2023年9月7日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※18日に全て更新しました。大変お待たせして申し訳ありません。
→プレバト!!
公式X(旧Twitter)/
公式インスタグラム挑戦者→斎藤司[4],和田アキ子[8],松倉海斗[初],秋元真夏[2],勝村政信[16],皆藤愛子[38],梅沢富美男[203] ※数字は挑戦回数●お題:エレベーター

清水アナの俳句査定(プレバト!!公式Xより)
清水アナの俳句 | 夏井先生評 |
残暑の夜エレベーター点検中 | 凡人です。歩いて上がってきてね。 |
🔷
挑戦者語録和田アキ子 | ○2△4×1 | ※初回は才能ナシで8回目の挑戦。結果がどちらに転んでも涙を流しており、「今でも涙出そう」と大緊張で挑む。 「今日は3位までには絶対入りたい。ダメでも良くても緊張するんです」 |
秋元真夏 | ○1 | ※初回才能アリだったプレッシャーに打ち勝てるか。 |
斎藤司 | △1×2 | ※初回は才能ナシだったが、NHKの俳句番組で夏井先生に褒められ「自信をつけて戻ってきた」と主張。しかし梅沢に「夏井先生はNHKの番組は甘いからね」と咎められる。さらに『よみ旅』で夏井先生と共演するローランドの名前が浮かばない梅沢は「イケメンの…あの、あの…」とテンパってしまう。 |
松倉海斗 | 初挑戦 | ※2022年に世界メジャーデビューを果たしたTravis Japanはダンス大会で全米4位の実力派グループ。「作詞・作曲が趣味なので言葉をうまく出せるんでないかな」と自身の表情。 |
★ランキングシートの分布は
才能アリ2名、凡人0名、才能ナシ2名。
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位72点 | 斎藤司 (トレンディエンジェル) | 小さな手2階ボタンに届く秋 | ちいさなてにかいぼたんにとどくあき |
2 | 才能アリ2位70点 | 和田アキ子
| NHKホール迫り上がる良夜 | えぬえいちけーほーるせりあがるりょうや |
3 | 才能ナシ3位30点 | 松倉海斗 (Travis Japan) | 秋涼しハンカチ社員笑み浮かべ | あきすずしはんかちしゃいんえみうかべ |
4 | 才能ナシ4位10点 | 秋元真夏
| 若煙草纏いし君に気もそぞろ | わかたばこまといしきみにきもそぞろ |
5 | 5級で現状維持 | 勝村政信
| この階で降りればいいのか鬼灯め | このかいでおりればいいのかほおずきめ |
6 | 名人5段へ1ランク昇格 | ★皆藤愛子
| 閉ボタン連打秋夜のエレベータ | へいぼたんれんだしゅうやのえれべーた |
7 | 特別永世名人なのにガッカリ… | ★梅沢富美男
| 白桃や車いす用ボタン押す | はくとうやくるまいすようぼたんおす |
順位発表順:3位→2位→最下位→1位→編集後記●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ72点 斎藤司(トレンディエンジェル)『小さな手 2階ボタンに 届く秋』秋元 あ~。
和田 可愛い。子どもね。
【本人談】娘が5歳になったが、昔はエレベーターを待ってる際に下と上の外のボタンすら押せなかったのが、もはや中に入って2階(のボタン)まで押せるようになったのを見た時、グッと成長を感じたという。
和田 ホッコリしますよね。
本人 ありがとうございます。
和田 また泣きそうです(笑)。
夏井先生 上五の「小さな手」は子どもを表す表現としてはよくある。
そのため、ベタな感じで終わるのかと一瞬思うが、中七下五の展開が上手だった。
普通、俳句で数字は漢数字で書くのが定石だが、あえて(算用数字の)「2」にしている。
「2」の映像がこの句は大事なのではないかと。
そして、エレベーターと書かずにエレベーターを思わせ、しかも具体的な映像を描く。
ここら辺は手馴れている。
そして「秋」という季語がここでゆっくり出てくる。
ということは、春・夏の間は手が届かなかったが、秋になって急にスッと背が伸びたのかもしれない。
子の成長を喜ぶ親の思いが、露骨ではない形でゆったりと書けてあり、季語も主役に立っている。
なんと温かいほんのりした良い句だろうと思い、主役があなただったことにただ驚いている(笑)。
直しは要らない。
本人 ありがとうございます、先生。
●解説のポイント |
「小さな手」のベタで終わらず後半の展開が上手 俳句は漢数字で書くのが定石だが「2」が機能 エレベーターと書かずに思わせる 具体的な映像を描くのも手馴れている 春夏は手が届かなかった子の成長を喜ぶ親の思い 露骨ではない形で季語も主役に なんと温かいほんのりした句 |
添削なし
時候「秋」とお子さんの手がエレベーターのボタンまで届くようになった成長を描いた定型句。「2階」と具体的な数詞で場面を確定させたことで、エレベーターでの出来事だと瞬時に理解できるつくり。もののあわれを感じるどこか切ない季節でもある「秋」に、子の成長を喜ぶ感情と共に、親の手を離れていく微妙な心境が表現されたのはご指摘の通りです。非常にアットホームな雰囲気を感じる親目線の俳句で、「小さな」「秋」が例の童謡と微妙にシンクロします。「小さな手」は「小さき手の」ともできますし、寸詰まりな「2階ボタン」が聞き慣れない表現ですが、一種の音のぎこちなさも子の成長を思う親ばかな雰囲気の演出に一役買っているのかもしれません。
◆2位
才能アリ70点 和田アキ子『NHKホール 迫り上がる良夜』斎藤 うわ~なるほど。
【本人談】プライベートのことで申し訳ないが、秋の10月から始まる(自身の)ラストツアーコンサートのことで頭がいっぱい。(舞台中央の)エレベーターで上がるというのを「迫り上がる」とし、気持ちと一緒にセリも上がるというのを入れて、場所が…(→嬉しさに泣きそうになる)。
浜田 もうよろしい、よろしい。分かりました。
本人 (今にも泣きそうな声で)場所が…初日がNHKホールなんですよ。だから…名前出すのあれかなと思ったけど、そのまんま「NHKホール」って入れて…。
浜田 声だけ聞いてたらオッサンが泣いてるみたい(笑)。
秋元 そんなことない。
皆藤名人 エレベーターというお題からここに実体験に持ってこられるのが本当に凄いなと思いました。
梅沢永世名人 いやもうこれ素晴らしい俳句ですよ。
本人 ホントですか?
梅沢永世名人 だって「NHKホール」っていったら全部場面が分かりますよね。これ、
1位じゃないのがおかしいくらいだ。本人 (即座に)
梅ちゃ~ん!(笑)、梅ちゃんありがとう。
たかし 急に何?
浜田 何なん、今の?芝居やってるみたいや(笑)。
夏井先生 これは固有名詞をとても上手に生かしたタイプの句。
「NHKホール」が出た瞬間、映像は完全に確保出来る。
「迫り上がる」が何かと思うが、先に「NHKホール」があるため、舞台の上がってくるセリだとほとんどの人が想像でき、そこに臨場感がある。
最後の「良夜」(※十五夜、中秋の名月の夜のこと)という着地。
NHKホールの(建物の)中のセリの舞台にいて、最後の「良夜」で外の季語という部分で、評価が分かれる所はある。
ただ、NHKホールを満月の美しい月が包んでいる。
自分がそこにせり上がっていく実感や感情を持って季語を置かれたのだと読み解き・鑑賞は出来ると思う。
さらに、この満月・良夜が自分をスポットライトのように照らしているかのような感覚で、舞台をずっと上がっていくのではないかと。
そう思うと、「良夜」は実の季語であり、作者の心の模様を映す季語でもある。
この難しい季語をよく扱ったなと、これは褒めたい。
このまま味わいましょう。
本人 良かった。
斎藤 凄い臨場感が。
●解説のポイント |
「NHKホール」の固有名詞を上手に生かした句 舞台のセリだと想像できて臨場感がある 屋内のフレーズと屋外季語で評価は二分 NHKホールを満月が包んでいる 自分がせり上がっていく実感や感情 良夜のスポットライトが照らす感覚 実の季語+作者の心の模様を映す 難しい季語をよく扱ったのを褒めたい |
添削なし
秋の天文「良夜」とNHKホールのセリの舞台の動作を詠んだ破調の17音。芸能人ならではの視点と経験が活きた一句で、個人的にはこちらが1位でも良かったでしょう。本人も語っていましたが、今年で自身最後のホールツアーを催す和田さんは眼瞼下垂や膝の関節手術など、近年は満身創痍になりながらご活躍されています。本来「せまり」と読む「迫り」ですが、「迫り上がる」は特殊な読み方で、皮切り公演の「NHKホール」の固有名詞も舞台人ならではの書き方。8月15日の月を指す「名月」の傍題「良夜」も青白いスポットライトを浴びた舞台を思わす虚の季語として心情表現も効いています。屋内・屋外季語の議論がございましたが、天文季語+破調+固有名詞の組み合わせなら、横尾さんが詠んだマクドナルド句も同様であり、平場の句で評価点を下げる要因とされたのは少々お気の毒。当番組では情緒不安定になりがちな方ですが、まずは無事にツアーを開催できることを願いたいところです。
◆3位
才能ナシ30点 松倉海斗(Travis Japan)『秋涼し ハンカチ社員 笑み浮かべ』梅沢永世名人 あら~。
【本人談】凄く暑い夏、エレベーターに社員さんが駆け込んできてハンカチで汗を拭いている。秋になると涼しくなるため、エレベーターに乗るときに(社員に)笑みがこぼれている。
梅沢永世名人 あの~若いからね、こういう俳句を作りたがる(笑)。
たかし 典型的な。
梅沢永世名人 教えときますよ。「秋」は季語だから。「ハンカチ」も季語なんだ。
本人 なるほど。
梅沢永世名人 「笑み浮かべ」って、笑みは浮かべるもんなんだよ(笑)。
本人 フルで。
梅沢永世名人 全部駄目だ。
本人 全部駄目っすか?
斎藤 「ハンカチ社員」ってのは、多分名前…Gパン刑事(デカ)みたいなもんで、彼の言いたかったことは。
本人 そうです、そうですね。
斎藤 普段ハンカチを使う名物の社員が使わないと、そういうことでしょ。
本人 そういう感じです。ありがとうございます、フォロー。
斎藤 どうです?
浜田 お前らだけ分かりあってるやん(笑)。
斎藤 (自分は)才能ナシっぽいな~。
夏井先生 おっちゃんも長年見てきたため、指摘するところは全部指摘してくれている。
季重なりの問題よりも一番気になるのはやはり下五。
「笑み」と書いた瞬間にそれは浮かぶもの。
「浮かべ」が要らないと思うのが第一歩。
もう少し言うと、今の内容を聞けば「笑み」すら要らないということも分かった(笑)。
斎藤 余計なの多いよ。
夏井先生 「秋涼し」(※初秋の頃の涼気・涼風)全体が季語になる。
暦の上では秋になったが涼しさを感じている。
さらに「ハンカチ」が夏の季語。
こうやって、2つ季語が入ってきた時に"季重なり"を成立させるにはどうするか。
色々方法はあるが、これなら「涼し」を諦めてもらい、「秋のハンカチ」と1つの季語にしてしまう。
こういう手もある。
そうなったら「社員」と言っている場合でない(笑)。
浜田 どんどん消されてく。
夏井先生 どこにいるのか、さっきからエレベーターと言っているが書いてない。
「エレベーター」でも良いし、「エレベータ」という言い方もあるため「エレベータに」としておく。
「エレベータに秋のハンカチ」とし、使っているなら「使いをり」。
使ってないなら「使わざり」。
ひとまず、作者の言いたいことに言葉は寄っていく。
これから真剣にやるなら、まず笑みは浮かぶものだとここから理解してください。
浜田 どうですか、ほとんど消されたけど。
本人 ちょっと頑張って学びたいなと。
浜田 ここからね、ここから。いいですいいです。
●解説のポイント |
季重なりの問題よりも下五が× 「笑み」は浮かべるもので「社員」も不要 「秋のハンカチ」とひとかたまりで季重なりを成立 「エレベータ」と場所を書く 肯定「使いをり」・否定「使わざり」 真剣にやるなら下五の問題に気づいて |
添削後
『エレベータに 秋のハンカチ 使いをり』
『エレベータに 秋のハンカチ 使わざり』
時候「秋涼し」と夏の生活「ハンカチ」の季重なり。夏は汗を拭うためにハンカチを多用していたハンカチ王子ならぬハンカチ社員が、秋になるとあまり使わなくなって笑みを浮かべた表情をしていることを第三者目線で意図した定型句。突飛な発想で「ハンカチ社員」と呼ばれる人物がいることも面白い書き方。型から時候が主たる季語だと判別することも可能です。とはいえ、下五は完全に蛇足な上、自解の内容が夏から秋にかけての時間経過をダブらせており、少々強引な展開。「(秋)涼し」も汗をかかない社員の理由付けに用いられています。三段切れも問題でしたが、「秋のハンカチ」とする添削にも少々無理があるようにも感じます。「ハンカチ社員」の響きに滑稽さがある一句です。
◆4位
才能ナシ10点 秋元真夏『若煙草 纏いし君に 気もそぞろ』浜田 くっ…。
梅沢永世名人 何?
【本人談】エレベーターに乗る際、扉が開いて人が入ってくると風も一緒に入ってくる。スーツを着ていた人が煙草を吸っていたのか、煙草(の匂い)をまとった状態で入ってきて、その空気を吸ったら「あ、嗅ぎ慣れない空気でドキドキするな」っていう気持ちを描いた。
勝村 今の説明はとても素晴らしいと思います。でも、そこからここ(→俳句の字面)にいったのが分からないですね(笑)。
本人 えっ?
梅沢永世名人 その通りですよ。説明聞きゃそんな気もしますけど、説明聞かなきゃ訳の分からない俳句になってますよね。
本人 え~!
梅沢永世名人 だからね、俳句をイチから勉強したいんだったらおじさんのところに電話よこしなさい(笑)。
浜田 もうええよ、もう。ええっちゅうねん。
夏井先生 これは物凄く面妖で不可解な光景が描かれた句。
「若煙草」(※その秋に初めて作られ乾燥させた煙草のこと)は秋になって煙草の葉を収穫する。
その葉をかけて・干して・乾かしている、それが若煙草。
それを理解した上でこの句を読んでほしい。
(♪世にも奇妙な物語のBGMで)若煙草を掛けて、自分の体に纏って、そういう君に私は気もそぞろ(笑)。
読んだ瞬間、変人が変人と出会って恋に落ちたみたいな(笑)。
本人 違う。
夏井先生 「気もそぞろ」とあなたの気持ちを書いている場合ではない。
大体「纏う」が諸悪の根源だと思う。
「君」と書かなくても書ける。
浜田 全部消えてるやん。
本人 なくなっちゃう。
夏井先生 そして、若煙草の「若」があるため、煙草の葉を干す作業の現場を思わせる。
だからこの「若」さえなければ良かった。
残る言葉は「煙草」だけ(笑)。
あなたの思い描いた光景を書く。まず匂い。
それも普段感じたことのない匂いなら、その通り書く。
「嗅ぎ慣れぬ」で1つ言える。あまり嗅ぎ慣れてない。
そして、憧れの気分を出して季語を入れたい。
「秋の大人の煙草の香」。
梅沢永世名人 なるほどね。
夏井先生 こうするとあなたの言いたかったに近寄ってくる。
浜田 先生これ彼女前回才能アリ獲ってるんです。
本人 そうなんです。
夏井先生 (才能アリの)あの日が懐かしい(笑)。
斎藤 懐かしむ。
本人 悲しい。
浜田 秋元さん次回は頑張って下さい、ホントに。
本人 もう舞い戻ってきます。
●解説のポイント |
面妖で不可解な光景が描かれた句 「若煙草」は秋に初めて収穫された煙草 なぜか若煙草の葉を体に纏った君を見てそぞろな気に 変人同士が出会って恋に落ちた? 下五で気持ちを書いている場合ではない 「纏いし」が諸悪の根源 残る言葉は「煙草」だけ 普段感じたことのない匂いを「香」と書く 憧れの気分を季語「秋」を入れて中七で |
添削後
『嗅ぎ慣れぬ 秋の大人の 煙草の香』
秋の生活「若煙草」で、喫煙者の男性とエレベーターと乗り合わせ、嗅ぎ慣れない匂いに気もそぞろになった恋の予感を意図した定型句。若手女性の等身大の心情表現を意図は伝わりますが、季語の理解の浅さで句意と意図が乖離して大幅な減点に。煙草の葉を身にまとった男性に恋をしたという石器時代的シュールな衣装を思わせるのは、コメントでご指摘頂いた通りです。妖艶な句として意味は成立していますが、僅か10点という体たらくに。新しく収穫した煙草の葉を「纏い」と衣装に使われる描写が季語に対して失礼になる上、「気もそぞろ」で作者の変わった人間性を大きく打ち出したため、類を見ない減点に。作者の意図ならやはり「香り」を表現すべきでしょう。しかし、「若煙草」という季語があることを知らなかった初心者も多いはず。難度の高い季語で良い句を作るのは簡単なことではなく、その点の挑戦は大いに褒めたいところです。
★特待生昇格試験★→<5級>・勝村政信は特待生認定後初めての昇格試験。2017年1月26日の才能ナシで「今日を限りに破門」と先生から宣告を受けるも、這い上がってきた。
浜田 いやよう来たよね、ここまで。
勝村 ほんとですよね。でもね、もうちょっとなんか落ち着けると思ったんですよ。ここ(→特待生席)来たらなんか、もっとドキドキします(笑)。
◆『この階で 降りればいいのか 鬼灯め』 勝村政信【本人談】(秋の季語である)「鬼灯(ほおずき)」は死者の魂を導く提灯と言われている。エレベーターは人生に少し掛けていたりとか、自分の意思で降りる場所が分からないが、勝手に鬼灯の灯りがついてそこで降ろされる。そこでまた自分の新しい人生を切り開かなきゃいけないのかなという気持ちを俳句にした。
浜田 梅沢さんどうですか?
梅沢永世名人 私の意見でよろしゅうございますか?
浜田 そらそうですよ(笑)。誰の意見を今から喋るねん。
梅沢永世名人 言わしてもらいます。「鬼灯め」とくるとなんか俳句らしいんですね。ところが「降りればいいのか」っていうのが普通の言葉なんですよ。そうするとこの「降りればいいのか鬼灯め」。なんだかね、バランスが悪い。
浜田 なるほど。
梅沢永世名人 私はそう思いますね。
浜田 じゃあ、どうしたら良いですか?
梅沢永世名人 急に言われても…(笑)、急に言われてもね。
★評価ポイント中七の口語・下五の強い言い方の是非
■査定結果5級で
現状維持理由:
表現者っぽくなってきたけど…夏井先生 「表現者ぽくなってきたけど」と言いつつ、これは得も言われぬ不思議な世界を描こうとしている魅力は凄くあった。
「この階で降りていいのか」と思い、鬼灯がポッと灯るようにある。
この世界は上質なお芝居の1シーンのような感じがして良いなと思っている。
ただ言いたい世界が言葉として補強されてないと、それをおっちゃんは今指摘した。
これは言い方を変えるだけで凄く良い句になる。
中七が冗長過ぎる。
「この階で」の後、「降りるか」として季語「鬼灯」を補強したい。
「め」が強すぎる。「鬼灯」の後「灯」を繰り返して「灯(とも)して」と持ってくる。
この階で降りたらいいのだろうか、降りようか。
手に持っている鬼灯を提灯のように灯して、恐る恐るその階でその次の人生に足を踏み出す。
直して悪いが、これならアンタ直せば2つ3つ上に行けたくらいの世界だと思う。
私今まで破門するなど酷いことは一杯言ってきたが、初めて"何かやってくれるかもしれない"というほのかな期待感を持ち始めた。
本人 ちょっと勉強します、また更に。
浜田 ねえ。
●解説のポイント |
得も言われぬ不思議な世界の魅力 上質な芝居の1シーンのよう 言い方を変えれば凄く良い句になる 中七が冗長のため「降りるか」として季語を補強 「め」が強すぎる 手に持つ鬼灯を提灯のように灯して降りる 直せば2つ3つ上に行けた 何かやってくれる期待感を初めて抱いた |
添削後
『この階で降りるか 鬼灯を灯して』
秋の植物「鬼灯」にエレベーターで降りる階層を問いかける意図を持った中七字余り。俳優的視点を持った独自の世界観はシュールな印象。どこで降りればいいのか見失っている流浪の民が、手に掲げる鬼灯に強く問いかけるという謎の行為が読み手の想像を膨らませる形です。「鬼灯」は自身が手に持つものか、現場にあるのか虚の季語なのか色々と迷う部分となり、中七字余りは「降りりゃ~」でも纏められ、鬼灯に託す心情が強く出た「め」も「よ」とすべきかが議論の的ですが、添削で見事に解決されました。ご指摘の通り、特待生剥奪瀬戸際の5級ながら攻めた句を出してきた勝村さん。今後も出演ペースを上げて挑戦してほしいところです。
◆『閉ボタン連打 秋夜のエレベータ』 皆藤愛子【本人談】秋の夜に早く閉まってほしくて(エレベーターの「閉」のボタンを)連打している様子。
★評価ポイント「閉ボタン」から始まる語順の是非
■査定結果名人5段へ
1ランク昇格理由:
カメラワークが効果的本人 やった~!嬉しい!ありがとうございます。
夏井先生 まずアップのボタンの映像から始まる。
なぜかそれを連打していると、その瞬間に「なんで?」と読み手は一瞬思う。
そして「秋の夜」という秋の季節・時間は分かるが具体的な映像がない季語にポンと切り替わる。
その瞬間に連打の意味が何となく読み手に伝わってくる。
理由もなく寂しい秋、何だか分からない不安のようなものに囚われがち。
「秋思」、秋の憂いを抱きがちな季節の夜。
そして、「エレベーター」と一音伸びるより、「タ」で終わった方が一音足りなさそうな気分が、「連打」「秋夜」の不安のようなものと微かに響き合う。
こういうところを意識して言葉を選んでいるに違いないと。
そういう句であった。
浜田 あら~、お見事でございました。
本人 ありがとうございます。嬉しいです。
浜田 昇格です。
●解説のポイント |
アップのボタンの映像から なぜ連打しているかと思う 季節や時間を持つ具体的な映像がない季語 理由もなく寂しい秋や不安 「秋思」のような秋の憂いを抱きがちな季節 着地に「ー」がない気分が不安と微かに響き合う 意識して言葉を選んでいるに違いない |
添削なし
時候「秋夜」とエレベーターで「閉」のボタンを連打するほど焦燥感に駆られた心境を描写した句またがり。「へぇボタン連打」でかつての人気番組『トリビアの泉』を彷彿とさせるミスリードがあるものの、とても無難で実直な句の作り。エレベーターで早く閉まってほしい気持ちが「連打」の動作に表れ、対句表現として置かれた「エレベータ」で場所が明確になります(ご指摘の通り、電車や多目的トイレの扉の可能性を否定するため「エレベータ」と置く配慮もありますが、そもそも「連打」の状況はエレベーター以外に思いつかず、場所の押さえを示す対句表現を意図したと解しました)。問題の季語「秋夜」でどことなく寂寥感を示しているものの、全体が落ち着きすぎている点も含めて季語が動くのはご指摘の通りです。「秋思」だと時間が限定されず心情が強く出過ぎる狙いもあり、昇格とはいえ季語選択を推敲したい一句にはなりました。
★特別永世名人 梅沢富美男の締めの一句★→<特別永世名人>・梅沢富美男は前回査定はシュレッダーだった。
浜田 皆さんの俳句に「あーだこーだ」言うてます。
梅沢永世名人 特別永世名人ですから。発想を飛ばすというお勉強を皆さんにして頂きたい(笑)。私の俳句は思い切り発想を飛ばしましたから。
***
浜田 最後はでも…永世名人に。
梅沢永世名人 私が締めないでこの番組成り立ちませんから。
浜田 そらそうです。
◆『白桃や 車いす用ボタン押す』 梅沢富美男和田 「白桃」って桃だよね?
秋元 「白桃」?
【本人談】皆さんご存じだと思うが、白桃は桃の中でも傷つきやすい。ちょっとしたことですぐ染みになってしまう。その白桃を大事に(車いすに)持ちながら(エレベーターの)車いす用ボタンを押す。普通のボタンを押すよりゆっくりと閉まる。ゆっくり閉まった時、「あ、もしかしたら上り下りもゆっくりになるんだなあ」ということを感じながら詠ませていただいた。
本人 白桃や車いす用ボタン押す。
浜田 何で2回言うねん(笑)。
■査定結果特別永世名人なのに
ガッカリ…理由:
なぜ「や」で切る?斎藤 あら!
浜田 ククク…。
秋元 ウソ!
斎藤 急に怖ぇよ。
秋元 (顔が)固まっちゃった。
(査定評後)
皆藤名人 あ~。
本人 何が?
夏井先生 優しい取り合わせ。ホントに優しい句だと思う。
何が勿体ないかというと、おっちゃんが今語った内容が実現できてない部分が少しある。
それがまさにこの「や」。「白桃や」と詠嘆する。
「や」の詠嘆が悪いわけではないが、詠嘆した後にカットを切り替える働きも同時に持っている。
そうなって車椅子が出てくる。
そうではなく、ここは(桃と車椅子が)一緒に存在する映像にする方が絶対に良い。
「白桃」にこだわる気持ちも分かるが、それより動作にこだわるべき。
「桃抱いて」とし「車いす用ボタン押す」。
斎藤 なるほど。
夏井先生 桃を大事にお膝に抱いて、車椅子用ボタンをそっと押すと。
そうすると、小さな空間に桃の香りがゆっくり広がっていく。
桃はなんと素敵な果実だろうとその詠嘆を読者もゆっくり味わってくれる。
そのために「抱いて」「押す」という2つの動詞が必要となる。
浜田 なるほど。
本人 硬い桃もあるからね!(笑)
斎藤 いやいやいや。
本人 俺は桃に詳しいけど、白桃じゃなきゃダメなんだ!白桃じゃなきゃ!白桃のあの細かい神経の塊みたいな桃が、ちょっと触ると傷がつくんだ。
夏井先生 どうしても「白桃」にしたいなら「白桃抱いて」にすればいいだけのことでしょ(笑)。
浜田 そうですよね。
本人 泣くぞ!和田さんと一緒に泣くからな!(笑)
●解説のポイント |
優しい取り合わせ 語った内容が実現できてない 詠嘆「や」はカットを切り替える働きもある ここは一緒に存在する映像の方が良い 「白桃」にこだわらず動作を描く 桃を抱いて車椅子用ボタンをそっと押す 小さな空間に桃の香りがゆっくり広がる 「抱いて」「押す」という2つの動詞が必要 どうしてもなら「白桃抱いて」に |
添削後
『桃抱いて 車いす用ボタン押す』
『白桃抱いて 車いす用ボタン押す』
秋の植物「白桃」とエレベーターで車椅子専用のボタンを押して待つ身障者あるいは病人目線で書かれた定型句。光景自体は優しい内容で、発想も悪くありません。何かのお見舞いや土産物として大事に季語を扱う背景が理解できます。「白桃」と「車いす用ボタン」があるため、病院や駅、福祉施設、あるいは果物売り場が近い商業施設など様々な場所を想定できます。本人も語っていた通り、車椅子用ボタンは扉の開閉がゆっくりになり、開いている時間も長くなる設計のため、ゆったりと昇降するエレベーターを印象付けます。問題はまさに「や」で、この形だと前後半の繋がりが非常に見えにくい形。壊れやすく優しく甘い白桃も車椅子に乗る人のバスケットの中でエレベーターと同様にゆっくりと丁重に運ばれてい<様が見える季語選びは上手かったものの、切れ字一つで失敗した御大。"特別永世名人"としてのメンツを今後も保てるでしょうか。
浜田 はい。俳句はこうなります。
(シュレッダー演出)
一同 あ~!
梅沢永世名人 ジジイに厳しいな~(笑)。ローランドとイチャイチャしながら番組なんかやってるからだ!
浜田 (ローランドには)優しかったんですね。
梅沢永世名人 2人でイチャイチャしながら俳句番組やってるんですよ!
浜田 先生言うてますよ、イチャイチャしながら番組やってるって。
夏井先生 しあわせ♡(笑)。
梅沢永世名人 あ~、悔しい(笑)。
★次回9/14の兼題は、秋の夜長に食べたい「夜食」です。
バナナアートのコーナー後半が俳句。兼題は「エレベーター」でした。以前は「階段orエスカレーター」が春のタイトル戦の兼題になったことがありましたが、無機質な昇降機が今回のお題。その意味では、大変発想力が試される難度の高い兼題と言えます。
季語は季重なりの「ハンカチ」を除いて全員が秋の季語。時候3名(「秋」「秋夜」「秋涼し」)、植物2名(「鬼灯」「白桃」)、天文「良夜」、生活「若煙草」と分かれています。具体的に「エレベータ」と場所を入れ込んだのが皆藤名人のみ、「ボタン」を入れたのが1位と梅沢・皆藤名人の3名、「階」で表現しようとした勝村さん、「迫り上がる」で舞台のセリを表現したアッコさんと発想も分かれましたが、3位以下の「ハンカチ社員」「若煙草纏う」はエレベーターの要素が感じられにくい形に。才能アリの2作品は毛色が大きく異なりますが、子の成長を感じ取る点に共感を得られやすい点で斎藤さんが1位になったのかもしれません。
さて、今回から清水アナも俳句査定に挑戦することが「プレバト!!」公式Xのポストにて発表されました(兼題写真の下に掲載)。凡人査定の一発目でしたが、「点検中」に発想する点は決して悪くありません。五六六のリズムが悪く、三段切れにも感じる点と季語の選択に改善の余地がありそうです。「歩いて上がってきてね」という査定評も、仕方なく階段を使う作者の心境と俳筋力をコツコツつけてほしいメッセージを込めたダブルミーニングになっています。頭の切れが良い夏井先生ならではのアドバイスを受け、今後の清水アナの成長も見守ってまいりましょう。
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