fc2ブログ

記事一覧

【春光戦決勝💰】20230330 プレバト!!俳句紹介【給与明細】

2023年3月30日放送 プレバト!! 俳句春光戦2023決勝戦結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
春の季節に行われる第7回春光戦決勝戦で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
※7日に全て更新しました。大変お待たせ致しました。

→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細(決勝ブロック) →編集後記

予選Aブロック記事
予選Bブロック記事
予選Cブロック記事
※過去のタイトル戦結果などはこちらまたはブログカテゴリからどうぞ。

挑戦者:<5級>勝村政信[14],<4級>森迫永依[7],<4級>春風亭昇吉[13],<名人4段>皆藤愛子[35],<名人6段>立川志らく[63],<名人10段★4>横尾渉(Kis-My-Ft2)[72],<永世名人>千原ジュニア[90],<永世名人>藤本敏史(FUJIWARA)[89],<永世名人>村上健志(フルーツポンチ)[84],<永世名人>梅沢富美男[189] ※[数字]は挑戦回数
見届け人:千賀健永(Kis-My-Ft2)、北山宏光(Kis-My-Ft2)、犬山紙子


●兼題:給与明細
給与明細
※仕事の思い出に発想は飛ばしやすいが、お金のエピソードは詩になりにくく、実体験と詩的な表現が必要という厄介な兼題。

※次回の金秋戦のシード権は「2位まで」(永世名人のシード権は要検討)と発表されました。
※順位クリックでリンク内移動します。

1位藤本敏史(FUJIWARA)永世名人給与手渡し春宵の喫煙所きゅうよてわたししゅんしょうのきつえんじょ
2位皆藤愛子名人4段ギャラ明細は二行療養の春ぎゃらめいさいはにぎょうりょうようのはる
3位梅沢富美男永世名人鞦韆に退職の日の花束としゅうせんにたいしょくのひのはなたばと
4位村上健志(フルーツポンチ)永世名人保護シール剥がす手応え啄木忌ほごしーるはがすてごたえたくぼくき
5位千原ジュニア永世名人口座開設朱肉拭き取る夏近しこうざかいせつしゅにくふきとるなつちかし
6位森迫永依4級本採用朧夜の缶チューハイほんさいようおぼろよのかんちゅーはい
7位横尾渉(Kis-My-Ft2)名人10段★4春光の起業ゲーミングチェア届くしゅんこうのきぎょうげーみんぐちぇあとどく
8位立川志らく名人6段桜蘂降る陸自の戦車しづかさくらしべふるりくじのせんしゃしづか
9位春風亭昇吉4級職を辞したる尾崎放哉鳥曇しょくをじしたるおざきほうさいとりぐもり
10位勝村政信5級我が給与マックのバイトに負けた春わがきゅうよまっくのばいとにまけたはる
順位発表順:2位→8位→9位→7位→4位→最下位→6位→5位→3位→1位
→編集後記

【トーク集】(クリックで展開)




●それでは順位別に見ていきます


1位◆『給与手渡し 春宵の 喫煙所 藤本敏史(FUJIWARA)

【本人談】
給与を手渡しで貰っていた時代の町工場をイメージした。給与を貰ったら気持ちもウキウキする。みんなで喫煙所へ集まって、タバコを吸いながら「今日、飲みに行くか?」みたいな。

千原永世名人 素晴らしいと思いますけど、1つ言わしてもらうなら、給与手渡しの頃なんて(喫煙所がなく)どこでも吸えましたから。
浜田 ふふっ。
本人 そんな、何今の?(笑)
千原永世名人 いや、喫煙所とか無かったから。どこでも吸えたから。
犬山 確かに。
本人 そんな、重箱の隅をつつくような。
千原永世名人 「喫煙所」の是非です(笑)。
本人 いやいや。

夏井先生 
「春宵(しゅんしょう)」という季語が中七にあって主役としてしっかり立っている。
「やっと給料日が来たよ」というほのぼのとした談笑が聞こえてくる。
タバコの匂いもする。
直に受け取る充実感とまさに懐が少し温かい。
そんな感じの「春宵」で、タバコを吸い終わったら「よし!今日はちょっと1杯やって帰るか」みたいな「春宵」、春の宵。
小さな所にちゃんと目をつけて季語を主役に立てる。
お見事だと思う。直しはいらない。

●解説のポイント
中七の季語が主役に立っている
ほのぼのとした談笑とタバコの匂い
直に受け取る充実感と懐の温かさ
「宵」でお酒一杯飲みに行く会話も
小さな所に目をつけて季語を主役に立てた

添削なし


2位◆『ギャラ明細は二行 療養の春 皆藤愛子
※2年前、突発性難聴と診断され活動休止を余儀なくされた実体験を詠んだ句。

【本人談】
数ヶ月事務所からお休みを頂いていた時、事務所から届いたギャラ明細が衝撃的で「再放送」とかしかなく、それを句にした。

村上永世名人 「ギャラ」ということによって、なんとなくこの人のしてる仕事というのが見えてくる上手さ。
梅沢永世名人 うんうん。
本人 ありがとうございます。
村上永世名人 うわ~、2位だよな~。上手いな~。
梅沢永世名人 これは上手いですよ。「春」というのがとても明るい春もあれば暗い春もあるんです。それを上手に表現している。「二行」というのがたまらないっすね。かぁ~いいな。

夏井先生 
今のコロナ禍の時代を詠んだ句なのかもしれないと受け止めた。
細部が上手。
「ギャラ」という言葉から入るため、芸能系の仕事だと想像はつく。
そして、その明細はたった「二行」であると。
この数詞にリアリティーがある。そこが良い。
季語をもう少しだけ主役に押し上げるとすれば、(語順を)逆からいった方が良いかもしれない。
梅沢永世名人 逆?
夏井先生 「療養の春や」とここで詠嘆する。
病気になることは誰にも可能性はある。
ここから「ギャラ」を出してくる。そうすると人物が詳しくなる。
共感を作っておいて、細部に切り込んでいく。
「ギャラ明細二行」。この「は」がなくなるだけで引き締まる。
梅沢永世名人 はい。
夏井先生 こうすると、今日はまた勝負が動いたかもしれない。

梅沢永世名人 あらららら。
藤本永世名人 そうか。

●解説のポイント
コロナ禍の状況とも読める
「ギャラ」で芸能系の仕事だと想像
「二行」の数詞にリアリティ
季語を押し上げるため語順を逆に
引き締めていれば勝負が動いていた

添削後
療養の春 ギャラ明細二行


3位◆『鞦韆に 退職の日の 花束と 梅沢富美男
※「鞦韆(しゅうせん)」はブランコを指す春の季語。

藤本永世名人 「鞦韆」?

【本人談】
「鞦韆」を探すのにどれだけ苦労したか。給与明細を貰ったことがないため、イメージが沸かない。ふと思った。私のような年になれば定年になるしかない。ブランコに乗っているように毎日毎日会社に行っていた。で、いつかは(ブランコから)降りなきゃならない。それを私の気持ちとして読ませていただいた。

本人 この「鞦韆」! この季語みんな知ってたか?
村上永世名人 はい。
本人 知ってたか、お前。
村上永世名人 はい、知ってました。
千原永世名人 歳時記に載ってます。
本人 知ってたのかよ(笑)。
浜田 フジモンどうですか。
藤本永世名人 「退職の日に」「ブランコ」を取り合わせたのはすごく良いと思いますけどね。

夏井先生 
「鞦韆」はブランコのこと。これと取り合わせてくるのはとても良い。
「退職の日の花束と」の「と」が大事。
花束"と"一緒に自分が今ぽつねんとそこにいる。
「鞦韆に」の「に」がいいのかどうかという問題。
「に」という助詞が散文的・説明的味わいになってしまう。
こういうことになる。
上五の「に」は要注意の助詞。
「に」以外にあり得ないかを吟味し、その上で使うか使わないかと。
そういうタイプの助詞になる。
梅沢さんの話を聞くと、ブランコ「に」乗っていると。
この「に」はとても大事な要素だと分かった。
そうなると、この「に」の説明臭さを少し取って余韻に変える。
「退職の日の花束と鞦韆に」。
最後の「鞦韆に」がブランコに腰掛けていると。
ここに余韻が生まれ、もう一度退職の日の感慨に戻っていく感じになる。
藤本永世名人 聞いてます?

浜田 梅沢さん、どうですか。こう直されると。
本人 恐れ入りました。
浜田 はい。
本人 でもね、なっちゃん。これで十分じゃない?
夏井先生 アハッ!
本人 絵面も考えなさいよ、絵面も(笑)。句集を出した永世名人が優勝して当然でしょうが。
夏井先生 あんたね、これでいいじゃないかって。自分を甘やかすんなら、句集出すのもうちょっと延ばした方がいいかもしれない。
浜田 あら。そんなこと言うから。
藤本永世名人 廃刊ね。
本人 編集で、切れよ今の!(笑)
千賀名人 いやもう伝わってるんですよ。

●解説のポイント
ブランコとの取り合わせは◎
最後の「と」で自分がぽつねんといる
要注意助詞「に」が散文・説明的味わいに
ブランコ「に」乗る作者の意図を尊重
語順を変えて「に」に余韻を出す
再度退職の日の感慨に戻っていく
(吠えるなら句集の出版を延期すべき)

添削後
退職の 日の花束と 鞦韆に


4位◆『保護シール 剥がす手応え 啄木忌 村上健志(フルーツポンチ)
※「啄木忌」は明治を代表する俳人・石川啄木の命日で4月13日。

【本人談】
石川啄木という人の生活苦、庶民の感じとかいう雰囲気と個人情報保護シールというのが明細にあって、あれを剥がすときの何とも言えない感触というものが何かこう相性良いんじゃないかなと思って作った。

藤本永世名人 お題の写真から「保護シール」を持ってきたのが、持ってきて句として成立させているのが良いかなと僕は思いますけどね。

夏井先生 
あの兼題写真から「保護シール」への着眼が良いというのには同感する。
しかも、難しい忌日の季語に挑戦をしていると。
ここのチャレンジも決して失敗はしてないと思う。
悩ましいのは「手応え」の部分。
私たちはあの写真を見ているため、「手応え」は剥がすときの指の感触だと無条件に思う。
ただ、この文字面だけ読んだとき、"今月の給料は絶対あるに違いない"という「手応え」と読んでしまう人の割合が何割かいると思う。
そうなると、「手応え」が金銭的に苦労した石川啄木に対しての皮肉めいた読み方をされると作者の思いと随分離れてしまう。
これは「手応え」を諦め、別のところを補強すると村上さんの言いたい所に真っ直ぐ行くと思う。
後半「啄木忌の」の後に「明細」とストレートに書いてしまう。
「明細」と書くとあの「保護シール」かと。
「保護シール剥がす」でその手の感触は再生できる。
さらに、この「剥がす」ではなく、「強(こは)し」(※「堅い」の意味)なら詩としての純度が上がってくると思う。
でも良い所に目はつけたと思う。

本人 いや~いいところに目ぇつけたなぁと思いますね(笑)。
浜田 いやいや、言うたよ、言うた。今言うた。

●解説のポイント
兼題から保護シールへの着眼が良い
忌日季語へのチャレンジも失敗ではない
悩ましいのは「手応え」
手触りではなく給料の額の手応えにも
金銭に苦労した啄木への皮肉だと意図が離れる
明細の保護シールで手の感触を再生させる
「強(こわ)し」なら詩の純度が上がる

添削後
保護シール剥がす 啄木忌
『保護シール 啄木忌



5位◆『口座開設 朱肉拭き取る 夏近し 千原ジュニア

藤本永世名人 あ~いいですね。
犬山 あ~いい。
梅沢永世名人 いいねえ。

【本人談】
15歳の時、吉本興業から「銀行口座を作ってこい」と言われ、100円でハンコを買って人生で初めて銀行口座を作った。その時、「ホンマに今からお笑いで飯食っていけんのか?」みたいな凄い不安と「ここにギャラが振り込まれるのか」と(期待を)思った15歳の春を詠んだ。

梅沢永世名人 いや、良い俳句ですよ。これが3位になった要因はですね。
本人 5位です。
浜田 5位です(笑)。
梅沢永世名人 いや…。
千原永世名人 (席を移動して)3位でいいですか。
浜田 アカンアカン。5位5位。
梅沢永世名人 私は3位も5位も気にしてないので(笑)。これはね、この季語の「夏近し」というところ。これがちょっと動きそうなんですよ(→他の季語でも成立してしまうこと)、この俳句だと。
本人 いや、これは動かないです。
村上永世名人 これは動かない。
浜田 アハハハハ。
本人 「夏近し」にはメチャメチャ不安も入ってるんで。
梅沢永世名人 いやいや、ジュニア。どっちにしたって、俺が3位にいこうと1位にいこうとお前より上なんだよ(笑)。
本人 それはもちろんそうですけど、季語は動かないです!
藤本永世名人 これは動かないですね。
梅沢永世名人 私は何かこれは…。

夏井先生 
中七がリアルだというのは間違いない。
最後に朱肉を拭き取った綺麗にしたハンコが見えてくるのがとても良い。
今、季語が動く・動かないという話が出てきた。
「夏近し」という季語を置くことで溌剌とした感じがあり、夏が近いということは春が終わっていくという微妙なニュアンスもある。
「この季語に自分の思いを託しているのだからいい」という意見と「これは色んな風に動く」という意見と、意見は半分に分かれるタイプの句だと思う。
季語の力というもの。
藤本永世名人 (ピースをする梅沢名人に)半々なんです。
夏井先生 半々です。
本人 僕でも15歳、すいません先生。4月じゃなくて、ちょっと遅れて入ったんですよ。っていうこともあって、自分の中では季語は動かないです。
夏井先生 作者として大事なところで、「自分としては動かさない」とお決めになればよいと思う。
もう一つのささやかな問題。
読んだときに上五・中七で一回切れるような印象に本人も引っ掛かっているのではないかと。
本人 そこはホントにそうです。
夏井先生 ですよね。
その理由は「近し」が形容詞で終わっていて、「拭き取る」も複合動詞で動作を書いている。
この「拭き取る」「近し」が揃い踏みするような形になるため、韻律が少しバタつく。
ここは「朱肉」を残すだけで良い。
「口座開設拭き取る朱肉夏近し」と。
本人 はぁ~。
梅沢永世名人 これはリズムがいい。
夏井先生 でしょ。
そしたら、朱肉の色とか、匂いとか、押すときの手触りを残して「夏近し」という映像を持たない季語に行くため、こうすれば季語「夏近し」が動かないともっと言い張れるようになる。
これは物凄い勿体なかったと思う。

本人 いやホンマですね、これです…これでした(笑)。うわ~やってもうた(笑)。

●解説のポイント
中七にリアリティがある
朱肉を拭き取ったハンコが見える
季語が溌剌とした感じ
季語が動く意見もあるが本人の意志を尊重
「拭き取る・近し」の用言で韻律がガタつく
中七の語順を変えるだけ
朱肉の色・匂い・手触りでより季語が動かない

添削後
口座開設 拭き取る朱肉 夏近し


6位◆『本採用 朧夜の 缶チューハイ 森迫永依

【本人談】
バイトは大体最初に試用期間があるが、試用期間が終わった後の「本採用」と書かれた給与明細を開いたとき、そのままちょっと嬉しくなって外で缶チューハイを買ってみたっていうような句。

千賀名人 「本採用」って聞くと何かすごく嬉しいことのイメージなんですけど、「朧夜(※月が霞んで見える夜のこと)の缶チューハイ」ってので、何かちょっと切ないイメージがくるから。気になりますね。
梅沢永世名人 いや、私はいいと思いますけどね(笑)。まぁ1つ言えることは、「缶チューハイ」じゃなくて「レモンサワー」にして。
藤本永世名人 出た。
浜田 いやいや。
藤本永世名人 またやった。
横尾名人 (サントリーのレモンサワーを)宣伝してる。
浜田 またやったな。
藤本永世名人 降ろされへんかな、あのCM。
千原永世名人 (CMの着ぐるみの)レモン脱いでほしいわ(笑)。

夏井先生 
やろうとしていることは良い。
「本採用」で一つ作って、季語を含んだ後半の塊の型に挑戦しているのも良い。
問題点は千賀さんが見事だと思う。ちゃんと見抜いていると思う。
千賀名人 ありがとうございます。
夏井先生 「朧夜」という季語が微妙になる。
本採用になりたいけど、決まらなくてモヤモヤしているのかと。
読み手が迷ってしまう。
ここにちゃんと「通知」が来たことをしっかり書いて押さえた方が得だと思う。
「本採用通知」とすれば、通知が届いたのは分かる。
「朧夜」ではなく、季語は「春夜(しゅんや)」とする。
でも、相当着々と色んなことを身に着けていて、この調子でやっていきたい。

本人 やっぱり季語というものがどういう意味を含むのかっていうのは、色んな俳句を読まないと自分の中に染み込んでこないと思うので。
藤本永世名人 うわ。
本人 勉強不足でした。
梅沢永世名人 あーいい。
本人 頑張ります、ありがとうございます。

●解説のポイント
季語を含んだ11音で意図は良い
朧夜だと本採用の嬉しさがなく読みに迷う
「通知」が来たことを書くべき
季語は「春夜」で嬉しさを示す
着々と学習していてこの調子で良い

添削後
本採用 夜の 缶チューハイ


7位◆『春光の起業 ゲーミングチェア 届く 横尾渉(Kis-My-Ft2)
※ゲーミングチェアとは、長時間ゲームをしても疲れにくい構造のゲーム用の椅子だが、最近は仕事で使用する人も増えている。

【本人談】
「起業」に発想を飛ばし、ゲーミングチェアを使っている企業が段々増えているようなので、これはいいなと思って取り合わせに使ってみた。

北山 「ゲーミングチェア」という長い言葉をここに入れてきたのは横尾さん凄いなと思いましたけどね。
千賀名人 「ゲーミングチェア」って聞くと1人しかいないのかなと。何か「起業」だったら何人もいて起業するイメージですけど。
梅沢永世名人 そうね。「届く」、ここが「届く」がマズいんですよ。「届く」とくると一人の所にしか来てないと思っちゃうんですよ。
浜田 なるほど。
梅沢永世名人 これ「購入」か何かにすれば。
本人 あ~。

夏井先生 
「春光の起業」という前半と「ゲーミングチェア」という具体的な物を取り合わせるのは良い。
勿体ないと思うのはまさに「届く」というここの問題だけ。
これはね、千賀さんもおっちゃんも偉いと思う。よく気づいた。
なぜ「届く」に違和感を感じるかと言えば、自分のところに一台だけ、"自分のため"のものが届くという印象・ニュアンスを持ってしまう。
こういうこと。
おっちゃんも何やら言ってましたけど、何て言ってたんですか?
梅沢永世名人 購入。
夏井先生 購入。惜しいですね(笑)。
千原永世名人 惜しいですね。
夏井先生 購入は自分一人が購入したのと一緒でしょ。
梅沢永世名人 あ、そうなっちゃうの、ごめんなさい。
夏井先生 これは起業らしさを入れれば良いだけ。
「導入」はどうか。
そしたら、カッコいいオフィスでみんながこれに座っている。
"こういう会社に就職したい"なんてそんな感じになる。
大事な押さえになる所だった。とても勿体なかった。

●解説のポイント
前半と「チェア」の物の取り合わせは○
「起業」に対して「届く」に違和感
"自分のため"のものが届くニュアンスに
起業らしさで「導入」とする
大事な押さえが勿体ない

添削後
春光の起業 ゲーミングチェア 


8位◆『桜蘂降る 陸自の戦車 しづか 立川志らく
※「桜蘂降る」は桜の花びらが散った後しべが降ることを指す春の季語。

【本人談】
給与明細の経験がないため、給料を貰って一番大変な人が誰かなと思い、自衛隊の災害の時かなと。それから「明細」と自衛隊の「迷彩」色も含めて。それで「桜蘂降る」。桜がバーッと散っているそこに、移動の戦車が実に静かだっていう映像が私の中で浮かんだため、それを詠んだ。

昇吉 この「給与明細」と離れているのと、あとどこでしょうか?場所は?
本人 基地だよ。公道走ることあるもの。
昇吉 ありますけど、あまりリアリティーを感じない。どこなんだろう?
本人 自分で調べろ!(笑)「どこなんだろう?」って。

夏井先生 
テーマとの絡みとの点において多少損はしている。
作品の方向性としては、なかなか面白い物を出してきた。
「桜蘂降る」全体が季語。桜の花びらが散った後に蘂(しべ)だけが落ち、地面がほんのりと桃色に感じ取れると。
美しい優しい季語。
それに対し「戦車」を取り合わせることで対比も出た。
柔らかさ・硬さ、冷たさ、大小。
勿体ないと思うのは、この「陸自」という言い方でまとめてしまったのが損したと思う。
ここを別の言い方すると、先ほど昇吉さんが突っ込んでいた部分も結構うまく解消できると思う。
「陸自」をやめて「戦車」から。
「戦車しづか」から始める。動かない戦車だけを思う。
「桜蘂降る」の後、ここがどこかを書くだけ。
「駐屯地」でどうか。ここに空間ができる。
駐屯地の大きな空間の中、静けさの中に桜蘂が降ってくると。
これ、添削の形で今回もし出てきていれば、上位3句には入れたいという可能性を持った句だったと思う。

本人 なんか、8位でもとっても嬉しいです(笑)。

●解説のポイント
テーマとの絡みは損
桃色の地面と硬く冷たい戦車と対比が○
「陸自」より「駐屯地」でリアリティを
「戦車」から始める語順に
添削例なら上位3句に入れた可能性

添削後
戦車しづか 桜蘂降る 


9位◆『職を辞したる 尾崎放哉 鳥曇 春風亭昇吉
※尾崎放哉は大正時代に活躍した自由律俳句の代表的俳人。酒におぼれ職を転々とするなど波乱の人生を送った。

【本人談】
尾崎放哉は自分で何回も職を辞めたり辞めさせられたりしている。人は生きていくために働かなければならないが、「仕事辞めたい」「職場が合わない」ことが時たまある。「鳥曇」(※渡り鳥が北へ帰る頃の曇り空)は鳥が列になって飛んでいくこと。集団主義というか、それに取り残されるみたいなことを尾崎放哉に重ね合わせて詠んだ。

志らく名人 画(え)が浮かばないですよね(笑)。
藤本永世名人 画は浮かぶでしょ、「鳥曇」で。
梅沢永世名人 これはね、「尾崎放哉」と書くんだったら「放哉」だけで皆さん分かるんです。そういうところを勉強しないと。えぇ?さっきから偉そうに。師匠に何を言っているんですか!(笑)
藤本永世名人 めっちゃ言われるやん。

夏井先生 
作者が分かってみると昇吉さん。
また知識をねじ込もうとしやがったと(笑)。そんな感じがしないでもない。
尾崎放哉は自由律俳人。有名な教科書にも載っている句で「咳をしても一人」。
藤本永世名人 あぁ! 
夏井先生 これを作った方。
発想自体は悪くないが、おっちゃんの提案に賛成する。
尾崎放哉は「放哉」で十分通用する。
そうなると、上五の部分。
「職を辞したる」なら"一回辞めた"、"定年まで勤めた"と普通に読む人がいるはずだが、そうでないことを匂わせたい。
頭に「またも」と入れる。「またも職辞せる放哉」。
梅沢永世名人 あぁいい!
夏井先生 放哉らしさが少し出て、鳥曇という季語に収斂(しゅうれん)していく。
それはできるかと。
人の名前を出してくる場合は、もうひと工夫あってもいいのかなと。
そこが勿体なかった。

本人 いや~、でもよく分かりました。師匠になれるように修行してきます。
浜田 はい、分かりました。

●解説のポイント
知識をねじ込もうとしやがった
自由律「咳をしても一人」で有名
「放哉」で通用する
何度か辞めたことを匂わせる表現に
放哉らしさと季語への収斂
人物名を出す場合はもうひと工夫ほしい

添削後
職 辞る放哉 鳥曇


10位◆『我が給与 マックのバイトに 負けた春 勝村政信
※マクドナルドのアルバイトに憧れていた勝村が、その時の思い出を詠んだ一句。

梅沢永世名人 何?

【本人談】
高校を卒業して就職した。初めて貰った給与が少なくて十万ちょっとで、仲間と(居酒屋で)飲んでいるとき、(友人は)マックでバイトしていた(ことを知った)。その頃マックのバイトは凄い人気があり、衣装も綺麗だった。それでも(当時)時給400円くらいで、「大変だね」なんて話していて、「今日は僕が払うから」と(みんなの分の会計を)払った。家に帰って、何気なく"給与を時給で計算したらいくらくらいになるのか"と計算したら300円くらいだった。その時の気持ちのまま詠んでみたらこの結果だった。

夏井先生 
実体験を詠んだ句に思った。
この考え方に類想感があるというのが1ついえる。
テーマに完全に合致したが、詩がないという一言になってしまう。
ご本人の話を聞くと「マック」は絶対にいると思った。
勝村さんの時代もそうだろうが、私のちょっと上の世代もあの頃は(マクドナルドが)憧れるバイトの一つだった。
憧れていた「マック」は外せない。「我が給与」も外せない。
そうすると季語の入る余地が「春」くらいでしかない。
直したところであまり変わりはないが、「マック」からいった方がいいかもしれない(笑)。
「マックのバイトに」。
少し前向きに「追いつきたし」と明確に願望を書く。
「春の我が給与」とすると、春だけが多少季語としての匂いを発するが、添削したところで大して違いはないです(笑)。

本人 ま、俳句じゃなかったですね。また頑張ります。
浜田 はい、分かりました。

●解説のポイント
社員の時給換算がバイトに負ける考えは類想
テーマに合致したが詩がない
昔はマクドナルドが憧れバイトの一つ
上向きの願望をストレートに書く
添削したところで大して変わらない

添削後
マックのバイトに 春の 我が給与


★放送では1位前に発表された、次回2023年夏の炎帝戦のルールを発表
◆炎帝戦2023のルール◆
①参加資格は過去に1度でも才能アリを獲得した人物(才能アリ経験者・200名以上該当)
②俳句の募集は本日(3/30)から2か月間優秀上位者がスタジオ収録

兼題:
行きつけのお店
※俳句ポスト365のように投句して上位入選を争うタイトル戦のようです。


関連記事
スポンサーサイト



コメント

トーク集の順位発表の一番下の部分の1位藤原敏史(フルーツポンチ)と書いてありますがFUJIWARAですね。

4位~1位

4位 村上永世名人
・「保護シール」と「啄木忌」の取り合わせ。
・「手応え」という語句について、「手応えがあった(思ったより収入が多かった)」と、ポジティブな意味で捉えた夏井先生には、そのポジティブさと啄木の比較から、啄木への皮肉とも取れると捉えた。
・保護シールに隠された文面について、「保険金が、これだけ〇月〇日に振り込まれますよ」というお知らせだった経験は確かに私にはある。
・しかし、給料明細を保護シール付きの葉書という形でもらったことはないので、啄木への皮肉は感じられなかった。
・石川啄木が借金まみれの人生だったと思うと、家賃や税金の督促状ではないかと感じられる。
・「手応え」について感情をまじえず触覚的刺激だけと思うと、そこには戦々恐々としたものがあるかもしれないと感じられた。

3位 御大
・原句:ブランコに、退職の日の花束と(共に、あるいは「花束を持って」)、(居る)
・添削句:退職の日の花束と(共に、あるいは「花束を持って」)、ブランコに、(居る)
・原句と添削句はカメラワークが違ってくる。
・原句については、まずはブランコが提示されるので、空間的にブランコ全体をキャッチできる程度にカメラが離れている。そこから、退職の日の花束を持った65歳くらいの人がブランコに座って軽く揺れている景へとクローズアップされていく。
・添削句は、「退職の日の花束」と、花束のアップから始まる。詠み手は退職の日の花束を持っていて、その手元を見ているところから始まる。そこから「花束とともにブランコに居る」という展開となる。ブランコから見える景色がどんなものでどのように見えるのか、ということを分かりたくなるために、「退職」へと意識は帰っていく。
・原句でもいいが、より生々しくなり、良いはやはり添削句だと思う。

2位 皆藤名人
・原句においては、「別に『療養の夏』『秋』『冬』、どれでもいいのでは?」と思える。一昨年位前か、皆藤さんは何かの病で活動してない時期が確かにあったけども、、、
・添削句では、「療養の春『や』」と詠嘆することで、「療養をしている春」が詠み手にとっては特別な春だったのだなぁと窺える内容となった。
・なお、原句について、療養の春でも夏でも秋でも・・・というのは、皆藤さんが突発性難聴と診断を受け、治療と療養をして仕事を休んでいたのは2021年の5月半ばから7月だから、歳時記的には夏だったからで→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%86%E8%97%A4%E6%84%9B%E5%AD%90

1位 藤本永世名人
・春宵、喫煙所でざっくばらんに「飲みにでも行こうか」とブルーカラーの人たちが語らいあってる風景が浮かぶ。この句で良い点だと思う。
・季語の選択という点で、今回の優勝句になったと思った。
・一方、正直、「これで一位なのか?」というのが感想。
・上句の「給与手渡し」という言い回しが、寸足らず。ここが不満だった。どうにか、七・七・五の形に収めようとしたのだろうか。
・本来ならば「給与」と「手渡し」の間に助詞が置かれるべきで、字余りでも良いから助詞を入れた方が良かったのではないか。
・助詞について、万一、「を」を入れると、「給与『を』従業員みんなに配った、そのあとの春宵の喫煙所での一服であることよ」となり、経営者側の句ともとれる。
・一方で、「給与」「は」「手渡し」とした方が、給与を受けた側の視点となるのが明確になり、給与をもらった、タバコを吸いつつ、職場の仲間たちと一杯飲みに行こうかという話をしてる、という雰囲気が出たと思える。
・なんなら、「ギャラ」という言葉を使い、「ギャラは手渡し春宵の喫煙所」とでもした方が、詠み手が芸人だけに、かえってリアリティが出たかもしれない。

2位の句以下、添削が入ってしまったり、1位の句についても、どこか物足りなくも感じられたタイトル戦だった……感覚的なところでブルっと来る句が無かったなぁ、と。

そんな中、5位ではありますが、ジュニア永世名人の句。銀行口座を開設するまでの人間ドラマを思わせてくれました。
自分としては、この句が一番好きでした。

春光戦 10~5位の句

まとまった時間が取れなく、まだ録画したものを見れてない状況です。私のコメントはこちらのブログから句の情報だけを得てのコメントとなります。

10位 勝村さん
・零細企業の正職員や保育士、あるいはプログラマー……自分の給料を時給換算して「〇〇のバイトより時給換算すると安いな」と考えたり誰かと話したりしたことのある人も多いかもしれない。この点では、共感性は高いかもしれない。
・共感性があるということは、「あるある」であり、類想と
捉えられても致し方ない。
・類想であることと、中句が問題。中八になっているのと、「マック」「バイト」と略語が二つ続いたせいか、軽薄に見えた。

9位 昇吉さん
・季語「鳥曇」は鳥が越冬地から去るころの曇り空で、天気もそうだし、鳥が無事かどうか、という心配も生じる。辞職して先行きが不安な心情とはマッチしている。
・尾崎放哉が東大の前身だった東京帝大出身でエリートコースの人生を送っていたにもかかわらず俳人としての道を選んだことに、昇吉さんが自分を重ねたのかもな、とは思えた。
・句だけ見ると、辞職して先行き不安になるのは放哉に限らず誰でも同じではないかと。原句では放哉をわざわざ引き合いに出した意味があまり感じられなかった。
・放哉が何度も職を辞めたことに触れることで、句に彼を使うことに意味を持たせた添削句だと思った。

8位 志らく名人
・給与明細からどうやってこの句の展開に持って行ったのか。発想の飛ばし方については飛躍が過ぎてついていけない。もしも写真俳句なら、入選はしないだろう。
・桜蕊降る、赤い桜の蕊が降る(降った)景色だが、降って肩に落ちたりすると微かに音も鳴ったりするので、戦車であり駐屯地の静かな様子と対比されている。また、桜蕊が降る前段に桜の開花、満開、散るといった風景があると思ったり、一面に蕊が降った地面の赤さを思うと、取り合わせが自衛隊なだけに、また別な心情も喚起させられそうだ。

7位 横尾名人
・春景色の中の起業という上五と中句のゲーミングチェアでeスポーツチーム、あるいはeスポーツカフェを事業として始めようとしていると想像できる。
・下五が「届く」で添削を受けていたが、中句までの展開で違和感はあまり感じなかった。確かに、「導入」とした方が個人的な買い物ではないと感じられはするが。

6位 森迫さん
・明らかに季語の選択ミス。
・朧夜については、歳時記によってはぼんやりと霞んだ月だと解説が載っていたりする(新歳時記)。霞み具合を美しいと捉えるばかりの季語ではない。

5位 ジュニア永世名人
・「朱夏」という言葉を知っていれば、案外と季語動く・動かない問題は「動かない」と思える。
・韻律の問題から、敢えて三段切れの形と添削された。上句の「口座開設」、中句の「拭き取る朱肉」が結びついて、同じ空間(とある銀行)での関連性ある連続した行動だと受け止められる……この句なら、「口座開設」と「拭き取る朱肉」の間には「し」「して」「に」あたりを読み手が勝手に補完すると思えた。
・てか、「夏近し」の時期に口座開設をする状況を想像すると、自分ならば、給与の振り込み先の口座を開設したとか、子どもの誕生に合わせて赤ちゃん口座を作ってやったとか、そういうシチュエーションを思い浮かべちゃうから、なんか、この句の印鑑を拭いている登場人物にグッと来てしまいます。

4位以降はまた後日

ジュニアさんの句

中七を、朱肉拭き取る、から、拭き取る朱肉、に添削してました。
添削直後は、韻律が良くなった感じがして、納得したのですが、何回か見てるうち、三段切れでは?とも感じるようになりました。
もしかして、拭き取る朱肉夏近し、まで一気に詠めるのでしょうか?

ところで、9位までの句には詩があった、と先生が仰ってましたが、そもそも、詩ってなんですか?

誰か解説してください。

今回もおもしろかった。
千賀名人がいくつか的を得たコメントをしていたのが印象的だった。
最初の頃は自分の句すらまともに説明できなくてゴーストライター疑惑もあったけど、俳句の良し悪しをちゃんと的確に述べられるようになったのはすごい成長だなと。

永世名人のシード権については、永世名人の数が増えて、今度は横尾10段も上がってくるだろうし、決勝の顔ぶれが固定化しても面白くないので、シード権をなくして予選会から出てもらうのはいいと思う。
永世名人にも予選から必死になってもがいてもらおう笑

あと、東さん帰ってこないかな。

昨日のプレバト

次のシード権が2位まで(フジモン、皆藤さん)といい、奇しくも去年の金秋戦の時と同じ結果となりましたね。優勝狙い(注:句集完成後)のおっちゃん(梅沢さん)、カワイソス・・・。(永世名人のシード権は要検討だから、もしかしたら段位関係なく予選からの出場になるかも)
話は変わりますが、ジュニアさん、誕生日おめでとうございます。(この回の放送日がジュニアさんの誕生日だったため)

追記
次回(4/6)の放送から、おっちゃん(梅沢さん)の締めの一句が毎回(?)披露されるので、とても楽しみですね。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

プロキオン

Author:プロキオン
俳号「白プロキオン」。全てのブログ記事を編集しています。
毎度閲覧いただきありがとうございます。時間があるときにでもどうぞ。
全俳句を掲載してほしいなどのリクエストはコメントしていただけると助かります。

ツイッターでは番組の放送予告などをツイートしています。以下リンクからどうぞ。
プロキオン
***
番組公式ツイッター
***
着流きるお氏(プレバト兼題で俳句を独自査定する若手俳人・ブログ編者とは無関係です)
***
夏井いつき氏(プレバト!!出演の俳人)

人気記事ランキング

↓訪問者数です