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【俳桜戦】20180412 プレバト!!第2回俳桜戦 名人・特待生のタイトル戦での披露句紹介

2018年4月12日放送 プレバト!!
年4回の改変期に選ばれし特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
桜の季節に行われる第2回俳桜戦で名人特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。

●お題:桜と富士山

優勝花震ふ 富士山 火山性微動」 名人6段 東国原英夫
2位空のあお 富士の蒼へと 飛花落花」名人9段 梅沢富美男
3位乙女座の スピカ流るる 花吹雪」1級 千賀健永(Kis-My-Ft2)
4位「銭湯で 花見の日取り 決まりけり」2級 三遊亭円楽
5位「もの思うこと 忘れおり 花衣」名人2段 横尾渉(Kis-My-Ft2)
6位「肉食の フェンスの施錠 山ざくら」名人8段 藤本敏史(FUJIWARA)
7位「逆さ富士に目 桜鱒 天めがけ」2級 中田喜子
8位「噺家が 魅する桜と 富士の山」4級 千原ジュニア
9位「啓蟄や 花びらも食べ 空も食べ」5級 松岡充

○順位別に見ていきます

優勝花震ふ 富士山 火山性微動」 東国原英夫

【本人談】
桜と富士という呼びかけの兼題。
富士山は霊山で数百年に一回噴火する活火山であり、それを護っている浅間神社に祀られているのは木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)で、佐久夜(さくや)が「さくら」になった。つまり、桜が富士山を護っている、住民たちを護っている。
その桜が「もうすぐ富士山が爆発するかも」と火山性の微動で教えてくれている。
「震ふ」と旧仮名遣いにしたのは、歴史的な流れがあるから。「花」は「桜」より歴史的な意味合いがあるため、「花震ふ」とした。

梅沢名人
……恐れ入りました。

夏井先生
とにかく意外性がこういう形で出ることに驚く。
花、富士山、火山の3点セットはベタなのだが、こういう描き方をされると意外性が出てくるのが驚かされた。
「花震ふ」は桜の花のアップで風に揺れているのかと思う。予定調和のごとく「富士山」が出るとベタな句かと思うが、
「火山性微動」と出た瞬間に、「花震ふ」は風ではなく、火山の微動で揺れたのかと皮膚で感じたと受け取れる。
写真からこういう切り取り方をしながら、写真には現れない震え、微動や皮膚の感じをしっかり添えてくるのは上手い。
おおよそ詩になりにくい科学の言葉を詩の言葉にすることで、「桜」の美しさと背後の恐ろしさを一緒に表現している。
これはしょうがない。これは1位だと認めよう。直しなどない。


◆2位「空のあお 富士の蒼へと 飛花落花」 梅沢富美男

【本人談】
写真を見た通り。空が真っ青じゃないですか。富士山が蒼いじゃないですか。
そこに桜の花びらが飛んでいく、花吹雪がたくさん。こんな素直な句があるか。

東国原名人
富美男節。ありふれた情景をありふれて詠むのは成功・失敗の落差が激しい。
これは見たまんまを詠んで成功している味わい深い句。

夏井先生
俳句の世界をなんだと思ってギャーギャー吠えているのか。
良いところは山ほどある。褒めようと思っているのに吠えるな。
この句は正統派の作品。まさに写真を忠実に描こうとしている。
空の美しさを「あお」とひらがなにして春らしい水色の優しい表情を、富士の「蒼」は硬質な冷たそうな青で、2つの色を表記を書き分けており、遠近感や色彩の違いをこれだけで言えている。これは上手い。
「へと」もうまい。空は上に広がるが、富士は遠近感・奥行きを表現しており、空と奥行きに何かを誘導しながら、「飛花落花」という見事な季語が出てくる。
艶やかな光や動きが出てきて、季語の艶やかさが一句を覆い尽くす。
俳句のメカニズムを分かってる人が作る王道の俳句。直しは要らない。


◆3位「乙女座の スピカ流るる 花吹雪」 千賀健永(Kis-My-Ft2)

【本人談】
夜空をイメージ。春の季語「乙女座」の一等星「スピカ」が真珠星という綺麗な星。
桜吹雪が舞う中スピカが泳いでいるイメージ。

東国原名人
冬麗戦の句「雪原や 星を指す 大樹の骸」と同じ手法。
前回は星と雪原、今回は星と桜吹雪。同じ発想だ。
この枠を超えないと1位にはなれないね。

夏井先生
美しい言葉を取り合わせた美しい句。このままでも鑑賞できる。
「スピカ」という響きと「花吹雪」という季語との出会いが美しい。
夜を想像できる発想力もいい。いい調子できているから、迷わずに詠みたいことをまっすぐ詠むのがいい。
悩ましいのは「流るる」の位置。作者の意図として「スピカ」があたかも流れているように見させてくれる「花吹雪」であるというのは理解できる。
流れているのが「スピカ」か「花吹雪」のどちらを指すか迷う風にもとれるので、字余りにして映像を2カットにすると強弱・遠近感ができる。
「よ」で一旦詠嘆して「スピカ」の映像を確保し、「花吹雪」を出してさらに詠嘆すると、乙女チックな気分になる。

添削後
乙女座のスピカよ 花吹雪流るよ


◆4位「銭湯で 花見の日取り 決まりけり」 三遊亭円楽

【本人談】
下町の社交場である銭湯で後ろに富士山が描かれている。
湯に浸かる町内の連中が「咲いたね」「飲みに行く?」という会話をしながら、ふと見たお頭の背中には桜吹雪があるイメージ。
町内がワイワイ浮かれているさまを詠んだ句。

梅沢名人
素晴らしい句だが「決まりけり」が気になる。「日取りかな」で締めるとよい。→○正解

夏井先生
人物がいる俗な場面を切り取るのがうまい。
兼題写真からの風呂場の富士山のイメージと本当の花見に行く発想も入っている。
「で」が散文的なので、動詞を続けさせた方がいい。
「日取りかな」で「日取り」を強調して締めた方が良い。

[ここがポイント]
桜を詠むか、富士を詠むか、両方を詠むか。

添削後
銭湯で 決まる花見の 日取りかな


◆5位「もの思うこと 忘れおり 花衣」 横尾渉(Kis-My-Ft2)

【本人談】
新生活で多忙な中、友達の誘いで花見に来ていく晴れ着「花衣」ばかりを考えてしまい、
それ以外のやらなきゃいけないことを忘れてしまったという状況を詠んだ句。

梅沢名人
ジュニア、発想はいいけど難しい。もったいないなあ。

浜田
ジュニアはもう一人(千原ジュニア)いるからww

夏井先生
この句は書かれた字面通りに詠んで、物思うこと(=憂い)を忘れている。
めんめんと憂うことを忘れるくらい美しい花衣(花見の晴れ着)なんだと受け取れた。
話聞いて違っていたのでうろたえている。
「やるべき」はストレートに書くのが得策。
やるべきことを忘れるくらいに花衣にウットリしている感じと、「ハッ」としている感じと2つのニュアンスを入れたいとは難しいことを言う男だね。
「うつつ」は現実、夢心地という相反する意味をもっているので、現実と夢との間でフワッとする気分にはなる。
最後に「うつつ」で春の夢心地を一層掻き立てることができる。

添削後
やるべきを忘れ 花衣のうつつ


◆6位「肉食の フェンスの施錠 山ざくら」 藤本敏史(FUJIWARA)

【本人談】
サファリパークに行き、車で肉食動物のエリアに入る状況で、入口のフェンスが開くときや閉まる時に妙に緊張する。
トラやライオンが出てくるのではないかと緊張しながら、ふっと見た山桜が緊張をほぐしてくれる。

梅沢名人
肉をフェンスにくっつけたの?肉食動物なら肉食獣と書かないと詠み手としてわからない。 →○正解

夏井先生
サファリパークに発想を飛ばし、フェンスと鍵のところにハッキリと焦点を絞ったところは良い。
早く咲く山桜という季語を取り合わせたのもいい。
「ざくら」があえてひらがな表記にしたのも効果的。堅い肉食やフェンスのイメージに柔らかいイメージを添えてよい。
たった1つのミスは「獣」の一字がないこと。「肉食」は肉食動物を短く言う言葉だが、最近「肉食女子」などと違う意味にも使われているので、このむき出しは損。
「獣」があれは上位三つに入っていた。定型の五七五を崩してでも詠み手を迷わせる表現にしては良くない。

添削後
肉食の フェンスの施錠 山ざくら


◆7位「逆さ富士に目 桜鱒 天めがけ」 中田喜子

【本人談】
逆さ富士の情景を浮かべ、その湖にいる桜鱒に桜のイメージを託した一句。
水面に映る逆さ富士を見ていると、突然魚の目が出てきた。
あっと思っていたら桜鱒がジャンプしたという場面を詠んだ。

梅沢名人
素晴らしい発想だが、今の話の意図は読み取れない。
「鱒跳ねる」とすれば、この句はぐるっと変わって世界がハッキリする。→○正解

夏井先生
取りこぼした。
「に目」の誇張表現が失敗。逆さ富士は水面が見えるある程度の距離があるはず。そこ「に目」だと詠み手は混乱する。
「天めがけ」の擬人化も大袈裟。もったいない。
「ゆらぐや」で強調。素直に「跳ね」たらいい。
この発想は上位3つに食い込めるものだった。本当にもったいない。
今晩中悔しいはず。

[ここがポイント]
誇張しすぎない

添削後
逆さ富士揺らぐや 桜鱒跳ねる


◆8位「噺家が 魅する桜と 富士の山」 千原ジュニア

【本人談】
花見の場面が出てくる落語の演目「100年目」を寄席で語る落語家の一場面。
江戸時代の隅田川で花見をして向こうに富士山が見えるように語る噺家の話術の凄さを表現しようとした。

梅沢名人
上手な噺家から下手な噺家までいるわけだから「円楽が」と具体的に人名を入れればいい。→○正解

夏井先生
落語に発想を飛ばしたのは良い。
色んな噺家がいるわけだから、噺家をもっと具体的に。「米朝」などとすれば声まで聞こえてくる。
「魅する」が説明的。「語る」にして映像をはっきりと。
「桜」は本物の桜ではなく、語られている虚構の桜なので、「富士と空」で並列に持っていき情景を浮かびやすく。

[ここがポイント]
虚構には映像を補足

添削後
米朝の 語る桜と 富士と空


◆9位「啓蟄や 花びらも食べ 空も食べ」 松岡充

【本人談】
今まさに花を開こうとする挑戦者や若い世代を「啓蟄」にたとえ「花びら」とわざと季重なりにした。
伝統に裏打ちされた桜も乗り越え、富士山の上の日本も越えて世界まで手を伸ばす若き才能を表現したかった。

東国原名人
「啓蟄」は虫が出てくる状況ではなく、そのような時期をさす「時候」の季語。
できるだけ具体的な映像を添えないといけないのが、基本中の基本。→○正解

夏井先生
「啓蟄」は穴から出る虫のことではなく、虫が穴からでる頃という時間をさす。
若い才能を比喩するのは少し無理がある。
作者の意図を表現するには「啓蟄」をあきらめた方がいい。
「も」がもったいない。「を」で食べるものをしっかりと特定する。
「花びらを食べ」で虫か鳥かと想像させ、「空を食べ」で何かを比喩していると詠み手に想像させる。
下五に若人達を想像させる言葉を置くと良い。

添削後
花びら食べ 空食べ 未来へと

編集後記
今回は、梅沢名人の指摘がどれも的中しており夏井先生も驚いてましたね。
特に千原ジュニアの句の噺家の部分を円楽がとした部分は冒険過ぎる指摘かなと思いましたがさすが最高位名人というところ。
冬麗戦と異なり、終わってみればランキングは比較的順当な形で収まりました。
東国原名人のインパクトのある理性的俳句、梅沢名人の描写に徹した王道俳句が見事でしたね。並みの俳人でもなかなかかけないと思います。


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