2018年9月6日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
●お題:秋の味覚[店先のサンマ]
◆1位
才能アリ71点 小倉優子「
朝の陽や 父と煮詰めた 柿のジャム」
【本人談】サンマから自身の思い出の柿に発想を飛ばした一句。
実家に柿の木があり、父と一緒に柿をとって母が大好きな柿を煮詰めてジャムを作った。
私はお嫁に行ったが、柿のジャムを食卓に並べている。
朝のキラキラと柿のジャムのキラキラを表現した。
夏井先生上五の切れが気持ちいい。「朝の陽や」という光だけ。朝という時間の光だけでカットが切れる。
中七で「父」が出てきて何をしているかも書いている。
下五で季語の「柿」が出てきてそれが「ジャム」であることがわかる。
父と柿のジャムを煮るという事実に作者なりのリアリティーがあるのが読み手にしっかりと伝わってくる。
俳句は
自分の経験を素直に切り取って書くのが一番リアリティーが強く出る。素直さを大きく褒めたい。
一点だけ勿体ないのは「煮詰めた」。「煮詰めた」って
ちょっと不味そうな気がしない?煮て煮て煮詰めるわけですから。
普通に「煮ている」とすると、今煮ているという感じになる。
昔父と一緒に煮ていた情景も浮かんでくるし、十分言いたいことは伝わる。
その素直さを大事に才能だと思って育ててくださいね。
本人 こんな気持ちにさせていただけるなんてほんとに…。
浜田 そんな
感動の番組じゃないから。
添削後
「
朝の陽や 父と煮ている 柿のジャム」
◆2位
才能アリ70点 篠田麻里子「
秋の宵 独身女と サンマ缶」
【本人談】仕事で疲れて帰ってきてご飯作ろうって時に、今からサンマを焼くよりも独り身で寂しくサンマ缶を開けて秋を楽しもうと。
ちょっと寂しい句。
梅沢名人 私に言わせると、「独身女と」を変えるだけで1位になったかも。固定しちゃった。
夏井先生おっちゃん偉い~!おっしゃる通り。
3回に1回正しいこと言う。素晴らしい。
サンマの写真を見たからと言ってストレートにいかず、「缶」に持っていく発想のずらし方は良い。
「秋の宵」という季語を持ってくるところも良い。
なぜ1位が取れなかったはおっちゃんが指摘したところ。
主役となるべきは季語「秋の宵」だが、読んだ時に「独身女」が主役となり、
季語が背景に落ちている感じがするのは勿体ないという点が一つ。
さらに、「独身女」という悲哀をもって語りたいのは分かるが、作品として
「女」と書かない方が読みの共感が広がる。人類の半分は男なので、独身男も同じような悲哀を感じることになる。そこを微調整すればよい。
「独身」からいく。「や」と勝手に詠嘆。「秋の宵なる」とすると「サンマ缶」につながる。
こうすると、秋の宵のサンマのおいしい季節なのになぜ私はサンマ缶開けて食べてるのか、という感じになる。
これなら今日はこれが1位だった。
[ここがポイント]季語の効果的な演出
※「サンマ缶」として季語「秋の宵」との季重なりを避けたが、肝心の季語が背景に落ちてはいけない。季語とつなげることでせっかく秋なのにという侘しさがより強まり、季語が引き立つ語順となる。添削後
「
独身や 秋の宵なる サンマ缶」
◆3位
凡人60点 鈴木福
「
夜の風 父とちびちび 栗おこわ」
【本人談】サンマから秋の味覚の「栗おこわ」に発想を飛ばした一句。
僕が栗おこわが大好きで、好きなものは味わいたいからちびちび食べちゃう。それを句にした。
千原ジュニア 「父とちびちび」で酒でも飲むねやろなあ…
く 栗おこわ!?梅沢名人 素晴らしい!ただ読み手が福君が書いたってわからないとしたら「
親父と一杯飲みながら栗おこわ食ってる」と勘違いしちゃう。
夏井先生おっちゃんすごい~!まず「夜の風」という言い方が粋。書けるだけで大したもん。
作者がわかって「ちびちび」が
酒じゃないのか!とびっくりしてる。
普通に読むと「酌み交わしてんだな」と思う。
少なくとも酒じゃないとハッキリさせた方がいい。
「栗おこわ」から始めても大丈夫。おいしそうですから。
ただ、「ちびちび」から「栗おこわ」にジャンプするおかしみももちろんある(ジュニアの指摘)。
しかし、父と食べていることがストレートに伝わった方がいい。
「栗おこわ 父と」として、酒だと思って「酌み交わす」「酌み合う」に添削を考えていたが、
中学生だもんね。変える。
「味わう」くらいに素直に言って、「夜の風」とする。
「夜の風」が一句の世界に残ってスーッと気持ちよく吹いていく。そうすると益々栗おこわがおいしそうに見える。
中学生で「夜の風」持ってくるとは
粋なと言うか渋いと言うか大したもん。[ここがポイント]誤読を避ける言葉選び
添削後
「
栗おこわ 父と味わう 夜の風」
◆4位
凡人45点 瀧本美織
「
秋刀魚焼く 煙をまとい 出番待ち」
【本人談】ドラマの撮影でシーンに出る秋刀魚をスタッフが焼いている。その中で煙をまといながら出番を待っている自分、という光景を詠んだ。
千原ジュニア 女優にしか詠めない句。
書いた人がわからずに読んだ人がそう捉えるのかな?梅沢名人 私もそう思う。だからねえ、今度梅沢さんとこに
遊びにおいで。
浜田 なんで?
梅沢名人 (出身が)
島根だから…。
本人 いえ、
鳥取です。
鳥取。
千原ジュニア 全然ちゃうやん。
梅沢名人 ああ!
鳥取。
浜田→梅沢の前の出演者のイスを持ち上げる動作。
梅沢名人→床に手をついてペコペコ謝る動作。
本人 惜しい、惜しい。夏井先生文字通り読むと
「作者が煙をまとって出番を待ってる」とは読めない。
秋になり秋刀魚が焼かれながら煙をまとっていよいよ「俺(秋刀魚)の出番の秋だよ」と待ってると。そういう風にしか読めない。
自分のドラマの撮影の場面を詠もうとする姿勢は全く悪くない。
書き方が下手だった。それだけのこと。
中七は不要。「秋刀魚焼く」に煙の情報は入っている。むしろ
撮影中だというここが大事。
「出番」だけではわからないので、「撮影」と素直に書く。
いや「ちゃうんですか~」ではなく、
入れるしかない。
「撮影の出番」とつなげ、「はかって」として「焼く秋刀魚」と主役を最後にして焦点を絞る。
ちゃんと秋刀魚は主役に立って、ひょっとすると秋刀魚とともに自分の出番を待つ役者も近くにいるのではないか、とこうなる。
本人 出しゃばり過ぎましたかね。[ここがポイント]意図を伝える言葉選び
添削後
「
撮影の 出番はかって 焼く秋刀魚」
◆最下位
才能ナシ20点 河合郁人(A.B.C-Z)「
秋日和 三尾冷やされ 夜七輪」
梅沢名人 なんじゃこれ?
本人 めちゃめちゃいいじゃないですか!
【本人談】秋の穏やかな晴れた日にスーパー行って、三尾冷やされてるけど夜は七輪に乗せて熱くなるぞ、っていう。
梅沢名人 お前さん、これわかれって方が無理。さっぱりわからないよ。
千原ジュニア 今現在、どこにいるのか時間軸もわからない。夏井先生この句の最もダメなところは、
時間軸がどこにあるのかわからない。それをパンと見抜けるのが特待生・名人。
17音しかないのに、昼買うところから家帰って料理して夜焼くところまでを
17音で語れると思い込んでいるところが、堂々たる才能ナシ。
小さく切って表現しないと俳句には絶対入らない。お店に並んでいるところだけやる。
「店先に」と書く。売ってんだから並べて。「並ぶ三尾や」で切る。「秋日和」とすれば店先の光景だけは切り取ることができる。
そういう風に切ってください。
もう無理。
添削後
「
店先に 並ぶ三尾や 秋日和」
★特待生昇格試験★◆「
舌先に 鰡子(からすみ)の粒 現れる」
千原ジュニア【本人談】サンマから鰡子(からすみ)に秋の味覚で発想を飛ばした一句。
鰡子食べて、3時間後くらいに「あれっ!」
とお口のサプライズが。「おっ!」てあるじゃないですか。凄い小っちゃいことを詠んでみた。梅沢名人 たいしたもんだわ!私には詠めません。なぜかって言うと鰡子をテーマにしただけの俳句なんです。ナレーション 名人梅沢が賞賛したのは、17音全部を使って
「鰡子のこと」だけを切り取った点。1位小倉・2位篠田が季語と場面を取り合わせたのと比較するのと、とてもシンプルであることがわかる。
千原ジュニア 舌先に 鰡子の粒 現れる(一物仕立て)小倉 (季語)
朝の陽や +
父と煮詰めた 柿のジャム(二物衝撃)篠田 (季語)
秋の宵 +
独身女と サンマ缶(二物衝撃)梅沢名人 例えて言うなら、
2アウト満塁サヨナラ逆転ホームランですよ。
浜田 …さあ、せんせーい。
夏井先生 この句の評価のポイントは上五「舌先に」です。
■査定結果3級へ
1ランク昇格理由:難しい技(一物仕立て)への挑戦が見事
夏井先生ホントにこの作り方は難しい。名人のおっちゃんが言ってたように「鰡子」という季語のことだけで一句を作る。
これは「
一物仕立て(いちぶつじたて/いちもつじたて)」という季語だけに意識を集中させた俳句の作り方。
「一」とは季語のこと。17音を上から下まで季語のことだけで作るのは、ものすごく難しい。
どんな風に作っても
似たような句になってしまう。
人と違うオリジナリティーとリアリティーのある俳句を作ろうと思ったら、
根気よく観察しないといけない。
観察して何か発見しないといけない。
発見したことを言葉で表現する力がないといけない。ホントに難しい。
「舌先に」で自分の舌先を否応なく意識する。そして「鰡子の粒」という非常に小さいものが出てくる。
最後「現れる」という小さな発見。言われてみれば鰡子食べたときにこういう感触あるなあと納得がいく。
この
小さな発見を文学作品にするのが俳句。
もう1個褒める。俳句では「からすみ」は普通「唐墨」と表記する。
「鰡子(ぼらのこ)」と書いたこの表記の方が生々しいリアリティーを受け止められる。この表記もよく考えた。
久しぶりに褒めるよ!
添削なし
★永世名人への道★梅沢名人 見事にこれから5つ星いきますよ!◆「
震禍(しんか)の港 あふるる笑顔 初さんま」
梅沢富美男【本人談】
サンマから被災地の港に発想を飛ばした一句。
2011年の3.11の東日本大震災がありましたね。そういうところの人たちは暗いニュースばかり。新聞を見たとき、初さんまが揚がって漁師の溢れるような笑顔があって、それを思い出して素直に書いた。
本人 これであんた、星もらえなかったら 辛いでしょ!
千原ジュニア 自分の気持ち!?
本人 はい。
千原ジュニア 大きい声張り上げて最後は自分の気持ち!?
本人 プレバト!!を引っ張ってきた梅沢富美男の気持ちですよ!
夏井先生 この句の評価のポイントは中七「あふるる笑顔」です。
豊崎アナ名人10段の梅沢さんには添削なしの作品であっても
魅力が十分あると認めたレベルに達していなければ、星は獲得できず「現状維持」となります。さらに作品のレベルが
10段に満たない場合は容赦なく今回も降格があります。
●永世名人査定 先生絶賛→1つ前進 添削なし→先生が認めなければ現状維持 添削あり→10段にふさわしくない句は即降格 |
本人 娘!こんな説明いらないから。他のやつにやってくれ。
■査定結果名人10段で
現状維持本人 空気読めねえババアだな。理由:名人10段にしては安易
夏井先生押さえるべきところを押さえる。
「震禍(しんか」は
自分の作った造語なんですか?→
本人 はい。
それならいいんです。「震禍の港」で何が起こったか一発でわかる。造語だとしても認めていいと思う。
その港に初さんまが揚がってくるのを描こうとした。あの写真からこのような発想が持てるのはやはり名人。
ところが「あふるる笑顔」は
安易だねえ。こんな風に書かなくても「初さんま」という季語が出てきたときに周りに笑顔があふれたんだなと読み手に想像させることはできる。それをやってこそだと思う。
浜田 やれよこのヤロー!夏井先生 そうだよ~。
やれよこのヤローだよ。
中七は消す。「初さんま」の「初」の字でも嬉しさは表現できるが、「震禍」とあるので、もうちょっと言葉を足
してなぜ「初さんま」がこんなに嬉しいのかわかるように書く。
あの震災から何年たったか。「震禍七年」と数詞を入れて上五を作る。ここで切れる。ここから
素直にいけばいくほど心が動き始める。
「港に揚がる」水揚げ。「初さんま」と来るだけ。
言った瞬間にさんまが揚がるときの周りの人たちの笑顔は否応なく想像できる。
むしろ「あふるる笑顔」と書く方が
平べったい句になるでしょ。
本人 (この番組を)
中学生 高校生も観てるんだぞ。
夏井先生 だからなんだ。本人 俺は
万人に人気のある梅沢富美男なんだ。万人に知ってほしいから「あふるる笑顔」をわざと使ったのに。全部消しやがったね!
夏井先生 わざとじゃないでしょ。
精一杯書いてこれだったんでしょ。
浜田 そういうことです。本人 あーそうかい。
添削後
「
震禍七年 港に揚がる 初さんま」
編集後記今回は若手女優2人が店に並ぶ「秋刀魚」から発想を飛ばして才能アリを獲得しました。
1位の句は添削前の方が実感がともっていた気がしますね。好みの問題にも感じます。
2位の句は「サンマ缶」として「秋の宵」との季重なりを避けていたのがさりげなく見事でした。独身は「ひとりみ」とも読めるので表記の工夫次第では別の書き方でもよかったかも。篠田さんはこれで才能アリ3連発ですね。
最下位の句は才能アリ経験者でしたが、目の肥えた視聴者にとっては悪い句だとすぐにわかる感じでした。秋刀魚なのかどうかも分からない焦点ブレブレの句でした。
特待生千原ジュニアさんはお口のサプライズの体験を書いた一物仕立てが成功しました。降格後3回連続現状維持と厳しい評価が続きましたが、降格前とは見違えるように上達している雰囲気です。他の句の指摘も概ね良好でした。
名人10段梅沢さんは震災復興への喜びの場面を一句にしましたが、「原子炉」「地震速報」と震撼させる場面の描写が最近続いていますね。もう少し違う挑戦も観たいですが、3割バッター猛打賞と言っていいほど指摘はバシバシ的中していました。査定は現状維持でしたが、添削されてるので降格ではないかと指摘する視聴者が多く見受けられました。初回は☆0なので後退できないのですが前週の東さんがもう気が抜けない印象に比べると、やや甘い感じは否めませんね。
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