「プレバト!!」で披露されたエッセイスト 犬山紙子の全俳句一覧です。
特待生3級 犬山紙子(いぬやまかみこ) 合計24句
成績(2023年10月12日時点) <通常挑戦者時代>
才能アリ 4回
(うち特待生陥落後1回) 、
凡人 2回、
才能ナシ 3回
第5回炎帝戦優勝 、
第5回冬麗戦10位 <特待生時代>
1ランク昇格 2回、
現状維持 1回、
1ランク降格 1回
(うち特待生陥落1回) 第6回炎帝戦2位、 第6回金秋戦予選A5位(最下位)、第6回冬麗戦7位 第7回春光戦予選A3位、 浜田杯13位、第7回金秋戦予選3位 ・決勝9位 ふるさと戦(写真俳句)で
大阪編6位(最下位)、福島編5位(最下位) ●昇格率 50.0 %(2/4) →50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ →
人物紹介 ◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 才能ナシ チューリップネットに上げる女の業 2 才能ナシ 三十路越え滝に近づき保湿する 3 才能アリ 故郷の干物ゆらめく溽暑かな 4 凡人 桜冷え子の眼と頬に萌ゆるあか 5 凡人 新緑が居場所奪った君の陰 6 炎帝⑤1位 日盛りや母の二の腕は静謐 7 才能ナシ 血は細く指先紙で夏醒める 8 才能アリ 朝寒や唐揚げ渡す火傷の手 9 冬麗⑤10位 箱の角亡き犬の毛や垂り雪 10 才能アリ 菜の花を切って美容院に電話 11 1ランク降格 (特待生剥奪) 午後も片乳出したまま窓は初夏 12 才能アリ 喪服着てメロンソーダの列に居る 13 炎帝⑥2位 恋を終わらせ平日の海月見る 14 1ランク昇格 私のいない部屋長生きの金魚 15 金秋⑥予選A5位 稲妻やタートルネック子に着せる 16 ふるさと戦(大阪)6位 お釣り百万円龍淵に潜む 17 ふるさと戦(福島)5位 秋色や窓ガラスから宇宙から 18 冬麗⑥7位 一月の銀座でおそろいの遅刻 19 現状維持 福豆拾い子のコップで晩酌 20 春光⑦予選A3位 春光やルーズソックスすべて干す 21 浜田杯13位 辞表書きダウンタウンを見る五月 22 1ランク昇格 Gペンにこびりつく黒夜食喰う 23 金秋⑦予選3位 発熱の母月光の車椅子 24 金秋⑦決勝9位 別れるはずだったのに月が綺麗
▼人物紹介 「プレバト!!」では2016年に俳句査定に挑戦した人気エッセイスト。最近は昼の情報番組のコメンテーターも務めるなど多方面での活躍も見せる。
句の特徴は、素の感情を表現する描写力。描写よりも心境に寄せた句が多いが、凡人査定でも本人の表現意図が独創的だと褒められることが多い。初期こそ大叱責を食らってしまうが、才能アリ獲得時の俳句は大変良く、一発ホームランとなることもある。文豪だけあって、論理的に話す能力には長けている印象がある。
初挑戦の段階でエッセイを10冊以上出版していたためか期待されたが、2回連続才能ナシ査定で先生から「真面目にやっていない」と大目玉を食らっている。その後、姑から歳時記が贈られたことを明かし、汚名返上を狙う3度目に見事才能アリを獲得。1位と発表された瞬間「お義母さん、やったよ!」と思わず喜んだ。
また2017年1月に女児を出産。それ以降、感受性が芽生えまくっていると語るも4度目の出演は凡人査定に。
5度目の挑戦も凡人査定となるが、同時出演した当時の体操のお兄さん・小林よしひさの人気体操「ブンバ・ボーン」に2歳の娘が大ファンであることを明かして紹介すると、決めポーズのバック転を小林氏に披露してもらい感無量になる場面も。
そして、2年以上のブランクを開けての登場は、2021年の炎帝戦。才能アリ獲得者が参加資格を持つ初めてのタイトル戦で60名の投句者の一角として挑戦。非特待生として唯一上位10名に残り、本戦出場を決める。周囲に「雑魚だと思われている」という重圧の中、東国原永世名人から「一見さん」「通りすがり」とまで言われる始末であったが、何と全ての名人を倒して優勝するという下克上を達成し、強烈なインパクトを与えた。
1か月後、タイトル保持者として満を持して特待生認定を懸けた通常回査定に登場。しかし、まさかの才能ナシ査定を喰らい、優勝句はうっかりホームランでの一句だったことを証明してしまった。
そして、リベンジを懸けた査定で2度目の才能アリを獲得。しかし、東国原名人に炎帝戦優勝句と型が同じだと暴露され、先生からも「まだ信用していない」と宣告を受ける。様々な型を使いこなすことが特待生認定の最低条件とされた。
炎帝戦優勝句が年間優秀句に認められて出場した第5回冬麗戦では、段位なしながら10位に滑り込み、爪痕を残した。
そして、初登場から苦節6年、肩の力を抜いた句が夏井先生に称賛され、武田鉄矢に続く通算33人目・筒井真理子に続く女性10人目の特待生に認定された。通常挑戦者時代にタイトル戦への参加実績かつ優勝経験のある初の特待生でもある。
1か月後に満を持して特待生査定に登場したが、まさかの降格査定で通常挑戦者に陥落。陥落は羽田圭介、光浦靖子に続く3人目である。発想力の良さは褒められたが、時々大ボケをかます安定感のなさが課題。波瀾万丈な成績を遂げているともいえる。
そして、さらに1か月後の査定では、今年のトップタイの得点・75点をたたき出して才能アリを獲得。番組初の特待生再認定となった。
続くタイトル戦で炎帝戦は連覇とならなかったものの、2位と大健闘。東国原名人から常にライバル視されるほど、手強い存在感を示している。
一方、第6回金秋戦では予選最下位と振るわず、続く「ふるさと戦」企画でも出身の大阪編を含む2部門連続で最下位となるなど、調子を落としている。
2023年の第7回金秋戦では初めてとなる予選通過を果たすが、決勝では9位に屈している。
● [1] @16/04/21◆お題:チューリップと遠足
『チューリップネットに上げる女の業 』 才能ナシ5位(最下位) 25点
添削後
『可 愛 い ふ り し て S N S のチューリップ 』 季語は「チューリップ」。チューリップを撮影した楽しそうな画像をインターネットのSNSに上げる行為に嫉妬心を持つという句。先生は「女の業」の意味が説明されないとわからないため才能ナシ査定だったと告げる。字余りになるが、「可愛い振りして」のセリフに嫉妬的根性を込めることを提案する先生は、後半を「SNSのチューリップ」で映像が確保するよう添削。しかし、このような根性を俳句に書くことを思う人は珍しいと発想の方向性を褒め、添削後であれば順位は何人も抜いて上に行けると解説した。
● [2] @16/05/26◆お題:五月 日光・華厳の滝
『三十路 (みそじ) 越え滝に近づき保湿する 』才能ナシ5位(最下位) 30点
添削後
『滝し ぶ き 三十路の 肌 を 潤 わ せ 』 季語は「滝」。句が発表された瞬間に特待生らがウンザリ。フジモンに「笑いを取りに行っている」と窘められ、東国原に「俳句は文学・哲学・詩であって、これは女性誌に書いてある新しい保湿の仕方」だと馬鹿にされる。先生は「久しぶりにムッとする句」だと怒り心頭で「みんな真面目にやってるんで」と本気で叱責する始末。思いに共感する女性はいるかもしれないと理解を一部示すが、最も腹立たしい点は、季語「滝」を主役として描くべきところを、三十路女の保湿器呼ばわりされる点で、この展開が季語に対して失礼極まりないと述べる。苛立たしい「に近づき」を3回消す先生は「滝しぶき」とし、腹立たしい下五も消す。上五「越え」もどうでもよいと語る先生は「の肌を」を加える。「保湿」が普通の言葉となるため、「潤わせ」と上品さを出した。添削例に一同は「良い」と唸るが、先生はあきれ気味に「良いことない」と反論。2回目の最下位を獲ったが、「でも最下位は降格がないからよい。それ以上下がないから」と前回2度目の降格を経験した東国原にフォローされた。
● [3] @16/07/14◆お題:夏の海とバス
『故郷の干物ゆらめく溽暑 かな 』才能アリ1位 72点
添削なし
季語は「溽暑(じょくしょ)」。兼題写真にある海辺の道路を走る路線バス。そのカーブの曲がった先を想像すると、臭い干物が干されるイメージが浮かび、姑から貰った歳時記で季語を調べ、干物がかげろうのようにゆらゆらする感じを書いたと語った。「作者が分かってビックリしているのは私が一番。嘘だろ?」と仰天する先生は、本当に上手いと評す。兼題写真から中七までの光景を思い描いたのが偉く、さらに蒸し暑さを表す「溽暑」によって、故郷が単純に懐かしいだけのものではなく複雑が思いがあることを示唆すると分析する。良いことも嫌なこともあるが、帰りたいような帰りたくないような、ムシムシとした心理状態を想像できると解説。単純ではない複雑な思いを季語に託すことは季語を信じていないと出来ないと述べる。まだ疑っている先生に「何を食ってこんなに上手になったんだ?」と投げかけられた本人は、「先生に(前回)『季語をナメてる』と怒られた。季語を大事にしようとそれを一番に考えた」と答え、思わず先生は拍手して「お見事」な一句と絶賛した。
● [4] @18/03/29◆お題:入学式と桜
『桜冷え子の眼と頬に萌ゆるあか 』 凡人3位 55点
添削後
『花 冷えや 巣 立 ち ゆ く 子の頰 あかし 』 『花 冷えや 巣 立 ち ゆ く 子の眼 (まなこ) 美 (は) し 』 季語は「桜冷え」。独り立ちする子を送り出す親の気持ちは、寒い中不安な感情であるが、子の目と頬は赤く萌えて過ぎ去っていく様子だと語った。先生は、凡人的発想の中に下五を少し工夫したタイプの句だと前置き。何らかの詩を表現する意図が感じ取れたためプラス5点にしたと述べると、「やった!」と喜ぶ本人。頬は燃えていると分かるが「萌ゆるあか」が抽象的なため、本人の工夫した下五を先生は早速消してしまう。さらに、「眼」「頬」の二つを入れることでどちらも中途半端になると指摘し、焦点をどちらかに絞るべきだと指南する。季語は「花冷(はなびえ)や」で上五を整え、ありきたりな表現ではあるが「巣立ちゆく」で人物の年齢を想像できるように添削し、下五で二例挙げる。焦点を「頬」に当てる場合「あかし」とすれば、巣立つ気持ちを持つ子は花冷えの中で頬が赤いことが伝わると解説。「眼(まなこ)」に焦点を当てる場合は古語表現の「美(は)し」として、何と美しい凛々しい眼だろうと読める添削を行った。※「美(い)し」の場合は「優れている」の意味。
● [5] @19/05/23◆お題:
5月の昼休み[新緑のキッチンカー] 『新緑が居場所奪った君の陰 』 凡人3位 55点
添削後
『新緑の眩 し 鬱 々 た る 君に 』 季語は「新緑」。兼題写真を見て憂鬱な気持ちになったという本人。写真を撮ってる場所からワイワイ楽しそうな人との距離を感じていまい、あの場所に混ざれない気持ちを詠んだと語った。梅沢名人は「中七がわけが分かんない。どこの居場所を奪ったんだ?」と厳しい口調で語ると、本人は「心の居場所的な」と補足。柴田理恵は「君の陰」の「陰」が、心の影ではなく、実際の暗がりの陰のようだと指摘し、先生も各意見に同調。先生は作者の意図が字面で表現されていないと評す。中七は、新緑が広がったため居場所が物理的になくなったと誤読される可能性を指摘し、「陰」の1字で憂鬱な気持ちを表現するのは無理があると述べる。しかし、非常に繊細な感覚はとても良く、核に良いものがあるが、表現の仕方が間違っているタイプの句と語る。中七の説明を消す先生は、「の眩し」で一度言い切り、「陰」ではなく鬱々とした心情だと書くしかないと指南して、「鬱」の字を書く。書いた字が正しいか心配になる先生だが、急に「鬱」の字へズームインされたため「アップしない」とカメラマンに忠告。「鬱々たる君に」として倒置法で添削し、作者の繊細な感覚がそのまま句に入ると語って収めた。添削後に納得した本人は、「こんなに変わるんだ」と驚いていた。
● [6] @21/07/22◆お題:
Tシャツ 『日盛りや母の二の腕は静謐 (せいひつ) 』 第5回炎帝戦優勝(60名中) 添削なし
季語は「日盛り」。20代の頃に難病を患う母を介護した実体験からの一句。炎天下に実家に行き、寝室に横たわる母のTシャツから覗くように出る腕を触るとヒンヤリとしていた。平安で外の世界と全く違い、凄く安らかな感じがしたことを思い出して詠んだと語った。梅沢名人は「大した女だね」と平場優勝に祝辞を贈る。先生は驚いた作品だと評す。型は季語+「や」+12音の破調の調べで、母の二の腕は確かにTシャツから見えるものに違いなく、ひんやりと白く見えると語り、「見事によく企んだ」と称賛。「母」の年齢をどう想像するかで読みが大きく変わる句だと解説する先生。母はご年配で「静謐」はあきらめの入った人生の安らぎを最初は感じたが、子どもを突き放しているかのような冷たい表情や静けさなどを持った母かもしれない読みもあると述べ、「読めば読むほど奥行きが深くなる一句で、短編小説が書ける気すらした」と独自の解釈を広げて語る。作者に興味を持っていたが、特待生でもない人物の1位に仰天して啞然となったという先生。俳句は短いため、振ってみたら当たったというのが絶対あり、"うっかりホームラン"だとしたらとんでもなく良く飛んだ見事なホームランと総評を語った。疑り深い先生は、もう1回見てから考えたいとし、今回の特待生認定はお預けとなったものの、全ての特待生・名人を抑えてのタイトル戦優勝という前代未聞の大番狂わせを達成し、爪痕を残した。本人は「お義母さん、やったよ!」とトロフィーを貰って喜んだ。
● [7] @21/08/26◆お題:
宿題 『血は細く指先紙で夏醒める 』 才能ナシ3位 37点
添削後
『紙で切 る指や そ の 血に 醒める夏 』 季語は「夏」。宿題提出の期日が迫り、追い込む際に、ピッと紙の端で指を切ってしまい、その痛みで夏の夢中な気持ちや熱中していた気持ちが醒めることを詠んだと語った。梅沢名人は語順の悪さを指摘する。先生は、炎帝戦優勝が「うっかりホームランだったのかね~」と前回の句との出来の落差に驚きを隠せない。同じアベレージのものをずっと打ち続けることが出来るのが名人以上だと述べ、梅沢名人らを立てる先生。句が意図したい感覚的な部分は悪くないものの、語順のミスと内容が整理されずに分かりにくいという2点を指摘する。「血は細く」から始まると、すでに切り傷を負ったと読み手は思い、「指先」でその部位も分かるが、「紙で」とくると紙を切った場面に時間が巻き戻されてしまうと解説し、「で」も散文的だと指摘。「切る」の情報と切れ字「や」を入れ、語順を句またがりで整えるべきだと指南し、流れた血で夏が醒めた気がしたという意図を明確に書くべきとして大幅に添削した。季語「夏」を最後に置くことで季節への詠嘆が集まる効果を生むと解説し、最後に「炎帝戦の句が嘘だとは全く思っていないが、アベレージを上げる練習はしてきて欲しい」と本人に忠告した。名人らが褒められたことに浜田が言及すると、村上名人が「これ相当なことなんですよ」と自画自賛。「名人キープトークを一回流して欲しい」と述べ、名人で居続けることの陰の苦労を語ることに。
● [8] @21/10/14◆お題:
弁当の店頭販売 『朝寒や唐揚げ渡す火傷の手 』 才能アリ2位 70点
添削なし
季語は「朝寒」。知り合いの弁当屋のおばあちゃんがいるが、朝早くから揚げ物の仕込みをすることで手にやけどの痕がある。それが、むしろたくましい恰好良い手だったようなことを話した記憶から詠んだと語った。東国原名人は良い句としながらも、炎帝戦優勝句と同じ上五「や」+12音のフレーズの型だと述べ、置きに来た一句だと厳しく批評する。先生も、基本の型にもう1回きちっと入れてきたと評す。映像を持たない季語「朝寒」を「や」で詠嘆し、中七・下五でワンフレーズを作ることで、型と季語の力を信じているというタイプの句だと解説。「唐揚げ」という具体的な美味しそうなものから始まり、「渡す」の動作に続き、「火傷」で熱の印象を出し、最後の「手」で人物を出す語順も考えられていると述べ、「よく才能ナシからここまで修正してきた」と語った。しかし、特待生認定について、「これ以外の型にも繰り返しできるようになる気配がないとダメ。まだ信用してない!」と述べて今回の認定はお預け。この判断に本人は「厳しいな…」と率直に述べるも、炎帝戦敗北を根に持つ東国原名人は大きく頷いていた。
● [9] @22/01/13◆お題:
人生ゲーム 『箱の角 (すみ) 亡き犬の毛や垂り雪 』第5回冬麗戦10位(14名中) 添削後
『亡き犬の毛が 双 六 の箱の隅 』 季語は「垂(しず)り雪」。「コロッケ」という柴犬を昔飼っていたという本人。子どもの頃にやっていた人生ゲームの箱を開けると、その隅っこに当時の犬の毛が入っていて、ふわっと悲しみが溢れ出し、その気持ちを季語に乗せた句と語った。東国原名人は良いと絶賛し、梅沢名人も称賛するが、「角」の表記ミスを指摘する。先生は「やろうとしていることはとても良いが、小さなミスが少しある」と評し、俳句に盛るには材料が多いという点を指摘する。「亡き犬の毛」が感動の焦点となる物で、それと「垂り雪」を合わせるだけで一句になる分量は十分あるが、作者が本当に言いたいのは、箱を開けるとその隅に死んだ犬の毛があったという部分で、さらに「垂り雪」と取り合わせようとしたため、材料過多になったと解説する。2句に分ければどちらも良い句になると忠告。また、上五も問題で「角」を"かど"と読む人は一定数おり、箱のカドに亡き犬の毛が引っかかっているような映像に思われる可能性を示唆。新年の箱を開けるゲームで「双六」という季語を用いて添削するよう指南する。「亡き犬の毛が」と淡々と言った方が悲しみが深くなるとし、「双六の箱の隅」と添削した。「この分量を覚えたら、あなたは本物になれます」とエールを送り、本人も「いや~欲張り過ぎたな~っていうのもホントに感じたんですけど、本物になりたい!頑張ります」と意気込んでいた。
● [10] @22/04/21◆お題:
美容院 『菜の花を切って美容院に電話 』 才能アリ1位▸5級 72点
添削なし
季語は「菜の花」。料理で菜の花を切っていたら「ザクザク」という音とリズムで春を感じ、ふと「美容院そろそろ行かなきゃ」と思って電話を掛けた場面を詠んだ一句。先生は「読んでて気持ちが良い句」と評す。「菜の花」は本来、一面に咲いている光景を思い浮かべやすい季語だが、「を切って」の展開で料理とすぐに分かると述べる。ハッと思いついたように美容院に電話をするまでの展開が非常に軽やかで、句の語っていない部分が「切って」や「に電話」の後の余韻で詠み手が想像できると解説。「こういう句に出会うと嬉しい」とご満悦の先生は、遂に特待生認定を認めた。本人は「長かった~」と感無量な様子で喜んだ。
[ここから特待生として査定] ● [11] @22/05/12◆お題:
時計 『午後も片乳出したまま窓は初夏 』 通常挑戦者へ
1ランク降格 添削後
『窓は初夏寝 ぬ 子 と 授 乳 の 片乳と 』 季語は「初夏」。兼題写真の時計が昼過ぎを示すことから、自身の子へ授乳させた体験を思い出して詠んだ一句。寝付かない子へ授乳させるも、午後まで片乳を出しっぱなしで仕舞う気力もなく、昼寝をしてくれない家の中での恨めしさを出し、窓の初夏の美しい景色に将来は子供と山で遊びたいという期待を入れつつ詠んだと語った。梅沢名人は、タンクトップを着た変態ジジイが片乳を出しながら窓の初夏を眺める光景に読めると指摘。査定ポイントは「も」「まま」の言葉の使い方の是非。「誤解を招く!」と評す先生は梅沢名人の指摘に賛同する。「いやもうこれ、読んだ瞬間に困っちゃった」と率直に述べ、何のために片乳を出しているかが書かれてないため、梅沢名人のような「変態ジジイ」に誤読する人がいると指摘。母と子の情景を描きたければ、「授乳」というキーワードが必要だと忠告する。語順も「窓は初夏」から始めるべきと指南し、時間帯の「午後」、さらに助詞「も」、「出したまま」を削除。「寝ぬ子と」で母と子を連想させ、「授乳の片乳と」で光景を押さえる添削をした。最後に「発想はとても良いのに、時々とんでもない大ボケをかます。丁寧に小さい所を押さえていたら、やれる子ですから」と特待生から陥落した本人へ再起するよう促した。本人は失敗を素直に認め、リベンジを誓った。
[ここから再び通常挑戦者として査定] ● [12] @22/06/30◆お題:
キッチンカー 『喪服着てメロンソーダの列に居る 』 才能アリ1位▸5級 75点
添削なし
季語は「メロンソーダ」。炎帝戦で詠んだ母が急に亡くなり、スーパーで慌てて買った喪服に着替えて忙しい葬儀だったと述べる本人。葬儀では一人で悲しむ時間が持てず、自分の時間が欲しくなり、ショッピングセンターのメロンソーダの列に並んで、その時間だけ自分の時間を持てたという経験から詠んだと語った。藤本名人は、ポップなイメージの「メロンソーダ」と悲しい「葬儀」との対比が良いと褒める。「良い句だった」と褒める先生は、実体験がこの句になったことに感銘する。作者の体験を知らなくとも、リアリティが文字面から読者の胸に流れ込み、大袈裟な言葉を使うよりも淡々と書くことでより伝わった点を称賛。「喪服」の暗いイメージと「メロン」の明るいイメージ、黒とメロンの色の対比、心情の対比もさり気なく表現できていると評した。陥落後の1位獲得だったが、「ちゃんと修正してきましたから、もう一回特待生で頑張りましょう」と特待生再認定を許可。藤本名人から再剥奪を心配されるが、思わず顔を手で隠す本人は「こんなんあるんですか(笑)」と史上初の特待生再認定に嬉し泣きとなった。
[ここから再び特待生として査定] ● [13] @22/07/21◆お題:
メール 『恋を終わらせ平日の海月見る 』 第6回炎帝戦2位(58名中) 添削なし
季語は「海月」。付き合っていた人へ別れのメールを送信するも、気持ちはまだフワフワしていて、会社のある平日に休んで水族館に行き、クラゲを見て癒されるという句だと語った。「素晴らしい」と褒める梅沢名人は、説明がなくとも「水族館」に行ったことが分かるとコメント。藤本名人・ジュニア名人は「平日」の単語の良さを述べる。先生は、「メール」「携帯」という言葉がないが、読んだだけで別れのメールを送った後に、相手がまだ未読のままという宙ぶらりんの時間かも知れず、「平日」に「海月見る」で、傷心のままの有給休暇かもしれないという味わいを述べる。「海月」の季語が良く、揺れ動く失恋の心を冷ややかな、薄暗い空間が心を癒してくれ、「平日」「海月」の選択が効いていると解説。さらに、俳句で「見る」は不要なことが多いが、"海月をボーっと見ている。その海月の向こう側に今自分の心を見つめている。そういう時間でもある"と解釈でき、効果的な「見る」だと評した。連覇とはならなかったが、「夏の犬山」という肩書がナレーションで紹介されるほど存在感を示した。
● [14] @22/08/11◆お題:
金魚すくい 『私のいない部屋長生きの金魚 』 4級へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「金魚」。昔付き合った人と金魚すくいをし、その金魚を部屋に飼っていたが、今はもう別れてしまったため、自分が既にいない部屋に置かれた金魚がずっと生き続けている光景だと語った。査定ポイントは「私のいない部屋」という口語表現を選んだ是非。(口語表現が効果的)と評す先生は、破調のリズム・韻律をどう評価するかで意見は分かれる可能性を指摘するが、作者の意図として「私のいない部屋」「長生きしてる金魚」の対比がしっかり伝わる点を称賛。評価のポイントで、文語表現の場合は「我のいぬ部屋や長生きなる金魚」のようになり、意味は一緒だが呟きとしての生々しさが失せると解説。この場合は口語が正解だと句を認めるも、「相当悲しい人生を歩んできた人だと思う」と最後に一言放った。特待生降格へのトラウマを撥ね退け、見事に初昇格を決めた。
● [15] @22/09/01◆お題:
ファッションの秋 『稲妻やタートルネック子に着せる 』 第6回金秋戦予選A5位(最下位・予選敗退) 添削後
『稲妻の 夜 や一 枚 を 子に着せて 』 季語は「稲妻」「セーター」。秋の季語「稲妻」に家族的な意味合いを感じ、実りのある家族のイメージのある季語だと述べる本人。稲妻がピカッと光った時に、親は不安になり、秋には早いがタートルネックの下着を着せた不安な気持ちを詠んだ句と語った。先生は「具体的に書きすぎて失敗した」パターンだと評す。中七で冬のタートルネックのセーターを思い浮かべる人が大半だと指摘。具体的に書かないことで、季語「稲妻」を活かす方法として数詞「一枚」を用い、季語の描写として「夜」を入れた。「一枚」として布団や毛布など読者の想像に委ねることで得をすると指南。俳句は具体的に書くことでオリジナリティ・リアリティーを手にするのが定石だが、この句の場合は書きすぎて損をしたと解説した。
● [16] @22/09/22◆お題:
道頓堀(大阪府) 『お釣り百万円龍淵に潜む 』 ふるさと戦③(大阪)6位(最下位)★ 添削後
『た け な わ の 秋 や お釣りは 「 百万円! 」 』 季語「龍淵に潜む」は、中国の伝説「龍は春分に天に昇り、秋分に淵に潜む」を由来とする秋分の頃を表す季語。「お釣り百万円」という声が聞こえる道頓堀の活気と、少し先の「金龍ラーメン」の看板が水を司る龍として道頓堀の守り神にいてくれる気持ちを詠んだと語った。ジュニア名人は台詞に鍵括弧をつけるべきだと指摘。先生は難しい季語を用いた挑戦に言及し、春の時候の季語「龍天に登る」とセットとなると前置き。「お釣りは『百万円!』」と鍵括弧に加えて「!」マークをつける空気感でも良いと述べる。"写真俳句"として「龍淵に潜む」と言われると、大変景気の悪い大阪みたいな感じがするため、季語が似合わないと指摘し、季語を「秋」に変更。兼題写真の賑やかさに寄せるため、物事が一番盛り上がっている時を指す「たけなわ」から始めるよう忠告。明るさを持てば、俗な台詞も『百万円!』も写真の上で力を持つようになり、写真俳句として成立すると解説した。本人は「ごもっともですね。別の所でこの季語チャレンジします」と次回への意気込みを述べた。
● [17] @22/09/22◆お題:
磐梯吾妻レークライン(福島県) 『秋色や窓ガラスから宇宙から 』 ふるさと戦④(福島)5位(最下位)★ 添削後
『宇宙から紅 葉 見 え る と い ふ 話 』 季語は「秋色」。天も凄く高い福島の山々だと感じ、窓ガラスから景色をドライブしながら見ているが、気象衛星からも日本の紅葉の色づきが分かり、この景色が空の先の宇宙からも見えて繋がっている気持ちを込めたと語った。梅沢名人は「意味が分からない」、村上名人は「(大阪編の失敗と異なり)チャレンジが失敗した。『秋色』は紅葉だけではないためそう書くべき」と批評する。先生は「何を言いたいのか分からなかった」と評し、本人の話から添削を模索。村上名人の指摘に同意し、「紅葉」を書くべきで、「宇宙」に作者の意図が強くある点から「宇宙から紅葉(もみじ)」として添削を始める。「見えるといふ話」辺りで着地すれば、写真俳句として成立すると忠告。本人は「出直します」と反省した。
● [18] @23/01/12◆お題:
ラッキー 『一月の銀座でおそろいの遅刻 』 第6回冬麗戦7位(15名中) 添削後
『一月の銀座お互 いの遅刻』 『一月の銀座お互 い様 の遅刻 』 季語は「一月」。待ち合わせで遅刻してしまうも、相手も同じだけ遅刻する連絡が来て「ラッキー」だと思い、同じ時間感覚の人だと思う気持ちがあって詠んだと語った。志らく名人は「『おそろいの遅刻』がお洒落だが分かりにくい」と指摘。先生は、兼題に対してのエピソードは良いと褒める。問題点として散文的な助詞「で」と、中七のニュアンスの誤読の2点を指摘する。「おそろいの遅刻」のニュアンスが、双方が遅刻する意味の他、恋人同士の2人がお揃いで遅刻する、お揃いの服を着たペアルックが遅刻する意味にも取れると指摘。「お互い」と添削の正解をボソッと呟く浜田を、藤本名人が先生に褒めるよう促す。先生は「お互いの遅刻」あるいは字余りで「お互い様」の表現もアリだと忠告した。最後に7位と8位は句材の共感性で順位が入れ替わる可能性を補足した。
● [19] @23/02/02◆お題:
節分 『福豆拾い子のコップで晩酌 』 4級で
現状維持 添削後
『福豆を 拾い子のコップで晩酌 』 季語「福豆」は節分に撒く豆のこと。 節分の豆撒きではしゃいだ子が寝てしまった後の大人の時間に焦点を当てた一句。豆が散らかるテーブルを片付ける気力もなく、「これでいいわ」と子どもの小っちゃいキャラクターもののコップにお酒を入れて呑む時間を詠んだと語った。村上名人は破調の是非をコメントし、まさに査定ポイントは足して17音になる"破調"を選んだ是非に。「詰め込みすぎ」と評す先生は、上五「福豆拾い」が寸詰まりのため、何か別の行事を思う可能性を最初に指摘。助詞「を」を省いて17音に無理矢理入れたのが良くなかったと忠告する。また、「子のコップで晩酌」のみで十分俳句になるだけの可笑しみがあり、「福豆を拾い」「晩酌」でも遅く帰宅した人物の晩酌光景になるため、本来2句に分けるべき分量を17音に詰め込んだ点を指摘する。添削は「を」入れて誤読をなくし、字余りは「コップ」の詰まる音「ッ」、「晩酌」の「ん」「ゃ」の音のリズムで気にならなくなるケースだと解説した。
● [20] @23/03/02◆お題:
卒業[式の壇上] 『春光やルーズソックスすべて干す 』 第7回春光戦予選A3位(予選敗退) 添削なし
季語は「春光」。思春期にルーズソックスが流行したという本人。長くて重いルーズソックスは乾きにくいため、卒業などの特別なタイミングでないと一気に干せず、卒業式のキラキラ光る春の光の中に干す光景が綺麗だったことを思い出して詠んだと語った。藤本名人は「兼題を思いにくい」点を指摘。先生は、キッチリと出来上がっている作品だと評すが、藤本名人の指摘に賛同する。ルーズソックスが流行していた頃の元少女という読みもあるが、その時代のお母さんが「お天気良いから全部干そうか」という読みも否定できず、どこかに兼題の「卒業」を思わせる何か小さなフックがあれば良かったと忠告する。「卒業」という兼題を下敷きにすれば、季語と「すべて干す」から、これを履く時代が終わったのだと辿り着けないことはないが、テーマ性で少し順位的には損をしたと述べた。
● [21] @23/05/11◆お題:
浜田雅功 『辞表書きダウンタウンを見る五月 』 浜田杯13位(20名中) 添削後
『ダウンタウンに 笑 う 五月の 辞表書く 』 季語は「五月」。浜田のイメージが茶の間のテレビで観ていたスターの印象が強いと述べる本人。5月に母の介護で退職する際、辞表を書きながらも傷心の気持ちをダウンタウンの漫才で癒された気持ちを詠んだと語った。先生は、浜田を題材にした実体験で、自分に心境をグッと引き寄せた句だと分類する。語順を逆にすればブラッシュアップ出来ると指摘し、「ダウンタウンに笑う」の後に落差を作るべきだと指南。勿体ない動詞「見る」を消し、後半を「五月の辞表を書く」と言い切るよう指導した。ケラケラ笑ってる場面からシリアスなところに展開した方が、季語が生きると解説した。この13位までは技術がしっかりあり、意味も分かると述べ、14位以下と線引きをした。
● [22] @23/09/14◆お題:
秋の夜長に食べたい「夜食」 『Gペンにこびりつく黒夜食喰う 』 3級へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「夜食」。Gペンで漫画を描くが、描き続けているとインクが染み込んで黒くこびり付き、その黒と「自分の漫画が本当に面白いのかな?」「芽は出るんだろうか?」という気持ちが湧いてくる心境を示したという一句。「夜食」を「喰う」ものだが、かっ食らって元気を出す気持ちを出すため「喰う」を入れたと語った。査定ポイントは動詞「こびりつく」を選んだ判断の是非。「苦労が見える!」と評す先生は、「Gペン」で漫画家あるいは漫画家を目指している人を匂わせ、「こびりつく」で上手く描けない焦燥感を想像させ、ダメ押しのような「黒」のイメージで心情・思いも想像させる効果があると褒める。「夜食」とあれば普通「喰う」は不要だが、この句では「喰う」動作を改めて見せることで、上手く行ってないから夜食でやる気を起こす意図があり、「喰う」で押さえる判断も良かったと解説した。およそ1年ぶりに昇格を決めた。
● [23] @23/10/05◆お題:
母の背中 『発熱の母月光の車椅子 』 第7回金秋戦予選3位(決勝進出) 添削なし
季語は「月光」。介護する母を車椅子に乗せていた時期があったと述べる本人。発熱した母を車椅子で病院に連れて行く際、月の冷たい青い光が癒しているかのような気がした当時のことを詠んだと語った。兼題の「背」を感じられるか否かで梅沢・ジュニア両名人の意見が食い違う。先生は「発熱」で母を救急病院に連れていく場面で、「熱」を冷ますかのように冷ややかな「月光」が包む感触があると述べ、「車椅子」で状況・映像がしっかり見えて思いも伝わる良い句だったと褒める。順位をつける際に、梅沢名人が指摘した「背」のテーマ性が弱い点があったと解説する。最後に上位3句は甲乙つけ難い良い作品が並んでいたと評した。
● [24] @23/10/12◆お題:
月 『別れるはずだったのに月が綺麗 』 第7回金秋戦決勝9位 添削後
『別れるはずだった月が綺麗 だった 』 季語は「月」。梅沢名人は「だったのに」がくどいと指摘。英語教師をしていた夏目漱石が、"I love you "を「月が綺麗ですね」と訳したエピソードを紹介する先生は、後半の「月が綺麗」は"I love you "の隠し言葉であり、この辺の機知がとても良いと称賛する。惜しいのは梅沢名人の指摘通りで、「のに」が説明をする言葉になっている点だと指摘。「別れるはずだった/月が綺麗だった」と「だった」を繰り返すことで、詩情がより強くなると忠告した。添削例なら梅沢名人の8位は軽々と飛び越えていたと評した。
関連記事
スポンサーサイト