っても
台所情報はない。
しかも
「雪景色」は比喩なんでしょ?
比喩であることもわからない。
久しぶりに
スゴイの出たなと思って。
これ
才能ナシですよ!
一同 エエェー!!
夏井先生 15点くらい引いてください。
(50点から35点に減点され、4位だった研と入れ替わり、ランキングシートのパネルが才能ナシに変更される)
夏井先生とにかく
台所だと言うしかない。
上五を字余りにして
「雪景色」と置き、比喩だと書くしかない。私もちょっとうろたえている。
だって、露天風呂だと思って添削考えていたのにいきなり
台所でしょ。
「
雪景色めく」で雪景色みたいだな。
台所は5音だが、昔の台所を指す「
厨(くりや)」なら3音。「
の湯気の」で
まとってる場合じゃない。
「
中に母」くらいしか言いようがない。
あ~、良かった、できた。
本人 あー!先生、ありがとうございます。
夏井先生 あんた、
笑ってる場合じゃない。
本人 ハイ、すみません。
[ここがポイント]比喩はわかりやすく表現する
添削後
「
雪景色めく 厨の湯気の 中に母」
※本人談の後
凡人3位50点から15点減点された
◆最下位
才能ナシ25点 レイザーラモンRG
「
霜焼けの 指を黄に染む ネイルサロン」
【本人談】母が蜜柑食べてたら、指が黄色になりがち。母が霜焼けになって「寒いねえ」って言ってこたつに入りがち。それがネイルサロンのように黄色に染まるっていう句ですわ!
志らく くだらない句ですね。
夏井先生私、
みかんの国の愛媛県 松山に住んでますから、こんなのは松山市民には"
あるある"を通り越して、
今更言う必要のない"あるある"ですよ。
本人 先生、僕も
愛媛なんですよ。出身。
夏井先生愛媛県の人間なら
ますます腹立ってきた。
「
霜焼け」の指の後に「
みかん」を入れたら一応
季語が2つになるぐらい思ったんですか?
本人 いや、「霜焼け」で十分かなと。
夏井先生あ、そうですか。(霜焼けは)捨てましょう。
全くいりません。
「蜜柑」て書くしかない。ストレートに「
沁む」とすれば、否応なく蜜柑をむいて汁が出て沁みているとわかる。
季語になるため「霜焼けの指」とは言わないで、「荒れた」と書いたらいい。
本人 はぁ~。
夏井先生「はぁ~」
じゃないよ。「
荒れたる指」とすれば、指先だとわかる。
「黄に染む」は使おうか。
しょうがないね。「
黄に染めて」くらいにする。「ネイルサロン」に行く必要はない。ホントに。
あんたの言いたいことは一応言えた。
添削後
「
蜜柑沁む 荒れたる指を 黄に染めて」
★特待生昇格試験★豊崎アナ 志らくさんは特待生に昇格されてから一度も現状維持がなったことがないという
昇格率100%の「
ミスター昇格」なんです。
浜田 絶対昇格するんです。
志らく ここ(特待生)に上がるのも
最短で上がってます(注※)。
浜田 そうです。
志らく (二階堂を指さし)もう うんとね、かかっている人もいるけどね。あそこに。
※浜田が夏井先生にお伺いを立てるようになってから(千賀以降)では、初挑戦から認定まで4回66週かかっており、どちらも最短ではない。◆「
婆やは蜜柑 食べ続ける妖怪」
立川志らく【本人談】蜜柑を食べると止まらなくなるというのは当たり前だが、子どもにしてみれば不思議なこと。私が子どもの頃、祖母がお正月とか年末になるとずっとこたつで蜜柑を食べていて「いつまで食べているんだ」と思いながら段々怖くなった思い出がある。思い切って五七五で読まず十七音でドーンとおさめてみた。
円楽 これ見た途端に先代の5代目三遊亭圓楽 師匠(笑点の司会でも活躍)を思い出した。終始こたつに入り、左利きの手でいっぺんに蜜柑を口に運んで食べていた。まさに
妖怪だった。それで「おーい!楽太!(円楽襲名前の名は楽太郎)」「ハイ!」って言ったら手が真っ黄色で
ネイルサロンですよ。
夏井先生
この句の評価のポイントはまさに破調の是非です。
■査定結果2級へ
1ランク昇格理由:裏切りが楽しい
夏井先生「裏切りが楽しい」ことと破調を選んだことが表裏一体になっている。
破調は拍数が定型を外れることで、凄く難しい。
安易に手を出したら痛い目に合う。
判断基準は
内容が"しらべ"に沿っているか、内容をその"しらべ"が活かしているかという点を考えないといけない。
この句は
活かしている。
「
婆やは蜜柑」でまず7音を一遍に読んでしまう。
ばあやが蜜柑剥いてくれるのかな?お口に入れてくれるのかな?と一瞬思う。
そうすると「
食べ続ける」。剥いてくれるわけでも、食べさせてくれるわけでもないと思った瞬間。
「
妖怪」という言葉がポツンと出てくる。ここら辺の
企みが愉快。
どう考えても
子どもの視線であることは読めばわかる。「子」など書かなくても詠み手に伝わる。
お見事でした。直しなどいらない。
添削なし
円楽 大体、落語も
破調だから。
志らく そうそう、その通りです(笑いながら)。
浜田 ワンランク・・
円楽 認めてやがる、あははっ。
浜田 師匠 黙れ!二階堂 めっちゃ仲良しじゃないですか!
◆「
結露拭く コタツ列車の 窓の笑み」
三遊亭円楽【本人談】三陸鉄道の北リアス線に冬の名物としてコタツ列車が走る。震災で線路が途切れ途切れになってた鉄道もつながって。こたつに入りながら、それこそ蜜柑食べたりお酒飲んだりしながら震災の話から笑い話までして温まってきた。窓に結露がついて拭いてみると
復興していく町並みがあって思わず笑みがこぼれた。そして町の方からは、思わずコタツ列車がまた走った。
「復興していくんだ」という笑みという両方向の笑みをこたつから飛ばした。
夏井先生この句の評価のポイントはここ「
笑み」です。
■査定結果1級で
現状維持理由:着地が安易
夏井先生今、話を聞くと「着地が安易」というよりは
想いが一杯あって溢れちゃった。
それを
「笑み」という言葉で一つの意味を伝えようとしたと、そこに問題があったんだなということがとてもよくわかった。
すごい大きなことを言いたかったわけだから、
もう言っちゃいましょう。
下五から。「窓」も「笑み」を諦めた方がいい。「
こたつ列車」とホームページでは平仮名で宣伝していたので、そう書いた方が三陸鉄道のとはっきりするので、地元の人も喜ぶのではないか。
後半は「
こたつ列車の結露拭く」で良い。
上五の勝負だけ。
こたつ列車の結露を拭く向こう側に復興していた町並みがあるんだよ。そしてそこにはよく来てくれたと歓迎してくれる町の人たちがいるんだよ、と。そうなってくると、この置き方。「
復興」か「
歓迎」か、一遍には書けません。
例えば、「
復興の町」と素直に書く。結露を拭くと、こんな風に復興が進んできて「なるほどな~」という光景。
それから、歓迎してくれる人たちがいるなら小さな映像も描ける。
例えば、ホームで「
駅の小旗」が振られているならそれを書く。これもいける。
5音あったら色々やれる。一番自分の思いにかなったここの語を入れてください。
添削後
「
復興の町 こたつ列車の 結露拭く」
「
駅の小旗 こたつ列車の 結露拭く」
編集後記今回のお題は冬の風物詩である「こたつとみかん」。2つとも季語だけに、どちらを中心に発想を飛ばすかがポイントでした。
1位の句は、ドクターヘリに発想が飛びました。「を」という時間と空間を表す助詞の使い方と、映像の切り替えが褒められていた印象です。単に「ヘリコプター」とせず、「ドクターヘリ」としたところと「落葉焚」の季語との取り合わせに山火事による出動を匂わす感じを受けましたが、本人や夏井先生の説明も違っていたので、解釈が自由にできる句といったところでしょうか。
2位の句は、今回17回目の出場となる二階堂さん。酒と親父の発想は以前もありましたが、三段切れは残念でした。浜田さんを無視するくだりもバラエティ番組に向いているので、リトライに期待です。番組では才能アリ2回と紹介されましたが、そのうち1回が「窓際に寂しさ残る桜草」と詠み、季語を「桜」と勘違いして凡人に減点されています。そのため、手元の集計では才能アリ1回、凡人10回、才能ナシ6回です。特待生にはほど遠い成績なのですが、コメントいただければ全俳句一覧ページを作成します。
3位の句は、堂々たる凡人と言うか才能ナシでもおかしくない句でした。前回の句は「ふきのとうそっと覗かす可愛さよ」で才能ナシ8位30点。凡人での添削なしは、昨年の中丸雄一さんの句「夏祭り好きなあの子がいるぞ、おい」まで遡りますね。
4位の句は、最後の「雪景色」で大きな勘違いを生み大減点となりました。周りが雪で真っ白で360度俯瞰するような季語だけに、最初意味が全くわかりませんでした。本人談後に減点されるのはこれで7例目ですが、15点の減点は過去最大ではないでしょうか。
最下位はまたしても芸人枠でしたね。「ネイルサロン」がこたつで温まっている様子をも表現したかったのかとも感じましたが、本人のギャグである「あるある」が全く生かされていませんでした。
噺家特待生は明暗分かれる結果に。
志らくさんは「蜜柑」を食べる人物を比喩して見事昇格。破調も良かったんですが、文学系と人物比喩はやはりお手の物ですね。あっという間に苦労人の千原ジュニアさんを追い抜き、前回やっと昇格したミッツさんと並ぶ段位に。円楽さんの尻尾も見えてまいりました。
そして円楽さんは「コタツ」から列車の情景に発想を飛ばしましたが、想いが強すぎて現状維持。「震災」「笑み」の句では、梅沢名人も「震禍(しんか)の港あふるる笑顔初さんま」でやはり添削を受けていましたが、映像描写に徹するということでしょうね。名人昇格はまだまだ遠そうです。
さて、番組的には今年最高点だとか昇格率100%だとか記録じみた煽りのフレーズが最近多いですが、当ブログは粛々と書き続けるだけでございます。いよいよ次回は2週連続で冬麗戦ですので、臨戦態勢の予定です。
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