【炎帝戦決勝】20180809 プレバト!!俳句紹介【ラジカセ】
- 2018/08/09
- 20:40
2018年8月9日放送 プレバト!! 俳句炎帝戦決勝結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
夏の季節に行われる第2回炎帝戦・決勝で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
炎帝戦予選の詳細はこちら。
前回大会・俳桜戦の詳細はこちら。
●お題:ラジカセ(俳句をクリックするとリンク内移動します)
1位「旱星(ひでりぼし) ラジオは余震 しらせおり」名人10段 梅沢富美男
2位「村祭 ラジカセが笛 担当す」名人5段 村上健志(フルーツポンチ)
3位「短夜(みじかよ)や 付録ラジオの 半田付け」名人9段 藤本敏史(FUJIWARA)
4位「ジャズを聴く モナリザに似た 夜店の人」5級 立川志らく
5位「夏の雲 ぼくら 日陰探検隊」名人3段 横尾渉(Kis-My-Ft2)
6位「ラジカセの 声ころがりて 簀戸(すど)抜ける」1級 中田喜子
最下位「ラジカセに憑(つ)く 幽霊の 呻(うめ)き声」名人10段 東国原英夫
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番外編「ベイエリアから 届く短波や 処暑の風」1級 千賀健永(Kis-My-Ft2)
★予選敗退者の1位予想
千賀 (東さんは)ラジオとかラジカセは得意なんじゃないかな?
浜田 ジュニアも東さん?
千原ジュニア そうですね。(盗作)やってるでしょ!
東国原名人 やってないってば!
浜田 梅沢さんが1位だとは誰も言うてない。
梅沢名人 お前ら、失礼だよ。ミスタープレバトだよ。
○順位別に見ていきます
◆1位「旱星 ラジオは余震 しらせおり」 梅沢富美男
【本人談】
季語「旱星(ひでりぼし)」は、炎天下続きの夜に見える赤い星。
夏ですよね。炎天下で。暑い暑いその夜にラジオでは余震のニュースを放送している。
その時にひょっと空を見たら赤い星が……ちょっと不吉なんです。ああ地震があるんだな。
そういう気持ちを詠んだ。
藤本名人 すごく良い。ただ旱星が季語になるのかな。
本人 立派な季語です。
藤本名人 旱星は季語にしない派なんで…。
本人 やめてください。
浜田 ちなみに東さんはどうですか。
東国原名人 いや、素晴らしいです。うん…(最下位で元気がない)。
浜田 いつもなんか解説するじゃないですか。
東国原名人 できないもん。
夏井先生
うまい句。何よりも季語が良い。
季語「旱星」は本人がおっしゃったように赤い妖しい感じの星。
日照りが何日も続いている。そういう夜に出る。日照りが続けば、夜も地面は熱を持っている。
その熱を受けるように旱星は妖しく赤く光っている。
カットが切り替わって、ラジオが出てくる。「余震を知らせ」るという事は本震が少し前にあったという状況も一緒に伝えている。
日本列島は地震が山のようにあるから、ラジオが地震のニュースを伝えるという句材は多い。
しかし、この状況に「旱星」という季語を取り合わせたことで、まだ何か強い余震が来るのではないか?という不吉な気分も取り合わせで表現している。
悩ましいのは「しらせおり」の表現。「知らす」ではなく「告げる」「伝える」「流す」など色んな動詞の表現があるが、別な言葉にするとちょっと大げさだったり、重すぎたり軽すぎたりする。
「知らす」という淡々とした言い方をした。最後「けり」ではなく「おり」にすることで短い時間の経過をいう。
ずっとラジオは余震を知らせていて、旱星はますます赤く熱く。
おっちゃん久しぶりに言葉の質量を綺麗にキッチリ考えた、心を隅々まで使って考えた句ができた。
本人 ありがとうございます。今回だけは命を懸けました!
添削なし
◆2位「村祭 ラジカセが笛 担当す」 村上健志(フルーツポンチ)
【本人談】
季語は「祭」。村のお祭りで人手が足りなくて、太鼓は人が叩くが笛の人がいないのでラジカセから流すという光景を詠んだ。
そこに寂しさもあれば逞しさも感じる。
梅沢名人 これは素晴らしい。
藤本名人 いいところに目を付けた。発想が素晴らしい。
東国原名人 細かい。僕もラジカセで「踊り」は発想した。「盆踊り」は秋の季語。夏でないので、どう処理するか。「村祭」があった。
浜田 ミッツは村上が優勝と予想してた?
ミッツ 村上さんの句大好き。発想がいい。村祭でノスタルジック。今の村の過疎化みたいな現在の世相を切り取っている。すごい。
夏井先生
ラジカセからどんな音が流れてくるかを発想した人はそれなりにいたが、発想がユニークでありながら過疎の村の現実をありありと描いている。
ミッツの解説は素晴らしい。この句の大事なところを全部押さえている。
「村祭」で場面が出てくる。「ラジカセ」という物が出てくる。
「が」が良かった。「は」とかではない。強調のニュアンスが出ている。「笛」の音が出てくる。
最後「担当す」は擬人化の表現。「笛を担当する」と。擬人化で痛い目に遭う人が多いが、これは非常にさりげなく嫌味なく現場を表現している。
俳句はこれぐらいで良い。お上手になられました。直しはいりません。
本人 これはほぼ1位!
添削なし
◆3位「短夜や 付録ラジオの 半田付け」 藤本敏史(FUJIWARA)
【本人談】
季語「短夜(みじかよ)」は夏の夜の短さやはかなさを意味する。
小学生の頃に学研か何かの雑誌の付録で手作りのラジオがあった。
それを夏休みの夜に学習机でせっせと半田付けしてラジオを作った思い出を俳句にした。
東国原名人 繊細。いや~。この発想があるのか。
梅沢名人 ちょっと細かすぎるね。芝居で言ったら理屈っぽい!
本人 どういうことですか?
梅沢名人 「付録ラジオの半田付け」なんてのは細かいことをチマチマチマチマチマチマチマチマ俳句にした。芝居で言うと新劇の30分1人で喋ってるやつ?説明ゼリフ。あれに近い。
本人 新劇の30分1人で喋ってるような俳句なんですか?
梅沢名人 そうそう。
浜田 言い直しただけやないか!
本人 わけわからない。あるの、そんなの?たとえがわけわからない。
梅沢名人 長い芝居だよって。
本人 ほめたいんでしょ?
梅沢名人 何が?(笑いながら)
本人 ええ句だと思ってるんでしょ。素直に言うたらよろしいやん。
梅沢名人 大きなお世話!!理屈っぽい理屈っぽい。
夏井先生
選んだ季語が良い。ラジオ作りに熱中しているという気分はとてもよく伝わる。
夜中に一生懸命作っているというささやかな興奮も一緒に表現している。
ただのラジオではなく「付録」がまた良い。科学雑誌の付録かなという感じがする。
細かいことをチマチマ具体的に書くのが俳句。
本人 ですよね~。
夏井先生 はい。その通りでございます。
「半田付け」で具体的な作業が見えてくる。あの銀色のプルプルするような半田を息を止めるようにつけている感じ。
あの半田のプルプル感は「短夜」の気分に似合っているのではないか。
映像はないけど夜の短さを表す季語から「ラジオ」という物、さらには「半田付け」という細かい作業。
ずーっと映像が絞り込まれてくる。ここらへんも上手い。
2位・3位は実力的にはどっちこっちない。
本人 じゃあ。なんで?
夏井先生 そこが、おっちゃんが言ったことと関係がある。
季語は季語でこの句の世界としてホントに良い。
夜が短い「から」一生懸命やってるのか?
夜が短い「のに」一生懸命やってるのか?
小さな引っかかりがこの句には微かにある。
2位の句は「村祭」と残りのフレーズに引っ掛かりがなく、ストレートに光景を描いている。
こっから先ぐらいの差くらいをつけるしかない。私の立場上。直しはいらない。
本人 そんなちょっとの差で2位と3位違うんですか?
浜田 そりゃ先生が言うてますから。
村上名人 そのちょっとの差が大きな差ですよ。そこ争ってるわけですから。
本人 嬉しかったです。先生。放送文化基金賞受賞をとってるの見たんですよ。自分のことのように涙が出てきたんですよね。(先生を上げて1位の席に移動し座る動作)
浜田 そんなもんで上行けるか!
本人 すごい嬉しかった。涙が出てきたから…。
浜田 何言うとんねん。
添削なし
◆4位「ジヤズを聴く モナリザに似た 夜店の人」 立川志らく
【本人談】
ラジカセが夏の季語「夜店」で流れているという情景を想像した一句。
縁日を歩いていて、ラジカセからあんまりジャズを聴いてる人っていない。
珍しいもの聴いてるなと思っていたらロン毛のおじさんがいてモナリザに似ている感じがした。
ユーモラスな気取ってない句を詠んだ。
梅沢名人 俳句としては質の高い句。ただ1つ気に入らないのは下五が6音ある。違う言い方のほうがよかった。
東国原名人 比喩や擬人化が好きなんだと思う。ユーモラス。さすが落語家。落語家ですよね?
本人 こんな恰好(スーツ姿)してますけど落語家ですよ。
浜田 どうですか、ジュニアさん。
千原ジュニア 我々(予選敗退者)が何か言えると思います?
浜田 いやいや、意見があるなら。
千原ジュニア じゃあ、言わせてもらいます。めちゃめちゃ良いです!
夏井先生
ジャズを聴いている人がモナリザに似ているという、発見・切り取り方が俳人的。センスが非常にある。
作者の弁聞かなきゃよかったと思う。ロン毛のおじさんとか聞かない方がよかった。
この句は決して思わず吹き出すような句とは思わない。
むしろジャズを聴いている人(女性)がいて、その人がモナリザの様な静かな微笑みを浮かべていると。
そこまでは予想できる範囲。それが「夜店」で人に物を売りたい人が静かな微笑みを浮かべてジャズを聴いている。
こっちの光景の方がずっと詩になるし面白い。ゲラゲラタイプの句ではない。
最後の押さえ「夜店の人」は確かに6音で字余りだが、この句の字余りにはそれなりの効果がある。
おっちゃんにはわからないかもしれないが…
梅沢名人 俺はコレを…
浜田 黙れ!
夏井先生 どういう効果かというと、ジャズを聴いている、音が聞こえてくる、モナリザの様な静かな微笑みの人がいる。
夜店のテントの奥の方にひっそりと座っている人、という風に暗い夜店から中にズームアップしてカメラが入っていくという、そんな効果を字余りが持っている。
本人はそんな効果をわかった上で字余りにしているに違いない。
むしろ「に似た」が説明でないかと気になる人もいるかもしれない。もっとシンプルに「めける」にする。「~めく」という言葉がある。こうすると静けさが少し入ってくる。どっちがいいかは作者に判断をお返しする。
志らくさん、才能あるわ!びっくりした。
本人 字余りはわかってて、前面に出ず本当にひっそりした人という感じ。「めける」は落語家でも知らない。
添削後
「ジヤズを聴く モナリザめける 夜店の人」
◆5位「夏の雲 ぼくら 日陰探検隊」 横尾渉(Kis-My-Ft2)
【本人談】
7月11日にキスマイのニューシングル「LOVE」を発売した。
浜田 はっ?
そのミュージックビデオ(MV)撮影での出来事を書いた。
暑くてみんな日陰を探して休憩したり音楽を聴いたり歌詞を思い出したりってことで、俺ら7人は探検隊ぽいなと思って書いた。
藤本名人 かわいいグループ。何それ。
本人 仲良しなんで。
千賀 5位という本当に日陰に行っちゃった、っていう。
藤本名人 そうでもないよ。
浜田 松岡なんか、予想はずれてんねん。お前、横尾と言ってた。
松岡 そうなんですよ。でも「LOVE」が伝わったんでいいです。
夏井先生
子どもと読もうが、キスマイの皆さんだと読もうがどちらでもよい。
何より楽しいのが「日陰探検隊」という言葉。こういう言葉がすっと出てくるのは自分たちの体験が核にあるから。
一種の造語ではあるが、ポンと飛び出してくる。楽しい一句。
「夏の空」という季語で入道雲だけでなくその向こうの青空も一緒に出てくる。そういう意味でも良い季語を選んだ。
惜しいのはたった1つ。全体が元気で楽しい句なので、リズムもそういう風に持っていきたい。
全部で17音になるように一生懸命考えすぎて、「ぼくら」でリズムが止まってしまう。
「ぼくらは」と一字入れるだけでリズムが整う。
「探検隊」が字余りにはなるが、「たんけんたい」と「ん」が入るとリズミカルになるので、字余りが気にならない。
「は」を一つ入れておけば順位は変わった。
[ここがポイント]
リズムを優先する
添削後
「夏の雲 ぼくらは 日陰探検隊」
◆6位「ラジカセの 声ころがりて 簀戸抜ける」 中田喜子
【本人談】
季語「簀戸(すど)」は竹を編んで作った戸で、京都の夏のしつらえの葦戸(よしど)などを指す。
この季語を使いたくて、部屋の中からラジカセに吹き込まれている家族の会話が廊下に抜けているという情景を詠んだ。
岩永 「ラジカセ」って音しかなくて映像がない。「声」を使って映像につなげているのが上手だなと思った。
夏井先生
発想自体は悪くない。一読して「ころがりて」が強すぎるか?大袈裟か?と思ったが、今のお話で「ころがる」を生かした方がいいとわかった。
ただ、よく考えてください。作者の立ち位置に問題がある。
家の中にあるラジカセの声が簀戸を抜けて聞こえてくるという話だった。だとすると立ち位置が違う。
この句では、自分はラジカセの近くにいて声が転がりながら簀戸を抜けている、という。あなたはラジカセの近くにいるというイメージ。
おっしゃった通りの場所にあなたが立つだけで、「ころがる」は生きてくる。簡単なこと。なぜやらないの?
「簀戸抜けて」から始める。何が聞こえるかというとラジカセの声が聞こえてくる。しかも転がるように聞こえてくる。
「ラジカセの声ころがり」「て」なんて言ってる場合ではない。最後の一音大事な押さえ。
音が来る。それを「来」(く)とする。
自分のところに転がってくる。「ころがる」も生きるし、作者が簀戸の外にいて中の声が転がって自分のところに来るというのもわかる。
発想は良かった。もったいないことを。
発想をドブに捨てた男(=千原ジュニア)もいるが、あなたはドブに捨てた女になっている。
[ここがポイント]
自分の立ち位置を明確に
添削後
「簀戸抜けて ラジカセの声 ころがり来(く)」
◆最下位「ラジカセに憑く 幽霊の 呻き声」 東国原英夫
浜田 というか、メンタルが弱いね!
千原ジュニア これね、(盗作を)やってませんわ。
浜田 あの件でかなりここ(ハート)に来てたね。
本人 ビビッてビビッて、委縮した。
【本人談】
昔、幽霊の声が聞こえるというラジカセがあって、不幸のラジカセと呼んだ。
みんなで聞いてみようと思って、スイッチ入れたら「ヴォ~」と鳴り、岩崎宏美の「万華鏡」が流れるとお化けの声が聞こえてきた感じのラジカセがあり、その姿を思い出して詠んだ。
梅沢名人 やっちまったね。
浜田 東さんは、過去もうほとんど…1位3回と3位1回。タイトル戦は1位か3位やった。
本人 …そうなんですよね。
浜田 メンタル弱いの~。これジュニア最下位ということは。
千原ジュニア やって(パクって)ません。
梅沢名人 これはね、間違いだったら謝ります。あんたこれ季語がない! 幽霊は季語にならないと思いますよ。
本人 認める方と認めない方があって、歳時記には…。
梅沢名人 私は認めません!春夏秋冬(はるなつあきふゆ)幽霊は出ますから。
本人 夏井先生は認める派の協会なんです。
梅沢名人 ああそう。これが季語だというならちょっとおかしい!
夏井先生 幽霊を季語と認めない派です。私、そういう協会にいます。
藤本名人 あれ?東さん。
浜田 何もかもおかしくなった。
夏井先生 ほとんどの歳時記は幽霊を季語にはしていない。
本人 先生の句で、
というあれ…。
夏井先生 よく知ってるじゃないですか!その名句を!
浜田 はっはっは。自分で言うな!
夏井先生 私は無季の句として作っている。立場として。
あなたの句も季語のあるなしは問題ない。
おっちゃんが季語あるとかないとか言った瞬間に協会がどうだという前に無季の句だと言い放てばいい。
この句を見たときに迷った。2つの読みが考えられて、どっちが言いたいのかわからなかった。
1つは幽霊は憑いたような音を出すラジカセ。こっちかなと予測してたが、そうではなかった。
本当に幽霊が憑いている。そのように書くしかない。ラジカセが呻いている。
「ラジカセは呻く」でワンフレーズ。「幽霊憑きし」としてあとちょっとの音数で「という」という意味を書くしかない。
「てふ」で"ちょう"と読み、「~という」という意味となる。
幽霊が憑いているというラジカセが呻いているよ。言いたいことは一応伝わる。
ただ今回は、東国原の悪いクセが出た。
色んな複雑なことを一句の中にガツンと入れようとして、そこまでの技術が伴ってなかったというそういうタイプ。
今までごちゃごちゃした大きいことをぶち込まないから着実に10段まで来た。
何をうろたえたのか、こういうことをやっちゃったのかという感じ。
浜田 なんでそんなぶち込んできたんだろ。
本人 気の迷いがあった。
添削後
「ラジカセは 呻く幽霊 憑きしてふ」
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予選敗退者から夏井先生がどうしても世に出したい一句を発表。
■番外編「ベイエリアから 届く短波や 処暑の風」 千賀健永(Kis-My-Ft2)
【本人談】
大好きな忌野清志郎の名曲「トランジスタラジオ」から発想した一句。
夏井先生
季語「処暑」は8月の下旬あたりの暑さの峠を越えた時期を指す。
暦の上では暑いけどそんな頃と「ベイエリア」という場所と「短波」なんて言葉。この「や」の使い方が良い。
決勝なら結構いいとこ行っていた。
本人 マジか。
夏井先生 マジです。
編集後記(大変遅くなりました)
今回の炎帝戦は総勢12名と過去最多人数のため、2回分割方式で
トロフィーを争う形となりました。
見事炎帝になった梅沢名人は悲願の初優勝で四度目の正直となりました。発想の飛ばし方としてはややネガティブな感じで東国原名人が詠みそうな句でしたが、季語との取り合わせが良かったですね。原子炉の句もそうですが、日常かつ現代社会の風刺のにも積極的に挑戦している印象です。
準優勝の村上名人は自身最高位となりました。まるでショートムービーのように浮かんでくる日常的な場面の切り取り方が上手いです。言われないとわからないくらいの擬人化のさりげなさも流石です。
3位の藤本名人は自身の経験を句材とするのが上手いですね。下手にファンタジー俳句にいくよりも成功率が高い印象があります。淡々とわかりやすい言葉で17音をつくるのですが、珍しく切れ字「や」を使っていました。
4位の志らく師匠は比喩が大変得意ですね。今回は人物描写に絞ってきましたが字余りの効果を理解してやっているとすればかなり脅威な感じ。ただし、自前のスーツは似合っていませんでした。
5位の横尾名人は若者らしい1句でしたが、この句だけお題のラジカセから発想が離れすぎているのが気になりました。夏の兼題なら何でもいいような?タイトル戦は苦手なんでしょうね。
6位の中田さんは予選と打って変わって泣きっ面でした。詠み手自身の立ち位置を明確にして、混乱を生まない表現という基本を守るべきなのでしょうね。素人目線ではこの句の悪さはわかりませんが。
最下位はまさかの名人10段東国原さんでした。終始発言のキレがなく途中から顔が強張っていたので本人は気づいていたはず。今回は騒動の禊といったところ。ネガティブな発想は相変わらずですが、メンタルがやられて血迷った感じ。無季の句と言い放ったところで順位に変動はなかったでしょうし、類想類句に気を取られて詰めを甘くした印象が見て取れます。気を取り直してほしいところです。
番外編の句で紹介された千賀さんの句。発想は確かにいいですし、決勝なら3位前後に食い込めるくらいの感じのものでしょう。ただ、頭の字余りはこの句の場合どうなのかな?というのと切れ字「や」をよく使う印象です。予選でファンタジー俳句にしなければ本戦でも臨めていたわけですから、中田さんとは逆パターンでした。
最後に、特待生の数が多くなってきたため分割形式となりましたが、できれば2時間連続で1回完結で見たいという希望と、予選から挑戦する特待生は2句詠まないといけないためシードで1句しか詠まない名人と比べればかなり不利な制度になりました。下位はランキングシートに座らなくてもいいから全員いっぺんに順位づけするとか、名人も含めて2句の合計点でタイトルを争うとか、いろいろと再考の余地はありそうです。査定をする夏井先生の負担は大変でしょうけど。

年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
夏の季節に行われる第2回炎帝戦・決勝で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
炎帝戦予選の詳細はこちら。
前回大会・俳桜戦の詳細はこちら。
●お題:ラジカセ(俳句をクリックするとリンク内移動します)

2位「村祭 ラジカセが笛 担当す」名人5段 村上健志(フルーツポンチ)
3位「短夜(みじかよ)や 付録ラジオの 半田付け」名人9段 藤本敏史(FUJIWARA)
4位「ジャズを聴く モナリザに似た 夜店の人」5級 立川志らく
5位「夏の雲 ぼくら 日陰探検隊」名人3段 横尾渉(Kis-My-Ft2)
6位「ラジカセの 声ころがりて 簀戸(すど)抜ける」1級 中田喜子
最下位「ラジカセに憑(つ)く 幽霊の 呻(うめ)き声」名人10段 東国原英夫
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番外編「ベイエリアから 届く短波や 処暑の風」1級 千賀健永(Kis-My-Ft2)
★予選敗退者の1位予想
千原ジュニア | 松岡 | ミッツ | 岩永 | 千賀 |
東国原 | 横尾 | 村上 | 中田 | 東国原 |
千賀 (東さんは)ラジオとかラジカセは得意なんじゃないかな?
浜田 ジュニアも東さん?
千原ジュニア そうですね。(盗作)やってるでしょ!
東国原名人 やってないってば!
浜田 梅沢さんが1位だとは誰も言うてない。
梅沢名人 お前ら、失礼だよ。ミスタープレバトだよ。
○順位別に見ていきます
◆1位「旱星 ラジオは余震 しらせおり」 梅沢富美男
【本人談】
季語「旱星(ひでりぼし)」は、炎天下続きの夜に見える赤い星。
夏ですよね。炎天下で。暑い暑いその夜にラジオでは余震のニュースを放送している。
その時にひょっと空を見たら赤い星が……ちょっと不吉なんです。ああ地震があるんだな。
そういう気持ちを詠んだ。
藤本名人 すごく良い。ただ旱星が季語になるのかな。
本人 立派な季語です。
藤本名人 旱星は季語にしない派なんで…。
本人 やめてください。
浜田 ちなみに東さんはどうですか。
東国原名人 いや、素晴らしいです。うん…(最下位で元気がない)。
浜田 いつもなんか解説するじゃないですか。
東国原名人 できないもん。
夏井先生
うまい句。何よりも季語が良い。
季語「旱星」は本人がおっしゃったように赤い妖しい感じの星。
日照りが何日も続いている。そういう夜に出る。日照りが続けば、夜も地面は熱を持っている。
その熱を受けるように旱星は妖しく赤く光っている。
カットが切り替わって、ラジオが出てくる。「余震を知らせ」るという事は本震が少し前にあったという状況も一緒に伝えている。
日本列島は地震が山のようにあるから、ラジオが地震のニュースを伝えるという句材は多い。
しかし、この状況に「旱星」という季語を取り合わせたことで、まだ何か強い余震が来るのではないか?という不吉な気分も取り合わせで表現している。
悩ましいのは「しらせおり」の表現。「知らす」ではなく「告げる」「伝える」「流す」など色んな動詞の表現があるが、別な言葉にするとちょっと大げさだったり、重すぎたり軽すぎたりする。
「知らす」という淡々とした言い方をした。最後「けり」ではなく「おり」にすることで短い時間の経過をいう。
ずっとラジオは余震を知らせていて、旱星はますます赤く熱く。
おっちゃん久しぶりに言葉の質量を綺麗にキッチリ考えた、心を隅々まで使って考えた句ができた。
本人 ありがとうございます。今回だけは命を懸けました!
添削なし
◆2位「村祭 ラジカセが笛 担当す」 村上健志(フルーツポンチ)
【本人談】
季語は「祭」。村のお祭りで人手が足りなくて、太鼓は人が叩くが笛の人がいないのでラジカセから流すという光景を詠んだ。
そこに寂しさもあれば逞しさも感じる。
梅沢名人 これは素晴らしい。
藤本名人 いいところに目を付けた。発想が素晴らしい。
東国原名人 細かい。僕もラジカセで「踊り」は発想した。「盆踊り」は秋の季語。夏でないので、どう処理するか。「村祭」があった。
浜田 ミッツは村上が優勝と予想してた?
ミッツ 村上さんの句大好き。発想がいい。村祭でノスタルジック。今の村の過疎化みたいな現在の世相を切り取っている。すごい。
夏井先生
ラジカセからどんな音が流れてくるかを発想した人はそれなりにいたが、発想がユニークでありながら過疎の村の現実をありありと描いている。
ミッツの解説は素晴らしい。この句の大事なところを全部押さえている。
「村祭」で場面が出てくる。「ラジカセ」という物が出てくる。
「が」が良かった。「は」とかではない。強調のニュアンスが出ている。「笛」の音が出てくる。
最後「担当す」は擬人化の表現。「笛を担当する」と。擬人化で痛い目に遭う人が多いが、これは非常にさりげなく嫌味なく現場を表現している。
俳句はこれぐらいで良い。お上手になられました。直しはいりません。
本人 これはほぼ1位!
添削なし
◆3位「短夜や 付録ラジオの 半田付け」 藤本敏史(FUJIWARA)
【本人談】
季語「短夜(みじかよ)」は夏の夜の短さやはかなさを意味する。
小学生の頃に学研か何かの雑誌の付録で手作りのラジオがあった。
それを夏休みの夜に学習机でせっせと半田付けしてラジオを作った思い出を俳句にした。
東国原名人 繊細。いや~。この発想があるのか。
梅沢名人 ちょっと細かすぎるね。芝居で言ったら理屈っぽい!
本人 どういうことですか?
梅沢名人 「付録ラジオの半田付け」なんてのは細かいことをチマチマチマチマチマチマチマチマ俳句にした。芝居で言うと新劇の30分1人で喋ってるやつ?説明ゼリフ。あれに近い。
本人 新劇の30分1人で喋ってるような俳句なんですか?
梅沢名人 そうそう。
浜田 言い直しただけやないか!
本人 わけわからない。あるの、そんなの?たとえがわけわからない。
梅沢名人 長い芝居だよって。
本人 ほめたいんでしょ?
梅沢名人 何が?(笑いながら)
本人 ええ句だと思ってるんでしょ。素直に言うたらよろしいやん。
梅沢名人 大きなお世話!!理屈っぽい理屈っぽい。
夏井先生
選んだ季語が良い。ラジオ作りに熱中しているという気分はとてもよく伝わる。
夜中に一生懸命作っているというささやかな興奮も一緒に表現している。
ただのラジオではなく「付録」がまた良い。科学雑誌の付録かなという感じがする。
細かいことをチマチマ具体的に書くのが俳句。
本人 ですよね~。
夏井先生 はい。その通りでございます。
「半田付け」で具体的な作業が見えてくる。あの銀色のプルプルするような半田を息を止めるようにつけている感じ。
あの半田のプルプル感は「短夜」の気分に似合っているのではないか。
映像はないけど夜の短さを表す季語から「ラジオ」という物、さらには「半田付け」という細かい作業。
ずーっと映像が絞り込まれてくる。ここらへんも上手い。
2位・3位は実力的にはどっちこっちない。
本人 じゃあ。なんで?
夏井先生 そこが、おっちゃんが言ったことと関係がある。
季語は季語でこの句の世界としてホントに良い。
夜が短い「から」一生懸命やってるのか?
夜が短い「のに」一生懸命やってるのか?
小さな引っかかりがこの句には微かにある。
2位の句は「村祭」と残りのフレーズに引っ掛かりがなく、ストレートに光景を描いている。
こっから先ぐらいの差くらいをつけるしかない。私の立場上。直しはいらない。
本人 そんなちょっとの差で2位と3位違うんですか?
浜田 そりゃ先生が言うてますから。
村上名人 そのちょっとの差が大きな差ですよ。そこ争ってるわけですから。
本人 嬉しかったです。先生。放送文化基金賞受賞をとってるの見たんですよ。自分のことのように涙が出てきたんですよね。(先生を上げて1位の席に移動し座る動作)
浜田 そんなもんで上行けるか!
本人 すごい嬉しかった。涙が出てきたから…。
浜田 何言うとんねん。
添削なし
◆4位「ジヤズを聴く モナリザに似た 夜店の人」 立川志らく
【本人談】
ラジカセが夏の季語「夜店」で流れているという情景を想像した一句。
縁日を歩いていて、ラジカセからあんまりジャズを聴いてる人っていない。
珍しいもの聴いてるなと思っていたらロン毛のおじさんがいてモナリザに似ている感じがした。
ユーモラスな気取ってない句を詠んだ。
梅沢名人 俳句としては質の高い句。ただ1つ気に入らないのは下五が6音ある。違う言い方のほうがよかった。
東国原名人 比喩や擬人化が好きなんだと思う。ユーモラス。さすが落語家。落語家ですよね?
本人 こんな恰好(スーツ姿)してますけど落語家ですよ。
浜田 どうですか、ジュニアさん。
千原ジュニア 我々(予選敗退者)が何か言えると思います?
浜田 いやいや、意見があるなら。
千原ジュニア じゃあ、言わせてもらいます。めちゃめちゃ良いです!
夏井先生
ジャズを聴いている人がモナリザに似ているという、発見・切り取り方が俳人的。センスが非常にある。
作者の弁聞かなきゃよかったと思う。ロン毛のおじさんとか聞かない方がよかった。
この句は決して思わず吹き出すような句とは思わない。
むしろジャズを聴いている人(女性)がいて、その人がモナリザの様な静かな微笑みを浮かべていると。
そこまでは予想できる範囲。それが「夜店」で人に物を売りたい人が静かな微笑みを浮かべてジャズを聴いている。
こっちの光景の方がずっと詩になるし面白い。ゲラゲラタイプの句ではない。
最後の押さえ「夜店の人」は確かに6音で字余りだが、この句の字余りにはそれなりの効果がある。
おっちゃんにはわからないかもしれないが…
梅沢名人 俺はコレを…
浜田 黙れ!
夏井先生 どういう効果かというと、ジャズを聴いている、音が聞こえてくる、モナリザの様な静かな微笑みの人がいる。
夜店のテントの奥の方にひっそりと座っている人、という風に暗い夜店から中にズームアップしてカメラが入っていくという、そんな効果を字余りが持っている。
本人はそんな効果をわかった上で字余りにしているに違いない。
むしろ「に似た」が説明でないかと気になる人もいるかもしれない。もっとシンプルに「めける」にする。「~めく」という言葉がある。こうすると静けさが少し入ってくる。どっちがいいかは作者に判断をお返しする。
志らくさん、才能あるわ!びっくりした。
本人 字余りはわかってて、前面に出ず本当にひっそりした人という感じ。「めける」は落語家でも知らない。
添削後
「ジヤズを聴く モナリザめける 夜店の人」
◆5位「夏の雲 ぼくら 日陰探検隊」 横尾渉(Kis-My-Ft2)
【本人談】
7月11日にキスマイのニューシングル「LOVE」を発売した。
浜田 はっ?
そのミュージックビデオ(MV)撮影での出来事を書いた。
暑くてみんな日陰を探して休憩したり音楽を聴いたり歌詞を思い出したりってことで、俺ら7人は探検隊ぽいなと思って書いた。
藤本名人 かわいいグループ。何それ。
本人 仲良しなんで。
千賀 5位という本当に日陰に行っちゃった、っていう。
藤本名人 そうでもないよ。
浜田 松岡なんか、予想はずれてんねん。お前、横尾と言ってた。
松岡 そうなんですよ。でも「LOVE」が伝わったんでいいです。
夏井先生
子どもと読もうが、キスマイの皆さんだと読もうがどちらでもよい。
何より楽しいのが「日陰探検隊」という言葉。こういう言葉がすっと出てくるのは自分たちの体験が核にあるから。
一種の造語ではあるが、ポンと飛び出してくる。楽しい一句。
「夏の空」という季語で入道雲だけでなくその向こうの青空も一緒に出てくる。そういう意味でも良い季語を選んだ。
惜しいのはたった1つ。全体が元気で楽しい句なので、リズムもそういう風に持っていきたい。
全部で17音になるように一生懸命考えすぎて、「ぼくら」でリズムが止まってしまう。
「ぼくらは」と一字入れるだけでリズムが整う。
「探検隊」が字余りにはなるが、「たんけんたい」と「ん」が入るとリズミカルになるので、字余りが気にならない。
「は」を一つ入れておけば順位は変わった。
[ここがポイント]
リズムを優先する
添削後
「夏の雲 ぼくらは 日陰探検隊」
◆6位「ラジカセの 声ころがりて 簀戸抜ける」 中田喜子
【本人談】
季語「簀戸(すど)」は竹を編んで作った戸で、京都の夏のしつらえの葦戸(よしど)などを指す。
この季語を使いたくて、部屋の中からラジカセに吹き込まれている家族の会話が廊下に抜けているという情景を詠んだ。
岩永 「ラジカセ」って音しかなくて映像がない。「声」を使って映像につなげているのが上手だなと思った。
夏井先生
発想自体は悪くない。一読して「ころがりて」が強すぎるか?大袈裟か?と思ったが、今のお話で「ころがる」を生かした方がいいとわかった。
ただ、よく考えてください。作者の立ち位置に問題がある。
家の中にあるラジカセの声が簀戸を抜けて聞こえてくるという話だった。だとすると立ち位置が違う。
この句では、自分はラジカセの近くにいて声が転がりながら簀戸を抜けている、という。あなたはラジカセの近くにいるというイメージ。
おっしゃった通りの場所にあなたが立つだけで、「ころがる」は生きてくる。簡単なこと。なぜやらないの?
「簀戸抜けて」から始める。何が聞こえるかというとラジカセの声が聞こえてくる。しかも転がるように聞こえてくる。
「ラジカセの声ころがり」「て」なんて言ってる場合ではない。最後の一音大事な押さえ。
音が来る。それを「来」(く)とする。
自分のところに転がってくる。「ころがる」も生きるし、作者が簀戸の外にいて中の声が転がって自分のところに来るというのもわかる。
発想は良かった。もったいないことを。
発想をドブに捨てた男(=千原ジュニア)もいるが、あなたはドブに捨てた女になっている。
[ここがポイント]
自分の立ち位置を明確に
添削後
「簀戸抜けて ラジカセの声 ころがり来(く)」
◆最下位「ラジカセに憑く 幽霊の 呻き声」 東国原英夫
浜田 というか、メンタルが弱いね!
千原ジュニア これね、(盗作を)やってませんわ。
浜田 あの件でかなりここ(ハート)に来てたね。
本人 ビビッてビビッて、委縮した。
【本人談】
昔、幽霊の声が聞こえるというラジカセがあって、不幸のラジカセと呼んだ。
みんなで聞いてみようと思って、スイッチ入れたら「ヴォ~」と鳴り、岩崎宏美の「万華鏡」が流れるとお化けの声が聞こえてきた感じのラジカセがあり、その姿を思い出して詠んだ。
梅沢名人 やっちまったね。
浜田 東さんは、過去もうほとんど…1位3回と3位1回。タイトル戦は1位か3位やった。
本人 …そうなんですよね。
浜田 メンタル弱いの~。これジュニア最下位ということは。
千原ジュニア やって(パクって)ません。
梅沢名人 これはね、間違いだったら謝ります。あんたこれ季語がない! 幽霊は季語にならないと思いますよ。
本人 認める方と認めない方があって、歳時記には…。
梅沢名人 私は認めません!春夏秋冬(はるなつあきふゆ)幽霊は出ますから。
本人 夏井先生は認める派の協会なんです。
梅沢名人 ああそう。これが季語だというならちょっとおかしい!
夏井先生 幽霊を季語と認めない派です。私、そういう協会にいます。
藤本名人 あれ?東さん。
浜田 何もかもおかしくなった。
夏井先生 ほとんどの歳時記は幽霊を季語にはしていない。
本人 先生の句で、
柳刃包丁みたいな幽霊ではないか |
夏井先生 よく知ってるじゃないですか!その名句を!
浜田 はっはっは。自分で言うな!
夏井先生 私は無季の句として作っている。立場として。
あなたの句も季語のあるなしは問題ない。
おっちゃんが季語あるとかないとか言った瞬間に協会がどうだという前に無季の句だと言い放てばいい。
この句を見たときに迷った。2つの読みが考えられて、どっちが言いたいのかわからなかった。
1つは幽霊は憑いたような音を出すラジカセ。こっちかなと予測してたが、そうではなかった。
本当に幽霊が憑いている。そのように書くしかない。ラジカセが呻いている。
「ラジカセは呻く」でワンフレーズ。「幽霊憑きし」としてあとちょっとの音数で「という」という意味を書くしかない。
「てふ」で"ちょう"と読み、「~という」という意味となる。
幽霊が憑いているというラジカセが呻いているよ。言いたいことは一応伝わる。
ただ今回は、東国原の悪いクセが出た。
色んな複雑なことを一句の中にガツンと入れようとして、そこまでの技術が伴ってなかったというそういうタイプ。
今までごちゃごちゃした大きいことをぶち込まないから着実に10段まで来た。
何をうろたえたのか、こういうことをやっちゃったのかという感じ。
浜田 なんでそんなぶち込んできたんだろ。
本人 気の迷いがあった。
添削後
「ラジカセは 呻く幽霊 憑きしてふ」
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予選敗退者から夏井先生がどうしても世に出したい一句を発表。
■番外編「ベイエリアから 届く短波や 処暑の風」 千賀健永(Kis-My-Ft2)
【本人談】
大好きな忌野清志郎の名曲「トランジスタラジオ」から発想した一句。
夏井先生
季語「処暑」は8月の下旬あたりの暑さの峠を越えた時期を指す。
暦の上では暑いけどそんな頃と「ベイエリア」という場所と「短波」なんて言葉。この「や」の使い方が良い。
決勝なら結構いいとこ行っていた。
本人 マジか。
夏井先生 マジです。
編集後記(大変遅くなりました)
今回の炎帝戦は総勢12名と過去最多人数のため、2回分割方式で

見事炎帝になった梅沢名人は悲願の初優勝で四度目の正直となりました。発想の飛ばし方としてはややネガティブな感じで東国原名人が詠みそうな句でしたが、季語との取り合わせが良かったですね。原子炉の句もそうですが、日常かつ現代社会の風刺のにも積極的に挑戦している印象です。
準優勝の村上名人は自身最高位となりました。まるでショートムービーのように浮かんでくる日常的な場面の切り取り方が上手いです。言われないとわからないくらいの擬人化のさりげなさも流石です。
3位の藤本名人は自身の経験を句材とするのが上手いですね。下手にファンタジー俳句にいくよりも成功率が高い印象があります。淡々とわかりやすい言葉で17音をつくるのですが、珍しく切れ字「や」を使っていました。
4位の志らく師匠は比喩が大変得意ですね。今回は人物描写に絞ってきましたが字余りの効果を理解してやっているとすればかなり脅威な感じ。ただし、自前のスーツは似合っていませんでした。
5位の横尾名人は若者らしい1句でしたが、この句だけお題のラジカセから発想が離れすぎているのが気になりました。夏の兼題なら何でもいいような?タイトル戦は苦手なんでしょうね。
6位の中田さんは予選と打って変わって泣きっ面でした。詠み手自身の立ち位置を明確にして、混乱を生まない表現という基本を守るべきなのでしょうね。素人目線ではこの句の悪さはわかりませんが。
最下位はまさかの名人10段東国原さんでした。終始発言のキレがなく途中から顔が強張っていたので本人は気づいていたはず。今回は騒動の禊といったところ。ネガティブな発想は相変わらずですが、メンタルがやられて血迷った感じ。無季の句と言い放ったところで順位に変動はなかったでしょうし、類想類句に気を取られて詰めを甘くした印象が見て取れます。気を取り直してほしいところです。
番外編の句で紹介された千賀さんの句。発想は確かにいいですし、決勝なら3位前後に食い込めるくらいの感じのものでしょう。ただ、頭の字余りはこの句の場合どうなのかな?というのと切れ字「や」をよく使う印象です。予選でファンタジー俳句にしなければ本戦でも臨めていたわけですから、中田さんとは逆パターンでした。
最後に、特待生の数が多くなってきたため分割形式となりましたが、できれば2時間連続で1回完結で見たいという希望と、予選から挑戦する特待生は2句詠まないといけないためシードで1句しか詠まない名人と比べればかなり不利な制度になりました。下位はランキングシートに座らなくてもいいから全員いっぺんに順位づけするとか、名人も含めて2句の合計点でタイトルを争うとか、いろいろと再考の余地はありそうです。査定をする夏井先生の負担は大変でしょうけど。

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