fc2ブログ

記事一覧

20180913 プレバト!!俳句紹介【古書店街】

2018年9月13日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。

●お題:古書店街

◆1位 才能アリ72点 相田翔子
初恋と 秋の陽香る 古書百円

【本人談】
淡い恋をしていた頃、憧れの人の家が壁中 本だらけでお金のない時代だったため全部古本屋で買ってきていた。
古本屋に行くとそのことを思い出して、古本屋のあの匂いが独特であり、切ないのが思い出の一冊なのに100円という価値だった。

梅沢名人 素晴らしい。「初恋」「古書百円」の2つを組み合わせたのは本当に素晴らしい俳句世界がよく見えます

夏井先生
詩心がある句。
古本の匂いを秋の陽が香るような匂いと受け止める。その感覚がすでに詩。
「初恋と秋の陽」と読んでいくと「美しい・上品なものが出てくるのかな?」と思う。最後に「古書百円」と出てくるギャップも読み手を唸らせる。
俳句として上五の「と」は迷うところ。「初恋や」として強調する可能性もある。この句の場合は「初恋」を強調すると全体のバランスが微妙に崩れる。
この句が良さは「初恋」「古書」が並列で並べられるところ。並べられた今は「百円」で売られている「古書」というものに「秋の陽」が香り立つような日ですよと、季語「秋の陽」が静かにしみじみと読み手の心に押し寄せるような静かな感慨が生まれる。そこも考えられて「と」にしたのではないか。
とてもセンスがある一句。直しはいりません。

添削なし

◆2位 才能アリ70点 岡江久美子
魂祭(たままつり) 父の香を追う 書斎かな

※秋の季語「魂祭」はお彼岸に先祖の霊をまつる行事のこと。

【本人談】
本好きの父が亡くなって14年。実家は父の書斎をそのままにしてあり、そこに入ると父の香り・思い出が溢れるという様子を詠んだ。

梅沢名人 素晴らしい。ホントにあの~。なんていうのかな。素晴らしい俳句ですけど。
浜田 ちょっとおかしいおかしい。
梅沢名人 これが1位になれなかった理由が1つある。中七「追う」を違う言葉に変えたら1位だった。

夏井先生
エラい~!
まず「魂祭」という季語。ご先祖の霊をおまつりする盂蘭盆会(うらぼんえ)の行事・仏事のこと。これを持ってきて、「父の香」匂いを追いかける「書斎」ですよと。最後に場所が出てくると「父」がどういう人か想像できる。言葉のチョイスは上手い。
このままでも言いたいことは伝わるし、十分鑑賞できるが、微妙なのが「追う」。やわらかい言い方にしてもいい。なぜなら「かな」という詠嘆と「追う」がお互いに強くなりすぎる節がある
もう一つ、「書斎」は今もそのままにしてあると。しかし、「魂祭」の日の「書斎」に改めてしみじみと「父の香」を想うニュアンスが表現したかったと。
「父の香を」から始める。ちょっと柔らかく「慕う」とする。「魂祭の書斎」で良い。「かな」は不要。
こうなると、「いつもの日の書斎ではなくまさに魂祭の日の書斎に父の香を慕って思っている」と。
これがお聞きしたニュアンスに近い。

添削後
父の香を 慕う魂祭の書斎

◆3位 凡人65点 ジェジュン
夕虹や 母のカレーの 馨る路地

【本人談】
神田方面に行き、古本屋が並んでいた。カレー店も多いと聞いた(梅沢:神保町でしょ)。すごくカレーの匂いがして、それが子供の時の母がよく作ったカレーに似ており、写真を見た瞬間そのイメージが出た。

梅沢名人 大したもんだわ。神保町はカレーが有名なんですよ。それをちゃんと自分の中で経験したことを書いた。「馨る路地」っていう言葉を使うのは憎いね!
村上名人 本当に良いですよ。3位ですけどもうちょっとで才能アリ。
梅沢名人 才能アリが1位・2位だもん。3位はもうちょっとで才能アリに決まってんだろどうなんだ、この俳句は
村上名人 …良いです。

夏井先生
これは型をきっちり押さえた句
上五「虹」が夏の季語。「夕虹や」と4音の季語と「や」で5音を構成する。
それと季語とは関係ないフレーズで12音作る。これは基本中の基本の型。
12音で「路地」という場所を具体的に描写すると初心者でも俳句は作れる。
[俳句の基本形]
 5音        12音
□□□□□ □□□□□□□ □□□□□
 季語      季語以外

形としてはきれいにできている。勉強している。
ただ、発想としては「虹」「母」「カレー」という盤石な凡人的発想の3点セットがあるといえばある。発想の点が惜しい。
お話を聞いて変えた方が良いところが1つだけ見つかった。
上から読むと「路地」で終わるため、路地のどこかに自分の家があって本当に母のカレーがそこで待っている、とも読めてしまう。
母のカレーを思い出したということなら、そう素直に書いた方がいい。
「カレーをおもう」くらいでよい。あなたの言いたいことは全部伝わる。
路地のどこかで夕暮れのカレーの匂いがしてきたというのは、読んだ人はみんなわかってくれる。
あなたがこういうの作れるってお見事。

浜田 でもこれ(韓国人の)ジェジュンに負けたら恥ずかしくない?
本人 どちら様ですかね?

添削後
夕虹や 母のカレーを おもう路地

◆4位 凡人60点 大和田伸也
街漁り 見つけし古書や 帰路良夜

【本人談】
何年か前にどうしても欲しい本があり、探したらあった。店を出たら夜になっており、充実感みたいな「やったぞ!」という気持ちを爽やかな風を浴びながら帰路に就いた。

村上名人 ちょっとだけ窮屈な感じがする。「漁り」「見つけし」がぶつかってるのと。「帰路良夜」もぶつかっちゃってる気がするんですけど、違ってたらすみません

夏井先生
最後の「帰路良夜」という表現はとてもいい。「良夜」が秋の季語で月の明るい美しい夜を指す。「帰路良夜」と畳み掛けて持ってくるのは詩心がある。ここだけはすごく褒めます。
勿体ないのは、「漁り」「見つけし」と動作が畳み掛けられている。しかも最後「帰路」で帰るところまで行く。この時間軸が目まぐるしくせわしなく動く。そこがとても勿体ない
「漁る」は残しておき、「見つけし」を書かなくても見つけたことがわかるように俳句は作れる。「見つけし」は帰っていただく。
「古書街」とつなげて始める。これだけで街、場面、何を探しているかもほぼわかる。
「漁る」目的は「一冊」。最後「帰路良夜」で「嬉しい良い夜だな」と季語が表現してくれて、一句の中でとても良く効いてくる。
これやってくれたら1位。

本人 どうしてだろう。(4回連続の)凡人から抜け出せない。この壁をどうしたらいいの?
浜田 それはテメェが悪いんじゃないの?

[ここがポイント]
動作を入れ込み過ぎない

添削後
古書街を 漁る一冊 帰路良夜

◆最下位 才能ナシ37点 ひょっこりはん
参考書 窓から灯す 花火かな

【本人談】
一番本を読んでいたのが受験の時。夜も勉強してるけど、外は祭で大きい花火が打ち上がってその光が部屋に漏れてくる。
外は楽しくやってるけど自分は頑張らなきゃという受験生の切なさを詠んだ。

梅沢名人 ひょこ。しっかり俳句を勉強してから書きなさい。「窓から灯す」ってドカンって花火が上がってるんだろ。なんで灯すんだ、チョロっとしか。これ読んだら、参考書読みながら窓から線香花火灯しているってそんなことやってるって思うよ。よくそれで早稲田入れたな!
本人 マークシ-トだったんで。

夏井先生
日本語としてなんか変ですよ。
「窓から灯す」ってのが。おっちゃん言ったように私も線香花火こうやってね、気が合うよね、今日。それ以外読めない。
参考書開いて勉強してんのね。書こう、何でもいいや 書こう
「参考書めくれば」くらいにしますかね。「から灯す」っていうのはあなたなりに工夫したところなんでしょ?
本人 カッコいいかなと思いました。
夏井先生 そっかそうか。頑張った、頑張った
「窓の」でいい。灯すな!「大花火」と嘘かもしれないけどこう書こう。こうすればあなたの言いたいことは一応書けた。
でも本当にこんな良い場所にあんたん家あるの?(→窓から参考書を照らせるほど大きな花火が見える物件を指摘する先生)
本人 なかったです。

添削後
参考書 めくれば窓の 大花火

★特待生昇格試験★

◆「作家別に 揃え直して 夜は長し」 村上健志(フルーツポンチ)

【本人談】
秋の夜長は読書や勉強にも良い季節ではあるが、本棚の本がバラバラになってるんで「作家さん別に揃え直そう」とそんなことでさえ楽しく思える。「揃え直ったぞ」と思ってまだまだ夜は長いとか、「懐かしいな この台詞好きなんだよな」と見返しちゃう。こういうのが秋の夜長にはすごく似合う(ずっとにやけながら)。

浜田 お前だけが楽しそうやけどな。
本人 見えてくるでしょ。物語が。
梅沢名人 素晴らしいですけど、許せないのが季語の「夜長」をお前崩したな。「夜は長し」って。え?俳句の大事な季語をお前は崩したんだよ。な?
本人 
「夜長」を「夜は長し」と。
梅沢名人 そう。なっちゃん先生に怒られろ!え?無礼千万だ!え、季語をそんなお前…。
浜田 せんせーい。

夏井先生
この句の評価のポイントは中七「揃え直して」です。

本人 全然関係なかった。怒られ損だよ、俺。

■査定結果
名人7段へ1ランク昇格

理由:動作に心情がよく表れている

梅沢名人 それは確かに…。

夏井先生
本が好きな人特有の動作だとしみじみ思う。
「作家別に」から始まって「揃え直す」という動作だけで何を楽しんでいるのかありありとわかる。
綺麗に並べた後にあーこれ「懐かしいなあ」と本を手に取るという作者の行動がそのまま読み手に伝わる。
本が好きだという「夜長」を楽しむ思いが中七の動作から伝わる
「並べ直して」でも意味はほとんど一緒だが、「揃え直して」という複合動詞のチョイスもよく考えたんでしょ?
本人 (照れながら小声で)気づかれちゃいましたか。
夏井先生
おっちゃんの指摘もある部分正しい。ここは気づいてもらいたいところ。流石だと思いました。
普通は「夜長」「長き夜」が正しい季語。勝手に「夜は長し」とアレンジするのはいかがなものか?」となりますね、おっちゃんね。
梅沢名人 そうです。もっとキツく言ってやって!昇格はおかしい!降格だよ!
夏井先生
…なります、この句の場合は作家別に揃え直すという動作が、何回も何回も並べ直していくんでしょうね。
「夜は」の「は」は色々あるけど「これは」と指差す効果がある
秋の日はそれぞれに楽しいが、この夜こそは「この長い夜こそはなんと楽しいんだ」という思いがこの「は」に強調されている。
作者はそれを「あえてやったのではないか」と読み取れる節がある
ホントかどうかあの(照れたような)顔ではわからないけど、作品としては読み取れる部分がある。直しません。


梅沢名人 ちょっと甘いんじゃない!なっちゃん、甘いんじゃない!

添削なし

★永世名人への道★

梅沢名人 今回は本当に素直な気持ちで、自分が経験したことを俳句にさせていただきました。泣くと思いますよ、なっちゃん。
浜田 マジですか。あれ(=夏井先生)泣くタマですかね

◆「長き夜に 母の声音(こわね)の 『ぐりとぐら』」 梅沢富美男

【本人談】
季語「長き夜」を崩さずに使った。長女が『ぐりとぐら』(双子の野ねずみが主人公の子ども向け絵本)が大好きで女房が読んであげていた。これを読んだ方は「うちの子もそうだったな」って思える俳句を詠んだ。

村上名人 梅沢さんってこういう優しい部分があるって俳句見ると思う。
本人 「母の声音の」ってこの言葉知ってるのは「300年に1人の役者」しかいない。舞台でもよく使う言葉ですよ。


夏井先生

この句の評価のポイントは上五「長き夜に」です。

本人 うそ。

■査定結果

名人10段で現状維持

理由:名人10段のくせに安易

夏井先生
何といっても「ぐりとぐら」が良い。うちの子供たちも好きでした。
「母の声音の『ぐりとぐら』」って言われると聞いてる声は違うけど、それぞれ母や奥さん、自分自身と場面をありありと思い浮かべる。
他の本でもいいが「ぐりとぐら」という響きもかわいい。とてもいい。
持ってきたのが「長き夜」という長い夜を楽しむ秋の季語。この辺りは完璧
完璧なおっちゃんがなぜ「に」を取りこぼすかな。
本人 それは「の」にしたかったのよ。
夏井先生 「の」にしたかったのに、なぜ「の」にしなかったの
本人 そこで切れるような気がして、「の」じゃなく「に」の方がいいのかなって。
夏井先生 思ったの?
本人 
そう。
夏井先生 
残念ね。

特に上五の「に」は散文的になりやすいので、一回立ち止まって「に」以外意味が伝わらないのか考える助詞。10段なら覚えてくれてるはず。
しかし、あえて「に」を使ったと本人は言う。「に」以外は「の」を考えた。そうすると「長き夜の母の声音の」と意味が順々に下に繋がっていく効果になる。ここは違います。何ですか?
本人 「を」?
夏井先生 「を」!?
(大変驚く様子)
浜田 めっちゃ驚かれてるやん。
夏井先生
もう答え言う。「や」です。「長き夜や」と強調する。強調で「長き夜」の季語を活かしておいて、長き夜に何が起こってるんだろう?と。
「母の声音の『ぐりとぐら』」という風に整えていくと。これは定石ですよ、おっちゃん。
10段のくせに。

添削後
長き夜 母の声音の 『ぐりとぐら』

本人 確かに「や」も良いと思いますけど、ここはお前さん冷静に考えて、ここでやんないと。私の場合現状維持は許されないのよ
夏井先生 なんで?
本人 なんでかって、番組のこと考えなさいよ!私が東くんの下にいるって許されないのよ!
夏井先生 誰が許さないの、それ?
本人 視聴者の人たちが許さないのよ!
夏井先生 視聴者の人たちは冷静に見てくれてる、大丈夫。
浜田 そうですね。大丈夫ですよね。
本人 何が…そんなに俺のことが…
浜田 先生、ありがとうございましたー。

編集後記
今回も才能アリは2名。1位は淡い初恋と100円の古書が生み出す場面描写が綺麗な句でした。
2位は勉強好きの父の書斎の場面で2句とも嗅覚に訴える句でした。
3位の句も夏井先生の初心者向け著書にも書かれている基本の型を踏襲していました。
4位の句も言葉は大変綺麗で発想豊かには思いました。弟さんに負けず、才能アリをとってほしいですね。
昇格試験は2名とも「夜長」をテーマに詠み、明暗が分かれました。
村上名人はにやけながら楽しそうに句を説明しました。季語ともジャストフィットしていましたし、世界観を表現する力が上手いですね。連続昇格中と絶好調です。
一方の梅沢名人も自身の経験を詠んだ見事な一句でしたが夏井先生を泣かすどころかまた前進に失敗。王道俳句がゆえに助詞の選択という難しい部分で添削されてしまいました。この永世名人制度はかなり梅沢名人には厳しそうです。
最近は、出演者の過去の成績を最初に詳しく紹介するスタイルが定着していますね。このブログでも集計データを色々と公開していますが、まだまだ精進が足りぬようです。まあ細々と続けていきたいところです。

関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

プロキオン

Author:プロキオン
俳号「白プロキオン」。全てのブログ記事を編集しています。
毎度閲覧いただきありがとうございます。時間があるときにでもどうぞ。
全俳句を掲載してほしいなどのリクエストはコメントしていただけると助かります。

ツイッターでは番組の放送予告などをツイートしています。以下リンクからどうぞ。
プロキオン
***
番組公式ツイッター
***
着流きるお氏(プレバト兼題で俳句を独自査定する若手俳人・ブログ編者とは無関係です)
***
夏井いつき氏(プレバト!!出演の俳人)

人気記事ランキング

↓訪問者数です