2022年1月27日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
挑戦者→瀧川鯉斗[3],イワクラ[初],勝俣州和[4],岡田結実[初],立川志らく[49],中田喜子[50],村上健志[63], ※数字は挑戦回数●お題:肉まん

※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位70点 | 瀧川鯉斗
| 肉まんやヘルメット脱ぎ手套脱ぎ | にくまんやへるめっとぬぎしゅとうぬぎ |
2 | 凡人2位55点 | イワクラ (蛙亭) | かぶりつき天を仰げば冬の月 | かぶりつきてんをあおげばふゆのつき |
3 | 凡人3位50点 | 勝俣州和
| 肉まんを分けあう夫婦冬日向 | にくまんをわけあうふうふふゆひなた |
4 | 才能ナシ4位10点 | 岡田結実
| 冬の星あれはなんだろ肉まんだ | ふゆのほしあれはなんだろにくまんだ |
5 | 名人5段へ1ランク昇格 | ★立川志らく
| 冬の路地裏に昭和が捨ててある | ふゆのろじうらにしょうわがすててある |
6 | 名人6段へ1ランク昇格 | ★中田喜子
| 肉饅どさどさ黄さんの手真つ赤 | にくまんどさどさこうさんのてまっか |
7 | 名人10段★3へ1つ前進 | ★村上健志 (フルーツポンチ) | 白鳥の波紋や御御籤をひらく | はくちょうのはもんやおみくじをひらく |
→編集後記
→タレント・勝俣州和は4度目の挑戦。初回に才能アリを獲得しているが前回は「あと五人呻く幼き牛蛙」屈辱の10点と着実に実力が下がっていると紹介。
浜田 下がってんねや。
勝俣 前回10点ですよ。僕ホントに自信なくしたんですよ。
浜田 10点はなかなかですよ。
勝俣 今回見てください!
浜田 あら。
勝俣 分かりました。俳句が!
浜田 あ、そう。自信ある?
勝俣 前回は人の心を冷たくしましたけど、温かくします(笑)。
***
→女優・岡田結実(おかだゆい)は初登場の21歳。父はますだおかだの岡田圭右。連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に出演。
浜田 俳句ですけど。
岡田 小学生以来書いたことなくて、でもその時の初々しい心で作ったので…。
浜田 10点はないよね?
岡田 10点は絶対ないと思います。
勝俣 あのね、俳句をまだナメてますね(笑)。
岡田 え~!うそ~!
勝俣 とてつもない穴に落ちる…。
浜田 うるさいな!(笑)
岡田 やる前から。
浜田 10点の人間が…(笑)。
***
→蛙亭・イワクラは初登場。2012年に相方・中野周平(水彩画参加)とコンビを結成。キングオブコント2021のファイナリストとなった男女コンビ。コロナ禍にもかかわらず、仕事が10倍増えた注目のブレイク芸人と紹介。
イワクラ (指で金のポーズを見せる)
浜田 いや、アハハ。俳句はどうなんですか?
イワクラ ネタを書いてる方でして、ここでちょっと才能ナシとかになっちゃいますとコイツ(→中野)にナメられるんで(笑)。
中野 ナメはしないですけど、あんまりデカい顔されるのも…なくなりますよね(笑)。まあでも、頑張っていただいて。
浜田 そら、せやね。
イワクラ 絶対才能アリ取りたいです。
浜田 はい、分かりました。
***
→落語家・瀧川鯉斗は3度目の挑戦。元暴走族総長だが、噺家・バイクを題材とした句で2回連続で才能アリを獲得している。
浜田 どうですか?
瀧川 あ、でも今回も自信ありますね。
浜田 あ、ホント?
瀧川 ちょっとしゃれてる季語を入れたんで。
浜田 あら。
勝俣 元暴走族ということで、ちょっと温かい句だとより温かく感じるみたいな(笑)。
浜田 分かるよ。
勝俣 でしょ?
★ランキングシートの分布は才能アリが1名、凡人2名、才能ナシ1名
勝俣 よし!
***
浜田 まあ凡人2人いますからね、2位。いきます!
▼凡人2位は蛙亭・イワクラ
イワクラ あ~!
中野 まあまあ2位。
浜田 まあでも2位よ、2位。才能ナシじゃなかったから。
***
玉巻アナ 2人目なんですが、どこを見ましょうか。
浜田 これはね~、最下位。
▼才能ナシ最下位は岡田結実
岡田 え~!
勝俣 よ~し!
浜田 10点!
岡田 や~だ~。
勝俣 最低の10点(笑)。
岡田 え~!
村上名人 うわっ、きついな。
中田名人 ハハハ。
***
浜田 さあ、残っているのはこのお二人。
勝俣 待ってました!
浜田 かなり自信満々。
勝俣 はい。2つ作品見させていただいて、結局文字の羅列で終わってるんですよね。
浜田 なるほど。
勝俣 奥行きというか、温度が感じられないという。
岡田 えっ?
浜田 あ~そうですか。
勝俣 もう、熱々の熱々の俳句を用意しました(笑)。
浜田 鯉斗どうですか?
瀧川 僕…まあ才能アリですね。おそらく。
浜田 言ってますけど。
勝俣 まあ、言うのは簡単ですからね。僕は一回底辺を見てきましたから(笑)。底辺からジャンプして戻ってきましたから。
浜田 そらせや。そらせや。さあ、それでは1位を発表しましょう。
▼才能アリ1位は瀧川鯉斗、凡人3位は勝俣州和
勝俣 えっ!?
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ70点 瀧川鯉斗『肉まんや ヘルメット脱ぎ 手套脱ぎ』
【本人談】ツーリングに行った際、体を温める肉まんを食べたいと思い、コンビニの前で食べるという描写。
夏井先生 普通は
季語があって「や」とする型が基本。
下五に
季語「手套」を入れてくるという少し難しい型に挑戦してこなしているのは褒めたい。
これで成立はしているが、
作者が若いためさらに若さと勢いを乗っけることはできる。
このリズムだと
おじさんかおばさんが、50ccのバイクにでも乗って「よっこらしょ」と脱いでいる感じがしないでもない。
ちょっとした略語になるが「
メット」とすれば若い人が使う言葉になる。
「メット脱ぎ手套脱ぎ」で勢いが出る。「肉まん
ガブリ」。これで若さと勢いが少し出る。
俳句はさじ加減で、年寄りの動きも若い人の動きも表現できる。こういう小さな工夫ができるようになると結構いける。
本人 繊細なところが非常に勉強になりました。
浜田 ここ何回か調子よいからね、特待生狙えそうですからね。
玉巻アナ 3回目の才能アリですからね。
浜田 3回目?先生、3回目言うてますけど、もうちょっと様子見ますか?
夏井先生 ええっとね、
バイク以外の(俳句)1回見して。本人 あ~。
浜田 なるほど。
本人 分かりました。
浜田 分かりました。才能アリ1位おめでとうございます。
本人 ありがとうございます。
添削後
『メット脱ぎ 手套脱ぎ 肉まんガブリ』
冬の生活季語「手套」とバイクから降り肉まんを食べる光景を取り合わせた一句。上五に季語以外の「や」+12音の季語の入ったフレーズの展開は多少こなれていないとできませんが、「手袋」の傍題「手套」によって「ヘルメット」というバイク用語との質量が釣り合ったのがミソでしょうか。「脱ぎ」で韻を踏み、上五で肉まんを食べる光景は大いに想像できます。時系列を重視した添削例も捨てがたいですが、季語を際立たせるならば上五か下五に置きたいと感じる所です。前回もバイク句でしたが、初回は噺家の稽古を詠んだ一句。前回・今回とさらに勢いを出すよう添削されているため、バイク句以外のみならず、さらに勝負してという先生のメッセージを感じました。
◆2位
凡人55点 イワクラ(蛙亭)『かぶりつき 天を仰げば 冬の月』【本人談】肉まんを食べるのは冬の夜が多い。コンビニで買ってドアが開いて外でその場で食べる。「あ、うまっ」ってなったら上を見てしまう。見える冬の月と、肉まんにかぶりついたら月みたいに見えるのを合わせた。
中野 これは凡人ですね(笑)。
本人 うそっ!お前!
浜田 お前が言うんや。
志らく名人 これは
「かぶりつき」が何にかぶりついているから分かんないから、ちゃんと「肉まん」を入れて、「冬の月」といえば
「天を仰げば」って言わなくたって冬の月は上にあるから、「肉まんをかぶりつき冬の月」でも十分表現できる。
浜田 村上さんもそうですか?
村上名人 やっぱ、何にかぶりついているか言わないのと、やっぱり「冬の月」といえば「天を仰げば」って言わなくても上にあるのでそれを言った方がいいと思います。
志らく名人 同じ。
浜田 言うたやん!(笑) そのまんま志らくはんが今言うたやん!
志らく名人 言った通り。
村上名人 「あ、言われた!」っと思って(笑)。
夏井先生 おっしゃる通り。それを見てすぐわかるから名人の席にいる。
浜田 そういうことですね。
夏井先生 ただ、
何かにかぶりついて最後に「冬の月」が出てくると、この季語の力によって寂しさ・切なさ・孤独が表現され、「冬の月ってこんなに美しかったんだな」という思いは書けているため、いいところまでは来ている。
何にかぶりついたのか書くだけ。「かぶりつ
く」で繋げて「
肉まん」とする。
仰ぐ必要はない。「天
に冬の月」と。「に」という助詞だけで、天に冬の月があって仰いでいるということが全部言える。
このメカニズムが分かるようになれば、何とかこの人はいける。
本人 こんな…凄い速度で直されるんですか?(笑)
浜田 いやそう。そら、そうですよ。次回もしあれば頑張って…。
本人 勉強になります。
添削後
『かぶりつく 肉まん天に 冬の月』
冬の天文「冬の月」と肉まんを食べて天を仰ぐ光景を意図した一句。兼題写真がないと意味が取れないタイプの失敗で、名人らが指摘した2点は見慣れた視聴者なら気づきたい点です。「~ば」の仮定形から季語へ繋がる展開は散文的ですが、冬の屋外のため温かい食べ物にかぶりついていると想像できそうです。添削で「天に」は不要ではないかとのご意見もありましたが、冬の満月が天頂付近まで上ることを強調するため、捨て石の効果が発揮される可能性があります。
◆3位
凡人50点 勝俣州和『肉まんを 分けあう夫婦 冬日向』【本人談】公園に行った時、ベンチに老夫婦が座っていたが、1個の肉まんを分け合って食べていた。寄り添いながら食べているのが、付き合い立ての恋人のような…いいでしょう?
志らく名人 これはね、
いい夫婦の日のキャッチフレーズです(笑)。
夏井先生 作者が分かって、前回の牛蛙一家(の句)からしたら随分の進歩(笑)。
本人 ありがとうございます。
夏井先生 ただ、この句は
「夫婦」が勿体ない。才能アリに行くためには、
「夫婦」を敢えて語らない方が作品としてグンと得をする。「肉まんを分けあう」から「冬日向」にいく。公園なら「
ベンチ」はどうか?「冬日向のベンチ」なら、ベンチに座って分け合っているのは誰か?と読み手が色々と想像する。
夫婦かもしれない。カップルかもしれない。自分たちかもしれない。小学生かもしれない。そういう膨らみを持たせるのは敢えて書かない。これもコツ。
本人 先生の家に合宿させてください(笑)。もっと知りたいです、俳句を!
添削後
『肉まんを分けあう 冬日向のベンチ』
冬の天文「冬日」の傍題「冬日向」と老夫婦の一途な場面を切り取った一句。形は一応できており、季語の斡旋も間違っていませんが、やはり平凡でしょうか。アンミカさんが詠んだ「夫婦して取り合ふ納豆ほお緩む」、川島明さんが詠んだ「イヤホン分け笑う兄弟夜半の秋」と発想の方向性が似ており、先生としては吐いて捨てるほど見慣れている可能性も。先生に下宿を懇願するほど意気揚々のご本人ですが、オリジナリティのある表現力を磨かないと本人が目指す特待生は難しそうです。
◆最下位
才能ナシ10点 岡田結実『冬の星 あれはなんだろ 肉まんだ』
一同 (笑)
本人 なんでダメなの?
【本人談】結構行儀悪いが、肉まんを買うと食べ歩きしてしまう。食べて上を見上げると変わった星座が沢山ある。「かみのけ座」とか。それなら「肉まん座」もあっていいかと思って書いた。
夏井先生 これは字面を見た時に、
中七の「あれ」が良く分からない。コンビニで何かを買おうとして「肉まん」を知らずに「あれはなんだろ?」と言っている様子か。
誰かが食べているものを遠目に「あれはなんだろ?」と友人に聞いているのか。
この
「あれ」はある程度の距離があるため、ひょっとしたら道に(肉まんが)落ちていて「あれは何?」と言っているのか?
本人 違う違う。
浜田 拾い食いや。
夏井先生 そうそう。
本人 肉まん拾い食いしてたらヤバイですよ。
夏井先生 だって、
アンタが書いてんだからしょうがないでしょうよ。
「あれはなんだろ肉まんだ」の謎を色々と想像していた。今、本人の話を聞いてさらにビックリした。
本人 えっ?
夏井先生 肉まん座?本人 えっ、あの~「冬の星」の星にかけて、星を見てるふうで…。
夏井先生 あーもういい!(笑)直します!本人 厳しい…。
夏井先生 直しましょう。
これは
「肉まん」から来た方が良い。最後に星座が見えないとしょうがない。本人 ありがとうございます。
夏井先生 肉まんは比喩となる。
「肉まん
の」。思いついたけど、くだらないかもしれない。肉まんの形なんでしょ?
本人 はい。
夏井先生 「
かたちの冬の星座」。星座と書かないといけない。
「星座がどこかにあったらいいな」と夢を膨らませたと。
最後「
どこ」とかわい子ぶってみる。
浜田 なるほど。
本人 え~、でもまだ伸びしろがあるってことですよね?
浜田 先生、伸びしろあります?
夏井先生 さぁ?(笑)
村上名人 諦めちゃってるよ~。
本人 え~、うそ~。
浜田 分かりました。
添削後
『肉まんの かたちの冬の 星座どこ』
天文の季語「冬の星」と疑問形の台詞を取り合わせたチャーミングを意図した一句。三段切れは問題ですが、やや距離のある指示語「あれ」が何を指すかで買い食いなど色々な読みが出ます。中七の謎かけを生かすなら下五で答えを明かすのは御法度となり、描写に徹すべき部分です。個人的にはご本人の解釈に2点問題があり、"星座が肉まんのように見える"意はこの取り合わせでは伝わりません。さらに、"肉まん座があったらよい"ですが、星座の制定の歴史を考えればあり得ない話です。梅沢御大がいれば確実に怒られただけに、真面目に向き合ってほしいものです。
★特待生昇格試験★→名人4段・
立川志らくは冬麗戦で14名中名人として最下位の12位。句が発表されない屈辱のランク外だった。
志らく名人 私はね、優勝するつもりでいたの。コメントまで考えていたの(笑)。それがランク外だから、もうその落ち込み方は半端じゃなかった(笑)。
◆『冬の路地裏に 昭和が捨ててある』 立川志らく【本人談】昔は今のようなSDGsなど全く関係なく、平気で路地とか空き地とか色んなとこに、ゴミを捨てていた。ふと、コンビニの脇にある空き地を見たらば、色んなゴミが捨ててあった。その中に肉まんの紙があった。あ~、こういうところに昭和が残っているんだなと思ってそのまま詠んだ。
★評価ポイント中七「昭和」の一語の是非
■査定結果名人5段へ
1ランク昇格理由:
時代と物が見える!勝俣 お~凄い。
夏井先生 この句の場合は、あえて
「昭和」で、どういう物が捨ててあるということを具体的に書かないことで一句の奥行きが膨らんでいる。そういう効果は十分ある。
昭和という時代を知っている人たちの心の中に、
捨てられていた物、自分自身が捨ててきた物、そういう物が色々と思い浮かんでくる。読んだ人たちの中に、色んな昭和を思い起こさせる力がある。
最後
「捨ててある」という口語の呟きのような言い方も、そういう意味では効果があったと思う。直しは要らない。
浜田 直しなしでございます、素晴らしい。かっちゃんがずっと真剣に聞いてますね。
勝俣 そうそう。だって、僕はあちら側(→名人席)へ行きたいんですから(笑)。
添削なし
季語「冬」と路地裏、昭和を取り合わせた破調の一句。中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」のような時間を惜しむ視点に落語家らしい発想力があり、飄々な語り口調です。昭和を生きていた30代以上の方にとって、思い浮かべるものはそれぞれ違います。ビールを飲む人物が描かれたポップなポスターが剝き出しとなって貼られているのかもしれません。殺風景な路地裏に忘れ去られた何かを想起させる力があります。気になる点は下五で「捨つ」など色々表現はできそうですが、動作ではなく状態を淡々と口語で語る点に虚無感があり、作者の意図通り成功したといえそうです。
→名人5段・
中田喜子は喜怒哀楽マダム。冬麗戦は出場すら叶わなかった。
中田名人 朝4時から俳句を作ってました。
勝俣 えっ?
中田名人 そのぐらい集中して作りました。
浜田 なるほど。
◆『肉饅どさどさ 黄さんの手 真つ赤』 中田喜子【本人談】本場で肉饅頭とか饅頭(まんとう)を作っているさま。どんどん作って、蒸し上がったものがドサっと来る。それを売り子さんがドンドン(包装に)詰めてる。その売り子さんの手が真っ赤でやけどしているんじゃないかというぐらい。
★評価ポイント固有名詞「黄さん」を選んだ是非
本人 (神妙な顔つきに)
■査定結果名人6段へ
1ランク昇格理由:
1粒で2度美味しい!本人 (立ち上がって)ア~ハハハッ。うれしい!ありがとうございます。
夏井先生 「肉まん」を季語として載せている歳時記はまだまだ少ないという位置づけ。
ただ、全部読んだ時に、季語であるかどうかを超えた
現場証明・臨場感が非常にあるため、あまり気にしなくてよいかなと作品の価値としては思う。
「肉まん」が季語ではないですねと言われても
「無季です」で開き直っても十分イケる作品になっていると思う。
問題の固有名詞「
黄さん」。ここにあえて固有名詞を入れることで何が得するか。
これはまさに
一粒で二度美味しいくらい得。
中国の方、
中華街ではないか。そういうのが見えてくる。
もう1つは単純な視覚的効果。
「黄」と「赤」の字があるため、意味ではなく脳が勝手に色彩をイメージし、明るい中華街の印象の色を脳が勝手に思う効果もある。
どんな名前でも良かったとすれば、「黄さん」を選んだのは良い判断だった。直しは要らない。
本人 ありがとうございます。
浜田 直しなしでございます。いや~お二人、凄い。(カメラマンに)え…大、大丈夫? 立ち上がって喜んだ顔撮れてる?(笑) まさか立ち上がると思へんから~(笑)。
添削なし
「肉まん」とそれを作る人物の手の色を描写した破調の一句。『季寄せ』は「肉饅頭」の形で冬の季語となります。無季ながら季感が十分あるのはリアリティが強いため。ご指摘の通り、「どさどさ」が五感を刺激するオノマトペで、蒸す動作が否応なく伝わります。「黄さん」の人物で中華街を思わせますが、最後の手の描写で温度感や皮膚感も伝わり、相乗効果で映像がイメージされます。最後の「真つ赤」は自筆では「つ」の大小は判別できませんが、題字は旧仮名遣いのため色を誇張する視覚的効果はありそうです。中田さんはNHK俳句では綺麗な定型句が多いですが、挑戦句は当番組に出して使い分けするプロ意識があるのでしょう。
★永世名人への道★
→名人10段・村上健志(フルーツポンチ)は前回査定は前進で星2つ。冬麗戦は9位に沈んだ。
村上名人 今回、僕最高段位なんですよ。梅沢さんがいないってなかなかないじゃないですか。
浜田 あ、確かに。
村上名人 俺、逃げてると思いますよ(笑)。
浜田 だから今の間にう~っと上がっとけば。
村上名人 いや今チャンスですね。伸ばしたいと思います。
浜田 分かりました。
***
村上名人 今回の俳句はね、ちょっと…。なんか、魔法みたいなことやっちゃってるんですよ。ちょっと難しいと思うんですけど。
浜田 はい。
村上名人 好きになろうとしてみてください(笑)。
◆『白鳥の波紋や 御御籤をひらく』 村上健志(フルーツポンチ)本人 肉まんを見てたら白鳥に見えて来たんですね。
浜田 ほう。
本人 この真っ白なフワフワ感、白鳥だ~と思って。
浜田 ハハハ~!
本人 肉まんを見てたら。ただの波紋じゃなくて白鳥の周りにある波紋はすげー美しいじゃないですか。それはそれです。まず一回。皆さん、白鳥の波紋の映像をね、その美しさを思い出して下さい。そして、おみくじを開く時のこのゆっくり加減、祈りとか。その思ったこの「うわ~」をドンと合わせると、
魔法かかんないっすか?(笑)
浜田 イヤイヤイヤ…。
本人 説明するってのは、すごく今までにやってることとは日常のあるあるの景色では全くないんで。
浜田 そうやな。
本人 一枚の絵での中でもよいけど、でもねこれがいわゆる取り合わせというものですが…。
浜田 なるほどね。
★評価ポイント句またがりの「や」を選んだ是非
本人 あ、でもうん。あっ、大丈夫…。
浜田 「白鳥」関係ないんかな?どうなんやろ。
***
本人 (「後退か?」の台詞後)やめて!
■査定結果名人10段★3へ
1つ前進理由:
鮮やかな映像展開!本人 うお~!よっしゃー!
中田名人 凄い。
本人 「白鳥の波紋や御御籤をひらく~!」
浜田 うるさい!
本人 嬉しい。
夏井先生 一つだけ謎だったのが、まさに
兼題写真の「肉まん」からなぜ白鳥にいったのかが大きな謎だった。
まさか肉まん見て白鳥みたいだとは。もう今日の驚きはこれが一番。でも良い句であることは間違いない。
「白鳥の波紋」。「や」という切れ字はすぐ上の言葉を詠嘆する。"
なんと美しい波紋だろう"。
カットが切り替わった瞬間、おみくじのアップになる。
まさに今、
おみくじをゆっくり開くというささやかな時間が切り取られている。「や」によって
「白鳥」という季語と「御御籤」という関係ないものが取り合わせられて、"魔法"が…。"魔法"が…。
魔法が生まれると。
私はこれを魔法と言わず、
言葉と言葉が火花を散らすという言い方をして説明したりするが、
本当の季語を信じるというのはこういう句のことだと。
大変うれしく思う。直しは要らない。
本人 勝った~。
浜田 今日の名人の皆さん、素晴らしい。
勝俣 凄い。
村上名人 いや、ホントだから梅沢さんいたらきっとシュレッダーなんでね(笑)。それがないと寂しいですけど。
添削なし
村上さんが切れ字「や」を用いたのは13句目ですが、中七の途中に入れる二物衝撃は初。季語「白鳥」と神社でのおみくじを開く光景をぶつけましたが、この句の良さをすぐに理解できた方は恐らく詩人です。「白鳥の波紋」の「の」の用法は"白鳥の周囲の"、"白鳥によって出来る波紋"のような所属や起因の用法でしょうか。「白鳥」そのものではなく「波紋」に着地する点も含めて大胆な使い方ですが、読み手に不自然なく伝えるのは見事です。「や」でカットが切り替わり、「御御籤をひらく」。御神籤ではない表記を用いて「御」を重ねたところに"ゆっくり"との意図があるのでしょう。確かに肉まんから白鳥を思い浮かべる可能性はありますが、ご指摘の通り「波紋」から白鳥が羽を広げるしぐさに加え、おみくじを開く動作の映像が重なり、さらに白の印象が強く重なります。白鳥がいる神社はどこかというリアリティを求められれば逆に厳しくみられる可能性はありますが、ある種のインスピレーションをどう評価するかという点で、前回の前進句「冴ゆる夜やショウウインドウに黄の鞄」と同様な取り合わせの妙味を感じました。
★次回2/3の兼題は「最終電車の表示」。駅構内にある電光掲示板の行先表示の写真です。
今年初の特待生が誕生した水彩画査定の後半。兼題が「肉まん」と聞いた際、過去に「秋高し肉まんの湯気食らう犬」と詠んだ大久保さんの才能アリ句を思い出しますが、「肉まん」だけで季語とするのは難しそう。「肉饅頭」「蒸饅頭」「酒饅頭」を季語とする歳時記はありました。
今回は1位が「手套」を季語とし、2位以下は「冬」を入れた天文季語が中心。肉まんを買う・食べるというシチュエーションを考えた際、何を書けば才能アリを目指せるか考えないといけませんが、多作他捨がやはり基本に。名人は全員破調でそれぞれに味わいがありましたが、リズム感が異なるだけにどのように評価するかも難しくなります。特に村上名人の白鳥句は二物衝撃の光景が離れているともいえますし、リアリティが薄い代わりにインスピレーションが強いタイプの句。村上さんはこのような形で攻めれば永世名人が近いかもしれません。
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