「プレバト!!」で披露された元県知事 東国原英夫の全俳句一覧です。
永世名人(名人10段★5) 東国原英夫(ひがしこくばるひでお) 合計82句
成績(2022年7月21日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ1回
<特待生時代>
1ランク昇格16回、
現状維持9回、
1ランク降格2回
【永世名人への道】★★★★★ 前進 9回、
現状維持 6回(うち星持ち2回)、
後退 4回(添削があれば即降格)
【永世名人のお手本】暫定35句・残り15作(50句で句集出版決定)
認定27句+
掲載決定 8句、
ボツ 4句
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第1回俳桜戦優勝、
第1回炎帝戦3位、
第1回金秋戦優勝
第2回俳桜戦優勝、
第2回炎帝戦決勝7位(最下位)、第2回金秋戦決勝8位(最下位)、
第2回冬麗戦優勝第3回春光戦決勝2位、第3回炎帝戦決勝4位、
第3回金秋戦優勝、第3回冬麗戦決勝2位
第4回春光戦優勝、第4回炎帝戦決勝6位、
第4回冬麗戦3位
第5回春光戦予選C1位・
決勝7位、第5回炎帝戦2位、第5回金秋戦決勝7位、
第5回冬麗戦優勝
第6回春光戦決勝10位(最下位)、第6回炎帝戦4位
俳句甲子園'18対外試合で9-2で
判定勝ち、俳句甲子園'19対外試合で8-3で
判定勝ち査定とは別に2017年月間MVH二度受賞(4・9月)、2018年度最優秀俳句受賞・月間MVH二度受賞(4・9月)
●通算昇格率 56.9%(33/58) 掲載決定率:67%(8/12) 前進率:47%(9/19) 昇格率:59%(16/27)◆添削なし秀句 40句/80句(俳句甲子園は除く、降格査定による添削不可は母数のみ含める)
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人物紹介◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 | 才能アリ | 紅葉燃え五右衛門殿が屋根に立つ |
2 | 現状維持 | 進撃や夜時計響く雪巨人 |
3 | 現状維持 | 一輛の端で待つ君すみれ草 |
4 | 1ランク昇格 | 椅子しづかあの日のごとく窓に花 |
5 | 1ランク降格 | 新茶踏み鉄の白竜まっしぐら |
6 | 1ランク昇格 | 滝落つる水の身投げのごとくなり |
7 | 1ランク昇格 | 老猫や背筋のばして見る蜥蜴 |
8 | 1ランク昇格 | 日雷バスのブレーキキーと鳴る |
9 | 現状維持 | 向日葵や眠るむくろに頭垂れ |
10 | 1ランク降格 | 鉄格子隙間さ迷ううろこ雲 |
11 | 1ランク昇格 | 大拍手空舞うコスモスのブーケ |
12 | 1ランク昇格 | 初富士や北斎のプルシャンブルー |
13 | 1ランク昇格 | 紅梅や1km10秒縮めたり |
14 | 現状維持 | 梅東風や千年分の絵馬の鳴り |
15 | 現状維持 | 花散るや尊徳像の撤去跡 |
16 | 俳桜①1位 | 野良犬の吠える沼尻花筏 |
17 | 1ランク昇格 | 送り梅雨船員送る千の傘 |
18 | 炎帝①3位 | 夏の果ボサノバと水平線と |
19 | 現状維持 | 牛売られ牛舎の隅の庭花火 |
20 | 1ランク昇格 | 鎌で切る鶏の首盆支度 |
21 | 1ランク昇格 | 秋夕焼赤黒き一〇〇〇グラムの吾子 |
22 | 金秋①1位 | 紅葉燃ゆ石見銀山処刑場 |
23 | 現状維持 | 運動会テントの中の車椅子 |
24 | 1ランク昇格 | 柩追う犬ごと攫う雪しまき |
25 | 現状維持 | 冴返る屋台の骨に接ぐ義足 |
26 | 1ランク昇格 | ビル鎮火濁水まみれのたんぽぽ |
27 | 俳桜②1位 | 花震ふ富士山火山性微動 |
28 | 1ランク昇格 | 春深し象舎の壁の罅長く |
29 | 現状維持 | こいのぼりさいのかわらにかがむ吾子 |
30 | 1ランク昇格 | 青嵐黄綬受章の父の眉 |
31 | 1ランク昇格 | 梅雨明や指名手配の顔に× |
32 | 1ランク昇格 | 調停の席着く妻のサングラス |
33 | 炎帝②決勝7位 | ラジカセに憑く幽霊の呻き声 |
34 | 1つ前進 | 草茂る洞窟のこと他言せず |
35 | 1つ後退 | 女店員の首にキス跡桔梗買う |
36 | 俳句甲子園②○ | 鰯雲仰臥の子規の無重力 |
37 | 金秋②決勝8位 | 星月夜赤ちゃんポスト動きをり |
38 | 1つ前進 | 炊き出しや並べば遠き秋の雲 |
39 | 1つ後退 | 冬近しチリ人娶る過疎の村 |
40 | 現状維持- | 湯冷めして九条議論終はりけり |
41 | 冬麗②決勝1位 | 凍蠅よ生産性の我にあるや |
42 | 1つ前進 | 着ぶくれて慰安婦像の銅の髪 |
43 | 1つ後退 | 尾畠氏の片す瓦礫や薄氷 |
44 | 現状維持- | 春昼の鳩の目ん玉見ゆる殺意 |
45 | 春光③決勝2位 | 缶コーヒー啓蟄のつちくれに置く |
46 | 現状維持- | 花やぎを増して花屋の梅雨入りかな |
47 | 1つ前進 | 梅雨寒しコンビニは麻酔の匂ひ |
48 | 炎帝③決勝4位 | 飛び込みの波紋広がりゆく木陰 |
49 | 1つ後退 | 立ち漕ぎの警官真顔炎天下 |
50 | 現状維持- | 墓参り後ろに誰かゐるやうな |
51 | 1つ前進 | 謹慎の身に沁むタップダンス踏む |
52 | 俳句甲子園③○ | 子規に似た蝗がおった食うたった |
53 | 金秋③決勝1位 | 信号の点滅は稲妻への合図 |
54 | 現状維持- | 竜淵に潜む被災地物産展 |
55 | 1つ前進 | オッケーグーグル冬銀河にのせて |
56 | 冬麗③決勝2位 | 湯豆腐の湯気アインシュタインの舌 |
57 | 春光④決勝1位 | まるでシンバル移り来し街余寒 |
58 | 1つ前進 | 百円玉とヤモリがオレの守り神 |
59 | 炎帝④決勝6位 | ポイントでもらひし蛍なほいきる |
60 | 1つ前進 | ほしかもんはなかジャングルジム冷たし |
61 | 冬麗④3位 | 無影灯下腹に冷たい何か |
62 | 春光⑤予選C1位 | 買い食いを叱られて来し末黒野よ |
63 | 現状維持- | テレビテレビテレビ菫菫菫 |
64 | 春光⑤決勝7位 | 志村けんさん一周忌 山も笑う「最初はグー」の発明者 |
65 | 1つ前進 | ユンボの一撃花冷えのごみ屋敷 |
66 | 掲載決定 | 玉葱やこの人結局死んじゃうの |
67 | 炎帝⑤2位 | Tシャツの干され西日の消防署 |
68 | 掲載決定 | 音なき音や八月の遠花火 |
69 | 掲載決定 | 秋暑し柱は饐えた父の臭い |
70 | 掲載決定 | ラフレシアも秋夕焼も人を食うか |
71 | 金秋⑤決勝7位 | 携帯をタコ足充電夜学校 |
72 | 掲載決定 | 林檎のうさぎ雲梯を二段飛ばし |
73 | ボツ | 怖るるな最下位怖るるな夜長 |
74 | ボツ | この人が父ちゃん銀幕に雪烈し |
75 | 冬麗⑤1位 | 片襷硬し四日の身を通す |
76 | ボツ | インターホンに春光の顔半分 |
77 | 掲載決定 | 蝶は測るフードコートの奥行を |
78 | ボツ | 自動精算機なかでやにわに春祭 |
79 | 春光⑥決勝10位 | カンガルー泊めて2DK朧 |
80 | 掲載決定 | 縦列駐車こつん春の月くすっ |
81 | 掲載決定 | 帰省してゐる周遊のついでかな |
82 | 炎帝⑥4位 | 羽蟻わく今宵ロマンス詐欺メール |
▼人物紹介「プレバト!!」では誰にも真似できないほどのずば抜けた発想力の高さが評価され、査定1発で通算5人目の特待生に昇格する天才肌。
しかし、特待生となった当初は下手な擬人化に走るなど、発想力に技術力が追い付かず、夏井先生に「暴れ馬を乗りこなせていない」と評され、通常回では季語を侮辱するなどして降格を経験。一時崖っぷち特待生になるも、そこで目が覚めたのか夏井先生が感服するほどの特待生一の勉強量が実を結び、梅沢、フジモンに次ぐ3人目の名人となる。
特待生5級から名人になるまで12回の査定は、現在の名人10段の中で最多であり、昇格と降格を繰り返す波乱万丈なドキュメンタリー的な展開が番組的に印象付けられ、NHK大河「風林火山」のテーマ曲が紹介時に流れるようになった。
句の特徴は県知事時代の経験を踏まえた独創的な描写力が持ち味で、ネガティブな場面描写やシリアスで意外性のある展開をもつ句が多い。特待生時代は大胆なスケールをもつ発想の句が目立ったが、名人昇段中は体言止めにして余韻を膨らませる句が大半を占める。10段となってからは、時事や政治評論家目線のインパクトのある句が目立っている。
本人は毎回「チャレンジ句」「名句」などと称して自身の句の趣旨を力説しており、その成果が実って視聴者からの反響がある句も少なくない。
また、類想類句にならないように注意を払うなど研究心も旺盛で、本人は夏井先生をはじめとする出演者の句をよく覚えており、NHK俳句の夏井先生のコラムを丸暗記するなど傾向と対策を練って番組に臨むほどである。
夏井先生からは「他人の句に対する意見や自分の句に対する解釈が理論的で的確であり、客観的分析力は他の追随を許さないほど伸びている」と絶賛されており、自分の句を選ぶ力を持っているとも評価されている。
素の実力の高さと番組に提出する句の取捨選択の判断力が功を奏し、名人になってからは一度も降格せずにハイペースで昇格を重ね、ライバルの梅沢富美男やフジモンを段位で猛追して一時単独トップの奪取にも成功。そして、梅沢に続く2人目の名人10段に到達した。
タイトル戦は春を連覇するなど、査定のかからないランキング戦に強い傾向があったが、【追記】の通り一連の盗作疑惑騒動でメンタルがやられたのか第2回炎帝戦では最下位に沈む大成敗。浜田から「メンタルが弱い」といじられ、その次の金秋戦でも最下位と大コケし、夏井先生からも「意味がわからない。何してたんだ」と言われる始末。しかし、全てを捨てて勝負に挑んだ冬麗戦で再び王位を奪還。タイトル戦の成績は優勝7回、2位3回、3位2回、4位2回、6位1回、7位が2回と比較的好成績だが、最下位も3回と両極端である。初期に低評価の2回は「ラジカセ」「ポスト」と季節感がないテーマの場合であり、本人は「フォーカスする対象があると苦手」と発言している。また、夏の炎帝戦だけは優勝経験がなく、成績も比較的よくない。第4回炎帝戦では初めてシード権を失い、第5回春光戦では防衛に失敗し、初めて優勝者の額縁からも顔が消えてしまった。
さらに、低評価には打たれ弱い側面があるようで、最初の降格後はショックで1ヶ月間食べ物が喉を通らず、ゴルフのイップスのように言葉が出てこないと発言し、タイトル戦2連続最下位によるショックでは、ポリープができたことも明かしている。
また、俳句甲子園の対外試合では、初参加はチームのトリとして俳句を披露。会場を轟かす世界観の句で見事に高校生チームに勝利し、その披露句は年間最優秀句に選出された。また、2回目も「正岡子規」に焦点を当てた句で勝利を収めている。
そして、「永世名人」をかけた試練に19回挑戦。夏井先生から「ぶっ飛ばすと思う」と期待されていた通り、初回の査定では見事に一歩前進を決めたが、2回目の査定では添削され後退。その後も1つ獲っては全て取られという一進一退が4回も続き序盤は苦戦を強いられた。厳しい査定が続くこの試練を本人は「奥の細道」と呼ぶほか、なかなか結果が出ないで簡単に後退査定を下されることに"挫折感は2~3日尾を引く"とツイッターでつぶやいており、「俳句ハラスメント」と名付けたほどである。その後は、現状維持を挟みつつ、苦しみながらも前進を重ね、10段から約3年の月日をかけて番組2人目の永世名人となった。
永世名人として句集完成を目指す「永世名人・東国原のお手本」に12度挑戦。初挑戦の句は、玉葱とハッとする台詞を取り合わせたインパクトある俳句で見事に掲載を決めた。番組初の5回連続掲載と出だしは好調で、先を行く梅沢御大を猛追。6度目の挑戦で初のシュレッダーの洗礼を受けたが、以後はなかなか調子が上がらず、シュレッダー率は約4割となっている。
タイトル戦は近年賜杯から遠ざかっており、炎帝戦では段位なしの犬山紙子に苦杯をなめる結果に。犬山をライバル視して臨んだ第5回冬麗戦で見事7度目の優勝を決めた。その一方、第6回春光戦で最下位に沈む波乱も起こしている。
俳句や番組関連の内容を本人がツイッターで投稿していることもあり、Yahoo!ニュース等にも出演結果が紹介されやすく、最も影響力や注目度のある名人の一人と言ってよい。
なお、2022年8月17日、12月の宮崎県知事選に再び立候補することを表明したため、年内の番組出演は事実上終了したが、本人は何らかの形で句集を完成させたい意思をツイッターで綴っている。
知事選には落選したため、2023年以降の番組復帰が待たれている。

【追記】名人9段に昇格した
[31]「梅雨明や指名手配の顔に×」が、昨年の2017年6月宮崎日日新聞に掲載された投句
「梅雨寒や指名手配の顔に×」に酷似しているとツイッターで投句者の友人から指摘があり、
ヤフーニュースおよびスポーツ紙で取り上げられて本人が謝罪する事態となりました。本人は
盗作を否定し、番組の提出句は番組制作側と協議の上取り下げる方針であると説明していました。
また、
2018年8月2日の放送でこの騒動について説明がありました。
●[1] @15/11/26◆お題:紅葉の京都・南禅寺
『紅葉燃え五右衛門殿が屋根に立つ』才能アリ1位70点
添削後
『屋根に立つ五右衛門殿や紅葉燃ゆ』
盗賊として有名な石川五右衛門の釜茹での逸話を、大胆な発想で例えた一句を絶賛されて特待生に昇格。
[ここから特待生として査定]●[2] @16/02/04◆お題:冬の銀座
『進撃や夜(よ)時計響く雪巨人』5級で
現状維持添削後
『進撃や雪の巨人と夜の時計』
東京・銀座にある百貨店の時計塔を「進撃の巨人」に喩えた大胆な発想でファンタジーな世界を表現し、抽象名詞+「や」+季語を入れたフレーズという難しい型への挑戦が高評価。「夜時計」「雪巨人」の名詞の寸詰まりを指摘され、「進撃や」の勢いで大時計が響くイメージを想像させる語順に直された。
●[3] @16/02/25◆お題:房総半島 菜の花列車
『一輛の端で待つ君すみれ草』5級で
現状維持添削後
『一輛の傍に待つ君すみれ草』
写真の女学生を恋愛対象となる「君」と表現し、ホームで電車を待つ思春期の恥じらいやおしとやかさを「すみれ草」に喩え、敢えて雄々しい句ではなく夏井先生のハートをえぐるような女性目線で詠んだと語った句。「端」では電車のどこを指すか不明瞭とされ、車外なら「傍」、車内なら「隅」にするべきとアドバイスされた。助詞「で」も後ろに続く動詞が動的な場合であり、「待つ」の静的なイメージに合う「に」に添削され、「無難に置きに来て詰めが甘いのはダメなんじゃないすか」と駄目出しを食らった。
●[4] @16/03/10◆お題:教室と桜
『椅子しづかあの日のごとく窓に花』4級に
1ランク昇格添削なし
季語は「花」で桜を指す。卒業後の教室の様子を「椅子しづか」で描写した表現力と、「あの日のごとく」による読者の想像力の誘導を絶賛され、特待生の見本のような句と評されて初昇格。「ごとき」でなく「ごとく」の表現で最後の「花」に続く「咲く」「揺れる」「光る」などの動詞を示唆し、映像を想像させる余韻を残す効果を生み、小技が効いていると称賛された。「発想を飛ばすことだけが取り柄の人かと思ったら、確かな句が作れる」と先生に見直された。
●[5] @16/05/12◆お題:
茶畑と新幹線『新茶踏み鉄の白竜まっしぐら』5級へ
1ランク降格添削されず
本人は茶畑の自然を新幹線という文明が踏みつけた句と説明したが、季語の「新茶」は茶摘みが終わってすでに製品として出来上がったもの。新幹線を竜に例える大胆な比喩表現と緑・白の色彩的対比は褒められ本人は上機嫌となるが、まさかの降格で一同仰天する。「憤りすら感じる」と評す先生は、「踏み」の擬人化が安易で、「新茶踏み」の表現がレールに載せられた新茶の茶碗を新幹線が高速で踏みつけていくという誤読を生み、お茶農家に大変失礼だと酷評。先生から、季語を馬鹿にして自分の努力をドブに落としたと痛烈に批評されて添削すらされず、「歳時記をもう一度読んで出直せ」と滅多切りにされ、崖っぷち特待生に転落した。この降格事件はヤフーニュースでも取り上げられ、本人も過去5本の指に入るほどのショックを受けたとツイッターでつぶやくほどであった。
●[6] @16/05/26◆お題:五月 日光・華厳の滝
『滝落つる水の身投げのごとくなり』4級へ
1ランク昇格添削後
『滝落つる水の身投げのごときなり』
前回の降格を受け、査定発表時に「もう悩みたくない」と土下座をすることになった一句。「17音の器がやっとわかりましたね」と評す先生は、後藤夜半の名句「滝の上に水現れて落ちにけり」のような視点を持ち、「身投げ」という擬人化への挑戦で、季語1つとあと一工夫という俳句の17音の器を理解したと認めた。見事昇格を果たし、4級に返り咲いた。
●[7] @16/06/23◆お題:梅雨と猫
『老猫や背筋のばして見る蜥蜴(とかげ)』3級へ
1ランク昇格添削後
『老猫や背筋を伸ばし視る蜥蜴』
動物同士の生の緊張感を表現した名句と語った。「想像力とリアリティー」が褒められたが、「て」が緊張感を緩めるとされ添削された。
●[8] @16/07/14◆お題:夏の海とバス
『日雷バスのブレーキキーと鳴る』2級へ
1ランク昇格添削後
『日雷バスのブレーキ鳴る路面』
聴覚の一点に絞り瞬時の緊張感を詠んだ名句と語った。「チャレンジ精神にあっぱれ!」と評され、「日雷」という聴覚を主体とする季語にさらに「ブレーキ」という別の音を重ねながら季語を主役に引き立てるという難しいチャレンジを絶賛。添削例なら2ランク昇格もあり得た句。
●[9] @16/07/28◆お題:ひまわり畑
『向日葵や眠るむくろに頭(こうべ)垂れ』2級で
現状維持添削後
『向日葵や畜魂二十九万頭』
一見字面は平凡だが「向日葵」は1970年公開の同名映画による「死者が向日葵畑の下に眠る」イメージがあり、宮崎県知事時代に口蹄疫で殺処分した29万頭の家畜の亡骸を埋めた土地に無数の向日葵を植え、毎年花が咲く度に鎮魂するという願いや想いを込め「マーベラス」と熱弁して夏井先生を感動させた。「むくろ」が「漠然としている」と指摘され添削を受けたが、本人が添削後の俳句を碑にしたいと発言すると視聴者からぜひとも実現させてほしいと多くの反響があった。
●[10] @16/09/01◆お題:秋の空(特待生のみの昇級昇段試験)
『鉄格子隙間さ迷ううろこ雲』3級へ
1ランク降格添削後
『うろこ雲行く独房の鉄格子』
県知事時代に視察した刑務所から着想し、受刑者の気持ちを詠った名句と語った。「独房」という重要な場所の情報が抜けているという点と中七の散文的な点を指摘された。場所とカメラワークを明確にするよう添削され、自身2度目の降格。
●[11] @16/09/29◆お題:コスモス畑
『大拍手空舞うコスモスのブーケ』2級へ
1ランク昇格添削なし
コスモスという乙女のイメージから結婚式のブーケトスに発想を飛ばした名句と語った。「語順が秀逸」と評され、「舞う」という擬人化の動詞が良い位置にあると褒められ、句を読む中で意味が変化していき、華やかさがマッチしていると評価。苦手な擬人化を克服すれば名人も近いと後押しされた。
●[12] @17/01/05◆お題:新春の富士山(特待生のみの昇級昇段試験)
『初富士や北斎のプルシャンブルー』1級へ
1ランク昇格添削なし
「プルシャンブルー」は紺青のこと。葛飾北斎がドイツから持ち帰った独特の青色の絵具で富士の浮世絵を描いたことから着想した渾身のチャレンジ句と力説。色の一点への絞り込み方が絶妙と絶賛され、季語を引き立てている夜明け前の富士山を想像させる句。自身を鍛える姿勢が褒められ、昨年1年の成長率は一番と背中を押された。
●[13] @17/01/19◆お題:梅と飛行機
『紅梅や1km10秒縮めたり』名人初段へ
1ランク昇格添削後
『紅梅や1km10秒縮めた朝』
梅という清々しさと、普段の朝の皇居のランニングの様子から1キロあたり10秒タイムが縮まったことを素直に表現した句。「この人にしか詠めない句」と絶賛。自分の体験を詠んだ瑞々しさ、どのような人物かが想像できる表現力、俳句が何者か勉強してきた努力を先生はベタ褒め。悲願の名人に。
●[14] @17/02/09◆お題:梅と太宰府天満宮
『梅東風や千年分の絵馬の鳴り』名人初段で
現状維持添削後
『梅東風に鳴らん千年分の絵馬』
太宰府天満宮に祀られる菅原道真の名歌「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ」から着想。1000年間の人々の願いが幾千もの絵馬の音で歴史を表現した久々の名句と語った。時間と空間を発想し「千年分の絵馬」に持っていく表現は見事だが、その素晴らしい表現を「鳴り」と早々と結論づけると味わいがなくなり「読み手を置いてけぼり」にしていると指摘され、語順を直された。
●[15] @17/03/23◆お題:二宮金次郎と桜
『花散るや尊徳像の撤去跡』名人初段で
現状維持添削後
『尊徳像撤去の跡へ散るさくら』
近年学校から撤去される傾向の強い二宮金次郎像に思いを馳せ、その撤去後へ桜の花びらが散る寂しい様子を描写した名句と語った。上五に「思いが先走っている」とし、もののあはれを押し付けられる語順を指摘。映像をはっきりさせるよう添削された。
●[16] @17/04/06◆お題:満開の桜
『野良犬の吠える沼尻花筏(はないかだ)』第1回俳桜戦優勝
添削なし
2017年4月月間MVH受賞句
季語「花筏」は散った桜の花びらが水面にたまって流れる様子を表す。花筏の浮かぶ薄暗い沼地に向かって野良犬が吠えているという句で、花筏の下にあるミステリーを想像させる緊張感のある句。一句の作りや表現力が巧みと評され、視覚・聴覚・嗅覚を刺激し、語順が不穏な空気を作り出した。一句の世界の奥行きを見事に表現し、タイトル戦初優勝。
●[17] @17/06/22◆お題:学校の傘立て
『送り梅雨船員送る千の傘』名人2段へ
1ランク昇格添削後
『送り梅雨船団送る千の傘』
海上自衛隊が赴任する光景を見て、家族らが傘を差して見送る様子を詠った名句と語った。梅雨明けが近いがときおり降る豪雨の中の船出を「送り梅雨」に託した季語の選択と「送り」「送る」と「船」「千」の韻が見事。より規模が大きく広く場面を描写するような添削を受けた。「千」は数を示すのではなく、数が多いことを示す美称であり、その「千」を「万」に変えるのはどうかと質問すると先生から「降格」をほのめかされた。
●[18] @17/06/29◆お題:海
『夏の果ボサノバと水平線と』第1回炎帝戦3位添削なし
具体的な場所は省き、水平線の向こうにボサノバが流れるブラジルがあり、それが果てのようで各語を呼応させた。五五七の調べを梅沢名人も絶賛。不協和音の調べが夏の終わりの気怠い調べで「ボサノバ」の音楽に似合っていると語順も評価。語順で調べを作ろうとしたと本人の意図通り成功した句。
●[19] @17/07/27◆お題:線香花火
『牛売られ牛舎の隅の庭花火』名人2段で
現状維持添削後
『牛おらぬ牛舎の闇に手花火す』
季語の持つ侘しさや悲しさに、牛が売られて何も残らなくなった牛舎の様子を託し、畜産農家の微妙な心境を描写したと力説した句。ダイナミックな発想力は素晴らしいが、「詰めが甘い」と評され、「売られ」が説明的であり、「隅」「庭」という場所の情報がダブるのが勿体ないと添削される。「闇」で牛舎の匂いや「手花火」との対比も出るとダメ押しを受けた。
●[20] @17/08/10◆お題:お盆の帰省ラッシュ
『鎌で切る鶏の首盆支度』名人3段へ
1ランク昇格添削なし
田舎の農家をイメージしお盆の殺生の残酷さと感謝の念を表現した一句。「季語が主役になっている」として、語順が絶賛された一句。最後に「盆支度」が来ることで、盆支度の様々な場面を想像できる膨らみをもつと高評価。
●[21] @17/09/07◆お題:夕焼けとレインボーブリッジ
『秋夕焼赤黒き一〇〇〇グラムの吾子(あこ)』名人4段へ
1ランク昇格添削なし
2017年9月月間MVH受賞句
「吾子」は我が子のこと。新生児医療の視察の経験をもとに、低体重の赤ちゃんが入る保育器に焦点を当て、親御さんがもつ希望や不安の心情を季語「秋夕焼」に託した一句。「秋」「赤」「吾子」で韻を踏み、字余りと破調にして体言止めで余韻を残した。「自己分析が客観的」であり、「赤黒き」の位置も評価され、読みながら意味がわかっていく語順も評価。梅沢名人も発想を大絶賛した。
●[22] @17/10/12◆お題:紅葉
『紅葉燃ゆ石見銀山処刑場』第1回金秋戦優勝
添削なし
何より「紅葉燃ゆ」が見事。戦国~江戸時代にかけて世界有数の採掘量を誇った石見銀山で、当時盗みを働いた鉱夫たちが銀山近くの処刑場で罰せられた逸話を「紅葉燃ゆ」の比喩で表現。世界遺産になってから「負の遺産」である処刑場の案内が消えたことを語り、処刑者の恨み辛みが何百年と残ることを俳句を通して後世に残し伝えていく姿勢を夏井先生も「カッコええ」と絶賛した。「銀」と「紅葉」の色彩的対比も高評価。
●[23] @17/10/19◆お題:綱引き
『運動会テントの中の車椅子』名人4段で
現状維持添削後
『運動会テントに小さき車椅子』『運動会テントぽつんと車椅子』『運動会放送席に車椅子』
問題提起。大会関係者席のテントに車椅子があり、その持ち主が運動会に不参加の生徒であるという場面を詠んだ句。久々に「描写が雑すぎる」とし、車椅子の表情を描写すべきとされ、「これでは話にならない」と酷評された一句。最後の添削例は、「運動会に参加できないけど放送の仕事ならできる生徒の様子も浮かぶ」と提示された。
●[24] @18/01/18◆お題:犬と雪
『柩追う犬ごと攫(さら)う雪しまき』名人5段へ
1ランク昇格添削なし
亡くなった飼い主の出棺で、霊柩車の後を追う犬の様子を容赦なく雪しまきが攫う様子を描写した句。「バランスが見事」と評され、「攫う」という擬人化も高評価。言葉の経済効率の見事さと「攫う」が季語の映像と犬の心情を同時に表現して「さすが名人」と絶賛。
●[25] @18/02/15◆お題:ラーメン屋台
『冴返る屋台の骨に接(つ)ぐ義足』名人5段で
現状維持添削後
『冴返る屋台の脚に接ぐ義足』
季語「冴返(さえかえ)る」は、春の暖かくなりかける時期に寒さがぶり返すこと。ラーメン屋台の下に義足があり、大将が古い義足を置いて新しい義足に変えたイメージ。季語の凍えるような寒さと義足が支える人間のたくましさを屋台に表現したと語り、「やりすぎ」と一蹴された。取り合わせは良いが、「義足」でドキッとする。「骨」で屋台全体にいく視点を「脚」の下の方に持っていく視点にすべきと添削された。
●[26] @18/03/15◆お題:都会のたんぽぽ
『ビル鎮火濁水まみれのたんぽぽ』名人6段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「蒲公英(たんぽぽ)」。ビル火災を消した後のたんぽぽに焦点を絞り、中七の擬人化で悩んだと繰り返し語り、「これだけでメシ食ってる人なんですか?」とパンサー向井にツッコまれた。破調の是非が査定ポイントだが、査定前から泣き顔に。先生は、「臨場感のある破調」と評し、発想力と表現力が良く、「ビル鎮火」が読み手を引き込む力技だと解説。展開も良く、「濁水」までで消防士の姿や野次馬の喧騒、消化後の独特の匂いなどが五感で伝わったと褒めた。さらに、後半も謎の展開だが、最後の季語によってたんぽぽの健気さと再生のイメージが入っていると称賛。作者の工夫が崩れるため、絶対に添削してはいけないと添えた。
●[27] @18/04/12◆お題:
桜と富士山『花震ふ富士山火山性微動』第2回俳桜戦優勝
添削なし
2018年4月月間MVH受賞句
桜と富士の呼びかけの兼題であり、浅間神社に祀られる桜の女神の歴史を力説。桜が我々に富士山も活火山であることを知らせていると語り、梅沢名人が降参した一句。ベタな題材だが意外性のある書き方をし、「花震ふ」は風ではなく火山の微動で揺れたという皮膚感覚と科学の言葉を詩の言葉にした表現力を絶賛し、タイトル戦3度目の栄冠。
●[28] @18/04/26◆お題:
春の動物園『春深し象舎の壁の罅(ひび)長く』名人7段へ
1ランク昇格添削なし
象舎が老朽化で罅が長く、「春深し」と取り合わせた句。象自身も高齢でしわがあるのではないかと想像させられる。「季語選びのセンスが良い」と評され、「春深し」「罅長く」の呼応がさすがであると褒められた一句。
●[29] @18/05/03◆お題:
学校のこいのぼり『こいのぼりさいのかわらにかがむ吾子』名人7段で
現状維持添削後
『鯉幟さいのかわらの空如何(いかん)』『鯉幟さいのかわらの空蒼し』
「賽の河原」とは親を残して先立った子が行く三途の川の河原。子どもの日に揚がる鯉幟から発想し、鯉幟の前向きなイメージとは裏腹に三途の川で石を積む亡き子の幻想的イメージを詠った句。「下五が説明しすぎ」であり、前向きな意味を蒼く現実味のない空に託すよう添削を受けたが、「賽の河原」を取り合わせるチャレンジ精神は評価された。
●[30] @18/05/10◆お題:
新緑の鎌倉『青嵐黄綬受章の父の眉』名人8段へ
1ランク昇格添削なし
黄綬褒章を受ける父をイメージし、眉にその方の人生経験が表れている様子を詠った句。「眉」をクローズアップした「焦点の絞り方が的確」と評され、季語「青嵐」が気持ちよく、「青」「黄」「白か黒」という色の対比も客観的に分析できており、客観視も絶賛された。
●[31] @18/06/07◆お題:
梅雨の駅『梅雨明や指名手配の顔に×』名人9段へ
1ランク昇格添削なし
梅雨明けと指名手配の逃亡犯が捕まったという双方の安堵感がにじみ出た一句。「映像化ができている」と評され、梅沢名人にはこの発想はできないと賞賛され、見事単独トップの段位に立った。
しかし、この句は本記事冒頭にあるように盗作疑惑が持ち上がる問題句となり、夏井先生から性善説では盗作とは考えないが、以降は自身の作品と名乗らないことで決着した。
●[32] @18/07/26◆お題:
離婚届『調停の席着く妻のサングラス』名人10段へ
1ランク昇格添削なし
本人曰く想像で、「サングラス」は夏の季語。離婚調停で、妻が見られたいのか見られたくないのか微妙な心境や修羅場の様子を詠んだリアリティーに富んだ句。千原ジュニアはラテ欄にあったらドラマを見たいというほど絶賛する。「さすがの臨場感」が出たと評され、「席着く」という寸詰まりな言い方で妻側の緊張感がにじみ出た一句と絶賛され、見事梅沢に続く10段到達を果たした。
●[33] @18/08/09◆お題:
ラジカセ『ラジカセに憑く幽霊の呻き声』第2回炎帝戦決勝7位(最下位)添削後
『ラジカセは呻く幽霊憑きしてふ』
騒動後初の収録とみられ、動揺した東国原の17音に詰め込む悪いクセが出た一句。本人は「幽霊」を季語と思い込んでいたが、ほとんどの歳時記には載っておらず、無季の句と言い切るべきと断言された。ラジカセに幽霊が憑依しているのか、カセットテープから幽霊の声が流れているのか状況が正確に読み取れず、前者の意味に添削され、タイトル戦初の最下位に。
●[34] @18/08/30◆お題:
夏休みの終わり『草茂る洞窟のこと他言せず』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
少年時代の思い出に発想を飛ばし、うっそうと茂る草木の中に見つけた洞窟を誰にも言わなかったという心情を表現した句。「語らないで伝える力」と評され、洞窟内で起きた事件をもずっと秘密にしているのかという読みも成り立ち、季語「草茂る」の使い方も絶賛。あえて言わないことで読者の想像を掻き立てる表現力で見事に前進を決めた。
●[35] @18/09/20◆お題:
駅の花屋『女店員の首にキス跡桔梗買う』名人10段へ
1つ後退添削後
『桔梗(きちこう)を勧める首筋にキス痕』『白桔梗勧める首筋にキス痕』
浜田が食いついた一句。作者は花屋の店員に恋心を抱いていたが、先客がいたのではないかというイメージを描写したエロスな句。「季語の印象が薄い」と評され、季語が「女店員」の強烈な印象に隠れてしまっているとして、季語の清楚さを押し出した大幅な添削を受ける。段位が下がるのは約2年ぶり。
●[36] @18/09/20◆お題:
俳都・松山(俳句甲子園'18延長戦)
『鰯雲仰臥(ぎょうが)の子規の無重力』審査員11人中9票で徳山高校に
判定勝ち添削なし
2018年9月月間MVH受賞句・2018年度年間最優秀俳句
「仰臥(ぎょうが)」とは仰向けに寝ている様子のこと。正岡子規が晩年書いた『仰臥漫録(ぎょうがまんろく)』という日記の書名から着想。「鰯雲」は子規の闘病の末、意識が無重力状態となってできたものではないかと発想を膨らませた一句。俳句甲子園の会場がどよめくほど審査員も大絶賛し、夏井先生は子規の死後、死そのものが子規の体自身を無重力にしていくのではないかというイメージが「無重力」に込められていると評した。
●[37] @18/09/27◆お題:
郵便ポスト『星月夜赤ちゃんポスト動きをり』第2回金秋戦決勝8位(最下位)添削後
『赤ちゃんポストに赤ちゃん動く星月夜』
新生児の特別養子縁組をする施設「赤ちゃんポスト」と星月夜という希望を与える季語とを取り合わせ、下五のミスがなければ優勝も狙えた発想の一句。「動く」対象を明確にするよう添削され、タイトル戦は2連続最下位と分が悪い結果に。
●[38] @18/11/15◆お題:
朝食の風景『炊き出しや並べば遠き秋の雲』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
貧困者が炊き出しに並ぶ様子をイメージし、人々との思い出やこれからの人生の希望や不安を「秋の雲」に託した一句。「や」で上五をしっかり切ったことでファーストカットの画力が引き出されたと絶賛され、再び他の名人を引き離し単独トップに。
●[39] @18/11/22◆お題:
結婚式『冬近しチリ人娶る過疎の村』名人10段へ
1つ後退添削後
『チリ人を娶る村々冬近し』
少子高齢化で地方に嫁が来ない。とうとうチリ人まで迎え入れる状況で、村は厳冬を迎える。国際結婚を題材に社会問題を提起した句だとしたが、「説明しなくても描ける」と評され、「過疎」「チリ人」「娶る」が冷え冷えした印象を与えるとされ、社会問題に軸足があると伝わるよう添削を受けた。再び振り出しに戻ることに。
●[40] @18/12/13◆お題:
スーパー銭湯『湯冷めして九条議論終はりけり』名人10段で
現状維持添削後
『九条議論終はる湯冷めの嚔(くさめ)にて』
国会での憲法九条の議論に発想を飛ばし、銭湯でも庶民が議論していたが、湯冷めをしてすぐ終わるぐらいの軽い議論だったという政治家目線の句。発想はさすがだが、「~して~はり」の叙述が散文的で、「臨場感が足りない」と評された。「くしゃみ」をきっかけに議論を終わらせる光景にしたかったが、「湯冷め」との季重なりを避ける意図があったと本人は語り、季語を合体させる上級技の添削を受け、年内の前進はお預けとなった。
●[41] @19/01/03◆お題:
結露『凍蠅よ生産性の我にあるや』第2回冬麗戦優勝
添削なし
季語は「凍蠅(いてばえ)」。「生産性」というワードが肝であり、冬の全く動かない凍蠅へ、子孫を残すという命題を問いかけるとともに自問自答をするという内容の句。裏の意味は、2018年にLGBTを軽蔑する発言をした女性国会議員に対する想いを述べた政治評論家特有の句である。時事を詩にする力技と展開が見事だと絶賛され、呼びかけの「よ」と最後を「や」でまとめる型も成功し、タイトル戦V4達成。梅沢の三連覇を阻止した。
●[42] @19/01/31◆お題:
コンビニのおでん『着ぶくれて慰安婦像の銅の髪』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
季語は「着ぶくれ」。おでんから冬の寒さ、2段階目として韓国の慰安婦像に発想を飛ばした一句。慰安婦像に毛糸の服を着せるイメージに、恨み辛み・悲しみを表す表現行為と歴史的な問題を解決するという意図を「銅の髪」に託した政治目線の句である。季語の是非がポイントとなり3度目の前進。「季語に託す主張」と評す先生は、時事の句を客観的に描写して成立させる姿勢に驚愕したと高評価。季語「着ぶくれ」は状態に軸足があり、人ではなく慰安婦像を思わせる展開と着地の「銅の髪」の描写・事実に作者の主張が全てこの句に託されていると評価。自分の主張を言わずに、客観的な描写のみで読み手に作者の意図を深読みさせる力があり、まさに俳句とはそういうものだと褒め称えた。
●[43] @19/02/21◆お題:
春のベランダ『尾畠氏の片す瓦礫や薄氷(うすごおり)』名人10段へ
1つ後退添削後
スーパーボランティア尾畠氏
『薄氷(うすらい)や片して幾千の瓦礫』
季語は「薄氷(うすごおり・うすらい・はくひょう)」。スーパーボランティアの尾畠春夫氏の活動に感銘を受けて詠んだ句。季語は「すみれ草」「チューリップ」だと「瓦礫」とイメージが近いため、これから融けるよという希望を「薄氷」に託した。梅沢名人は「"薄氷"が気に入らない。これは降格だ」とライバル心むき出し。評価のポイントは「尾畠氏」と的外れとなるが、結果は3度目の後退。表現の意図は褒めるも、「こういう時こそ前書きを!」と評す先生は、人名の固有名詞は「前書き」として添えた方が、この句の寿命が延びると忠告。「薄氷」は「瓦礫」の生々しさの光景を伝えているが、季語が最後だと「まだ瓦礫が撤去されない中で氷が薄く張っているのでは」というトーンの暗さが際立つと指摘。上五に「薄氷(うすらい)や」とし、薄氷が春の訪れを告げるという明るさ・希望が出る語順に添削した。再三の振り出しで梅沢名人に高笑いされることに。
●[44] @19/03/21◆お題:
春の旅行計画『春昼の鳩の目ん玉見ゆる殺意』名人10段で
現状維持添削後
『鳩の目ん玉に春日の殺意あり』
季語は「春昼」。マンションのベランダで鳩の巣を撤去した実体験を語り、執念深い鳩との格闘で見たその目はイっちゃってる(この世のものと思えない)と高々に語った一句。東大生の鈴木光は「面白い俳句だが、"見ゆる"が気になる。目玉はそもそも見るものだ」と冷静に指摘。本人は敢えてだと説明したが、査定は現状維持。「時間ではなく映像を描け!」と評す先生は、「私も鳩の目が異様に思う種類」だと東国原の視点に同調し、「殺意」での表現は良いアンテナで、「目ん玉」と具体的な部位を書く姿勢を褒める。しかし、鳩の目が一瞬光ることで殺意を覚えるという意味ならば、「春昼」というのんびりとした時間の幅を持つ季語ではなく、別の季語で映像に寄せた描き方をした方が得だと指摘。春の一日・太陽という意味を併せ持つ季語「春日」を用いて「あり」と断定する書き方で添削し、最後は「殺意見ゆ」の言い方もありだと添えた。「"春昼"は迷った。春の光の中に目ん玉と殺意が逆に映えるのではないかという対照を重視した」と本人は意図を説明した。
●[45] @19/04/04◆お題:
コーヒー『缶コーヒー啓蟄のつちくれに置く』第3回春光戦決勝2位添削なし
時候の季語「啓蟄(けいちつ)」は動物たちが冬眠から覚める頃を指す。休憩中に飲んだ缶コーヒーを地面の盛り上がった土くれに置くと、春の訪れを感じて安堵するという人物の動作を句またがりで描写した句。梅沢名人は「難しい俳句。東さん級じゃないと詠めない」とライバルの健闘を称える。先生は「光景・場面・動作が全部浮かぶ句」と称し、読み終わった瞬間に、自分が野原のような場所に座り、傾かないような場所に缶を置くという追体験ができ、その手の感触までありありと思えると称賛した。下手なことをやらず、シンプルに詠んだ句として好成績の2位となるが、村上名人に一歩及ばず春のタイトル戦3連覇と冬からの連覇を逃した。
●[46] @19/06/13◆お題:
梅雨の花屋さん『花やぎを増して花屋の梅雨入りかな』名人10段で
現状維持添削後
『花やぎの殊に花屋の梅雨入りかな』
季語は「梅雨入(つい)り」。梅雨に入ると曇天や雨で周囲は暗くなるが、花屋の花が豪華絢爛に、より花やいで見える様子を表現した句。「花やぎ」「増して」「かな」に不安アリとうなだれるように語った。中七が評価ポイントとなるが、連続で現状維持。目の付け所は良いと評す先生は、上五はやや漠然とした言い方だが、「花屋」の明確な場所によって「花やぎ」の種類はわかり、「かな」の詠嘆も美しさが伝わり、効果的だと加えた。「増して」が問題点と指摘し、動詞は"状態・状況"を示すときには方法を間違えると説明的になると解説。本人も国語辞典を引いて熟考したと述べる。「尚も」「一層」「益々」と例示し、「他と比べてさらに・際立つ」という意味の「殊(こと)に」が本人のニュアンスに合うのではと筆を執った。あと一歩で前進できただけに、本人は残念そうに振る舞っていた。
●[47] @19/06/20◆お題:
コンビニの傘『梅雨寒しコンビニは麻酔の匂ひ』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
季語は「梅雨寒し」。「勝負をかけた」と渾身の一句は、コンビニを独特な表現で比喩した。コンビニの手術室を思わせる明るさに、薬品のような新しい匂いを感じ、麻酔のように暖かく覚醒していく実体験を五五七で表現。村上名人の句に憧れる皆藤は「東さんならではの感性」と優しく語るが、本人は皆藤に厳しく当たる。比喩の是非がポイントとなるが、4度目の星獲得に思わず立ち上がる。「季語が大正解」と評す先生は「よく攻めた。面白い」と褒め、薄暗い季語と人工的な明るさを持つコンビニの対比が表現され、手術室を思わせる意図も成功したと解説。肝心の比喩はAをBだと断定するが、Aの中七とBの下五との落差が丁度良い塩梅で、言われないと気付かないが、実感が伴わないとダメだと解説。見事にやったと称賛し、「こんな玉投げてくれるなら番組楽しい」と先生はご満悦に。
●[48] @19/07/25◆お題:
夏の波紋[緑の映る水紋]『飛び込みの波紋広がりゆく木陰』第3回炎帝戦決勝4位添削後
『飛び込みの波紋広がりくる木陰』
季語「飛び込み」でプールにできる波紋が思いのほか広がる様子が、周囲の木陰にまで届く光景を描写した。石田は「飛び込んだ人を見ている人が(木陰に)いるのかなとも思わせる良い句」と作者の視点を分析。梅沢名人は「素晴らしいが、私が理解できない句を作るのが東君。"らしくない"句で置きにきた」と厳しく評す。先生は「とても綺麗な作品」と評し、滴の兼題写真からの発想力が良く、光景の作り方・切り取り方が綺麗と褒める。到達点となる「木陰」までの広さ・空間が表現され、水やプールの光・自然の緑の光がパッキングされたと称賛。悩ましいのが「ゆく」の複合動詞で、作者の立ち位置で変化すると指摘。飛び込みの近くならこれで良いが、作者が木陰に近い側であれば…と語ったところで「"くる"だな」と本人が悔しそうに当てる。波紋の動きが変化し、木陰に波紋が来るという奥行きが作れると解説。意図を本人に問うと「"くる"の方。候補にはあった。広がりを重視してミスチョイス」と反省することに。
●[49] @19/08/01◆お題:
猛暑日[35℃の電光掲示板]『立ち漕ぎの警官真顔炎天下』名人10段へ
1つ後退添削後
『立ち漕ぎの全力炎天の警官』
季語は「炎天下」。猛暑の中、何かが起きた。自転車を必死に立ち漕ぐ警察官の切迫感や臨場感を「真顔」に込めたのがポイントという一句。中田名人は中七の表現が上手いと褒めるも、本人は「漢字が多い」と不安要素を語る。特待生候補のパンサー向井は「何とも思わない。まだそんなレベルにない」と浜田の無茶ぶりに笑って対応する。査定ポイントも「真顔」で、4度目の後退に「厳しいよ先生」と本音が。先生は、緊急事態のため急いで現場に向かう意味だと受け止めたが、この語順では「真顔」の表情のアップが中心で、動作の方に軸足がいかないのが問題点と指摘。「立ち漕ぐ」状況は複数考えられ、坂道で真剣に立ち漕ぐのも真顔のうちで、この表現では緊急性・緊迫性が表現されにくいと解説する。動作を「全力」とすれば必死感が伝わり、誰が漕ぐかを思わせながら先に季語を出すべきと添削を進め、最後に「警官」と置いた。必死に漕ぐ警官が通り過ぎ、後ろ姿が遠のいていく映像が脳内の印象に残り、映像が広がることで季語が主役になる効果を生む添削例なら"2つ前進"もあり得たと添え、本人は「無理無理」と語ることに。
●[50] @19/08/08◆お題:
お盆のサービスエリア『墓参り後ろに誰かゐるやうな』名人10段で
現状維持添削後
『たれかゐるけはひ墓参のうしろ』
季語は「墓参(り)」。後退査定はとにかく気分がへこみ、タクシーの運転手からも話題にされると語った回。墓参りをすると、後ろに気配を感じる。誰かが居るように感じるが、振り返ってしまうと先祖なら帰ってしまう気がしてならない。大切に墓参りする人物と辺りがゾーッとしている感じを込めたという一句。先生は「ゾクッとさせて欲しい」と評し、何かいるのではないかという気配・気分は伝わると褒め、沢山の人が共感を持つと評価するも、査定ポイント「ような」の言い方では、リアリティーが微量足りないと指摘。文語表現で統一すべきと「たれか」から始め、語った「気配」を入れて最後に「うしろ」と置く展開に語順を変え、季語以外を平仮名表記にした。読み終わった瞬間にゾゾッと感じる添削となり、「これができれば一歩前進」と添えるも、解説を聞く本人は苦い顔つきのまま「どうですか?この難しさ」と平場へ同情を買い、首を傾げてしまった。
●[51] @19/09/12◆お題:
夕方の買い物帰り『謹慎の身に沁むタップダンス踏む』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
季語「身に沁(し)む」は秋の寂しさが身に染みるように感じること。一進一退を1年間繰り返す結果に対し、精神的に負担がかかるという本人は、降格(後退)を楽しそうに発表する浜田をいじり、力作で星を奪われる"あの敗北感・挫折感は2~3日尾を引く"というつぶやきが紹介され、"俳句ハラスメント"と名付けて「法的措置を検討する」と冗談交じりに語った回。1998年の自身の不祥事(イメクラ店で未成年の少女から性的サービスを受けることが引き金となる事件)により、謹慎して仕事がゼロになった。当時、たけし軍団はタップダンスを練習しており、それだけは辞めたくなかったが、日の目を見るかどうか分からず、未来への不安の中で1人で練習するタップダンスの音が身に沁みるという心情を表現した。結果を受けて"俳ハラ"訴訟取り下げを表明する本人。「凄い情報量!」と評して、一句が破綻しない工夫が2つあると語る先生は、季語の置き方と下五の具体的な映像化を述べる。査定ポイントである「謹慎の身」と季語へ繋げる展開が良く、「身に沁む」状況が伝わると褒め、サラッと流すと何の謹慎か問い詰められるが、下五の具体的な情報で芸能の職業とわかり、本人が語った心情が読み手は想像できると解説。さらに、「沁む」「踏む」と韻を踏むことで、繰り返される謹慎のイメージもそこはかとなく伝わると添えた。実体験の事実にも感心し、「謹慎の身でよくぞここまで。お見事」と切り返す。最後に"俳ハラ"発言に触れ、「それくらい引きずるほど真剣にやっているのが、私としては嬉しい。これからも"俳ハラ"頑張っていこうと」と厳しい査定を貫く意思を示すと、「謹慎もしとくべきですね」と本人は身に沁むかのように総括した。
●[52] @19/09/19◆お題:
道後温泉(俳句甲子園'19延長戦)
『子規に似た蝗がおった食うたった』審査員11人中8票で弘前高校に
判定勝ち添削なし
季語は「蝗(いなご)」。正岡子規に似た蝗を見つけて食べたという発想を飛ばした一句。教科書等に掲載される正岡子規の横顔の写真がバイきんぐの小峠に似ていると語り笑いをとる本人は、本当は「飛蝗(ばった)」にしたかったが、飛蝗は普通食べないよなと思ったと語る。弘前高校は「季語が食べられるから変えたのなら、季語が動いてしまうのでは?」と口を滑らせた一言を追及する。中堅戦の結果は「からくりの人形踊り秋の暮」に勝利。審査員の一人は「蝗と飛蝗は似ている。ディベートで裏方を暴露したが、普段は黙っていれば大丈夫な話。最終形では蝗の句として愛情が感じられる」とコメント。夏井先生は「リズムや発想が面白い。飄々(ひょうひょう)とした味わいがあり、愛されやすい句」と評した。対外試合の戦績は名人として唯一無傷の2連勝を飾った。
●[53] @19/10/10◆お題:
歩行者信号『信号の点滅は稲妻への合図』第3回金秋戦優勝句
添削後
『信号は点滅稲妻への合図』
季語は「稲妻」。歩行者信号の青の点滅を見ると稲妻に直結している印象があるという本人の体験を具現化した一句。日常の小さな世界を詠む村上名人に対抗し、広い世界で勝負し感性をぶつけたと語った。先生は「非常に面白い感覚の作品」と評し、稲妻と信号の点滅という関連性のない2つを結び付けたことに詩が発生したと高評価。より緊迫感を出すため、2カットにしてリズムが締まる微調整の添削例を示し、本人がどちらが良いか選ぶべきだと添えた。先生は「こういう感覚の作品が出てくるようになった」と感心し、「プレバト!!の俳句のレベルがここまで来たことを喜んでいる」と全体の上達ぶりを称賛。「技術・独自性・芸術性を一緒に追究したい」と添えた。自身5回目となるタイトル戦制覇で、初の賞金をも手にした。
●[54] @19/10/24◆お題:
秋の物産展『竜淵に潜む被災地物産展』名人10段★1で
現状維持(添削なし)添削なし
季語「竜淵(りゅうふち)に潜む」は秋分の頃を指す時候の季語で、東日本大震災から復興を遂げる東北の物産展の盛況を詠んだ。夏井先生の著書『絶滅寸前季語辞典』に載る季語にチャレンジした一句は、竜が中国では縁起が良く、季語に幸運やエネルギーのイメージがあり、物産展での被災地の復興や元気を表現したと語った。査定ポイントは季語と「被災地」の取り合わせの是非。自身初の星持ち現状維持に、梅沢名人も「ウソ?」と驚きの表情に。先生は、季語が「龍天に登る」という春分の頃の時候の季語と対極にあることを紹介し、難しい季語と「物産展」という俗な言葉を取り合わせた勝負は面白いと褒める。しかし、「被災地」を取り入れるところに狙いが見え、微かに原因・理由を読み取る人がいると指摘。俳句では因果関係が嫌われると解説し、"水の神様でもある竜神が潜んでくれた(原因)から、物産展ができるほど被災地が復興した(結果)"と読める部分が非常に勿体ないと語る。添削はないが、チャレンジとしてはドンドンやってほしいと添え、本人は「これで現状維持だったらチャレンジできない」と心の叫びを語った。また、今年の台風19号で被害に遭われた方への見舞いの言葉が放送された。
●[55] @19/12/12◆お題:
羽田空港からのモノレール『オッケーグーグル冬銀河にのせて』名人10段★2へ
1つ前進添削なし
季語は「冬銀河」。前進と後退を繰り返し、星の数が0と1を上下する折れ線グラフを”健康な心電図”と比喩し笑いをとる本人の句は、調べ物や家電操作をする機能を持つ『スマートスピーカー』を題材に破調で詠んだ。都会で独りの人物が「冬銀河に乗せてくれないか」とスマートフォンに語りかけ、田舎で見ていた冬銀河を回想し、空を見上げる心境を表現したチャレンジ句と語る。梅沢名人は「『オッケーグーグル』を持ってきたのは凄い。私には書けない。あ~~立派なもんだ」と執拗に褒めちぎる。査定ポイントは後半のお願いの是非。初の星2つに歓喜する本人に「取り合わせがはまった!」と評する先生は、やってくれたという印象だと語り、前半に8音も使うと、どんな季語と取り合わせるかの勝負が大半を占めると解説。この時、『グーグル』に本当に頼んでやってくれるものを取り合わせてもしょうがないと続け、「お天気」「アラーム」「暖房のスイッチ」などの機能を紹介。先生自身「知ってはいるが、使っていない」と明かしながら、後半に「ストーブ付けて」と置くと、取扱説明書の一文で話にならないと解説する。後半は、現段階で『グーグル』は実現できないが、未来を予見させて作者の気持ちを代弁する季語の選択が必要で、難しいがよく「冬銀河」を選択したと褒める。「冬銀河」の向こうから未来が来るイメージもあり、「のせて」の口調も可愛いと続け、「楽しませていただいた」と総括した。梅沢名人も白旗を揚げた。
●[56] @20/01/03◆お題:
お鍋『湯豆腐の湯気アインシュタインの舌』第3回冬麗戦決勝2位(次回シード権あり)添削なし
季語は「湯豆腐」。鍋の兼題から天才物理学者まで発想を飛ばした勝負の句は、宇宙の真理を追究したアインシュタインの舌に湯豆腐の湯気を当てたらどんな発見をするのかという疑問を読者に投げかけたと語った。岩永は「文字数の長い人名を用い、舌で湯気を分析するのが素晴らしい発想でビックリした」と褒める。先生は、2つの物がなぜ取り合わせられるか分からない読者もいると前置きした上で、完全に無関係な2つの言葉を17音にぶつけて言葉の火花を飛ばす手法に挑戦し、独自の世界を構築した姿勢を称賛。シンプルな食べ物の「湯豆腐」と物理・宇宙を考えた「アインシュタイン」のそれぞれの”奥深さ”を重ね、良い言葉の火花を散らせたと解説。定型を裏切ったが「AのB」という同じ構造を2つ並べる『対句表現』でリズムの問題を解消し、さすがだと認めた。個人的にこの挑戦は大好きだと褒めたが、季語が人名のイメージに押し負けたため、タイトル戦連覇を逃した。
●[57] @20/04/09◆お題:
不動産屋さん『まるでシンバル移り来し街余寒』第4回春光戦優勝句
添削なし
季語は「余寒」。18歳で宮崎から上京した時の東京の街並みがまるでシンバルの様で、平板で冷たく賑やかしく騒がしい。破調にして不安感を出したと語った一句。先生は、本当に見事な一句と評し、比喩の距離感を挙げる。比喩は分かり過ぎるとつまらなく、離れすぎると分からないため、手馴れた後に教える先生もいると前置きし、比喩の塩梅の難しさを語る。そして、「移り来し街」で引っ越した街が、まるでシンバルのような硬質な質感を持つ音の響きにより不安感を掻き立てる街という状況を表すと解説。残り3音しかないが、季語を信じているから、「余寒」と投げ込んだ瞬間に再びシンバルの音が鳴る感じだと印象を語る。「ここまで作れたら気持ち良い。やっぱりさすが」と終始褒め称えた。タイトル戦は最多の6冠を果たした。
●[58] @20/05/28◆お題:
100円玉『百円玉とヤモリがオレの守り神』名人10段★3へ
1つ前進添削なし
季語は「ヤモリ」。たけし師匠の弟子だった頃は貧乏で、(生活費が)100円しかない日が結構あったと本人。汚いアパートの中で100円玉を持ち、(その室内に)ヤモリがいた。ヤモリは家を守るという言い伝えがあり、100円玉とヤモリが自分の明日の守り神だと強く思ったことを詠んだ。「ヤモリ」は平仮名だと季語だが、敢えて片仮名にしたのが是非だと語った。梅沢名人は「星を獲る気持ちがあるなら、”守宮”と漢字にすべきだ」と指摘。査定ポイントは「ヤモリ」「オレ」のカタカナ表記の是非となり、両者の意見がその分かれ目に。「意図が生かされた表記」と評す先生は、基本的に生物の季語は片仮名で表記しないのが定石で、片仮名では昆虫図鑑ではあるまいしという批判が必ず来ると前置きする。この句はそれを狙っているとし、100円が守ってくれる切なさがある上、「ヤモリ」の片仮名により、守ってくれない昆虫感が出ると解説。自分の存在感が出る「俺」も片仮名の「オレ」では軽くてチャラくて若くて尖っているイメージがあると続け、根拠のない自信と不安に揺らぐ効果を狙っているのが読めばわかると褒め、”心が行き届いた一句”と総括した。初の星3つ獲得とさらに上に近づくが、指摘を外したことを浜田に問われた梅沢名人は「永世名人は1人でいいと思ってますから」と謎の返しをした。
●[59] @20/08/06◆お題:
ポイントカード『ポイントでもらひし蛍なほいきる』第4回炎帝戦決勝6位(次回シード権なし)添削後
『ポイントでもらつた蛍なほいきる』
季語は「蛍」。デパートのポイント交換で蛍がもらえた。擬似紙幣で生き物と交換するのは抵抗があるが、そういう蛍はすぐ死ぬのではないかと思ったが意外と長生きした。光らなくなっても、なほ生きていた小さな生命力に感動したと語り、上五「で」が自分も気になっていたと6位に沈んだ理由を予想した。藤本名人は「"もらひし"がカッコつけている」と適当に評す。先生は、「発想はとても良く、大変好きな句」だと評し、本人の語った弱点には同調するも、貰う動作に繋がる「で」を外すのはとても難しいと語る。説明臭さを上手く薄める一手が残されていると述べる先生は、中七「し」が文語でなおさら説明臭く感じる問題点を解消するため、敢えて口語(話し言葉)で表現するべきだと提案。促音「つ」を大きく書き、口語だが歴史的仮名遣いのため奥行きのある空気を醸し出せると解説し、ダントツ1位になる可能性を秘めていた発想だったと総括した。初めてタイトル戦でシード権を失った。
●[60] @20/12/17◆お題:
プレゼント『ほしかもんはなかジャングルジム冷たし』名人10段★4へ
1つ前進添削なし
季語は「冷たし」。幼少時の思い出の一句。親からプレゼントの希望を聞かれたが、裕福ではないため負担を掛けたくないと思い、宮崎弁で「欲しいもんは無か」と強がりでやせ我慢。当時、公園でジャングルジムに登った時に鉄の棒の冷たさが心に沁みたと語った。貧乏の時代を過ごした梅沢名人も共感。査定ポイントは「ジャングルジムを選んだ是非」。「寂しさと相性がいい!」と評す先生は、兼題写真から「欲しい物がない」方向への発想力がこの作家の力だと太鼓判を押す。遊具は「鉄棒」「すべり台」「ブランコ」と他にもあるが、「ジャングルジム」なら高い所にずっといられる点があり、寂しさ・孤独と相性が良いと言葉の選択を称賛。最後の「冷たし」が、冬の風や金属の持つ冷たさを生々しく伝えると解説し、本人を褒め称えた。いよいよ永世名人に王手をかけた。
●[61] @21/01/14◆お題:
輪ゴム『無影灯下腹に冷たい何か』第4回冬麗戦3位添削なし
季語「冷たし」は本来、気温が低いことを指す。白背景に輪ゴムの兼題写真が手術用の影ができないライト(無影灯)に見えたと本人。半身麻酔の手術をしたが、下腹に冷たいものを感じた。それがメスか執刀か勘違いなのか。ヒヤッとして、そこから恐怖感や不安感がバーッと出た瞬間を思い出したと語った。梅沢名人は「東さんしか作れない。大したものですよ。ただ、季語が無いんです。『冷たい』が季語なのかわからない」と鋭く指摘。先生は「これは東さんかなと思っていた作品」と述べ、「無影灯」で手術室と分かる言葉の経済効率は悪くないと褒める。「下腹」と具体的な部位の後、「冷たい」「何か」と畳みかけるため、メスか、ひやりと急に恐ろしくなったのかと様々な解釈が出来ると解説。季語の点は議論が必須で、本人が季語と認識して使ったならそれでよいが、季語が無いと言う人も一定数いるはずで、季語と認識するかは読み手に託しても良いと結論付けた。「下手に添削するとバランスが崩れるため、東さんのバランスで味わうしかない」と感触を語るも悔しそうな本人だった。
●[62] @21/02/25◆お題:
きのこの山とたけのこの里『買い食いを叱られて来し末黒野(すぐろの)よ』第5回春光戦予選C1位(決勝進出)添削なし
「末黒野(すぐろの)」は枯草を焼いて黒くなった野原を指す春の季語。幼少期にチョコレートを買い食いして親に怒られ、家出して気付くと焼野が広がる場所に立っていた。すすなどの匂いがあり、暗がりで怖くて反省するという複雑な気持ちを季語に託したと語った。梅沢名人は季語の選択と物語性を褒め、村上名人は自分の幼少期に体験しなかったものの、季語を引き立てた効果を褒める。先生は、子どもが買い食いして叱られる発想の句はあるとしながら、展開を大絶賛する。「末黒野」という季語に着地した途端、焼野の跡の非日常の中に自分がぶち込まれたような不思議な気持ちになり、後悔・切なさ・悲しみがこの季語によって一気に吹き出してくると味わいを語る。しかし、「作者が東さんと分かって、ちょっと置きに来た感も否めない」と本人へ返した。初の予選からの参加となったが、危なげなく通過を決めた。
●[63] @21/03/18◆お題:
家電量販店『テレビテレビテレビ菫菫菫』名人10段★4で
現状維持(添削なし)添削されず
季語は「菫(すみれ)」。チャレンジ句と語る本人の一句。量販店に行くとテレビがバーッと並んで展示されるが、その全ての画面に菫の映像がバババっと瞬間的に映ることを表現したと語った。梅沢名人はコメントに困る様子に。査定ポイントは「テレビ」「菫」を並べた技法が成功しているか。「意図と意欲は認めるが…」と評す先生は、詩歌の世界で文字を何度も重ねる技法は確かにあると前置きする。並ぶテレビにいきなり菫がバーッと全部に映った時、それに取り囲まれる迫力や非日常感に圧倒されて、この句を作りたかった意図は物凄く伝わってくると解説する。しかし、この書き方で全員に正確に伝わるかは疑問で、まだ未消化な部分が残っていると語る。俳句は17音と短い上、「テレビ」「菫」がどちらも3音とり、3音ずつの言葉を並べて何がどこまで出来るかというのはとんでもない挑戦で、「私は添削したくない」と先生は本人に預けた。星が獲られなかった事実に本人は、「良かったですわ。獲られるのと全然違うから。一歩下がるとまあ遠い遠い」と次回へのリベンジを誓った。
●[64] @21/03/25◆お題:
じゃんけん志村けんさん一周忌
『山も笑う「最初はグー」の発明者』
第5回春光戦決勝7位(次回シード権なし)添削後
志村けんさん一周忌
『山も笑う最初の最初の「最初はグー」』
季語は「山笑う」。作品のテーマを説明する前書きをつけ、季語「山笑う」に「も」を加える工夫を凝らした一句。3/29が志村けんの一周忌で、「最初はグー」を考えたのは志村さん。最近の若い方にそのことを知らない方がいるので知ってほしいのが一点あり、「山も笑う」は本来は「山笑う」で、志村さんと「笑う」はイメージが近いと思ったが、コロナ禍も一年経って早く終わってほしいという気持ちで志村さんも天国で笑っているのではないかという気持ちを入れたかったと語った。横尾名人は「追悼句に対する前書きの使い方が勉強になった」と述べ、村上名人は「順位に関係なく素晴らしい」と上から目線、梅沢名人は「中七が志村けんが流行らせたとみんなに知ってもらいたい気持ちが強い。ただ、季語の『も』が…」と述べ、長い話に浜田が思わず舌打ちする。先生は兼題のじゃんけんからの発想の着地に物凄く納得したと述べ、気持ちにも寄り添えると語る。考えるべき点は2つで、1つ目は上五の「も」だが、追悼句という前提が前書きにあり、私たちも志村けんもという色んな想いを「も」に託したと理解できるため、作者の意図として尊重すべきだと考えたと許容する。しかし、「発明者」に説明臭が残るため、これを消して添削例を考える。前書きが既にあるため思い切ったやり方をしても良いと指南する先生は、中七に「最初の最初の」と入れた。「『最初はグー』」の鍵括弧で映像は立ってくるかもしれないと語ると、スタジオ内がどよめく添削に、本人は首を横に振り、「できない!」と叫ぶほどに。春光戦で初めて低評価に沈み、肖像画も初めて失った。
●[65] @21/04/29◆お題:
分別タイプのゴミ箱『ユンボの一撃花冷えのごみ屋敷』永世名人
へ
1つ前進添削なし
季語「花冷え」は桜の咲く頃に急に冷え込む時を指す。ごみ屋敷があったが、悪臭などの景観の問題が発生し、行政代執行で役所が取り壊し、ユンボで壊されるのを見た。ごみ屋敷を解体されるのが嫌だったが、寂しい気持ちを季語「花冷え」に託したと語った。査定ポイントは季語「花冷え」の選択と位置の是非。梅沢名人は手厳しい評価をするが、結果は前進。「(堂々とした一句)」と評す先生は、非常に面白い作品と押さえる。「ユンボの一撃」で激しい動きが出て、「花冷え」が出ると「まさか桜の木を(壊す)?」と一瞬読み手の脳は先走るが、最後の「ごみ屋敷」で一撃の対象が出て映像が見えてくると解説。美しいものと汚いもの、桜の静けさとユンボの一撃、対比が交互に経糸・横糸張り巡らせた堂々とした一句だったと称賛した。句集に載せられるのは認定当時の梅沢御大より9句も多い27句だと判明。同時出演の梅沢名人の30句を3句差で追いかける形となった。
●[66] @21/07/15◆お題:
夏野菜カレー『玉葱やこの人結局死んじゃうの』永世名人28句目に
掲載決定
添削なし
季語は「玉葱」。平場出演者は全員戸惑いを隠せない反応の一句。妻はカレーを作るために玉葱を切るが、自分はテレビのサスペンスドラマを観ていて、犯人役が出た瞬間にさりげなく「この人結局死んじゃうの?」と妻に聞かれ、ハッとしたと語る本人。普通の会話に死が出てきて、「いつか結局自分も死んじゃうんだ」と思うと、玉葱が魂のように見えた瞬間を詠んだと語った。梅沢名人は「無理です」と否定し、本人の語るストーリーをなぞるが一切を認めない。「日常からドラマをつかみ出す力技」と評す先生は、平場の気持ちに寄り添いながら説明を始める。まず、玉葱だけに焦点を絞る発想の方向性を褒め、季語「玉葱」+「や」+12音のフレーズの手法だと前置き。季語「玉葱」に誰かのセリフをガチンコで取り合わせる勇気はなかなか持てないと述べ、読んだ瞬間に、脳の中に「あれ?この人結局死んじゃうの?」と問いかけられた側の人間が、日常の中に不安・不穏があることにドキッとすると解説。そして、その後の詰めが面白いと述べる。玉葱を切る妻の手には、凶器ともなりえる包丁が握られており、その包丁で玉葱をみじん切りしているはずだと述べる。そうすると妻は悲しくもない涙を流し始めるはずで、そういうところまでこの季語が発言・主張していると明かす先生に、平場出演者は驚きを隠せない。先生は「それが読み取れると、俳句はますます面白くなる」と述べた。永世名人として初挑戦だったが、見事掲載を決めた。
●[67] @21/07/22◆お題:
Tシャツ『Tシャツの干され西日の消防署』第5回炎帝戦2位(60名中)添削なし
季語は「西日」。消防署の2階に消防職員のTシャツが干されており、少し汚れていた。一日の激務の中、市民の生命・財産を守らないといけない過酷な任務を全うする職業だが、シャツに西日が赤く当たり、「ご苦労様」と賞賛しているように照らしている情景と語った。梅沢名人は句を褒めた上で、優勝できなかった本人と自分の順位(6位)と同じようなものとし、順位付けの差を有耶無耶にしようと悪だくむ。先生は良い句だと前置きし、「Tシャツの干され」は鉄板の類想フレーズだが、その類想を共感という土台に据えた点に強みがあると解説する。前半が家庭の日常かと思うと、消防署という過酷な労働の現場だと分かった時のハッとする感動がストレートに伝わり、「西日」が干しているTシャツ一枚一枚に照り張っている映像が浮かぶことで、季語を主役に押し出すことができている完璧な句だと称賛。惜しくもタイトル戦制覇を逃したが名人・特待生として最高順位につけた。
●[68] @21/08/12◆お題:
打ち揚げ花火『音なき音や八月の遠花火』永世名人29句目に
掲載決定
添削なし
季語は「八月」「遠花火」。「音なき音」は音が本来聞こえないが、音が余計に聞こえるように感じるさま。「八月」には終戦や原爆など、お盆で御霊が帰ってくるが、遠花火が御霊となって自分に語りかけてくれるのではないかという句と語った。梅沢名人は芸人風に「やっちまったな!」と叫ぶが、「音なき音や」の詠嘆が気になると指摘する。「8月という季語をよく理解している!」と評す先生は、昔ながらの「お盆」に加えて「原爆」「終戦」と複雑なイメージを持ち始めた季語「八月」を最初に解説し、梅沢名人の指摘も正しいと褒める。詠嘆の後に季語「八月」があるため、この「音」は亡き人の声・叫び・魂の動き・寄ってくる音などを全て含めて詠嘆したに違いないと読むことが可能で、詠嘆の意図を判断して「掲載」にしたと理由を解説。仮に、梅沢名人ならば上五を「音のなきおと」として詠嘆せず、静けさの方を良しとして静かに八月の遠花火を浮かばせる方が似合うと語る。これは作者の作品の傾向をハッキリと分け、第三者が良い・悪いという話ではなく、どっちを表現したいかという勝負になる高段位ならではの査定だと述べた。納得がいかない梅沢名人は「だからさぁ、私が詠嘆した時にボツにしてるからさぁ。『や』つけたら全部ボツだろ」といちゃもんをつけるが、先生は「それはアンタ、下手な使い方してるからボツなんです」と冷静に指摘。反論する梅沢名人は浜田に制止されるが、梅沢名人の前で本人は連続掲載を決めた。
●[69] @21/09/02◆お題:
実家の柱『秋暑し柱は饐えた父の臭い』永世名人30句目に
掲載決定
添削なし
季語は「秋暑し」。30~40年実家を支えてきた柱の臭いと大黒柱として家族を支えた父の臭いを「饐(す)えた」でシンクロさせる意図を持った一句。夏の暑さを越えるとその臭いが際立つため、「秋暑し」としたと語った。季語の選択を誤った村上名人は、比喩ではない断定表現を褒め、季語が生かされていることを「逆村上」という独特の表現で比喩する。「時候の季語を主役に立てている!」と評す先生は、「実家」と書かれていないが、季語以外のフレーズで実家の柱であると否応なく分かる点を褒め、「饐えた」という強烈な言い方で表現した柱の臭いが、老いていく父の臭いとイコールだという実感が非常に生々しいと称賛する。比喩とせずに父の臭いだと断定して詩を発生させる点も意図的だと認める。一番褒めるべきは、「秋暑し」の季語を主役に押し上げた点で、まさに柱が饐えた臭いを放つ父の臭いのような時期が「秋暑し」の頃と季語が引き立つと解説し、「逆村上」だと村上名人に同調。今回挑戦した三名人は「父」と映像を持たない季語を用いた共通点があったが、時候の季語を主役に出来ていたのがこの一句だとし、さすが永世名人だと褒めちぎった。3回連続掲載を決める絶好調ぶりに、御大の句数を抜くという浜田の提案に本人も同意した。
●[70] @21/09/23◆お題:
秋の夕日『ラフレシアも秋夕焼も人を食うか』永世名人31句目に
掲載決定
添削なし
季語「秋夕焼」に怖いイメージがあると言う本人。風景・人・物を吸い込んでいくような恐怖感を感じ、人食い花とも言われる巨大な花「ラフレシア」と重ね、吸い込むのかと語りかける情念を描いた一句。「さすがの取り合わせ!」と評す先生は、兼題写真からの「ラフレシア」の発想に驚き、ラフレシアの花自身が人を飲み込みそうな印象に共感する。「秋夕焼」の季語が主役に立つかは論じるべきだが、秋夕焼とラフレシアの色合い・大きさ・美しさ・不気味さが似た点が読み手に伝わると述べる。着地はストレートにやったのが逆に良く、この2つが取り合わされているか理解しやすい効果を生んだと評す。六六六で押し切る調べで、ゆっくりとした静かに恐ろしいリズムが、読み手にゆっくり押し寄せてくる印象を作りたかった意図を察する先生は、「この人のたくらみはどこまでいくのかとビックリしている」と語った。番組初の4連続掲載決定となり、思わず本人は「僕もあの(シュレッダー演出の)『エレクトリカルパレード』。あれ聞きたいんですけどね」と逆張りする形に。
●[71] @21/09/30◆お題:
バッテリー切れ間近(携帯電話の電池残量)『携帯をタコ足充電夜学校』第5回金秋戦決勝7位(次回シード権なし)添削後
『タコ足充電夜学の携帯のとりどり』
季語「夜学校」は定時制の高校・大学を指す秋の季語。夜学には行ったことがあるというご本人。年齢など様々な人がいて、昼に働いてから来るため大体携帯の充電が切れてしまう。教室の前後にタコ足充電のコンセントが置いてあり、そこにみんな充電して授業を受ける。年代・職業を越えて1つになっている映像を描いたと語った。先生は発想を褒め、夜学の現実として「タコ足充電」に目を付けた着眼点と長い言葉に果敢に取り組んだ姿勢も褒める。問題点は散文的な語順、「タコ足充電」による中八字余りの配置、「夜学校」の「校」の字で学校を見せる映像に広げるカメラワークの3点を挙げる。「タコ足充電」を上五字余りとして置く定石で添削を行う先生は、「夜学の携帯のとりどり」で映像化した。最後「とりどり」に焦点が来ることで「タコ足充電」と映像を結び、真ん中にある季語「夜学」を再度クローズアップすると解説。難しいことに果敢に挑戦していた句だったと総評を述べた。7位に沈んだ本人は「確かに語順が散文的かな~と思った。ギリギリでいいかなと思ったんですけどね、ギリギリを突くと大体ダメなんですね」と反省の弁を述べた。
●[72] @21/10/14◆お題:
弁当の店頭販売『林檎のうさぎ雲梯を二段飛ばし』永世名人32句目に
掲載決定
添削なし
季語は「林檎」。幼少期、クラスメイトの弁当に入っていたうさぎの形の林檎の飾り切りを見た際の衝撃で興奮し、校庭にある雲梯を二段飛ばしで最後までやった体験を詠んだと語った。「展開がうまい!」と評す先生は、「林檎のうさぎ」の入りを褒め、飾り切りだとすぐに分かる効果的な書き方に触れる。「うさぎ」も季語だが比喩として使われているため問題はなく、前半のフレーズで子どもがイメージされるため、後半へ無理なく展開した上手さを称賛する。「うさぎ」から急に「二段飛ばし」に行くと、「飛ばし」の動きがつくが、「うさぎ」から「雲梯」に行くと、子どもの可愛らしさでイメージを繋ぐ点を解説した。前代未聞の5連続掲載を決め、舞台でお休み中の梅沢名人まであと5句に迫った。
●[73] @21/10/21◆お題:
プレバトのランキング席『怖るるな最下位怖るるな夜長』永世名人32句で掲載
ボツ添削後
『怖るるな詩を怖るるな長き夜を』
季語は「夜長」。夜、俳句を考えているとタイトル戦最下位への恐怖心から委縮してしまい、助詞をどうするかで迷い、さらに長い夜に感じる心象風景だと語った。「気持ちは分かるが…」と評す先生は、「最下位」という単語が、本人にとって重要なキーワードなのは理解出来ると述べる。ただ、一句として見た時に「最下位」という言葉が詩の純度を落とすため、何の分野の最下位なのを明確に書くべきと指南。「俳句」に限定しない「詩を」とし、季語は「長き夜を」と対句表現に添削した。「怖れずに詩にぶつかっていきましょう。そして、この長き夜を一緒に格闘していきましょう」という句に、本人は感動のあまり「これは掲載できないんですかね」と述べる。初のシュレッダーの洗礼に「御大の気持ちが分かった。切ないですね」と噛みしめるように語った。
●[74] @21/12/02◆お題:
映画館『この人が父ちゃん銀幕に雪烈(はげ)し』永世名人32句で掲載
ボツ添削後
『父となる人と雪夜の映画館』
季語は「雪」。小学2年生の時に母親が再婚したが、新しい父との初顔合わせが映画館だったと述べる本人。その時に見た映画が高倉健主演の『網走番外地』と子どもが見る内容ではなく、隣に座る新しい父に対する複雑な心情を抱いたが、銀幕の中で降る雪が当時の気持ちに重なったと語った。さらに、「この人」に生き別れた父との再会など解釈が自由に出来る点が気になるものの、初めて会う他人行儀な雰囲気を込めたと補足する本人に対し、「この人」は映画に出演した人物で、それを見た客席の子が「ああ、この人が私の父ちゃんだ!」と読めてしまうと別の解釈を語る梅沢名人。「ストーリーなの?リアルなの?」と評す先生は、梅沢御大と同じように読んだと前置き。俳優の隠し子が母と映画館に行き、「あんたの本当の父ちゃんはこの人よ」と登場人物を指差す場面で、その銀幕の中に激しく雪が降っている内容に解釈したため、「雪」の季語の鮮度が問題だったと指摘。しかし、語った内容の方が俳句のタネとして素晴らしいと述べ、新しい父に会ったのが、雪の日の夜の映画館であったという内容で、十分句材になると指南する。「父となる人と」で登場人物や生き別れの誤読を防ぎつつ、作者自身との関係を示し、「雪夜の映画館」と現実を書けば、リアルな作者の人生が立ち上がると解説した。最後に先生は、「そういう経験しているなら、それで100句くらい詠まないといけないですよ!その場面を」と忠告。ライバルのボツ査定に元気になる梅沢名人は、「これが現実なんです。私を抜こうなんて。冗談ポパイのほうれん草!」と寒いオヤジギャグを飛ばして牽制した。
●[75] @22/01/13◆お題:
人生ゲーム『片襷硬し四日の身を通す』第5回冬麗戦優勝
添削なし
季語「四日」は1月4日を指す。兼題から自身の選挙戦へと発想を飛ばした。最初に選挙に出たのが1月4日の時で、自身の名が印刷された片襷をかけるが、ビニール製が冷たくて硬く、それを通してもらった時に身震いする。「これから選挙戦だ、戦いだ」という感動、緊張、夢や希望、色んなものがない交ぜになった瞬間を句にしたと語った。先生は「四日」が季語であることを述べる。「片襷」は三種類の可能性があり、まな板初めのような新年の行事の襷、正月の選挙の襷、駅伝の襷とそれぞれ挙げるが、季語から箱根駅伝(2・3日)は外してよいと述べる。まな板初めや弓初め、正月選挙というハレな行事と俗な行事が一句の中に2つある奥行きの深さを称賛する。「硬し」という感触に続き、「身を通す」は映像でありつつ心情表現にもなっており、「硬し」と緊張感の部分で響き合うと解説する。全ての言葉の質量や明暗などを計算した上に言葉が選び取られている一句だと絶賛した。当の本人は「優勝より、(10位の)犬山さんに勝ったことが僕は凄く嬉しい」と語るも、永世名人位として初、通算7度目の戴冠を手にした。
●[76] @22/02/17◆お題:
宅配便『インターホンに春光の顔半分』永世名人32句で掲載
ボツ添削後
『顔半分占め春光のインタホン』
季語は「春光」。インターホンが鳴ると、画像に訪問者の顔が半分だけアップに映っており、そこに「春光」があるという光景。宅配業者だと思うものの、その表情でざわざわして「怪しい者か」と思う心情だと語った。「季語本来の意味を再確認!」と評す先生は、季語の本意を再確認するよう指南する。「春光」は春の風景・風光という春らしい光景を表しており、春の光という意味は最近の歳時記に載り始めた意味だと解説する。元々の意味を押さえた上で、春の光も見せるところまでを永世名人に求めたいと述べた。また、「顔半分」はコロナ禍の「マスク」と思われる可能性があるが、作者の意図が異なるため語弊を無くすように書く必要性も指摘する。「顔半分」から始め、「占め」を入れて、「春光のインタホン」と整えた。本人は「いや~、『占め』は出ないですわ~」と笑って応対するも三連続のボツ査定となり、「句集にボツのコーナーってないの?」と浜田に提案する羽目に。
●[77] @22/02/24◆お題:
フードコート『蝶は測るフードコートの奥行を』永世名人33句目に
掲載決定
添削なし
季語は「蝶」。蝶が体育館やフードコートなど大きな屋内に入ってくるとバーッと飛ぶが、蝶が間尺を測っているかのような気になり、その感覚をストレートに俳句にしたと語った。藤本名人は「こんなのは思いつかない」、北山は「いつかはこういう句を書きたい」と両者絶賛する。「永世名人の新たな作風!」と評す先生は「いや~、この句は素敵」とウットリ。フードコートに迷い込んだ蝶をこのように感じ取れることが本当に素敵だと述べ、太鼓判を押す。上五「は」の助詞は重要で、他にも生き物はいるが、蝶を強調しながら焦点を当てる効果を生み、大事な字余りの決断だと述べる。「奥行を」の「を」の助詞で、奥行というものを見せるための余韻がしっかりと表現され、「こういう句を読ませていただくと読者である私の血が綺麗になっていくような感覚になる」とまで語り、「長生きできそうな気がします」と終始べた褒め。ひょっとこ顔の本人は「先生が若返って良かったです」と返し、久々の掲載を決めた。
●[78] @22/03/24◆お題:
セルフレジ『自動精算機なかでやにわに春祭』永世名人33句で掲載
ボツ添削後
『自動精算機やにわに春吐く音』
季語は「春祭」。慣れない自動精算機の表示画面が賑やかで音声案内もあるため、機械の内部に祭りがあるように見えた様子をストレートに詠んだという本人。「なかで」は物凄い悩んだと懺悔する本人に対し、梅沢名人も中七を指摘する。「企みすぎ!」と評す先生は、機械に対して「やにわに」と表現する面白さがあると褒める。問題点が2つあり、「なかで」は完全に説明のため、ダメだと指摘して削除。さらに、機械の中が春祭のようだという比喩は強引だと続ける。現実的な面に寄せて添削を行う先生は、自動精算機で最後に釣銭が出てくる点を比喩して「春吐く音」とした。同時出演で掲載決定を決めた梅沢名人に突き放される展開となるが、シュレッダー演出では顔面を固めてしまった。
●[79] @22/03/31◆お題:
ハプニング『カンガルー泊めて2DK朧』第6回春光戦決勝10位(最下位・シード権なし)添削後
『カンガルー預かつてゐる朧かな』
季語は「朧」。三十数年前に収録した番組でカンガルーボクシングを行ったという本人。夜中まで撮影があり、動物プロの方が急用で帰ったため、急遽カンガルーを自分の部屋へ連れて帰った。カンガルーも自分もお互い見つめ合うが、寝不足や疲れで意識が朦朧とする朧と取り合わせたと語った。先生は「カンガルー」と「朧」の取り合わせ自体には凄い魅力があるが、「泊めて」「2DK」が具体的に書き過ぎて、逆に体験がない人には全く伝わらないのが勿体ないと指摘。通常は具体的に書くことで映像化されるが、敢えてぼんやりとさせるべきと忠告。しばらく預かった体験から、「預かつてゐる朧かな」とした。潜在能力が高い句で、朧の句としてもこれほど素晴らしい句はないと添削しながら感動したと述べる先生。添削例ならダントツの1位だったと最後に語るも本人は降参した。最下位は3度目だが、過去最低順位の10位という不本意の結果に終わった。
●[80] @22/04/14◆お題:
満車の駐車場『縦列駐車こつん春の月くすっ』永世名人34句目に
掲載決定
添削なし
季語は「春の月」。縦列駐車でハンドルを何度も切り返しながら車を入れるが、最後に入れたかと思うと前に「コツッ」と当たってしまい、それを見ていた春の月が「クスッ」と笑ったような気になったという一句。季語を擬人化する是非だと本人は述べた。梅沢名人は、句柄が村上名人に似てきたことを好まない様子。「東さんなのにかわいい!」と評す先生は、「こんな可愛い句が作れるのかと思って、こっちがクスッときた」と述べる。「こつん」はまさに、自分にだけ伝わる手応えが動詞を用いずに表現できたのが工夫の一つだと解説。後半の春の月が笑ったように見えたという擬人化も、嫌味のない形になっており、永世名人らしい力量だと称賛した。
●[81] @22/06/16◆お題:
クーポン『帰省してゐる周遊のついでかな』永世名人35句目に
掲載決定
添削なし
季語は「帰省」。学生自体には帰省に興味がなかったという本人。周遊券を買ってついでに帰るが、頭の中は「鹿児島や沖縄に行きたい」と思っている。「ゐる」に後ろめたさや、「ここに証拠として帰って来たぞ」というのを少し強調したかったと語った。梅沢名人は「かな」が不要だと指摘する。「私ならこう書かないけど…」と評す先生は、「かな」問題で揉めるタイプの句だと前置きする。敢えての「ゐる」が「ついで」と意味の上で響かせようとする配慮があると称賛。問題の「かな」だが、詠嘆せずに「帰省なぞしてゐる周遊のついで」と帰省を嫌がっている感を出す案を述べる。しかし、「かな」は作者の表現意図に関わってくる問題で、添削ではなく創作の範囲の「かな」として許容すべき範囲だと解説する。その上で、御大のボツ査定の「かな」句は明らかに用法が間違っていると窘めた。句集完成まで残り15句となった。
●[82] @22/07/21◆お題:
メール『羽蟻わく今宵ロマンス詐欺メール』第6回炎帝戦4位添削なし
季語「羽蟻(はあり)」は、繁殖期になり羽が生えたアリやシロアリ。いかがわしいデートメール・出会い系のメールが画面上に湧いているが、寂しい感情・恋愛感情を持つ人たちの隙間に付け込むようであり、それを家を侵食する羽蟻と引っ掛けたという一句。上五が大袈裟だと評すは梅沢名人。先生は、大袈裟で少々やり過ぎ感もあるが、この内容だと意図的に書かないとバランスが取れないと述べ、思い切った挑戦を認める。動詞「わく」によって、"まさにいま今宵人の知らぬ間に密やかに家の中を食い始める羽蟻"、"まさにいま今宵「ロマンス詐欺メール」が人の心を知らぬ間に食い尽くすように忍び寄る"という2つの意味を示し、「わく今宵」で押さえる落としどころが上手く、面白かったと称賛した。6名いる名人10段以上では最高位に着けたが、ライバルの犬山紙子にタイトル戦で2敗目を喫し、黒星先行となった。
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