2022年12月15日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※22日に全て更新しました。お待たせ致しました。
挑戦者→森迫永依[3],勝村政信[11],鈴木絢音[2],畠中悠[初],篠田麻里子[20],千原ジュニア[84],村上健志[78] ※数字は挑戦回数●お題:観光バス

※12月15日は観光バス記念日で、日本初の定期観光バスの運行日。手前は秋の黄葉、奥は雪化粧の山々と季節の変わり目の写真。
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位72点 | 森迫永依
| 冬晴の小樽ことりっぷの折り目 | ふゆばれのおたることりっぷのおりめ |
2 | 才能アリ2位70点 | 勝村政信
| 雪道にLINEスタンプバスの跡 | ゆきみちにらいんすたんぷばすのあと |
3 | 才能ナシ3位36点 | 鈴木絢音 (乃木坂46) | 音もない銀世界の停留所 | おともないぎんせかいのていりゅうじょ |
4 | 才能ナシ4位35点 | 畠中悠 (オズワルド) | 寒窓に浮く子どもの絵帰路のバス | かんそうにうくこどものえきろのばす |
5 | 2級で現状維持 | ●篠田麻里子 (元AKB48) | ズワイガニ無音の宴50分 | ずわいがにむおんのうたげごじゅっぷん |
6 | 名人10段★4へ1つ前進 | ★千原ジュニア
| バス見えてバス停の毛布を畳む | ばすみえてばすていのもうふをたたむ |
7 | 永世名人26句目に掲載決定 | ★村上健志 (フルーツポンチ) | 補助席に場札と蜜柑バスの旅 | ほじょせきにばふだとみかんばすのたび |
順位発表順:3位→最下位→2位→1位→編集後記🔷
挑戦者語録鈴木絢音 | ○0△0×1 | ※前回は「琉金の絵はがき二枚かき氷」で最初は才能アリだったが説明後に得点半減され才能ナシに転落。辞書を読むのが好きな文系アイドルと紹介。 「今回は沢山勉強してきました」 |
畠中悠 | 初挑戦 | ※オズワルドでボケ担当の35歳。絵手紙査定で才能ナシだった相方の伊藤俊介と出演。自身で作詞作曲する歌が芸人の間で「泣ける」と話題。 「ちょっとだけ。♪何の取り柄もない人間ですから~優しさくらいは誰よりも~ っていう歌です」 ジュニア名人「手垢が付きまくったような歌詞です(笑)」 伊藤「待ってください」 浜田「どっかで聴いたことある」 伊藤「最初から最後まで聞いたらたぶん浜田さんは、何のとは言いませんけど自首したくなると思います(笑)。」 |
勝村政信 | ○4△1×3 | ※番組開始前からの夏井門下生。前回は「出番待つ揚げ物軍隊秋の宵」と詠んで才能ナシ最下位となり、再び破門の危機が囁かれる。 「お恥ずかしい。こんなにでも、アドレナリンって出るんだっていうぐらい。『プレバト!!』っていう番組見ると、アドレナリンが出てるのが分かりますから(笑)。やべえなっていう。」 浜田「今日は大丈夫ですか」 「楽しくやりました」 浜田「それが一番でございます」 *** 「手に汗凄いです(笑)」 |
森迫永依 | ○1△1×0 | ※実写版「ちびまる子ちゃん」役。初挑戦で才能アリを獲り、梅沢名人から「俳句の申し子」と称賛されたが、前回は凡人の3位。 浜田「何しとんねんって話ですよ」 「すみません。前回やっぱりすごく悔しくて、俳句の色んな形を勉強してきたので、ちょっと今日は自信があります」 浜田「お、自信がある?」 「あります」 |
★ランキングシートの分布は最初分布を明かさずに発表、残り2名の段階で1位が
才能アリと判明
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ72点 森迫永依『冬晴の小樽 ことりっぷの 折り目』ジュニア名人 凄い。
【本人談】観光バスを使った旅行で色濃く思い出に残っているのが、中学3年生の時に北海道に修学旅行に行った。その時の修学旅行のワクワク感が凄く思い出に残っていて、空も凄く快晴で小樽の街並みと空のコントラストが綺麗だったので、その情景を詠んでみた。
ジュニア名人 めちゃくちゃ良いですね。もう
ホントに全て映像が出てきますし、この「折り目」ってまだ見ぬという希望しかないから、非常に明るい素敵な俳句ですね。
本人 ありがとうございます。
村上永世名人 もう、この…まだ数回しか出てないのに、この音を使うんだという。
良いメロディーです(笑)。
清水アナ メロディー。
浜田 腹立つ。
畠中 めっちゃムカつくわ。
夏井先生 前回の
失敗から見事に調整して学んできている。本当にびっくりする。
まず「冬晴」の季語から始まり、「小樽」の地名、「
ことりっぷ」という旅のガイドブック。
固有名詞を上手に使っている。「ことりっぷ」は知らないので調べた。
20~30代の女性向けの週末2泊3日の旅を提案するガイドブック。となると、この
固有名詞がそういう年代の女性たちを描いてくれる。固有名詞の使い方も見事。
そして、最後に「折り目」と着地して映像を作る。
この
折り目によって、旅を楽しんでいる様子もしっかりと見えてくる。お見事だった。直しは要らない。
ジュニア名人 凄いわ。
浜田 おめでとうございます。
本人 ありがとうございます。
浜田 良かったですね。
本人 はい、頑張ります。
●解説のポイント |
前回の失敗から見事に調整した 季語・地名・旅のガイドブック 20~30代の女性向け3日程度の宿泊旅行 固有名詞の使い方が見事 着地の「折り目」で映像を作る 旅を楽しむ人物の様子も見える |
添削なし
天文「冬晴」とガイドブックの折り目に着目した句またがりの一句。横尾名人が得意とする対句表現の型を見事に使いこなしました。前半は清々しい青空が広がる北海道の光景があります。着地の「折り目」は「ことりっぷ」がウェブサイトではなく紙のガイドブックだと明確にし、旅行に向かうポイントを事前に入念にチェックしていた人物像が伺えます。「冬」と「折り目」で温度や質感・肌触りにも実感があります。「小樽」は修学旅行の過去の体験談ですが、「ことりっぷ」は今風の若者らしい楽しい語感でもあり、2つの時間軸を融合させた印象。地名とガイドブックの固有名詞を合わせ、「名詞」+「の」+「名詞」を2つ重ねる対句表現も綺麗に嵌っていますが、特待生を狙う意味でのあざとさも感じます。言語感覚としてのバランスも確かに取れており、前半の広い光景・後半の細かい着眼と言う対比もあります。初登場した2か月前から既に3回目の挑戦で、若き逸材として紹介されており、次回もグローバルな発想を活かせば最年少特待生に認定される可能性が高まりました。
◆2位
才能アリ70点 勝村政信『雪道に LINEスタンプ バスの跡』浜田 うん。
【本人談】冬の長野に遊びに行った時、サービスエリアで雪が残っていて下を見ると雪の轍(わだち)が沢山あり、はっきり轍が出来ていたり、解けて薄くなっていたり、それが何となく顔の表情に見えてきて、バスに乗っている旅人たちの思い出がそこにスタンプされているようなことを思ったんで、これを書いた。
篠田 いや、凄い。
「LINEスタンプ」っていうセンスが素敵だなと思いました。
村上永世名人 いや面白いっすよね。分かるし「LINEスタンプ」ってあと「バスの跡」って分かって。
何度も比喩で怒られてるのに果敢にチャレンジする(笑)。今回は掴んだわけですから。
浜田 なるほど。
本人 (前回の)
「揚げ物軍隊」がまた凄かったです、反響が(笑)。
村上永世名人 ねえ。「揚げ物軍隊」であんなに怒られてたのに。果敢にチャレンジするというその心意気が。
夏井先生 映像は雪道のタイヤの跡のみ。
それをLINEスタンプみたいだと思えるのが楽しい発想。悩ましいのは
下五「バスの跡」を許容するかどうか。そこが1晩の問題になる。
正しいのはそこにあるのは「タイヤの跡」。
でもこれは、
何のタイヤの跡でも良いというわけではない。「LINEスタンプみたいだ」という楽しい発想を活かすということは、
バスに皆が乗ってワイワイしているという空気は必要だと思う。
そうなると、
一番良い所を活かすための伏線として、「バス」という情報が必要だという結論になった。
それを許容した際、一点だけ
勿体ないのは上五「に」。
「に」があるため「タイヤの跡」と書きたくなる。
ここを「
の」とすれば、「バス」の問題もずっと薄くなってくる。これで良い。
本人 でもね、僕
最初に「の」って書いたんですよ。
夏井先生 えっ!?
本人 「の」だとちょっとダメかなと思って「に」に直したんです。
夏井先生 なんでそれが判断できないのよ、もうホントに(笑)。
本人 申し訳ない。
夏井先生 あんたに費やしてきた時間がどんだけあったと思ってんの。
本人 (立ち上がって)俺たち、付き合っているみたいじゃないですか(笑)。でも良かったです、ホント。
浜田 いやいやでも、才能アリ2位でございました。
本人 ありがとうございます。
●解説のポイント |
映像は雪道のタイヤの跡のみ LINEスタンプと比喩する発想が楽しい 悩ましいのは下五を許容するか否か 「タイヤの跡」が正しい表現 何のタイヤの跡でも良いわけではない 「LINE」からバスに皆が乗ってワイワイする 「バス」が一番の工夫を活かすための伏線に 上五「に」が勿体ない 「の」とすれば「バス」の問題も薄くなる (本人「最初"の"にしたが書き直した」) なぜそれが判断できない あんたに費やしてきた時間がどんだけあったか (本人「付き合っているみたいじゃない」) |
添削後
『雪道の LINEスタンプ バスの跡』
冬の天文「雪」とバスのタイヤの轍をラインスタンプと比喩した定型句。「才能アリ」査定とはいえ評価に少々悩む一句で、上五・中七の比喩表現を素直に受け入れられるかが一つのポイント。下五「バスの跡」で種明かしはされますが、LINEスタンプ自体はスマートフォンのアプリで捺すせいぜい1~2cmの正方形のイラストのため、バスの跡あるいはタイヤ痕であるならば、一種のマスキングテープのように多くのスタンプが道路に並んで見えた様子となり、大小の対比の比喩にしても大袈裟な印象が拭えません。本人は「バス」とすることで、乗客の様々な感情がスタンプされるような意図を語っているため、単純な轍というよりバスに乗り込む人の足跡など様々な可能性を感じさせたいのでしょう。上五「に」に散文臭さがあるのも減点ポイントで添削されました。ご指摘の別案「てふ轍」は良い添削例に思います。今回は、面白い発想で絶妙なラインを攻め、先生から太鼓判を押された力業にもはや屈服するしかありません。
◆3位
才能ナシ36点 鈴木絢音(乃木坂46)『音もない 銀世界の 停留所』【本人談】生まれ故郷が秋田で、自分の経験を元に書いた。雪が一面に降り、行き交う人もなくて音もない。そこにポツンとある停留所というのを思い浮かべて書いた。
村上永世名人 まず
「銀世界」は季語じゃないです。
本人 はい。
村上永世名人 そもそも。ってことは季語がないんですよね。
本人 …はい。
村上永世名人 (強い語気で)
ありますか?浜田 もう、必死になってる。梅沢さんの真似して(笑)。
村上永世名人 いや、何か綺麗な俳句になった気になっちゃうんだけど、これだと伝わらないな。
夏井先生 何が書きたいのかは伝わる。勿体ない第一点は村上さんの指摘の通り。
「銀世界」は辺り一面の雪の景色という意味も伝わるが、季語としての力は弱い。今、とても良い言葉を仰った。
停留所はどんな風にあったの?
本人 ポツンと。
夏井先生 それそれ。
「銀世界」と書くより、停留所が「
ぽつんと」あった。
「
雪」はたった2音で季語になる。
「ぽつんと雪の停留所」で整う。
そうなると
「音もない」と説明しなくても、「ぽつんと」「雪」で静かな・音もないと伝わる。これが俳句のメカニズム。
書かなくてよいことは書かない。そうすれば、上五がいい感じに5音分余る。
例えば、「ふるさと」と仰った。「
ふるさとや」としても良い。
お嬢さんだからひょっとしたら、「
失恋や」とすればドラマが変わってくる。そういうこと。
あなたは辞書が好きで言葉をよく知っている人。
型や季語の知識を少し入れていけば出来るようになる。一緒に頑張っていきましょう。
本人 頑張ります、よろしくお願いします。はい。未熟さを痛感します(笑)。
浜田 そんなことない。今…今からですから別にそんな。
村上永世名人 可能性ある。
●解説のポイント |
何が書きたいかは伝わる 「銀世界」は辺り一面の雪景色 季語としては大変弱い 停留所が「ポツンと」あった 語った言葉と「雪」で句は整う 不要なことは書かない 語った「ふるさと」を上五に置いても良い 「失恋」ならドラマが変わってくる 辞書好きなら型や俳句の知識を入れれば出来る |
添削後
『音もない ぽつんと雪の 停留所』
『ふるさとや ぽつんと雪の 停留所』
『失恋や ぽつんと雪の 停留所』
音が何もないような雪景色の中にある停留所の光景を詠んだ字足らずの無季の一句。光景描写としての句材は悪くなく、人型のように立って見えるバスの停留所と銀世界の取り合わせには素朴な魅力があります。季語がない失敗は初心者にやりがちで、せめて中七の字足らずは避けたかったところ。上五「音もない」の助詞「も」が再考すべき点となり「無音なる」などの表現に変えたくなります。添削では「ぽつんと」と一点だけそこにある意味の擬態語で代替しており、上五で別案が示されました。前回は70点から半減する前代未聞の事態でしたが、辞書好きが転じて歳時記好きになれば、今後大きく化けるかもしれません。
◆4位
才能ナシ35点 畠中悠(オズワルド)『寒窓に 浮く子どもの絵 帰路のバス』村上永世名人 うん。
【本人談】観光バスは行きの時のテンションが高い。その時に一緒に乗っていた子どもが窓に落書きをしたのが、帰りの寂しい感じのバスの中で、曇りガラスに浮かんでくるというちょっと切ない感じを。
ジュニア名人 なんか…う~ん、言わんとしてることは分からんでもないなという。ここまで低い理由を聞いてみたいですね。
村上永世名人 「窓」ときて「子どもの絵」というのも、少しちょっと使い古された感がある。
浜田 なるほど。
夏井先生 意味は分かるが、
小さな違和感がチラチラ重なっているというタイプの句。
まず「
寒窓」(※冬の寂しい窓、漢詩の一節の言葉)。
これが
季語として認識されているかというと、そこが少し弱い。ネットで調べて「良い言葉」と軽い感じで使った感が見えてくる。それが1点目。
「寒窓」とここに無理矢理季語を入れようとすると。
これは
背伸びし過ぎ。
「窓に」で良い。浮かないでください。
「浮く」は不要。「窓に子」で真っすぐいける。
「ども」と書く必要もない。「窓に子の」とする。
「絵」でも良いが「
落書き」とゆったり書ける。
この後に季語を入れる。「寒の」でも良いが素直に「
冬の」を入れる。
あなたが書きたいことはこんな簡単に書ける。
伊藤 やっぱ自分のことじゃないんですけど、恥ずかしすぎてオズワルドじゃないフリしてしまいそうです(笑)。
本人 ちょっと今後、歌とか作るの止めますね(笑)。
浜田 何でやねん。それはええやんか、別に。
●解説のポイント |
意味は分かるが小さな違和感が重なった 「寒窓」は冬の寂しい窓で漢詩の一節 季語としては弱い ネットで調べて軽い感じで使った感が見える 無理矢理背伸びをしない 「浮く」必要はない 「ども」も不要で「窓に子の」で良い 「落書き」の後に季語「冬」を入れる 書きたいことは簡単に書ける |
添削後
『窓に子の落書き 冬の帰路のバス』
冬の寂しい窓を指す「寒窓」は中国・唐の詩「暗風、雨を吹いて、寒窓に入る」からの引用。旅行帰りのバスの中、結露した窓に子が絵を描く楽しい光景を描いた定型句です。意味自体は大体取れますが、『季寄せ』に掲載がない「寒窓」を持ってくる武骨な精神とは裏腹に、してやったり感が裏目に出てしまいました。ご指摘の通り、前半の言葉が硬く、後半のフレーズとバランスが取れていません。「浮く」の擬人化も少々大袈裟な上、窓に絵を描く子の発想にも類想感があるため、何の絵を描いたかなどオリジナリティが欲しかった印象です。添削例は6単語を詰めた句またがりで、これが簡単に書けるなら初心者は脱しているでしょうか。初挑戦でしたが、芸人らしい発想力でのリベンジに期待しましょう。
★特待生昇格試験★→<2級>・
篠田麻里子は9月放送のふるさと戦で福岡ブロック優勝。俳句は故郷である福岡県の公認ポスターに掲載された。
浜田 地元の反響は良かったんじゃないですか?
篠田 もう凄かったです。何かもう福岡が震えたって言ってました。
浜田 何を言うてんねん。
篠田 ホントに。やっぱ名人に勝つって本当に凄いことだし。「やっぱり福岡のこと分かっとうね」って言われました(笑)。
◆『ズワイガニ 無音の宴 50分』 篠田麻里子(元AKB48)浜田 うん。
【本人談】カニの食べ放題に行った旅行のことを思い出して書いた。もう山ほどあるズワイガニをみんなが無言で食べている様子が凄く面白くて、でも「食べ放題」という言葉を使うんじゃなくて「50分」という言葉で表現してみた。
ジュニア名人 めちゃくちゃ良いなとは思います。思いますけど、ちょっとあの~ブツブツっと
三段切れ(※五七五それぞれが三段に切れリズムが悪くなる)っていう風に言われる可能性は、これはどんなんかな?と思います。
村上永世名人 カニで無言という(句材)のが無くはないけど、でも「無音の宴」っていうのは聞いたことないからそれは面白いなと思いました。
★評価ポイント中七「無音の宴」の是非
■査定結果2級で
現状維持理由:
臨場感が足りない本人 あ~。
夏井先生 最後に
「50分」と具体的な時間を言ったのは良い。50分というリアリティがしっかりある。
勿体ない点を二つ言う。
「ズワイガニ」という片仮名表記。生き物・植物の季語は特別な意図でもない限り、
基本的には片仮名を使わない。一つ覚えておいて欲しい。
ここは俳句の世界では遠慮すると。「
ずわい蟹」と漢字で書いた方が良い。
問題は中七の方が深い。
「無音」と書きたい意図は分かるが、現実的には何かの音はしている。村上永世名人 なるほど。
夏井先生 何の音がしているかというと、ひたすら「むしゃむしゃ」と静かに食べている音だけがそこにある。
「食べる」でも良いが、「
食(は)む」とすれば、いかにもずわい蟹をみんなが無心に食べている時の音の気分が出てくると思う。
「のみの」と限定すればその音しかしない意味になる。
「宴」と使いたい気持ちは分かるが、
「宴」という言葉に甘えず、「無」を誤魔化さない。中七のリアリティーをしっかり持ってくる、「ずわい蟹」という季語がより立ってくる。そういうこと。
本人 勉強し直します。
浜田 はい、分かりました。
●解説のポイント |
「50分」の具体的な時間が良い リアリティがしっかりある 勿体ない点は二つ 生物季語なら「ズワイガニ」の片仮名は× 中七の方が問題が深い 「無音」の意図は分かる 現実的には食べている音がある 「食(は)む」で蟹を無心に食べる音の気分を 「のみ」で限定する 「宴」という言葉に甘えない 「無」の音で誤魔化さない 中七のリアリティをしっかりと 季語「ずわい蟹」がより立ってくる |
添削後
『ずわい蟹 食む音のみの 50分』
冬の動物「楚(ずわい)蟹」を食べ放題で食す音に注目した定型句。とはいえ発表の瞬間、読みに大変困ってしまい、降格の可能性すら感じた一句です。ジュニア名人が指摘した三段切れの印象が拭えない点もありますが、「50分」が学校の授業時間と同じため、ずわい蟹が解剖前の見世物として脚を動かす「無音の宴」があり、それを生徒諸君が凝視しているかのような意味に受け取りました(その意図で書かれた可能性は薄いのも承知していますが)。「ズワイガニ」が片仮名表記であること、名詞と中七「の」の助詞のみで構成されて意味の繋がりが見えにくく、季語が主語なのか目的語なのか不明瞭なため、誤読に至ったのかもしれません。本人の意図では”ずわい蟹を食べる”という目的語として季語を捉えているため、「食む」「食らう」などの動詞があれば意味を確定できます。「宴」も実際の宴より、誤読した比喩的意味合いの方が詩にはなりそうですが、少なくとも本人の意図が全く読み取れなかった自身の読解力のなさを反省すべきだと述べておきます。
★永世名人への道★→<名人10段>・
千原ジュニアは星を3つ獲得している。
ジュニア名人 いやここ大事ですね。
浜田 大事ですよ、あなた。
ジュニア名人 ここ大事やな。いきたいな~。
浜田 アハハ。
◆『バス見えて バス停の 毛布を畳む』 千原ジュニア村上永世名人 うわ~。
【本人談】田舎の町の屋根のついたバス停に綺麗に畳まれた毛布があったなと思った。バスが見えたからそろそろって乗り込む準備して綺麗に次の人のために(毛布を)畳んでバスに乗る人を詠んだつもり。
浜田 なるほどね~。
畠中これどう思う?本人 誰に聞いてんねん(笑)。あいつだけはないわ!
村上永世名人 めちゃくちゃ良いと思うんですけど。この高レベルな場所なんで、どうかなということですよ。「バス見えて」の「て」が、たまに僕が言われたのが
原因と結果は俳句は嫌う時があるんで。
本人 じゃあ「て」は何なんですか?
村上永世名人 だから、え~と……。
浜田 (正解の返しが)
「急に言われても」や(笑)。
本人 (立ち上がって)分かりやすいパスやったね、今。
浜田 なあ。アハハ。
篠田 止まっちゃった。
村上永世名人 それこそ急に言われても…です(笑)。それこそ急に振られてもですわ。
★評価ポイント「見えて」から「畳む」までの叙述の是非
■査定結果名人10段★4へ
1つ前進理由:
本来失敗するやり方なんだけどね…本人 よ~し!
篠田 凄い。
夏井先生 北国・雪国になると
毛布も置いてあるバス停もあるというのが見えてくる。1版の問題は
「見えて」「畳む」という書き方がどうしても散文的・説明的(※詩的な情景に乏しい)になる。
大体失敗するため、俳句では嫌う書き方。
この句の場合、
バスが見えてきて毛布を畳むという、作中の人物の動作が映像になっている。
さらに、この人の細やかな動作も想像できないだろうか。
自分が乗るバスが見えてきたと。毛布を畳もうと。
「お借りしました」という感謝を込めて、キチンと畳んで次の人に「どうぞ」の思いを込めて、畳んでいるに違いないという動作まで見えてくる。
ジュニアさんの句は真面目で地味だが、滋味・心情の豊かさがある。
その意味では真骨頂の一句だと思う。
浜田 でしょうね。真面目ですからジュニアは。
本人 金髪ヨロシク!でやってんすよこっちは(笑)。
浜田 「1つ前進」しましたので当然直しはなしでございました。おめでとうございました。素晴らしい。
●解説のポイント |
北国・雪国に毛布も置いてあるバス停もある 「見えて・畳む」の書き方が散文的・説明的になる 大体失敗するため俳句では嫌う書き方 作中の人物の動作が映像になった 細やかな動作が想像できる 「お借りしました」の感謝を込める 次の人に「どうぞ」の思いを込める ジュニアさんの句は真面目で地味 滋味・心情の豊かさがある その意味では真骨頂の一句 |
添削なし
冬の生活「毛布」がバス停で置かれた状況で、畳む人物の動作を描いた五五七の定型外し。実際に屋根のあるバス停であれば、「自由にお使いください」などのようなブランケットがある場所も想像はできます(具体的にどの場所で見たのか気になりました)。某有名観光バス会社だと東京駅にも数か所の待合室がありますし、青春18きっぷで行く旅行の拠点駅にもなれば、夜を過ごす小さな駅舎に毛布が置かれている光景は目にした覚えはあります。「見えて」「畳む」の叙述に原因結果は確かに感じますが、この句は「毛布」「バス停」の取り合わせの意外性が勝っています。そして、動詞を入れることで人物の動作の置かれた状況が否応なしに想像できる奥行きの広がりがあり、毛布を大切に扱う作者の心情も読み取れます。真面目に俳句をコツコツ作って来たジュニアさんの技術がいかんなく発揮された句となりました。
★永世名人 村上のお手本★→<永世名人>・
村上健志(フルーツポンチ)は前回ボツで句集完成まで残り25句。
村上永世名人 (句集完成まで残り2句の)梅沢さんがそろそろ卒業して、やっぱり脱・梅澤の後、ミスタープレバトとして僕が引っ張っていかないといけないので(笑)。
浜田 そういうの、自分で言うんだ。
村上永世名人 他の人が言ってくれないので(笑)。
***
浜田 彼のコメントはどう思われますか。梅沢さんなき後みたいな。
ジュニア名人 梅沢さんの代わり、ちょっと
線が細すぎじゃないですか(笑)。人間としての線が。
村上永世名人 確かに、分かる分かる。
◆『補助席に 場札と蜜柑 バスの旅』 村上健志(フルーツポンチ)※「場札」とはトランプや花札でその場に置かれている札。
【本人談】貸切バスで旅をして、中でワイワイと遊んでいる様子。トランプで遊ぶとき、補助席を机代わりにし、そこにトランプのカード・場札を出していく。そこに蜜柑もあるというシンプルな光景。「補助席」でリアリティが出ているとか。
ジュニア名人 最後の5文字、
「バスの旅」がなんか、ちょっとだけ引っ掛かるような、ちょっと重複している感じ。
浜田 なるほど。
■査定結果永世名人26句目に
掲載決定
理由:
「場札」が効果的!本人 (両手を広げ)わーい!
(査定評後)
本人 「場札」だ。
夏井先生 読んだ瞬間、
場面はありありと分かるのは言うまでもない事。
「補助席」から出てくるため、バスに違いないと分かる。
最後「
バスの旅」、ジュニアさんがよくここを指摘なさった。
この句の中で、
評価が悩ましいのはここを良しとするか否とするかになってくる。
上五でバスだとは分かっているが、
中七の賑やかさのようなものを補填する意味で「バスの旅」だとここで念押しする働きとして、決してマイナスにはなってない。
そして「
場札」。
本人はトランプと言ったが、「場札」で色んなカードゲームを思う。
トランプ・UNO(ウノ)なら修学旅行のある程度若い世代と思うが、花札ならいきなり缶ビール飲むオジサン世代の空気感になる。
「蜜柑」を中七に置いて主役にできる。ここら辺が、地味だけれども確かな技。
本人 (はにかんで無邪気にポーズを取る)
浜田 腹立つ。
夏井先生 この顔を何とかしてください(笑)。
浜田 掲載決定ですから直すところがありません。おめでとうございます。あの顔がイラっとするので、(シュレッダーの)これ押しときましょうか。
本人 いやいや、そんなことしないで下さい(笑)。
●解説のポイント |
場面はありありと分かる 「補助席」でバスに違いない 「バスの旅」を良しとするか否か 中七の賑やかさを補填する 念押しに「バスの旅」はマイナスにはなってない 「場札」で色んなカードゲームを思う トランプ・ウノなら修学旅行の若い世代 花札なら缶ビール飲むオジサン世代の空気感 「蜜柑」を中七に置いて主役にできる 地味だが確かな技 (はにかんだ)この顔を何とかしてください |
添削なし
冬の植物「蜜柑」と場札が置かれた観光バスの旅を意図した定型句。誰もが一度は感じた事のある句材と兼題との距離感が丁度よく、映像が明確に見える作り。中七に切れのある取り合わせとしてテクニックがあります。「補助席」と場所を押さえた後、そこに人が座るのではなく「場札」と「蜜柑」がある光景。本来とは異なる不衛生な使用法ではあるものの、共感できる内容によるプラス面が勝っています。「蜜柑」でいかにもカードゲームを数人で行う冬の屋内であることが伝わります。上五「補助席」は車の助手席と混同しやすく、劇場の補助席の意味合いもあるため、「バスの旅」のダメ押しは重要です。それにより、季語「蜜柑」が炬燵で行うような俗な場所での団欒ではなく、バスに持ち込む必需品として場札と並んで重要に扱っている効果が際立ちます。半径数十センチ俳句が十八番と言われる村上さんですが、光景もきちっと押さえられる確かな力を感じる一句です。
★次回12/22は年内最後の放送。俳句の兼題は「イルミネーション」です。
絵手紙査定で特待生が誕生した後半の俳句査定。兼題は「観光バス」。観光バス記念日が元のようですが、年末年始は旅行に行きたくなるもの。コロナ禍からの回復も相まって徐々に活況を取り戻しつつある場所もありますが、まだまだ収束が見えないだけに状況判断は難しい所。その点、過去の思い出などに焦点を絞る詠み口が得策な兼題です。
季語は全員冬とはいえ、平場は「冬晴」「雪」と天文季語2名が才能アリ。無季ながら「銀世界」「寒窓」を用いた2名が才能ナシに。特待生以上は「ずわい蟹」「毛布」「蜜柑」と動物・生活・植物と用法が異なりました。兼題からは「バス」を用いたのが4名の他、「停留所」「ことりっぷ」と分かれ、篠田さんは「宴」の食べ放題を表現。特筆すべきは取り合わせの用法において、2位・4位・村上名人の3名が中七で切れた後に下五に「バス」を入れて念押しを行う手法をとっている点。さらに、1位が対句表現を用いていることも挙げられます。全体的に対策を行って挑む人物が多い中、全体的なレベルが上がっていることをひしひしと感じます。
さて、今回は俳人の読解力を試す傾向が強い回の印象で、どのように句を解釈するかが大変重要だと感じました。特に勝村さんの「LINEスタンプ」、篠田さんの「ズワイガニ」、ジュニア名人の「バス見えて」がポイントに。句が発表されると一度VTRを止めて、句意を考えてから本人の話を聞くようにしていますが、自句自解で突拍子もないことを喋り出されると、こちらも困惑したり、新たな発見をしたり、反省をしたりと様々な思考が巡ります。番組の視聴方法として奇抜かもしれませんが、色々と工夫しながら俳句力を鍛える方法を編み出したい所存です。
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