【金秋戦決勝】20180927 プレバト!!俳句紹介【郵便ポスト】
- 2018/09/27
- 22:00
2018年9月27日放送 プレバト!! 俳句金秋戦決勝結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第2回金秋戦・決勝で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
金秋戦予選の詳細はこちら。
前回大会・炎帝戦の詳細はこちら。
●お題:郵便ポスト(順位クリックでリンク内移動します)
※3位の句は上五「御」が二重の抹消線で消され、「出席」を○印で囲う表記上の演出がある。
[順位発表順] 3位→6位→5位→7位→4位→2位→最下位→1位
★名人語録
梅沢名人
4冠は私が獲るでしょう、一番初めに。間違いない。これから全部ぽんぽんぽんと。
俳句の質は最高レベルだね。
ライバルは東さん。この方の世界は私にない世界。一番警戒している。この方に勝てればあとは雑魚みたいなもん。
これから三連覇して四冠王になる。
私にとっては被災地は一生忘れられない光景。たまたまそういう所で被災地の句を詠んだのが、先生に伝わるか。
東国原名人
ディフェンディングチャンピオンとしては獲りにいかないといけない。(肖像画の)写真が1年間消えるわけですから。最下位っちゅうことはない。
炎帝戦は屈辱の最下位でしたね。炎帝戦は狙いにいって空回りした。俳句は心が乱れると乱れますねぇ。
梅沢御大は80点出す。必ず80点出す。勝つためにはその上を行かないといけない。石田・フジモンは時々90点100点を出す。ここを警戒しないといけない。
村上名人 前回2位ですよ。ほぼ1位。
浜田 ほぼちゃう、2位やんか。
藤本名人 ある日村上をメシに誘った。そしたら「すみません、俳句考えてるんでちょっと行けないです」と。先輩の誘い断って考えた俳句やからさぞかしエエ俳句出してくるんでしょうか。
村上名人 藤本さんじゃなかったら断ってない。
横尾名人 名人で無冠は僕と村上さんだけ。そろそろ獲らないと。知らない間に(村上の段位が)上行っているので。
★予選敗退者の1位予想
豊崎アナ 優勝予想をいただいたところ、ばらけたんです。
円楽→藤本名人 時々ホームラン打つからね。
ミッツ→石田 特待生から本戦行って優勝していただきたい。
千賀→横尾名人 気持ち的に頑張ってほしいですよね。同じグループとして俺の分も頑張ってくれよ。
柴田→中田 女性らしい、ホント細やかな。キチンと計算されている俳句作られるので、私大好きなんです。
岩永→東国原名人 東さんいつもすごいが、特に秋のおどろおどろしい句を詠ませると天才だと思っている。今日は鳥肌が立つんじゃないかと。
梅沢名人 アンタらいい加減にしなさいよ。Mr.プレバトを忘れてるのか?え? 私が出てて私が優勝したから高視聴率をいただいたんです!
ミッツ そこまで自分で言うようになっちゃったの?
梅沢名人 (スタッフに向かって)お前ら打ち合わせの時に言っとけよ!コンチキショー!
★上位4名人の夏井先生の評価
梅沢名人:作品に関しては磨かれてきたなという印象。王道を常に行こうとしている。王道以外には目を向けたくない。自分が王者だと思っている。
東国原名人:発想の切り口が他の人と次元が全然違う。新たな次元がどういう形で花開くか。それを楽しみにするしかない。
藤本名人:身についたものは、きっちりと体の中に培われている。浮ついていない。最近はそこを強く評価したい。
村上名人:はっきりと腹くくったところから上手くなった。他人をうらやましがらない。自分の持ち味を信じると。そこが彼の一番良い所。
○順位別に見ていきます
◆1位「廃村の ポストに小鳥 来て夜明け」 梅沢富美男
秋の季語「小鳥」は、渡り鳥や山地から人里に降りてくる小鳥のこと。
【本人談】
東北の震災が起きてからちょくちょく行っていた。ここには住めませんよという所で偶然にポストを見かけた。それを思い出した。
もう誰も来ない、誰も住まない。そこにあるポストは寂しい。でもそこに小鳥がすーっと遊びに来てくれた。
これからはこの小鳥が俺(ポスト)のところに来てくれるんだと。それを詠んだ。
本人 フジモン、こういう事だ!
藤本名人 あ~あ!(あくびの仕草)
夏井先生
優しい句。おっちゃんの句なんだ。びっくりする。
「廃村」という場所からお話が始まる。「廃村の錆びたポスト」を詠んだ句はいくらでもあるといえばあるが、ここから後の展開が上手い。
「小鳥」が秋の季語になるが、「小鳥来る」(渡り鳥のこと)も傍題としてある。大陸の向こう側から秋の真ん中~晩秋に渡ってくる鳥をさす。
単純に小鳥が来ただけではなく、小鳥は大陸の向こうから季節を忘れずにこの村にちゃんと来てくれるというイメージをもつ季語になる。
一番うまいのは最後の「夜明け」。昼間だと思って読んでいったら「来て夜明け」という時間が出てくる。
いきなり未明の空が見えてくる。この人は小鳥の声に目覚める。
秋と言っても中秋より後のイメージですから、冷え冷えとした朝の空気も感じる。
未明の夜明けの冷たい空気の中で朝の目覚めの小鳥。それはさびれてしまったこの村を忘れない小鳥たちなんだと思うところに作者の感動というのがある。
優しいおっちゃんなんや。
添削なし
◆2位「無月なり 紙ナプキンの 置き手紙」 村上健志(フルーツポンチ)
季語「無月」とは名月の夜に空が曇り月が隠れている様子を示す。
【本人談】
紙ナプキンだから場所は喫茶店やファミレスなんですかね。紙ナプキンを使って置手紙が置いてある。
置手紙があるってことは、会うはずだった2人が会えてない。それを示す置手紙は、会うはずだったどちらかがいることもよりも「いる」というか。要は誰かがいないわけですよ、必要な人が。この時のいないはいる時よりも「いる」ということ。より、存在感が出てる。置手紙があることによって。月は見えないけど、空は少し明るいのと似ていて、なんだかいいなぁという。
ミッツ 誰に置き去りにされたの?
本人 置き去りにされてないんですけど、そういう想いというか。
円楽 ウェイトレスが(テーブルを)片してないのいけないよね。
浜田 いないのにね。
ミッツ 会えてないんならその席は無人になったってことでしょ。
本人 でも「紙ナプキンの置き手紙」を書いている時点で…。
ミッツ 私、トイレに行っている間に男に逃げられたことあるわ!
本人 俺の俳句で遊ばないで!
東国原名人 「無月なり」ってそこで止めたところがオシャレだな。結構プロっぽい。
夏井先生
読みに関して、特待生のご意見は非常に良いご意見でしたね。
作者が自分で語った読み方が一番無理があった。
「紙ナプキンの置き手紙」としか書いてないので、別に「待ち人が来ないから書いて置いた」と限定する必要はどこにもない。
円楽さんが言ったように「(それだと)さっさと片付けられるじゃないか」ぐらいのことになるから、自分の句を必要以上に語りすぎて自分の句を狭くするのはやめた方がいい!
本人 俺2位ですよ!
夏井先生
ミッツさんがポロッと言った「さっきまで一緒にいてトイレから帰ったらいなくなっている」というそういう状況の方がリアルだし、いつも行っているバーでマスターに「帰るけど、彼女が後で来たら」とマスターに託すという物語だってある。あなたが勝手に何か限定すると自分の句を狭くしていくんだから、もうしゃべんなさんな!
梅沢名人 上手い!
夏井先生
作品は良い。季語「無月」は十五夜の中秋の名月の夜に雲の向こうに月が隠れて見えないこと。日本人の美意識は見えないものも愛でるという、そういう形。
「なり」で言い切る力は大事。「無月」であるよと断定する。カットが切り替わる。そうすると、室内の「紙ナプキン」という物に何か文言が書いてある。
ここら辺の小さなドラマを構築させたらこの人の右に出る人はいない。しゃべらなければ良い句だった。
添削なし
◆3位「御出席○の 葉書投函 秋日和」 千原ジュニア
※上五「御」が二重の抹消線で消され、「出席」を○印で囲う表記上の演出がある。
ポストから結婚式の案内状に発想を膨らませた一句。
【本人談】
たまたまこの間友達が結婚することになり案内状が来た。スケジュールを確認し、「御出席」の「御」を消して「出席」に丸をして、はがきを出すときは天気が良く、結婚式も楽しそうな式が始まりそうな感じがした。
夏井先生は「俳句は何やってもよい」というのを言われていて、いつも試されている気がする。何でやらないのかと思い、何かしたいなとずっと思っているところで、これはアカンかもしれないが、挑戦した。どこからか東さんの「顔に×」からインスパイアーされた(例の盗作疑惑をイジる)。
千賀 俳句の感性じゃない。芸人としての度胸がすごい。
ミッツ 目でも楽しめる俳句。「御出席○」のところ。爽やかで健やかな句詠んじゃってさ。家庭持つと変わるわね!
梅沢名人 これはうまいね。粋だね、あそこ(「御」)消してるのが。
夏井先生
楽しい句を見せてもらった。
表記で楽しませるというのももちろんよい。何やってもよい。
大事なのは17音の詩になっているかどうか?これは十分なっている。
触るところはほとんどないが、展開としてのアドバイス。
下五「秋日和」の「秋」の一文字を変えると、何の会なのか?積極的に行きたいのか?義理で丸つけて困ったなと思っているのか?
そんな空気を表現することはできる。
「菊日和」(菊の香りが染み通るように澄んだ秋の日を指す季語)だと清く澄んだ改まった感じになる。結婚式でも授賞式を思ってもよい。
「鵙日和」(モズの鳴き声が引き締まるような秋の大気)もある。モズはスズメみたいな小鳥で、カエルや小さなネズミを襲って獲って、木の尖ったトゲの部分にブスッと刺す習性がある。この季語なら「丸つけちゃったけど、しょうがないか、行くしかないか」というちょっとマイナスな気持ちになる。
この一文字をどう展開するか?というのはまだまだやれることがある。
あえて「秋」にすると、いろんな出席を幅広く受け止めてくれるので、意図としてやっていると受け止めた。
添削なし
◆4位「秋月や パリの封筒 切るナイフ」 藤本敏史(FUJIWARA)
【本人談】
ちょっとしたヒゲをたくわえた紳士が書斎でパリの友人から来た手紙をペーパーナイフで封筒を切って手紙を出している風景を詠んだ。
ペーパーナイフが秋の月に照らされてキランと光っているのを表現したかったので「秋月」とした。
村上名人 「秋月」でいいのか?ってというところがありますね。
梅沢名人 たまにはいいこと言うじゃないか、お前。その通りだよ。背伸びしすぎましたね。パリなんて行ったことも見たこともないのに、なぜ秋月?秋月じゃなくてもいいでしょ。違う季語もってくりゃ良かったんですよ。
浜田 何だったらいいんですか?
梅沢名人 それはちょっと…。(笑い)お前は背伸びしたんだよ!馬鹿者。
本人 いや、背伸びのうちに入ります?
梅沢名人 お前、誰かパリに知り合いいるのか?
本人 俳句って何でもね、想像の世界を詠んでもいいじゃないですか。
梅沢名人 だから、背伸びしたって言ってるだろ。
千原ジュニア 身の丈を知れ!お前は。西日暮里にせえ!
本人 西日暮里の封筒って何やねん!オシャレさがなくなるじゃないの!
夏井先生
ホントに句としてはオシャレ。「パリの封筒切るナイフ」は知的な匂いがしてよい。
作者分かってビックリ!
本人 やかましいわ!帯ほどいたろか!
ミッツ 何をしたいのよ!
夏井先生 ほどけるもんならほどいていただきましょう!
中七下五はオシャレで格好いい。問題は村上さんが理由がわからずに言った「秋月」。
「月」は単独で秋の季語。わざわざ「秋月」と書く意味・必然性・理由があるのかをこういう句に出会うと真剣に考えるわけです。
時々こういう使い方はある。敢えて「秋の月」と書く場合もある。「蝶」は春の季語だが「春の蝶」とあえてやる場合もあるので、一概にダメとは言えない。
真剣に考えた。敢えて秋月とする必要があるのか?全くなかったことがわかりました。
本人 ちゃんと考えました?
夏井先生 考えました。あなたこれ、意図的にやったの?そもそも。
本人 ほんとに、秋の月が綺麗だからっていうその1つだけですね。
夏井先生 そうですか。じゃあ最初から消しときゃ良かっただけです。
ここから後の展開。「秋」を消したら音数足りなくなるから、表情のつけ方。「や」もいらない。
「月」を季語として「清(さや)か」とする。「清か」は爽やかですがすがしいというそんな月の光。
「この清かな月はパリにも出ているに違いない」とそんな感じになる。
本人 納得しました。ちょっと余談になるんですけど、この前夏井先生のお孫さんに会ったんですよ。女の子のね。去年も会ったんですけど、1年経ってね、より一層可愛くなってました。
→先生を持ち上げて、1位の席に移動し座る。
浜田 おい!何してんねん!褒めたら上がれるの?
夏井先生 あの孫は去年産まれてないですよ!(去年の)あれはお兄ちゃんの方で。
本人 あれ、お兄ちゃんですか。
千原ジュニア 下がれ!下がれ!
→最下位の席に移動する。
添削後
「月清(さや)か パリの封筒 切るナイフ」
◆5位「ニュータウンの 剥げたポストや 降り月」 横尾渉(Kis-My-Ft2)
季語「降り月」は十五夜を過ぎて満月から下弦へと次第に欠けていく月。
【本人談】
ニュータウンは一時期に人が増えたが今は減った。ニュータウンと同時にポストもできてニュータウンを見守っているが、使われないから古くなって錆びていく。
それを月がずっと見守っていて、満月から欠けていくがまた満月になる。それをニュータウンやポストがまた増えて栄えたらいいなという願いを込めた。
藤本名人 え?すごくいいなと。これ5位ですか?何か語順…かな?あと助詞もちょっと違うのなら。助詞と語順がちょっとねぇ。
浜田 先生がよく言うヤツやん。
夏井先生
助詞も語順も関係ありません。
意図としてはとても良く考えてある。頭の「ニュータウン」は文字通り新しい街だと思って読み始める。
そうすると「剥げたポスト」が出てくる。しかも「や」で強調されている。
「ニュータウン」と名付けられた街はやがて老人だけの街になっていく。「ポスト」も錆びていく。
上五中七でそこまで言えているのは大したもん。さすが名人。
もったいないのはこの季語。
「降り月」を使う作者の意図もわかる。十五夜の満月を過ぎて二十二日から二十三日くらいの下弦の月のことを言う。
季語の中の動詞「降り」に段々さびれていくという気分も見える。ただそこが「若者が減った街」と季語との取り合わせとしてちょっと近い。
取り合わせを考えるときには「似合う」取り合わせの場合と、「反対」「対照的」な季語を置くことで剥げたポストを際立てるやり方がある。
とても惜しい。「降り」を消して反対に行けばよかった。
月が赤々と照っている様子を「月煌々」という季語で言える。そうするとこの月は明らかにこの「ポスト」を照らしている。
対照的な季語を取り合わせると逆に世界の奥行きが広がると。
これ1つ覚えると次(優勝)が見えてくる。
[ここがポイント]
対照的な季語を使う
添削後
「ニュータウンの 剥げたポストや 月煌々(こうこう)」
◆6位「ポストへと 合鍵返し 秋夕焼」 中田喜子
【本人談】
彼との別れを決意して、彼が自宅へ帰る前にその合鍵を自宅の郵便受けに返しに行って、その日は秋の夕焼けに照らされていたというのを思い出している日を詠んだ。
あぁ…悲しい。
ミッツ 昔合鍵持ってたのよ。いつ頃の話ですか?連想ゲームの頃(当時30歳)ですか?
本人 違います。決して…
藤本名人 情緒大丈夫ですか?
浜田 岩永君、どうですか?
岩永 簡単な単語を使ってすごくストーリーのある俳句を詠まれててスゴイ。
夏井先生
ちゃんといい所もある。
ポストに合鍵を「入れる」ではなく「返す」とした。この動詞を選ぶことで、作中の人間関係と状況がちゃんと出る。
動詞って恐ろしいですよ。もし「入れる」ならお留守番かな?と読まれるが、「返し」で全然ストーリーが変わる。丁寧に選んでいる。
「秋夕焼(あきゆやけ)」という季語は切ない気分とか、心情も言いつつ映像も伝えているわけですから、間違ってない。
ちょっとだけドラマ仕立てが過ぎたかなという感じ。ここからの展開は丁寧に聞きたい。
「返し」なのか?言い切りの「返す」なのか?で添削の展開が変わる。何が違うのか。
「返す」→返す行為に対して、結構踏ん切りがついているようなある程度「返そう!」「返す!」という感じ。
「返し」→切れがなく、色んな思いや迷いがありながら返す感じ。
切れの有無で心情がちょっと変わる。どっち?
本人 この人はまだきっと尾を引いている。だから「秋夕焼」と取り合わせた。
夏井先生 「返し」を残しましょう。微調整です。
合鍵のアップから。「合鍵は」手にある。「ポストへ」「返し」となる。
「合鍵は」とすれば、他にも色々あるけど「合鍵は」返す。「一緒に暮らしてきた歯ブラシも持って帰ります。洋服も持って帰ります。でも合鍵はポストに返しましたが、秋の夕焼けは何と切ないものでございましょう」というニュアンスになる。
助詞の使い方、語順、動詞の選択。小さな所で女心は全部表現できる。
添削後
「合鍵は ポストへ返し 秋夕焼」
◆7位「秋の雨 投函口に 残る指」 石田明(NON STYLE)
【本人談】
大事な手紙はちゃんと入れるところまで見届ける。本当に大事な手紙だと入れようか?入れまいか?と。例えばラブレターなんかで今までにないくらい投函する指に神経がいっている。投函したとき、「入ってしまった!」「やっと送れた」という後悔と安堵の2つの感覚があり、指に照準を合わせた。
柴田 私にはよくわかりませんでした。指が挟まったのかな?と思って聞いちゃった。
円楽 「残る指」の意味が分からない。挟まったのか?逡巡(しゅんじゅん)しているのは聞いてわかった。指紋が残ったのかなとも思った。
村上名人 物語はすごく良い。はがきを出すのを躊躇する気持ち。それがこの描写では正直描けていない。
本人 頑張って季語の「秋の雨」に助けてもらおうと。
村上名人 助けられないっす!
夏井先生
皆さんがおっしゃった通り。良いところまでいっている。
意図としてはデリケートで心のひだのようなものを描こうとしている。
秋の雨の湿りや寂しさが一句を覆っている。季語を主役に立てるという事も出来ている。
罪深いのは動詞一つの選択。
この字面で「残る指」を解釈すると、指の跡が残っているのではないか?挟まれたのでは?と読まれてしまう。
動詞1つ変えるだけ。方法は色々とある。原句を極力残して、心情と映像のイメージを一緒に託すことができる動詞にする。
円楽さんが言った「ひるむ」のライン。
「残る」を「たじろぐ」とする。上五は「秋雨や」で切る。
最後字余りになるが、「たじろぐ」は迷ったりひるんだりという感じで、「ひるむ」と異なり迷いの意味も含まれるニュアンス。
「秋雨や」と強調した後に、「投函口に」という場所に「たじろぐ」私の指がある。「入れようか?入れまいか?」迷っている指でも心情でもある。
単語一つ変えてくれたらポンポンポンポンと上に行った。
[ここがポイント]
「たじろぐ」で心情と映像を
添削後
「秋雨や 投函口に たじろぐ指」
◆最下位「星月夜 赤ちゃんポスト 動きをり」 東国原英夫
本人 夏の再来。
浜田 まだメンタルちょっと。大丈夫ですか。
本人 大丈夫だと思ったけど、ダメみたいですね。
【本人談】
熊本には赤ちゃんポスト(諸事情で育てられない新生児を匿名で特別養子縁組する施設)がある。産まれたての赤ちゃんが育てられない方が預ける。そのポストをイメージし、ポストに赤ちゃんが置かれた。(振動で)コトコトと動いた。その時の星月夜(月のない夜に満天の星が輝く様をさす季語)で、星の下に産まれた赤ちゃんの運命は、そしてそれを預けた親御さんの気持ちはどうだったんだろう?という。
梅沢名人 私には、こういう句が詠めない。本当に大したもんだわ、怖いくらいです。
村上名人 僕にも詠めないですね。
浜田 お前、さっき「しゃべるな」って言われたやん。
村上名人 なんで僕に振るんですかぁ。
浜田 いや、僕「しゃべれないんで」って言えや!
千原ジュニア 「紙ナプキン」に書け!お前。
浜田 紙ナプキンに書いて持ってこい!
夏井先生
これは本当に本当にもったいない。
「星月夜」と「赤ちゃんポスト」の取り合わせは本当に良い。
「星月夜」は星々が月夜の様に明るいという、綺麗で優しい季語。
そこに「赤ちゃんポスト」が出てくる。ここまで読んだ段階で「これが1位だ!」と思った。それくらいいい取り合わせ。テーマ性もある。
何で「動きをり」にしたかなぁ。これでご本人が語った光景がきちんと伝わるかどうかを、最後もう一回立ち止まって客観的に検証していたら、いつもの東国原さんなら推敲していたはず。
「赤ちゃんポスト」が「動く」と言われたときに、作者の中では扉が開くイメージがあるから動きに違和感がない。
冷静に見る。「星月夜」の後に「赤ちゃんポスト」が続くと、読者の脳内には否応なく屋外の光景が描かれてしまう。
下五で「動きをり」というのは赤ちゃんポストがあったはずなのに移転したの?という読みも成立する。ポストが動くってあり得ないから。
ここだけの問題。直し方は色々ある。
例えば、「赤ちゃんポストに赤ちゃん動く星月夜」という語順にすると屋内の光景から外の星月夜に思いを広げることができる。
赤ちゃんポストの内側、保育器の中で動いているなら語順を変える風に書くしかない。
本人 郵便ポストのお題が来た時に郵便ポストをずーっと見てましたよ。周りから大丈夫ですか?って言われました。それで赤ちゃんポストに発想を飛ばした。
添削後
「赤ちゃんポストに 赤ちゃん動く 星月夜」
編集後記
炎帝戦からあまり日を置かずに金秋戦となり、過去最多の13人でタイトルを争う形となりました。
二連覇の梅沢名人は再び震災と関連した句でしたが、選んだ季語もよく、情景に深みのある句となりました。東さんと対照的で終始堂々とした態度であり、このまま4冠も夢ではなさそうです。
2位の村上名人は「マスク」の句を彷彿とさせる恋愛がらみの句でしたが、句の読みを限定してお叱りを受けてしまいました。最近は絶好調なのですが、他人の句を指摘する下手さからも鑑賞力はもう一歩ですね。
3位の千原ジュニアは現代俳句というべき句で勝負しました。降格してからの勉強量は素晴らしい感じ。フジモンや村上名人に対する切り替えしも良く、芸人だけに頭の回転が早いですね。
4位の藤本名人は久々のグーグルアース俳句でした。想像で読む句だけに梅沢名人からも厳しく突っ込まれていましたが、取り合わせのフレーズは粋でした。しかし、夏井先生とのやり取りは以前と同じで少々見苦しく、最近は俳句でも村上名人に見劣りする印象があるので奮起してほしいところ。
5位の横尾名人は現代社会を風刺したネガティブな句でしたが、結構いい線までいっている印象でした。季語の添削は受けましたが、名人としては最近出演がないので果敢に挑戦してほしいです。
6位の中田さんは自宅の「郵便受け」に発想を飛ばし、失恋の句を詠みました。決して悪い句ではないだけに微調整の添削で6位なのは少々気の毒な感じも。
7位の石田さんは予選1位通過で期待があっただけに、誤読を生む「残る指」で順位を下げました。しかし、繊細なニュアンスは評価されていましたね。通常回は8か月出演がないだけにスケジュールを空けて挑んでほしいところ。
最下位は夏に続いて東国原名人でした。「赤ちゃんポスト」という政治家経験者ならではの句で誤読を生む結果に。本来なら最下位レベルではないのですが、全体的にハイレベルなだけに再び禊を受ける形でした。季語がテーマのタイトル戦では全て添削なしで上位ですが、季語以外のテーマでは2連続最下位ですね。
また、敗退者の中でも特に円楽さんとミッツさんの鑑賞力は人生経験豊かなだけに素晴らしかったですね。特に村上名人の恋愛句へ鋭く突っ込んでおり、夏井先生の叱責へとつなげました。
全体としての率直な感想ですが、夏の炎帝戦のデジャブな感じがありました。1位・2位・最下位という順位や賄賂などの紹介時の演出やフジモンの言動などもかなり似ていたので既視感が強かったかな。今回は3時間SPとして予選・決勝と1回で完結したのは良かったところです。しかし、特待生はなかなか通常査定に呼ばれにくく段位がほとんど変わらないままタイトル戦に臨む人が多いのは少々気の毒です。出演回数の差が段位差に直結するだけに、予選通過者や上位者は特待生限定でも段位を上げるなどの措置もそろそろ検討すべきではないでしょうか。

年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第2回金秋戦・決勝で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
金秋戦予選の詳細はこちら。
前回大会・炎帝戦の詳細はこちら。
●お題:郵便ポスト(順位クリックでリンク内移動します)
![]() | 梅沢富美男 | 名人10段 | 廃村のポストに小鳥来て夜明け | はいそんのぽすとにことりきてよあけ |
2位 | 村上健志(フルーツポンチ) | 名人8段 | 無月なり紙ナプキンの置き手紙 | むげつなりかみなぷきんのおきてがみ |
3位 | 千原ジュニア | 3級 | 御出席の葉書投函秋日和 | しゅっせきのはがきとうかんあきびより |
4位 | 藤本敏史(FUJIWARA) | 名人9段 | 秋月やパリの封筒切るナイフ | しゅうげつやぱりのふうとうきるないふ |
5位 | 横尾渉(Kis-My-Ft2) | 名人3段 | ニュータウンの剥げたポストや降り月 | にゅーたうんのはげたぽすとやくだりづき |
6位 | 中田喜子 | 1級 | ポストへと合鍵返し秋夕焼 | ぽすとへとあいかぎかえしあきゆやけ |
7位 | 石田明(NON STYLE) | 2級 | 秋の雨投函口に残る指 | あきのあめとうかんぐちにのこるゆび |
最下位 | 東国原英夫 | 名人10段 | 星月夜赤ちゃんポスト動きをり | ほしづきよあかちゃんぽすとうごきおり |
[順位発表順] 3位→6位→5位→7位→4位→2位→最下位→1位
★名人語録
梅沢名人
4冠は私が獲るでしょう、一番初めに。間違いない。これから全部ぽんぽんぽんと。
俳句の質は最高レベルだね。
ライバルは東さん。この方の世界は私にない世界。一番警戒している。この方に勝てればあとは雑魚みたいなもん。
これから三連覇して四冠王になる。
私にとっては被災地は一生忘れられない光景。たまたまそういう所で被災地の句を詠んだのが、先生に伝わるか。
東国原名人
ディフェンディングチャンピオンとしては獲りにいかないといけない。(肖像画の)写真が1年間消えるわけですから。最下位っちゅうことはない。
炎帝戦は屈辱の最下位でしたね。炎帝戦は狙いにいって空回りした。俳句は心が乱れると乱れますねぇ。
梅沢御大は80点出す。必ず80点出す。勝つためにはその上を行かないといけない。石田・フジモンは時々90点100点を出す。ここを警戒しないといけない。
村上名人 前回2位ですよ。ほぼ1位。
浜田 ほぼちゃう、2位やんか。
藤本名人 ある日村上をメシに誘った。そしたら「すみません、俳句考えてるんでちょっと行けないです」と。先輩の誘い断って考えた俳句やからさぞかしエエ俳句出してくるんでしょうか。
村上名人 藤本さんじゃなかったら断ってない。
横尾名人 名人で無冠は僕と村上さんだけ。そろそろ獲らないと。知らない間に(村上の段位が)上行っているので。
★予選敗退者の1位予想
豊崎アナ 優勝予想をいただいたところ、ばらけたんです。
円楽→藤本名人 時々ホームラン打つからね。
ミッツ→石田 特待生から本戦行って優勝していただきたい。
千賀→横尾名人 気持ち的に頑張ってほしいですよね。同じグループとして俺の分も頑張ってくれよ。
柴田→中田 女性らしい、ホント細やかな。キチンと計算されている俳句作られるので、私大好きなんです。
岩永→東国原名人 東さんいつもすごいが、特に秋のおどろおどろしい句を詠ませると天才だと思っている。今日は鳥肌が立つんじゃないかと。
梅沢名人 アンタらいい加減にしなさいよ。Mr.プレバトを忘れてるのか?え? 私が出てて私が優勝したから高視聴率をいただいたんです!
ミッツ そこまで自分で言うようになっちゃったの?
梅沢名人 (スタッフに向かって)お前ら打ち合わせの時に言っとけよ!コンチキショー!
★上位4名人の夏井先生の評価
梅沢名人:作品に関しては磨かれてきたなという印象。王道を常に行こうとしている。王道以外には目を向けたくない。自分が王者だと思っている。
東国原名人:発想の切り口が他の人と次元が全然違う。新たな次元がどういう形で花開くか。それを楽しみにするしかない。
藤本名人:身についたものは、きっちりと体の中に培われている。浮ついていない。最近はそこを強く評価したい。
村上名人:はっきりと腹くくったところから上手くなった。他人をうらやましがらない。自分の持ち味を信じると。そこが彼の一番良い所。
○順位別に見ていきます
◆1位「廃村の ポストに小鳥 来て夜明け」 梅沢富美男
秋の季語「小鳥」は、渡り鳥や山地から人里に降りてくる小鳥のこと。
【本人談】
東北の震災が起きてからちょくちょく行っていた。ここには住めませんよという所で偶然にポストを見かけた。それを思い出した。
もう誰も来ない、誰も住まない。そこにあるポストは寂しい。でもそこに小鳥がすーっと遊びに来てくれた。
これからはこの小鳥が俺(ポスト)のところに来てくれるんだと。それを詠んだ。
本人 フジモン、こういう事だ!
藤本名人 あ~あ!(あくびの仕草)
夏井先生
優しい句。おっちゃんの句なんだ。びっくりする。
「廃村」という場所からお話が始まる。「廃村の錆びたポスト」を詠んだ句はいくらでもあるといえばあるが、ここから後の展開が上手い。
「小鳥」が秋の季語になるが、「小鳥来る」(渡り鳥のこと)も傍題としてある。大陸の向こう側から秋の真ん中~晩秋に渡ってくる鳥をさす。
単純に小鳥が来ただけではなく、小鳥は大陸の向こうから季節を忘れずにこの村にちゃんと来てくれるというイメージをもつ季語になる。
一番うまいのは最後の「夜明け」。昼間だと思って読んでいったら「来て夜明け」という時間が出てくる。
いきなり未明の空が見えてくる。この人は小鳥の声に目覚める。
秋と言っても中秋より後のイメージですから、冷え冷えとした朝の空気も感じる。
未明の夜明けの冷たい空気の中で朝の目覚めの小鳥。それはさびれてしまったこの村を忘れない小鳥たちなんだと思うところに作者の感動というのがある。
優しいおっちゃんなんや。
添削なし
◆2位「無月なり 紙ナプキンの 置き手紙」 村上健志(フルーツポンチ)
季語「無月」とは名月の夜に空が曇り月が隠れている様子を示す。
【本人談】
紙ナプキンだから場所は喫茶店やファミレスなんですかね。紙ナプキンを使って置手紙が置いてある。
置手紙があるってことは、会うはずだった2人が会えてない。それを示す置手紙は、会うはずだったどちらかがいることもよりも「いる」というか。要は誰かがいないわけですよ、必要な人が。この時のいないはいる時よりも「いる」ということ。より、存在感が出てる。置手紙があることによって。月は見えないけど、空は少し明るいのと似ていて、なんだかいいなぁという。
ミッツ 誰に置き去りにされたの?
本人 置き去りにされてないんですけど、そういう想いというか。
円楽 ウェイトレスが(テーブルを)片してないのいけないよね。
浜田 いないのにね。
ミッツ 会えてないんならその席は無人になったってことでしょ。
本人 でも「紙ナプキンの置き手紙」を書いている時点で…。
ミッツ 私、トイレに行っている間に男に逃げられたことあるわ!
本人 俺の俳句で遊ばないで!
東国原名人 「無月なり」ってそこで止めたところがオシャレだな。結構プロっぽい。
夏井先生
読みに関して、特待生のご意見は非常に良いご意見でしたね。
作者が自分で語った読み方が一番無理があった。
「紙ナプキンの置き手紙」としか書いてないので、別に「待ち人が来ないから書いて置いた」と限定する必要はどこにもない。
円楽さんが言ったように「(それだと)さっさと片付けられるじゃないか」ぐらいのことになるから、自分の句を必要以上に語りすぎて自分の句を狭くするのはやめた方がいい!
本人 俺2位ですよ!
夏井先生
ミッツさんがポロッと言った「さっきまで一緒にいてトイレから帰ったらいなくなっている」というそういう状況の方がリアルだし、いつも行っているバーでマスターに「帰るけど、彼女が後で来たら」とマスターに託すという物語だってある。あなたが勝手に何か限定すると自分の句を狭くしていくんだから、もうしゃべんなさんな!
梅沢名人 上手い!
夏井先生
作品は良い。季語「無月」は十五夜の中秋の名月の夜に雲の向こうに月が隠れて見えないこと。日本人の美意識は見えないものも愛でるという、そういう形。
「なり」で言い切る力は大事。「無月」であるよと断定する。カットが切り替わる。そうすると、室内の「紙ナプキン」という物に何か文言が書いてある。
ここら辺の小さなドラマを構築させたらこの人の右に出る人はいない。しゃべらなければ良い句だった。
添削なし
◆3位「
※上五「御」が二重の抹消線で消され、「出席」を○印で囲う表記上の演出がある。
ポストから結婚式の案内状に発想を膨らませた一句。
【本人談】
たまたまこの間友達が結婚することになり案内状が来た。スケジュールを確認し、「御出席」の「御」を消して「出席」に丸をして、はがきを出すときは天気が良く、結婚式も楽しそうな式が始まりそうな感じがした。
夏井先生は「俳句は何やってもよい」というのを言われていて、いつも試されている気がする。何でやらないのかと思い、何かしたいなとずっと思っているところで、これはアカンかもしれないが、挑戦した。どこからか東さんの「顔に×」からインスパイアーされた(例の盗作疑惑をイジる)。
千賀 俳句の感性じゃない。芸人としての度胸がすごい。
ミッツ 目でも楽しめる俳句。「
梅沢名人 これはうまいね。粋だね、あそこ(「御」)消してるのが。
夏井先生
楽しい句を見せてもらった。
表記で楽しませるというのももちろんよい。何やってもよい。
大事なのは17音の詩になっているかどうか?これは十分なっている。
触るところはほとんどないが、展開としてのアドバイス。
下五「秋日和」の「秋」の一文字を変えると、何の会なのか?積極的に行きたいのか?義理で丸つけて困ったなと思っているのか?
そんな空気を表現することはできる。
「菊日和」(菊の香りが染み通るように澄んだ秋の日を指す季語)だと清く澄んだ改まった感じになる。結婚式でも授賞式を思ってもよい。
「鵙日和」(モズの鳴き声が引き締まるような秋の大気)もある。モズはスズメみたいな小鳥で、カエルや小さなネズミを襲って獲って、木の尖ったトゲの部分にブスッと刺す習性がある。この季語なら「丸つけちゃったけど、しょうがないか、行くしかないか」というちょっとマイナスな気持ちになる。
この一文字をどう展開するか?というのはまだまだやれることがある。
あえて「秋」にすると、いろんな出席を幅広く受け止めてくれるので、意図としてやっていると受け止めた。
添削なし
◆4位「秋月や パリの封筒 切るナイフ」 藤本敏史(FUJIWARA)
【本人談】
ちょっとしたヒゲをたくわえた紳士が書斎でパリの友人から来た手紙をペーパーナイフで封筒を切って手紙を出している風景を詠んだ。
ペーパーナイフが秋の月に照らされてキランと光っているのを表現したかったので「秋月」とした。
村上名人 「秋月」でいいのか?ってというところがありますね。
梅沢名人 たまにはいいこと言うじゃないか、お前。その通りだよ。背伸びしすぎましたね。パリなんて行ったことも見たこともないのに、なぜ秋月?秋月じゃなくてもいいでしょ。違う季語もってくりゃ良かったんですよ。
浜田 何だったらいいんですか?
梅沢名人 それはちょっと…。(笑い)お前は背伸びしたんだよ!馬鹿者。
本人 いや、背伸びのうちに入ります?
梅沢名人 お前、誰かパリに知り合いいるのか?
本人 俳句って何でもね、想像の世界を詠んでもいいじゃないですか。
梅沢名人 だから、背伸びしたって言ってるだろ。
千原ジュニア 身の丈を知れ!お前は。西日暮里にせえ!
本人 西日暮里の封筒って何やねん!オシャレさがなくなるじゃないの!
夏井先生
ホントに句としてはオシャレ。「パリの封筒切るナイフ」は知的な匂いがしてよい。
作者分かってビックリ!
本人 やかましいわ!帯ほどいたろか!
ミッツ 何をしたいのよ!
夏井先生 ほどけるもんならほどいていただきましょう!
中七下五はオシャレで格好いい。問題は村上さんが理由がわからずに言った「秋月」。
「月」は単独で秋の季語。わざわざ「秋月」と書く意味・必然性・理由があるのかをこういう句に出会うと真剣に考えるわけです。
時々こういう使い方はある。敢えて「秋の月」と書く場合もある。「蝶」は春の季語だが「春の蝶」とあえてやる場合もあるので、一概にダメとは言えない。
真剣に考えた。敢えて秋月とする必要があるのか?全くなかったことがわかりました。
本人 ちゃんと考えました?
夏井先生 考えました。あなたこれ、意図的にやったの?そもそも。
本人 ほんとに、秋の月が綺麗だからっていうその1つだけですね。
夏井先生 そうですか。じゃあ最初から消しときゃ良かっただけです。
ここから後の展開。「秋」を消したら音数足りなくなるから、表情のつけ方。「や」もいらない。
「月」を季語として「清(さや)か」とする。「清か」は爽やかですがすがしいというそんな月の光。
「この清かな月はパリにも出ているに違いない」とそんな感じになる。
本人 納得しました。ちょっと余談になるんですけど、この前夏井先生のお孫さんに会ったんですよ。女の子のね。去年も会ったんですけど、1年経ってね、より一層可愛くなってました。
→先生を持ち上げて、1位の席に移動し座る。
浜田 おい!何してんねん!褒めたら上がれるの?
夏井先生 あの孫は去年産まれてないですよ!(去年の)あれはお兄ちゃんの方で。
本人 あれ、お兄ちゃんですか。
千原ジュニア 下がれ!下がれ!
→最下位の席に移動する。
添削後
「月清(さや)か パリの封筒 切るナイフ」
◆5位「ニュータウンの 剥げたポストや 降り月」 横尾渉(Kis-My-Ft2)
季語「降り月」は十五夜を過ぎて満月から下弦へと次第に欠けていく月。
【本人談】
ニュータウンは一時期に人が増えたが今は減った。ニュータウンと同時にポストもできてニュータウンを見守っているが、使われないから古くなって錆びていく。
それを月がずっと見守っていて、満月から欠けていくがまた満月になる。それをニュータウンやポストがまた増えて栄えたらいいなという願いを込めた。
藤本名人 え?すごくいいなと。これ5位ですか?何か語順…かな?あと助詞もちょっと違うのなら。助詞と語順がちょっとねぇ。
浜田 先生がよく言うヤツやん。
夏井先生
助詞も語順も関係ありません。
意図としてはとても良く考えてある。頭の「ニュータウン」は文字通り新しい街だと思って読み始める。
そうすると「剥げたポスト」が出てくる。しかも「や」で強調されている。
「ニュータウン」と名付けられた街はやがて老人だけの街になっていく。「ポスト」も錆びていく。
上五中七でそこまで言えているのは大したもん。さすが名人。
もったいないのはこの季語。
「降り月」を使う作者の意図もわかる。十五夜の満月を過ぎて二十二日から二十三日くらいの下弦の月のことを言う。
季語の中の動詞「降り」に段々さびれていくという気分も見える。ただそこが「若者が減った街」と季語との取り合わせとしてちょっと近い。
取り合わせを考えるときには「似合う」取り合わせの場合と、「反対」「対照的」な季語を置くことで剥げたポストを際立てるやり方がある。
とても惜しい。「降り」を消して反対に行けばよかった。
月が赤々と照っている様子を「月煌々」という季語で言える。そうするとこの月は明らかにこの「ポスト」を照らしている。
対照的な季語を取り合わせると逆に世界の奥行きが広がると。
これ1つ覚えると次(優勝)が見えてくる。
[ここがポイント]
対照的な季語を使う
添削後
「ニュータウンの 剥げたポストや 月煌々(こうこう)」
◆6位「ポストへと 合鍵返し 秋夕焼」 中田喜子
【本人談】
彼との別れを決意して、彼が自宅へ帰る前にその合鍵を自宅の郵便受けに返しに行って、その日は秋の夕焼けに照らされていたというのを思い出している日を詠んだ。
あぁ…悲しい。
ミッツ 昔合鍵持ってたのよ。いつ頃の話ですか?連想ゲームの頃(当時30歳)ですか?
本人 違います。決して…
藤本名人 情緒大丈夫ですか?
浜田 岩永君、どうですか?
岩永 簡単な単語を使ってすごくストーリーのある俳句を詠まれててスゴイ。
夏井先生
ちゃんといい所もある。
ポストに合鍵を「入れる」ではなく「返す」とした。この動詞を選ぶことで、作中の人間関係と状況がちゃんと出る。
動詞って恐ろしいですよ。もし「入れる」ならお留守番かな?と読まれるが、「返し」で全然ストーリーが変わる。丁寧に選んでいる。
「秋夕焼(あきゆやけ)」という季語は切ない気分とか、心情も言いつつ映像も伝えているわけですから、間違ってない。
ちょっとだけドラマ仕立てが過ぎたかなという感じ。ここからの展開は丁寧に聞きたい。
「返し」なのか?言い切りの「返す」なのか?で添削の展開が変わる。何が違うのか。
「返す」→返す行為に対して、結構踏ん切りがついているようなある程度「返そう!」「返す!」という感じ。
「返し」→切れがなく、色んな思いや迷いがありながら返す感じ。
切れの有無で心情がちょっと変わる。どっち?
本人 この人はまだきっと尾を引いている。だから「秋夕焼」と取り合わせた。
夏井先生 「返し」を残しましょう。微調整です。
合鍵のアップから。「合鍵は」手にある。「ポストへ」「返し」となる。
「合鍵は」とすれば、他にも色々あるけど「合鍵は」返す。「一緒に暮らしてきた歯ブラシも持って帰ります。洋服も持って帰ります。でも合鍵はポストに返しましたが、秋の夕焼けは何と切ないものでございましょう」というニュアンスになる。
助詞の使い方、語順、動詞の選択。小さな所で女心は全部表現できる。
添削後
「合鍵は ポストへ返し 秋夕焼」
◆7位「秋の雨 投函口に 残る指」 石田明(NON STYLE)
【本人談】
大事な手紙はちゃんと入れるところまで見届ける。本当に大事な手紙だと入れようか?入れまいか?と。例えばラブレターなんかで今までにないくらい投函する指に神経がいっている。投函したとき、「入ってしまった!」「やっと送れた」という後悔と安堵の2つの感覚があり、指に照準を合わせた。
柴田 私にはよくわかりませんでした。指が挟まったのかな?と思って聞いちゃった。
円楽 「残る指」の意味が分からない。挟まったのか?逡巡(しゅんじゅん)しているのは聞いてわかった。指紋が残ったのかなとも思った。
村上名人 物語はすごく良い。はがきを出すのを躊躇する気持ち。それがこの描写では正直描けていない。
本人 頑張って季語の「秋の雨」に助けてもらおうと。
村上名人 助けられないっす!
夏井先生
皆さんがおっしゃった通り。良いところまでいっている。
意図としてはデリケートで心のひだのようなものを描こうとしている。
秋の雨の湿りや寂しさが一句を覆っている。季語を主役に立てるという事も出来ている。
罪深いのは動詞一つの選択。
この字面で「残る指」を解釈すると、指の跡が残っているのではないか?挟まれたのでは?と読まれてしまう。
動詞1つ変えるだけ。方法は色々とある。原句を極力残して、心情と映像のイメージを一緒に託すことができる動詞にする。
円楽さんが言った「ひるむ」のライン。
「残る」を「たじろぐ」とする。上五は「秋雨や」で切る。
最後字余りになるが、「たじろぐ」は迷ったりひるんだりという感じで、「ひるむ」と異なり迷いの意味も含まれるニュアンス。
「秋雨や」と強調した後に、「投函口に」という場所に「たじろぐ」私の指がある。「入れようか?入れまいか?」迷っている指でも心情でもある。
単語一つ変えてくれたらポンポンポンポンと上に行った。
[ここがポイント]
「たじろぐ」で心情と映像を
添削後
「秋雨や 投函口に たじろぐ指」
◆最下位「星月夜 赤ちゃんポスト 動きをり」 東国原英夫
本人 夏の再来。
浜田 まだメンタルちょっと。大丈夫ですか。
本人 大丈夫だと思ったけど、ダメみたいですね。
【本人談】
熊本には赤ちゃんポスト(諸事情で育てられない新生児を匿名で特別養子縁組する施設)がある。産まれたての赤ちゃんが育てられない方が預ける。そのポストをイメージし、ポストに赤ちゃんが置かれた。(振動で)コトコトと動いた。その時の星月夜(月のない夜に満天の星が輝く様をさす季語)で、星の下に産まれた赤ちゃんの運命は、そしてそれを預けた親御さんの気持ちはどうだったんだろう?という。
梅沢名人 私には、こういう句が詠めない。本当に大したもんだわ、怖いくらいです。
村上名人 僕にも詠めないですね。
浜田 お前、さっき「しゃべるな」って言われたやん。
村上名人 なんで僕に振るんですかぁ。
浜田 いや、僕「しゃべれないんで」って言えや!
千原ジュニア 「紙ナプキン」に書け!お前。
浜田 紙ナプキンに書いて持ってこい!
夏井先生
これは本当に本当にもったいない。
「星月夜」と「赤ちゃんポスト」の取り合わせは本当に良い。
「星月夜」は星々が月夜の様に明るいという、綺麗で優しい季語。
そこに「赤ちゃんポスト」が出てくる。ここまで読んだ段階で「これが1位だ!」と思った。それくらいいい取り合わせ。テーマ性もある。
何で「動きをり」にしたかなぁ。これでご本人が語った光景がきちんと伝わるかどうかを、最後もう一回立ち止まって客観的に検証していたら、いつもの東国原さんなら推敲していたはず。
「赤ちゃんポスト」が「動く」と言われたときに、作者の中では扉が開くイメージがあるから動きに違和感がない。
冷静に見る。「星月夜」の後に「赤ちゃんポスト」が続くと、読者の脳内には否応なく屋外の光景が描かれてしまう。
下五で「動きをり」というのは赤ちゃんポストがあったはずなのに移転したの?という読みも成立する。ポストが動くってあり得ないから。
ここだけの問題。直し方は色々ある。
例えば、「赤ちゃんポストに赤ちゃん動く星月夜」という語順にすると屋内の光景から外の星月夜に思いを広げることができる。
赤ちゃんポストの内側、保育器の中で動いているなら語順を変える風に書くしかない。
本人 郵便ポストのお題が来た時に郵便ポストをずーっと見てましたよ。周りから大丈夫ですか?って言われました。それで赤ちゃんポストに発想を飛ばした。
添削後
「赤ちゃんポストに 赤ちゃん動く 星月夜」
編集後記
炎帝戦からあまり日を置かずに金秋戦となり、過去最多の13人でタイトルを争う形となりました。
二連覇の梅沢名人は再び震災と関連した句でしたが、選んだ季語もよく、情景に深みのある句となりました。東さんと対照的で終始堂々とした態度であり、このまま4冠も夢ではなさそうです。
2位の村上名人は「マスク」の句を彷彿とさせる恋愛がらみの句でしたが、句の読みを限定してお叱りを受けてしまいました。最近は絶好調なのですが、他人の句を指摘する下手さからも鑑賞力はもう一歩ですね。
3位の千原ジュニアは現代俳句というべき句で勝負しました。降格してからの勉強量は素晴らしい感じ。フジモンや村上名人に対する切り替えしも良く、芸人だけに頭の回転が早いですね。
4位の藤本名人は久々のグーグルアース俳句でした。想像で読む句だけに梅沢名人からも厳しく突っ込まれていましたが、取り合わせのフレーズは粋でした。しかし、夏井先生とのやり取りは以前と同じで少々見苦しく、最近は俳句でも村上名人に見劣りする印象があるので奮起してほしいところ。
5位の横尾名人は現代社会を風刺したネガティブな句でしたが、結構いい線までいっている印象でした。季語の添削は受けましたが、名人としては最近出演がないので果敢に挑戦してほしいです。
6位の中田さんは自宅の「郵便受け」に発想を飛ばし、失恋の句を詠みました。決して悪い句ではないだけに微調整の添削で6位なのは少々気の毒な感じも。
7位の石田さんは予選1位通過で期待があっただけに、誤読を生む「残る指」で順位を下げました。しかし、繊細なニュアンスは評価されていましたね。通常回は8か月出演がないだけにスケジュールを空けて挑んでほしいところ。
最下位は夏に続いて東国原名人でした。「赤ちゃんポスト」という政治家経験者ならではの句で誤読を生む結果に。本来なら最下位レベルではないのですが、全体的にハイレベルなだけに再び禊を受ける形でした。季語がテーマのタイトル戦では全て添削なしで上位ですが、季語以外のテーマでは2連続最下位ですね。
また、敗退者の中でも特に円楽さんとミッツさんの鑑賞力は人生経験豊かなだけに素晴らしかったですね。特に村上名人の恋愛句へ鋭く突っ込んでおり、夏井先生の叱責へとつなげました。
全体としての率直な感想ですが、夏の炎帝戦のデジャブな感じがありました。1位・2位・最下位という順位や賄賂などの紹介時の演出やフジモンの言動などもかなり似ていたので既視感が強かったかな。今回は3時間SPとして予選・決勝と1回で完結したのは良かったところです。しかし、特待生はなかなか通常査定に呼ばれにくく段位がほとんど変わらないままタイトル戦に臨む人が多いのは少々気の毒です。出演回数の差が段位差に直結するだけに、予選通過者や上位者は特待生限定でも段位を上げるなどの措置もそろそろ検討すべきではないでしょうか。

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