(2022年版)
プレバト!!の俳句コーナーでお馴染みの
夏井先生 の
YouTube投稿動画 の内容を紹介するページです。
夏井いつき俳句チャンネルに動画が投稿されるたびに、更新を予定しています。
動画の更新は
毎週木曜夜8時・日曜夜8時の週2回 (8月・11月・12月は一部週1回更新)です。
当ブログ記事更新:2023年1月3日 →関連まとめ記事(
2020年 /
2021年 /●/
2023年 )
→ページ下部へ (リンクは各ページに飛びます) ◆夏井いつき俳句チャンネル ◆夏井いつき氏のツイッター / インスタグラム ※動画1~71は
2020年版 、動画72~175は
2021年版 、動画268以降は
2023年版 記事をご覧下さい。
※番号クリックでページ内ジャンプします。
→ページ下部へ [176] 1/2 【競馬を研究する中学生】競馬のKくんと語る中山金杯の句 [177] 1/6 【第二回尻二字三角パス発表回】次回のゼロ番句は「んぼ」から!? [178] 1/9 【NHK プロフェッショナル仕事の流儀】皆さんからの嬉しいお便りを紹介します! [179] * 1/13* 【となりのくみいんさん】突然訪れてきた組員さんをゲストにお迎え! [180] 1/16 【俳句鑑賞の授業】志らくさんに紹介したい!新刊が出来ました! [181] 1/20 【第三回尻二字三角パス】組長の「尻二字攻撃」に正人が苦戦! [182] 1/23 【第三回尻二字三角パス後編】正人の反撃!組長の悲しい過去を掘り出す...!? [183] 1/27 【夏井いつき50代の句集】「伊月集 鶴」がついに完成しました! [M2] 1/30 松山市主催「いい、つばきの日」記念イベント第2回夏井いつきのリモート句会ライブ [184] 1/30 【人生相談】親がボケてきました。傷つけずに伝える方法はないでしょうか? [185] 2/3 【第6回おしゃべり俳句】『なるほど!』組長をハッとさせた子どもの気付きとは? [186] 2/6 【プロフェッショナルを見て一句】寄せられた俳句と番組映像と共に振り返る! [187] 2/10 【プロフェッショナルを見て一句】特選五句を紹介します! [188] 2/13 【人生相談】恋人に「1人の時間が欲しい」と言われた。私は嫌われていますか? [189] 2/17 【音便シリーズ】撥音便を使えば、句の「歯切れ」が良くなる! [190] 2/20 【音便シリーズ】「促音便」を使って句を力強くしてみましょう [191] 2/24 【春めけり】この句に間違った文法はありますか? [MS] 2/26 松山市主催「俳句ポスト365」リニューアル記念 SDGsオンライン句会ライブ [192] 2/27 【りかさみしい】助動詞「り」学校で学んだ覚え方が違います [193] 3/3 【SDGs句会ライブ】俳句を通してSDGsについて考える [194] 3/6 【いい、つばきの日】句会ライブの様子が一面に! [195] 3/10 【人生相談】勢いで人生を決めるのはどうでしょうか? [196] 3/13 【人生相談スピンオフ】正人の結婚後の生活はどうなの? [197] 3/17 【 天才的な凡人句】これ以上の凡人句ある!?『プレバト!!』総合演出 水野さんの一句 [198] 3/20 【人生相談】「恵まれているのに、突然死にたくなる」そんなあなたにこの一句 [199] 3/24 【人生相談スピンオフ】鬱王に名前をつけてみる [200] 3/27 【俳句で旅する】江戸期から3歳児の俳句までカバーする新刊 プレゼントにも最適 [201] 3/31 【伊月庵ベンチトーク】ビールを飲むために作られたベンチ? [202] 4/3 【第7回おしゃべり俳句】2歳児のナンパが可愛い [203] 4/7 【おウチde俳句くらぶ】作品集が完成しました! [204] 4/10 【夏井いつきの人生観】言ってた企画をやってない...? [205] 4/14 【伊月庵ベンチトーク】組長が何度も感動する作品とは? [206] 4/17 【伊月庵ベンチトーク】組長が人生で1番衝撃を受けた映画とは... [207] 4/21 【プレバト!!】東国原さんベスト3句はどれ?組長の実の妹と語る! 当俳句ブログ紹介動画 [208] 4/24 夏井いつきが息子に作っていたお弁当がちょっと... [209] 4/28 【山頭火の世界】新企画『ベンチで山頭火』始まります [210] 5/1 【尻二字三角パス】前回の尻二字から作った作品を自慢したい [211] 5/5 【ベンチで山頭火】句集『草木塔』から名句を100句選びます [212] 5/8 【尻二字三角パス】第4回のゼロ番句候補を発表! [213] 5/12 【ベンチで山頭火】夏井いつきが山頭火の句に辛口コメント? 句集『草木塔』から100句選します [214] 5/15 【第4回尻ニ字三角パス】組長の妹が参戦!最初の尻二字は『ん○』! [215] 5/19 【第4回尻二字三角パス】後半戦!組長は尻二字「チェロ」にどう返す? [216] 5/22 【NHK学園 秋の誌上俳句大会】正人が選者をします!他3人の選者に正人が萎縮? [217] 5/26 【一句一遊】兼題『未央柳』読み方は「びようやなぎ」「びょうやなぎ」? [218] 5/29 【組長ご立腹?】「句会ライブの何人がサクラですか?」 [219] 6/2 【正人のお礼】雑誌『俳句四季』で4月の名句を紹介させて頂きました [220] 6/5 【久しぶりの外ロケ】宝厳寺にやって来ました! [221] 6/9 【第3回ベンチで山頭火】種田山頭火の句を査定していきます [222] 6/12 【ひみつジャナイ基地】聞いたことあるけど、どんな場所? [223] 6/16 【添削の依頼】「●●はもう言わないで下さい」組長が思うこと [224] 6/19 【ご報告】夏井いつきの句碑が出来ました! [225] 6/23 【夏井いつきが推薦】新歳時記を紹介します [226] 6/26 【誤変換】このチャンネルで見かける字幕ミスについて [227] 6/30 【いい詩と出会いました】『あとから来る者のために』 [228] 7/3 【となりのくみいんさん】第2回ゲストは竜胆さん! [229] 7/7 【伊月庵に新しいデッキ】正人も知らない伊月庵の裏話も [230] 7/10 【あまひやな一句】キシリクリスタル俳句コンテスト入賞句を紹介 [231] 7/14 【選句について】結局は選者の好みでは?この意見に組長が... [232] 7/17 【姉妹の語らい】最近アメリカに行った?お互いの近況について [233] 7/21 【思い出の品】『組長が送ったゆかりのある品』日本放送協会放送文化賞 [234] 7/24 【姉妹の語らい】視聴者から送られてきた謎の缶について... [235] 7/28 【この句のどこが名句?】『古池や蛙飛びこむ水のおと』あなたは何色を思い浮かべますか? [236] 7/31 【申し訳ない母親だった】この本を読んで募った子どもへの想い [237] 8/4 【俳句甲子園】全審査員を納得させた高校生の俳句 [238] 8/11 【自由律しか作らない高校生】自由律で俳句甲子園の最優秀句 [239] 8/18 【おしゃべり俳句】子どもの可愛い気づきに癒されてください [240] 8/25 【作ってみませんか?】個人のミニ句集を作る人が増えています [241] 9/1 【尻二字三角パス】「のひ」で始める優秀句 [242] 9/4 【月の歳時記①】『秋の月』で百句チャレンジしてみませんか? [243] 9/8 【月の歳時記②】違いが分かりますか?2つの三日月、同じではありません [244] 9/11 【月の歳時記③】月見の認識あっていますか? [245] 9/15 【第5回尻二字三角パス①】実の妹のローゼン千津さんが今回もゲスト [246] 9/18 【第5回尻二字三角パス②】実の息子がアシスタントになったワケ [247] 9/22 【第5回尻二字三角パス③】『が●』から始まる俳句をお寄せください [248] 9/25 【夏井いつき物語】連続テレビ小説についてラジオで公言? [249] 9/29 【俳句甲子園】3年ぶりの開催に組長が涙? [250] 10/2 【俳句甲子園】下五で組長を魅了した高校生の俳句 [251] 10/6 【俳句甲子園】大会を通して組長が高校生に伝えたいこと [252] 10/9 【ローランド杯】ROLANDが決めたテーマは一体...? [253] 10/13 【令和相聞歌】恋多き妹の愛の句は...? [254] 10/16 【悩み】俳句以外の回が人気なのですが... [255] 10/20 【2023年カレンダー完成】写真俳句からキスマイの話に? [256] 10/23 【おしゃべり俳句】子どもが実物のパンダを見たときの気づき [257] 10/27 【おしゃべり俳句ベスト5】第9回のベスト5の中に人生の応援句がありました [258] 10/30 【AI×俳句①】俳句を元にAIが生成した画像 [259] 11/3 【AI×俳句②】AIが作る画像が俳句に失礼? [260] 11/10 【投句募集】筆ぐるめ俳句大賞2023 兼題「年賀状に載せたい一句」 [261] 11/13 【AI×俳句③】『AIの気持ちが分かってきた』AIが作る画像を予想 [262] 11/20 【AI×俳句④】『王国の蝶』の一句からAIが作った画像が... [263] 11/27 【謝罪】北山くん、ごめんね。 [264] 12/4 【添削】プレバト!!ではすごい考えて添削をしている? [265] 12/11 【穴場の投句先】競争率の低いところに投句したい [266] 12/18 【尻二字三角パス】皆さんから届いた『がさ』で始まる俳句 [267] 12/25 【第6回尻二字三角パス①】また正人に尻二字「ん◯」が当たります
(タイトルクリックで各YouTubeページに飛びます。) [176] 【競馬を研究する中学生】競馬のKくんと語る中山金杯の句 <2022/1/2公開> 今回は初めて一般ゲストが声のみで参加。縦長のホワイトボードが後ろに、本の上にトトロ人形 が代役で置かれています。中学2年生で自主的に競馬について研究・研鑽を積んでいる という【競馬のKくん 】として紹介されます(実際はZoomのような中継画面でお話しされたようです)。 早速、中学生で競馬を自主的に研究しようと思った理由を先生は質問。競馬のKくん曰く「ここ2年程の新型コロナの巣ごもりで、良い趣味を探したあげく見つけた」とのこと。「同じコース・距離であっても条件の微妙な違いで1着になる馬は変わり、小さな確率で結果が生まれることに興味を持った 」そうです。一発勝負で先が読めないため、競馬に面白さがある点に家藤さんも共感します。勿論、中学生が馬券を買うことはできません(※勝馬投票券は20歳以上で購入可)が、予想が当たることはあるそう。今後のために研究を深めておきたいようで、和気藹々と先生方も語ります。 実は昨年、中山金杯・有馬記念を季語にしよう というJRA中山競馬場からの依頼を受け、中山競馬俳句大賞の選者を務めていた先生。競馬場には大学の先輩に1度だけ連れて行かれたようで、あまり競馬に詳しくはないとのこと。「575でカガク!」も自然科学の専門家に聞くと知らない事実が出てきて句が輝くことがあると述べ、今回は「有識者」として競馬に詳しい競馬のKくんに先生が選んだ俳句がどうなのか?と聞いてみる企画 のようです。 ①最優秀句は【可憐花童 】氏の「金杯は荒れるか高き霜柱 」。「金杯」を季語にしたい運動を再度先生は述べますが、この句の季語は「霜柱」。前半の台詞の後、季語へと目線が行く秀句です。この句の感想を問われた競馬のKくんは、中山金杯のレースの性質を最初に述べます。「斤量(きんりょう)」(競走馬がレース出走時に背負う負担重量)が馬によって数kgも異なるハンディキャップのレースのため、結果が荒れやすい そうです。先生は無差別級のレースだと理解します。先生は、"霜柱が高いから今日は荒れるな"と単純に思ったと述べます。競馬のKくん曰く「京都金杯も同じハンディキャップ戦(で荒れやすい)」と補足します。「競馬場によっての適正も変化する」そう。「東京・中京・新潟競馬場は左回りだが、その他の競馬場は右回り」という情報も告げられ、感心しっぱなしのお二方。専門的情報を吸収する先生は、「575でカガク!」に近い感覚になってきた と興奮気味に述べます。 ②優秀句。【多喰身・デラックス 】氏の「パドックの湯気立つ馬糞にも淑気 」。季語「淑気(しゅくき)」は正月のめでたく和やかな気配を指します。競馬のKくん曰く「パドックで馬糞をする光景はそこまで珍しくない。競馬用語で馬糞は『ボロ』といい、馬は緊張しているようだが、レースに影響はさほどない」との解説。「寒い中に落とした馬糞の湯気から、やる気がみなぎっている様子を詠んだ句ではないか 」と鑑賞します。緊張するとウンチをしやすいのか? との先生の質問に「人間もそうだ 」と落ち着いて返答し、逆に先生が謝ることに。パドックは案外馬糞だらけのようですが、馬糞の臭いがする中のでの淑気の面白さに触れるお二方です。 ③佳作。【藤本花をり 】氏の「有馬記念煽るサテンの勝負服 」。「サテン」は表面がツルツルした肌触りが特徴の生地で騎手も身に着けています。競馬のKくん曰く「『エアロタイプ』が現在メジャーな勝負服で、『サテンタイプ』や『メッシュタイプ』もある」とのこと。「エアロタイプ」は体にフィットする素材、「サテンタイプ」は古くから使われる歴史があり、「メッシュタイプ」は軽くて暑さを軽減する夏用で、風の抵抗も受けにくいの素材とのこと。家藤さんは、ジョッキーの暑さの体感がレースの行方に影響するのか? と質問。「全国的に暑くなってはいるが、札幌競馬場は冬の涼しさがジョッキーに人気で、小倉競馬場は暖かめな感じで、影響があるのではないか 」と返答します。家藤さんは句の「煽る」が"ジョッキーが観客を煽る"の意味にとったそうですが、先生は"ジョッキーが追う馬を鞭で煽っている"と解します。その解釈を問われた競馬のKくんは、「色んな見方がある」といたって冷静です。 ④佳作。【いーなん 】氏の「珍名の馬あたたかな冬となる 」。先生は「テイエムオペラオー」という俳号を過去につけていた人を紹介。パクリだから変更してほしいと陳情したそうです。珍名について心当たりを問われた競馬のKくんは、動画収録日に開催されたホープフルステークスという2歳馬のGIレースに出走した「オニャンコポン 」を挙げます。馬名には馬主の心境も関係するそうです。最近のレース(2021/9/18中山・初風ステークス)では「アイアムハヤスギル 」「オヌシナニモノ 」が1・2着で、名を聞いた先生方が爆笑します。「競馬のドラマというのがある」と述べる競馬のKくん。家藤さんは、句の作者がどんな珍名を思って作句されたのかも気になると語り、作者に動画のコメント欄に書き込んでほしいと先生が投げかけます。 ⑤佳作。【府中のトシ 】氏の「演歌『祭り』響く有終の有馬記念 」。「キタサンブラック」引退場面 のことだと家藤さんの読みが的中します。競馬のKくんによると、「『キタサンブラック』のラストランが2017年の有馬記念だった。有馬記念をラストランとする馬は珍しくなく 、2021年も「クロノジェネシス」が該当する。有馬記念での馬主が歌手(=北島三郎 )だったが、演歌の「祭」を歌ったのが記憶に新しい」と述べると、あのサブちゃんが馬主だった事実に仰天する先生。「ブラック」の色についても話が展開されます。まさに有終の美を飾った有馬記念の一場面を切り取った句です。 ⑥佳作。【近江菫花 】氏の「突き棒もて芝叩く裏方に雪 」。何かの作業だというのは想像できるが、「裏方に雪」が上手いと述べる先生。競馬のKくんによると、「馬場管理スタッフ の人がいるが、レース後の馬場から馬が引いた一瞬の間、捲れ上がった芝を突き棒を持って叩いて芝を戻す 役割をする。馬の蹄でえぐられた芝を平坦にする」そう。仮に、「芝1600mに18頭が走った場合、約15000個の穴が開く 」との情報に驚愕するお二方。「次のレースの馬が入場するまでの約10分間に全ての穴を突き棒で埋めないといけない」とのことで、俳人として是非見たいと述べる先生。句では割と丁寧で静かな印象だが、悠長にやっている場合ではないのか? と質問する家藤さん。「マメなケアも必要で、雑に作業すると馬の命にかかわり、穴にはまって骨折すると安楽死させることが多く、細かく丁寧にやる必要がある 」とのこと。スタッフ人数について「東京競馬場では全体で150人ほどいる」そうです。先生は「575でカガク!」以上の衝撃だと述べます。 ⑦佳作。【そまり 】氏の「蜜柑つぶれ中山金杯終わる 」は、競馬のKくん一押しの一句 だそう。「『蜜柑つぶれ』の動作にくやしさがあり、中山金杯は難しいレースで、相当金額を賭けていたのかも 」と鑑賞します。自身のことを「結構時間かけて予想するタイプで、外してしまうと残念を通り越して悔しいと感じる」と述べます。日頃から競馬新聞 などで情報は収集しているよう。競馬新聞にどんな情報が載っているか家藤さんに問われると「10年ほど遡ったレースのデータ、馬の血統、出走表、調教タイム 」と答えます。「調教」は美浦・栗東(りっとう)にあるトレーニングセンターで行われ、ウッドチップコース・坂路コースなどのコースで調教した際に計測したタイムを予想に活用するそうです。夏休みなどの自由研究 としては類を見ないものですが、先生から「中山金杯・有馬記念」を季語にする活動への協力 をせがまれて返答する競馬のKくんです。 最後に、競馬場の句をコメント欄に書いてほしいと呼びかけて動画を締めました。
[177] 【第二回尻二字三角パス発表回】次回のゼロ番句は「んぼ」から!? <2022/1/6公開> 動画[153]で視聴者に募集した第二回尻二字三角パスの入選句発表 です。最後にローゼン千津さんが詠んだ「鱒鮨(ますずし)の割り箸小(ち)さし母の家 」より、「いえ(いへ) 」から始まる俳句を考える企画ですが、コメント欄に多くの書き込みがあったようです。 先生は、課題となったローゼンさんの句を改めて良い句だと述べ、見かけによらず句柄が純和風であるギャップを語ります。先日のNHKで放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」(動画[167])で夏井先生が取り上げられた回でも黒いサングラスで登場していたことを話題に上げます。共著について語った回(動画[154])でローゼンさんご本人がご出演されています。 いよいよ、先生が選出した入選句を紹介します。例によって、句の書かれたポストカードが背景のボードに貼られていきます。 ①【松山のとまと 】氏の「家の亀逃げて秋雨に濡れる 」。前半に馬鹿馬鹿しさがあり、亀を探す作者自身が秋雨に濡れたのか、亀が濡れたのか。亀自身が雨に濡れても全く問題ないという点にも馬鹿馬鹿しさがあり、こんなことを面白がるのが俳人の1つのありようだと褒める先生です。家藤さんも好みの1句ですが、馬鹿馬鹿しさに共感できる視聴者は「今日から俳句作った方が良い」 と先生は忠告します。 ②【まゆバア 】氏の「家猫にさせて十年春深し 」。前半の意味ですが、初めは飼うつもりではない野良猫だったのかと読み解きます。逃げもするが、無理やり家の猫としてさせて十年の経過。先生は「十年」と「春深し」のほのぼのとした取り合わせも良い と述べます。作者は海外(アルゼンチン)にお住まいだというコメントを見逃さない先生は、日本に対する郷愁も感じると補足します。 ③【れいこ 】氏の「家柄が何だというの神の旅 」は一種の悪態俳句でしょうか。家藤さんは、物語の主人公のように作者が憑依していると独特の解釈をします。最後の「神の旅」の季語に格調があり、神が出雲大社に旅立つ月だという印象と被り、ただの悪態に終わらせていない 点を評価する先生。ご縁を結ぶ神様たちが出雲に集うことに、家柄など関係ないという作者の呟きです。 ④【吟硝子工房Singin'Glass 】氏の「家出したと言えない生姜湯はあまい 」。「家出」に関する句が山ほどある中、否定表現の上手さを述べる先生。自分では家出したつもりだが、心を整えて帰ってくる状況にも感じ取られ、夫婦の間柄での家出のような印象で、帰宅すると寒さを温める生姜湯を渡されて泣きそうになっている シチュエーションが想像できると述べます。子どもか大人でも質が変化すると述べる家藤さんは、探してきた付箋付きの資料から作者の俳号を正しく述べます。 ⑤【みづちみわ 】氏の「家出した理由は言えぬまま寒暮 (かんぼ)」。家出した理由が言えないというフレーズは一種の類想ですが、取り上げた理由は最後の二音「んぼ 」。尻二字三角パスでは、最後の二音を難しくしようとするほど作品の質が落ちる ようですが、この句はセーフと笑いながら述べる先生です。コメントに「尻二字は『んぼ』でお願いします!」と堂々と示されていました。 ⑥【彩汀 】氏の「家なき子に傷ある桃の良く匂ふ 」。名作ドラマ『家なき子』ですが、本に傷があるのか、人物の傷があるのか、傷のある桃を子に渡すのか、「傷ある」が上下どちらに波及するのかで複数の解釈を生むのがこの句の企み だと述べる先生。家藤さんは句の質はとても良いと述べます。最後の二音(「おふ」)にも工夫があると補足します。 ⑦【爽花 】氏の「『家なき子』って変なタイトル長き夜 」は正直さに滑稽を感じる 一句。すっかり市民権を得てはいるものの、言われてみれば確かにそうだと述べるお二方です。 ⑧【O Keiiti 】氏の「家藤正人俳句仮面になれぬ夏 」は家藤さんへの挨拶句。「俳句仮面」はNHKで放送された『俳句王国がゆく』で年齢不詳として出演した家藤さんそっくりのキャラクター。作者は小さな謎を知っているのではないか? という先生ですが、何のことだかとお茶を濁す家藤さん。家藤さんを題材にした句も多く寄せられたそうですが、ストレートで良い句だと述べます。 ⑨【石井一草 】氏の「言えた義理なんて抜かすな根深汁(ねぶかじる) 」から以下は「家」ではない句。これも悪態俳句の雰囲気がありますが、最後の「根深汁」で救われる感じがあると述べる先生。「言えた義理ではないけどさ~」と言いながらも言ってくる相手。聞きたくもないことをわざわざ言ってくる 人間の心の闇を感じる一句です。 ⑩【千暁 】氏の「YesNo枕五等の福引す 」に笑うお二方は深堀りを遠慮します。「YesNo(イエス・ノー)枕」は、テレビ番組「新婚さんいらっしゃい! 」で出演した新郎新婦が最後に行うゲームの景品です。 ⑪【Hiro Saeki 】氏の「イエメンの瓦礫静けし小鳥来る 」。「イエメン(共和国)」を発想した点も偉く、「瓦礫」と「小鳥」の取り合わせも上手い と述べる先生。良い句が出てくるとすごく救われた気持ちになると語る家藤さん。 ⑫【羽流 】氏の「イエスより西暦動き出す寒夜 」も最後の二音が「んや 」ということでしょうか。内容は当たり前ですが、最後の二字の着地を考えながら成功している一句だと評す先生。キリスト生誕のクリスマスから、年末の寒さを指す「寒夜」が効いており、季語の必然性がある と家藤さんが語ります。 ⑬【山本先生 】氏の「イエスって言ってしまった秋なんで 」は一見可愛らしくも、最後の二音「んで 」に嫌味のある一句。フレーズの軽い感じが良く、「イエスって俺言ったっけ?あ、秋だし」と嘲笑うかのようなノリが"悪い男" だと、褒めているようで褒めない先生です。 ⑭【mariko k 】氏の「イエローのネイル落とした爪と月 」は色に着目。月にも黄色いものやネイルを落としたような白いものもあるが、そういうイメージを重ねた一句と鑑賞する家藤さん。先生は、黄色いネイルはかなり個性的 な人であり、ネイルを落として爪と月の黄色と重ねる印象的な句だと述べます。 ⑮【のはらうしうし 】氏の「いえいえと婆の言ひあふ菊日和 」。おばさんはすぐに「いえいえ」などと言い合って謙遜する様子で結局「どれ?」と言いたくなる と笑いながら語る先生。季語の「菊日和」が良く、明るい季語だと家藤さんも述べます。 ⑯【南部稔枝 】氏の「いえこれが姉妹だなんて蚯蚓鳴く(みみずなく) 」。謙遜している言っているフレーズなのか、夏井先生の姉妹のような驚愕の反応 なのか。先生宛に送られた句だと推測する家藤さんです。 ⑰【飯村祐知子 】氏の「遺影かがぐる傍聴席のアロハシャツ 」は先生が感心した一句。遺影を掲げている傍聴席にアロハシャツの人物がいる という描写で、ニュース映像か何かを見たのではないかと述べる先生。句の出来もさることながら、尻二字では「シャツ」の二音で次につなげるという点を確認する家藤さんです。 ⑱【高橋寅次 】氏の「胃へカメラ沈む進捗すさまじき 」。「胃液」の句も多かったようですが、「いえ」の発音で「胃へ」と表記するアイデア を褒める先生。音でくくるルールであることを再確認するお二方ですが、「イエロー」は本来英語の発音では違うなどと別視点を議題に。日本語として広く受け取る趣旨のようです。 面白いものから上手いものまで紹介されましたが、次回の「尻二字三角パス」では、この中からランダムに引いたものを"ゼロ番句"として挑戦する ようです。⑤「んぼ」・⑫「んや」は引きたくないと本音が出る家藤さんですが、兼光さんの助言で⑬「んで」も発覚。選ばれた一句からスタートし、再度最後に詠まれた句の二音を視聴者へバトンタッチして考えてもらう システムにするようです。次回は実作編だと予告しました。
[178] 【NHK プロフェッショナル仕事の流儀】皆さんからの嬉しいお便りを紹介します! <2022/1/9公開> 動画[167]で予告されていたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」 (2021年12月7日放送)の夏井先生が紹介された回で、放送後に寄せられたお便りを紹介 します。 南海放送ラジオ「夏井いつきの一句一遊」のお便りコーナーでも反響のお便りが沢山寄せられたそうですが、5局ネット限定でNHKのように全国放送でないのがネックに。何かイベントがあるたびにラジオへ寄せられるのは有り難いものの、1日10分の放送では全てを紹介できず、夏井いつきブログ「いつき組日誌」や夏井&カンパニーの特派員報告などのルートで投稿してほしい と述べる先生です。"「一句一遊」の方が即時性が高いのか?"と推測する家藤さんですが、ブログでも引用できるため、メールなどの文字で投稿してほしいとお願いします。 動画[167]でも紹介された取材ディレクター「下北ペダル(俳号)」氏も反響を知りたいのではないか、と述べてWhy?ポーズをとる先生です。今回は紹介できなかったものを中心に当YouTube動画で紹介するようです。(以下、●:夏井先生、◇:家藤さん)。 ①【みーた 】氏から。「組長!お忙しい方だと思ってましたが、想像の2.5倍くらいの忙しさだった。 どうか十分にご自愛ください」(●どんな想像だろ。2.5倍って。◇もうちょっと、お茶とか飲んでる感じなのでは? ●アハハハ。でも9月がコロナのぶり返しのせいで、色んなものが中止になったりしてたから、少しだけゆとりがあったため取材を受けたっていうのはあった。本当は3.5倍くらい忙しかった かもしれない。◇でも心に届いた意味が分かりました。●何?)「ラジオの所も映ってましたが、(●はい)正人さん、ちょびっとだけ出てましたね。かっこよかったです(◇ありがとうございます)。ラジオ、横並びで収録 されてるんですね」(◇一句一遊のブースが映ってたからね。●でも、ほんの10秒か…。◇短いカットでしたね。●「横並びで録ってるんですね」というのが結構沢山あったけど、あれは事情があるんですよね。◇まさに今、この座っている配置で、いつきさんが読むもの[=資料の紙]を真ん中に置いたら、僕がこのパソコンを膝に乗っけて、誰々さんが読まれたっての記録付けながら俳句のところだけ見て、読むというシステム なんですね。●だから、横並びにしとかないとこれ[=資料]をこうして[向こう側に渡すことを]やってたら、紙の音は入るし瞬時にアレだし、息が合わない。だから正人は[収録で]俳句だけ読んでてラクチンそうに見えるでしょうが、 一応読みながら入力して、何回前[の放送]に読まれたかデータとってんだよね 。◇そうですね。この方が現在何週前に読まれたか毎回チェックしてまして、必ずやっておかないといけない大事な作業なわけでございます。●横並びの謎はそういうことでございます) 次に、「一句一遊」のスタジオが取り上げられた理由として澤村DAZZA 氏の投句の話に。大々的に取り上げられていると思わなかったと驚くお二方。 ②いつき組短歌も俳句も党【音羽凛 】氏から。「心底感動しました。一句一遊の選句シーンにも感動し、ついにラジコプレミアムに入りました 」(●[拍手して]オホホ、素晴らしい。◇素晴らしい。偉い。●ありがとうございます、ホントに。なんかキッカケがいるんやね。◇そうですね。●ラジコプレミアムつながりで、やのひろみちゃんのラジオの月曜日やっている番組…。◇やのひろみの部屋。●正人も月替わりゲストみたいな感じで出てるじゃない?◇時々。●こないだ、下北ペダルさんがゲストで出る っていって、あの時私ら東京にいたので、兼光さんがラジコプレミアムに入った。 ◇アハハハ。素晴らしい。そこにいたら聞ける。●ホテルでパソコン開けて聞いた。リアルタイムで。◇ペダルさんに会ったその直後に。●そうそう。◇面白いですよね。生で会った人の声がラジオから聞こえてくる。●で、物凄いクリアに聞こえるからびっくりした。◇凄いね、今の。●普通のラジオよりクリアだから。◇昔なんかガザガザいってましたからラジオ。あ、DAZZAさんのくだりありました。●どうぞ) ③チームニシキゴイ昼寝部【嶋村らぴ 】氏より「澤村DAZZAさんの"露さら"の"さら"の2音にこれでもかと向き合う組長 。そして組長の思いに答えるDAZZAさんの"さら"。すごいシーンだった」。放送された句は「牛ぶぅふぁと吹きつ露さら喰らいつつ 」。(●「露さら」の「さら」がわからなくて…。◇色々調べてたところから、撮られてたね。●そう。でも、相当調べるよね、わからない言葉があったら。◇調べる。●みんな調べるよね。あの、スタジオに行ってからも調べる よね。前の日の準備の前に。前の日は兼光さんと二人なので、兼光さんに「これ、何ですか?」とか「調べて下さい」とか。そういう風に言うけど。いざ、採ろうとして分からない言葉が出てくるし。◇そうなんだよね。ギリギリまで調べながらやってますけど) ④長野のいつき組【青野るりこ 】氏から「"さら"は長野県でも使う 言葉」。(●お~!◇調べた時は静岡だっけ?●静岡の方言って辞書に書いてあった)「長野では"鍋さら持ってきて"と言われて、鍋とお皿を持っていったら大笑いされた」(●アハハ。鍋"ごと"ってことだよね。◇というエピソードも。●なるほど~、これは静岡・長野あるあるだよね)。 ※ここで、「投句の束が7kgになりますね」「あれで殴られたら死にますね」 など心配するお便りも紹介されます。そして、番組を我が事のように観ていたのではないかと先生自らお便りを紹介します。 ⑤芦屋のぼん【くっちゃんまさのり 】氏から「自分も上手く喋れなかったため、不良生徒の気持ちがわかる。 言葉は大事」。(●これ、番組の前半だったかな。ちょっと覚えてないんだけど。◇そうですね。いつきさんがかつて中学校の教師をしていて ってその辺りのくだりが話されていました。●自分の思っていることを自分の思っている通りに、持っている気持の熱さ・熱量で正しく相手に伝えるということが苦手なばっかりに誤解されたり、自分をキャッチするアンテナの精度が悪くて、相手の言葉を違った受け止め方をしたり 。そういう子たちがこのまま大人になって、社会でどれだけ苦労するか。そういう話をしたところ。"自分も上手く喋れなかった"と思い返してくれてるのが、私が伝えたかったのはそういうことなの?って。それから字が小っちゃいので読んでほしいんですが) ⑥おウチde俳句くらぶ&いつき組【ぴん童子 】氏より。「正座してかぶりつきで観た(●ありがとうございます)。録画もした。短かった。もっと観たかった。無学の私なんぞが堅苦しいと思ってた俳句に手が出せたわけが分かった。プレバト!!のインパクトもさることながら、組長の手厳しさの後ろに人に対する優しさを感じてそれに甘えられるから なんだ。何かストンと落ちた気がした。組長の俳句は素敵だ。番組の終わり間際に10句を選んで『できたかも』とつぶやいた組長の愛らしかった こと(●アハハハ)。この人についていけば、いつまでも才能ナシ・凡人を彷徨う私でも続けられると感じた」(◇嬉しいね。●嬉しいね、こういう風に見てくださったらね。それから、ディレクター・下北ペダルさん凄いってのが少しあった) ⑦【城ヶ崎文椛 】氏から。「早めにお風呂を済ませ、湯冷めしないようお腹に湯たんぽを抱えて拝見した(●ハハハ。凄い用心深い)。組長がどれほどの綺麗な心で情熱で私たちの俳句を見たり考えたりして下さってるか 、ディレクターとの信頼関係が生み出した映像の説得力に圧倒された。湯たんぽは不要だった(●アハハ。それは見ようございました)私は語彙力もなく、そそっかしさが年々増して投句後に1人悶えることもしばしば(●アハハハ)。時々鬼の特訓みたいに暴投しては組長をぐったりさせているかも しれないが(●アハハハ)、極力気を付けるようにするので、どうかこれからもよろしくお願いします」(●投げられるボールは一生懸命捕る よ。ペダルさんありがとうのお便りもあったんだよね) ⑧いつき組【渋谷晶 】氏より。「心の底から感動した。何より凄く面白かった。繰り返し観ても飽きる所がありません、凄いです。ディレクターの下北ペダルさん、天才です 」(●👏、これを読んでやりたかったんだよ、ホントに。取材したとき、自分が喋ったことを全部入力してそれから番組を構成していくと。凄い数の電話帳みたいのがいっぱいできた という話を聞いてます。◇普段こうやって番組を放送したときに、実際取材を受けているいつきさんに感動の言葉を下さる方が多いんですけど、それを作っている裏方・制作陣に対しての"ありがとう"ってそこまでみんなが言って下さるわけじゃない んですよね。本当にこういう方の頑張りのおかげでいい番組ができてるって。毎回も本当にありがたく思いますね。●賛成、ホントに。作った人・裏方の人をクローズアップできる、こういう人がこういう思いで作ってくれたのよってことをお伝えできるっていうのが凄く嬉しいことなので、"ペダルさん、みんなあなたに感謝してます "。◇ペダルさんがなんでそもそもこういう仕事を志したかみたいなことも、実はラジオに出演してね話されてるのです。●やの部屋のラジオの時にね。それも来てたね)。 ⑨ペダルさんが出演してたラジオの中で話してた経緯として、【佐藤ジュゴン 】氏からお便り。「多摩川のホームレスが稼いだ日銭で猫缶を買い、猫と暮らしているドキュメンタリを見て、テレビマンを目指した 」という下北ペダル誕生秘話が。(●その話はラジコプレミアムでしっかりと聞いて、本当は大学院とか研究で、社会学だったかな?研究したいと思ってたんだけどって。いや、研究よりあなたはこっちの方が良かった んじゃないですかと思いますね。◇でもその研究とか、フィールドワークとかよく観察して正しく発信するっていう能力があったからこその今回の番組かな という気はしますね。●うん。彼は今「クローズアップ現代+」とかの部署に行って、もう既にそういう取材をしているという話を聞いておりますので、ぜひNHKの番組の下に流れる[エンドロール]を見てって…。「下北ペダル」は俳号やから出てこん。◇そうやそうや。●失礼しました。木村何たら[→木村和穂 氏]という名前だったと。◇一回俳号でインストールされてしまうと、ずっと「下北ペダル」ってなってしまうんでね。●「クローズアップ現代+」も観てやってください。ホント親戚の兄ちゃんみたいな気持ちになってる んですよ。◇ほんとね) ⑩【小野更紗 】氏より「『言葉でしか人と人とは繋がれない』『ありのままの自分でいい』などなど、心に響く言葉がいっぱいで全てメモした(●ありがとう)。言葉の技術を色んな形で伝えたい、ちょっとでも育ててやりたいという組長の思いが、東奔西走の原動力になっている のだと感服した。作句の現場を見せていただいたのも有難かった。素晴らしい作品に仕上げてくださった下北ペダルさんにも拍手を送りたい 」(●ありがとうございました。下北ペダルという名前だけが独り歩きしてると思いますけど、また一緒にペダル君酒でも飲みましょう )。
[179] 【となりのくみいんさん】突然訪れてきた組員さんをゲストにお迎え! <2022/1/13公開> 今回は音声参加の家藤さんの代わりに、一般ゲストが右手に座る形に(収録は2021/11/26)。"となりのくみいんさん "と題して【河野しんじゆ】 氏が挨拶をします。新シリーズ第1回とのことです。 河野氏は墓参りを兼ねて、娘と孫の家族3人で松山の温泉を訪れたのが最初の目的。娘や孫が同級生や仲間と遊びに行く傍ら、ご本人は道後界隈から伊月庵を訪れます。ちょうどインターホンを押した際、YouTube動画の撮影の最中 だったと明かす先生は、"なぜ東京のしんじゅさんがここでピンポンダッシュしてるの?"と思わず本音を口にします。それをきっかけに栄えある「となりのくみいん」シリーズ第一号として、この動画を撮影することになったそうです。 撮影当時、東京の感染状況が落ち着いていたことを確認する先生は、「孫の世話をするために松山から東京に引っ越したのではないか? 」と質問します。その通り だと答える河野氏は「2019年に引っ越した」と続けます。「松山にいる頃はどんな仕事をしていたか? 」と質問する家藤さんに「"松山俳句"というところで観光ガイドをし、俳句を作りながら道後を巡る案内に携わっていた 」と回答。先生は「妹のローゼン千津と同僚 だった」と思い出したように述べ、河野氏は同意します。さらに先生は「正人の嫁の久乃がローゼン千津としんじゆさんの上司 」だと告げ、家藤さんが謝辞を述べます。 東京に行っても一人で出歩かないと述べる先生に対し、「スマホがあれば大丈夫」と答える河野氏。「自転車で行ける範囲しか行かず、松山と変わりない」と補足します。元々、松山より南の宇和島出身という河野氏ですが、さらに南の愛南町出身の先生から「お城下の子」と言われて謙遜して同意するご本人です。 「先生との馴れ初めは? 」と家藤さんから質問されます。俳号「しんじゆ」の由来が真珠店に勤めていた ことからと明かす河野氏は「お客さんに『句会があるから来ませんか?』と誘われ、夏井先生の母校である宇和島東高校の句会に行き始めた ら夢中になり、来月また5句作っていくことを繰り返した」のがきっかけと答えます。「その友達はまだ続けているのか? 」と質問する先生に「亡くなられてしまった 」と答える河野氏は、その方の俳号が【ブーヤレ】 氏と明かすと、先生は仰天して生前の思い出話を語ります。「ブーヤレ」は宇和島の牛鬼の祭りに吹く楽器とのこと。ブーヤレ氏は宇和島東高校の正門近くに住んでいて句会に参加していた明るい人だったそうで、御主人(俳号【ピースハーリー】 )は鍼灸院を経営していたそうです。そして、その息子さんは農業を経営しているとのことで、松山局のテレビで小綺麗なお嫁さんと映っていたなど、ローカルトークが止まらない先生です。 また、「俳句とご縁を持つようになったのは何年前か? 」と質問する家藤さんに「16~17年前 で、夏井先生が再婚される前」と回答します。「俳句をやりだして何が一番変わったか? 」と質問する先生には「辛いことがあってもそれを俳句にし、耐えられる体質になった 」と答えて拍手する先生。「何が辛いかは17音の短い俳句では書けない が、それでも大丈夫?」と続ける先生に「想像力や聞いたことを組み合わせれば、何となく伝わる ようだ」と答える河野氏。なぜ読み手になんとなしに伝わるのかを確認する家藤さんですが、「やはりリアリティが染みているのではないか 」と続けます。 そして、2021年にラジオの「一句一遊」で河野氏が2回天を獲得した ことを取り上げます。「どんな句?」と先生に尋ねられますが覚えていなかったご本人。「通算では何回天を獲っているか? 」という質問に「仕事の忙しい時に出せないこともあるが、4~5回ある 」と答えます。俳句を書ける時期と書けない時期がある点に納得の家藤さんは、細く長く続いていることが凄く良いと持論を述べます。 先生はインパクトのあった河野氏の俳句を思い出します。【河野しんじゆ】「草木零落すほくろの相談会 」 は凄い取り合わせだと語る先生。前半は、草木が枯れ落ちていくという時候の季語。河野氏の句柄はシリアスなものからおふざけのものまでバラエティーに富んでおり、「こだわらない」と褒め称える先生。仕事を辞めて次の仕事に行くことが、河野氏の俳句で凄く伝わると述べ、生活感が俳句に出ていると評します。ご本人が特に覚えている句は、「香水や飛び立つやうに辞職せり 」という真珠屋を辞めた際の句のようです。 ちなみに、2021年に一句一遊で天を獲得 したのは3月の兼題「比良八荒」の「水といふ形に佛比良八荒 」、8月の漢字シリーズ「特」の「特に光るは月の夜の国旗たち 」とのこと。家藤さんに「良い句ができるのは何かしんどいことや大変なことが起きた結果なのか? 」と問われ、そうでもないと回答します。ただ、「思いが腹の底にあるため、兼題が来た時にその思いがグーっと上がってきてウェッと(猫が毛玉を吐くように)出てしまう 」と答えます。 以前、ローゼン千津氏をゲストに迎えた際は「尻二字三角パス」を行いましたが、「そこまでの苦行は課さないのか?」と述べる家藤さん。先生は、突然の来客者には失礼だと笑って否定します。今後の予定は「2泊して、金曜カルチャー、宇和島の墓参り、動物園に行って帰る」とのこと。今後も運よく伊月庵を訪れると、このような動画撮影があるかもしれないと予告しました。
[180] 【俳句鑑賞の授業】志らくさんに紹介したい!新刊が出来ました! <2022/1/16公開> 新刊「夏井いつきの世界一わかりやすい俳句鑑賞の授業」(PHP研究所 刊:税込1,595円) の案内です。初版2018年7月刊行の赤帯本 「夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業」(同 刊) の続編は「知識ゼロでも楽しめる」緑帯本 。 俳号の読み「ぴいえいち」という出版社名をもじった俳号をつけた、先生曰く"真面目な編集部の青年"へ俳句のいろはを教える対話形式の形で展開された前作。「センス0でも作れます!」がキャッチフレーズでしたが、多くの俳句初心者が最初に取った一冊 として大変分かりやすいと反響があったそうです。夏井&カンパニーの見本誌でもあるこの本は2020年11月時点で既に14刷。先生は視聴者に謝意を述べます。 さて、実作 が中心だった前作に対し、今作は鑑賞 がテーマです。鑑賞が大事だと語る先生は著書の書き出しの部分で、前作から3年半ぶりに先生と再会した編集部の青年「ぴいえいち」氏が俳句作りに行き詰まり、スランプに陥っているエピソード があることを語ります。家藤さんは、章の最初のページに描かれた先生に飛びつく人のイラストが気に入ったそうです。 家藤さんが冒頭部を読み上げ。「実は最近、あんなに楽しかった俳句作りが苦しくなっていまして、作っても作っても同じような句しかできていない気がするんです」という「ぴいえいち」氏の悩み事から始まります。 共感する人も多いのではないか?という家藤さんの質問に対し、半年から3~4年と感じるまでの時間は人それぞれだが、多かれ少なかれ経験する ことだと先生は答えます。家藤さんも期間を開けて何回か経験していると述べます。俳句ポスト365などの投稿者でも共感する人が多いのではないかと続け、南海放送ラジオ「夏井いつきの一句一遊」でも"俳句迷子の会"と名乗るグループが登場していると述べます。最初の一歩をどこから入っていいのか迷う意味と、入ってみたが今どうしてよいか分からない迷子と色んな意味があると語る先生です。 先生は「俳句の両輪 」について語ります。最初に俳句の作り方を習い、楽しく作れるようになると「実作 」という車輪が大きくなります。それに伴い、車のスピードも速くなりますが、問題なのはもう1つの車輪が育っていないことだと述べます。同じ場所を旋回してしまうことで、全く先に進めていない自分に気づくのです。そのもう一方の車輪が「鑑賞力 」で、好き嫌いとは別に他人の句を冷静に分析する力だと先生は言います。句のメカニズム、意味の紡ぎ、世界観の提示がどうなっているのか。それらを分析する力がつけば、自分の句も分析できる準備が整う と述べます。「それが両輪だ」と述べる家藤さん。他人の句から学び、それが自分の句でアウトプットする時に反映されると続けます。自分としては特段の思いを込めて作ったにも関わらず、周囲の人には全く伝わらないことがよくあるという苦い経験を語り、先生も「意味がわかんねえ」とバッサリ切られると笑って同意。 そして、先生は「この本は志らくさんに送りたい 」と「プレバト!!」で活躍する落語家・立川志らく氏を名指しします。発想力は凄く、他人が書かないオリジナリティのある俳句を本気で作りたいと思っており、本物の表現者 であると先生は褒めます。一方、自分の句を分析する力が未熟で、それができれば相当行くと思っているとも評します。家藤さんは「プレバト!!」をさらに飛躍される起爆剤になる可能性があると補足します。 先生は2冊両方を手元に置き、それぞれの車輪のバランスを取りながら何度でも復習して基本に立ち返る 方法を勧めます。続編ということで出版された順に読むべきか?と質問する家藤さんですが、決してそうではないと繰り返し、両輪のバランスに活かしてほしいと先生は述べます。俳句を作らず、読む方に重点を置く方は新作だけ持つのもアリとのこと。 俳句は面白い文芸で、作り手であると同時に読み手でもある文芸だと述べる先生。どちらも楽しめた方が単純に二度楽しいと述べます。「あなたの俳句ライフが充実する一助となったら 」と述べる家藤さんに、先生も同調しました。
[181] 【第三回尻二字三角パス】組長の「尻二字攻撃」に正人が苦戦! <2022/1/20公開> 第3回尻二字三角パス 。今回は、先生、家藤さん、兼光さんの3人で3巡して行います。前回[153]でゲストのローゼン千津さんが最後に詠んだ句をもとに、次の回のゼロ番句を視聴者に募集し、動画[177]で候補となる入選句18句を発表しました。それらの句が書かれたカードを家藤さんがシャッフルし、先生が1枚引いてゼロ番句を決定する形に。今回も、兼光さんが最後に詠んだ句の尻二字から視聴者に考えて貰う ことのようです。 先生が最初に引いたゼロ番句は、【南部稔枝 】氏の「いえこれが姉妹だなんて蚯蚓鳴く 」。最後の「なく」の2音から始まる俳句を先生が考えます。 [1]候補にあった「んぼ」「んや」「んで」などの句を最初に引かなかった ことを安心する家藤さん。それを嫌な企みを持つ先生が投げてくる可能性をやたら心配しますが、その予感が的中することに。最後の季語「寒夜」から「んや 」で始まる句を家藤さんに託し、先生は視聴者の期待を裏切らないようにとご満悦な様子に。兼光さんが全て「寒夜」で終わる句にならないか危惧しますが、良識の範囲で行うと先生は述べます。 [2]苦しみながらも得意の口語で詠んだ家藤さんを先生は褒めます。句は実体験ではないものの、人生のワンシーンとして特に女性が追い出されるのは気の毒だと述べる作者。酒癖の悪い男性の台詞を想像させる一句です。 [3]簡単なものにしたという兼光さんの句は「です」のリフレイン。「です」から始まる熟語が思いつきにくいと語る家藤さんに対し、日本語・英語と様々あるとカメラ越しに答える兼光さん。口語の句が続いたため、先生の句も口語の簡単な句を期待する家藤さんでしたが…。 [4]季語が動かないと述べる先生は「寒暮」。最後は「んぼ 」で再び試練の家藤さん。「寒暮」でなければ凸凹(でこぼこ)の陰影が出ないと自負する先生に家藤さんも同意しますが、それをこの場で使いこなさなくても良いと不満げな家藤さん。今日は快調に嫌味が冴えわたる先生 によって、遂には左肘を立てて考える人状態になって しまう家藤さん 。困惑する息子さんを見て嬉しそうな先生は、ビールを飲みたい気持ちになると述べます。屈辱の"パス"を繰り出しても良いと悪魔の囁き をしますが、パスをした場合のペナルティーについて触れる先生。尻2字ではなく3字を取るなど難易度がアップさせる方法を提案します。兼光さんは「違う国の人になる」とヒントを呟いてフォローします。視聴者への生配信をした方が楽しいと先生は述べます。 次回、後半の動画へ続きます。詠まれた俳句は[182]の詳細に掲示します。
[182] 【第三回尻二字三角パス後編】正人の反撃!組長の悲しい過去を掘り出す...!? <2022/1/23公開> 動画[181]の続きとなる尻二字三角パス後半戦。
[5]「んぼぼブ」と擬音語を用いて食べ物を捨てる光景の句ですが、先生の深い記憶を掘り起こす一句に。
怒った先生が作ったおでんを鍋ごと排水口に捨ててしまった そうです。息子ながらインパクトが強く残っていたという家藤さん。「ブ」だけ片仮名になっている点に巾着などのタネを思わせると先生が述べ、糸こんにゃくが詰まって流れなくなったような感じだと補足する家藤さん。おでんの季節感があまりないと評す先生ですが、最初は「芋煮」で着地するか迷ったと告げる家藤さんは「芋煮」の方が句のリアリティが強かったかと分析しますが、先生からどっちにせよ季節感はないと述べます。とはいえ、かつての先生の悲しい記憶を蘇らせた家藤さんの一句。食べ物を粗末にする先生を見たのは初めてだったそうです。先生は"
怒りは6秒待てば沈む "と俗に言われることを述べますが、当時は怒りを我慢する力がなかったことを反省します。家藤さんが小学生の後半の頃の出来事だったと述べますが、原因となる出来事も先生に思い出させたようです。今でも10年に1度程度、怒ることを抑えきれないことがあると述べる先生です。
[6]句を見るなり「やった!お父ちゃんが仇を討ってくれた」と嬉しそうな家藤さん。最後の「飛んで」より、「
んで 」から始まる句を先生が作ることに。「でん」で始まっていることから最初は回文にしようと思ったという作者の兼光さん。回文を作るのは凄いと述べる家藤さんに「回文(を作るの)は天才だ」と同意します。先生が絶対にパスはしない性格だと述べる息子さんですが、三度仕掛けてくるのではないかと警戒します。句作を待っている間、そのような嫌な終わり方をする単語を思いつくお二方。次に兼光さんが出す俳句次第で視聴者投稿の難度が左右されることにも言及します。最初の2回のゲームがパラダイスだったと述べ、第3回の難度について語る家藤さん。「
変な終わり方をするより、良い句を作る方に修正しないとダメ かもしれない」と意地悪合戦になっているこのゲームの改善点を述べる兼光さんに、家藤さんも同意しますが、句作に夢中な先生は聞き入れないご様子に。先ほどの「デスマスク」の句を家藤さんが絶賛しますが、それより良い句ではないと再び別の紙に書き直す先生です。
[7]今回は、落語の世界になったと述べる先生の句は句読点付き。季語の着地で意地悪しようかと思うと段々違うものになってしまったと苦戦した経緯を述べます。
意地悪することよりも句の質を重視した 先生に、他の2人も納得します。
「ん」などの難しい音から始まる場合、アフリカの言葉を探す と述べる兼光さんに先生も「逃げるときはそれ」と同意しますが、地方の言葉をある程度知っていると述べる家藤さんは、2音が一致しないと使えないという難しさを語ります。兼光さんの句次第では「大乱闘」だと述べる先生ですが、ローゼンさんの「いえ」ほど優しい方が良いとけしかけます。句を思いついたがつまらないとぼやく家藤さんですが、さらに良い句にできないか悩み、先生も「欲が出る」と共感します。
全日空の飛行機に搭乗中、句帳を見て一人で遊んでいると先生は語ります 。「ピンチヒッターはないの?」と質問する兼光さんに、
酒の席でやる場合は500円もらって句を作る ことがあったと回答する先生。俳句は何でも遊びになるとも述べます。以前にも話していましたが、このゲームは2人だと待っている間の話し相手がおらず、多人数だと自分の番がなかなか回ってこないため、3人が丁度よいと雑談をします。また、連句の出勝ちだと手の内をさらけ出して、次に繋げられないこともデメリットとして挙げる先生です。
[8]モンゴルなどでの移動式遊牧民をイメージしたような壮大な一句を先生は褒めます。本当は「暮の秋」を季語としたかったようですが、バトンを貰った先生の句の季語「年の暮」を意識して気を遣ったそうです。先生はパオの句で好きなのが師匠にあたる【
黒田杏子 (くろだももこ)】氏の「
秋つばめ包(ぱお)のひとつに赤ん坊 」を挙げます。三省堂の俳句教科書にも先生が執筆した一句とのこと。海外渡航が豊富な黒田氏は(瀬戸内)寂聴氏とインドに行った経験もあるそうです。
[9]北風と太陽をモチーフとした一句に笑ってしまうお二方。最後の二音は「
いで 」ということに。この
「いで」の二音から始まる俳句を動画のコメント欄に募集 とのことです。皆さん、ドシドシ書き込みましょう。
以下、詠まれた句を記載します。
0 いえこれが姉妹だなんて蚯蚓鳴く なく 稔枝 1 なく なったものをかぞへてゐる寒夜 んや いつき 2 ンや ったら出てけや白息がくさい さい 正人 3 最 低の人です冬の蚊です です 兼光 4 デス マスクの白き凸凹なる寒暮 んぼ いつき ▼以下、動画後半で発表 5 んぼ ぼブと排水口の呑むおでん でん 正人 6 でん と置き新年会の瓶飛んで んで 兼光 7 ん、伝 助おっかぁ逃げた年の暮れ くれ いつき 8 暮れ る日の馬に鞭鳴るパオの秋 あき 正人 9 呆 れるの北風さんは服ぬいで いで 兼光
[183] 【夏井いつき50代の句集】「伊月集 鶴」がついに完成しました! <2022/1/27公開> 夏井先生の新しい句集『伊月集 鶴 (いつきしゅう つる)』の紹介。先生は30代、40代にも句集を出していますが、今回の句集「鶴」は50代に詠まれた作品を収めた句集 です。しかし、多忙だった故に編集が遅れ、64歳になって待ちに待った出版となりました。また、50代の頃の作品など大事なデータが詰まったUSBを収納していた眼鏡ケース(藤色の老眼鏡も愛用していた)ごと紛失してしまったことも出版が遅れた要因だと先生は述べます。兼光さんにどれだけ先生が怒られたか思い出されると家藤さんが述べます。山あり谷ありで完成した句集のようです。 しかし、それから立ち直れたのもある人物のおかげだと切り出す家藤さん。コロナ禍で松山にいる時間が長くなった先生を取材したいとNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』 (→動画[167])のスタッフが訪れます。自分が机に向かって仕事をしている姿を、やや離れて気配を消しながら見守っていた俳号【下北ペダル】氏。先生は気にもせず仕事をしていたものの、USB紛失の件を話題に出すと、ディレクターの下北氏が入力係を買って出た とのことで、句集完成に一役買った人物だと述べます。 さて、句集は章立てになっていますが、特に最後の余録について 先生に問い返す家藤さん。先生は50代の句のみで区切って完成させるか、コロナ禍の句を入れるか否かで迷っていた そうです。プロフェッショナルの番組の中で、俳句が書かれた短冊を並べる場面がありましたが、紹介された句【夏井いつき 】「青き踏めマスクを鳩として放て 」など今のご時世のことを詠んだひと塊の句を句集に入れる決心がつき、ちょうど校正していた場面だったと振り返ります。 余録にあたる「青き踏め」26句はこの句集が初公開 とのこと。その事実に驚く家藤さんは、音楽のサビ以外の部分を初めて聞いた気分だと比喩します。サビにあたる有名な一句だけでなく、全ての句が並んだ時に持ち始める全体的な力があり、インパクトの強い「青き踏め」の句が全体の文脈の中でどのような立ち位置にあるのか。これを知れるのは興味があると述べるのです。先生は「鶴」という一つの象徴があり、50代は「鶴」という名の句集にすることを決めていたため、最後の部分の可否を迷っていたと明かします。家藤さんは「鶴」のイメージと余録が外れてしまうために判断に迷った と理解し、先生も頷きます。「今入れなかったら共有できないかな」と述べる先生です。 また、「鶴」の表紙の挿絵は赤井稚佳氏が手掛けた もので、「龍」「梟」も描いていただいたと補足します。この絵が素敵だと述べる先生は、ドキッと見ててユーモアがあると褒め、頬ずりしたいほど嬉しい気持ちだと語ります。家藤さんは通常と異なる真四角に近い形の本で、手元に置いたとき存在自体が愛おしく感じると述べます。句集『伊月集 鶴』(夏井いつき著・朝日出版社:2,200円+税) を一読して下さいと語って動画を締めました。
[ M2] 松山市主催「いい、つばきの日」記念イベント第2回夏井いつきのリモート句会ライブ <2022/1/30公開> 夏井いつき リモート 句会ライブ が1月30日(日)午後2時から約1時間半にわたって放送されました。
松山市主催
「いい、つばきの日」記念イベント として行われ、夏井先生のYouTubeチャンネルを介して配信されました。
中継場所は前回同様、道後温泉の「ひみつジャナイ基地」からのようです。
「椿」は愛媛県松山市の市花ですが、この4月に市花制定50年を迎えます。1月28日は語呂合わせで「いい、つばきの日」です。また、3月31日まで「つばきフェスティバル2022」と題して松山と椿の魅力が伝わる写真を募集しています。詳細は松山市ホームページをご覧ください。また、2月5日まで椿の新花「
子規 」と「
律(りつ) 」の特別展示を子規記念博物館の1階ロビーにて行っています(※律は子規の妹です)。
俳都・松山大使である夏井いつき先生。今回も「椿」にちなんだ兼題で句会ライブを行いました。
投句テーマ(席題)は「
椿(律)の写真 」でした。
俳句の作り方(初心者向け) 【例】「椿咲く」+○○○○○○○+ △△△△△ ※上記は基本の作り方で、季語が入っていればOK ※投句時間は鐘が鳴る合図で終了(開始から約45分) ※コメント欄・チャット欄には投句NG(専用の投稿フォーム)
チャット形式で参加者が即時に呟ける形式ですが、投句は夏井いつき先生のブログの専用フォーム(動画概要リンク、動画表示のQRコード)から送信する形式でした。
最終的に
2568句 もの投句があったそうです。
投句作品で先生の目についた作品は、はがきサイズのメモ用紙に毛筆風に模写され、二人の前にあるホワイトボードに貼りだされていきました。また、優秀作は最上段に貼られる方式がとられました。
以下、番組で取り上げられた作品のうち受賞作品を掲載します。各賞受賞者には椿をモチーフにしたフェイスタオル(上位5賞)、砥部焼の皿(最優秀賞)、手ぬぐい(組長賞・正人賞・いい椿の日賞)が景品として贈呈されるそうです。
※松山市主催のため、読まれた俳句のポストカードのプレゼントはありません。
◆優秀作品 ※俳号は敬称略
最優秀賞 まだ兄のいそうな部屋よ白椿 クラウド坂の上 組長賞 ベトナムの椿の肉の厚さかな 立花ばとん 正人賞 落椿みづにも緩くあるとろみ シュリ ギャラリー賞 咲いていることがいたくて落ち椿 熊の谷のまさる トップで賞(投句1番) 紅椿汝は吾を裏切らず しゃれこうべ いい、つばきの日賞 (投句128番・1128番) 玉椿おたやん飴のおちょぼ口 ゆきね 律すてき椿の名前で出ているの 大村しんせん
採用された皆さま、おめでとうございました~。
[184] 【人生相談】親がボケてきました。傷つけずに伝える方法はないでしょうか? <2022/1/30公開> 動画[166]以来の人生相談。「親が最近ボケてきたように感じる。傷つけずに伝える方法はないのか? 」という質問。横目で家藤さんを勘繰るように見つめる先生は、息子さんからの質問ではないかと自分のことのように述べます。 よくよく考えれば、世界共通・古今東西・万国一緒の悩みのはず だと切り出す先生。同じ悩みを抱える全員で次の句を唱えてほしいと述べて句を紹介します。 【きくちつねこ 】の「水澄むやあめんぼうにもある晩年 」。作者は大正11年茨城県の生。「蘭」名誉主宰で、第3回山本健吉賞を受賞しています。一見すると、秋の季語「水澄む」・夏の季語「あめんぼう」と季語が2つある句ですが、先生は「水澄む」が主たる季語の句 だと述べます。秋になって水が美しく澄み渡ってきた頃、その水の上にいるアメンボにも晩年があることをしみじみと思う句だと鑑賞します。 先生は、傷つけないようにボケたことを本人に直接伝えるのは困難なことで、どんな方法でも傷がつく と持論を述べます。このようなことを思い始めるデリケートな時期に、親に伝えること自体に問題や無理なことがあるのではないかと投げかけるのです。具体的な解決法はその道の専門家に聞いてほしいとアドバイスをし、個人的にはそのようなことは伝えなくてよい と思うと考えを述べます。 その上で、親が心地よく幸せに穏やかに暮らしていけるような日常をずっと維持していける という方法をとるのが子としての愛情ではないかと語りかけます。早めに本人に指摘することでボケを防止する意図は理解できると質問者に寄り添う先生ですが、晩年は誰もが通る道だと思うとも述べます。 先生の周囲のご老人でも、認知症がかなり進行してきた方もいれば、「プレバト!!」を見始めたら過去の記憶を呼び覚ましたり俳句をはじめたりと改善傾向が見られた 方もいるとのこと。個人差はあるとしながらも、子が親に協力できることとして、①一緒に「プレバト!!」を見る、②俳句を一緒に作ってみる 、の2点を挙げ、その最初の一歩として紹介句を暗唱することを提案しました。
[185] 【第6回おしゃべり俳句】『なるほど!』組長をハッとさせた子どもの気付きとは? <2022/2/3公開> 動画[171]以来の第6回おしゃべり俳句 。前回の動画のコメント欄に寄せられた中から優秀作品や面白い作品を紹介します。前回の優秀句 、【鰯山陽大 】氏の上司の娘さんの句「夕涼のカルピスちょっと薄いんだけど 」の反響が大きかったようで、ご本人からコメント。「ベスト3に入選したことを(上司に)報告しにくい が、せっかくなのでYouTubeを見てもらおうと思う」。さらに、上司 にあたる 【16 nosmoker 】氏からもコメント。「(句が発表された)この瞬間に私も立ち会っていて、あの日の光景が目の前に広がって真夜中に1人ニヤニヤしている。鰯山くんは将来俳句の先生になりたいので、いつき先生を崇拝している。私どもも感化されて、俳句の世界を学ばせていただいている。この度は彼の俳句を選んで頂き感謝している。娘は今6歳になっており『5歳じゃないんですけど!』と全力で否定している」との報告にほっこりするお二方。俳号に「○歳」と年齢を付けて投句するお子さんの、年が上がることに気づくと親戚のおばさんのように祝いたくなると親心を語る先生に家藤さんも共感します。 また、前回の優秀句【がっちゃん バラ好き 】氏の【のりあき8歳 】「秋、夜の売店で米を買う女 」という句も多くの人の心に刺さったようです。「アルパカを飼いたいけれど秋の朝」を送っていた【ホップたたがわすすこ8才 】氏もラジオの一句一遊に投稿していただいたと家藤さんがご報告します。 ①【アクエリアスの水 】氏から。「麗かや沢山食べておばあちゃんになるんだね 」。作者によると「40代半ばの保育士である自身が給食をモリモリ食べる姿を、口を開けて見ていた5歳男児に呟かれた 言葉。オバサンの次のステージがおばあちゃんで有る事に気付いた彼の言葉」とのこと。先生も最近はやたらとお腹が減ってしょうがないと食欲に関して共感します。 ②【Yusuke Yamaguchi 】氏の「ホットミルク パパはじいじにおっきくなる 」も似たような発想。作者曰く「息子が5歳の時に言われた言葉。『子どもは大きくなるが、パパは大きくならないの? 』と聞かれ、『大人はもう大きくならないよー』と答えると、子が『そんなことないよ!』とふくれたように言った」そうです。おじいちゃんから"熟練の"おじいちゃんになれば小さくなるかもしれないと独自の見解を示すお二方ですが、子どもの素直な感想の採取が良いと褒める家藤さん。 ③【新開ちえ 】氏の息子【ゆうすけ4歳 】からは「けっかんてもちもちしとう冬籠 」。作者の手の甲の浮き出た血管を触って言った 言葉とのこと。触覚の気づきに共感すると述べる家藤さんも、幼少期に祖母の手の血管を興味津々に触るのが好きだったと告白し、「もちもち」が可愛いと述べます。 ④【シーシャ(可秘跳) 】氏の「よしあっち行こう散紅葉 」は、もうすぐ2歳となる娘・あかりの2つ目の二語文を採取した とのこと。児童館裏の公園で、紅葉の落葉を踏んで走り回ってる時の言葉が「あっち行こう」で、娘の発語の記録としておしゃべり俳句にしておきたいと投稿したそうです。初めて二語文を子が喋ると感動を覚えると述べる家藤さんに、母である先生も同様にお孫さんの台詞を聞いて感動したと同意します。「ともだちたたいた」の台詞を思い出して微笑ましい様子に。 そして、いよいよ今回のベスト3 を発表します。 ⑤【FUSION mit 】氏の【甥っ子3才 】の「日向ぼこむた~しむた~しあるトトロに 」。最初はトトロへ「むだ~し」とうらぶれて叫ぶ様子に思ったという先生。投稿者によると、「"むかしむかしある所に"の訳で、甥っ子が3才の頃に縁側で絵本を読むふりをして話してくれた言葉 」とのこと。ラジオ・一句一遊の「ブロッコリ」の兼題で、子どもが上手く発音できず「ブッコロリ」と発音する子の句が寄せられたようで、言葉の面白さについて触れる先生。言葉を覚える際の成長記録として残すのも大事だと述べるお二方。 【すみっこ 】氏の【孫5歳 】から二句。 ⑥「『たかは ゼントルマンです』山笑う 」。この「たか」は孫の呼び名だと解釈する先生。投稿者曰く、「たかは、声がきれいで、言葉遣いもきれいだね 」と褒めた際に出た言葉のよう。季語「山笑う」の可愛さがある一句です。 ⑦「『ばぁばはマダムだよ』胡蝶蘭 」は、「じゃあ、ばぁばは?」と聞くと孫が返した言葉で、良い気分になったという投稿者からのコメント。「胡蝶蘭」が似合うと先生が評します。先生も「ばぁばは何?」と家藤さんの娘さんに聞いてみたいと微笑ましく述べます。 ⑧【熊の谷のまさるの娘6歳 】から「星月夜ほしはひろがるのがだいじ 」。不思議な真実だと第一印象を述べる先生は、詩の言葉になっていると褒めます。投稿者によると、「娘が寝室に夜光塗料で光る星を壁に貼っていたが、『星はね、広がっているのが大事だからね』と言いながら、星を貼っていた 。思わず"なるほど!"と思った。子どもの言葉も句材と思うとより耳を傾けて聞くことが出来る 」とのこと。最後の「子供の言葉に耳を傾ける」という言葉がおしゃべり俳句を俳句を始めた当初の目的であり、義務感を持つのではなく俳句のタネだと思えば心の持ちようが変化する と先生は述べます。このような人間関係・家族関係が俳句から生まれれば嬉しいことであり、捨てることが出来ないような詩の言葉として俳句になることがとても幸せだと続けます。大人の俳人にとっても、子どもの詩心は侮れず、親子が良いライバル関係になるとまとめるお二方。 最後に、次回・第7回おしゃべり俳句への投句を案内 。この動画のコメント欄にお寄せ下さいと語りました。
[186 ] 【プロフェッショナルを見て一句】寄せられた俳句と番組映像と共に振り返る! <2022/2/6公開> 動画[167][178]でも触れているNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」 。放送後に番組ホームページやツイッターで「プロフェッショナルを見て一句」と題した投句企画を実施 しましたが、一週間の募集で600名から1256句の投句 があったようです。今回は、番組の印象的な場面をお二方で振り返りつつ、視聴者から寄せられた俳句の一部を紹介します。特に「親戚」という単語 が多かったようで、まさに投句者を親戚であるかのように接する先生ですが、番組で選句の場面で先生が語っていたワードです。 ①【充子 】氏の「親戚の増える夜あり玉子酒 」が面白かったと述べる先生。映像を見ている先生は"句友が増える"という理解の他に、単独の句として物理的に"結婚などで親戚が増える"意に読める 点に触れ、実家に集まる親戚らが夜に玉子酒を酌み交わすという解釈を家藤さんが述べます。季語「玉子酒」により、風邪気味の親戚に作るニュアンスも匂わせ、句の奥行きが広がると評します。 ②【音羽凛 】氏の「親戚の手紙七キロ良夜かな 」は番組をよく観ていたと感心する先生。これは、一句一遊の投句用紙の重量 が紹介された場面を句材としています。家藤さんは、数詞のずっしり感があり、最後の季語に繋がることで喜びの重量になるのが良いと評します。「親戚の手紙七キロ」は通常あり得ない光景ですが、この企画に寄せられた挨拶句として鑑賞できると述べるお二方。 ③【音羽ナイル 】氏の「狐火や増える親戚なほ楽し 」は家藤さんが気になった一句。良い親戚が増えること以外に、宝くじに当たると謎の親戚が増えるかのような怪しい感じ を季語で表現できていると評し、良い親戚が増えるのも俳句のご縁だと述べます。小さい子が俳句を始め、年齢が上がって成長する過程を見るのも親戚としてのほのぼのとした愛情で見守ると述べる先生。投句が来なくなると心配するという先生は、投句者が直面した可能性を三つ挙げます。(1)病気やけが、(2)仕事が忙しい、(3)恋愛 。この点に家藤さんも同感し、俳人の顔が思い浮かぶと述べます。 そして、番組の後半で先生が句集に収録する作品を精査する場面、先生のとある句に関しても反響が大きかった点を述べます。【夏井いつき】「青き踏めマスクを鳩として放て」 。五十代の句をまとめた第三句集『鶴』にコロナ禍の句を入れるか否か迷っていた先生ですが、次の六十代の句集に収録すると句の鮮度が落ちてしまう ため、入れる決意をしたと理由を明かします。「青き踏め」を自分で使ってみたいと思わせる力強さに触れる家藤さん。多くの句が寄せられたそうです。 ④【古賀 】氏の「青き踏め言の葉すべて詩となるまで 」。季語「青き踏む」の命令形は強引な用法だと先生は番組でも述べましたが、「青き踏め」を自分と周囲の大切な人とで共有できる感じ が良いと評します。 ⑤【堕天使 】氏の「青き踏む脚九十度上がります 」に爆笑する先生。歳を取ってくると足が上げられず、僅かな段差で躓くと述べます。整体師からマッサージを受ける シーンを句材にした可能性に言及します。 ⑥【井納"バツイチ"蒼求 】氏の「離婚超へ俳句を遊べ青き踏め 」。ニューヨーク在住の作者ですが、生きていることを楽しむ ということが「青き踏め」にインプットされたら嬉しいと述べる先生。「青き踏め」の強引な用法でも例句が増えることを期待する家藤さんです。 先生の実家の整理の場面もオンエア。「HOPE」の句が多く寄せられたそうですが、NHKらしく「タバコ」とテロップが入った点に違和感を持った人がいたそうです。 また、放送された一瞬の映像を句材にする人もいたとのこと。先生は、実家整理の後に訪れたお墓で、黒アゲハ が花の蜜を吸うカットが気になったそうです。映像編集者を褒めるお二方ですが、先生が黒アゲハを題材とする句をのちに紹介するその伏線として入れたカットだと推測します。そして、蝶を題材とした句を紹介。 ⑦【今野淳風 】氏の「懐かしきことごと墓所の揚羽蝶 」。前半で放送された場面が括られる印象がある と先生は述べ、映像の綺麗さに家藤さんが言及します。 番組の最後、短冊状の句を青い蜜柑が乗る机に並べた場面。作品が実ることを「結球」というワード で紹介され、この感覚を始めて聞いた人も多いのではないかと述べる家藤さん。先生は、師匠にあたる黒田杏子 (くろだももこ)氏から教わった言葉の一つで、自分の中で謎めいていた単語だと明かします。"俳句が結球する"の意味を自問自答することが自身にとっての学びだったと述べ、家藤さんが"良い鍛え方をされた"と述べます。安易に「プレバト!!」のように添削を求めるのではなく、自分で考えることの必要性について先生は言及します。「結球」の句についても紹介。 ⑧【樫の木 】氏の「甘藍や身のうちに詩は結球し 」。「甘藍(かんらん)」がキャベツのこと。体の中で身が結球していく ことがキャベツの結球と同じであるさまだと解釈する先生。 ⑨【直 】氏の「詩が生まれる玉巻く甘藍みづみづし 」も「甘藍(きゃべつ)」が季語。結球=キャベツ というラインから生まれた発想ですが、その形で納得するのが十分だと評します。 「結球」に関しては"結球し(かけ)ました"などとお便りにも書かれたようで、みんなで感覚を共有できるのが一歩未来に進んでいるようで素敵だと述べる家藤さんです。さらに、夫である兼光さん にスポットを当てた句も紹介します。 ⑩【盆太 】氏の「俳号で夫呼ぶ暮らし缶ビール 」。実際に先生方は家族を俳号で呼び合う 点に触れます。先生の妹のローゼン千津氏は【朗善(ローゼン)】で呼ぶそう。戸籍謄本を取得する際など、時々本当の名前を忘れてしまうと失態を述べる家藤さんです。 ⑪【富山のひろやままん 】氏の「お疲れ様です綺麗な家(うち)と兼光さん 」という兼光さんへの激励な言葉に先生も同感します。ただ、家を掃除する担当だという先生は、案外綺麗好き だと自負し、小さい所を日々片付けないと落ち着かない性格だと述べます。撮影が入るからといって、特別に掃除したわけでもなく普段の日常を映したようです。しかし、日常の気分がゆえに、首に湿布を貼っていたことや化粧していないこと、満身創痍だなどとご本人の容姿に関して激励やお叱りの言葉も頂いたようです。お疲れ様です。 先生の素顔が放送された今回の番組。息子さんからの「今後も頑張っていってくれるよね?」の一言に笑って「はい」と答える先生でした。
[187] 【プロフェッショナルを見て一句】特選五句を紹介します! <2022/2/10公開> 動画[186]に引き続き、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」放送後の投句企画「プロフェッショナルを見て一句」 からの俳句紹介。今回はツイッターでも発表された「特選五句」 に関しての思いを述べます。 最初に、通常の俳句コンテストとは異なる軸で選んだと述べる先生。先生の思い出と直結したり、今の思いと直結するもの を我儘なりに選出したといいます。 ①【ふるてい 】氏の「夕焼の舳先HOPEは父のにおい 」。先生が小学生の頃、父と2人で釣りをした思い出 を語ります。郵便局の局長であった父が5時に仕事が終わる時間に合わせ、釣り道具を準備しながら近くの石段で父と待ち合わせをしていた幼き先生。合流後に当然のように二人で伝馬船(てんません)に乗りますが、伝馬船を漕ぐ先生と、舳先に座って平然とタバコを吸い始める父。二人の以心伝心のような充実した情景で、誇らしく思ったことを語ります。ここで「海老で鯛を釣る」という諺に触れ、餌獲りの話に。先生の生まれ故郷、愛南町・家串は真珠の稚貝の養殖をしていた地で、その作業場となる筏の大きな浮きの部分に小さい海老が沢山付着しており、それを釣餌用に獲ってから沖に漕ぎ出していたそうです。先生にとってはお決まりのルーティンですが、それが出来ることを小学生ながら誇らしく思っていたと述べます。父と二人だけが互いに共有している釣りポイントもあったそうです。大変懐かしい思い出を語る先生にとって、この句の「HOPE」が父との思い出を繋ぐ目次のような単語 だと明かします。 ②【仁和田 永 】氏の「金文字の郵便局のドア小春 」。郵便局繋がりの句ですが、この句に出会い、番組で場面を再度見返したという先生。郵便局のモノクロ写真を見ただけでは「金文字」かの判別はできません。当時の郵便局にしては、モダンで洒落た作りの局舎で、ペパーミントグリーンの壁に金色の文字で「POST OFFICE」と書かれていたことを思い出した そうです。この句も「金文字」をきっかけに先生の深い記憶が呼び起こされた ようです。 家藤さんは、海辺の小さな村であるにもかかわらず、句にされることでお洒落な空気感が漂ってくると述べます。先生の父は田舎のインテリ青年だったようで、ギターを弾いたり、暗室を作って写真を撮ったりしていたようで、形見のカメラも置いてあるとのこと。印象的な単語として「広場」「旗」を入れた句もありました。 ③【池之端モルト 】氏の「踏青や広場に大きなる旗を 」。"俳句集団いつき組"という組織でもない組織を作った先生の功績を称えた一句。ピラミッド型となる、いわゆる俳句結社とは異なるものを作りたい と考えていた先生は「広場」に捉えます。噴水の近くに鎮座する先生ですが、句会ライブの時は人が集まり、終われば自分の位置に戻れる感覚。「旗」は志の旗を立てるという意味に加え、「風の強い日の旗は美しい」というフレーズが自分の人生を支えていると先生は喩えます。季語の「青き踏む」に加え、象徴的な単語を3つ入れてまとめ上げた一句 だと評します。 ④【石井一草 】氏の「風花きれい結球しきれない言葉 」。「結球」を用いた投句も多数寄せられたそうですが、俳句が完成する感覚を表現 した言葉です。俳句がいま自分の手から離れ、読み手へと飛べる力を持つことだと述べる先生。結球しきれない言葉と格闘することが俳句を作る楽しさであり、風花はきれいでありながら、自分では表現できない言葉が周囲にバラバラあることが幸せな感覚だといいます。家藤さんは後半のフレーズの中に前向きさを感じさせてくれるのが季語を含む前半 だと評し、先生もワクワクした感じがあると賛同します。俳句ができない苦しさを表現する場合は、また別の季語になるはずだと述べる家藤さん。 ⑤【磐田小 】氏の「冬すみれあらゆる空を愛したい 」。"あらゆる○○を愛したい"ということをインタビューで話した記憶があることを述べる先生。作句だけでなく選者として、ありとあらゆるタイプの句を愛せる体になりたい とずっと思っていたといいます。今自分には理解できない句も来年には理解できるかもしれず、自分を鍛える言葉でも俳句を愛する言葉でもあると述べます。空を眺めていると、足元に小さなすみれがある空間が良い と評します。万物を肯定する象徴として冬すみれがささやかで美しいと家藤さんが述べます。先生は、自分の頭の中から生まれるものは自分以下でしかない と述べます。俳句では、外にあるものに目を向け、外から頂くものだといいます。自分の中にあるものは灰色の脳細胞だけで、外に咲いている小さな冬すみれの紫色が美しいと思うと時あるごとに語るそうで、そのような教訓を含めての俳句の可能性もあるのではないかと嬉しく思ったとまとめます。 家藤さんは、この番組が夏井いつきサイクロペディア的な総まとめ辞典 のようになっていると個人的な意見として述べ、息子として句がいっぱい来たことを嬉しいと述べます。先生は、いつき組の仲間として切磋琢磨していくことを薦め、「私も負けませんよ」と誓いました。
[188] 【人生相談】恋人に「1人の時間が欲しい」と言われた。私は嫌われていますか? <2022/2/13公開> 動画[184]以来の人生相談。「恋人に『自分の時間が欲しい』と言われた。私は好かれていないのだろうか 」。 少し笑いだす先生ですが、台詞を言われた瞬間の質問者の心境に同意します。しかし、好かれている・いないの問題とは違う気がする とも述べ、一句を紹介します。 【山口青邨 (やまぐちせいそん)】の「人それぞれ書を読んでゐる良夜かな 」。作者は明治25年岩手県の生、高浜虚子に師事し昭和5年『夏草』を創刊・主宰となった人物。 恋人から「自分の時間が欲しい」と言われて仰天する気持ちはあるものの、自分の時間を持つことは全く悪いことではなく、質問者が嫌いだから言っているわけでもない と先生はフォローします。一人で音楽を聴く・本を読む・映画館に行く・ぼうっとするなどはあると述べます。 そのようなことに不信感を持つならば、逆に質問者の今後の精神面を心配するとまで述べる先生。"人それぞれが読書をしている月の美しい良い夜だ "という句意ですが、これでよいのではないかと考えを語ります。 恋人はイヤフォンで聞いているが、質問者は本なりゲームなりしていて構わず、同じ広い空間の中でそれぞれ別のことをしている時間をそれぞれが大事にする。そのような人間関係を否定しないという先生。同じ家の中で別々の部屋であっても、全く異なる場所での時間であっても同じで、それを尊重した上で付き合っていく関係であるのが、案外持続可能なSDGs(エスディージーズ)な恋や愛 ではないかと思うと述べ、最後に「諸説あります」と断りを入れました。
[189] 【音便シリーズ】撥音便を使えば、句の「歯切れ」が良くなる! <2022/2/17公開> 動画[143][157]以来の
音便シリーズ ・第3回。今回は「
撥 音便(はつおんびん) 」。ここで急に来客のインターホンが鳴ります。
音便は
動詞・形容詞・形容動詞(=用言)の音が他の言葉と合わさると変化する音 のこと。「撥音便」は「
ん 」の音を指します。
【
森澄雄 (もりすみお)】の「
雪国に子を生んでこの深まなざし 」。世界観が深くて好きな句だと述べる先生は、生んだ人と生まれた子の眼差しが重なる感じがすると語ります。この句の音便は「生
ん で」の「ん」。
連用形で発生する という法則は今までと同じです。元の動詞は、文語の歴史的仮名遣いで「
生む 」になります。前回同様、活用形を後ろのホワイトボードに書き込みながら確認します。
未然形 は「生
ま ず」「生
ま ない」で、活用は「
ま 」。
連用形 は「生
み たり」「生
み て」で、活用は「
み 」。
終止形 は「生
む 」と言い切る形で、活用は「
む 」。
連体形 は「生
む こと」「生
む とき」で、活用は「
む 」。
已然形 は「生
め ども」「生
め ば」で、活用は「
め 」。
命令形 は「生
め !」となり、活用は「
め 」。
活用をしない語幹は「生む」の「
生(う) 」の部分で、「
ま・み・む・む・め・め 」の
四段活用 となります。
この句の本来の活用は連用形の「生
み て」ですが、撥音便により「生
ん で 」と下を濁らせながら変化しています。
また、撥音便は
マ 行 の他、
ナ行・バ行 の動詞で「
ン 」に変化することを解説します。
例えば、ナ行では「
死ぬ 」という動詞があります。連用形「死
に て」が撥音便では「死
ん で 」に変化します。
バ行の動詞「
呼ぶ 」の連用形「呼
び て」なら撥音便では「呼
ん で 」となります。
マ行の動詞「
踏む 」の連用形「踏
み て」なら撥音便では「踏
ん で 」となるわけです。
作者の句は「生みて」でも意味は通じますが、なぜ「生んで」と音便を用いたのか解釈・鑑賞で読み取るのも大切だと見解を述べる先生。仮に「生みて」とした場合、
生活実感が少し薄れて文語らしい格調が増し、気取った感じになる と述べる家藤さん。先生は撥音便の一般的な特徴を「
歯切れよく活発 」とまとめます。
シリーズは第4回まで続くと家藤さんが予告しました。
基本 の形 語 幹 未然 連用 終止 連体 已然 仮定 命令 ず (ない) たり (て) 。 こと とき ども (ば) ! 生む う ま み む む め め
撥音便 ナ行「ニ」 バ行「ビ」 マ行「ミ」 ⇒ン 「歯切れよく活発」
[190] 【音便シリーズ】「促音便」を使って句を力強くしてみましょう <2022/2/20公開> 動画[143][157]「189]以来の
音便シリーズ ・第4回が最終回。今回は「
促 音便(そくおんびん) 」。予習するほど学びに貪欲な人がいることを信じたり、勉強シリーズのため脱落者が多いことを心配したりと視聴者について様々な憶測をする先生方。
音便は
動詞・形容詞・形容動詞(=用言)の音が他の言葉と合わさると変化する音 のこと。「促音便」は「っ」の音を指しますが、まずは例句から。
【
高野素十 (たかのすじゅう)】の「
翅わつててんたう虫の飛びいづる 」。てんとう虫が翅を割って今飛び立つという意味の一句です。まずは音便の場所をチェックします。助詞「て」に接続する連用形で発生するのがポイント。「わつて」は歴史的仮名遣いですが、読みは「わって」。この句の音便は「わ
つ て」の「っ」。元の動詞は、文語の歴史的仮名遣いで「
わる 」になります。前回同様、活用形を後ろのホワイトボードに書き込みながら確認します。
未然形 は「わ
ら ず」「わ
ら ない」で、活用は「
ら 」。
連用形 は「わ
り たり」「わ
り て」で、活用は「
り 」。
終止形 は「わ
る 」と言い切る形で、活用は「
る 」。
連体形 は「わ
る こと」「わ
る とき」で、活用は「
る 」。
已然形 は「わ
れ ども」「わ
れ ば」で、活用は「
れ 」。
命令形 は「わ
れ !」となり、活用は「
れ 」。
活用をしない語幹は「わる」の「
わ 」の部分で、「
ら・り・る・る・れ・れ 」の
四段活用 となります。
この句の本来の活用は連用形の「わりて」ですが、促音便により「わ
っ て」と変化しています。
また、促音便は
ラ 行 の他、
タ 行・ハ行 の動詞で「
っ 」に変化することを解説します。
例えば、ハ行では「
吸ふ (吸う)」という動詞があります。連用形「吸
ひ て(吸いて)」が促音便では「吸つて(吸
っ て)」に変化します。
タ行の動詞「
打つ 」の連用形「打
ち て」なら促音便では「打
っ て」となります。家藤さんは日常でもよく使う用例だと述べ、「ホームランを打った」と例文をあげます。促音便の方が臨場感や勢いがあると先生は印象を述べます。
作者の句は「わりて」でも意味は通じますが、「わって」と読ませて音便を用いています。仮に「わりて」とした場合、
厳かな感じがする と述べる家藤さん。先生は促音便を発生させないと
格調高い感じになる と述べます。一方、「わって」とした効果を
フワッとして快活な感じがある と答える家藤さん。どちらが正しいかという問題ではなく、
作者の意図に依存することであり、音便を用いるか否かは作品の内容によって作者が判断する ことだと先生は念押しします。
作者の意図も重要だが、音便を選択する際に活用のルールにのっとった変化をさせる必要があることもポイントだと家藤さんが述べます。そして、さらに一句を紹介。
「
花菜漬買ひ て明るき傘ひらく 」。この句の連用形「買
ひ て」はウ音便であれば「買
う て」、促音便であれば「買
つ て」となり、選択肢が3つあることに。比較の印象を問われた家藤さん。
①「買ひて」は歴史的仮名遣いで、
格調高く荘厳な感じ と答え、先生は立派な花菜漬・傘の印象があると述べます。
②「買うて」は緩やかでのんびりした感じがすると答えます。ウ音便は「
柔らかく時に優雅 」の通り、明るさ・柔らかさがあると先生は述べます。
③「買って」は傘を明るく開くような
快活な印象 で、リズムやテンポが良いと答えます。先生は促音便を「
勢いがあり、時に力強い印象 」とまとめ、この句については軽い勢いがあると述べます。
これらについても、作者が表現したい内容に沿って選択すべきものだと先生は言います。
家藤さんは、このシリーズは人気がないのではないかと不安そうに述べますが、
音便については色んな人によく聞かれる と述べる先生。いちいち説明していたら命がいくつあっても足りないとも述べ、
音便について困った場合は再度この動画で復習して もらいたいと忠告します。
このYouTubeチャンネルは、
夏井先生が何度も聞かれて困ることを動画であらかじめ解説しておく という最初の動機に立ち返った点に触れますが、今後も同様の知識シリーズも随時公開していくとのことです。
基本 の形 語 幹 未然 連用 終止 連体 已然 仮定 命令 ず (ない) たり (て) 。 こと とき ども (ば) ! わる わ ら り る る れ れ
促音便 タ行「チ」 ハ行「ヒ」 ラ行「リ」 ⇒ッ 勢いがあり、時に力強い ※音便を発生させないと 「格調高い感じに」
[191] 【春めけり】この句に間違った文法はありますか? <2022/2/24公開> 音便回と同じ活用表のホワイトボードを後ろにする「文法」の回。とある句に対して文法が正しいのかという質問が寄せられたため、解答します。
【
村越化石(むらこしかせき) 】の「
故郷につながるこころ春めけり 」。歳時記にも載る有名な句ですが、分かりやすいことが一つのしみじみした思いになると先生は述べます。そして、下五「
『春めけり』が文法的に正しいのか? 」という質問があったことを報告し、
「春めけり」「春めきけり」を比較 します。
「
けり 」は「や」「かな」と並ぶ三大切れ字ですが、元々は
過去の助動詞 だが、のちに詠嘆の意味を持つようになったと解説します。「
過去であれば『春めきけり』が正しいのではないか? 」という趣旨の質問のようで、要は作者に喧嘩を売っていると先生はユーモラスに述べます。
先生は、助動詞にかかる動詞の接続は決まっていることを前置きします。活用表で「春めけり」を再度確認します。活用は以下の表の通りになります。
基本 の形 語 幹 未然 連用 終止 連体 已然 仮定 命令 ず (ない) たり (て) 。 こと とき ども (ば) ! 春めく 春め か き く く け け
カ行の四段活用 (かきくけ)の動詞となります。ここで作成していた「四段」の札を取り出す先生です。
過去の助動詞「けり」は連用形接続 のため、「春め
き 」に接続します。よって、「春め
き けり 」は正しい表現となります。
ここから本題。先生は唐突に【
池田澄子 】の「
夕月やしっかりするとくたびれる 」を挙げ、難しい文法を解説される視聴者の心情を察知しますが、動画を止めないでほしいと忠告します。
原句の「春めけり」は過去の助動詞「けり」ではなく、「春め
け 」「
り 」と文法的に分解をします。詠嘆の「けり」ではないのです。
「り」は完了の助動詞 で、四段活用の
已然形に接続 します。この句の場合、已然形「春めけ」に完了の助動詞「り」が接続した形になるのです。つまり、
文法的には「春めけり」も「春めきけり」も全く間違っていない ことを告げます。
春めけり 已然形「春めけ 」+完了の助動詞「り 」 春めきけり 連用形「春めき 」+過去の助動詞「けり 」
さて、この件に関連し、夏井&カンパニーの校閲部のあずきさんから、ある新情報を耳にして大変驚いたという先生。次回の動画でそのことをお伝えしたいと述べます。「文法回はみんながついてきているか心配だが、いずれ楽しくなる日が来ます」と家藤さんが述べ、締めくくりました。
[MS] 松山市主催「俳句ポスト365」リニューアル記念 SDGsオンライン句会ライブ <2022/2/26公開> 夏井いつき オンライン 句会ライブ が2月26日(土)午後1時から約2時間にわたり、夏井いつき俳句チャンネルを通じて放送されました。
松山市
「 俳句ポスト365」が2021年4月にリニューアル されたことを記念する投句企画が実施され(2022年1月9日〆切)、本日結果発表と当日投句企画を兼ねたリアル句会ライブの開催が松山市内で予定されていましたが、コロナ禍の影響で今回のオンライン句会ライブに変更された経緯を発表します。
また、松山市は2020年度
SDGs(エスディージーズ)未来都市 に選定。持続可能な目標であるSDGsの達成に向けて取り組む都市の中で、特に達成のポテンシャルが高い都市として国から選定を受けています。
①まずは事前投句の結果発表。兼題は
「続」の字が入った句 でした。
最優秀賞 枯野より続くみずみずしき鉄橋 磐田小 優秀賞 (5句) やはらかき空気の続ぎ目春の雷 葦屋蛙城 続きは来週マリーゴールドの冠 雪白椿 冒険の続きフードに木の葉かな ありあり 手袋を外し存続嘆願書 村瀬っち 後続は未着吹雪の連結車 加田紗智
入選作品は、
秀作・佳作 を含めて
事前投句の結果発表 からご覧頂けます。
商品は最優秀賞に「媛香蔵HKフォームハンドソープ」「紅まどんな&清見」、優秀賞には「きいろいしょうゆ(昆布)」が贈られます。おめでとうございます。
②次に当日投句企画。
俳句の投稿は夏井いつき先生の
ブログの専用フォーム (動画概要リンク、動画表示のQRコード)から。動画のチャット欄、コメント欄は対象外です。
投句テーマ(席題)は「
続いている! 」「
続いている? 」でした。
投句締切はベルによって知らされ、投句時間は約60分、
2210句 もの投句が寄せられました。
チャットの投げ銭(スパチャ)は俳句甲子園に寄付されるそうです。
投句作品で先生の目についた作品は、はがきサイズのメモ用紙に毛筆風に模写され、二人の前にあるホワイトボードに貼りだされていきました。また、優秀作は最上段に貼られる方式がとられました。
各賞受賞者には景品(トップで賞「inahoのポン菓子」、最優秀賞「愛媛県産まるごと甘酢いりこ」「海の幸詰め合わせ」、俳都松山大使賞「大和屋ベジスイーツ」「媛菜スティック」、家藤正人賞「田中屋Premium百年蔵醤油」「まつやま・ライムポン酢」、SDGs未来都市賞「チャレンジドえひめカレンダー」、ギャラリー賞「いろいろそうめん」)が贈呈されます。
なお、読まれた俳句のポストカードは夏井&カンパニーに切手を貼った返信用封筒を送付すれば希望者にプレゼントされます。
以下、番組で取り上げられた作品のうち受賞作品を掲載します。 ◆優秀作品 ※俳号は敬称略
最優秀賞 勿忘草ことばに半減期はあるか 葉村直 俳都松山大使賞 うらうらと永久機関めくひかり けーい○ 家藤正人賞 うつびようのさんぽせんにちゆきのはて うつスピ ギャラリー賞 鞦韆は決して侵略しないもの いさな歌鈴 トップで賞(投句1番) さへづりや戯画のけもののやうに跳ぬ 古瀬まさあき SDGs未来都市賞 (投句1690番・1700番) 今日もまた遅刻する夢春の風 やさいあるふぁ 冬晴の生成りの布巾干している イサク
採用された皆さま、おめでとうございました~。
[192] 【りかさみしい】助動詞「り」学校で学んだ覚え方が違います <2022/2/27公開> 動画[191]に続く文法回。まず前回のおさらいをしますが、今回は「春めけり」の「
り 」について解説します。
「り」は
完了の助動詞 の一つ。上に続く動詞の接続は限定されており、とある方法で記憶したことを語る先生。
高校での古文文法の話になりますが、文法の授業が当時は大嫌いだったという家藤さん。夏井先生が指導する愛媛新聞カルチャーの「俳句のための文法講座」で2年間学び、ようやく身についたというエピソードを述べます。家藤さんの奥さんも受講したようで、奥さんの方が文法は得意なようです。
さて、
「り」は接続が2種類に限定 されるとしてまとめます。
●従来の考え方 (り ) (か ) 「り 」完了の助動詞 (さ ) (み ) サ変活用 未然形 接続 →りかさみしい (し ) (い ) 四段活用 已然形 接続
「春めく」は
四段活用 動詞のため、「り」は
已然形 の「春めけ」に接続し、「春めけり」となります。
「サ変」は
サ行変格活用 ともいい、動詞「する」は「せ・せ・す・する・すれ・せよ」と活用。「り」は
未然形 「せ」に接続し、「せり」となります。
この接続の覚え方として、頭の文字をつなげ、「
りかさみしい (理科寂しい) 」と覚えるというのが一般的な考え方として広まったようで、先生も30人ほどの講義で念仏のように沁みつくまで唱えさせたようです。
さて、夏井&カンパニーの校閲部長で現役の国語教員でもある「
あずきさん 」にこの話題を出すと、「今は違う説が現れている」とのこと。国語の研究によると、この定説が覆されているようです。
実は、
「り」の接続 は「四段活用
已然形 」ではなく、
「四段活用 命令形 」という結論が出ている とのこと。「春めけり」も該当し、「春めく」の
命令形 に接続していることになります。
四段活用は「あ・い・う・う・え・え」の活用となり、已然形も命令形も表記上は同じで大差はありません。しかし、先ほどの「りかさみしい」が変わってくることに。
●新しい考え方 (り ) (か ) 「り 」完了の助動詞 (さ ) (み ) サ変活用 未然形 接続 →りかさみし め (し ) (め ) 四段活用 命令形 接続
「りかさみしい」が「
りかさみしめ(理科寂しめ) 」となります。従来当たり前だと思っていた覚え方が変更されることに慄いたと語る先生。語呂の変化が妙にツボに入ったという家藤さんに先生も同意。この事実を伝えずにはいられなかったご様子です。
これから学習する場合「
りかさみし め 」で覚え直してほしいと述べ、再度呟いて動画を締めました。
[193] 【SDGs句会ライブ】俳句を通してSDGsについて考える <2022/3/3公開> いつき組組長の他、俳都松山大使を先生が名乗って始まった今回の動画は、2022年2月26日の俳句ポスト365リニューアル記念のSDGs(エスディージーズ)句会ライブ 放送後に収録された感想戦 。YouTube句会ライブは、同時視聴で800人近い方がご覧になられたようです。 「SDGs」自体に小難しさを感じるものの、兼題だった「続いている!続いている?」を突き詰めて考えれば、目標となる17項目のいずれかに当てはまっていくものに感じられたと手応えを述べる先生。人生の物事は「継続」「途中で途切れる」の繰り返しとなるため、そもそもほとんどの句がこのテーマに当てはまる ことに気づいたと改めて述べます。 さて、お二方の前の机には先生が手書きした入選句のカードを並べられ、先生が本番で語り足りなかった句を後ろのボードに貼りだして語っていきます。 ①【朝月沙都子 】氏の「貧しさは恥ではないが春霙 」は、SDGsの目標(1)「貧困をなくそう 」に引っ掛けた句。先生は中七の後の「…」の含みに共感すると述べます。季語「春霙」の切なさに加え、春の霙は冷たくないかもしれないが…という何とも言えない味わいがあると言い、「うちも貧しかった」と家庭事情に話を移し、息子である家藤さんも「貧しさと友達だった」と共感します。さらに先生はこの句を書き留める際、あることを思い出します。家藤さんの姉・ふみ氏の誕生日に新しい筆箱をプレゼントした際、「こんな可愛い筆箱を!」と凄く感動されたことを語ります。また、家藤さんは自分のランドセルを6年生の時に手縫いで修復したエピソードを述べ、貧しさの中でサバイバルをしていたといいます。この句のように、貧しさは恥だと思わないものの、健気な部分を共有できると先生は述べます。とはいえ「貧困はなくなった方が良い 」と述べる家藤さん。想像以上に貧しく、満足に暮らすこともできないほどの貧困は世界全体の問題でもありますが、平和と何かという哲学的な問題を語るより、全ての人が平常心で普通に生きていけることが平和 だと思うと私見を語る先生。この句はフレーズが述べること以上に、今の有り様や生きる手触りがあるために俳句として救われると意見する家藤さん。深堀りすれば、世界や状況など想像がさらに深まっていくと先生が続けます。また、目標(2)「飢餓 」をテーマとした句が特になかったことを述べます。 ②【嶋村らぴ 】氏の「有り金を持って出て行け春の昼 」。この句に共感したのは、③【どいこい 】氏で、「まだ離婚してない春を十九年 」。お互いに共感している点におかしさを感じたという先生。どちらも切実な事情でありますが、俳句にできる段階で救われていると先生は述べます。 ④【喜多輝女 】氏の「春野行く膝の運動して下さい 」は目標(3)「健康と福祉 」に関して。医者からの忠告をそのままフレーズにした可能性を先生は指摘しますが、季語の広がりが良いと評します。 ⑤【カラビンカ 】氏の「春は来(き)ぬ君は私を手放さない 」は、先生が気になってしょうがないという句。このフレーズの「君」により、虐待・恋愛など様々な事情を思わせ、頭から離れられなくなったと先生は述べます。季語は本人がチャットで肯定表現「きぬ」と読み方を伝えたようで、仮に否定表現「こぬ」だと暗くなりすぎたと評す家藤さん。先生は「春が来ました。君は私を手放せないことを私は知ってます」という恋の歌と捉えた方が、兼題の継続のイメージに似合っていると述べます。 ⑥【Rx 】氏の「二着続きに応援馬券を春の風 」は家藤さんが面白いと思った一句。前回の「つばきの日」句会ライブの動画を見直しながら今回の句会ライブに臨んだという家藤さんは、最も早く投句した人に贈られる「トップで賞」を前回も今回もわずか数秒差で2番に沈んだ作者を「ある意味持っている」と称えます。 ⑦【安 】氏の「違ったらまた考えるだけ山笑う 」はみんなの合言葉として覚えておきたいと先生が挙げる一句。各自が自分のプライドを守り始めてしまうと、世界が持続可能ではなくなる と述べます。人間関係にも適用できると家藤さんが続け、誤りを「間違ってない」と言い張れば、それがその人の真実になって辛くなるとの指摘に深く頷く先生は、「自分のプライドを守るために思い込んでいくことが自分の首を絞める」と述べます。先生の俳句仲間である"ろくさん"という男性が句会でポロッと発した「俺は、かかあにすぐ謝る 」という言葉が印象的だと笑いながら語る先生。また、先生の同級生である"きみち"さんの「分からんことはすぐ分からんと言う 」言葉を紹介。知ったかぶりをすると逆にしんどくなることからの台詞ですが、素直さが良くすぐに人に聞くことは大事だと家藤さんが述べます。さらに「嫌なことはすぐに嫌と言う 」は家藤さんの奥さんの言葉だと先生が紹介。自分の気持ちを述べるタイミングが大切だと続けますが、新たな考えの提示をした句の作者に謝辞を述べます。 ここで、お二方が句会ライブの兼題を決める方法に話題を転換。次回やる場合、17の目標の札を抽選箱に入れ、引いたお題で進行 する方法を先生が提案します。句を作りやすいお題と作りにくいお題があると述べる家藤さん。先生は目標(5)「ジェンダー 」の場合、俳句に盛り込む匙加減が難しいと述べ、家藤さんは問題提起のような強い言葉になってしまいがちだと返し、詩として季語を立てる難しさに先生が共感します。案外やりやすいのが目標(9)「産業と技術革新の基盤 」で、これは「575でカガク!」と同じだと指摘します。家藤さんは目標(7)「エネルギーとクリーン 」と目標(9)が連動すると述べます。ただ、下手すると標語のようになりがちなのが難しい点だと述べますが、視聴者が今のうちに句帳に一つずつ詠んでためておくのではないかと予想する先生。 最後に、何かの機会で再びSDGsの句会ライブが出来ることを目標に掲げました。
[194] 【いい、つばきの日】句会ライブの様子が一面に! <2022/3/6公開> 9連泊で全国を津々浦々仕事で回り、ようやく松山に戻ってきた夏井先生(八王子句会ライブでは拙者を紹介いただきましてありがとうございます)が自宅のポストに入っていた広報紙「まつやま」 を紹介。2022年1月30日に伊月庵に近い「ひみつジャナイ基地」から配信された「いい、つばきの日(1/28)」句会ライブ の様子が一面記事として掲載され、先生と家藤さんが映る配信中の写真も載っていたのです。配信時、後ろのホワイトボードに貼られた松山市の市花・椿の造花の作りの精度に驚く先生です。 椿の花にも多くの品種がありますが、正岡子規ゆかりの名前がついたものがあり、白い色の「子規 」、白にややピンクがかった「律(りつ) 」。句会ライブの席題は、正岡子規の妹の名でもある「律」の写真でした。子規記念博物館では実際にこれらの品種の花が展示されたそうで、先生は一度実物を確認したいと述べます。松山では松山城二之丸庭園、道後の飛鳥乃温泉(あすかのゆ)付近、松山総合公園(椿園)などで花を見れるのではないかと場所を列挙する先生。広報紙には椿の展示を行う場所が記載されています。椿園では海外の品種も展示されるようで、興味がわく先生。「律」の花もベトナムの品種との交雑種のようで、実際にそれを詠んだ句を紹介します。 【立花ばとん 】氏の「ベトナムの椿の肉の厚さかな 」は今回の夏井いつき賞受賞作。生配信の中で、即座に情報を掬い取るのも作句の醍醐味という先生。家藤さんに「椿の句は作ってないのでは?」と問いかけますが、当人は割と作っていて句材として好きだと答えます。さらに「どんな句か?」と聞かれて、即座に思い出せない家藤さん。案外自分の句は忘れてしまう という意見に先生も同意します。 ここで、家藤さんは写生の名句【河東壁梧桐 (かわひがしへきごとう)】の「赤い椿白い椿とおちにけり 」を挙げ、句材としての印象が強く、咲いている姿以外に落ちている椿に目を向けており、アプローチの角度が色々とあって面白い と思っていると述べます。 さて、自分の句を思い出したのは先生の方。【夏井いつき 】の「つばきつばき寂しい病で死ぬ椿 」。椿は明るく見開いたように咲く一方、落ちていく際は"寂しい病(びょう)"でポコッと落ちていく様を詠んでいます。家藤さんも落ち椿を題材に詠んだそうです。先生は、椿は魅力的な句材であり、赤や白などの色、椿そのものの名前やあだ名からも詠み込める と述べ、さらに一句を思い出します。【夏井いつき 】の「乱切りにすればきれいな椿かも 」。椿の花単体にあるギトギト具合や色の入り乱れを心象的に表現した一句です。 さて、今回の席題を決定した裏話へ。「椿」でストレートに出題すると、予め予想して構えている俳人もいるため、別の席題を考えていた という家藤さん。椿の新品種を調べていた際、「煌(きらめき) 」という新品種があり、これを席題に出そうと数日前まで考えていたそうです。ところが、詳細を調べると「煌」は愛媛ではなく愛知で生まれた新品種だと分かり、松山らしい兼題として急に変更したとのこと。来年以降も「いい、つばきの日」に句会ライブを継続していきたいと述べ、席題の行方についてお二方が私見を述べました。
[195 ] 【人生相談】勢いで人生を決めるのはどうでしょうか? <2022/3/10公開> 動画[188]以来の人生相談。「勢いで人生を決めてしまうのはどうなのか? 」。質問者によると、結婚や仕事などのことの相談のようです。先生も勢いで決めたことは何度もあるそう。そんな質問者に次の一句を贈ります。 【夏目雅子(なつめまさこ) 】の「結婚は夢の続きやひな祭り 」。作者は1957年神奈川県出身の俳人で、女優として活躍するも27歳の若さで亡くなった人物。「東京俳句倶楽部」句会へ所属し、創作しました。 先生は、夏目雅子が俳句をしていたことに驚きます。デビュー当時の化粧品CMのビキニ姿が健康的な小麦色の肌で、それにインパクトを覚えたとも述べる先生。作者は白血病にかかっていたと言われています。また、夏井先生と生誕年が同じである ことにも驚きを隠せないご様子に。さらに先生は、夫の兼光氏が俳優の松田優作と同い年だというプチ情報を述べ、生きていればこんな歳になっていると感慨深く語ります。 質問に戻りますが、勢いで人生を決めて良い という結論を先生は明確に述べます。計画的な人生を過ごす人もいるかもしれませんが、大体の人は勢いに勢いが重なって人生が成立する もので、そんなに深く考えるべきではないと忠告します。句のように、結婚も夢・勢いの続きで成立するものであり、最後の可愛らしい季語「ひな祭り」は人によっては「隙間風」 など人によって着地が異なっていくと解説します。 勢いで始まった波の流れの中、一生懸命誠実に生きていれば、どこかで辻褄が合ってきたり、結局この苦労があったのだと納得できる日が来るため、それまでは勢いで好きなように行くべきであると持論を展開。「勢いない人生の方が寂しい人生かもしれない」と明るく腹をくくるつもりで、この句を10回唱えましょうとアドバイスしました。
[196] 【人生相談スピンオフ】正人の結婚後の生活はどうなの? <2022/3/13公開> 前回の動画[195]のスピンオフ 。人生相談のコーナーでは、家藤さんが全く働いていない ことを先生が不満げに打ち明けます。家藤さんは、ハシビロコウのように微動だにせず固まるのがこのコーナーでの役割だと返しますが、先生は納得しません。家藤さんは、静止芸も楽ではないと苦労を述べます。 【夏目雅子 】の「結婚は夢の続きやひな祭り 」は前回動画での紹介句ですが、先生は感想を求めます。家藤さんは「夏目雅子と松田優作のくだりが気になった 」と回答します。先生は、夏目雅子と夏井いつきが同級生であることに「時間というのは残酷だ」とコメント。夏目雅子が俳句を始めたことを知ったのは先生が俳人となって間もなくのことのようです。作者が亡くなった27歳当時、先生の長女・ふみ氏が産まれる頃のことだと明かします。長男の家藤さんは二番目の子です。作者が白血病にかかった時の驚きも「美人薄命」が本当なんだと感じられたようで、今回の撮影でも色々な思いが蘇ったと述べる先生です。 家藤さんは、本編で語った「隙間風」が季語であれば、二人の関係が終わってしまう ようと鼻で笑うように述べます。先生は句の印象を決定づける季語の力の偉大さを改めて確認します。家藤さんが「日向ぼこ」なら後期高齢者のような印象 になる と述べると、新型コロナウイルスのワクチン3回目を夫婦両方接種している感じだとこのご時世になぞらえて返します。 ここで、話題は家藤さんの結婚後の生活 へ。結婚9年目となるようです。お相手は、同棲の期間が長かったようですが、先生の家に下宿していたため結婚前から娘のような感じで接していたと述べる先生は、「ひな祭り」感があったと振り返ります。 そして、家藤さんのお相手と先生との初対面時の台詞に。リビングに灰色のパーカーを着て座るお相手に対し、先生は咄嗟に「大きなフクロウがおる! 」と言い放ったそうで、当時の思い出話が膨らみます。 そして、家藤さんにとって「結婚は夢の続きなのか?」と再確認したいという先生。夢の続きではなく、現実感が強すぎる と答えると、特に子が生まれれば「夢の続き」とは言っていられないというという話の方向性に。若き作者は季語に現実味の薄い「ひな祭り」を置いていますが、ご存命であればどんな人生だったか想像したいと家藤さんが述べます。先生は、最後の季語が色々と切り替わるような、そんな人生を送れることが幸せ だとも語りますが、本編よりもよっぽど人生相談しているようにも感じると本音を漏らす家藤さんは「今までが茶番だったのか」とも述べます。 先生は、家藤さんがようやく仕事をした気分だと述べて、動画を締めました。
[197] 【天才的な凡人句】これ以上の凡人句ある!?『プレバト!!』総合演出 水野さんの一句 <2022/3/17公開> 今回は
凡人あるあるシリーズ <[125][127][129][131][139](夏休み)、[137][147](無人駅)>になぞらえて
「プレバト!!」総合演出・水野雅之プロデューサーの俳句 を紹介。「
無人駅 」に詩の臭いがあるものの、典型的な凡人ワードとして以前から紹介されていました。
さらに、同番組でも何度か詠まれている「
木漏れ日 」も同様の凡人ワードとして紹介します。「木漏れ日」を初めて聞いた外国人が言葉の美しさに感動する声を耳にする先生は、その分俳句に山ほど出てくる注意ワードだと警告します。
そして、
水野プロデューサーがツイートしていたある句 にバカ受けした先生は早速その句を紹介します。
【
水野雅之 】氏「
木漏れ日にふと気付く春無人駅 」。まさに凡人パーツだけで構成した俳句に仰天するお二方。
「木漏れ日」「ふと」「気付く」「無人駅」の4単語は凡人が使いたがる単語 で、"凡人ハンバーガー"と揶揄する家藤さん。
先生は番組で、
2音足りない時の「ふと」、3音足りない時の「少し」 を凡人が陥りがちな音数調整だと解説しています。「気付く」や「思う」もそもそも"気づいている""思っている"からこそ書き留めているわけであり、明らかに不要な単語です。本人のツイートでは、「
凡人ワードにご注意を 」と注意書きがなされており、意図的に作り上げられた句のようです。
凡人ワードのみで構成する句としてはハイクオリティだと言いたいご様子の先生に、家藤さんも「凡人のバンズで凡人の具を挟みながら凡人の味として成立しているのが凄い」と述べ、先生はその喩えを褒めます。
先生は飛行機での移動の最中、これ以上の凡人ワードを入れた句が出来ないか考えていたようですが、思い浮かばなかったといいます。ここで、2人はこれ以上の
凡人句が作れないかに挑戦 し、ペンを執ります。
意外と凡人パーツで凡人の句を作る難しさを述べる先生。家藤さんも、凡人パーツを使うことをやめるよう無意識に脳内に刷り込まれるため、
理性的に脳内ブレーキがかかってしまい、普段の俳句を詠むことと全く違う筋肉を使っている ようだとも述べます。
さらに先生は、季語を入れる難しさにも言及します。
水野氏の凡人ハンバーガー句を越えるような、凡人ワードを多く入れた句を考えていくというお二方。この句と同じ4単語の凡人ワードの句に挑戦し、作った句を披露します。
【
夏井いつき 】「
母の背を偲べば秋の夕日燃ゆ 」。
「母の背」「偲ぶ」「燃ゆ」と凡人ワード は3つです。みんなが見たがる「母の背」、よくある「偲ぶ」、"燃えない夕日があったら持ってこい"という「燃ゆ」。言葉のつながりにも凡人らしさがあり、「秋」の季語の選択にも凡人らしさがあると分析する家藤さん。
【
家藤正人 】「
少し舞う雪に故郷思い笑む 」に先生は思わず爆笑。
「少し」「 (雪が)
舞う」「故郷(ふるさと)思う」 の3単語に
「笑(え)む」 のよくある要素を含めて3.5単語の凡人パーツだと先生は認定します。
先生は4単語を入れ込んだ水野総合演出に拍手を送り、「ブラボー!」と投げかけて動画を締めました。
[198] 【人生相談】「恵まれているのに、突然死にたくなる」そんなあなたにこの一句 <2022/3/20公開> 動画[195]以来の人生相談。「周囲の人や家庭環境に恵まれているのに、突然死にたくなります 」という切実な悩み。 一瞬言葉を失う先生ですが、「恵まれている」点を認識していることが良いと褒めます。後半の「死にたくなります」が大切な問題だと述べる先生は、質問者にピッタリな名句を紹介します。 【赤尾兜子(あかおとうし) 】の「大雷雨鬱王と会ふあさの夢 」。作者は1925年兵庫県生、俳誌『渦』を創刊し主宰。特定の俳人に師事せず、前衛俳句系俳人として活躍するも、のちに俳風が大きく変化した人物です。 「死にたくなる」と思う原因を考えた際、「鬱王」が近づく のが要因の一つだと挙げる先生。あるいは「大雷雨」の可能性もあり、気象病で低気圧が近づいた際に体調が悪くなる例を挙げます。また、季節の変わり目に体調不良や生理など、先生は句になぞらえて原因を探っていきます。 先生は、死にたくなった際、「鬱王が来てしまった」と軽く考えてみる のも1つの手だと提案します。「雷が鳴りそうな天気になってきたか」くらいの感じで、「鬱王がしばらく滞在するか」と思い込んでみてほしいと語ります。 そして、何かを思いついた先生は「鬱王のサブちゃん」など、得体の知れないものに名前を付ける ことを提案します。「仕方ない、2~3日付き合うか」など、朝の夢の一つくらいに考えてみてほしいと忠告します。 さらに、先生の周囲の人物でも"鬱王"と付き合っている俳句仲間が沢山いるそうですが、その中に「漢方薬が効く 」という方もおられるそう。 可愛い名前を付ける、漢方薬を飲むなど対処しながら、一緒に付き合ってみてはいかがでしょうかと述べました。
[199] 【人生相談スピンオフ】鬱王に名前をつけてみる <2022/3/24公開> 動画[198]のスピンオフ。先生はいい加減な回答を言ってしまったと反省します。家藤さんは以前から人生相談はそうだったと述べて先生は同調します。 先生は、新聞やラジオなどの「人生相談」コーナーで回答する人が偉い と切り出します。相談者の年齢・家庭環境などが分からない中、質問に適宜回答するため、相談者の状況によって回答が変わってくる というのです。そのため、俳句の読み解きよりも人生相談の方が難しい と先生は述べます。 さらに、家藤さんはこの人生相談シリーズが始まったきっかけをさかのぼります。名句を違った形で紹介したいと行き当たりばったりに始まったと先生は述べます。しかし、人生相談という名前にジワジワと首を絞められ、家藤さんは働きもせずハシビロコウのように固まっているだけで、不公平な形 だと先生は率直に述べ、自身を「鬱王」だと比喩します。 先ほどの「鬱王」に名前をつける提案に、家藤さんは自身の名「正人」と挙げますが、生々しくなくおちゃらけた名前が良いと先生は述べます。実在せず、愛せそうな名前 を実際に考えてみるお二方。 家藤さんは「うる星やつら」のラムちゃん を挙げます。押しの強い明るい子だと印象を述べますが、「押しが強い」なら丁度良いと先生は言います。「鬱王、ラムちゃん来てます」と他人に言えば、「今ラムちゃん来てるなら仕事頼まない。しばらくラムちゃんと付き合って」と周囲の人が配慮しやすくなると述べます。 ここで再度句を家藤さんが読み上げますが、大変明るい雰囲気になったと総括する先生。最後に「作者が草葉の陰で泣いている」とユーモラスに反省しながら動画を締めました。
[200] 【俳句で旅する】江戸期から3歳児の俳句までカバーする新刊 プレゼントにも最適 <2022/3/27公開> 夏井先生から2022年4月1日付の新刊『夏井いつき、俳句を旅する』(悟空出版 刊:1500円+税) の紹介。同社での1年分のウェブ連載をまとめたもののようです。本の装丁がお洒落だと述べる家藤さんは、表紙の花が木彫りだと知らされて仰天します。挿画は和田治男氏(造形作家/立体イラストレーター)だと紹介します。 この本のイメージについて先生は、俳句に興味はあるものの作句まで踏み込んでいない人や、「プレバト!!」を観るのを楽しむ初心者に向けて、誰かに可愛い小物を買うようにプレゼントできるコンセプトで作りたい との希望を編集者に伝えたと語ります。まさにイメージ通りの本になっていると絶賛する家藤さんは、最近はカフェスペースのある書店が増えている事情を挙げ、そこに置いてあってほしい本だと述べます。手に馴染む大きさ、表紙のイラストのお洒落さも楽しんでほしいと先生は補足します。 肝心の内容について。江戸期の文豪から現在の俳人まで、年齢は3歳児からご年配の方まで幅広い俳句を107句掲載しているエッセイ集 で、先生の好きな試みだったと言います。俳句という文学作品においては、名前ではなく作品が大切 という思いで、古今東西・老若男女取り混ぜているとの考えを述べます。 夏目漱石「永き日やあくびうつして分連(わかれ)行く 」、高浜虚子「春風や闘志いだきて丘に立つ 」の句に並び、動画[68]で紹介済みの【たくみ 】氏(当時3歳)「めいげつやだいおういかのめはおおきい 」も収録されています。作者は「はぴかちゃん歯いく大賞」で小学生の部でも昨今入賞され、この句を作ったことも覚えていたようです。先生は、この「だいおういか」の句は名句であり、是非その理由も含めて手に取って本を読んでほしいと述べます。句の解説だけでなく、エッセイ集という読みものとして純粋に読書が好きな人にも近づきやすい一冊 だと家藤さんが推します。 先生は、俳句を鑑賞する際の2つの方法を述べます。一つは作家論的に読む方法 (例えば、正岡子規は脊椎カリエスを患っていたため、亡くなる間際に作った句の背景は…)、もう一つに字面だけで鑑賞する方法 があり、著書では極力後者で解説していると言います。勿論、句の背景を知って驚くこともあるそうで、色々な書き方にこだわったそうです。校閲部のあずきさんともお話で「儲けもん」に相当する未知の内容もあったようですが、肝心のどの部分かは残念ながら思い出せず。 面白い句や噛むほどに味が出る句も掲載されている一冊。是非お友達や家族にもプレゼントしてほしいと先生が述べました。
[201] 【伊月庵ベンチトーク】ビールを飲むために作られたベンチ? <2022/3/31公開> 伊月庵(いげつあん)の屋外ウッドデッキ のベンチにお二方が座って動画収録。この場所でビールを飲むのが伊月庵を建てる際の一つの目標だった という先生。 コロナ禍前の3年前「花守祭(はなもりさい) 」で1度だけ大勢が集まった場所とのことで、砂利の場所に多くの椅子を置き、近くの酒屋からビールサーバーを借りて置くほどの盛況ぶりだったようです。コロナ禍以降、特に開放していない場所だと述べるお二方。 コロナ禍での花守祭はネットを通じて中継されましたが、以前のエピソードを述べる先生。夫の兼光氏の音楽仲間であるサビエル大村氏と偶然に先生がはち合わせ、上方のお寺で演奏会が行われたことを語ります。 また、家藤さんはウッドデッキの場所で、月曜カルチャーの課外授業として秋に月見句会をした思い出を語ります。道後の上人坂を上れば、今お二方が座っている場所がオープンスペースとして見えるとも述べ、ここで見知らぬ人に手を振る先生です。 さらに、先生はこの場所に桜を植えた そうで、現在は若木の桜の木があるようです。また、この坂の場所は水の流れる筋があるそうで、伊月庵の桜の場所も硬い層の上に水の筋があり、位置が低すぎて根腐れしやすいとのことで土を盛って現在の2本目を植えたそうです。桜を植えた際、水が多すぎた原因を突き止めるお二方です。 また、ラジオの「一句一遊」の兼題に「彼岸桜 」が出題されたことを話します。先生は以前の著書『花の歳時記』を再度読んで復習し、さらに妹のローゼン千津さんが桜の専門家に聞いてきてもらったことを述べます。桜の木は地中30~40cmから根を横に広げていく ようで、それだけの盛り土をしているこの場所の桜に関しても、今後の成長をみんなに見守ってほしいと先生は見上げながら述べます。 来年以降、花守祭や観月祭などこの場所で行いたいと期待を述べる先生。家藤さんは、このウッドデッキにてオチのない話をする「どうでもいいシリーズ 」を展開する可能性に言及しました。
[202] 【第7回おしゃべり俳句】2歳児のナンパが可愛い <2022/4/3公開> 動画[185]以来の第7回おしゃべり俳句 。前回動画に寄せられた優秀句を紹介します。 ①【はなのパパ 】氏から。【はな5歳 】「蝉時雨おとなはよけいなことするな 」は初投句。作者の親はこのYouTubeチャンネルを娘さんと見ているそうですが、第4回おしゃべり俳句の回で家藤さんが言った言葉 を娘さんが気に入り、事あるごとにこの台詞を娘さんが言うようになったそうです。おしゃべり俳句では、大人が投句のために台詞を勝手に変えることをタブー だと先生が話していますが、以前の動画【カヅラ梅】氏の知り合いの女の子2歳の「赤ちゃんに戻る時使う夏衣」での会話がきっかけ のようです。家藤さんは作者の父に「娘に負けないで生きてください」と投げかけます。 ②【まつマッキー 】氏の姉の子【ひさと3歳 】「これ どうやってのぼるん クリスマスツリー 」も初投句。作者に共感する先生は、登りたくてもフサフサする感触が邪魔をする上、街中にあるものは大きなものもあると述べます。作者から「クリスマスに向けてツリーを飾っている時、高いところに登るのが大好きな甥が放った 一言」とのこと。家にある小規模なツリーと判明しますが、先生は発想が濃すぎると褒めます。 ③【爽花 】氏から。【かなた君2才 】「冬日和『あみだふどみょーいっしょいこ!』 」。「阿弥陀不動明王 」のことだと推測されます。投句主から「先日、たまたまお寺で出会ったかなた君は、仏像が大好きでママと一緒に仏像を見に来ていた 。仏像の会話で楽しいひとときを過ごした。すると、ママより私の方がちょっとだけ仏像に詳しいと感じたのか、かなた君はそう言って自身を誘った」とのエピソード。次回一緒に行こうとナンパされたと解釈しますが、2歳児が仏像に興味を持つ ことに食いつくお二方。不思議な造形美に魅了された可能性を述べる先生。今後どんな人生を送るのか非常に気になると家藤さんが述べ、続報が知りたいと先生も続けます。 ④【深 】氏は小学校の教員。【Yくん(9歳) 】の「ぼく将来強盗犯になる春よ 」。投句主から「あるお調子者の男の子が吐いた台詞で、行く末を心配しつつも面白くて 投稿した」とのこと。先生は難しい漢字が並んでカッコいいと感じた可能性に言及しますが、強盗犯にはならないでほしいと願いを語ります。 ⑤【無花果邪無 】氏から。【小学3年生くらいの近所の男の子 】の「冬の暮ばばあが同じことを言う 」。投句主によると「息子の塾が終わり、父に迎えに来てもらうはずだったが、公衆電話から掛ける際に父の走り書きの字が正しく読めず、電話番号を間違えてしまった 。何度かけても父に繋がらず、徐々に暗くなる寒さの中を1時間ほどかけて家まで歩いて帰った。父が家に帰って思わず抱きしめた時の息子の言葉。『ばばあ』とは間違い電話の際のアナウンス『おかけになった電話番号は現在使われておりません 』」とのこと。切ないエピソードに苦笑するお二方ですが、本人は必死だったはずだと弁解します。 そして、先生が選ぶ今回のベスト3 を発表します。 ⑥【新開ちえ 】氏の娘【マスカット(7歳) 】の「ランドセルのにおいがなくなった春 」。先生は生々しく共感できる と述べます。新品のランドセルには独特の革の匂いがしますが、2年生の春の段階にはもう無くなっているという一句。季語「春」は作者がつけたようですが、おしゃべり俳句の分量が多く、これを基本としたい と述べる先生。繰り返し「おとなはよけいなことするな」と家藤さんが忠告します。投句主によると「4月から2年生になる娘が言った言葉で、買いたてのときのランドセルの匂いはもうない そう」とのこと。 ⑦【妹のりこ 】氏の連れ合いの孫【きこ(4歳) 】の「寒卵割れて私にはまだ早かった 」。後半のフレーズが良いと先生は褒めます。寒の頃の卵「寒卵」は数が少なく、滋養に良い意味合いがあると解説します。「寒卵割れて」から始まるおしゃべり俳句ですが、通常の作品としても質が良いと先生が述べ、取り合わせの衝突が良い と家藤さんも述べます。投句主より「姉の真似をして卵を割るとボウルに入らず落ちてしまった。"私にはまだ早かった"が抑揚のない呟きで大笑いした 」とのこと。淡々としていて味わい深いと感想を述べる家藤さんに続き、「寒」の字が効いてくる印象もある と先生が評します。様々な失敗のケースを𠮟責に留めず、おしゃべり俳句として文字に残し「俳句になったね」と言えるかどうかは大きな差 だと先生は述べ、おしゃべり俳句のタネとして救われるところはあると家藤さんも補足します。是非割れた時のおしゃべり俳句も送ってほしいと投稿者に呼びかけます。 ⑧【風早みつほ 】氏の【リッツ(もうすぐ小学生) 】「人はさくらをみるさくらはたいようをみる 」。「さくら」の季語もしっかり入り、独立した作品として十分味わえる と評す先生。投稿者によると「桜が好きだと言う6歳の子に、『どうして?』と尋ねたところ返ってきた答。最近は私が句帳をめくると、『ぼくの俳句作って作って!』とリクエストするようになった 」とのこと。先生は素晴らしい循環が出来ていると褒め、さらに句の台詞を言えるようになる意味合いの大きさにも触れます。家藤さんは「事実ではないとして否定する大人もいるが、作者にとってはこれが真実で、その台詞をそのまま書き留めて受け止めることも凄く大切 」だと述べます。既発表句となるため今からはできませんが、仮に「おーいお茶」に投句していればかなり良い線まで行くとも語るお二方は、さらに良い句が出来たら「おーいお茶」などの賞に投句するのも一手 だとアドバイスします。 第8回に向けての投句は、この動画のコメント欄に寄せてほしいと述べました。
[203] 【おウチde俳句くらぶ】作品集が完成しました! <2022/4/7公開> 有料投句サイト「おウチde俳句くらぶ 作品集2021」 (900円+税)完成の報告です。1年間のまとめとして各兼題の天・地・人の入選句をまとめたもの ですが、会員の方には自動で送付されます。 ラジオの「一句一遊」にも反響コメント。 【広島しずか80歳 】氏より。「3月5日に作品集が届いた。薄柳色の表紙に優しさと希望を感じた。第2回から参加し、ボツや並が多い1年だったが、人が4句あり作品集に自分の俳句を見つけ、手が震えて飛び上がった。俳句のタネを見つける、発想を飛ばす、季語と内容が合っているかを考えるのは大変だが、もう少し頑張れそう」とのこと。 第2回の"写真de俳句 "の兼題は「天空のポスト 」(写真:【藤田ゆきまち】氏)。写真から自由に発想して俳句を詠む企画です。また、写真そのものも会員が送ってくれたものを採用します。この時の天の句は【にゃん 】氏の「仄暗きポストの口に冬の蜂 」でした。 ここで、先生は選句の仕方に言及。「天」1句、「地」10句、以下「人」「並」(並は作品集に掲載されない)と評価がされますが、「地」以上の11句の中から「天」1句を決める作業は毎回悩ましいとのこと。おウチde俳句の場合は、兼題写真と1ページに載せる際に最も似合っている句を選ぶ ことを優先的に考えて来たそうです。作品集として見開いた際のインパクトを考えると、写真との取り合わせがマッチしているかという点が大切だと納得しながら述べる家藤さん。 第3回の兼題「尾道の路地 」(写真:【ねむりすいか】氏)で天を獲得したのが【播磨陽子 】氏の「凩を感知し猫の尾のぴるる 」。写真に猫の落書きがあるものの、それが抜け出して生きた猫のように歩き出すようなイメージが出てくると楽しいと思ったという先生。家藤さんも良い化学反応だと頷きます。 第6回の兼題「鴉(からす)の巣 」(写真:【板柿せっか】氏)の写真での天は【熊の谷のまさる 】氏の「桐咲くや鳥の言語は二進数 」。桐の大きな木に黒っぽい巣らしきものがある写真で、何を取り合わせかに悩む難しい兼題。鳥の言葉を「0」「1」の二進数に捉え、鳴き声に対する発見を詠んだ句ですが、取り合わせによる化学反応の良さを褒める先生です。 第11回の兼題「江の島の夕日 」(写真:【ふるてい】氏)の写真での天は【夏椿咲く 】氏の「椋鳥の群れなす理由空がきれい 」。2021年12月に放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも選句の様子が取り上げられました。写真にはいないムクドリを取り合わせ、音が生まれる印象を持つという先生は、そういうことを考えるのが楽しいと述べます。家藤さんは、新しい見解を知った上で録画番組を再度見直せば、二次三次的な発見で楽しめると補足。 写真de俳句は夏井先生の担当ですが、家藤さんの現在の担当は"俳句deしりとり "。このYouTubeでも何度か行っている「尻二字三角パス」に慣れてもらうための布石としての企画で、最後の2文字を頭につけて俳句を考えるようです。第1回の兼題が「なし」のため、やたらと東南アジアの料理「ナシゴレン」が来てしまい、人間の思考は同じところに行くようで面白く見ていると述べる家藤さん。言葉を楽しむのが大事なトレーニング だと先生も補足します。 さらに、巻末には「おウチde俳句大賞 」の入賞作品も掲載。現在、第4回の選句が終わった状況を述べる先生ですが、今後第5回の応募も始まるようです。非会員は6部門中1部門にしか投句できませんが、会員になれば6部門全てに応募できる特典 があります。大賞賞金は20万円。会員になれば、入賞率も格段に上がるとのこと。 また、先生はおウチde俳句大賞の表彰式が素敵だと言います。東京・日比谷公園の「松本楼」という場所で毎年開催。前回は先ほどのプロフェッショナルの取材も入ったそうです。「おウチde俳句くらぶ」を中心に俳句の輪が広がっていくと家藤さんが述べました。
[204] 【夏井いつきの人生観】言ってた企画をやってない...? <2022/4/10公開> 再び伊月庵の外でベンチトーク。このYouTubeチャンネルに関して気掛かりだったこと を告白する家藤さん。やれてないことがあると言い、「種田山頭火全集 」(現在刊行中)を持ち出します。 2021年は毎月の正岡子規シリーズ(5月を除く)を行っていましたが、今年は種田山頭火シリーズ を毎月やるはずではなかったのかと先生に問いかけます。しかし、先生は人生はもっと長いスパンで考えるべきで、この1年は充電期間であり、もっと大らかに考えるべきだと返します。山頭火をまずは自分の体に入れるべきだと先生は息子さんに忠告します。パッと思いつく句があるのかと逆に問いただす先生。「うしろすがたのしぐれていくか」「分け入っても分け入っても青い山」 などはほとんどの人が知っていると言います。 家藤さんは、以前のダンロップのCMで福山雅治さんが山頭火の句をポツッと呟いたことを述べ、(「雪へ轍の一すぢのあと」「雪がふるふる雪見てをれば」 )呟く人物によって大変カッコよくもなると印象を語ります。 山頭火は山口県の生まれながら、亡くなったのが松山市の一草庵だと述べる先生。望み通りのぽっくり往生を実現したようです。句の10や20は言えて当然で、そのレベルになければならない と手厳しく息子さんを説得します。先生は、パッと開いたページの俳句を紹介する企画を唐突に打ち出し、予行演習を行います。 【種田山頭火 】「山裾あたたかなここにうづめます 」。暖かい松山に山頭火が何かを埋めていると述べる家藤さんに、リスなどが持ってきた木の実などを埋めて忘れてしまうなど発想力豊かに述べる先生です。 音便シリーズも完結していますが、最初の頃は資料作りに相当時間を費やした と述べる家藤さん。最近はなかなか時間が取れないようです。また、スタッフに頼んで品詞分類表を作ってもらったそうですが、現時点では活躍する機会がないようです。 先生の思い付きで「どうでもいい山頭火」シリーズを提案します。1ページ目から挑戦。 【種田山頭火 】「松はみな枝垂れて南無観世音 」。少し難しい句でした。 今後、パッと開いたページにある句についてベンチトークとして語るようです。シリーズ名は「デッキで山頭火」 。長いスパンで緩く行うと予告しました。
[205] 【伊月庵ベンチトーク】組長が何度も感動する作品とは? <2022/4/14公開> 動画[201][204]に続く伊月庵屋外でのベンチトークはシリーズ「どうでもいい話 」と家藤さんが切り出してからスタート。映画鑑賞が趣味の家藤夫妻ですが、最近観た映画の話を始めます。 家藤さんが観た映画『イエスタデイ 』(2019年)は同名曲でも有名なビートルズが突然消えてしまった世界 を舞台に、売れないミュージシャンの主人公だけがビートルズの存在を記憶しており、その歌を他人に聞かせることで成り上がろうとする物語。あらすじを聞いた先生は「パクって金持ち 」と端的に述べますが、家藤さん曰く葛藤を思うとのこと。世界の誰もが知らない曲を聴いて感動するのはあって良いが、他人のアイデアで金儲けをする点が面倒くさいと持論を展開する先生です。 さて、夏井先生の家に幼少期に転がっていたVHSテープがあり、それを大人の映画だろうと見ぬふりをしていた名作映画があると述べる家藤さん。タイトル『マディソン郡の橋 』と告げられて「私が買った」と即答する先生は、かつて同名の小説を読み、滂沱の涙で泣き続けた と語り始めます。読んだ本のストーリーをすぐ忘れてしまうという先生は、読むたびに感動していたそうですが、同名で映画化されたことを知って観たそうです。有名な女優が主人公(女性スタッフが「メリル・ストリープ」と助言)でしたが、先生が小説で思っていた主人公の華奢な若いイメージと異なり、恰幅の良い中年女性のよう。家族が留守の時に居合わせた人物と恋に落ち、最後に"滂沱の涙"になる展開があると述べます。主人公の女優が、冷蔵庫の扉を閉める際に足で蹴っている様に一番仰天した ようで「足の使い方の一つを学んだ」とユーモラスに語ります。結末は覚えていないため、観れば"滂沱の涙"が出てくるとのこと。 そして、例のVHSテープを先生が観覧している場面を一度も目撃していないと述べる息子の家藤さん。「断絶の深い親子だった」と意味深に述べる先生ですが、家藤さんは興味津々に先生の話に聞き入ります。監督のクリント・イーストウッドは主演も務めています。 俳句仲間の東林(とうりん)氏が「僕の顎はクリント・イーストウッド」だとダジャレを言った笑い話を紹介する先生。 次回も映画の話をすると述べました。
[206] 【伊月庵ベンチトーク】組長が人生で1番衝撃を受けた映画とは... <2022/4/17公開> 動画[205]の延長戦。今度は人生で一番衝撃を受けた映画 について絞り出しをします。家藤さんはジャンルによって「人に薦めたい」か否かが異なり、中々決められないようですが、先生はお薦め度など全く関係ないご様子。 先生が大学生の時、当時広島大学の学生だった宇都宮弘子 さんに連れていかれて観た映画を語ります。宇都宮氏は「伊月庵通信」で「日本の色歳時記」の兼題解説者 で、先生とは高校時代からの幼馴染。映画同好会のようなクラブでも活動されていた方のようで、映画自体に乗り気でもなかった先生を誘います。『愛のコリーダ 』(1976)は"阿部定事件"(「阿部定」が愛人男性を殺害し陰部を切除した事件 )を題材とした映画で、映画名を知らずとも事件を聞いて納得した家藤さん。 前評判も聞かされずに衝撃的な展開が続き、一度見終わった後クタクタになった先生ですが、入場料を再度払うのを躊躇う宇都宮氏に誘われて、2周目も観たそうです。『愛のコリーダ』の名を聞くだけで疲労感が出ると漏らす先生です。 その後一人で映画館に行くことがほとんどなくなったものの、息子の家藤さんらをジブリ映画に連れて行く ことに繋がったそう。家藤さんが母と行ったと述べる『風立ちぬ』は零戦を舞台にしたもので、当時ボロ泣きだった先生ですが、ご自身の記憶にほとんどない模様。『もののけ姫』も家族で観たようです。しかし、話が弾まず『愛のコリーダ』にインパクトを全て持っていかれていると分析する家藤さん。 そして先生が「一句一遊」の話を切り出すと、すぐさま俳号「愛のリコーダー 」と即答する家藤さん。先生にとっては例の映画を思い出してしまい迷惑に思っているようですが、家藤さんはフォローします。 今後も家藤さんから映画の話をしてほしいと述べる先生。一方で『愛のコリーダ』の印象が凄すぎて観てみたいと述べる家藤さんに、先生は観なくてよいと一言返しました。
[207] 【プレバト!!】東国原さんベスト3句はどれ?組長の実の妹と語る! <2022/4/21公開> 当俳句ブログ紹介動画 今回は先生の妹である
ローゼン千津氏 が画面右手に座り、家藤さんは音声のみで参加。画面奥には「高視聴率御礼」の字とともに、毎日放送から贈呈された花が置かれています。
ローゼン千津氏のブログ をテーマに語ります。『
ミセスローゼンの道後日記 』2022年4月1日付の記事では「プレバト!!」の句について書かれています。テレビがなく「TVer(ティーバー)」で番組を視聴していると述べるローゼン氏。
東国原英夫氏の添削後の句でお気に入りの句が3句ある と紹介されます。ブログでは原句ではなく「向日葵と畜魂の句」のように端折って記載されていました。
先生は、番組の俳句コーナーは実に8年以上あり、最初は現在の写真兼題ではなく短い動画が流れて詠む形だったと述べます。先生は妹さんのブログを閲覧して、印象的な句が全て東国原氏の俳句である点に驚愕したと言います。当のローゼン氏は、添削の過程が見えてくるのに非常に興味深かったと語ります。そして、一句ずつ紹介します。
①【
東国原英夫 】(夏井いつき添削)「
向日葵や畜魂二十九万頭 」。「畜魂(ちくこん)」は家畜の魂で先生が用いた造語。放送当時の反響も大きかった一句で、元の句との落差が激しいと述べる先生。原句は「
向日葵や眠る骸(むくろ)に頭(こうべ)垂れ 」でした。普段は添削であって改作はしないスタンスの先生ですが、
作者本人がこの句の思いを熱く語ったため、しっかりした句として成仏させるためにこの改作に至った 経緯を語る先生に、当時の放送を知るローゼン氏も同情します。「畜魂」と響き合うように季語「向日葵」が一面に咲く映像が立ち上がるような印象があると熱く述べるローゼン氏。放送後、地元の宮崎県から畜魂碑を建ててほしいという声も上がったと先生は述べ、添削の掟破りをした一句として記憶に強く残っていると言います。
また、この頃から東国原氏の句が変わり始めたとも述べる先生。初期の頃の同氏は表現したいことが山ほどあるものの、17音に盛り込む技術力が足りず、大体自爆していて滅茶苦茶だったとの印象を語ります。そして、その技術力が少しずつ熟してくる転換期にあった頃だと言うのです。ちなみにこの句は通算9句目の一句です。
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さて、家藤さんが何かと検索を掛けていたのが
当ブログ とのこと。タイトル名『
プレバト!!で芸能人が詠んだ俳句を徹底紹介するブログ 』と俳号「
白プロキオン 」の紹介とともに、「
東国原英夫の全俳句一覧 」記事にある情報を紹介します。夏井先生は「凄い人がいる」、ローゼン氏は「ブログを見てみよう」と述べます(お言葉を頂いて感無量であります)。「見応えが十分にある」と家藤さんからもお言葉を頂きました。先生は2句目の「進撃や」の句についても触れました(誠にありがとうございます)。
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ここで、金子兜太先生の句を思い出したと述べるローゼン氏。金子氏も爆発的な形で17音に盛り込む俳人であり、宮崎国際音楽祭に行ったついでの宮崎観光で金子氏の鯨の句碑を見たそうで、宮崎の魂の凄みを感じたと言います。観光名所・鬼の洗濯板にあるのが【
金子兜太 】氏の「
ここ青島鯨吹く潮われに及ぶ 」。骨太な感じだという先生です。
②【
東国原英夫 】(夏井いつき添削)「
怖るるな詩を怖るるな長き夜を 」。2回連続で経験したタイトル戦の最下位を怖れているという意図の一句ですが、原句は「
怖るるな最下位怖るるな夜長 」で「詩を」は入っていませんでした。先生曰くこの句は「添削」に収まっているとのこと。ローゼン氏は添削後の句において
共感できるようで「こんな夜が幾つあっただろうか」 と述べます。俳句で小さな生きがいを手にする人もいれば、
言葉が見つからずに悪戦苦闘する夜の数もある という先生。当ブログ記録「初のシュレッダーの洗礼を受けた一句」と家藤さんが紹介。添削後の句も句集に載せてほしいという本人からの要望があったことを思い出す先生は、少し嬉しかったと述べます。原句のみは「プレバト!!」ルールであって、実際
添削後の句を句集に載せることはOK だとフォローするローゼン氏。
自分の心に叶う添削であれば、自分の意志で頂くことは俳句の世界では大いにある と先生も続けます。通算73句目の一句です。
③【
東国原英夫 】(夏井いつき添削)「
カンガルー預かつてゐる朧かな 」を村上春樹かと思うと絶賛するローゼン氏は、「カンガルー」と「朧」が東国原氏の脳内に句想としてある点を褒めます。原句は「
カンガルー泊めて2DK朧 」。「2DK」など具体的に述べることで映像化するより、今回のように
敢えて語らないことで季語を膨らませ、取り合わせが活きてくる と述べる先生。俳句は
ケースバイケース だと続けます。①で「二十九万頭」と具体的な情報があった方が良かったものの、今回はその逆に。ロケ撮影が長引き、自室にカンガルーを持って帰った三十数年前の経験から詠んだ一句だと家藤さんが紹介します。本人の話を聞いて「預かった」という情報を中七に入れ込んで添削した一句ですが、
「預かる」というワードが「カンガルー」「朧」を繋ぐ働きをする点に作者が一番気づきにくい という特性を述べる先生。この「預かる」を聞いた瞬間に鳥肌が立ったとも言う先生に、ローゼン氏も頷きます。通算79句目の一句です。
東国原英夫氏の俳句には爆発力を秘めている という先生は、常に刺激されると述べ、ローゼン氏も強く褒めます。ローゼン氏が「プレバト!!」の一ファンとして普段できないような盛り上がった回になりました。
[208] 夏井いつきが息子に作っていたお弁当がちょっと... <2022/4/24公開> 動画[206]以来のベンチトークとなる今回も良いお天気のよう。先週、伊月庵通信のクローズド企画で花守祭 (はなもりさい)を実施したばかりと報告します。ZOOM配信などのテクニカルサポートにタグプロダクトが入る形で協力した頂いたそうです。「夏井&カンパニー」は家内制手工業だと繰り返します。 過去の花守祭(花見大会)は、参加者が飲食物を持ち寄る形の集会でしたが、コロナ禍で出来なくなった昨今。「お弁当持ち寄れたらいいね 」との気持ちだという先生ですが、弁当を作るのは大変だと述べます。 ここで、口を挟む家藤さんが弁当作りの苦労 を語ります。4月から小学校に入学する長男が1日から児童クラブに通っているそうですが、給食が始まる22日までお弁当を持たせないといけないようで、奥さんが毎日大変そうにしているとのこと。奥さんが倒れている時は代わりに家藤さんが弁当を詰めるそうです。 夏井先生も苦労話を。年子であった娘(ふみ)・息子(正人)さんの2人を保育園・幼稚園に5年ほど通わせていたため、毎日弁当を作ることがどれだけ大変だったかと述べ、給食がある現在の保育園や幼稚園の有難さを改めて語ります。メニュー・献立を毎日考えることに加え、炊飯器のタイマーの押し忘れなど色々あった と振り返る先生に対し、炊飯器の「お急ぎ炊き」の機能や冷凍食品の進化について家藤さんが触れます。 弁当に入れるメニューでも好き嫌いがあると困るため、家藤家では様々な冷凍食品を皿に盛り付け、親族の子を交えて一堂に会し、冷凍食品の大試食会をした といいます。解凍すればそのまま食べられる鮭が一番人気で、冷凍食品のシュウマイにも人気だったそう。朝、凍ったまま弁当に詰めれば昼時には食べ頃になるそうで、先生は驚き顔を隠せません。 お子さんが給食のある小学校に上がり、弁当作りからの解放を感じていた先生ですが、ふみさんが高校生になる際に再び始まる弁当作りに参った そう。既に働くことに一生懸命になっていたこともあり、翌年に正人さんが高校に上がる際、愛媛大学附属高校 を親である夏井先生が薦めたそうです。大学構内に学食がある ことがその理由。愛媛大学農学部附属農業高等学校(当時、現在は総合学科に編入)に入学したという家藤さんですが、とても楽しかったと言います。 先生は、家藤さんの入学時に渡された「必要な物リスト」に地下足袋があったことにカルチャーショックを受けたそう。面白い学校だったと述べる先生は、野球部がグラウンドで練習する傍らで、飼っているヤギを散歩させている子がいたと言います。入学時の保護者説明会で、「高校生は原則学食に入れません。弁当持参です。 」と聞いて顎が外れるほどショックで頽れてしまったという先生。息子の家藤さんは親である先生に、弁当を作る姿勢を見せてくれた点に謝辞を述べます。 最近、弁当の代わりに昼食代を子に持たせるも、お小遣いとして貯めるために昼食を抜いてしまう生徒がいるため、予めパンなどを持たせてほしいという現職教員の声を紹介するニュースを見たと報告する家藤さん。 自身が作った弁当のおかずは鮭率が高かったという先生の声を否定する家藤さんは、鯖が多かった と反論しますが、先生は安かったからと認めます。息子さんは帰りに弁当箱を返す際、「いつきさんの弁当に愛情があるのは分かっているが、塩で味を付けてほしい 」と言っていたことに触れます。自己防衛のためにアジシオの瓶を持参したと言います。味がない素焼きの鯖に慣れることで鯖が好きではなくなってしまったという家藤さん。 また、空の弁当箱を渡す際、収納されていたプラスチック製の箸の先が曲がっていたことを思い出します。草花実習室のバーナーで冷たい鯖を炙ると、箸が溶けてしまった とのこと。アジシオの瓶のくだりと合わせ、弁当二大インパクト だと述べる先生。 お孫さんが味のついた弁当を食べている点にホッとする先生ですが、冷凍食品に今後もお世話になりながら頑張っていくと抱負を述べる息子の家藤さんでした。
[209] 【山頭火の世界】新企画『ベンチで山頭火』始まります <2022/4/28公開> 桜がだいぶ散った伊月庵のベンチから。動画[204]の最後でも触れていたシリーズ『ベンチで山頭火 』(旧名『デッキで山頭火』)の実現について語ります。 昨年の正岡子規シリーズでは、夏井先生の著書『子規365日』をベースに 語っていたこと、有季定型のため切れ字や季語・型など基礎学習の解説に適している ことから、比較的やりやすかったという先生。山頭火は自由律俳句 という点からも解説の展開に悩んでいたそうです。『山頭火全集』をめくり始め、坪内稔典氏の解説を読みながら気になる一節を見つけたと述べます。 「山頭火の句では取り合わせがしばしば快いリズムを生じる。『歩けば郭公 急げば郭公』の対句的取り合わせはその典型だが、 特に有名な『分け入っても分け入っても青い山』は『分け入っても分け入っても』の対句がリズムを生じ、そのリズムの勢いが『青い山』で倍加する感じだ 」と家藤さんが読み上げます。 ①【種田山頭火 (たねださんとうか)】「分け入っても分け入っても青い山 」が多くの人に認知されるのは、良いリズムが快い点だという解説に先生は納得します。本には「そのリズムの勢いによって青い山の風景が出現する。取り合わせとリズムは相乗的であり、両者が見事に働いているのがいわゆる名句である 」と解説されています。取り合わせとリズムが相乗的に効果を及ぼしているのが名句と定義する 坪内氏。「分け入っても…の句には前書きがついている。"大正十五年四月 解くすべもない惑ひを背負うて行乞流転の旅に出た" 」。どうしようもない惑いを背負って乞食の旅に出たという意味の一句です。「解くすべもない惑ひなどこの句の勢いはふっ飛ばしているのではないか。ぐんぐんと山中を行く、いや 青い山々をかき分けて進む。例えば、鉄人28号 的存在さえも感じられる 」。先生は作者の作句意図は横に置いても、非常に気持ちの良い解説に腑に落ちたと言います。 ②【種田山頭火 】「うしろ姿のしぐれてゆくか 」も有名な一句。この句の解説にも「『自嘲』という前書きがあるのだが、この句の後ろ姿と時雨の取り合わせは自嘲をほとんど感じさせないのではないか 」。別の人物が後ろ姿を眺めているという客観的描写句に思ったため、「自嘲」に思われにくいと先生は解説します。「時雨の中を行く後ろ姿は侘しいけれども同時にある種の潔さというか格好の良さを感じさせるのだ 」。潔さやカッコよさという視点を山頭火の自由律俳句を読む人はどこかに持っており、作品よりも社会人離れしている山頭火の生き方に魅力を感じるのではないかと解釈する先生。「事件を片付けて立ち去るスクリーン上の高倉健 のような格好良さ 」と坪内氏が語っていて、これも腑に落ちた様子の先生は、山頭火の句はご本人の生涯を置いてもっと自由に味わわれるべきではないか と持論を述べます。 子規の解説動画でも先生は語りましたが、作者の人生を俳句に乗せて作家論的に読み解く鑑賞ではなく、字面を純粋に読み解く作品論を主に行いたい と述べる先生。坪内氏の解説と同じ立場だと言います。「要するに前書きにある作者の思いなどは無視しても良い。作者の思いや事情よりも表現そのもの、具体的には取り合わせとリズムに注目してその句を読みたい 」取り合わせとリズム(韻律)が相互に良い影響を及ぼし合うのが名句と定義する試みです。「そのような読み方によって山頭火の言葉の世界が新しく開けるのはないだろうか 」。先生は坪内氏が読者に呼びかけている新しい山頭火へのアプローチだと述べ、これならやってて楽しいとやる気を出します。 今後、少しずつ『山頭火全集』を読み進めながら様々な句の"取り合わせとリズムの相乗効果"を議論し、お二方なりの「山頭火ベスト100」などを決めていきたい と意気込みを語ります。 今回取り上げた2句以外でも、韻律と取り合わせの妙を探し出せるかもしれないという先生。シリーズ名も公園のベンチなどでも出来るように『ベンチで山頭火 』となりました。今後シリーズ展開が始まると予告しました。
[210 ] 【尻二字三角パス】前回の尻二字から作った作品を自慢したい <2022/5/1公開> 動画[182][183]以来の第4回尻二字三角パスの続報。前回最後に詠まれた【兼光 】氏の「呆れるの北風さんは服ぬいで 」に続き「いで」から始まる俳句を募集しました。 先生も「いで」から始まる句を相当考えたようで、飛行機や新幹線に乗車している最中に沢山の候補が浮かんだと述べます。あからさまに自慢したくなり、『伊月庵通信』の最新号に12句を活字にして発表した と言います。ここで先生は、最新句集『鶴』をまだ読んでいない息子の家藤さんを嗾けます。 画面が机に切り替わり、縦書きにした俳句を並べていきます。 ①「『いで熊』はもう肉売らず雪の果 」。「いで熊」は創作の屋号で、他の人が考えないものを出したかった とのこと。猟師が経営する肉屋が熊の肉ではないものを売るのかと思わせる一句。 ②「出光で灯油を買うて梅ほめて 」。「出光」はコメント欄にも複数あったようですが、ガソリンではなく灯油を買って梅を褒める展開 はオンリーワン。内子町などローカルな風景を思わせる一句。 ③「井手端に洗ふ水菜の百把ほど 」。「井手端」は水路。ここまでの3句とも田舎の生活感を感じる俳句 だと述べる家藤さんを先生は褒めます。俳句の構成を考える際、連句と同様で一つの世界や同じ場所や時間にいたものを並べると出だしが成功しやすいと述べる先生。句集を読む際も一句一句は何でもない俳句でも、構成が良ければ世界観を構築出来て句の印象が良くな る こともあると語ります。全員が4番打者だと飽きてしまうと野球に例える家藤さん。4句目はガラリと雰囲気を変えるのが一般的と先生は言います。 ④「遺伝子のかたちに春の白鳥は 」。「遺伝子」ネタはコメントにもあったよう。「遺伝子」は必要以上に説明しない方が良い と述べる先生。③の「井手端」と水の印象が「白鳥」で繋がる一句です。ここから少し緩めた句が飛び出します。 ⑤「胃でつかむハート余寒のタンシチュー 」。前半の見立てを褒める家藤さん。「胃で」も多く寄せられたそうですが、「で」の助詞が説明的になりやすい と先生は忠告します。本人が悩んだという「タンシチュー」に豪華さや温かさがあると家藤さんが述べます。「胃」「タン」の臓器も呼応しています。 ⑥「イでなけりやウだが大試験の三択 」。アイウの選択式の試験で、実感として共感できるが、発想が珍しい と述べる家藤さん。独自性だけあるという作者は、こういう句も構成の中にあって面白いと述べます。打たせて取るタイプのゴロだと再び野球に例えるユーモラスなお二方です。 ⑦「イデオロギーかかげ潮望の忙し 」。「潮望(しおまねき)」は蟹の一種。「イデオロギー」も多く寄せられた単語とのこと。④と同様、最初の専門用語に深入りせず、動物を取り合わせてあしらった と述べる先生。「忙(せわ)し」に季語の表情が現れています。 ⑧「出湯小唄がデビュー曲柳の芽 」。「出湯(いでゆ)」も寄せられましたが、この句は温泉に浸かる点以外の発想に 捻っています。「柳の芽」で演歌っぽさを演出していると述べる作者。 ➈「伊手さんの座る花見茣蓙が狭い 」。苗字発想の句もあったようですが、「狭い」で図体が見える という家藤さんは、昔はやんちゃしていた50代後半のお父さんのイメージだと述べます。ビニールの風呂敷を茣蓙(ござ)として広げて座る細身の女性の読みもあると述べる先生です。 ⑩「いで立ちて春のプードル尻尾つん 」は花見からの繋がり。下五で犬の表情が出て良い と述べる家藤さんは、「春」によってプードルのフワフワ感もあると褒めます。ローゼン氏の飼うポメラニアンであれば、いで立ちが長いという補足情報も。 ⑪「イ殿下と妃に日本のさくらかな 」。「妃(ひ)」と「日本(にっぽん)」で中七を構成。「イ殿下」は韓国の王家のイメージ で、実際に戦前に李垠(りぎん/イ・ウン)に日本人女性が嫁いでいます。 ⑫「いでよ竜みなもの花の明るさに 」。「いでよ」の表現も寄せられていたそうで、「龍天に上る」の季語を内包している という一句。 実際はこの3倍ほどの俳句を作ったと述べる先生ですが、構成する面白さも楽しめたと言います。「いで熊」で始まるも、途中でゆるゆると遊びながら「いでよ竜」の句で終わる力強さがあると家藤さんが全体の感想を述べます。季語も「雪の果」で始まり春の「明るさ」で終わっています。字面で並べているだけでは「いで」で始まる共通点に気づきにくく 、口に出して読むことが重要だと述べる作者。 今回は先生の「いで自慢」に終始しましたが、次回は本題に突入すると予告しました。
[211] 【ベンチで山頭火】句集『草木塔』から名句を100句選びます <2022/5/5公開> 動画[209]以来の「ベンチで山頭火 」。リズム・韻律と取り合わせを核に100選 をする気の長い企画のスタートです。『山頭火全集』第一巻の前半にある句集「草木塔 」の俳句から句を発表します。1ページに3句ずつ掲載されているようですが、1回に5句ずつ発表したいと展望を述べます。 <1>【種田山頭火 】「松はみな枝垂れて南無観世音 」。「枝垂(しだ)れて」「南無観世音(なむかんぜおん)」と読む家藤さん。有季定型ではない合計16音 で、9音+7音のリズム。明確な季語のない無季の一句ですが、取り合わせとしては「松」と「南無観世音」の取り合わせとなります。「枝垂れて」を自分の重さで垂直に垂れるイメージ"しだれて"と読むと光景に違和感を持つお二方は、"えだたれて "の可能性を考えます。松の枝のように額づきながら「南無観世音」と経文を唱える 意味だと読み解く先生。家藤さんは「えだたれて」で光景を捉える印象があると続けます。前書きは「大正十四年二月、いよいよ出家得度して肥後の片田舎なる味取観音堂守となつたが、それはまことに山林獨住のしづかといへばしづかな、さみしいとおもへばさみしい生活であつた」とあります。「松」と「観世音」との取り合わせが近いと述べる先生と、「分け入っても…」の代表句と比較してダイナミックさはないと批評する家藤さん。100句選には入れない と述べる先生です。 <2>「松風に明け暮れの鐘撞いて 」は、5・5・5の合計15音 のリズム。穏やかな印象ですが、「松」「鐘」のイメージが近いと述べる先生。意識の切れ目を考えていた家藤さんは、「明け暮れの鐘撞いて」は自身の行為として切り離せず、取り合わせの存在としての「松風」がある と述べます。松風の音に鐘の音が混ざる感覚は理解できるという先生は、有季定型に慣れた俳人の感覚では「に」「て」と切れのない調べが響いてこないのかもしれないと分析します。365日ある日常を切り取る空気感は表現できている が、読者として切れのある爽快な句を求める心情があると言います。この句も100句選には入らない ようです。 <3>「ひさしぶりに掃く垣根の花が咲いてゐる 」。7・7・5の上五字余りと取れる合計17音 はギクシャクしないリズムと取れるとお二方。散らかった葉や枝を掃く印象、何の花かは不明でも実景のリアリティーに好感を持つと先生は述べ、家藤さんは山茶花の花のイメージを述べ、「ひさしぶりに掃く」という主観的な表現をぶっこむ所に山頭火の魅力を感じる と続けます。全く関係ない二物の鮮やかな取り合わせというより、「掃く」「垣根の花」という日常を淡々と取り合わせるタイプの句。著書である坪内稔典氏の定義する取り合わせの相乗効果を考えると、そこまででもないと分析する先生はこの句を「二軍 」と評します。 <4>●「分け入つても分け入つても青い山 」は前回も紹介した名詞止めの一句で合計17音 。「分け入る」行為と「青い山」の取り合わせとも考えられますが、「青い山」は眼前の光景とも引いた遠景ともいえると述べる家藤さん。分け入る自分の行為と最後に出る青い山の遠景との動きのダイナミズムに魅力がある という先生。鬱蒼とした森を行くも「青い山」で見上げる視点や、山の渦中にいるという画面の奥行きを感じ取れ、どちらも魅力がある と家藤さんが評します。「青い山」で空間や奥行きを作りながら、「青」がほのかな季節の気分を味わわせる効果を持つと述べる先生に続け、坪内氏が表現した「立体的な魅力」を掴める句だと家藤さんが述べます。100選認定の一句 です。 <5>「しとどに濡れてこれは道しるべの石 」は合計18音 。個人的に見たものを描写した点が<3>の句の感覚に近いと分析します。敢えての「これは」をどう読み解くか。道端にあって腰掛けようとする濡れ石が実は"道しるべの石"で座れない のだと最初読んでいた先生ですが、しとどの雨を歩く最中に分かれ道となり、"道しるべの石"を探し出した ような読みに思ったと言います。「しとど」「濡れ」と言葉の重複はあるものの、旅の一場面をリアルに切り込んだこの形が山頭火の真実だった と紐解く家藤さん。前半の表現に強い印象があり、かつ「濡れて」で艶艶とした映像にもなっていると言います。ここで、先生は故郷である愛南町の「トレッキング・ザ・空海」という10kmにも及ぶ登り坂の体験を語ります。道中に"しるべの石"があり、石があれば座りたいと思うことで、最初の読みがせせり出たと言います。山道に休憩用の石がある体験を知っているため、余計に歩み寄りやすい句だと語る家藤さん。行乞やお遍路での体験としてもリアリティーがある無季の句で、二軍判定 となりました。 ここで、一軍・二軍の判定の表現法を改めるべきと提案する先生。確実に100句選に入る「殿堂入り」のものと、候補のものなどを分かりやすいように、呼称を次回までに検討したいと述べます。また、このペースでやっていると終わらないことを心配する家藤さんに「命ある限りはやる」と返す先生。次回からペースアップを予告しました。
[212] 【尻二字三角パス】第4回のゼロ番句候補を発表! <2022/5/8公開> 動画[210]に続き、第4回尻二字三角パスのゼロ番句 候補発表。前回、動画[182]の最後に詠まれた【兼光】氏の「呆れるの北風さんは服ぬいで 」に続き、「いで」から始まる俳句を募集しました。今回は、そのゼロ番句の候補句を紹介します。家藤さん曰く、普段あまり投句しない俳号の人が目立つ のが嬉しいとのこと。しりとりの感覚で参加できるのが良いと分析する先生です。 ①【パニーニ 】氏の「出でよ当たり福引回すガラガラと 」。初心者らしい俳句と評す先生ですが、「福引」がバッチリと季語である一句。「らと」で終わるため、次に詠む人が困惑する工夫もあります。カメラ奥に構えるローゼン氏は「"らと"で始まる単語も無くはない」と述べます。 ②【松虫姫の村人 】氏の「胃で生きるピロリ3月のドックに 」。胃で生息するピロリ菌を詠んだ句ですが、作者の健康を心配するお二方。俳句の出来より、ツッコミ甲斐のある句として紹介したようです。 ③【みらんだぶぅ 】氏の「胃で感ず白湯の形やちゃんちゃんこ 」。実感が出来ると評すお二方に続き、夏目漱石の「腹(はらわた)に春滴るや粥の味」に印象が近いと述べるローゼン氏。先生は上五の推敲が必要だとアドバイスしますが、尻二字「んこ」の手強さにすぐさま気づくローゼンさんです。 ④【こなねこ 】氏の「胃で混ぜる脂と塩と秋思かな 」に思わず笑う先生は、下五で俳句にする魂胆が見えると評します。ラーメンを食べた後の胃もたれに共感すると家藤さんが述べます。 ⑤【鯛 】氏の「胃で溶けて胸にしみこむバレンタイン 」も胃の一句。散文さから、何一つ実らずに自分で買って食べる切なさを思う先生と、逆流したチョコが胸にしみこむ意味に解釈する家藤さん。 ⑥【羽流 】氏の「胃で足す英気余花よきイエスタデイ 」はなんと回文に挑戦した一句。俳句では回文は努力の割に報われないと述べる先生です。最後の2文字は「ディ」ではなく「デイ」となるよう。 ⑦【松山のとまと 】氏の「井出せんせい食ぶ立春のささみ天 」は後半にリアルさがある一句。固有名詞次第で取り合わせが良くなる可能性はあるものの、善戦したと評す先生です。 ⑧【ゆず渕 】氏の「井出らっきょサイン黄ばみしぶりしゃぶ屋 」。季語は「ぶり」で「井出らっきょ」は人名の面白みを持った一句。「ぶや」の尻二字に悩まされます。 ➈【原水仙 】氏の「『遺伝子レベルで無理』捨て台詞凍つ 」。拒絶の言葉として強過ぎる台詞ですが、そこまで言われると逆に笑って済ませられるとローゼン氏が述べ、談笑するお三方。遺伝子系の句では好きだと語る先生。 ⑩【風花美絵 】氏の「遺伝かな祖母が教科書ストーブへ 」。作者曰く「昔、大正生まれの父が小学校入学してすぐ『学校へ行くのが嫌』と駄々をこね、それに怒った明治生まれの祖母が教科書をストーブへ入れて燃やした 」とのエピソード。エピソード大賞を贈りたいと先生は述べます。 ⑪【Early Bird 】氏の「異伝あり母に我にも花野径 (みち)」。「異伝」は異なる言い伝え。遠野辺りの花野ではないかと感触を述べる先生。 ⑫【アロイジオ 】氏の「出でよ龍春の湖面のまろければ 」。上五は先生も用いていたことから、「出でよ龍」も幾つか寄せられたそうです。先生の句と対比が出来ると述べる家藤さんに「勝ったね」と返す先生。尻二字は「れば」。 ⑬【夏雨ちや 】氏の「いで潮や月夜の蟹を踏みつくす 」。満ち潮を指す「いで潮」。残虐な光景だという家藤さん。実際に軽トラックが道路の大量の蟹を踏み潰すことがあるそうです。ローゼン氏が住む山中湖村では、蛙が大量に出ることもあると補足し、話が広がります。 ⑭【DAZZA 】氏の「胆でろんと垂れ土匂う熊の腹 」。「胆」は「い」と発音。肝が「でろん」と出る意図ですが、熊猟で獲った熊をさばいて売るという光景。非常にリアリティーを持った一句です。 ⑮【レイド 】氏の「胃で育つ菌糸それから春の闇 」。「それから」に恐ろしさがある一句ですが、家藤さん好みで選んだと先生が述べると、本人が同意します。 ⑯【大黒とむとむ 】氏の「胃で混ぜて多分濁酒は禍の色 」は、コロナ禍特有の色を意図した一句。胃で混ぜれば濁酒(にごりざけ)でなくとも同じような色になるとツッコむ先生は、吐くものがなくなれば黄色になっていくと生々しく語ります。 ⑰【高尾里甫 】氏の「出光が安いか春の夜のラヂヲ 」は、夜のドライブでの実感を受け取れる一句。先生は、阪神が勝てば安くなるスタンドもあるといいます。尻二字は「ヂヲ」ですが、発音優先で次の句を読むというルール にしたという先生は「じお」で繋がるようです。ニューヨーカーのローゼン氏は「radio」と綺麗に発音します。 以上の候補句の中から1句を選び、次回尻二字三角パス本番を迎えます。
[213] 【ベンチで山頭火】夏井いつきが山頭火の句に辛口コメント?句集『草木塔』から100句選します <2022/5/12公開> 動画[211]に続き、種田山頭火100句選 の回。今回も『草木塔』より5句ほど紹介します。 <6>●「炎天をいただいて乞ひ歩く 」は5・5・5の合計15音 。内容に似合っているリズムで有季定型に慣れている俳人からも歩み寄りやすいと意見を述べるお二方。「炎天」が季語であるため、季語の力により空気や空の色合いや人物の表情など全て見える と述べる先生。後半は動詞を重ねていますが、黙々と歩く感じと季語と似合うと続けます。切れ字を持たず、「乞ひ」などの単語も立っていると評し、殿堂入り としてボードに貼られた「分け入っても」の句の隣に貼ります。 <7>「鴉啼いてわたしも一人 」は合計13音 。素材が「咳をしても一人」の尾崎放哉に負ける と述べる先生は、「わたしも」を決別している放哉を称えます。家藤さんは「鴉」と対比させる意図として「わたしも」があると分析し、作者は無頼というより人と居ながら一人を楽しむ感じだと述べます。一人である傷口を自分で癒す印象だと続ける先生ですが、100句選に入れない と明言します。前書き「放哉居士の作に和して」とあるため、先行句を意識している事実が判明。本歌取りの効果が今一歩だと評します。 <8>「生死の中の雪ふりしきる 」は合計14音 。「生死」「雪」の取り合わせは、現代人の感覚としても近い と述べる家藤さんに先生も賛同。7・7の音数から付け句の印象だと述べ、前に5・7・5の句を付けた方がこの句が活かされると評価。句選には入れない ようです。 <9>「木の葉散る歩きつめる 」は合計11音 。5・6のリズムですが「歩きつめる」がどことなく嚙み合っていないと先生は評します。「分け入っても」のリフレインのような効果がないことを述べる家藤さん。長距離遠足に疲れた中学生のイメージ だと述べる先生。「木の葉」単独で季語となり、「散る」と入れる必要があるかも論点。先生は選外 を明言します。 <11>「この旅、果もない旅のつくつくぼうし 」は合計19音 。「旅」と「つくつくぼうし」の取り合わせ。先生は「この」に作者の主観があるものの「果てもない」の表現が好きではないと述べます。フォークソングなど歌謡曲の歌詞らしいフレーズが引っかかる よう。選外 となりますが、この句集の先々に似たような句で作り直されたものが必ずあると確信するお二方です。 <10>「踏み分ける萩よすすきよ 」は合計12音 。5・3・4の不思議なリズムですが、「よ」の呼びかけは効いています。秋野の山の気分、膝丈くらいの草を踏み分ける感覚はありますが、取り合わせの火花が薄いと評す先生。家藤さんは正岡子規シリーズを回顧し、季重なりでも現前にあるものを詠んでいるのだからと開き直れるタイプの句もあると語ります。淡々と述べた句ですが、選外評価 となります。句選する立場では、例えば「 萩よすすきよえのころよ(おなもみよ)」などと定型でさらにもう一押ししたい と述べる家藤さんに続き、原句よりマズくならないと先生も同意します。 先生や家藤さんなりに、わがままに選ぶのがこの企画の趣旨。今後も続きます。
[214] 【第4回尻ニ字三角パス】組長の妹が参戦!最初の尻二字は『ん○』! <2022/5/15公開> 第4回尻二字三角パス 。先生、家藤さんに加え、カメラ脇に座る先生の妹のローゼン千津氏の3名で行います。動画[212]で発表したゼロ番句の候補を発表します。 最初に、俳句を詠む順番決めをじゃんけんで決めることを提案する家藤さん。勝った人が何番目に詠むかを決められるそうですが、2番目に勝ったローゼン氏が有利 に。結局、先生→家藤さん→ローゼン氏というお決まりの順番になりました。ゼロ番句はローゼン氏が引いて決定しました。ゼロ番句は「んこ 」で終わるため、「んこ」から始まる一句で先生が詠み始めます。一度使われた季語は使えないというルールのよう。 [1]無駄打ちしてしまったと言う先生ですが、良い句だと褒めるはローゼン氏。最後が「恋」ですが、「こい」から始まれば何でもOK です。 [2]季語はダービーですが、初夏の季語と先生が電子辞書が調べます。競馬経験を語り合う先生と家藤さん。競輪場より競馬場の方が好きだと言う先生です。 [3]音で決めるため尻二字は「ゆう」ではなく「じゅう 」に。しまった様子のローゼン氏ですが、鯛饅頭は宇和島名産だと紹介します。鯛ブームに関してローゼン氏と家藤さんが語ります。ローゼン氏の夫ニック氏は鯛が一番好きな魚だとローゼン氏が明かします。 [4]【正岡子規(まさおかしき) 】「十年の汗を道後の温泉尓(ゆに)洗へ 」の本歌取り。温泉といえば「柳」が似合うというローゼン氏。女性陣は、松山・道後公園近くの旧放生池内にある野球少年姿の正岡子規像に話題を転換。銅像の顔立ちから話が盛り上がります。また、「柳の芽」の季節が好きだと先生が述べると、【富安風生(とみやすふうせい) 】「退屈なガソリンガール柳の芽 」を挙げるローゼン氏。「ガール」が職業婦人として注目された時代を振り返ります。さらに、「一句一遊」の収録スタジオから柳がちょうど見えると述べる先生です。 [5]ボート部時代の頃の一句。オールを洗った後の生々しい潮の粒を詠んだ そうです。ボート部の練習の様子を語る家藤さん。尻二字「なぎ」から、新潟の俳句仲間・【凪太 】氏について語る先生と家藤さん。あしらの俳句甲子園2022の決勝で詠まれた「食い逃げ犯あっという間に雪ん中 」について述べます。 [6]「ひとひら」か「いっぺん」かで難易度が変わりますが、作者の意向で「ぺん」が尻二字に決定。ローゼン氏は「猫パトロール」について述べます。子どもが遊びそうな場所に野良猫がモノを残さないよう、犬を連れて匂いを付けることで野良猫が近寄らないようにするそうです。 次回、後半の動画へ続きます。詠まれた俳句は[215]の詳細に掲示します。
[215] 【第4回尻二字三角パス】後半戦!組長は尻二字「チェロ」にどう返す? <2022/5/19公開> マルハニチロ主催
「シュウマイを食べて一句!」 の投句案内。投句締め切りは6月20日、ツイッターにて投句可能です。
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前回の続きです。
[7]「ペンパル」は文通友達のこと。ここで東国原名人の添削句「畜魂二十九万頭」から映画の「向日葵」へと話が展開。ローゼン氏の夫
ニック氏の曽祖父がウクライナ出身 だと明かされ、ユダヤ人の民族文化について話が展開されます。
[8]「釘鍛冶」は釘などの小物を鍛冶で作る専門職。前半は想像のようです。道後温泉の本館工事など、建築について話を展開します。
[9]「チェロ」の演奏をするニック氏。花守祭での生演奏で、爪弾きが激しいピチカートを初めて聞いたという家藤さん。ローゼン氏は年に一回は松山で演奏会を開きたいと展望を述べます。
[10]花守祭での「綿菓子」から詠まれた一句。尻二字「べと」は多少難しいようです。女性陣は、りんご飴やイチゴのお菓子など甘い物に話が展開。
先生は子どもの頃に買い食い文化がなかった事を明かしますが、息子の家藤さんは買い食いしていた そうで、楽しいローカルトークが続きます。
[11]ベトネベート軟膏を題材とした本人曰く"育児句"。「ベトナム」から始める案は却下したよう。夏井先生の孫「太一」氏に贈った「
金玉と呼ぶにはいとけなき涼しさ 」(動画[140])を意識して作ったようです。
[12]「ぐりとぐら」の絵本が題材。生々しく印税の話をする先生です。
尻二字「のひ」から始まる句をこの動画のコメント欄での募集 が決定。第5回の企画に繋がるようです。
以下、詠まれた句を記載します。
0 胃で感ず白湯の形やちゃんちゃんこ んこ みらんだぶぅ 1 ん、こ んな妹でして猫の恋 こい いつき 2 来い 、⑦ー①!ダービーの熱津波 なみ 正人 3 波 立ちて桜の下の鯛まんじゅう じゅう ローゼン 4 十 年の汗を流せる湯や柳 なぎ いつき 5 凪 の春包帯の吸ふ潮の粒 つぶ 正人 6 つぶ らなる捨猫の目に花一片 ぺん ローゼン ▼以下、動画後半で発表 7 ペン パルは鍛冶屋ウクライナは向日葵 わり いつき 8 わり 合わん仕事よ釘鍛冶の朧 ぼろ 正人 9 ぼろ んぼろん爪弾きの花のチェロ ちぇろ ローゼン 10 ちぇ論 外の春だぜ綿菓子はべとべと べと いつき 11 ベト ネベートよつぶらなる汗のふぐり ぐり 正人 12 ぐり ぐらもう一回読んで端午の日 のひ ローゼン
[216] 【NHK学園 秋の誌上俳句大会】正人が選者をします!他3人の選者に正人が萎縮? <2022/5/22公開> 今回は家藤さんのご報告。令和4年度、NHK学園・秋の紙上俳句大会で、4名の選者のうちの1人に選ばれた そうです。おめでとうございます。 ビックリ仰天したという先生は、他の3人の選者は俳句界の大御所 だと述べます。井上康明氏、片山由美子氏、能村研三氏 は歳時記の編纂などに関わる方々だと、ご本人も謙遜したように述べます。 選者同士が一堂に会すのではなく、送られた俳句を淡々と選句すれば良いと緊張する息子さんへ説明する先生。4人の顔ぶれをみてバカ受けしたと述べる先生ですが、応援の拍手を送ります。 チラシに掲載された選者の代表句、【家藤正人(いえふじまさと) 】「水は木に木はまた鳥に春の来る 」を先生はフレッシュで良い句だと評します。夢枕獏氏(動画[116]で紹介)に連れていかれた北海道でのワカサギ釣りの際に作った句 だと明かします。1日目は釣りに夢中だったそうですが、2日目は兼光氏と3名それぞれ好きな場所で俳句作りを行い、家藤さんは凍った湖の脇にあるイヌワシの巣のある林の方へ入ったそう。それを見ていた獏氏は「しょんべん行きたいのかね?」と述べたエピソードを先生が語ります。 先生もNHK俳句の選者を1回だけ行ったことがあるそう。今回の兼題は自由題と題詠があり、題は「紅」または「赤」 (の字が入った句)。提出は"自由題2句 "または"自由題2句+題詠1句 の計3句"から選択。投句締め切りは6月1日、結果発表は8月15日 。郵便またはNHK学園のホームページから投句できます。 先生は、力試しという意味でもこれぞという句を投句してほしいと述べます。「一句一句詠ませていただく」と緊張しながらも抱負を述べる家藤さんでした。
[217] 【一句一遊】兼題『未央柳』読み方は「びようやなぎ」「びょうやなぎ」? <2022/5/26公開> 22年もの長きにわたって放送されているラジオ「夏井いつきの一句一遊 」で、2022年5月9日から放送していた兼題「未央柳 」。この季語が枝垂れるような柳と解した句も沢山あったとのこと。その模様はradikoや聞き書き隊を参考にしてほしいと述べます。 金曜日の優秀句を決める会議で、「びよ うやなぎ(6音)」「びょ うやなぎ(5音)」 のどちらで読むべきかが話題になったようです。今回は俳句の韻律について深掘りします。 先生は、5音か6音かという音数の違いのみならず、読んだ時の印象・ニュアンスも異なる と述べます。花は黄色い5枚の花弁で、飛び出すほど長い雄蕊が特徴。その花のイメージと句の内容を踏まえつつ、韻律として「びようやなぎ」「びょうやなぎ」のどちらで読むのが得なのかを考えて、録音を随時止めながら本番では読み上げるようです。金曜日発表の優秀句を例句に解説します。 ①【一富士リリー 】氏の「缶蹴りや未央柳の裏にゐる 」は季語が中七 にあり、「びよ うやなぎ 」と読むのが明快。未央柳の生垣を知っていて実際に体験された実感があると評します。 ②【洒落神戸 】氏の「風に蕊差し出す未央柳かな 」は季語が中七から下五 にまたがっており、「びよ うやなぎ 」と読めば17音の韻律に収まります。「かな」の詠嘆として膨らんでいく韻律の効果を考えれば、こちらも「びようやなぎ」で迷わない句ですが、「びょうやなぎ」では寸詰まりな感じを持ってしまいます。 ③【坐花酔月 】氏の「蘂たかくひかりを生みて未央柳 」は季語が下五 にあり、「びょ うやなぎ 」と読めば定型に収まります。逆に「びようやなぎ」と字余りで読むと着地が揺らぐと述べる先生。下五に季語がある場合、ほとんどの例で「びょうやなぎ」と5音で読むと韻律が整い、着地の座りが良い印象のようです。 悩ましいのが、季語が上五 に置かれた場合。 ④【穂積天玲 】氏の「未央柳先生たどり着けぬ家 」の季語を「びよ うやなぎ 」と読む家藤さん。先生が目的地の家にたどり着けぬもどかしさに対し、上五を字余りで読むのが内容に沿うと言います。家庭訪問の場面で、自分は未央柳の目立つ家なので訪問に迷わないはずだと言う生徒側と、未央柳を知らずに迷ってしまう若手の先生を考えると、字余りで読む方がほのぼのすると先生も語ります。田舎の往診の場面もあり得ますが、まごまごした印象との呼応を考えれば字余りが良い と言う家藤さん。しかし、医者の読みの場合、「早く往診に来て」と焦る気持ち なら「びょ うやなぎ」 の5音読みもあり得ると先生が提案します。 ⑤【令ちゃん 】氏の「未央柳の雨に夫人を見失ふ 」は読みが悩ましい句。先生は季語を6音でゆったり余らせた方が良いと述べます。雨の中で夫人を見失う内容ですが、5音では緊迫感、6音では謎の含ませで、どちらを良しとするかの2択だと言います。上五は助詞「の」があるため、どちらで読んでも字余りに。句にとって一番幸せな解釈をし、それに沿う読み方をする のが読み手の重要な態度だと言う先生です。 天の句に選ばれた句こそ読みを一番迷ったそうです。 ⑥【紫水晶 】氏の「未央柳聖の素足明るくす 」。「聖(ひじり)」で一遍上人が最初に思い浮かぶという先生は「素足」は「はだし」と読む可能性を思ったそう。しかし、聖は聖人として一般的に読み、その素足を明るくする存在として未央柳の花だと解釈すれば良いと解説しますが、今度は読み方を迷うことに。一遍が脳裏にある先生は仮に「聖の跣(はだし)」とあれば、5音の「びょうやなぎ」読みをすると、「びょう」と「跣」の漢字一字が響き合うと述べます。しかし、この句は6音「びよ うやなぎ 」の方が明るさが増す と続けます。家藤さんは、季語が中国原産の植物だと踏まえると、「聖」が仏教的な意味以外にキリスト教や中国・天竺など広範な解釈が可能で、読みの広がりを考えると6音で読む方が良いと意見します。実際の収録現場でも多くの議論をしながら、オンエアでは6音で読んだよう。 たった10分の番組ながら、それぞれの句に対し解釈をしながら読み方を確定する地道な作業を行っている様子がうかがえる今回。兼光氏も交えて3名で議論すると、句の解釈が違っていたり、天の句も変わったりと順位の変更もあるそう。真剣に取り組んでいると先生が最後に述べました。
[218] 【組長ご立腹?】「句会ライブの何人がサクラですか?」 <2022/5/29公開> 今回も屋外でのベンチトーク。句会ライブ がテーマです。 5月2日の撮影ということで、ゴールデンウィークの予定について語り合うお二方。先生は物を書く機会に恵まれている時期 だそう。以前、学校で行っていた句会ライブは、春休みから新学期、ゴールデンウィーク明けまでは頻度が少ないようで、その時期に執筆の仕事をまとめることもあったようです。しかし、コロナ禍で生活が一変。今年は句会ライブを3~4月にまとめて行ったことを明かします。句会ライブで見知らぬ人と一緒に楽しむ熱量やエネルギーを感じる点に面白さがある と先生は述べ、家藤さんも同調して語ります。 観客には、伊月庵通信や夏井&カンパニーのTシャツ、いつき組の自家製うちわを掲げる人がいることを述べます。普段は俳号のみの付き合いですが、一堂に会して俳号が明かされることで、会場が湧くライブ感があるのが句会ライブの特徴。先生は、【多喰身デラックス 】氏、【山本先生 】氏の俳号を例に挙げて述べます。単に夏井先生に会いに行く目的のみならず、様々な投句先で入選の常連となっている俳号の人物を生で知ることが出来るのも句会ライブの楽しみ の一つ。そのためには、「俳句ポスト365」「一句一遊」などで投句を繰り返して俳人界隈に俳号を認知される必要がある点を補足します。 先生は、句会ライブよりも講演を行いたい時期があった と明かします。講演は下準備を組み立て、自分の伝えたい意図をまっすぐ伝えることが出来る点がメリット。先生は、舞台に立つ自分だけでなく、客席にもライトを当て、観客の人の表情を見えるようにして行うスタンスが好き で、観客席が真っ暗なのは好きではないと述べます。客の反応を見ながら、即興で台本を書き換えて着地を目指すのが先生の基本スタイルです。全体の空気を見ながら句会ライブを行うのは、小中学校を訪問する家藤さんも同じ。集中力や理解力の切れる瞬間が、学年ごとに感じられるそうです。お客様の反応で自分が育つ感覚があると先生が述べます。 講演について先生は愚痴を語ります。所定90分の内容で、終了5分前に終えてほしいと要望する主催者側に理由を尋ねると、最後に質疑応答の時間が取りたいとのこと。いざ、質疑応答の時間になりますが、肝心の質問が「プレバト!!」の内容についてなど、講演の本題と無関係な質問をされるため、不愉快な気持ちになる ことがあったそうです。その点を踏まえ、主催者側と交渉して90分の内容を全て預けてほしいと先生から申し出ることもあるようですが、主催者側の反応も色々と分かれるそう。敢えて主催者側が質問する人物を予め根回しすることもあり、先生の思惑通りに運ばないパターンもあると述べる先生に続き、腑に落ちた様子の家藤さんが小中学校での現場でも最後の感想を語る児童・生徒の言動について同様の状況が見られる点を語りますが、先生は教育的視点があるとフォローします。明確に根回しを嫌うことを述べる先生は、句会ライブでは台本がなく、脚本のないドラマになることに面白さがある と続けます。 しかし、「一句一遊」に届いたお便りについて憤慨する先生。句会ライブの参加者から届いた質問が「手を挙げて質問する人の中にサクラを何人仕込んでいるか? 」という内容とのことで、それを見て目がでんぐり返るほどのショックだったと言います。息子の家藤さんは投稿者に対し「厳重注意」を宣告。句会ライブ前に楽屋に来た主催者側が、「シャイな県民性のため句会ライブが成功しないかもしれない」などと念押しされることもあるようですが、先生は心配ご無用で行うと言います。発言者が少ない場合でもノウハウを発揮し、話が脱線する人物がいる場合は「プレバト!!」のMC浜田氏のようにぶった切ることもある よう。MC浜田氏から学ぶことも多く、日々研鑽だと思ってやっていると述べる先生に続き、話を切る技術の大変さに言及する家藤さん。「プレバト!!」の収録でも一回一回が真剣勝負だと先生は言います。句会ライブにサクラを一人も使ったことはない と先生は断言します。過去に2人しか観客がいなかった句会ライブを掘り下げる家藤さんですが、最後に句会ライブへの参加を促す先生でした。
[219] 【正人のお礼】雑誌『俳句四季』で4月の名句を紹介させて頂きました <2022/6/2公開> 「正人のお礼」の回。『俳句四季 』(東京四季出版)で「四月の名句 」という原稿を書いた家藤さん。カラー2ページに写真付きで8句の名句を贅沢に紹介したそうです。通常であれば古い有名な句を紹介するところで、先人の様々な句集を読んだそうですが、先生とともに「俳句ポスト365」などの選者でもあるため、「古今東西」の「古」ではなく「今」にも焦点を当てたかった と言います。家藤さんのブログで自薦他薦を問わず、紹介しても良い名句を募集したようです。自分の句の売り込みも多かったそうですが、そのようなアピールする人を好きだと述べる先生。今回は掲載した8句を紹介し、お礼を述べるようです。 ①【シュリ 】氏の「落椿みづにも緩くあるとろみ 」。2022年1月28日の「いい、つばきの日」の句会ライブで選出された 一句。先生は取り合わせで「落椿」「みづ」の素材はあるものの、描き方が秀逸だと褒めます。「とろみ」の表情を続けて褒める家藤さん。句会ライブでは時間の制約上全てを語れませんが、誌面で存分に選評を書きたかった句だと述べます。「とろみ」に晩春の愁いがあると先生は評します。 ②【いかちゃん 】氏の「くづれかけのいうれいが椿をささへてをる 」も椿の日 句会ライブで生まれた お二方にとって思い入れの強い一句。松山市主催のため「幽霊」を題材とした句を表立って掲載するのを躊躇されたお二方。入賞とはならなかったものの選評を書きたかった句だと言う家藤さん。朽ちかけの椿の花の様子で、朝にでも消えようとしている幽霊の様子を思えると語ります。 ③【仁和田永 】氏の「折れ針を小瓶へ春の雨静か 」は繊細な感覚が綺麗な一句。素材は裁縫をするご年配の方を思いますが、意外な俳号に仰天する先生。瓶の中に響く音の感じが繊細 だと言う家藤さん。先生は、作者とは句会ライブでお会いしたことがあるようです。 ④【柊月子 】氏の「山羊はめぇ人はをんをん啼く朧 」。前半は普通の光景ですが、後半の展開と季語の包み込みが印象的。句を載せる順番まで任された家藤さんは、①③④②の句の順に掲載をしたそう。句のトーンが変化していきますが、この句は人間の情念とも異なる形で言語化が難しいと困り果てます。朧の水気の中に響く「をんをん」の鳴き声が迫る感じ、音の広がりが素敵 だと評します。 次に古今の「古」の句の紹介に移ります。 ⑤【橋本夢道 】氏の「乞食の小屋が向き合うて海辺の昼があたたかい 」。現代俳句協会の現代俳句ハンドブックの企画に参加したことがある家藤さん。そこで作者のことを学び、好きだった一句 だと言います。季語「暖か」と認識している家藤さんは、大学でのボート部の情景に近く、暮らす人の息遣いがあると述べます。しかし、作者の句でもっと好きな句「エメラルドの麦踏む只恍惚と恍惚と 」は早春な感じでここでは使えなかったようです。労働の果てしなさに生きるしかない感じに惹かれるとのこと。夢道シリーズの解説を提案する先生です。 ⑥【山本先生 】氏の「留学の話がおもんない花見 」。作者の句柄が確立されたと述べる先生。友達がこれから行くのか帰って来たのか。話題の中心にいる人物の話をつまらなそうに聞きながら酒を飲む人間の生身な心情が表現 されています。季語の着地が可笑しいと述べる先生。 ⑦【いさな歌鈴 】氏の「まっしろな春へ伸ばすオウムガイの触手 」。生きた化石とも言われるオウムガイ。俳句四季の編集部が掲載句に関連した写真を並べる際、オウムガイの写真を大きく掲載して嬉しかった という家藤さん。前半「まっしろな春」が無原色な時代を思わせると続けます。 ⑧【夏井いつき 】氏の「青き踏めマスクを鳩として放て 」。先生は息子にお礼を述べます。実は「俳句四季」の誌面を母である先生に見せたくなかったと明かす家藤さん。書いた選評を見られることに抵抗があって怖かった といいますが、解釈・鑑賞は自由で堂々とすればよいとフォローする先生。動画撮影後に見ると確約する先生の発言に、36歳にして壮大な授業参観を受けている気分だという家藤さん。 最後に意見を求められた家藤さん。歳時記や立派な句集に載る俳句だけが良い句ではなく、それ以外でも良い句は間違いなく良い 句だという実感を持ったと言います。 古今の「今」をさらに紹介したいという先生に続き、句会ライブなどでの生まれたての鮮度の良いうちに皆様に知ってもらうことも大事なことだと家藤さんが述べます。今後も何かの機会に名句を紹介したいと展望を述べました。
[220] 【久しぶりの外ロケ】宝厳寺にやって来ました! <2022/6/5公開> 久々の外ロケ。カメラは道後・上人坂 (しょうにんざか)から宝厳寺(ほうごんじ) の入口方面へ。山門の前にある階段下で先生と家藤さんが出迎えます。右手には躑躅(つつじ)が綺麗に咲いています。 宝厳寺は2021年に山門が修理されたそう。2013年8月、本堂と庫裏を全焼してしまう事故 に見舞われましたが、境内の2本の銀杏の木が山門への火の延焼を防いだ そうです。本堂側に面する部分の木が黒焦げになったのを間近に見たというお二方。先生の近くで蜂がぶんぶん飛ぶ様子も句材だと述べる家藤さんです。 ここから階段を上って子規の句碑 を案内します。道中、躑躅にとまる蜜蜂を「可愛い」と捉えようとする家藤さん。 宝厳寺は「(仏教の)時宗の開祖・一遍(いっぺん)上人が生誕した寺と言われています 」と先生が紹介します。山門をくぐり、道を右に外れたところにある大きな石に、句が刻まれています。 【正岡子規(まさおかしき) 】「色里や十歩はなれて秋の風 」。「色里」は遊郭街を指します。上人坂でも当時は両サイドに遊郭の店が並び、どんつきにこのお寺が位置していたそうです。家藤さんは、銀杏の緑が鳴る音を感じ取ります。秋になると多くのぎんなんが降ってくるようです。焼け焦げた跡が残ることを確認するお二方。 風の音や銀杏など四季折々の光景を感じ取れるこの場所。松山に来た際は是非足を運んでほしい と語る先生でした。
[221] 【第3回ベンチで山頭火】種田山頭火の句を査定していきます <2022/6/9公開> 動画[213]に続き、第3回ベンチで山頭火 。後ろに本格的なホワイトボードを携えて今回も掘り下げます。テンポアップのための判定札を用意し、◎(殿堂入り) 、○(キープ) 、▲ (寝といて頂く) の三段階でお二人が即席で判定します。初回は<4>が◎、<3><5>が○となりました。 <12>●「へうへうとして水を味ふ 」は合計14音 。先生は◎ 、家藤さんが ○ の札を挙げます。判定を◎と迷ったという家藤さんは「へうへう」「水を味(あじは)ふ」の場面が今後も登場するのではないかという先を見越しての判定だと理由を述べます。韻律と後半のフレーズの良さを述べる先生ですが、◎判定で殿堂入り とします。飄々と物乞いしながら歩く 印象を述べる先生に続き、悲壮感がなく前向きな感じが良い と評すは家藤さん。 <13>「落ちかかる月を観てゐるに一人 」は合計16音 。判定は二人とも▲ 。山頭火が「月」「一人」を好むことが想像できると述べる先生。「落ちかかる」に孤独めいた印象を与えるため、「一人」が言い過ぎている印象があると続けます。 <14>「ひとりで蚊にくはれてゐる 」は合計12音 。判定は先生が ○ 、家藤さんが ▲ 。同じ「一人」の句として<13>より生々しさがあると述べる先生。淡々とした事実を述べ、感傷めいた所がない と家藤さんが述べます。「一人」が肉体一つという解釈をした方が魅力を持ち、境涯だと哀れなイメージが増すとの議論に。○の結論になります。 <15>「投げ出してまだ陽のある脚 」は合計13音 。判定は先生が ▲ 、家藤さんが ○ 。山頭火は脚を投げ出すのが好きだと述べる先生は、今後もこのような発想の句があると理由を述べます。 <16>「山の奥から繭負うて来た 」は合計14音 。判定は二人とも▲ 。養蚕の作業場の光景を予想するお二方ですが、モスラの光景だとも述べるお転婆な先生です。 <17>「笠にとんぼをとまらせてあるく 」は合計15音 。判定は先生が ○ 、家藤さんが ▲ 。自分の被る笠にとんぼがとまる点にリアリティ を感じとる先生と、後半の表現に気に食わなさを感じる家藤さん。○ でキープとなります。 ここで、カメラ越しに手を振る先生。ご近所から筍の差し入れが届くという嬉しいお知らせが。 <18>「歩きつづける彼岸花咲きつづける 」は合計18音 。判定は先生が ▲ 、家藤さんが ○ 。2つの「つづける」が一瞬の時間軸だと最初は捉えたものの、さらに数百年レベルのスパンで読めば今の自分だけではない奥行きがあると解釈した家藤さん。一方、映像的効果を考える先生は、一時期しか咲かない彼岸花をどこまで行っても咲き続けるという地域・時間を生きている 解釈ならば○でも異論はないと述べます。結局○ となります。 <19>●「まつすぐな道でさみしい 」は合計12音 の有名句。句を連呼する先生ですが、判定は二人とも◎ 。曲がり角の方が期待が出来ると良く聞く先生。真っすぐな道には爽快感があるものの、そこに寂しさを感じる 点に山頭火らしさがあると述べますが、仕方なく札を挙げたようで、今後評価が変わる可能性にも言及します。世界のどこにでもある道で、アリゾナなど広く真っすぐな道路の喩えを家藤さんが述べると、ヒッチハイクも出来ないような道などを挙げる先生。歩いている身からすると何もなさすぎる道に恐怖を感じる可能性がある と家藤さんが分析し、句の良さに腑に落ちた様子の先生です。 <20>「だまつて今日の草鞋穿く 」は合計12音 。判定は二人とも○ 。励まされる印象だという家藤さんと、しょうがない感を感じる 先生。下五「草鞋(わらじ)」に現代人にとっても通ずる思いがあり、黙って穿く「革靴」や「運動靴」などに置き換えられると分析するお二方。作者は辛いことを抱えながら生きてきたと述べ、自身の家庭になぞらえる家藤さんです。 <21>「ほろほろ酔うて木の葉ふる 」は合計12音 。判定は先生が○ 、家藤さんが ▲ 。「酔い」が乗り物ではなく酒にほろ酔いする状況で、木の葉が降っていく揺らぎ感と振り感が対応する 点を肯定的に捉える先生。「ふる」をマイナスに受け取る家藤さんは自由律にする型の是非に言及。5音の季語を頭に置く有季定型の方が締まりが良く、自由律ならば「ふる」は不要だと分析。先生は納得しながらも「山頭火ファンに怒られるよ 」と助言します。揺れながら落ちていく木の葉の映像描写の可能性を指摘する家藤さんに従い、結果的に▲評価 に。 企画は今後も続けていくことを予告しました。
[222] 【ひみつジャナイ基地】聞いたことあるけど、どんな場所? <2022/6/12公開> 「ひみつジャナイ基地」から屋外ロケ 。道後「伊月庵」近くにある・宝厳寺の山門の向かいにある施設と紹介します。職員のタケダさんに内部を案内していただきます。 「ひみつジャナイ基地」は2019~2020年に始まったアート事業の一環で作られた建物。東京藝術大学の日比野学長が全国にコンペし、愛知工業大学の大学院生・松本樹氏が設計に当選。そして、地元の設計会社が設計監理を担当 したそうです。夏井先生も名が「いつき」のため、周辺の道を「いつきロード」と命名したらどうかという提言があったことに先生は苦笑します。 旧来、アートを楽しむ事業目的があったそうでしたが、新事業を受けて一般人がワイワイガヤガヤと集って交流を楽しめる道後初の施設とのこと。 ロッジのような開放感のあるフロアの上方に「ひみつジャナイカード 」を万国旗のように吊るしていることを紹介します。これは、人間にある秘密を書いたカードをみんなで共有・共感していくという多様性を認めた取り組みとのこと。月に180枚ほど書かれ、随時入れ替わるそうです。先生はそのうちの幾つかを読み上げて紹介。推し活で使った金額、自分のルーツの場所、おはぎを食べた、○kg太ったなど。中には英語で書かれた"Bacon is healthy" など海外の言語のカードもあり、約20か国から訪問して頂いているようです。施設自体はWebで事前に申し込むと無料で貸し出している よう。大学のゼミでも使われるようで、取材日は伊予弁による紙芝居の予約があったようです。ワークショップとしても利用されているとのこと。 先生らが「いい、つばきの日」の句会ライブの生配信も行った場所 で、その時の写真も貼られています。横浜からの訪問者と挨拶を済ませて締めくくり。伊月庵を立ち寄った際のついでや、吟行スポットとしても訪れてほしいとお二方が述べました。
[223] 【添削の依頼】「●●はもう言わないで下さい」組長が思うこと <2022/6/16公開> ベンチトーク。お二方の動画収録のお品書きに「添削について 」とあり、その横に赤文字で「アホ! 」と罵りの言葉を先生が書いたことを家藤さんが紹介。添削に関して思うこと を先生が述べます。 添削依頼の仕事に加え、句会ライブや講演以外のイベントの依頼も受ける多忙な先生。イベントを行う自治体の町長や商工会議所の所長など弄っても笑いになるような人物が詠んだ下手な俳句を添削で盛り上げてほしい などの要望が相当数あるそうです。実際に行うと、市長や会長など俳句を添削された人物にとっては良い気持ちがしないと言います。 「プレバト!!」の添削が面白いからといって、添削ショーとして別で行っても面白いというのは大きな誤解 だと先生は断言。「プレバト!!」に出演する芸能人は「俳句を詠む」ことを仕事として振舞うプロであり、何よりMCの浜田雅功氏がいるからこそショーになる のだと言います。梅沢富美男氏と先生の二人だけでも無理なことで、浜田氏が色んな人を転がしながらショーにする手腕があってこそだと述べるのです。 一般人を相手に添削をしたからといって面白いわけではなく、俳句を作った人も傷付く上、番組のような面白さを期待した観客も肩透かしを食らい、先生も主催者側も良い気持ちにならず、互いにデメリットしかない と語ります。そのため、そのような依頼は初めから受けないことを決めていると先生は述べます。 紙面に載せる取材でも、どのようなロジックで添削されていくかという過程を読者に見せることで、俳句初心者でも興味を持ちやすいのではないか? という要望があるそうです。しかし、先生はそれも間違いだと断言し、添削自体が高い技術力を必要とする ものだと述べます。家藤さんも、添削過程を文字にした場合に納得して面白さを感じるのは俳句にある程度慣れた人でないとダメ だと同調。初心者向けには添削を紙面で見せるのはタブーだと先生は続け、「アホ!」と本音を述べます。 NHK全国俳句大会の番組収録をした先生。プロデューサーや司会者の打ち合わせ会議の際に、NHKの俳句番組あてに視聴者から戸惑いのお便りが届いていることが話題に。番組内で講師に行ってもらった句の添削が、自分が思ったこととは全く異なる内容の句になっている という主旨のようで、いわゆる"添削あるある "だと述べます。「添削」とは、作者の思いと句の言葉に溝があり、その溝を埋める手立て が本来の趣旨。俳句には、作者がどのような思いで作ったかは通常は書いておらず、作者の表現意図を推測して添削をしますが、Aという内容がBに変わってしまったと作者から言われる そうです。勿論、作者の書いたAが下手であることが要因ですが、添削された当の本人は判然としないことに。季語以外が添削で残らないこともよくある話のようです。収穫したジャガイモで、じゃがバターを作りたかったのに、アドバイスによってカレーになってしまったと例える家藤さん。俳句をカッコよくしてあげるのが添削ではない と断言します。添削できると思う俳人も多いものの、作者のことを考えて添削しているかどうかが重要だと言います。作者が思っている内容が凡人的な範疇に収まっていた場合、それをさらに良い内容の句にすることは添削ではなく、改良・改作だと念押しします。「添削」をショー化して紙面に収載したり、イベントを行うのはお門違い だと繰り返す先生は、本日の主張として「"添削イベントをしてほしい"や"雑誌に添削を載せてほしい"とは言わないでください」と訴えます。仕事依頼のガイドライン だと総括する家藤さんは、「母は母なりに苦労しているため今後ともよろしくお願いします」と丁重に頭を下げました。
[224] 【ご報告】夏井いつきの句碑が出来ました! <2022/6/19公開> 5月の晴れた日の屋外。上人坂の伊月庵前にある新しい句碑 を挟んで、お二方が両隣に立ちます。NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介された以下の句が刻まれていることを紹介します。 【夏井いつき 】の「青き踏めマスクを鳩として放て 」。句碑と呼ぶには斬新なようで、表面に反射加工が施された四角柱が地面に立つ様子を先生は「鏡の棒」と表現します。句が書かれた面の左の面に「夏井いつき」「上人坂」と作者と場所が明記され、反対側の右の面には「道後オンセナート 2022 」と、句碑を立てるきっかけとなったイベントの総称が刻まれています。 「マチコトバ」というプロジェクトで、上人坂と俳句を重ねるという主旨で参加した先生。「オンセナート」は「道後温泉」「アート」 を組み合わせた造語で、毎年手を変え品を変えた活動を行っているそうです。道後温泉本館の裏手がドンドン綺麗になることを実感しているという家藤さん。夏井先生は、2018年の同企画で某音楽アーティストの歌詩が宝厳寺の駐車場などに書かれたことを挙げますが、肝心の名前が思い出せないよう(「クリープハイプ 」)でした。当時、ファンの方が大勢駆けつけて、詩の前で写真を沢山撮ったとのこと。 そして、句碑右面の「マチコトバ」の下に謎のQRコードが刻まれていることを気に掛ける先生。家藤さんがスマートフォンで読み取ると、道後オンセナート2022公式サイトにリンクされたよう。鏡面仕上げとなった句碑の由来や他のマチコトバがある箇所がデータベースに示され、周遊の際に役立つ仕組みになっているそうです。 さて、先生は「句碑を立てるのは好きではない 」と告白します。自分の死後であればまだしも、生きている間に句碑が立つと、その句の出来栄えに赤を入れたくなる時期が来ることを心配すると述べる先生。しかし、この企画には賛同したようで、実際の句の部分はフィルムで貼っているよう。句碑が石として刻まれて残るのが嫌で、四季を通じて異なる季節の句がそのまま残るのも嫌だと訴えたそうで、季節ごとに句を貼り替えできる仕様 に決まり、実際に今後6月になると句が替わるようです。流動的で季節と一緒に句が替わるのは俳句の心に適っている と先生は述べます。 先生の上人坂の句碑は全部で5本 あり、伊月庵前の句碑が下から4本目だといいます。ここで宝厳寺側の方へ移動していくお二方。「ひみつジャナイ基地」前にある5本目の句碑を紹介します。 【夏井いつき 】の「卵色の月のばぼんと暖かし 」。ここで動画[222]にも登場した、ひみつジャナイ基地の職員であるタケダさんが呼び出されます。ひみつジャナイ基地は2019年の道後オンセナートで、東京藝術大学の日比野学長により作られた作品で、多様性を認める主旨があり、来場者が秘密を書いたカードを共有するという取り組みを行っています。さらに、愛媛県産の総檜の建物で、20本ある柱の長さは全て異なるというこだわりを持つと紹介します。動画の公開順は前後しますが、ここでもう1本動画を撮ることを先生は約束します。 家藤さんは、上人坂を上がってくると季語「暖か」を感じる春の月を時間帯によって色んな方向で眺められるロケーションだと句を鑑賞します。先生は、松山の上人坂に来た際、下から5本の句碑を自分を鏡面を反射させて記念撮影して ほしいと述べます。季節ごとに句が替わる仕組みのため、年中松山を訪れても楽しめる仕掛けだと続けて述べます。撮影中、バイクや車の音も入ってしまいましたが、これらも句材にしてもらいたいと述べて動画を締めました。
[225] 【夏井いつきが推薦】新歳時記を紹介します <2022/6/23公開> 夏井先生が推薦する歳時記の紹介。『新歳時記(春・夏・秋・冬・新年) 軽装版』平井照敏(ひらいしょうびん)編 河出書房新社(全5冊) は、夏井先生の写真付きの帯がついている歳時記。 先生曰く、一回り小さいサイズの文庫本時代が長かった歳時記のようです。最初に用いていた歳時記は息子の家藤正人さんに払い下げたそうですが、先生が日本放送協会放送文化賞を受賞した記念に、ゆ かりのある品としてボロボロになるまで使っていた歳時記を提供し、現在もNHKに歳時記は展示されている ようです。 その次に先生が手に入れた歳時記が、この文庫本の歳時記。今回は文字が大きくなって新調された そうで、先生にとって思い出の歳時記です。著書の平井照敏と初めて出会ったのもこの歳時記で、若い時は字の小ささにも平気だったようですが、老化によって独りぼっちにさせてしまったとユーモラスに例えます。 今回、新調された歳時記を嬉しそうに語る先生ですが、何でもかんでも推薦しているわけではなく、自身の役に立ったものとして推薦したという経緯を述べます。 ここで家藤さんは、「○○氏推薦」となる経緯が疑問だったことに触れます。先生は、小説や映画も同じで、依頼として届くことを述べ、依頼を断った映画を挙げます。一方で、映画『おみおくりの作法』に涙を流し、推薦を書いたようです。 さて、本題へ。なぜ、先生がこの歳時記を推薦したかという理由として、全ての季語に、解説のほかに作者なりの本意(ほい)をコンパクトにまとめている特徴がある 点を述べます。本意とは、季語の土台情報で、誰もが季語を聞いた際に受け取る基本情報だといいます。「薫風」を例に挙げますが、本意を知ることで、それと同じことを書く必要がない点を確認するのに役立つと述べます。単なる辞書的意味でなく、季語と出合う体験の基礎的情報がある と補足する家藤さん。五感情報を含めた強調だと先生は続けます。 例えば、夏の季語「油照(あぶらでり)」。解説では「多く薄曇りの暑い日、あぶら汗が出る天気」などと書かれています。本意では「炎天ではからっと照り、焼け付く暑さだが、油照はむしむしと脂汗の出る暑さ 」と記されています。油照の体感を一つ前に掲載される季語「炎天」との比較で示されており、先生が連載していた"似て非なる季語 "としての基本情報の整理がしやすかったと述べます。家藤さんは、その違う部分に焦点を当て、季語の真髄の比較が分かりやすく興味深いと述べると、「似て非なるシリーズ」の動画収録を提案する先生です。調査が間に合わないと訴える家藤さんですが、近くに越してきた妹のローゼン氏に資料調査のお願いを検討すると述べる先生。 そして、先生は分冊の「新年」を取り出します。新年には、他の全ての季節の目次も掲載されますが、この歳時記は「季語論」が途中に約70ページ掲載 されており、先生も熟読してこの考えに触発されたそうです。その目次に「季題とは何か?」「季語と時間」「季語と象徴」「季語と伝統」「新しい季語」 とあり、五部構成。是非一読してほしいと述べる先生です。 家藤さんは、動画[116]の夢枕獏氏と連載について触れます(現在は連載終了)。「初心者には季語が使いにくく邪魔で仕方ない」と最初書かれていたことを挙げ、今は「なんと重要なエッセンスだと考えている」と変化していったことを興味深く述べますが、この連載は書籍化の予定だと先生が述べ、ちょうど獏氏と対談をする狭間のタイミングに動画収録したといいます。 最後に、季語を考える一助になればと家藤さんが歳時記をお薦めしました。
[226] 【誤変換】このチャンネルで見かける字幕ミスについて <2022/6/26公開> 本日はベンチトーク。俳句もハガキ投函からネット投句が一般的になり、その結果打ち間違い(入力ミス)がよくあるとの話題を切り出します。さらに、このYouTubeチャンネルの字幕テロップにも間違い(誤変換)がある点を最初にお詫びします。変換ミス のご指摘も頂くようです。 動画[210]で「いで」から始まる俳句12句を披露した先生。そのうちの一句の後半「大試験 」で正しいのですが、「大試練 」と画面に表示されていたことをお詫びします。 動画[179]で紹介された句「ほくろの相談会 」も聞いて書き起こすうちに「心 の相談会」と字幕がなっていたようで、先生も爆笑します。 ここで、先生はローマ字入力ではなく、 平仮名入力でパソコンを打つ ことを明かします。ローマ字では子音と母音で2回キーを打ちますが、平仮名では1回キーを押せばよいため、素早いようです。濁点や「っ」などの入力方法を質問する家藤さんですが、「せ」の右側にある濁点キー、シフトキーを利用して「つ」を打つなどの違いを述べる先生に、感心する様子の家藤さん。さらに「ヴ」のような表記も同様に入力できるのか細かく尋ねます。ローマ字入力はキーで切り替えますが、逆に「A」のボタンを探すのに時間が掛かってしまうと先生は言います。原稿の作成、メールで原稿を送信することしか、キーボードは触らないとのことです。 ここで、先生は「南海 放送ラジオ」と入力した際、"何回"も「難解 」と表記されてしまい、しばらく入力を繰り返すことで「南海」がパソコンに覚え込まれたことを述べますが、突如カメラマンの兼好氏の方を見て先生は笑います。ローゼン千津氏も待機しているようです。 一句一遊や俳句ポストなどの俳句の投句においても、送信する俳句の変換ミスがよくあると述べる家藤さんは、ここで兼好氏が紙に書いた内容を発表します。「退陣 」→「タイ人 」と変換されたことを紹介し、爆笑する先生です。 また、ローゼン氏が書いたのは「確認 」→「角煮 」、「(至急)返信 (して下さい)」→「変身 」というメールなどの文例での表現。「角煮」はスマートフォンの入力で、ローマ字入力で「n」を2回打つと「ん」と入力されますが、それを打つまでの予測変換の機能があることによる弊害からきているとローゼン氏が述べます。スマホのフリック入力のミスも、入力ミスに繋がるようですが、お二人が普段用いる入力法ではない様子。ケータイでの入力もあまりしないと述べるお二人です。 ラジオ「一句一遊」の収録時にたまらなく笑い転げてしまったこともあると切り出す先生。【ぽーや 】氏が毎週の兼題の能書きを書いて送り、それを月曜日の放送で必ず読むようです。以前の俳号は【ポメロオヤジ 】で、ポメロは柑橘という意味で、かつて「みかん研究所」に勤め、紅まどんなの開発にも関わっていたそうです。ある日届いた資料に書かれた俳号は【褒めろオヤジ 】になっており、先生が揶揄うと次回の投句の際に赤面恐縮のご本人の様子だったと述べます。変換ミスが笑い話になることもあれば、俳句では致命傷になる こともあると警告する家藤さん。最後に「どうでもいい話」として先生が一言述べました。
[227] 【いい詩と出会いました】『あとから来る者のために』 <2022/6/30公開> 今回もベンチトーク。2022年6月1日~3日に
全国商工会議所 観光振興大会2022 in えひめ松山 を愛媛文化会館のホールにて開催。夏井先生と家藤さんが壇上に上がったイベントで出会った詩について紹介します。愛媛の商工会トップの大塚氏は、先生の出身校・宇和島東高校の先輩で伊予銀行の現会長。先生と大塚会頭で対談をし、家藤さんはファシリテーターを務めたそうです。そして、対談の中で
大塚会頭が紹介した詩 に感銘を受けたというお二方。翌日の基調講演で先生は、紹介された詩を朗読。観客からも見えるように投影したそうです。作者は地元・愛媛の詩吟、
坂村真民 (さかむらしんみん)氏。地元では有名な方で「念ずれば花開く」のフレーズでも知られます。独特の書も力強いと述べる家藤さんが詩を朗読します。
あとから来る者のために
坂村真民
あとから来る者のために 田畑を耕し 種を用意しておくのだ 山を川を海を きれいにしておくのだ ああ あとから来る者のために 苦労をし我慢をし みなそれぞれの力を傾けるのだ あとからあとから続いてくる あの可愛い者たちのために みなそれぞれ自分にできる なにかをしてゆくのだ
先生は、この詩の内容「あとから来る者のために」が
俳句集団いつき組の活動理念と合致する と言います。俳句の裾野を広げれば、俳句の山が豊かになっていくという考えを持ち、
俳句の種まき活動 をされている先生方。「いつき組」も勝手に名乗る仕組みであり、身近に俳句を広げる活動の輪が広がっていく昨今ですが、先生は100年後を見据えて「あとから来る者のために」今俳句の種を蒔いていく必要性を述べます。
先駆者である先生方とこれから俳句を始める人たちへ向けたメッセージ と捉えた先生方。キーワード「種」が種まき活動と呼応し、「山を川を海をきれいにしておくのだ」が自然に対峙する俳人の姿勢に共鳴すると言います。さらに、「苦労をし我慢をし みなそれぞれの力を傾けるのだ」について、俳句を広げる現在の活動を語ります。老若男女の方が参加する句会ライブを担当する先生、小中高生との句会ライブを担当する家藤さん、公民館や介護施設などに出向く組員さん、気の合う仲間と開く多くの小さな句会など、
それぞれの力が注がれている ことを挙げます。また、「山を川を…」は
SDGs にも繋がることを述べる家藤さんは、大きい何かが勝手にしてくれることではなく、身近なところで俳句や子どもに何ができるかという点に集約されると言います。
いつき組の結成時から100年後の未来を見据えていた先生は、「
俳句を使って言葉を育て、言葉が育つと心も育つ 」という理念を持っていたと述べます。子どもたちだけではなく、大人も同様で、自分の思いを言葉で相手に伝える力は人間関係を作る上でも非常に大切な技術だと続けます。「100年後」のキーワードは当初、冗談のように捉えられていたようですが、活動を積み重ねた結果もあり、徐々に理解されるようになってきたそうです。
句会ライブも30年続けていることを明かしますが、続けることの大切さを確認する先生は、自分のための活動でなく、「あとから来る者のために」あることを今一度述べます。
先生は、基調講演の最後に老婆心と思って付け加えた言葉があると言います。"
文化を生業とする人間は、必要以上の物を漁(すなど)ってはいけない "。必要な量の魚は頂くが、残りの魚は海などに返しておくことが大事だとしみじみと思うそうです。文化でご飯を食べるのは良いが、文化を食い物にする方法にはついていけず、そこは絶対に踏み外してはいけないと改めて述べます。話を聞く息子の家藤さんが「隣で学ばさせていただいていますよ。良い母親を持ったと思いますよ」と感想を述べ、照れ笑いになる先生です。
教訓のようなものは常に自分に言い聞かせないと、油断して「私腹を肥やしたい」「権威のために都合よく使いたい」などと考えてしまうため、
言い聞かせる意味で今回の詩を共有したかった と述べる先生。2022年にこの詩に出会えて幸運だったと述べる息子の家藤さん。「胸に抱いて生きていきたい」などと抱負を述べる息子さんに、苦笑いの先生でした。
[228] 【となりのくみいんさん】第2回ゲストは竜胆さん! <2022/7/3公開> 動画[179]以来の「となりのくみいんさん 」第2回。左手に先生、右手にゲストが座り、家藤さんはカメラ奥から音声のみの出演です。【竜胆(りんどう)】 氏が挨拶をします。「竜胆」は季語だと先生が解説します。先生とのお付き合いも長いようですが、「俳句甲子園の手伝いをしたい 」という動機でカルチャー教室に来たダンディーな男性の印象だったという馴れ初めを述べる先生です。 竜胆氏は2010年頃に先生と出会ったと述べ、俳句甲子園に関わり始めたのもその頃だと答えます。転勤で全国を転々とし、松山に戻った2006年頃、大街道で俳句甲子園の予選会の最中のところを偶然通りかかって興味を持ったという竜胆氏。当時は俳句甲子園そのものを全く知らなかったようですが、翌年、翌々年も大街道を観に行ったそうです。偶然から企画に関与した共通点として、現在の俳句甲子園の実行委員長・日野氏も通りがかりの建具職人だと紹介する先生です。「俳句甲子園STAFF」とロゴが入ったピンクのポロシャツ を着ている竜胆氏。実行委員会が中心組織で、運営スタッフはボランティアが主体。竜胆氏はその実行委員会のメンバーです。「ボランティア・学校募集委員会」という小委員会に所属し、ボランティア募集や一般市民からの募金受付などを担当 しているそうです。 市民スポンサー制度は早期の段階で立ち上げていたと語る先生。当時、高知のまんが甲子園では大スポンサーが抜けたことで財政面が厳しくなった事実を聞き、1社の100万円より1000人の1000円というように、多くの方に支えてもらうのが正しい姿ではないのかという議論を行ったそうです。現在それらを担当し、運営を支えているメンバーが竜胆氏です。 俳句甲子園のホームページにリンクを貼り、募金は振り込みの形となりますが、昨年は夏井先生のブログやYouTubeの効果もあり、初めて市民スポンサーの支援額が100万円に到達した そうです。 今年で25回を迎える俳句甲子園ですが、長年の積み重ねの成果であることを語るお三方は感謝の言葉を述べます。「お金のある人は市民スポンサーに、お金のない人は体でボランティアを」と言い続けてきたという先生です。 また、学校への広報についてはコロナ禍による厳しい状況を述べる竜胆氏。この2年間は部活も制限された学校が多く、3年間しかない学校生活において、先輩から後輩への技術(ディベート・鑑賞)の継承も難しい現状があると語ります。ここで蜂が来たことを報告する先生。 今年は地方大会から100以上のチームがエントリーし、(撮影日の週末である)6月11日から全国で地方大会が開始されると報告する竜胆氏(※動画公開の段階では地方大会終了)。8月の本選(全国大会)は是非松山に見に来てほしいと先生は述べます。第25回俳句甲子園は、8月20日(土)大街道商店街特設会場で、21日(日)松山市総合コミュニティセンターで 行われます。 また、市民スポンサーのご案内。1000円以上の募金で希望する場合、俳句甲子園公式ホームページ、公式パンフレットに名前(俳号など)を掲載できます(それぞれ期限があります)。 さらに、家藤さんはYouTubeなどに上がっている過去の俳句甲子園の動画を見てほしい と述べます。また、先生は8月に松山に来ることを予定している方は、早めにホテルを予約した方が良い点をアドバイスします。是非とも俳句甲子園を応援しましょう。
[229] 【伊月庵に新しいデッキ】正人も知らない伊月庵の裏話も <2022/7/7公開> 先生と家藤さんが伊月庵前に立つ屋外でのトークで、新しいデッキをお披露目 します。様々な催し物に利用したいと先生が述べます。 「チャンネル登録」を促すアイキャッチ画像の後、画面は伊月庵の句碑のある側に切り替わり、ゲストを真ん中に迎えます。伊月庵デッキを新築した人物、株式会社デザインアルボ―の河野さん を紹介します。 「伊月庵のデザインは、なぜこのようなアイデアになったか? 」という先生の質問に、「宝厳寺をブラブラ歩きながらデザインを考え、(上人坂の)坂道の風景に似合うような建物が良いと思い、木を使った建物になった 」と回答しますが、宝厳寺を見てのデザインだという事実を初耳だと述べて驚く家藤さん。 最初は宝厳寺のみだった地域周辺にぽつねんと建った伊月庵。その後、動画[222]で紹介した「ひみつジャナイ基地」が建ち、少しずつ賑わいが出てきたという周辺一帯。デッキを無理強いして張り出してもらったと述べる先生は「面倒くさいことはなかった? 」と質問しますが、河野氏は即座に否定し、「思った以上に取って付けた感じがないのが良かった 」と述べます。家藤さんは先生の第一声の質問の内容にツッコミますが、今回のデッキや後ろの社員寮のデザインを全て河野氏に丸投げしていたと述べる先生。壁紙から何から全て尋ねていたようで、「あなたの美意識を壊してないですか? 」とも先生は念押ししていたそうです。道路に間近に面する空間をどう扱うかについて、デッキの張り出しを提案する兼光氏のアイデア に賛同した先生ですが、河野氏の美意識を壊してないかを大変心配していたという経緯を述べます。河野氏は「え?」という顔をなされたそうですが、美意識の件に関しては「乱されてない 」と答えます。 素人目に見ても眺望は乱してないと述べる家藤さん。坂の道中にある場所のため、下の砂利は斜めになっているようですが、デッキの上がフラットになっていて居心地が良いと述べます。「美意識を壊す上で、一番心配していたことは何か? 」との先生の質問に照れ笑いになる河野氏。斜めになっていた場所のため、入り口で躓かないかを心配した と答えます。 ここで、「納涼祭 」を7月18日11~15時にこのデッキで実施することを予告する先生。『伊月庵通信』購読者限定ライブ配信 を行うと予告します。伊月庵内部には物品もあることを述べます。ライブ配信の映像に映ると困る方はカメラから離れた場所で楽しんでほしいと忠告。いずれデッキでお酒を楽しいんだり、風鈴をかざして夕涼みを楽しんだりなどできる日を待ち望んでいると述べる先生。動画収録は6月末ですが、既に梅雨明けで暑さが厳しいため、納涼祭当日は簡易テントやパラソルなど日差し対策になるものを設営することを考えていると述べる家藤さん。熱中症に注意しながら、近くの方は覗いてほしいと先生は述べ、「納涼祭お待ちしてます」と語りかけて動画を締めました。
[230] 【あまひやな一句】キシリクリスタル俳句コンテスト入賞句を紹介 <2022/7/10公開> 「キシリクリスタル」あまひやな一句・入選句 のご紹介。動画[168]で募集した春日井製菓「キシリクリスタル」の投句企画で入賞した作品がパッケージの個包装に印字された そうで、パッケージの袋を持って宣伝するお二方。テーマは「あまひやな一句」。早速、飴の小袋を取り出して何句か紹介します。 「特選(1句)」「優秀句(5句)」「佳作(50句)」とともに、小さい字ですが俳句と俳号とともに掲載されています。先生も眼鏡を掛けながら小袋を見て「これおかしい」と笑いながら次の句を読み上げます。 ①【トミー 】氏の「すべて脱ぐようにマスクを取る彼女 」。マスクを常時するコロナ禍の世相を切り取った一句です。 ②【真宮マミ 】氏の「ホットレモン手に部室一番乗り 」を家藤さんが紹介。 ③【貝ヶ森 】氏の「遠足の飴を風呂場で舐めており 」もおかしいと述べる先生。子ども心の特別感があって可愛いと言います。 ④【小泉野魚 】氏の「カトレアの校長室に待つ処分 」は心情と季語との温度差の対比が上手い作品。 ⑤【ナンサン 】氏の「毎日の余白に飴を梅開く 」。中七で切れがある一句で、毎日の余白に一粒飴を放り込んで過ごす感じだと味わう家藤さん。 ⑥【彼方ひらく 】氏の「冷し飴飲んでこかほんで付き合おか 」は少々読みにくいものの、「飲んでこか」に意味の切れ目がある一句。「冷し飴」に爺さん臭さがあると述べる先生。 ⑦【朝月沙都子 】氏の「頼りない俺じゃダメすか月天心 」。先生は、口下手な男がこの句が書かれた飴を相手に突きつけて告白すること を提案します。それができるだけロマンチックだとコメントする家藤さん。 ⑧【くうみん 】氏の「駆け落ちの叔母も卒婚冬の菊 」は優秀句 の一句。「卒婚どうでしょう?」と⑦のように突きつけることを提案し、笑いをとる先生です。入選56句全てを見たければ何袋購入すれば良いか が気になる家藤さん。 ➈【菅原知子 】氏の「プール開き君はタトゥーにテーピング 」。刺青お断りのプールに入るために、タトゥーを隠す仕草だと推測するお二方。 先生は、この飴に対して「色んな遊び方があるかもしれない 」と述べます。先ほどの相手に突き出してメッセージを送る方法を挙げますが、その気がない人が見たら失笑ものだと淡々と返す家藤さん。 ⑩【澤村DAZZA 】氏の「レモンティあなたのきらいなところ百 」は優秀句 。絶対に恋の句だと述べる先生は、嫌いな所は沢山言えるが結局は好きだと酔いしれながら述べ、「失笑」と続けて楽しみます。我々の世界と隔たったところにドラマがあると述べるは家藤さん。 ⑪【石井一草 】氏の「啄木鳥やズボンに指環入れたはず 」は"突きつけ"たら怒られると家藤さんが述べます。入れたはずだけど「ない」ところに可笑しみがあります。 「あまひや」な一句と思って鑑賞するとまた面白みがあると述べる家藤さん。キシリクリスタルのホームページに全ての入選句が掲載 されています。「佳作の人は自分たちの句がプリントアウトされていることに気づいていないのではないか」と心配する先生。是非商品を購入して自分の目でチェックしてほしい と忠告します。 そして、自分の言えない台詞が書かれた句を、代わりに相手に突きつける手段にも使える と改めて述べる先生。この企画は思ったよりも面白かったと述べます。家藤さんは、優秀句を全て探す旅をしたいと抱負を述べ、コンプガチャ的に目的の句を探す楽しみとしても使えるのではないかと提案しました。
[231] 【選句について】結局は選者の好みでは?この意見に組長が... <2022/7/14公開> ※筆ぐるめ俳句大賞2022「残暑見舞コンテスト」の投句案内。ハガキによる投句で8月31日消印有効。テーマは「残暑見舞」。詳細はキャンペーンサイトをご覧下さい。 6月10日撮影のベンチトーク。【正岡子規 (まさおかしき)】「六月を奇麗な風の吹くことよ 」を紹介し、動画に寄せられた気になるコメントに対して回答します。 動画[219]で紹介した【仁和田永 】氏とのエピソードトークへ。句会ライブで会ったと動画で語っていましたが、おウチde俳句表彰式で会う前の収録で、本人は覚えられてないことにショックを受けられたそう。動画撮影のタイムラグがある ことを念押しして謝るお二方ですが、最初に撮影日を述べたのも敢えて理由があったことを明かします。 おウチde俳句の表彰式後に、小学校の句会ライブへと向かった家藤さんは、句会ライブのメッセージコメント を送られた【あかちゃろ 】氏に謝辞を述べます。 【tamaki 】氏の質問を紹介。「初心者的質問。伝統的な『NHK俳句』などで選ばれる句と、正人さんやいつきさんが選ばれる句の雰囲気が全く違う 気がする。お二方の選句は『真面目にやりなさい』と怒られそうな感じもあるが、NHKでは知識豊富で長年やっているに違いなく、素晴らしいが忘れやすいような句が選ばれる傾向がある(先生「梅沢のおっちゃん」。お二方の選は、妙に記憶に残るような巧さで、作者に会いたくなるような気がする 。 精進するには、どちらの方向性を目指せば良いのか? あるいは、目指すのではなく気が付いたらそっち方面に向かっていたという感じなのか? 先生の言う句柄の話なのか?」 毎年行われる「NHK全国俳句大会 」で選者を務める先生。本来は会場のNHKホールが満杯になるほどの盛況ぶりで、特選をとると壇上で表彰される大会です。テレビで内容が放送されますが、番組の冒頭で話したことがある内容に触れます。選者は十数名いますが、伝統・中道・前衛と色んなタイプの先生がおり、選ばれる句もバラエティーに富んでいる と言います。「結局、作者の好みではないか?」と聞かれることも多いが、腑に落ちないことがあると先生は述べます。「プレバト!!」でも句のダメな点などを論理的に説明することを心掛けている と続けます。選とは、網目のついた大きな篩(ふるい)に何万句と掛かりますが、どんな俳人でも等しく落ちる と語る先生。 ここで、動画[228]の竜胆氏のハプニングがお二方の目の前で起き、会話が中断されます。無事、砂利から車が抜け出せたようです。 さて、篩に掛けた際に、「NHK俳句大会」では約8割の句が落選しますが、どの選者が篩にかけてもほぼ同じものが落選する と先生は述べます。さらに篩を粗い目にして選句を絞っていきますが、等しいものが落ちると語ります。そうなると、残る句も選者によってほぼ一緒となりますが、最後の特選一席を選ぶ際に、初めて各選者の俳句観・文学観が強く現れる と言います。よって、気分や好みで選ばれているわけではない と強く述べます。第一陣の篩に掛けてない状態からピックアップで選ぶと誤解しているのが、「どうせ好みでしょ?」と思う人の思考回路だと家藤さんが見解を述べます。先生は、作品として未熟なものは必ず落ちると改めて述べます。また、特選一席に関しても、他の選者が採った作品の多くが、自分の選でも最終候補に残るような琴線に触れる作品 がほとんどだと述べます。「ダメなものは落ちている」のだと強く述べます。 昨年の第22回大会のデータを用意した家藤さん。先生が兼題から特選に採ったのが、【嫉妬林檎 】氏の「ダリア、ダリア先生の名字が変わる 」。目に飛び込んだ瞬間にそそられたという先生。思春期に、大好きな先生が結婚する内容の句ですが、強烈な色合いで咲く「ダリア」へ呼びかけざるを得ない切迫した感じが刺さったと言います。家藤さんも「、」(読点)が挑戦的だと述べます。先生がこの句を一席にすると、他の選者からも「採ろうかどうしようか迷っていたが、よく採る勇気があったね」と声を掛けられたそう。さらに、井上康明氏、櫂未知子氏 の特選は同じ句です。【冬魚 】氏の「拭き上げて雪の匂ひの生家かな 」。綺麗に拭き上げる黒光りの廊下に柱、冷たい感触があり、雪国の冷たい家を思う光景だと言います。しんと来る冷たさが嗅覚で伝わるのが良いと述べる家藤さん。先生も採るのに迷う候補の一句だと述べ、同じレベルなら他の選者が推さなそうな句を選ぶ判断をする場合もある と語ります。選者団に加わっているならば、「私らしさ」を抑えて採りたい と考えられるそうです。 【tamaki】氏の質問の後半に戻りますが、目指す方向性という点で「私らしさ」を選ぶ側も作る側も持っていた方が良い と回答する家藤さん。自分らしくない句を作って楽しいかという話だと警鐘を鳴らす先生。ある俳句大会で選ばれやすい句の傾向があると、それに自分を寄せていくのがしんどくなる はずだと述べる家藤さんに続き、先生はそのタイプが大嫌いだと明かします。俳句界での流行り廃りがあったとしても、そこに寄せたところで一巡して戻ってくることになるため、自分の句が「最先端」になるときが必ず来ると忠告する先生は、自分の句を作っていた方が楽しいと述べます。「自分らしく牙を磨いていく 」と質問者に最後に投げかける家藤さんですが、「頑張ろうぜ」と先生がエールを送りました。
[232] 【姉妹の語らい】最近アメリカに行った?お互いの近況について <2022/7/17公開> 屋外でのベンチトーク。「姉妹の語らい 」と題し、左手に先生、右手に妹のローゼン千津 氏が座ります。家藤さんはカメラ外で音声のみの参加です。姉妹が近くに住んでいるため、わざわざ語らうこともないのかと気を装う家藤さんに対し、ゴミ出しでの普段の会話を述べる先生です。松山でのゴミ出しにようやく慣れたと述べるローゼン氏ですが、以前住んでいた山梨・山中湖村では分別せずにゴミ出しをしていたそう。さらに、ゴミの分別に関して捨てたいものを検索するガイドブックがあることを先生が述べると、犬小屋の処分についてローゼン氏が語り、盛り上がります。 10日ぶりに"久しぶり"に会ったと述べるお二方。前回はタクシーで空港に行き、宇和島鯛めしの店に行き、お互いが異なる食事をしたそうです。その後、先生は鹿児島へ行き、さらに「夏井いつきのよみ旅」のロケ撮影のため、奄美大島へ 向かいます。梅雨の最中で初日は晴れたそうですが、2日目は湿度93%の雨期の雨で、長靴を履いたそう。共演者の"ローランちゃん"(→Roland)が長靴を履かないことを聞いたローゼン氏も長靴を履かないことを明かします。そして、鹿児島経由で東京へ行きますが、最初に乗った小さい飛行機では、ちょうど線状降水帯の雲が押し寄せていたそうで機内の激しい揺れに驚いた ことを明かします。ローゼン氏は『ハドソン川の奇跡』 の元になった機長・キャプテンサリーの実話を語ります。飛行機の上下左右の激しい揺れが嫌いな人に向けて、「揺れの激しいバスが坂道を下っているのを想像すれば怖くなくなる」と告げて飛行機恐怖症が治った 人が全米で何十人もいると言い、自分もパニックにならなくなった一人だと述べます。その話を事前に聞いていたという先生ですが、機内で夫の兼光氏と「死ぬときは一緒ですね」と手を繋いだそう。それを聞いたローゼン氏は黄色い雄叫びをあげ、両手で♡マークを作ります。先生は、大きな飛行機の方が揺れない と持論を語りますが、ローゼン氏は真逆の意見。シンガポールエアラインの二階建ての大きな飛行機に乗車した際が人生で一番揺れたそうですが、最近乗ったJALのLCC「ZIP AIR」は、行き帰りの道中全く揺れなかった と言います。 先生は、東京で「プレバト!!」の収録後、香川県高松市で句会ライブ、そして松山へと帰省します。妹のローゼン氏は1日早く帰っていたそうです。 次にローゼン千津氏のルート。コロナ禍で海外渡航出来なかったものの、必要に迫られてロサンゼルスに夫・ニック氏の里帰りをした そうです。松山からジェットスターで成田へ行き、そこから現地へ乗り継いだそう。スーツケースに7泊8日分の大きな荷物を入れる先生に対し、とても軽い荷物だったことに驚く先生とポーズを決めるローゼン氏。95歳と高齢のニック氏の母の見舞いに向かいますが、高血圧の治療で血圧を下げる薬を多く飲んでしまい、倒れられたそう。「いよいよお迎えが来たけど、心配しないで」という電話が本人からあったそうです。2週間待機の制限が「開国」によりなくなっていたため、このタイミングで現地に向かうと既に快方に向かっていたそう。5日間滞在しますが、母親本人から「二人で帰りなさい」と言われ、「ZIP AIR」の安いタイミングで帰宅したそうです。 先生から「海外は医療費が高いのでは? 」と質問され、答えるローゼン氏。富裕層は毎月保険料が高い一方でどんな手術でも安く受けられ、底辺層も最低限の治療がタダで受けられるそう。しかし、ローゼン氏を含めた中間層が一番出費が大変 のようです。保険の種類によっても適応される手術や治療が異なるようで、とても複雑だと言います。 また、空港ではみんなマスクをしていたが、ロサンゼルスの街中ではマスクをしている人が圧倒的に少なかった とも述べるローゼン氏。細心の注意を払って暮らしたそうです。 ここで、海外渡航の際のコ ロナ検査について 先生が質問し、ローゼン氏が答えます。行く際は、まず松山でコロナテストを受け、海外渡航用の用紙に医者のサインを貰ったそう。三回目のワクチン接種などを含めて、それぞれ専用のアプリに読み取らせます。全て「認証」されると、画面のアプリの色が青に変わり、それをパスポートと一緒に持っていけば通過 できますが、準備を行っていないと日本では足止めされるそうです。一方、アメリカではアプリの画面提示ですぐに入国できたそうです。姉である先生がスマートフォンを持っておらず、海外渡航できないことを心配するローゼン氏ですが、「外国行かない」とさらっと即答する先生。海外から仕事の依頼があったとしても、「ガラケーのみのため行きません」で断ると言いますが、兼光氏から「ガラケーではない(※ガラホ)」と補足が入ります。ガラホもスマホのため、「海外に行ける」と安心するように喜ぶローゼン氏 。 話が脱線はするものの姉妹トークを時々すると述べる先生。▽マークを両手で作る笑顔のローゼン氏ですが「おにぎりですか?」と家藤さんに突っ込まれ、「おにぎり食べたかった」と返す明るいローゼン氏でした。
[233] 【思い出の品】『組長が送ったゆかりのある品』日本放送協会放送文化賞 <2022/7/21公開> 屋外でのベンチトーク。「思い出の品が返ってきた 」と題して現物を二つ紹介します。2021年に、第72回日本放送協会放送文化賞 を授賞された先生(動画[97]で紹介)。授賞記念にゆかりの物を送ってほしいと依頼され1年間掲示された物品が返却された そうです。先生の句集(『伊月集 龍』『伊月集 梟』)も送付したといいます。 先生が手に持つのはウイスキーボトル 。1994年に授賞した「第8回俳壇賞」授賞時のもので、先生の名前がラベルに刻印されて います。この品は授賞後の打ち上げで、俳句仲間に連れていかれた店で拵えた物だそう。1986年物 のウイスキーとのことで、計算が早い家藤さんが36年経過していると先生に伝えます。何かの折に開けて飲みたいが、その機会がないと述べる先生。年代物の酒ほど熟成されて価値が高まると聞く家藤さんは、瓶詰されたものも同様なのか?と質問。兼光氏は「まろやかになるみたい」と回答します。「開けたら次は36年物を継ぎ足す」と提案して笑顔になるお二方。「どうしてよいか分からないが記念の品」だと述べる先生です。 一方、家藤さんが手にするのが横長でコンパクトな「季寄せ 」(動画[225]で紹介)は、先生が人生で最初に購入した歳時記です。先生が最初に何を買うべきか全く分からない状態で、田舎の本屋で唯一売られていたもののようです。夢中になるほど使いこなした歳時記には、随所随所に先生の書き込みがあり、「第3回俳壇賞の人?」が「田口紅子」氏の所に書かれています。この歳時記は、その後息子の家藤さんに払い下げたもので、それによって痛みが進行した と淡々と述べる息子さん。家藤さんが通っていた学校は高大が連携しており、"俳句を作る青春日記"のような講座が当時あったと先生が述べ、高校2年次に受講したと家藤さんが答えますが、1年時に取った講座「ランニングの理論と実践」と聞いて先生は笑い転げます。選択講座の希望調査で、第二志望で取ったと記憶を呼び覚ます家藤さん。当初は異なる目的との講座でしたが、「せっかく俳句甲子園があるため出たい」と家藤さんが希望すると、そのように事が進行。先輩や後輩とともに1度限りの俳句甲子園出場を叶えた そうです。歳時記の払い下げはその際には既に行われたよう。しおりの紐も千切れて体をなさない現状まで述べます。知らない単語が沢山並んで面白いのが歳時記 だと述べる家藤さん。パッと開いて見た季語「二十六聖祭(二十六聖人祭) 」は、長崎でキリスト信教者26名が処刑された日を指す季語です。 懐かしい品を手に色々な思い出話が蘇るお二方。動画公開時には既に終了していますが、7月18日(月)の「納涼祭」の際に展示することを提案しました。
[234] 【姉妹の語らい】視聴者から送られてきた謎の缶について... <2022/7/24公開> ベンチトーク。動画[232]と同様、左手に先生、右手にローゼン千津氏、音声のみの家藤さんで進行する「姉妹の語らい回 」です。グレイヘアがお似合いの姉妹ですが、マスクをしていると姉とそっくりだと言われると述べるローゼン氏。似ている部分とそうでない部分が明確に分かれていると語るは息子兼甥の家藤さん。今回は、事務所宛に届いたある缶を紹介します。 いつき組でイギリス在住の【笑姫天臼 】氏から事務所宛に送られたのは、紫色の装飾が施された直径30cmほどの丸缶 。先生方がいない間に事務所の方々が中身のクッキーを美味しく頂いたそうですが、外見の缶だけが伊月庵にある状態。これは、2022年の英国エリザベス女王即位70周年 「プラチナ・ジュビリー 」記念の品だと家藤さんが紹介します。6月2日以降、世界各国で祝賀イベントが催されるそうです。 さらに、エリザベス2世はイギリスのウィンザー朝・第4代女王で1952年2月6日~在位しています。在位70年のプラチナ・ジュビリーは、 世界の王室全体で4例目 だそうです(フランス王国・ルイ14世、リヒテンシュタイン・ヨーハン2世、タイ王国のラーマ9世)。送付主の笑姫天臼氏にお礼を述べる先生は、7月開催の納涼祭で展示することを提案。浄財代わりに飾りたいと笑いながら述べるローゼン氏です(※納涼祭は動画公開時には終了済み)。 ローゼン氏の夫・ニック氏は王室や皇室に詳しく、長寿の人物もリスト化する ほど大好きだと明かします。先生もお酒を交わした際、日本の長寿の方が亡くなったことを聞いたようで、当時の最長寿だった木村次郎右衛門 さん(2013年6月12日に116歳で没)の映像などをチェックしていたそうです。エリザベス女王は現在96歳ですが、ニック氏の母は95歳だといいます。 先生は、王室・皇室ファンのニック氏が関係者と会ったことがあるのか? と問います。ニック氏のチェロのコンサートに上皇さま・上皇后さまがご来臨されたことがある と答えるローゼン氏。上皇さまのチェロの先生(清水勝雄氏)が亡くなられた後、清水氏の娘さんがニック氏のチェロの弾き方が父にそっくり で、是非メモリアルコンサートで弾いてほしいとニック氏を呼び、ご本人のピアノ伴奏とともに東京でコンサートを開かれたそうです。ここで、ニック氏が帰ってきたため、手を振るお二方。 コンサートでは、上皇様に演奏を聴いていただき、実際に間近でご挨拶もなされたそうです。ちなみに、ニック氏は アメリカ人として初めてチャイコフスキー国際コンクールチェロ部門で優勝したチェリスト で、現在は道後チェリスト として活躍しているという基本情報をおさらいします。妻がローゼン氏で、先生にとって義理の弟に当たります。 ローゼン氏が「上皇后さまにお会いしたなんて凄いね~」とニック氏本人に語った際、「コンサートでエリザベス女王にもお会いしたことがある 」とご本人は返したそうです。 先生は、ニック氏にも話を聞いてみたいと述べます。現在、ニック氏は日本語教室に通われている そうで、宿題に追われる毎日。「家でテレビを観ます」のような基本構文を沢山考える作文する宿題を終えたそうで、取材で話し合うまでには道のりが遠いかもしれないと先生は心配し、ローゼン氏が通訳に入ることを提案します。ニック氏にエリザベス女王のことを質問する動画も撮りたい と展望を述べる先生ですが、最後に笑姫天臼氏にお礼を述べました。
[235] 【この句のどこが名句?】『古池や蛙飛びこむ水のおと』あなたは何色を思い浮かべますか? <2022/7/28公開> 新シリーズは屋内にて。「この句どこが名句なのシリーズ 」と銘打ってスタートします。教科書などに載る名句について、よく聞かれる質問が「どこが名句なのか?」「なぜ名句なのか?」 。現実的に難解な句はあるものの、色んな場面で先生方に聞かれる質問のよう。家藤さんは、日本で一番知られている俳句と言っても過言ではないと述べて次の句を取り上げます。 【松尾芭蕉 (まつおばしょう)】の「古池や蛙飛びこむ水のおと 」。俳句の世界でも数年前に「蛙(かわず)は飛び込んだのか?飛び込んでないのか?」「蛙は何匹いるのか?」 で論争になったそうです。飛び込んだか否かに関しては、俳人の長谷川櫂氏 が執筆した『古池に蛙は飛びこんだか』(中央公論新社) を参照してほしいと先生が述べます。2013年出版で、表題の句を含む数々の名句について筆者の見解が述べられており、飛び込んだか否かについての議論の詳細はこの本を読んでほしいと述べる先生。スマートフォンで書名を即興で調べる家藤さんですが、小さい文字でかつツールを使いこなす息子さんに先生は感心します。 先生は、飛び込んだ蛙が「単数か? 複数か? 」はこの句の本質に迫る話だと言います。家藤さんは、以前受講した愛媛新聞カルチャーの講座で議論した記憶があることを述べます。 まず最初に句の型を確認。"季語ではない名詞+「や」の詠嘆+12音に季語が入るワンフレーズ "タイプです。季語+「や」+12音のワンフレーズの型と比較して、後半が重たくなりがちで、全体のバランスを取るのが難しいタイプの句だと押さえます。ここで、先生は同じ型の句を一句挙げ、家藤さんがスマートフォンですぐに調べます。【原石鼎 (はらせきてい)】の「頂上や殊に野菊の吹かれ居り 」。山の頂上で見た野菊が吹かれているという句で、後半で季語を描写しています。 さて、古池の句を読んだ際に季語が一瞬どれかと迷うと述べる先生は、息子の家藤さんに「24色のクレヨンなら何色系の色を思うか? 」と質問を投げかけます。緑がかった色の奥に春の豊かさを思う と回答する家藤さんに対し、季語を認識している視点の回答だと指摘する先生。ほとんどの人は、清浄と枯れ切った寂しい古池に蛙が飛び込んだ"ザ・わびさび "のイメージを持ち、無彩色ではないにせよ静かな寂しい光景を思い浮かべる人が多いのではという持論を述べます。家藤さんは同じく芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡 」を挙げ、この句にも同じような寂しい世界観があると語ります。 先生は、この句の季語が「蛙 」で、蛙が春の季語 であることから、季語を認識している人 (=家藤さんの読み)は春の光景を読み取れる はずと述べます。一方、「古池」を強く認識する人 (=夏井先生の読み)は、「蛙」が季語であることが抜けてしまい、寂しい古池がある"わびさび"を感じる と解説します。 そして、蛙の数についても先生は言及します。一匹(単数)の蛙の場合、チャポンと池に飛び込み、水の波紋が広がって静かに消えるような印象で、無彩色に近いモノトーンの枯れた池を思う と述べます。それに対し、「蛙」を季語と認識している場合、春が繁殖の時期であるため、複数の蛙があちこちに池に飛び込み、古池から新しい春が燃え出づる印象を持つ と述べます。要は、季語を認識しているか否かで「単数説 」「複数説 」の読みが真逆になることになります。 先生も、当初は枯れた感じの「単数説」の解釈だったものの、有名な俳人からの指摘で季語であることに気づいて大変仰天したと言います。高浜虚子は「複数説」の立場で、金子兜太氏も「複数説」を唱えた そうです。先生は新たな見解を知ると、この句の見え方が変わってきたと述べます。 さらに、俳句の英訳に関しても持論を述べます。この俳句を"わびさび"の世界と解せば単数(flog) となり、蛙を春の季語と認識すれば複数(flogs) になると述べ、種々の英訳の分析に関しては妹のローゼン氏への宿題 にすることを先生は提案します。 このように、名句を紐解いていくシリーズですが、解説者・視聴者ともにエネルギーを使うと述べる家藤さん。続編は未定のようですが、解説してほしい気になる名句があれば、動画のコメント欄に寄せてほしい と案内しました。
[236] 【申し訳ない母親だった】この本を読んで募った子どもへの想い <2022/7/31公開> お二方が好きな本について語る 回。先生も家藤さんも移動中に本を読むことが多い そうで、先生は旅先で立ち寄った書店でごっそり買い込み、帰りの方が荷物が多くなることも。静岡県焼津市での句会ライブへ向かう道中に読んでいた本として、まずは家藤さんが先生にお薦めしたい 本を紹介します。 ①『悪童日記』(アゴタ・クリストフ著・早川書房 刊) 。作家はハンガリー出身。家藤さんが生まれた1986年に、フランス語にて原著が出版されました。古本屋で気になり購入したと述べるご本人は、悪い子どもの日記を意味する書名に惹かれたそう。和訳された海外の小説を読むのが昔から好き だと述べる家藤さん。日本の小説の場合、現実との地続き感を感じてしまい、非日常的なファンタジーを持つ海外の小説を読書として求めたくなる傾向があった という理由を述べます。『ハリーポッター』シリーズも同様で、家藤さん等の影響で家族一同で全巻読んだそう。これを「布教が成功した」と独特に比喩してガッツポーズする家藤さんですが、成功体験から今回も同様に海外の本を先生に薦めたいようです。 また、先生は過去に薦められた本として、『ぼっけぇ、きょうてえ』(岩井志麻子 著) というホラー小説を挙げます。悪い汗を掻いたと言う先生は、表題の岡山の方言が呪いの言葉のように脳内に焼き付いてしまい、偉く迷惑したと語ります。 さて、『悪童日記』の中身について話を戻します。第二次世界大戦の戦時中が舞台。ナチスに占領され、連合国やロシアの動向について話が展開 します。「心が暗くならないか」と問われた家藤さんは、「最初はなる」ときっぱりと回答しますが、主人公となる二人の男の子が辛く厳しい世界でいかに生きる術を獲得するかという視点 で物語が進む ため、主人公達の成長が逞しく見えて励まされるとも答えます。最初の4ページで本の虜になり、旅の一日目で読了したそう。アゴタ・クリストフ三部作の一つで他の作品も読みたいと述べる家藤さん。俳句を考える際も、自分の脳みそで考えること以上のものは浮かばないと言いますが、この本はとても刺激的だったそう。誰かに対して酷いことを言う場面、とんでもない悪口を語る場面が劇中にあり、現在の日本で生活している中では絶対出てこないような罵倒する言葉を見てカルチャーショックを受ける 体験もできると語ります。ずっと聞いていた先生は素直な感想を述べますが、プレゼンしたご本人は少々落胆気味に。 次に、「お口直し」と題して先生が薦めたい本 を紹介します。 ②『宙ごはん』(町田 そのこ著・小学館 刊) 。自著『瓢箪から人生』(夏井いつき著・小学館 刊) を8月に出版される先生は、今年度に小学館から出版される本のお披露目会 のため出版社へ出向されたそうです。取材記者が一堂に集まる中、作家と担当者が本をPRするイベントで、先生の順番の前に本を紹介したのが著者の町田氏。先生を含めた全てのPRが終わった後、別室のブースに移動して記者と名刺交換などを行いますが、そこに出版済・出版予定の本が宣伝用に積み上がっており、その場で担当者から頂いた本のよう。ちなみに、先生の出版予定の本はその時点で製本が出来てなかったため、ホチキス止めをしたものを配布されたそうです。担当者曰く「涙もあるけど心がホッコリする 」と薦められた本ですが、負けじと自分の紹介本も同じだと再度持ち上げる家藤さん。スタッフから笑い声が漏れます。 この本を読んだ先生は「正人とふみに申し訳ない母親だった 」と急に懺悔をします。作中に登場する人物は複雑な親子関係のようで、先生も共感できる部分のよう。自分が感じていることと、子どもなど他の家族が自分に対して捉えている事柄が全く異なることがある と述べる先生に対し、共感する反応の家藤さん。「宙(そら)ちゃん」の実母は「花野(かの)さん」ですが、その妹の「ふみさん」が養母となります。その後、宙ちゃんと花野さんが同居しますが、微妙な親子関係の描写があり、花野さんはイラストレーターで締め切りに追われると部屋で一人閉じ込もるそう。親子それぞれの成長をしていきますが、読者自身も誰かを支える側に立つのだと述べます。帯に書かれた「大丈夫。わたしを頼って。 」のメッセージを読み上げますが、無言になる家藤さんに対し、あなたが言うセリフだと窘めます。作者の町田氏は『52ヘルツのクジラたち』 で2021年本屋大賞第1位 となっている人気作家です。また、初版限定で表紙カバー裏に本編に関連する感動秘話があると先生は補足します。 「是非本を交換しましょう」と家藤さんに持ちかけますが、先生は「映画よりも本の方がネタがある 」と熱弁が尽きないお二方。このシリーズの続編にも期待しましょう。
[237] 【俳句甲子園】全審査員を納得させた高校生の俳句 <2022/8/4公開> 3年ぶりに現地に集まる形式で行う「
第25回俳句甲子園 」が
2022年8月20日~21日 にかけて開催されます(※21日は無観客開催に変更となりました)。「3年ぶり」が高校生にとって重要な意味合いだと述べる先生。新型コロナウイルスの影響が大きく、感染を出さない点に最善を尽くして開催されるようです。今回は「
俳句甲子園 」について語る回です。
俳句甲子園立ち上げの前の段階から関与している先生は、印象に残っている句を多く見ていますが、息子の
家藤さんも「第5回大会」に1度だけ出場している と述べます。ここでお互いの年齢を聞き合って談笑します(先生が65歳、家藤さんが36歳)。家藤さんは裏方で何度も参加していますが、
実際に選手として参加するのは重みが違う と言います。予選リーグは三戦三敗でズタボロだったそうです。
家藤さんが参加した第5回大会は、愛媛県立松山東高等学校が強豪校として君臨し、
佐藤文香氏 (「
夕立の一粒源氏物語 」で最優秀賞)が活躍していた時代だと言います。また、第4回では現在選者として活躍する同校出身の
神野紗希氏 が「
カンバスの余白八月十五日 」で最優秀賞を獲得しています。決勝は
●松山東高校 と
○大阪府立吹田東高等学校 が対戦。当時初出場だった吹田高校は予選リーグで負けたものの
敗者復活から勝ち上がったチームで、下剋上優勝 を果たしたことでレジェンドとして記憶に深く刻まれていると述べるお二方。先生は、キャプテンの被る帽子が印象的だったと述べます。ここで決勝先鋒戦の俳句を紹介します。兼題は「小」でした。
● 【二宮理歌 】 氏の「
小揚羽の展翅アンドロメダ銀河 」という大胆な攻めの取り合わせに対し、
○【橋野杏平】 氏の「
秋桜小吉くらいの方がいい 」と生活感のある一句。対戦は2-5で
○吹田東高の勝利 となりました。次鋒戦でも
○吹田東高が連取 して敗者復活から優勝に王手をかけるドラマチックな展開となり、中堅戦を迎えます。
●【佐藤文香】 氏の「
眸(まなこ)なき小便小僧花カンナ 」に対し、
○【藤田亜未】 氏の「
夕立晴れ小さい手の君横におり 」。7-0という完勝の形で
●松山東高 が獲り返し、続く副将戦でも
7-0と●松山東高が圧倒して逆リーチ に。勝負の決着が大将戦までもつれこみます(※現在の決勝の審査員は13名)。決勝戦は●松山東高が先に披講します。
●【田村梨絵】 氏の「
昆虫採集の小天狗に会ひにけり 」。選手として参加していた家藤さんは、会場の三越・アトリウムコートで戦況を固唾をのんで見守りますが、会場の雰囲気は●松山東高が勝つような熱気にあったそう。○吹田東高の中七が詠まれた段階で、完全に○吹田東高が負けたように思われましたが、
○【池田祐子】 氏の「小刻みに震えてしまう心太 (ところてん)」と人物描写ではなく季語の一物仕立ての句が披露され、空気がガラッと変わったそうです。その会場の空気とともに記憶に刻まれたこの句が、最も記憶に残る句だと家藤さんは言います。大将戦は
6-1で○吹田東高が獲って優勝 したのだそうです。当時選手として参加したからこそ、記憶に大きく刻まれたようで、
現場は大事 だと述べる家藤さん。
一方、審査員として長年関わっている先生。立ち上げた当初は俳句も下手だったようで、
下手だと良い議論にもならない と言います。高校生に悪口を言わせていると先生自身も世間から批判されたそうですが、高校生の学ぶ速度などを信じていて、全く批判は気にしてなかったそうです。ところが、
ディベートで指摘されないような傷のない小綺麗な句が多く並ぶ ようになったことが気になり、ある回の閉会式のスピーチで「
傷のない句を目指すのではなく、小さな傷があっても、それ以上の大きな魅力があるものを目指すのが真の表現者 である」と何年か続けて述べた記憶があるようです。しかし、第10回大会の最優秀句に選ばれた
愛知県立幸田高等学校 の一句がその壁を打ち破ったそうです。
【清家由香里】 氏の「山頂に流星触れたのだろうか 」が先生の記憶に残る一句。実際、最優秀句を決める審査員の議論は紛糾して普通はなかなか決まらないそうですが、圧倒的な支持があった一句のようです。大きく悠々とした句で「こういう句を待っていた」と最優秀に相応しい意見が多数を占めたと先生は言います。
「山頂」は地球の中の僅かな一点ですが、宇宙から飛んできた僅かな星の欠片「流星」が「触れた」かもしれないという一瞬の思いが世界を広げてスパークしていく ような印象があると述べます。最後の「のだろうか」で止める余白の作り方にも「やられた」と言います。発想の仕方・下五へのまとまり方も、傷がない作り方とは対極なものだと見解を述べる家藤さん。この句が出た段階で、今後の俳句甲子園の
作品の質がさらに大きくなる確信を持った と先生は述べます。この回のボランティアとして参加していた記憶があると家藤さんが続けます。
今年は25回目を迎える俳句甲子園ですが、無観客の決勝戦は配信もあるそうです。詳しくは俳句甲子園ホームページをチェックしてください。
[238] 【自由律しか作らない高校生】自由律で俳句甲子園の最優秀句 <2022/8/11公開> 今回も
俳句甲子園 。先生が印象深い句について語りますが、話題は
自由律俳句 から。北条高等学校の
高橋潤 氏が第1回・第2回大会に出場。人柄が面白く、審査員にも受けたようです。当時中学生で観覧していた家藤さん曰く、やんちゃ坊主だった高橋氏の選手宣誓がふざけていたようで、右手を挙げながら「腋毛を見せないように」などと述べていた記憶を述べます。「
自由律しか作らない 」と鼻から宣言していて、第1回大会から全て自由律俳句を披露。「
熱帯雨林な午後 」など覚えている句を語りますが、次の句が第2回大会での入選句だそうです。
【
高橋潤 】氏の「
ぬれてこそ噴水 」。苦笑に近いものはあるものの、これこそ「噴水」の本意ではないかと述べる先生。言葉を噛みしめるほど納得させる何かがあると家藤さんが述べます。
人として濡れる噴水としての読み、己の水に己が濡れてこその噴水 だという水のマジックとして読みがあり、忘れられない一句だと先生は言います。この句は以前先生のブログでも取り上げたことがあるそうで当時の記事のタイトルは「割れてこそ皿」。「
~てこそ… 」の型は意外と作りにくいと述べる家藤さんは、「おウチde俳句くらぶ」でも同様の型を出題したことを述べます。「噴水」に「濡れる」という情報を含むように、①季語が持つ情報を重ねる発想の仕方もあれば、②他の発想の仕方もあるなど盛り上がったそうです。書き損じたものを見せますが「
濡れてこそ噴水 」と漢字表記の方が格調高いと家藤さんが評します。
先ほどの
ドリルde俳句 では①「
鳴いてこそカナリヤ 」「
枯れてこその芒 (すすき)」など季語が持つ情報を重ねる句、②「
走ってこそ夕焼 」「
生きてこそ芋粥 」「
生きてこそ八月 」「
生きてこそ踏青 」など季語と近い取り合わせの句や、「
ステテコそっと脱ぐ 」などの
言葉遊びの句もありましたが、発想を鍛える点では大事 だと述べる先生。
さて、自由律俳句ばかりを作り続ける自由律作家は俳句甲子園でも最近は見ないと述べるお二方。いまだに審査員の間でも話題になると言う句を先生が紹介します。
弘前学院聖愛高等学校【
佐々木美日 】氏の「
風船は空の弔い 」は第5回大会の優秀句。作者も自由律俳句にこだわっていたそうですが、発表の瞬間息をのんだと述べる先生。「の弔い」の展開で楽しそうに沢山飛ばす風船ではなく、
うっかり飛ばした1個の風船が二度と帰ってこない印象に転換 します。この時の最優秀賞は松山東高等学校の【
佐藤文香 】氏の「
夕立の一粒源氏物語 」でしたが、どの句を最優秀賞にするか激論を重ねたそう。作品の質が想像を超える速度で豊かになっていった初期の俳句甲子園。その後、議論が上手に熟していくようで、俳句甲子園の歴史の一コマだと懐かしく述べる先生です。
色んな事に挑戦していくのが俳句の根本にある精神 で、今後も自由律俳句を作る俳人が出てくることを期待するお二方。8月20日・21日に今年の俳句甲子園が開催されることを告知しました(※21日は無観客開催に変更)。
[239 ] 【おしゃべり俳句】子どもの可愛い気づきに癒されてください <2022/8/18公開> 第8回おしゃべり俳句 。動画[202]以来4か月ぶりですが、その動画コメント欄に寄せられたものから面白い作品や優秀句などを紹介します。 前回の入選句・【はな5歳 】「蝉時雨おとなはよけいなことするな 」で投稿者【はなのパパ 】氏から続報。「前回の動画を娘も喜ぶかと思って一緒に観ていたが、娘は浮かない様子。私が勝手に決めた季語『蝉時雨』がお気に召さなかったようで、『何で変なのつけたの?』と怒ってしまった。溜め息をついた後、言った言葉が次の句になった」とのこと。 ①【はな5歳 】「パパはよけいなことしかしない春 」。娘は「よけいなことしかしない」と言い放ったそうですが、前回の反省から娘と一緒に季語を選んだ そうです。季語を「春」にした理由は「だって綺麗でしょ?」とのことで、娘も一人の人間で美意識も自我もあるという当たり前のことに気づかされたと記す投稿者。先生は「良い話」だと拍手し、子どもと季語を選ぶ姿勢は大変重要で、自分の句という意識が育つ と述べます。季語の候補を3択で提示するという方法も良く、音数調整を大人が考えて子どもにフォローする方法もアリだと述べます。 一方、まずは一句を出す点を主眼とした初投稿の句も紹介。 ②【そうすけ1歳7か月 】「わんわん!犬も猫も鳥もわんわん! 」は【きいろ 】氏の息子の可愛い一句。「発語がなかなか始まらず心配だったが、最近少しずつ出るようになり、動物を何でもわんわんというのが可愛い。これからもっと話せるようになると思うので記録して行きたいと思う」と投稿者。話し始めた時から"おしゃべり俳句"のタネとして言葉を書き留める 姿勢を素敵なことだと先生は称賛します。 ③【希子4才 】「たのしいなバナナはすてきな月になる 」は【きこばあば 】氏の孫。「孫から送られた動画には、バナナを両手で捧げて歌いなからダンスをしていた。その時の歌を俳句にした」とのこと。後半の措辞を褒める家藤さんに続き、「たのしいな」「うれしいな」「かなしいな」の感情語の部分に季語をポンと入れると完成度が上がる と提案する先生。 かつて「プレバト!!」の企画で"たのしいな俳句"をした ことを語ります。そこで挑戦した若手兄弟芸人・ミキの名前を忘れた先生は、妹のローゼン氏に問いかけ、カメラマンの兼光氏から聞き出します。弟芸人・亜生氏はその後、通常査定でも才能アリ2回獲得と学習の成果が出たことを述べます。 ④【森本加代子さんの長女 】「夏の朝きょうわたしみみお休みなの 」。母に怒られてもう聞きたくないという話だと想像する先生は「良い手を覚えた」と感心します。 ⑤【haruさんの娘2歳の時 】「さむいですそでからそれからおなかがすきました 」。「そでから」は「それから」の意味のよう。【長月晴日 】氏より「今年、高校生になる娘は2歳の時、私が叱ると逆ギレして寝室に閉じこもった。寒い冬で、夕食の時間に投げて来た手紙に書いてあった」とのこと。可愛らしいエピソードですが、極北で飢えた捕虜のようだと比喩する家藤さん。意地を張りながらも意思を伝える手段を子は覚えていくと続けます。 今回は悩んだというベスト3 を発表します。 ⑥【あおと3歳 】の「いちごはねしたからゆっくりあかくなる 」。観察眼に優れた今までにないタイプの一句。少なくとも店で売られた苺ではなく、家庭菜園など自分が育てた苺などの描写だと明確に分かり、3歳から観察力を持った立派な俳人の姿勢 だと褒めます。投稿者の【直 】氏曰く「園長先生の部屋の前のプランターに植えてある苺を見ての会話。『だんだん赤くなってきたね。きれいだね』と語り掛けると『苺はね〜、下からゆっくり赤くなるんだよ。僕んちには苺畑があるんだ』と述べた。母によると、家庭菜園の一角に何株か植えてあるものを"苺畑"と表現したのでしょう」とのこと。実は孫のために庭に苺を植えているという先生ですが、ローゼン氏の飼い犬「かぼちゃん」が来るたびに食い尽くしてしまうそうです。 ⑦【ピアノ教室の生徒5歳Aくん 】「こんにちは春はちょうちょのシールはる 」。子どものシール好きに言及する先生。家藤家の子育てにもシールが活用されていたことが語られます。【胡麻栞 】氏によると「自宅のピアノ教室のレッスンに通う5歳のAくんが『こんにちは!』と元気に挨拶をして部屋に入り、出席カードにシールを貼る時の一言。沢山の種類から、迷わず蝶のシールを選んだ」とのこと。先生は、春に似合ったシールを選ぶという俳人としての美意識がある と褒めます。子どもの台詞を採取する大人の姿勢も重要で、まさに"おしゃべり俳句"の真髄の一句だと家藤さんが述べます。 ⑧【マイペースな姉の弟 】「春の草うちのねぇねがすみません 」は【ぶぅこ 】氏より。後半のフレーズに師弟関係が見えてきて、しっかりした弟だと述べる先生。「先日、二人の子が通う学校の登校班の集まりで、マイペースな姉は先生の話を聞かずに、お絵描きなど好きなことをしてしまい、見かねた弟が先生たちに言った一言。季語は勝手に付けたが、頭を下げた時に、春の青々とした草が見えたのではないかと思い『春の草』とした」とのこと。取り合わせた季語が良いと褒める先生は、柔らかく姉弟がすくすく育つイメージもあって良い と言います。場面を見た先生方が親御さんに後から伝えており、印象的な場面を句材として採取しています。 次回、第9回への投句もこの動画のコメント欄に投稿してほしいとのことです。
[240] 【作ってみませんか?】個人のミニ句集を作る人が増えています <2022/8/25公開> ここ数年の流れとして、先生のもとに個人の「ミニ句集 」が届くことが増えたそうです。 従来は生涯の句をまとめたかのような大々的な分厚い句集が一般的でしたが、軽やかで薄めながら趣向を凝らした句集 にシフトしつつあるようです。夏井先生も30句まとめた薄目の句集を出していますが、今回は一般の方の句集を紹介します。 ①動画[228]に出演した【竜胆 】氏の句集『 熊笹 』 は、ご自身の句のうち山の俳句のみをピックアップして編集 したもの。表紙・裏表紙にはご本人が撮影したと思われる自然の写真が載っています。先生曰く、竜胆氏のお孫さんがレイアウトを担当したそうです。大きな活字で一頁に2句ずつ掲載されているようです。印刷所に作成を依頼する場合、ある程度まとまったロットが必要ですが、ネット発注だと一冊単位が400円台から出来る そうで、大変驚愕したと述べる先生。一生涯に一冊作る意気で、ハードカバーのたいそうな句集を作成する場合、費用は百万円単位に上ることも珍しくないそうですが、今はコストカットの面でも選択肢があることに驚く家藤さん。先生は軽やかに楽しめる と述べます。後書きでは、西赤石の山歩きの趣味に触れられており、75歳の節目に句集を出された経緯が綴られています。「山に関係する句」というシンプルなテーマによる句集 です。 ②ラジオ・一句一遊の常連【日土野だんご虫 】氏の句集『海も』 はさらにサイズが小さい句集。一句一遊で紹介されたものだけで構成された句集 です。頁の端には入選した兼題が示され、季語の分類も記載されているよう。ネックは選ばれないと句集に載せられないこと。特に一句一遊は月曜で紹介されたものは才能ナシレベルのため、最低でも水曜日以降に読まれたものが最低条件で、さらに句集になるだけの入選数がなければいけないという高い実力と時間の重み を要します。後書きによると、初投句から18年かかって句集を作ったことが綴られています。実現までのハードルは高いですが、俳人の目標へのモチベーションは高まります。サイズは小さくともずっしり重い句集 だとまとめる家藤さん。この句集もネットで簡単に作成依頼できたようです。 ③【鯛飯 】氏の遺句集『音満ちてより』 は装丁の綺麗な句集。これは鯛飯氏のご逝去後に、編集担当の妹さんがクラウドファンディングで集めたお金で作成されたそうです。生前にご自身が掲載を希望した56句を編纂した句集 は、先生が序文を執筆。先生は、吟行や句会などでご一緒してお世話になり、バードウォッチングの際は鳥の名前も多く教わり、鳥の名前辞典まで賜ったと述べます。句会で作者ご本人が自分の句と明かして手を挙げる際、実直ながら少し照れている顔を思い出すなど、思い出話が尽きないお二方。俳句が誰かの心にしっかり残るのが俳人として嬉しいこと だと感慨深く述べる先生。自分の人生の中で厳選した句を掲載したタイプの句集 です。 様々なタイプの句集を見る先生は、百万二百万出して大袈裟な句集を作るのは古臭い かもしれないと述べます。家藤さんは、ものづくりに共通する点であると考えを述べます。一世一代の渾身の作品を目指しても出来なかった際のダメージが大きく、コツコツ作っていける俳句の特性を生かした句集があって良い と提案します。先生も何冊か句集を出していますが、複数作成する場合はサイズを揃えておき、最後にそれらの句集が収まる箱を作ると良いと提案します。小ロットならではのデザイン・装丁の個性の違いを楽しめると述べる家藤さん。 ④当時小学生俳人だった【幸の実 】氏の手作り句集 『五年間の足あと』 。父の長野転勤のため家族ごと異動する際、伊月庵にご自身の句集を届けて頂いたそうです。表紙は消しゴムハンコによる可愛い絵柄のデザイン 。赤いリボンをほどいてページを捲ると、俳句に出会った小学2年当時の自選五句が掲載されています。「はつほたるひそひそ夏をよんでいる 」「あと五だん今百十段寺の春 」など。頁を捲るたび、写真も掲載されており、子の成長記録にもなっています。両親をも俳句の世界に引っ張り込んだ立役者で、小3の時に「満月やアリクイの子の仁王立ち 」という名句が誕生しています。孫のように可愛がる先生ですが、このような手作りのオンリーワン句集も選択肢の一つ だと述べます。 俳句歴は色んな方がいますが、自分なりのコンセプトを持って句集を作ってみるのも楽しいとお薦めするお二方でした。
[241] 【尻二字三角パス】「のひ」で始める優秀句 <2022/9/1公開> 第5回尻二字三角パス に向けて、ゼロ番句の候補 を発表。動画[215]の第4回の最後【朗善 】氏の詠まれた「ぐりぐらもう一回読んで端午の日 」の尻二字は「のひ 」。動画の最後で「のひ」から始まる句を募集しました。 そもそも辞書に「のひ」から始まる単語がないなど、コメント欄は嘆きの言葉に満ちていた そうですが、集まった優秀句や若干の面白句を紹介します。 発想の候補に挙げられるのが「野平 」という苗字。先生のかつての勤務校にも家庭科に野平先生がいたそうで、思いつきやすい単語だと言います。 ①【千暁 】氏の「野平家の丸と四角の雑煮餅 」。地域の違う方々が結婚して二種類の雑煮餅を焼く様子を思わせます。先生曰く、香川県では丸餅の中に餡子が入っていたりもするそう。可愛らしい一句です。 ②【松虫姫の村人 】氏の「野平も二人いるのか入学式 」。野平以外の苗字も二人いることを思わせる書き方です。先生の出身地・愛媛県愛南町の南の地域は「吉田さん」ばっかりで、下の名前で呼び合うことが多いそう。そのようなあるある感を実感させる小さな学校の一幕を思わせます。 ③【夏雨ちや 】氏の「のひら質店猫の子にも質札 」。平仮名の「のひら」表記が妙にリアルで、屋号の看板を想像させます。実際に猫に質札がある光景かは分かりませんが、発想が軽やかな一句で俳諧味があると先生が評します。 続いて、「のひ」を助詞「の」と別の単語の一部に分解 した発想の句を発表。 ④【小豆白虎 】氏の「の一つと括れぬ夕焼の海は 」は、直前に発した単語が省略されている一句。後半「夕焼の海は」の余韻の作り方がセンチメンタルで上手いと先生が評します。 ⑤【いさな歌鈴 】氏の「の比じゃないほどに分厚い花筏 」。花筏(はないかだ)を何と比較しているのかを考えると面白いケースの一句。薄いものと比較していることを考える家藤さん。 ⑥【狩谷和寓 】氏の「『の秘密シリーズ』見つけた夏休み 」は領域が分かりやすい一句。クラゲの秘密、クモの秘密など、小学生向け図鑑のシリーズなどを思わせます。子の夏休みの過ごし方を想像させる軽やかな一句です。 ⑦【アントニオ 】氏の「『の干物』の前をカマスに書き替える 」。タコ、ノドグロ、アジなどの干物の名前が「カマス」に書き替える意味ですが、居酒屋のメニューなのか、漁港の物産展なのか。お二人の意見が分かれます。 ⑧【風早みつほ 】氏の「『の~ひ』は第五巻良夜の調べもの 」は先生も考えたという発想。日本国語大辞典など大きな辞典の見出しの文字を思わせますが、「五」の数詞を考慮するとそれほど大きな辞典ではないと述べる先生。「~」は"から"と発音する場合もありますが、この句は無音。巧みな発想の一句です。 ここからは「野」と「ひ~」 の発想です。 ➈【天上たこ 】氏の「野光りて初仔駆け出し山笑う 」は初心者なりに一生懸命作った感のある一句で「努力賞 」だと評します。本人によると、十日前にこの動画を見て、辿り着いた一句だそう。一日一句ずつ作り始めたそうで、試しに投句したそうです。50代で飽きっぽい性格だが、頑張りますとのコメント。お二方も姿勢を褒めつつ応援します。尻二字「らう 」は難易度が高そうで、家藤さんが「引きたくない」と本音を述べます。 ⑩【アロイジオ 】氏の「野ひやゝかロザリオ爪繰りて行けば 」は尻二字から詠まれたと思えない ほど、光景が良いと評す一句。冷ややかな野を歩く人物が、十字架のロザリオを持ちながらつまぐる様子を思わせます。何を祈るのか。冷たい感触がロザリオからも伝わると味わう家藤さん。 ⑪【岬ぷるうと 】氏の「野、日毎に春を生みおとす懐 (ふところ)」。「、」が一つのテクニックとして機能したと評します。「懐」の奥行きが良く、尻二字から作ったと思えない秀句 。 ⑫【川越羽流 】氏の「野羊の14キロの毛を刈れり 」は、人事の季語「羊の毛刈る 」を用いた一句。かつて「一句一遊」の兼題でも出題したようで、その当時【からす天狗】氏が飼っていた羊の所に吟行がてら俳人らが山奥に集まって実際に毛を刈ったそうで、そこに家藤さんも参加されたとのこと。思った以上に毛は油でゴワゴワになっているようで、ダマになっている部分は都度ハサミで切り、バリカンで刈っていったそう。詳しく語る家藤さんに対し、季語だと認識していない矛盾にツッコミを入れる先生。作者曰く、オーストラリアの火災で行方不明の羊が7年ぶりに発見され、伸び続けた羊の毛を刈ると13.6kgだったとのこと。尻二字「れり 」はこれまた引きたくないとお二方が尻込みします。 次回の第5回尻二字三角パス は、今回紹介した候補の句の中から1句を選んでスタートします。
[242] 【月の歳時記①】『秋の月』で百句チャレンジしてみませんか? <2022/9/4公開> 満月を模した黄色の紙製マグネットを後ろのホワイトボードに掲げて始まった3回シリーズは「永久保存版の予感がする」と家藤さんが豪語。まずは『夏井いつきの「月」の歳時記 見て感じて愉しむ秋の季語』 を紹介します。「月百句」を作句するトレーニング の提案が一点。雪月花とも呼ばれ三大季語の一つ「月」を季語に一人で100句作る鍛錬は、しんどさとの戦いだと言います。特に何も浮かばなくなる後半、突拍子のない句も生まれますが、ときたま自分の能力を超えた句も浮かぶことも。「花」「雪」は題詠としてその時期に集中すれば100句は難しくないものの、毎日出るが故ありがたみが薄い「月」は油断しやすく、秋の季節感を表現する苦労があります。秋の間に100句作れなかったとしても、それぞれの目標を立てて挑むのが良いとアドバイス。 そして、今回は「月」に関連する多彩な季語の種類 を紹介。珍妙なものや間違いやすいものもあると言います。先生がこの本を執筆する際に、編集スタッフのあずきさんに月齢表の掲載を提案されたそうですが、自分の知識のあやふやさにも仰天したと語る先生です。今回は「月齢」に関する季語を語ります。 ①🌑ホワイトボードの黄色の紙に黒色の紙を上に重ね貼りして「月が出ていないこと」を表現します。「初月」「初月夜」 と呼ばれます。 ②次の日、月の右側(西側)が少しだけ細く見えるようになります。先生が黒と黄色の紙をずらして表現。「 二日月」「繊月(せんげつ)」 と呼ばれます。 ③🌒次の日、さらに月が見える面積が増えます。「三日月」「新月」 と紹介。ここで「新月」は三日月を指すのが間違いやすいポイント 。本来「新月」は"朔"を指しますが、季語としては三日月のように朔を過ぎて夕方の西空に見える細い月だと言います。 ④日が経つごとに徐々に月の右側(西側)が明るくなってきます。「上り月」「上弦の月」 、さらに「弓張(ゆみはり)月」「上(かみ)の弓張」 とも言います。先生は舞台の上手(かみて)・下手(しもて)の向きから上弦・下弦を判断できる とアドバイス。 ⑤🌓新たに黒地の半円の紙に切り替えて重ね貼りし、月の右側が丁度半分光っている状態。これは「半月」「片割月(かたわれづき)」 。さらに喩えも込めて「月の弓」「月の舟」 とも言います。「弓」は月が半月まで満ちていく状態に勘違いしやすい ですが、半月を指す点に注意したいと述べる家藤さん。 ⑥🌔さらに、光る面積が増えて左側(東側)が一部欠けている状態。「十日月」 などと呼びます。 ⑦そして満月の一日前は「待宵(まつよい)」「小望月(こもちづき)」 。「小」は前夜の意味です。さらに、「十四夜月(じゅうしやづき)」「松宵の月」 とも。 ⑧🌕いよいよ満ちた月。「名月」「満月」 など。「一句一遊」でも語った名月・満月の違いを問われた家藤さんは、「名」の字に月のすばらしさを賞美する心がある となぞります。「満月」は十五夜の月が満ちたことを指しますが、「名月」に称える気持ちが入る分、難しい季語になる と述べる先生。他に「十五夜」「望月」「良宵(りょうしょう)」 。"月の綺麗な夜"が広義の「良夜(りょうや)」 は"満月の夜"が狭義の意味です。定義の意味の広さの解釈について問われた先生。本来の意味を中心に季語を使うべきではあるものの、歳時記によって解釈も揺らいでいるため、ケースバイケースだと答えます。 ➈🌚さらに、満月が雲などで隠された状態。「無月」「雨月(うげつ)」 と呼びます。俳人の粋な感覚から生まれた季語で、雲や雨で隠されてしまった満月を愛でる感覚だと述べる先生に続き、奥深いと答える家藤さん。せっかくの名月が見えずに落胆するのは一般的感覚ですが、見えない月も歓迎するプラス思考の俳人の感覚 だと先生は言います。「無月」も毎日見えない月ではなく、「名月」を表す点に注意を向ける べきだと注意する家藤さん。 次回の動画に内容が続きます。
[243] 【月の歳時記②】違いが分かりますか?2つの三日月、同じではありません <2022/9/8公開> 動画[242]に続き、「月齢」シリーズ第2弾 は、陰暦8月15日の満月🌕「十五夜」 以降に欠けていく月の季語を紹介します。 ①微かに右側(西側)が欠けていく月は「十六夜(いざよい)」「十六夜の月」 。綺麗な音の響きですが、猶予(いざよ)うように、遠慮がちに出る月の様子。 ②次の日は「立待月(たちまちづき)」「十七夜」 。月の出は徐々に遅れていきます(※1日につき約50分)が、日の入りから少し待って月が出てくる様子を示しています。 ③さらに次の日は「居待月(いまちづき)」「十八夜月」 。しばらくその場所に居て月の出を待つ様子の季語。実際に、毎日同じ時間帯に空を見上げて月の位置や月の出の時刻の変化を実感すること を先生は提案します。 ④🌖そして、右側(西側)が欠けた様子を黄色の円の紙に黒地の紙を重ねて表現。「臥待月(ふしまちづき)」「寝待月(ねまちづき)」 。床に横になって寝ながら月の出を待つ意味。粋なネーミングだと述べる先生。ここまでの月の微妙なニュアンスの違いを「月百句トレーニング」で考えるのも一つの切り口 だと述べます。 ⑤次の日は「更待月(ふけまちづき)」「二十日月(はつかづき)」 など。 ⑥また、これらの満月後の欠けた月を「降(くだ)り月」「下弦の月」 などと呼びます。別名は「弓張月(ゆみはりづき)」「下の弓張」 とも言います。 ⑦🌗さらに、月が欠けて左側(東側)だけが半分光っている状態に紙を貼り替えます。「半月」「片割月」、「月の弓」「月の舟」 は逆側の半月と同じ季語。同じ半月でも、月 が出る時間帯は昼夜で全く違います 。家藤さんは、満月に満ちていくのか、新月へ欠けていくのかは、これらの季語だけでは判別がつかない 点に触れ、満ちていく期待感を乗せるには季語以外の表現で工夫が求められると補足します。視聴者が難しい話についてこれないことを心配する先生は、「半月」という存在だと割り切って詠むのもアリだと優しく提案。高度なことを求める俳人は「満月」「新月」どちらへ向かうかを想像させる句を詠む挑戦もカッコいいと述べます。 ⑧さらに欠けていき、月の光る面積が減少していきます。「真夜中の月」「二十三夜月」 と呼びます。夜は更けているため、見る機会は少ないかもしれません。 ➈🌘折り込んでいた半円の黒地の紙を開き、黄色の円に重ねると月が左側(東側)に僅かに光っている状態に。「有明月(ありあけづき)」「朝月夜(あさづきよ)」 です。「有明」は夜明け・明け方を意味します。家藤さんは、「朝の月」の兼題で詠む際に昼間に見えるような満ち欠け(月齢)の異なる月が朝に見えていることを指摘しますが、ここでは月齢を表す月として意味が異なり、それぞれの月に於いて月齢の知識は入れておく べきだと先生は忠告します。「明けの月」「残る月」 あるいは「残月(ざんげつ)」 とも呼びます。逆側が光る「三日月」と同じように欠けていますが、新月に向かっていくこちらの月を「三日月」と呼ぶことはありません 。 家藤さんは、月齢を意識しておらず勉強になったことを述べます。先生は、月の満ち欠けの形から満ちていくか欠けていくかを意識すると、それまでと見え方が変わってくる点に着目します。 次回、パート3に続くことを予告しました。
[244] 【月の歳時記③】月見の認識あっていますか? <2022/9/11公開> 動画[242][243]に続く「月」の季語第3弾。『夏井いつきの「月」の歳時記 見て感じて愉しむ秋の季語』 の8頁から月齢と関係ない季語についての解説 です。最初に間違えやすい点があると語るお二方。月齢は、約一か月周期に及ぶ月の満ち欠けの形による ものですが、それとは違う時間軸である7月・8月・9月(陰暦)という季節感の異なる月の季語を紹介 します。 ①「盆の月 」は陰暦7月15日の満月 。秋になって初めての満月で、陰暦8月15日の中秋の名月の1か月前に当たります。陰暦と新暦の差が約1か月あるため、新暦の8月15日の盆の頃の満月です。 ②「二十六夜待 (にじゅうろくやまち)」「二十六夜祭 」は陰暦7月26日 。『きたきた捕物帖 』(宮部みゆき著)の主人公・北一は文庫売りの少年。少年が売る箱の模様に出てきた季語だと語る先生に対し、絵柄がピンとこないと述べる家藤さん。「二十六夜祭」は陰暦の正月と七月の26日に月の出を待って願うこと で、俳句では特に七月のことを指します。阿弥陀如来・観世音菩薩・勢至菩薩 の姿が現れ、拝むと幸運を授かる信仰だといいます(※実際の月の出は明け方近くです)。北一の持つ箱は、3体の如来・菩薩の姿をあしらった絵柄であるに違いないと述べる先生。物語の中核になる部分ではないですが、意味が分かると読み方も変わってくると語り、今回どうしても紹介したかった季語だと続けます。 ③「月見 」「観月 (かんげつ)」は陰暦8月15日の中秋の名月 (満月)。「月見酒 」「月見団子 」も傍題です。月を愛でながらの酒・団子ですが、日常的に酒・団子を楽しんでいるというお二方。特定の日を祝うもので、神事に近い感覚だと言う家藤さん。この日のことだと覚えておくことが俳句を愛する人間として大事 だと先生は押さえます。季節の初物や団子を備え、豊作と身の健康を祈った中国伝来の農耕儀礼 だと先生の著書に記述されています。子育てにはイベントが必要だと率直に述べる家藤さんは、先生からも「月見」を盛大に行うことを薦められます。 ④「後(のち)の月 」「十三夜 」は陰暦の9月13日 (※動画では陰暦9月15日・満月と解説)で陽暦の10月中旬。満月に向かうやや欠けている月のことですが、特に「十三夜」は「十五夜」(旧暦8月15日)の二日前ではなく、中秋の名月から約1か月経っている 点に注意が必要です。そのため、「団子」を供える句を詠むのはしんどいところだと先生は忠告します。また、この日に大豆や枝豆、栗を供えることから「豆名月 」「栗名月 」という季語もあります。さらに、「二夜(ふたや)の月 」「片見月(かたみづき) 」を紹介。「二夜の月」は、「月見」「後の月」の2回の月見の月のこと。「片見月」はそのうち片方の月見のことで、縁起が悪い忌事 のようです。「十三夜」の風習は中国ではなく、日本の宇田天皇・村上天皇が始めたものだとの説を取り上げ、「※諸説あります」と紹介します。宮廷・貴族の催し物として言われるようになったのだとお二方の妄想が広がっていきます。「十三夜」は「十五夜」の1か月後の月 だと最後にもう一度注意して動画を締めました。
[245] 【第5回尻二字三角パス①】実の妹のローゼン千津さんが今回もゲスト <2022/9/15公開> 動画[215]以来の
第5回尻二字三角パス 実践編。動画[241]で「
のひ 」から始まるゼロ番句の候補を発表していました。声のみ参加のゲストは前回と同じく先生の妹の
ローゼン千津氏 で、3人で行います。順番は前回に引き続きじゃんけんで決定し、家藤さん→ローゼン氏→夏井先生の順に回すこととなりました。運命のゼロ番句はシャッフルにより家藤さんが引き、【
千暁 】氏の「
野平家の丸と四角の雑煮餅 」に決定します。尻二字は「
もち 」です。
[0]「もち」をそのまま「餅」として使うのは野暮だと述べ、先生は息子さんへのハードルを上げます。ローゼン氏は久々に帰省して雑煮を食べることを楽しみにしていたことを語ります。白味噌、おすましの話から麦みそに至るまで先生とローゼン氏の話が展開します。
[1]レジの持ち出し金が闇に消えて、バイトも居なくなってしまった朧の頃の意味のよう。先生と家藤さんはバイトの話に。先生は
学生時代、京都の喫茶店みたいな所でバイト経験がある ことを述べ、レコードで初めて「ビル・エヴァンス」を聴き衝撃を受けたと語ります。一方の家藤さんは、レジ締め作業や銀行への時間外入金などもしていたと苦労を述べます。
[2]作者曰く、「チエロ」ではなく「ギター」にしたかったそうですが、チェリストの夫に敬意を表してこの形に。ローゼン氏と夫のニック氏は3月に帰省し、
リサイクルと草取りにハマっている ことを明かします。ニック氏はクモの巣が好きなようで、庭の水やりは巣を避けるそう。さらに、クモの巣のミニ句集まで出されたそうです。
[3]"
「ぼ」のやうな男 "のフレーズに、安藤サクラ氏の夫・
奥田瑛二氏を想像する と述べるローゼン氏。さらに、「プロフェッショナル 仕事の流儀」のディレクター・
下北ペダル氏 も「ぼ」の範疇に入ると続け、先生も同意します。寡黙で、髭をなでればさまになる印象だと表現するローゼン氏。兼光氏も「ぼ」に入るものの、ニック氏は全く違って「ぱ」「ぽ」のようだなど独特な女性陣の会話が展開されます。また、ニック氏が初餡蜜を食べたことも明かし、「
蜜豆をギリシャの神は知らざりき 」(
橋本夢道 )のような昔ながらの餡蜜だったと言います。一方の先生は発酵させた酒が好きだと答えます。「沢庵をドイツの神は知らざりき」とユーモラスに言葉遊びをするローゼン氏。
[4]「
ベルガモ 」を香辛料の一種「ベルガモット」と勘違いしていたようですが、イタリア中部の地名として句は成立。電子辞書の「ベルガモ」情報を紹介する先生は、かつて城郭があったことに着目し「開いて」が偶然嵌ったと息子さんの句を評します。家藤さんは動画[236]で先生に薦めた『悪童日記』で、ハンガリーらしきヨーロッパの土地における侵略などの歴史を調べる機会になると述べ、ローゼン氏に本を貸したことを明かします。寝る前に読んでいて面白いと述べるローゼン氏は、dark sideに対して逆のbright sideのような本を今度貸したいと告げます。
[5]
奥田瑛二氏が松山に訪れた際、次に出版する本の取材をした ことを明かす先生。伊月庵を覗いた際、犬のかぼちゃんが撫でられたそう。奥田氏・ニック氏・かぼちゃんで記念撮影もされたそうです。
次回の動画に続きます。
※今回詠まれた俳句は以下の通りです。
0 野平家の丸と四角の雑煮餅 もち 千暁 1 持ち 出しは闇にバイトの消え朧 ぼろ 正人 2 ボロ ンとチエロ響く水無月の曙 ぼの ローゼン 3 「ぼ」の やうな男とあんみつを食べる べる いつき 4 ベル ガモの開いて天は秋の色 いろ 正人 5 色 なき風奥田瑛二は犬を撫で なで ローゼン ▼以下、次回動画に続く
[246] 【第5回尻二字三角パス②】実の息子がアシスタントになったワケ <2022/9/18公開> 前回の続き。
第5回尻二字三角パス 中盤戦です。
[5]奥田瑛二氏の取材は7月頭。緒形拳氏主演の映画『長い散歩』の監督だと紹介。また、妻の安藤サクラ氏とエレベーターで偶然会ったと述べるは、紅白歌合戦の審査員をした先生です。ローゼンさんは、パルムドールを受賞した作品『万引き家族』を家藤さんに薦めます。映画談義に尽きませんが、自分の好きな映画を俳句でプレゼンする勝負を持ち掛けるローゼン氏です。
[6]ユニクロに捧げたいという一句。先生の『絶滅寸前季語辞典』にも掲載した「ステテコ」ですが、ユニクロでは今や普通に売られており、先生の本の効果ではないかと語り合います。ローゼン氏は、季語となっている物を身に着けてユニクロのCMに出演すればハマると述べ、「着物」「ソーダ水」「着膨れ」などを提案し、お三方で談笑します。先生もユニクロで買い物をされるそう。幼少期は、母屋の風呂から離れに移動する際も素っ裸だったことなど思い出が尽きません。
[7]先生と家藤さんがルール確認をしますが、
尻二字は音として「だあ」ならば大丈夫とのこと。仮に「マテ茶」なら「てちゃ」が尻二字。「っ」も一音 です。今回は軽やかで場を荒らさない方針に気づいた家藤さんですが、先生は奥田瑛二氏がかぼちゃんを撫でたのは昨日のことだと明かし、二日酔いだと告白します。
[8]スターウォーズの作品から。先生とニック氏はスターウォーズをご覧になられていないよう。映画にも「ハリーポッター派」「スターウォーズ派」と派閥があることを語るローゼン氏は、自身は「ロードオブザリング派」だと明かし、小説は読んでいたと述べる家藤さん。ハリーポッターのダンブルドア校長に関して話題が深まります。イギリス英語とアメリカ英語の発音の違いに転換し、"water"が機内で通じなかった体験を語るローゼン氏。"glass of"を頭につけるなど「w」から発しない方が良いと提案します。家藤さんはアレクサにイギリス英語で語り掛けるネット動画について述べます。
[9]配給で「マテ茶」に持っていきたかったと述べる先生。宝塚近くに住んでいたローゼン氏は阪神淡路大震災の被災者で、当時の状況を語ります。尻二字から最初に思いついた「二十年」が安易ではないかという家藤さんですが、
22年続けているラジオ「一句一遊」に対し「プレバト!!」も8年 になります。ここから、先生が
息子の家藤さんをアシスタントに招き入れた理由 を述べます。ずっと話していて息が続かない時があることを老化と認めた先生は、俳句のアナウンスだけでもお願いできる人を探したよう。
アナウンサーだと俳句の難解な単語の読みや切り方が分からないため、俳句も分かり、声も良い 正人さんが適任だったようです。先生の亡き父と声質が似ていると述べるローゼン氏ですが、亡き人の記憶が五感で残っているかについて先生と語ります。聴覚の情報が忘れやすい・残りやすいは個人差があるようです。YouTube動画に声を記録しておくことは良い方法だと提案するローゼン氏に対し、「マテ茶」を家藤さんにどのタイミングで渡すかにこだわりを持つ先生です。
次回の動画に続きます。
※今回詠まれた俳句は以下の通りです。
5 色 なき風奥田瑛二は犬を撫で なで ローゼン 6 名で 決まる売れ行き要するにステテコ てこ いつき 7 手込 んでんねんと虹色のサイダー だー 正人 8 ダー スヴェーダ―のマスクに泣く余市 いち ローゼン 9 一 列になって配給待てば虹 にじ いつき ▼以下、次回動画に続く
[247] 【第5回尻二字三角パス③】『が●』から始まる俳句をお寄せください <2022/9/22公開> 前回の続き。第5回尻二字三角パスのパート3です。
[10]二重ボディーチェックは空港の検査を想定しているよう。ここで、先生が「あれには言いたいことがある」と切り出しますが、残念ながら
"カメラの充電が切れたため撮影できてない "との画面にチャイムと共に切り替わります。
[11]句はローゼン氏の夫・ニック氏が日本語学校に通う実話から。金曜日は昼間に講義があり、様々な国の方が通っているようですが、
マスク着用で、口の動きが見えないことがネック のようです。世界を旅してどんな言語を聞いたかを質問されたローゼン氏は、ニック氏がロシア語も多少喋れることを述べ、ニューヨークではスペイン語が二大公用語だと言います。家藤さんはイタリア語を少し学んでいたよう。語学は文法よりも単語が重要だとローゼン氏は忠告します。
[12]尻二字は「
がさ 」でそれなりの難易度。家藤さんは「マテ茶」(尻二字は「てちゃ」)を視聴者に投げなかった優しさを述べます。
尻二字「がさ」から始まる句をこの動画のコメント欄で募集 します。第6回の企画に繋がるようです。
※第5回で詠まれた俳句は以下の通りです。
0 野平家の丸と四角の雑煮餅 もち 千暁 1 持ち 出しは闇にバイトの消え朧 ぼろ 正人 2 ボロ ンとチエロ響く水無月の曙 ぼの ローゼン 3 「ぼ」の やうな男とあんみつを食べる べる いつき 4 ベル ガモの開いて天は秋の色 いろ 正人 5 色 なき風奥田瑛二は犬を撫で なで ローゼン 6 名で 決まる売れ行き要するにステテコ てこ いつき 7 手込 んでんねんと虹色のサイダー だー 正人 8 ダー スヴェーダ―のマスクに泣く余市 いち ローゼン 9 一 列になって配給待てば虹 にじ いつき 10 二重 ボディチェックの果ての麦茶かよ かよ 正人 11 火曜 日は日本語喋る夜学かな かな ローゼン 12 カナ リアはわがままイタリアの日傘 がさ いつき ▼視聴者へ投げかける尻二字は「がさ 」
[248] 【夏井いつき物語】連続テレビ小説についてラジオで公言? <2022/9/25公開> 姉妹の語らい。家藤さんは音声のみの出演で、左手に先生、右手にローゼン千津氏 が座ります。2022年8月15日、南海放送ラジオ『やのひろみの部屋』で"公共の電波"を通じて姉妹揃って出演 されたそうです。収録放送でしたが、リアルタイムでも聴いたと述べるお二方。radikoプレミアムで全国で聴くことができました。ラジオ『一句一遊』でも反響のお便りが届いているとのこと。今回はその内容について語らいます。 放送内容を覚えているのは妹の千津氏。収録時にひろみ氏がご馳走として「肴薫(さかなくん)」という店のオードブルを持参し、"一番搾り"とともに舌鼓を打ちます。ローストビーフなどが並べられ、そのご馳走がどのように並べられるのかがストーリー仕立てに語られたことに感動したことを述べます。 ちなみに、一句一遊に寄せられたお便りは【京番茶さきこ 】氏から。「姉妹の野望が素晴らしい。組長が高校生の頃は草を引く人 に、千津氏は一貫して女優になりたい 」と届いています。高校生の頃に思い描いた将来の夢について3名で語ったそうです。先生は宇和島東高校から見える天赦園(てんしゃえん)で、庭で草を引いているおばちゃんになりたい と思ったそう。その後、船乗りも志したそうです。一方、千津氏は大阪芸術大学で演劇を学び、宝塚にも行っています 。また、「ホットポテト の話がとても面白かった」と投稿者。アメリカの子どもたちが"ホットポテト"と言って他人にボールを投げ返す動きをするゲームで、仕事廻しの例示とされたそう。先生が千津氏にお願いした仕事も翌々日には終わってしまう ようで、千津氏の仕事の速さに家藤さんも感服します。妹に世話をしてきた思いが強い印象を持つという先生も、役に立つ妹だと述べて感謝します。 話題は先生の著書『瓢箪から人生 』のエッセイに。千津氏と夫のニック氏が日本に来る経緯もエピソードとして書かれていますが、ラジオでも一幕を紹介。ニック氏がレストランで膝をついてプロポーズを求める 場面に驚愕したと先生が述べます。客も固唾をのんで見守り、ウェイトレスがシャンパンを開けようと構えて待ち、ニック氏が捧げるダイヤの指輪が光っている状況。ひろみ氏にその際のダイヤを収録時に見せたそうです。 ここで、先生の著書を読んだ千津氏が今後の野望を述べます。この本を元に「夏井いつき物語」という俳句物語を朝の連続テレビ小説で書くことを、ラジオで公言した といいます。既に配役も決めており、夏井いつき役に女優の伊藤沙莉氏 を推します。米屋の娘で見ていると述べる先生に、可愛い顔だが芯が強いと語る千津氏。 放送の最後にニック氏のチェロの演奏曲が流れたことに感動したという投稿者。お二方もバッハのプレリュードの演奏を絶賛します。ひろみ氏の編集に先生は謝意を述べますが、今後はニック氏を含めて再度ご出演があるかもしれません。
[249] 【俳句甲子園】3年ぶりの開催に組長が涙? <2022/9/29公開> 動画撮影日は8月30日。20日・21日に実施された第25回俳句甲子園が無事終了 したことを報告。その感想戦 を収録します。コロナ禍で3年ぶりに大街道でも実施(決勝は無観客)し、久しぶりに疲れたことを話します。屋外を長居するため体調を崩す審査員が出る場合があることを話し、扇風機や冷却シート、おしぼりなどで対策されたそう。入場行進やウェルカムパーティーを省略するなど、参加する高校生側にも苦心惨憺の配慮で行ったと言い、実行委員会メンバーの苦労を述べます。 大会会長の日野裕士 (俳号:三津浜わたる)氏の開会挨拶の話題に。独特な語り口ながら、感無量で言葉に詰まった様子に先生はもらい泣きしたことを述べます。久々に開催できる喜びと、大会委員長の苦労には胸に迫るものがあった と語る先生。その様子を見ていた司会の家藤さんも泣きかけたと述べます。 ラジオ「一句一遊」で、"元アナウンサーの松山市長は流暢な語りで滑舌の良い挨拶に対し、日野委員長は訥々と噛み締めるようなゆっくりとした挨拶で、それが心に染みる"とお便りが届いたそうで、それを思い出していた先生。兼題「山椒の実」の投句締切が決勝当日の21日で、YouTubeの配信などを視聴した旨の報告が相次いだそうです。 【小富士民代 】氏から「配信を見終わって今書いている。開成高校が凄い。最後に選ばれた句(最優秀賞)は高野先生の話で理解が深まった。初めて大街道の予選に見に行った。午前中だけだったが、高校生の感性に触れて勉強になった。組長・正人さん・矢野さん・ローゼンさん・兼光さんも見かけ、"オールキャストだ"とニヤついていた」 【めぐみの樹 】氏から「"山椒の実"を投句し、8月21日の深夜。私たち家族は予定通り松山に来て、高校生の皆さんの熱く清々しい戦いを応援した。大街道商店街で行われた初日は新しい運動靴を履いて8つの会場を走り回って観戦 (→先生は爆笑)。2日目のコミュニティセンターのキャメリアホールに、私の応援句が掲げられて感動した。大槻税悦氏主催の俳句甲子園応援句会で詠んだ句。『夏雲や五人で護るこの一句 』。沢山の対戦を見て瑞々しい俳句やディベートに触れ、澱んでいた私の血もすっかり綺麗になった気がする。無事開催されて本当に嬉しい」。家藤さんは、様々な俳号の方と予選会でお会いしたことも報告します。 日野委員長の言葉を借りる先生。今年も開催できなければ3年間一度も公式戦を体験できずに卒業する3年生が沢山いた と述べます。作品を作る力や議論をする力が数年分後退することを懸念していた先生。地方大会の作品を見て「大変かな」と思う所があったものの、全国大会の作品に目を通して、レベルは全く心配する必要がなく、切磋琢磨していたことが分かる ものだったと言います。ディベートも立往生するような所がなく、質問やその対応においても「どうやって勉強したのか」と感じるほど的確に行っていて天晴れだったと褒める先生。裏方の実行委員会だけでなく、高校生にも感謝の言葉を述べたいと続けます。 さらに、家藤さんは動画[228]の竜胆氏も紹介。募金という形で市民スポンサーを募りましたが、無事目標の100万円を達成 したことを報告し、謝辞を述べます。 第25回俳句甲子園全国大会の模様はYouTubeチャンネル「俳句甲子園広報」から視聴可能 です。
[250] 【俳句甲子園】下五で組長を魅了した高校生の俳句 <2022/10/2公開> 第25回俳句甲子園の作品 に焦点を当てる回。テレビでは解説できる時間がもてないものの、このYouTubeチャンネルで思いっきり紹介できる喜びを述べます。 ①最優秀賞 は岩手県立水沢高等学校【阿部なつみ 】氏の「草いきれ吸って私は鬼の裔 (すえ)」。高野ムツオ先生の鑑賞が素晴らしく、それを会場の皆が聞き入っていたことを述べる先生。この句は東北地方を思わせると述べます。「鬼」はその土地に昔から住んでいるものの部外者から虐げられる立場を指し、夏草の熱量・湿気・濃い臭いがする「草いきれ」が自分を包む ものの、私がかつて虐げられてきた民族の末裔であることを思わせます。一読した際の季語がかぶさる迫力があると続けます。高野氏は「裔」を「えい」と読むことにこだわっていた ようで、「えい」と読むことで精神的支柱が強く立つ印象があるではないかと読み解きます。司会者だった家藤さんは資料にあった読み「すえ」ではなく、表彰式で「えい」と間違えて発音して血の気が引いたそうですが、高野氏の解説で救われたことを述べます。 ②開成高校【矢田部慶 】氏の「露草に十年先の来ておりぬ 」は小澤實氏選の個人優秀賞。「未来もう来ているのかも蝸牛」「夕焼や千年後には鳥の国」「小鳥来る三億年の地層かな」など、同じような発想の句は過去にもあると紹介しますが、この句のポイントは「露草」「十年」にあると先生は言います。想定できる手近な未来「十年」と、小さく健気な青い花「露草」。10年先にも露草の畔に佇んで物を思う考えがよぎるイメージがある と言います。健気ながら、引いても生えてくる強靭極まりない植物で、しなやかで強く、したたかで柔らかい部分もあり、そのイメージがリンクすると印象が変わるとも述べます。家藤さんはしぶとさ・へこたれなさがこの句の根底にある点を挙げ、季語の解釈によって生まれる味わいがあると述べます。対戦を想定した際、質問のポイントが見つけにくい部分があり、上五「に」や完了「ぬ」など苦慮しながら高校生は質問をしていたそうです。 ③開成高校【荒川理生 】氏の「七月や雲なき空が鳥鍛へ 」は西村麒麟氏選の個人優秀賞。大変新鮮な驚きのある 一句だと言います。中七までは取り合わせとしてよくあるものの、下五「鳥鍛へ」に季語「七月」を立てる効果があると評します。個人賞候補で取りこぼしていたと述べる先生は、審査員会で出てきた際の発見の喜びの心情を語ります。教育の現場ゆえ、ある一定の方向の句が受けるということではダメで、伝統的から前衛的なものまで選ぶため、様々な考え方を持った審査員を13名揃える意義がある ことを強く語る先生。正解を当てに来るような俳句の作り方をさせたくない と述べます。七月の何もない青い空は鳥を鍛えているためにあるという意味ですが、オリジナリティとリアリティーを手にした見本の句 だと言います。 最後に、実りある大会だったと振り返る家藤さん。次回も先生が語り足りない3句について語ると予告しました。
[251] 【俳句甲子園】大会を通して組長が高校生に伝えたいこと <2022/10/6公開> 動画[250]の続き。最初に兼題「龍淵に潜む 」の難しさを述べる先生。 ④海城高等学校【南幸佑 】氏の「龍淵に潜む眼鏡に小さき螺子 (ねじ)」は岸本尚毅氏選の個人優秀賞。後半の措辞はネットなどでもみられるものの、この季語と取り合わせるささやかな驚きがあると先生は言います。「龍淵に」の短い使い方の句もあったそうですが、8音の真っ向勝負で挑んだ句の方が良い句が多かったという印象。時候の季語が故「潜む」まで含め、季節感を込めて自分の心にどれだけ起こせるかがポイント だったようです。「潜む」という冷ややかな感触を体に残しておくと、時候の季語の想いを後半の措辞に繋げやすい感覚があると言います。龍がゆっくりと沈んでいくその水の冷ややかさを肌で感じた上で、眼鏡に小さな螺子があるという無関係な事象の取り合わせが"火花"を起こし ており、動詞が大切な位置にあると解説します。 ⑤愛知県立幸田高等学校【角田光 】氏の「塾を出て良夜の中の母に寄る 」は夏井いつき氏選の個人優秀賞。高校生へのメッセージとして選びたかった一句 と語る先生。俳句甲子園にも技術・狙い・企みは創作であるが故あって良いものの、季 語と作者が出会っている感触・手触りが感じられず、脳内でパズルのように組み立てるものだけになること には違和感があると述べます。教育現場である以上、生活の中で季語と生々しく出会った手触りのあるものは褒めておきたい思いが強くあった と言います。十五夜の月の綺麗な夜である「良夜」を歳時記の知識だけでなく、作者が感じ取った光景があると語る先生。塾を出た子が良夜の月に照らされた母に寄っていく光景ですが、待っている間に「綺麗な月だな」と見上げていた母の時間軸と、塾を出た子が探す母にポッと光が当たる光景も読み取れる と評します。家藤さんも「寄る」の動詞で詰められていく二人の距離感の変化が再現されていると述べます。「の中」が必要かは議論の的ですが、先生は「良夜」が時間と空間を持つ季語が故、大変大事なキーワードだと持論を展開。手触りがあると続ける家藤さん。まさに季語の現場に立ったと思う経験がいっぱいできることを期待したい と述べる先生。高校生に句の良い点を伝えたいと願う点が大きいと語る先生に対し、家藤さんも持論を述べます。審査員の立場としてどうしても外せない、価値を見出した句において伝えたいメッセージがあるのは重要なことで、「どうしても語らせてほしい」と走り書きがあれば司会の立場としてマイクを渡すことになるものの、教育者の方法としてあって良いと提案を述べます。 ⑥愛媛県立今治西高等学校 伯方分校【阿部緑 】氏の「朝の駅ゼラチン質の七月です 」は神野紗希氏選の個人優秀賞。瑞々しく鮮やかな感触が面白い一句。七月が「ゼラチン質」と表現されたことを読み手がそれぞれどのように受け取るか、想像が走り出して止まらない一句 だと先生は述べます。家藤さんは、外に出た瞬間に熱の壁を感じるなどで同じような体験をした人はいるはずで、「朝」と「ゼラチン」という温度の微妙な捉え方の差異が表現される感覚が繊細だと褒めます。「ゼラチン質の風」であればもっさりした感じなものの「七月」であることでゼラチン質のイメージが背景にまだまだ存在し、深入りするほど面白くなるタイプの句だと言います。七月になっての人間関係・自分の心情・駅で会う誰かなど想像が広がっていきます。こういう句もあって良い のだと改めて先生は語り掛けます。 第25回俳句甲子園では秀句が沢山誕生しましたが、まだまだ語り足りない印象の先生でした。
[252] 【ローランド杯】ROLANDが決めたテーマは一体...? <2022/10/9公開> ローランドのYouTubeチャンネル 「THE ROLAND SHOW -俺か俺以外か-」 で2022年8月17日に公開された動画「ハブが出るジャングルで、ローランドがスタッフを置いて逃走...」に先生がゲスト出演 しました。NHKの番組「夏井いつきのよみ旅!」で共演されるお二方。その奄美大島でのロケに密着した内容で動画を撮影されたそうです。先生は「ローランちゃん」と親しく呼んでいますが、チャンネル登録者数は130万人(2022年10月現在)と人気の人物。動画には先生の他、兼光さんも出演しました。昼食の鶏飯を一緒に食べるシーンがありましたが、このとき先生が思いついた提案を披露します。ローランちゃん絡みで俳句募集が出来ないか と打診すると、王子様のように両手を広げ、快く受け入れたというローランド氏。ここで、立ち上がった企画を発表します。 題して「第1回ローランド杯」 。募集テーマはローランド氏本人が決め、募集要項動画の撮影者は氏のYouTube動画を撮影していた若い男性が引き受けて頂いたそう。関係者に謝辞を述べるお二方ですが、ここからその動画を公開します。ローランド氏は、先生と俳句の番組を沢山やらせて頂いていると前置きして兼題を発表。 テーマ『俺か、俺以外か』 このテーマで俳句ができるのかを疑っているのではないかと唆す先生に対し、ローランド氏も意見に同調しますが、「俳人を馬鹿にしてはいけない」と牽制する先生。ポジティブ・ネガティブ・訳が分からないものまで色々な俳句が来ると念押しします。一方、採点するのは得意だと語るローランド氏でした。 動画を観ていた家藤さんは、難しいテーマだと率直に述べます。後ろのホワイトボードには「男は俺か、俺以外か 」とテーマを貼ります。普通の人が言えない名言で俳句を作る切り口の難しさ があります。ローランド氏の生き様に寄せる方法、テーマを自分に引き付ける願望・ギャップ、性別に関係なく生きる世の中など色々発想法はありそうです。「どうせ俺以外ですよ~」など自己肯定(否定)としてのイメージを詠んでも良し、自分以外の題材でその辺のカマキリになり切って詠んでも良し。必ずしもテーマの単語を入れる必要はありません 。選者は夏井先生、ローランド氏の他、家藤正人氏も加わるようで、YouTube句会ライブ同様に各賞が与えられるそうです。 ローランド氏は、「よみ旅」という番組を続けてきて俳句を読み解けるようになってきたと自分で語ったそうです。 投句方法について。コメント欄ではなく、動画の概要欄にある専用フォームからの投句 です。投句締切は12月31日24時 、一人何句でも投句可能です。また、他の媒体にて活字として紹介される可能性があることを了承の上、投句してほしいとお願いがありました。詳しくは、概要欄の注意事項をご覧ください。
[253] 【令和相聞歌】恋多き妹の愛の句は...? <2022/10/13公開> 今回は先生が左手、ローゼン千津氏が右手に座り、家藤さんがカメラ奥で音声のみの参加です。第4回令和相聞歌(れいわそうもんか)の作品募集 のお知らせ。家藤さんが審査員を務める大会ですが、「恋といえば私だ」と述べるローゼン氏。 昨年分も募集について動画[146]、投票を動画[174]で紹介しています。テーマは「恋」で80文字以内の作品が対象のコンテスト で、俳句のみならず、短歌・短詩も可能 。昨年の内容を思い出す先生は、動画[146]でも語ったオータムジャンボの話を振り返ります。 さて、恋の句を作っているかという質問に「恋の句がない」と述べるローゼン氏。句柄が地味で渋い句だと先生は述べます。一方の先生は恋の句が多く、ローゼン氏が好きな句として【夏井いつき 】「蛍草コップに飾る それも愛 」を挙げます。エッセイでも語ったことがあるようですが、以前出演した「徹子の部屋」でも述べたそう。マジな恋を感じた瞬間の句がある と切り出すローゼン氏。チェリストのニック氏にプロポーズされた後、松山・星乃岡温泉の前の家に帰省していた時のことを語ります。姉の先生に世話をしてもらいつつ、本人は松山の俳句ガイドをしながら、ニック氏がご飯を作って家で待っている状態。帰国時のバタバタが落ち着いた瞬間、「この人と一生添い遂げられるのか」どうかが心配になった瞬間があったと言います。世界一尊敬する夫のチェリストを連れて帰国する騒ぎで、省みる暇がなかったことにツッコミを先生は入れます。初夏のある日、松山俳句ガイドの仕事を終えたローゼン氏が自転車で家まで帰る途中、温泉に至る道の草いきれの畦道でニック氏がしゃがみ込んでいたそうです。見ると、玉ねぎ畑で玉ねぎを引いているお婆さんから玉ねぎを貰っていた模様。妻のローゼン氏に気づくや否や遠くから「奥様~」と手を振って貰った玉ねぎを見せてくれた時 があり、その際の心境を詠んだ句を披露します。 【朗善千津 】「いつのまにこんなに好きに草いきれ 」。笑いっぱなしの先生に対し、ロマンチックで良いと感想を述べる家藤さんは、その様子を想像するとニック氏が愛らしくて仕方ないと続けます。この瞬間、「この人とちょっとやっていけるかな?」と初めて思ったというローゼン氏は、ニック氏が初めて覚えた日本語が「奥様」だと言います。まさに恋の句だと述べる家藤さんに対し、恋の句は上手下手ではない と述べる先生。 恋のテーマで作品を作る際のポイントを聞かれたお二方。先生は俳句に関して述べます。俳句愛好家はある程度の年齢に達した人が一定数おり、「老いらくの恋」はすぐに出てくると言います。「老いらくの恋や」で詠嘆した後、季語を含めた勝負になりますが、ここからベタになりやすい と忠告します。「また桜が見えた」といった展開や「愛しい」「有難い」などの感情語を入れるのも勿体ないと述べます。別の方向に舵を切り、どうでも良い日常の小さなことを書いて恋を思わせた方が粋な感じがする と語る先生。ローゼン氏は「小さな草をコップに挿す」と提案。 ここで、先生が日常の句を思い出したとして一句を披露します。 【夏井いつき 】「棒アイス舐めているのが夫です 」に、思わず甘える様子のローゼン氏は、可愛いと述べます。日常的な恋の句でも句柄が分かれるのが面白いと語る家藤さん。些細なことに愛情の目線が見えるものも人を思う作品として成立する と述べます。真実やポエムは細部に宿る という先生。ぼんやりと「愛しきあなたかな」などはリアリティーがないため、細部を小さく描くのが重要 だと指南します。なお、昨年の第3回の最優秀賞(賞金10万円)は第4回おウチde俳句大賞(賞金20万円)を受賞した俳号【ツナ好 】氏。その作品は「軽率になんの取り柄もないと言う君はきれいに僕の名を書く 」という短歌作品です。先生は打倒ツナ好を掲げて視聴者に作品への挑戦を問いかけます。 第4回令和相聞歌は、応募期間が2022年9月1日から11月11日 。専用ホームページから投稿可能です。前回「正人の顔を立てると思って」と先生がこのYouTube動画で煽った効果で応募数が増えたそう。今回も先生が一言述べて動画を締めました。
[254] 【悩み】俳句以外の回が人気なのですが... <2022/10/16公開> 伊月庵の屋外のデッキで道路側を背景に撮影している今回。今まで「デッキで山頭火」など俳句動画を収録しているお二方。デッキの方が、どうでも良い話をしやすい と家藤さんが述べますが、夏の暑さが困るよう。デッキ収録ではカメラマンの兼光氏がカンカン照りの中で撮影せねばならず、今回は軒にキャンプ用の椅子を出して撮影に臨んでいます。椅子は北海道でワカサギ釣りをする際に購入された物のよう。気持ち良さに思わず寝られそうだと述べる家藤さんですが、神妙な面持ちの先生は「暑いうちは、しばらくデッキで収録はできない 」と重い口を開けます。 デッキ収録シリーズの中で、動画[208]の弁当回の再生回数が高く、俳句回でないことに驚いた という先生。下調べをしっかりしながら俳句動画を撮っているにも関わらず、俳句以外の内容の動画人気が高いことに不満を漏らします 。家藤さんは「ああいうのはあんまりやらなくてよいということ」だと持論を述べ、普段の視聴者以外の層が動画を観て頂いたと分析します。弁当以外では映画を語った回([205][206])もコメント欄が盛り上がったようで、「私も『愛のコリーダ』を観た」など様々なコメントが寄せられたそう。 あの回の収録後、長年映画を見ていなかったという先生ですが、映画を見るようになった と言います。先生は、飛行機での移動中に「全日空寄席」の落語や講談を必ず聴くと言います。最近のお薦めは講談師・神田伯山 (はくざん)氏、落語家・立川志の輔 (しのすけ)氏とのことですが、助言で名前を思い出す先生。何回も飛行機で往復しているため、何度も聴いていると落語の最後の落ちまで分かってしまうそうです。そのため、映画視聴にも挑戦したようで、ウィリアムズ姉妹がプロテニスプレーヤーになる経緯を辿った映画(『ドリームプラン 』)を観たと言います。家藤さんは主演がウィル・スミスだと知っていましたが、まだ観ていないと言います。先生は映画の内容を語り始めます。ちょうどストーリーが佳境に差し掛かった時に羽田空港に着いてしまい 、映画の続きを帰りに観ようと思うも、月が替わってプログラムが変更されてしまい、結末を知らない状態で今座っていると述べます。 同じような体験を最近もしたと言う先生。ジャニーズ「嵐」の誰か(松本潤氏?)が主演している映画を観た(『99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE 』?)ようで、真相に近づいたところで松山に着いてしまったと言います。松山―東京便が約1時間20分とのことで、映画1本を観るには足りない ことが原因のよう。さらに、全日空での注意喚起CMなども流れるため、実際の視聴時間はさらに短いと語り、もやもやすると言います。 さらに、第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー 』についても。主演は西島秀俊氏。ストーリー冒頭「過激なシーンがありますのでお気を付けください」との注意事項があり、先生曰く「たいそうな濡れ場」の場面に。隣の兼光氏に注意を向けるとクラシックを聴いていたそう。しばらくして広島を舞台にした話が展開しますが、激しい内容の前座だったと思い、本編に入る良い所で飛行機が東京に着いた そう。 結局3本の映画の結末が分からないままモヤモヤしている と述べる先生。家藤さんは距離が長い北海道直行便に乗るしかないと解決策を語ります。家で見るほど時間が取れず、飛行機で見るのが丁度よいのだそう。先生は全日空に「上映期間を3か月くらいにしてほしい」とリクエストします。今度は家藤さんが語りたいと述べて動画を締めました。
[255] 【2023年カレンダー完成】写真俳句からキスマイの話に? <2022/10/20公開> 「夏井いつき 四季を愉しむ風景 -はじめての俳句と暦- 」(インプレス刊)2023年版カレンダー完成 のご報告。夏井いつき先生の俳句(俳句鑑賞文はローゼン千津氏)と四季折々の日本各地の写真が一体となって月ごとに収められており、月齢も記載されたカレンダーとなっています。 小滝と紅葉の森林が映る表紙写真は10月掲載の写真。秋田県にかほ市・元滝伏流水 (もとたきふくりゅうすい)で、地元の人にとって有名な光景だと言います。句会ライブで秋田に訪れた先生のカレンダーを、地元の本屋が店頭で売って下さった話をする先生。先生がサインをする余白がカレンダーにないため、わざわざ10月のページを「秋田の光景」だと開ける店員さん。数字の「10」の横にサインすることを懇願し、大変喜んで下さったと語ります。「この句が掲載されるイメージがなかった」と本音を漏らす先生ですが、以下の句が写真左に掲載されています。 ①【夏井いつき 】「洞窟の中に野菊を置きにゆく 」。「洞窟」「野菊」が直接写真に写るではないものの、それらしい光景が想像できる写真でもあり、良い取り合わせだと思うと述べる先生。家藤さんも句と写真との取り合わせにおいて、画面の外に想像が広がると続けます。 写真と俳句との取り合わせで相乗効果を引き出す"写真俳句"。「最も自分が上手いと思う」と自負する8月掲載の一句 を披露します。 ②【夏井いつき 】「みな潮の匂いに干して盆の家 」。海に浮かぶ小島が連なる背景の写真(岩手県宮古市浄土ヶ浜 )ですが、写真から感じられる「潮の匂い」に対し、「干す」「お盆を迎えた家」の情報は写真の外にある光景。お盆の準備や帰省する人のために干したりする、帰省して盆を迎える子の洗濯物を干すなど、ありありと光景が見えてくる 句だと述べる先生。写真俳句の写真は、句の世界を補強してくれると家藤さんが語ります。撮影場所を読み上げて仰天するお二方は、先に場所を認識して置きたいと述べます。 「プレバト!!」(2022年9月22日放送)の特別企画「ふるさと戦 」でも"写真俳句 "が題材に。先生は、写真の持つ情報をそのまま俳句に映しこむだけでは、「1+0」にしかならない と説明しています。また、写真の中のどこかにありそうな情報で句を作ると「1+1」になるとも語っています。ただ、写真俳句の真髄は掛け算(相乗効果)にある と述べていました。 ここで、番組に出演したキスマイ(Kis-My-Ft2)の話に。福島編の順位発表で最後に残されたのが地元出身の梅沢富美男永世名人とキスマイ千賀健永名人の2名。オンエアされていませんでしたが、千賀名人はその際自信を持って「僕のはちゃんと掛け算になっている 」と豪語したそうです。先ほどの先生の説明を千賀名人本人が聞きかじって、自分の句で検証してアウトプットして話した事実に「素晴らしい学びの姿勢だ」と褒める家藤さん。1位の句は【千賀健永】「ラジオからソウル会津は初紅葉 」 でしたが、この句がひょっとすると千賀君かもしれないと先生も思ったよう。確かにおっちゃん(=梅沢氏)の句にしては洒落ていると思ったと述べ、家藤さんも同情します。ちなみに梅沢氏は地元に寄せて「赤べこ」の句でした。さらに、キスマイの横尾渉名人は「福島の皆さんは、梅沢さんが(1位を)獲るより、千賀が獲った方が喜ぶと思う」とも述べていて談笑するお二方です。 実際に千賀名人の句が載ったポスターが地元で貼られますが、リサーチの動きが速いキスマイファンを褒め称える 先生。先生の事務所スタッフ「しょうまくん」が、ネットのSNSでキスマイファンがポスターの情報を流していると先生に知らせると、先生もその画像を自身のブログに載せます。「福島の動きが速い」と福島の物産課スタッフの動きを褒めたつもりだったそうですが、キスマイファンの動きの速さに驚愕。ブログ閲覧数も3倍ほどになったようです。家藤さんも「キスマイファンのネットワークが素晴らしい 」と称賛します。 一方で、茨城編を制覇した「ポンチ村上」(=フルーツポンチ・村上健志永世名人)のポスターの情報が未だに来ていないことも述べます。「とにかくキスマイは凄い」と改めて述べる先生です。 また、「ふるさと戦」の企画が他の都道府県でも続くのでは?との話題に変わり、プレバトファンの凄さ を先生は述べます。「番組で才能アリを過去に獲得した芸能人は47都道府県に全てにいる ので安心してください」とネットに検証結果をあげていた人がいたようです。キスマイファンもプレバトファンも凄いと述べるお二方ですが、「皆さんのネットワーク、我々も大いに活用させて頂きます」と家藤さんが述べます。 写真俳句のコツを大いに学んでもらい、このようなカレンダーを自作するのも楽しいと語る先生。家藤さんは、旅が好きな人にもお勧めします。写真俳句を楽しんでほしいと述べる先生と、カレンダーの宣伝を行う家藤さんでした。
[256] 【おしゃべり俳句】子どもが実物のパンダを見たときの気づき <2022/10/23公開> 動画[239]以来の第9回おしゃべり俳句 (※動画では第8回と紹介しテロップで訂正)。前回の動画のコメント欄に投稿されたものから紹介します。 ①初投稿は【近藤英幸 】氏の【ムーちゃん 】から。「『おちゅきちゃまがちゅいてきてるよ』どうちて? 」は、数十年前の回想句。母の実家で農作業の手伝いに行った帰り道、母に背負われていた時に空を見て発した自身の台詞 だそうです。先生は、古今東西の子は背負われた際にその台詞を言うと述べると、ある程度年代が分かってくると家藤さんがコメントし、先生も同調します。お二方は自分たちがその世代にあたるかを分析し、今の子は前に抱っこされる傾向にあるなどと語り合います。 ②夏井先生と同い年という【骨太まあ子 】氏も初投稿。30年前に三女【みのりん5歳 】が発した言葉を採取。「看板のあそこにシロアリいるんやな 」。先生は、シロアリ駆除会社の看板 を見て"シロアリの住処だ"と子どもが発したのだと予想し、まさに的中。投稿者曰く、「違うよ、シロアリを退治してくれるんだよ」と答えると、「知ってるよ、冗談だよ」と子に返されたそうです。 ③2年前の出来事を投稿したのは【もぐ 】氏。【しゅうま3歳 】の「おせち料理ぼく好き嫌いするで 」に先生は爆笑します。子どもはおせち料理があまり好きではないのではないかと述べる先生に続き、最近は洋風の料理のおせちもあると家藤さんがコメント。栗きんとん、いくらを孫が好むと語る先生。光景としてよくあり共感できるが、堂々と言い放っている子の様子がリアル だと批評する家藤さんです。今は5歳になっていますが、実際にその子とおしゃべりをして子の言葉を抽出するのは楽しい ことだとエールを送ります。 ④【すみっこ 】氏の親戚の子で初めて都会から田舎に来た【小4の女の子 】の「海の中が金色にキラキラしてる (夏の星) 」。先生は、海の中の夜光虫を見たと予想します。さらに、「(夏休み)方言っていいよねカッコいい 」も季語がかっこ書きで書かれており、合う季語を補足的に選ばれた可能性が示唆されます。先生は、呟いた子と一緒に季語を選ぶ作業まで楽しむとさらに良い とアドバイスします。 ⑤前回が初投稿の【KSNL 】氏。娘家族で動物園に行った【かえで7歳 】が言い放ったのは「ねえばあば パンダはあんがい 白くない 」という"気づき"。これに先生は感心し、パンダが地面にゴロゴロしているため、白い部分は意外に汚れている と述べます。さらに、上五を季語に変えると大変良い俳句になると忠告します。投稿者曰く「実際に近くで見てみると、白い部分は汚れてほとんど茶色だったのがショックだったよう」とのこと。 ⑥【きこばあば 】氏から。【希子 】の「猿祭りバナナはすてきな月になる 」は、上五の季語を子に三択で選んでもらった そう。「森祭り」「猿祭り」「星祭り」が候補だったそうで、投稿者がダンスをしながら提示したら「猿祭り」をセレクトしたとのこと。先生は、なぜそれらの候補にしたかは謎が残るものの、楽しい時間を過ごせたのなら良いと述べます。 さて、通常は最後にベスト3を発表しますが、今回は例外的にベスト5を選出 したとのこと。次回の動画で発表するそうです。
[257] 【おしゃべり俳句ベスト5】第9回のベスト5の中に人生の応援句がありました <2022/10/27公開> 前回動画に引き続き、今回は第9回おしゃべり俳句のベスト5 を発表します。 ①【朱夏 】氏から。【友達の次女(5歳) 】「そんなときもあるよね!秋の空 」。自分に言い聞かせる一句として人生の応援句である と先生は述べます。投稿者曰く、子ども連れで行ったレストランにいた店員が「ガシャン!」と皿を割ってしまい、子が店内に目立つほど大きな声で言った台詞だと言います。恐らく次女も同じような経験があったのではないかと推測する先生は、自己弁護の句として可愛らしいと印象を述べます。季語選びとしても良いと評す先生は、何かやらかした時にはこの句を呟く と述べます。 ②初投稿の【Green S 】氏から。【アダム(5歳) 】「ふゆにはわたしも犬になるはず 」。謎はあるものの、台詞の思いが妙な詩になっている と評す先生。投稿者曰く、ホームステイをしていたイギリスは(新型コロナウイルスの)ロックダウン中で、外出は買い物と犬の散歩のみで、そのホームステイ先にいたアダムが「なんで犬はいつも外にいるんだ。私も出たい 」と毎日言っており、犬になる努力をしていてこの台詞を発したとのこと。思わず拍手をする先生は、アダムを気に入ります。是非この動画を教えてあげてほしいと投稿者に忠告します。 ③【Mine Cocoa 】氏から。【日々の茶めしの息子(2歳半) 】「はるちゃん、金魚ちゃんになっちゃったねぇ 」は犬の句に続き、金魚になる発想。「はるちゃん」の名前がほのぼのとしており、後半が幼稚園・保育園でのお遊戯などや「はるちゃん」の願望を思わせます。投稿者曰く、息子が2歳半の時、湯を張った湯船に落ちてしまい、慌てて救い上げて大泣きするかと思いきや余裕の表情で言った台詞 とのこと。大した大物だと述べる先生は、昔の出来事を思い出します。田んぼの水路で水量を調節する分水栓のある深い場所に、周囲を走り回っていた息子の正人さんが落ちてしまったそうです。頭まで泥水に浸かっていた息子さんを先生が急いで引き上げると正人さんは「OK!」のポーズを取ったそう。そのエピソードを思い出して談笑します。先生はそれがトラウマとなって悪夢を何日か見たそうですが、頑丈な息子で良かったと自身で述べる家藤さんです。 ④【大紀直家 】氏から。【大史華家(5歳) 】「にぎやかなはたけもんしろちょうがいる 」。自ら俳句を作る意思を持って呟いている のではないかと分析する先生。「にぎやかなはたけ」で映像が見え、様々な作物が実っている中、よく見ると紋白蝶がいるという印象です。投稿者曰く、何か月か前に娘と散歩していた時のおしゃべり俳句だと言います。散歩しながら子の言葉を書き留められる素敵な親子だと先生は褒めます。 ⑤【打楽器一家 】氏から。【小物打楽器 】「羽化した蛾さびたおうちのいろでした 」。この句は完全に俳句を作る意思を持って呟いている と先生は評します。羽化した蛾が錆びたおうちの色にそっくりだという比喩ですが、俳人のアンテナを外に向けていることで、この比喩表現が出てくるため、俳人として上手くなっていると称賛します。投稿者曰く、作者は夏に芋虫を見つけて育てていたが、意外とすぐに蛹になり、観察日記もつけていたそう。綺麗な「蝶」になると張り切っていたものの、羽化したら「蛾」と分かり、その観察日記に書かれていた言葉を採取したとのこと。観察日記には鮮度の良い詩の言葉が書かれている ことがあると言う先生。後日談をラジオ「一句一遊」でのお便りを頂いたそうで、親の薦めで育てた蛾を逃がし、子が泣いてしまったと言います。物を飼うことも俳句の種探しでは大変有効 だと先生は述べます。 おしゃべり俳句で子の成長が見えると述べる先生は「アダムに期待したい」とも言います。次回・第10回おしゃべり俳句への投句はこの動画のコメント欄に寄せてほしい とのことです。
[258] 【AI×俳句①】俳句を元にAIが生成した画像 <2022/10/30公開> シリーズ初の三人収録 。中央に先生、右手に家藤さん、左手にローゼン千津氏がパソコンの前に座ります。 画面下に同じような4枚の画像が映し出されますが、これらの画像はある俳句を元に画像AI「DALL・E 2」 が生成した画像だと紹介します。アメリカのOpen AI という企業のパブリックAIで、アカウントを作成すれば誰でも使用可能とのことです。 先生は「汚い水」と表現する写真と有名な俳句が元句であるとの推測から「古池や蛙飛び込む水の音」だと予想し、拍手をする家藤さんとローゼン氏。 ①【松尾芭蕉 (まつおばしょう)】の「古池や蛙飛びこむ水の音 」を一度英訳した文章を入力し、それを映像化する命令によって生成された画像だと明かす家藤さん。本日は英語監修としてローゼン氏にも加わって頂いていると述べます。 動画[235]で、飛び込んだ蛙が単数か複数か について議論していた先生。全く蛙らしいものが画像にありませんが、今回はラフカディオ・ハーンによる訳によるもので、以下の通りで入力されたと言います。"Old pond - frogs jumped in - sound of water." 「flogs」とあるため、複数の蛙 が飛び込んだことに。ただ、実際に画像を出力する際、AIがどのパーツを拾うかによって、差が出る点に面白さがあると言う家藤さん。次は違う英訳(ドナルドキーン訳)によって出力した画像を4枚表示します。そこには1匹の蛙が泳ぐ池の光景が映し出されており、英単語も「flog」と単数 になっている模様。"The ancient pond a flog leaps in the sound of the water." 「ancient」は「古代の」という意味。 ちなみに画像の右下には小さくカラーバーがついており、一からOpen AIが画像を作成したという証拠として付されるそうです。 ただ、AIも万能ではない と述べる家藤さん。「今の段階で万能感はない」と印象を述べる先生ですが、次の句を入力しても何も表示されないと言います。 ②【金子兜太 (かねことうた)】「犬の睾丸ぶらぶらつやつやと金木犀 」は金子兜太公式サイトで英訳されているものが発表されていると言います。出力すると「!」とともに表示できない旨の文章が続きます。これはセンシティブなワード(性・暴力など)があるものは不適切 だと自動的に判断されるよう。この句の場合は「睾丸」が該当するようです。 また、実在の人物も画像生成にそのまま出すことはできない とのこと。この実験に当たり、事前アンケートで「絶対に行ったことが無い場所」に「マチュピチュ」と回答していた先生。試しに"Itsuki Natsui on Machu Picchu" と入れても、マチュピチュらしい画像のみ生成されます。先生は倫理観として制限することが大変重要 だと述べます。 ちなみに、今は亡き歴史上の有名な人物ならどうかと家藤さんが実験。「正岡子規と夏目漱石が現在の松山市の道後で、温泉へ向かって登っていく」という意味の英文を入力すると、それらしい画像は表示されますが、あくまで人物はそれらしい感じの銅像に。家藤さんは「山頭火らしい」、先生は「おまぬけな兵隊みたい」と意見が分かれます。 このような様々なルール・制限がある中で俳句をAIで映像化するとどうなるかという実験 を試みた家藤さんと、主旨を理解してきた先生。続きは次の動画に繋がるようです。
[259] 【AI×俳句②】AIが作る画像が俳句に失礼? <2022/11/3公開> 前回[258]の続き。白い梅の花が拡大された写真 が4枚映し出されますが、何の句を元にしたかを予想します。先生は、服部嵐雪 (はっとりらんせつ)の「梅一輪一輪ほどの暖かさ 」と予想します。ただ、この句の梅は赤い印象だと先生は述べます。実際の元の句は全く異なるものでした。 ③【金子兜太 】「梅咲いて庭中に青鮫が来ている 」。肝心の青鮫が全く画像に表現されていませんが、"blue sharks"の「blue」が拾われて背景の青空が出ていると推測する家藤さん。先生は「虚」を描いた俳句にはまだAIが追いついていない と述べます。文字列として理解していても、句の世界はまだ表現できていないと続ける家藤さん。そもそも、この名句の世界にキョトンとする読み手も多く、「それは無理だよ」と先生は語ります。自分がAIであれば、梅よりむしろ青鮫を書きたいと述べるはローゼン氏。青鮫の皮膚に梅の模様があるかのような世界観を語る先生に対し、前衛的だと印象を述べる家藤さん。 続いて、狼と蛍が描かれているイラストタッチ の画像。それを見た瞬間に先生は作者を当てます。 ④【金子兜太 】「オオカミに蛍が一つ付いていた 」。英訳は以下の通りです。"A wolf;one firefly clung to the wolf" 「clung」は「しがみつく」という意味。画像の中にはオオカミにしがみつくオオカミを描いたような画像もありますが、思わず先生は「俳句に対して失礼 」とバッサリと述べます。家藤さんは、日本語で書かれた俳句が普通の文章として成立しやすいため、画像が生成しやすかった可能性を述べます。AIは写実的な物だけでなく、イラスト風も描けるようです。③の句もイラストタッチで生成できた可能性について言及するお二方ですが、梅と青鮫が現実的に離れすぎていることを語る先生。ローゼン氏は、日本の俳句以外に取り合わせの概念が定着していない ことを主張し、それをAIにも学習させるすべきではないかと述べます。 先生のもやもや感が晴れない中、次の画像は成功例だと紹介します。多数の猫が雪の積もった井戸のまわりに集まる画像はローゼン氏の俳句が元です。 ⑤【朗善千津 】「冬の井戸猫集まりて解散す 」。実際に見た現場そのままが俳句になっていて嬉しいと述べるローゼン氏。また、AIに教え込む英訳もご自身でなさったそう。"winter water well cats gathered for a while then dismissed" 「dismiss」は「解散する」という意味。確かに分かりやすいと述べる先生は、いつ・どこで・だれが・何をしたという叙述が書かれているかがAIにとって重要 だと分析します。言語を解析し、そこからもたらされるイメージを画像として出力されていると述べる家藤さん。ローゼン氏は、取り合わせ次第ではAIのツボにはまり、アートな画像が出力される希望も少しあると述べます。先生は、ローゼン氏の句柄がAIのシステムに向いていると褒めますが、褒められてる気がしないと述べるご本人。最近句会でローゼン氏が出された句に「犬連れておらぬ犬友月を見る 」があり、AIで出力できるかを議論するお三方。先生は古典の名句で完璧に画像出力できるものがないか 興味があるよう。シリーズは次回に続くようです。
[260] 【投句募集】筆ぐるめ俳句大賞2023 兼題「年賀状に載せたい一句」 <2022/11/10公開> 昨年の動画[160]に引き続き、筆ぐるめ俳句大賞2023 のご案内。今年の兼題も「年賀状に載せたい一句 」です。 挑戦のコツを問われた先生はまず、年賀状を書く内容に困ることを述べます。「明けましておめでとう」「謹賀新年」などの文字を置いて、絵などで誤魔化して作ってしまう習慣を挙げますが、愛想がないと思われることを懸念材料として述べ、家藤さんも同調します。何か近況報告のようなもの があるだけで、アットホームな印象になるとアドバイスします。実際にそのような句を目指したいところですが、昨年の入賞作品を参考にしてほしいと先生は述べます。 ①【ひなた和佳 】氏の「葉牡丹の似合ふ新居が建ちました 」は昨年の優秀句。新居が建つという人生で何回とない節目で、前半・後半の句またがりはまさに近況報告の一句。近況報告を五七五のリズムに乗せるだけで俳句が作れる という典型例と紹介します。 ②【かわもとひろこ 】氏の「高音の弦張り替えて初稽古 」は昨年の佳作。ギターやお琴などの習い事が句材となっている 一句です。「高音」の具体性が良いと先生に評します。自身の境遇の変化に一言添える俳句として、年賀状に乗せる感じが出ると述べる家藤さん。 ③【あずお玲子 】氏の「まだ四人家族でいますお元日 」は昨年の優秀句。何も変わらないことも句材の一つ 。穏やかであるものの、今年こそ何か変わるかもという期待が季語「お元日」に表れる印象もあると先生は評します。 ④【小西翠声 】氏の「一病とほどよき距離を着ぶくれて 」は昨年の佳作。持病を持っていることが句材 ですが、それも変わらないという近況報告です。「変わらないこと」を探すことも大切だという先生。毎年締め切りに追われているのが先生の日常ですが、「締め切りに追い回されて 」でフレーズが作れると述べ、最後に「初笑い 」の季語を足します。お正月のにぎにぎしさが出てくると述べる家藤さん。 先生に「何か一つ変化したことがないのか?」と問われた家藤さんはまさに育児真っ只の世代。息子が小学校に行くようになったと答え、それも大きな変化だと先生が述べます。 最後に、投句のご案内。最優秀賞(1名)は、VISAギフトカード10,000円分、優秀賞(4名)は、お肉のギフト券5,000円分、佳作(50名)はAmazonギフト券1,000円分 が贈呈されます。一人最大5句まで 応募可能。最優秀賞・優秀賞は筆ぐるめシリーズへの収録も予定。締切は2023年1月31日(火) 。詳細は筆ぐるめ公式ホームページを確認してください。
[261] 【AI×俳句③】『AIの気持ちが分かってきた』AIが作る画像を予想 <2022/11/13公開> 今回は仕切り直し。動画[259]に続き、第2回「DALL・E 2 (ダリツー)」を用いた俳句のAI生成画像についてお三方で語ります。 前回紹介された⑤ローゼン氏の猫俳句ぐらいしかAIには解釈出来ないことが分かったと述べる先生。今回は、夏井先生の俳句から画像生成を試みます。画像AIと相性が悪いのではないかと述べる先生は、自分の句について「平たく意味は分かるが、そこから考え始めると逆に分からなくなる句が多い 」と続け、一句を紹介。【夏井いつき 】「鶴食うてより言の葉のおぼつかな 」はAI画像が困りそうだと語らうお三方。鶴が何かを食っている映像の可能性もあると家藤さんが述べ、句としての面白さと映像出力の面白さに相関がない可能性にも言及します。 ⑥【夏井いつき 】「龍を呼ぶための鬼灯鳴らしけり 」は句集『龍尾』収録。赤や緑のほおずきの写真が出ていますが、AIが困惑したのか「龍を呼ぶ」を表現できていません。先生は、DALL・E2の気持ちが分かるようになった と言います。俳句が先にあればどんな画像が生成されるか予想できるとのこと。 ⑦【鉈煮(ナニッエル・ローゼン) 】「金閣も金の葉持つや松手入 (まつていれ)」はローゼン氏の夫ニック氏の句。家と庭の木々が映り込む写真が表示されていますが、英訳は以下の通りです。"Pine trees cut and trim surrounding a golden house leaves of gold and green" 金閣寺(Golden pavilion)で詠まれた句ですが、金色の壁の家の画像になっており、手入れをしている松の画像もありますが、松手入の概念が表現できていません。続いて、俳句を聞いてからAIがどんな画像を生成するかを先生が予想することに。 ⑧【朗善千津 】「お神輿や胸毛に白髪混じりある 」。DALL・E 2の気持ちになった先生は、胸毛のアップの写真がある と言い切ります。AIの画像は、お神輿ような日本風の祭の写真と架空に生成された白髪のおじさんの写真 に分割されています。「胸毛」はセンシティブな単語と判断された可能性を述べるローゼン氏。神輿に関しても宗教行事を表現できない縛りがある可能性にも触れます。 ➈【アダム5歳 】「ふゆにはわたしも犬になるはず 」は動画[257]のおしゃべり俳句紹介句。先生は雪っぽい光景に犬と人間がいる写真 だと予想します。モフモフな白い犬が雪の光景に入る光景 でほぼ的中しました。 先生は「これによって何が分かって来たのか?」と深い質問。ローゼン氏は「どの取り合わせを出せば普通の写真ではなくアートのような写真が生成されるか、そのメカニズムを突き詰めたい 」と熱心に展望を述べます。ローゼン氏の俳句を沢山入力したいところですが、ある程度以上は課金しなければならないと切実な事情を述べます。 先生は「なぜ4枚画像が出るのか? 」とも質問。家藤さんは、文字列から想定される読みの幅・可能性から想定される複数枚の画像を出している のではないかと答えます。ローゼン氏が述べた、さらにアーティスティックな画像生成について、次回の動画に続くようです。
[262 ] 【AI×俳句④】『王国の蝶』の一句からAIが作った画像が... <2022/11/20公開> 前回[261]の続き。アーティスティック な先生の句を紹介。 ⑩【夏井いつき 】「月はいま濡れたる龍の匂ひせり 」。月の実景に、龍の気配を溶け込ませる印象の一句ですが、「DALL・E 2に龍は出せない。芸術はまだ解せない」と主張するご本人。実際に月に雲がかかった写真を見て雰囲気があると評価します。 "Moon smells like a wet dragon just now " が訳に用いた英文。月を隠そうとする雲に龍の匂いの印象がどこまであるかを話し合うお三方。水墨画的、童話の一場面などと称されますが、先生は「今までで一番良い」とAI画像を称賛します。 ここで、Kis-My-Ft2の楽曲「王国の蝶 」に話題が移ります。キスマイの横尾・千賀両名人が「プレバト!!」に出演する際の出囃子BGMとしてお馴染みですが、その事実にローゼン氏は驚嘆します。ここで、楽曲の詞の引用元となった先生の句集『蝶語 』からも一句をAIに試します。先に写真を見て、元の句を当てる挑戦をします。 画像を見るなり衝撃的な顔になる先生。オレンジ色の太陽をバックに驚愕する蝶の顔が描かれた画像 などが並びます。「王国の蝶」の歌詞にもなっている句ですが、何一つ思い浮かばないと述べる先生。ヒントとして掲げた英語詩は以下の通りです。 "Scary sun butterfly's grotesque mouth horror " これでも先生は原句が思い浮かばない様子。正解を発表します。 ⑪【夏井いつき 】「太陽の恐ろし蝶の口恐ろし 」は歌詞のAメロになっている句。たまげた先生は、画像は失敗作だと述べます(後で「horror」の一語が蛇足だったと分析します)が、前衛的でアーティスティックだとフォローする家藤さん。キスマイに申し訳ないと謝罪する先生ですが、句自体は先生のものです。 最後に、ローゼン氏が最もアーティスティックな画像になったと認める一句 を紹介します。 ⑫【夏井いつき 】「凍滝や火を噴く龍を眠らせて 」。季語である凍滝のみが画像にあると述べる先生ですが、実際の画像も凍り付いた滝のズームイン画像が並びます。龍のような形態にも感じる凍った滝 。先生は、龍ではなく恐竜のように感じると述べます。「火」ではなく氷の火のようになっている画像解釈が賢いと述べる女性陣。英訳は以下の通り。 "Frozen cataract sleeping dragon inside " 先生は、俳句の英訳に芸術性を狙わず、平たく映像をそのまま書く直訳が良い のではないかと述べます。俳句にも解釈が様々あるため、必ずしも直訳になっていかない難しさの点に言及する家藤さん。ローゼン氏は、補足する一言を添えるのが大事だとも言います。 ちなみに、「DALL・E 2」はアカウント登録制ですが、無料で利用可能だと家藤さんが説明します。英語力も重要となります。英訳監修のローゼン氏は「DALL・E2 頑張れ!」と応援メッセージを述べ、動画を締めました。
[263] 【謝罪】北山くん、ごめんね。 <2022/11/27公開> いきなりお二方が頭を下げる仕草を見せる謝罪回。時系列に関する事実関係の誤り について語ります。 11月5日、広島大学東広島キャンパス「第16回 ホームカミングデー」で講演を行った先生。「プレバト!!」に出演するジャニーズ・Kis-My-Ft2のメンバーが切磋琢磨している姿勢をテレビを通じて10~20代に伝える姿勢が嬉しいと語ったようです。その話の中で、「プレバト!!」の俳句コーナーで一番最初に出演したキスマイメンバーが横尾君 だと述べた 先生。才能アリだったため、その記憶を鮮明に覚えていると言います。 ①【横尾渉(Kis-My-Ft2) 】の「サングラス外して対す海の青 」が2015年7月 に初挑戦した際の一句。ジャニーズの顔はみな同じに見えていたと振り返る先生。ジャニーズメンバーで、このような整った俳句を作れることに感心し、鮮烈な記憶になっていたと言います。キスマイとの出会いとして先生の脳裏に刻まれた出来事です。しかし、その事実関係に間違いがある との指摘を受け、この動画撮影に至ったという経緯を述べます。 先生が事務所に戻った後、過去の番組素材などを確認したスタッフの皆さん。その結果、「プレバト!!」俳句コーナーで最初に出演したキスマイメンバーは北山さんであると確認した ことを述べ、ファンの皆さんに訂正をします。 先生は、北山さんが最初に出演した際の俳句の印象はスカイツリーを詠んだ「634(むさし)」の一句だと言います。北山さんが2番目に登場した際に詠んだ句でした。 ②【北山宏光(Kis-My-Ft2) 】「高めから紫陽花覗く俺634 (むさし)」は当時才能ナシ査定を受けた一句は2015年6月 放送。ここから5か月前の2015年1月 22日に北山さんが初登場しています。才能ナシ査定だと多くは印象に残らないそうですが、とてつもなく下手くそなものは時々記憶に残っている と語る先生。 ③【北山宏光(Kis-My-Ft2) 】「ポロポロと食べ放題だ雪あられ 」が初登場時の俳句だと紹介。先生は笑いながら「なかったことにしたい」と述べます。 最後に先生は北山さんの印象を述べます。コツコツ型で、特待生認定まで時間が掛かり、特待生認定後もコツコツと努力をする姿勢を見せている と言います。さらに、2022年11月24日放送回でオンエアされましたが、先生の添削後に「失敗する時は季語以外のところに情報を入れすぎていることに今回気付いた 」と先生に直接コメントしました。先生は「学ぶ姿勢が素晴らしい」と本人に返しています。「先生は愛を持ってみている」と家藤さんがフォローしますが、キスマイファンに改めて謝罪しました。
[264] 【添削】プレバト!!ではすごい考えて添削をしている? <2022/12/4公開> 解説用ホワイトボードを後ろに用意し、「プレバト!!」での俳句添削コーナーの補足を行う今回。2022年11月10日放送の俳句の兼題「ドライブスルー」で詠まれたFUJIWARAの藤本敏史名人の句を取り上げ、
助詞「で」・「に」 について解説します。
【
藤本敏史 (FUJIWARA)】「
時雨るるやジュニアシートで待つポテト 」。添削の対象は2か所で、
上五の「や」と中七の「で 」 。季語「時雨」をさらにリアルに主役に押し出すため、先生が添削を行いました。助詞「で」の用法も放送で触れています。
放送ではカットされましたが、
3年前(2019年3月14日放送)に詠まれた句と同じ助詞「で 」の失敗をしていたことを先生と本人が解説中に話題として取り上げていた そう(ちなみに「
独り酒妻はこたつ で 昏々と 」でも失敗したため、今回の句で3度目の失敗)。その当時の句は以下の通り。
【
藤本敏史 (FUJIWARA)】「
おぼろ夜や荷馬車で眠る象使い 」。3年より前の句の印象だと先生は振り返ります。
助詞について、2020年の動画[13]でも解説をされている先生は、当時も取り上げた学習に持ってこいというべき句を紹介します。
◇「
米洗ふ前●蛍の二つ三つ 」。●に助詞が一音入ります。例句は「
米洗ふ前 に 蛍の二つ三つ 」ですが、作者の師匠に助詞の間違いを指摘されて作り直すというエピソードがあります。そこで、「
米洗ふ前 へ 蛍の二つ三つ 」「
米洗ふ前 を 蛍の二つ三つ 」と助詞を変えてみると句の意味が変わるという解説を行いました。
今回は藤本名人の句に倣い、「
で 」にした場合を考えます。
◇「
米洗ふ前 で 蛍の二つ三つ 」は、どのような意味になるのかを考えます。助詞にも場所を示す・手段を示すなど用法は様々ありますが、今回は場所を示す助詞「で」「に」について、解説ボードにまとめを貼ります。例句の「で」も前という場所を表す意味として成立すると解説します。ただ、俳句として成立するかは別問題で、
「この句の場合は"に"だ」など俳人の感覚によるものがあると先生は提起し、「しっくりくる」など漠然と考えていることがある と家藤さんが同意します。体系立てる、理屈で説明することを今回は試みます。
<<場所を示す助詞>> 「で 」 活動 の 場所を示す動作 のニュアンス 「動 」「米洗ふ前で 蛍の…」 蛍が活動して飛んで いる。 「に 」 持続行為 の行われる 場所を示す存在 のニュアンス 「静 」「米洗ふ前に 蛍の…」 蛍がただ止まって いる。
「プレバト!!」の放送時間内では、文法を長々と説明できない事情を明かす先生。時々気合を入れて
名人らに文法事項を説明しても、放送では綺麗にカットされてしまう世知辛さ を述べます。その反応を示すバロメーターが司会の浜田氏で、「いつまでやるの?」と顎を外すような表情を見せるそうです。しかし、要点は何とか伝えるため、様々な工夫を凝らすと述べる先生。俳句コーナーが開始した当初、"
切れ "を説明する際に大変悩んだそうで、初心者だらけの出演者のみならず、スタッフまでも顔がポカンとしてしまったよう。先生は色々と考えた末、「
ここで映像としてカットが切り替わる 」という表現を思いついたそうです。
さて、本題に戻ります。先生は、助詞「で」「に」の違いを示すため、
「で」は動的な表現 ・
「に」は静的な表現 が後ろに続くという対比構造が分かりやすいと考え、放送中に説明しています。
藤本名人の句の場合、以下のように比較できます。
原句「荷馬車で 眠る 」 ☟ 添削「荷馬車に 眠る 」 続く動詞「眠る」が静かな持続行為 となり、 助詞「で」が障るため「に」に添削
原句「ジュニアシートで 待つ 」 ☟ 添削「ジュニアシートに 待つ 」 「暴れる」「喧嘩する」と動的な動詞 が続けば「で」で良いが、 持続行為「待つ」が静的な動詞 のため助詞「に」に添削
「で」が動的な動詞 、
「に」が静的な動詞 という先生が編み出したオリジナルの表現が、放送でカットされずに解説がオンエアされただけでも「やった~」の気持ちが強いと先生は率直の感想を述べます。
サラッと添削をしているようでいて、実は相当努力している と家藤さんが述べます。先生は、その苦心惨憺(さんたん)としているさまを視聴者の皆さんに理解していただきたいとした上、自身のために補足した感じだと総括しました。
[265] 【穴場の投句先】競争率の低いところに投句したい <2022/12/11公開> 夏井先生に寄せられる初心者の質問「俳句を始めたがどこに投句したらよいか? 」に答えます。競争率の低い"穴場 "の投句先を紹介しますが、「数が少ないゆえに難しい」と先生は前置きします。 今回取り上げるのは『発掘忌日季語辞典 』(はっくつきじつきごじてん)。歳時記に載る人事・生活ジャンルの忌日季語を俳人は"忌(き)もの"と称すこともあるようです。忌日季語は、著名な人物の命日を季語とするもの です。 既に歳時記に載っている忌日季語として、俳人・正岡子規(まさおかしき)の「子規忌 」(9月19日)を先生は挙げます。傍題季語に「糸瓜忌 (へちまき)」(辞世三句の糸瓜より)、「獺祭忌 (だっさいき)」(病床に物を並べる癖が、カワウソが巣に獲物を並べる習性に似ていたことから)を紹介。さらに、文豪・芥川龍之介、太宰治も忌日季語だと家藤さんが紹介します。 先生は、忌日季語になる条件を述べます。多くの日本人に知られるほど有名な名前であり、人物が遺した作品・業績・人柄などを共有できること を挙げます。 さて、ここで本題に戻ります。『発掘忌日季語辞典』は忌日を新たに"発掘"する という先生からの提案だと言います。昔に比べて情報網が発達した現代は、様々な情報を共有できるため、著名人が亡くなった場合、忌日が増えやすい環境だと予測した先生。今後増えていくであろう忌日季語をみんなで発掘し、さらに良い句を詠むことで、その忌日季語を提案していく試みだと述べます。 元々は、俳句の季刊誌『俳句α(あるふぁ) 』での連載企画としてスタートしたことを思い出した先生。第1回の掲載に出稿したのが「おそ松くん忌 」(赤塚不二夫作品)でした。六つ子の主人公でお馴染みですが、作中で死亡していた事実に衝撃を受けたことを述べる先生は、そのことを教えてくれたのが家藤さんの奥さんだと告げ、その場で先生はカメラ奥で見守るご本人に確認を取ります。作中で六つ子全員が同じ日にフグ毒で死ぬものの、肝心の忌日がいつかは覚えておらず、忌日は季節感が非常に薄い ことを付け加える先生です。 この連載スタート号が、奇しくも金子兜太 (かねことうた)氏の追悼号のタイミングとなり、堂々と「おそ松くん忌」を掲載したことに関して、先生は笑いながら見解を述べますが、「スタッフから怒られなかったか?」などと心配しつつ謝罪する家藤さんに対し、「兜太先生は笑って許してくれる」「兜太先生と良い忌日の取り合わせに思う」と述べる夏井先生。 現在は『俳句α(あるふぁ)』は紙媒体が廃刊 となり、デジタル版で同企画が閲覧可能 です。コツコツやれば『発掘忌日季語辞典』として一冊の主義主張になると思っていた矢先の廃刊の知らせに落胆した先生でしたが、デジタル版で連載が続くことでライフワークの一つとなっていると述べます。紙媒体廃刊を契機に投句者が減少したため、"穴場"の投句先 だと紹介したのです。 最近募集された「さくらももこ忌 」は、投句する読者の方の熱いリクエストによるものだそう。過去の文豪に限らず、最近亡くなられた方も対象になるようで、先生は「忌日」が「人事・生活」から1つのジャンルとして独立する可能性もあると述べます。 また、忌日の対象は人物に限らない とも述べる先生は、「百円札忌 」を挙げます。百円札を手にしたことがないと述べる家藤さんに驚く先生は、実家の整理の際に板垣退助の肖像画の百円札を見つけたことを述べます。ここで、百円札のデザインの変遷と歴史について熱く語る先生は、兼題募集の際に日本の貨幣の歴史を下調べしたと述べ、知識がないと選句できないと家藤さんが共感します。 デジタル版では過去のアーカイブを一時的に読むことが可能。この時は第3回の兼題「オオカミ忌 」。「狼」も季語ですが、ここでは絶滅した動物種「ニホンオオカミ」を指すようです。俳人・渡辺誠一郎氏がニホンオオカミの絶滅について話されたことをきっかけに行われたよう。投句者も様々な知識・情報を寄せていたようで、先生はチームのようだったと言います。俳号【次郎の飼い主 】氏の姉より、図書館で読まれた本の記述から「ニホンオオカミは絶滅してない」と企画趣旨を真っ向から否定する情報を投稿。この時の顛末を先生は掲載でまとめています。「絶滅した証拠がない」ことが一つの要因で、当企画の趣旨の在り方についてまで意見を広げる先生です。 最新の募集兼題は、国境なき医師団としてアフガニスタンで活躍された「中村哲忌 (なかむらてつき)」(12/28〆切)です。『発掘忌日季語辞典』の発音に苦戦するお二方でしたが、是非投句してほしいと述べました。
[266] 【尻二字三角パス】皆さんから届いた『がさ』で始まる俳句 <2022/12/18公開> 動画[247]の第5回尻二字三角パスのコメント欄 に寄せられた「がさ 」で始まる優秀作 ・怪作の紹介。ローゼン千津氏も音声のみ参加です。先生は、真面目に詠まれたものが多いと今回の総評を述べます。入選句はお二方の後ろにあるホワイトボードに縦一行に書かれた短冊が貼られていきます。次回のゼロ番句候補 となります。 ①【羽流 】氏の「ガサ入れは隣や秋の夜のマテ茶 」。"マテ茶"は動画[246]でも話題となったワードで挨拶句の意図が読み取れます。尻二字は「てちゃ 」です。ここで話題は尻二字の決め方について。「ビール」の尻二字は「いる」 (長音はその読みを優先する)になりますが、「麦酒」と書いてルビ「ビール」の場合はどちらの読みを認めるかなど、尻二字の決定方法について視聴者も疑問を感じていたようです。先生は、まどろっこしいものは候補句に入れない と結論を述べます。 ②【広島じょーかーず 】氏の「ガサえびや甘みで溢れ頬落ちる 」。「ガサえび」が初耳だと述べる先生は、上五は殊勲賞だが下五は下手だと素直に述べます。ガサエビは幻のエビ(シャコエビ)と呼ばれ、青森から島根に跨ぐ日本海で水揚げされるそうです。尻二字は「ちる 」。 ③【迫田妙子 】氏の「画才ある姉の礼状梨二つ 」。画材の有無について姉妹で比べるおは姉妹あるあるだと述べる先生。梨も大きい梨を想像できると続けます。尻二字は「たつ 」。 ④【北藤詩旦 】氏の「画才あらば春月に羽描き加ふ 」。春月に羽を描き加える発想がカッコいいと評す先生。歴史的仮名遣いですが、音を優先するため尻二字は「わう 」です。 ⑤【野菜α 】氏の「ガサゴソと0点詰める夜寒かな 」。某漫画「のび太」君に見られそうな隠したい物がある光景です。「0点」の経験に話題が広がりますが、「詰める」「夜寒」の取り合わせの良さに触れます。尻二字は「かな 」。 ⑥【キスマイファン マッサン 】氏の「ガサガサと大道具撤去して秋 」。俳号から「大道具撤去」の光景にリアリティがあると評す先生に続き、「秋」の季語が良いと褒める家藤さんは、舞台で大道具が撤収されるぽっかり感が表現されていると述べます。美術や技術の仕事ぶりの凄さにも言及します。尻二字は「あき 」。 ⑦【初めての正助 】氏の「ガサガサは砂利しか獲れず夏や朝 」。"ガサガサ"が何かについて議論になりますが、作者曰く「多摩川で小学校の時ガサガサの授業を受けた。結局砂利しか獲れなかったことを思い出した」。網で獲る水棲生物のガサガサのようです。下五に手慣れを感じると述べる先生。尻二字は「あさ 」。 ⑧【ヨシコ ウサミ 】氏の「がさつなる女の冷蔵庫にブラ 」。涼みたい夏の光景として共感できると述べるローゼン氏。ブラをどのように冷蔵庫に入れているのか、「がさつ」な女性の仕草に連想が止まらない先生とローゼン氏です。尻二字は「ぶら 」。 ➈【熊の谷のまさる 】氏の「臥蚕眉の関羽のやうな甘藷 」。上五「がさんび」、中七「かんう」、下五「さつまいも」です。「関羽」は中国の武将ですが、上五は蚕が伏せたような太く逞しい眉を意味しており、それを甘藷の比喩としています。尻二字は「いも 」。 ⑩【池之端モルト 】氏の「ガサ越ゆる荷役のヤクや凍てゆるむ 」。「ガサ」はブータン北西部のヒマラヤ山脈の地名、中七「にえき」。立派に出来ている一句だと評します。尻二字は「るむ 」。 ⑪【Y.イノウエ 】氏の「ガサゾンの砂利道抜けて冬隣 」。「ガサゾン」はブータン北西部ガサにある城で17世紀に北方の防衛を目的に作られたそう。先生は「砂利道」から砦のような城がイメージ出来ると述べます。尻二字は「なり 」。 ⑫【オコヤマ2000 】氏の「がさついた地丘白粉花窄む 」。中七は「ちきゅう」、季語は「おしろいばな」、下五「すぼむ」です。「地丘」について、前半で戦火や荒涼とした場所を連想するお二方ですが、ローゼン氏が「手相」で手首に近い掌の箇所だと助け舟を出します。そう分かれば「白粉花」との距離感が近いと評す先生。尻二字は「ぼむ 」。 ⑬【田野こみち 】氏の「蛾さわさわ過るキャンプの夜の便所 」。最後の「便所」の押さえが良く、光景がリアルで大変共感できると評します。尻二字「んじょ 」は難易度が高めです。 ⑭【平良かれい 】氏の「蛾三匹養うために読む図鑑 」。綺麗な蛾を飼う目的で図鑑を読むことを想像。先生は『少年の日の思い出』という国語の教科書の定番の物語を挙げます。尻二字は「かん 」。 ⑮【小野とらのは 】氏の「が、去るとき何を思うや曼殊沙華 」。前の文脈があり、接続詞として「が」を用いているテクニックがあります。尻二字は「しゃげ 」。 ⑯【まゆバア 】氏の「ガサージャは名コメディアン春の暮 」。「ガサージャ」はブエノスアイレスでスペイン語で話すコント師で、作者は在5年で笑えるようになったとのこと。ローゼン氏もアメリカに在12年で英語のギャグに笑えるほど耳が慣れたそうです。尻二字は「くれ 」。 最後に、尻二字を全員で確認します。この中から次回のゼロ番句が決定 するようです。
[267] 【第6回尻二字三角パス①】また正人に尻二字「ん◯」が当たります <2022/12/25公開> 動画[245]~[247]以来の
第6回尻二字三角パス 実践編。前回の動画[266]で「
がさ 」から始まるゼロ番句候補を16句紹介しました。声のみ参加のゲスト・ローゼン氏を加えて今回も3人で行います。順番は前回に引き続きじゃんけんで決定し、家藤さん→夏井先生→ローゼンさんの順に。運命のゼロ番句は3番目担当のローゼンさんが引き、【
熊の谷のまさる 】氏の「
臥蚕眉の関羽のような甘藷 」に決定します。尻二字は「
いも 」です。
[0]
「いも」は候補が多く、逆に作りにくい可能性 を述べます。「○○芋」の季語も多いですが、意地として作りたくないと述べる先生。「プレバト!!」で「はしご芋」を詠まれた人物に困惑したと言います。
[1]里芋を指す「芋」を今回比喩のため、夏の季語「蝮」を季語としています。ここで話題は、蝮を見たことがあるかについて。見た経験がないと述べる家藤さんに対し、蝮酒を飲んだことがあると述べる先生。ローゼンさんは
ヘビの抜け殻を缶に入れて集めていた幼少の頃 を語ります。動物の世話・ままごとと並行して行っていたそうで、『
少年少女世界文学全集 』を買い出すまで姉妹の接点がほぼ無かったと述べ、それがなければ家族全員が俳句の道に入ってなかった可能性を挙げます。本棚に数十巻あり、夢中で読んだそうです。
[2]「鉄床雲(かなとこぐも)」は積乱雲のことで、気象学者・
荒木健太郎氏 が最も好きな雲とのこと。荒木先生杯も構想中だと述べるお二方。家藤さんは、対流圏の上層に達すると雲が圏界面で横に広がることで、鉄床のように見える雲だと説明します。NHK Eテレ「サイエンスZERO」の企画「575でカガク!」(兼題:エアロゾル、2022年11月27日放送)の専門家として登場した荒木健太郎氏の著書
『すごすぎる天気の図鑑』『もっとすごすぎる天気の図鑑』 (角川出版)を紹介し、可愛らしいイラスト「パーセルくん」も取り上げます。クールな面白さがあったと荒木氏の人柄を先生は述べます。以前、
『夏井いつきの「雪」の歳時記』 (世界文化社)編集の取材で荒木氏を訪れたローゼンさんは「凄く正人に似ていた」と印象を述べます。「575でカガク!」で憧れの荒木先生に会えた夏井親子の様子にスタッフが驚いていたようです。紹介した3冊を俳句を貼るホワイトボードに並べて置きます。
[3]「鳴神」は雷を指す天文季語。尻二字「
んで 」に苦戦する家藤さんは、第四回の動画[182]で夏井先生の「寒夜」で終わる句を回され、「んや」から始まる啖呵を切るような句を作ったことを思い出します。ローゼンさんは先生同様に筆ペンで句を書くことを述べます。慣れていなかった頃、
筆で書くことが苦手だった先生は、何でもかんでも筆ペンで書いて慣れてしまった と述べます。ローゼン氏は先生の画才の才能について話題にし、先生が絵について語り出します。郵便局に送った荒獅子をモチーフにした判子の絵、昔の五右衛門風呂の窓から見た母屋と庇の光景の遠近感の表現などを述べます。「できた!」の掛け声と共に俳句を貼る家藤さん。動画は次回に続くようです。
※今回詠まれた俳句は以下の通りです。
0 臥蚕眉の関羽のやうな甘藷 いも 熊の谷のまさる 1 芋 呑んだやうな蝮のぬめりかな かな 正人 2 鉄 床雲ぐんぐん世界は奇形なる なる いつき 3 鳴 神や犬小屋に頭つつこんで んで 朗善 ▼以下、次回動画に続く
→2023年分の記事はこちら をご覧下さい。
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