2021年1月28日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。
挑戦者→浅野ゆう子[初],福田麻貴[3],宮田俊哉[17],NANAMI[初],田辺智加[初],千原ジュニア[56],梅沢富美男[121] ※数字は挑戦回数●お題:鏡
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位71点 | 浅野ゆう子
| 初日冴ゆ着物の衿の紅椿 | しょにちさゆきもののえりのべにつばき |
2 | 凡人2位60点 | 福田麻貴 (3時のヒロイン) | 寒暁やバックミラーの父のクマ | かんあかつきやばっくみらーのちちのくま |
3 | 凡人3位55点 | 宮田俊哉 (Kis-My-Ft2) | 鏡越し煌めき冬めくアイメイク | かがみごしきらめきふゆめくあいめいく |
4 | 凡人4位50点 | NANAMI
| 冬の宵曇る鏡に映る月 | ふゆのよいくもるかがみにうつるつき |
5 | 才能ナシ5位20点 | 田辺智加 (ぼる塾) | 晩冬に咲いた愛の実鏡中 | ばんとうにさいたあいのみかがみなか |
6 | 名人3段へ1ランク昇格 | ★千原ジュニア
| 自画像に手鏡も描く春隣 | じがぞうにてかがみもかくはるとなり |
7 | 永世名人27句目に 掲載決定 | ★梅沢富美男
| あえかなる鏡の色をして冬日 | あえかなるかがみのいろをしてふゆび |
→編集後記
★グループでの出演者が2組いるため平場の並び方は3列。前列に浅野ゆうこ、キスマイ宮田、NANAMIと単独ゲスト3名、後列(2列目・3列目)にはピラミッドのように、芸人2組が3名ずつ座っている。
→3時のヒロイン・福田麻貴は前回才能アリを獲得し、発想力を褒められた。
福田 今回は、何とかいって変な並ばせ方をやめてほしい(笑)。
浜田 いい列ですよ、ここ。こっから(左)こういう画(奥に向かう)とこっちから(右)こういう画(奥に向かう)凄いですよ…。
あんり(ぼる塾):何で?
ジュニア名人 アハハハ。
浜田 前におる人からドンドン、おいおいおいおい(→体型が大きくなることをいじる)と(笑)。
あんり(ぼる塾) え~!
きりや(ぼる塾) やだ~、ちょっと。
かなで(3時のヒロイン) どういうことですか?
ゆめっち(3時のヒロイン) ちょうどいいですよ。
浜田 ここはここでね、(芸人2組の)ライバル視があるかも。
福田 勝ちたいです。
浜田 分かりました。
***
→女優・浅野ゆう子は俳句査定は初挑戦。
浜田 俳句をお作りになったことは?
浅野 ありません(笑)。
浜田 さっきから見ていると、かなり緊張されてる。
玉巻アナ ただ、浅野さんは書籍2冊を出版(「転がる女にコケはない」「親子ごっこ」)されています。
浅野 若い頃です。
玉巻アナ さらに、作詞も手掛けていらして、中森明菜「CRYSTAL HEAVEN」の歌詞を提供されているそうです。
浜田 そうなんですか?
浅野 若い頃です。
***
→キスマイ・宮田俊哉は過去16回挑戦。才能アリ3回、凡人9回、才能ナシ4回と特待生には遠い成績。
浜田 もう何回目ですか、宮田君。
宮田 そうですね~、10回以上はやってます(笑)。
ジュニア名人 (成績が紹介され)それはもう凡人です(笑)。
浜田 才能アリ3回は獲ってるんですけどね。
***
→ぼる塾・田辺智加は俳句査定初挑戦。グループは4名だが、1名が育休のため3名で出演している。
浜田 田辺さんどうなの?自信は?
田辺 自信しかないですけど。海にある貝殻を1つ1つ繋ぎ合わせたのが私の俳句です。
一同 …。
あんり・きりや よっ!(笑)
浜田 「よっ!」じゃないねん。
★ランキングシートの分布は才能アリ2名、凡人2名、才能ナシ1名(当初)
ジュニア名人 いいやん。
梅沢永世名人 才能アリ2人いるよ。
浜田 これじゃあ、最下位は誰なんだということですね。
***
浜田 凡人ぐらいからいきますか、3位。3位から行こう。ここ入ってれば、よしとするか。
▼凡人3位はキスマイ宮田
宮田 俺か!
浜田 また凡人(→10回目)。
宮田 凡人っすね(笑)。
***
浜田 才能アリ2人いますから、2位をね。
福田 入りたい~。
▼才能アリ2位は3時福田⇒のちに凡人に転落
福田 ええ~、やった~!
かなで 凄い。
梅沢永世名人 素晴らしい。
***
浜田 皆さん、残っているのはこの3人。才能アリは1人しかいません。
梅沢永世名人 そうですね。
浜田 2人いると思ったんですけど、1人だけ。
田辺 やだ~(笑)。
浜田 「やだ~」。
あんり 私だわ。
田辺 やだ~。ふふふっ。
浜田 今のでもお2人の句を見てて、「あ、これ私いけるんじゃないかしら」って感じはありますか?
浅野 あります。
浜田 おっ、きましたよ。
浅野 あります。
浜田 これはでも1位と最下位残して、4位を見ます。
▼凡人4位は堀北真希の妹・NANAMI
浜田 あははは、いいですよ~。
***
浜田 さあ、残っているのはこの2人。あはははっ。これもうゆう子さん行くか!一番下!(笑)
浅野 いや~、きついですね~。ダメかもしれない。
浜田 まあ、ダメならダメでね、番組的には面白いですよね。
浅野 (泣きべそをかいて)もうここで終わって下さい(笑)。
浜田 田辺さんは、自信満々やもんね。
田辺 自信満々でやって来ました、今日は。自信しかない。
浜田 ほんと?
田辺 私はここ(2位の福田)よりは絶対いいはず(笑)。
浜田 これよりはいいと。ということは1位しかないと。
田辺 1位しかない。
浜田 さあ、それでは1位を発表しましょう。
▼才能アリ1位は浅野、才能ナシ最下位はぼる塾・田辺
→立ち上がってガッツポーズを2回獲る浅野
浅野 よっしゃ~! ありがとうございます。
田辺 え~!やだぁ~。
あんり 何が出来んだよお前!(笑)
田辺 おかしいよ。
きりや えぇ~。
あんり やだ、こんな下にさ~。
福田 早く下の方に下がりなさい。
あんり 話が違えんだよ、田辺さん。私威張っちゃったじゃねえかよ(笑)。出来てるって言うからよ~。
田辺 出来てるよ。
きりや 何で?
あんり 何で?
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ71点 浅野ゆう子『初日冴ゆ 着物の衿の 紅椿』◎
素材がとても良く、名人クラスの句になる句材。「初日」が「しょにち」「はつひ」のどちらの読みか迷い、季重なりの可能性が出る。「しょにち」なら後半の語順にしたい。「椿」「冴ゆ」の関係は自解の通りで、衿の模様の「椿」は季語として弱い。上を狙うアドバイスをしたい。「初日」から始めず、「鏡冴ゆ」を先に出せば、季語が既にあるため「初日」=「しょにち」と分かる。作者は鏡の前に立っているのではないか。「初日の衿の」で中七ができて完成。さらに「半衿は椿」とすれば粋なカッコ良い句になり、「初日の鏡冴ゆ」に着地する。半衿の白い部分に椿の刺繍があり、初日の鏡が冴え冴えとしている。これなら10段クラスの句になる。【本人談】最近は御着物を着る仕事が増えてきて、季語「冴ゆ」「冴ゆる」(凛とした寒さが際立つ感じを表す)がとても素敵で、上五で舞台の初日をイメージした。襟元に椿の(柄の)ある御着物を着せていただき、見た時に艶やかだと思った。その凛とした気分で初日に立たせていただく気持ち。冬の季語「椿」もあり、季語が2つになるんですが…。
梅沢永世名人 その通りですね。
浜田 はっ?(笑)
梅沢永世名人 夏井先生が言う通りです。
「椿」は季語です。ただ御着物の柄なんです。本人 はい。
梅沢永世名人 ですからそんなに季語として、表に出るような季語じゃなくなってくる。それをお使いになった。素晴らしい!(笑)。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 (他の平場へ)しっかり勉強しろ!お前、ホント。
夏井先生 素材がとても良い。少し手を入れると名人クラスの句になりそうな句材。一読した時に
迷うのは「初日」の読み。「
しょにち」ではなく
「はつひ」(元旦に見る日の出)だと新年の季語になり、上五で季重なりの可能性が出てしまう。「しょにち」と語っているため、
季重なり問題は解消したい。「椿」「冴ゆ」の関係はご本人が解説した通り。衿の模様だから「椿」が弱い。このままでも構わないが、上を目指す点で手を入れたい。
勿体ないのは
「初日」から始まる語順。
「冴ゆ」を先に出せば、季語があるため「初日」=「しょにち」に違いないと分かる。
別の物を冴ゆと言ってしまう。敢えて「
鏡冴ゆ」から。恐らく
作者は鏡の前に立っているのではないか。
「着物」を諦め、「初日の衿の」で中七としてみる。
さらにもう一押し。「着物」ではなく、「
半衿」としたら粋ではないか。凄くカッコ良い句になる。
「半衿
は」かな。
ごめん、凄い嬉しくなってやってる(笑)。「椿」に繋げる。この場合「紅」が強くなる。「初日の
鏡冴ゆ」に着地する。
半衿の白い部分に椿の刺繍があり、初日の鏡が冴え冴えとしている。こう持ってくると、梅沢10段くらいの句になる。
梅沢永世名人 分かります!襟に椿の模様があって色っぽい…。
浜田 (遮って)ゆう子さんどうですか?(笑)
本人 さらに何か深く感じました。ありがとうございました。
浜田 何か言いました?(笑)
梅沢永世名人 いえいえ…、言ってない。
添削後
『鏡冴ゆ 初日の衿の 紅椿』
『半衿は椿 初日の鏡冴ゆ』
時候の季語「冴ゆ」を用い、舞台俳優目線で詠まれた一句で、どんな人物が何をするかがすぐに想像できます。「紅椿」は春の季語ですが、衿の模様だとサラッと書けているのは見事なものです。新年の季語「初日」は初日の出を指しますが、読み方の違いで季語になったり別の季語になったりという盲点が俳句の世界には案外ある点に注意を払わないといけません。先生は自分の事のように嬉しそうに添削をし、梅沢名人もご満悦になりました。「鏡冴ゆ」は鏡の前に立つ緊張感などもひしひしと伝わってきます。初挑戦での才能アリ、次回にも期待しましょう。
◆2位
凡人60点 福田麻貴(3時のヒロイン) ※才能アリ2位70点から本人談後に10点減点『寒暁や バックミラーの 父のクマ』◎
説明を聞いて唖然とした。下五の「クマ」は「隈」ではなく、「熊」だと読んだ。「の」だから、バックミラーに父がくれた熊のぬいぐるみを飾る様子が映る意味合いに思ったが、10点は減点したい。目の下のクマだと分かるように書かなければならない。「寒暁」から始まる語順では、後部座席ではなく運転席に自分がいると読み手は思う。「クマ」から描写し、「深き父」で人物を確定。「寒暁のバックミラー」で繋げて、作者の言いたいことに言葉を寄せる。※季語「寒暁(かんぎょう)」は冬の寒さがそのまま残っている冬の朝の様子。
【本人談】大学時代に早朝バイトをしていた。父がよく車で送ってくれたが、バックミラー越しに映る父の目(の下)にクマ(隈)があり、忙しい中無理して送ってくれてるのだという。
ゆめっち・かなで メチャクチャ良い!(笑)
本人 ありがとうございます。
ジュニア名人 俺は今の説明聞いて「そうなんや」と思ったんですけど、これだけ読んだら
お父さん熊が後ろから追いかけているのかと(笑)。梅沢永世名人 よく気が付きましたね、そうそう。
本人 怖すぎる、そうなんですよね。
夏井先生 いやちょっと待ってくれよこれ(困)。これ(=「クマ」)何?「クマ」?「熊」?
本人 目の下のクマのことです。
夏井先生 そうは読めませんよ、あなたコレ。「の」だから、バックミラーの所にお父さんがくれた
小さな熊のぬいぐるみが括りつけて飾ってあり、免許取った自分に父が「気を付けろよ」と(マスコットを渡す)いう意味だと思って、この点数(70点)をつけた。
本人 ヤバイ、ヤバイ…。
夏井先生 私はこれはもう、
10点くらい減点しないと気が済みません(怒)。⇒凡人60点に変更本人 ちょっと待って下さいよ。「プレバト!!」ってこんな演出ありましたっけ?
浜田 お前の解説で先生が判断したんですから。
夏井先生 「クマ」が目の下のクマだと分かるように書かないとどうしようもない。
「寒暁」の後に「バックミラー」がある
語順では、運転席に自分がいてバックミラー(に映る)と思ってしまう。この語順では駄目。
ゆめっち 怒ってる…。
夏井先生 いや、怒ってるどころじゃない。凄い、腹立ってる(笑)。「クマ」を最初にして描写する。「
深き」で「父」とくれば人物のため、生き物の「熊」の読みはなくなる。
「寒暁のバックミラー」くらい。これでひとまず、作者の言いたいことに言葉が寄ってくる。
いや~、出来る子だと思ったんだけどな(笑)
本人 先生、やめて下さい。
ゆめっち 宮田さんより高い…。
浜田 まあ、宮田よりは全然ね。
宮田 でも俺よりボロクソ言われてませんでした(笑)
本人 そうなんです。
添削後
『クマ深き 父寒暁の バックミラー』
時候の季語「寒暁」と車内の様子を取り合わせた一句。「寒暁」は「冬の朝」より前に当たる日の出前の最も寒い時間帯と解説される歳時記もあり、朝早い出勤の時間帯を想起します。「クマ」問題で大目玉を喰らいましたが、個人的には片仮名表記のためか「目の下のクマ」だろうと推測はできました。先生は熊が冬眠する季節のため、熊のマスコットが映ると解釈されたのかもしれません。作者が車内のどの座席に座るかが特定できないため、人物情報で補強する添削を受けましたが、詩的センスがある方だけにリベンジに期待したいところ。ちなみに、才能アリから凡人への転落は「桜草」と「桜」を間違えた二階堂さんに続く2例目です。
◆3位
凡人55点 宮田俊哉(Kis-My-Ft2)『鏡越し 煌めき冬めく アイメイク』◎
工夫はしている。後半の3つの単語で「め」の韻を踏んでいる。韻を踏もうとしたら中八になり、小さく取りこぼすのがこの男。鏡越しに異性と目が合うドキドキした瞬間の意図を素直に書くべき。「煌めき」と綺麗ぶっている場合ではない。中八にするよりは上五で余らせる方が、リズムが崩れず得をする。「に」を入れ、「合う目」と続けて意味の切れ目を作る。「め」の韻を踏む意図を残しながら、女の子の目が映像で出てくる。梅沢永世名人 なるほどね。
【本人談】兼題写真(丸いコンパクトミラー)が女性用の鏡かと思い、冬っぽい目のアイメイクが可愛いだろうなという想像。鏡越しで女性と目が合う。
浜田 これを見た瞬間に永世名人が「なるほどね」とおっしゃって…。
梅沢永世名人 これね、「煌めき冬めく」が中八になっている。
本人 そこ悩んだんですよ。真ん中は7(音)が良いと教わったんですけど…。
梅沢永世名人 そうそう。
本人 どうもリズムが良くならないなと。
梅沢永世名人 そりゃ凡人だわね(笑)。
本人 え~!どうしたら良いんだろう。
夏井先生 工夫はしている。「煌
めき」「冬
めく」「アイ
メイク」と
「め」の韻を踏んでいる。
韻を踏もうとしたら中八になった。こうやって、
小さく取りこぼすのがあなたという男。鏡越しに目が合うというドキドキした瞬間が書きたかったのは良く、そっちを書くべき。
「煌めき」と綺麗ぶっている場合ではない(笑)。「目が合った」と入れるだけで、ドキドキ・キュンの気持ちが入る。
中八にするよりは
上五で余らせる方が、リズムが崩れず得をする。
「
に」を入れ、「
合う目」と続けて意味の切れ目を作る。
「め」の韻を踏む意図を残しながら、
女の子の目が映像で出てくる。これなら今日は行けた。
梅沢永世名人 素晴らしい。
本人 そっか~。マジでリベンジしたいわ、これ悔しい。
添削後
『鏡越しに 合う目冬めく アイメイク』
「め」の韻を用いて異性の人物の「アイメイク」を表現した一句。若者らしい意図があるのは面白いですが、中八はやはり気になる部分。「アイメイク」をする自分を鏡越しに撮っているのかとも誤読されやすく、異性の存在が抜け落ちていたのが勿体ない部分でした。凡人10回目となった宮田さんは人物描写が中心で、動詞と比喩を用いる傾向が強いのですが、その点に固執せず基本に立ち返ってリベンジをして欲しいところです。
◆4位
凡人50点 NANAMI『冬の宵 曇る鏡に 映る月』◎
映らない鏡があったら持ってこいというのはその通り。「月」は大体「宵」なので、念押しをする必要性があるかの問題の方が大きい。「曇る」は自分の息で鏡が曇る意図のようで、それを書くべき。「我が息に」で私の息での意味となり、「曇る鏡や」で切り、「冬の月」に着地する。梅沢永世名人 ここに来たか。
【本人談】(*1)冬の外で待ち合わせをしている時、寒いため自分の息で鏡が曇ってしまう。そこにたまたま月が映った。「冬の月」は切なくなるので、そういう時の句を詠んだ。
*1
本人 はい、結構あの冬の…。
浜田 キレてんの?(笑)
あんり 確かにちょっと…。
本人 キレてないです。
浜田 あ~そう。)
***
梅沢永世名人 コレは誰かが書くと思った。映らない鏡があったら持ってこい(笑)。そう言われますよ、先生にも。これが凡人なんです。
夏井先生 ホントに映らない鏡があったら持ってこい。おっしゃる通り。
指摘しないといけないのは「宵」。
「月」なら「宵」なので、念押しをする必要があるのか。むしろこっちの問題の方が大きい。
本人の話を聞いて、「
曇る」が
自分の息で曇ると分かった。それを書いた方が良い。
「
我が息に」で私の息での意味。「曇る鏡
や」で切り、「冬の月」に着地する。
本人 凄い、浅はかな俳句を詠んでたんだなっていうのを先生が…。
浜田 でも、才能ナシでじゃないよ。
梅沢永世名人 50点ですからね。今度おじさんの所へ電話寄こしなさい(笑)。
本人 分かりました。
浜田 何でやねん、「わかりました」ちゃうねん。
添削後
『我が息に 曇る鏡や 冬の月』
時候の季語に鏡に映る月の描写を取り合わせた一句。梅沢御大の「映らない鏡があったら~」の指摘は少々的外れで、この句は鏡が曇っているため映らないはずの月を映しているという点を考えるべきです。ただ、「冬の宵」「月」と2つの季語を並べられるとどうしても「冬の月」に直したくなるのが性でしょうか。淡々と書かれた展開でしたが、情報量が多いだけに語順をしっかり考えたいものです。
◆最下位
才能ナシ20点 田辺智加(ぼる塾)『晩冬に 咲いた愛の実 鏡中』◎
ムードのあることを書いて、自分に酔っているタイプの句。「愛の実」の抽象的な表現や、「鏡中」を「かがみなか」と読ませる辺りが良くない。切々とした乙女心をなぜ書かないのか。「鏡中に」から。咲いてる場合ではなく、「愛の実」「晩」も落とす。「冬の終わりの」と語ったことを書き、恋の終わりを独りぼっちで育んでいるなら「恋ひとつ」としてみる。【本人談】冬の終わりの頃に恋をした。「このままでは自信がない、私なんて」という気持ちで鏡を見て「は~」とため息をついた。その気持ちを鏡の中に閉じ込めようという句。
本人 いかがでしょうか。
ジュニア名人 (笑いながら)非常に面白いですね~これ。俳句の横に「ぼる塾 田辺」と書いたらもっと面白いですね(笑)。いいですねこれ、田辺さん。
本人 (髪をかき上げて)まあね~(笑)。ありがとう、嬉しい。
夏井先生 これは
ムードだけの句。ムードのあることを書いて、自分で自分に酔っているタイプの句。
「
愛の実」という
抽象的な表現に酔ってる感が漂っている。
「
鏡中」を「きょうちゅう」と読むのかと思っていたら、「かがみなか」と読ませると(笑)。
随分強引な感じ。お話を聞くと、
切々とした乙女心だと。それをなぜ書かないのか。
「鏡中
に」から始める。兼題にあるから外せない。あと、使えるのは「冬」のみ。
本人 えっ?
夏井先生 「えっ?」じゃない。
咲いてる場合ではない(笑)。「愛の実」もさっさと落としておきましょう(笑)。「晩」も要らないが、そのことをゆっくり言えばよい。「冬の
終わりの」と語ったことを書く。
恋の終わりを独りぼっちで育んでいるなら「
恋ひとつ」でどうか。
本人 あら~、素敵。
夏井先生 「あら~」と言う程でもない。これが私の精一杯。
本人 やだ~。恥ずかしくて顔真っ赤になっちゃって、やだもう映さないで欲しい私、あんな自信満々で(笑)。
浜田 何なんよ、もう…。
添削後
『鏡中に 冬の終わりの 恋ひとつ』
自身の切ない思いと時候の季語を取り合わせた一句。先生からお叱りを多く受けましたが、初心者によくある失敗例です。中七は2語とも植物をほのめかし、比喩を用いて結局何を言いたいのか真面目に受け取ろうとするほど戸惑います。「鏡中」は「胸中」と掛けているかのような添削になりましたが、鏡の中の自分を見て寂しさのようなネガティブな感情に浸る点はありがちな発想にも思いました。
★特待生昇格試験★浜田 どうですか?自信のほどは?
ジュニア名人 今、皆さんの句を見てる途中に「あ、やっぱあれアカンかも」ていう。「鏡に映る」か、とか。あえてそうしてるんだけど、そのあえてが伝わるかなと。
浜田 なるほど。
◆『自画像に 手鏡も描く 春隣』 千原ジュニア◎
「も」は散文的になりがちで要注意の助詞。「自画像」「手鏡」とあるため、手鏡に自分を映す場面だが、あえて手鏡も一緒に描いた点に作者の言いたい点が強くあり、「も」を使う意図が受け取れる。「に」「も」「描く」辺りで散文的に思う読み手もいるはずで、「自画像」を強く押し出すなら「手鏡も描く自画像春隣」という語順が考えられる。「描く」「自画像」のどちらを強く残すかの表現の問題で、1回作者にお返しをしたい。【本人談】中1の3学期の時、「手鏡を持ってきなさい、これで自画像を描きます」と言われた。みんな自画像を描くなか、自分は持つ手と手鏡も一緒に描いた。怒られるかと思いきや、「こんな生徒今までで初めてや!」と美術の先生に褒められた。それが学生時代に褒められた唯一の思い出。自画像は描くものだが、手鏡を「持たす」とかではなく、手鏡を「描いた」ということを句にしたかった。
梅沢永世名人 今の説明を聞いたら私も納得しましたね。ですから、これはいいんじゃないっすか(笑)。
浜田 何その投げやりな。なんちゅう言い方や。
梅沢永世名人 いやいや、そのジュニアは上手になったのでね、グジュグyジュ言うのもなんでしょうから…(笑)。
★評価ポイント中七の助詞「も」の是非
■査定結果名人3段へ
1ランク昇格理由:助詞とマジメに向き合っている
浜田 「マジメに」ってところが良いですね(笑)
夏井先生 この
「も」の助詞はうっかり使うと散文的になりがちで要注意の助詞。
この句は「自画像」「手鏡」とあるため、
手鏡に自分を映している場面だと思うが、あえて
手鏡も一緒に描いた点に作者の言いたい点が強くある。
「も」を外すと意図から逸れてしまう。
「も」を入れる是非は、自分の表現したいこととしっかり会話をし、やっぱり要ると決めてここにきたと分かる。読んだ時に「に」「も」「描く」と助詞2つ、動詞1つがあるため
散文的に思う人もいるかもしれない。
「
手鏡も描く自画像春隣」という語順も考えられるが、
「自画像」が強く出る。
これは「描く」とどちらを強く残すかの表現の問題。ここは1回作者にお返しをしたい。
私はマジメに勉強する人が好きです(笑)。
本人 マジメじゃないんですよ、僕は。食後のお薬を食前に飲むんですよ、俺は~(笑)
添削なし
美術の授業の一場面で、「も」を用いて自身の意図を表現した一句。デッサンなどで自画像を描くのは多くの方に経験があるのでしょうが、手鏡を持つだけで手が疲れそうな印象です。助詞「も」は「手鏡」もデッサンに描かれているのではないかという意図を理解できますし、季語「春隣」で冬の寒さの実感や、年度末が近いため総決算的な授業で描いている様子も想像できます。語順は色々と考えられ、散文的な匂いを消すか意図を重視するかが難しい部分。作句では同じ句材から複数パターン考えますが、どれが最も良いかの判断力を養いたいですね。
★永世名人 富美男のお手本★※永世名人・梅沢富美男が50句の傑作を詠んで、俳句史に残る句集完成を目指す「永世名人梅沢富美男 傑作50選」
梅沢永世名人 うちで犬のゆめちゃんと遊んでたら、嫌なとこ触ったのか、鼻をガブって噛まれたんです。「ひひっ」て。
浜田 家族みんな笑ってたの?
梅沢永世名人 笑ってました(笑)。
***
浜田 さあ、永世名人。今回自信のほどは?
梅沢永世名人 私はね、今年は戦いの年だと思ってます。スタッフと夏井先生との。
浜田 いや、別に敵対してるわけじゃないですから。
梅沢永世名人 いやいや、そうですよ。だって今のジュニアの句だってそうでしょ。可愛がってもらってると言いたいの。
浜田 ジュニアは?
梅沢永世名人 そう、夏井先生に。
ジュニア名人 えっ?
梅沢永世名人 この男がマジメに俳句に取り組んでると思いますか?(笑)
浜田 いやいやいや。
梅沢永世名人 私はマジメに取り組んでますよ。
浜田 ああそうなん。見る?見いひん?どうする?
梅沢永世名人 いやいや、見ます(笑)。
浜田 そんなん言うんやったら。
梅沢永世名人 見ます。見ますから…。
浜田 見てほしいの?
梅沢永世名人 はい。
一同 (笑)
[永世名人のお手本披露]◆『あえかなる 鏡の色をして 冬日』 梅沢富美男◎
語順を良く考えた。今までなら「あえかなる鏡の色の冬日かな」と「かな」を入れたはずで、こっちの方が上手っぽく見える。敢えて「をして」を選んだ点に成長の跡が見える。「鏡」までで映像が一つ手に入るが、中七で「冬日」の比喩に変化していく展開が上手い。さらに、「かな」ではただの詠嘆で終わるが、「をして」で自分の目に映ったものを淡々と即物的に描写する言葉になる。安易に「かな」と詠嘆しないと決めた点は褒めたい。※「あえかなる」は触れれば落ちるような弱々しい様を表現する言葉。
【本人談】今年は私はチャレンジをする。これは破調で詠んだ。鏡にいる…しているような寒々とした「あえかなる」なんです。それが「冬日」なんです。
ジュニア名人 この「あえかなる」っていうのが、良い言葉持ってきはったな~。
本人 これ名人ですから。凡人はね、詠めないと思います。
浜田 いえ、(ジュニアも)名人です。
本人 あ、ごめんごめん(笑)。
■査定結果永世名人27句目に
掲載決定
理由:上手なフリをしていない!
夏井先生 今までのおっちゃんなら「
あえかなる鏡の色の冬日かな」という方向に持って行ってた。
本人 それも考えました。
夏井先生
「かな」を入れたこっちの方が上手っぽく見える。
敢えて「をして」を選んでいるのが成長の跡が見える。
上五の後の「鏡」で映像が一つ手に入る。
しかし、「鏡の色をして」の展開に変わっていくので、手に入れたはずの
映像も「冬日」の比喩に変化していく。ここら辺の展開が上手い。
さらに、「かな」で詠嘆してしまうとただの詠嘆で終わるが、「をして」で
自分の目に映ったものを淡々と即物的に描写している言葉になる。
今までのおっちゃんなら安易に「かな」「かな」詠嘆していた。それをしないと決めたと。
これは褒めましょう。直しはいらない。
本人 夏井先生は私の心まで読んじゃうから。くふふふっ(笑)
添削なし
時候の季語「冬日」を視覚的な比喩表現で表した一句。前半の「あえかなる」が頼りげのない冬の日差しの表現に効果的な形容動詞で、「鏡の色をして」も具体的な色を読者の想像に任せており、詩的な要素が詰まっています。最後の三音に季語を置いて全体を繋げるタイプの句ですが、季語が弱くなりがちなため自信がなければ難しい構成に思う型で、季語を信じることの難しさを思い知らされます。「あえか」は過去に2例添削に使われ、志らく名人の句「更衣シャツにあえかな空の色」でも用いられています。梅沢御大は「痣の醒めゆくごと朝焼」や「秋の飴色セロテープ」など色の比喩表現が得意な印象があり、今回もこの作戦が功を奏しましたが、本人の説明が分かりづらかったのが難点。果たして今年中に句集は完成するのでしょうか。
色鉛筆査定のコーナー後半の俳句は「鏡」がテーマ。反射するのが特徴で、「氷面鏡」など「鏡」を用いた季語もありますが、いかに発想するかが問われました。
比較的兼題に沿った句が多い中、1位の浅野さんのみ「鏡」「ミラー」どちらも使われず、鏡の前に立って着物を確認するという発想でした。ちなみに拙句は「三面鏡片す実家や冬の月」(未公開句)で凡人ど真ん中という印象です。
さて、当方のツイッターをご覧になっている方はご存じかもしれませんが、着流きるお氏の査定のみならず、昨年から「俳句生活」「俳句ポスト」にも個人的に投句を始めております。「俳句生活」では「赤い羽根」「ポインセチア」「水鳥」と続けて人選2句を獲得できました。俳句歴一年未満で発想・技術・詩心などまだまだ劣っておりますが、少しずつ着実に成果を出していきたいと思う所存であります。
今年は夏井先生以外の選者のものにも投句したいと考えています。新参者におススメの投句先があればコメント下さると助かります。
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