2023年3月23日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※29日に全て更新済みです。お待たせいたしました。
→プレバト!!
公式ツイッター/
公式インスタグラム挑戦者→河野純喜[2],菊池桃子[4],平野ノラ[3],朝日奈央[6],森口瑤子[34],千原ジュニア[89],梅沢富美男[188] ※数字は挑戦回数●お題:レトルト
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位70点 | 河野純喜 (JO1) | レンジ置き場は空早春の一人暮らし | れんじおきばはからそうしゅんのひとりぐらし |
2 | 凡人2位50点 | 菊池桃子
| 春の風邪レトルト粥に夫の気持ち | はるのかぜれとるとがゆにおっとのきもち |
3 | 才能ナシ3位30点 | 平野ノラ
| 春眠やあちちと落とし目が開く | しゅんみんやあちちとおとしめがひらく |
4 | 才能ナシ4位20点 | 朝日奈央
| 大試験レトルトカレーが救助待ち | だいしけんれとるとかれーがきゅうじょまち |
5 | 名人4段へ1ランク昇格 | ★森口瑤子
| 白粥は三日目春の風邪飽きた | しろがゆはみっかめはるのかぜあきた |
6 | 永世名人23句で掲載ボツ | ★千原ジュニア
| コロナ7日目レトルト絞る遅日 | ころななのかめれとるとしぼるちじつ |
7 | 永世名人50句目に掲載決定 | ★梅沢富美男
| 湯玉ふつふつ春の厨の砂時計 | ゆだまふつふつはるのくりやのすなどけい |
順位発表順:2位→3位→最下位→1位→編集後記🔷
挑戦者語録河野純喜 | ○1 | ※同志社大学出身。前回「しるこ缶でジーンズ摩る冬銀河」で才能アリを獲得し、梅沢名人も大絶賛。手形足形アートに挑戦した佐藤景瑚と共に出演。 梅沢永世名人「(前回)覚えてます。彼はね、これからドンドン良くなります」 浜田「え、マジ?」 |
朝日奈央 | ○1△2×2 | ※前回「雛祭る見つめる先はシルバニア」で夏井先生から酷評を受けた。 |
平野ノラ | △1×1 | ※前回は「さらば夏イルカも君も泡と消え」で凡人。 |
菊池桃子 | ○1△2 | (今回は素直な句で勝負した) |
★ランキングシートの分布は
才能アリ1名、凡人1名、才能ナシ2名浜田 先生、今回の皆さんの出来はいかがでしたでしょうか。
夏井先生 技術が足りてないんだろうなって思われる句がありまして、私少々困惑をしました。
浜田 アハハ。あんな顔さしたらアカンよ、先生に。
●それでは順位別にみていきます◆1位
才能アリ70点 河野純喜(JO1)『レンジ置き場は空 早春の 一人暮らし』【本人談】3年前にJO1として東京に来て一人暮らしを始めた時、まだ電子レンジがなく、湯煎しながら一人暮らしを感じているというか。まだ電子レンジがない悲しさみたいなものを表現した。
森口名人 凄く語順が良いなと思います。「レンジ置き場は空」なんでだろうっていったら「早春」って。早い春が出てくるから、何か整ってない感じがあって。なんだろうと思うと、「一人暮らし」したばっかりだったのね。凄い状況が分かります。
浜田 なるほど。
夏井先生 前半はリアル。レンジ置き場は空であるというこの映像の部分。
そして、なんでと思うと一人暮らしを始めたまだレンジが届いてない、あるいは高くて買えないということも想像できる。
悩ましいといえば、韻律が少々ガタついているところ。
五七五から溢れてしまっている。
ここが調整できるようになると、特待生にも手が届いていくのだと思う。
例えば先に「早春の独立」と書いてしまう。
そうすると、何の独立だろうと1回思う。
そして「レンジ置き場は空」となって一人暮らしを始めた独立だと。
こういう展開もできる。
この方はちゃんと自分の体験をいい分量掬い取れる才能はあると思う。
楽しみにしておきたい。
清水アナ 素晴らしい。
浜田 はい、おめでとうございます。才能アリ1位でございました。
本人 嬉しいわこれ。
●解説のポイント |
前半の映像がリアル 一人暮らしの生活感を表現 韻律のガタつきを直せれば特待生に 「独立」が一人暮らしを思わせる 実体験をいい分量掬い取れる才能 |
添削後
『早春の独立 レンジ置き場は空』
時候「早春」と一人暮らしを始めた光景を描写で取り合わせた破調の20音。兼題から電子レンジを発想し、実体験を独特の言葉遣いで表現したのが高評価。上京したアパートや学生寮などで一人暮らしを始めた孤独感が「早」「空」「一人」で呼応しました。前入居者が電子レンジを使っていたことも前半で伝わり、中七季語と字余りの破調は初心者として挑戦的です。リズムの悪さが難点の上、「レンジ置き場は空」があまり聞き慣れないフレーズだけに季語が続くと「空」は”そら”と誤読されやすい語順となり、添削で問題点を解消。また、「早春」は立春以後で2月が中心。新年度というよりは冬の中で春が芽生えた頃の準備として入居しているため、オーディションや入学試験など一人暮らしのきっかけが色々と想像できます。ご指摘の通り、有季定型がしっかり作れないと特待生認定は時期尚早かもしれません。
◆2位
凡人50点 菊池桃子『春の風邪 レトルト粥に 夫の気持ち』梅沢永世名人 うん…。
【本人談】風邪をこじらせた時期があり、料理下手な夫がコンビニの袋を下げてレトルト粥を買ってきてくれた。温めなら出来るという夫の優しい気持ちを感じた。
梅沢永世名人 俳句で「夫の気持ち」というのは書かなくて良いんですよ。俳句の中にこの気持ちを表現する。それが俳句ですから。
浜田 なるほど。
梅沢永世名人 だから凡人だったんだと思います。
朝日 あっ、さすが。
夏井先生 優しい旦那さんと分かる。
「風邪」だけだと冬の季語になるが、「春の風邪」だと少しあまやかな艶のある感じになる。
勿体ないというか、改善の余地があるのはまさに下五。
「気持ち」と書いてしまったこと。
俳句というのは心情・気持ちをごちゃごちゃ書かずに、この夫の動作を書くだけでその向こうに気持ちが見えてくる。
「春の風邪」から夫の方にぴょんと飛ばす。
俳句では「夫」は"おっと"とも読むが"つま"とも読む。
ここから。気持ちを書くのではなく、動作を書く。
買ってきてくれたなら「買いくる」。
最後の「レトルト粥」が物として残る。
その物の中に夫の愛情がちゃんと見えてくる。
本人 勉強になりました。ありがとうございます。
●解説のポイント |
優しい旦那さん あまやかな艶のある感じ 夫は「つま」と読むべき 俳句では気持ちを書かずに動作を書く 「買いくる」として夫の愛情が見えるように |
添削後
『春の風邪 夫の買いくる レトルト粥』
生活「春の風邪」とご自身が食べた即席粥に、料理した夫の愛情を感じ取った意図の下五字余り。レトルト粥は作者ではなく夫がこしらえていると解釈できるかが読解力の点で重要な一句。三寒四温で体調を崩しやすい春の風邪はぶり返しやすく治りにくい点で厄介なもの。その手助けにと愛情たっぷりに用意したお粥に夫の愛情を字余りの下五で表現しましたが、意外にも番組初登場の「気持ち」では俳句の骨法が理解できてない失敗です。ご指摘の通り「風邪」「粥」のベタさもあり、どんな粥かを描写するワードが欲しいところで、添削では人物の動作を補足する形に。用語の取捨選択と発想力がいま一歩ほしい所です。
◆3位
才能ナシ30点 平野ノラ『春眠や あちちと落とし 目が開く』【本人談】春の陽気でいっぱい眠ってしまった。そして、食べ物がないけどレトルトがあった。眠気まなこな状態でレトルト(の袋)を落としてパチッとなって目がやっとそこで開くという。
梅沢永世名人 何言ってんだか分かんない(笑)。
本人 怖っ。
梅沢永世名人 目つぶってやってたってこと?
本人 いや、目は見開いてました。
梅沢永世名人 じゃあ、目が開いたんじゃない。
本人 心の目が開いたんですね(笑)。
梅沢永世名人 だから分からないって言ってるの。
夏井先生 「えっ?」って私も思った。冷静にこの文字面を見ていく。
「春眠や」なら寝ている。間違いない寝ていることは分かる。
寝ているのになぜか「あちち」と言っている(笑)。
寝ているのになぜか「落とす」。
「えっ?」っと思ったら最後に「目が開く」だからよくある夢オチというもの。
気が付いたら夢だったというそのオチにいくのかと思ったら、完全に起きていたのね(笑)。
それなら点数もっと低くても良かったくらい(笑)。
ひとまず、あなたが書きたいことに言葉を寄せる。
「春眠や」で詠嘆するから寝ているとここで思う。
せいぜい「春眠の眼(まなこ)」とすれば、眠気まなこみたいな思いを思ってくれるかもしれない。
ここから。「あちち」なんて言っている場合じゃない。
「落とす」とか悠長にやっている場合じゃない。
目は開いてますから下五はいらない。
本人 えっ?
夏井先生 「えっ?」じゃない。
実際には何をやってたかというと、鍋で湯を沸かしていたと。
それを書くしかない。
だってどこにも「鍋」と書いてない。
「鍋に」でぐつぐつ沸かしている。
「沸かす湯」までしか書けない。
最後を「よ」と詠嘆。
これで一応言いたかったことに言葉だけは寄る。
レトルトはまたレトルトでもう一句作んなさい。
本人 えっ?(笑)
朝日 え~!
本人 今、目が覚めました(笑)。
浜田 今、今目が覚めた。うん。
本人 ああびっくりしちゃった。
●解説のポイント |
寝ているのになぜか「あちちと落とす」 気が付いたら夢という夢落ち? 起きていた意図ならもっと低得点 「鍋」で言いたいことに言葉を寄せる レトルトでもう一句作って |
添削後
『春眠の眼よ 鍋に沸かす湯よ』
生活「春眠」とレトルトパウチを足に落として熱さに目が覚めた意図を持った定型句。芸人らしい滑稽なオチを持ってきた発想で、基本の取り合わせに挑んでいます。春の心地良いうたた寝を思わせ、不意な動作で一気に交感神経が刺激される点に共感できます。とはいえ落とした物の主語が分からず、「あちち」も俗すぎるギャグ表現。全体的に散文的で、時間軸も定まっておらず、「目が開く」で季語の存在を抹消しているのも厄介です。芸人らしさでは番組を盛り上げていますが、「燃える京」に続く失敗をやらかしてしまったノラさん。きっちり反省して修正できないと今後が厳しくなるでしょう。
◆4位
才能ナシ20点 朝日奈央『大試験 レトルトカレーが 救助待ち』※季語「大試験」は進級や卒業を決める大事な試験のこと。
浜田 ふふっ。
梅沢永世名人 何?
【本人談】十代の頃に初めてレトルトカレーを温めた時、もう熱すぎてどうやって(鍋の中にある)レトルトカレー(の袋を)救助するのかということに大苦戦したことを思い出して書いた。レトルトカレーの気持ちも込めて「救助待ってますよ」という思いを込めて書いた。
千原永世名人 上の句・中の句・下の句が書かれたボックスから(ランダムに)引いた?(笑)
本人 え~違います。
千原永世名人 偶然俳句みたいな。
本人 違う違う違う。
千原永世名人 あ、違うの?
本人 違います。
夏井先生 え~、冷静になりましょう。
いいですか?
本人 恥ずかしいな。
夏井先生 「大試験」という季語は進級や卒業を決める大事な試験のこと。
上五に「大試験」と書いていれば、みんな大試験を受ける試験会場にいると思う。
そうすると、いきなり「レトルトカレー」が出てくる。
この子は試験場で、レトルトカレーのお湯を沸かしているのかと(笑)。
そうすると、「救助待ち」という訳わからない擬人化が出てくる。
せめて、自宅にいるというのが分かるように書くべき。
例えば「大試験近し」とやれば、"大試験が近いから夜中まで勉強して腹減ってカレーを食べる"とちゃんと繋がる。
あるいは「大試験前夜」。前夜まで頑張っていると。
「近し」「前夜」入れるだけで自宅だとわかる。
そして「レトルト」。こうなると「カレー」と書いてる音数はない。
しかも「救助待ち」という下手くそな擬人化もいらない(笑)。
ここでちょっとだけあなたの擬人化を無理やり入れる。
救助待つということは溺れている。
「湯に溺(おぼ)る」なら湯に溺れるという意味。
私の力ではこれが精一杯です(笑)。
本人 ありがとうございます。
●解説のポイント |
進級・卒業を決める試験会場にいる 試験場でなぜかお湯を沸かしている 下五が意味不明な擬人化 自宅にいることが分かるように書く 私の力ではこれが精一杯 |
添削後
『大試験近し レトルト 湯に溺る』
『大試験前夜 レトルト 湯に溺る』
春の生活「大試験」を前に、火傷を恐れて鍋のレトルトカレーのパウチを熱湯から取り出せない状況を意図した中七字余りの一句。箸などの調理器具を持ち合わせず、ズボラに鍋でレトルトを温めて慌てる心情は分かります。「大試験」を合わせる気概も面白い点ですが、季語の用法が「十代」しか語られない点が引っ掛かりました。擬人化の「救助待ち」はレトルトの立場で詠まれ、「大試験」はどのように熱湯から引き上げるのかを考察する問いの投げかけの意味(要は季語の比喩)で用いられた可能性も感じます。調理師学校や理科実習の卒業試験でお湯を沸かし、同時並行で動作を行うあまり不手際が生じて大失敗したと読まれる可能性もあるでしょうか。いずれにせよ季語の用法・字余り・擬人化で面食らう羽目になった朝日さん。番組黎明期の低得点にありがちな句でしたが、一からやり直す気概で頑張って頂きたいと思います。
★特待生昇格試験★◆『白粥は三日目 春の風邪 飽きた』 森口瑤子梅沢永世名人 うん。
【本人談】風邪をひいて体調が悪く、レトルトの白粥ばかり食べている。外は春で気持ちが良くて出かけたいが、ホントにだるい体も白粥も全部飽きてしまった感じ。これはコロナ禍の今にも少し掛けていて、最後の「飽きた」というのはそのまま詠んでしまっている感じがするが、「飽きた」に悲しい気持ちと切ない気持ちとか、ホントに嫌だみたいな気持ちちとか沢山の気持ちを込めて書いたつもり。
★評価ポイントこの語順を選んだ効果の是非
■査定結果名人4段へ
1ランク昇格理由:
映像から心情へ本人 あ~、うわ~嬉しい。
朝日 凄い。
梅沢永世名人 凄い。素晴らしい。
夏井先生 この白粥のアップからいくのは良い判断だった。
白粥というのものは今日で三日目だと強調する。
「三日目」という時間経過も、この季語が出てきた瞬間に"そういう三日目なんだ"と腑に落ちてくる。
一言で「飽きた」と言っているが、色んな物に飽きていることが言葉の奥に見えてくる。
粥の味にも飽きた、三日間同じ部屋にいるのも飽きた、風邪の状態が続いているのも飽きたと。
口語の効果をよく分かって使っている。
直しはいらない。
本人 ありがとうございます。
●解説のポイント |
白粥のアップからいく好判断 「三日目」は季語が来た瞬間に腑に落ちる 色んな物に飽きているのが奥に見える 白粥・同じ部屋・風邪に飽きている 口語の効果をよく分かっている |
添削なし
生活「春の風邪」と「三日目」の状況を取り合わせて心情語「飽きた」を入れた破調の一句。口語的な表現を存分に生かした印象で、「白粥」だけでなく季語の状況にも「飽きた」と多少ネガティブな心境をぶつけたところに森口さんらしさがあります。構造的には「白粥は三日目/春の風邪/飽きた」で、最後の動詞がそれまでの物を受け止める形。季語を好意的に受け止めてないとも捉えかねませんが、風邪が治癒していない状況には変わりなく、憂鬱な心境を打破したい点が「白」「三日目」で感じ取れます。最も議論すべき点かつ最大の工夫が語順。「春の風邪三日目白粥は飽きた」なら意味的に自然な印象ですが、因果関係が気に障ることになり、口語「飽きた」の修飾も限定されます。現代的な口語詩句は評価が意外と難しいものの、ストレートな心境を詠まれた句として認めたいところです。
★永世名人 ジュニアのお手本★浜田 さあ、ジュニアさんどうでしょう。
千原永世名人 いやなんか…いらんことした…。と思ってます(笑)。
梅沢永世名人 随分…。
浜田 まあまあご本人はそう思ってますけど、どうなのかということですよね。
◆『コロナ7日目 レトルト絞る 遅日』 千原ジュニア※「遅日」とは春の日暮れが日に日に遅くなること。
【本人談】以前コロナ(ウイルス)に感染したが、その時のことを詠んだ。(自宅待機期間が終わる)七日目にやっと、今日で最後のレトルトを食べる。また明日から始まるぞということで。「コロナ7日目」は「七」を(算用)数字にしたくなり、それは俳句にとっては全然よくないんかなと思いながら。いらないあらがいをしたのかなと。(森口さんの句の)「三日目」とか見てても。
浜田 は~そうかそうか。朝日さんどう…。
本人 誰に聞いてんねん!(笑)
朝日 そうですね…。
本人 (立ち上がって)誰に聞いてんねん。何にも分からへんやん(笑)。
清水アナ 夏井先生から結果が届いてます。
梅沢永世名人 うん、これは来るんじゃない。
■査定結果永世名人23句で掲載
ボツ理由:
あと少しのリアルを!梅沢永世名人 おっ?
本人 ボツか…そうか。
梅沢永世名人 えっ?
夏井先生 「コロナ7日目」の状況と「遅日」という季語を取り合わせたのは私も良いと思う。
「7」の数詞の問題。
確かに、俳句では漢数字表記が基本になるが、敢えてこれを使いたいという場合もある。
ここはご本人に任せても良いかもしれないが、基本は「七」。
あと少しのリアルとは何かというと、「絞る」あたりにあと少しのリアルを入れることができるのではないかと。
ご本人も仰ったが、"もう元気になって明日から"と。
ギューッと最後の一滴まで絞る感じ。
そうすると、ここに「絞り切る」とあと一押し書く。
ここに力がグーっと入ってリアリティーも少し増す。
そうすることで「遅日」という季語にポンと着地する。
本人 いやそっちの方がリズムも良くなりますね。あ~良い、あ~。
●解説のポイント |
「7日目」「遅日」の取り合わせは◎ 俳句では漢数字表記が基本(この句は作者次第) 元気になって明日から仕事 最後の一滴まで絞るリアリティーを 「絞り切る」で一押しして季語に着地 |
添削後
『コロナ七日目 レトルト絞り切る 遅日』
春の時候「遅日」とコロナ感染の体験からもうすぐ復帰できる状況にある食事の動作を詠んだ破調の17音。「遅日」は以前に村上さんが「くっついたままの餃子を食う遅日」で高評価だった点が頭をよぎります。自身のコロナ感染からの復帰を「コロナ7日目」で表現。ご指摘の通り、日に日に日暮れが長くなる季語に期待感があり、夕方の食事としてレトルトを絞る緻密な動作にも慎重さが伺えます。そうなると七七三(三四四三三)のぎくしゃくしたリズムが勿体なく、さらに「絞る」だけでは映像が弱いと先生に解されてしまいました。「絞り切る」と言い切ることで本人の強い意志に加え、「7日目」が自宅療養の最終日だと読み手に明確に伝わるでしょうか。添削では破調から上五字余りの定型に変わりました。5月に、コロナ感染症の基準が5類相当に変更になることも予定され、その意味で今しか読めないことに挑戦したジュニアさん。リベンジに期待しましょう。
浜田 永世名人になる人ですから。
梅沢永世名人 そらそうです。
浜田 これはもう世に出せないので、申し訳ございません。
梅沢永世名人 世に出しちゃいけません。
浜田 せ~の、ドン。
(シュレッダー演出)
千原永世名人 「絞り切る」。
浜田 (梅沢名人に)めっちゃ喜んでる。人のめっちゃ喜ぶやん。
朝日 嬉しそう。
浜田 はい、次回も頑張っていただきましょう。
★永世名人 富美男のお手本★浜田 いや、ここですよ。
清水アナ はい。あと1句ですから。
梅沢永世名人 はい。子どもたちのためにも決めますよ、おっちゃん決めますからね。見てて下さいよ。
浜田 だいぶ自信があるみたいですが。
***
梅沢永世名人 最近はお子様からお手紙をいただいて、「何をしてるんですか?頑張りましょう!」と逆に。
浜田 マジっすか?
梅沢永世名人 え~。叱咤されて。
千原永世名人 今日はホント勝ちあると思います。
梅沢永世名人 ありがとうございます。でもジュニアは永世名人なったらスーツの趣味が良くなりましたね。
千原永世名人 あ、ありがとうございます。
浜田 今までアカンかったみたいな…。
◆『湯玉ふつふつ 春の厨の 砂時計』 梅沢富美男※「厨(くりや)」とは台所のこと。
千原永世名人 なるほど。
【本人談】私は料理が得意なので、あまりレトルトは使ったことがない。今回このお題がきたため、買って試してみた。そしたら(鍋に)湯玉がポコポコ出てくる。それがとっても楽しくて面白くて。つい砂時計を(使うのを)忘れてしまうくらい、楽しかった心を、実体験を詠んだ。
千原永世名人 これはいったと思います。
本人 いったでしょ。
千原永世名人 いいです。ホンマに足踏みし過ぎて地面凹んできてるんで(笑)。ここでいってもらわないと。
本人 さあ、いきますよ。皆さん。
浜田 森口さんはどう思われますか。
森口名人 私もいったと思います。
本人 はい!
浜田 マジで?
森口名人 五感にも訴えてかけてくるし、春の状況も凄い浮かびます。
浜田 へぇ~。そんなん言いながら何回も裏切ってきたからね~(笑)。
本人 いや今回は大丈夫です。
千原永世名人 これいったでしょ。
本人 みんなが応援してくれてますから。
■査定結果永世名人50句目に
掲載決定
理由:
おっちゃんらしい締めくくり<<句集完成>>本人 (立ち上がって)やった~。
朝日 凄い。嬉しそう。
浜田 ということで、
梅沢富美男 句集完成~!本人 やった~。
朝日 凄~い!おめでとうございます。
本人 遂にやりました!
浜田 すげぇな。
森口名人 素晴らしい。
(査定評後)
本人 ありがとうございます。
夏井先生 良い句だった。
まず「湯玉」のアップから。
「ふつふつ」というオノマトペの後、「春」という大きな季語が出てくる。
「厨」までくると、台所で「湯玉」は鍋の中に違いないと。
ここら辺で光景が立ち上がってくる。
そして、褒めないといけないのはこの着地の「砂時計」。
砂時計という物に焦点を持っていくと、どうしても茹でるとか、何かを何分茹でるとか、ごちゃごちゃ言いたくなる。
そんなこと言わなくて良いのがおっちゃんは分かっている。
「春の厨の砂時計」という物を最後に置いただけで、春という季節がキラキラし始める。
春という季節の光が湯玉にも、厨の中にも、さらに砂時計のガラスや砂粒にもキラキラと及んでいると。
しかも料理好きのおっちゃんらしい「厨」と「砂時計」。良いじゃないか。
ね、(句集完成まで)長かったけどホッとしました、私も。
本人 ありがとうございます。
夏井先生 ホッとしたとしか言いようがない(笑)。
●解説のポイント |
湯玉のアップとオノマトペ 「厨」で鍋の湯玉の光景が立ち上がる 着地「砂時計」に焦点を当てたのが◎ 季節が全てにキラキラし始める 料理好きらしい「厨」と「砂時計」 長かったけどホッとした (句集『一人十色』4/7発売・3/24予約開始) |
添削なし
最初の12音が番組予告で公開されただけに、「砂時計」の着地に一本取られた気持ちになった時候「春」を合わせた上五字余り。まさに御大らしさが詰まった句です。「湯玉ふつふつ」はコメントも頂きましたが「ぽこぽこ」など他のオノマトペも考えられますし、普通は「沸騰の」などと自然科学の用語で詠みたくなるのが初心者たるもの。ここは知識をひけらかさず、描写の言葉に徹しながら「ふつ」に沸騰を思わせる韻を踏ませたところが一点目。「春の厨」は以前の「暮れてゆく秋の飴色セロテープ」と同様に、四季の時候を用いて映像化するという御大のよく使う用法が二点目。最後の物に着地する下五の展開の意外性が良く、「砂時計」でキッチンタイマーを思わせつつも文化的かつアナログな所に着眼した点が往年の詠み手らしい三点目に。そして、「厨」「砂時計」と料理好きな御大らしい表現に徹したのが四点目です。定型重視ながら上五を字余りにする手法は「百物語」「緑青のカラン」でもみられましたが、まさに御大の様々な技巧を合わせながら、春のおおらかな印象が風情を持った台所を包み込む一句の仕上がりに。番組出演188句目にして初の句集完成という栄誉を手に入れました。
浜田 嬉しいからあのボタン押しちゃおうかな(笑)。
梅沢永世名人 いやいや。やめて下さいよ。これ粉々にし続けて下さい。それが一番ですから。
清水アナ さて、
梅沢さんの句集ですが4月7日に発売します。そして、
明日(→3/24)から予約ができます。
浜田 なるほど。来週からもう卒業?
清水アナ 来週から卒業…。
梅沢永世名人 いや、私は卒業しませんよ。だって、世界中の子が「やめないで」って手紙がいっぱい来るんですから。
千原永世名人 ご自身で散々「やめるやめる」って仰ってましたよね?「今後の『プレバト!!』はお前らに任す」とか言って色んな。
浜田 そう。森口さんはどう思われますか。
森口名人 やめるって仰ってましたよね。
浜田 そうですよね。
梅沢永世名人 ちょっと待って。お前たちちょっと待って。この「プレバト!!」をここまで繋げたのは誰が…。
浜田 (梅沢名人の口を抑え込む)
朝日 押さえられた。押さえられました。
★次回3/30は3時間スペシャル。春光戦決勝の兼題は「給与明細」です。
新企画「手形足形アート」の後半の俳句は兼題が「レトルト」。レトルトパウチなどで知られますが、気密性や遮光性を持った素材で密閉され、加熱殺菌処理された食品全般を指します。Wikipediaによるとアメリカ陸軍の補給部隊が缶詰に代わる食品として開発されたものが起源とのこと。日本では「ボンカレー」が最初の庶民向けレトルト食品のようで、今では宇宙食にも意味が広がる形に。保存が効くため防災用品に活用されますが、いざ料理ができない時に湯煎や電子レンジなどで手軽に美味しいものを食べられる、まさに現代文化の賜物にお世話になる方も多いはずです。
季語は時候3名(「早春」「遅日」「春」)、生活4名(「春の風邪」×2、「春眠」「大試験」)に分かれる形。「レトルト」(粥・カレー)をそのまま入れたのは3名おり、「粥」の2名と「レトルト」のジュニアさんが病気療養中の食事を発想。温める手段として御大が「湯玉」、1位が「レンジ」に着想しましたが、3位は「あちちと落とす」場面、最下位は鍋の「救助待ち」の擬人化に挑戦するも失敗に。レトルトパウチの食品をいつどこで利用するかに発想するのか、オリジナリティーを出すのが難しい兼題といえそうです。
御大の句集完成の現実味は45句掲載辺りから徐々に増していましたので、発行に向けた準備は水面下で着々と進められていたようですが、4月7日の発売に先立って全国の書店・ネット書店では予約が始まっており、amazonの句集カテゴリランキングでは即日に1位を達成したことも報告されています。装丁はソフトカバーの単行本で、先生との対談や添削例も紹介されるそうで、句集プラスアルファの形式と思われます。
さて、「梅沢富美男の全俳句一覧②」の記事にも”おことわり”を掲示しましたが、当ブログでは番組内で発表された内容に基づいて掲載を行いますので、有料著作物である句集の内容に関して補注は行いません。よって、「掲載決定」が明示されていない句(永世名人昇格時、夏井先生に句集掲載が認定された18句)に関して、句集に掲載されたのがどの該当句かといった情報の記載等を行う予定はございませんので、あらかじめご了承下さい。
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