2021年4月8日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
挑戦者→石野真子[3],勝村政信[5],早見あかり[2],宮田俊哉[19],村上[初],立川志らく[42],梅沢富美男[127] ※数字は挑戦回数●お題:あくび

※季語には「くしゃみ」(冬の季語)、「昼寝」(春の季語)など日常的な動作があるが、あくびを「春の季語」として紹介(←基本的には間違い、編集後記参照)。1日7~8回はあくびをするということ。
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位71点 | 石野真子
| アイフォンに桜蕊降るハチ公前 | あいふぉんにさくらしべふるはちこうまえ |
2 | 才能アリ2位70点 | 勝村政信
| 公魚の欠伸気づかぬ太公望 | わかさぎのあくびきづかぬたいこうぼう |
3 | 凡人3位67点 | 早見あかり
| 春暁の実家オムツは三枚目 | しゅんぎょうのじっかおむつはさんまいめ |
4 | 凡人4位65点 | 宮田俊哉 (Kis-My-Ft2) | 花の宴欠伸で潤む19時半 | はなのえんあくびでうるむじゅうくじはん |
5 | 凡人5位60点 | 村上 (マヂカルラブリー) | 眠たさと手のひらに土春の昼 | ねむたさとてのひらにつちはるのひる |
6 | 名人3段で現状維持 | ★立川志らく
| 春眠や「カイロの紫のバラ」よ | しゅんみんやかいろのむらさきのばらよ |
7 | 永世名人29句で掲載ボツ | ★梅沢富美男
| やわやわと陽のあくび巻く春キャベツ | やわやわとひのあくびまくはるきゃべつ |
→編集後記
→勝村政信は5回目。夏井先生公認の弟子だったが2度目の挑戦で才能ナシとなり破門された。
浜田 今、破門中でございます(笑)。
玉巻アナ 最近は2回連続才能アリ獲得されているんですが、まだ破門は解けておりません。
勝村 1位2回続けてるんで…。
浜田 2回いってるから今日(1位なら)もしかしたら破門が(解ける)…。
村上 そんな簡単にはいきませんよ、多分。
浜田 ホント?
村上 1回人を怒らせたら結構あと引きますからね(笑)。
野田 M-1グランプリという大会で散々な目に遭ってます(笑)。3年かかりました。
→2017年のM-1グランプリでマヂカルラブリーは審査員の上沼恵美子にネタを酷評されるも、2020年にも決勝進出を果たしている
村上 上沼さん、3年かかりましたから。
勝村 頑張ります。
***
→俳優・早見あかりは2回目で前回才能アリ。元ももいろクローバ―のメンバー(水色)で、昨年10月に女児を出産した。
早見 娘に不甲斐ない姿を見せるわけにはいかないので、ママとしてのエピソードを俳句にしてきたので、才能アリを狙って特待生を…いけたらいいなと。
浜田 いき、いきなり?
早見 狙ってはいます。
***
→女優・石野真子は3回目。初回は才能ナシ、前回は凡人査定。
浜田 今回どうですか、自身のほどは。
石野 あの~、でも一生懸命、歳時記を(=と)にらめっこしました。
浜田 ちょっと真子ちゃんポンコツなところがある…。
勝村 やめてください!(笑)
村上 ポンコツ?
***
→マヂカルラブリー・村上は初登場。法政大学文学部卒業の上、国語の教員免許を取得している。相方の野田クリスタルと出演。
浜田 マジ?
村上 そうなんですよ。意外に勉強とかやってたんですよ。
野田 これ(オファー)決まってから、ずーっと頭抱えてました(笑)。この番組凄いですよ。フルポンの村上とか、楽屋で俳句ずーっとこうやって(頭を抱えて)考えてた(笑)、皆さん。
村上 本気でやってます。
★ランキングシートは分布を伏せた状態で進行
浜田 じゃあ、4位。
村上 やだよ。
▼凡人4位はキスマイ宮田宮田 うそ~!
浜田 ただね、65点獲ってるんです。
梅沢永世名人 点数はいいですね。
宮田 うわ~、悔しい。
***
浜田 これもう宮田の上見ますか、3位。
▼凡人3位は早見浜田 凡人になってんねや~。
早見 悔しい~!(笑)
野田 まあまあまあ。
***
浜田 さあ皆さん、残っているのはこの3人です。
村上 もうそろそろ~。
野田 でもあるよ、1位。
浜田 今までのお二人の作品見てどうですか?
勝村 3位が出た瞬間からもう口の中が乾き始めた(笑)。いや~心臓ドキドキ…。
村上 僕はあの~(4位の添削の)「に」のとこ分かりましたからね。梅沢さんが分からなかったとこ。
浜田 なるほどなるほど。
野田 梅沢さんを超えたかもしれない(笑)。
梅沢永世名人 あのね、ここがお前と俺の違いなんだよ。分かってるんだよ、俺が言ったら先生のお仕事がなくなるだろ。
浜田 そういうことですよね!
梅沢永世名人 番組として。
野田 でもコメント言った後、凄い心配な顔されるから大丈夫かなみたいな。
村上 ずっと目をそらしてたから。
***
浜田 これは1位と最下位残しますんで、あかりちゃんの上2位。
村上 2位でもいいよ。
▼才能アリ2位は勝村浜田 うわっ、才能アリ。きひひひ、才能アリだ~。
勝村 才能あった。良かった~。
浜田 3回いった。3連チャンで行った。
玉巻アナ ちなみにですけど、才能アリを獲得しますと夏に行われます炎帝戦への出場権を獲得することができます。
浜田 あ、そうですね。確かに確かに。
◆2021年7月開幕・夏の炎帝戦ルール◆ 才能アリ獲得者は名人、特待生に限らず夏のタイトル戦の出場権あり |
***
浜田 というわけで残っているのはこのお二人。
村上 ちょっと…。ありますよね。
野田 村上、これ激アツだぞ(笑)。
村上 真子さん、才能アリ獲ったことないんですよね。
浜田 ないです。
石野 ない…。
野田 じゃあ、もうそうだよ。
村上 チャンスじゃん。
野田 激アツじゃん。
村上 初なんだから。
浜田 さあ、1位を発表しましょう。
▼才能アリ1位は石野、凡人最下位はマヂカルラブリー・村上石野 はぁ。
野田 えっ?
村上 やばっ。
浜田 才能ナシじゃないんですよ。
梅沢永世名人 凡人なんです。
石野 は~、ビックリ。
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ71点 石野真子『アイフォンに 桜蕊降る ハチ公前』【本人談】渋谷のハチ公前は桜の季節は花がいっぱい咲いているが、待ち合わせの場所で皆スマホをいじって全然桜も見ていない状態。春も過ぎて花びらも落ちて、花蕊もポロポロ落ちてiPhone(の画面)に当たっている様子。
梅沢永世名人 いや、大したもんだね。いい俳句だね。なかなかこういう季語持ってくるなんて大したもんだ。見事な俳句ですよ!
浜田 どんだけ褒めんねん!
夏井先生 中七「
桜蕊降る」が全て季語。
難しいためみんな色々と悩むが、
素直に真ん中の7音に置いて映像が作れたのを褒めないといけない。さらに、
iPhoneのアップから始まり、「桜蕊降る」で目線が画面から上の光景に切り替わる。
頭上を見ると"
桜の木があったのか、もう蕊が降っているのか"と。
「ハチ公前」という
固有名詞が出てくると大きな光景となり、この映像の作り方が上手い。こういうのが1位の句なんです。直しはいらない。
本人 うわ、嬉しいですね。声が震えて(笑)。
添削なし
春の植物の季語「桜蕊降る」と物・場所と三つの情報を綺麗に取り合わせた一句です。季語は「落花」を傍題とする歳時記もありますが、「桜蕊」は花びらが散った後に桜の木に残るおしべ・めしべのこと。それらが最後に散った後に葉桜(夏の季語)となります。この季語は上五に置きやすいのですが、中七に堂々と置いたのがポイント。前半でiPhoneの画面に落ちる様子、最後に「ハチ公前」で渋谷駅前の光景がたっていきます。カメラワークの作り方は山口真由さんの「土砂降りのシャッター通り濃紫陽花」と逆タイプですが、光景描写が決まった石野さん。兼題から離れているのが少し気になりますが、「秋の空わかっていてももうひとつ」の初回才能ナシから大きく成長しました。
◆2位
才能アリ70点 勝村政信『公魚の 欠伸気づかぬ 太公望』※「太公望(たいこうぼう)」とは釣り人のことで中国の故事に由来する。
【本人談】先輩にワカサギ釣りに連れて行ってもらい、周囲の人たちは連れているが自分はせっかちですぐに竿を上げてしまう。さすがのワカサギがあくびする。「コイツじゃなければな」と。
梅沢永世名人 なるほどね。上手いね~。
「公魚の欠伸」って持ってきたところが大したもんだね。
本人 ありがとうございます(笑)。
野田 うれしそうだな。
梅沢永世名人 なかなかここまで発想飛ばないから。
夏井先生 発想が楽しい。公魚が欠伸をしているということと、「太公望」という人物との対比も良かった。今作者が分かって「お前か!」と思っている。「
気づかぬ」ではなく、この4音を別の表現に。
「太公望」の人物から始め、平仮名で「たいくつ」と書くだけ。「公魚の欠伸」と持ってくる。こうすると映像が面白くなる。太公望=釣り好きの人物がいて、「たいくつ」で欠伸でもしているに違いない。
「た」の韻が踏めて、「わかさ(ぎ)」「あ(くび)」と全部の調べがアの音をつなぎ、調べ自体が変わってくる。これが分かり出したら、
勝村特待生に行けると思います。
本人 頑張ります、ありがとうございます。
浜田 でも先生ね、特待生はどうこうじゃなく破門を解いてやるってことは?
夏井先生 いや~、
破門っていうのはそうそう解けるものではない…。本人 (立ち上がって)まだですか!?(笑)
村上 ほら。時間かかりますよ。
野田 3年かかります。
夏井先生 ただね、
夏のタイトル戦でベスト10人にアンタが入ってたら許す。浜田 あ、これはもう資格ありますからね。
夏井先生 どうせ入れませんよ。
本人 ちょっと待って下さい(笑)。
添削後
『太公望たいくつ 公魚の欠伸』
季語「公魚」を用いて擬人化し、人物を取り合わせた一句。無難に人選が狙えるタイプの句で、素地はしっかりしていた勝村さん。「太公望」は中国『史記』の呂尚(りょしょう)という3000年以上前の人物で、釣り好きの逸話が残っています。「欠伸」は本来、酸素が少ないサインを示す生理的動作ですが、なんと魚類でもするそうです(えら呼吸なので意味合いが違うと思いますが)。面白い擬人化の前半、呼称を用いた後半もオリジナリティーが強い句でしたが、「気づかぬ」が説明的にも。先生からの破門を解くために10名人を超える実力を炎帝戦で発揮する必要があるだけに、今後が楽しみになってきました。
◆3位
凡人67点 早見あかり『春暁の実家 オムツは三枚目』【本人談】助けが欲しいから実家に行って(子どもの)オムツを何回も替えても泣き続ける。一晩で三枚目のオムツという句。
梅沢永世名人 そっか~。これ「オムツは三枚目」替えたんですね? おっちゃんの時代はね、オムツは布で生地で縫っていましたから、オムツを三枚目縫っているのが三枚目なんだなって読めちゃう。替えているのが伝わらない。
夏井先生 これは「三」という
数詞を使って実体験をきっちり書こうとしているのは良い。
まず考えないといけないのは、
「実家」という情報がどこまで必要かというのが一点目。
もう一つはおっちゃんが指摘していた
「三枚目」。昔の人は縫っているかもしれないと思うのが二点目。
「実家」よりかは
あなたがやっていることを率直に書く。「あくび」。起きてしまったんだなと。
ここから「三」の数詞へ。「枚」ではなく「
回」。「三回目のオムツ」に着地する。
「枚」ではオムツという物になるが、「回」だとオムツ替えの回数になる。
その分だけ、大変さが変わってくる。
本人 口で自分が説明した部分が全てここに詰まっているという(笑)。
浜田 なるほどね。
本人 ぐぅの音も出ないってこういうことだなと。
添削後
『春暁のあくび 三回目のオムツ』
春の夜明けを指す季語「春暁」に、オムツを替える動作を数詞を用いて示した一句。「実家」とあるので、ご老人の介護の現場だと思いました。実家に帰省して春暁になるまでに三枚オムツを替えるほど、介護の現場は寝付けないほど大変なのかと意味を取りましたが、実際は子の様子とのこと。句またがりの型は大変挑戦的でした。梅沢名人の読みもあり得るとはいえ、詩になりにくい印象も。添削では兼題「あくび」が入りましたが、「吾子」など人物を入れる方法など色々と考えられそうです。
◆4位
凡人65点 宮田俊哉(Kis-My-Ft2)『花の宴 欠伸で潤む 19時半』【本人談】花見だと午前中から外でお酒を飲んだりして、19時半くらいには眠くなって一番あくびをする時間帯だと思った。そういう体験を俳句にした。
志らく名人 俳句としては結構良いと思ったんですけど。
梅沢永世名人 普通の俳句なんですよ。
村上 厳しい…。
梅沢永世名人 するするするっと、言葉を並べただけな感じがするんです。「19時半」これはいいけどな。
夏井先生 この句自体が
特別凄く悪いというわけではない。惜しかったと思う。
「
花の宴」は酒盛りしているに違いない。そうなると
「19時半」までの着地が分かりやすすぎる。
“酒でしょうね”で終わってしまう。
俳句は分からなければ文句を言われるし、分かり過ぎたら文句を言われる。さじ加減が難しい。この
季語を別の方向に変えるべきなのが一点。
さらに、
助詞「で」に問題があるのが二点目。少し膨らませる。
酒だけではなく花見に疲れる「
花疲(はなづかれ)」(春の季語:花見の疲れ、花の美しさに酔いしれた疲れ)とする。
これだけで綺麗になる。「
あくび」と平仮名にしてみる。
浜田 エエ格好したんでしょうね。
夏井先生 そうでしょうか。
本人 格好つけちゃいました(笑)。
夏井先生 「で」はどう考えても助詞が違う。
おっちゃんぐらいなら分かると思うんだが…。
梅沢永世名人 いえいえ、急に言われても(笑)。
浜田 いやいや…、それは言いなはれ。
梅沢永世名人 人の句は意外とわたくし…。
夏井先生 もういいです!(笑)
野田 怖い。
夏井先生 これは「
に」。
「で」と「に」の違いについて。
「
~で」は後ろに
動きがある動詞(「あくびで笑う」など)。
「
~に」は後ろに
静かな動きの動詞がくる。この違いは大きい。
「
十九」と数字も漢字に。こうすると、順位はスッと上がる。
浜田 これ、宮田何回目?もう~。
本人 ホントに凡人なんでしょうね、僕ね~(笑)。
添削後
『花疲 あくびに潤む 十九時半』
春の生活の季語「花の宴」に自身の動作と時刻を取り合わせた一句。一見すると普通に出来ていますが、「で」の散文はやはり気になります。「潤む」も「欠伸」とイメージが近く説明的にも思う動詞。また、最後の時刻も上五と近い印象はありますが、宴の開始時刻の可能性もあり、昼から酒宴を行っていたと読まれない可能性も。特に最後の時刻を置いた点は、以前に北山さんが詠んだ「春の闇肉焼き終える22時」と型が一緒で、真似した可能性を率直に感じました。その点で背伸びをした可能性もありますが、凡人から後一歩抜け出せない宮田さん。実体験の姿勢を詠む点を貫いてほしいところです。
◆最下位
凡人60点 村上(マヂカルラブリー)『眠たさと 手のひらに土 春の昼』【本人談】川沿いの土手に腰かけながら手をついて、桜の揺れる様子を見ていたら眠くなってしまったなという。
梅沢永世名人 何を語りたいのか、何を感じてもらいたいのか、さっぱりわからない!
志らく名人 場所がどこだか分からないですから。
梅沢永世名人 そうです。
夏井先生 おっちゃんが言うほど酷くないが、志らくさんが添えてくれた「
場所が分からない」は的確。
惜しいと思う。
「
土手」から行く。
場所を明確にするだけで全員が土手を思い浮かべる。
「土手に手
をついて」と書いてしまう。「眠たき春の昼」と持ってくる。
土手という場所が出て、手をついている。石っころなどの感触を感じさせ、「眠たき春の昼」と。ここまでやれれば才能アリと勝負が出来る。
本人 直されると、こっちを作りたかったなって思いますね。
浜田 そうやな、アハハハ。
添削後
『土手に手を ついて眠たき 春の昼』
時候の季語「春の昼」に自身の動作を取り合わせた一句でしたが、場所情報がないだけに意味が伝わりにくい句に。中七だけでは農作業やガーデニングをやっていたのかと誤読されます。「眠たさ」も自身の感情表現に近く、安易な置き方です。上五「と」の助詞も並列ではなさそうですが、意味を誤読しやすい部分。60点は高評価に思いましたが、取り合わせの型として一応完成はしています。国語の教員免許があるそうですが、俳句は学習し直した方が良さそうな印象です。
★特待生昇格試験★
志らく名人 タイトル戦(冬麗戦)で最下位になった時は、「グッとラック!」とか「ひるおび」のスタッフもみんな笑ってくれたんです。芸人はこうでなくちゃいけないと。
浜田 そうですね。
志らく名人 こないだのタイトル戦(春光戦)予選で4位(敗退)になって、本戦に上がれなくなったときは、遂に誰も声かけてくれなかった(笑)。
浜田 今日はちょっとバシッと行きたいですね。
志らく名人 そうですね、ええ。
浜田 頑張っていただきましょう。
◆『春眠や 「カイロの紫のバラ」よ』 立川志らく【本人談】「カイロの紫のバラ」(1985年公開、ウディ・アレン監督のファンタジー映画)は、生活にくたびれた主婦が同じ映画を観に行くと「また来ているんだね」とスクリーンの中の登場人物が彼女に声をかけてスクリーンから抜け出てきて、2人で映画館から出ていくというラブストーリー。春眠のまさに春の眠たさと合わさって夢のような気がした。問題は切れ字の「や」と「よ」。季語とタイトルだけだから、この2つを強調することで眠さを美しく強調できるのではないかと思い、思いっきり冒険した。
梅沢永世名人 今お話した「や」と「よ」、これがどうなのか?
本人 どっちですか?
梅沢永世名人 これが成功したら素晴らしい俳句。
浜田 いやいや、どっちなんですか?(笑)
梅沢永世名人 私は…、
「や」と「よ」がちょっと余分だったんじゃないかな…。
浜田 そうですか。
梅沢永世名人 いや、私はね!(笑)
★評価ポイント助詞「や」と「よ」の効果の是非
浜田 うわ~、でもこれ志らくはんも分かってるからね、これは。
■査定結果名人3段で
現状維持理由:読み手に寄り添ってあげてほしい
夏井先生 とはいえ、これは
勇気のある挑戦。「春眠」という季語を使うのも難しい。
そこにこの映画の題名をボンと持ってきた。この映画の題名もなかなか大変で
「カイロ」が固有名詞、「バラ」も季語めいたものが入っている。
二重三重の挑戦をよく挑まれたと思う。
なぜ
「や」と「よ」が気になるか。
「や」は季語を強く詠嘆したいからで、「よ」は柔らかく春眠らしい詠嘆で終わりたいからという作者の意図はとてもよく分かる。
ただ、一つ心配なのは
「『カイロの紫のバラ』」が何ものか分からない読者も沢山いる。
その読者には「知らない・分からない」で終わってしまう。
読んだ人に小さな
「調べてみよう」と思わせる仕掛けがあれば、今日は物凄く褒めたかった。簡単なこと。「春眠
とは」とすれば、後ろは「○○です」という文脈になる。
最後は「
か」として軽く投げかける。
"
私は「春眠」というのは「カイロの紫のバラ」だと思いますが、あなた方はどうですか?"と投げかけられると読者は調べる。
そうすると、志らくさんの思ったところに読み手を引っ張り込める。
ただ、こういう挑戦はやめたらダメ。あなたの持ち味ですから。
本人 いや~、「春眠とは」は思いつかないですね。ちょっと感動してしまいました。
浜田 でもいい挑戦だと先生はおっしゃってますんで。
梅沢永世名人 いや~素晴らしい。
添削後
『春眠とは 「カイロの紫のバラ」か』
季語に映画のタイトルという固有名詞をぶつける志らくさんお得意の手法です。「カイロの紫のバラ」は35年前に公開された洋画で、ウディ・アレン監督の私生活のパートナーとなるミア・ファロー(の養女と結婚した)がヒロインを務めたラブストーリー。演者が映画館で観た映画もまさに同名タイトルというメタ的要素が詰まっていますが、監督のセンチメンタルな恋愛観が詰まった映画です。それを志らくさんは「春眠」という長閑で眠たいながらも、どこかで現実逃避をしているかのような気持ちに浸ったのかもしれません。問題は切れ字でしたが、「とは」「か」は散文的にもなる高リスクな手法。固有名詞路線の継続を先生に推奨されましたが、果たして本人は今後どの詠み方で行くのかが最も気になる部分です。
★永世名人 富美男のお手本★※永世名人・梅沢富美男が50句の傑作を詠んで、俳句史に残る句集完成を目指す「永世名人梅沢富美男 傑作50選」
梅沢永世名人 お手紙、沢山いただいて。
村上 絶対カサ増ししてますから。
梅沢永世名人 本当だっ!お前誰に口利いてんだ!(笑)
浜田 怒られるから。
梅沢永世名人 世界中の子どもたちが俺を…。
浜田 それは分かってます、分かってます。分かりました。
***
浜田 今日はボンといける?
梅沢永世名人 いけます! 何てたって、子どもが待ってますから。
浜田 いや、子どもは待ってない…。
梅沢永世名人 私が…、世界中の子どもが私を注目して…。
浜田 今、何か探しました?(笑)
→椅子の横に置いてある紙袋を手に取る梅沢名人
梅沢永世名人 はい。お手紙、沢山いただいて。ほんの一部ですけど。ほら。
浜田 自分で書いたんでしょ?(笑)
梅沢永世名人 いや、違う違う。見て下さい、この字可愛らしい、ほら。「うめざわさんへ、はいくみてますよ。なついせんせいにまけないでください。」
浜田 へえ~。
梅沢永世名人 ほら、(別の手紙を出し)「梅沢富美男様 がんばって下さい。」って絵も描いてくれて。
浜田 ほんとに描いてますね。
梅沢永世名人 嬉しいでしょ。
浜田 左手で書いたんでしょうね(笑)。
村上 ちょっと怪しい。シンプル過ぎますよね(笑)。
野田 左手っぽいな。
玉巻アナ 実はこれだけではありません。こちらにこれだけの量のファンレターが届いています。これもごく一部なんですが。
→A4のクリアファイル5冊分を浜田に手渡す
浜田 これも一部なの?
梅沢永世名人 一部です、ほんの一部です。
浜田 うわ、凄いわ。
梅沢永世名人 世界中から。
浜田 後でほら、休憩入ったら全員で調べよか(笑)。
村上 そうですね。
梅沢永世名人 ホントですって。
[永世名人のお手本披露]◆『やわやわと 陽のあくび巻く 春キャベツ』 梅沢富美男【本人談】皆さんキャベツはご存じだと思いますが、「春キャベツ」って非常にふわっとした感じがある。この間三浦半島で春キャベツを見てきたが、それがポンと頭に浮かんできた。「あくび巻く」でふわっとあくびしているように、ふんわりふんわりキャベツ(の葉)が緩やかに巻いている。それをイメージしてふと空を見ると「あ!春だな、これが春キャベツだな」っていう…。
浜田 (遮るように)はい、分かりました(笑)。
■査定結果永世名人29句で掲載
ボツ理由:そろそろ季語を信じてほしい
夏井先生 なんで
季語を信じるということを知らない男なのだろうと。
野田 結構怒られてる(笑)。
夏井先生 ただ、
中七は良い。
太陽のおひさまのあくびを巻いたかのような春キャベツ。
せっかくこの凄く良い所を
「やわやわと」のオノマトペが5音も使うことで、中七の調べが窮屈になってしまった。
調べが内容と似合わない句。「春キャベツ」という季語の中には、
「やわやわ」という感触は入っている。そういうもの。
本人 だって、今さっき言ったじゃん! (志らく名人の句の)ウディ・アレンも分かんない人いるでしょって!
浜田 うるさいなあ~。
本人 コイツら分かんないから「やわやわ」言ってあげてんの。
夏井先生 黙れ!(笑)
だから
これ(上五)は要らない。季語の情報はみんな実体験で知っている。
5音分を使って
ゆったりとした調べを作るだけ。良い句なのに勿体ない。
「
おひさまの」と平仮名にすれば柔らかい。「あくび
を巻いて」として「春キャベツ」。
調べが柔らかくゆったりして、最後に春キャベツがドーンと出てくる。
もうそろそろ分かろうよ、季語を信じようよ!
本人 私には考えられないくらい良いですよ。だってそら、しょうがないじゃん!
浜田 「しょうがないじゃん」って…。
野田 名人なんでしょ?
浜田 こんなキレ方ある?しょうがないじゃんって言われても。
本人 世界の子どもが今、泣いてんだぞ!
添削後
『おひさまの あくびを巻いて 春キャベツ』
過去に「しんしん」「ゆるゆる」「ざくざく」とオノマトペを用いてきた御大ですが、春キャベツと太陽の欠伸の様子とを取り合わせた一句です。一見すると普通に描写できていますが、中七の意味合いで迷い、ボツ査定は仕方ない印象に。本人は「陽のあくび」の詳説を避け、春キャベツが欠伸をしながら葉を巻いており、空の太陽を見て気付くかのような説明でしたが、先生は「おひさまのあくび」と擬人化し、それらの視覚・聴覚的要素を含めて「巻く」に掛かっているかのように説明した印象を受け、既に解釈が異なっています。個人的には、キャベツに当たった日差しの陰影となる部分が誰かの欠伸のように見え、その葉の巻く印象などを表現したのではないかと捉えました。上五「やわやわと」も「陽の」「あくび」「巻く」のどれを修飾するのかが迷う部分で、恐らく「巻く」なのでしょうが、語順も悪い印象です。「あくび」の兼題のため、仕方なく入れ込んだものの推敲が足りなかった御大。永世名人としてのメンツを保ってほしいものです。
浜田 名誉がありますから。処分します。せーの、ドン!
(シュレッダー演出)
※ボツの俳句は永世名人の名誉のため無かったことに
浜田 これはもう仕方ないですね。
梅沢永世名人 いいかい?今日は特別な日なんだよ。
浜田 どういう日ですか?
梅沢永世名人 (石野)真子ちゃんが一緒に出てんだよ。私と一緒に明治座でお客さん満杯(=満員御礼)にした芝居してるんだよ(笑)。
★次週(4/15)の兼題は「リュック」です。
消しゴムはんこで若き特待生が誕生した後半の俳句コーナーは「あくび」が兼題。番組では「昼寝」と同様の流れで「春の季語」と紹介されましたが、私が所持する歳時記に「あくび」を季語とするものはなく、
先生のブログにも季語ではない説明がなされています。恐らくスタッフの勘違いで、番組紹介句でも「欠伸」以外の季語が全ての句で据わっています。
あくびと聞くと「(蛙の)目借時」などの季語を思い浮かべやすい印象がありますが、季語は全員違うものに。時候の季語が目立つ中で「公魚」に着目した2位勝村さんの発想力は高い印象でした。また、平場挑戦者の点数は高めで、1位は中七季語、2位は擬人化と固有名詞、3位は句またがりという挑戦がありました。ちなみに拙句は「
休符まで欠伸こらえて花祭(はなまつり)」でした。放送日(4/8)が釈迦の誕生日であることから、仏教讃歌のコーラスで欠伸が出るのを我慢する心境と合わせてみました。若手俳人・着流きるお氏の査定はいかに…。
さて、4月で当ブログは4年目に突入しました。皆様毎度ご覧いただきありがとうございます。まだまだ内容が充実していない記事もありますが、細々と運営していますので、どうか温かく見守っていただけると幸いです。
話は変わりますが、私もお世話になっている「俳句ポスト365」「俳句生活~よ句もわる句も~」、さらに南海ラジオ「一句一遊」の無料投句サイトのルール変更が行われたのも話題になりました。特に「俳句生活」では毎月50~100句を作句して3割程度に絞って投句していましたので、3句の投句制限のショックが大きいのですが、自選するという点も含めて俳句と向き合うことの大切さを今一度考えるきっかけになっております。入選がゴールではなく、上達することを目的に、「自分のために俳句を書く」という初心を忘れずに励みたいものです。
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