fc2ブログ

記事一覧

【金秋戦決勝】20231012 プレバト!!俳句紹介【月】

2023年10月12日放送 プレバト!! 俳句金秋戦2023決勝戦結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第7回金秋戦決勝戦で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
※29日に全て更新しました。大変長らくお待たせいたしました。

→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細(決勝ブロック) →編集後記

予選記事
※過去のタイトル戦結果などはこちらまたはブログカテゴリからどうぞ。

挑戦者挑戦者→森迫永依[14],藤本敏史[95],森口瑤子[43],村上健志[93],春風亭昇吉[18],横尾渉[79],千原ジュニア[100],梅沢富美男[206],犬山紙子[24],皆藤愛子[40] ※数字は挑戦回数
見届け人:<名人9段>千賀健永、<名人8段>中田喜子、<名人7段>立川志らく



●兼題:月
月の兼題

清水アナの俳句査定(プレバト!!公式Xより)
清水アナの俳句夏井先生評
パイプ椅子片す良夜のグラウンド才能アリです。季語がいい。マグレでないことを祈る。


※順位クリックでリンク内移動します。
1位森迫永依3級朝月のアザーン砂漠の空港へあさづきのあざーんさばくのくうこうへ
2位藤本敏史(FUJIWARA)永世名人月白のワーディー渡るヌーの群つきしろのわーでぃーわたるぬーのむれ
3位森口瑤子名人7段こりりとすっぱそうな三日月のかどこりりとすっぱそうなみかづきのかど
4位村上健志(フルーツポンチ)永世名人良夜かな香典返しの茶漬け食ふりょうやかなこうでんがえしのちゃづけくう
5位春風亭昇吉4級名月は東に父島観測所めいげつはひがしにちちじまかんそくじょ
6位横尾渉(Kis-My-Ft2)永世名人良夜のノーヒッター肘の手術痕りょうやののーひったーひじのしゅじゅつあと
7位千原ジュニア永世名人あんな家二度と帰るか睨む月あんないえにどとかえるかにらむつき
8位梅沢富美男特別永世名人桂月やキャラメルの香の満ち満ちてけいげつやきゃらめるのかのみちみちて
9位犬山紙子3級別れるはずだったのに月が綺麗わかれるはずだったのにつきがきれい
10位皆藤愛子名人5段細月を探す三箇所残り蚊にさいげつをさがすさんかしょのこりがに
順位発表順:2位→5位→4位→最下位→6位→7位→8位→3位→9位→1位




1位◆『朝月の アザーン 砂漠の空港へ 森迫永依
※「アザーン」はイスラム教における礼拝時間の呼びかけ。今年話題を呼んだドラマ『VIVANT』の劇中を彷彿させる壮大な風景を詠んだ一句。

【本人談】
モロッコ旅行に行った時、沢山のモスクがあり、アザーンがどこにいても一日のうちに5回は聞こえてきた。帰国の日にホテルをチェックアウトし、出てみたら夜明け前の月がほんのり残っている時にアザーンが物静かな街に聞こえてきて、今から帰らなきゃならないという帰国の寂しい気持ちと、神聖な感じを季語に込めた。

村上永世名人 簡単にやっているように見えるんですけど、今これを見ただけで今仰ったような物語をハッキリではないが感じ取れる。1位獲るよな~。
藤本永世名人 これは1位っすね~。
浜田 梅沢さんはどう思われますか。
梅沢永世名人 素晴らしい。フジモンとの違いは実体験を詠んでいる。ここの違いなんですよ。これはもう(ゴゴッ)読み手が(ガハッ)…。
藤本永世名人 タン絡んどるやないか(笑)。
浜田 フジモン!
藤本永世名人 えっ?
浜田 言うな。
藤本永世名人 腹立ちますやん。8位を2位…。
浜田 「タン絡んどるやないか」って何やねん。
藤本永世名人 何で8位に言われなきゃいけないんですか。タン絡んどるやないか。

夏井先生 
モロッコでの海外の光景を読む「海外詠」に挑んでくれた。
今回1位・2位はたまたま海外の様子を詠んだ句になった。
海外詠の難しいところは、季節感が薄くなったり違和感があったりする。
この句はやはり実体験だと話を聞いて、なるほどそうでなければこうは詠めないと納得した。
まず「朝月のアザーン」。
朝の月で、有明の頃の細い月を想像した。
「アザーン」の一語でイスラム圏の国へワープする。
「アザーン」と「砂漠」がやや近いと思う人がいると思うが、ちゃんと読むと街の中のアザーンの声を耳の奥・胸の中に抱きながら、砂漠の空港「へ」向かって出発するため、光景として齟齬は全くないと思う。
映像がしっかりと描けている。
この人だったのかとホントに嬉しい思い、将来を応援したい・期待したい思いもある。

●解説のポイント
モロッコでの海外の光景を読む「海外詠」
実体験らしい詠み口に納得した
季語で有明の細い月を想像する
「アザーン」でイスラム圏の国へワープ
「アザーン」「砂漠へ」の光景に齟齬は全くない
将来性を期待したい

添削なし



2位◆『月白の ワーディー渡る ヌーの群 藤本敏史(FUJIWARA)

【本人談】
ワーディーは普段は干上がって水が流れていない川のこと。「月白」は月が昇る時、空が明るく白んでいく様子。その水が流れてない川を渡るヌーの群れ。

梅沢永世名人 これね、「月白」という季語を選んだところが、これを持ってきたところが偉い。でも、ちょっとやっぱり俳句を読んでくれた人には分かりづらいところがあるんじゃないかな、伝わりにくいところが。だから2位…。
本人 そうですかね?
梅沢永世名人 2位だから、偉そうに言ってんじゃないよ(笑)。
本人 2位…2位、まぁまぁ。
梅沢永世名人 1位がいるんだから。
千原永世名人 いやこれは凄いですね。素晴らしいですけど、何か「ヌーの群」とか羊とか好きね(→過去に「羊群の最後はすすき持つ少年」)。
村上永世名人 確かに。
千原永世名人 何かね。
藤本永世名人 何年前の話よ(笑)。めちゃくちゃ前の話よ、もう忘れてるでしょみんな。「群れ」好きやねん。
千原永世名人 1人やから?(笑)
本人 「1人やから?」とか言うた~(笑)。「1人やから?」とか言うてる。

夏井先生 
季語「月白」が良かった。
月が出る前、空がほんのり明るくなる。
その「月白」から「ワーディー」。
水の枯れた川を渡っていいくヌーの群れであるよと。
ヌーは夜に野営地を目指すのだろうが、枯れた川には砂埃のようなものも立つに違いない。
月白の色合い・枯れた川の色合い・ヌーの群れの色合い、全部がそれぞれ無彩色の濃淡みたいなものの映像になっている。
印象的な陰影が生まれてくる。
それがこの季語「月白」を選んだ良かった点だった。
作者が分かってみると「ヌーの群」で、"なるほど。
フジモンさんか"ととても納得している。
本人 何で?ダメなんですか?
夏井先生 直しは要らない。

本人 わぁ~。最後にちょっと良いですか?凄い何かあの、凄い褒めてくれたので、1位になりませんかね。
浜田 なんでやねん!(笑)
本人 無理?
夏井先生 そ…そんな、1位を見てから言って(笑)。
本人 え~!

●解説のポイント
月が出る前のやや明るい空「月白」が良い
水の枯れた川を渡るヌーの群れがある
野営地を目指す砂埃が見える
それぞれが無彩色の濃淡の映像に
印象的な陰影が生まれる季語選び

添削なし



3位◆『こりりと すっぱそうな 三日月のかど 森口瑤子

【本人談】
本物の月を眺めているだけでは難し過ぎるため、ありとあらゆる写真をとにかく眺めていた。何かこの三日月の「かど」の部分が、フルーツ例えばパイナップルみたいな感じで酸っぱそうに見えてきてそれを書いた。

横尾永世名人 「こりり」っていう言葉がいいですよね。この発想は僕にはないので、凄いなと思います。
浜田 梅沢さん。ちなみに、答える元気があればお願いします。
梅沢永世名人 よろしいですか。「すっぱそうな」ってどう伝わるんですか。私の「満ち満ちて」を消しといて。
千原永世名人 えっ?
梅沢永世名人 まだ私のキャラメルの方が…。
浜田 8位が3位に何を言うてんの?(笑)
梅沢永世名人 三日月見て「すっぱい」って皆さん感じますか?(笑)
本人 アハハッ。
梅沢永世名人 (急に立ち上がって上位を向き)感じますか?ここにいる人。(見上げながら)「あぁ、この月はすっぱいな」って(笑)。
藤本永世名人 だから良いんですって。
梅沢永世名人 説明してもらおうじゃないか。
浜田 違う違う、梅沢さん今の立ったからオモロイんで(笑)。

夏井先生 
みんな中々思いつかなから、そこに詩があるということ。
こんな句を見たのは初めて。
「こりり」から「すっぱそうな」にいった時、良い意味での違和感・意外性のようなものがある。
ただこれだけだと上滑りするかもしれない。
上滑りしないのは「かど」に焦点を絞って着地しているから。
映像としてしっかり押さえているのが大事なところ。
しかも、最後の「かど」という表現は、作者自身の尖った心情・思いと接点を持つ。
そこが良かった。
勿論、好き嫌いは分かれるタイプの句だが、「この句を嫌いな人がいるかもしれない」と恐れるのではなく、自分の感覚を率直に書くと絶対共感する人は出てくる。
果敢に自分を信じてこれからも表現していってほしい。
直しは要らない。

浜田 おめでとうございます。

●解説のポイント
中々思いつかない点に詩がある
「こりり・すっぱそう」に良い意味の違和感・意外性
上滑りしないのは「かど」に焦点を絞った
「かど」は作者の尖った心情と接点を持つ
好き嫌いは分かれるタイプの句
自分の感覚を率直に書くと共感する人はいる
果敢に自分を信じて表現してほしい

添削なし



4位◆『良夜かな 香典返しの 茶漬け食ふ 村上健志(フルーツポンチ)
※「良夜」とは中秋の名月の夜のこと。

【本人談】
良夜に香典返しのお茶漬けを食べている光景だけ。今僕が生きているという「食べる」という行為が「死」との距離を良夜の日に良い感じに取れたという。

中田名人 ちょっと嫌味な感じがする(笑)。上五に「良夜かな」を敢えて持ってきたというのが、あまりにも「どうだ!」と言っているような感じがして。
梅沢永世名人 これは良い句なんですよ。ただ良い句なんだけど先ほど仰った「かな」。これがどうかなと。「かな」、私も失敗してるから。それから「茶漬け食ふ」、この「食ふ」が要らないんじゃないかと私は思いました。

夏井先生 
今お話を聞いてて、みんな議論すべき点がちゃんとわかっていると。
これがホント"上達してきたな"としみじみ嬉しい気持ちになった。
この句の中で、議論すべき点は「かな」と「食ふ」の二点になる。
上五の「かな」はとても難しい。
最初に「美しい月の夜だな」と詠嘆する。
詠嘆が先に来ると、後半の中七・下五とのバランスが取りにくいが、これは際どいところでバランスが取れている。
その成功の理由が着地の「食ふ」にもある。
この句の解釈になるが、同い年ぐらいが亡くなったお葬式を思い浮かべた。
つらい寂しい葬儀から日数が経って、少し悲しみも落ち着いてくる。
香典返しの茶漬を食べることを受け入れるのが表現としてちゃんと伝わる。
おっちゃんの指摘に合った「食ふ」が要らない点は、「香典返しなる茶漬け」と表現した方が良いと思う人もいるとは思う。
ただ、そう添削すると頂いた茶漬けの箱を見ているだけに読まれる可能性も出てくる。
梅沢永世名人 あ、そうか…。
夏井先生 だから、ここは「食ふ」という単語が必要だといえるのが1点。
それからもう1つはご本人も仰った悲しみの日々から誰かの死を受け入れることが出来て、やっと物を食べるという日常が戻ってくると。
それも「食ふ」にあるのが大事。
全体のバランスが整っていて、読み終わった後、なかなか手慣れの作品だと思った。
直しは要らない。

本人 えぇ~!
藤本永世名人 何が「えぇ~!」?
本人 これまでの4位の中で一番レベル高いんじゃないですか、もしかして。
浜田 自分で言うの?
本人 別に何も悪いところがないという。
浜田 いやいや。
本人 4位史上の1番だ。
浜田 いやいや違う違う、違うよ。
本人 過去最高の4位。

●解説のポイント
上五「かな」と「食ふ」の2つが議論点
上五「かな」は際どく後半とバランスを取った
着地の「食ふ」も成功要因
「香典返しなる茶漬け」では箱を見る意味に
誰かの死を受け入れる行為が「食ふ」
手慣れの作品に受け止めた

添削なし



5位◆『名月は 東に 父島観測所 春風亭昇吉
※父島は東京都心から南へ実に1000kmもの距離にある。

【本人談】
船で小笠原諸島に行ったことがある。気象予報士なので、父島気象観測所の資料を見に行きたいと思って行った。360度水平線で、日の入りとほぼ同じぐらいに水平線から月の出が見られる。その綺麗な月を詠んだ。

森口名人 「名月は東に」だけで「あ、聞いたことあるな」と思ったら「父島観測所」が出てきた途端に光景がブワッと立ち上がって素敵な句だと思いました。
本人 ありがとうございます。
村上永世名人 いやこれもやっぱり、行ったことある人だからこの「父島観測所」ってのが出せたってのはいいなっと思います。これで5位か…。
志らく名人 いや、良い句なんですけど自分がさりげなく気象予報士だって言ってる辺りが嫌味ですよね(笑)。
村上永世名人 嫌なこと見つけるなぁ…。
志らく名人 別に言わなくたっていい。それが東大出の嫌らしいところ(笑)。
藤本永世名人 そうなんですね。

夏井先生 
兼題写真から真正面に取り組んでいる作品だと思う。
海の広さ・月の大きさを感じられる。
さらに、「父島気象観測所」の固有名詞の力もよく効いている。
気になるところを指摘するとなると、本当に「名月」で良いのか?という点。
お話を聞く限り、「名月」よりは「満月」の方が良いかもしれないと思った。
梅沢永世名人 私もそう思いました。
夏井先生 「名月」は月を愛でる心の方に軸足がある。
この日本の端の孤島で愛でる月のなんと美しいことか、というニュアンス。
それに対し、昇吉さんのお話では360度水平線を月が上がってくるという気象予報士としての光景に心を打たれている。
むしろ、まん丸な月「満月」が出てくる方に軸足があるのではないか。
「名月」は愛でる心・「満月」はくりっとした月の映像。
それぞれ違うということは一つ覚えて頂きたいかなと思う。

本人 ホントに仰る通りです。勉強になりました。

●解説のポイント
兼題写真から真正面に取り組んだ
海の広さ・月の大きさを感じる
父島気象観測所の固有名詞も効果的
「名月」は月を愛でる心に軸足
気象予報士目線なら「満月」に軸足を
「名月」は愛でる心・「満月」は月の映像

添削後
月は 東に 父島観測所



6位◆『良夜の ノーヒッター 肘の手術痕 横尾渉(Kis-My-Ft2)
※「ノーヒッター」は相手チームに一本もヒットを打たれなかった試合のこと。WBC世界一を皮切りに盛り上がった今年のプロ野球から発想。

【本人談】
野球のナイトゲームで、ノーヒットノーランを起こしたピッチャー(のガッツポーズ)をよく見ると、肘に手術の痕があり、ここまでいくまでに凄い努力をしていたのだろうなと。それを全て月は見ていたと。

千賀名人 いやめちゃくちゃ良いと思いますけどね。広いところからフォーカスしていく。最後、手術痕にいく作り方も凄く良いし、なんで6位何だろう?という。
本人 6人になったから。
千賀名人 関係ないのそれはやめてください(笑)。
千原永世名人 いやホント、カメラがズームしていってる感じが素晴らしいですけどね。

夏井先生 
月の良い夜の勝利。
勝利投手が月に向かって握り拳をする映像まで見えてくる。
題材も非常に面白い。
何が僅かな順位の差になるか。
必要な情報を17音に詰め込み過ぎたことで、肝心の季語「良夜」が少し脇役になってしまった。
だからといってどの言葉も外せない。
この句は言いたいことを全部入れていくと、そのことによって詩としての調べが少し窮屈になってしまった。
僅かな差を見抜いて順位をつけるしかないという悲しい部分が私にもある。
この句は直すことは出来ないが、これはこれで味わうしかないという気がする。

本人 もっと季語を大事にするというのをもっと勉強したいなと思いました。

●解説のポイント
勝利投手が月に向かって握り拳をする映像
題材も非常に面白い
順位の差は情報の詰め込み過ぎ
季語「良夜」が脇役になった
詩としての調べが窮屈になった
直しは出来ないがこれで味わう

添削なし



7位◆『あんな家 二度と帰るか 睨む月 千原ジュニア

【本人談】
中学生の時に家出して月が出ていたのを思い出した。その時の気持ちを詠んだ。

志らく名人 面白い句だとは思いますけどね。だから、すべってはいないと思いますよ。
本人 ありがとうございます。
藤本永世名人 もうちょっと、情景を盛り込んだ方が良かったんじゃないのかなとは思うけどね。
志らく名人 感情が表に出過ぎちゃってるから、この順位になっちゃったんじゃないですかね。
梅沢永世名人 皆さん、そんなことを言ってるから2位・3位(未発表)・5位・6位・7位なんですよ。
藤本永世名人 2位はいいでしょ(笑)。
梅沢永世名人 だだすべりになった原因は「睨む月」。これが問題。月が睨んでるのか、本人が睨んでるのか。
本人 これ、分かるでしょ。
梅沢永世名人 読む方が…私たちはこうやっているから…。
藤本永世名人 それは分かるんじゃないですか。それは。
梅沢永世名人 そうそうそうそう。
浜田 「そうそうそうそう」。何にも聞いてないよ(笑)。
藤本永世名人 「そうそう」じゃないです。


夏井先生 
これはおっちゃんの指摘が正しいと思う。
良いところから褒めたい。
生々しい台詞「あんな家二度と帰るか」を叩き付けるように持ってきたのが良い。
着地の問題になるが、選択肢は2つに分かれる。
1つ目の方向は月の描写。
「月皓皓(こうこう)」や「月明(あかる)し」などで月を映像化する。
ただ、この句の場合は「睨む」という動作に作者の強い思いがあるのは判断できる。
そうなると、第二の選択肢になる。
俳句というのは物を描写するのが定石だとジュニアさんは学んできたため、ここはあまり迷いなく「睨む月」と置いたはずと分かる。
ただ、この句の場合は月の映像よりは、睨む行為の方が作者の言いたいこととして強くある。
浜田 テレコ(語順が逆)?夏井先生 もしやるなら、やはり「月/睨む」とするなら作者の思いにかなっている。
さらに、もう一つ言わせてもらうと、前半が凄く強いため後半もう一声やっても良いと思った。
月に向かって睨むだけではなく吼える。
「月に吼ゆ」、「吼ゆ」は吼えるという意味になる。
ここまでやると、睨む動作よるも思いがストレートに出るかもしれない。

本人 なるほど~そうか~。吼えなかったからな~(笑)。吼えといたら良かったな~。
藤本永世名人 何で吼えなかったのよ。
本人 なあ。
浜田 (藤本名人へ)何を言うてんねん、お前さっきから。

●解説のポイント
梅沢「睨む月」の主体が不明の指摘は○
生々しい台詞を叩き付けた
下五「月皓皓」「月明るし」など月の描写も
「睨む」の作者の思いが強いなら「月睨む」
前半が強いため後半もう一声「月に吼ゆ」で思いを

添削後
あんな家 二度と帰るか 月
『あんな家 二度と帰るか 月
『あんな家 二度と帰るか 月睨む』
『あんな家 二度と帰るか 月
に吼ゆ




8位◆『桂月や キャラメルの香の 満ち満ちて 梅沢富美男
※月には桂の木が生えているという中国の伝説がある。

【本人談】
桂木は非常に良い香りがする。桂林に行くと、砂糖が焦げたような香りがする。満月の黄色い月を見ると、月にもその香りが満ちているんだなという句を詠んだ。

本人 お気に召さなかったみたいね。
中田名人 もう永世名人に申し訳ないんですけど、やっぱり梅沢さんタイトル戦は弱いんでしょうか(笑)。
藤本永世名人 ねえ。
村上永世名人 何か「桂月」でカッコつけてるとか、「キャラメル」とか何か多分…梅沢さんが知ってるだけで一番オシャレな言葉入れて(笑)。何かね、こう良いっぽいのに結局言ってることはそんな…。これすべ沢富美男ですね。
浜田 アハハッ。一番知ってるオシャレな言葉が「キャラメル」…(笑)。

夏井先生 
これは「桂月」で悩んでしまう。
月のことを「桂月」ともいい、「月」の違った呼び名であるのが一つ。
本人 そうですよ。
夏井先生 もう1つあり、陰暦の8月のことを「桂月」という風にも言う。
本人 そうですよ。お気に召さないだけじゃん!どうしてくれんの?この大島紬新しくした!
藤本永世名人 聞きなはれや、最後までまず。
村上永世名人 途中ですから。
夏井先生 これ、陰暦8月の意味だと読めば案外悪くない。
初秋の少し涼しくなる、ひんやりとしてくる空気の中でキャラメルの香りを嗅ぐという取り合わせは悪くない。
ただ、兼題写真が月の写真のため、この句は実際の月のことを指しているものと判断するのが普通。
そうなると、この季語を後半で説明しているような一句になっている。
もっと分かりやすく言うと、己の知っている知識だけで作ったと。
知識をひけらかしてみたと、そういう句になってしまっている。
そこがとても勿体ないという風に思った。
そうなると、陰暦8月ではなく、実際の月のことであって、なおかつという意図なら添削するしかない。
「満ち満ちて」いる場合ではない。
本人 何で?「満ち満ちて」気に入って書いたのに。
夏井先生 じゃあそれは持って帰って下さい。「満ち満ちて」はね。
「キャラメルの香か」、"キャラメルの香りだろうか"として「桂月の甘からん」ぐらいがいい。
どこからともなくキャラメルの香りがしてくる。
ひょっとすると、月の香りかもしれない。
月の桂の木も甘い匂いを出しているに違いないと。
ここまであれば、順位は多少上がったかもしれない。

浜田 ハハハ。
本人 多少か!
夏井先生 多少だよ。
浜田 8位ですから、まあまあ。どうですか、梅沢さんこうやって直されると。
本人 ありがとうございました。どうもすいませんでしたね。
夏井先生 どういたしまして。
本人 もう、「満ち満ちて」は絶対書かないからな(笑)。

●解説のポイント
「桂月」は月の別名・陰暦8月の別名と二重の意味
陰暦8月の解釈だと取り合わせは悪くない
兼題写真から実際の月と判断するのが無難
季語を後半で説明している構成になった
己の知識をひけらかしてみた
月にある桂の甘い香りを想像させる

添削後
キャラメルの香 桂月の



9位◆『別れるはずだったのに 月が綺麗 犬山紙子

浜田 まあまあ、別れの句ですから。フジモンどうですか?
藤本永世名人 何で僕ですか?
浜田 いやいや、まあ一応。
藤本永世名人 他にもいるでしょう?いないかあ。俺だけやな、これ~(笑)。よう見たら。
浜田 これ、特別永世名人はどう思われますか?
梅沢永世名人 「はずだったのに」がちょっとくどいかな。俳句にしては。

夏井先生 
おっちゃんは何で他人の句のことはハッキリ分かるのか。
仰る通り。
英語教師をしていた夏目漱石のエピソードで、"I love you "を"月が綺麗ですね"と訳しておけという台詞があり、後半「月が綺麗」="I love you "という隠してある言葉がここにある。
そこら辺の機知はとても良い。
惜しいのはおっちゃんの言う通りで、「のに」が説明をする言葉になっている。
「別れるはずだった/月が綺麗だった」と「だった」を繰り返す手がある。
本人 うわ~、凄い良い。
夏井先生 この「のに」さえ外してくれたら、梅沢(→8位)を軽々と飛び越える(笑)。

●解説のポイント
「はずだったのに」のクドさを梅沢は見抜ける
夏目漱石が"I love you "を「月が綺麗」と訳した
後半"I love you "が隠語となる機知は良い
「のに」が説明をしている
「だった」をリフレインする
これなら梅沢(8位)を軽々と飛び越える

添削後
別れるはずだった 月が綺麗だった



10位◆『細月を探す 三箇所 残り蚊に 皆藤愛子
※涼しくなっても出てくる「残り蚊」は秋の季語。

【本人談】
実体験で夜空を観察している時、三箇所蚊に刺されてそれを句にした。

犬山 何が「三箇所」なのかが分かりにくかったかなと思いました。
浜田 これはもう、梅沢さんも同じ?
梅沢永世名人 これはね、あの~私のお師匠さんの夏井先生がよく言っていることを忘れてはいけませんよ。季語2つ(→「細月」「残り蚊」)わざと使ったんですよね。
本人 あ、はい。
梅沢永世名人 そうですよね、その時には片方の季語が立つような俳句を詠まなきゃいけない。これだと両方とも立ってない。だから最下位なんです。

夏井先生 
結論から言うとおっちゃんの言う通りだが、ああいう言われ方するとカチンとくるよね(笑)。
読んだ時に「細月」が主役なのか、「残り蚊」が主役なのかがハッキリしていないというのは損をした。
細い月とはいえ、「探す」ほどの時間が経つのか?という疑問を率直に抱く人もいるかもしれない。
そこに「三箇所」とくると、探す時間との時間軸がぶれてくるのが勿体ない。
何で「三箇所」にしたかというと、「細月」と「さ」の韻を踏もうとした意図が読み取れる。
今回の場合、残り蚊に刺されたことを主役にした方が句としては整いやすい。
「細」も分かるが「月さがす」と平仮名にする。
要らない言葉に見えるかもしれないが、「間を」と時間をしっかり書く。
「三箇所」は諦める。
「残り蚊に刺されけり」と。
「刺され」も要らないように思うかもしれないが、後半を主役にするためにこれぐらいに押さえた方が良い。
これだと俳句の調べがしっかりと乗ってくる。

●解説のポイント
「細月」「残り蚊」の主役季語が不明確
「探す」時間と「三箇所」に時間軸のブレ
「さ」の韻を踏もうとした意図は分かる
残り蚊に刺されたことを主役にして整える
「間」「刺され」を書いて俳句の調べを

添削後
 を残り蚊に 



清水アナ それでは2023年金秋戦を制した森迫永依さんにはトロフィーを贈呈します。
藤本永世名人 うわ~いいな。
浜田 優勝おめでとうございます。
村上永世名人 素敵な俳句。
ありがとう、素敵な俳句を。
清水アナ おめでとうございます。
藤本永世名人 帰って月見よう。


関連記事
スポンサーサイト



コメント

発表順に

2位 藤本永世名人
・当て逃げ事件の兼ね合いでさっさと句を発表したのかと思えたが違った様子でした。
・句そのものは暗い色彩で統一された映像を見るかのようであり、良いものかと思いましたが、俯瞰的な世界で終わってしまったのが1位との差だったかと。

5位 昇吉さん
・名月と満月の違いの指摘はあれど、固有名詞「父島観測所」がうまく効いていたと思う。
・番組の展開として大きくは取り上げられなかったけれども、この句の発表時点で御大を含めた永世名人の誰かは下位に陥落すると分かる展開に。

4位 村上永世名人
・香典返しの茶漬けを食うことを通して誰かの死を受容した内容だと分かる句。
・初めに「良夜かな」と置く。この形に踏み切ったことで、この季語を絶対に使うという意思が伝わって来た。
・ああ、なんて良夜でしょうか、(だからこそ誰かの死を受け入れて)香典返しの茶漬けを食べました、と中七以降への行動と因果が生じている気もしますが、かといって、「香典返しの茶漬け食う良夜かな」だと季語がとってつけた感がでますし、茶漬けが少しうまくなさそうにも見えるから、「良夜かな」で始まって良かったんだと思えた。
・この時点で永世名人の句が二句出てきて、上位は1位と3位のみに。たぶん、永世名人陣が一人入るか入らないかという展開に。

10位 皆藤名人
・切れ目なく「細月を探す三箇所残り蚊に」と表記すると、「細月を探す三箇所」と一瞬読んでしまい、(細月を探して三箇所に行ったのか?)と思い、そこに「残り蚊」がポンと出てきて???となってしまう。句跨り+倒置と気づくのにちょっと時間がかかってしまった。
・特待生以上の句と分かっているからこの辺の指摘は無いのだろうけど、平場の方の句ならどうだったのだろう。
・皆藤さんが脱落することで残りは全員優勝経験者になった。優勝は誰か、永世名人たちで下位に沈むのは誰か、という展開に。

6位 横尾永世名人
・やっぱり、最終的に手術跡にカメラが絞られていくのは季語がより引き立つかどうかという点で不利だったと思えます。

7位 千原永世名人
・一読して「月が睨んでいる」と詠まれても致し方ないと感じた。
・月を描写するか月+動詞とするかは好みかもしれないけども、原句がストレートなので「月睨む」が自分としては良いかなと

8位 御大
・句集「一人十色」には梅沢と夏井の対談が掲載されているが、P73には梅沢の言として「知ったら、誰かに言いたくなりません?(中略)昨日覚えたばかりだっていうのにすぐに話したくなる」と掲載されている。
・上記の梅沢の言葉が悪い方に働くと今回の句やいつだかの1/fの句だのになっていく。

3位 森口名人
・読み手が、こりりとした歯触りの、しかも酸っぱい、三日月に似た形の食べ物を頭の中で探した時点で、この句は成功だと思う。

9位 犬山さん
・「のに」の一点で、やはり説明的になっていたのは惜しかったと思った。

1位 森迫さん
・2位との差は実体験からの句という点。
・朝月が空にある中、礼拝を促す呼びかけが街に響く。そんな中、私は砂漠の空港へ向かった、という内容だろう。
・中八だが、「ザーン」が長音とンを含むこともあってあまり違和感はなかった。むしろ、音数合わせの為に、仮に下五の「へ」を取ると、実体験ではなくアザーンと空港の対比に終わってしまう。
・句跨りの中八だが、3位、9位と自由律だったのでこの句の形でもしっかりした型だと錯覚してしまった。

No title

シードは2位までだったけど、当て逃げに件でカットされたと邪推してしまいます…
まぁ、シードされても出られない可能性があるので仕方ないのですが

昨日のプレバト

永世名人勢(梅沢さん、村上さん、ジュニアさん、フジモン、横尾くん)が優勝を逃し、森迫さんが2度目の優勝を果たすといい、とにかく大波乱の連発でしたね。

追記
俳句とは関係ないけど(もしかしたら関係あるかも)、フジモンが当て逃げ&芸能活動自粛というニュースを聞いて、正直愕然としました。

追記②
今回の金秋戦では、来年の春光戦の予選免除のシード権が発表されませんでしたね。

追記③
次回の放送で、俳句と水彩画において、新たな特待生昇格者が現れるので、とても楽しみです。

森永さん、おめでとうございます。
三大季語で永世名人を押しのけての優勝、お見事だと思います。(過去に〇〇と月という兼題はありましたが)
特に村上さんは類想の点で順位を落とした印象がありました。

フジモンは残念でしたね…(結果的に一位取らなくて良かった状況になってますが)
キスマイは出続けられるのかも分からないですが、奇しくも芸能業界として世代交代の流れになってきています。

今回は、シード権の発表がありませんでしたが、今後春秋も別方式になるのか、永世名人のみ固定シードにして予選を行うのか気になるところです。永世名人も特待生も増えすぎた現状、今後はついに新たな取り組みに移行するのか、楽しみに待ちたい所存です。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

プロキオン

Author:プロキオン
俳号「白プロキオン」。全てのブログ記事を編集しています。
毎度閲覧いただきありがとうございます。時間があるときにでもどうぞ。
全俳句を掲載してほしいなどのリクエストはコメントしていただけると助かります。

ツイッターでは番組の放送予告などをツイートしています。以下リンクからどうぞ。
プロキオン
***
番組公式ツイッター
***
着流きるお氏(プレバト兼題で俳句を独自査定する若手俳人・ブログ編者とは無関係です)
***
夏井いつき氏(プレバト!!出演の俳人)

人気記事ランキング

↓訪問者数です