「プレバト!!」で披露された藤本敏史(FUJIWARA) フジモンの全俳句一覧です。
永世名人(名人10段★5) 藤本敏史(ふじもととしふみ) 合計94句
成績(2023年9月14日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ3回、
凡人3回
<特待生時代>
1ランク昇格15回、
現状維持11回、
1ランク降格1回
【永世名人への道】★★★★★ 前進 8回(うち
2つ前進1回)、
現状維持 6回(うち星持ち3回)、
後退 4回(添削があれば即降格)
【永世名人のお手本】暫定26句・残り24作(50句で句集出版決定)
認定23句+
掲載決定 3句、
ボツ 0句
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第1回番組対抗戦
才能アリ1位
第1回俳桜戦6位、
第1回炎帝戦優勝、第1回金秋戦7位、第1回冬麗戦2位
第2回俳桜戦6位、第2回炎帝戦決勝3位、第2回金秋戦決勝4位、第2回冬麗戦決勝6位
第3回春光戦決勝7位、第3回炎帝戦決勝3位、第3回金秋戦決勝2位、第3回冬麗戦決勝5位
第4回春光戦予選A1位・決勝2位、
第4回炎帝戦優勝、第4回金秋戦決勝6位、第4回冬麗戦8位
第5回春光戦予選A1位・
決勝6位、第5回炎帝戦9位、第5回金秋戦予選B1位・
決勝4位、第5回冬麗戦8位
第6回春光戦予選B1位・
決勝6位、第6回炎帝戦5位、第6回金秋戦予選A1位・
優勝、第6回冬麗戦5位
第7回春光戦決勝優勝、浜田杯10位、第7回炎帝戦6位俳句甲子園'17対外試合で4-7で
判定負け、俳句甲子園'18対外試合で7-4で
判定勝ち夏の他流試合SPで小中学生選抜に28-29で
判定負け、秋の他流試合SPで東大王・砂川信哉に10-8で
判定勝ち通信教育査定で
ガッカリ査定1回
ふるさと戦(写真俳句)で
大阪編2位、京都編3位査定とは別に2017年月間MVH三度受賞(2・5・8月)、2018年度月間MVH二度受賞(6・11月)
●通算昇格率 54.2%(26/48) 掲載率:100%(3/3) 前進率:44%(8/18) 昇格率:56%(15/27) ◆添削なし秀句 42句/92句(俳句甲子園分は除く、凡人・現状維持査定は母数のみ含める)
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人物紹介◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 | 凡人 | 紅葉より舞妓はん見て高揚す |
2 | 凡人 | 君の手を僕のポッケに雪の道 |
3 | 才能アリ | 節分の次の日靴に豆ひとつ |
4 | 才能アリ | 滝壺に向かって白龍まっしぐら |
5 | 凡人 | 稲の香に地蔵の鼻もふくらんで |
6 | 才能アリ | 秋刀魚焼く煙の向こうに子と夕日 |
7 | 現状維持 | 組体操伸ばす指先鰯雲 |
8 | 現状維持 | 独り酒妻はこたつで昏々と |
9 | 1ランク昇格 | 肩車子の鼻先に触れる梅 |
10 | 現状維持 | 大仏を包む若葉と星明かり |
11 | 1ランク昇格 | 白雲を吸い込み放つ大瀑布 |
12 | 現状維持 | 長刀鉾雲裂き進みぎしぎしと |
13 | 1ランク昇格 | 花火終へ湖上に現わる大三角 |
14 | 1ランク昇格 | 夕陽にもたれてかじる焼きもろこし |
15 | 1ランク昇格 | 山あいの秋雲工場フル回転 |
16 | 現状維持 | 名月に包まれベビーカー眠る |
17 | 1ランク昇格 | 羊群の最後はすすき持つ少年 |
18 | 1ランク降格 | 空の旅下に初富士子がつまむ |
19 | 1ランク昇格 | 節分のセンサーライトが照らす闇 |
20 | 現状維持 | ハーモニカソの音出せば出る土筆 |
21 | 俳桜①6位 | 卒業のマントに風をなびかせて |
22 | 現状維持 | 茶畑や朝のサリーの色ぬくし |
23 | 1ランク昇格 | 鯉のぼり挿され五つのランドセル |
24 | 1ランク昇格 | はこね号これより初夏に入ります |
25 | 現状維持 | 梅雨闇の利かぬ二頭の警察犬 |
26 | 炎帝①1位 | セイウチの麻酔の効き目夏の空 |
27 | 1ランク昇格 | アメリカの歯磨き粉色した浮き輪 |
28 | 才能アリ | マンモスの滅んだ理由ソーダ水 |
29 | 1ランク昇格 | 大仏の御手から月は生まれます |
30 | 俳句甲子園①× | 少量の秋の来ている外野席 |
31 | 金秋①7位 | ぬうぬうと秋かき混ぜる観覧車 |
32 | 現状維持 | ガントリークレーンの上の冬星座 |
33 | 冬麗①2位 | 船長の側にペンギン日向ぼこ |
34 | 現状維持 | 指示待ちの雪の匂へる滑走路 |
35 | 1ランク昇格 | タッパーを持ってモツ煮屋春の宵 |
36 | 1ランク昇格 | 新幹線待つ惜春のチェロケース |
37 | 俳桜②6位 | 肉食のフェンスの施錠山ざくら |
38 | 現状維持 | 新緑の風来てそよぐ産着かな |
39 | 1ランク昇格 | 歩行量調査戻り梅雨の無言 |
40 | 炎帝②決勝3位 | 短夜や付録ラジオの半田付け |
41 | 俳句甲子園②○ | マッチ箱の汽車眩し夕虹の街 |
42 | 金秋②決勝4位 | 秋月やパリの封筒切るナイフ |
43 | 1ランク昇格 | タイカレーのラムは骨付き銀杏散る |
44 | 冬麗②決勝6位 | ごんぎつね聴きいて寝落つ雪模様 |
45 | 現状維持- | 村営バス逃して不意に探梅行 |
46 | 現状維持- | おぼろ夜や荷馬車で眠る象使い |
47 | 春光③決勝7位 | 卒業のコーヒー少し酸っぱくて |
48 | 炎帝③決勝3位 | プール開き前のプールに水馬 |
49 | 夏の他流試合× | 塩っぱめの飯頬張る西日の火室 |
50 | 1つ前進 | アップルパイの焼きたての札花鶏来る |
51 | 金秋③決勝2位 | 信号待つ騎馬警官の背のさやか |
52 | 1つ後退 | 紅葉見に行くトロリーに乗り換えて |
53 | 冬麗③決勝5位 | スイミーの音読二回おでん炊く |
54 | 春光④予選A1位 | 春寒のスタアの悲報カップ麺 |
55 | 春光④決勝2位 | 1DK八重桜まで徒歩二分 |
56 | ガッカリ | 子の舐める氷菓肘から滴れり |
57 | 現状維持- | オペレッタ歌ってコインシャワー浴ぶ |
58 | 炎帝④決勝1位 | ラジオ体操おおおなもみのある空地 |
59 | 1つ前進 | 扇風機首振りゆっくりトーベヤンソン |
60 | 現状維持- | イートイン氷菓の子らのカルキ臭 |
61 | 秋の他流試合○ | 秋雲に名をつけ窓に貼る付箋 |
62 | 金秋④決勝6位 | 月光のひとつぶ受信電波時計 |
63 | 冬麗④8位 | 血を止めるゴム巻く手際冬あざみ |
64 | 春光⑤予選A1位 | 流星群いくつか海に堕ちて海胆 |
65 | 春光⑤決勝6位 | うららかや次女出すチョキはまだ未完 |
66 | 現状維持- | ガムを噛む子等とバス待つ日永かな |
67 | 1つ後退 | 昼寝覚ひらがなだけの置き手紙 |
68 | 炎帝⑤9位 | 夏暁のおなら逞しロンパース |
69 | 金秋⑤予選B1位 | 魚群探知機朝寒のがなり声 |
70 | 金秋⑤決勝4位 | まず雁の飛来を尋ね長電話 |
71 | 1つ前進 | 背にホルンケース秋寂ぶのハチ公前 |
72 | 1つ前進 | 陸橋を渡れば熱を持つマスク |
73 | 冬麗⑤8位 | あざ笑う鬼の顔ある歌留多かな |
74 | 1つ後退 | イーゼルに凭るるメニュー春浅し |
75 | 春光⑥予選B1位 | 公開録画当たった浅蜊開いた |
76 | 春光⑥決勝6位 | 子供等の後ろの蜂のホバリング |
77 | 現状維持- | 夏めくやこれより打ち出す中華鍋 |
78 | 2つ前進 | 雲の峰ぱんっと乾いたピザの薪 |
79 | 炎帝⑥5位 | アルパカを返す手配り雲の峰 |
80 | 1つ前進 | 金魚鉢金魚のいなくなる屈折 |
81 | 金秋⑥予選A1位 | マネキンの坐骨デニムに入るる秋 |
82 | ふるさと戦(大阪)2位 | コイン洗車抜けて秋気の御堂筋 |
83 | 金秋⑥決勝1位 | 大きく振りかぶって秋爽の只中に |
84 | 1つ後退 | 時雨るるやジュニアシートで待つポテト |
85 | 1つ前進 | 買い食いの鯛焼野球強豪校 |
86 | 冬麗⑥5位 | 四時限目休講小春のキネマ |
87 | ふるさと戦(京都)3位 | 春色の洛中馴染みなく緩歩 |
88 | 1つ前進 | 春の山ひつじに空の名を与へ |
89 | 春光⑦決勝1位 | 給与手渡し春宵の喫煙所 |
90 | 浜田杯10位 | 短夜や秒でやり取りするLINE |
91 | 掲載決定 | ゴンドウ鳴く水族館を出て白夜 |
92 | 掲載決定 | パフェグラス底まで至る匙盛夏 |
93 | 炎帝⑦6位 | 土地区画整理末伏のタッカンマリ |
94 | 掲載決定 | ショッカーのかたまって摂る夜食かな |
▼人物紹介「プレバト!!」の番組初期となる2013年からコンスタントに出演する数少ない功労者。最初は凡人止まりに徹するも夏井先生にその努力が認められて晴れて梅沢富美男に次ぐ俳句特待生となる。まさに努力型特待生。
句の特徴は兼題の写真から独自に飛ばした発想力と難しい言葉を一切使わずに臨場感を出す表現力。
自身がグーグルアース俳句と呼ぶ海外への視点の変更を詠む句もあり、動物や育児経験をテーマとした子供目線のわかりやすい句が多い。時に表現が稚拙なことがあるが、「取り合わせ」の手法において先生が高評価を出す場合もあり、切れ字をあまり使わないのも特徴的。また、離婚後は家族を題材にした句を詠めていないが、本人らしいファンタジーさやユーモアのある句で真骨頂を見せている。
良い俳句を詠まないといけないというプレッシャーに駆られ、俳句を盗作して謝罪会見をする夢を見たり、妻の木下優樹菜に「早く寝ろし」と言われたりするほど俳句にひたむきに向き合っていることを番組内で発言している。
夏井先生曰く小中学生からの人気が高いらしく、第1回金秋戦の他の特待生へ向けた「誰の俳句に憧れるか」というアンケートでもフジモンは得票率(※下記参照)で1位となり、視聴者を含めライバルの出演者からも一定の支持を得られている。
一方、他人の句に対する細かい指摘が梅沢や東国原と比べて今一つなところが多く、発想力以外についての実力を疑問視する声はある。
2016年秋の一斉昇格試験で番組史上2人目の名人となるなど順調な成長を見せ、タイトル戦は1度栄冠を手にするも、5回も6位以下に沈むなど名人として不相応な成績も残している。
番組的には当初は梅沢富美男の対抗馬扱いで長期間二番手の段位をひた走っていたが、名人上位を目指す展開となる中で東国原やフルポン村上と4名人でトップを争う展開に変わっていくことに。
夏井先生は「あらゆる方向に発想を飛ばす努力を重ねてきており、最近は水面下ではバタバタあがいてるが、その割にゆとりのある句が多く、実力は本物になってきた」と本人を称えている。
なお、独特の世界観を出す表現力が最近はよく評価されるため、名人として昇格した句は初段から9段まで全て添削なしである。
2018年の秋、梅沢名人・東国原名人に続いて3人目の名人10段に到達。非凡の発想力を発揮すれば、永世名人への挑戦は他の名人にとって脅威となる可能性がある。
過去には、芸人仲間の村上名人をよく飲みに誘っていたが、タイトル戦で春・夏と連覇されてから1度も誘わなくなるほど嫌いになったことを告白。他の出演者から「器が小さい」と言われるも、同じ名人らに実力で後れを取っていることは気にしているようである。
その後のタイトル戦も第3回炎帝戦3位、金秋戦2位と復調の兆しを見せていたが、冬麗戦では5位となり次回シード権を失った。しかし、第4回春光戦では見事に予選会をトップで通過し、決勝も2位に食い込む。さらに、第4回炎帝戦で3年ぶりの優勝を決めた。
本人はタピオカ騒動の件で離婚後、「この番組のせいで離婚した。俳句作りに没頭するあまり、家族を顧みなかった。(浜田に)責任取って下さい」と言い訳するが、「作風は変化したかも知れない。ニューフジモン誕生の瞬間を」と語っている。また、2度目の炎帝戦優勝の反響が大きく、「人間は逆境に立たされると良い俳句が詠める」と振り返っている。
また、夏井先生に添削される例句として[31]の句が三省堂の中学教科書に掲載される偉業を成し遂げている。
秋の他流試合では、まさにフジモンらしく子どもと遊ぶ目線の句を詠み東大生に勝利した。
2022年の第6回タイトル戦金秋戦で予選を5度目の1位通過。その流れに乗り、2年ぶりに3度目の優勝を決めた。
永世名人への査定は2018年から合計18度挑戦。初めは2回連続の現状維持と苦しい展開。梅沢・東国原・村上名人にしばらく後れを取っていたが、2回連続前進を決めて一時は村上名人を抜いて3番手に躍り出た。しかし、その後に後退して星1つとなり、後続の千原ジュニア名人にも追いつかれてしまう。苦戦しながらも2022年に番組初の「2つ前進」を決めるなど後半に波に乗る勢いで前進を決め、2023年2月の査定で千原ジュニアに続く番組5人目の永世名人に遂に認定された。10段到達から4年4か月(225週)の歳月は認定時点で最長記録である。
ふるさと戦(写真俳句)には2度挑戦。名人最高位ながら地元の大阪編で優勝できず、同じく関西の京都編でも3位と健闘するが、ポスター掲載には至らなかった。
タイトル戦は2021年以降も予選は全て1位通過と実力は安定。名人らが集う決勝で力が及ばない場面も見られるが、2022年秋・2023年春にも優勝を決めており、優勝回数は東国原名人に次ぐ4回となった。
23句の掲載が認められて始まった"永世名人のお手本"にここまで3度挑戦。後発の千原ジュニア名人に掲載句数を先越される状況もあるなか、海外の水族館の発想で幸先よく掲載決定。ここまで3回連続で掲載を決めており、句集完成へ向けて折り返し地点を過ぎた。
※アンケート対象はタイトル戦出演者限定。東国原、横尾、村上、千賀、石田がフジモンに投票。ミッツは村上、中田は東国原に投票した。○吟行SPで詠んだ句(判明分)
本句 | 星 |
春の夜に連れて帰れぬ侘しさよ | |
柏手を打つ音に鳥飛び鯉は寄る | |
子の為に団子おくれとツバメ鳴く | ★ |
※夏井先生が★の数で評価(★★★:最優秀句 ★★:秀句 ★:佳作 ★なし:未発表)
●[1] @13/11/07◆お題:秋の京都[映像]
『紅葉より舞妓はん見て高揚す』凡人6位55点
添削なし
●[2] @13/12/19◆お題:雪の東京駅
『君の手を僕のポッケに雪の道』凡人3位50点
添削なし
●[3] @14/01/30◆お題:節分祭
『節分の次の日靴に豆ひとつ』才能アリ1位80点
添削なし
●[4] @14/05/22◆お題:日光 華厳の滝
『滝壺に向かって白龍まっしぐら』才能アリ1位82点
添削後
『滝壺へ向かい白龍まっしぐら』●[5] @14/09/18◆お題:秋の稲刈り
『稲の香に地蔵の鼻もふくらんで』凡人4位55点
添削後
『稲の香に地蔵の鼻のふくふくと』●[6] @15/09/03◆お題:秋の秋刀魚
『秋刀魚焼く煙の向こうに子と夕日』才能アリ2位70点
添削後
『秋刀魚焼く煙や父と子と夕日』[ここから特待生として査定]●[7] @15/10/15◆お題:秋の運動会
『組体操伸ばす指先鰯雲』特待生
現状維持添削なし
だが特待生らしい独自性をもった工夫が皆無と評された
※この時は級がなく特待生→名人への一発昇格をかけた査定だった
●[8] @15/12/17◆お題:こたつと猫
『独り酒妻はこたつで昏々と』5級で
現状維持添削後
『独り酒妻はこたつに昏々と』●[9] @16/02/18◆お題:梅の湯島天神
『肩車子の鼻先に触れる梅』4級へ
1ランク昇格添削後
『かたぐるま子の鼻先に触れる梅』
散歩をするパパが3歳ほどの子どもを肩車し、季語の「梅」を匂わせてあげるという一句。パパの優しさを表現した可愛らしい一句と語った。元特待生の羽田は「独身には考え付かない。まさかこのやり方が」と称賛。先生は、各言葉が意味やイメージをお互いを殺さないのは楽々クリアし、語順も神経を使ったと評す。上五で2人の人物が登場し、子に焦点を当てた後、鼻先を拡大する映像描写で、「香る」ではなく「触れる」とした表現を最も褒めたいと解説。最後の季語で嗅覚も読み手は感じ取れると称賛し、「コツコツ努力した跡が見える」と査定発表前から終始褒め、不満気な浜田は「今週はこの辺でさよなら」と進行しようとし、査定結果も投げ捨てる。「描写力が素晴らしい」と評し、「ちゃんと学んでるよ、ホントに」と喜ぶ先生は、背景の「肩車」を平仮名にし、後半の漢字の部分をより引き立たせるべきだとアドバイス。今後は表記の効果も考えてと添え、「地道な描写力をコツコツつけてくれて何よりも嬉しい。今日は酒が旨い、絶対」と我が子の成長のように喜び、本人も「嬉しい」と返した。
●[10] @16/04/14◆お題:つつじと鎌倉大仏
『大仏を包む若葉と星明かり』4級で
現状維持添削後
『大仏を包める夜の若葉かな』●[11] @16/05/26◆お題:五月 日光・華厳の滝
『白雲を吸い込み放つ大瀑布』3級へ
1ランク昇格添削なし
●[12] @16/06/30◆お題:7月の京都
『長刀鉾(なぎなたぼこ)雲裂き進みぎしぎしと』3級で
現状維持添削後
『長刀鉾雲裂き進むぎしぎしと』●[13] @16/07/21◆お題:花火大会
『花火終へ湖上に現わる大三角』2級へ
1ランク昇格添削後
『花火終へ湖上にひらく大三角』●[14] @16/08/25◆お題:夕方の江の島
『夕陽(せきよう)にもたれてかじる焼きもろこし』1級へ
1ランク昇格添削後
『夕陽にもたれ焼きもろこしかじる』●[15] @16/09/01◆お題:秋の空(特待生のみの昇級昇段試験)
『山あいの秋雲工場(こうば)フル回転』名人初段へ
1ランク昇格添削なし
●[16] @16/09/15◆お題:京都 中秋の名月
『名月に包まれベビーカー眠る』名人初段で
現状維持添削後
『満月に包まれ眠るベビーカー』
季語「名月」の優しい光に包まれ、ベビーカーにいる愛娘が気持ちよく眠る様子を、ベビーカーごと眠っているのではないかと表現しようと試みた句。先生は「様々な配慮が出来ているのはさすが」と映像化出来た点を褒めるも、「季語の選び方が間違い」と評す。月を愛でる風習の意味合いが乗る「名月」より、全面が明るく輝く「満月」が絶対得で、「満ち足りた」「優しい」「包む」「豊か」等のイメージを表現できると指南。さらに、この語順だと"使われてないベビーカーが置き去りになる"という擬人化の読みが軸足になると指摘し、語ったニュアンスになるよう語順を変えた。「包まれ眠る」なら人間の動作に読み取れると解説し、「ここら辺の配慮が利けば真の名人」と添えた。不満顔の本人は、「提出する前に先生が直してくれたら」と大人げなく、浜田が「ふざけんな」と応対。先生から「降格しますか?」と厳しい言葉が飛び、「先生のブログめっちゃ読んでますから」と機嫌をとる対応をした。
●[17] @16/10/27◆お題:箱根のススキ
『羊群の最後はすすき持つ少年』名人2段へ
1ランク昇格添削なし
先生が助詞「は」の使い方が絶妙と絶賛し、当時の
プレバト史上最高傑作と評した一句。
季語は「すすき」。3日間熟考した一句は、豪州の牧場をイメージしたグーグルアース俳句。ドライブ中、目の前の道路を羊の大群が横切るため、なかなか車は進めないが、最後にススキを持つ少年が通り過ぎる情景を詠んだ。助詞「は」が機能したかが査定ポイントとなる。「語順が実に上手い!」と評す先生は、「素晴らしい」と連呼し、助詞が絶妙な選択だと称賛する。「に」「の」「や」が候補となるが、場所を表す「に」の場合、群れの全容が最初からわかり、羊と少年が全て映るカメラワークとなるが、指さす効果の助詞「は」だと、最初は羊群のみだが、最後に誰が来るかと思った瞬間にススキを持つ少年が通るという映像の違いが圧倒的だと解説。「これは本当に感心した」とべた褒めすると、「俳句のコーナー始まって以来、一番良いといっても過言ではない」と最大の賛辞でスタジオは仰天。不満気な浜田は「直しをして下さいよ」と懇願するほどで、ライバルの梅沢は後日「あいつは偶然だった。なっちゃんも勘違いした」と闘争心を燃やすことに。
●[18] @17/01/05◆お題:新春の富士山(特待生のみの昇級昇段試験)
『空の旅下に初富士子がつまむ』名人初段へ
1ランク降格添削後
『子がつまみたるかに眼下なる初富士』●[19] @17/02/02◆お題:節分 豆まき
『節分のセンサーライトが照らす闇』名人2段へ
1ランク昇格添削なし
2017年2月月間MVH受賞句●[20] @17/02/16◆お題:つくしと富士山
『ハーモニカソの音出せば出る土筆』名人2段で
現状維持添削後
『ハモニカのソの音つくし出るよ出るよ』●[21] @17/04/06◆お題:満開の桜
『卒業のマントに風をなびかせて』第1回俳桜戦6位
添削後
『卒業の風をなびかせ行くマント』●[22] @17/04/27◆お題:茶畑
『茶畑や朝のサリーの色ぬくし』名人2段で
現状維持添削後
『紅茶摘む朝のサリーの鮮やかに』●[23] @17/05/04◆お題:こいのぼり
『鯉のぼり挿され五つのランドセル』名人3段へ
1ランク昇格添削なし
●[24] @17/05/25◆お題:初夏の箱根
『はこね号これより初夏に入ります』名人4段へ
1ランク昇格添削なし
2017年5月月間MVH受賞句●[25] @17/06/15◆お題:雨の銀座
『梅雨闇の利かぬ二頭の警察犬』名人4段で
現状維持添削後
『警察犬の鼻先にある梅雨の闇』●[26] @17/06/29◆お題:海
『セイウチの麻酔の効き目夏の空』第1回炎帝戦優勝
添削なし
●[27] @17/08/03◆お題:真夏の海水浴場
『アメリカの歯磨き粉色した浮き輪』名人5段へ
1ランク昇格添削なし
●[28] @17/08/31◆お題:夏休みの宿題(第1回 番組対抗戦)
『マンモスの滅んだ理由ソーダ水』才能アリ1位
添削なし
2017年8月月間MVH受賞句●[29] @17/09/21◆お題:月と鎌倉大仏
『大仏の御手から月は生まれます』名人6段へ
1ランク昇格添削なし
●[30] @17/09/21◆お題:子規と野球(俳句甲子園'17延長戦)
『少量の秋の来ている外野席』審査員11人中4票で開成高校に
判定負け添削なし
●[31] @17/10/12◆お題:紅葉
『ぬうぬうと秋かき混ぜる観覧車』第1回金秋戦7位
添削後
『ぬうぬうと秋を混ぜゆく観覧車』※三省堂中学教科書掲載句●[32] @17/11/23◆お題:冬の東京湾
『ガントリークレーンの上の冬星座』名人6段で
現状維持
添削後
『ガントリークレーン冬の星座吼(ほ)ゆ』●[33] @18/01/04◆お題:雪と青空
『船長の側にペンギン日向ぼこ』第1回
冬麗戦2位添削なし
●[34] @18/01/11◆お題:雪晴れの空港
『指示待ちの雪の匂へる滑走路』名人6段で
現状維持
添削後
『雪匂ひ立つ指示待ちの滑走路』●[35] @18/02/15◆お題:ラーメン屋台
『タッパーを持ってモツ煮屋春の宵』名人7段へ
1ランク昇格添削なし
●[36] @18/03/22◆お題:桜と新幹線
『新幹線待つ惜春のチェロケース』名人8段へ
1ランク昇格添削なし
●[37] @18/04/12◆お題:
桜と富士山『肉食のフェンスの施錠山ざくら』第2回俳桜戦6位
添削後
『肉食獣のフェンスの施錠山ざくら』●[38] @18/05/31◆お題:
更衣(ころもがえ)『新緑の風来てそよぐ産着かな』名人8段で
現状維持添削後
『新緑の風に産着のそよぎだす』
季語は「新緑」。安倍総理の桜を見る会に招待され、ある政治家に「あなたの俳句の大ファンです」と言われたことを明かし、「選挙出たら受かるんちゃう?」と浮かれる。兼題写真から赤ちゃんの産着に発想を飛ばした句は、夏に生まれた娘の産着を洗濯してよく干していたが、新緑の風に吹かれて揺れる様子を描写した。「中七何考えてんだ。風来たらそよぐだろ。やっちまったなあ!降格しろ!」と調子に乗る梅沢名人に「クールポコやないんで」とツッコミで返す本人。中七の是非が査定ポイントと言われ、「ゲッツ」と芸人のモノマネを連発する嬉しそうな御大。「言葉の無駄づかい」と評す先生は、「新緑」の明るさと「産着」の初々しさを取り合わせるのは良く、緑と白の色のイメージも伝わる点を褒める。「そよぐ」は産着の描写で許容できるが、「風」とあれば「来て」の説明は不要と指摘。産着の描写で風が吹いた状況は伝えられると語り、「やってみてよ」と言葉遣いの悪い本人。「やるに決まってるでしょう」と強張る顔つきの先生は、"~によって"の「に」を用いて、「そよぎだす」の複合動詞で添削し、"今"という時間情報を追加。梅沢名人は本人に「どうして失礼な口きくんだ」と叱りつけ、「よう失礼な口きいてますやん」とブーメランで返した。
●[39] @18/06/28◆お題:
梅雨明け『歩行量調査戻り梅雨の無言』名人9段へ
1ランク昇格添削なし
2018年6月月間MVH受賞句●[40] @18/08/09◆お題:
ラジカセ『短夜(みじかよ)や付録ラジオの半田付け』第2回炎帝戦決勝3位添削なし
●[41] @18/09/20◆お題:
俳都・松山(俳句甲子園'18延長戦)
『マッチ箱の汽車眩し夕虹の街』審査員11人中7票で徳山高校に
判定勝ち添削なし
●[42] @18/09/27◆お題:
郵便ポスト『秋月やパリの封筒切るナイフ』第2回金秋戦決勝4位
添削後
「月清(さや)かパリの封筒切るナイフ』●[43] @18/11/01◆お題:
晩秋のレストラン『タイカレーのラムは骨付き銀杏散る』名人10段へ
1ランク昇格添削後
『タイカレーのラムは骨付き黄落す』※添削例はあくまで夏井先生の独自案。骨付きのラムは銀杏の比喩だという本人の考えを尊重して昇格判定となりいよいよ10段へ。
2018年11月月間MVH受賞句●[44] @19/01/03◆お題:
結露『ごんぎつね聴きいて寝落つ雪模様』第2回冬麗戦決勝6位
添削後
『ごんぎつね聴きつつ眠る雪模様』
季語は「雪模様」。娘の好きな絵本「ごんぎつね」を読みながら子を寝かしつけていたら、窓の外が雪模様だったという実体験を詠んだ句。「寝落つ」の表現が大人が寝てしまうという誤読になりかねないと梅沢名人に指摘され、夏井先生もその違和感を解消するよう添削を行い、「無神経だったのでは」と本人を咎めることに。
●[45] @19/02/07◆お題:
梅と公衆電話『村営バス逃して不意に探梅行』名人10段で
現状維持添削後
『村営バス逃しひとりの探梅行』『村営バス逃し五人の探梅行』『村営バス逃してくてく探梅行』
季語「探梅行(たんばいこう)」は早咲きの梅を求めて野山に出かける様子を指す。正月休みを返上して挑んだと語る句は、本数の少ない田舎のバスに乗り遅れてしまい、仕方なく歩いた道すがらいつの間にか梅を探している自分がいた様子を詠んだ。浜田から「1ランク降格!気持ち的にね」と告げられ本人は仰天するも実際は「現状維持」。先生は「不意に」で俳句が出来た気になっているのが「ゆるい」と評し、面白い季語と村営バスの設定は良いが、散文的な「て」も消して中七で状況をより鮮明にするよう添削句を3例示す。「新年一発目の収録ですよ、そんなに言わんで」と言い張る本人に対し、先生は「不吉なスタートでしたね」と返し、本人も笑うしかなかった。
●[46] @19/03/14◆お題:
春の引っ越し『おぼろ夜や荷馬車で眠る象使い』名人10段で
現状維持
添削後
『おぼろ夜や荷馬車に眠る象使い』
季語は「朧夜(おぼろよ)」。現代の引っ越しの写真から、昔のサーカス団に発想を飛ばした句。公演後に次の街に向かう一団の象使いが、春の暖かい月の夜に荷馬車で眠っている様子を詠んだ。先生は、句の内容は良く、サーカス団や絵本の世界を思わす書き方ができており、俗っぽい写真からこの発想をつかみ出せるのはさすが名人と褒め、「馬」「象」という生き物と、「夜」「眠る」という状況の呼応も大変良いと評価する。しかし、「10段にしては助詞の使い方が雑」と称し、場所の後の「で」が活動場所を示すのが勿体なく、持続行為の助詞「に」に直せば完璧だと指摘する。本人は「"で"と"に"で?」と繰り返すが、浜田から「うるさいな」と注意される一幕が。
●[47] @19/04/04◆お題:
コーヒー『卒業のコーヒー少し酸っぱくて』第3回春光戦決勝7位
添削後
『卒業のコーヒー酸っぱくて泣ける』『卒業のコーヒー酸っぱくて笑う』
季語「卒業」で、卒業式を終えた大学生が帰宅すると、将来の希望や不安という現実が一気に押し寄せるという心情を、コーヒーがちょっと酸っぱく感じた様子でストレートに表現した一句。大和田は「"酸っぱい"が良い。大体"ほろ苦い"とか」と表現のセンスを褒めるが、東国原名人は「散文的な点と"少し"がポイント」と指摘する。先生は、「酸っぱい」という展開がナイーブで良く、コーヒーの味で季語を表現した意図は称賛するも、「少し」の3音で泣いた句と評し、3音で様々な展開ができると解説。「酸っぱくて」の後に動詞を用いることで、コーヒーを飲む人物の微妙な心情を鮮やかに表現する添削をした。低評価で悔しい藤本名人は、先生に媚を売ってランキングシートの上位に移動するお馴染みの仕草をするも浜田に制止されられた。
●[48] @19/07/25◆お題:
夏の波紋[緑の映る水紋]『プール開き前のプールに水馬』第3回炎帝戦決勝3位添削後
『プール開き前のプールを水馬』
季語は「プール」「水馬(あめんぼ)」。小学校のプール開き前のプールは雨水が溜まって汚く、水面にアメンボが浮かんだ光景を描写。2つの季語は互いを活かし合っていると判断して敢えて季重なりにしたと語った。予選敗退の石田は「攻めている」と評すも、梅沢名人は敗退者を牽制し、「炎帝戦に出す俳句じゃない。3位で喜んでんだよ」と大口で叩く。先生は、プールの水面に葉や虫が集まる発想はありきたりだが、「作者の思い通りの展開で読者にそのまま再生させる句」と評す。「プール」を2回使うリズムも明るく、「水馬」へ着地する言葉のバランス感覚が上手いと称賛。1つある問題点を本人に問うも、中々答えられず「4位になる?」と降格をほのめかす先生。本人は時間をかけて助詞「に」を当てる。「を」にするとアメンボが動き回る様子に変化し、汚れたプールに沢山いるならば「を」が良いと先生は指摘。本人は「1文字変えるだけで状況が変わる。俳句って面白いですね」と先生に胡麻をするも、浜田は気に入らない様子だった。
●[49] @19/08/15◆お題:
夏空と電車『塩っぱめの飯頬張る西日の火室』夏の他流試合SP第5試合28-29で
判定負け添削なし
季語は「西日」。昔に映画で見た光景で、蒸気機関車にあるスコップで石炭を入れる場所「火室(かしつ)」へと着想。石炭を入れる「釜炊き」の仕事は、特に夏には体力を相当使い、汗が滝のように出るほど大変な仕事だと解説。西日が当たる休憩時間に塩分が強めのおにぎりを頬張る光景を想像した。ジュニアは「本当に良いです」と持ち上げ、対戦相手の小学生は「中七でどんな人物かがわかるのが良い」と褒める。結果は「鈍行は僕の生き方かぶと虫」に判定負け。宇多先生は「下五が舌を噛みそうなリズム」、井上先生は「中七が言い過ぎで句の材料が多い」と指摘。唯一10点をつけた高野先生は「作り方が下手くそ」だと前置きし、「ゴツゴツしたリズムが句の内容に良く合う」と逆張りで評価した意図を述べる。夏井先生は「『頬張る』が評価の分かれ目で、『塩(しょ)っぱめの握り飯』で良いとも考えられ、このまま納得するのは緩い」と指摘した。名人の威厳を見せられず、チームも敗れてしまった。
●[50] @19/09/19◆お題:
秋の果物屋さん『アップルパイの焼きたての札花鶏来る』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
季語「花鶏(あとり)」は秋にシベリアから来る体長15cmほどの渡り鳥。パン屋に行くと「フランスパン、焼きたてです」等と店員が厨房から出てくるイメージで、店内に並ぶと「焼きたて!」と書かれたPOPが出る。自分が好きなアップルパイの焼きたての札が出たときのことを詠んだ。季語は「小鳥」でも良いが、おしゃれなお菓子のイメージと取り合わせたと語り、一押しだとする「アップルパイ」を合計7回連呼して浜田に「もうええよ」と遮られる。先生も査定ポイントを「アップルパイの是非」と語り、浜田がツッコミを入れてしまう。「秋の豊かさが香る」と評す先生は、季語を押さえた上で、香ばしい香りがする前半の映像化を解説し、「の札」でパン屋の店先の情景が伝わり、「これが分かっているのが名人」と褒める。季語は「小鳥」でも確かに句は成立するが、秋らしい気分の色や「あ」の韻が踏まれた季語選びを称賛。「アップルパイ」に季語である「林檎」の秋の実りの豊かに香るイメージも込めた点も解説した。3度目でようやく初前進となった。
●[51] @19/10/10◆お題:
歩行者信号『信号待つ騎馬警官の背のさやか』第3回金秋戦決勝2位(次回決勝シード権あり)
添削なし
季語「さやか」は秋の澄んだ空気がもたらす爽快感を意味する。ニューヨークのロケで馬に乗る警察官を見てカッコいいと思い、その警官の背中に秋の風が吹いたという句。円楽は「騎馬警官の背がピタッと伸びてる。それと季語の組み合わせが気持ちよい」と褒め、梅沢名人も復調の本人を称賛する。先生は「気持ちよく作れた確かな句」と評し、上五で交差点のある状況・中七で目線を見やるような人物と馬の姿の映像を確保し、下五で背中に焦点を集め、最後に時候の季語でまとめた展開を確かだと褒める。最後の「さやか」で映像が全体を包む感じだと解説し、きっちり作れた良い句だとまとめた。タイトル戦2位と好調ぶりを発揮した。
●[52] @19/11/14◆お題:
京都叡山電鉄と紅葉/電車から見える紅葉の絶景『紅葉見に行くトロリーに乗り換えて』名人10段へ
1つ後退添削後
『トロリーに乗り換え母と紅葉山』『トロリーに乗り換え5分紅葉山』
季語は「紅葉」。親に連れられ、トロリー電車に乗って京都の紅葉を見に行った思い出をシンプルに七五五で詠んだ。査定ポイントは「見に行く」の是非だが、初の後退に。先生評の「10段なのに言葉のムダ遣い」に「嘘つけ!」と納得いかない本人だが、先生は「トロリー」が懐かしい空気感や時代の気分を示し、季語との取り合わせで十分に光景が見えると褒め、下五も状況がわかると高評価。しかし、一句全体で「見に行く」「乗り換え」と動詞が多い点を指摘する。後退に穏やかでない本人に「わかってんならやんなさいよ」と一喝を入れ、語順を変える添削を試みる。着地を「紅葉山」とし、余った3音で何か情報を加えるよう提案。人物や時間の添削例を2例示し、「俳句における3音を無駄にしてはいけない。まだまだやれる。10段なんですから」と添えた。本人は星制度への苦言を呈した。
●[53] @20/01/03◆お題:
お鍋『スイミーの音読二回おでん炊く』第3回冬麗戦決勝5位(次回シード権なし)添削後
『宿題は音読二回おでん炊く』『ごんぎつね音読二回おでん炊く』
季語は「おでん」。『スイミー』(レオ・レオニ作、1963年出版)は小魚が活躍する子ども向け絵本。自身が小学生の時に、親の前で『スイミー』を2回音読する国語の宿題が出た。台所の母がおでんの支度をする後ろでやる思い出を詠んだという句。関西では「煮る」ではなく「炊く」と言っていたと補足した。千賀名人は「『炊く』がどちらか。自分が炊くのか、誰かに炊いてもらうのか。目線がしっかりしてたら上位に行けたのでは?」と予選最下位ながら上から目線。梅沢名人も「予選最下位の人が言った通り。誰が、何でおでんを炊くのか」と繰り返し、前半が子どもの表現と分かるはずだと反論する本人に「父も祖母もおでん作るでしょ」と返す御大はさらに、「後ろも前も感じられない。だから最下位の人に言われるんだよ」と追い込む。先生は「『炊く』には何の問題もない」と前置きして無意味な議論を仲裁。千賀名人は「問題があると思いますよ」としつこいが、先生は「問題あると思うから最下位だ」と叱責し、謝罪する千賀名人。先生はむしろ地域性があると効果を褒め、鍋の中身に着眼し、自身の実体験を素直に取り合わせたと分析。作品としては完成していると解説し、「お」の韻も揃えていると続ける。評価の分かれ目は『スイミー』という教材を選んだ点で、小学校低学年の子が音読をする懸命さは伝わるが、季語「おでん」の温かさに対して『スイミー』の語感の感覚が冷たいため季語が活かしきれないとし、得と損との天秤ばかりの関係だと解説。中七が肝のフレーズのため、上五は「宿題の」「ごんぎつね」でも良く、この辺りで微量に順位に差を付けざるを得なかったと解説。「ちょうど娘が国語で『スイミー』やっている」と語る本人に、「残念でしたね」と『スイミー』のごとく先生は冷たく返した。
●[54] @20/02/27◆お題:
カップラーメン『春寒のスタアの悲報カップ麺』第4回春光戦予選Aブロック・1位(決勝進出)添削なし
季語は「春寒」。離婚後に句風が変化したという句は、春の寒い日に小腹が空いてカップ麺を食べようとテレビをつけると、昭和の映画スターの死去の知らせが流れて、食べる箸が止まったという内容。中田名人は「カップ麺が登場した頃のスタアではないかと感じた」と語る。サラッと書いているが難しい型に挑戦したと評す先生は、季語を含む12音と独立した下五という質量のバランスを見事に取ったと天秤ばかりのイメージを交えて解説。バランスが取れた理由に中田名人の指摘を挙げ、「スタア」の表記が「カップ麺」が生まれた時代の人物を匂わせ、「スタア」「カップ麺」に目に見えない微妙な響き合いがあり、名人の技だと称賛した。見事予選を1位で通過した。
●[55] @20/04/09◆お題:
不動産屋さん『1DK八重桜まで徒歩二分』第4回春光戦決勝2位(次回シード権あり)添削なし
季語は「八重桜」。兼題写真と真っ向勝負した一句。物件案内のチラシに、間取りや㎡数、駅まで徒歩2分などの情報が載るが、「八重桜まで徒歩二分」と表記している物件案内があればオシャレかなと思ったと語った。特待生森口は、「名詞ばかりだが、情景が一発で分かって、道すがらに川が流れているのではないか」と称賛。先生は、上五・下五でベタな言葉を拾い、中七の季語を含むフレーズでオリジナリティとリアリティを出す勝負に出たのは楽しく、思い切ったと意欲を評価。季語に八重咲の華やかさや存在感があり、ソメイヨシノより遅く咲くため、物件探しをする人物の時期が明確になると解説する。さらに、3つの数字を散りばめたのが面白く、それぞれ別の意味を持つため互いに邪魔をしないと続け、この手は何度も使えないが、上手く捕まえたと称賛。予選通過者としては最高順位となる2位となった。
●[56] @20/04/30◆お題:
おうちの冷凍食品(通信添削・おうちで俳句)
『子の舐める氷菓肘から滴れり』名人10段で
ガッカリ添削なし
季語は「氷菓」。我が子のような小さい子がアイスキャンディーを食べると時間がかかり、溶けた液が腕を伝い、肘から雫となってポタポタ落ちる様子を描写した。「『アイスが滴る』がありきたり」と評す先生はとても良く観察し、丁寧な描写力も発揮したと褒める。子どもがアイスキャンディーを舐めながら垂れている発想は俳句ではありがちで、別の人物の描写なら面白いと解説。例えば、酔っぱらって帰ったオジさんが、冷凍庫を覗くと忘れてたようなアイスを腕から滴るように食べているなら、"大人の切なさ"を表現できると解説するも、添削例は示さなかった。子ではなく、自分自身を書くべきだと忠告した。
●[57] @20/05/28◆お題:
100円玉『オペレッタ歌ってコインシャワー浴ぶ』名人10段で
現状維持添削後
『コインシャワー浴ぶトラック野郎のオペレッタ』
季語は「シャワー」で、「オペレッタ」はイタリア語で”小さなオペラ”を意味する喜劇中心のオペラ。100円硬貨を入れると、数分間シャワーを浴びられるコインシャワーは、高速道路のSAにあるイメージで、利用者はトラックの長距離ドライバーが多いと思うと語る本人。適当に「ラーラーラー♪」と見様見真似でオペラを歌いながらシャワーを浴びるドライバーのイメージを詠んだ一句。梅沢名人は「調子コキましたね。コインシャワーは”浴び”るもの。”浴ぶ”は不要だ」と指摘し、査定ポイントは「歌って」と「浴ぶ」の是非に。先生は素材は面白いと褒めるも、トラックの運転手が浴びると人物を明確に書いた方が面白く、絶対得だと忠告する。「オペレッタ」とあれば「歌って」いるので動詞不要だと添削を始め、「トラック野郎」を中七に置き、語順を逆にした。梅沢名人の指摘にも触れ、片仮名が続くため、敢えて「浴ぶ」を入れる判断もあると解説。最後に、「素材は良いが、小さい所でつまづくのが貴方ですね」と痛恨の一言を本人に述べた。
●[58] @20/08/06◆お題:
ポイントカード『ラジオ体操おおおなもみのある空地』第4回炎帝戦優勝
添削なし
「おおおなもみ」は侵略的外来種ワースト100に選定される植物。自身の小学生の頃の思い出を詠んだ一句。夏休みにラジオ体操をする近所の空地には、おおおなもみ(ひっつき虫)があった。ラジオ体操が終わった後、それを皆で投げ合い、引っ付けて遊んだと語った。梅沢名人は、「おなもみ」「おおおなもみ」がどう違うのか疑問を呈す。先生は、一見どうってことない句だが、中七が曲者だと評す。歳時記に載る「おなもみ」は稲や麦と同じく、大昔に大陸から日本に侵入した史前帰化植物だが、絶滅危惧種だと解説。一方、歳時記に載ってないことが多い「おおおなもみ」は幅を利かせていると語る。悪ガキがラジオ体操して、「おおおなもみ」を面白がって引っ付けてバラまき、「おなもみ」を絶滅させていたかもしれないと経緯がこの植物に含まれると味わいを述べ、「ある空地」で、かつて自分はそれを投げつけて遊んだのを振り返るかのような突き放した感じが出てくると解説を続ける。本人にとっては偶然だったと思うが、植物の"時代性"や「或る」の"空気感"が結果的に成功していたという結論になったと総括した。3年ぶりに炎帝戦の優勝を決めた。
●[59] @20/08/13◆お題:
本棚『扇風機首振りゆっくりトーベヤンソン』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
季語は「扇風機」。小学生の夏休みで読書感想文の宿題が出る。「トーベヤンソン」は『ムーミン』の作者で、ムーミンの小説を本棚から見つけ、面白そうと思い扇風機の風に当たりながらムーミンの本を読む子の様子を詠んだ。「ゆっくり」に、ムーミン谷の時間の流れと扇風機の首振りの様子を掛けたと語った。「先生に怒られますよ」と評す梅沢名人は、「字余りが10年早い」と手厳しい。査定ポイントは「首振りゆっくり」の字余りの是非。「意図のある無駄遣い!」と評す先生は、「扇風機」とあれば「首振り」「ゆっくり」は普通に考えれば無駄でしかないと前置きし、「ゆっくり」が案外色んな所にイメージを及ぼすと解説する。中七「首振り」で一回切って読む方がこの句にとっては幸せで、扇風機は首を振り、ゆっくりとトーベヤンソンを読み始めると、ムーミン谷の物語に入り時間がゆっくりと動き出すと句を味わう先生。意図を持ってわざとやる展開でもあるが、偶然できるケースもあると述べる。気になった浜田が本人にどちらかを確認すると、勝ち誇ったように本人は「意図を持ってやってます」と答える。しかし、そうであるなら予め「ここで切って読んでください」と言ってほしかったと注文を付ける先生。切れの件を言わなかったのは「夏井先生なら分かっている。敢えて夏井先生を試す感じで」と答える本人だが、「私を試すのは10年早い」と先生は見事に切り返した。
●[60] @20/08/27◆お題:
コンビニのホットスナック『イートイン氷菓の子らのカルキ臭』名人10段★1で
現状維持添削なし
季語は「氷菓」。「カルキ臭」はプールの塩素の臭いのイメージの本人。プールから上がる小学生は適当に体を洗うため頭から塩素の臭いがする。今の子は駄菓子屋がなく、プールの帰りにコンビニのイートインコーナーでアイスを食べてカルキ臭をプンプンさせているのではないかと語った。梅沢名人はフジモンらしい句と褒める一方、「こういうのでは星はもらえない。夏の俳句なのに今は暦では秋だ」と詠む季節の違和感を指摘するも本人は納得せず。査定ポイントは季語「氷菓」の是非。「名人なんだからもっと季節を気遣って!」と評す先生は、プール帰りの子を「カルキ臭」の臭いで表現する発想が全くないわけではないが、句はきちんと出来ていると押さえ、技術的な問題点がないことを通達。しかし、平場の人も秋の季語を意識して作句した点を指摘する先生は、「まだまだ暑いですよ」と語って夏の季語「氷菓」の有用性を主張する本人へ「残暑」「秋暑し」などの季語を提案し、「その季語を思って暮らしていない証拠」だと切り込む。さらに「最近あんまり家から出ないから」と言い訳する本人に、「それは個人的な事情だから構わない」と離婚後の本人を諭す先生。添削の必要性はないが、心遣いが足りないため星は獲らないが渡せないと総括した。結果的に梅沢名人の指摘が的中する形となり、本人初の星持ち現状維持となった。
●[61] @20/09/24◆お題:
文房具『秋雲に名をつけ窓に貼る付箋』秋の他流試合SP第4試合10-8で
判定勝ち添削なし
季語は「秋雲」。"ある"親子が窓から見える色んな秋の雲に名前を付けて遊ぶ風景を詠んだ一句。「シュークリーム雲」などと付箋に書いて窓に貼り、あたかも遠近法で見えるよう、雲に付箋を貼って遊ぶ親子の場面だと語った。千原ジュニア名人は「この素敵な素晴らしい俳句を、冷え切ったたった1人の部屋で考えたかと思うと涙出ますね」と悪ノリで語り、ハグするポーズで待ち構える動作を取る。結果は、受験期にペンで数式を書き殴ってインクが切れた意図を詠んだ東大王・砂川信哉の「終日(ひすがら)の数式擦(かす)る秋の風」に判定勝ち。先生は、「とても可愛らしく、優しく、作者の人柄が表れている」と句柄の印象を述べる。雲が色んな形に見える発想の句は多く、それに名前を付けるという発想もあると思うが、雲の名前を付箋に書いて貼る点にオリジナリティがあると独自性を認める。色とりどりな付箋が透明なガラスに貼られ、本人も言った遠近感や光があり、見事に秋の雲を描いたと称賛。対戦相手の砂川にも「句のエピソードが素敵だった」と褒められ、本人は「人生経験の差が出た。波乱万丈なんでごめんなさいね」と自虐し、浜田からもハグポーズを取られてしまった。
●[62] @20/11/12◆お題:
7時過ぎの時計『月光のひとつぶ受信電波時計』第4回金秋戦決勝6位(次回シード権なし)
添削後
『月光のひとつぶ電波時計ぴくん』『月光のひとつぶ電波時計つん』
季語は「月光」。電波時計は自動で誤差を修正するが、月の光のパワーを少しだけ借りて修正しているのかと思ったと語った。ジュニア名人は「良いですね。『光のひとつぶ』がまるでタピオカみたい」と褒めるが、梅沢名人は「これは6位。『電波時計』なら『受信』するから、いちいち『受信』と書かなくてよい。出直しなさい」と手厳しく、本人は「光を『受信』するなら入れないと」と反論して口論になる。先生は「この議論はおっちゃんの勝ち」と梅沢名人に軍配を上げる。「発想は瑞々しくて好き」と評し、「月光のひとつぶ」は一粒を手にのせられた印象があり、「電波時計」がそれを受け止めるという発想が良いと称賛。しかし、「受信」と説明しなくても、電波時計が月光の一粒の受け取ったと読み手に思わせてこその10段だと忠告し、2カットの句またがりに添削する。「ひとつぶ」の感触に対し、秒針が揺れる動きをオノマトペで表現すべきだと「ぴくん」「つん」を例示した。最後は、自身の力で完成させてほしいと優勝を狙えた発想の句にダメ出しをした。本人は、「月光のひとつぶタピタピ。あ、タピタピちゃうわ」と自虐的に笑いを誘った。
●[63] @21/01/14◆お題:
輪ゴム『血を止めるゴム巻く手際冬あざみ』第4回冬麗戦8位添削後
『献血のゴム巻く手際窓に雪』
季語は「冬あざみ」。病院で採血や注射をする際、血管を浮き出させるために腕にゴムを巻くが、パパッと巻いて注射する看護師の様子を俳句にしたと語った。「冬あざみ」は棘があり触ると痛い花で、注射の針を指す時の痛さと掛けたという本人。先生は、発想の展開は悪くないが、前半の言葉選びが雑だと指摘する。本人が語った「採血」「献血」をなぜ書かないのかと10段の本人を叱責する。「を止める」を消し、「献血の」なら書きたい意図に着地すると解説。さらに、季語の選択も間違っていると指摘し、野外の気分になるため、屋内の検査室だと分かるような季語を歳時記から自分で探すべきだと本人に問いかける。言い訳する本人だが、「おごりです。(夏に)タイトル獲ったから調子こいてる」と梅沢名人が辛口批評するも、「タイトル獲ってない人にあんまり言われたくない」と本人は返した。
●[64] @21/02/18◆お題:
雲丹の軍艦巻き『流星群いくつか海に墜ちて海胆』第5回春光戦予選A1位(決勝進出)添削なし
季語は「海胆(うに)」と「流星」。ウニを見ていると、色や形が変だと感じると語る本人。元々地球上になかったのではないかという発想から、宇宙からきた流れ星の何個かが海に墜ちてウニになったというストーリーを描いた力作。先生は季重なりの巧みな挑戦に仰天する。季重なりは色んなタイプがあるとしながら、春と秋の季節の違う季語を入れる難しい技への挑戦を高評価。大方の場合「流星のごと」と比喩をするが、そうせずに「墜ちて」まで物語のようなファンタジーを紡ぎながら「海胆」を主役にした語順も褒める。「墜ちて」は隕石が墜ちる印象をもち、最後「海胆」と「海」のイメージを持つ表記も絶賛。「これはよく頑張りました」と作者を知って妙に先生は納得し、「直しなし」と本人も復唱して喜びを表現した。
●[65] @21/03/25◆お題:
じゃんけん『うららかや次女出すチョキはまだ未完』第5回春光戦決勝6位(次回シード権なし)添削後
『次女の出すチョキはうららかなる未完』
季語は「麗か」。5歳の次女が幼少時にじゃんけんをする時、チョキの指が正しく出せずに変なチョキをよく出していたことを思い出して詠んだと語った。梅沢名人は上五の「や」が切れているのかどうか不明だと指摘し、季語を説明する本人と口論になる。先生はチョキが正しく出せない場面を詠んだ句もあるが、「未完」が工夫として面白かったと評す。問題点は「未完」とあれば「まだ」は言わずもがなであり、これを消せば問題はないと述べる。梅沢名人の指摘にも触れ、切れ字を消して内容を繋げるよう指南し添削を始める。「次女の出す」を上五とし、「チョキは」の後に「うららかなる未完」として季語と溶け込ませた。最後の「未完」という堅い言葉が「うららかなる」という季語に包まれ、前半の映像と馴染んでくれると解説する先生に本人は「取り込むね~!」と応えるも、低評価に沈んだことを反省した。
●[66] @21/04/22◆お題:
ボトルガム『ガムを噛む子等とバス待つ日永かな』名人10段★1で
現状維持-添削なし
季語は「日永」。春休みに遊びに行くためバスを待つ男子小学生。外でガムを噛むことが「カッコイイ」などと言い、少し背伸びをする年頃の男子とバス停で一緒になった春の日を詠んだと語った。梅沢名人は「名人が詠む俳句ではない普通の句」と厳しく評し、切れ字「かな」が誤用だと指摘。査定ポイントは、「ガムを噛む子等」&「バス待つ」と季語「日永」の取り合わせの是非となり、御大の指摘は的外れに思われるも、先生評は「可もなく不可もなし。」で面目を保った御大。先生は、「バス待つ」の行為と「日永」はありがちな取り合わせではあるが、「ガムを噛む子等」と一緒という場面設定は今どきの子の姿が少し見え、オリジナリティーの担保の点では良いと語った。しかし、添削する必要性もないものの、強く推したい魅力もほとんどなく、作品そのものが実に普通だとバッサリと切り捨て。梅沢名人に「シュレッダー(かけろ)」と言われる始末で、名人10段の威厳を見せられない本人だった。
●[67] @21/07/01◆お題:
寝坊『昼寝覚ひらがなだけの置き手紙』名人10段へ
1つ後退添削後
『昼寝覚子のひらがなの置き手紙』『昼寝覚子のクレヨンの置き手紙』
季語は「昼寝覚(ひるねざめ)」。娘と昼寝をしていたが、先に起きた娘が寝ている自分を気遣い、起こさないように平仮名だけで「ぱぱ そとにあそびにいってくるよ」と書いた置き手紙を書いたという実体験だと語った。梅沢名人に「中七が気になる。うちのばあちゃんも平仮名だった」と人物が確定できない点を指摘。人物は読み手に想像してもらいたいと語る本人と口論になる。査定ポイントは中七「だけ」の是非。「もっと確かな情報を」と評す先生は梅沢名人に軍配を上げる。俳句としてはひとまず出来ているが、段位を考えればもう少しキッチリとした情報を入れてほしいと語る。「ひらがなだけの置き手紙」を書くのは子どもの場合もあれば、ご年配でひらがなを一生懸命習った小学校に行っただけの年代の老いた父母の可能性も否定はできないと解説。読み手に想像を託す方法もあり得るとはいえ、作者自身の表現したいものが根底にあるため、誤魔化さずに登場人物を入れるべきと指南。「だけ」の2音を変えて、「子の」とすれば「ひらがなだけ」の意図は確実に伝わると添削例を示す。更に「ひらがな」の4音を「クレヨン」とすれば、昼寝の前の遊びも想像できると述べる先生はに対し、「クレヨン良い!」と添削に納得する本人と梅沢名人であった。再び星を全て失い、厳しい状況となってしまった。
●[68] @21/07/22◆お題:
Tシャツ『夏暁(なつあけ)のおなら逞しロンパース』第5回炎帝戦9位(60名中)添削後
『おなら逞し夏暁のロンパース』
季語は「夏暁」。長女が赤ちゃんの時に夜泣きがひどく、夏の朝に泣いて起こされると、寝不足でヘトヘトになったという本人。オムツ替えの際に大きめのおならをしたのを見て思わずクスッと笑ってしまい、元気に育ってるなと思う一句だと語った。パンサー向井は「幸せだった時の思い出を詠み逞しい」、ジュニア名人は「タピオカが連想される」と両者いじる。先生は、可愛いおならを書きたい親心に大変共感するとしながら、唯一の問題点が語順だと指摘。「おなら」から始めた方が面白く、句またがりにした方が読み手に意外性を与えられると指南して添削する。「おなら逞し」から始まると読み手は俗な方向に行くのかと油断し、仲睦まじい夫婦の会話が連想されるが、最後に「ロンパース」で赤ちゃんだったと分かるどんでん返しにより「ロンパース」が効いてくると解説した。しかし、本人は原句の方が良いと主張し、先生に咎められることに。
●[69] @21/09/09◆お題:
食欲の秋『魚群探知機朝寒のがなり声』第5回金秋戦予選B1位(決勝進出)添削なし
季語は「朝寒」。秋の寒い朝の漁で、魚群探知機を見ながら他の船にがなり声で指示を出す船長を詠んだと語った。村上名人は、現代のテクノロジーと昔からある漁師のがなり声が良い感じで響き合っていると褒める。先生は、兼題からの発想力を最初に褒め、「魚群探知機」と7音の言葉を頭に入れ込む決断力に言及する。この句は「朝寒の魚群探知機がなり声」でも五七五に入るが、魚群探知機の光の映像を先に見せておき、「朝寒」という映像を持たない時候の季語がこの位置に入る語順を高評価。先に映像があるため、時間・空間・冷たい朝の様子が読者の肌身に伝わるため、その後の「がなり声」が立体的に響く語順だと解説する。「がなり」で声に表情をつけ、漁師たちの潮焼けの声のような感じも伝わり、良く判断したと称賛した。本人は、「最近ずっと調子悪かったんで、ちょっと『復活の秋ひとりじめ』かな」と同じく予選通過を決めた中田名人の俳句をもじって笑いをとった。
●[70] @21/09/30◆お題:
バッテリー切れ間近(携帯電話の電池残量)『まず雁の飛来を尋ね長電話』第5回金秋戦決勝4位(次回シード権なし)添削なし
季語は「雁(かり)」。地方の沼で秋の終わりになると雁の群れが飛来するのをテレビで観て知ったと述べる本人。雁を見て育った地元の人が都会に移り住み、地元の家や友達に電話した際に、「雁、もう来たか?」のような挨拶をして長電話をしたという内容だと語った。東国原名人は良い句だと評し、先生も同意する。俳句の世界に「まず~を聞く・褒める」という類型があり、その型を上手く使っているため安定感があると述べる先生。季語「雁」で生きもの・季節とともに作者の故郷の光景も一緒に浮かぶことで、飛来を「尋ね」る思いも伝わると褒める。「長電話」が着地としてベストか否かの問題はあるが、流れの中で最後に話が広がり、しみじみとした感じがする点は良いと語った。シード権を獲得できない4位に本人は不満を見せたが、俳句四天王では最高順位となった。
●[71] @21/10/28◆お題:
待ち合わせ『背にホルンケース秋寂ぶのハチ公前』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
季語は「秋寂(さ)ぶ」。東京・渋谷のハチ公前にホルンのケースを背負う人がいて、同じ楽団の仲間を待ち合わせする光景を詠んだと語った。査定ポイントは「表現意図に対する言葉や韻律のバランスの是非」となり、一見難しい反応の本人。「"背に"の位置が良い判断!」と評す先生は、「背にホルンケース」と「ホルンケース背に」で句の空気感が変わる点を解説。「ホルンケース背に」では、"背にして歩き出す"のように、動作をこの後に示唆するが、「背にホルンケース」では、ぽつねんと佇む様子が浮かぶと述べる。季語「秋寂ぶ」は秋のもの悲しい風情のことだが、「背にホルンケース」の方が季語の意図が正確に表現でき、最後に名詞止めでポンと止める判断も良く、作者の意図に対して言葉とリズムが選べていると称賛した。「フジモン、それはそうなんですか?」と聞く浜田に、「そうです。勿論ですよ。浜田さん愚問ですよ」と分かったように即答する本人。久々に星1個を獲り返した。
●[72] @21/12/09◆お題:
冬の信号待ち『陸橋を渡れば熱を持つマスク』名人10段★2へ
1つ前進添削なし
季語は「マスク」。兼題写真からトランクケースを脇に信号待ちをする女性に着目。道路の向こう側に渡りたいが、横断歩道がないため近くの歩道橋を渡り、重い荷物を持つため息が荒くなってマスクが熱を持つ場面だと語った。査定ポイントは「熱を持つ」の表現の是非。発表直前に「落ちろ」と平場から言われる始末だったが、結果は星獲得。「マスクの2つのリアリティー」と評す先生は、季語「マスク」が抱える現状を語る。新型コロナウイルスの流行により、本来は冬の季語である「マスク」を1年中誰もが着け続けていることで、俳句の世界で「マスク」が季語でなくなる可能性もある状況だと述べる。この句は「コロナ禍の今どきのマスク」とも「冬の季語のマスク」とも読め、2つの意味合いで読みが成立している点を褒めたいと語る。コロナ禍なら、健康体でマスクする私がその中の熱を感じる今どきのマスクに。本来の冬のマスクなら、症状を人にうつさないため、防寒のマスクという印象で、両方の意味を成立させたと解説。「さすが名人ですよね」と称賛した。初めて星2つを獲得した。
●[73] @22/01/13◆お題:
人生ゲーム『あざ笑う鬼の顔ある歌留多かな』第5回冬麗戦8位(14名中)添削後
『あざ笑う鬼の絵赤き歌留多かな』
季語は「歌留多」。兼題の「人生ゲーム」から「いろはかるた」へ発想。いろはかるたは地域によって違うが、京都のいろはかるたの「ら」の絵札「来年のことを言うと鬼が笑う」では、来年のことを考えている人の横で鬼がケタケタと笑っている絵が描かれ、その鬼がユーモラスだったことを句にしたと語った。ジュニア名人から類想、梅沢名人から「顔ある」のくどさを指摘される。先生は、いろはがるたのことだと分かる表現力と、「鬼」が「来年のことを言うと鬼が笑う」のことわざの鬼と分かる点を褒める。「顔ある」に説明臭さがあり、映像に変える工夫があれば良いと忠告。「鬼の顔」とあれば「ある」は言わずもがなで、鬼の絵の色を入れれば歌留多がより鮮やかになると指南する。浜田からの「赤」の助言により、中七「鬼の絵赤き」と添削し、「赤き」が「歌留多」にかかることでより映像化できると解説した。順位に不満な様子の本人は「俺の見た絵札、赤くなかったけどな~。何か、うん。グリーンやったかな」とコメントし、不貞腐れてしまった。
●[74] @22/02/24◆お題:
フードコート『イーゼルに凭るるメニュー春浅し』名人10段★1へ
1つ後退添削後
『イーゼルに立てかけ春のメニューたち』
季語は「春浅し」。「イーゼル」は画家のキャンバスを固定する台で、商業用ディスプレイなどの固定にも使われる。写真を見たまま詠み、イーゼルにメニューを立てている光景を普通に詠んだと語った。東国原名人が予言した通り、査定ポイントは中七「凭るる」の是非。「そのお店繫盛してなさそう」と評す先生は、「凭(もた)るる」という動詞の語感が損をしていると述べる。「凭れる」の意味は、①人や物に自分の重みを預ける、②胃がもたれる、③誰かに依存する、の3つがあり、どれも少しマイナスの語感を持っている動詞だと指摘。本人が語った「立てかけ」を入れた方がスッキリすると忠告し、添削を開始する。しかし、「なんかでも凄い普通」と反論する本人へ先生は急に180度振り向いてカメラ目線となり「普通でいいんです。だって、普通のことを書こうとしているんですから」と強い剣幕で述べる。最後の「春浅し」も付け足したような感じがあると問題点を続けて述べ、本人の意図する「春のメニュー」で添削。さらに、擬人化を意図したいならと「たち」と複数形を提案した。メニューがキラキラするような感触の添削例となるが、最後に「辞書を引きましょう」と本人へ忠告した。「でもほら大体メニューって、斜めになってるから凭れてるな、貼ってないなっていうのがあって、"凭れる"にしたんですけど」といつもの負け犬の遠吠えにも動じない先生は「はい、残念でした」となすすべなし。再び星が1つとなってしまった。
●[75] @22/03/10◆お題:
ライスorパン『公開録画当たった浅蜊開いた』第6回春光戦予選B1位(決勝進出)添削後
『公開録画当たった浅蜊口あけた』
季語は「浅蜊」。兼題から応募結果の抽選という場面へ発想を転換。好きなテレビ番組の観覧募集があり、「この番組の公開収録を生で見たい」と思い応募していたが、「当選」の結果通知と同時に、火にかけていた浅蜊がパカッと開くちょっとした日常の嬉しさを表現したと語った。梅沢名人は「浅蜊がパッと開いた瞬間、花火が上がったように祝福する感じ」だと褒め、志らく名人は「こういう句を詠みたいが決勝では力尽きてほしい」といじり、馬場典子は「語感も当たったという喜びが表現されている」と評す。先生は、「当たった」ことと「開いた」ことは何の関係性もないが、それらを取り合わせることで、言葉同士が火花を飛び散らせ、そこに詩が生まれるのが「俳句の取り合わせ」だと解説。兼題のパンもご飯も出てこないと思う俳人もいるが、「当たった」「当たらない」、「開いた」「開かない」という2択の結果が蓄積されて人生が構成されていくという意味合いもこの句の奥にあると述べる。そして、本戦に向けての小さなアドバイスとして韻を軽やかに踏む添削を披露。後半を「浅蜊口あけた」とすれば、「当たった」「浅蜊」「あけた」で「あ」の韻が生まれる形に。こういう工夫が出来れば、本戦の優勝も夢ではないと指南した。本人は「改めて」先生の力量に感動するも当然のように浜田に突っ込まれた。
●[76] @22/03/31◆お題:
ハプニング『子供等の後ろの蜂のホバリング』第6回春光戦決勝6位(シード権なし)添削後
『子供等の後ろを蜂の防衛軍』
季語は「蜂」。兼題から蜂の大群へと発想。「ホバリング」は空中で静止することで、蜂がバーッと羽ばたいて止まっている。その前で子どもたちが遊んでいるが、蜂の存在に気付かず、後ろに自分の巣がある蜂に少しでも寄ってきたら「おい!刺すぞ」みたいな感じを表現したかったと語った。ジュニア名人は「良い句だが周囲の実力が上がっているため、本人の実力がホバリングしている」、梅沢名人は「"の"を3つ重ねたのが失敗」とそれぞれ指摘。先生は、ささやかな場面をちゃんと描写していると評す。しかし、「ホバリング」は蜂の様子の表現として類想の描写だと指摘し、梅沢名人が指摘した助詞の問題点解消を指南する。梅沢名人が添削例を当て、2番目の「の」を「を」に変更。「後ろを」で蜂がウロウロしている状況が言えると先生は解説する。下五で「巣を守る」様子とする場合、わざと擬人化して「防衛軍」を提案した。先生は「ただ、"これにしなさい"という意味ではなく、こここそが創作の大事なポイントのため、是非今晩考えてください」と本人に再考を要請。しかし、本人は「いえ、次の予選のこと考えます」と低順位のため気持ちを切り替えてしまった。
●[77] @22/05/19◆お題:
町中華『夏めくやこれより打ち出す中華鍋』名人10段★1で
現状維持-添削されず(別案「
これよりの夏や打ち出す中華鍋」)
季語は「夏めく」。鍋を作るときの製法「打ち出し」は、職人がハンマーで何千回も叩いて作る製法で、中華鍋を今から職人が打ち出しで作る光景を詠んだと語った。村上名人が「これより」と中八を指摘するが、中八は意図的だと回答する本人。査定ポイントは中七「これより」の重要度の是非。「意図があったと信じたい」と評す先生は、「これより打ち出す」が中八で「これより」をこの位置に置く重要度が作者にとって高いと信じて現状維持査定にしたと述べる。五四四五のリズムが中華鍋をコンコンと打つ続いていくリズムともいえ、敢えての意思は尊重すべきという先生。しかし、別案として「これよりの夏や/打ち出す中華鍋」を提案。これから夏が始まり、中華鍋を打ち出す作業をこれから掛かるというニュアンスが匂うはずだと忠告した。終始、先生の思惑に知ったかぶりで反応する本人だが、星は獲られずに済んだ。
●[78] @22/06/30◆お題:
キッチンカー『雲の峰ぱんっと乾いたピザの薪』名人10段★3へ
2つ前進添削なし
季語は「雲の峰」。天気の良い日に子どもと公園に行くと、ピザのキッチンカーがあったと語る本人。内部にピザ窯があり、「本格的ですごいなあ」と見ていたら、横にあった乾燥した薪に焦点を当てたという一句。査定ポイントはオノマトペ「ぱんっ」の是非。番組初の2つ前進に歓喜する本人。「読み手の五感を刺激している」と評す先生は、夏の入道雲を指す季語で見上げる視線と広い映像を確保し、謎の言葉「ぱんっ」が出てくると句をなぞる。「乾いた」と続くため、シーツがぱんっと乾くような場面を思い浮かべる人もいる可能性はあるが、下五「ピザの薪」の着地で映像が分かり、言葉の誘導が非常に巧みだと褒める。最後まで読んだ瞬間に、読者は現場にワープし、「ぱんっ」が追体験するためのスイッチを入れる効果を持つ気持ちの良い句だと称賛。今後、「ピザを食べる度にこの句を思い出す」と祝辞を述べた。本人は思わず、「この2年半の間で一番嬉しい」と語った。
●[79] @22/07/21◆お題:
メール『アルパカを返す手配り雲の峰』第6回炎帝戦5位(58名中)添削なし
季語は「雲の峰」。タレントがアルパカと生活する動物番組のロケが終わる間際、スタッフが動物プロダクションに返す手配をしている内容の句だと語った。上五を褒めるジュニア名人だが、例の騒動と引っ掛けて弄る。先生は、「アルパカ」と「雲の峰」を取り合わせた句は、色んな俳句大会とかで時折目にするが、中七にオリジナリティがある点を称賛。「返す手配り」を読み手が色々と想像できると味わう。背後に夏の入道雲がモクモクとある光景も良いと述べる。今回のテーマである「手配り」でメール・携帯を用いて連絡を取り合っていることも想像できると評し、作者が分かって納得したと述べた。東国原名人に次ぐ順位となり、名人10段の面目を保った。
●[80] @22/08/11◆お題:
金魚すくい『金魚鉢金魚のいなくなる屈折』名人10段★4へ
1つ前進添削なし
季語は「金魚鉢」「金魚」。小学生の時に飼った金魚の体験から発想。金魚鉢は丸みを帯びて湾曲しているが、角度や位置によっては金魚が消えて見える場合があり、その思い出を詠んだと語った。査定ポイントは「いなくなる」の描写の是非。(ごまかさない言葉選びが秀逸)と評す先生は、光景を見たことがある人には実感が分かると前置き。後半「いなくなる」の表現だが、凡人なら勇気がなく、「見えなくなる」「隠れる」などでごまかし、最後の着地も「角度」とかでごまかす点を述べる。しかし、それでは詩にならず、色んな意図に基づいて吟味して作った句だと分かると称賛した。いよいよ4人目の永世名人に王手をかけた。
●[81] @22/09/01◆お題:
ファッションの秋『マネキンの坐骨デニムに入るる秋』第6回金秋戦予選A1位(決勝進出者)添削なし
季語は「秋」。秋の新作のジーパンをマネキンに履かせている服飾店スタッフの光景。ジーパンが少し硬いためお尻の部分までグッと履かせる感じを表現したと語った。梅沢・村上両名人は揃って褒める。先生は「履かせる」「着せる」と書くのが普通の俳人だが、自分の目に映った光景を映ったように描写できる「観察力」「表現力」の双方の実力が伴っていることを述べる。秋の新作デニムが並ぶ秋らしいショーウインドウで、マネキンに服を入れている店員の背後に整った飾り付けがあることを思わせ、季語「秋」が光景を立てていると解説。そこら辺の効果も分かって「秋」を最後にポンと入れたのだと意図を汲んだ。タイトル戦の予選は5大会連続で1位通過を果たした。
●[82] @22/09/22◆お題:
道頓堀(大阪府)『コイン洗車抜けて秋気の御堂筋』ふるさと戦③(大阪)2位★添削なし
季語は「秋気」。大阪の難波に住んでいた経験を詠んだ。コイン洗車は無人のセルフの洗車機で、車をピカピカにしてそのまま爽やかな秋の御堂筋を車で走ったという句と語った。志らく名人は「道頓堀」の写真に「御堂筋」を入れたことをマイナスだと指摘。先生は「軽やかでリアリティーがある」と褒める。コイン洗車を抜けてピカピカの美しい綺麗な視界が車の中から確保され、御堂筋に向かう点が「秋気」と似合うと解説。雑踏を抜けて御堂筋があることは、鑑賞側にも伝わり、ひょっとして「銀杏も色づいているのではないか」と御堂筋の地名が示唆していると続ける。「写真俳句」として十二分に成立しており、「大阪は予算2倍にしてこれもポスターを刷ってほしいと思う」と称賛した。本人は夏井先生の「おウチde俳句くらぶ」の会員だと豪語し、1位の席に座って駄々をこねるも先生から「ありがとう」との一言のみで買収に失敗。地元出身ながら優勝できなかった。
●[83] @22/10/13◆お題:
大谷翔平『大きく振りかぶって秋爽の只中に』第6回金秋戦優勝
添削後
『大きく振りかぶって秋爽の只中』
季語は「秋爽」。プロ野球で大きく振りかぶって投げる投球フォームの投手は今やいないが、大谷選手の印象は高校時代の大きく振りかぶる「ワインドアップ投法」のカッコよさ。日本人投手がメジャーリーグで活躍するきっかけを作った野茂選手と同じ投法で、その気持ちも込めたと語った。惜しくも2位の村上名人は後半を褒める。先生は、ゆっくりと振りかぶるピッチャーの動作という短い時間を映像にする真っ向勝負に挑んだと評す。「ピッチャー」とは書いてないが読めば分かり、「秋爽」とい季語が良く、季語の中心に立つかのような存在がピッチャーであると受け取れると解説。最後の「に」がない方がスッキリすると述べて赤ペンを入れ、本人も添削例を支持する。添削例であれば確実に1位だったと先生は評し、きっぱりとした空気が出て「秋爽」という季語が堂々と立つと述べた。「おかしいよ。昔、案山子と何かありました?」と案山子の句で敗北した村上名人が恨めしそうに溢した。
●[84] @22/11/10◆お題:
ドライブスルー『時雨るるやジュニアシートで待つポテト』名人10段★3へ
1つ後退添削後
『時雨またジュニアシートに待つポテト』
季語は「時雨」。雨で自分の子が外に遊びに行けずに肩を落とすが、「ドライブスルー行こうか?」と言うと子のテンションが上がる光景だと語った。良いと褒める梅沢名人は「『ジュニアシート』が上手い」とコメント。査定ポイントは「時雨るるや」の効果の是非。「ちょっと大げさ」と評す先生は、「時雨」が冬の初めに降ったり止んだりする雨だと解説。「ジュニアシート」である程度年齢が分かる点が良いと褒める。先生は、「で」と「に」の助詞の使い分け・上五「や」の2点が問題だと指摘する。助詞「で」の後には動的な動詞、「に」は静的な動詞が続くため、「ジュニアシート"に"待つ」が正しいと指摘。さらに、「や」の詠嘆が大袈裟で、季語を補強しながら子の気持ちを乗せるため、「時雨また」と添削した。さっきまで降っていた雨が一端止んで「ポテト買いに行くか」となるも、いざ買いに行くとと時雨がまた降り出すという時雨の特性と、ポテトを待つ子の心情・思いも上五に乗っかると解説する先生は、「これやってくれてたら私は"永世名人おめでとう"と言いましたけど」と述べ、惜しいミスをした本人に愛の鞭を与えた。
●[85] @22/12/08◆お題:
たい焼き『買い食いの鯛焼野球強豪校』名人10段★4へ
1つ前進添削なし
季語は「鯛焼」。強豪校の野球部員が厳しい練習を終えた後、みんなで鯛焼きを買い食いする和気藹々とした感じだと語った。森口名人は、「強豪校」の凄いプレーをする子が無邪気な顔で鯛焼きを食べるのが良いと褒め、句意を汲み取まれたことに本人が惚れ込む。査定ポイントは「強豪校」と限定した是非。先生は、部活帰りに買い食いする句が山ほどあると前置きし、「強豪校」と限定したことで面白い効果を手に入れた点を評価する。強い野球部の子たちが、まさにその年齢相応の可愛い表情で食べているという森口名人の意見にも同意。ひょっとすると、先に地元の弱小校の子らが一人二人買い食いしていて、「あ~、あいつらが来たぜ」と隅に自分から追いやられていくようだと新たな読みを語ると、「そうそうそうそう」と同調する本人。再び永世名人へ王手の状態に戻した。
●[86] @23/01/12◆お題:
ラッキー『四時限目休講小春のキネマ』第6回冬麗戦5位(15名中)添削後
『四時限目休講小春日のキネマ』
季語は「小春」で字足らずの俳句。大学の四時限目が突然休講になり、その身で映画を見に行く人物を詠んだと語った。伊集院光は「顔に似合わない句だが、青春映画を思う」とコメントし、森迫永依は「自分の大学時代を思い出す素晴らしい句」と褒める。先生は、まさに大学あるあるだと述べる。「四時限目休講」と硬い言葉を放り込み、「小春」の時候の季語にいく取り合わせだけで、ささやかなラッキー感が表現され、「キネマ」に映画マニアの大学生が1人で観に行く光景も想像できると解説。字足らずは「小春日」と1音入れて調整すれば、流れが良くなると述べた。6位のジュニア名人が郷ひろみを題材にし、自身が5位となったため「ゴーです!」と物真似を決めるが、10段以上で最上位となる不甲斐ない展開に浜田からお叱りを受けることに。
●[87] @23/01/26◆お題:
春の京都 三条大橋(京都府)『春色の洛中馴染みなく緩歩』ふるさと戦⑥(京都)3位★添削後
『春色の洛中そぞろなる緩歩』
季語「春色」は春の明るい様子を思わせる景色のこと。洛中は観光名所で見る場所が多くあり、思わず歩くスピードがゆっくりになるという句だと語った。村上名人は、季語+「の」+名詞による句またがりを得意とする本人の型に触れて褒める。先生は、明確な季節感がない兼題写真に対し、「春色」を持ってきた点を強く褒める。しかし、惜しいのが「馴染みなく」でストレートに自分の感情を書いたのが損だと指摘する。本人の話から「そぞろなる」を提案する先生。知らない土地に来て、何となく歩いているが、少し心がソワソワする印象となり、添削例なら1位に推していたと評した。「そぞろなる」を知らなかったと述べる本人は、「人生の中で"そぞろ"なったことないんで~」と述べてスタジオが静まり返り、逆に"そぞろ"なる状態となってしまった。
●[88] @23/02/23◆お題:
富士山[横浜の景色]『春の山ひつじに空の名を与へ』永世名人へ
1つ前進添削なし
季語は「春の山」。山麓の牧場で生まれた羊の赤ちゃんに、見上げた時の"空"の名前をつけた状況だと語った。「フジモンらしく可愛らしい」と褒める梅沢名人は「"空"ちゃんと名付けた?」と質問すると「色んな空がある。"快晴くん"など」と述べ、この会話が重要なポイントに。査定ポイントは「空の名を与へ」の表現の是非となるが、清水アナに「A」の結果を渡すよう指示。「いろんな空が想像できる」と評す先生は、措辞の取り合わせに対し「春の山」の選び方が良く、ほのぼのとした広がりがあると述べる。最も重要な点が、句の奥行きの広さだと指摘する。生まれた羊に「空ちゃん」と名付けたならば、「名を与へ」という言い方ではなく、「春の山ひつじに空と名付けたり」と軽い言い方にすべきだと解説。春の空が水色なら「水色ちゃん」、霞がかっていたら「かすみちゃん」でも良く、この句の良い部分を本人が見事に語った点を称賛する。そして、千原ジュニアとフジモンの2名が思いのほか早く永世名人になったのは、先行する3人の永世名人(梅沢・東国原・村上)の成功・失敗のデータを学んで吸収しているからであり、前の2人にも一応お礼くらい言うべきだと忠告した。本人は語尾を上げて「ありがとうございますー」と表面的に礼を言うが、梅沢名人が「もうちょっと言い方ないのか?」と厳しく指導。最後に「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」と故事成語で喩えるが、スタジオが静まり返り、浜田に進行された。本人はようやく番組5人目の永世名人に認定された。
●[89] @23/03/30◆お題:
給与明細『給与手渡し春宵の喫煙所』第7回春光戦優勝
添削なし
季語は「春宵(しゅんしょう)」。給与を手渡しされていた昔の町工場をイメージした一句。給与を貰ったら気持ちもウキウキし、みんなで喫煙所へ集まって、タバコを吸いながら飲み会に誘う会話のある光景だと語った。良い句だと認めるジュニア名人だが、「昔は『喫煙所』がなく、どこでも吸えていた。『喫煙所』の是非です」と重箱の隅をつつく。先生は季語「春宵」が中七で主役として立った点を褒める。「やっと給料日が来た」というほのぼのとした談笑、タバコの匂い、直に受け取る充実感で温かみのある懐が読み取れる「春宵」に、タバコを吸い終わって「よし!今日はちょっと1杯やって帰るか」みたいなイメージも受け取れると味わう。小さな所に目をつけ、季語を主役に立てており見事だと優勝を称えた。昨年の金秋戦以来のタイトル獲得で、自身の肖像画を初めて同時に2枚飾ることとなった。
●[90] @23/05/11◆お題:
浜田雅功『短夜や秒でやり取りするLINE』浜田杯10位(20名中)添削なし
季語は「短夜」。後輩とのLINEアプリのやり取りで、すぐに返信しそうな浜田のせっかちなイメージから詠んだ想像句。先生は「句としては十二分に成立している」と評す。連絡内容は不明だが、複数人で激しくやり取りする夜であると伝わり、せっかちな印象の表現意図が兼題にも寄り添えると述べる。しかし、何か緊急の出来事に対応するためにやり取りを迫られる状況の意味合いの可能性もあり、添削は不要だが兼題の浜田らしさが弱く、そこが低順位に留まった理由だと解説した。納得しない本人は「先生、インスタやってらっしゃる」と持ち掛けるも「だから何!?」の強烈な先生の返しに本人はタジタジになるしかなかった。
●[91] @23/06/08◆お題:
水族館②『ゴンドウ鳴く水族館を出て白夜』永世名人24句目に
掲載決定
添削なし
季語「白夜」は高緯度地域の暗くならない夜のこと。水族館のショーを見終えた帰り際、ゴンドウクジラのゴンドウの鳴き声が遠くの方から聞こえてきて、水族館を出たらまだ明るい夜だったと語った。梅沢名人は「情景が浮かぶ語順で良い句」だと褒める。「確かな時間表現ができている」と評す先生は、「白夜」で高緯度の国などの地域性が分かり、着地が上手いと褒める。「ゴンドウ鳴く」は今、目の前でゴンドウクジラが鳴いている水族館を思わせるが、後半で水族館を出て今白夜の中に私は立っている光景を描いていると解説。俳句で時間を17音の中で表現するのは難しいが、非常にサラッとやっていると称賛。「白夜」という季語を主役に立て、なおかつ時間表現をこなしたことに、確かな力があると実力を評した。永世名人として初の挑戦は幸先よく掲載決定となり、千原ジュニア名人と残り26句で並ぶことに。
●[92] @23/07/13◆お題:
パフェ『パフェグラス底まで至る匙盛夏』永世名人25句目に
掲載決定
添削なし
季語は「盛夏」。パフェを食べる際に使う長いスプーンに特別感があると語る本人。暑い日の喫茶店で長い匙を用いてパフェを食べる光景だと語った。「よく考えたバランスの取り方」と評す先生は、面白い視点だと最初に述べる。パフェのグラスの底に匙を沈めながら「届くかな?」と匙を入れる感覚に共感できると称賛。「まで至る」が大袈裟な表現だが、ゆっくりと匙を沈めながら"この奥に何があるんだろう?"とワクワクする感覚を示したと解説。最後にどっしり置かれた季語「盛夏」も、全体の言葉の質量が釣り合うため、一句に違和感がないと述べ、よく考えた良い俳句だと褒めた。25句目の掲載で句集完成へ残り半分となった。
●[93] @23/08/03◆お題:
行きつけのお店『土地区画整理末伏のタッカンマリ』第7回炎帝戦6位添削後
『地上げの噂末伏のタッカンマリ』
季語「末伏」は立秋後の真夏のような酷暑日。「タッカンマリ」は鶏の水抱きの韓国料理。韓国では三伏(初伏・中伏・末伏)に精がつくものを食べる風習があるが、10年間通っていた行きつけの店(東京・港区白金の「はな」)が道路拡張の区画整理で無くなると聞き、ショックを受けたことを句にしたと語った。ジュニア名人は例のスキャンダルの件から「タッピオカ」が良いという添削例で本人をいじる。先生は「末伏のタッカンマリ」の韻律が楽しい点を褒める。しかし、「土地区画整理」を受ける店側視点の句か、区画整理の仕事に携わる側の句なのか、解釈が広すぎる問題点を指摘。「地上げの噂」などを上五に置けば、店側視点の句に確定できると忠告した。夏井先生の句会ライブが満員の大盛況だと宣伝・媚びを売って1位の席へと移動する手段に出る本人だったが、当然のように浜田に制止されられることに。
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