20180920 プレバト!!俳句紹介【駅の花屋】
- 2018/09/20
- 20:30
2018年9月20日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※俳句甲子園'18の対外試合はこちらの記事を参照してください。
●お題:駅の花屋
◆1位 才能アリ70点 白鳥久美子(たんぽぽ)
「晴天に 雲描く筆 花すすき」
【本人談】
田舎の出身だが、都会の花屋にススキが売っててびっくりしたことがある。遠足の山だと一面に白いススキが生えててそれが青空に筆で雲を描いているみたいだな、と思って詠んだ。
夏井先生
とても気持ちよく書けている。
「晴天」は爽快な青空で、「雲」が出てくるためそのまま映像に行くと思ったらここからゆっくりと比喩になる。
「晴天」に「雲」を「描く」かのような「筆」だと。なるほど、スケッチしているのかな?と思うと最後に「花すすき」が出てくる。
花すすきの揺れる様子が雲を描く絵筆のようだなと作者は感じた、と。
まさにポエム少女。
「晴天」の青、「雲」の白、「花すすき」の銀と色彩的にもまさにスケッチしているかのような美しさがある。
これは才能アリと言うしかない。直しはいらない。
添削なし
◆2位 凡人65点 柴田阿弥
「花うんと 教えし祖父や 星月夜」
「星月夜」は月のない夜に満天の星が広がることを指す秋の季語。
【本人談】
実際に花屋に行ったら祖父に教えてもらった花が沢山あり、懐かしい気持ちになった。
その祖父が昨年秋に亡くなり、その切ない気持ちと温かい気持ちが「星月夜」という季語にピッタリかなと思い作った。
村上名人 いや、良いですよ。
浜田 違うやん。名人としての解説をして下さい。
東国原名人 添削って本当に難しいんですよ。
浜田 なるほど。
(夏井先生がうなずく様子)
東国原名人 10年くらいしないと人の添削ってできない。多分10段の永世名人の次は添削コーナーができるんじゃないかな。
浜田 それいただきましょう!
東国原名人 いやいや。大変だから!やめて!
夏井先生
非常に素直に自分の体験を実感を持って書いている。そこが良い。
ここから作者の考え方次第という意味でのアドバイスとなる。
「花」が頭にポンと出てくると、俳句では花=桜なので、読み手はひとまず「桜かしら?」と思う。
最後まで読んで「星月夜」という明確な季語が出てくるため、「花」は「桜」ではなかったと後付けで読み手は思う。
そのことを回避したければ、「うんと」を諦めるしかなくなるが、参考の意味で書く。
「花」が「桜」ではないように読んでもらうために「花の名を」とする。
何の花かわからない花の名前を教えてくれたおじいちゃんがいたと、そんな感じになる。
勉強しましょう、俳句を。
本人 精進します。嬉しい。めちゃくちゃやる気になりました。
[ここがポイント]
「花」には注意
添削後
「花の名を 教えし祖父や 星月夜」
◆3位 凡人60点 遼河はるひ
「雑踏抜け 花一つ買う 夜長堪(た)ゆ」
本人 この前NHK俳句に出させていただいて95点位いただいたんですが…
東国原名人 NHKの俳句ってレベル低いですから。あそこは(個人の見解)。
【本人談】
リアルな私の思い。駅の雑踏を抜けるとザワザワしたところから1人の住んでいる家に帰ったときに寂しくなるが、花を1つ買っておくとざわついた気持ちも1人の長い夜も落ち着く感じを詠んだ。
夏井先生
発想がとてもナイーブ。
作者がわかってこういう女性なんだと。おっちゃん(泉谷)じゃなくて良かった。
発想としては柔らかい感情が句に入っていて素質はすごくある。
勿体ないところは、大事な事で一句に入っている時間の軸がものすごく長い。
なぜなら「抜け」「買う」「堪ゆ」と動詞が3つ入っている。これは俳句ではかなり難しい。
17音に入れるためにはどこか1つの動詞に絞っていく。ちょっとしたコツ。
この句で「花を買う」という行為は大事なので、「雑踏抜け」を遠慮する。雑踏を抜けなくても「花を一つ買う」で十分。
「花一つ買うて」くらいにしておく。これから始まる「夜長を」堪えましょうという意志を書く。
「堪えんとす」とし、堪えようとするという意志になる。
今、花屋の前で美しい花を買っただけではあるが、その花があれば今日の寂しい夜長を私は堪えることができるわ、という意味になる。
北山 寂しい俳句だな。
本人 すごく寂しさを繊細に捉えて心にズキンときました。
[ここがポイント]
動詞の数に注意
添削後
「花一つ 買うて夜長を 堪えんとす」
◆4位 才能ナシ35点 北山宏光(Kis-My-Ft2)
「妻に媚び 秋薔薇包み 酔い終電」
【本人談】
友達と飲んでいた旦那が終電ギリギリまで飲んでしまって妻に薔薇でも包んで機嫌を取ろうかなっていうので。
…35点です。
東国原名人 「妻に媚び」とか状況を説明しなくてもよい。「酔いすぎて」ってあったら申し訳ないなという気持ちは出るので。
村上名人 パッと見で悪いですもん。
浜田 どんな解説や。
夏井先生
確かにパッと見で悪いと思う。
何でキスマイの連中は自分の体験を書かずにドラマばかり作りたがるのか、と。作者がわかって改めて思う。
浜田 それがジャニーズなんです!(声を荒げて)
本人 夢見がち。
夏井先生
ドラマを構築するのが悪いとは言わない。
でも句はあまりにもベタ。酒に酔った旦那が嫁さんに媚びて土産もって帰るという発想がベタ。
3位の句は動詞が3つあったが、発想が詩的でナイーブだからいける。
これは発想がベタな上に「媚び」「包む」「酔う」と動詞が3つあってダラダラ描いている。
いらないものを削ぎ落としていく。まず、「媚び」ると説明する必要はない。読み手がちゃんと読んでくれる。
「妻へ買う」くらいで良い。妻に買いました、と。
観客 お~!
夏井先生 こんなところで「お~!」と言う必要はない!
浜田 お前ら、怒られてどうする。
夏井先生
妻へ買うのは「秋の薔薇」ですね。「包む」必要はないです。ちゃんと包んで渡して下さると想像できる。ここから。
「酔い」とあるが、ここでどれくらい酔っているかある程度言える。
「妻へ買う秋薔薇」で切れて、「終電の」として「ほろ酔い」とすればちょっと酔ってる様子になるが、これを3音で言える言葉がある。
「微醺(びくん)」っていう言葉。これでほろ酔いを指す。
ただ、今の話を聞いた感じでは深酒な感じ?
本人 (弱めに)まあ、そう…
夏井先生 (さえぎって)泥酔?
本人 …深酒ぐらい。
夏井先生 そこら辺の酔い具合があなたが(決めて)…。
浜田 北山、負けたな今。
本人 負けました。正直、ほろ酔いかなと思ったんですけど。
添削後
「妻へ買う秋薔薇 終電の微醺(びくん)」
◆最下位 才能ナシ30点 泉谷しげる
「思い草 家族に向かう 帰路の線」
【本人談】
仕事が終わって電車に乗ると家族のことを考える。その電車が走る車窓の草を見ながらどんどん家族に向かっていく。単純すぎたね。
村上名人 怒らないで聞いてください。ちょっと何言ってるか分からない。これが「駅」ならあれですけど。「線」って言ったら線ですからね。
夏井先生
最下位とはいえ結構良いところもある。
「家族に向かう」という想いの表現。私の心が真っ直ぐに向かっているという解釈をした。「家族に向かう帰路」は詩の欠片として良い部分。
季語的な問題がマイナス点。「思い草」が秋の季語で、俳句の場合は「ナンバンギセル」というハマウツボ科でイネやススキ、ミョウガなどの根に寄生する植物を指し、20cmくらいになるものである。この句ではナンバンギセルと解釈したため、ここから後がわかりにくい。
長い字余りの上五として「家族に向かう」から始める。帰路が電車だとわかるように書く。
「線」を消し、「帰路の車窓の」と書くだけ。最後に「思い草」とする。
「思い草」がナンバンギセルに思われると車窓からは見えない。「思い草」は家族への思いと掛けているような解説だったため、ここは「秋の草」として誤読を避ける。
こうすると語った映像が17音に入る。
こおタイプの句は「将来性のある才能ナシ」となる。
4位のヤツはほぼ将来性がない。
北山 もうヤツですか?
添削後
「家族に向かう 帰路の車窓の 秋の草」
★特待生昇格試験★
村上名人 7段くらいでは世間の人は凄いって言ってくれない!10段がいらっしゃると。トップ3に入っていない。数字として上がらないといけない。
◆「真夜中の 花屋の灯り 秋澄めり」 村上健志(フルーツポンチ)
「秋澄む」とは秋の澄んだ大気を指す時候の季語。
【本人談】
花屋って深夜営業している店があったり閉店後もライトアップして灯りがついたままの花屋がある。
暗い中を歩いていると「灯りがある!」と思ってそれが花屋なら素敵じゃないですか。
その素敵な感覚とこの「秋澄めり」という映像や音がくっきりとしてくる様子に跳ね返ってぐるぐる回っていく感じ。
東国原名人 ポエム男子。
本人 ポエってます?
夏井先生
この句の評価のポイントは季語「秋澄めり」の是非です。
■査定結果
名人8段へ1ランク昇格
本人 よーし!(立って上を見る)
北山 どこ見てんの?
理由:季語の選択が見事
夏井先生
季語は最後に褒める。
発想から。兼題写真の花屋を見てこれが夜中になったらという風に時間を動かして考えてみるのも、発想法の一つとして良いポイント。
いつも明るい地下街とかではないというのも分かる。暗い街中でポッと灯りがついている。
「何だろう」と思って近づいてみると花屋だとわかる。他のお店とは違って心に灯りがともるような小さな嬉しさがある。
本当にポエム男子らしい切り取り方。
勝負は最後の季語。秋の清澄さを表す季語は他にも色々ある。「爽やか」も秋の季語。
この句では「夜」なのが大きなポイント。「秋澄めり」を選んだのは偉かった。
真夜中なのに、夜の大気が澄み切っていることに作者は気付いた。その澄み切った空気の中にポッとともったこの灯りに作者は心から灯りを美しいと感じている。その気持ちが静かに読み手にヒタヒタと伝わる季語を選んだ。
褒めたいのはいっぱい褒めたいが、このニヤニヤした顔がどうもイラつく。直しはいらない。
添削なし
★永世名人への道★
東国原名人 この句を読んだら東国原じゃないなと思う。そんなチャレンジをした。
◆「女店員の 首にキス跡 桔梗(ききょう)買う」 東国原英夫
【本人談】
作者は女店員にほのかな恋心を持ってたんじゃないか。花屋の店員は清楚で慎まやかな感じ。その首筋にキスマークですよ。どう思う?
浜田 確かに彼氏おるやん!とか色々やってるやん!みたいな。
それで「桔梗買う」ってので花屋なんだな、と。「桔梗」は花言葉が気品とか清楚とか。桔梗じゃなくて失恋の花言葉の花でも良かったが、敢えて清楚である「桔梗」を買う。切ない!
夏井先生
この句の評価のポイントは「買う」という動詞の是非です。
■査定結果
名人10段へ 1つ後退
理由:季語の印象が薄い
浜田 髪も薄い!
豊崎アナ 書いてないです。
本人 そんなこと書いてある?
夏井先生
発想は楽しませてもらった。流石だと思う。
あの兼題写真の中から「キス跡」を見つけ出してくる。発想の王者。
何が勿体ないか。主役となってほしい季語の「桔梗」よりも「女店員」の方が完全に目立っている。そこのバランスの問題。
上五中七の印象を少し落として社役の季語を目立たせる手を使う。今後のこともあるため。
女店員と言わずに、女性と想像させる。その流れの中で上五は消す。
「買う」を操作すると案外できる。ここを女店員の動作に変える。
上五は「桔梗」のアップから。「桔梗」を「きちこう」と4音で読ませる。「桔梗(きちこう)を」とするか、「を」が嫌なら より清楚な白を持ってきて「白桔梗(しろききょう)」とする考え方もある。
「買う」を「勧める」に変える。こうすると店員になる。ここから生々しくする。
「首」は全体を指すが、「首筋」と書く。「首筋に」とし、キス「跡」は「痕」の方が良い。
これくらい生々しくしたら逆に季語「桔梗」の清楚さがより際立ってくる。そういう感じになる。
添削後
「桔梗(きちこう)を勧める 首筋にキス痕」
「白桔梗勧める 首筋にキス痕」
本人 プロ査定ですよ。スゴイ高度。厳しい。難しすぎる。
浜田 ここ早く行ってもらわないと今度、添削名人の道が。
本人 いやいや。何言ってるんですか、そんな。
編集後記
今回のお題写真は京王線新宿駅の百貨店側改札が見えるカレーショップ側からの花屋の写真でした(カレーショップは京王グループのチェーン店です)。
1位の白鳥さんはポエム少女として深い情景の句でしたね。女芸人初の特待生にも名乗りを上げてきました。
2位の柴田さんも物語として詩になっていました。アイドル出身としては好成績ですし、本人もやる気があるので再挑戦してほしいところ。
凡人2名は動詞多用で自滅していましたね。特に最多出場の北山さんは上五の時点でアウトです。また母親から「いい加減にしろと」怒られそう。
名人2名は明暗が分かれることに。まず、村上名人は本当に絶好調です。今回は想像に近い句でしたが、最近は全く背伸びしない句が多く、まさに破竹の勢いで段位を駆け上がっています。
東国原名人は、スキャンダラスな感じに頼りすぎて季語を疎かにするという失態で後退し、せっかくの星を失ってしまいました。イスのセットにも赤い星が左に1つついていましたが、後半の俳句甲子園の企画では早速星0に。また頑張ってもらいましょう。
最後に、東国原名人に物申したい。「NHK俳句のレベルが低い」という発言は失言そのもので撤回していただきたい。確かに夏井先生は「プロ査定」だと思いますが、俳人・選者によって良さはみな違うのです。出演者の発言に対するバラエティー的な冗談でしょうが、プレバト!!の世界だけが俳句ではないのを重々承知の上発言すべきであり、敢えて言うならNHK俳句で一席に選ばれてから言ってほしいですね。最近図に乗った発言が東さん多いですよ。それから、「永世名人」の今後についても言及し浜田氏も採用するくだりがありました。確かに段位も青天井となった今、今後については試行錯誤でまだ未定なんでしょうけど、プロデューサーではないので、番組制作に口出しすべきでないのでは。本人として、上を決めてくれた方が早く段位を駆け上がれて有利に働くと踏んで発言した意図があったとしか思えないです。本人は俳句を毎回必死に詠んでいるのが十分伝わるだけに調子に乗らずに精進して欲しいところです(ちょっと感情的になってしまいすみません)。
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※俳句甲子園'18の対外試合はこちらの記事を参照してください。
●お題:駅の花屋
◆1位 才能アリ70点 白鳥久美子(たんぽぽ)
「晴天に 雲描く筆 花すすき」
【本人談】
田舎の出身だが、都会の花屋にススキが売っててびっくりしたことがある。遠足の山だと一面に白いススキが生えててそれが青空に筆で雲を描いているみたいだな、と思って詠んだ。
夏井先生
とても気持ちよく書けている。
「晴天」は爽快な青空で、「雲」が出てくるためそのまま映像に行くと思ったらここからゆっくりと比喩になる。
「晴天」に「雲」を「描く」かのような「筆」だと。なるほど、スケッチしているのかな?と思うと最後に「花すすき」が出てくる。
花すすきの揺れる様子が雲を描く絵筆のようだなと作者は感じた、と。
まさにポエム少女。
「晴天」の青、「雲」の白、「花すすき」の銀と色彩的にもまさにスケッチしているかのような美しさがある。
これは才能アリと言うしかない。直しはいらない。
添削なし
◆2位 凡人65点 柴田阿弥
「花うんと 教えし祖父や 星月夜」
「星月夜」は月のない夜に満天の星が広がることを指す秋の季語。
【本人談】
実際に花屋に行ったら祖父に教えてもらった花が沢山あり、懐かしい気持ちになった。
その祖父が昨年秋に亡くなり、その切ない気持ちと温かい気持ちが「星月夜」という季語にピッタリかなと思い作った。
村上名人 いや、良いですよ。
浜田 違うやん。名人としての解説をして下さい。
東国原名人 添削って本当に難しいんですよ。
浜田 なるほど。
(夏井先生がうなずく様子)
東国原名人 10年くらいしないと人の添削ってできない。多分10段の永世名人の次は添削コーナーができるんじゃないかな。
浜田 それいただきましょう!
東国原名人 いやいや。大変だから!やめて!
夏井先生
非常に素直に自分の体験を実感を持って書いている。そこが良い。
ここから作者の考え方次第という意味でのアドバイスとなる。
「花」が頭にポンと出てくると、俳句では花=桜なので、読み手はひとまず「桜かしら?」と思う。
最後まで読んで「星月夜」という明確な季語が出てくるため、「花」は「桜」ではなかったと後付けで読み手は思う。
そのことを回避したければ、「うんと」を諦めるしかなくなるが、参考の意味で書く。
「花」が「桜」ではないように読んでもらうために「花の名を」とする。
何の花かわからない花の名前を教えてくれたおじいちゃんがいたと、そんな感じになる。
勉強しましょう、俳句を。
本人 精進します。嬉しい。めちゃくちゃやる気になりました。
[ここがポイント]
「花」には注意
添削後
「花の名を 教えし祖父や 星月夜」
◆3位 凡人60点 遼河はるひ
「雑踏抜け 花一つ買う 夜長堪(た)ゆ」
本人 この前NHK俳句に出させていただいて95点位いただいたんですが…
東国原名人 NHKの俳句ってレベル低いですから。あそこは(個人の見解)。
【本人談】
リアルな私の思い。駅の雑踏を抜けるとザワザワしたところから1人の住んでいる家に帰ったときに寂しくなるが、花を1つ買っておくとざわついた気持ちも1人の長い夜も落ち着く感じを詠んだ。
夏井先生
発想がとてもナイーブ。
作者がわかってこういう女性なんだと。おっちゃん(泉谷)じゃなくて良かった。
発想としては柔らかい感情が句に入っていて素質はすごくある。
勿体ないところは、大事な事で一句に入っている時間の軸がものすごく長い。
なぜなら「抜け」「買う」「堪ゆ」と動詞が3つ入っている。これは俳句ではかなり難しい。
17音に入れるためにはどこか1つの動詞に絞っていく。ちょっとしたコツ。
この句で「花を買う」という行為は大事なので、「雑踏抜け」を遠慮する。雑踏を抜けなくても「花を一つ買う」で十分。
「花一つ買うて」くらいにしておく。これから始まる「夜長を」堪えましょうという意志を書く。
「堪えんとす」とし、堪えようとするという意志になる。
今、花屋の前で美しい花を買っただけではあるが、その花があれば今日の寂しい夜長を私は堪えることができるわ、という意味になる。
北山 寂しい俳句だな。
本人 すごく寂しさを繊細に捉えて心にズキンときました。
[ここがポイント]
動詞の数に注意
添削後
「花一つ 買うて夜長を 堪えんとす」
◆4位 才能ナシ35点 北山宏光(Kis-My-Ft2)
「妻に媚び 秋薔薇包み 酔い終電」
【本人談】
友達と飲んでいた旦那が終電ギリギリまで飲んでしまって妻に薔薇でも包んで機嫌を取ろうかなっていうので。
…35点です。
東国原名人 「妻に媚び」とか状況を説明しなくてもよい。「酔いすぎて」ってあったら申し訳ないなという気持ちは出るので。
村上名人 パッと見で悪いですもん。
浜田 どんな解説や。
夏井先生
確かにパッと見で悪いと思う。
何でキスマイの連中は自分の体験を書かずにドラマばかり作りたがるのか、と。作者がわかって改めて思う。
浜田 それがジャニーズなんです!(声を荒げて)
本人 夢見がち。
夏井先生
ドラマを構築するのが悪いとは言わない。
でも句はあまりにもベタ。酒に酔った旦那が嫁さんに媚びて土産もって帰るという発想がベタ。
3位の句は動詞が3つあったが、発想が詩的でナイーブだからいける。
これは発想がベタな上に「媚び」「包む」「酔う」と動詞が3つあってダラダラ描いている。
いらないものを削ぎ落としていく。まず、「媚び」ると説明する必要はない。読み手がちゃんと読んでくれる。
「妻へ買う」くらいで良い。妻に買いました、と。
観客 お~!
夏井先生 こんなところで「お~!」と言う必要はない!
浜田 お前ら、怒られてどうする。
夏井先生
妻へ買うのは「秋の薔薇」ですね。「包む」必要はないです。ちゃんと包んで渡して下さると想像できる。ここから。
「酔い」とあるが、ここでどれくらい酔っているかある程度言える。
「妻へ買う秋薔薇」で切れて、「終電の」として「ほろ酔い」とすればちょっと酔ってる様子になるが、これを3音で言える言葉がある。
「微醺(びくん)」っていう言葉。これでほろ酔いを指す。
ただ、今の話を聞いた感じでは深酒な感じ?
本人 (弱めに)まあ、そう…
夏井先生 (さえぎって)泥酔?
本人 …深酒ぐらい。
夏井先生 そこら辺の酔い具合があなたが(決めて)…。
浜田 北山、負けたな今。
本人 負けました。正直、ほろ酔いかなと思ったんですけど。
添削後
「妻へ買う秋薔薇 終電の微醺(びくん)」
◆最下位 才能ナシ30点 泉谷しげる
「思い草 家族に向かう 帰路の線」
【本人談】
仕事が終わって電車に乗ると家族のことを考える。その電車が走る車窓の草を見ながらどんどん家族に向かっていく。単純すぎたね。
村上名人 怒らないで聞いてください。ちょっと何言ってるか分からない。これが「駅」ならあれですけど。「線」って言ったら線ですからね。
夏井先生
最下位とはいえ結構良いところもある。
「家族に向かう」という想いの表現。私の心が真っ直ぐに向かっているという解釈をした。「家族に向かう帰路」は詩の欠片として良い部分。
季語的な問題がマイナス点。「思い草」が秋の季語で、俳句の場合は「ナンバンギセル」というハマウツボ科でイネやススキ、ミョウガなどの根に寄生する植物を指し、20cmくらいになるものである。この句ではナンバンギセルと解釈したため、ここから後がわかりにくい。
長い字余りの上五として「家族に向かう」から始める。帰路が電車だとわかるように書く。
「線」を消し、「帰路の車窓の」と書くだけ。最後に「思い草」とする。
「思い草」がナンバンギセルに思われると車窓からは見えない。「思い草」は家族への思いと掛けているような解説だったため、ここは「秋の草」として誤読を避ける。
こうすると語った映像が17音に入る。
こおタイプの句は「将来性のある才能ナシ」となる。
4位のヤツはほぼ将来性がない。
北山 もうヤツですか?
添削後
「家族に向かう 帰路の車窓の 秋の草」
★特待生昇格試験★
村上名人 7段くらいでは世間の人は凄いって言ってくれない!10段がいらっしゃると。トップ3に入っていない。数字として上がらないといけない。
◆「真夜中の 花屋の灯り 秋澄めり」 村上健志(フルーツポンチ)
「秋澄む」とは秋の澄んだ大気を指す時候の季語。
【本人談】
花屋って深夜営業している店があったり閉店後もライトアップして灯りがついたままの花屋がある。
暗い中を歩いていると「灯りがある!」と思ってそれが花屋なら素敵じゃないですか。
その素敵な感覚とこの「秋澄めり」という映像や音がくっきりとしてくる様子に跳ね返ってぐるぐる回っていく感じ。
東国原名人 ポエム男子。
本人 ポエってます?
夏井先生
この句の評価のポイントは季語「秋澄めり」の是非です。
■査定結果
名人8段へ1ランク昇格
本人 よーし!(立って上を見る)
北山 どこ見てんの?
理由:季語の選択が見事
夏井先生
季語は最後に褒める。
発想から。兼題写真の花屋を見てこれが夜中になったらという風に時間を動かして考えてみるのも、発想法の一つとして良いポイント。
いつも明るい地下街とかではないというのも分かる。暗い街中でポッと灯りがついている。
「何だろう」と思って近づいてみると花屋だとわかる。他のお店とは違って心に灯りがともるような小さな嬉しさがある。
本当にポエム男子らしい切り取り方。
勝負は最後の季語。秋の清澄さを表す季語は他にも色々ある。「爽やか」も秋の季語。
この句では「夜」なのが大きなポイント。「秋澄めり」を選んだのは偉かった。
真夜中なのに、夜の大気が澄み切っていることに作者は気付いた。その澄み切った空気の中にポッとともったこの灯りに作者は心から灯りを美しいと感じている。その気持ちが静かに読み手にヒタヒタと伝わる季語を選んだ。
褒めたいのはいっぱい褒めたいが、このニヤニヤした顔がどうもイラつく。直しはいらない。
添削なし
★永世名人への道★
東国原名人 この句を読んだら東国原じゃないなと思う。そんなチャレンジをした。
◆「女店員の 首にキス跡 桔梗(ききょう)買う」 東国原英夫
【本人談】
作者は女店員にほのかな恋心を持ってたんじゃないか。花屋の店員は清楚で慎まやかな感じ。その首筋にキスマークですよ。どう思う?
浜田 確かに彼氏おるやん!とか色々やってるやん!みたいな。
それで「桔梗買う」ってので花屋なんだな、と。「桔梗」は花言葉が気品とか清楚とか。桔梗じゃなくて失恋の花言葉の花でも良かったが、敢えて清楚である「桔梗」を買う。切ない!
夏井先生
この句の評価のポイントは「買う」という動詞の是非です。
■査定結果
名人10段へ 1つ後退
理由:季語の印象が薄い
浜田 髪も薄い!
豊崎アナ 書いてないです。
本人 そんなこと書いてある?
夏井先生
発想は楽しませてもらった。流石だと思う。
あの兼題写真の中から「キス跡」を見つけ出してくる。発想の王者。
何が勿体ないか。主役となってほしい季語の「桔梗」よりも「女店員」の方が完全に目立っている。そこのバランスの問題。
上五中七の印象を少し落として社役の季語を目立たせる手を使う。今後のこともあるため。
女店員と言わずに、女性と想像させる。その流れの中で上五は消す。
「買う」を操作すると案外できる。ここを女店員の動作に変える。
上五は「桔梗」のアップから。「桔梗」を「きちこう」と4音で読ませる。「桔梗(きちこう)を」とするか、「を」が嫌なら より清楚な白を持ってきて「白桔梗(しろききょう)」とする考え方もある。
「買う」を「勧める」に変える。こうすると店員になる。ここから生々しくする。
「首」は全体を指すが、「首筋」と書く。「首筋に」とし、キス「跡」は「痕」の方が良い。
これくらい生々しくしたら逆に季語「桔梗」の清楚さがより際立ってくる。そういう感じになる。
添削後
「桔梗(きちこう)を勧める 首筋にキス痕」
「白桔梗勧める 首筋にキス痕」
本人 プロ査定ですよ。スゴイ高度。厳しい。難しすぎる。
浜田 ここ早く行ってもらわないと今度、添削名人の道が。
本人 いやいや。何言ってるんですか、そんな。
編集後記
今回のお題写真は京王線新宿駅の百貨店側改札が見えるカレーショップ側からの花屋の写真でした(カレーショップは京王グループのチェーン店です)。
1位の白鳥さんはポエム少女として深い情景の句でしたね。女芸人初の特待生にも名乗りを上げてきました。
2位の柴田さんも物語として詩になっていました。アイドル出身としては好成績ですし、本人もやる気があるので再挑戦してほしいところ。
凡人2名は動詞多用で自滅していましたね。特に最多出場の北山さんは上五の時点でアウトです。また母親から「いい加減にしろと」怒られそう。
名人2名は明暗が分かれることに。まず、村上名人は本当に絶好調です。今回は想像に近い句でしたが、最近は全く背伸びしない句が多く、まさに破竹の勢いで段位を駆け上がっています。
東国原名人は、スキャンダラスな感じに頼りすぎて季語を疎かにするという失態で後退し、せっかくの星を失ってしまいました。イスのセットにも赤い星が左に1つついていましたが、後半の俳句甲子園の企画では早速星0に。また頑張ってもらいましょう。
最後に、東国原名人に物申したい。「NHK俳句のレベルが低い」という発言は失言そのもので撤回していただきたい。確かに夏井先生は「プロ査定」だと思いますが、俳人・選者によって良さはみな違うのです。出演者の発言に対するバラエティー的な冗談でしょうが、プレバト!!の世界だけが俳句ではないのを重々承知の上発言すべきであり、敢えて言うならNHK俳句で一席に選ばれてから言ってほしいですね。最近図に乗った発言が東さん多いですよ。それから、「永世名人」の今後についても言及し浜田氏も採用するくだりがありました。確かに段位も青天井となった今、今後については試行錯誤でまだ未定なんでしょうけど、プロデューサーではないので、番組制作に口出しすべきでないのでは。本人として、上を決めてくれた方が早く段位を駆け上がれて有利に働くと踏んで発言した意図があったとしか思えないです。本人は俳句を毎回必死に詠んでいるのが十分伝わるだけに調子に乗らずに精進して欲しいところです(ちょっと感情的になってしまいすみません)。

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