2023年5月25日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※6月5日に全て更新しました。大変お待たせ致しました。
※5/11放送のタイトル戦記事は更新済みです。編集後記に関してコメントも是非お寄せ下さい。→プレバト!!
公式ツイッター/
公式インスタグラム挑戦者→武井壮[13],小籔千豊[6],YOU[5],新内眞衣[初],森口瑤子[37],村上健志[88],梅沢富美男[196] ※数字は挑戦回数●お題:鯖の弁当

※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位75点 | 武井壮
| 鯖喰ふや係船柱の錆硬し | さばくうやけいせんちゅうのさびかたし |
2 | 才能アリ2位70点 | 小籔千豊
| 汗水漬く大工かきこむ鯖弁当 | あせみずくだいくかきこむさばべんとう |
3 | 凡人3位60点 | YOU
| 焼き鯖の香り漂う夕涼み | やきさばのかおりただようゆうすずみ |
4 | 才能ナシ4位20点 | 新内眞衣 (元乃木坂46) | 鯖食いて青葉感じる箱の中 | さばくいてあおばかんじるはこのなか |
5 | 名人5段で現状維持 | ★森口瑤子
| 肴手土産に来る父の日の父 | さかなてみやげにくるちちのひのちち |
6 | 永世名人29句目に掲載決定 | ★村上健志 (フルーツポンチ) | 薄暑のシンク鯖缶の蓋の反り | はくしょのしんくさばかんのふたのそり |
7 | 特別永世名人4句目のお見事! | ★梅沢富美男
| 朝まだき半夏生鯖匂ふ市 | あさまだきはんげしょうさばにおういち |
順位発表順:2位→最下位→3位→1位→編集後記🔷
挑戦者語録YOU | ○2△1×1 | ※「俳句はよく分からない」と頭を抱える。 |
武井壮 | ○6△6 | ※4年ぶりの挑戦。4回連続才能アリと特待生候補。NHKで俳句番組に出演していたため緊張が隠せない。 |
新内眞衣 | 初挑戦 | ※元乃木坂46。現在は同じ事務所(セントフォース)の皆藤愛子に追いつきたいと燃える様子。 |
小籔千豊 | ○1△1×3 | ※「今までで一番勉強した」と意気込む。 |
★ランキングシートの分布は
才能アリ2名、凡人1名、才能ナシ1名
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ75点 武井壮『鯖喰ふや 係船柱の 錆硬し』※「係船柱」は船をワイヤーなどで繋ぎ留めるため桟橋や埠頭に設けた杭。
【本人談】日本海にお仕事で行ったことがある。宿の方から鯖の弁当を持たされたことが本当にあり、(埠頭に)立っている係船柱という金属の柱が硬い錆がつくほど荒い夏の海に揉まれている。その中で鯖の弁当を食べて少し安らぎを感じたという句。
梅沢永世名人 良い句だね、75点貰う句ですよ。さすがお勉強なさっている。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 素晴らしいと思います。
本人 いや嬉しい。
森口名人 「錆硬し」でちょっと痺れました。
本人 うわ、嬉しい。
森口名人 こうやって言えばいいんだってちょっと私勉強させていただいたという。
本人 うわ、嬉しいな。
夏井先生 とてもしっかりとした句だった。
「係船柱」の言葉だけで港であること、その周りで働いている人がいることも全部わかる。
港ではなく「係船柱」に着目し、さらに「錆」のアップに近寄るカメラワークが上手い。
最後の納めをよく考えてある。
「硬き錆」としても映像としてはそれほど変わらないが、「錆」という物の方に軸足がいく。
「錆硬し」で終わると手触りの方に軸足がちゃんといく。
ここで手触りにいくと、その手触りを感じている人というのは鯖を食っている港で働いている人々だと。
ちゃんとここで結ばれていく。リンクされていく。
これはとても巧い句だった、お見事。
浜田 先生、直しは?
夏井先生 要らないよ。
本人 (ガッツポーズで)やった~!嬉しい。
小籔 凄い。
浜田 先生、これ
75点ですから特待生ってのはどうなんでしょうか。夏井先生 4年前に出てらっしゃったんですか?
本人 はい、そうなんです。
夏井先生 4年前のこと何一つ覚えてないんで(笑)。
ちょっともう1回これぐらいの句を持ってきてくれない?浜田 なるほど。
本人 了解です。
夏井先生 そしたらもう
「特待生4級からいけ」ぐらいのこと言うかもしれませんよ、私。
本人 おぉ~、ホントっすか。
浜田 次の句によってはということですね。
本人 次、ちょっとね。
●解説のポイント |
とてもしっかりとした句で巧い 「係船柱」で港や職人の様子もわかる 港ではなく係船柱の錆に寄るカメラワークが◎ 納めをよく考えてある 「硬し」で終わると手触りに軸足がいく 手触りで鯖を食う港で働く人に結ばれる 次回も佳句なら特待生4級からでも良い |
添削なし
夏の動物「鯖」と「係船柱」から港町の職人の食事風景を描写した定型句。都会出身なら聞き覚えのない中七「係船柱」の言葉の経済効率が良く、港町の背景を広げる工夫に昇華しています。ご指摘の通り「鯖」「錆」が表記の上でも「サ」の韻でも質感の上でも呼応し、「喰ふ」という旧仮名表記もガツガツして食べる無骨な人間性を思わす一風景に。「錆硬し」は歴史を持った港の場面描写であると同時に、これからも何の変哲もない日常がこれからもずっと続いてほしい作者の願いも「硬し」の言い切りに含まれています。基本の型で無難に場面描写した一句ですが、妄想では書けない作者の実体験が集約された句材。港町出身の選者の共感を呼んだことも、今年最高点の賛辞に繋がりました。遂に最多挑戦の二階堂さんに並ぶ7回目の才能アリとなりましたが、次回の出演こそが真の勝負になりそうです。
◆2位
才能アリ70点 小籔千豊『汗水漬く 大工かきこむ 鯖弁当』※季語は「汗」。「汗水漬く」で体中が汗びっしょりになることを表す。
YOU あ、素敵。
【本人談】「鯖弁当」で僕が一番美味しそうと思ったのが、炎天下の道を歩いているとき、外で働いている方々がバ~ッとかき込んでる鯖弁当を見たら「食べたいな」と思ったので、こういう風に書いた。
梅沢永世名人 良い俳句ですね。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 綺麗にまとめてある。素晴らしい俳句ですよ。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 大したもんだ。
村上永世名人 いや、良いですよね。やっぱり「大工」さんという職業を入れることによって、ここに書かれてない映像まで浮かんでくる。外で作業されてたんだなとか。そういうのが見えてくるので。
夏井先生 まず、季語の問題から押さえたい。
「鯖」も夏の季語にはなっているが、この句の場合は「汗」が主たる季語で「鯖」が脇役になっている。
ここはハッキリと分けているのが良い点。
そして「大工」。
中七のこの位置に来ることによって、職種がわかるだけでなく、その現場がハッキリと見えてくるのも良いと思う。
表現の上で勿体ないのは、「かきこむ」をキチンと漢字で書いた方が勢いが出る感じはした。
逆に「水漬く」を平仮名にし、「かきこむ」を漢字にした方が「汗」が際立ってくる。
「汗みずく」と平仮名にし、「かきこむ」でも良いが「掻っ込む」と。
梅沢永世名人 なるほどね。大工さんらしい。
YOU 粋だね。
夏井先生 勢いが出ると季語「汗」が際立ってくる。
小さな配慮が出来るようになると、特待生も見えてきますよ。
本人 先生!待っててください!(笑)
●解説のポイント |
「汗」が主役で「鯖」が脇役と分けている 中七「大工」で職種・現場が見える 「かきこむ」を漢字で書いて勢いを 「汗」を際立たせるため「みずく」は仮名に 小さな配慮が出来ると特待生も |
添削後
『汗みずく 大工掻っ込む 鯖弁当』
夏の生活「汗みづく」と動物「鯖」の季重なり。こちらは大工という職業に着眼して昼の食事風景を描写した下五字余りの一句です。「鯖」は弁当の具材に留まる点を考慮しても「汗みづく」が主役だとすぐに分かる季語の置き方。恐らくは炎天下の中の工事でしょうが、ある程度開けた場所で昼飯風景をご覧になったのでしょうし、「かきこむ」の動詞にもリアリティーがあり、人物のがさつな動作を思わせます。1位と違い特徴的な単語はありませんが、より日常に溢れた光景を素直に描写した点で、句会で点が入りそうな印象を強く感じる佳句で、こちらの方が個人的に好み。表記の点で添削を受けましたが、小籔さんも芸歴を活かした光景描写を行えば村上・ジュニア名人を追いかける存在になれるかもしれません。
◆3位
凡人60点 YOU『焼き鯖の 香り漂う 夕涼み』新内 綺麗。
【本人談】休日に自炊をしようと思い、鯖を焼いたりする。「充実してるな、お休みだし」という夕方に1人で普段の疲れを癒すイメージ。
村上永世名人 これも「鯖」と「夕涼み」が季語なんですが、でもこれは「夕涼み」が恐らく主役。だけど「香り」なんで「漂う」はいらないかなという感じはしますね。
梅沢永世名人 その通り。
夏井先生 これも季重なりとの指摘があった。ただこれはクリアしている。
「焼き鯖」は匂いだけで実体のない。
「夕涼み」が夏の主たる季語としてしっかり置かれている。
ここはクリアしている。
そして2つ目。「漂う」が不要との指摘。
まさにこの句の問題はこれだけ。
「香り」は漂ってくるから分かるもの。
そうなると、「焼き鯖の香や」で詠嘆すれば「夕涼み」との間に5音分のゆとりができる。
ここに新しい情報を入れる余裕が生まれる。
本人のイメージとして、お休みの日にゆったりとした気分でということだった。
だったらその情報は悠々と入る。
「休日の夕涼み」とやると、ただの夕涼みではなく今日一日がお休みだったという満ち足りた感じが出る。
本人 うわ、上手(笑)。
浜田 上手ちゃうねん。
●解説のポイント |
「香り」で実体のない「焼き鯖」が脇役 「夕涼み」が主役の季語になっている 香りなら「漂う」が不要 「香や」で5音分の余裕 お休みの満ち足りた感じを出す |
添削後
『焼き鯖の 香や休日の 夕涼み』
夏の生活「夕涼み」と動物「鯖」の季重なり。焼き鯖の匂いが辺りに漂っている夕方の長閑な一場面を詠った定型句です。嗅覚情報しかない「焼き鯖」のため、下五に置かれた「夕涼み」が主たる季語だと明快。無難に書けている形ですが、「香り漂う」に凡人らしい説明臭さが残っており、「NHK俳句」的に“脱ボン”するにはもう一工夫が必要です。添削では「休日」という情報でより優雅に過ごす印象が出ましたが、全体的な映像に弱さがあり、共感性がないと句会で点が入るのは難しそう。自宅で焼いた鯖の食卓風景ならば、やはり「鯖」を描写すべきで季語は一つに絞った方が良い印象を感じます。
◆4位
才能ナシ20点 新内眞衣(元乃木坂46)『鯖食いて 青葉感じる 箱の中』梅沢永世名人 なんだ?
【本人談】鯖の弁当は小さい時に食べたイメージがなく、大人になってから食べるとその(弁当)箱の中に入っている他の(付け合わせの)青葉とかに気づけるようになるし、外で食べていると変わりゆく景色を感じられるようになるかなと思って詠んだ。
村上永世名人 (怪訝そうな顔で説明を聞く)
森口名人 これ「鯖」と「青葉」も夏の季語ですか。これは両方がちょっと重なっちゃったって気がしました。
浜田 これは梅沢さんも同じ意見?
梅沢永世名人 同じですよ。娘!よく聞きなさいよ(笑)。
本人 はい。
梅沢永世名人 「青葉感じる箱の中」って、なんか俳句作ったような気持ちになってるでしょうけど、意味が良く分からない(笑)。
YOU 厳ぃ。
梅沢永世名人 何が箱の中なんだか、ちょっとそれは分からない。
夏井先生 この句に関しては今指摘があった通り。
まず「鯖」と「青葉」はどちらも季語。
季重なりが絶対ダメというわけではないが、どちらかに強弱をつけるなどの配慮が少しほしいのが1点目。
それから「箱の中」は分からない。
(段ボールの)箱の中に入れられて、外の青葉を感じるって(笑)。それは何?みたいな。
頭に「弁当」と書くだけ。
「箱」と書くから訳わからなくなる。
「弁当の鯖よ」と軽く詠嘆する。
ここから後、「鯖」「青葉」を同じバランス・比重に一句の中に置く季重なりをやってみる。
やったところでわからないかもしれないが、やってみますね(笑)。
本人 まだ未熟者で…。
夏井先生 「弁当の鯖よ」、青葉は感じなくて良い。
「青葉よ」。これで「よ」のリズムができた。
最後また「○○○○よ」と詠嘆したい。
この4音に何を入れるか、色々と出来る。
「ふるさとよ」とやっても良い。ふるさとを思い出す。
若いお嬢さんだから「失恋よ」とやっても物語が動き出す。
この4音に自分なりの言葉を入れて、少し勉強してみましょう。
本人 はい。
●解説のポイント |
季重なりは強弱などの配慮が欲しい 「箱の中」が意味不明(弁当の青菜とは伝わらず) 頭に「弁当」と書くべき 季語2つを同じ比重で一句に置く方法も 「よ」のリフレインで物語が動き出す 4音に自分なりの言葉を入れて |
添削後
『弁当の鯖よ 青葉よ ふるさとよ』
『弁当の鯖よ 青葉よ 失恋よ』
夏の動物「鯖」と植物「青葉」の季重なり。鯖弁当に青菜などの具材がある点に気づいたことを表現意図とした定型句です。自句自解で問題点が浮き彫りになる典型的な初心者の句で、季重なりの強弱のなさ、「青葉」の把握ミス、「感じる」の説明、「箱の中」の比喩、「食いて」→「感じる」の因果関係と枚挙にいとまがありません。さらに、「食いて」も本来ウ音便の「食うて」か旧仮名「食ひて」とすべきでしょう。屋外に置かれた段ボール箱の中で鯖を食いながら青葉の植物を感じるという、ホームレスでもしないような現実味のない解釈を受けましたが、失敗を素直に受け止めて分析すれば伸びる可能性を感じる方でもあります。
★特待生昇格試験★→<名人5段>・
森口瑤子は3回連続昇格中。最近意外な方から応援があるとのこと。
森口名人 いま、(日曜劇場)「ラストマン」というドラマの収録中なんですけど、大泉洋さん、上川隆也さん、寺尾聰さんまでが「プレバト!!」のファンで凄い見て下さってるってことで、現場で凄い「プレバト!!」のことばっかり聞かれるんです(笑)。なので、頑張ります。
浜田 分かりました。
◆『肴手土産に来る 父の日の父』 森口瑤子梅沢永世名人 うん。
【本人談】父親は「プレバト!!」ファンだが、凄い寂しがり屋。父の日は普通子どもたちが何かを持って出かけるもの。ところが、寂しいため酒の肴を自分で「お土産だよ」って持ってきちゃうところがある。それを詠んだ。
梅沢永世名人 これね、私の個人的な意見で誠に申し訳ありませんがね。
本人 いえ、とんでもない。
梅沢永世名人 「父の日の父」が最後にくると、ちょっと「父」が余分だったかなと思っちゃうんです。
本人 あ、そうですか。
浜田 語順か。
梅沢永世名人 これが頭だったら何とか自然に読めたんですけど。
浜田 なるほど。これ、村上さんどう思われますか?
村上永世名人 僕は「父の日の父」がいいかなと思ったんですけどね。
梅沢永世名人 あっそう。
浜田 なるほど。
YOU なんで(笑)。
★評価ポイント「肴」「手土産」「父の日」「父」の語順の是非
梅沢永世名人 (村上名人に)お前と俺の違いはこういう所に出るんだ。
■査定結果名人5段で
現状維持理由:(未発表)
新内 厳しい。
本人 そうですかね。
夏井先生 ほのぼのとした光景でこの句自体やろうとしていることは良い。
これは語順が悪い。
おっちゃんの言う通り「父の日の父」から始めるべきだと私も思う。
「父の日の父」の後、「来る」にくる。
小さなことだが「来」で"く"と読ませる。
「父来」で"父が来る"という意味になる。
ここから逆転、「肴を手土産に」と。
そうすると、手土産に持ってくる父の手元や父の表情がちゃんと余韻として入ってくる。
こうした方が絶対に得だったねという話。
本人 そっか~。(頷きながら棒読みで)非常に勉強になりました~。
浜田 キレてんの、自分ちょっと(笑)。
本人 いやいやいや…。
●解説のポイント |
ほのぼのとした光景で良い 語順が悪い 「父の日の父」から始めるべき 「来」で"く"と読ませる 手土産を持つ父の手元や表情が余韻になる 語順を変えた方が得だった |
添削後
『父の日の父来 肴を手土産に』
夏の生活「父の日」と自分から祝賀のための肴を手土産に持って帰宅する父を描写した滑稽な場面を描いた破調の一句。六月第三日曜日に父への感謝を捧げる日は、1940年にドッド夫人が「母の日」に対してあるべきと提唱したのが始まりのようですが、「母の日」の後ということもあり、陰に隠れている印象が強いもの。歳時記を開くと今回のように「父の日」と「父」を描いた例句が複数見られ、俳句に残すことの大切さを思い知らされます。酒好きの父でありながら手土産に帰る家族思いな人情味も感じますが、ご指摘の通り、「肴手土産に」から始まる語順では「父」との間に「父の日」が挟まれるため季語に主眼が置かれず、動作に主軸が来てしまいます。添削では「来」を活かしましたが、個人的には「父の日の父よ」と一度詠嘆をした方がすっきりします。ここは作者の考えを尊重すべきかもしれません。
★永世名人 村上のお手本★→<永世名人>・
村上健志(フルーツポンチ)は3回連続でボツ。句集完成まで残り22句。
梅沢永世名人 アハハ、10年かかるね~。
村上永世名人 ちょっと3回ダメだったんで、この前の浜田杯。あれでかなり良い成績(→2位)を収めたので、ちょっと見えてきてます。また。
梅沢永世名人 浜田杯は私が優勝ですからね。
清水アナ はい、1位2位ですね。
村上永世名人 いいじゃないですか。俺がいい成績だって(言って)~(笑)。
◆『薄暑のシンク 鯖缶の 蓋の反り』 村上健志(フルーツポンチ)【本人談】「薄暑」(※少し汗ばむくらいの初夏の頃の暑さのこと)は夏の初めの"ちょっと汗ばむな"って感じてきた暑さの頃をいう。その頃の台所のシンク。鯖缶を開けると缶の蓋が反れて曲がる。それが置いてあるだけの光景。なんかそれだけで~、どうですか?
小籔 いやいや。問われても分からん、俺らは。
本人 夏の初めに、少し気だるさがあるのか、少し節約しているのかとか。色んな物語を、ここに書かれていない余白を埋めたくなるような旅を皆さんにしてほしいなという(笑)。
梅沢永世名人 いや、夏井先生がこの間、「本来の村上の俳句を詠んで下さい」と言っておりましたけど、今回やったんじゃないですか?
本人 え、ホントですか?え、梅沢さんから?
梅沢永世名人 いや、良いね。よーく観察して素晴らしい。村上らしい俳句です。
本人 なんか、イヤ。え、なんかイヤなんですけど逆に(笑)。なんか、イヤなこと起きそう。
梅沢永世名人 何が?
■査定結果永世名人29句目に
掲載決定
理由:
さすが村上節本人 (人差し指で前を指すポーズを決める)
森口名人 凄~い。
(査定評後)
本人 これです。
梅沢永世名人 ほら~。
夏井先生 ちゃんと元の村上さんに戻ってくれたなとホントに思った。
本人 ただいま。
夏井先生 おかえり(笑)。
「薄暑のシンク」で台所だと分かる。
そして「鯖缶」という小さな物が出て、さらに「蓋の反り」と描写をしていく。
こういうものをずっと積み上げることで、台所にある温度・空気の匂い・手触りがありありと見えてくる。
さらに、七五五のリズムになっている。
「七五五」や足して17音の破調の句は少し鬱屈な寂し気な調べを作る。
この七五五の調べがどこか憂鬱な憂いを含んだ「薄暑」であると。
調べと自分の言いたいことをちゃんと連動させている。
ポンチ村上がやっと帰ってきたと、今日は嬉しい。
直しはいらない。
本人 ありがとうございます。
浜田 もうさっきからずっと小籔は「へ~」って。
小籔 解説聞くと「ホント、そうだな」と思うんですけど、最初僕みたいな素人がパッと見たとき、「その缶早よ捨てろや」って思いましたね(笑)。
本人 だから小籔さんが2位獲った時にこう(指をさすポーズを)やってましたけど、これくらいやってやっとこう(→人差し指を前に出す)です(笑)。
小籔 恥ずい(笑)。行きたいわ~、もう。特待生。イヤや~。
YOU 頑張って。
●解説のポイント |
元の村上さんに戻ってくれた 台所にある小さな鯖缶の反りの描写 温度・空気の匂い・手触りが見えてくる 七五五のリズムは鬱屈な寂し気な調べ 憂鬱な憂いを含んだ「薄暑」 自分の言いたいことと型を連動させた |
添削なし
夏の時候「薄暑」と動物「鯖」の季重なりですが、時候を用いていることや「鯖」の実態がないことから季語の主従関係は明らか。シンクに置かれた鯖缶の開かれた蓋が反り返っているだけの破調の一句です。歳時記掲載句「双六の駒にポン酢の蓋のあり」以来の蓋ですが、まさに村上さんらしい着眼と日常の客観描写。「薄暑」は時候ながらシンクの現場も大変暑くなっており、いかにも鯖缶の蓋がさらに反り返るかのような印象も感じますし、七五五のリズムから気だるさも感じ取れます。ステンレス製のシンクにアルミ缶を置いてしまうと、”もらい錆”の原因になりますが、不用意な行為を行う人間性の主張にも思いますし、蓋の反りに光沢があるはずで、薄暑の汗ばむ感じと光の印象までを呼応させており、無人のシンクをただ茫然と見つめる作者の心境をまざまざと感じ取れる形です。客観的場面描写に徹して、久々の掲載決定となりました。
★特別永世名人 梅沢富美男の締めの一句★→<永世名人>・
梅沢富美男は句集完成後、お見事を3回決めている。
清水アナ 梅沢さんには名人たちよりもハイレベルな俳句で番組を美しく締めて貰いたいと思います。
浜田 皆さんの分もひっくるめて最後の締めです。
梅沢永世名人 勿論です。私の俳句をよく見てね、お勉強なさい(笑)。
小籔 ありがとうございます。
梅沢永世名人 娘も、よーく見てお勉強なさい(笑)。
新内 お勉強します。
***
浜田 特別永世名人・締めのお手本~!!
武井 凄いな、凄いな。
清水アナ 最初の2回は「ガッカリ」でしたが、それから3回連続で「お見事」と特別永世名人の名に恥じない実力を披露してくれています。
梅沢永世名人 2冊目の句集を目指して。
浜田 2冊目…(笑)。2冊目出すつもりですか。
梅沢永世名人 勿論ですとも(笑)。
◆『朝まだき 半夏生鯖 匂ふ市』 梅沢富美男※「朝まだき」は夜の明けきらない頃のこと。「半夏生鯖」は福井県に伝わる夏至から数えて11日目の「半夏生」に食べる丸焼きの鯖のこと。
【本人談】私はお仕事で福井の方に行った。そのことをスッと思い出した。これご覧になった方は「半夏生」も「鯖」も季語だと思われる。とんでも8分、歩いて16分(笑)(→浜田:なんやねん、それ)。福井の方では「半夏生鯖」と1つの言葉になっている。半夏生の時には他の地方だとタコを食べたりするが、福井の方では鯖を食べる。朝早くから鯖を市場で焼いている。それを皆さんが買いに来て、そして食べる。「あ~、何と素晴らしい一日だな」と思うようなことを思い出した。それを俳句にさせて頂いた。
■査定結果特別永世名人4句目の
お見事!理由:
こんな事も出来るんや本人 よっしゃ~!アハハ。
小籔 凄ぇ。
森口名人 ホントに凄い。
(査定評後)
本人 ありがとうございます。
夏井先生 まず「半夏生」。
「これ季語だよね」と思って「鯖」がくっつく。
「え、これどういうこと?」と思い始めたら作者の思うツボ。
「半夏生鯖っていったい何だろう?」と。
知らない人は調べ始めるだろうし、知ってる人は「あ~あれだな」と頷く。
福井というご当地をこのような言い方で表現してしまう。
少し勇気はいるが、やってしまえば結構カッコいい。
さらに「匂ふ」で焼いていることも伝わる。
そして最後の「市」で人の賑わいが全部出る。
季語はご当地では「はげっしょさば」と発音するらしい。
そのため、中七に「はげっしょさば」とルビを打って、助詞「の」を入れる可能性もないことはない。
でも、今日はこれをやれただけでもひとまず偉いと褒めた方が良いと思う。
浜田 もうこれじゃあ、直しはなしで。
夏井先生 直しません。
浜田 はい、直しはなしでございます。
小籔 凄い。
武井 さすが。
●解説のポイント |
「半夏生鯖」を調べさせるのが作者の思う壺 福井というご当地を表現 勇気はいるがやってしまえばカッコいい 「匂ふ」で焼いていることも伝わる 「市」で賑わいが出る 季語はご当地で「はげっしょさば」と発音する ルビで「の」を入れる可能性もある 今日はこれをやれただけでも偉いと褒める |
添削なし
時候「半夏生」と動物「鯖」を合体させ、夏の生活「半夏生鯖」としてご当地の朝市の光景を詠んだ定型句。3年前に「半夏生宅配ピザのMサイズ」と詠まれていたご本人。映像のない時候の季語+生ではない動物を合わせたことで、映像や実態のある「生活」季語として便宜上分類をしました。ご当地季語は2年前の炎帝戦で「若夏やTシャツという戦闘服」と沖縄季語に挑戦していた御大。福井のご当地を表現したこの句は、中七に季感の単語をドスンと入れた大技が成功した印象です。「朝まだき」「匂ふ」「市の朝」も番組黎明期に別の句で既に用いられた表現であり、句の単語自体はデジャブ感満載ですが、時間情報から嗅覚へと繋がり「市」で背景となる活気も聞こえる、まさに五感全体に訴える形に。「焼き鯖」ではなく「半夏生鯖」を用いたからこそご当地の共感を呼び起こす効果を生み、福井県のふるさと戦があれば優勝にも匹敵するでしょうか。三段切れについてのご指摘がありましたが、中七から下五へ展開できる型が明快のため気にする必要はないでしょうし、「はげっしょさば」と地域重視で読ませるよりかは「はんげしょうさば」の読みやすさの方が読み手に理解しやすい可能性もあり、選者は原句を重視した形に。4回連続お見事と絶好調な御大の今後に注目です。
梅沢永世名人 もう、
来年の夏頃にはまた句集が出るんじゃないか。
浜田 いやいやいやいや。
★次回6/1の俳句の兼題は「雨の日のカフェ」です。
色鉛筆査定の後半の俳句査定。兼題は「鯖の弁当」。個人的には昨今のSDGsを意識した兼題と解しましたが、グルメ番組で取り上げられると売り切れが出るほどの人気の鯖缶。魚が獲れなくなっていることが問題視されますが、鯖の漁獲量は横ばいで推移し、比較的供給は安定しているそう。鯖の弁当も鮭弁当に代わって目にする機会が増えた印象です。
季語は全員夏でしたが、動物「鯖」と生活または時候の季語を用いて季重なりとしたのが何と4人もいる形に。1位の武井さんは単独で「鯖」を用い、梅沢さんが「半夏生鯖」に着目。森口さんは唯一「肴」の形で生活「父の日」を季語としました。1位が船人、2位が大工の昼食を描写した一方、3位以下は自身の体験に着想。森口さんは父の手土産の肴、村上さんはシンクの鯖缶、御大が福井の焼き鯖へと発想を展開し、様々な「鯖」の様子がみられました。
さて、そろそろ梅雨入りのシーズン。集中豪雨による災害は大変厄介ですが、適度な雨は俳句の種としても日常の営みとしても必要なもの。様々な季語を身近に感じながら句を詠むことに挑戦したいものです。
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