2022年12月8日放送 プレバト!! 名人昇格査定
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
※12日に全て更新しました。お待たせいたしました。
挑戦者→森口瑤子[30],立川志らく[58],藤本敏史[85] ※数字は挑戦回数●お題:たい焼き

※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 名人2段で現状維持 | ★森口瑤子
| 長ゼリフ終へ差し入れの鯛焼 | ながぜりふおえさしいれのたいやき |
2 | 名人6段で現状維持 | ★立川志らく
| 余命を知りたい焼きを腹から食う | よめいをしりたいやきをはらからくう |
3 | 名人10段★4へ1つ前進 | ★藤本敏史 (FUJIWARA) | 買い食いの鯛焼野球強豪校 | かいぐいのたいやきやきゅうきょうごうこう |
→編集後記夏井先生 皆さんちゃんとそれぞれの個性を生かして、さすがだなと思います。
★特待生昇格試験★→<名人2段>・
森口瑤子は前回「足踏みを五回枯葉の音愉快」で昇格した。
浜田 とりあえず昇格してますからね。
森口名人 やっと。1年以上現状維持で結果が出なかったから、今回も調子をつけて上がりたいです。
浜田 なるほど。
◆『長ゼリフ終へ 差し入れの鯛焼』 森口瑤子※全部で16音。字足らずの俳句。
【本人談】(俳優として)ホントに日々こういう生活を送っている。凄い緊張したシーン(の撮影)が終わって、(楽屋で)「やった~!差し入れの鯛焼きを食べるぞ」という。
藤本名人 ちょっとやっぱり森口さんでしょ。
本人 アハハ。
藤本名人 「長ゼリフ終へたい焼き食べたいん
だってば」ですよね、これはね(笑)。ええ。
本人 どうしても?どうしても?
藤本名人 これが正解だと思います。
★評価ポイント7・5・4の韻律の是非
夏井先生 清水さん、
Aを渡してください。
清水アナ はい、Aですね。
藤本名人 何、このシステム? 何ですか、これ?
浜田 多分ですけど、森口さんの解説を聞いて…。
藤本名人 結果が良いか悪いか決まる。
浜田 そうです、そうです。
■査定結果名人2段で
現状維持理由:
―本人 あ~、そっか。
浜田 Aが「現状維持」だったでしょ。Bだと?
清水アナ Bだとですね、「
1ランク昇格」でした。
浜田 アハハ。
夏井先生 良い所から押さえる。
この
「長ゼリフ」の言葉で役者・俳優だと分かる。
さらに「差し入れ」で楽屋や差し入れる人の思いも伝わる。そこら辺はやっぱりさすがだと思う。
悩ましいのは
韻律。1音足りない調べを持ってきている。
作者の意図は一体どこにあるのかと思う。
どちらかというと
短調の調べになっている。
そのため、森口さんご自身がこの句の意図は
「なかなか今日も上手くいかないところがあったが、差し入れの鯛焼を慰めの気持ちで」なら七五四の韻律でもOK(昇格)かなと構えていた。
しかし、お話を聞くと「
やれやれ終わった。ご褒美の鯛焼きだ」というイメージ。
それなら
調べをもう少し明るくした方が良い。
「長ゼリフ終へ
たり」で一回カットを切る。
舞台で長ゼリフが「よし!うまく行った」感じ。
「差し入れ"
は"鯛焼」。
本人 あ~そっか。
夏井先生 色々と差し入れはあるが、私が一番嬉しいの"は"鯛焼きという感じになる。
本人 凄く嬉しそうになりました。ちょっとまた勉強してきます。
●解説のポイント |
「長ゼリフ」で役者・俳優と分かる 「差し入れ」に楽屋や差し入れる人の思い 字足らずの韻律が悩ましい 短調の調べだが作者の意図が異なる 慰めの食事なら七五四の韻律が成功だった ご褒美の鯛焼きなら調べを明るくすべき 「たり」で一回カットを切る 「は」で季語を強調する 嬉しい差し入れが鯛焼きだと |
添削後
『長ゼリフ終へたり 差し入れは鯛焼』※仮にBなら「1ランク昇格」だった。
冬の生活「鯛焼」と仕事を終えた俳優の憩いの一時を描写した下五が1音字足らずの一句。「鯛焼」に対して「差し入れ」する発想は類想を匂わせるものの、芸能人らしい「長ゼリフ」の一語がオリジナリティを確保しました。「終へ」までの前半が本人の動作、「差し入れの鯛焼」は恐らく第三者が差し入れた意味でしょうが、最後に「を」の一音があれば定型で第三者の差し入れを食べる動作と確定。一方、「鯛焼を差し入れす」なら本人が別の人物に差し入れたことになり、読みに少々迷います。ご指摘の通り、千賀名人の「青い氷菓」句も短調の調べで、この句は字足らずの韻律が評価ポイントになりましたが、字足らずの句は我々初心者俳人にはなかなか手が出しにくいところです。
→<名人6段>・
立川志らくは金秋戦で9位に終わった。
清水アナ 志らくさんは秋のタイトル戦で後輩の春風亭昇吉(3位)さんに負けてしまい、宣言通り
昇吉さんの落語会にノーギャラで出演することになったそうです。
浜田 決定なったんですか。
志らく名人 私は普通にゲストで出るつもりが、
あいつがどういうわけだか「前座」開口一番で使うと言っている。
一同 (笑)。
志らく名人 凄く屈辱ですよね。
藤本名人 若手の方がやるそうですからね。
志らく名人 ただ、私が前座で上がったらキャリアが二十何年違いますから、あいつ上がれねえぞ、後。
浜田 アハハ!
志らく名人 そのこと気が付いてない。
浜田 それで良いのか、ってことですよね。あ、出るんや。凄いね。
◆『余命を知り たい焼きを 腹から食う』 立川志らく藤本名人 なるほど。
【本人談】私の知人が「たい焼きを腹から食ったんだよ」ってことを入院中に私に教えてくれたことがあった。それからしばらく経って亡くなった。自分の余命を知った時に、今までは尻尾からチビチビ食べてたのが、一回ぐらい腹からガブっと食べたんだという。なんか、それが頭にあって。
藤本名人 ちょっと引っかかるのが、
「知って」から「食べる」っていう、こう…流れの是非ですね。これは(笑)。
★評価ポイント「知り」→「食う」と展開する叙述の是非
藤本名人 ほら。
■査定結果名人6段で
現状維持理由:
キリッとしてない藤本名人 あら。
本人 あらまあ。う~ん。
(査定評後)
本人 「キリッとしてない」?
夏井先生 これは
面白いところを狙った。
鯛焼の句としては、非常にオリジナリティ・リアリティがある。せっかく、これだけの題材を手に入れているため、
あと一言キリッとさせるだけで良い句になる。何がキリッとしてないか。
「を知ってから」「食らいました」という展開がダラダラ続いている。ここが勿体ない。
切れを一か所入れるだけで引き締まる。
この内容なら「余命知
る」と終止形で言い切った方がキリッとする。
「食"
ら"う」とここに一音入れてみる。
そうすると、腹から食らうところに、"
何と余命というものは理不尽なものであるか"と。
そういう思いを匂わせることが出来る。
本人 …一言もないです(笑)。もうあの、
先生の俳句の会の前座をタダで(笑)。
藤本名人 言いましたね。
夏井先生 いやもう、
聞いたことは絶対忘れない(笑)。
藤本名人 決定でいいですか、これ。
●解説のポイント |
鯛焼の句として面白いところを狙った これだけの題材をあと一言でキリッとさせたい 「知り」「食う」の展開がダラダラ続いている 切れを一か所入れるだけで引き締まる 「余命知る」と終止形で言い切る 「食らう」と一音入れる 何と余命は理不尽なのかという思いを匂わせる |
添削後
『余命知る たい焼きを 腹から食らう』
冬の生活「鯛焼」を病身で食べる動作を取り合わせた六五六の一句。「余命知り」のネガティブな出だしで少々インパクトのある状況で押さえ、「腹から食う」に頭や尻尾からではなく、餡が詰まっている鯛焼の身から大きく食らう達観した人物が映像として読み取れます。また、定型でない調べにも物々しさがあり(これこそ短調の調べでしょうか)、鯛焼の味わい方としても独善性が強い印象。作者本人の事情というより、第三者からの報告句として読み取られる可能性は高いでしょうか。ご指摘の時間の点について、この句は余命を“知った”ことが後半への動機付けに繋がる大切な点に思います。「切れ」によって引き締まるのは勿論ですが、「鯛焼」と漢字表記にしないと「知りたい」などと誤読される恐れも。志らくさんらしい人物描写とはいえ、切れや助詞の用法に注意したいところです。
★永世名人への道★→<名人10段>・
藤本敏史(FUJIWARA)は現在星3つ。前回は後退していた。
藤本名人 これ厳しいのよね。
◆『買い食いの鯛焼 野球強豪校』 藤本敏史(FUJIWARA)志らく名人 ああ…。
【本人談】強豪校の野球部員、厳しい練習を終えた後にみんなで鯛焼きを買って買い食いして、和気あいあいとしている感じの俳句。
森口名人 凄い可愛いです。「強豪校」というところが、
あんな凄いプレーをする子たちが、こんな無邪気なところがあるんだっていう感じも素敵です。
本人 うわっ。汲み取ってくれてる(笑)。
浜田 アハハ、ほんまかいな。
本人 そうなんです、森口さん。大好き、森口さん僕。
★評価ポイント「強豪校」と限定した是非
本人 え~、何そこ~?もう嫌。
■査定結果名人10段★4へ
1つ前進理由:
―本人 あ~良かった~。
夏井先生 部活帰りに買い食いする句は山ほどある。
その上で、
「強豪校」とここまで限定してくることで、面白い効果を手に入れることができた。強い
野球部の子たちが、まさにその年齢相応の可愛い表情で食べているというのも勿論見えてくる。
ひょっとすると、
この強豪校のチームが来る前に、地元の弱小校の子らが一人二人そこで買い食いしてて、「あ~あいつらが来たぜ」と隅に隅に自分で追いやられていくみたいな。
本人 そうそうそうそう。
浜田 ほんまかいな。
本人 そうなんですよ。
浜田 当然直しは…。
夏井先生 要りません。
本人 あ~嬉しい。
浜田 おめでとうございます。
●解説のポイント |
部活帰りに買い食いする句は山ほどある 「強豪校」と限定して面白い効果を手にした 強い野球部の生徒 年齢相応の可愛い表情で食べている 強豪校のチームが来る前 地元の弱小校の子らが買い食いする 「あいつらが来た」と隅に追いやられる感じも |
添削なし
冬の生活「鯛焼」を用いて強豪校の買い食いを表現した句またがりで字余りの一句。タイトル戦でも野球の動作を詠んで優勝しただけに野球ネタの調子が良い藤本さん。「買い食い」の発想ですが、「強豪校」で限定したことで高校野球常連校という人物像や表情、人数や動作まで思い描ける形に。本当の強豪校になると、全国から選抜試験を受けて集まって寮生活をする学校もあり、生徒は死ぬほど辛い練習をします。週末などは近くの公園で対外試合などをしますが、「買い食い」に関して行儀の悪さで禁止を指導するところも。そもそも「鯛焼き屋」が近くにある強豪校を考えれば、地方の地元密着型を想起しますが、現実的な場面として多少思い描きにくいかもしれません。また、後半に漢字が続く語順に関しては「鯛焼の買い食い野球強豪校」「強豪野球部たい焼きを買い食いす」など検討できる点はあるものの、「買い食い」のマイナスイメージを強調しない語順にポイントがあるのかもしれません。様々な読みに共感しやすい点を評価したいところです。
水彩画の特待生・名人一斉昇格試験を前後半にサンドイッチされた俳句の名人昇格試験。兼題は「たい焼き」でした。「たい焼き屋」と共に冬の季語である鯛焼は明治以降の食べ物で、比較的季語としては新しいもの。それゆえ生活に密着した句が多数詠まれています。
今回は全員が「鯛焼」に真っ向勝負でしたが、3名とも定型外し。森口さんが「差し入れ」の発想で字足らずに挑戦。志らく名人が「腹から食う」食べ方に着目し、破調のリズムに。藤本名人が「強豪校の買い食い」に発想し、字余りの破調に挑戦しました。後半2名は季語を真ん中に入れ込む語順としています。食べ物季語は美味しそうに詠まないといけませんが、4音の季語で基本の型に挑むのも難しいと言えます。
さて、年末に誕生日を迎える松山在住で27歳の若手俳人・着流きるお氏(本人は”永世名人”の立場として「掲載決定」か「シュレッダー」かを別の俳人に査定してもらっています)の査定に挑戦。「
鯛焼や社説の記事を読む五分」と詠みましたが果たして結果は…?
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