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【金秋戦予選A】20220901 プレバト!!俳句紹介【ファッションの秋】

2022年9月1日放送 プレバト!! 俳句金秋戦予選Aブロック結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第6回金秋戦予選Aブロックで名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
※11日に全て更新しました。お待たせしまして、大変申し訳ございません。

→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細(Aブロック) →編集後記

予選Bブロック記事
予選Cブロック記事
決勝戦記事
※過去のタイトル戦結果などはこちらまたはブログカテゴリからどうぞ。

挑戦者:
Aブロック→<名人10段★4>藤本敏史(FUJIWARA)[81],<2級>馬場典子[23],<2級>松岡充[24],<4級>犬山紙子[15],<5級>春風亭昇吉[9] ※[数字]は挑戦回数

見届け人:梅沢永世名人、村上永世名人


●兼題:ファッションの秋
ファッションの秋の兼題


※各ブロック1位が無条件で決勝進出。2位以下は補欠となり全てのブロックから上位4名が進出
※順位クリックでリンク内移動します。
◆予選Aブロック
1位藤本敏史
(FUJIWARA)
名人10段
★4
マネキンの坐骨デニムに入るる秋まねきんのざこつでにむにいるるあき
2位春風亭昇吉5級錦秋のショーウィンドーに映る黙きんしゅうのしょーうぃんどーにうつるもだ
3位松岡充2級星月夜ファーストピアスの重力ほしづきよふぁーすとぴあすのじゅうりょく
4位馬場典子2級闊歩するトレンチコート風爽かかっぽするとれんちこーとかぜさやか
5位犬山紙子4級稲妻やタートルネック子に着せるいなづまやたーとるねっくこにきせる
順位発表順:2位→3位→4位→最下位→1位





●それでは順位別に見ていきます

1位◆『マネキンの坐骨 デニムに入るる秋 藤本敏史(FUJIWARA)

村上永世名人 うーん。
梅沢永世名人 うん。

【本人談】
秋の新作のジーパンをマネキンに履かせている服屋のスタッフ。ジーパンって少し硬いから、グッと履かせてる。最後、お尻の部分が出っ張ってるから、最後にグッと入れてる感じを表現した。

梅沢永世名人 いや、素晴らしいですね。マネキンに着せてるところを俳句にしたなんて、大したもんだ。
本人 でしょ?
梅沢永世名人 アンタは予選強いね~(笑)。
本人 強いんすよ。ほぼ1位です。
梅沢永世名人 これは良い俳句だわ~。
村上永世名人 いや~良いですね。マネキンにただ着せてるだけでなく、坐骨の部分であるとか、それがデニムである。「秋」…これ「春」でも「夏」でも「冬」でも本来行けるんですけど、「秋」ということで「デニム」の季節感が漂うっていうのが、やっぱり素晴らしいなっていうか。

夏井先生 
普通はマネキンに「履かせる」「着せる」と書いてしまうが、それでは当たり前。
自分の目に映った光景を映ったように描写すると、「坐骨をデニムに入れる」という表現に辿り着く。
観察力も大事だが、観察したことを言葉で表現できるかが実力になる。
「入るる」は文語で、口語なら「入れる」になる。
文語表現で季語「秋」に着地する。
秋の新作デニムで、ショーウインドウも秋らしい飾りつけが、マネキンと入れている店員の背後にそういう飾りつけが整っているのではないか。
季語「秋」が思いのほか光景を立ててくれる。
そこら辺の効果も分かって、最後にポンと入れたのではないかと思う。
本人 勿論。
夏井先生 直しは要らない。
浜田 要らないということでございます。

本人 やった~。
浜田 というわけで、Aブロック今のところ確定はもうフジモンが決勝進出となりました。
梅沢永世名人 決勝はダメだからこの人(笑)。
藤本名人 いや、あなたもですよ(笑)。あなたも決勝弱いの(笑)。

●解説のポイント
普通はマネキンに「着せる」「履かせる」と書く
目に映った光景を映ったように描写する
「坐骨をデニムに入れる」と辿り着く
観察力も大事
観察したことを言葉で表現できるかが実力
口語なら「入れる」だが文語表現で季語に着地
秋の新作デニムで展示も秋らしい飾りつけ
マネキンと店員の背後に見える
季語「秋」が光景を立てる効果も分かっている

添削なし


2位◆『錦秋の ショーウィンドーに 映る黙 春風亭昇吉
※「錦秋」とは錦の織物のように美しい秋の光景。

犬山 「黙」?

【本人談】
情景としては、夜のショーウインドーの前に立っているだけ。秋の煌びやかなファッションが飾られている。それを見ている自分が夜にじーっと見ていると、(ガラスに)自分が反射して見える。今の自分は社会情勢が暗いこともあり、そういう対比みたいなことを詠んだ。

梅沢永世名人 素晴らしいんじゃないですか。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 なかなか、上等な俳句だと思います。
本人 ありがとうございます。
浜田 へぇ~。
村上永世名人 黙が映るという静けさが映るという感覚が良いし、それだけだと暗そうですけど、この「錦秋」と言うことによって鮮やかさみたいなのもあって、これだから良い2位なんじゃないですか?
梅沢永世名人 この季語が良い。
本人 ありがとうございます。
犬山 良い2位。

夏井先生 
この句が実は色々難しいことに挑戦して、うまく結構やり抜いている感じの句。
「錦秋」という季語は錦の織物のように彩られた秋の光景と、そういうこと。
「錦」の一字が邪魔をして、本当の自然の光景で使いこなすのが凄く難しい。
それに対し、ショーウインドーは「錦秋のショーウインドウ」で、人の手によって作られた彩られた秋の光景がここにある。
それが虚構の季語みたいな立ち位置をこの季語に与えた。
さらに「映る」は普通俳句で言わない方が良いケースが圧倒的に多いが、この句は「映る」がキーワードになる。
なぜなら沈黙「黙」を映しているという展開。
これは作者が分かって選んでいるのが読み手に伝わる。
本来映らない沈黙をどうやって映像化するか。
これ誰だろう?と思ったら昇吉さん。
あんた今まで理屈ばっかりこねていたが、こういう理屈は良い理屈。
直しは要らない。

本人 やった~!
梅沢永世名人 これは良いもん。
村上永世名人 良い2位でしょう。
梅沢永世名人 これじゃあ1位の人は相当良いってことですよね。
藤本名人 えへへ。
村上永世名人 他のブロックの人にもプレッシャーになると思います。2位でこれってなると。
本人 やった。
梅沢永世名人 いや、プレッシャーですよ。

●解説のポイント
色々難しいことに挑戦してやり抜いている
「錦秋」は錦の織物のように彩られた秋の光景
「錦」が邪魔で自然の光景で使いこなすのが難しい
ショーウインドーは人工的に彩られた光景
この措辞が虚構の季語の立ち位置を与えた
「映る」は普通は言わない例が多いがキーワード
沈黙を映している展開で作者が分かって選んだ
映らない沈黙をどう映像化するか
作者にびっくりした
今まで理屈ばっかりこねていたがこういう理屈は良い

添削なし


3位◆『星月夜 ファーストピアスの 重力 松岡充

犬山 めっちゃ良い。
馬場 おしゃれ。

【本人談】
重力でこのピアス。ファーストピアスは「鉄」で、その重さをちょっと感じることと、秋の星月夜の美しくてワクワクしているのが、どことなくちょっと痛みがあるという掛け合わせにした。

村上永世名人 かっこいいっすよね。
本人 ありがとうございます。
村上永世名人 全然あるけどな~。
藤本名人 何それ?(笑)
村上永世名人 決勝行ってもおかしくない。
浜田 なるほどなるほど。
村上永世名人 でもまあもしかしたら、僕大好きですけど、よく先生が言う"言葉の質量問題"で「ファーストピアスの重力」が凄いパワーがあって魅力的だから、そっちが主役になっていると思われる可能性はあるなという。
梅沢永世名人 私ね、この句とっても良い句なんですよ。3位になったってのはきっとね、「重力」だと思う。これが無駄な言葉だったと思う。だからこれを外して違う言葉を入れたら、もしかしたら1位になったかもしれない。
藤本名人 違う言葉。
浜田 どういう言葉?
本人 えっ?
浜田 どういう言葉入れる?
梅沢永世名人 急に言われても(笑)。
藤本名人 絶対言わん。絶対言わないっすよね。

夏井先生 この句について語る前に、さっき皆さんが写真で一句作る時のあの態度が素晴らしい。
藤本名人 え?
夏井先生 みんなちゃんと成長している。
馬場 それ評価してください。
藤本名人 全員決勝でええですか?
浜田 何でやねん!

夏井先生 
まずおっちゃんの「重力」の問題から。
この「重力」を良い方に評価するか、勿体なかったかにするかで、意見が分かれる。
ただ「ファーストピアスの」という展開で読んだ時、初めて穴を開けたピアスの微かな重さ・存在を重力として書きたかったという作者の意思は読み手にしっかり伝わる。
これは表現として尊重すべきではないか。
村上さんの指摘した"言葉の質量問題"。
後半が素敵な詩の言葉になり、「星月夜」が背景になりかかってるのは勿体ないという風に思うが、これはこれで出来ている句だと判断した。直しは要らない。

犬山 凄い、レベル高い。

●解説のポイント
「重力」の評価が分かれる
初めて穴を開けたピアスの微かな重さ・存在感がある
表現意図を尊重すべき
言葉の質量問題は確かにあり季語が脇役に
これはこれで句が出来ていると判断

添削なし


4位◆『闊歩する トレンチコート 風爽か 馬場典子

梅沢永世名人 はぁ。

【本人談】
ファッション(業界)は季節を先取りする。秋冬物が出るのが夏の暑い頃で、買ったは良いけど着るタイミングまで何か月か待たなきゃいけない。ようやく着られるぞ!着たぞ!というワクワクの思いを。

梅沢永世名人 これはやっぱり「トレンチコート」が余分だったかもしれないな。
本人 え~!
梅沢永世名人 「トレンチ」ぐらいに止めときゃ良かったかもしれない。やっぱり「トレンチコート」とくると、冬って感じがするじゃないですか。ねえ、だからこれ。(冬の季語)「トレンチコート」と(秋の季語)「風爽か」(の季重なり)。これがちょっとねえ。

夏井先生 
これもよく挑戦している。
だって、ファッションの世界は秋に冬の新作が出る。こういう光景が目の前にある。
季節感の表現が難しいところだが、それに挑戦するその態度がとても良い。
そして、語順も悪くない。
「闊歩する」という堂々と歩く動作から、どういう人かが出てくる。
収めの「さわやか」が季語で、「さやか」が傍題がある。これに「風」を入れたのも良かった。
惜しいのは、おっちゃんの指摘の通り。
ここに「コート」が入るため、冬の句だと脳が思ってしまう。
せめて「コート」を消すだけで全然変わる。
藤本名人 さすが、梅沢さん。
夏井先生 「闊歩するトレンチ」で切れる。
ここで季語の方へ言葉の比重を高くする。
風というのは何と爽かであるか。「さやかなり」その通り。
本人 いや~。
夏井先生 こうすると、これは一気にボーンと順位を上げる。

本人 いやねえ、迷ったんですよ。
梅沢永世名人 ね、勿体なかった。

●解説のポイント
これもよく挑戦している
ファッションの世界は秋に冬の新作が出る
季節感の難しい表現に挑戦する態度が良い
語順も悪くない
堂々と歩く動作から人物像へ
「風」を入れたのも良かった
惜しいのは「コート」が入るため冬の句だと思う
「コート」を消すだけで変わる
季語の方へ言葉の比重を高くする

添削後
闊歩する トレンチ風 爽か


5位◆『稲妻や タートルネック 子に着せる 犬山紙子

梅沢永世名人 あらら…。
藤本名人 あちゃー。

【本人談】
「稲妻」が秋の季語で、この季語に凄く家族的な意味合いがあるのを歳時記見ながら感じていて、実りのある家族のイメージのある季語で、それを使いたい思いがあった。稲妻がピカッと光った時に、親は不安になる。ついつい秋には早いがタートルネックの下着を着せたという、そういう不安な気持ちを詠んだ句。

村上永世名人 「タートルネック」だけ言われると、僕の感想としてはセーターのイメージが。
本人 やっぱそこですよね~。
村上永世名人 どうしても冬だという…。僕としては。
浜田 なるほど。

夏井先生 
これは具体的に書きすぎて失敗した。
「稲妻や」と詠嘆。
中七は「セーター」とは書いてないが、冬のタートルネックのセーターを思い浮かべる人が大半だと思う。
今お聞きして肌着だったと今納得した。「子に着せる」で親だという立場はちゃんとわかる。
ここを具体的に書かないことで、季語「稲妻」を活かすことは出来る。
例えば、何かを一枚着せる言い方。「一枚を子に着せて」で後半を整えて、余った音数で季語を描写する。
今のお話で夜のイメージと受け止めた。
「稲妻の」に「夜(よ)や」。「一枚」はお布団かもしれないし、毛布を一枚かもしれない。
梅沢永世名人 あらいい。
夏井先生 「一枚」で逆に得をする。
俳句というのは、具体的に書くことでオリジナリティ・リアリティーを手にするのが定石だが、この句の場合は書きすぎて損をした。

本人 納得しました。はい。勉強します。

●解説のポイント
具体的に書きすぎて失敗した
中七は冬のタートルネックのセーターを思う
下五で親の立場だと分かる
中七を具体的に書かずに季語を立てる
後半を整えて季語の描写を足す
「夜(よ)」として「一枚」の内容を想像させる
俳句は具体的に書けば独自性を手にするのが定石
この句は書きすぎて損した

添削後
稲妻や  子に着せ


★9/8は予選Bブロック、兼題は「行楽の秋」です。


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コメント

あいうえさんの書いてることはもっともで、

それがこの句の観察力だと思います。

根本的に思い違いをされてるようですが

マネキンは人ではなく物です。作業を2人がかりでやっていて、マネキン持ち上げた人がをデニムに押し込んでいると考えればなにも違和感はないと思います。

デニムという場所「に」だとすると、デニムを固定して固定されたデニムにマネキンを入れている、という意味になりませんか?季語を立てる配慮よりも違和感のない助詞選びの方が大切だと思います

更新お疲れ様です

前回の記事も含め更新が大変かと思いますがゆっくり頑張ってください!

藤本名人の句
様々な意見がありますが、自分なりの読み取り方としては、まず「マネキンの坐骨」という言葉が出てくる。夏井先生的に言えば「詩のかけらもない」無機質な物がドンとでる。そしてカットが変わって「それをデニムに履かせている」と分かる。
あいうえさんの指摘のように1カットで表現することも可能だとは思いますが、2カットにすることで、「『置かれているマネキンの坐骨部分を持ち上げて』デニムに入れる」と少しストーリーを長くすることができるという配慮(であり詳細な説明ではない)の点が加点要素だと思いました。
また、「デニム『に』」の点。夏井先生は「〇〇『に』などは場所などに使う」という解説を多くしており、この場合「デニムという『場所』」にマネキンを入れるという行為がクローズアップされます。『を』だとデニムが脇役の脇役まで質量が減ってしまうでしょう。
そして季語の秋が上手く言葉の質量と威力がさながら天秤棒(秋という季語)と皿(「マネキンの坐骨」と「デニム」)が丁度釣り合った形にしてくれる、どれも印象深く丁度いいバランスを保ってくれると解釈しました。

ここ最近こちらでは藤本名人についての評価があまり良くない感じが見受けられますが、それでもやはりこういった句をすっと出せるのは拾段だなぁと思います。自分の発想力では絶対出せない句ですので。

追記
ゆうさん あいうえさんありがとうございます。中々助詞も、それを噛み砕くのも難しいと実感しています。

1位の句について

マネキンの坐骨デニムに入るる秋

これは解説がよく分かりませんでした。よく分からない原因は「に」だと思います。
マネキン(の坐骨)「に」デニム「を」入れるというのが正しいと思います。
例えば人に置き換えると、子ども「を」デニム「に」入れるという原句の助詞の使い方ではおかしくないでしょうか?もっというと、もしおかしくないとしても、坐骨とデニムの間に助詞がないのも不自然です。なぜ切れをここで入れて2カットにするのかも分かりません。

そうすると、「入るる」というのは下二段活用の他動詞「入る」(現代語では「入れる」)の連体形ではない可能性が出てきます。

それでは、四段活用の自動詞「入る」と解釈すればどうなるでしょうか。この場合は、四段活用の性質上、「入る」+「る」と言う構造にならざるをえません。しかし、後者の「る」がおかしくなります。「る」の可能性としては受身の助動詞か存続・完了の助動詞が挙げられますが、受身の助動詞であるならば未然形に、存続・完了の助動詞であるならば已然形に接続します。よって、自動詞として解釈するのにも無理があります。

発表順に

前回の句へのコメント等書き終えてないところで、白プロキオン様の多忙さをうかがえますが、そんな中での書き起こし本当にお疲れ様です。

2位 昇吉さん
無知もいいところで、「錦秋」という季語であり言葉を知りませんでした。手元にある歳時記には掲載されていないので、辞書を引いてみると「紅葉が錦のように美しくなる秋」とのこと。季語自体に「錦のようだ」という喩えや見立てが入っていることで、より視覚的に季語を捉え、かつ、「錦のように見える」秋の景を残りの十二音で表現しないといけない句でした。
夏井先生のおっしゃる通り、人工物であるショーウィンドウの衣類との対比が活きていたと思います。
また、「に」でショーウィンドウから離れず動かない何かが示唆され、さらに、「映る黙」とすることで、本来は視覚的に映ることがない聴覚情報:沈黙がショーウィンドウに映っているという表現が活きました。
通常回での出演がここのところ無かった昇吉さんですが、普段からしっかり俳句をやっていることを見せつけた句だと思いました。

3位 松岡さん
村上永世名人の指摘、言葉の質量問題は見事でした。
自解を視聴すると、「ファーストピアスの」の「の」。これが結構痛いかもしれない。重さを感じるならば「に」なり「へ」(地球の持つ重力に引かれる)がより適当で、これが「の」になると、ファーストピアス自体の持つ重力によって、(万有引力。ピアス自体に自分自身、特に星月夜を見ている自分の精神が)引かれていくように見えてしまいますね。
もしかすると中八になったので、下の句を五音にする苦肉の策として重力という四音を使ったのかもしれないな、と。
あとは、季語の問題。季語が脇役になったのは否めません。もしもここにより良い季語を入れるなら、時候や天文など広い季語より、具体的には言いませんが、生活季語(または、忌日)を入れても面白かったかもしれませんね。下手に使えば残り12音と近すぎる内容になってしまいますが。

4位 馬場さん
ファッションがらみで闊歩というと、プレバトでは過去に「落葉風渋谷を闊歩生脚で」とその添削句「生脚の闊歩渋谷の落葉風」(原句はゆうちゃみさん)を思い出します。
ゆうちゃみさんの句では落葉風の中の若々しい脚部に視線が向けられます。この句では爽やかな秋の風の中、トレンチコートであり、それを着た人に目が向けられ、見えてくる光景や人物像はずいぶん違いますね。
さて。
なんにしても、この句、「コート」が痛かった。御大のおっしゃる通りです。添削句で「コート」を消して「トレンチ」だけ残す形となりましたが、原句を見てからだと、どうしても「トレンチコート」の印象が残ってしまいました。

5位 犬山さん
順位発表段階で、「よもや、また片乳だしたのか」と思いましたが、悪くはない句でしたし、村上永世名人とのやりとりも良かった。詠んだ方も季重なりを指摘されることを予想していた。
まずは、三段切れですが、この句の場合は、中七の名詞と下五の内容からして、ここの間にくっつく助詞が「を」しか浮かばない内容なので、おおめに見てもらえたのかもしれません。
反対に、タートルネック「を」、となるので、どうしてもタートルネックがどうなったかという点がクローズアップされ、目立ってしまいます。カタカナ語で7音も使ってますし、やはり冬のイメージのある単語が目立ってしまった、という感じでしょうか。
また、夏井先生の添削時のコメントから、具体的に描写して成功する場合と書きすぎて損する場合、そのさじ加減は、俳句を作りながらでしか分からないのではないかと思った次第です。

藤本名人
解釈:マネキンの坐骨(にあたる部分)をデニムに入れる秋です

この句、藤本名人の自解に対してマネキンを持ち上げてジーンズに入れる作業をしている映像があてられましたが、まさしくこの映像のまんまの句なんだと思いました。

そして、詠み手の視座によって秋の感触も違ってくるのではないかと思える句で、マネキンをデニムに入れる本人なら「マネキンの着せ替えをやってるな、秋が来るな、忙しいな」、その作業を見ている者なら「マネキンの着せ替えをやってるな、ああ、秋が来るな」とちょっと違う。そんな感触を得られるかもしれませんね。

思わず鑑賞してしまいましたが、1位と2位の差はこの読み方の幅をくれる部分だったのかな、と思ったりしましたし、人によっては2位と1位を入れ替えて評価する方もいるかもしれません。

ハイレベルなAブロックだったと思います。

藤本名人に対する

偏った見方をされる人がいらっしゃるようでしたね。

過去にいくつか指摘されてましたが、

海胆の句と金魚鉢の句までならそう感じる人がいるのは理解できます。

ただ今回の句に関しては、「座骨」という言葉があっただけで、昔の人の句と安易に結びつけてしまい

ハッキリ申し上げるのであれば、

指摘や批判の域を越えた言いがかりでしかなく、不愉快です。

藤本名人だけでなく、夏井先生やプレバトという番組への偏見を生み出しかねないコメントはやめていただきたいと思います

どれも素晴らしく見応えのある回と句という印象でした
犬山さんも失敗こそしたという評価ですがいままでのような大事故ではなかったですし、具体的に書きすぎたという観点の指摘、添削は大きく唸りました
松岡さんの句は質量問題などの指摘も分かりますが、個人的にはかなり好きな句でした
余談ですが、10段を過ぎたあたりから村上さんのトーク力が日に日に向上してるように感じてなんか良いなと思います
俳句に真摯に向き合っているのを感じます。

昨日のプレバト

1位から3位まで添削なしといい、犬山さんが具体的に書きすぎて最下位といい、Aブロックから波乱の連発ですね。(特に気になるのはCブロック)

「ジーンズに腰骨入るる薄暑かな」って恩田侑布子さんの句があるんですよね……それをマネキンの句へと昇華させたのはお見事ですよ

今回は

どなたの句も兼題と真っ正面から向き合い、すばらしかったと思います。

1位、藤本名人

この句の決め手は後半の助詞「に」だと思ってます。この助詞の選択で「デニム」の方に比重がかかり結果的に「秋」という季語が主役に立ってます。

うまく表現ができないのですが、
「を」とした場合、
マネキン

デニム
というデニムをマネキンに押し込む形になり、「マネキンの座骨」の印象が一番印象に残ってしまいます。

「に」とすることで
マネキン

デニム
となり、マネキンを押し込む光景になります。そうなると「デニム」をひいては「秋」を引き立てるための小道具としてマネキンを脇役に抑えることができます。

助詞といったら千原ジュニア名人のイメージがありましたが、藤本名人もやはりすごいですね。

2位、春風亭昇吉さん

解説を聞いて思い出したのは、特待生昇格を決めた句ですね。

あの時も、「だけ」という言葉を用いてました。

小細工を捨てて、映像に思いを託すという概念か持ち始めたとき、この方が落語家として持っている言葉の力を発揮できるように思えました。

句の感想です。

季語の本意をしっかりと捉えていた句でしたね。プレバトでは初めて使われる季語でしたし、季語の選択によほどの自信と勇気を持って選ばれたのだと思います。

「映る」という言葉によって夜の情報であることも伝わり、映像としても心情としても明暗のコントラストが出てきますね。

助詞の選択も的確でした。
切れをいれずに上五中七下五と繋げることで、リズムと内容が合うように思えます。

予選突破できるような確率はかなり高いかなと思えます。

3位、松岡充さん

個人的には兼題との相性からかなり期待値が高かった人です。

季語と残りのフレーズでいくつか対比の意図があったように思えます。

まずは映像としての大小の対比
自然の空の輝きと人工物の輝き
空なので上のイメージと「重力」で下のイメージ

「重力」はピアスをつける人とそうでない人で評価が別れるのでしょうね。実感を持てる人は季語とのバランスが取れてるように思えます。

着けない人は言葉そのものの詩的表現と季語とのバランスが取れてないと感じるのではと思います。

万人向けにするのであれば
星月夜きらりファーストピアスずしり

と季語の描写に音数を取ることでしょうか?個人的には原句でも十分すばらしかったと思います。

馬場典子さんと犬山紙子さんは夏井先生の感想がそのまま自分の感想なので、割愛させていただきます。

今回の兼題の難しさに引っかかってしまったといったところでしょうか?

ただお二人とも映像はきっちり描写できてるので、技術力は確かに向上されてるように思えます。


最後に拙句を詠ませていただきます。
アニメーションダンス秋のランウェイ舞う

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