2023年10月19日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※30日に全て更新しました。大変お待たせ致しました。
→プレバト!!
公式X(旧Twitter)/
公式インスタグラム挑戦者→水野真紀[2],山下真司[2],武田真一[初],青山フォール勝ち[初],中田喜子[69],千原ジュニア[101],梅沢富美男[207] ※数字は挑戦回数●お題:渋谷スクランブル交差点

清水アナの俳句査定(プレバト!!公式Xより)
清水アナの俳句 | 夏井先生評 |
秋時雨傘握りしめ交差点 | 凡人です。中七をもう一工夫! |
🔷
挑戦者語録水野真紀 | ○1 | ※前回才能アリを獲得。句会経験者だと自白している。元NHK朝ドラヒロイン(「凛凛と」)。現パナソニック(松下電器)のCMキャッチコピー「きれいなおねえさんは、好きですか。」の初代イメージキャラクター。 「やっぱりプレッシャーはあります」 |
山下真司 | ×1 | ※俳句査定は7年ぶり。夏井先生のYouTubeで予習したと豪語。 「(お題の現場に)行きましたよ。それで閃いたんです!先生!」 |
武田真一 | 初挑戦 | ※30年勤めたNHKを今年2月に対局したフリーアナウンサーで56歳。名字は濁らない「タケタ」読み。趣味はギター。学生時代はバンドを組んで自分で作詞した歌を歌っていた。 「NHKに勤めてましたから毎日渋谷に通っていた。季節を感じないことがないから難しかった」 |
青山フォール勝ち | 初挑戦 | ※お笑いトリオ・ネルソンズのメンバー。岸健之助と共に出演(※和田まんじゅうは水彩画に出演)。 「僕らが所属するヨシモト∞ホールが渋谷にある。15年通ってるんで、僕の気持ちをそのまま乗せた」 |
★ランキングシートの分布は分布を明かさずに発表。
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位71点 ※特待生昇格 | 水野真紀
| オーディション帰り渋谷の秋そぞろ | おーでぃしょんかえりしぶやのあきそぞろ |
2 | 才能アリ2位70点 | 山下真司
| 秋の夜ビルの谷間に光る傘 | あきのよるびるのたにまにひかるかさ |
3 | 凡人3位60点 | 武田真一
| 三十年余勤めし渋谷野分晴 | みそとせよつとめししぶやのわきばれ |
4 | 凡人4位55点 | 青山フォール勝ち (ネルソンズ) | 天高しビジョンに写る同世代 | てんたかしびじょんにうつるどうせだい |
5 | 名人9段へ1ランク昇格 | ★中田喜子
| 青年の歩幅につられ秋空へ | せいねんのほはばにつられあきぞらへ |
6 | 永世名人28句目に掲載決定 | ★千原ジュニア
| 秋雨や渋谷の路地に鼠と吾 | あきさめやしぶやのろじにねずみとあ |
7 | 特別永世名人なのにガッカリ… | ★梅沢富美男
| 甘栗の香を行く渋谷交差点 | あまぐりのかをゆくしぶやこうさてん |
順位発表順:2位→最下位→3位→1位→編集後記●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ71点 水野真紀『オーディション帰り 渋谷の秋そぞろ』【本人談】34年前の秋のこの時期にNHKの朝ドラのオーディションを受けていた。戻る途中、渋谷の交差点で垢ぬけた人を見て「うわ~、もうやっぱり私じゃダメかな」「あの演技で良かったのか」と不安で、心もとない気持ちに襲われてしまった。
夏井先生 のっけの「オーディション」である程度の人物像が見える。俳優・歌手・ダンサー・タレントと。
「帰り」がこの位置にあることで、終わったという状況も分かる。
その結果を「そぞろ」で匂わせている。
意味は複数あるが、心が落ち着かない・不本意で思うようにいかない。
そういう解釈ができる。
とても確かな一句に仕上がった。直しは要らない。
本人 ありがとうございます。
浜田 先生、これ水野さん2回連続で才能アリ獲ってますけど、どうですか?これ。
夏井先生 確か前回の部活の口語の句だった(→「冷やし中華明日も朝練あるってよ」)と記憶しているが、ああいうタイプの句もこういうタイプの句も作れる。基礎がしっかりしている印象があるため、特待生になってもやっていけるんじゃないかなと思う。
本人 えっ?えっ?
浜田 水野真紀さん、特待生~!
梅沢永世名人 やった!
本人 えっ?ありがとうございます。えっ…こんなことってあるんだ。
千原永世名人 最短じゃない?
浜田 もう、遠慮します?
本人 いえいえいえいえ(笑)。
●解説のポイント |
「オーディション」で人物像が見える 俳優・歌手・ダンサー・タレント 落ち着かない心・不本意など「そぞろ」で匂わせる とても確かな一句に仕上がった 前回の句とは異なるタイプで基礎が出来ている 特待生になってもやっていける |
添削なし※特待生昇格句
時候「秋」と自身のオーディション帰りの複雑な面持ちを「そぞろ」で表現した句またがり。芸能人らしい発想で、独創的な「オーディション」句は4句全て才能アリ。「オーディション帰りの車窓波の花」と詠んだ早見あかりさん同様に季語に自身の思いを巡らせています。ポイントは季語の後に入れた形容動詞「そぞろ」で、「秋」という季節がソワソワしているとともに、自身の心情もおぼつかない浮ついたものであるという二重の意味がダブっている点。既視感の見られる句として強いインパクトはありませんが、ご指摘の通り「10年ほど月1回句会に出ていたとアピール」という句会経験者も加味されて僅か2回での特待生昇格。こがけんさん以来となる今年4人目の特待生認定ですが、森口さん辺りのライバルになりそうな印象で、今後の挑戦にも注目です。
◆2位
才能アリ70点 山下真司『秋の夜 ビルの谷間に 光る傘』【本人談】渋谷スクランブル交差点に行ったら大雨が降っていて、傘(を差す人)が凄かった。周囲の広告塔がブルーやグリーンで、傘に反射した明かりが光る傘の群れになっている。コレはいけるなと思った。
梅沢永世名人 これはいい俳句ですよね。
本人 嬉しい。
梅沢永世名人 もしかしたらこれが1位になれなかったのは、「に」だと思いますね。「ビルの谷間に」という「に」がちょっと私気に入らない。それと語順かな。
浜田 う~ん。
梅沢永世名人 いや、何か原因はあるんです!(笑)
千原永世名人 そらありますよ!
浜田 それはそうですよ。
梅沢永世名人 いやそのぐらい…。
浜田 それはそうだから1位になれなかった。
梅沢永世名人 悪いところを指摘するとなると迷うぐらい良い俳句なんです。
浜田 あ~なるほど、なるほど。
夏井先生 「光る傘」と着地しているところが良い。
「雨」と書いてないが、雨が降り出したことが映像として描けている。
おっちゃんは今日乗っけから冴えている。
中七「に」が障るというのは私もまったく同じ意見。
まず「ビル」から。光景を少し広げる。
「ビル街の谷間」とすれば、少し俯瞰な光景で映像が広くなる。
「秋の夜」を「秋夜(しゅうや)」と言い換えて、「を」として「光る傘」に持ってくる。
梅沢永世名人 あら!素晴らしい。
夏井先生 ビル街の谷間を上から見て、カットがポンと切り替わって、秋の夜を光っている傘が沢山ある。
もう、ホントお上手になってます(笑)。
本人 良かった~。
浜田 才能ナシからですからね。
本人 今日はね、ここ(→最下位の席を指さす)を覚悟して来ていたんですよ。
浜田 なるほどね、我々もそうだと思ってました(笑)。
●解説のポイント |
「光る傘」の着地が良い 雨が降り出した映像が描けている 中七「に」が障る 「ビル街」として俯瞰な光景へ広げる 「秋夜(しゅうや)」で句またがりの型に ホントに上手になっている |
添削後
『ビル街の 谷間秋夜を 光る傘』
時候「秋の夜」とビル街の下を行き交う人が差す傘にネオンの光などが反射している様子を詠んだ定型句。7年前に「箱根やまふきくる風に何想う」と詠んで25点だったことを考えれば、詩人らしい着眼の鋭さを称賛しなければいけません。傘をビルの上から見れば小さな電飾が移動していくかのような、焦点がボケたイルミネーション点灯を思わす一枚絵が印象的です。ご指摘の通り多少散文的な「に」を「を」に変えて、「ビルの谷間をひかる傘」とするのが取り合わせの型を変えない端的な添削です。「谷間」を読者に想像してもらえるならば、「ビル街の秋夜をひかる傘の波」などと推敲する方法もあるかもしれません。
◆3位
凡人60点 武田真一『三十年余 勤めし渋谷 野分晴』【本人談】(NHKに勤務する)ほとんどの期間を渋谷スクランブル交差点を渡って通勤していた。その思いを振り返ると「野分晴」(※台風一過の晴天)で、苦しいことも楽しいことも色々あったが、まるで台風一過のような今はスッキリした気持ちだという思いを込めた。
夏井先生 上五は「みそとせよ」と読めば確かに5音に入るが、どこか実感が薄い読み方。
普通に「三十余年(さんじゅうよねん)」とすれば実感が出てくる。具体的に何年?
本人 33年です。
夏井先生 それならストレートに「三十三年」と書くとあなたらしさが出てくる。
もう1つの悩みどころは最後の季語の使い方。
どうしても、33年勤めてきた自分の人生を託す方に軸足がグッと来ている。
「野分晴」という季語の映像が薄くなっている。
最後の季語は「野分晴」でダメという訳ではないが、例えば「天高し」や「秋高し」などこういうのをストンと置けば、33年間に色々あったと読み手が読んでくれる。
うじゃうじゃ言ったが、退職の思いを書いた句としては普通(笑)。
本人 あ、でも「三十三年」だとだいぶ字余りになりますよね。それは良いんですか?
梅沢永世名人 上五につけることは大丈夫なんです。
本人 あ、良いんですね。
梅沢永世名人 今度、ご連絡下さい(笑)。
●解説のポイント |
上五は5音だが実感が薄い 「三十余年」なら実感が出る 人生を託す方に軸足があり季語の映像が薄い 「天高し」や「秋高し」などに 33年に色々あったと読み手が受け取る 退職の思いの句としては普通 |
添削後
『三十余年 勤めし渋谷 秋高し』
天文「野分晴」と渋谷に勤続したNHKアナウンサーらしい思いを込めた定型句。勤続した渋谷の場所に加え、年数を入れたことでご自身の立場や年齢が想像できるのが良い点。「三十年余(みそとせよ)」の特殊読みはアナウンサーらしい機知による表現ですが、初耳の読み手にはどこか古臭く感じる点が実感の湧かない一つの要因でしょう。「野分晴」も台風一過の晴れ晴れとした天気ですが、前半に過去の大きな時間情報が被さることで、季語も作者の紆余曲折あった思いを込めたと思われるのが勿体ない点です。晴れた渋谷のイメージしか映像がなく、具体的な情報をさらに盛り込んだ方が良いといえます。このようなご自身の経験を込めた退職句は他人に見せずにしまっておき、別の発想の句で勝負したいのが本音です。「三十三年」は8音もあるため、これを上五字余りか自由律かと解するかは考え方に幅がある点は確かで、ご本人の質問も悪くありません。リベンジに期待しましょう。
◆4位
凡人55点 青山フォール勝ち(ネルソンズ)『天高し ビジョンに写る 同世代』梅沢永世名人 これはね。
【本人談】ずっと渋谷の劇場に通っていた。今より仕事がない時、上(の街頭ビジョン)を見ると同期(の芸人)が映っている。そういうのを見て「今日も頑張って売れてやろう!」という思いをぶつけたんですけど。
千原永世名人 初めてにしては良いと思います。
本人 あ、ホントですか?
千原永世名人 写真がなかったら果たして渋谷のスクランブル交差点が出てくるか?っていうのはありますけど、「天高し」で「ビジョン」やと俺は分かるかなと思うから。
夏井先生 まず「天高し」からビジョンへ見上げる視線。
ここら辺の展開に無理がない。
少し惜しいのは「ビジョンに」といえば大きな画面を思うため、「写る」がいるかどうかというのはある。
正確に表現するなら「街頭ビジョンに」として街の映像は確保できる。
高いところにあるビジョン。
最後に同世代が映るのは「に」で分かる。
意味が分かった瞬間、この人がどんな思いで見上げているかが伝わってくる。
季語の選び・目の付け所は結構将来性のある凡人だと思う。
岸 すごいじゃん。
本人 僕もこの季語を敢えて選んだんです。
夏井先生 あるのは可能性だけだからね(笑)。
●解説のポイント |
季語からビジョンへ見上げる展開に無理がない 惜しいのは「写る」がいるか否か 正確に「街頭ビジョン」として映像確保 季語の選び・目の付け所は将来性アリ |
添削後
『天高し 街頭ビジョンに 同世代』
秋の天文「天高し」と街頭ビジョンに同世代の芸人が映り、活躍していることを羨む心境を取り合わせた定型句。「ビジョン」という先進的な街並みにある構造物、「同世代」という作者と人物との関係を示した単語を入れた点に詩の要素が生まれており、「天高し」の目線の運び方も含めて大変良い着眼です。ご指摘の通り、「ビジョン」には展望など別の意味もあるため、誤読も生みかねない要素はあり、「街頭」で補足されました。「同期芸人」まで限定せず「同世代」とした点で作者の読みだけでなく、読み手自身の立場にそれぞれ読み替えられる読み幅の広さも良い意味で評価できます。また、「天高し」だと心象としては大変プラス。同世代の人が映ったことを心から喜んでいるように受け取られがちです。季語を「秋雨や」とすれば心象も変わるだけに、季語選びの大切さを考えさせられます。
★特待生昇格試験★→今夜査定を受ける3名人はいずれも金秋戦で涙を飲んだ(→ジュニア7位・梅沢8位・中田予選5位で敗退)
中田名人 あそこ(→肖像画)を見て。ねえ、森迫さんが秋と冬並びましたよ。
浜田 ねえ、あの若い子が秋と冬2つ獲ってるんですよ。
中田名人 ホントに「俳句の申し子」って永世名人が仰ってましたけど。
梅沢永世名人 大したもんですよ。私の跡を継ぐのはあの娘かなと(笑)。
浜田 いやいやいやいや。
◆『青年の 歩幅につられ 秋空へ』 中田喜子【本人談】渋谷のスクランブル交差点の斜め横断。隣にいた青年が大股で歩く。それにつられて私も大股で歩き、秋空へ向かって歩いているような気分だということを詠んだ。
千原永世名人 これは素晴らしいですね。
本人 嬉しい。
千原永世名人 これは凄い。
本人 ホント?
千原永世名人 これね、「秋空へ」は行けないっすよ。最後の着地が凄いと思います。
梅沢永世名人 その通りです(笑)。情景が分かりますもの。
★評価ポイント「青年」から「秋空へ」と展開する語順の是非
■査定結果名人9段へ
1ランク昇格理由:
視点の誘導が良い本人 あ~アハハッ。嬉しい、ありがとうございます。
夏井先生 「青年」という人物から始まる。
次に「歩幅」で足元の方へ視点が動く。
季語「秋空へ」で一気に広がる爽快感がある。
「へ」の助詞の使い方も上手い。
もう一つ褒めたいのが、書いてないけど交差点のイメージが浮かんでくる。
溌溂たる青年の歩幅に引っ張られて、自分もグングンと歩き出す。
全部素直に自分が書けていると。素直が一番。
本人 ありがとうございます。
●解説のポイント |
人物から足元へ視点が動く 季語で一気に広がる爽快感 「へ」の助詞の使い方も上手い 交差点のイメージが浮かぶ 溌溂たる青年につられてグングンと歩き出す 素直が一番 |
添削なし
天文「秋空」へ向かって歩幅をまねて大きく歩き出す女性的目線で詠んだ洒落た定型句。「青年」と「秋空」との色彩の対比と爽快さがにじみ出た肩の力の抜けた一句です。青年の歩幅につられて自身も今日だけは強がりに歩く心情と共に、「秋空へ」と上に向かっていくポジティブさがあります。ご指摘の「老いを自覚している」はまさにその通りで、「歩幅に負けじと」なら若者に対抗心を持つ中年ぽさが出ますが、「つられ」で自分も青年の雰囲気に飲まれていくような年代で、無理はできないけど精神的にまだまだ快活で若いというギャップも見て取れます。ファッションの秋らしく、服装もお洒落な良いものにして晴れやかに大きな交差点を渡るイメージがあり、句会でも評価されそうな中田さんらしい潔さのある一句です。
★永世名人 ジュニアのお手本★◆『秋雨や 渋谷の路地に 鼠と吾』 千原ジュニア【本人談】大阪の仕事を全部やめて東京へ出てきた時、渋谷公園通り劇場(1995~98)に通っていたが、東京の仕事がほとんど無くなって雨が降ってきたセンター街の路地に入ってみたらドブネズミが濡れながらいる。「俺この先やっていけるのか?」「大丈夫か俺?」というのを詠んだ。
梅沢永世名人 素晴らしいです。これ合格(→掲載決定)だったら、私名前を渡しますよ。
浜田 え?
梅沢永世名人 梅沢ジュニア。
浜田 いやいやいやいや。
梅沢永世名人 素晴らしい。
浜田 いや、梅沢ジュニアじゃないし(笑)。
■査定結果永世名人28句目に
掲載決定
理由:
やっぱり吾は得意なんですね本人 よ~し!よし!ありがとうございます。
梅沢永世名人 素晴らしい。
(査定評後)
本人 先生がイジってますやん(笑)。
夏井先生 「秋雨」という季語は、しとしとと降り続く長雨のこと。
「渋谷」という華やかな街を描くのではなく、「路地」へ焦点を絞られていく。
この場所「に」という助詞の後、いきなり「鼠」が出てくる。
さらに、鼠と自分を「と」という助詞で並列して同じ場所・同じ位置に並べる。
自分も鼠のような存在ではないか。
そう書かれていないが、読者の心の中に作者の思いが流れ込んでくる。
これホントジュニアさんは、1個1個丁寧に学んでいく人。
浜田 真面目ですから。
夏井先生 私は思った。こないだ森迫さん(→金秋戦の予選の回)に「真面目か!」と言っていたはず。
本人 はい。
夏井先生 アンタこそ真面目だよ(笑)。
本人 やめてくださいよ、違いますよ。
浜田 いや、お見事でございました。掲載決定。これで?
清水アナ これで残り22句となりました。
●解説のポイント |
しとしとと降り続く長雨 華やかな街から路地へ焦点を絞る 「鼠」「吾」を並列で同じ場所に並べる 自分も鼠のような存在ではないか 読者の心に作者の思いが流れ込む 1個ずつ丁寧に学んでいく人 |
添削なし
天文「秋雨」と自身の心境を路地の鼠に託した定型句。やや薄暗い下町の路地に行くと鼠に出くわす経験は確かにありますし、何だかんだ繁殖力の強い鼠は年中みられる厄介者。雨を契機に家に侵入されるとこれほど溜まったものはありません。この句はご指摘の通り、40代以上の世代であればザ・ブルーハーツの名曲に影響を受けた印象を思い共感性を呼びやすい一句でしょう。出世を夢見る若者が「渋谷」の地名で助長され、まさに鼠に喩えている形。実際に雨に打たれる鼠を見たというより、その鬱屈な心境を季語と鼠に投影した心象が強い句ともいえます。思いを強く出過ぎない点でバランスが取れており、伊集院光さんが詠んだ「濡れ鼠」の句に通ずるものを感じました。
★特別永世名人 梅沢富美男の締めの一句★清水アナ 秋のタイトル戦は8位と定位置に戻ってしまいました。
梅沢永世名人 「定位置」って言うなんです(笑)。調子が下がってしまったんですよね。
浜田 何でそんな煮えこまないんですか。
梅沢永世名人 煮えこまないんです。
浜田 何でですか?
梅沢永世名人 (嬉しそうに)売れてんの~(笑)。
***
梅沢永世名人 実体験を詠ませていただきました。今から55年前です。まだジュニアなんて世の中に出てない頃だよ。
千原永世名人 はいはい。
梅沢永世名人 そん時、俺は感じたんだ。
中田名人 梅沢さんはお料理好きだし、香りに敏感な方だなって…。
***
浜田 梅沢さん、二人がトントンときてますから。
梅沢永世名人 勿論、大きく締めますよ。
浜田 最後の最後にバシッと皆さんに。
梅沢永世名人 はい。
◆『甘栗の 香を行く渋谷 交差点』 梅沢富美男【本人談】実体験を詠んだ。今から55年前、まだ渋谷は今のようではなく東横劇場(※東横ホール。1954年に開業した渋谷初の大劇場)があり、ハチ公の後ろ側にある。交差点に行った時、甘栗屋(→天津甘栗を売っている店)があった。甘栗の香りがプンプンする。それで、その劇場に行って私はいつかはヒノキブタイニ(→浜田が「えっ?」と聞き返す)、「いつかは檜舞台に上がってやるぞ。こんな小さい劇場ではなく、立派な舞台に上がってみせるぞ」と。
本人 これで私はスターになったんですよ。
中田名人 ん?
千原永世名人 えっ?
本人 この志で私はスターに…。
浜田 (遮って)さあ、いきましょう。
■査定結果特別永世名人なのに
ガッカリ…理由:
不要なものと足りないものがある夏井先生 この「行く」が本当に必要なのか、それが一番の問題点。
本人 俺は行ったんだよ!劇場に。
夏井先生 は~い、おつかれさんでした~(笑)。説明する。
「行く」の2音を諦めれば、渋谷における甘栗の香りをもう少しだけ表現できる。
「渋谷」から始め、甘栗に表情をつける。
「渋谷はや」なら、早くも甘栗の香りがすると。
「甘栗の香の交差点」。"あ、もうこんな季節だな"となる。
今、おっちゃんの話を聞いていると、昔のかつての甘栗の香のニュアンスだと聞き取った。
本人 そうよ!
夏井先生 だとしたらもう一手ある。
例えば「かの」は"あの有名な「かつて」嗅いだ甘栗の香"の意味になる。
「かの」「香の」で韻が生まれてくる。
武田 すご…。
夏井先生 特別永世名人ですから、これぐらいのことはやってほしかった。
浜田 まあ、そうですね。
本人 それはね、高等技術よ!
浜田 高等…いや特別永世名人やから。
●解説のポイント |
「行く」が本当に必要なのか 渋谷の甘栗の香りを更に表現できる 昔のかつての甘栗の香の意図なら「かの」 「かの」「香の」で韻が生まれてくる 特別永世名人ならこれぐらいは |
添削後
『渋谷はや 甘栗の香の 交差点』
『渋谷かの 甘栗の香の 交差点』
植物「甘栗」の香りがする交差点を歩いた過去の回想を詠んだ定型句。旧来から娯楽の街であった渋谷。戦後まもなく開業した東急会館は当時日本一の高さを誇る高層ビル。その最上部(9~11階)に作られたのが東急劇場で歌舞伎や落語など大衆演劇が多く上演されました。この場所でも上等だと思いますが、上京当時の梅沢さんはこの現状に満足せず、まさに立派な檜舞台に上がりたいという強い野望の持ち主だったからこそ、数少ないスターに上り詰めたという他ありません。天津甘栗渋谷ハチ公前本店は60年もの歴史を誇り、甘い香りがする交差点の雑踏を「行く」という動作で噛みしめる複雑な思いがあったことでしょう。一読して意味は分かりますが可も不可もない印象。大きな問題は「甘栗」が季語と認められないことで、「栗」「焼栗」にすべき案件です。甘栗は皮が剥かれている剥き栗が昨今は多く、時期も秋というよりは年末年始のイメージが強いでしょう。また、「甘栗の香」では実態としての栗の印象も弱いです。さらに、「渋谷」に交差点のイメージがあるため「交差点」まで畳みかけるべきかも問われます。「行く」の動作が削除されましたが、この句は回想とは分かりにくい点もあります。添削例は地名で一旦意味が切れて「かの」で韻を踏む高度な技術。回想句だけでなく、金秋戦の「キャラメルの香」と嗅覚情報が高評価を得にくい弱点を何とか克服してほしいものです。
梅沢永世名人 私の気持ちも少しは汲んだらどうなの?えっ?あのドサ周りの役者、三文役者と言われた時代に(→浜田が静かにボタンへと歩き出す)、いつかは檜舞台を踏んでやると志を持った渋谷の交差点を描いて書いたのに、どうしてあんたは…。
浜田 そ~れ!
(シュレッダー演出)
浜田 これやっぱり締めに相応しくなかったということで、申し訳ございませんが。
千原永世名人 句集も出されてる方が、句集…え~『二人羽織(ににんばおり)』でしたっけ?
梅沢永世名人 『一人十色』(笑)。
★10/25はプロ野球ドラフト会議のため休止。次回は11/2(※日本シリーズの場合は放送延期、TBS系放送の第3戦が2日連続雨天中止でずれ込んだ場合など)で、兼題は「夜更かし」。
特待生が出現した水彩画査定の後半が俳句。兼題は「渋谷スクランブル交差点」でした。都内屈指の繁華街として知られ、一度の青信号で千人が行き交うとも言われます。毎年10月末のハロウィンに時期を合わせて出題された兼題でしょうが、今年は渋谷区長が正式に渋谷交差点に集まらないよう呼びかけるなど、色々と大変なご時世。常時再開発をしている街の一つでもあり、街のブランドの変遷を見れば栄枯盛衰も感じられる意味では、最先端の流行を見る時代の羅針盤としての役割も果たしています。
秋の季語のうち、時候が2名(「秋」「秋の夜」)、天文4名(「秋空」「秋雨」「野分晴」「天高し」)、植物1名「(甘)栗」に分かれる展開で、時候2名が上位。「渋谷」と入れたのが4名、「交差点」が御大の1名のみ。「オーディション」「ビル」「勤め」「ビジョン」「歩幅」「路地」と渋谷あるいは交差点を思わす単語が並びました。また、8か月ぶりに俳句特待生が誕生したことも一つの話題となりますが、出演者の新陳代謝が進むのかそうでないのかなど、注視したい一つの点ともいえそうです。
※水野真紀さんの全俳句一覧記事は今後作成します。更新がいつも遅くなりまして申し訳ございません。
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