2023年4月20日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※25日未明に全て更新しました。お待たせ致しました。
→プレバト!!
公式ツイッター/
公式インスタグラム挑戦者→西村真二[2],村上弘明[4],春香クリスティーン[2],篠原ゆき子[3],森口瑤子[35],横尾渉[73],梅沢富美男[191] ※数字は挑戦回数●お題:水筒

※環境志向の高まりで持参する人が増えている。「マイボトル」「タンブラー」の5音も俳句に取り込めそう。
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位70点 | 西村真二 (コットン) | 駆ける子と背で鳴る氷夏囃す | かけることせでなるこおりなつはやす |
2 | 凡人2位67点 | 村上弘明
| わかめ狩り水筒ころがす親父の船 | わかめがりすいとうころがすおやじのふね |
3 | 凡人3位60点 | 春香クリスティーン
| 春暁や陣痛室で握る水 | しゅんぎょうやじんつうしつでにぎるみず |
4 | 才能ナシ4位37点 | 篠原ゆき子
| 背後より歳時記覗く椿あり | はいごよりさいじきのぞくつばきあり |
5 | 名人5段へ1ランク昇格 | ★森口瑤子
| 水筒の底にゐる春愁の澱 | すいとうのそこにいるしゅんしゅうのおり |
6 | 名人10段★3へ1つ後退 | ★横尾渉 (Kis-My-Ft2) | 花冷の砂かぶり席売り子駆く | はなびえのすなかぶりせきうりこかく |
7 | 特別永世名人なのにガッカリ… | ★梅沢富美男
| 水筒の囀り満たし一息に | すいとうのさえずりみたしひといきに |
順位発表順:2位→3位→最下位→1位→編集後記🔷
挑戦者語録村上弘明 | △2×1 | ※前回「雲の峰写生する手に筆と傘」で才能ナシ。 |
篠原ゆき子 | ○1△1 | ※前回才能アリ。ドラマ『相棒』で共演する名人・森口瑤子を俳句の師匠と呼び、結果を出したいと意気込む。 |
春香クリスティーン | ○1 | ※前回8年半前に「はや6年遥かスイスや古都は雪」で才能アリ。結婚・出産も経験し、夏井先生のYouTube動画を100本近く視聴して臨む。 |
西村真二 | ×1 | ※慶応義塾大学出身の元アナウンサーで前回才能ナシで酷評。それ以来移動や仕事の合間も俳句のことを考えていた。 |
★ランキングシートの分布は
才能アリ1名、凡人2名、才能ナシ1名●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ70点 西村真二(コットン)『駆ける子と 背で鳴る氷 夏囃す』【本人談】少年野球をずっとやっていて、お母さんが水筒を持たせてくれた思い出が。それをリュックの中に入れていて、「早くグラウンドに向かいたい」と走ってるとき、背中で一定のリズムで「カランカラン」と鳴っているのが合いの手を打ってくれているみたい。
梅沢永世名人 いや~良い俳句だね。
本人 おお!
梅沢永世名人 「背で鳴る氷」、ここが良いね~。
浜田 これ横尾君はどう思われますか?
横尾名人 夏らしくて凄い素敵な句だと思うんですけど、「夏囃す」は違う言葉でも良かったのかなと思いますけど。
本人 あ、ここ最後まで悩みました。
夏井先生 中七が一番良かった。
音も聞こえて揺れている感触もわかる。
さらに一番褒めないといけないのは、「水筒」という言葉を使ってないのに"これは水筒だ"と。
しかも、水筒の中に氷が入っていて、しかもリュックの中に入れているに違いない。
これできるのが誰だろう?と思ったら、こともあろうにこの男かとびっくりした(笑)。
きょん 褒めてるんですよね、先生。
夏井先生 はい。もうびっくりした。
私は誰かが成長する瞬間を喜びにこの番組やっているんで(笑)。
ただ、横尾さんの指摘に私も賛成する。
この「囃す」が勿体ない。
擬人化の季語でも音が聞こえるような印象がある。
一番大事な「氷」が音の印象。これをやると逆に「氷」を殺してしまう。
単純に「夏の空」で良い。ここで光景がバーンと広がる。
前回からの伸び率は素晴らしい。もうこれがマグレでないことだけを祈りたい。
浜田 そうですよね。いやでも才能アリおめでとうございます。
●解説のポイント |
中七が最も良い 水筒の鳴る音や氷の感触が伝わる 「水筒」と書かずに氷とリュックの中の状況を表現 横尾氏の下五を変える指摘に賛成 「囃す」の音の印象と「氷」の音を相殺する 単純に「夏の空」でも光景を広げる 前回からの伸び率素晴らしい |
添削後
『駆ける子と 背で鳴る氷 夏の空』
時候「夏」と水筒の氷を鳴らしながら駆ける若い子の場面を描写した定型句。一読して俳句の妙味を押さえており、前回が才能ナシだと思えない形。若者の疾走感が表現された気持ちの良い一句です。「氷」は晩冬の季語で寒さによりできる氷壁などを指しますが、この句は内容及び型から「夏」が主たる季語だと明快です。助詞のご指摘の通り、上五「と」中七「で」は文語体重視ならそれぞれ「の」「に」に変更すべきで、特に「と」を並列の意味で受け取ると作者の背にある氷が鳴る意味に捉える可能性もあります。季語の擬人化「囃す」で手を打つなど音の印象を強く出しており、7単語のうち動詞3つの忙しなさが全体の疾走感を演出したともいえますが、「囃す」が結論めいているのが気になる点に。実際には「氷」「囃す」の音の被りにより減点されました。季語への挑戦を極めればさらに評価される可能性を感じました。
◆2位
凡人67点 村上弘明『わかめ狩り 水筒ころがす 親父の船』※「わかめ」が春の季語。
【本人談】学生時代の春休みの時期にちょうど「わかめ狩り」があった。握り飯と水筒を持っていく。波で(船の上にある)水筒の転がり具合が違う。それをスッと思い出した。
梅沢永世名人 いや、良い俳句なんですけどね。うん、五七五にまとめてくれれば良かった。中七が中八になってたんですよ。
浜田 なるほど。では語順ですか?真ん中からとか?
夏井先生 いつも使っている水筒が船の中に転がしてある。良い所に目を付けた。
本人 ありがとうございます。
夏井先生 しかも父のわかめ狩りの船であると。
そこにもリアリティーが物凄くあった。
これは本当に惜しい。あとはリズム・韻律を整えるだけ。
浜田さんがしっかりと仰ったが、「水筒」からですよね、浜田さん。
浜田 (嬉しそうに)そうですよね(笑)。
夏井先生 私もそう思う。先に「水筒」から。
「水筒を」で最初の5音ができる。
「ころがし」で下五に続ける。
「親父(おやじ)」と仰りたい気持ちも分かるが、「父(ちち)」とすれば韻律が整う。
季語は「若布(わかめ)」と漢字で書いた方が良い。
「若布船」が季語としてある。
「水筒をころがし父の若布船」。
梅沢永世名人 あ~良い!
本人 なるほど。
夏井先生 こうしてたら、今日は間違いなく70点以上。
浜田 まあでもお見事、2位でございました。
本人 ありがとうございます。
浜田 点数も高かったんで。
●解説のポイント |
船の上で水筒が転がるという着眼が良い 父のわかめ狩りの船のリアリティーも強い リズムを整えるべき 浜田が正解した中七からの語順 季語を「若布船」として定型に |
添削後
『水筒を ころがし父の 若布船』
春の植物「若布」の漁を行う父の船で水筒が転がっている場面を描写した中七・下五字余り。岩手県出身らしい句材で、大変オリジナリティの強い実体験だと伝わり、水筒の様子を描写した着眼点は見事です。「親父」の語感により、少々野暮で人間臭い印象も醸し出しています。中八が勿体ない点ですが、それ以上にご指摘の通り「ころがす」が能動的に転がした意味になる(船が水筒を転がすなら擬人化となる)点に大袈裟感がありますし、若布狩りの全体の光景→水筒→船の全体というカメラワークが雑な語順が勿体ないでしょうか。動詞は添削でそのままでしたが「水筒はいま転がりぬ」など人物を入れずに描写する手法も考えたくなります。
◆3位
凡人60点 春香クリスティーン『春暁や 陣痛室で 握る水』※季語「春暁」は春の薄暗い明け方のこと。
【本人談】魂を込めて自分の出産を一句に。夜中に「もうすぐ朝だ、もうすぐ生まれる」って時に、陣痛室でギューッと(ペットボトルの)水を握りしめた。「まもなくもうすぐ夜明けだ。もうすぐ長い妊娠生活も終わって新たな命の誕生だ」っていう魂を込めて作った。
梅沢永世名人 これね、勿体ないなと思うんですよ。物が分からない。僕らはこうやって見てますから、水筒か何かを握っているんだなって分かりますけど、おしぼりなのか、ペットボトル握ってんのかって。それが勿体なかったなと思いました。
夏井先生 実体験に思う。
(出産の)実体験から出た季語が「春暁」だろうと。
惜しい点が「で」からの繋がりとなる、「握る水」というここが少しあやふや。
これはおっちゃんが言った通り。仮に「水筒」としておく。
「水筒を握る」といえば状況はわかる。
そうすると語順は逆からくるしかない。「握る陣痛」。
「室」までやると、握っている手から光景が広くなりすぎる。
空間が大きくなりすぎる。
下五に置く「や」は不安定になるため、季語を「春の暁(あけ)」とすれば、ゆっくり収まる。
こうすると、出産の光景に言葉がグーっと言葉が寄ってくる。
でもこの姿勢はとても良い姿勢。俳人の姿勢だと思う。
本人 こんなに嬉しい言葉を頂けると思わなくて嬉しいのと、まさに心情がそのまま俳句にされて納得です、はい。
●解説のポイント |
出産の実体験で出た季語が「春暁」 下五があやふやなのが御大の指摘通り 「水筒を」と具体的にして上五に置く 「室」だと手から光景が広くなりすぎる 下五の「や」は不安定のため「春の暁(あけ)」に 俳人の姿勢としてとても良い |
添削後
『水筒を 握る陣痛 春の暁』
時候「春暁」と出産を間近に控える妊婦の動作を描写した定型句。大変実感がこもった一句で陣痛の痛みを堪える妊婦の状況と春暁の明るい兆しの印象が重なっています。「水」が何を指すか不明との指摘で「水筒」に添削はされましたが、個人的には「水」を認めてよいと思いますし、それが何かを想像させるのも俳句の醍醐味。ペットボトルかおしぼりか、はたまた氷を入れた水袋の可能性もあり、想像力を喚起させるため句会で点が入る印象すらあります。実際に握る感触を考えれば、水の冷たさや柔らかい感触を実感できる透明なペットボトルなのでしょうが、「水筒」では逆に硬さが主張されて少々詩情が下がるようにも感じます。この句は「で」の散文的助詞を「に」に変える程度の形で味わうのが素直だと私は考えます。
◆4位
才能ナシ37点 篠原ゆき子『背後より 歳時記覗く 椿あり』【本人談】俳句を作るために公園に水筒を持っていき、ベンチに座っていた。後ろに椿が咲いていたため、歳時記を見ながら「この椿が歳時記の自分の欄を見たらどう思うのか」と思い…37点!?(笑)
森口名人 え~っと、擬人化難しいなって思いながら見てたんですけど…。
夏井先生 読んだ時、たかが歳時記を覗くのになぜ背後からかと疑問に思う。
俳句は「なぜ?」と思わせて着地で納得するケースは山のようにある。
いきなり「椿あり」と着地している。
"椿ではなく桜でも良いのではないか"と言われたら終わってしまう(季語が動く)。
少し手を入れる。
「背後より」という状況設定に音数を使うのではなく、椿の描写に音数を回す。
「歳時記を」で韻律ができる。
「覗くか」で軽く疑問"覗いているのだろうか?"ぐらいにする。
「あり」というのではなく、椿らしさを出す。
例えば、椿の花が目みたいに思う時がある。
「目のような椿」。「目のような」が椿の描写になり、擬人化になる。
今回は難しいことをやろうとし過ぎた。
梅沢永世名人 うん、難しいね。
本人 いや~ホント一気に映像になりますね。はい、あ~!
●解説のポイント |
たかが歳時記覗くのになぜ背後から? 着地で納得するケースもある 「椿」以外の桜でも良い(季語が動く) 状況設定の上五より季語の描写に音数を 「目のような」で季語を擬人化する 難しいことをやろうとし過ぎた |
添削後
『歳時記を覗くか 目のような椿』
春の植物「椿」を擬人化して歳時記を覗いているかのように感じた心境寄りの定型句。俳句で「歳時記」という単語を織り込む意欲は良く、情感のこもった「椿」との取り合わせも面白い挑戦です。季語を「覗く」で擬人化した点が初心者には難しい挑戦でしたし、植物が何かを覗くという類想は仕方ないでしょうか。「背後より」が作者主体の目線ながら中七は季語目線に主体が移動している詠み口に違和感があるのも非常に残念。特に上五で大きくコケてしまっています。季語が動く問題を指摘されましたが、水木しげるの”百目”の妖怪のように固有名詞を利用して季語を描写する一手も面白いかと思いました。
★特待生昇格試験★→名人4段・
森口瑤子はここまで2連続昇格中。
◆『水筒の底にゐる 春愁の澱』 森口瑤子※「澱」(おり)とは液体の中に沈んだかすのこと。
西村 なんて?
【本人談】春の何とも言えない鬱陶しい気持ちってわかりやすくない。いつ来るか分からず、どこに潜んでいるかわからない。それは、水筒の底に"ある"というよりも潜んでいる「澱」の中にもあるなと感じるという。
梅沢永世名人 これはもう森口節ですよ。うん、考えさせられますね。向こうの詠んでる人の気持ちをね。これは(昇格)いったんじゃないかな。
本人 (両手を耳に当てて)いや~マジか。
梅沢永世名人 とりそうだ。
本人 あ~怖い。
★評価ポイント―
■査定結果名人5段へ
1ランク昇格理由:
―梅沢永世名人 よいしょ~!
篠原 すご~い。
本人 ああ~。嬉しい。
夏井先生 水筒の底を覗くといえば、"あとどれくらい残っているか?"とか、それから洗う時とかぐらいかなと思う。
そういう瞬間を捉えて、こういう一句ができるのが良い。上手い。
悩むとしたら「にゐる」にするかどうか非常に悩まれたはず。
本人 はい、非常に。
夏井先生 「ゐる」とやることで、「春愁」というものが意思を持って底にいるかのような不穏さを表現する。
そういうニュアンスをちゃんと表現できている。
大したものだなと思う。直しはいらない。
浜田 おめでとうございます。
本人 ありがとうございます。
●解説のポイント |
水筒の残量や洗浄時の場面 その瞬間を捉えて一句ができるのが良い 「にゐる」が悩まれたはず 春愁が意思を持って底にいる 不穏さを表現したのは大したもの |
添削なし
春の生活「春愁」と水筒の底に存在する澱を描写した心境句。水筒の底の澱みで春愁を見つけているという独特かつこなれた詠み口ですが、句会なら好き嫌いの意見が分かれそうな一句です。「にゐる」で後半を擬人化しており、「溜まる」などの自然な表現よりも「春愁の澱」の存在を作者が自意識的に強く認識している点を認めるか否かが一点。さらに「春愁」が孤独の哀感を表現する非常に心情寄りで抽象的な季語だけに、それを「の澱」と具象化することでより擬人化が強くなる表現を認めるか否かが二点目です。以前も「春愁をエスカレーター下へ下へ」と詠まれており、この場合の「春愁」は”実際に春愁を感じている空間を”と読めますが、今回の句の場合は作者が春愁を感じている度合いによらず、”春愁という物をまとっている澱がある”など客観的な意味に受け取る可能性もあります。単純に「春愁や」や「春の愁ひかな」などとは異なる季語の用法で、俳句の流派次第で意見が大きく割れそうな印象です。森口さんは「おウチde俳句…」の登録者ということもあり、プレバト!!俳人の中で最も「いつき組」的な現代的な口語俳句をお詠みになる印象がありますし、「森口節」が認められての今回。色々述べましたが、「澱」の着地は一本取られたように素晴らしいので、実力を認めるしかありません。
【追記】例えば「水筒の底に澱あり春愁ひ」「水筒の底澱みをり春愁ひ」であれば素直に季語「春愁」を用いた描写として受け止められますが、淡白な調べになります。高度な具象性かつ独善性を持ったこの句の用法が正しいかは、俳句の知識が浅い私には判断が難しいことになります。あしからず。
★永世名人への道★→名人10段・
横尾渉(Kis-My-Ft2)は現在永世名人に王手の星4つ。
浜田 どうなの?今日?
横尾名人 いやもう、ここは獲りたい。下がりたくないです。
浜田 せやんな。
横尾名人 はい。
◆『花冷の 砂かぶり席 売り子駆く』 横尾渉(Kis-My-Ft2)※「砂かぶり席」は球場にあるグラウンドに最も近い観客席。
西村 うわっ。
【本人談】野球観戦で目線が低い席にいるとき、ドリンクの売り子さんたちが走り回っているのを見て「すごいな、頑張ってるな」っていう。この時期だと温かい飲み物とか(ポットで)色々と持っていると思うので、それも見て「大変だな」と思って作った。
梅沢永世名人 これはね、私たちみたいなジジイになるとね、「砂かぶり席」ってお相撲かと思っちゃうの。
浜田 相撲ですよね。
梅沢永世名人 何で売り子が走ってるんだろうな?って思うのね。
本人 はい。
梅沢永世名人 で、これ野球も「砂かぶり席」ってのがあるんだ。
横尾名人 はい、目線が低いところ、近いところ。
梅沢永世名人 なるほど勉強~。でも(笑)。
浜田 (芸人の)きょんみたいになったな、今(笑)。
★評価ポイント「花冷」「砂かぶり席」「売り子」の語順を選んだ是非
梅沢永世名人 あら、全部。
■査定結果名人10段★3へ
1つ後退理由:
狙いはわかるけど…ここはどこ?本人 うわ~。
西村 そうなんだ。
浜田 うわ~、もう王手かかってたのに。
(査定評後)
本人 あ~やっぱ梅沢さんの言う通り。
夏井先生 狙いが十分にわかる。
分かれば「花冷」という季語も受け取ることができる。
ただ、「砂かぶり席」と言われた時の認知度としてやはり(野球より)相撲の方が強いのではないかと思う。
「花冷」(→桜が咲く頃の急激な寒さ)で屋外。
「砂かぶり席」(→土俵近くの座席)でお相撲だと思う。
外の土俵?と思った瞬間に売り子が走っているため、「ちょっと待て。これはどこなんだろう?」と考え始めて、「そういえば野球でもこういう席があったのかもしれない」と。
辿り着くのに少し時間がかかる。
単純にやろうと思えば、先に「売り子」を出しておけば野球場に思う確率が高くなる。
「売り子駆く花冷の砂かぶり席」とやれば、ここから相撲にはいかない。「駆け」ている。
ここをもう一押し工夫ができていたら「おめでとう」と言いたかった。
いいチャレンジだった。
本人 いや、売り子で場所は分かるかな?って思ったんですよね。ずっとWBC(→ワールドベースボールクラシック)を観てたもんで。
浜田 アハハ。いやそらみんなそうやと思うけど(笑)。
●解説のポイント |
狙いが分かれば「花冷」も受け取れる 「砂かぶり席」の認知度は野球より相撲 花冷の屋外で外の土俵に売り子? 野球の外野席だと理解するのに時間がかかる 先に「売り子」を出せば野球場に思いやすい もう一押しの工夫があれば「おめでとう」だった |
添削後
『売り子駆く 花冷の 砂かぶり席』
春の時候「花冷」と野球場の砂かぶり席で売り子が走り回っている光景を意図した定型句。野球好きの横尾さんらしい句材と着眼。冷たいビールを売りながらホットドリンクも提供する微妙な季節の切り替わり時期を「花冷」の季語に託したのも良い部分です。野球場ならば、ご指摘の通り「マツダスタジアム」でも外野に「砂かぶり席」が設置されていますが、やはり大相撲の印象が強いでしょうか。添削では「売り子駆く」の終止形で切れて季語を含んだ後半との取り合わせの型により、野球場での光景を匂わせる形になっています。動詞は1つですが、「売り」「駆く」「冷え」「かぶり」という動詞めいたものを含む4つのワードが一句の調子を取りながら作者の淡く拙い微妙な心境変化を表現させる手法として効いています。「砂かぶり席」も然りですが、「売り子」はデパートの店員の可能性もありますので、言葉の持つイメージを吟味する大切さを痛感する「後退」評となりました。
★特別永世名人 梅沢富美男の締めの一句★
→特別永世名人・梅沢富美男は句集発売以来、早くも2度の増刷をしている。
梅沢永世名人 「歌も上手いし、踊りも上手いし、俳句もできて素晴らしいですね」って。
浜田 絶対嘘やわ(笑)。そんなん書いてるわけないやん、若い人が。
梅沢永世名人 なんですぐにそんな嘘だって言うんですか(笑)。
浜田 アハハ。
***
浜田 どうですか?特別永世名人。
梅沢永世名人 特別永世名人となった梅沢先生はですね…。
浜田 絶対「先生」言う。
梅沢永世名人 ここは今日は皆さんが「なんだ、こうだったのか!」という俳句を是非紹介していきたいなと思ってます。
浜田 なるほど。締めですからね。
***
浜田 いきましょう。「特別永世名人・梅沢富美男の締めのお手本」!
きょん イエーイ!
西村 見せて。
きょん 先生!
浜田 もう今日の最後の締めということで…。
清水アナ はい。ここから梅沢さんには名人たちよりもハイレベルな俳句で番組を美しく締めてもらいたいと思います。
→毎回番組を美しく締めるべく「締めの一句」を披露する
浜田 そらそうです。
梅沢永世名人 勿論です。
清水アナ それでは梅沢富美男特別永世名人の締めの一句をご覧ください。
浜田 はいどうぞ。
◆『水筒の 囀り満たし 一息に』 梅沢富美男浜田 ふ~ん。
【本人談】水筒って注ぐとチュクチュクとかピチュピチュみたいな音がしません? そういう音がする。それを見ながら「あ、小鳥が鳴いてるな」みたいな感じで一気に飲んだという。
一同 お~。
横尾名人 いや「囀り」をそのまま小鳥の囀りに比喩しているのはさすがだなと思いますね。
本人 私、「メルヘンのトミー」って言われてるんで。
森口名人 はい、素敵。
浜田 初めて聞いたわ。
横尾名人 初めて聞きましたよ。
■査定結果特別永世名人なのに
ガッカリ…理由:
背伸びしすぎ西村 え!?
本人 なんで「ガッカリ」とか言うの~。
(査定評後)
本人 なんでジジイに対して「背伸び」とか失礼な言葉使うの!?(笑)
夏井先生 聞いてみれば、上五中七が水筒を注(つ)ぐ時の音の比喩だと。
本人 そう。ピチピチって。
夏井先生 もう分かったらそれは!(笑)
「水筒の囀り」とやれば、「囀り」の季語が比喩になっている。
季語を比喩に使うと季語の鮮度が少し落ちるのはおっちゃんは知っているはず。
ただ、これは「水筒"の"」ではなく、もうひとつ挟む。
「さへづる」で"さえずる"の読みになる。
「水筒はさへづる」で比喩になる。トクトクトクって。
そして、私はどこにいるのかというと、囀りの真下にいる。
「囀りの真下」。
そういう風に言えば、囀りの真下でトクトクトクと注いでいると。
さっき「背伸びした句」と言ったが、実をいうと背伸びもできてない句だった(笑)。
本人 そんな高等なことやるの?
●解説のポイント |
水筒をトポトポ注ぐ音の比喩の意図 比喩に用いた季語の鮮度が落ちる 「水筒はさへづる」で比喩に さらに後半で注ぐ場所を描写する 実は背伸びもできてなかった できもしないことをやらない方が良い |
添削後
『水筒はさへづる 囀りの真下』
春の動物「囀り」を水筒の注ぐ音に比喩し、一気に飲み干した動作を「一息に」と表現した定型句。水筒を注ぐ場面から聴覚にいく発想はお手の物の梅沢先生。鳥の求愛や縄張り争いでほとんど雄が鳴くそうですが、その季語を比喩する点も面白い着眼。特に「満たし」は音の比喩でありながら、水筒の液体が満たされている視覚表現で二重の意味を表現し、一呼吸で飲み切ったというさり気ない時間経過まで表しています。とはいえ、実は意味不明にも思う句であり、「満たし」の動詞にこだわり過ぎて肝心の「注ぐ」がないため、比喩ではなく水筒そのものから鳥の囀りが聞こえると取られても仕方ない句。本人が自句自解を自慢げに語った後、初めて意味を理解した方もいたはずです。添削では前半が比喩、後半が場所という形で季語をリフレインする形になりました。句集完成はしましたが、不甲斐ない作品を連続で見せられてしまうと、「締めの」コーナー消滅の危機感も出てきます。三度目の正直となるか注視していきましょう。
浜田 梅沢さん、すみませんがこれ世に出せないので。はい、いきましょう。せーの、ドン!
(シュレッダー演出)
きょん ありがとう。
西村 かわいそう。
浜田 はい、梅沢富美男さん。残念でございました。
梅沢永世名人 いや私も一応背伸びはしましたよ。でもこれを考え出すのは私しかいないのよ、このメンバーの中では先生。
夏井先生 なんだ。もうできもしないことをやらない方が良いですよ。できることからやりましょう。
浜田 そういうことですね。
梅沢永世名人 できもしないことって失礼じゃねーか!
浜田 しぃ~!
梅沢永世名人 ええ!?
浜田 (人差し指を梅沢先生の口に当てる)
西村 図書館の怒られ方してる(笑)。
★次回4/27の俳句の兼題は「遊園地」です。
初めてのスクラッチアートの企画後半が俳句。兼題は「水筒」でした。マイボトルも小型化したものまでバリエーションが最近増えている水筒。保温が効く意味では冬の方に出番がありそうですが、軽くて洗う必要性がないペットボトルと何度でも使えて経済的な水筒のどちらを選ぶかは場面によって変わってくることでしょう。
季語は夏が1名、春が6名。時候が3名(「夏」「春暁」「花冷」)、植物が2名(「若布」「椿」)、生活1名(「春愁」)、動物1名(「囀り」)と分かれました。夏を用いた西村さんが1位を獲得。「水筒」を入れたのは3名おり、他は「背で鳴る氷」「握る水」「売り子駆く」と発想。最下位の篠原さんは椿の擬人化で兼題から掛け離れてしまいました。句材の拾い方が巧みな句が多かったものの、1位・4位・森口名人・梅沢名人には比喩・擬人化の用法が明確にみられ、その技術点が大きな評価の分かれ目になった印象を持ちました。
また、森口名人の査定ポイントや結果後の査定評が編集でカットされました。全体的に梅沢名人の評は放送される傾向(話を振られやすい)がありますが、それ以外の名人・平場の方の感想なども時間の許す限り放送してほしいと願うところで、俳句そのものの良さを鑑賞力で引き出すという点にも注力してほしいと願う昨今です。
さて、Twitterでも連絡いたしましたが、4月から通常回はトーク集及び文字装飾の色分けを簡略化させて頂きます。当ブログは6年目に突入しましたが、今後も細々と更新しますので、どうぞよろしくお願いいたします。