2023年2月23日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※26日未明に全て更新しました。
→プレバト!!
公式ツイッター/
公式インスタグラム挑戦者→山本千尋[初],寺田心[初],きむ[初],新浜レオン[初],藤本敏史[88],村上健志[83],梅沢富美男[187] ※数字は挑戦回数●お題:富士山

※2月23日は語呂合わせで「2(ふ)・2(じ)・3(さん)」の日。横浜の街並みが近景の写真。
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位70点 | 山本千尋
| 中華街の少女の旋子風光る | ちゅうかがいのしょうじょのしゅえんずかぜひかる |
2 | 凡人2位65点 | 寺田心
| 山笑う白髪の父と観覧車 | やまわらうしらがのちちとかんらんしゃ |
3 | 凡人3位60点 | きむ (インディアンス) | 風光る車掌誘なう窓の富士 | かぜひかるしゃしょういざなうまどのふじ |
4 | 凡人4位50点 | 新浜レオン
| 春一番富士のいただき捕まえて | はるいちばんふじのいただきつかまえて |
5 | 永世名人へ1つ前進 ※本人談で査定判断 | ★藤本敏史 (FUJIWARA) | 春の山ひつじに空の名を与へ | はるのやまひつじにそらのなをあたえ |
6 | 永世名人28句で掲載ボツ | ★村上健志 (フルーツポンチ) | 富士山の胴へふらここ漕ぐ少女 | ふじさんのどうへふらこここぐしょうじょ |
7 | 永世名人49句で掲載ボツ | ★梅沢富美男
| 沸点の富士に近づく暮れの春 | ふってんのふじにちかづくくれのはる |
順位発表順:3位→最下位→2位→1位→編集後記寺田心 | 初挑戦 | ※デビュー当時3歳の天才子役は現在中学2年の14歳。「明日、ママがいない」「おんな城主直虎」などに出演。百人一首が得意。 梅沢永世名人「本当に大きくなったね。おじさんも天才子役だったから~(笑)」 「あ~ほんとに、お世話になります。」 →浜田がペッと唾を吐く 「自信はちょっとあります」 |
山本千尋 | 初挑戦 | ※2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で刺客トウ役を熱演した女優で26歳。次回予告に出るたびにSNSでは「誰かが殺される」と話題に。元武術太極拳の選手で、世界ジュニア武術選手権で2度優勝している。 藤本名人「何人殺したんですか?」 「結構殺しました(笑)」 きむ「言い方良くない」 →この後、挨拶代わりに自慢の剣術を披露。剣を持った浜田も真似するがよろけてしまう。 「ちょっと賭けに出てしまった所があるので、それが先生にどう評価していただけるか…」 *** →ランキングシートに座る際に階段を上りながら下位出演者に詰め寄る仕草をし、フジモンらに「可愛い」と言われる。 |
きむ | 初挑戦 | ※吉本興業の芸人・インディアンスのツッコミ担当。村上の俳句YouTubeを見て勉強した。相方はストーンアートに挑戦した田渕章裕。 |
新浜レオン | 初挑戦 | ※演歌の第七世代。以前消しゴムハンコに挑戦している。 |
★ランキングシートの分布は明かさず発表。
才能アリ1名、凡人3名、才能ナシ0名
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ70点 山本千尋『中華街の 少女の旋子 風光る』藤本名人 何?うん?
梅沢永世名人 シュエンズ?
【本人談】私の横浜のイメージだと、幼少期に中華街で初めて中国武術の演舞を披露した。そこで旋子(シュエンズ)という技があり、少女が中華街で旋子(シュエンズ)を披露して、富士山のような日本一を目指して頑張っていく姿を想像しながら作った。
梅沢永世名人 素晴らしいですね。
本人 え~。
梅沢永世名人 もう「旋子」ときたら、もうこれ中国って感じがしますもんね。
夏井先生 素材にとにかくオリジナリティーがあるのは言うまでもない。
ちょっとだけ惜しい点がある。
さきほどこの句が読み上げられた時、出演者の皆さんが「旋子」と呟いていた。
ほとんどの人が「旋子」何かわからないままこの句の前に立っている。
浜田 確かにね~。
夏井先生 俳句は短いため、読み手に対してちょっとだけ親切に小さな情報を入れるだけで作品を理解してくれる人の割合が増える。
例えばどうするか。上五を少し変える。
浜田 「技」や。
夏井先生 その通り。今誰か言いましたね。
藤本名人 浜田さんです!(笑)
浜田 うるさいな。うるさい。
藤本名人 もっと褒めてあげて下さい。浜田さん、褒められると凄い喜ぶんですよ~!
浜田 アハハ。
夏井先生 浜田さんの仰る通りです。
浜田 いやいやいやいや。
藤本名人 すごい喜んでるでしょ。
夏井先生 上五に「技の名は」として「旋子」に。
梅沢永世名人 なるほど。
夏井先生 親切にやろうと思ったら「シュエンズ」とルビをふる。
そうしたらこういう読み方をするのかと。
後半は「風光る少女」と着地する。
藤本名人 あら~。いいね。
本人 凄い。
夏井先生 「風光る」は季語としての力を発揮しつつ、風光るかのような少女だというのも一緒に表現してくれる。
あなたは勉強なさるとこういうことも出来るようになりそう。
そして、あなたひょっとして。
本人 はい。
夏井先生 (大河「鎌倉殿の13人」の)善児の後の殺し屋のお嬢さん?
本人 (ニッコリして)そうです。私です。
夏井先生 うわ~。こんな可愛い人だったんだ(笑)。ビックリしました。
本人 嬉しい。
梅沢永世名人 なっちゃん。去年俺が出てたドラマ(→「ファーストペンギン」)観てくれた?
夏井先生 知らん(笑)。
きむ 知らん。
田渕 知らんかった。
●解説のポイント |
素材にオリジナリティー 「旋子」が読者に分からないのが惜しい 小さな情報を補足して理解しやすく 「技」を入れる(浜田指摘) 技名に「シュエンズ」とルビを 語順も「風光る少女」に 季語が少女の様子も一緒に表現する |
添削後
『技の名は旋子 風光る少女』
春の天文「風光る」と中国武術の体験を取り合わせた上五・中七字余りの一句。兼題の横浜から「中華街」を発想し、聞き慣れない「旋子」の一語のオリジナリティーが高い女優らしい作り。「旋子」が分からなくても「中華街の少女」でチャイナドレスを着ている若者を思いやすく、「旋」の字の動きが「風」とも呼応し、日光の動くような「風光る」との相性も良いことが伝わります。全体として懸命に何かを鼓舞・披露していることが薄々読み取れる印象です。「旋子」が独り歩きしやすいほか、中七字余りが技術点の減点で勿体ない点です。添削によって兼題らしさは薄れましたが、頂点を目指す人物の期待感が溢れる形になりました。
◆2位
凡人65点 寺田心『山笑う 白髪の父と 観覧車』梅沢永世名人 あ~いい。
村上永世名人 うん。良いけどね。
【本人談】久しぶりにお父さんと観覧客に乗って、お父さんも凄く白髪が増えたなと思うけど、今も昔も春の山は楽しげだなと感じる様子で。
夏井先生 父との光景をほのぼのと詠んでいるのが良い。
ただ少々減点した。「白髪の父」はかなりのご年配だと思う。一緒に観覧客に乗る。
そうなると「山笑う」という明るい季語だけで、この光景を表現できているのかどうか。
少しそこに不安が残る。
今わかってみると作者がこんなに若い。
「白髪の父」というのはそんなにご年配おじいちゃんではないということが今わかった。
「白髪の父」に何らかの言葉を足さないといけないため、やはり「山笑う」の季語では少々無理が出てくる。
語順は「観覧車」から。「観覧車の春よ」と軽く詠嘆する。
「白髪の増えた父」とここで止める。
梅沢永世名人 なるほどね。
夏井先生 こうなると、まだまだ若いけど気が付いたら父の白髪が増えている。
これで年齢がある程度絞られる。
中学2年生でここまで出来たら大したもん。はい、楽しみにしている。
田渕 めっちゃ評価高い。
本人 良かった。
●解説のポイント |
父との光景をほのぼのと詠んだ 白髪の父は年配のはずだが作者が若い 明るい「山笑う」の選び方に無理がある 「観覧車の春よ」と軽く詠嘆 「増えた」と明確に 父の年齢がある程度絞られる 中2でこの出来なら大したもん |
添削後
『観覧車の 春よ白髪の 増えた父』
春の地理「山笑う」と観覧車に同乗した人物の変化に着目した定型句。兼題写真の「観覧車」から発想し、白髪”交じり”の父と乗った思い出を詠んだ意図です。「白髪」の老いのネガティブな印象と「山笑う」「観覧車」の楽しい印象を合わせており、キッチリ型にはめています。季語の選択と父の年齢の微妙な齟齬を指摘されましたが、山→父→観覧車のゴンドラという語順のカメラワークが悩ましいかもしれません。添削例では「山笑う」が「春」に変わりましたが、「山笑う」を活かすなら「白髪交じりの父とゐる」など場所を限定しない方が良いのかもしれません。
◆3位
凡人60点 きむ(インディアンス)『風光る 車掌誘なう 窓の富士』梅沢永世名人 なるほどね。
【本人談】新幹線に乗っていた。(車掌が)「今日は天気が良いので富士山が見えます」とアナウンスしてくれた。その車掌の声が嬉しそうだった。その温かくなった気持ちを詠んだ。
梅沢永世名人 まあ良い俳句は良い俳句ですよ。ただね、あの「誘う」あたりが凡人なんだよ。
本人 「誘う」の所が凡人ですか?
村上永世名人 「車掌」とくれば「窓」が要らないとか。
本人 あ、要らないんすね。
村上永世名人 「アナウンス」とかの方が良いんじゃないかな。
藤本名人 「なう」がTwitter🕊してるのかな?みたいな感じが(笑)。
本人 違います、違います。
夏井先生 基本の型はちゃんと勉強しているのがよく分かる。
やっぱり永世名人は偉い。
問題点はこの「誘なう」という動詞。これが説明になってしまった。
俳句は映像を書くことを1番に考えてほしい。
「風光る」の後、(「車掌」「窓」を)「車窓」の方にもっていく。
藤本名人 あ、そうか。
夏井先生 「車窓よ」と軽く詠嘆する。
この後は村上さんの言う通り。「アナウンス」と書くだけ。
山本 すご~い。
本人 「車窓の」か。
夏井先生 そうそう。
こうすると、「車窓」の窓の光景に目を持って行って、車掌の人物がアナウンスの声として出てくる。
初挑戦でここまで出来たら、望みはいっぱいある。
本人 うお~。やった!やったやん。
●解説のポイント |
基本型は勉強している 動詞「誘なう」が説明的(御大指摘) 「車窓よ」として軽く詠嘆 「アナウンス」と書く(村上指摘) 車窓の光景と車掌の声が出てくる 初挑戦でこの出来なら望みが一杯ある |
添削後
『風光る 車窓よ富士の アナウンス』
春の天文「風光る」と富士山のアナウンスを聞いた車内での経験を取り合わせた定型句。「車掌」「窓の富士」が東海道新幹線で移動する様子を思わせやすく、「風光る」も悪くない選び方です。自動音声が中心になりつつある車内アナウンスですが、粋なサービス精神を持った車掌さんを切り取っています。凡人ワード「誘なう」が比喩的で、本来は「誘う」ですが”さそう”と読まれたくない意図があるのでしょう。ご指摘の通り、富士から車窓を詠む発想もベタ感がありますが、アナウンスに着目したことで才能アリに近い評価を獲得しました。
◆4位
凡人50点 新浜レオン『春一番 富士のいただき 捕まえて』藤本名人 うん?
【本人談】小中高と野球をやってきた。野球は冬のトレーニングを越えて春一番の砂嵐を浴びてシーズンが始まる。それが歌い手になった今も変わらない気持ちでいる。
夏井先生 これも基本型を勉強しているに違いない。
ただフワッとしているイメージ。
しかも話を聞いてみると「いただき」は富士の頂ではなく、自分の志や夢のようなものを象徴していると。
となると、ますますイメージになってしまう。
いっそ富士を諦めて、ご自身の何かの頂を掴もうとしているような意味に書くしかないと思う。
富士はいつかどこかで自分で勝手にやって下さい(笑)。
「頂」と漢字で書く。
「掴まん」と持っていく。何かの頂を掴もうとしている感じになる。
「春一番よ吹け」と命令してみる。
本人 うわ~、凄い。
夏井先生 私に吹けと持ってくる。
こうすると、頂を掴もうとしているこの私に「春一番の強い風よ吹いてくれ」と後押ししてくれている。
本人 もうホントに次の曲のタイトルは「春一番」でいこうかなと(笑)。
浜田 なんでやねん!
きむ 影響されやすい。
●解説のポイント |
これも基本型を勉強している フワッとしているイメージ 「いただき」は自分の夢を象徴した意図 富士を諦めて何かの頂を掴む意味に 「春一番よ吹け」と命令する 頂点を目指す自分に春一番よ吹けと後押し |
添削後
『頂を掴まん 春一番よ吹け』
天文「春一番」が富士山の頂点まで届くように、自分も一つの夢の頂点を掴もうとする意図を込めた定型句。季語は立春から春分までの間に吹く風力5以上の南風のことで、その風が富士山の頂上まで届くという抽象的なイメージ。「捕まえて」が比喩に終わった上、作者の立ち位置が不明なのが残念ですが、本人の意図は野球・歌手として頂点を目指すという具体的なもの。語った内容なら「春嵐」「春塵」などがベターで、その練習風景を描かれた方が評価は高かった可能性も。添削例「春一番よ吹け」は志に特化し、季語が眼前にない分を命令形で強調することでバランスを保っています。
★永世名人への道★→<名人10段>・
藤本敏史(FUJIWARA)は星4つで永世名人に王手。
藤本名人 色々ね、後退して前進して後退してやっとここまで来ました。
◆『春の山 ひつじに空の 名を与へ』 藤本敏史(FUJIWARA)梅沢永世名人 ふふっ。フジモンらしいな。
【本人談】春の山にある牧場で羊の赤ちゃんが生まれ、パッと空を見たら凄く綺麗だったため、"空"の名前をつけたと。
梅沢永世名人 いやこれフジモンらしいわな。可愛らしくてほのぼのとして。
本人 可愛いでしょ?
梅沢永世名人 この「ひつじに空の」と…じゃあ「空ちゃん」とかいう名前を与えたんだ。
本人 いや、空っていうのも色々あるじゃないですか、名前が。オスやったら「快晴くん」とか。
梅沢永世名人 ああ~。
★評価ポイント「空の名を与へ」の表現の是非→
Aを渡す夏井先生 …なんですが、清水さん。
清水アナ はい。
夏井先生 A渡して。
田渕 Aを渡す。
清水アナ 今回は藤本さんの解説次第で結果が変わります。
一同 え~!
本人 え~、ちょっと。マジっすか?
浜田 今の喋りも重要やったんですよ、だから。
本人 もう一回やらせてもらっていいですか?(笑)
田渕 ちょっとね、もう一回聞きたい。
浜田 アカンよ、そんなん。A貸して。
本人 え、何?俺なんか言うた?
■査定結果永世名人へ
1つ前進理由:
いろんな空が想像できる本人 やった!やった~!
梅沢永世名人 良かったじゃん。
浜田 というわけでフジモン、永世名人!
藤本名人 よっしゃ!やっとや。
清水アナ 藤本さんは史上5人目の永世名人となりました。
本人 長かった~。
(査定評後)
本人 ほら、言ったもん。
夏井先生 この中七・下五のフレーズに対して「春の山」を置いたのがまず良かった。ほのぼのとした広がりがある。
そして今日の一番大事なところ。
おっちゃんも指摘したが、生まれた羊に「空ちゃん」という名前を付けたということであれば、「名を与へ」という言い方はしないと思う。
「
春の山ひつじに[を]空と名付けたり」ともう少し軽い言い方になる。
ただ、そうではなくこういう言い方をしている。
春の空が水色なら「水色ちゃん」でも良いし、霞がかっていたら「かすみちゃん」でも良いと。
そしたらおっちゃんの「空ちゃんかい?」に対して見事に作者は(「快晴君」と返答し)この句の良い所を語られた。
そして、ジュニアさんもそうだがこのお2人が思いのほか早く永世名人になったのは、(先行する3永世名人の)梅沢さん、東さん、村上さんの色んな失敗や成功したデータをジュニアさん・フジモンさんがちゃんと見て学んでいる。
ですから、前の2人にも一応お礼くらい言っても良いのかなと思う(笑)。
本人 じゃあ、すいません。ありがとうございますー。ありがとうございますー。
梅沢永世名人 もうちょっと言い方ないのか?お前(笑)何なんだ、それ。「ございまちゅー」と言葉が上がるのは上から目線だってことだぞ。「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」(→作者不明の故事成語)。
一同 ……。
浜田 …さあ、続いてまいりましょう(笑)。
きむ 決まらず、決まらずです。今の決まらず。
本人 決まらんかったな~。
●解説のポイント |
後半の措辞に対する季語が良い ほのぼのとした広がりがある 生まれた羊に「空ちゃん」と名付けた↓ 「春の山ひつじに空と名付けたり」と軽めに 空が水色なら「水色ちゃん」 霞がかっていたら「かすみちゃん」 「空ちゃん」(御大)に対して「快晴君」の返答が◎ |
添削なし
地理「春の山」と生まれた羊の名付けの場面を詠んだ一句。動物を読み込むのはフジモンさんの十八番で、大変可愛らしい牧場の場面。季語とも相性の良い措辞で、山が見守っている中で空の名前を与える清々しさを伴っています。さりげなく「与へ」と旧仮名遣いを用いた点も事実関係を伝聞し、その後の羊の成長の様子を想像できる形にしています。実際には家畜としての羊は番号などで管理されやすく、命名する例は稀かもしれません。その辺りは想像でしょうが、クローン羊の「ドリー」や「ひつじのショーン」など名前が付いた羊を想起する効果もあります。ご指摘の通り「ひつじ」の平仮名で「山羊(やぎ)」に誤読されない表記を選ぶ繊細さも功を奏し、永世名人として新たな一歩を踏み出しました。
★永世名人 村上のお手本★→<永世名人>・
村上健志(フルーツポンチ)は3回連続で掲載決定中。
◆『富士山の 胴へふらここ 漕ぐ少女』 村上健志(フルーツポンチ)梅沢永世名人 うん。
【本人談】「ふらここ」はブランコのことで春の季語。富士山が大きく見えるような公園や校庭がある。そこでブランコを漕いでいる少女、それがまさに富士山の胴体へ向かっていっているようだと。
梅沢永世名人 やっぱ読んだときに「あれっ?」って感じるんですよ。何してるんだろ?って。いやこれが掲載決定だったら手ついて謝りますよ。
田渕 え、マジっすか?
■査定結果永世名人28句で掲載
ボツ理由:
胴と少女どっちが優先?本人 あ~。
田渕 ボツなんや~。
本人 ボツだ~。
藤本名人 梅沢さんは…。
浜田 嬉しそうな顔して…。
藤本名人 人のボツを。
村上永世名人 人のボツを笑うの良くないっすよ。
(査定評後)
本人 まあ~そうよね~。
梅沢永世名人 分かんないだよ。
本人 「少女」は要らないかなと思ったんすよね~。
藤本名人 え~、そうなの~?
夏井先生 最近、富士山とブランコという句を折々見る。
本人 え?
藤本名人 ベタなんすね。
夏井先生 ただ、「胴へ向かって」と言われたときに、どういう距離で漕いでいるんだろう?と。
そして元気に強く漕いでいるのかな?と思うと、ブランコの中では優しい「ふらここ」という言い方で、しかもそれが「少女」だとなると途中からテイストが変わってしまう。
富士山の「胴」を活かすなら胴を「蹴る」など強い動詞にした方が良い。
藤本名人 なるほど~。
夏井先生 「蹴る」だとアレだが、「蹴らんと」なら"蹴ろうとして"という意味になる。
「漕ぐぶらんこ」ぐらいの着地にしたい。
そうすると、「胴」が明確に見えて、蹴るかのように勢いよくと。
それやりたかったんじゃないの?そのへらへら笑い(笑)。
田渕 バレてますよ。
●解説のポイント |
富士山とブランコの句は折々見る 「胴へ」はどういう距離で漕いでいる? 「胴」は元気に強いイメージ 「ふらここ・少女」の優しいテイストに変化 「胴」を活かすなら「蹴る」など強い動詞を 「蹴らんと」で"蹴ろうとして" 蹴るかのように勢いよく |
添削後
『富士山の 胴を蹴らんと 漕ぐぶらんこ』
春の生活「ふらここ」を富士へ向かって漕ぐ少女の光景を詠んだ一句。爽快にブランコを漕ぐ少女と雄大な富士の光景を取り合わせる発想の面白さは村上さんの強み。本来は生物の腹部周辺を表す「胴」で富士山麓を比喩した点が最大の工夫で、そこが映像描写しにくい点でもあります。男性的で雄大な「富士」と後半の女性的な表現での違和感を指摘されましたが、方向を示す助詞「へ」が最も悩ましい点。アルプスの少女ハイジのオープニングのような大きい規模のブランコに誤読される危険もあり、解釈の自由度がかえって損をしたでしょうか。添削例は字余りですが「蹴らんと」「ぶらんこ」で心地よいリズムが生まれて映像訴求の強い形となりました。
浜田 すいません。これはもう世に出せないので。
梅沢永世名人 出せない出せない。
村上永世名人 これもう出せないです。
浜田 はい、すみません。せぇ~の。
(シュレッダー演出)
田渕 これ悲しい。
きむ 舞うなぁ。
山本 あ、悲しい。
藤本名人 (「エレクトリカルパレード」の4拍子目で音頭を取り)♪は~い!はは~い!(笑)
浜田 あいつ、自分も(今後)やられるで。
清水アナ 村上さん、残り22句のままです。
★永世名人 富美男のお手本★→<永世名人>・
梅沢富美男は句集完成まであと1句から3回連続ボツ。
梅沢永世名人 今日こそビシっと決めさせていただきます。
浜田 もう、2回も3回も足踏みしている場合じゃないですよ。
梅沢永世名人 それは私も思ってます。今回は自分のために俳句を詠みました。
藤本名人 いつもはそうじゃないんですか?
梅沢永世名人 いつもは色んなことを考えながら作りますけど、今回は私の自分のために。
***
浜田 自信のほどはいかがでしょう。
梅沢永世名人 勿論あります。今回は自分のために俳句を詠みました。
◆『沸点の 富士に近づく 暮れの春』 梅沢富美男村上永世名人 うん。
【本人談】「沸点」は富士山でお湯を沸かすとすぐに沸いてしまう(→標高が高いと気圧が低いため水の沸点が下がる)。下(→地上)でやるより沸きが早い。歳を取ってくると我慢がきかなくてすぐにキレる。私みたいにブツブツとキレる。それを思い出して「あ、歳を取ったんだから、そんなことではダメだぞ」と詠ませていただいた。
村上永世名人 自分が怒りやすくなったことをこの「沸点」に重ねること分かんないけどなぁ。
本人 なんでだよ、お前。これを読んだ人は「あ、これは梅沢富美男さんの俳句だな」とすぐ分かるんだよ。
村上永世名人 いやこれがもしも最後の一句になるんだったらさっきの(山本千尋の)剣で刺されます。
山本 うふ。
田渕 あれ?
梅沢永世名人 お願いします。
山本 はい、任せて下さい(笑)。
■査定結果永世名人49句で掲載
ボツ理由:
詰め込みすぎ!田渕 ボツや。
藤本名人 ボツ…。
(査定評後)
本人 ごめんなさいね(笑)。
田渕 暗いな。
夏井先生 字面は一見カッコよく見える。
藤本名人 そうなんすよ。
夏井先生 結局何が言いたのかじっと聞いていた。
要は(「富士に近づく」は)富士山のような大らかな私になりたいという意図。
本人 そうなんです。
夏井先生 おっちゃんとしては「沸点」が気に入ってるんですもんね。
本人 そう、すぐ頭にくるから私は!
夏井先生 そうね。そしたらそれを書いた方が良いと思う。
「沸点の」の後、すぐ怒るなら「低き怒りや」と書く。
藤本名人 あ~。
村上永世名人 あ~。
そして「暮れの春」と気取っている場合ではない。
ここも正直に「老いの春」って書けばよい。
本人 「老いの春」!?(笑)
村上永世名人 いや、そうでしょ。
夏井先生 「沸点の低き怒りや老いの春」といえば、おっちゃんそのまんまがボ~ンと出る。
浜田 なるほど。
本人 書きにくいわ。自分じゃ「老いの春」なんて。
夏井先生 自分をまっすぐ見つめる勇気が大事。
ジジイはジジイなんです。
村上永世名人 そらそう。
藤本名人 そらそうですよね。
本人 このババアいい加減にしろよ!
田渕 まあまあ…。
村上永世名人 富士山目指すんでしょ。
藤本名人 沸点低いな。
●解説のポイント |
字面は一見カッコよく見える 我慢が効く大らかな富士になりたい意図 すぐ怒る意図の「沸点」は作者お気に入り 「低き怒りや」とストレートに 「暮れ」と気取らず「老い」に 添削例はおっちゃんそのまんま 自分をまっすぐ見つめる勇気が大事 |
添削後
『沸点の 低き怒りや 老いの春』
「暮の春」は晩春の時候。自身の怒りの沸点が下がり、頭に血が上りやすくなったことを高地での湯の沸点の低下に重ね合わせた意図の定型句。”頑固おやじ”の直視に加え、壮大の憧れの対象である富士からの発想は滑稽ですが、液体が気体に状態変化する温度「沸点」の主体をどう捉えるかで何とでも解釈できる問題作。個人的には「沸点」「富士」とあるため、地下のマグマが煮え滾り水蒸気爆発を予見する大変切迫した状態の「富士に近づく」地質調査隊の命懸けの行動を詠んだ晩春の光景かと勘違いし、本人の語りに2度ビックリ。「沸点」の主語はマグマではなく、高地の「湯」と自身の「怒り」の沸点。動詞「近づく」は怒りの沸点に近づく、富士の山頂に近づく意図があり、「暮れ」は自分の老いを表す心情を意図していますが、いずれも誤読の原因に。比喩や背景知識に頼ってがんじがらめとなった点を「詰め込みすぎ」と判断する先生はさすがです。上五「沸点の」に責任を負わせ過ぎてしまい、助詞”の”の省略に任せ過ぎて策に溺れたでしょうか。2月の放送時期に晩春の季語を用いるのも不自然でした。添削例も50句目に掲載すれば苦笑される句材で、”梅沢富美男らしさ”を添削例で茶化されてしまった御大。永世名人と名乗る梅沢さんの実力がこの程度だと信じたくないのが本音です。
浜田 さあこれも世に出せないので、せぇ~の、ドン!
(シュレッダー演出)
藤本名人・田渕 (手拍子に合わせて)♪は~い!
浜田 お前絶対やられる。
藤本名人・
田渕 はは~い!
清水アナ 梅沢さん残り1句のままです。
浜田 そういうことですね。
★次回は春光戦予選Aブロック。兼題は「卒業」です。
ストーンアートで特待生が誕生した後半の俳句は「富士山」が兼題で、横浜みなとみらいのランドマークタワーやコスモワールドの観覧車(コスモクロック)が映る写真。日本一標高が高い活火山であることは言わずもがなですが、番組ではもう9度目の登場。梅沢さんの「御降りの洗いて清し富士青し」、東国原さんの「初富士や北斎のプルシャンブルー」、鈴木光さんの「教室のわたしを富士へ白き梅」など印象に残る富士名句も生まれています。
季語は全員春で時候が1名(「暮の春」)、天文3名(「風光る」×2、「春一番」)、地理2名(「山笑う」「春の山」)、生活1名(「ふらここ」)でした。兼題から1位は横浜中華街と自身の武術、2位は観覧車、3・4位は富士山からの発想でした。名人らは春の山と羊、富士とブランコ、富士と沸点とそれぞれ取り合わせた形。今回評価されたのはいずれも富士以外の発想の句で、富士山を詠みこむ難しさが極端に露呈された形でした。
さて、番組5人目の永世名人が誕生しましたが、フジモンさんは10段から225週と永世名人の道で最長の時間を要している点は付け加えさせてください(※村上さんよりも10段までは先に到達しています)。ジュニアさんの急成長ぶりが目立っていますが、天性タイプの村上さんに対してフジモンさんは努力型特待生であるが故、先生には本来より早く永世名人に上がったと思われたのかもしれません。
いよいよ、来週と16日に春光戦予選が行われます。誰が決勝進出になるかも合わせて注目していきましょう。
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