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【金秋戦予選】20231005 プレバト!!俳句紹介【母の背中】

2023年10月5日放送 プレバト!! 俳句金秋戦2023予選ブロック結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第7回金秋戦予選で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
※16日に全て更新致しました。大変お待たせいたしました。
「ジャニーズ」の名称関連対応については編集後記をお読み下さい。

→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細(予選ブロック) →編集後記

決勝戦記事
※過去のタイトル戦結果などはこちらまたはブログカテゴリからどうぞ。

挑戦者:<名人9段>千賀健永(Kis-My-Ft2)[63],<名人8段>中田喜子[68],<名人7段>立川志らく[68],<名人7段>森口瑤子[42],<1級>馬場典子[28],<3級>森迫永依[13],<3級>犬山紙子[23],<4級>春風亭昇吉[17] ※○△×は過去の成績,[数字]は挑戦回数 ※[数字]は挑戦回数
見届け人:<特別永世名人>梅沢富美男、<永世名人>千原ジュニア



●兼題:母の背中
母の背中

清水アナの俳句査定(プレバト!!公式Xより)
清水アナの俳句夏井先生評
秋の暮出発ゲートへ向く母よ(凡人)69点。「向く母よ」ではなく「へ向かう(母)」。


※上位4名が決勝進出。
※順位クリックでリンク内移動します。
1位春風亭昇吉4級乳房切除す母よ芒の先に絮ちぶさせつじょすははよすすきのさきにわた
2位森口瑤子名人7段黒ぶどう甘やか母の背にほくろくろぶどうあまやかははのせにほくろ
3位犬山紙子3級発熱の母月光の車椅子はつねつのははげっこうのくるまいす
4位森迫永依3級薄月夜母の電卓スタッカートうすづきよははのでんたくすたっかーと
5位中田喜子名人8段母の背は硬く娘を待つ秋夜ははのせはかたくむすめをまつしゅうや
6位馬場典子1級秋湿り添い寝の母の生返事あきじめりそいねのははのなまへんじ
7位千賀健永(Kis-My-Ft2)名人9段手羽を煮る小さき背中や秋彼岸てばをにるちさきせなかやあきひがん
8位立川志らく名人7段門付けの母に背負われ蚯蚓鳴くかどづけのははにせおわれみみずなく
順位発表順:3位→7位→2位→6位→4位→5位→最下位→1位





●それでは順位別に見ていきます

1位◆『乳房切除す 母よ芒の 先に絮 春風亭昇吉

【本人談】
8年ほど前に母が腫瘍の手術をし、その後の病室で母の背中越しに病室の窓から駐車場が見えた。駐車場の隅っこに芒があり、先っぽに絮が付いていて、毛絮が飛んでいかずにくっついていた。その情景を詠んだ。

千原永世名人 めちゃくちゃ良いですね。
本人 やった。
千原永世名人 芒の絮がこう…命が離れるのか離れないのかみたいなことが…。
梅沢永世名人 そうそうそう。
千原永世名人 あ~良いですね。
梅沢永世名人 良いね~。今、ジュニアが言った通り。それですよ。
浜田 言った通りなの?
梅沢永世名人 ええ。
浜田 言った通りならもういいです(笑)。
梅沢永世名人 これあのーーーーホントにこれだったら…。
浜田 何もないんでしょ?(笑)何か繋ごうとしているけど、何もないんでしょ?
梅沢永世名人 無いぐらい良い俳句です。
浜田 うん。しぃ~!もう黙って。
梅沢永世名人 すいません。

夏井先生 
もう詠いだしにハッとする。
「乳房切除す」で一回意味が切れ、ここまでで自分自身のことと読むことができる。
続いて「母よ」で手術をしているのは母と読むのが妥当となる。
その出来事を淡々と読んでいる。
そして「母よ」でさらに切れて芒の映像にポンと飛ぶ。
芒の先に絮がくっついて風に吹かれて、飛んでいくのかいかないかという光景。
まず一つ褒めたいのは、「背中」と書いてないがこの語順で読むと母が自分に背中を向けて、向こう側の芒を見ているという映像が脳内に再生される。
これはとても技術として上手い。
さらに、母の心情が後半の映像に乗っかってくる。
母はこの光景をジッと見つめているが、何を考えているのかと。
枯れていく芒に自分を投影しているのだろうか。
あるいは、命・「絮」にくっついている種子を飛ばすことで命を繋いでいる光景に、自分の子どもたちのことを思っているのか。
それらをちゃんと映像で伝えている。
もう1つ褒めたい。
さっきも言ったが、「切除す」「母よ」「絮」でそれぞれ切れる"三段切れ"で上五字余りという難易度の高い構成だが、この俳句の内容にとってはこの形が一番ぴったりだと。
よく勇気をもって挑んだと手放しで褒めます。
素晴らしい句でした。直しは要らない。

浜田 おめでとうございました。

●解説のポイント
詠いだしにハッとする
手術を受けた母の出来事を淡々と読んだ
芒の絮が風に吹かれて飛んでいくのか否か
自分に背を向けて芒を見る母の映像が再生される
母の様々な心情が後半の映像に乗っかっていく
種子を飛ばすための「絮」に命を繋ぐ
三段切れ・字余りの高難度の型と内容が似合う
勇気をもって挑んだと手放しで褒めたい

添削なし



2位◆『黒ぶどう 甘やか母の 背にほくろ 森口瑤子
※季語は「黒葡萄」。中七の途中で意味が切れる句またがり。

馬場 すてき。
梅沢永世名人 なるほどね。

【本人談】
頂いた黒葡萄が甘やかで色っぽい。母親は全く色気もなく女っ気もない母親だったが、背中にほくろがあり、子どもながらにそのほくろが「キレイだな」と思っていた記憶とリンクした。

梅沢永世名人 いや、その通り(笑)。
浜田 「その通り」はおかしいやろ。
千原永世名人 そういう風に書いてるんですから、そらその通りでしょ。
梅沢永世名人 いやいや、でもね。本当にそういう風に色っぽい俳句ですよ。あ~素晴らしい。
千原永世名人 これは娘さんがお母さんを詠むというか、男は詠めないですね。絶対に詠めないです。これ素晴らしいと思います。

夏井先生 
直接的に「母の背」という言葉を使っている。
こんな風にも読めるお手本のような句だと思う。
最後「母の背にほくろ」と持ってくることで、「ほくろ」と「黒」がちゃんと響き合うのは、分かってやっている。
大事なのは「甘やか」がこの位置にあること。
当然黒葡萄が甘やかだという意味だが、ここで意味が切れて、母の背にあるほくろにもどこか甘やかな気分を持っている。
この位置に「甘やか」と置いているのが上手い。
ここから後はささやかな表記の効果の問題になる。
「ぶどう」と平仮名で書いているが、むしろ「葡萄」と漢字で書いた方が蠱惑(こわく)的(→人の心を惑わすこと)な印象を得る。
漢字が続くためここは「あまやか」と平仮名にする。
ここの表記を大事にすると、この句全体として得だと思う。
これはとても良い素材だった。

浜田 はい、おめでとうございます。第2位でございました。
梅沢永世名人 素晴らしい。

●解説のポイント
直接的な「母の背」で詠んだお手本のような句
「黒」「ほくろ」が意図通りに響き合う
「甘やか」が中七にあるのが重要
表記を工夫すると蠱惑的な印象を得る

添削後
 やか母の 背にほくろ



3位◆『発熱の母 月光の 車椅子 犬山紙子
※7音の途中に意味の切れ目がある句またがり。

千原永世名人 かぁ~、ええな。

【本人談】
母の介護で車椅子に乗せてた時期があった。母が発熱をして病院に連れて行く際、外で車椅子を押していた時、月の冷たい青い光が癒してくれている気がしてその時のことを詠んだ。

梅沢永世名人 いや、良い俳句ですね。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 これが3位ってことは相当1位・2位は凄い俳句を詠んだと思いますよ。これがもしか3位になった要因は「母の背中」というお題なので、これだとちょっと背中というのが読みにくい。
本人 ああ~。
梅沢永世名人 だから3位になったかな。
千原永世名人 でも「発熱の母」で(車椅子を)押しているという風に僕は読めますけどね。だからそこにはお母さんの背中がっていう風に。
梅沢永世名人 うん、でもね~。

夏井先生 
今回のお題は本当に難しいと思う。
実際、こういう句に出会うとみんな力をつけてきたと嬉しく思う。
「発熱」で母を救急病院に連れていっている場面だと思う。
「熱」と「月光」が出てくると「熱」を冷ます・なだめるかのように冷ややかな月光が包んでくれていると。
最後「車椅子」で状況・映像がしっかり見えてきて、思いも伝わる。
その意味でこの句は良いが、とにかく順位をつけないといけない時、おっちゃんも言っていた「背」というテーマ性で3位にするしかないという感じだった。
そこを外せば、キチンと出来た良い句だった。
もう1位~3位は、ホントに甲乙つけ難い良い作品が並んでいる。
直しは要らない。

本人 嬉しい。
梅沢永世名人 素晴らしい。
浜田 今、梅沢さんおっしゃった(通り)…。
梅沢永世名人 私も素晴らしい(笑)。(ジュニア名人へ)ここが私とあなたの…。
浜田 (遮って)続いてまいりましょう。

●解説のポイント
母を救急病院へ車椅子で連れていく場面
「熱」を冷ますかのように「月光」が包む
順位決定の際「背」のテーマ性で損をした
1~3位は甲乙つけ難い作品

添削なし



4位◆『薄月夜 母の電卓 スタッカート 森迫永依
※「スタッカート」は音楽用語。短く音を切って楽器を演奏する手法。

梅沢永世名人 うん。

【本人談】
母が家でよく家計簿をつけていて、領収書を整理して電卓を叩いているが、毎日結構つけている。印象に残っているのが、薄月夜の凄く綺麗な中で、母が居間に座っていて寝室から見た時に、ボンヤリした中で母の電卓(を打つ)音だけが聞こえてくるという状況を凄く覚えていて、それを詠んだ。

梅沢永世名人 いや、「スタッカート」。よくこれを入れましたね、音楽用語。大したもんだ。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 師匠はね、一応「夢芝居」でミリオンセラー飛ばしてるんでね(笑)。だからよくこの「スタッカート」よく分かりますよ。いや、大したもんだ。
本人 ありがとうございます。
浜田 アッハッハッハ。
千原永世名人 いや、あの歌めちゃくちゃネットリしてるじゃん(笑)。全くスタッカートの逆やねん。
梅沢永世名人 いえいえ、一応私のことも言っとかないとね。
千原永世名人 いや、この電卓がスタッカートというのは非常にいいと思いますけど、今話を聞いたら実際そうだったんだろうなと思いますけど、これ僕読んだ時は、季語が動く(→他の季語でも代替できる)ような気がするなとは思いましたけど。

夏井先生 
中七下五のフレーズが良い。「母の電卓スタッカート」と。
詠んだ瞬間、家計簿や商売の経理などを思う。
この「スタッカート」で勢い・明るさのイメージが最後に残るのが良い。
そうなると、ジュニアさんの仰ったことと全く同じこと(→季語が動く問題)を私も思った。
「薄月夜」(※雲がかった薄い月明かりの夜)と空気がボンヤリ月に掛かってうっすらした月明かりの夜のこと。
「薄月夜」から「母の電卓」にくると負のイメージを持ってしまい、そういうところに着地するのかと思うが「スタッカート」とくる。
そうなると、「薄」の一字と(明るい)「スタッカート」が微かに損をする。
単純に考えれば「星月夜」とすれば、月は出てないが星だけで月夜のように美しい感じで明るさが出てきて、「スタッカート」が生きてくる。
「スタッカート」の歯切れの良さを表現するなら、さらに動きをつけることもできる。
「星流る」という季語がある。星が飛んで流れていく。
時折星の飛ぶ夜に母は電卓をスタッカートで打っていると。
こうすると、作品としても締まってくる。
そこがとても惜しかったと思う。
あなたはこういうフレーズが作れる人で、ここから後どこまで伸びていくかとても楽しみにしている。

浜田 どうですか、こうやって直されると。
本人 なんか私は「星流る」とかを入れてみたんですけど、なんか違うなと思ってすぐにこう弾いてしまったんですね。
なのでまだちょっと、季語に対する勉強とか、季語とその…他の十二音との掛け合わせのこととかがまだ理解できてないんだなと凄く勉強になりました。
千原永世名人 真面目か!(笑)
浜田 かまへんやないか。
梅沢永世名人 良いんじゃないの。
真剣に向き合ってるんだから、良いんじゃないの~。

●解説のポイント
中七以降で家計簿や商売の経理を思う
「スタッカート」で勢い・明るさのイメージが残る
「薄」の負のイメージと「スタッカート」が損
明るい「星月夜」や「星流る」の動きで作品が締まる

添削後
月夜 母の電卓 スタッカート』
 母の電卓 スタッカート




5位◆『母の背は 硬く娘を 待つ秋夜 中田喜子

【本人談】
母は魚市場の仲買人で、夜9時には完全に寝ている。私が友達と会う日に限って、母がソファーに座ってどんなに遅くても待っている。ただ、小言も言わずにただ座っているだけで、それが怖くて私はそそくさと母の横を通ってふっと振り返ると母の背中が「喜子!」という感じで強張っているという俳句を詠んだ。

千原永世名人 多分こういうことを詠まれてる俳句はあると思うんですけど、「背は硬く」って。これ僕は凄いいいなと思いますけどね。僕はこの「硬く」って詠めないですね。その状況。
梅沢永世名人 いや、非常に良い俳句なんですけど、これ…もしかですよ。中田さんの心情を詠んだっていうんだったら、これ…第三者から僕らが見てる俳句に読めちゃうこともあるんですよ。
千原永世名人 なるほど。
梅沢永世名人 それで5位になったのかなあと。

夏井先生 
もう偉い、永世名人たち。ホント偉い。おっしゃる通り。
2人が指摘した合わせ技でこの句を全部言っていた。
うわ、学んでるんだこの人たち。ささやかな感動を今覚えてしまった。
梅沢永世名人 ありがとうございます。
夏井先生 良いところはやはり「硬く」。
あの背中を「硬い」と。
自分の心情を込めて「硬い」と感じ取っているところがとても良い。
「硬く」と続けても良いが、せっかく良い言葉なので「硬し」とハッキリ言い切った方が良い。
「母の背は硬し」。
そして、もう一つは「娘」。
これだと第三者が「このお母さんは娘を待っている」という句として読む。
今の話を聞けば、母は私を待ってくれていると。それを入れるだけ。
本人 はあ~。
夏井先生 「むすめ」なら3音かかるが、自分のことなら「吾子」の「吾(あ)」と1音。
梅沢永世名人 (ジュニア名人を指さす)
夏井先生 「吾を待つ」の後、ここの押さえ。
「秋夜の背」ともう1回リフレインする。
千原永世名人 え~!
梅沢永世名人 いやいやいや、そりゃできないよ。
千原永世名人 うわ~。
浜田 なんなん、自分らもう。
夏井先生 背をリフレインで思いが深くなっていく。
これやってたら今日は悠々(決勝進出)だった。

浜田 中田さんどうですか?
本人 はい!「待つ秋夜の背」、もう~先生素晴らしいです。
夏井先生 アハハッ。

●解説のポイント
「硬く」に自分の心情を込めた点が上手い
「硬し」と明確に言い切るべき
「娘」なら第三者目線に読めるため「吾」とする
「背」のリフレインで思いが深くなっていく

添削後
母の背は 硬を待つ 秋夜の



6位◆『秋湿り 添い寝の母の 生返事 馬場典子
※「秋湿り」は秋の長雨で空気が湿ること。

犬山 素敵。

【本人談】
小学生の一時期、寂しかったのか母の所で一緒に寝ていた。話を聞いてくれることもあったが、割と生返事しか返ってこない母親の疲れた感じや自分の寂しい感じを季語に。

梅沢永世名人 季語変えた方が良かったかな。
浜田 あ、そうですか。
梅沢永世名人 「秋湿り」。この季語じゃない方がいいかもしれない。
千原永世名人 なんかその~、詠まれてるテーマが凄く大きなトピックとかじゃなくて、本当に日常の、でもなんか「あの時の忘れられない」みたいなところを詠んではんのは凄いいいなと思いますけどね。

夏井先生 
書こうとしたことは分かりますし、内容に共感も持てる。
季語の問題だと私も思う。
おっちゃんは人の句のことはホント良く分かる。これは凄いなと思う。
「秋湿り」は多分、自分の切ない寂しい気持ちを季語に託そうとしたのではないか。
そうなると、「湿り」「生返事」の気分が少し近い気もする。
季語を別のものにすれば「添い寝」が書かなくても分かる。
それを少し添削でやってみたい。
「秋湿り」ではなく、若い人には経験がないかもしれないが「蚊帳(かや)」は経験したことある?本人 あります。
夏井先生 「秋の蚊帳」と言えば「添い寝の」と書かなくて良い。
母との距離がこの季語で言えてしまう。
あなたが仰ったように、テーマ「背中」をずばり書くこともできる。
「母の背中の生返事」。
梅沢永世名人 あ~いい。
夏井先生 そうすると、蚊帳という湿度のある空間で生返事が聞こえてくる。
あなたのやろうとした意図は、こういう季語の方が実現させてくれるのではないか。

本人 作品としての創作が足りなかったかな~と。

●解説のポイント
書こうとした内容に共感が持てる
季語が動く問題で「湿り」との気分が少し近い
「秋の蚊帳」なら母との距離が見える
意図を実現できる適切な季語選びを

添削後
秋の 母のの 生返事



7位◆『手羽を煮る 小さき背中や 秋彼岸 千賀健永(Kis-My-Ft2)

中田名人 あ~。

【本人談】
母と喧嘩した時の思い出。喧嘩したままで、その後に母が(台所で)料理をして(鶏肉の)手羽を煮ている背中を見た時、少し小さく見えた。最後に「秋彼岸」を付けたのは、寂しい気持ちで付けたが母の死(の予感)を感じて「優しくしなきゃいけないな」と。読み手にとって変わる句かなと思った。

千原永世名人 「秋彼岸」って何となく誰かが亡くなられて、亡くなった人が好きだった手羽を煮て(お供えをして)いるとか、そういうことかなって僕は思いましたけど。
本人 そっすよね~。
梅沢永世名人 本当に人の俳句も沢山読まないと。「小さき背中」なんて一杯ありますから。くっさるほど(笑)。
千原永世名人 味方だったんじゃちゃいますか?(笑)急に。
梅沢永世名人 こういう俳句を作られるとちょっと困ります。「小さき背中」は沢山、くっさるほど(笑)。
本人 厳しい。

夏井先生 
いや、そういう意味なのかと今聞きながら思った。
年を取っていく母の背中が小さくなったと。
そういう表現は掃いて捨てるほどある(笑)。
「小さき背中」はまず危ないんじゃないかと思ってほしい。
ジュニアさんと全く同じように読んだ。
「秋彼岸」を使うことで、亡くなった方の好物を煮るという読みが誘導される。
別に誰も亡くなってないんでしょ?
本人 亡くなってないです。
夏井先生 亡くなってないよね。
そしたらこれはやっぱり、これはダメ。
ハッキリ「お母さん」と書いた方がいい。
「母よ」と書いて詠嘆すれば前半が整う。
あとは残った音数でいかようにも持っていける。
例えば、台所のことを「厨(くりや)」という。
「厨の」にコオロギを指す「ちちろ虫」と書く。
コオロギが台所の隅っこで寂しそうに鳴いている。
別の季語を使うならどんな季語でもやれる。
本人 もう原型ないな。
夏井先生 ないけどまあ聞きなさい、あんたも(笑)。
降ったり止んだりする雨を指す「時雨」を用いて、「時雨の過ぎる窓」とすれば、寂しそうな光景になる。
本人 確かに。
夏井先生 ここから後は、自分で今晩作りなさい。

本人 …はい(笑)。

●解説のポイント
老母の小さな背の表現は掃いて捨てるほどある
季語で亡き人の好物を煮る意味に誘導される
「母よ」と人物を出してみる
コオロギが台所の隅で寂しそうに鳴く光景など
後半は今晩ちゃんと自分で作って

添削後
手羽を煮る 
『手羽を煮る 




8位◆『門付けの 母に背負われ 蚯蚓鳴く 立川志らく
※「門付け」(門付け芸人)は大道芸の一種。家の前に立って三味線などの芸を行い祝儀を貰う芸人を指す。

【本人談】
門付け芸人の子どもの姿を映画で見たことがあり、それが凄く印象に残っていた。私の母親が長唄の三味線弾きで、それが合わさって秋の寂しさ、三味線の音色と、蚯蚓が地面から鳴いているというこれを合わせた良い句だと思ったんだけれども。

梅沢永世名人 これはね、やっぱり落語家さんと役者ぐらいしか読んでも意味が分からないと思うんですよ。(ジュニア名人に)あのね、門付け芸人って昔いてね。瞽女[ごぜ/盲目な女性芸能者]とかみんなそうなんだけど、玄関で三味線弾いて歌ったりするのよ。で、まあ祝儀貰って生きてくって人たち。門付けって。
千原永世名人 じゃあ、今度昇吉さんの落語会で門付けやられるんですね(笑)。
梅沢永世名人 やるしかない。
千原永世名人 ねえ。

夏井先生 
素材は決して悪くない。
まず「門付けの母」と「蚯蚓鳴く」の季語の取り合わせも悪くない。
「蚯蚓鳴く」(※秋の夜の静けさを表現した季語)は、秋の夜の静けさの中、何かジーっと鳴いているような音が聞こえて来る時があり、俳人は何が鳴いているか分からないが土の中で蚯蚓が鳴いていると決めつけ、俳諧味のある季語にした。
「背負われ」が無理やりテーマに沿わせるために入れたのではないかと思わせる感触がしてしまう。
「母に」ではなく「母よ」と詠嘆すれば、母の背中を後ろから見る子の視点が見えてくる。
敢えて背負われなくても十分。「門付けの母よ」。
問題点がもう一つある。
前半がこういう光景だとしたら、昼間によその家の前の光景だと思う。
「蚯蚓鳴く」は夜の季語になり、時間軸をどう合わせていくかという問題が残る。
これは昼のことと敢えて「真昼」と断った方が良いと思う。
「真昼を鳴く蚯蚓」と持ってくる。
昼間でも静かな時にジィ~っと鳴く声が聞こえてくる。
蚯蚓は夜に鳴くものだが、生きるために昼間に芸をする母の何とという思いが、「鳴く蚯蚓」の季語にも滲んでくる。
これやってたら1位2位を争うことになっていた。

浜田 さあ、志らくはんどうですか。
本人 え~。昇吉の会で呼び込みをやって、昇吉に背中を見せます(笑)。
浜田 (思わず2回机を叩く)

●解説のポイント
素材は決して悪くなく季語との取り合わせも良い
秋の夜の静けさを思う俳諧味のある季語
「背負われ」が無理やりテーマに沿わせた感触
昼夜の時間軸が合わないのも問題
「母よ」「真昼」を入れて季語も語順を逆に

添削後
門付けの 母 鳴く蚯蚓



浜田 さあ、というわけで。
清水アナ はい、決勝進出はこの4人で決まりました。
浜田 さあ、決定でございますが、こちら戦わなきゃいけないお2人ですが、さあどうでしょう。
梅沢永世名人 まあ大きな胸を出して受け止めてあげましょう(笑)。
浜田 「大きな胸を出して」っていう言い方おかしくないですか?
千原永世名人 胸を貸す。
梅沢永世名人 そういうことです。
千原永世名人 胸出すんですか?
梅沢永世名人 出すも貸すもどっちでも良いじゃないですか。
千原永世名人 いや違いますよ。
梅沢永世名人 束になって掛かってらっしゃい。


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コメント

よもやよもや…

タイトル戦決勝前日に何ということか…
プロデューサーの水野さんのポストだと完パケしてしまったのでやるにしても収録日テロップを入れるぐらいでしょうか。
プレバトは皆藤さんや水彩画の光宗さんのように体調不良による休業に関してはゆるいのですが、東国原永世名人のような自己都合のお休みからの復帰が少ないはもちろん、案件が案件だけに復帰しても戻って来られるか心配です…
重ね重ね本当に残念。

本選出場陣について

初めに、「通りすがり」さんに物申すならば、中田さんの文語に近い表現についての表記については全くその通りだと思った次第で、自分は浅いと思った次第です。

浅くて薄っぺらのまま4位以上の句についてコメントをしていきます。

4位 森迫さん
季語と措辞がハマるかハマらないか。バランスは良いかという所から見ると、やはりスタッカートと薄月夜が合わない点でしょうか。

一方、三段切れの句としては一位の句よりも優れていると思います。上五で「薄月夜」が示され、ここに「母の電卓スタッカート」とくれば、薄月夜の日に母親が電卓を短くかちゃかちゃと弾いていることが容易に想像させられます。動作の主体が母だと一目見て分かります。
こういう三段切れなら簡単に許容できるかな。

3位 犬山さん
犬山さんがタイトル戦で発表した「日盛りや母の二の腕は静謐」を思い出した句です。自宅での介護の経験から生まれたという句でした。
この句が今回の句の背景にあるのかと思うと、この句は「月光の下で車いすを押していて、座っている母の背を見たのか」と思えます。
しかし、たとえば長い年月母親を特養等に預け、施設から、母が発熱したという連絡を貰い駆け付けた・・・・・・そんな経験がある人もいるかもしれない。
そうなると、例えば、発熱している母親がベッドで横たわっている。ベッドの傍らには車いすがあり、それを無情な月光が照らしている、そんな風にも読める。こんな読み方も成立するけど、これだと、母の背中、という兼題からは離れていきます。
経験から言うと、発熱の母とベッドの傍らの車椅子、そして月光という組み合わせ、自分の経験談でもあったりするので。。。

2位 森口名人
黒葡萄の甘さと母親のほくろの対比により、この句に出て来る句のお母さんとはどんな人だったのかと想像させてくれる句でした。
母の背中という兼題写真に対して真っ向勝負を挑んだ感もあり、この点は大変良かったと思います。表記の面についての夏井先生の指摘は確かにな、というところ。
もしも、これが男性の詠み手から提出された句だとしても、それはそれで面白そうではありますね。

1位 昇吉さん
下剋上とでも言うべきで、初めは、「お!」となった句。
しかし、番組放映から日が経つと、この句はテーマと詠み手の性別に随分助けられた句だと感じるようになりました。
上の「乳房切除す」。かなりインパクトのある言葉ですが、これだけでは誰が切除したのか分からない。ここで切れて、「母よ」となる。ここで、

① 乳房を切除したのは自分で、「乳房を切除した。お母さん、」と語りかけているのか
② 乳房を切除したのは母親で、「乳房を切除したお母さん、」と語りかけているのか

ここでテーマと詠み手の性別が助けとなって、「母親が乳房を切除した」と補完されたと思います。

ただ、先に示した①と②とで、芒の先にある絮に託す心情って大分違ってくるのではないでしょうか?

②については、番組でも取り上げられていましたが、もしも、①だと取られたら、「絮」に何か「母よ」に後悔や申し訳なさが込められているのではないかと思ったりします。

①、②のような読みのふり幅を生じさせない点では、4位、森迫さんの句の方が三段切れの手本とはなると思った次第です。

ただ、昇吉さんが、本選でも上位を引っ掻き回す展開(いわば、ヒール役)になるのはちょっと期待してもいます。

10/6予選拙評

1位
御大は「心情に寄せて失敗」が多いが、昇吉さんの場合は「理屈に偏らず感性と心持ちを信じるほうが強い」傾向がある。今回もそういう句。個人的にはこの人の添削への態度は気に食わんところも多いのだが、今回の句はそれを抜きにして言葉の力を感じさせるもの。「絮」に目を置くのは母であり、母の目線に気づいた子でもあろう。心理状態に合った情景の切り取りが巧い。

2位
同性だからこその観点、感性を活かした句。推敲した上でのよい距離感の取り合わせが心地よく、語の置き方も計算されたもの。男性がコレを鑑賞してあれこれ感想言い出すのもなんか助平な感じもするが。

3位
犬山さん、前回の「こびりつく黒」といいなんかまたつかんだ感。テーマとのつながりを重視されこの順位、となったが句の形としては遜色なく(添削なし、という意味では2位扱いでもよかったのでは)、どちらかというと1位との「病院」かぶりでの印象点の差が大きかったか。しかしながら一般の句として参考とすべきは1位ではなくこちらであろう。

4位
ギャップを作ろうとした意図もあるのかもしれないが、結果として季語よりもフレーズが強くなってしまったのが惜しい。「季語を主役に」「言葉の質量バランス」というのは夏井評価の基底であり、殊タイトル戦・コンクールにおいてはそこを軽視してはいけないところ。今回は5位以下との差がやや大きく滑り込んだ形。

5位
(他の方のコメントにかかる部分もあり恐縮ですが)視点の問題として、主体を自身に取った方が力を持つことはいうまでもない。が、そのための言葉選びが難しい。「硬し」と言い切るとすれば文語であるから「娘」を単に音数をそろえて(口語的である)「私」とできない、素直に置き換えるとして「我」か「吾」になるところで、音数の整えとして2音送って「の背」を押して反復の効果を重ねた添削となった、と思われる。「我」として
 母の背は硬し 我を待つ秋の夜/秋夜よ
としても整うが、句としてのステップアップを見せることを選ばれたか。

6位
ここでの「近い」というのは、少し因果関係が漂うことも含まれていそう。つまり「秋湿りに気も沈んでいる母だから、私の話にも生返事なのか、私の心も湿ってしまうよ」と、本人だけでなく母の気持ちをも反映した「秋湿り」と読まれると少し説明的なフレーズになってしまい季語として立ち位置がずれてくる。その意味でモノを見せる添削は妥当。

7位
「小さき背中」の凡、「秋彼岸」の解釈の浅さ(おそらく単なる時期・日付として見ていた)など、9段としては稚拙なミスが多かった。事務所のこともあり忙しかったかな、明らかに練れていない句。

8位
「門付け」については「分からなければ調べりゃええやん」派なのであまり気にならず。だが、わかった上でいろいろ不自然。「幼い子を背負って辻に立つものなのか、子が騒いだらすべて台無しではないか」とまず思い、「日は残ってるよな、蚯蚓鳴くのか?」と思い、「背負われてるとして母の芸の声が近いよな、蚯蚓の声聞こえるか?」と思い。個人的には7と8はかなり競っていた(評価の優先度をどこに置くかの差)と思われる。添削により少し距離が生まれ、不自然さは解消された。このあたり流石である。

1-23-4-56-78、くらいの差はあったかな、と。1位は抜けてよく、7・8は抜けて空回り、といった印象。

金終戦予選 8~5位

8位 志らく名人
これは頭で作った俳句ですね。
まず門付け。私は学生の頃、日本の芸能史に絡むことを論文にしたことがあったので知っていたが、言ってみれば芸の飛び込み営業や押し売りみたいなものだ。パッと浮かんだのを3つ挙げれば萬歳、獅子舞、傀儡師。今回の句の説明では江戸時代の女太夫だろうか。他にも芸の内容はたくさんあるが、芸を人の家の門などの前で行い、その家から金銭を貰う行為であり、行っている人そのものを門付けと呼んだ。
芸の質が良いと限らず、いや、むしろ芸にも満たないことをして金銭を貰う輩も多かったらしい。元々、門付けは「祝い言」(ほかいごと)を人の家の前で唱えて報酬を得ていた人々が起源だという。これが、いつしか「乞食」と書いて「ほかいびと」と呼ばれるようになった。
こんなことを知っていると、この句が何か惜しいなぁと。

「門付けの母親に背負われ蚯蚓の鳴き声を聞いた」
1 門付けが「行為」ならば、女太夫の母が三味線を弾いている母の背に背負われているさなかにミミズの鳴き声を聞いた……三味線の音が鳴っているのにミミズの鳴き声が聞こえるのか?
2 門付けを職業的なものと捉えるなら、三味線弾いて色んな家をまわった後、大して儲けも無かったらしく、とぼとぼ帰る母に背負われているさなか、ミミズの鳴き声を聞いた

最大限好意的に捉えるなら2だけど、門付け自体、良く知らない人が多い単語だろう。1と捉えられれば元も子もないわけで。

というか、10位の句からしてこんなに文を連ねてどうするのかと。

もっと簡潔に行きます

7位 千賀名人
中七の小さき背中という言い回しが使い古されている感が否めないのと、季語が死を連想させられるのが痛い。私は、手羽先を煮る亡き母の小さい背中が見えたのかと思ってしまった。

6位 馬場さん
冷えていてやりきれない、しかも家の中で感じやすいのが「秋湿り」だそうだ(角川大歳時記)
気分が近いと言われはしたが、冷えた中で湿気も感じる寝床でお母さんに生返事しかしてもらえないというのは大変共感が持てる句ではあった。共感がもたらされる分、季語が近いということもあり、あるあるという句に留まってしまったのかもしれない。
嫌いではない句だ。

個人的には6位と7位の違いはかなり差があると思えた。

5位 中田名人
「硬く」を「硬し」とするのには大賛成。一方、添削について、「娘」を「私」に変えるだけでいいんじゃね?と思った。いい加減な意見だけど本当にそう思った。

長くなりましたので、本選出場を決めた方たちの句についてはまた後日。

昨日のプレバト

昇吉さんが予選参加者中一番段位が低い中での1位を獲得し、名人最高位(7段~9段)勢(千賀くん、中田さん、志らくさん)が予選敗退を喫するといい、大波乱の連発でしたね。
昇吉さん、まさに下剋上!!

追記
今回挑戦した全員分の全俳句一覧を更新してください‼️

1位通過 昇吉
またしても志らくを蹴落とす快挙にして、凄絶な母の人生を見せつけた一句。最初は「切除の」「切除せる」とか三段切れを回避すべきかとも思ったが、乳房手術の臨場感と芒の絮に託す生命感とのガチンコを図るにはこの型がぐっとくるのだろう(紛れかもしれないが)。

2位通過 森口
女史の安定感も目を見張るものがある。ぶどうの黒々した実と小さな黒子の対比が巧い。「あまやか」は確かに平仮名表記がしっくりくる。

3位通過 犬山
「月光の車椅子」という祈りのこもった季語が魅力的。母の背中という兼題が見えづらいというより、病の母という発想力で若干負けた感があった。

4位通過 森迫
「電卓がスタッカート」を刻むのは大変面白い発想だったが、「薄月夜」という薄い季語がそれを受け止めきれなかった。フレーズに合う季語を把握せねばならないというのは、私達も教訓にしていきたい。

5位 中田喜子
「母」と「娘」が両方出たことで、三人称視点になり臨場感が弱まってしまった。個人的に添削で「背」を二回出したのはちょっと過剰演出を感じる。夏井添削の悪い癖と思っている。
(自己添削)
わたしを待つ母の背硬き秋夜なり

6位 馬場
「秋湿り」と「生返事」の気だるさが近すぎるということで評価が伸びず。
個人的には「添い寝」が「母の背中」と繋がりにくいと思った。添い寝は親子が向い合うか、子の背に親が添うイメージなので、親が子に背を向けている風景があまり思い浮かばない。それはもうただ寝てるだけではないのか?

7位 千賀
久しぶりのボテボテなゴロ。
「母の背中が小さく見える」という類想ど真ん中に加え「秋彼岸」という兼題に釣られたような杜撰な季語選び。名人最高位らしからぬ凡句に終わってしまった。

最下位 志らく
文句なしのビラ配り決定。
「門付け」といういきなり聞きなれない言葉から始まり「背負われ」でさらに良く分からなくなるという、志らくらしい独善的な印象の句。「蚯蚓鳴く」という静けさの季語を敢えて日中に用いる感覚は良かったのだが……

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