「プレバト!!」で披露されたミュージシャン 松岡充の全俳句一覧です。
特待生2級 松岡充(まつおかみつる) 合計27句
成績(2023年3月2日時点) <通常挑戦者時代>
才能アリ 4回、
凡人 1回
<特待生時代>
1ランク昇格 4回、
現状維持 0回、
1ランク降格 1回
第2回俳桜戦9位(最下位) 、第2回炎帝戦予選6位 、第2回冬麗戦予選7位 第3回炎帝戦予選7位、第3回金秋戦予選1位 ・決勝9位(最下位)、第3回冬麗戦予選8位 第4回春光戦予選B4位、 第4回炎帝戦予選B3位 第5回春光戦予選C2位 ・
決勝9位、( 第5回炎帝戦敗退) 、第5回金秋戦予選C3位 第6回春光戦予選A3位、 第6回金秋戦予選A3位 ・
決勝5位 第7回春光戦予選A5位(最下位) ふるさと戦(写真俳句)で
大阪編5位 査定とは別に2018年度月間MVH受賞(5月)
●昇格率 80%(4/5)→50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ →
人物紹介 ◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 凡人 迷い鶇泣けど街行く人知れず 2 才能アリ 麗かや潮騒汽笛コンチェルト 3 才能アリ 閃々と水面にやんま羽音来ぬ 4 才能アリ 朝ぼらけ星戻り来ぬ霧氷林 5 才能アリ 路地裏の闇嬌声は猫の恋 6 俳桜②9位 啓蟄や花びらも食べ空も食べ 7 1ランク昇格 石段を帰る石竜子や星一つ 8 炎帝②予選6位 議事堂の壁齧り付く空蟬よ 9 冬麗②予選7位 地下鉄を這い出吸いたる冬銀河 10 1ランク昇格 飲み干す光雪晴れの缶ジュース 11 1ランク昇格 号外を放つ手取る手春疾風 12 炎帝③予選7位 涼風や火薬のにほい流れ髪 13 金秋③予選1位 駆け抜けた残暑の泡のハイボール 14 金秋③決勝9位 交差点律の調べか通りゃんせ 15 冬麗③予選8位 弁当あり水屋に三つ冬の朝 16 1ランク昇格 山笑う赤ちゃん象に哺乳瓶 17 春光④予選B4位 春の星ギターケースに絆創膏 18 炎帝④予選B3位 夏暁や封蝋も今固まりぬ 19 春光⑤予選C2位 朧夜や一人キャンプのホットチョコ 20 春光⑤決勝9位 助手席のシートに温み鳥曇 炎帝戦⑤15位 ※順位のみ発表Tシャツを買うシャツの列汗みどろ 21 1ランク降格 大煙火五臓六腑を鷲掴む 22 金秋⑤予選C3位 流星や馴染みの書肆も"閉店す" 23 春光⑥予選A3位 「Where you go?」機窓に春の星あまた 24 金秋⑥予選A3位 星月夜ファーストピアスの重力 25 ふるさと戦(大阪)5位 かすうどんバッテラなんぼ?浮寝鳥 26 金秋⑥決勝5位 天高し野球ノートの三箇条 27 春光⑦予選A5位 古巣あり教えの庭よいざさらば
▼人物紹介 「プレバト!!」ではフルポン村上が特待生にも認められた回に初出場と比較的後発組。陶芸の特待生でもある。音楽グループ「SOPHIA(ソフィア)」のボーカルらしい独特の感性で俳句を詠み、4回連続1位を獲得して通算14人目の特待生に認められた。
句の特徴はミュージシャンらしい独創的な感性と想像力。空や聴覚に着目した句が多いが、小動物との取り合わせも得意である。また、韻を踏む工夫をする句もある。
タイトル戦には合計9回参加し初挑戦時に最下位、ブービーも3回と厳しい結果が多いものの、遂に第3回金秋戦予選を1位で通過。しかし、決勝は最下位にあえなく沈み、続く冬麗戦予選も8位と厳しい結果に。
このタイトル戦の不調で、俳句制作への限界を感じたらしいが、浜田に「お前の俳句は結構好きやったで」と励まされてやる気を吹き返したと紹介されている。
その一方で、通常査定では俳句査定初の無傷の4回連続昇格と調子が良い。
SOPHIAでデビュー以来、500曲以上の作詞を担当し、その努力が多作多捨の俳句姿勢にも顕著に表れており、毎回のように100~200句程度作ってきたと豪語するなど、俳句への関心は人一倍強い。しかし、陶芸の方が視聴者の反響が大きいという皮肉なコメントもしている。
夏井先生は第2回俳桜戦後の雑誌記事インタビューで「爽やかにコツコツと努力される人。いろんな発想のカードを他人から集めてニヤニヤっとして、自分もこれやってみようと思うタイプの人だと思う。いろんな人の作品を見て、藤本名人のようなやり方をすればメキメキ伸びる気がする」と期待を寄せている。
仮面ライダーのキャスト繋がりで特待生の岩永と仲が良く、互いに励ましながら努力していることを明かしている。
その後も、タイトル戦を中心に参加。ブロック制に分かれた予選会となってからも予選結果が出来ずに喘いでいる印象があるが、第5回春光戦では2位ながら決勝進出を決めた。その後も苦しい戦いが続くが、第6回金秋戦では予選3位ながら滑り込みで通過を決めた。
久々の査定は50歳の誕生日となる一斉査定回だったが自身初の降格となり、名人までの道のりが遠のいてしまった。
● [1] @16/11/24◆お題:冬の新宿駅
『迷い鶇(つぐみ)泣けど街行く人知れず』 凡人4位 55点
添削後
『雑踏の空や迷える鶇泣く 』 秋から冬に日本へ来る渡り鳥を指す「鶫(つぐみ)」が晩秋の季語。本来なら群れで田舎にいる鶫が1羽だけはぐれてしまい、都会の街の景色を見て寂しく泣いている様子を作者が見ている。兼題写真の交差点の真ん中で、1人立ち止まった女性の心境と鶫を重ね、田舎から上京して夢が崩れたのか泣いている女の子がいるが、それを街行く都会の人たちは気付けないという物語を感涙しながら語った。梅沢名人は「こういう言葉を並べれば、俳句になると思ったら大間違い。俳句よりも小説の言葉。こういうの、なっちゃん怒りますよ」と非難するが、先生は、「詩心があり、詩を書く明確な意志がある人」の句と評し、17音の使い方が腑に落ちれば一気に上手くなる可能性を秘めていると称賛。浜田が的外れな名人にキレてしまい、「どうしようかな?お前を」とふざける。問題点は、「迷い鶫」「泣けど」で擬人化が2つ重なる点と、「迷い」「泣く」「行く」「知れず」と動詞が4つある点で、擬人化と動詞を詰めると一句のバランスが取りにくいと指摘。擬人化を活かす添削を試みる先生は、「雑踏」で街行く人を言い換えて足音やざわめきを作り、「空や」でさらに縦の空間を出し、視線を見上げて「鶫」につなげるよう添削した。
● [2] @17/03/16◆お題:江ノ電と桜
『麗かや潮騒汽笛コンチェルト』 才能アリ1位 72点
添削なし
● [3] @17/11/09◆お題:ベンチの銀杏
『閃々(せんせん)と水面にやんま羽音来(き)ぬ』 才能アリ1位 70点
添削後
『閃々と水面やんまの 羽音来(く)る 』 ● [4] @17/12/14◆お題:雪の露天風呂
『朝ぼらけ星戻り来(き)ぬ霧氷林』 才能アリ1位 70点
添削後
『朝ぼらけ星もどりくる 霧氷林』 2句連続で同じ動詞のミスを指摘されるが、星が霧氷林に帰っていき朝になるという発想の良さを絶賛された。
● [5] @18/02/15◆お題:ラーメン屋台
『路地裏の闇嬌声(きょうせい)は猫の恋』 才能アリ1位 70点
添削後
『路地裏の嬌声闇に 猫の恋』 [ここから特待生として査定] ● [6] @18/04/12◆お題:
桜と富士山 『啓蟄や花びらも食べ空も食べ 』 第2回俳桜戦9位(最下位) 添削後
『花びらを食べ空を食べ未来へと 』 ● [7] @18/05/24◆お題:
新緑の高尾山 『石段を帰る石竜子(とかげ)や星一つ』 4級へ
1ランク昇格 添削後
『石段を走 る石竜子や星一つ 』 2018年5月月間MVH受賞句 ● [8] @18/08/02◆お題:
夏の太陽 『議事堂の壁齧(かじ)り付く空蟬よ』 第2回炎帝戦予選6位 添削後
『議事堂の壁空蟬の齧り付く 』 ● [9] @18/12/27◆お題:
年末の満員電車 『地下鉄を這い出吸いたる冬銀河』 第2回冬麗戦予選7位 添削後
『地下鉄を這い出て 冬銀河吸い 込む 』 季語は「冬銀河」。地下鉄の満員電車の息苦しさから解放されたく地上に這い出て、そこに広がる冬の大きな星座を全部吸い込んだというイメージを描写した句。村上名人に中七が破綻しており、複合動詞の意味のつながりが読み取れないと指摘される。先生は発想は良いが、「吸いたる」で誤解を受けるとして語順を添削。押さえは文語を含めて3通りの添削を提示された。
● [10] @19/01/24◆お題:
冬の自動販売機 『飲み干す光雪晴れの缶ジュース 』 3級へ
1ランク昇格 添削後
『ひかり 飲み干す雪晴れの缶ジュース 』 季語は「雪晴れ」。雪が止んだ日の窓の外は銀世界だが太陽が燦燦(さんさん)と輝いている。その光ごと全部飲み干したいという気持ちが、缶ジュースとともに鬱陶しかった気持ちを全部飲み干すイメージと重ねたと語った一句。梅沢名人は句またがりの型を詠めることを称賛し、松岡は「アーティストの先輩」と梅沢を持ち上げる。破調の是非がポイントで、「ハツラツとした勢いがある」と先生は評し、内容の勢いが七五五の破調の調べを要求しており、気持ちの良い句と褒めた。ただ、上五の「光」でカットが切れて句が落ち着いてしまうのが勿体ないと指摘し、よりハツラツとした表現になるよう語順を変えた。先生は感覚のみずみずしさを絶賛した。
● [11] @19/03/07◆お題:
春の号外 (特待生一斉昇格査定SP)
『号外を放つ手取る手春疾風 』 2級へ
1ランク昇格 添削なし
季語は「春疾風(はるはやて)」。「手」に焦点を絞り、号外を配る人の知らせたい気持ちと、もらう人の早く知りたい気持ちでお互いの手が重なる様子を描写し、勢いのある風を吹かす季語との取り合わせで、世の中に嵐を吹かせたい想いを重ねた一句。藤本名人は「中七がやかましい、風情がない」と指摘するが、本人は「号外なんで敢えてそうした。当たりです」と意図を語る。中七の描写の是非がポイントとなるが、見事3回連続の昇格。「見事な臨場感」と評す先生は、兼題写真の映像化に舵を切り、中七の畳みかけでせわしない場面を表現した意図も成功したと高評価。「渡す」ではなく、「放つ」で飛ぶような手つきを表現した点を大絶賛し、季語とも響き合っていると解説。「は」「て」の韻も良く、勢いのあるリズムを称賛した。出来過ぎを疑う浜田と「たまたまでしょ」と納得しない藤本名人だが、本人は意図的だと反論。先生は「たまたまも実力のうちで良い」と仲裁した。
● [12] @19/07/18◆お題:
打ち上げ花火 『涼風や火薬のにほい流れ髪 』 第3回炎帝戦予選7位 添削後
『涼風や火薬の匂ふ夜の 髪 』 季語は「涼風」。夏の終わりを告げる涼風が、花火大会の火薬と彼女の髪の2つの匂いを運んでくる情景を詠んだ純粋な夏の恋の句と語った。村上名人は「取り合わせる言葉が正しすぎる(当たり前だ)」と指摘するも、「純粋な恋で、薄汚れた大人には響かない」と反論する本人。「非常に怖い句。火薬のにおいのする女が銃を持ち、風で髪が乱れている」と梅沢名人が指摘し、藤本名人と揉めるが軍配は梅沢名人だと先生。「夜」「花火」というキーワードが抜け落ちており、兼題写真を知らない読者に伝わらず、言葉で損していると評し、三段切れも問題点と指摘。季語と情報が重なる原因となる罪深い動詞「流れ」を外し、時間情報を入れる添削を行った。最後に、松岡の湯葉の贈答品を"賄賂"として暴露し、一同は本人を問い詰めるが、感謝する先生の言葉を受け、上の順位へ歩む動作で本人は応対した。
● [13] @19/10/10◆お題:
冷蔵庫 『駆け抜けた残暑の泡のハイボール 』 第3回金秋戦予選1位(決勝進出) 添削なし
季語は「残暑」。自身が出演する映画のクランクアップの一場面を切り取った。打ち上げで乾杯するハイボールの泡に、炎天下の撮影で駆け抜けた夏が終わるという心情を重ねた。中田名人から上五の複合動詞の使い方を褒められ、1位通過を祝福される。先生は「とても気持ちよく書けた」句と評し、「残暑の泡」を読者に想像させる語順を絶賛。一瞬、心理的な泡のようなものかと思わせるが、最後の「ハイボール」の映像化で、達成感が実現されたと解説。作者の泡のような心身の疲れが冷たさで吹き飛ぶ爽快感が表現されたと褒め、素直に実体験を書いたものの強みだと総括した。5回目のタイトル戦挑戦にして初の決勝進出を果たした。
● [14] @19/10/10◆お題:
歩行者信号 『交差点律の調べか通りゃんせ 』 第3回金秋戦決勝9位(最下位・次回決勝シード権なし) 添削後
『通りゃんせ 律の調べ の交差点 』 季語「律(りち)の調べ」は琴などの調子・秋らしい趣のこと。横断歩道で青信号になると「通りゃんせ」のメロディーが鳴るが、交差点を人生と考え、秋に聴いた「通りゃんせ」が身に沁みて人生の曲がり角を曲がるのか、進むのかをふと考えたという句。皆藤は「確かにあの曲を聴くと秋らしい感じが実感できる」と述べる。先生は短調の調べのような秋を意味するマニアックな季語を用いたと語るも、疑問の「か」が季語の説明になり、季語の力が弱まった点が惜しいと指摘。語順を入れ替えて「通りゃんせ」から始めれば、読み手は子どもが遊ぶ様子を思うが、最後に交差点とわかると解説し、添削後なら順位は上がったと添えた。最下位に沈んだ本人だが、「時代は変わりつつある」と意味深に語り、「やれる俺」と自信を噛みしめていた。
● [15] @19/12/26◆お題:
年末年始の駅弁売り場 『弁当あり水屋に三つ冬の朝 』 第3回冬麗戦予選8位 添削後
『冬の朝水屋に弁当の 三つ 』 季語は「冬の朝」。「水屋」は台所。前回の1位通過の句より自信があると語った挑戦は、上五で言い切りの形を選び、母親の作った弁当を想定。台所にある3つの弁当は何かと思いきや、下五で寒さの厳しい冬の未明の時間に早起きして子や主人の弁当を作る母の状況を描写したと語った。「何がダメ?」と疑う本人に中田名人は「綺麗にまとめたが普通の句ですね」と真顔で語る。ジュニア名人は三段切れではないかと指摘し、先生も問題点に挙げる。本人の意図は理解できるとしながら、広い光景から構築して最後に「三つ」が残る方が映像として分かりやすいと語り、季語を最初にする語順へと変える。本人は「直してたら(順位は)どこまで行っていたか?」と質問するも、先生は「1つ上位かな」と凡句だったことを告白。今回は発想が飛ばなかった。
● [16] @20/02/13◆お題:
観覧車 『山笑う赤ちゃん象に哺乳瓶 』 1級へ
1ランク昇格 添削なし
「山笑う」は春の山があたかも笑うかのようなという長閑な季語。タイトル戦の不調で俳句制作への限界を感じたが、浜田に励まされてやる気を吹き返したという挑戦。春の胎動や生命の息吹を感じる季語を用い、兼題写真から観覧車があるサファリパークの景色を思い出して象の赤ちゃんへと発想を飛ばした。村上名人は「良さそう…」ととぼけるも、特待生はさすがで大きな失敗がないとコメントする。査定ポイントは季語「山笑う」の取り合わせの是非。「とても愉快」と評す先生は、本当に楽しい句で、季語からの言葉の展開が良く、本来は大きいはずの象の赤ちゃんが出てきて、本来小さいはずの哺乳瓶が大きいという滑稽さを表現したと解説し、作者の意図をコンパクトに言語化したと褒める。もう1つ褒めたい点として「に」の選択を挙げる。悩んだという本人は、「の」の場合は瓶の絵柄と思われるのが嫌だと語り、感服する先生。「の」だと瓶のみを指す意味になるが、「に」なら象にミルクを与える動作が映像化されると解説。何も指摘できない名人衆に浜田と先生がダメ出しをするが、見事に4連続昇格で名人王手に。
● [17] @20/03/12◆お題:
絆創膏 『春の星ギターケースに絆創膏 』 第4回春光戦予選Bブロック4位(予選敗退) 添削なし
季語は春の宵に潤むような「春の星」。春の夜に路上ライブでギターを弾く男性がいた。前に置かれたギターケースに綻びを直すのかファッションなのか、絆創膏がステッカーと共に貼られている。薄曇りにある春の星とアマチュアミュージシャンの夢に繋げたと語った。先生は「ちゃんと出来た良い句」と評し、ゴチャゴチャせず、ストレートに詠んだ姿勢を褒める。青春性を感じさせる季語に加え、路上で演奏する若者が中七と季語で読み取れ、その挫折や再起力を下五で表現したと解説。添削は不要で、決勝に残っても良い出来だと解説した。残念ながら決勝進出とならず、本人もボーダーラインを下げてくれないかと懇願するも叶わなかった。
● [18] @20/07/23◆お題:
封筒 『夏暁や封蝋も今固まりぬ 』 第4回炎帝戦予選B3位(予選敗退) 添削後
『夏暁や封蝋の い ま 固まりぬ 』 季語は「夏暁(なつあけ)」。夜通しで大切な人に手紙を書く人物が、何度もやり直しながらようやく書けた頃、手紙の封で蝋を落とし、割り印を押す"封蝋"で、蝋が今固まる。ちょうど夏暁で日が明けてきた頃だと語った。梅沢名人は「中七の"も"が駄目」と指摘し、時間稼ぎをしながら「の」にすべきだと正解を当てる。先生は、本当に良い句で知的だと評す。静かな書斎やインクの匂いを感じ、手紙を書き終えた静けさが出ると述べ、時間経過を含む季語に敢えて「今」「固まりぬ」とささやかな時間経過を添えてくるのは上手だと実力を認める。助詞「も」と言い過ぎているのが勿体ないと指摘し、封蝋が固まったと書くだけで読み手は想像してくれると語り、さらに、「いま」と平仮名にすると一行で書いたときに綺麗だと解説した。2度目の予選通過とはならなかった。
● [19] @21/02/25◆お題:
きのこの山とたけのこの里 『朧夜や一人キャンプのホットチョコ 』 第5回春光戦予選C2位(決勝進出) 添削なし
季語は「朧夜(春)」「キャンプ(夏)」。「朧夜や」で強調してメインの季語と意思表示した季重なりの一句。本来キャンプは多人数で楽しむが、一人キャンプは寂しさが出る。自由と孤独の間を埋めるべく温かい「ホットチョコ」が手元にある光景だと語った。梅沢名人は季重なりの挑戦を、中田名人は映像描写力を称賛する。先生は、「朧夜や」と打ち出した後に、「一人キャンプ」が出てくる意外性に仰天し、最近流行している「一人キャンプ」は夏のキャンプの賑やかさがなく、静けさ・穏やかさ・寂しさが入った効果を解説。「朧」の湿りけと、「ホットチョコ」の寒い時に飲むという言葉の呼応を褒め、句は評価が揺れ動きながら、作者がそういうことを言いたいなら、これは認めるしかないと先生は降参。添削なしとなり、タイトル戦2度目の決勝進出を決めた。
● [20] @21/03/25◆お題:
じゃんけん 『助手席のシートに温み鳥曇 』 第5回春光戦決勝9位(次回シード権なし) 添削後
『助手席に君 のぬ く も り 鳥曇 』 「鳥曇(とりぐもり)」は晩春の季語で渡り鳥が北に帰る頃の曇り空のこと。あるカップルの別れの場面で、先ほどまで車の助手席にいた人が今はもういなくなっている様子を描写。北に帰る鳥の群れが悲しさと未来への希望を重ねたという一句。兼題から発想を飛ばし過ぎたなとは思うが、誰かと誰かがそれぞれの道を行く手段と考えた時にこの景色が生まれるのではないかと語った。東国原名人や梅沢名人から「助手席」「シート」の重複を指摘される。先生は、兼題写真からの発想の方向性が受け手として解明しにくく、発想の糸口が読み手に分かるようにしてあれば納得しやすいと語る。別れの場面の意図ならば、「助手席」「シート」と念押しするより、主体の人物を明確に「君」と書いた方が得だと指摘する。素直に上五を「助手席に」とし、「君のぬくもり」と平仮名に変え、最後の「鳥曇」と「くもり」の韻を踏むように添削。彼女が去った部分に季語の真理が入っていくと解説した。本人は「悩んだこと全て先生がおっしゃってくれて勉強します」と次回への意気込みを語った。
● [21] @21/08/12◆お題:
打ち揚げ花火 『大煙火五臓六腑を鷲掴む 』 2級へ
1ランク降格 添削後
『大花 火五臓六腑を鷲掴む 』 季語は「煙火」は花火の傍題。子どもの時に行った花火大会は楽しかったが、地球上でこれほど大きい音があるかと思うほど、「ドーン!」という音が怖いと感じ、その音を表現したかったと語った。梅沢名人が「大煙火」ではなく「大花火」で良いと指摘すると、「強い感じがしてわざとやった」と語る本人。査定ポイントはあえて「煙火」を選んだ是非。「花火と書くべき!」と評す先生は「煙火」で花火を指すとしながらも、「煙火」は煮炊きの煙と火、のろし、花火と意味が3つほどあるため、読み手が迷い始めると指摘。「音に特化している」意図なら「花火」で良いと述べる。また、後半の表現に自信があったと理解できるとしながら、「五臓六腑」を花火の表現として使った句は多くあり、俳句の常識的表現の1つを掴み取ったタイプの一句だと指摘し、2つの問題点を挙げた。自身初の降格となったが、「良いじゃないですか。お誕生日ですよ。おめでとうございます」とオンエア日が50回目の誕生日という本人を先生は優しくなだめ、「救われました」と述べる本人だった。
● [22] @21/09/16◆お題:
読書の秋 『流星や馴染みの書肆も"閉店す" 』 第5回金秋戦予選C3位(予選敗退) 添削後
『馴染みな る 書肆の閉店星流る 』 季語は「流星」。「書肆(しょし)」は本屋のこと。コロナ禍の影響でお馴染みの書店が閉まっており、張り紙で「閉店」すると書かれていた。流星は燃え尽きながら流れていくが、願い事を叶えるかのような希望を少し持っていて、「また頑張ってほしい」願いを重ねたと語った。横尾名人は、「季語のセンスはあるが『も』が散文的」だと評す。先生も「流星」の季語の良さを褒め、ずっと付き合いのあった大好きな本屋さんがとうとう閉店する心情を示し、季語によって一句の価値が決まったと解説する。悩む箇所が2箇所ほどあり、中七「も」の散文臭さと、下五の鍵括弧を挙げる。鍵括弧は「"閉店"」だけで張り紙の言葉と分かるが、「"閉店す"」となると逆効果だと指摘。「馴染み」から始めた方が良いと語順を変える先生は、「馴染みなる」で上五を整え、「書肆の閉店」とし、「星流る」と切れ字を消す添削をした。見上げた空に星がスッと流れていくと、本人の語った小さな希望も見えてくる味わいとなり、本人は「いや、もう修行やと思って」と素直に反省した。
● [23] @22/03/10◆お題:
ライスorパン 『「Where you go?」機窓に春の星あまた 』 第6回春光戦予選A3位(予選敗退) 添削なし
季語は「春の星」。兼題写真から飛行機の機内食を質問される場面に発想を飛ばした。「Where you go?」は文法的には「Where do yo go?(目的地はどちらですか?)」が正しく、機内で隣の席に座る外国人との会話で、その会話後に機窓から春の星を見て、地上で見るよりも綺麗なふわっと広がるところに感動した感慨と、春の自分の未来を予測するような景色に出会えた喜びを表現した大好きな句だと語った。志らく名人は「英文を用いるのは冒険だが、それと『星あまた』との取り合わせが微妙」とコメント。先生も英文を用いた冒険には同意。「機窓」で飛行機の窓からの光景、柔らかく美しい季語「春の星」で窓の外に春の星があり、その星が沢山ある「あまた」で視線が広がっていき、大変心を使って語順も考えていると評す。兼題写真からパンかライスか聞かれる点も想像させ、きちんと出来ていると褒める。作者が「この句が好きだ」というのにも共感し、添削は行わなかった。しかし、4人中3位という結果に沈み今回も予選通過は果たせなかった。
● [24] @22/09/01◆お題:
ファッションの秋 『星月夜ファーストピアスの重力 』 第6回金秋戦予選A3位(決勝進出) 添削なし
季語は「星月夜」。耳に穴を開けた際の最初のファーストピアスが鉄製で、その重さを感じる点と、星月夜の美しさに対する耳の痛みの感じを取り合わせたと語った。梅沢名人は「"重力"が気になる」、村上名人は「言葉の質量問題で損した」と両者褒めながらも問題点を指摘。先生は、指摘された点について読み手次第で評価が分かれると指摘。「ファーストピアスの」という展開で、初めて穴を開けたピアスの微かな重さ・存在を重力として書きたかった作者の意思は伝わり、表現行為としては尊重すべきだと述べる。後半が素敵な詩の言葉だが、「星月夜」が背景になりかかってるのは勿体ないとはいえ、句としては出来ているものと判断できると評した。ブロック3位ながらも添削なしとなり、予選通過を決めた。
● [25] @22/09/22◆お題:
道頓堀(大阪府) 『かすうどんバッテラなんぼ?浮寝鳥 』 ふるさと戦③(大阪)5位★ 添削後
『浮寝鳥ふ え て バッテラかすうどん 』 季語「浮寝鳥」は、越冬のため毎年日本に渡ってきて、川や湖沼で冬を過ごす水鳥のこと。大阪のことを詠んだという本人。浮寝鳥は大阪の川でよく浮かんでいる姿で、それは大阪人の辛い事・悲しいことを見せない姿。かすうどんを食べて、バッテラも食べとこか?「なんぼなん?」と、店員に聞く大阪人の逞しさを詠んだと語った。梅沢名人は「情報を詰め込み過ぎ」、藤本名人は「うるさく、大阪人の悪い癖が出た」と厳しく指摘。先生は、「かすうどん」「バッテラ」の響きは面白いが、「なんぼ?」まで書くとうるさくしてしまうと指摘。季語「浮寝鳥」をよそに追いやって除け者にしてしまった点が問題だと続ける。「浮寝鳥」から始め、最近「ふえて」きたと描写の単語を入れ、「バッテラかすうどん」と語順を整えた。写真と組み合わせた時に、「あ、この写真の近くに川があって、川に浮寝鳥が増えてきて、バッテラ食べようか、少しヒンヤリしてきたから温かいかすうどんも食べよう」という流れになり、"写真俳句"の評価がグンと上がると解説した。本人は「うどんよりも先にバッテラ頼んだってことですよね」と添削で食べ物の語順が入れ替わったことに反応。しかし、浜田から「うるさいねん、お前!」、藤本名人から「大阪人の悪い所出てる」と再び言われて反省することに。
● [26] @22/10/13◆お題:
大谷翔平 『天高し野球ノートの三箇条 』 第6回金秋戦決勝5位(シード権なし) 添削なし
季語は「天高し」。「野球ノート」は大谷翔平選手が父と交わしていた野球に関する交換日記で、父が事あるごとに野球の三箇条を書き、「声を出す」「キャッチボールする」「走る」を全力で取り組むというシンプルな三箇条を守って、人間としての基礎が今の彼を作っていると語った。指名されたものの、梅沢名人に先に答えられた犬山紙子は「定型のリズムが良く、季語が大谷選手のイメージと似合う」と称賛する。先生は、中七下五がシンプルだが明快で、上五に季語を置く基本の型をキッチリと使っているのも良いと褒める。読者は「三箇条」まで読んだ瞬間、その内容を想像し始める力もあり、とても気持ちの良い句で、直しは要らないと解説した。
● [27] @23/03/02◆お題:
卒業[式の壇上] 『古巣あり教えの庭よいざさらば 』 第7回春光戦予選A5位(予選敗退) 添削後
『楠 の 古巣よ雲よ いざさらば 』 季語「古巣」は雛が巣立って打ち捨てられた巣。後半は卒業歌で有名な「仰げば尊し」の歌詞の引用で、「教えの庭」は校舎や校庭など全般を指し、校庭の木にある鳥の「古巣」と同じくこの地から巣立っていく思いを詠んだと語ったが、最下位に思わず首を傾げる本人。藤本名人は「オリジナリティーがない」、梅沢名人は「季語が光ってない」と批評する。先生は、季語「古巣」が比喩に読まれ、"この校舎が自分にとっての「古巣」なのか"と誤解される可能性を指摘するが、曖昧なアドバイスしかしない梅沢名人を叱責する。映像にすべきだと忠告する先生は、学校に多く植樹される「楠(くすのき)」を入れて、「よ」で詠嘆。後半は歌詞の力を借りすぎだと指摘し、「雲よ」と小さく詠嘆を重ねた。楠・古巣はどちらも高い場所のため、「雲よ」の見上げる視線の向こうに卒業の思いがゆっくりと滲んでくると述べる先生。今回のタイトル戦は予選通過とはならなかった。
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