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20180816 プレバト!!俳句紹介【帰省ラッシュ】

2018年8月16日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。

●お題:帰省ラッシュ(新幹線の空席案内の画面)

◆1位 才能アリ72点 柴田理恵
降り立ちて 夜のしじまに あいの風

【本人談】
「あいの風」は4~8月に日本海沿岸に吹く風を表す夏の季語。
帰省ラッシュの果てに汽車を降りたら夜になっていた。びっくりするほど静か。
海から吹く「あいの風」がサーッと来て「あぁー、やっと帰れた」という心情を詠んだ。

夏井先生
一見さらっと書いているように見えるが、案外丁寧に見ていくと言葉をよく選んでいるのが最終的にわかった。
とてもシンプルに描けている。上五で乗り物を降りたとわかる。
降りたところに夜の静寂(しじま)なので、人がガヤガヤしている駅ではない場所に降りた。静けさの中。
ひょっとしたら夜更けかもしれないというのも読み手に伝わる。
一番良いのは「あいの風」という地方性・地域性をもった独特の季語を持ってきたところ。
これによって日本のどの場所に降り立ったのか?というのが大体わかる。
仮に「夏の風」なら日本中どこでも当てはまる。「あいの風」なら北陸地方かなと地域が限定される。
直しは不要。ここまでのアベレージなら特待生になっていただきましょう

添削なし

◆2位 才能アリ70点 光浦靖子
カナブンに 撃たれて起きる 郷(さと)の駅

【本人談】
混んでいる新幹線から豊橋駅で降りてチンチン電車の渥美線に乗り換える。
田舎の人はわかると思うが、カナブンはすごい勢いで飛んでくる。
やっと眠れた静かな駅のところでカナブンがつん!っていうドキュメンタリーを描いた。

志らく これは梅沢さんなら「素晴らしい!」と言う。「撃たれて」がどうなのかは気になる。普通に詠んでも良いのかなという気はする。
千賀 中七は「寝てたことを表現できているのか?」というのが怪しいかな?

夏井先生
カナブンに当たった人の実感がストレートに描かれている。
私も松山に住んでいるが、なんぼでも撃たれる。本気で痛いもんね。
「撃たれて」は撃たれてない人には大袈裟かもしれないが、私は実感としてわかる。
勿体ないのは「て」。この一字でちょっと時間がゆっくりする。間延びしてしまい、ゆっくり目が覚める感じになる。
「て」の緩みは捨てたほうが良い。
「起きる」も同じ意味の「目が覚めた」の方が、撃たれるという皮膚の感じと目の部位が出る。
「目の覚(さ)む」という風にすると、ここに小さな臨場感と迫力が出てくる。

本人 うちの田舎が地方都市で、カナブンがすげー出る。でも量販店があったりしてそれほど田舎じゃない。
浜田 いや、何やねん!何の言い訳やねん!

[ここがポイント]
「て」のゆるみに注意

添削後
カナブンに 撃たれ目の覚む 郷の駅

◆3位 凡人65点 草刈民代
江戸ッ子の 帰る故郷 夏祭り

【本人談】
私は東京生まれで帰るところはない。「江戸っ子」と言った時に「夏祭り」を思い浮かべて、江戸っ子がお祭りを巡っているようなイメージを詠んだ。

夏井先生
あの写真からこの発想に来るのは悪くない。
江戸っ子には故郷がないという言い方をするが、夏祭りが故郷のようなものなんですよという意味は、時間がかかるけどギリギリ伝わる。
すぐにポンと伝わらない原因は「帰る」の位置。「江戸ッ子の帰る」だから読み手の脳は勝手に「帰る」と思ってしまう。
「帰る故郷」って何だろうと思っていきなり「夏祭り」が出てきて、どういうことかしばらく考えて初めて意味がジワ~っと伝わってくる。
「帰る」を諦めるとシンプルな良い句になる。「故郷」もこの場合平仮名の方が綺麗。
「ふるさとは」とし、「この」と入れる。こうすると意味はストレートに伝わる。
「この」でまさに今行われている祭りもたけなわですよという臨場感が出る。
「ふるさと」と平仮名にしたことで「江戸っ子」と「夏祭り」の部分だけが漢字となり、より印象強くなる。
こういう発想ができるのはセンスがある方。

本人 情景が浮かんで、それを俳句にした方が伝わりやすいかもしれませんね。
浜田 そりゃそうでしょう!

[ここがポイント]
「この」の臨場感

添削後
江戸ッ子の ふるさとはこの 夏祭り

◆4位 凡人60点 中川翔子
高速の 渋滞彩る 花火の音(おと)

【本人談】
新幹線の帰省ラッシュを回避したが、車の渋滞に巻き込まれた状況に発想を飛ばした一句。
故郷は東京の中野区以外知らない。タイミングによって花火大会間に合わなかったとかあるが、音だけで懐かしさや癒しをくれるのが花火なんじゃないかという気持ちを詠んだ。

志らく 「高速」にしなくても道だろうが高速だろうが「渋滞」で十分想像がつく。「高速の」が勿体ない。
浜田 千賀はええわ。せんせーい。
千賀 ちょっと待ってくださいよ。
浜田 ハイ。お願いしまーす。
千賀 用意してたもん。
夏井先生 さっさとやっていいですか?
浜田 はい、お願いします。はははっ。

夏井先生
志らくさんのおっしゃることがとても正しい。
花火の「光」「色」が「彩る」というのはよく見るが、「音」が「彩る」と表現しているところで詩の欠片はある。そこが良いところ。
ただ、「高速」は高速道路であろうがどこであろうがあまり必要ない情報。ここまで光景を広げる必要がない。
むしろ渋滞の車内に自分がいるという事を想像してみる。
渋滞の車内にいます。花火はどこに見えますか?
本人 ……あっ。渋滞の。
夏井先生 あなた作者ですよね?
本人 渋滞の……
夏井先生 あ~鬱陶しい!
浜田 コラ!鬱陶しいとか言うな!
夏井先生 渋滞の前なら「フロントガラス」、横なら「窓」って言いますね。
本人 窓?
夏井先生 そう、あれ「窓」って言うんだよ。
「渋滞の窓」って書くと、明らかにこの人は車の中に居て渋滞の「窓」がそこにあるとわかる。
「渋滞の窓を彩る花火の音」とすれば、ガラスを彩るように微かな花火の音が聞こえてくる。
ただ、人によって「彩る」が説明じゃないか?とも感じる。
「窓に」にして最後「音ひらく」くらいにすると、音の聞こえない映像が見えてくるかもしれない。
でも、ここまでよく回復したよ!ホントに。

本人 もう、のびしろしかない!
浜田 自分で言うかね!

添削後
渋滞の 窓を彩る 花火の音
渋滞の 窓に花火の 音ひらく

◆最下位 才能ナシ25点 山口真由
神ほとけ モアイ ケルトや 墓まゐり

本人 笑わないで。
柴田 どういうこと?モアイケルトって何?
光浦 何これ?(スタジオがざわつく)
浜田 じゃ、柴田さん1位の席へ!
本人 …説明(してない)。
浜田 あの人はいいんじゃないですか?大丈夫ですか?

【本人談】
祖母が滝野霊園のお墓に眠っている。大仏はもちろんモアイ像とかストーンヘンジ(※ケルト人が作ったという説がある)とか色んな物があって、お墓に行くと厳かな気分なのに面白いなと。モアイもケルトも祖先信仰という意味では同じだとしみじみしながらお墓参りをしているという句。

志らく 意味が全くわからない。25点は良い方じゃないですか。
本人 イヤーッ!

夏井先生
この字面では作者の言いたいことは伝わらない。無理です。
「色んな宗教のお墓がある、そういう霊園かしら?」ぐらいまでは伝わる。
実体験なんですね。妄想で作ってると思ってた。
「神」「ほとけ」「モアイ」「ケルト」が一緒に出てきたらどうしようもない。読む方はお手上げ。
今お話しになった中でモアイ像が1個?
本人 モアイ像たくさんある。
夏井先生 たくさんあるのね。オッケー。わかった。せめてそこだけ映像にする。言いたいことを17音で言うのは絶対無理。
「神」「仏」も帰っていただく。「ケルト」も遠慮していただく。「モアイ」だけで勝負する。
「モアイ像」があるんですね?
本人 ありまーす。
夏井先生 それは一つじゃないんですね?
本人 たくさんでーす。
夏井先生 うん、「並ぶ」とする。場所は「霊園」ですね?
本人 はい。
夏井先生 「モアイ像並ぶ霊園」で、霊園だから色んな墓があるとこの言葉でわかる。ダメ押しのようにちょっと変わった霊園に墓参りに来ているというのは少なくとも伝わる。
下五も普通に「墓参り」と漢字で書いた方がいい。
本当に不思議なキャラが出てきたな。と思ってびっくりしている。
浜田 でも先生わかりませんよ。岩永徹也の例がありますから。
夏井先生 そうよ、あのスプリングお兄ちゃんね(岩永は「雪弾み芽と花の咲きスプリング」で初回5点だったが、その後特待生となった)。5点だった。
浜田 5点くらいで最下位が一気に上に来た。彼女もそのパターンになる可能性も…。
夏井先生 東大の人の頭の中はわからん

添削後
モアイ像 並ぶ霊園 墓参り

★特待生昇格試験★

◆「啄木の 顔して帰る 盆休み」 立川志らく

【本人談】
帰省するときに、色んな顔して帰る人がいる。文学にはまって色んな小説を沢山読んで故郷へ帰る。
石川啄木(1886-1912)といえば岩手県出身の歌人・俳人で「あこがれ」「一握の砂」などの代表作があり、盛岡方面に帰るという感じもわかると思って詠んだ。

夏井先生
この句の評価のポイントは「啄木の顔」という比喩の是非です。

■査定結果
4級へ1ランク昇格

理由:人選が巧み!

夏井先生
世の中には色んな歌人・俳人・小説家がいる。誰の顔してでも成立はする。
石川啄木は俳人ではなく歌人・短歌の方。写真では童顔なクリっとした顔の印象。
そういう顔をして、というのは顔が似てるというより「文学をかじったような顔」をしてという感じ。
「盆休み」で故郷に夏休みで帰ってきたのかな?という情景も非常にスルスルとわかる。
発想も巧みで言葉の選び方もそつがない。
先を狙うヒントをアドバイスしたい。
この句で改善する余地がある場所は「帰る」。「盆休み」とあるので「帰る」はある程度想像してもらえる。
名人技を使う。「啄木の顔し」とし、「盆休み」「の」として啄木らしさを出してみる。
「無心」とする。意味は二つ。
①無邪気である。啄木の童顔の様子がより強く出る。
②人に金をねだる。啄木は有名な借金魔で、人のお金を何度も借りて返さなかった。
これぐらいやれば啄木が"動かない"。
裏表の意味を1句の中にギュッと入れる。名人目指してください。

本人 先生の今の言葉聞いてて、震えました。啄木は借金が多かったとか知っていたが入れる余地はなかった。
浜田 なるほど。
本人 「無心」ときたから。
浜田 今のも良かったんですよ。上に上がるにはあそこまでという。
本人 梅沢さんを負かすにはそれぐらいやらないと…。
浜田 そういうことです。
本人 (横を指さし)千賀君と言わずに梅沢さんと言ってしまいました。
千賀 失礼ですよ。

添削後
啄木の顔し 盆休みの無心


◆「藍を着る 祖母の端居や 鐘の声」 千賀健永(Kis-My-Ft2)

【本人談】
帰省先の庭先へと発想を飛ばした一句。
「端居」が晩夏の季語で風通しの良い縁側に出ることを表す。この言葉を見つけていいなと思った。
鐘の声を聴きながら祖母が夏を感じてるという画を出してみた。

志らく 「端居」が季語だとわからなかったので、「藍」を季語にしてるのかと思ったが、「藍」だけでは季語にならないから季語はどれだと思ったが、「端居」が季語。さっきから小馬鹿にしててすみません
本人 いえいえ。今後覚えて使っていただいても

夏井先生
この句の評価のポイントは下五「鐘の声」です。

■査定結果
1級で現状維持

理由:古くさい!

本人 それはいいじゃないですか?

夏井先生
良いところから押さえる。
上五中七までは良い。「端居」という季語もよく調べた。夏の夕涼みのことを表す粋な言い方。
家の端のそこにいて夕暮れの涼しい風を受ける様子。
「や」の使い方もいい。すぐ上の季語「端居」を強調する。ここまでは特待生1級の実力が出ている。
問題は「鐘の声」。人はなぜ「鐘の声」と書いたら俳句を書いた気になるのでしょうか。ホントに。
あなたに前言った。若いんだから、自分の体験・実感を書けばそれがかけがえのないオリジナリティとリアリティを生み出す。
本人 ジャニーズは帰省ラッシュの時期が一番忙しいんです
浜田 知らんがな。
夏井先生 じゃあそういう忙しい実態を書けばよい。
帰省ラッシュなのに帰省もできない忙しい俺たち、それをやる。その報告したのが…
浜田 やれよー!
夏井先生 たとえば、これをほとんど生かしたうえで「鐘」だけ変える。「夕」に変え「夕の声」とする。「ごはんできたよー」と呼ぶ人がいるかもしれない。
電車の音が聞こえるかもしれない。その中には近くの寺の鐘の音も聞こえてくるかもしれない。この一字で幅が広がる。
名人になるためには、自分の実感をきちんと書く。これを肝に銘じてください。

本人 すみませんでした。
浜田 忘れんなよ。おい。何回目や!
本人 すみませんでした。
浜田 (志らくが)追いつくよ、すぐ。
志らく さっきは頭下げたけどあと2、3回で抜きます

添削後
藍を着る 祖母の端居や の声

編集後記
今回は「離婚届」のお題に引き続いて通常挑戦者は女性オンリーの俳句査定でした。特待生が男性中心であり女性比率がそもそも低いことと女性特待生を出したいという番組の表れだったのかとも思ってしまいます。東さんの意向を汲んだのか?
1位の柴田さんは「風の盆」の俳句に続いて地域の句を詠んで見事特待生に昇格しました。中田さんと同様に泣き上戸な雰囲気がありますね。今後に期待です。ちなみに「あいの風」は富山のチューリップのお題で以前、紺野美沙子さんが「花笑う 赤白黄色 あいの風」と詠み、才能ナシ30点でした。
2位の光浦さんは毎回受け狙いにきますが、初めての才能アリを獲得しました。カナブンを持ってくるあたり本人らしい感じが出てました。
3位4位は故郷で帰るところがない感じを詠んでましたが、発想は悪くなかったですね。ただ、4位の句は5・8・6と字余りは気になりました。
最下位は東大法学部を首席で卒業して元財務官僚そしてハーバード大法科大学院卒と申し分ない経歴の持ち主。最近はバラエティにも引っ張りだこの人物ですが、俳句は学力だけではダメだということを身を以て証明してくれた感じがします。俳句のメカニズムさえ覚えれば岩永君同様逆転のチャンスがありそうですが、全く先が読めないですね。
志らくさんは炎帝戦決勝に引き続いて人物描写で勝負。また得意の比喩を使って見事昇格しました。案外真面目に俳句を勉強している様子が先生の添削後の反応からして見て取れます。千賀君にもすぐに追いつくくらい順調に昇格できそうな勢いがあります。
千賀君はまた「や」の切れ字を使ってきましたが、祇園精舎の「鐘の声」と聞いたことあるフレーズで若者らしさが皆無。本人は最初査定結果を受け入れていない感じでした。スランプなのでしょうか。幻想的な句が多く、パターンが固定化されてきているので上手く脱出してほしい感じです。


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