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20181018 プレバト!!俳句紹介【運動会】

2018年10月18日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。

●お題:運動会

◆1位 才能アリ70点 潮田玲子
爽やかに 早まる鼓動 待つバトン

【本人談】
自分がリレーの次走ですごく緊張しているが、爽やかな風が吹いて「よしやるぞ!」みたいなポジティブなバトンを待っている感じを表現したくて詠んだ。

夏井先生
「爽やかに」という季語がうまく使われている
「爽やか」は秋の時候の季語。「爽やかや」という方法もあるが、「に」という助詞で繋いだところも良かった。
爽やかに早まっていく鼓動があります。上五中七で心地よい緊張感のようなものが表現できている
「早まる鼓動」までは何の場面か分からない。例えば出番の前・ピアノの発表会だとか様々な場面がある。
そこで「バトン」という小道具が効果的に効いてくる。これの使い方がわからない方が約一名いた(→4位)が、これで運動会か競技会のリレーであると種目までわかる。
「待つ」というまだバトンを握っていない状態が出てくるので、「早まる鼓動」と呼応してくる。
言葉が効率よく選ばれて、大事な季語の選択が何よりも素晴らしかった
このままでも良いが、1箇所だけ語順を変えた方がさらなる臨場感が生まれる場所がある
本人 「待つバトン」を中に持ってくるか最後に持ってくるかで迷った。
夏井先生
迷った気持ちわかります。でもここは最後に持ってきて、「バトン待つ」とひっくり返すだけ。
「早まる鼓動」でカットが切れて、「待つ」とくると鼓動を待つ?と一瞬脳が思ってしまう
「バトン待つ」なら「鼓動」でしっかり切れて、バトンが出てくる場面が現れる。最後の「待つ」で動作に軸足が残っていく
そうすることで、もう一度「爽やかに早まる鼓動」という場面がクローズアップされていく。全体がきちんと結ばれていく。
ささやかなことだが、1回目でこれだけ書けるのでさらに上に行ける方だと思う。

添削後
爽やかに 早まる鼓動 バトン待つ

◆2位 凡人60点 山口真由
運動会 駆け抜ける子の 腿の無垢

【本人談】
写真をずっと見ていたら、構図の真ん中に子どもの太腿(もも)が来ることに気付いた。腿が見えて「腿の無垢(むく)」が浮かび、そこから「駆け抜ける子の腿の無垢」として、運動会→子ども→腿というように焦点を絞っていった

夏井先生

作者がわかってビックリ(前回は才能ナシ最下位)。
本人が語ったことも大事な点を押さえている
「運動会」という広い行事の季語から始め、「駆け抜ける子」に焦点を絞り、さらに「腿」に持っていく。よく理解している。
行事の季語を詠むのはなかなか難しい。なにせ材料がいっぱい、種目もいっぱい、色んな人もいる。
とにかくどこかを小さく切り取るのが大事なポイント
下五「腿の無垢」という展開も悪くない。「無垢」は初心(うぶ)で純真、汚れがないという意味合い。
「無垢」と言い切ることで要らない意味まで乗っかってくる。俳句ではちょっと言い過ぎたかなという言い方をする。
不要な意味が少し入り込みすぎるから、映像というよりは「無垢な少女」というイメージの方に流れていってしまう
腿の描写をするだけ。無垢に思えたというのは、清々しく爽やかな気分という感じではないか。
「清し(すがし)」と書く。無垢ではあるが、不要な心情が全部なくなって腿の清々しさ・爽やかさだけに焦点が絞られる。
ここまで来たのは、学んだことが短期間で身になってる証拠。大したもん。

[ここがポイント]
小さく切り取る

添削後
運動会 駆け抜ける子の 腿清し

◆3位 凡人47点 前田吟
秋の朝 爺(じじ)の張り切る 陣地取り

【本人談】
孫の運動会で朝早くシートを持って行って場所取りをする。お母さんは料理を作るので、息子は写真係だから陣地くらい僕がやりましょうという気持ち。

円楽 兼題写真があれば運動会なんだけど、陣地取るんでも催しが色々ある。キチンと切り取りがあった方が

夏井先生
特待生が指摘していることは分かるはず。
中七・下五でなんか楽しそうな句だなと伝わる
さらに言葉の意味が重なっていないのが3位と4位の差。
要は運動会だという事を書くだけで場面は一気に見えてくる。そうなると「運動会」との季重なりを防ぐため「秋の」を消さないといけない
頭にのっけから「運動会」と書く。
これで音数をかなり使うので、さらに要らない言葉を消せばいい。どこが一番いらないかというと「張り切る」。
だって大体張り切ります。爺はこういう時。他に役がないんですから、ここで張り切るしかない。
「朝の」「陣取り」「役は」「爺(じい)」と持ってくる。
そうすると「陣取り」「爺」と「じ」の韻を踏める。最後に爺に焦点が当たる。

添削後
運動会 朝の陣取り役は爺(じい)

◆4位 凡人45点 橋本直(銀シャリ)
まかせとけ 逞(たくま)しき君 風の秋

【本人談】
兼題写真がバトンを受け取っている感じに見えた。自分の息子や娘が「まかせとけ」と言ってバトンをもらって、自分の子どもが成長したという様子と、風のように走る姿と秋の風の爽やかさを詠った素晴らしい句ですね。

千原ジュニア ホントよくある。お題写真の上に乗っけられたら分かるが、写真がなくてこの文字だけでは運動会とわかるかどうか。二人は、再就職先の面接待ってんの?(スーツ姿がトレードマークのコンビをいじる)

夏井先生
特待生の言うとおり。お題写真を前提に書いてしまった。よくあるケース。
上五・中七のフレーズが誰が何のために言ってるのか、具体的な場面が全く見えてこない。
「まかせとけ」「逞しき君」の情報の重なりもある
こういう所に気づかないうちは凡人。
1点褒めたいところはある。下五の「風の秋」という展開はとても良かった
例えば「秋の風」とやったら何か物悲しいだけで終わってしまう。「風の秋」だと、風の何とさわやかな秋であるかという意味にある。
ここだけ才能のかけらはみえるが、上五・中七で完全なる凡人を証明した。
運動会だという事を書けばいい。下五を消すのは勿体ないので、意味が重複している中七を消して、運動会とわかるものを入れる
何をまかせとけと言ったんですか?
 バトン!
本人 バトン! お前先言うな!俺の句や。
夏井先生 その通り。
「バトン」を「受けとる」と書くだけ。そしたらあの写真はしっかりと見えてくる。
次回はやっぱり(橋本ではなく鰻に)替わった方がいい。
本人 ちょっと待ってください。
千原ジュニア バトン受けとれ!

[ここがポイント]
バトンで場面を明確に

添削後
まかせとけ バトン受けとる 風の秋

◆最下位 才能ナシ35点 二階堂高嗣(Kis-My-Ft2)
レンズ越し 我が子の涙は身に入(し)む
※5・8・4と破調にし、後半を12音にまとめる工夫がみられる一句。

【本人談】
自分の実体験。リレーとかで勝てるかな?と思ったら、本番勝てなかった。親父のところに行ったら親父がカメラ越しに涙している。小学生ながらなぜ父が泣いているのかわからない、とその時思った。「身に入(し)む」という季語を見つけ、この写真を見たときに僕の気持ちに同調してくれた、そういう事だったんだなっていうこと。

夏井先生
実体験だとは思わなかった。
作者がわかって、どうしてキスマイの連中は自分の体験を詠まずにドラマ作りたがるんだと…。
浜田 それがジャニーズなんです!
夏井先生
自分が子どもだったのね。父の涙をそう詠みたかったのね。
何が一番問題かというと、季語「身に入む」。
「身に入む」という季語を見つけてこれはいけると思った?
本人 見っけた!と思った。
夏井先生 わかるー。
見っけたのはいいが、この季語の本当の意味を理解していない
「身に入む」は秋の時候の季語で、結構心理的な意味が入っている。痛切に骨に沁みるくらい感じ込んでいるという人生の寂寥感(せきりょうかん)
たかが運動会でしょ。運動会と書こう。身に入みている場合じゃない。
この渾身の季語を使いこなせるようになるには、もうちょっと人生学びなさい。
中七に「運動会」と書けば、一気に明るくなる。「我が子」も自分の子と誤読されるので「子」として「子の涙」とする。これくらいで良い。
本人 「レンズ越しの運動会」ってやったら…でもそれアンタね、運動会って言ったらレンズ越しで撮ってる。「レンズ越し」なんかいらないの!って言われると思って「運動会」は省いた
夏井先生 そこで「運動会」省いたら、なんでこの子が泣いてるか分からないでしょ
本人 あっ!
夏井先生 ね! だからここは絶対「運動会」はいるよ。
千原ジュニア 身に入むやろ!

添削後
レンズ越し 運動会の 子の涙

★特待生昇格試験★
◆「運動会 アキレス腱の 切れる音」 千原ジュニア

【本人談】
小学生の時、運動会で父兄(保護者)のリレーで友達のお母さんが走っていたら急に「パーン!」と倒れ、救急車が来てアキレス腱が切れていたということがあった。その様子を見ていた自分はそれがすごく鮮明に残っていて、運動会と聞くとそのことが強く思い出される。

円楽 運動会って楽しいイメージがあったけど、この句見たときにゾクッとしてスゴイ

夏井先生
この句の評価のポイントは季語「運動会」の是非です。

■査定結果
3級で現状維持

理由:単なる報告

夏井先生
悪いわけじゃない。
兼題写真見ただけでこういう展開に持ってくる発想力は褒めたい
自分の体験を生々しく書くという態度はいつも感心している。
アキレス腱を切ったことがある方は音の印象を強く言うので、音(聴覚)までいったところも評価はできる
ただ、季語の選択に問題がある。「運動会」というのは朝始まってから終わるまでかなりの時間の幅がある。
この季語の置き方では、「運動会がありました。アキレス腱の切れる音を聞きました」というように緊迫感をそいでしまう季語の選び方。
「運動会」を諦めさえすれば、ある程度良いところまでいく。
本人曰く、友達の母のアキレス腱が切れたという話だが、この句では自分のアキレス腱が切れたとみな解釈する。自分の実体験として添削するしかできないかもしれない。
まず、「運動会」を消し、どういう状況を描くかで判断は分かれる。想像してみる。自分が走っていてアキレス腱が切れた。その瞬間を書く。
その時に、どんな季語がアキレス腱の切れた人の目に飛び込んでくるか。そういう風に考える。
「あ~!切れてしまった」と空を見上げるかもしれない。その空には季語がある。
秋の澄んだ高い天を「秋天(しゅうてん)」という。「を仰ぐ」とすると「あ~やっちまったぜ」と仰ぐ。
「アキレス腱切れる」と句またがりにする。これで緊迫感を押していく。「切れる」と言い切った瞬間に言わなくても知っている人は音が響く。
この音は秋天という箱の中で響いていく。これは、アキレス腱の切れる音を聞いている人は再生してくれる。

本人 そんなん出来へんも~ん。

添削後
秋天を仰ぐ アキレス腱切れる

円楽 運動会の兼題もらった時に色々考えた。場面・種目・色を全部書きだして大変に苦労しました。降格だけはヤダ
浜田 「大変苦労しました」で終わりやないか。

◆「段雷に 靴紐きつく 秋の朝」 三遊亭円楽

【本人談】
運動会では開始の合図を知らせる音玉が鳴る。あの音玉の花火を調べたら「段雷(だんらい)」(音物の花火・昼花火のこと)という。パパパンと聞いて、「よし行くぞ!」と玄関で靴ひも締めて表へ出ると青い空にあの花火の白い雲が3つあるという感じ。色んな事考えてこれにまとめました。すみません。

夏井先生
この句の評価のポイントは助詞「に」の是非です。

■査定結果
1級へ1ランク昇格

理由:見事な省略

夏井先生
まず「段雷」という言葉。何だろうと思って私も調べた。あれかとわかった瞬間に光景が一気に立ち上がってきた。
ポイントは助詞「に」。俳句の定石の1つに「上五の最後の「に」は立ち止まって考える。上五の「に」は要注意」という教えがある。
なぜなら散文的になりがちとなる。例えば「玄関」「庭先」など場所を示すような「に」は特に要注意。
この句の「に」は「段雷によって、それをきっかけとして」という意味で、この「に」はOK。
「~によって」だから普通は「靴紐を結ぶ」とつながり、「段雷に結ぶ靴紐」となるのが普通の書き方となる。
ところが、あえて「結ぶ」を書かないと決めた。「結ぶ」は靴紐で当たり前だからあえて省略した
「きつく」と入れることで「よしやるぞ!よしいくぞ」という心をここで表現しようとしたと判断した。
最後に季語「秋の朝」という映像が出てくると、もう一度音や白い煙、青空が広がってくる。その省略の判断を今回は良しと褒めたい。
これは直しちゃダメ。このまんま味わう。

添削なし

編集後記
今回は「季語」を有効に利用しているかで結果が分かれた印象です。
1位の句は「早まる鼓動」で緊張感とリアリティーがよく出ており、「爽やか」という季語ともマッチしていました。アスリートで初登場1位は古閑美保さんを思い出しますが、その後凡人になっているので次回以降上に行けるかが本当の勝負ですね。
2位の句は前回最下位の東大卒で才女と紹介されるコメンテーターの方ですがリベンジを果たした印象。特に最後の「無垢」の比喩が活きており、才能アリでも良かったのではないかと。また挑戦してほしいです。
3位・4位はありきたりな光景を詠んだのが残念。特に4位は毎回俳句は橋本さんなので相方の鰻さんにチェンジもありですね。
最下位の句は北山さんに次いで通常挑戦者16回目出場となる二階堂さん。実体験だとは思わないうえ、「我が子の涙」とあるのに涙するのは父と意味不明。以前最下位となった「涙する親父の背はシダレザクラ」の句を思い出します。毎回「もう呼ばれなくなる」と発言していますが、浜ちゃんからも好かれているようで、ポンコツ役として出ることは間違いなし。
特待生ですが、ジュニアさんは実体験を売りにしていますが、詩心が足りなかった印象です。タイトル戦以降調子が乗ってきているので、頑張ってほしいです。また、出演者に対する切り替えしが冴えていましたね。
一方、高座復帰を果たしたと紹介されたものの収録は9月のため、肺がん治療前の円楽さんですが、さすがの一句でした。人物描写が得意ですが、「段雷」という光景も描いた句での取り合わせは素敵でした。以前東国原さんが「運動会テントの中の車椅子」と詠み、現状維持だった回でボツ句として提出した句にまさに似たような句がありましたが、円楽さんのは定型で素直な印象です。

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コメント

Re: いきなり失礼します

moririnさん

毎回ご覧いただきありがとうございます。ご指摘の箇所訂正いたしました。
名前の表記には気を付けたいところですね。

いきなり失礼します

いつも見させています。
特に毎回の編集後記の欄には、番組と違う見方もあり毎回驚かされます。

今回コメントしたのは、古閑美保さんが「古賀」になっていた、だけです。野暮ですみません。

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