(2021年版)
プレバト!!の俳句コーナーでお馴染みの
夏井先生の
YouTube投稿動画の内容を紹介するページです。
夏井いつき俳句チャンネルに動画が投稿されるたびに、更新を予定しています。
動画の更新は
毎週木曜夜8時・日曜夜8時の週2回です。
当ブログ記事更新:2022年1月2日 →関連まとめ記事(
2020年/●/
2022年/
2023年)
→ページ下部へ(リンクは各ページに飛びます)◆夏井いつき俳句チャンネル◆夏井いつき氏のツイッター / インスタグラム
※当ブログ記事が夏井いつき俳句チャンネルで紹介されました。夏井先生、家藤正人さんありがとうございます(^^♪。なお、動画[103]内にございます「着流きるお氏」は松山在住の俳人であり、当ブログ編者とは無関係です。なお、この件は動画[118]にて訂正されました。ありがとうございます。なお、関連動画詳細は以下一覧の[103][118][170]よりご覧下さい。 |
※動画1~71は
2020年版、動画176以降は
2022年版、
2023年版の記事をご覧下さい。
※番号クリックでページ内ジャンプします。
→ページ下部へ[72] | 1/3 | 【季語】新年は5つ目の季節?今すぐ使える季語を紹介します |
[73] | 1/7 | 【おしゃべり俳句】第一回の結果発表をします! |
[74] | 1/10 | 【俳人列伝】正岡子規について語ります |
[75] | 1/14 | 63歳人生初グラビア?文藝春秋の裏話をします |
[76] | 1/17 | 【人生相談】親がうるさいです |
[77] | 1/21 | 【記号】記号を俳句に使ってもいいの? |
[78] | 1/24 | 【悪態句集】YouTubeから書籍化?みなさんの悪態俳句を募集します |
[79] | 1/27 | 【謝罪】前回の季語手帖の回についてお詫びしなければならないことがあります |
[M1] | 1/30 | 松山市主催「いい、つばきの日」記念イベント夏井いつきのリモート句会ライブ |
[80] | 1/31 | 【逆人生相談】僕の切実な悩みを聞いてください |
[81] | 2/4 | 【俳句のしりとり?】『しり2字 3角パス』をやってみた |
[82] | 2/7 | 【第2回おしゃべり俳句】子どもの大胆な発想を夏井が大絶賛! |
[83] | 2/11 | 【2月の正岡子規】季重なりの句でみなさんの疑問にお答えします |
[84] | 2/14 | 【ワンピースと言葉】夏井いつきがまさかのONE PIECEとコラボ? 「言葉のチカラ」について語ります |
[85] | 2/18 | 公募ガイドは光の書?季語の六角成分図でボツから逃れよう |
[86] | 2/21 | 【季語】知っていても使えない?一番長い季語はなんと二十五音! |
[87] | 2/25 | 【正人の人生相談】みなさんのコメントで悩みが解決しました! |
[88] | 3/1 | 【連載開始!】「女性セブン」でエッセイの連載が始まります |
[89] | 3/4 | 【質問】理系は俳句に向いている? |
[90] | 3/7 | 【質問回答】投句の裏側!なぜ投句料が必要なんですか? |
[91] | 3/11 | 【3月の正岡子規】上五の「や」について学びましょう |
[92] | 3/14 | 【おウチde俳句】梅沢富美男さんがブログで参加表明? 「おウチde俳句くらぶ」についてお話しします |
[93] | 3/18 | 【いつきの怒り】プレバト!!スタッフと大喧嘩?句またがりを一緒に学びましょう |
[94] | 3/21 | 【花守祭】オンラインオフ会の参加方法をご説明します |
[95] | 3/25 | 【オンライン句会ライブ告知】ネスレさん主催の句会ライブで豪華プレゼントをゲット? |
[96] | 3/28 | 【悪態俳句】「週刊現代」に素晴らしい記事を書いていただきました |
[97] | 4/1 | 【感謝】NHK放送文化賞をいただきました! |
[98] | 4/4 | 【初・外ロケ!】「一句一遊」収録の裏側をお見せします |
[99] | 4/8 | 【未発表句】どこからが未発表句ですか? |
[100] | 4/11 | 【句会ライブ】三千人と俳句を楽しめる?句会ライブについて説明します |
[101] | 4/15 | 【はっきり言います!】上五の字余りを推奨しているわけではございません |
[102] | 4/18 | 【プレバト!!の実り】プレバト!!の俳句が教科書・歳時記に! |
[103] | 4/22 | 【祝一周年】YouTuberデビューからの一年を振り返ります ※当ブログを動画内で紹介しています |
[104] | 4/25 | 【4月の正岡子規】一物仕立てについて解説します |
[105] | 4/29 | 【一物仕立て】取り合わせまでのグラデーションを解説します |
[106] | 5/2 | 【おしゃべり俳句:第三回】子どもの素直で可愛い俳句に思わず笑顔に |
[107] | 5/6 | 【人生相談】夫との関係が破綻してしまったあなたに |
[108] | 5/9 | 【俳句ポスト365】リニューアルした俳句ポスト365についてお話しします |
[109] | 5/13 | 【人生相談】嫁の飯が不味いあなたへ |
[110] | 5/16 | 【質問】俳人ってメシ食えるんですか? |
[111] | 5/20 | 【季語数えてみた:前編】季語って全部でどれぐらいあるんですか? |
[112] | 5/23 | 【本紹介】フルーツポンチ村上さんが本を出版されました! |
[113] | 5/27 | 【季語数えてみた:後編】季語が多すぎるので○○を募集します |
[114] | 5/30 | 【人生相談】朝4時に目が覚めてしまいます |
[115] | 6/3 | 【本紹介】『ひらめく!作れる!俳句ドリル』について岸本先生と一緒にお話しします |
[116] | 6/6 | 【正人が大ファン】夢枕獏さんを紹介します |
[117] | 6/10 | 【6月の正岡子規】子規の句から季重なりを学びましょう |
[118] | 6/13 | 【コメント返し】次の生配信は○万人記念? ※当ブログ編者に関して訂正されました |
[119] | 6/17 | 【本紹介】『食卓で読む 一句、二句。』についてお話しします |
[120] | 6/20 | 【一句一遊ちょっといい話】新企画!一句一遊で紹介しきれなかったお便りを紹介します |
[121] | 6/24 | 【575でカガク!】新たな投句先の紹介!テーマは重力波? |
[122] | 6/27 | 【人生相談】夫があまりに高圧的で逃げ出したいです |
[P1] | 6/30 | 「俳句ポスト365」リニューアル×5Gエリア開設キックオフイベント句会ライブ |
[123] | 7/1 | 【季語数えてみた:完結編】季語は全部で〇〇個です! |
[124] | 7/4 | 【本紹介】新刊「夏井いつきの俳句道場」を紹介します |
[125] | 7/8 | 【これで脱凡人!】新企画・夏休み凡人あるある脱出シリーズ |
[126] | 7/11 | 【俳句甲子園】市民スポンサーになっていただけませんか? |
[127] | 7/15 | 【脱凡人】3〜7音の正直な気持ちで「才能アリ」へ! |
[128] | 7/18 | 【5Gイベント】ドコモ5G句会ライブを振り返ります |
[129] | 7/22 | 【凡人あるある】凡人パーツを推敲してみましょう |
[130] | 7/25 | 【ベストシリーズ】聞いてほしい!観客が少なかった句会ライブ・ベスト3 |
[131] | 7/29 | 【凡人脱出】発想は才能じゃない!〇〇だ! |
[132] | 8/1 | 【ベストシリーズ】つらかった・きつかった現場ベスト3は? |
[133] | 8/5 | 【7月の正岡子規】一句の中に同じ単語や漢字を二回使っている子規の句を紹介します |
[134] | 8/8 | 【人生相談】頑張れ、頑張れと言われて疲れてしまいました |
[135] | 8/12 | 【8月の子規】8月の暑さを子規はどう表現したのか |
[136] | 8/15 | 【季語】「八月」という季語を分析してみましょう |
[137] | 8/19 | 【大人の凡人脱出】データで紐解く、大人の凡人あるある脱出作戦を始めます |
[138] | 8/22 | 【偽物発見】真夏井先生!?チョコレートプラネットさんに物申す! |
[139] | 8/26 | 【凡人脱出】コメント欄から凡人を脱出した発想をご紹介します |
[140] | 8/29 | 【音楽と俳句】宮崎国際音楽祭に出演しました! |
[141] | 9/2 | 【おしゃべり俳句】第四回!可愛い俳句にメロメロ |
[142] | 9/5 | 【人生相談】3年ぐらいの浪人なら、人生の取り返しはつきますか? |
[143] | 9/9 | 【音便シリーズ】難しくない!イ音便について学びましょう |
[144] | 9/12 | 【紅白俳句合戦】皆さんの投票で勝敗が決まります! |
[145] | 9/16 | 【9月の子規】三大切れ字「けり」を知って発想のきっかけを作りましょう |
[146] | 9/19 | 【投句案内】賞金はなんと○○万円!令和相聞歌のご案内 |
[147] | 9/23 | 【大人の凡人あるある】みなさんの「無人駅」の句を紹介します |
[148] | 9/26 | 【祝7万人】チャンネル初のプレゼント企画を行います! |
[149] | 9/30 | 【大人の凡人あるある】凡人を脱出した「無人駅」の優秀句を発表します |
[150] | 10/3 | 【正岡子規こぼれ話】病床で子規が見たかったものとは・・・? |
[151] | 10/7 | 【文法と解釈】「サタン離れぬ」の解釈について考えましょう |
[152] | 10/10 | 【紅白俳句合戦】第一回紅白俳句合戦の結果発表をします |
[153] | 10/14 | 【尻二字三角パス】ゲスト登場!夏井いつきの妹と尻二字三角パス! |
[L3] | 10/17 | チャンネル登録者7万人到達記念句会ライブ |
[154] | 10/17 | 【裏話】実の妹、ローゼン千津さんと共著の裏話をします |
[155] | 10/21 | 【10月の子規】漱石は小説に書き、子規は句を作った遊郭とは... |
[156] | 10/24 | 【紅白俳句合戦】皆さんに審査員のジレンマを味わって欲しい |
[157] | 10/28 | 【音便シリーズ】ウ音便を使って簡単に俳句の雰囲気を変えてみませんか? |
[158] | 10/31 | 【人生相談】勉強する意味も理由も見つからない...そんなあなたに一句 |
[159] | 11/4 | 【11月の子規】色彩をうまく使った子規の句を紹介します! |
[160] | 11/7 | 【投句案内】組長が自画自賛するエッセイを読んで、 『年賀状に載せたい一句』を投句してみよう!【筆ぐるめ俳句大賞 2022】 |
[161] | 11/11 | 【11月の子規こぼれ話】組長が嫉妬する子規の句がこちらです |
[162] | 11/14 | 【懺悔があります】11月の子規こぼれ話で紹介した句について... |
[163] | 11/18 | 【文法と解釈】「サタン離れぬ」の様々な考察を紹介! |
[164] | 11/21 | 【人生相談】仕事以外に趣味も興味もありません。定年後が恐ろしい。 |
[165] | 11/25 | 【大賞受賞】夏井いつきが種田山頭火賞を受賞しました! |
[166] | 11/29 | 【人生相談】人間関係を長く続けられない…ほどほどの関係からみんな離れていく |
[167] | 12/2 | 【出演決定!】NHK プロフェッショナル 仕事の流儀に出演!12月7日放送 |
[168] | 12/5 | 【投句案内】「あまひや」な一句を募集!キシリクリスタル発売20周年企画 |
[169] | 12/9 | 【紅白俳句合戦】第2回戦の結果発表!いつきさんの予想は白! |
[170] | 12/12 | 【プレゼント企画】プレゼントの該当者はあなたかも!登録者7万人到達記念企画 ※動画の最後に当ブログが紹介されました |
[171] | 12/16 | 【おしゃべり俳句】第5回目!今回も可愛さ溢れる子どもの俳句がたくさん! |
[172] | 12/19 | 【365日季語手帖】2022年版が完成しました! |
[173] | 12/23 | 【12月の子規】子規シリーズ最終回!? 1月から始まったシリーズがついに... |
[174] | 12/26 | 【令和相聞歌web投票】あなたの一票が10万円の行く末を左右する! |
[175] | 12/30 | 【子規シリーズおまけ回】子規から俳句の教訓を学ぼう! |
(タイトルクリックで各YouTubeページに飛びます。)[72]【季語】新年は5つ目の季節?今すぐ使える季語を紹介します<2021/1/3公開>新年のご挨拶から開始した2021年最初の動画は、
新年の季語を取り上げます。動画配信日の1月3日を表す「
三日」が季語であることを最初に紹介します。「三日かな」で終わる俳句も多いと述べる先生は、
正月気分がたっぷり残っている印象があると語ります。
「
猪日(ちょじつ)」も1月3日の季語。
中国の風習からきている呼び名で、6種の家畜を配し、
それぞれの家畜を屠殺しない日を決めているそうです。「猪」は
豚を意味するため、1月3日は豚を屠殺しない日を意味します。ここで、6種類の家畜が何であるかに話題が展開します。
1月1日を表す季語「
元日」の傍題は「
鶏日(けいじつ)」。「初鶏(はつどり)」は元日に鳴く
鶏を指します。
1月2日を表す季語「
二日」の傍題は「
狗日(くじつ)」。「狗」は
犬のことですが、家畜として扱うのは問題があると早々に話を終わらせるお二方。
1月4日を表す季語「
四日」の傍題は「
羊日(ようじつ)」。ジンギスカンなどの
羊肉を用いた鍋料理も有名です。
1月5日を表す季語「
五日」の傍題は「
牛日(ぎゅうじつ)」。
牛もミルクやチーズ、あるいは食肉として頂く重要な家畜の一つと語る先生。
1月6日を表す季語「
六日」の傍題は「
馬日(ばじつ)」。牛同様に農耕や運搬に用いたり、場乳や
馬肉として頂くのはモンゴルの大平原では当たり前だったと語ります。
1月7日を表す季語「
七日」も俳句でよく用いられますが、傍題に「
人日(じんじつ)」があります。山本健吉氏らが監修した『カラー図説 日本大歳時記』を読み上げる家藤さんは、人日は
死刑を行わない日だと述べます。7日に
七草がゆを食べる風習も"人を労わる"考え方からきているのではないかと先生は語り、「七日正月」の最初の一区切りと補足します。「七日」「人日」のニュアンスの違いを詠み分けられると面白いとも述べます。
元日 | 二日 | 三日 | 四日 | 五日 | 六日 | 七日 |
鶏日 | 狗日 | 猪日 | 羊日 | 牛日 | 馬日 | 人日 |
年末年始に1日5句ずつ作句し、小晦日(旧暦の12月29日)から「七日」(1月7日)までに合計50句作れるトレーニングをすると語る先生は、
「五日」「六日」の詠み分けが最も難しいと感触を述べます。他の日でも良く思えてしまい、季語として立てるのが難しいとも述べる家藤さん。先生は、ぜひ「四日」も含めて詠み分けに挑戦して欲しいと語りました。
[73]【おしゃべり俳句】第一回の結果発表をします!<2021/1/7公開>
動画[68]で語った「おしゃべり俳句」の第1回結果発表。子どもの言葉を12音採取し、季語を入れてコメント欄に寄せていただいたものを紹介します。
①りんくん(4歳)の「太陽は悪いやつだ眩しくて前が見えない」。無季の自由律俳句調ですが、自動車に乗って眩しく感じたシーンから。季語と取り合わせず、このまま置いておいてよいと先生は述べます。
②kokoro S 小学生男子の「変な匂い?雨の匂いだ!傘傘傘」。最後の「傘」のリフレインを褒める先生ですが、雨が降りそうな時に、独特の匂いを感じることがあると語ります。傘が沢山ある靴箱か、母に台詞を叫ぶ場面かと想像が膨らむお二方。これも無季で味わいたいと述べます。
③eiko+の「夕焼やばあばこれってよるごはん?」。子が実家に帰省している場面で、まだ夕焼けの出る時間帯なのにもう夜ご飯かと時差のような感覚を表現しています。西日本は日が暮れるのが遅いことを補足する先生ですが、季語「夕焼や」は親が探したのではないかと推測します。
季語は大人が選ぶのも良し、5音の季語を子どもと一緒に選ぶのも良いと補足します。
④shun watanabeの「霜柱ポテトチップがかわいそう」。季語「霜柱」を歩く音から歯で砕くポテトチップへと連想された一句のようです。食べる物も踏んだらこのような音がするに違いないと語る先生。季語と共に体験があり、これで良く素敵だと太鼓判を押します。
⑤小物打楽器 5歳の「冬至って太陽お風邪ひいとるの?」。季語「冬至」は一年で最も昼が短い日ですが、太陽が風邪を引いているから、高く昇ってこれないという発想です。5歳のフレーズの可愛さに酔いしがれる先生。
⑥たくみ 7歳の「かなしみをちゃんとあじわえおこるから」。生き物の本が好きだという本人が、絶滅危惧種を生み出す人間への警鐘を鳴らす一句のようです。動物たちの悲しみを味わえという命令形と動物の憤りを表現した句だと解釈を深める先生は、無季の句として手を入れない方が良いと語ります。
⑦cさんの息子 3歳の「すくわかるしゃべらんとって」。口答えする様子の子だとすぐさま爆笑する先生。鉛筆の片付けを命令した親に反撃した様子だそうです。最後に季語を入れた方が良いと先生は、ぜひ自分で探して欲しいと投稿者に投げかけます。
⑧cさんの娘 6歳の「かっぱのたまごのゆでたまご」。良いセンスだと述べる先生は、ワクワクするようなフレーズだと語ります。スーパーボールで遊んでいる際に放った言葉のようです。頭に季語を入れるべきだと提案する先生は、前出の息子さんと合わせて、来年の伊藤園にいけるかもと期待を示します。
⑨smileahappyさん 幼少期の娘4~8才ころの「秋はきつねのしっぽ色」。こがね色の豊かな感じが良いと先生。「狐」も季語ですが、「きつねのしっぽ色」が「秋」と言う季節の色に比喩されているとして、このまま置いておきたいと語ります。
⑩河村峻太朗さんのお友達の子ども 2歳の「名月やかめんらいだーぶらっく!とお!」。季語「名月」と「仮面ライダーブラック」との取り合わせが面白いですが、渋さもあると語るのは家藤さん。1987~1988年と家藤さんが幼少期の頃の作品で、家藤さんも割と好きだったと語ります。12音の採取+5音の季語という大事なポイントを押さえています。
そして、最後に夏井先生が1位に推した句を最後に発表します。
⑪ガヲガヲさんの息子(こうき) 3歳の「風花やトリケラトプスのくつでいく」。子ども本人の生の台詞のはずだと語る先生は、園に行くのにトリケラトプスの柄の靴で今日は行く場面であり、お気に入りの靴ではないかと推測します。季語「風花」の舞う場面の後、恐竜の名前が出て、最後に「くつ」と分かる語順も上手いと太鼓判を押し、今日のお手本だと称賛します。
先生は、子どもの言葉に手を入れずにそのまま活かすのが物凄く大事だと重ねて述べ、子どもなりにプライドがあるため、自分の言葉をそのまま褒め、俳句の形になる所に子どもの満足や次へのやる気が出てくると念押しします。
「おしゃべり俳句」は引き続き募集するとのことで、この動画のコメント欄に寄せてほしいそうです。続編にも期待しましょう。
[74]【俳人列伝】正岡子規について語ります<2021/1/10公開>
2021年1月の俳人列伝は正岡子規(まさおかしき)。シリーズ第一回の動画[55]長嶋有以来ですが、松山の代表的な俳人を忘れてはならないと最初に切り出します。子規は動画[65][66]の助動詞回でも「柿食へば~」の句を取り上げています。
子規の作品をいくつか紹介します。
①「春や昔十五万石の城下哉」、②「松山や秋より高き天主閣」。松山市内に句碑が立つため、松山在住のお二方にとっては馴染み深い俳句とのこと。両句とも松山を写生した挨拶句です。
①は「春や」「城下哉(かな)」と切れ字が2つあるのではないかとよく質問されると語る先生。この「や」は強調ではなく、「はい、春ですよ」と調子を整えるニュアンスの用法。「かつて15万石(で入藩した領家)の城下であったことよ」という「かな」の詠嘆が一句を包むと解説します。
一方、②「松山や」は地名+切れ字「や」の用法ですが、使い方が難しいのではと家藤さん。「秋風や」など季語+「や」の用法は俳句の基本形の1つですが、抽象名詞+「や」+季語を含むワンフレーズという型は中級者以上の難しい技と押さえる先生。さらに、固有名詞+「や」は上級者でも勇気がいり、「富士山や」で良い俳句を作れる気がないと家藤さんが述べます。「東京や」「大阪や」であれば、共有できる都市のイメージが強くありますが、地方都市の「松山や」となると難易度が上がるのです。
作者の地元である「松山」を強調した後の展開で、さらにチャレンジャーに攻めているポイントを挙げます。本来俳句は季語「秋」が主役にならないといけませんが、「秋より」と季語を比較対象にし、我が城下松山城の天守閣の方が高いと詠んでいます。しかし、「秋」の澄んだ青空が映像として見え、天守閣を押し上げつつも「秋」という季語も損をしないと解説。「空」とは書いていませんが、秋の高くて深い青空も脳内に映像化されます。
「こう見えて上手いのですよ」と子規の句の良さを再確認する先生は、『子規記念博物館』の俳句データベースをよく利用するそうで、子規の膨大な句の中には何とも言えない句もあると語りますが、分析していけばやはり上手いと語って褒め称えます。思わず肩の力が抜けるような部分が共感出来て好きだと述べるのは先生です。
③「うれしさにはつ夢いふてしまひけり」。本来は口に出してはいけない初夢をあまりの嬉しさに言ってしまった体験を表現しています。「とても良いでしょ?」と共感を求める先生は、横顔の陰気臭い肖像画のイメージとは異なる子規の一面が見えるとも語ります。「いふて」は誤用で、連用形+「て」の「いひて」とするか、ウ音便+「て」の「いうて」が正しい例と解説し、反面教師にして覚えてほしいと語る先生。初夢は怖い夢ばかり見ると語るお二方はそれぞれ雑談し、俳句のタネにしたいと先生が笑ってまとめます。
④「おお寒い寒いといへば鳴く千鳥」。作者が「寒い」と台詞を言うと、それに応えるように川辺にいる「千鳥」(冬の季語)が鳴くという一句。台詞だけでは呟きに終わりますが、俳句に書き留めて季語を配せば、取り合わせの句として後世に残る好例だと解説。子規の句はすぐに言葉に出せる句が多いと語る先生。口誦性(こうしょうせい)といい、口に出しやすく、すぐに覚えられ、声にした時に心地よいというのも子規の句の特性だと続けます。
今後は「俳人列伝」シリーズの中に、「子規の1年」シリーズ化の展望を述べ、次回「2月の子規」を撮りたいと意気込みを語りました。
[75]63歳人生初グラビア?文藝春秋の裏話をします<2021/1/14公開>
最近珍しいことがあったというお二方。『文藝春秋』2021年1月号「日本の顔」のグラビアに夏井いつき先生が初めて取り上げられたという報告を行います。仕事ぶりを紹介する特集のようで、先生は2~3日の撮影・密着エピソードを動画で語ります。
主に南海放送ラジオ「一句一遊」の選句過程について、先生は時間を割きます。何週にもわたって紹介されていない人も月曜・火曜のコーナーで紹介する親心があるとのことですが、優秀作品を紹介する金曜日は良い作品を黙々と選ぶため、結果論全てに目を通すそうです。家藤さんが担当する『一句一遊』虎の巻はスピンオフ番組の位置づけです。
次に「伊月庵」の庵主であるとともに、いつき組の組長のプロフィールを紹介。俳句が楽しいと思う人は種まき活動を一緒に手伝ってほしいという想いが書かれた文を紹介します。そして、このYouTube動画を収録する場面も紹介。夫であり先生のマネージャーでもある兼光氏がカメラマンとしてお二方を撮影しますが、非常に狭い空間で撮影せざるを得ないエピソードを語ります。紙面で撮られている写真は家藤さんらの後ろ側から兼光氏を撮影する風景で、動画[65]の助動詞「なり」の撮影場面であることを明かします。
貴重なグラビア特集の喜びを語るお二方は、細々とYouTube動画を続けたいと語って締めました。
[76]【人生相談】親がうるさいです<2021/1/17公開>
今年最初の人生相談。「親がうるさいです」という質問に対し、世界中の親はうるさいものだと先生は窘めるように反論します。息子の追い越し運転での叫びを例に挙げて語りますが、親と喧嘩をせずに仲良く穏やかに暮らせると次の句を紹介します。
口語俳句を得意とし独自の世界を展開する人気俳人・池田澄子(いけだすみこ)の「よし分かった君はつくつく法師である」。代表句は「じゃんけんで負けて螢に生まれたの」。作者の句が大好きだと語る先生は、作者らしく言い切った歯切れの良い句と感触を語ります。作者の質問との関連性に触れ、「君がうるさいと思う親を、今日から蝉の『つくつく法師』と思いなさい」とアドバイスします。親の喋る内容が耳に入らなくなるはずだと述べます。「心配してるな」と受け止めるだけで良く、大したことを親は言っていないはずだと半生を振り返って語る先生。
この俳句を親に向かって心の中で呟けば、心がホコっと笑えるのではなかろうかと先生は忠告。一方がとんがると親子関係はつまらないところで互いに嫌な思いをするため、今日から親を「つくつく法師」と思いなさいと念押しします。それで良いのではないかと語りました。
[77]【記号】記号を俳句に使ってもいいの?<2021/1/21公開>
動画[69]に続き、こんな言葉使っていいのかシリーズ第5弾。今回がシリーズ最終回。記号を使った俳句を紹介しますが、難しいのは音として発音するか。"!"(エクスクラメーション)、"?"(クエスション)、"「」"(鍵括弧)は基本的に発音をしません。
"!"は動画[37]の英語の回で「太陽をOH!と迎へて老氷河」を取り上げましたが、"?"については、それを用いる日本語のフレーズで疑問形を読み取りやすいので、使いどころを考えるべきだと忠告し、よく用いられる"「」"は動画[61]で取り上げた「遺品あり岩波文庫『阿部一族』」にも使われますが、固有名詞や会話部分が中心。ただし、明らかに会話が明快な場合は鍵括弧は用いないのが慣例で、これも使いどころが重要となると先生は解説します。
①依光陽子(よりみつようこ)の「月光や猿・皿・更紗・猿・更紗」。"・"(中点)も案外俳句で用いると先生。連続した言葉と誤解されないよう区切る場合に効果的ですが、安易に使うと意図を指摘されやすい部分。「猿皿」では意味が誤読されますが、この句はテンポよいリズムにも一役買っていると語る家藤さん。
②浦川聡子(うらかわさとこ)の「トランペットの一音#して芽吹く」。軽やかな内容で、季語「芽吹く」も似合っていると語る先生。"#"(シャープ)や"♭"(フラット)などの音楽用語も俳句では多いようです。休符やト音記号なども音楽の授業で学習しているためか、多くの人に違和感がないのではないかと投げかけ、読み手の共通理解になっているかを考える必要があると語る家藤さん。一音の後に「#」があるため流れで間違えないが、老眼なら「丼(どん)」と読んでもおかしくないと先生はユーモラスに述べます。また、twitterでよく使われる"#"にはハッシュタグの意味合いがあると補足する家藤さん。句の最初に「#」とあれば、先生も「ハッシュタグ」と読むかもしれないと語ります。
さらに先生は、以前の「プレバト!!」でキスマイ玉森さんが詠んだ「草生える(www)」を唐突に思い出し、目ん玉がでんぐり返ったと続けます。「俳句は何をやっても良い」と毎度口にする先生は、「才能ナシ」査定を振り返ります。
他に記号を用いた句を探すのになかなか苦労したと語る家藤さんは、父親の句を紹介します。
③加根兼光(かねけんこう)の「霾や*に続く文字」季語「霾(つちふる)」は黄砂を指し、"*"(アスタリスク)が記号です。句の持つ雰囲気と黄砂の気分とを淡々と取り合わせ、「続く文字」の向こうに目を凝らすような効果があると解説する先生。"!"などでは推測がつき過ぎるため逆効果になると家藤さん。「*」は文章の脚注に使われやすいため、より注意深さがあると先生は語り、記号の本来の用法が句意に影響すると家藤さんがまとめます。この句の「*」を"♡"(ハートマーク)にしていたら話にならず、季語が引き立たないと思うと先生。
さらに、家藤さんは「凸凹(でこぼこ)」や「卍(まんじ)」が記号ではなく常用漢字である事実に驚愕したと述べ、初めて知った時は感動すると先生も同調します。
④池田澄子(いけだすみこ)の「地図に見る明日行くところ萩の卍(てら)」。地図記号としての「卍(寺)」だと確認するお二方。地図を開きながら、京都への小旅行を計画している様子ではないかと家藤さん。「地図」と「卍」の組み合わせが茶目っ気のある作者のアイデアだと語る先生。以前の「プレバト!!」で千原ジュニアさんが詠んだ「御出席の葉書投函秋日和」(※「出席」に○をする)というのも俳句のアイデアだと語ります。
コメント欄に書かれた記号の秀句は次の機会に紹介されるかもしれないと語って締めました。
[78]【悪態句集】YouTubeから書籍化?みなさんの悪態俳句を募集します<2021/1/24公開>
ラジオ放送と同じ自己紹介を行うお二方。動画[54]でも取り上げた先生の「悪態句集」を入手した方々からの反応について触れ、コメントをいくつか紹介します。「25年前に出逢っていたら私はあんなに痩せなかったでしょうに」「いつきさんの怒りや悲しみが伝わり、胸が締め付けられる」「『恩知らぬ君らに雪うさぎ贈る』の句が好きです」など様々な受け止め方があるようです。
悪態句集の面白さに感銘を受けて自分も詠んでみたという方の俳句を紹介。
①horikawayuukiの「リア充の修羅場アイスはなお甘し」。「リア充」はリアル(現実)に充実している人のこと。その修羅場を横目で見ながら自分のアイスの甘さを噛みしめるような句ですが、句またがりの型を使っているため俳句経験者ではないかと先生は予測します。
②橋本年美の「生煮えの人参静かに絶交す」は、冷ややかな印象の一句。③「ならぬ堪忍ならぬ堪忍老桜」で思わず笑った先生は、自分を老い桜に喩え「ならぬ堪忍」と他者への怒りを堪えながら自分に言い聞かせている印象と語ります。③の句は、先生の悪態句集の句「ならぬことはならぬのですよ桜の夜」、②は「六十の春こそ佳(よ)けれ絶交す」と同じ言葉が入っており、勝手に嬉しくなったと作者からのコメントがあったそうです。
悪態は面と向かって相手にぶつけると人間関係が崩れてしまうため、自分も嫌な気持ちになりますが、俳句の句集にしてしまえば良いと語る先生は、先生のみならず"みんなの悪態句集"を作る提案をします。悪態俳句の投句を募集し、悪態をみんなで共有することで明るい未来を作る前向きな企画と打ち出します。
2020年の年末に開催した、家藤正人×やのひろみ「2020年忘れ『はい、いっく』句会ライブ」の兼題は「やっちまった!2020」。そこでギャラリー賞を獲った句が「暴言の上司の頭へとビール」。想像が膨らみますが、これも一種の悪態だと振り返ります。
俳号は本名でなくてよく、俳句は文芸上のフィクションでも良いため、悪態は吐いて許されると語る先生。家藤さんは、あくまで文学作品であると補足します。募集した作品が多く集まれば本にしたいと意気込む先生。是非、悪態をお寄せ下さいと語って締めました。
[79]【謝罪】前回の季語手帖の回についてお詫びしなければならないことがあります<2021/1/27公開>
普段より早い水曜日配信は最初にお知らせ。松山市主催「いい、つばきの日」記念イベントとして、リモート句会ライブを開催。令和3年1月30日(土)14時から配信し、15時30分終了予定とのことです。
以前の動画での発言の修正からスタート。動画[64]で紹介された2021年版『夏井いつきの365日季語手帖(てちょう)』で、間違っていた発言のお詫びをしたいと語る先生。夏井&カンパニーの校正・校閲担当の人が動画を見てダメ出しをした部分を話します。特選以外の入選句は巻末に一斉に紹介されますが、入選・佳作によって字の大きさが違うと語っていた事実はなく、特選以外の入選句の文字の大きさは全て同じだと訂正します。
さらに、動画[67]で紹介された『絶滅寸前季語辞典』からも。季語「火吹竹」を語った際、第1版で絶滅季語として紹介し、10年後の続編で復活した季語として取り上げていましたが、実際には第1版の段階でアウトドアコーナーで復活した季語として既に取り上げており、10年分勘違いして話していたとのことです。
続いて、『季語手帖』を受け取った方からのお便りやコメントの紹介を行います。
「歳時記かと勘違いしていたが、YouTubeでの説明が分かりやすかった。俳句のインスタを続けており、何かに俳句を書き留めて置きたいと漠然と思っていたらこの本を知り、動画の概要欄から予約した」というコメントや「妻からこの本をクリスマスプレゼントされた。名高い俳人の句の隣に自分の例句が載るかもしれないという夢のある一冊。2021年が毎日忙しくなりそう」というメッセージを読み上げます。夏井先生の事務所に葉書で一日一句送り続けている人もいるそうです。投句は葉書の他、インターネットの投句フォームからも可能です。
さらに、「秀作の頁に2句紹介され励みになった」というコメントも。特選に近い人の句は「秀作」として巻末に掲載されます。
版が5年目ということで、攻略ノウハウも。「応募が少ない手薄な季語は特選になる確率が高いが、みんなが挑戦しない季語は扱いにくい季語で難しい。確率を狙わずに良い句を投句するようにしたい」という分析と殊勝な心掛け。応募の際は、日付とそこに掲載される季語を指定する必要がありますが、同じ季語の中で最も良い句であっても特選の価値がなければ掲載されず、巻末の入選作品になるとのこと。特選のレベルでなければ、例句が次の版で切り替わらないとのことですが、ここで家藤さんがフォローに入ります。
特選の句は「プレバト!!」では梅沢10段を越えた永世名人ぐらいの所には当然いくレベルだと指標を語る先生ですが、実際に1月1日から毎日一句ずつ作り始めて本に書き込んでいると恥ずかしそうに語ります。1年経って手擦れな状態になるほどに使い込んで欲しいとのこと。『季語手帖』は夏井&カンパニーのネットショップや書店で購入可能なため、皆さんも是非取り組んで欲しいと語りました。
[M1]松山市主催「いい、つばきの日」記念イベント夏井いつきのリモート句会ライブ<2021/1/30公開>夏井いつき リモート句会ライブが1月30日(土)午後2時から約1時間半にわたって放送されました。
松山市主催
「いい、つばきの日」記念イベントとして行われ、夏井先生のYouTubeチャンネルを介して配信されました。
中継場所は道後温泉の「ひみつジャナイ基地」からでした。また、「椿」は松山市の市花に制定され、1月28日が「いい、つばきの日」となっています。
今回も、チャット形式で即時に参加者が投稿でき、投句は夏井いつき先生のブログの専用フォームから送信する形式でした。
最終的に
約3000句もの投句があったそうです。
投句テーマ(席題)は「
椿(つばき)」でした。
俳句の作り方(初心者向け) |
【例】「椿咲く」+○○○○○○○+ △△△△△
※上記は基本の作り方で、季語が入っていればOK ※投句時間は鐘が鳴る合図で終了(開始から約1時間10分) ※コメント欄には投句NG(動画概要リンク→投稿フォーム) |
投句作品で先生の目についた作品は、はがきサイズのメモ用紙に毛筆風に模写され、二人の前にあるホワイトボードに貼りだされていきました。また、優秀作は最上段に貼られる方式がとられました。
以下、番組で取り上げられた作品のうち受賞作品を掲載します。各賞受賞者には椿にちなんだ皿、入浴剤やタオルなどの景品が贈呈されるそうです。
◆優秀作品※俳号は敬称略
最優秀賞 | 乙女椿みづのやうなる火の震へ | 早田駒斗 |
組長賞 | 獅子王の鼻と呼びたき椿かな | 樫の木 |
正人賞 | 喉奥に椿咲かせて泣くをんな | ぐ |
ギャラリー賞 | じいちやんにあいたかつたなつばきさく | りゅうた7才 |
トップで賞 | おのおのの角度に重く椿咲く | 野良古 |
いい、つばきの日賞 (投句128番) | 雑言を償うための籔椿 | おこじょ |
採用された皆さま、おめでとうございました~。
[80]【逆人生相談】僕の切実な悩みを聞いてください<2021/1/31公開>
今回は家藤さんの人生相談。「どうしていったらいいんだろうこの先…」と切実な悩みを打ち明けますが、このYouTubeチャンネルで何を扱うのが一番視聴者にとって嬉しいのかという点を考えていた家藤さん。当事者にとって楽しいことと視聴者にとって楽しい部分は食い違うことを感じるそうです。
家藤さん自身は、文法を取り扱うのは楽しいと思うタイプですが、マニアックに踏み込んだ話で良いのか疑問に思うそうです。先生も句会で活用形などの話を取り上げると、心の扉を閉じたのか急に表情を消す人がいると同調します。
逆に、ライトでくだらない話や無駄話を取り上げる方向性もしかりで、本棚回を例に挙げる家藤さん。「プレバト!!」でLiLiCoさんが「変な話ばかりで分からなかった」と言われた点が胸に刺さっていたようですが、勿論雑談に食いつく人も一定数います。
どっちの方向性(俳句の基本か、無関係な雑談か)にすべきかが分からず、様々なシリーズを手広くやり過ぎて方向性を見失っているのではないかと自問自答する家藤さん。要は、この動画チャンネルの方向性をどうすべきかを視聴者に問いかけたいとのことです。
過去のコメントで「俳句と関係ない雑談会をやってほしい」という意見もあり、「俳句チャンネル」でやっても良いのかと戸惑いを隠せない先生。家藤さんは「やのひろみチャンネル」で一句一遊の紹介外俳句を材料に広がるフリートークもされていると語ります。
「計り知れない」「企画考えるのも大変だ」と切実な本音を打ち明ける"家内制手工業"の家藤さんにフォローを行う先生。視聴者の知恵を拝借したいと問いかける家藤さんの人生相談。皆さんもコメント欄にアイデアを記入して助けてあげて下さい。
[81]【俳句のしりとり?】『しり2字 3角パス』をやってみた<2021/2/4公開>約20分にも及ぶ今回の動画はいつもと趣向を変えて、先生ら自分たちが楽しむゲーム企画で、題して「
しり2字3角パス」。
俳句のお尻の2文字を取り、しりとりの要領で、次の人が頭につけて俳句を詠むというルール。夏井先生、家藤さん、カメラマンの兼光さんの3名で、三角パスをしていく形で行うゲームです。
先生らが即吟で俳句を詠み続けるという珍しい企画でしたが、シラフではなく、
酒が目の前にあると盛り上がると語る先生。
先生がおもむろに取り出した本『子規365日』から、家藤さんがランダムに指定したページに載っている一句からスタート。それを紙に一句書き、次の人が詠む句を含めて、先生の後ろのボードにドンドン貼り続けていきます。
最初の句は「
見る」で終わっていますが、
「みる」の音さえあればOKということ。先生は「
海松色(みるいろ)」から始める句を詠みました。次の人の待ち時間で、どんな句が詠まれるか想像しながら楽しめると語る家藤さんですが、最後の2文字が肝心で、
難しい言葉を入れると後続の人を苦しめられる嫌味な遊びでもあり、人格が出ると語る先生。
生配信してどの句がギャラリーを沸かせたか、チャットを見ながらやるのも楽しいと今後の展望も述べます。
5句目で漢字を間違えてしまった家藤さんでしたが、先生は「プレバト!!」の収録でもよく漢字を間違えるエピソードを暴露します。
このゲームは、しりとりの要領で次の句を詠みますが、「猫」→「寝ころんで」のように、
わざと違う光景を作ることを意識することで、思わぬ句も生まれる可能性が高いと先生は解説し、重ねて適度の酒があると脳が活性化されると述べます。
以下、詠まれた句を記載します。
例 | たらちねの花見の留守や時計見る | みる | 子規 |
1 | 海松色の帯こそ佳けれ花朧 | ぼろ | いつき |
2 | ぼろぼろの座布団ぼろぼろの子猫 | ねこ | 正人 |
3 | 寝ころんで仰ぐ雲あり遍路道 | みち | 兼光 |
4 | 美智子妃の春の帽子のやはらかく | かく | いつき |
5 | 角材を春の木くずの噴きいづる | づる | 正人 |
6 | づるづると引く春の棺の人かるく | るく | 兼光 |
7 | ルクセンブルクとは未知の国冬すみれ | みれ | いつき |
8 | 未練たらたらのおでんのちくわなど | など | 正人 |
9 | などかもと呟く春の駒の背を | せを | 兼光 |
[82]【第2回おしゃべり俳句】子どもの大胆な発想を夏井が大絶賛!<2021/2/7公開>
動画[73]に続く「おしゃべり俳句」。第1回のコメント欄に書かれたものから紹介します。沢山の投稿が寄せられたそうです。子育てがしんどくなる世代にとっても、子どもの言葉に耳を傾ける余裕がなくなりがちですが、俳句のタネだと思って採取して欲しいと最初に訴える家藤さん。「怒る前に聞く」が重要なポイントです。
①直直さんの娘の「お母さん明日はおりこうになってね」は、次女の子育てのため手が回らずに叱りつけてしまった2歳の長女から発せられた言葉。未熟者の母親だと省みるきっかけになったそうです。その言葉を覚えておくことも大事だと先生は述べます。
②fukurou morinoさんの5歳の息子が訴えたのは「ナス食うのけっこう苦労したんだよ」。ナスが嫌いな子どもの実感が良く分かると先生は笑いながら語ります。「キャベツ」「ピーマン」ではなく、「ナス」の点も重要だと続けます。
季語の有無は重要ではなく、子どものおしゃべりをそのまますくい取ることが大事。季語が無くても強制はせずに、自分で選べる時がくれば、子ども自身の誇りや大人の気分をを味わうはずだと先生は補足します。また、自分に幼い子がいなくても、知り合いや見知らぬ第三者の子から言葉を採取するのも当然OKです。
③イソノタラスケさんは回転寿司屋の板前さん。お正月に家族連れで来店した3歳ほどの男の子の台詞「お年玉でイクラと大トロ食べたいな」が可愛かったとのこと。爆笑する先生は、普段は親から「玉子にしとき」と言われていたのかと共感し、お年玉で食べさせて欲しいと述べ、生活が見えるのがおかしいと感触を語ります。
④FUSION mitさんの投稿は「初春や賞金女王になるの」。お正月に知人の娘8歳に「将来は何になりたい?」に対する返答とのこと。大胆ながら具体的な目論見に可笑しく、女子の夢は具体的だと感心したそうです。ゴルフかと思わせ、とても良いと先生も応えます。
⑤ヤマムラクミコさんの知り合いである幸太郎くん5歳の言葉は「おうちにはドーナツがある春の風」。季語は投稿者が選んでいます。可愛いと語る先生は、家のおやつにドーナツがあるため、ルンルンしながら帰るような子の会話や映像が浮かぶと褒めます。
⑥俳号 栄英さんの姪っ子のゆきちゃん3歳の言葉は「おつきさまをくもがたべてる七五三」。季語は投稿者が選んでいますが、コラボのやり方はOKと先生は語ります。
⑦yy kawaさんの友人の子ども・翔5歳とバスに乗った時の言葉は「ねえねえ、人生は保険が大事だよね!」。学資保険に親が困ったのかと読む先生ですが、「昨日、パパと人生ゲームしたんだよ。人生は保険が大事なんだ。後で困らないからね」と子は語り、「人生は保険が大事春日和」という句が出来たそうです。季語は投稿者が選びましたが、これも好きだと先生は述べ、エピソードが保険会社のCMになりそうだと家藤さんが語ります。
⑧きこばあばさんは放課後児童クラブ支援員。手を挙げた児童Yくんの言葉は「小春日やぼうっとしてたね今先生」。子が挙手をして語った言葉を採取できる投稿者が凄いと先生は語りますが、投稿者は愛のある「このやろう!」で返したそうです。
⑨猫宮瓜さんの娘4歳からは「あさのまえあおになるのよおかあさん」。夜明けの空の色の様子を描写したと解釈する先生は、凄い早起きの子だと述べます。親の仕事に合わせて早起きさせ、早い時間に保育園に連れて行った時の話のようで、朝日が昇る前の黒から青に変わる空を娘から教えてもらっていたようです。この子の観察眼も大したものだと先生は述べます。
⑩以前もcさんと紹介された、新海ちえさんの娘・息子の言葉を再度紹介。まりな6歳からは「十二月はんこをぎゅうとおしすぎた」。腱鞘炎になるような印象ですが、子ども用の重ハンコ遊びの実感があり、保証人の判など大人用の句としても鑑賞できると語ります。
⑪同じく、まりな6歳の言葉は「ゆうすけがいっこみつけた椿の実」。ゆうすけは弟さんですが、軽やかな言葉の使い方を称賛する先生。
⑫そして、ゆうすけ3歳の言葉は「つめがぴょんぴょんとんどう冬の朝」。爪切りの場面ですが、「とんどう」の表現が良いと褒める先生。どこの方言かが気になるお二方ですが、方言にも味わいがあり、下手に標準語に直すべきではないと忠告します。
ここから、先生が選んだ特選3作品を発表します。
⑬すがあつさんの子・ひかる5歳の言葉から「とうさんを寝かせてきたよ窓に月」。子どもを寝かせるつもりが一緒に寝てしまうことがよくあるものの、一緒に寝ていたと思ったら子どもだけ起きて、リビングの妻に「とうさんを、ねかせてきたよ」と言ったというエピソード。可愛いファミリーの一場面が切り取れていますが、5歳の情報を消した句として独り歩きさせると、切ない句にも読めると語る先生。病気を患う父親を寝かせたことを母に報告する意味合いにもとれ、俳句の面白い所だと述べます。
⑭前回「トリケラトプス」が紹介された、こうき4歳の言葉から「つばさのようなものはとべない桜」。凄い言葉が出てくる点を「攻めてきた」と褒める先生。恐竜つながりの発想からきている可能性がありますが、この言葉を2回繰り返したそうです。季語は三大季語「雪」「花」「月」の3つから選ばせたそうで、最初は「月よ」となりましたが、「やはり花でいい。桜のままでいい」と本人が述べたそうです。「花」より「桜」の方が写実的光景ですが、「つばさのようなものはとべない」の周りに「桜」が咲き広がるような印象で鳥肌が立ったと語る先生は「お見事」だと褒めます。本人が推敲を楽しんでいる様子も良いと語るは家藤さん。
⑮山本先生さんは小学1年の担任時の児童の言葉から「春や背が高いだけだと思ってた」。「背が高い~」は投稿者である先生に向けられた児童の言葉ではないかと語る家藤さん。作品として、年齢違いの兄や姉のことを詠んだのかと思っていた先生ですが、対象の人物は色々と考えられる一句です。投稿者が一年生を迎える会という行事で、教員の出し物として「忍たま乱太郎」のテーマ曲「勇気100%」を歌った時の児童の呟きだというエピソードが。歌が上手かったという背景があると先生は解釈し、投稿者が「春や」を最初に入れたのも良い選択だったと称賛し、良い先生で会いたいとも述べます。
さらに、第3回も紹介したいとのことで、この動画のコメント欄に"おしゃべり俳句"を寄せてほしいと語って20分にも及ぶ動画を締めました。
[83]【2月の正岡子規】季重なりの句でみなさんの疑問にお答えします<2021/2/11公開>
俳人列伝の正岡子規シリーズ。動画[74]にて毎月お届けすることが決まり、その第2回です。『子規365日』(朝日新聞出版)で、2月に掲載される句から先生が紹介したい句を取り上げます。
①「蒲公英やローンテニスの線の外」。明治時代を駆け抜けた子規が、テニスの正式名「ローンテニス」を取り上げたことに驚いたと語る先生。子規は野球好きで知られ、本名「升(のぼる)」から野球(の・ぼーる)と命名したという俗説もあるそうですが、テニスのコートも観察していたようです。「線の外」に着眼する辺りがひねくれていて良いと家藤さんが述べます。上五「蒲公英や」の「や」は強調というよりは「お~!」と感動するような詠嘆の役割があり、ローンテニスの線の外に生えている蒲公英を誰かが知らぬ間に踏んでしまうかもしれないと解説する先生。
②「蝶飛ブヤアダムモイブモ裸也(はだかなり)」。「アダムとイブ」の着眼で、キリスト教徒ではなかった子規ですが、素材としては新鮮だと解説します。①の句も含めて、それまでの俳人が詠まなかった題材を取り込む革新的な考えを当時持っていたようです。この句は子規が亡くなる前年の明治35年の作で、病床の子規の想いが託された句だと知って感銘を受け、心に引っ掛かっていると語る先生。背景を知ると趣が変わると語る家藤さん。
次に以前の動画でも触れた「季重なり」について、肩の力を抜いた句を紹介します。
③「君を待つ蛤鍋や春の雪」は、「蛤(はまぐり)」と「春の雪」の季重なりです。俳句の世界での「君」は、恋愛対象の相手という解釈が一般的ですが、この句の場合の「君」は一般的な人物と解釈する方がよいとのこと。おもてなしの「蛤鍋」でお酒を飲みたい場面が浮かび、「や」で鍋が強調されてカットが切り替わり、「春の雪」が障子の向こうに見える一句です。「蛤鍋」を強調しながらもメインの季語「春の雪」を主役に立てる工夫があり、「君」が雪の寒さの中をやって来る感じも読み取れると先生。しみじみとした良い句と語る家藤さん。「春の雪」を主役にする道具立てとして「蛤鍋」「や」があると先生はまとめます。
強弱をつける季重なりの作り方の他に、別のタイプの季重なりの句も紹介します。
④「馬ほくほく椿をくぐり桃をぬけ」。「椿」「桃」が春の季語で、並列で用いられています。個人的に好きだと語る家藤さんは、「ほくほく」の擬音に馬が歩くリアリティがあると褒めます。競馬のように急ぐわけではなく、旅人が乗る馬を思わせる「ほくほく」で、ゆっくり移動する感じを思わせると先生は述べます。「椿」の森を潜り抜けながら「桃」畑を抜けていく様子が描写されています。実際に目にする光景としてありうるため、季重なりとして駄目ではなく、並列に表現しています。「くぐる」「抜け」と動詞を2つ用いても破綻せず、それぞれの季語のイメージに合わせた点も上手いと語ります。まさに「プレバト!!」の再現映像が思い浮かぶような場面描写が出来ています。
様々な句を取り上げましたが、臆することなく果敢に挑戦するため、肝が据わっていて良いと述べるのは家藤さん。自分が何に感動し、何を表現するかを自分で精査していき、行き着いたものが言葉になっていくと語る先生。俳句は他人の評価のために作るのではなく、まずは自分が表現したいものを作ること。ただし、技術がないくせに開き直ってはいけないと忠告します。「読み手の自由に任せます」っという台詞もちゃんと作れてから言うべきだと、最後に毒を吐く先生でした。
[84]【ワンピースと言葉】夏井いつきがまさかのONE PIECEとコラボ?「言葉のチカラ」について語ります<2021/2/14公開>
尾田栄一郎氏の『ONE PIECE』は日本を代表する漫画・アニメの一つですが、雑誌を手に前のめりに語る家藤さん。『ONE PIECE magazine Vol.11』(集英社ムック)の企画「言葉のチカラ」は、別冊特集号で毎号ワンピースの世界に関してプロフェッショナルな方々の切り口を取り上げる雑誌。今回、先生が寄稿を寄せる形で参加したことを明かします。 俳人の目から『ONE PIECE』という漫画を見たらどんな言葉の力を感じるのか、集英社からの依頼で企画に参加したそうです。麦わら帽子をかぶる兄ちゃんが中央にいるイメージだったと語る先生。取材前に、漫画全94巻(※現在の最新刊は98巻)を送りつけれて、困惑しながらも夜な夜な全巻読破したそうです。
漫画の感触を聞かれた先生。ストーリーが思っていた以上に健全なことに驚き、暴力な場面が中心ではなく、ルフィという青年の周りに集まる仲間たちの物語として何と真っ当な健全な物語だと感じたそうです。元国語教員目線に、下手な道徳の教材よりも若い子どもたちに伝わるお話だと取材で語ったとのこと。エニエス・ロビー編の場面が印象的だったと先生は語りますが、何でも助け舟を出す家藤さんが「ONE PIECE」好きだと判明。言葉というものが人の心に入った時にどんな作用を及ぼすかを理解して描かれていると先生は語ります。
メッセージ性の強い言葉だけでなく、虚構の世界でありながらも妙に実感を持って伝わり、"オノマトペ"にもそれがあると家藤さんが述べます。先生も、オノマトペが音をリアルに聞かせたり、手が伸びる時の質感などが表現されている点に着目し、一度読んだ巻からオノマトペを確認する作業をしたそうです。先生の読む作業を横目で見ていた家藤さんは、コミックスの色んな所に付箋を貼っていた事実を語ります。盗めそうな部分に貼っていたそうですが、音数の短い俳句でもオノマトペは武器として有効だと話を展開する先生。
ここで、家藤さんが作中に出る「水水肉(みずみずにく)」を取り上げます。ウォーターセブンの美しい水に漬け込んだ肉で、ヤガラの好物でもある現実に存在しない食べ物ですが、どんなものかが気になるそうです。先生は、俳句を作る人間は五感の感触が気になり、匂い、音、感触などに目を付けがちだと語ります。
次に、戦いについて。白ひげ海賊団に話が移ると、魚人海賊団のジンベエさんなどが見せる義理や人情などが好きだと嬉しそうに語る先生。頂上戦争やエースの死なども本編でも人気の高いエピソードですが、コロシアムの話を先生が語ります。戦いの場面が長くて疲れたそうですが、次の話が知りたいためにめげずに読んだそうです。
「ONE PIECE」という漫画を読むことで、俳人のどこのツボが刺激され、どんなお得があるかを取材で話したそうで、俳句の筋力「俳筋力」を鍛えるためのカンフル剤として是非とも雑誌を、あるいは漫画を読んで欲しいと宣伝して終わりました。
[85]公募ガイドは光の書?季語の六角成分図でボツから逃れよう<2021/2/18公開>
今回は「公募ガイド」の紹介。小説など自作の作品の応募先を特集している雑誌ですが、2021年3月号に「俳句キット」と題して夏井先生も登場する特集が組まれています。俳句の簡単な作り方から始まり、凡人の塊から少し抜け出すための具体的な方法も掲載されていると語る先生。家藤さんは「終末から逃れるための光の書」だと大袈裟に先生の言葉を要約します。
先生は、光の書の1番肝になるのが"季語の六角成分図"だと述べます。これは、自著『夏井いつきの季語道場』(NHK出版)にも詳しく解説されています。先生が2年間担当した『NHK俳句』で、先生が企画・提案したものから生まれたそうです。
季語の六角成分図は、自分の脳内にある季語のイメージを五感(視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚)と連想力の6つの成分に分解して示します。季語の情報は外から入ってきますが、頭蓋骨に隠された脳はいわばブラックボックスであり、五感からでしか季語を感じ取れません。それぞれの情報量の大小を考え、六角形のチャートに示すことで視覚的に整理するデータ分析を行うのが主旨だと述べる先生。また、『子規忌』などの忌日の季語は五感の反応では説明ができないため、「連想力」の成分を追加したそうです。
様々な季語を視覚的に捉えることで、季語ごとの成分図の形も多種多様になり、並べて比較することで色んな事が分かると語るお二方。また、自分と他者の受け止め方とでも異なる発見があると、先生は「梅」「鶏頭の花」を例に語ります。同じ季語でも居住地やその方の好き嫌いで感覚が左右され、「連想力」の成分も変動するとのこと。
先生が担当した当時の『NHK俳句』では、作家の岸本葉子氏が司会ですが、漫画「あかぼし俳句帖」の原作を執筆した有間しのぶ氏がゲストに登場した時の兼題が「麦の秋」。「麦の秋」と「麦」とで「似て非なる季語」がどう違うのかを六角成分図で分析していました。時候の季語「麦の秋」に対して、「麦」は植物季語です。有間さんが麦畑に実際に足を運んだエピソードを語ると、お三方の話し合いにより、成分図の「触覚」を最大値に設定し、感じた情報をメモしていったとのこと。
さて、公募ガイドには、俳句集団いつき組の組員である碧西里さんが俳句ポストの兼題を中心に様々な季語を分析していることが掲載されており、先生も紹介します。「投句してもボツになるという闇から逃れましょう」と最初のメッセージを思い出して本筋に戻す家藤さん。入選には具体的なことをコツコツやるべきと語る先生も「闇から逃れましょう」と語って締めました。
[86]【季語】知っていても使えない?一番長い季語はなんと二十五音!<2021/2/21公開>
動画の概要欄より見られる五音の季語集シートに関して、こんな質問が。「俳句の季語は全部五音ですか?」。季語の音数に関するテーマに答えます。動画[17]で初心者が最初の一句を作る方法を紹介した際にも提供した季語集シートですが、句会ライブなどでも配っており、五音の季語+12音のフレーズで一句を作る際に、言葉のパズルの感覚で当てはめられて便利ということ。季語は色んな音数のものが大量に存在しますと早速家藤さんが回答します。
四音の季語も使いやすいと語る先生。「や」などの助詞を付け加えれば、五音の上五がすぐに作れます。
そして話は、一番音数が短い季語と長い季語に展開します。
一音の季語は「蚊(か)」「蛾(が)」で、どちらも夏の季語。短いだけに、他のフレーズにどのように溶け込ませるかが大切だと語ります。また、「鵜(う)」も夏の季語。鵜飼の船につけられて魚を獲る黒い鳥です。他に「藺(い)」も夏の季語。
また、長い音数の季語として有名な物は七十二候の季語に多い「○○が△△になる」という形式の季語。例えば、「雀蛤(すずめはまぐり)となる」は10音の晩秋の季語。「腐草為蛍(ふそうほたるとなる)」は9音の晩夏の季語ですが、この季語を初めて知った時の感動を語る先生。おウチde俳句くらぶの動画コーナーで家藤さんが紹介した「国民体育大会」は12音の晩秋の季語です。
そして、先生が知っている最も音数の多い長い季語を紹介。講談社版『カラー図説 新日本大歳時記』に掲載されており、動画[67]で紹介された「絶滅寸前季語辞典」執筆の際に仰天する季語を見つけたとのこと。
最も長い季語は「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日」(どうていせいまりあむげんざいのおんやどりのいわいび)で、25音ある冬の季語。17音の俳句で、既にそれを超える音数の季語をどのように使うかに難しさがありますが、先生は例句として「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日の鳩」を紹介。「マリア」に対して平和の象徴の鳥を取り合わせたと語りますが、家藤さんもこの季語で即興で俳句を作りました。長い季語の場合、フレーズを短くしないと全体のバランスが取れないと先生は述べました。
[87]【正人の人生相談】みなさんのコメントで悩みが解決しました!<2021/2/25公開>
動画[80]で、家藤正人さんの人生相談に関する大量のコメントが寄せられたことを紹介します。
①最も多かった意見は「添削してください」。先生は、有料会員サイト『おウチde俳句くらぶ』を紹介。会員の作品の添削やアドバイスを懇切丁寧にしており、ぜひ会員になってほしいと語りかけます。
②次のリクエストは「ゲストを呼んで欲しい。プレバト!!の人など、千賀君を待ってます」。先生の後ろの背景の本棚に映るKis-My-Ft2のアルバムを引っ提げ、メンバーのサインが書かれたことを紹介しますが、現実的にキスマイを呼ぶのは無理だと回答。それこそクラウドファンディングを行う必要性を述べる先生ですが、「YouTuberを呼んで欲しい」というリクエストに対しては、「いつかね」と僅かな可能性を言及します。家藤さんは、家内制手工業でやりたいと本音をもらし、先生も「清々しい」と同意し、「うちらは家内制手工業でやる」とゲスト参加を否定します。
③次に「吟行など、座っているだけではない何かをしてほしい」という意見。季語の食材で料理をする、伊月庵周辺での吟行などを提案しますが、先生はバッサリ切り捨て。テレビ撮影のような大掛かりなことは難しいと述べます。
④そのことに関連し、「色んなイベント(句会ライブやラジオなど)の裏側を見せてほしい」というご意見。「これなら無理がない」と述べる先生は、放送局の許可次第だと前置きしたうえで、NHKや一句一遊に関して言及。色んな句会ライブの裏側もお見せできそうだと述べます。
⑤「実際に目の前で俳句を作ってほしい」というリクエスト。動画[81]で「しり2字3角パス」を披露している先生。とても長い動画のため好みが分かれており、逆に短い「人生相談」についても感触を語るお二方。
⑥家藤さんから「家庭内の吟行はどうか」という意見。動画撮影時にお二方の前にある火鉢からの湯気が気になる視聴者もいたようで、この火鉢を見ながらお二方や視聴者が俳句を作る企画を提案します。生配信で利用したいと検討する先生。
⑦「自分の句を出したい」という需要が多いと告げると、「出せばいいじゃない」と即答する先生。生配信で先生とのコミュニケーションがしたいという意図とのこと。
⑧「コメント返しもしてほしいです」というご意見に対し、喜んで応えたいという先生は、やはり双方向(のコミュニケーション)が楽しいと述べます。
先生から「俳句関係なく交流したい」というご意見が以前からあったことも紹介。先の人生相談の動画でも、文法や名句などの真面目な話が良いのか、雑談など俳句と関係ない方が良いのか方向性に迷う家藤さんでしたが、色んなご意見があり様々な派閥があったようです。文法的な部分に関しては「おウチde俳句くらぶ」の方に移行する可能性に先生は言及します。
最も多かった声「お二人が楽しいと思うことをして下さい」というご意見に勇気づけられたと語る家藤さん。肯定してもらったことに泣きそうになったとお二方は述べます。YouTubeの動画の性質で、見たいものは見るし、見ないものは見ないため、自由にやるべきなのかと結論付けます。
⑨「再生リストを細分化して欲しい」というご意見。文法や雑談など、細かくジャンル分けしてほしいというリクエストですが、「頑張ります」と弱々しく回答する家藤さん。
構想がかなりあるようで、「やりたいようにやりましょう」と語る先生ですが、今後も意見をお寄せくださいと語って締めました。
[88]【連載開始!】「女性セブン」でエッセイの連載が始まります<2021/3/1公開>
珍しく月曜更新となった今回は、「女性セブン」の雑誌を手に取っての紹介。3月からエッセイの連載コーナーを受け持つ報告をします。以前から取材などのお誘いがあったそうですが、週1の負担を考えて遠慮していた先生。コロナ禍をきっかけにリアルイベントがなくなる中、受け持つことを決めたそうです。
気になる内容ですが、夏井先生と出逢った様々な人たちが、先生の半生にどう関わりどんな影響を与えたかということを書きたいとのこと。息子の家藤さんも横目で見ていて思ったことを語ります。
「プレバト!!」の収録でミッツ・マングローブさんがYouTube動画の視聴者で、先生と息子との掛け合いが面白いとコメントしていたことを紹介する先生。ここで、急に家藤さんが『情熱大陸』にミッツさんが出演した回の感想を述べ、自分の知らない世界だったと語ります。
エッセイの1回目として、夫でこの動画のカメラマンでもある兼光氏との出会い、「夏井&カンパニー」のいきさつ、家藤さんらを巻き込んだ話を書いたそうです。"ハリーのおじさん"こと兼光氏については動画[75]でも登場します。それ以降も様々な人との出会いを綴りたいと語る先生。
そして、息子の家藤さんに質問をします。「家族のことを書かれるのはどうなのか?」に対し、「全然平気です」と回答し、今さらながらという感覚だと答えます。今までも赤裸々に色んなことを書かれたようでしたが、悲観的な面もある家藤さんもこの件は大丈夫な様子でしたが、放送ギリギリの内容も語る家藤さんに先生は戸惑います。先生は1年ほど連載するため、50本ほど書くことになる労力を考えると「引き受けるんじゃなかった~」と今さらながらに述べますが、2021年3月第1週から連載が始まる「女性セブン」でのエッセイを楽しみに手に取ってほしいと語りました。
[89]【質問】理系は俳句に向いている?<2021/3/4公開>
初心者向けの質問に回答。俳句を知人に勧めたくても拒否される言い訳として「自分は理系なので俳句は出来ないと思います。理系だけどどうした良いか」という質問です。これは良くあるケースと語る先生は、他にも「教養がない」「語彙がない」「感性がない」として拒否されるケースもあると語ります。
先生は、俳句はあまりにも短いため、逆に理系の方が仕組みを理解するのが早いと自身の経験を語ります。数学の公式のように、言葉をパズルのように入れていくと俳句の型の力と季語の力によって詩が生まれると解説します。
文系の人は逆に意味を延々と述べたい傾向があるとまで述べる先生。「プレバト!!」に出演した小説家の多くが、小説の一章分を17音に込めがちで内容が破裂していたと語ります。自分の思いを面々と述べたい人はむしろ短歌の方が向いているのではないかと感触を述べます。反対に、理系の人は面々と述べることに興味がないと考えを述べ、観察したり好奇心を持ったりする根本が理系の精神だと語る先生。家藤さんは文系・理系の得手不得手がそれぞれあると述べ、先生は文系・理系の区別自体が俳句ではナンセンスだと続け、好奇心の方が重要だと述べます。
文系の家藤さんは、急に突飛なエピソードを語ります。「君の名は」「天気の子」などで知られる映画監督の新海誠氏がかつて手掛けたNHK「みんなのうた」の小さい映像カットが物語の全体像が見えて俳句的だというのです。先生は小説に置き換えるなら、一行の半分くらいの分量が俳句には適量だと補足します。写真を撮る人や映像の編集マンの方は着眼点が巧いとも語ります。
それらを受けて家藤さんは、たった17音の中に職種やその人の人柄・人生・性格が表現される点を語ります。先生は月一回の句会でも、その人が出している語句を見ると、様々な事情を察することがある経験を述べます。
俳句を始める点において、自分が文系・理系だからと理由付けするのは勿体ないと思うと語る先生は、面白いと思ったら噛みついてみた方がよいと忠告します。
先生は、初心者が思う恥じらいのようなものをこの動画のコメント欄に書きこめば、それらの質問などを拾い上げて答えることも検討していると述べ、家藤さんを咄嗟にいじり出す先生。くだらないことでも遠慮なく書き込んで欲しいと語りかけます。
[90]【質問回答】投句の裏側!なぜ投句料が必要なんですか?<2021/3/7公開>
質問回答の回。「俳句を投句する際に投句料が求められることがありますが、投句料はなぜ必要なのですか?」という質問。この質問自体に驚くと答える先生。
例えば、「お~いお茶」の投句は無料ですが、伊藤園の販売促進の意味もあり、CM料に近いお金を選者に選句料を支払うことで成立する形態だと述べます。
投句先の主催者によって、お金の使われ方は色々なケースがあるそうで、社会のシステムとして考えてほしいと述べる先生。俳句結社については動画[16]でも登場しましたが、入会した料金や月謝、選句した句が載る結社誌(購読誌)の購読料などに使われ、学ぶための料金と考えるのが分かりやすいと解説します。俳句にもカルチャー教室が様々にあり、愛媛新聞社の俳句講座の例を述べます。
俳句で投句料がかからないケースは、特定の企業や教育機関、自治体などが協賛している場合が多く、何らかのPRを目的としているそうです。投句料ではなく、スポンサーがお金を出しているのが一般的です。
しかし、世間で行う俳句大会の多くは基本的に投句料が必要とのこと。最もメジャーなのが、NHK全国俳句大会です。表彰式も例年NHKホールで開催し、放送もしています。昨年第22回大会では応募総数49,264句あり、自由題2句の場合は2,200円、題詠「生」を含めた3句の場合は3,200円の投句料でした。幼児・小中学生の場合は半額になります。このような投句料が大会運営の費用に使われます。会場の貸し切り費用、パンフレットや入選句集の印刷費用など莫大な経費だと語る先生は、社会のシステムだと繰り返します。
先生は「松山俳句ポスト365」や、ラジオの「夏井いつきの一句一遊」、カタログハウスの「夏井いつき先生の俳句生活」も全て無料で投句できる点に言及。俳句ポストは松山市、一句一遊は南海放送がそれぞれ選句料をペイしていると述べます。
ここで、先生はNHKの投句数の多さに言及。その予選会の背景について家藤さんが語ります。30~40名ほどの予選選者が割り当てられた番号ごとに選びだし、さらに本選の選者が選ぶシステムだと述べます。
そして、先生が選者を務める俳句ポスト365や一句一遊についても言及。俳句ポストは1兼題2週間ですが1万句近く、一句一遊も同5000句は寄せられるそうです。想像を絶する数の多さに急に手汗が出てくるお二方。「生存をしながら頑張っていきましょう」と語って締めました。
[91]【3月の正岡子規】上五の「や」について学びましょう<2021/3/11公開>正岡子規シリーズの第3回。『子規365日』から
3月の掲載句を紹介します。上五の「や」で切れている句が多いそうで、題して”
上五の「や」特集”とのこと。
初心者の最初の一句の作り方として、
[A]五音の季語+十二音(季語と関係ないフレーズ) [B]四音の季語+「や」+十二音 |
と生配信や句会ライブで解説している先生。上五「や」にも色んなパターンがあると語り、子規の例句を紹介します。
①「
摘草や三寸程の天王寺」。春の季語「摘草(つみくさ)」は4音のため、上五に「や」を置いて強調・詠嘆。カットが切り替わり、中七・下五でワンフレーズというBの型です。正岡子規の上五「や」の特徴は、
無関係な二物衝撃というよりは、ささやかな関係をもつパターンが多いと分析する先生。光景が遠近感をもって映像化されていると語るのは家藤さん。
摘み草の現場から、奥にある天王寺がたった三寸ほどに見える距離感も映像として表現されていると先生は続けます。「や」で光景を切りながらも、遠近感として一つの光景を描写した一句です。
②「
春雨やお堂の中は鳩だらけ」はユーモラスな一句。
雨宿りに駆け込んだお堂の先客に鳩が沢山いた様子が想像できます。この句もBの型で、季語とフレーズにささやかな関係性があると解説。「春雨」の天気ならではの光景描写ですが、「春雨」の情景を読み手に先に共通認識として伝え、その後に光景が展開されるため、
使い方が演劇っぽいと家藤さんが述べます。
③「
春の夜や寄席の崩れの人通り」。「春の夜(よ)」という季節・時間を強調・詠嘆し、具体的な映像を十二音に描いています。
寄席(よせ)が終わり、劇場の出口から人波が出てきて分かれる様子を「崩れ」で描写していると解説します。この句も
季語との関連性が微妙にありますが、夜の典型として共感できる作りの一句です。
④「
春菊や今豆腐屋の声す也(なり)」も愉快で面白いと述べる先生。昔は豆腐屋が町に売りに出てラッパなどの合図をすると、鍋などを持って買いに行った庶民の様子が分かります。
「春菊」が豆腐屋に出す鍋の中に入っていたのかもしれないと述べる家藤さんですが、
春菊を畑で採っていた時に豆腐屋が来て「今日は湯豆腐にしよう」と考えたのかもしれないと先生は異なる味わいを語ります。
17音で生活感が分かるのが愉快だと家藤さんが述べ、季語との接点がはっきりしている一句だと先生は総括します。
⑤「
菜の花やはっとあかるき町はづれ」。この「や」はカットを切ることより
強調の意味合いが強く、菜の花のアップの光景の後、「何と明るき街はずれでありましょう」というフレーズが映像に付随している一句と解説します。仮に「菜の花
の」と助詞を変えた場合、「はっと」の感情の動く鮮度が失われる感じがすると述べる家藤さん。この
「や」の働きは大きく、中七のフレーズによって「菜の花」がさらに強調される効果を生んでいると先生は解説を続けます。
⑥「
故郷やどちらを見ても山笑う」。子規の代表句の一つですが、
季語ではない「故郷(ふるさと)」を「や」で強調し、春の季語「山笑う」が下五に置かれたパターンです。
「や」にはビックリマーク(!)の「お~!」という意味合いがあると語る先生。「あ~、なんと懐かしい故郷よ!」と強い詠嘆の後、「どちらの山を見ても山は笑ってくれているよ」という
讃歌の印象だと味わいます。今までの句に対し、「!」の強調の濃度が違ってくると語る家藤さん。
⑦「
昼過や隣の雛を見に行かん」。お隣の家に女の子がいて、
雛を飾ったため「見に来てね」と誘われたが、気が付いたらもう昼過ぎになっていたため「見に行こう」、というニュアンスだと語る先生。この「や」の用法を問われた家藤さんは、強調や感動というよりかは
合いの手に近いような不思議な味わいだと語ります。⑥の句は「なんという我が故郷だ」という強調の意味合いがありますが、⑦の句は「おっ、昼過ぎじゃないか」という感じだと先生は解説し、家藤さんが「ポン」と腿を叩いて形容します。
同じ「や」でも意味や強さが異なるのが、この「や」の面白さだと総括する先生。この他にも最初に述べた二物衝撃のように、全く関係ないものを「や」の後に取り合わせる句もあり、色々と比較検討して欲しいと語りかけました。
[92]【おウチde俳句】梅沢富美男さんがブログで参加表明?「おウチde俳句くらぶ」についてお話しします<2021/3/14公開>今回は有料投稿サイト「
夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」の紹介。おっちゃんこと
梅沢富美男永世名人(「プレバト!!」での段位)が、自身のブログ(
梅沢富美男ブログ)にて、2021年3月9日付で取り上げていることを最初に紹介します。
「
なっちゃん先生がWebでおうちDE俳句をはじめたらしい!僕もはじめてみようかな!」と綴っています。ブログトップ写真の梅沢七変化にも仰天するお二方ですが、「時々ええ人」と語る先生は、おウチde俳句くらぶの本題に話を戻します。動画[90]でも既に紹介していましたが、会員制(有料:月額770円)の
参加型投句コミュニティサイトで、ネット上のカルチャー教室のようなものだと述べます。
元々は書籍「おウチde俳句」から始まっていましたが、人生の後半に家に籠りやすい状況になっても、家の中には俳句のタネが沢山あると力説する先生。投句企画「
おウチde俳句大賞」は毎年の表彰もされていますが、web上のサイトに発展する形で2020年9月にスタートしました。
本来は介護などで家から外出できない人向けに出版された本でしたが、子育て中の親や引き篭りの人など様々な方が本を手に取ったため、ネット上で学習できるサイトを構築するきっかけになったと話します。本の出版は2018年でしたが、2020年以降のコロナ禍による自粛の影響も相まって参加者が増えたと家藤さんが補足します。どんな世の中であろうが、
俳句を支えにしながらこの時代を生き抜けたら良いというコンセプトが詰まっていたそうです。出版した朝日出版社の社長以下スタッフの提案で、「おウチde俳句大賞」というコンテストも立ち上げたとのこと。
ここで、家藤さんが先ほどの梅沢永世名人の発言に言及。「始めたい」の主旨が「おうちde俳句大賞」「おうちde俳句くらぶ」のどちらなのか気になると語り、先生も私見を述べます。
おうちde俳句くらぶの「
写真de俳句」では「プレバト!!」のように、
毎月写真の兼題から一句を作って投稿。先生は天地人並の4段階の評価とハシ坊を選定します。家藤さんが担当する「
ドリルde俳句」では、有名俳人の
句の一部が空白になった状態で出題され、自由に考えてフレーズを埋めていくというドリル形式です。型の力を理解する有効な練習法だと語る先生。
ここで「
ハシ坊」について触れますが、先生が大量に原稿を書くコーナーとのこと。コロナ禍で句会ライブなどの生の指導機会が少なくなり、
「ハシ坊と学ぼう!」のコーナーで懇切丁寧に解説したいと思い、大変力を入れているそうです。
句会では初心者のみが参加するものより、
ベテランから初心者まで様々な力の人が集う方が学べる量が半端ではないと感触を述べる先生。「ハシ坊」のコーナーでは、投稿者の力量に応じて大変高度な示唆から初心者向けの添削まで全てごちゃ混ぜにして提供していると語ります。「ハシ坊」が箸にも棒にもかからないレベルの句だとか、掲載されるのが残念のような意味合いに捉える人もいたそうですが、「そうじゃないよ!中身を読みなさい!」と強く反論したそうです。
そして、梅沢名人の今後や句集完成後の「プレバト!!」の去就にも触れるお二方。仮に参加してきた場合にどんな俳号になるかも気になりますが、
永世名人から初心者まで学べるサイトだとまとめる先生。「おウチde俳句大賞」(会員は6部門・非会員は1部門投句可能、大賞賞金20万円)も含めて是非参加して欲しいと語りかけました。
[93]【いつきの怒り】プレバト!!スタッフと大喧嘩?句またがりを一緒に学びましょう<2021/3/18公開>
夏井先生の怒りエピソードを披露する回。「プレバト!!」でも添削でよく使われる”句またがり”についてです。「五七五になってないです」と平場挑戦者からツッコまれる度に先生が毎回解説をしている技法です。
番組のスタート当初は、スタッフも未熟で理解していなかった”句またがり”。「五七五に直してください」と言われて、スタッフと大喧嘩した思い出を語ります。4~6チーム制に分かれるスタッフが入れ替わるたびに、先生は怒りを抑えながら毎回解説していたそうです。
さすがに番組を7年以上も続けると、スタッフも学んできているとのことで、最下位の人の句が発表されるとカメラマンから苦笑がこぼれることも。しかし、最近俳句を始めた初心者から、定型でないことに疑問を思う書き込みも多いため、典型的な句またがりの例句を簡単に紹介したいと語ります。
①正岡子規(まさおかしき)の「春惜む宿や日本の豆腐汁」。五七五でそれぞれのフレーズを作る方法ではなく、「春惜(はるおし)む宿や/日本の豆腐汁」と切れ字「や」により、中七の途中で意味が切れます。上五と中七の一部が繋がっている形で、中七の途中に意味の切れ目があることが「句またがり」です。必ずしも五七五のそれぞれで意味を構成する必要はなく、柔軟に考えてほしいと解説します。この句のように全体で17音を作るタイプが綺麗で、句またがりの王道の型だと先生は述べ、王道以外にも上五や下五を字余りにする型もあると補足します。
②木下夕爾(きのしたゆうじ)の「手にあまる茅花よ電車はやともり」。茅花(つばな)は春の季語で土手等にみられるチガヤの花穂のことですが、「茅花流し」は茅花の花穂を吹き渡る南風で夏の季語です。「手にあまる茅花よ/電車はやともり」という切れになります。茅花を手に余るほどに摘んでいたが、気が付くと電車に灯りが点っているではないかというイメージの句。句またがりにより、前半の近景と後半の遠景が一緒に映像化された効果を語ります。この句は定型にすると逆に意味が作りにくくなると先生は述べます。1つの光景を語るのに5音では難しい場合、この句またがりの型を知っていれば情景が作りやすいと解説。「や」「よ」などの助詞以外で意味が切れる句もあり、歳時記の例句から句またがりを探して欲しいと先生は忠告します。
自分の表現したいことが五七五ではうまく収まらないが、句またがりを手札として持っておけば、表現できる場合もあると語る家藤さん。句またがりが必ずしもベストな方法とは限らないが、技法として身につけておくのに越したことはないとお二方は述べます。「プレバト!!」で先生が奨励している方法だと勘違いされやすいことに、「これも手の一つです」と強い口調で主張し、「そういう目で『プレバト!!』を観てほしい」と怒りを滲ませながら語って締めました。
[94]【花守祭】オンラインオフ会の参加方法をご説明します<2021/3/21公開>今回は「
伊月庵通信」(購読料有料)購読者限定のご案内。
4月4日(日)14時から16時まで「
Zoom花守祭(ずーむはなもりさい)」をオンラインで開催します。その準備として、アプリケーションソフト「Zoom」の導入方法を紹介します。
2018年に句会場「伊月庵(いげつあん)」を建てた先生は、毎年春に花見イベント「
花守祭(はなもりさい)」を開催していました。今回、コロナ禍の影響で現地に集うことをせず、
オンライン開催になったことを伝達します。
このチャンネル動画にも「俳句関係なく集う会をしたい」という書き込みがあり、その要望を受けて行うとのこと。
今回は、
伊月庵通信2021・春号の購読者限定ですが、参加人数は
500人上限とのこと。動画の後半で多くの時間を割き、パソコン・スマートフォンそれぞれにおいてZoomからの参加方法を説明しています。なお、Zoomのアプリケーションは事前に導入(インストール)が必要です。購読されている方は同封のパンフレットを用意した上、詳細については動画をご覧下さい。大雑把ですが、以下に手順を掲載します。
①伊月庵通信同封の案内を参照し、専用サイトにアクセスして事前に参加申し込み ②イベントアクセス用URL・パスワードをメール通知(4月2日) ③当日、専用URLにアクセスしてパスワードを入力 ④ZOOM招待URLをクリック ⑤ZOOM画面を立ち上げ(サインイン不要)、メールアドレスと俳号(氏名)を入力 |
[95]【オンライン句会ライブ告知】ネスレさん主催の句会ライブで豪華プレゼントをゲット?<2021/3/25公開>
今回は、(株)ネスレ日本主催のオンライン句会ライブの告知です。「俳人・夏井いつきと俳句で楽しむコーヒータイム」と題してZoomを用いた句会ライブを行います。
日時は2021年4月18日(日)13時から15時の予定です。ネスレのホームページからの応募期間は3月31日まで、ネスレ日本公式通販サイトからイベント対象商品を2,000円以上購入した方が対象です。招待は先着200名とのこと。
コーヒーマシン談議に盛り上がるお二方。当日はお二方が登場し、優秀作品などを紹介しますが、先生のサイン入り本・コーヒーマシン・コーヒーギフトなどの素敵なプレゼントが当たるようです。お題は当日発表のことです。是非とも参加してみて下さい。
[96]【悪態俳句】「週刊現代」に素晴らしい記事を書いていただきました<2021/3/28公開>
今回は「週刊現代」に取り上げられた悪態俳句の記事を特集します。「サラリーマンの『悪態俳句』が面白い」という見出しで4ページにわたるようです。
動画[54][78]で先生の「悪態句集」を紹介していましたが、日本経済新聞に”悪態俳句のススメ”というエッセイを執筆した頃に、このYouTube動画でも募集を始めたそうです。その後、日経新聞を読んだ出版社の記者の目に留まり、Zoomで取材を受けて今回の特集に至ったと述べます。記事は先生のみならず、梅沢富美男氏のコメントも掲載されるなど、取材人数は多数に上るようです。
実際に掲載された、クラウド坂の上の投稿句「あざっすは終わりにしろよ四月尽(しがつじん)」、ムラノヒトの「噂話だけが仕事か石榴(ざくろ)の実」を例に解説しながら、俳句の取り合わせの妙味について取材を受けた記者とのエピソードまで語ります。
悪態俳句について、悪態をそのままにとどめずに作品化し、季語を主役にした作品として味わうことで、我々の負の感情がその段階で清められ、作品として美しいものになることを目指していると語る先生。
そして、動画のコメント欄に書きこまれた悪態俳句を分類し、書籍化の準備中だとまで語ります。動画のコメント欄では、現在も悪態俳句を募集しているとのことです。
[97]【感謝】NHK放送文化賞をいただきました!<2021/4/1公開>
家藤さんの祝福から始まる今回の動画は、夏井先生が第72回日本放送協会(NHK)放送文化賞を授賞されたことをご報告。
「俳句ブームのけん引役として、長きにわたり『俳句王国』『夏井いつきのよみ旅』など様々な番組を通じて俳句の魅力を伝え続け、放送文化の発展に多大な貢献をされました。(一部抜粋)」と書かれた賞状を読み上げる家藤さん。そして、彫刻家の佐藤忠良氏がデザインを手掛けたブロンズ像を披露します。
授賞式では、北大路欣也氏やさだまさし氏、北の富士勝昭氏を眼前にしたと語る先生。脚本家の大石静氏はスピーチで、「重鎮がもらう賞だと聞いていたが、自分はまだまだだ(まだまだ出来る)と思います」と述べたエピソードを語り、同感した先生は「この賞を弾みにして色んな事に挑戦したい」と続けます。
そして、2019年の紅白歌合戦で審査員として登場した先生は、NHKの朝の連続テレビ小説「まんぷく」に出演した安藤サクラ氏とテレビ局で遭遇した際に、思わず役名で呼んだエピソードなどを語ります。
さらに、感慨深いエピソードも。2021年3月に惜しまれながら終了した『俳句王国がゆく』(前身番組は1995年から放送の『俳句王国』)の第1回目の収録にも出演した先生。主宰が金子兜太氏で、現在も俳人である村重プロデューサーが立ち上げたなど、詳細は『女性セブン』のエッセイ記事を是非読んで欲しいと語ります。先生が30代当時から携わっていた番組が約30年続く長寿番組となり、現在は60代となった先生ですが、番組の最後に出演した「俳句仮面」も30代に。世代の移り変わりを感じていると感慨深く述べます。
この授賞式の様子も『女性セブン』のエッセイ「瓢箪から人生」に執筆する予定とのこと。
最後に、エッセイで文字にするのと動画で語る印象との違いを問われた先生。このYouTube動画について「うっかり口を滑らせたりするため、リスクが高い」と素直に印象を述べます。お腹を空かせた先生は、御主人の作るパスタを食べに行きますと語って動画を締めました。
[98]【初・外ロケ!】「一句一遊」収録の裏側をお見せします<2021/4/4公開>
家藤さんが俳号「ウエンズデー正人」を名乗って始まる今回は初めての外ロケ。南海放送の許可を頂いて南海放送ラジオ「夏井いつきの一句一遊」「家藤正人の『一句一遊』虎の巻」の収録現場からお届けします。「一句一遊」の収録の裏側をお見せする特集回です。
松山城の外堀が見えるスタジオから約20年(2021年7月で20周年)にわたって放送している「一句一遊」ですが、最初に一週分(一兼題)のボツと採用分の投句資料の束をお見せします。現在、投句の量が膨大となり、一か月から一か月半に1回採用されれば良いくらいの分量だそうで、どの俳号の人がいつ詠まれたか記録しながらチェックする作業を「夏井&カンパニー」総出で行っているとのこと。ただし、優秀句(水・金)は実力重視で過去の実績関係なく読まれるそうです。
楽しく長続きして仲間の輪を増やしていくのが番組の大事なコンセプトと語る先生。10分番組ながら5日分、2週間にわたる選句・収録は大変で、終わる頃にはお二方ともぐったりとしてしまうそうです。お疲れ様です。
一句一遊は放送ディレクターにやのひろみ氏が携わります。動画の後半で実際の取材現場の光景が映し出されます。
皆で雑談する様子、怒涛の選句を行う先生、何週前に読まれたかの確認作業、収録でのお便り・俳句紹介、お便りに談笑するひろみ氏、ひろみ氏の放送編集作業、次週分の収録準備と続きます。「家藤正人の『一句一遊』虎の巻」は「一句一遊」収録後に家藤さんだけがスタジオに居残って行うそうです。
最後にお二方がメッセージを語って動画を締めました。
[99]【未発表句】どこからが未発表句ですか?<2021/4/8公開>
今回の動画は、「未発表句って何ですか?」「どこからが未発表句ですか?」という質問。既発表句と未発表句の境界線についてがテーマです。
俳句をやり始めて賞などに投句する場合、誰もが一度は立ち止まる問題だと語るお二方。そもそも線引きが必要な理由について、どこかの賞に入った句を使い回していっぱい賞を獲るのはルール違反だと先生は忠告します。
既に入賞した句(既発表句)は別の賞に応募できない規定を設けている場合が多いとのこと。自分の作った句について、応募先などを管理しないと、うっかりミスをやりかねないとも先生は述べます。
先生が俳句を始めた約40年前は、新聞・俳句雑誌・結社誌などの活字媒体しか発表の場がなく、活字になった句が既発表句扱いになると明確に線引きできたと述べます。
しかし、インターネットの普及によって状況が変化。ブログやSNS(Twitter・Facebook)でも自由に句を発表できるようになると、そのような場で出した句の既発表の線引きが曖昧になり、表題のような質問が多くなった事情を語ります。
先生はもう1つの線引きについて触れ、不特定多数の人の目に触れる場に出すと既発表句になるとも述べます。「不特定多数」の解釈が重要で、公開方法次第で”グレーゾーン”になると述べる先生。一般的にインターネットで公開した場合は既発表側に近いと考えられますが、ブログやSNSの設定で一部の人のみ公開とした場合、グレーゾーンの中で未発表側にあるとも述べます。
さらに、特定の人のみが集まる点で「句会で出した句の扱いはどうなるか?」という質問。これも俳人によってグレーゾーンの解釈が異なるそうで、句会を発表の場として既発表とする場合もあれば、句会を鍛錬の場・練習試合と捉えて未発表とする場合もあります。夏井先生も選者として参加する『道後俳句塾』では、黒田杏子先生が「鍛錬の場なので未発表として良い」と述べていたそうです。参加者のみに配布される句会報は市販など一般公開されておらず、閉じられた場でのもの(未発表)として考えられるとのこと。
グレーゾーンの中で、既発表と未発表のどちらに近いのか各個人が考える必要性があると述べる先生。
ここで、先生が色々な事例を思い出します。句会の参加者が、句会で提出されたある俳人の句に感動し、その句を作者の許諾なしに自分のSNSで公開するケースがあると語ります。一番問題になるパターンだと忠告する家藤さんは、作者の知らない所で不特定多数の目に触れるため、勝手に既発表句にされるケースだと補足。自分の句ではないだけに罪深く、絶対に避けたいと続けます。角川俳句賞(50句)や俳壇賞(30句)を狙う場合、数十句を応募する必要があるため、句会で評価された句や勝負句を少しずつ貯めていきますが、句友が勝手にSNSに句を一句でも掲載してしまうと「未発表句に限る」コンテストの応募が無効になってしまいます。くれぐれも注意して欲しいと述べます。
また、角川俳句賞に提出した50句の選考期間中に、俳壇賞にもピックアップした30句を提出するケース(応募中で既発表句扱いになってない状態で同じ句を別の投句先に提出する)も問題だと語る先生。結果が出るまで待つのが重要で、「どうせ駄目だから」の思いで、それをやるのは自分の首を絞めかねないと語ります。基本的に角川俳句賞に応募して落選した場合は全て「未発表句」扱いとなりますが、一部誌上で紹介された場合はその句のみ既発表句扱いとなるとのこと。
さらに、「一度佳作に入選した句の下五を変えた場合、未発表句になりますか?」という質問。推敲度合いにもより、まさにグレーゾーンのケースです。一文字でも変えれば違う句の場合もあり、文字を変えても内容が同じなら同じ句と考えられる場合もあるとのこと。先生は、一度賞に入った場合は「既発表句」として諦めるべきだと述べ、自分の句集で掲載する際に表現の一部を思うように変えるのは表現者として構わないと考えを述べます。家藤さんも自分のみの責任で出来るものは推敲して良いと補足します。
様々なケースがあり、画一的な解答が出せない問題だと述べる家藤さん。様々な議論をすることが健全な状態で、より明確に線引きが出来るようになると先生は述べ、動画のコメント欄にも疑問点を書き込むことで、世論の合意が出来ていくと語りました。
[100]【句会ライブ】三千人と俳句を楽しめる?句会ライブについて説明します<2021/4/11公開>
今回も質問に答える回。夏井先生の事務所宛に増えてきた質問「句会ライブってどういうもの?」。YouTube上の生配信以外の様式も紹介します。
先生はまず、句会ライブを始めた経緯を語ります。最初の句会ライブは約25年前にもなり、「俳句王国」初回出演から5年ほど足掻いてフォーマットを形成したとのこと。また、「新しい時代の句会の形とは?」と問われた先生は、「正岡子規の時代から合理的な句会をしていた」と答えますが、既に時代は100年以上経った令和。その質問がずっと脳裏にあったそうで、この経緯は『女性セブン』のエッセイ「瓢箪から人生」に執筆したと語ります。
次に、句会の人数について話題が展開。通常の句会は人数が多いと薄味になり、各句にコメントできる時間も短くなります。選句用紙を回す時間も膨大になるなど手間が増えてしまい、その辺りも踏まえて先生は「句会ライブ」の形を生み出します。現在は家藤さんが学校関係をまわり、オンライン句会ライブも展開しているお二方。先生が行う句会ライブも60人から3000人規模と様々な人数に対応したプログラムで行っています。
そして、「これをテーマに句会ライブが出来ないか?」という最近多い問い合わせに話が移ります。
先生は、①言語コミュニケーション、②人権教育、③食育、④防災教育、⑤医療関係の5つについて順に話します。
①先生の教員時代、小学校で最初の一句を苦心せずに作句できる国語の授業寄りに最初は展開していましたが、徐々に「コミュニケーション」寄りの現在の形にシフト。全員で作句した後のトイレ休憩中に先生が選句し、決勝に残った数句の鑑賞について子どもたちに議論をしてもらったそうです。コミュニケーション能力の育成が急務だった時代背景もあったとのこと。
②校長先生から相談された「人権教育」という題材。差別や仲間外れを「悪い」と分かっていても人権アレルギーを持つ児童が多いという点、自分を表現する言葉の技術力が不足し、双方が正しい言葉で想いを理解できず、相手の心情を想像する力の欠如を感じる点を相談されたそうです。意気投合した先生は、人権教育のプログラムを実行したそうで、親和性が高そうだと家藤さんも同調します。
③「食育」と聞いてしかめっ面になる家藤さん。児童が一人で朝食や夕食をとることが多く、食の楽しさを伝えたいというのがきっかけとのこと。食べ物の季語は多く、一物仕立てに近いと思いながらもプログラムを作成したそうです。現場で物をつつきながら行う句会ライブも楽しいと語る家藤さん。先生は、秋に作る「いもたき」の味は全国で違うと語り、地域性があるものを句材とする企画など、食育の話題は色んなパターンがありそうだと語ります。
④先生の元同僚である御荘中学校の中尾繁樹氏に提案されたのが「防災教育」。東北地方某所にて、実際に防災を学習した子どもたちが、様々な体験から俳句を詠む句会ライブを行ったとのこと。家藤さんは、日本財団の「海と日本PROJECT」で、海の知識を学ぶ一環として行った句会ライブを思い出します。子どもたちが体験すること=吟行であり、俳句のタネを探すことだと補足する先生は、俳句はオールジャンルと結び付けられると語ります。私たちが知らない宝の山がまだ埋まっているはずだと語る家藤さんに続き、アイデアを考えながら共有できる仲間が増やせるのは良いことだと先生は述べます。
⑤「リウマチ」で一句に続き、古舘伊知郎氏と「尿酸値」で作句する医療関係の企画も行っています。家藤さんが、句材のネタを考えると苦しんでいる心境を詠むのが想像つくと語ります。医療系や介護系などこちらも色々展開できそうだと述べる先生。
最後に、「皆さんのアイデアをお寄せ下さい」と語って動画を締めました。
[101]【はっきり言います!】上五の字余りを推奨しているわけではございません<2021/4/15公開>
今回も質問に答える回。「プレバト!!」視聴者から多く受ける質問は「先生は上五の字余りを推奨しているのですか?」。ハッキリと説明したいと声を張る先生の結論は、「推奨は全くしていない」とキッパリ回答。
実際に、番組で添削をする中で上五字余りになるケースは目立ちます。動画[33][35]「添削と推敲の違い」でも既に解説していますが、添削はあくまで本人の意図に言葉を寄せる作業のことだと確認します。本人の書きたいことを無視すると改作・作り変えとなり、ますます作者から文句が出て皆が不幸になると語る家藤さん。
作品として出来上がった内容と作者の言いたいことが解離したケースでは、字数を大幅に変えることはありますが、最初に作者が言いたかった内容に寄せるため「添削」となります。平場挑戦者は俳句初心者のため、こういうケースが多いのは当然の結果ですが、司会の浜田さんに「これどういう気持ちで?」の後に語る作者本人の解説が添削の際に重要で、先生は聞き耳を立てて聞いているそうです。その内容に驚くこともあるそうですが、事前に添削例を考えている先生。1単語を諦めて添削すると「全部言いたかったんです」と作者の呟きが返ってくることが、特に番組初期は多かったとのこと。
添削で諦めるべき単語を先生が提案するも、作者は「それを書きたい」と強く”言い張る”ため、情報量を全て入れようとすると字余りにするしかないのだと述べます。字余りが唯一許容されるのが上五しかないため、苦肉の策として仕方なく添削をしていると言います。
また、もう一つのケースとしてストーリーを書きたい人の添削。17音しかない俳句では、本来ストーリーを書くのに適さないと先生は述べます。短歌や詩や小説に書くことをお薦めしていますが、どうしても俳句にする場合は、これも字余りになるとのこと。「添削しても良い句にはならない」と真実を突きつけますが、詩としてはつまらないものになりやすいと番組でも語っています。「夏井先生は上五字余りを推奨してない」と世の中に広めてほしいと繰り返します。
さらに、「夏井先生は破調が好きなのですか?」という質問もよく問われるそうです。ここで、急に師匠の系図を辿る先生。「高浜虚子→山口青邨→黒田杏子→夏井いつき」と挙げ、先生は高浜虚子のひ孫弟子に相当する師系とのこと。先生自身は、韻律・表記・文体を選ぶ立場でありながらも基本的には有季定型派の俳人だと力説し、文句のある方は自分の句集を2冊熟読して欲しいと語気を強めます。
要は、上五の字余りも破調も推奨していないという目線に立ち、「プレバト!!」を視聴して欲しいと語る家藤さん。梅沢富美男氏のような王道正統派も据えた上で、様々な名人・特待生が色々な手法を学ぼうと四苦八苦している時期にあると語る先生。番組を観た俳句初心者が、禁じ手のように破調や季重なりに手を出す時も一種の経験としてあり、梅沢御大のような有季定型に最終的に収まるケースもあると述べます。そのような視線で番組を観てほしいと語って締めました。
[102]【プレバト!!の実り】プレバト!!の俳句が教科書・歳時記に!<2021/4/18公開>字幕テロップが新しくなった初回テーマは「
プレバト!!」の実り。バラエティー番組として、11月の放送で
8年を迎えますが、ここまでの俳句査定の成果を紹介します。番組で発表された俳句が
中学校指定教科書(三省堂)・歳時記(ナツメ社)・中学校教科書副教材(明治図書出版)と続々と教材に掲載されたことを紹介し、一句ずつ解説をします。当ブログでは、
こちらの記事でも該当句を既に紹介しています。
【1】
中学校3年生用の指定教科書で、「俳句の世界」のコラム執筆担当だった先生。その際、「超辛口先生の赤ペン俳句教室」を出版していた先生はその中からの添削例として、
FUJIWARA藤本敏史、フルーツポンチ村上健志両氏の2句を例句に掲載。番組スタッフも皆仰天したようです。日本の中学校の教材に「プレバト!!」という番組がかかわった最初の出来事です。梅沢富美男氏はスタジオで、「お前らは添削しやすいから載っただけだ」と憎まれ口を叩きました。
【2】
石寒太氏編著の歳時記に、「プレバト!!」出演者の俳句が例句に3句載るという事実にスタジオは騒然。出演者は全員知らない状態で発表されました。ここで、家藤さんが歳時記について簡単にまとめながら掲載句を紹介します。
①
光浦靖子「無花果(いちじく)や苛(いじ)めたきほど手に懐き」。手に持った無花果は掴むと潰れてしまいそうで、案外懐いてしまう感触を表現。中七に独特の個性がありますが、下五の展開も中々できないと鑑賞します。古今東西の名句と肩を並べて堂々とした存在感を放つと語る家藤さん。先生は、
自分の感覚に正直な人で、感覚が言葉に乗った時の爆発力がある方だと作者の特徴を述べます。
②
的場浩司「職質をするもされるも着膨れて」。「職質」は職務質問の略。この言葉の経済効率が良く、意味が分かると光景がありありと見える句だと語る先生は、句の発表された瞬間も皆が笑い転げたと述べます。警官が二人位来ているのではないかと思えるリアルな情景は作者の実体験だそうで、
リアリティー・オリジナリティーは実体験で生まれるため、変に妄想せずに実体験を書けと番組でもよく語ります。Kis-My-Ft2の二階堂高嗣さんに強く言いたいと述べる先生は、ラジオ「一句一遊」でも「二階堂君を何とかしてやって下さい」と言う応援コメントがよく寄せられることを語ります。
③
村上健志「双六の駒にポン酢の蓋のあり」。双六遊びで駒が足りない際にマッチや飴玉を置くという発想が無いわけではないものの、「ポン酢の蓋」が絶妙で黄色の蓋が映像として見え、新年の季語のため鍋料理でも囲みながら傍で双六遊びをする子の背景も想像できる句だと解説します。類想であっても、
一欠片のオリジナリティー・リアリティーをどのように乗せるかの勝負を実践しているのがさすがだと作者を褒め称えます。番組で提出する一句に勝負をかけて決め球の句を投げる特待生の皆さんですが、真剣勝負の場に
肩の力を抜いたリアリティーのある句を投げる胆力・腹の座り方がカッコいいと印象を述べるは家藤さん。努力しているし、身に着けてきていると先生も称賛します。
【3】
明治図書出版の副教材として掲載されたのは先生が選定した3句。教室で先生らが技法を説明しやすい確かな句を基準としたそうです。
④
横尾渉「休暇明(きゅうかあけ)アルトのビブラート太し」。季語と12音を取り合わせた一句です。「アルト」は本来女性の声パートですが、作者本人は
自らの体験として「少年」の声のことだと語ったため、体験から出来た句として字面通りに鑑賞して欲しいとのこと。番組ではほぼ生放送に近い形で放送されますが、小さな編集によって視聴者に勘違いを誘導することも多々あるため、横尾さんの名誉のため補足しました。ここで、家藤さんが自分以上に親心を発揮する先生を僻みます。
⑤
皆藤愛子「右肩に枯野の冷気7号車」。
凄く良い感性を持ち、自分の感覚に素直になると素晴らしい句が出来ると作者の印象を語る先生。現代的な匂いもしつつ、「枯野」のずっしりとした季語が据わり、「7」の表記も効いていると味わう家藤さん。座席に右肩に冷気を感じ、列車が枯野をゆっくりとカーブしながら窓から先頭車両が見えるようなイメージがあり好きな句と先生は鑑賞します。
⑥
梅沢富美男「銀盤の弧の凍りゆく明けの星」。見事に映像を言葉で表現した句だと感慨に浸る先生。スケートリンクを滑ってエッジで削り取られた軌跡が弧となり、それが凍り始めるという光景描写をよく捉えており、明けの星の時間の表現も上手いと味わう先生。
格調と映像が同居し、時間だけでなく星の映像を確保した点が良いと家藤さんも語ります。下五で「銀盤」の美しさも呼応させ、
王道を行く御大のあっぱれな一句と褒めちぎる先生。生意気ながらも、親心をもって立派に育ってくれたデカい息子だと語ります。
「プレバト!!」今後とも視聴してくださいと番組の宣伝をして終わりました。
[103]【祝一周年】YouTuberデビューからの一年を振り返ります<2021/4/22公開> ※当ブログ紹介動画
「夏井いつき俳句チャンネル」YouTube開設から1周年と題して、過去の動画を振り返る企画。最初の動画[1]が2020年4月23日公開で、この動画の公開が2021年4月22日とほぼ1年。おめでとうございます。
まずは、最初の動画[1]でYouTuberデビューの所信表明をしたことを振り返ります。先生は、動画を撮る小さなカメラで何が出来るのかと懐疑的に思った心境を述べ、カメラの奥にある壁に語りかけるのに慣れないため、居心地が悪かったと述べます。
しかし、その心境を覆して多くの視聴者の反響を実感したのが、初めて生配信[L1](2020/8/22)の時とのこと。動画[3](2020/4/30)で、チャンネル登録者数1万人突破したら生配信を行うと公約に掲げていた先生。そして僅か1か月後の動画[10](2020/5/24)では1万人記念突破の動画を公開します。当時、伊月庵近辺のネット回線が整っておらず、工事中だったことを思い出します。
先生は再び、頼りないカメラで視聴者のみんなと繋がれるのか心配性だったと明かします。そして、句会ライブの生配信でチャットを初めて認識し、ダイレクトに反応が来る点を気に入ったことも告白します。句会ライブは生の空間特有の楽しさがありますが、コロナ禍で続々と中止に。テレビのリモート出演や収録も多くなり、誰もいないカメラに語りかける仕事の窮屈さを述べます。このような環境の変化に対し、懐疑的・後ろ向きだった先生ですが、今やライフワークになりつつあると家藤さんが補足。家藤さん自身も最初は収録に慣れず、撮影開始の合図があっても数秒間二人でまごまごして、生配信のチャットで心配された失敗談を述べます。
ここで先生は、YouTubeの世界では特殊な年齢層が見えてくる点に言及。高齢の年齢層を定着させるため、先生も最初は存じ上げなかった「チャンネル登録」の方法まで解説した点に触れます。
家藤さんは、1年間の中で特に印象深かった回を先生に尋ねます。動画[75](2021/1/14)の文藝春秋のグラビアデビューの動画を挙げる先生は、「組長、グラビア見ました」と会う人にネタにされたとユーモラスに語り、当時の撮影の様子に想いをふけます。家藤さんは、色々やっているため、どの回にどんな話をしたかあやふやになっていると告白します。先生に印象深かった回を逆質問された家藤さんは、コメント欄で視聴者が沢山考えてくれた”季重なりシリーズ”の回[41](2020/9/13)、[47](10/4)、[48](10/8)を挙げます。高野素十の「打水や萩より落ちし子かまきり」で、主となる季語がどれかを考えましたが、コメント欄を介して視聴者と交流が出来るのが面白かったと語ります。
先生は、コメント欄を見ると、視聴者がお勉強回で盛り上がる層と興味の方向性が異なる層に二分される傾向があった点に言及。その点に困った家藤さんは動画[80](2021/1/31)の人生相談で、今後の動画の方向性を問いました。動画[50](2020/10/15)のgoogleの収益化申請が通らない切実な悩みも含め、視聴者が親身になって考えていただいたと、先生は感謝の言葉を述べます。
そして、再生回数ランキングを発表。最も再生回数が多いのは動画[1]ですが、2位が動画[50]の収益化関連だと言います。視聴者が大きなリアクションを行ったこともあり、僅か10日後の動画[53](2020/10/25)で収益化申請が通った事実を発表する動画を掲載。先生は、企業までを動かす人々の力が凄いと感触を述べます。
***
さて、ここからがこのブログの本題に。内容をまとめた紙を持つ家藤さんを「我が息子ながら凄い」と褒める先生ですが、YouTube動画をまとめる有志のブログを印刷した資料を基に語っていたことを告白し、先生も驚きます。家藤さんは「こんなマメなことはできない」と謙遜しますが、なんと当ブログの題名を読み上げる家藤さん。そして、拙者「プロキオン」と俳人「着流きるお」氏が字幕テロップ表示とともに読み上げられ、思わず先生は眉を顰めます。家藤さんから感謝の言葉を頂きました。(取り上げていただき大変恐縮です。こちらこそありがとうございます。)
何と当ブログを宣伝して頂く形になりましたが、俳句チャンネルでどんな動画が取り上げられたかをリスト化し、記事に手入力でまとめているのは紹介されました「着流きるお」氏ではなく、私「プロキオン」であります(訂正します)が、先生に「凄い人がおるなあ」と語っていただきました(拙者は趣味でやっており、決して凄い人ではありません、凡人です)。ここで、人見直樹氏が「プレバト!!」の予告内容を先生のブログのコメント欄に記載することに言及し、その10倍以上の仕事量だと語ります(そ…、そうなのでしょうか?)。お二方から感謝の言葉を頂き、「これからもよろしくお願いします」と先生にお辞儀までされました(とんでもございません、こちらこそありがとうございます(^^♪)。
***
家藤さんは、「これからも動画は数が続いていく」と今後の展望を述べ、「よろしくお付き合いください」と先生は述べます。所信表明を問われた先生は、「初志貫徹」だと淡々と述べ、持続していくことで色々な物が蓄積されるのが大事な仕事と分かったと理由を語ります。色んなシリーズを展開し、これからも続けていくと力強く語りました。家藤さんもメッセージを語って動画を締めました。
[104]【4月の正岡子規】一物仕立てについて解説します<2021/4/25公開>
動画[91]以来の正岡子規シリーズ。「子規365日」の掲載句を解説していますが、4月の正岡子規は「一物仕立て」の中心に解説します。
一物仕立ては季語の成分だけで一句が出来上がっている句のこと。いわゆる取り合わせ・二物衝撃とは異なります。「一」が季語のことで、その季語を仕立てるという意味です。理解していただくためにと実際に句を紹介していきます。
①「若鮎の二手(ふたて)になりて上りけり」。季語「若鮎」が二手に分かれて川を上っていく意味ですが、実は前書きがあるこの句。「石手川 出合渡(いしてがわであいわたし)」とあり、川を上流で二分する分岐点の地名と分かります。句のみだと鮎の集団が二手に分かれていく意味に思う読者もいるかもしれないと語る先生ですが、鮎が二手に分かれて川を上る情景のみで一句が成立する句と解説。家藤さんは「川」と書かれていないものの、水の存在を示す「若鮎」の季語だけで一句が出来ている句だと補足します。そして、先生は推敲前の下五が「流れけり」だったとプチ情報を入れ、その場合「若鮎」の鮮度が落ちていたと解釈する家藤さん。下五も「若鮎」の季語を立てる描写で、一物仕立ての見本となる一句です。
一物仕立ての句は決まるとカッコイイと述べる家藤さんですが、要素が変わってくることを説明したいと述べる先生。
②「飛び込んで泥にかくるる蛙哉(かわずかな)」。「蛙」が春の季語ですが、先生は「蛙」に本来ない要素が1語この句にあると問いかけます。それは「泥」。泥に飛び込んで隠れる蛙の動作によって季語を描いていますが、「泥」の場所・状態を入れ込んで映像化した一句だと解説します。①の句では場所情報「川」を省略して動作のみを描いていましたが、この句は「泥」を明確に打ち出した点が異なるのです。
③「蜂の巣に蜂の居らざる日和哉(ひよりかな)」。「蜂」「蜂の巣」どちらも季語ですが、この句では”蜂がいない”ため「蜂の巣」が主たる季語と明確に分かりますが、先生は再び問いかけます。「蜂のいない蜂の巣」を描く際に本来「蜂の巣」に含まれない要素となる1語はどれか?答えは「日和哉」。天気の情報ですが、季語「蜂の巣」を描く際の周辺の情報と考えると良いと解説する先生。②の句も「蛙」「泥」は組み合わせとして不自然ではなく、この句の「蜂の巣」「日和」も同様だと語ります。
④「板の間にひちひちはねるさくらだい」。春の季語「桜鯛」をオノマトペ「ひちひち」を用いてさくらだいの様子だけを描写した一句です。「さくらだい」が本来持たない情報は「板の間」という場所になり、先ほど買ってきたか釣ってきたかという料理前の新鮮なさくらだいが想像でき、「板の間」の場所情報により季語がありありと見えてくる一句。
⑤「夕桜何がさはつて散りはじめ」。季語「夕桜」が「散りはじめ」るのは元々持っている情報ですが、中七「何がさはつて(さわって)」は時間・場所でもない情報です。これは作者の感じたことで、”誰も触っていないはずの夕桜に一体誰が触ったのだろうか?”という作者の想いが込められているタイプの句だと先生は解説。この句の「夕」は時間情報というより「夕桜」全体が季語である点に触れる家藤さんですが、③の句の「日和」は時間と言うよりかは天文と捉えるべきだと先生は補足します。
⑥「花御堂の花しほれたる夕日哉」。季語「花御堂(はなみどう)」は、花祭りの日(4/8)に飾られている花に囲まれた小さな手作りのお堂のこと。内部の小さな釈迦仏に甘茶をかける行事を行い、先生が幼少の頃は花祭りの日にヤカンを持って寺院に行き、甘茶を貰って帰ったことを振り返ります。「花しほれたる」までは季語「花御堂」が持つ情報ですが、季語に含まれていない情報「夕日」によって遠近感が生まれ、背景・映像・時間が添えられると解説する先生。
たまに変な句もあるものの、こうしてみると映像がしっかり立ってくる作家だと子規の印象を語る家藤さん。
別の機会に、一物仕立てから取り合わせのグラデーションを解説したいと語る先生。この動画から派生して、来週「一物仕立て」で一本動画を公開すると予告しました。
[105]【一物仕立て】取り合わせまでのグラデーションを解説します<2021/4/29公開>
前回の動画の予告の続き「一物仕立てとグラデーション」について解説します。
一物仕立ては季語が本来持つ情報だけで一句を作る手法でした。今回は「一物仕立て→取り合わせ」に至るグラデーションに関してで、季語が本来持っていない情報が多くなる俳句が登場します。
まずは純粋な一物仕立ての句を紹介します。
①高浜虚子(たかはまきょし)の「白牡丹(はくぼたん)といふといへども紅(こう)ほのか」。良い句だと褒め称える先生は、白い牡丹に近寄ってよく観察すると微かに紅色の筋などがあることを表現しており、特に「ほのか」の描写が巧いと解説します。季語だけを観察して作ったまさに一物仕立ての句です。
②与謝蕪村(よさぶそん)の「牡丹散つて打ちかさなりぬ二三片」。牡丹の大きな花びらが散って、地面にその2~3片が打ち重なっているだけの映像ですが、スケッチの印象があると先生は述べ、影まで見えるようだと続ける家藤さん。①②は季語「牡丹」の持つ要素だけで成立しており、先生は「純正の一物仕立て」と呼んでいるそうです。
引き続き、牡丹の句のグラデーションも見ていきます。
③能村登四郎(のむらとしろう)の「散りしぶる牡丹に少し手を貸しぬ」。先生は、季語に内包される情報を考えてと視聴者に問いかけます。上五「散り」は牡丹に含まれますが、「しぶる」に作者の感情が入り、散り渋っているような牡丹があると解説します。下五「手を貸しぬ」はより異物と認識しやすいと語る家藤さん。先生は、作者の手が映像に入ることで「手を貸してあげた」という作者の想いがあると述べ、感じ方・思い・手という要素がこの句に少しずつ混ざる形だと語ります。季語以外の要素が混じり込んでいるタイプの一句です。
④阿波野青畝(あわのせいほ)の「牡丹百二百三百門一つ」。最初に、光景が広がってきたと述べる先生。牡丹自体は一輪の光景ですが、牡丹園になると広い光景に。牡丹が100、200、300と広がって存在し、別の場所に門が1つあるという句で数詞の効果が見事だと述べます。牡丹の数詞までは季語の持つ情報と捉えられると家藤さんが補足し、下五「門一つ」が背景としてあり、大きなお寺の牡丹園を想像したと先生が続けます。目の前の一輪から広がり、背景の門に至るカメラワークで映像化された一句で、「門」の要素が入っています。
ここで、俳句の書かれた紙を家藤さんが先生に渡すため手を持ち替えますが、先生が頷いて応答するハプニングがありました。
⑤水原秋櫻子(みずはらしゅうおうし)の「夕牡丹しづかに靄を加へけり」。「夕」の時間情報が効果的ですが、上五全体が季語「牡丹」の傍題と捉えられると解説する先生。「靄(もや)」は季語に含まれない情報です。夕暮れに静かに靄が広がってきている光景ですが、季語以外に天文の情報が含まれたタイプ。④では「門」という場所・背景で、⑤とは見えてくるものが異なります。
⑥永井荷風(ながいかふう)の「牡丹散つてまた雨をきく庵かな」。②と上五は同じですが、持っている情報が全く違います。②は季語のアップの映像でしたが、⑥は季語と違う場面にいく展開で、作者の過ごし方が描かれています。「雨」は天文の情報、「庵」は場所の情報で、④「門」・⑤「靄」と同じ手法が⑥は同時に展開されています。さらに、「また」の時間経過の要素が入り、そのニュアンスを先生は尋ねます。家藤さんは、解釈に幅があると前置きし、[a]午前に降った雨が再び午後に降り出した、[b]意識しなかった雨音を何かのはずみで再び捉え始めた、と解釈を述べ、時間の幅に大小・長短がある気がすると語ります。先生は「また」「雨」「庵」と3つの要素が、季語の向こう側に入っている句で、グラデーションとして他の情報が強いタイプの句だとまとめ、②とよく比較して欲しいと述べます。
ここまで、牡丹に周辺情報が加わるタイプの句を紹介しましたが、次は完全なる取り合わせ。
⑦有馬朗人(ありまあきと)の「中国に妖怪多し夕牡丹」。中七「多し」で句に切れが入り、下五「夕牡丹」と取り合わされた一句で、2つの無関係な要素が一句に同居した句と語る家藤さん。取り合わせは「言葉の火花を散らす」ことだと述べる先生は、季語と関係ない2つの情報をぶつけることで詩という火花が散る作り方だと解説します。先生は、②⑤⑥⑦の4句を比較し、グラデーションを解説します。例えば⑤は、夕牡丹が咲く光景に靄が流れ込む1つの画面で成立しますが、⑦は画面ではなく、中国には妖怪が多いという情報と季語をぶつけるタイプの句です。グラデーションをすると、情報がどのように変化するかも意識されると語る家藤さんですが、②⑦の句を比べれば完全に別物だと印象を述べます。
一物仕立てと取り合わせ、そのグラデーションを理解すれば使える手が増えてくると思うと総括する先生。久々に濃密な勉強回だと家藤さんが語りました。
[106]【おしゃべり俳句:第三回】子どもの素直で可愛い俳句に思わず笑顔に<2021/5/2公開>
コンロの魚が焼き上がる音が流れて開始した今回は、動画[82]のコメントに寄せられた「おしゃべり俳句」の結果発表です。エピソードが可愛いのが沢山あったと総評する先生。
①yaの「先生はマスクしてるほうがいい」。コロナ流行以前に学習塾の手伝いをしていた作者。喉が痛くてしていたマスクを外した際に小3男子が放った一言。”複雑な感じがする”と言葉を濁す先生は、”顔を見慣れてないだけで、ブスとかではない”と真意を語ってフォローします。作者からは、マスクでほうれい線などを隠せるが、残酷な一言だったとコメントが。”ほうれい線や白髪など気にならなくなった”と語る先生は、老化による変化も句材になると考え、自身の髪を染めなくなったことも「時間とカネの節約」だとし、理由を明かします。
②栄英の「『新品のヤドカリみつけた!!』春めきて」。海水浴の際に近くで遊んでいた他の家族の6歳くらいの男子の台詞から。家族が去った後の砂場で、ピカピカと光り輝く綺麗な貝を発見し、内部にヤドカリが棲んでいたエピソードとのこと。”新品のヤドカリ”が詩として良いと語る先生。鍵括弧内が子どもの台詞、下五「春めきて」は作者の付け足しですが、”要らないんじゃない”とバッサリ切ります。「ヤドカリ」が季語のため台詞のみの自由律俳句でも良いと提案しますが、家藤さんからお叱りの言葉を受け、謝罪をします。
③Tawandaの「何で誰も来てくれないの!おらが春」。当時5歳の姪っ子が、”もういい!”とすねてしまい、隣室から戻ってきた際の一言。爆笑する先生ですが、慰めにきて欲しかったのではないかと読み解きます。作者が追加した「おらが春」を良いと褒める先生は、小林一茶の「めでたさも中くらいんなりおらが春」の雰囲気のようで面白いと述べます。すねた人物のエピソードについて、先生も体験談を述べ、”精神構造が一緒”だと語ります。
④松山のとまとの「子をしかるママ鼻に汗かいとるよ」。当時3歳の子どもを叱っている時に言われた台詞。”子どもは叱る言葉の内容が入ってこない”と印象を述べる先生は、自身の悪態俳句「怒鳴る人の口ばかり見て鰯雲」と同じ精神構造だと述べます。「汗」は夏の季語ですが、このような台詞を”堂々と言うのが良い”と続ける家藤さん。
⑤小学校教員・たまのねこの「夏の空一年生と遊びたい」。小6の女子がコロナ禍の状況で放った台詞とのこと。コロナのせいで楽しみにしていた一年生の世話も遊びも出来なかったようです。先生は、コロナ禍の条件で初めて共感できるのではないかと語ります。
⑥藤なつきの「空っ風たいへんあーちゃん飛ばされちゃう」。公園に行く約束を姪っ子としていたが、当日暴風が凄くて玄関を出た瞬間に風に驚いた姪っ子が叫んだ台詞から。作者が季語をつけていますが、とても良いと語る先生は、”合作を大人も楽しんで欲しい”と述べます。
⑦すがあつの「げんごうにわたしの字がない春疾風」。当時4歳の娘が放った台詞ですが、「令和」の新元号発表直後の一言で、物を投げつけて本気で怒っていたとのこと。元号の字のある人が報道で取り上げられたことを振り返る先生は、”ほとんどの人はないからみんな一緒”とフォローします。”この子の心が好きだ”と語る家藤さんは、当時の心の動きを記録するのは面白いとまとめます。
⑧井上亮子の「母ちゃんだって間違っている路肩雪」。子育て中一服の清涼剤となっている10歳の娘の言葉とのこと。朝、娘の口上を注意すると「態度が冷たすぎる」と逆切れし、物凄い勢いでドアを閉めて登校した娘とのエピソードです。作者がつけた「路肩雪」が渋いと述べる先生ですが、”こういうエピソードを書き留めてくれるのはエエ母ちゃんだと思う”と印象を述べます。怒りたいことでも俳句のタネと思えば耳を傾けやすくなるのが「おしゃべり俳句」の効用だと語る家藤さん。”心を寄り添ってほしい”と述べる息子へ、”おたくもね”とさり気ない一言を先生は返します。
⑨sasa dangoの「おかあさんは思い出をなめてる年の暮」に思わず拍手する先生。小1の息子が使わなくなった玩具やキャラ菓子の包みなどを捨ててしまうことへの抵抗が強く、写真を撮ってから涙ぐんで捨てるというエピソード。共感できると語る家藤さんに続き、中七の言い放ちを詩人だと感心する先生自身も”捨てがちな母”だと同調。Excelファイルの復元が大変だったことを暴露し、”三つ子の魂百まで”だと家藤さんが先生を弄ります。
そして特選3句をいよいよ発表します。
⑩けんとの「北風やいのちがつぶれちゃうじゃないか」。「いのち」は大袈裟な意味ではなく、子の喧嘩や転倒など些細なことと感じる先生は、後半の台詞の感性の鋭さを指摘し、詩の純度が高いと褒めます。小さな生き物を手に握るようなシーンを想像できる述べ、「北風」の季語でそのように解釈できたと評します。「手のひらの虫を潰してしまうかもしれない」と17音で読める句ですが、実際は4歳の作者が鬼ごっこをしていた際に、鬼に捕まる際のはずみで押し倒される形で転んでしまい、潰されて痛かった時に出てきた台詞のようです。
⑪ななせの「えっママは大人だったの梅ひらく」。大人からすれば当然すぎますが、大人の範疇に入る人だと改めて気づかされる子どもの台詞。若いお兄ちゃんが酒を飲む光景で、「子どものくせに飲んでいる」と子が勘違いすることもあるそうです。先生は、最後の「梅ひらく」が良く、ママも小さな子から梅が開くように素敵な大人になり、いずれ娘もそうなってほしいという想いが込められていると鑑賞します。作者によると、婦人服売り場で自分の服を選んでいた時に後ろから娘たちのひそひそ話が聞こえ、当時4歳の娘・妹の七星(ななせ)が「ここは大人の売場だよ」と言いますが、姉5歳が「ママは大人だよ!」と言い返し、その後に妹が放った台詞が俳句になったそうです。面白い呟きで可愛いと先生は述べます。
⑫行きずりの子供+警備員みづちみわの「龍天に登るトイレはどこですか」。俳号「行きずり」にツッコミをいれる家藤さんに対し、先生は「警備員」に着目。デパートやスーパーの警備員に語りかける子どもの台詞に対し、取り合わせの季語に何を入れるか警備しながらずっと考えていたのではないかと滑稽に想像します。警備員の制服を着ている際は、子どもからもかしこまった物言いをされるという作者。駐車場でウロウロする小2男子に話しかけて出てきた台詞とのこと。春の季語「龍天に登る」が面白いと述べる先生。春に、滝の淵に潜む龍が雲の上に行くような春で、小さい子の台詞と取り合わせたからこそ効果的なのではないかと感触を語ります。職場の出来事も俳句のタネになる好例だと家藤さんが述べます。
さらに、この動画のコメント欄に新たな「おしゃべり俳句」を寄せてほしいと語って締めました。
[107]【人生相談】夫との関係が破綻してしまったあなたに<2021/5/6公開>
動画[76]以来の人生相談。「この歳まで頑張ってきた夫との関係が破綻。離婚したくはないが、どう夫と接したら良いか」という切実に悩みに答えます。重い内容の質問にやや狼狽え気味の先生は、”こういう質問を堂々と書いてくるコーナーに育つとは思わず、嬉しいような気の毒なような不思議な気持ち”だと率直に述べます。
結婚によって、1人で自由にしていた時の人生と比べ、「家族のために色んなものを犠牲にしてしまった」という想いは誰しも持つはずだと持論を展開する先生は、初見で大変ハッとしたという句を紹介します。
西村和子(にしむらかずこ)の「熱燗の夫(つま)にも捨てし夢あらん」。作者は1948年生、行方克巳とともに創刊した「知音(ちいん)」の主宰で、現在は俳句甲子園の審査員を務める俳人。先生は切符の良い姉さんのようだと先輩の印象を述べますが、実際に知り合う前に歳時記で知ったこの句にドキっとしたそう。「自分ではなく夫にも捨てた夢があるのではないか」と文学以前の気付きとして教えてもらったと語るのです。
ここで投稿者の悩みの話に。個人的に夫婦間に介入できたとしても何も言えないと前置きしますが、①夫婦の関係が破綻、②離婚する気がない、の2点が明確であるならば、「シェアハウスの管理人」として過ごされてはどうかと提案します。
1号室に元夫(のおじさん)、2号室に長男(サラリーマン)、3号室に姑(のおばあちゃん)がそれぞれ住んでいると仮定し、自身がそれらを世話する管理人に思えば良いと述べます。そう思って暮らせば新しい人間関係が生まれてくる可能性があるというのです。1号室の人は夫と思わずに”おじさん”だと思い、服装の変化を気遣うなど、入居者だと思えば新しい見え方がしてくるのではないかと語ります。
“「老いらくの恋」というトキメキが再び来るかもしれない”とロマンチックに締めますが、“全て推定です”と注釈をつけて相談を締めました。
[108]【俳句ポスト365】リニューアルした俳句ポスト365についてお話しします<2021/5/9公開>今回は愛媛県・松山市が運営する無料俳句投稿サイト
「俳句ポスト365」の大幅リニューアルについて語ります。
→サイトはこちら2013年1月から開始された同サイトは、2021年4月で大幅リニューアルされました。当初は100句程度の投稿でしたが、最近は1兼題
1万句を超える場合もあり、結果発表の更新時に大幅な負荷でサーバーがダウンするなどの問題が生じていました。10時の結果発表に間に合わず、
サイト運営が正常にできないため利用者にも迷惑をかけるという事態に。再発防止のため、ハード面が強化されたのが大きな理由のようです。
次に中身も大幅に変化した点に触れます。
初級コース・中級コースの2コース制となりました。前者は家藤さんが、後者は夏井先生が選者を務めます。初級コースは「プレバト!!」を見て興味を持ったなど初心者向けに俳句への敷居を低くしたコースです。毎月の兼題ごとに初級・中級の一方を選択しての投句が基本となります(同じ俳号が両コースに投句した場合、初級コースでの選考となるが、コース選択は兼題ごとに変えて良い)。
さらに、更新頻度の変化について。今までは2週に1兼題でしたが、
毎月1兼題に。
毎月20日が兼題発表、翌月19日が投句締切(結果発表は翌々月の第四週)です。“ゆっくり作ってゆっくり推敲し、これぞというものを我々に投げてほしい”と語る先生は「
多作多捨(たさくたしゃ)」が俳句の基本だと述べます。同じような発想の句が沢山ある場合は、最も自分の意図に近い形に推敲するトレーニングをしてほしいとアドバイス。特に中級者以上の人には述べたいという先生。
従来のサイトからの変化について寄せられた質問も紹介。
「
初級・中級どちらに投句しても良いか」には繰り返しますが、
必ずどちらか一方に決めてほしいと回答する先生。安全牌として初級にも投句するのではなく、新しく学び始めた人への場所をとってあげる配慮をしてほしいと訴えます。
「
投句制限はないのか」について。「夏井いつきの一句一遊」や(「俳句生活~よ句もわる句も」では既に4月から1俳号
3句までの制限がありますが、5月現在「俳句ポスト」は
投句無制限です。先生は”
制限はかけないが、推敲をして多作多捨を実行する癖を少しずつつけてほしい”と訴えます。思いついたらボンボン投げるのではなく、自分の脳でそこも考えてほしいという新しい提案だと語ります。”
選句眼を養うのは大事”と述べる家藤さんに続き、”
自選の力は、推敲を丁寧にするかどうかで力がつくかが変わってくる”と述べる先生。
「
旧来のコーナーであったギャ句゛(ギャグ)や回文はなくなるのか」。公に結果発表では出てきませんが、裏話を始める先生。旧来のサイトでは、元々そんなコーナーは微塵もなく、
運営の松山市に御目溢しをしながらお便りとともに毎回紹介していたものだとのこと。回文は、投稿が来なければ即終了のつもりで掲載したようですが、何年たっても投句されて今に至ったそうです。”元々あったと思わないでください”と再度繰り返す先生ですが、ギャ句゛についてはこの
YouTube動画のコメントを介して可能だと意気込みます。刊行本「子規を『ギャ句゛』る」に続いて、特定の俳人を兼題に募集すれば、いつか出版できるのではないかと目標を悠々と語ります。先生は、両眼を開いた企画に関しては”自分たちで楽しんで欲しい”と見解を述べます。
そして、発表のランク付けの呼称が変更される点について。旧来の「天地人並」から、「
特選・秀作・佳作」の呼称になるとのこと。「特選」で
本当に良い句をまとめて紹介したい思いがあると語る先生は、天・地の候補句の中から天(最優秀句)を選出する作業に大変な時間がかかっていたという切実な事情を打ち明け、「天」を目指す場合は「一句一遊」に投句して欲しいと投げかけます。家藤さんは
棲み分けとして考えてほしいと語ります。「おウチde俳句くらぶ」も従来の評価制度のため、挑みやすいものに挑んで欲しいと語ります。
ここで「そろそろパスタが出来ます」とカンペが。
リニューアル後の
「俳句ポスト」は今まで以上に解説したいと表明する先生。
トレーニングの場として、サイト上のカルチャー講座として活用して欲しいと忠告します。最後に先生は、松山のファンになってほしいのが松山市の一番の想いのため、毎月積み立てをして是非来て欲しいと述べ、「松山でお待ちしております」と語って動画を締めました。
[109]【人生相談】嫁の飯が不味いあなたへ<2021/5/13公開>
動画[107]以来の人生相談。「嫁の飯がまずい」とだけの淡々とした質問。“その一言しか書かないということは相当不味い”と推測する先生は、胸に深く刻んで欲しい一句を紹介します。
橋本夢道(はしもとむどう)の「無礼なる妻よ毎日馬鹿げたものを食わしむ」。作者は徳島県出身の俳人で、本名は橋本淳一(1903~1974)。自由律俳人として知られ、プロレタリア俳句運動の中心人物の一人として活動しました。この句も定型を外した自由律俳句ですが、「無礼なる妻よ」は思っていても言えないセリフだと語る先生。質問者も「いただきます」と言いながら、作者のように心の中ではこの句を復唱すれば良いと提案します。
この句は戦後すぐに詠まれた句。戦時中や戦後の食べ物がない時代に、”なんとか家族の腹を満たしたい”とか”栄養バランスをとってあげたい”という思いで、工夫するものが「馬鹿げたもの」になっていったと時代背景から解釈する先生は、”作者の妻に対する思いが逆の意味で伝わってくるのではないか”と訴えます。当時は小動物の唐揚げが出てきたのかもしれないが、全ては妻の愛情だと語る先生は、作者にも同じように問いかけます。
最初に戻りますが、この句を胸の中で唱えながら「いただきます、妻よ」と合掌して食事することを質問者に提案します。最後にいつもより低い声で家藤さんが動画を締めました。
[110]【質問】俳人ってメシ食えるんですか?<2021/5/16公開>
ラフな挨拶でスタートした今回は、今までで最もストレートな先生への質問です。「俳人はメシが食えるのか?」。俳句一本で生活できるのかという趣旨の質問ですが、失礼な人が時々聞いてくる質問だと語る先生は、面と向かって聞く勇気が良くあると感心します。
何かを思い出した家藤さん。ラジオ番組の公開収録の際、先生がある洋画家に「あんた食えるの?」と聞いたエピソードを語ります。
先生は”食えるまでの時間はかかり、俳人のみでは普通は食えない”とキッパリ回答。「俳」という字は、”人に非ず”で俳人は人間ではない仕事だと窘めるように語り、”下手な夢を持たない方が良い”と続け、俳句は”儲けそうな要素がどこにもない”と理由の一つを挙げます。
「俳句だけで食えている人たちは世の中にいるのか?」と家藤さんに質問されると、”物凄く少ないと思う”と先生。頭の中に数えるほどしか浮かばないと語り、日本最大の俳句結社「ホトトギス」以外では、先生を含めて4~5人くらいではないかと回答します。
定年退職後に俳句を嗜む人は沢山いますが、大体の人は他に職業を持つ兼業のスタイル。学校の先生をしながら俳句結社の主宰をしたり、配偶者が定職に就く主婦が主宰をしたりするケースは多いものの、完全に俳句のみで全収入を得る人は少ないと述べます。まさに兼業農家のようだと例示する家藤さん。
先生自身も「俳句一本でやっていけるとは思ってなかった」と俳人になる転機である、教員退職歳当時を振り返ります。まだ30歳の先生が、校長に学校を辞めることを言い渡して叱責を受けますが、段々腹が立ってきて「俳人で食っていきます」と勢いで決意表明。”私の人生は常に先に言って、あとで首絞めながら歩く人生を送ってきた”と総括しますが、”その息子であることにそこはかとない不安を覚える”と率直な家藤さんは、「貧乏ながらに楽しそうに過ごしてきた」という先生の言葉には共感します。
そして、先生が俳句で食べてこれた理由に、松山の土地のおかげもあると答えます。松山=俳句のイメージもあり、俳句の理解もある土地柄で他人からもアプローチを受けて仕事に結びついたと語ります。
最後にまとめ。俳句で食べていけるのは「ホトトギス」の中の人と、夏井&カンパニーという家族会社、その他数名程度であり、”迂闊に俳人で食べていこうと思わない方が良い”と忠告します。息子の家藤さんに対しても可愛そうに思う先生ですが、「他に家業を手伝える人がいない」と打ち明ける家藤さん。公演で先生の似顔絵を描く画家がいた場合売り物になるが、俳人・詩人では特定の人物を素材とした句を詠んでも売り物に出来ないと喩えると、共感する先生。「力を合わせて生きていこう」と寂し気に語る先生に続き、「チャンネル登録も…」も生活が懸かるだけに丁寧口調に家藤さんが述べて動画を締めました。
[111]【季語数えてみた:前編】季語って全部でどれぐらいあるんですか?<2021/5/20公開>夏の雨降る午後2時50分頃に撮影していると紹介される今回、大きなボードを背景に座るお二方。「
季語はどれくらいあるのか?」というよくある質問ですが、先生は「
ざっくりと答えないことにしている」と回答。動画[67]で紹介した通り、季語には生き死にがあり、廃れたり生まれたりを繰り返してきたため、
正確な数が確定できないという考えです。
季語を認定する公式の機関が存在せず、歳時記は編者の考えで掲載の可否を定めます。歳時記や一般の総意によって季語の数が定まっていくのですが、「この間手に取った歳時記に数が記載されていた」と家藤さんが展開し、先生が素晴らしいと拍手して「お悩み解決できる」と喜びます。
「
合本俳句歳時記 第四版」角川学芸出版刊によると、下表の通りと紹介します。
要は
7500強だとまとめる先生は、質問は解決したと早々と終わらせたがります。第四版は2008年に出版されたものですが、
第五版が2019年に刊行され、季語の数が変動していると家藤さんがご報告。それによると、見出し語が2650、傍題が5246で合計
7896になったとのことで、
300以上増加しています。先生は拍手してまたも動画を終わらせようとしますが、食い下がる家藤さん。「
角川図説俳句大歳時記」を取り出します。各季節ごとに分冊になっている大判の歳時記ですが、巻頭に薄いレコード盤のソノシートがある時代を感じさせるもので、1964年発行のものとのこと。試しに春だけを見ても傍題を除いて
1110と、角川の歳時記の2倍ほど収録されていることを告げます。ここで、家藤さんが後ろのボードを集計表に使うことを明かし、表を作成します。
几帳面で集計作業が楽しそうな家藤さんに対し、「嫌な予感がする」と当企画にイラ立ち気味な先生、そして計算で助け舟を出すカメラマンの兼光氏と三者三様です。各季節単位と歳時記単位で表を作り、家藤さんが読み上げた数を先生が書き込みます。
次回予告で「
定本の歳時記に数が記載されてない」と事実を明かします。まだまだ紆余曲折ありそうですが、1週間後の動画[113]で後半動画を公開するそうです。
以下、角川歳時記の紹介された数を記載します。
季節 | 角川第4版(2008) | 角川第5版(2019) |
見出し | 傍題 | 合計 | 見出し | 傍題 | 合計 |
春 | 576 | 1372 | 1948 | 596 | 1370 | 1966 |
夏 | 723 | 1465 | 2188 | 745 | 1512 | 2257 |
秋 | 510 | 1020 | 1530 | 542 | 1070 | 1612 |
冬 | 506 | 823 | 1329 | 535 | 910 | 1445 |
新年 | 223 | 356 | 579 | 232 | 384 | 616 |
合計 | 2537 (2538) | 5034 (5036) | 7571 (7574) | 2650 | 5246 | 7896 |
[112]【本紹介】フルーツポンチ村上さんが本を出版されました!<2021/5/23公開>
先生も思わず祝福する今回の動画は、2021年4月1日刊行『フルーツポンチ村上健志の俳句修行』の紹介です。本人が映るカバー写真を見て”立派な文豪のようだ”と語る家藤さんに続き、”真っ当な写真だ“と率直に先生は感想を述べます。
2021年5月6日放送の「プレバト!!」で村上健志氏本人が出演する回でも紹介。浜田さんが「お前、これいつ出したん?許しもなく出したんか?」と作者を弄っていたそうです。まだ句集を出せない永世名人の梅沢富美男氏にも詰め寄られた本人は、「永世名人いつまで経っても50句貯まりそうにないから先に出しました」と反論したそうです。この本は、webサイト「好書好日」の連載企画「フルポン村上の俳句修行~わかったつもりでごめんなさい~」の書籍化だと家藤さんが補足します。
1年間コツコツと様々な句会に参加した結晶だと語る先生。日本全国の色んな句会に飛び入りで参加し、句会未経験者が色んなスタイルの句会を経験して腕を磨いていく記録の蓄積が詰まった1冊だと家藤さんが紹介すると、「プレバト!!」の番組で発表する俳句においても以前の村上氏とは異なる方向性に行くことがあり、模索していたのではないかと感触を述べる先生。様々な句会に参加していた結果論だったのかもしれないと分析します。
エッセイ集だけでなく、巻頭俳句に句集の要素もあるこの一冊。”真面目にやっている”と述べる先生は、村上氏の俳句の実力を語ります。「プレバト!!」に挑戦した当初から核になる要素がある人だと褒めますが、元々短歌をしていた点に触れ、短歌と俳句の両立という難しい部分を見事にやっていると感心します。村上氏が短歌を始めるきっかけとなった俵万智氏や芥川賞作家で芸人仲間の又吉直樹氏との対談も収録されていると聞き、思わず「豪華やな~」と声をあげる先生。句会には有名俳人の他、夏雲システムの開発者である野良古氏ら、いつき組常連の方も参加しており、様々な人に読み応えがある内容になっていると紹介します。様々な人に揉まれることで俳人村上が成長した記録だとまとめる先生に続き、村上さんの人間性を知りたい人や、句会そのものを知りたい人にも有益な”教科書”になっていると家藤さんが語ります。
先生は、俳句結社によっても句会の細かい手順が異なる点に触れます。昨今のコロナ禍の影響により、従来型の生で顔を出す句会の他に、ツイッターの募集企画、Zoomを用いたオンライン形式まで網羅しているため、ある意味良い時期に連載されたと読者として思ったと述べるは家藤さん。
ここで俳優で俳人でもあった小沢昭一氏の話を切り出す先生。村上氏同様に色んな句会に小沢氏が参加する企画があり、先生の師匠である黒田杏子氏の「藍生」にも参加され、膝を突き合わす句会をしたそうで、各結社の特色が分かる読み物を書かれたそうです。時代の要素がそれに付加されたのが今回の村上氏の本だと語る先生に続き、”俳句における文化人類学”とたいそうなことを言い出す家藤さん。句会の形の変化を体現した過渡期にあたる本は珍しいと語るのです。難しい本ではなく、読みやすい本だと先生も感触を述べながら紹介します。
さらに、千原ジュニア氏の言葉を借りると、村上氏は「芸人としても絶好調」とのこと。「プレバト!!」でもプチ梅沢のように偉そうな発言もすると先生が述べ、連載企画の副題「わかったつもり…」もイカしていて素晴らしいとセンスの良さを褒める家藤さんは、村上健志氏のYouTubeチャンネル「フルーツポンチ村上のムラカミーチャンネル」も紹介。最後に、「いつか一緒に何かしたいね、村上さん」と嬉しい一言を先生が投げかけて動画を締めました。
[113]【季語数えてみた:後編】季語が多すぎるので○○を募集します<2021/5/26公開>動画[111]の続編。お二方が角川歳時記の季語数を後ろの大きなボードに記入していきます。
全体の季語数は第5版の方が増加しています。
そして、1964年発行の
角川大判の歳時記分冊版(5冊)も同様に見出し語の季語数を記載していきます。厚手の本だけに凶器にもなると言葉が悪い家藤さんですが、黙々と作業します。全体的に
数が多めに記載されている大歳時記の数を記入しながら、「新年の行事をしなくなったため、新年の季語が減った」「相当俳人は季語を殺してきた」と分析が止まらない先生。全体としてミニ版の2倍以上掲載されているため、
合計1万6000程度になると予測します。
質問に回答できたと安心する先生でしたが、家藤さんは角川歳時記以外にも
講談社の歳時記を定本として使用していることに言及します。
「カラー版新日本大歳時記」に、全ての掲載季語の索引が新年の巻にあるとのことで、早速比較のために季語数を記入しようとする先生でしたが、肝心の
季語数が記載されてないという驚愕の事実に唖然とします。見出し季語(本題)は太字、関連季語(傍題)は細字で区別されていると補足します。
早く話題を終わらせたい先生をよそに、家藤さんは異なる出版社の歳時記の傾向を比較すれば、雑学として楽しいとヤル気満々。家藤さんは、先生が最初のボーナスで購入した
旧版の大歳時記(1981年版)と
新版の大歳時記(2000年版)の季語数も数えたいと提案します。そして、気の遠くなる作業に呆然とするお二方を見兼ねて、カメラマンの兼光氏からカンペが出されます。
「
みんなから募集する?」というご提案に一瞬戸惑うお二方。当てっこクイズとして、
コメント欄にそれぞれの季語数を記載して欲しいとの趣旨です。複数人で数えれば、数え間違いをチェックできるとのことで、「みんなで数えましょう」と先生は喜んで賛同し、「中古でお安く買いましょう」とアドバイス。「お待ちしています」と語って動画を締めました。
なお、以下に動画内で記入された各歳時記の季語数を掲載します。
上段(茶):見出し、
中段(黒):傍題、
下段(赤):合計季節 | 角川 第4版 (2008) | 角川 第5版 (2019) | 角川大 歳時記 (1964) | 講談社 旧版 (1981) | 講談社 新版 (2000) |
春 | 576 1372 1948 | 596 1370 1966 | 1110
| | |
夏 | 723 1465 2188 | 745 1512 2257 | 1764
| | |
秋 | 510 1020 1530 | 542 1070 1612 | 1288
| | |
冬 | 506 823 1329 | 535 910 1445 | 1017
| | |
新年 | 223 356 579 | 232 384 616 | 688
| | |
合計 | 2537 5034 7571 | 2650 5246 7896 | 5867
約1.6万 | | |
[114]【人生相談】朝4時に目が覚めてしまいます<2021/5/30公開>
動画[109]以来の人生相談。「年齢のせいか(午前)4時頃に目が覚めてしまいます」。先生は、悩みというより年齢と共に起こる生理現象だと述べ、悩むのが逆に大変だと語ります。寝るのも体力が必要だと語る先生自身も体験を述べます。早く目が覚めた場合、目を瞑る状態にも飽きるため、朝飯前の仕事に取り掛かり、その後に起きてきた夫に朝の青汁を入れてもらう日々を送るそうです。
そして、今回の相談にピッタリの一句を紹介します。
高浜年尾(たかはまとしお)の「五時起きも習ひとなりぬ明易き」。作者は1900年生で、高浜虚子の長男。中学時代から俳句をはじめ、1959年に俳句結社「ホトトギス」の主宰を継承します。「明易(あけやす)し」は夏の短い夜のことで、作者も5時には目が覚めていたよう。それは仕方ない開き直ってしまい、この朝の時間を何か建設的なことに使おうとしていたのではないかと読み解き、作者は選句でもしていたのではないかと予想します。先生は、朝の散歩を質問者に提案します。外は人も少ない時間帯で、何よりも健康に良いのではないかと述べ、せっかく朝早く目が覚めたのならば時間を有効に使うべきだと忠告します。
さらに句を紹介。父・高浜虚子の「明易や花鳥風詠南無阿弥陀(かちょうふうえいなむあみだ)」。中七は虚子の提唱したスローガンで、花鳥も風詠していくという意味。明けやすい夏に4時・5時に目が覚める場合は、俳句を詠むかお経を唱えるかという二択の人生でよろしいのではと味わいます。
選句、句詠、散歩、読経の4択で人生を考えてはいかがと語り、動画を締めました。
[115]【本紹介】『ひらめく!作れる!俳句ドリル』について岸本先生と一緒にお話しします<2021/6/3公開>今回は新刊紹介。
岸本尚毅・夏井いつき共著『「型」ではじめて学ぶ俳句ドリル』の続編となる第2弾、
岸本尚毅・夏井いつき共著『ひらめく!作れる!俳句ドリル』(祥伝社・6月上旬発売予定)の紹介です。
ドリル形式で俳句を学ぶ本は既にいくつかあり、家藤さんも「夏井いつきのおウチde俳句くらぶ」のドリルde俳句を担当しています。
核になるのが「型」で、数学公式のように色んなものが沢山あり、一つの型を覚えたらそれを反復練習して自分の身に覚え込ませ、いつでも使えるようにすべきだと先生は述べます。アスリートの筋トレと同じで、しっかりとしたフォーム(型)で反復練習することで「
俳筋力」がつくと語り、その練習にドリル形式は大変有効だと薦めます。
自称・
俳句オタクの岸本氏は有名な俳句は何でも知っているようで、先生は”
俳句コンピューター・富岳”と呼ぶほどの存在。氏よりご提案を受け、先生が学ぶという立場で臨み、出版に至ったそうです。「プレバト!!」の収録などで東京に行ったついでに岸本氏や編集者の栗原氏、兼光氏と4人で毎回2時間以上にわたって俳句談議した内容の集大成がこの本だと語ります。先生が型について語り始めると、立ちどころに
岸本氏が適切な例句を挙げることに大変刺激を受けたそうで、「凄い」と頷く家藤さん。出版した2冊にも例句が掲載されていますが、後から編集で加えたのではなく、その場の会話で瞬時に出された句のようで、生に大変近い形で書き起こされているとのこと。まさしく俳句コンピューターのごとく
詳細に分類された例句を、系統立てて解説した「他にはない」本だと語る先生。
この本の活用法や出版したいきさつなど、岸本氏がリモートで語ってくれました。以下に内容をまとめます。
俳句の入門書を何のために書くか。選句もする立場であるが、「とにかく良い句を見たい」というのが動機である。この本を用いて詠む側は「俳句を楽しく詠むのに尽きる」が、ピアノが自由に弾けることと同様に、言葉を使って俳句の世界を自由自在に動き回るのが理想的だ。 読者にも自分の人生経験や、言いたい事柄がある。それを講師が言うのではないが、ピッタリな言葉がなくて苦労することが往々にある。それをなるべく楽にするための本を提供したい。 俳句は17音しかなく、言葉の組み合わせに尽きるわけだが、何の言葉を選んで、どう並べるかとなる。早い話、パターンである。頭の中に俳句の道筋があり、色んな俳句の文体が頭の引き出しにあれば、様々な手法が臨機応変に使える。その点、夏井いつき先生は「プレバト!!」で夏井氏の引き出しを存分に活用し、出演者の句を自在に直している。番組内でその型を少しずつ覚えた人は上達し、「名人」となるのであろう。 今回の本は、言葉の並べ方・型の作り方を基本に置いて整理した。しかし、純粋に型が独立して存在するのではなく、あくまでも型と発想は表裏一体にあるのが俳句では実に微妙な所である。内容と形式は概念としては別だが、一体になって頭の中に生まれてくる。「型で学ぶ」という言い方は形式ばったように聞こえるが、型の実践というのは、実は自分自身の発想を引っ張り出していることになる。そんな気持ちで本を読んでくれると大変嬉しい。 一冊の本をじっくり読んで欲しいが、忙しい読者も多いので、効率的な使い方を一部を紹介したい。「あじさいの+今日美しき」で、下五を考えた際に、「○○○かな」としたいとする。この形で○に入る部分を列挙してみた。その穴埋めの練習が出来る。例えば、地名「九段(くだん)」や「私」などと入れられる。 型を学んでいることを意識しながら、実は型に入れるべき内容を半ば意識的・無意識的に自分の中で探している。そのような頭の使い方が身につけば、どんどん俳句が楽しくなる。 学校の本のように、順序立ててやる必要はない。好きなページから練習できる。勿論最初から整理してもらっても良い。是非ご活用をお願いしたい。 |
岸本氏の印象を理路整然だと語り、先生の動画の内容と対照的だと述べる先生ですが、最後に本の紹介をして終わりました。
[116]【正人が大ファン】夢枕獏さんを紹介します<2021/6/6公開>
紹介した人物がいるという先生はおもむろに『オール讀物』6月号を取り出し、家藤さんが大ファンだという夢枕獏(ゆめまくらばく)氏を取り上げ、「仰天・俳句噺」という連載記事を紹介します。俳句関連記事の執筆ということで、小耳に挟んだ先生のようですが、結構長いページにわたり書かれているそうです。
記事のサブタイトルは「季語は縄文の神々が住まい賜(たま)う言葉のお社(やしろ)である」。書籍化が楽しみだと述べる家藤さんですが、羽黒山俳句大会の際に、このテーマに関する獏氏の講演を実際に聞いたと語るは先生。
獏氏は病の経験から複数の連載を断って俳句を作り出したことを機に、今回の連載記事を執筆したようです。家藤さんは電子書籍で夢枕獏氏の小説『キマイラ』シリーズを全巻一気読みしていると語ります。怖いものや残酷な描写が嫌いな先生は、氏の小説の存在を知っていましたが、「夢枕獏は危険区域」と認識して遠ざけていたそうで、『百鬼夜行』などを愛読書としていた家藤さんに近寄れなかったとのこと。しかし、『沙門空海』シリーズを先生に薦めてきた家藤さん。先生はこの作品にのめり込んだそうで、作戦勝ちの家藤さん。丁度この時期、『NHK俳句』の先生の回(兼題:追儺/ついな)のゲストに獏氏を呼ぶことをディレクターから打診されたようです。『陰陽師』シリーズでも有名な点と兼題との関連性が理由のようですが、”おっかないおっちゃんだったら…”と会う前は心配だったという先生。実際にお会いすると、笑顔や気前が良く、話していて楽しかったようで、イメージとの違いに仰天したそうです。南海放送ラジオでも話題を語っていた家藤さん。「好きな作家は?」の質問に必ず「夢枕獏」と答え、エピソードを語るそうです。
そして、先生は家藤さんから獏氏にサインを貰うことを託されていたことに言及しますが、先生の頼み方が独特だと語る家藤さん。「サインをすれば息子が一生言うことを聞くのです」と頼んだようで、流流たる字で「正人くんへ 一生いつきさんの言うことを聞きなさいね」と見開き2ページにわたって書かれており、サインは今でも大事に持っているそうです。なお、サインを頂いたのは、イラストレーターの天野喜孝氏が手掛けた本だとの情報を述べます。
また、釣りが趣味だという獏氏。小学生の頃に鯛の一本釣りの経験をした先生と馬が合い、毎年行くという公魚(わかさぎ)釣りの誘いを受けます。獏氏は適当な感じのお誘いだったそうですが、「行く」という返事をした意志の固い先生に、品川のモンベルで防寒着などの装備の購入を手伝うなど面倒見のよい獏氏。実際に、家藤さんと兼光氏もついて行ったそうです。
さて、『オール讀物』の連載に話を戻しますが、本を先生から貰った家藤さんは動画撮影を忘れて内容に夢中になり、キマイラシリーズの主要人物「真壁雲斎」の出だしに興奮します。
とにかく引き出しが広いと獏氏の印象を語る先生。釣り・プロレスをはじめ、著書も空海・楊貴妃がご一緒するという発想の繋げ方。獏氏ご本人から出版社を通して本を送って頂いたり、料理本や絵本についても紹介します。さらに、『白鯨』の書評も書いたという先生。この本の出版前、酒の席で獏氏に「白鯨の船長とジョン万次郎は同じ時代の人なんですよ」と囁かれ、先生はキョトンとします。その後出版されたこの本にたまげたそうです。
手を出せない人にも忠告する先生。一回読めば「スゲー!」の一言しかないと絶賛しますが、まずは是非『オール讀物』の「仰天・俳句噺」を読んで盛り上がりたいという先生。「俳句を核に繋がっていくと、新たな世界を開いてみましょう。Welcome to夢枕獏 World!」とカッコよく家藤さんが決めました。
[117]【6月の正岡子規】子規の句から季重なりを学びましょう<2021/6/10公開>
久々の6月の正岡子規。多忙のため撮れなかった5月分は来年に先送りと発表されますが、今回は正岡子規を題材とした「季重なり」です。
明治時代には歳時記の分類が細分化されてないこともあり、季重なりの句が沢山あると語る先生ですが、非常に子規の句は勉強になるとし、作者が据えた主たる季語が何かを推理しながら例句を見てほしいと述べます。
①「梅雨晴れやところどころに蟻の道」。子規は明確に季語を主張していると感じると語る先生。愛媛県にある子規記念博物館のホームページに子規の句がデータベース化されていますが、そこでは明確に何の季語で詠まれたか記載されているため、理由付けが既にあると補足します。
メインの季語は「梅雨晴れ」、サブの季語は「蟻」。上五の「や」で強める詠嘆があり、形式的に分かりやすい一句です。今日は洗濯物を干せると思い、梅雨晴れの空を見上げるが、梅雨の際には一切出てこなかった蟻の列が地面にあると感じる印象で、季語「梅雨晴れ」の世界観の一つの光景として残りのフレーズがある作り。内容面でも主役・脇役の季語が明確だと解説します。
②「花一つ一つ虻もつ葵哉」。これは「花」「虻(あぶ)」「葵(あおい)」と3つの季語があります。この句も切れ字「哉(かな)」があるため、すぐ上の「葵」を詠嘆していると考えられます。内容面では、「花」は季語の桜ではなく「葵」の一つ一つの花であると読める作りに。「虻」が目立つ印象もありますが、動詞「もつ」により、葵が主役として虻を持っているかのように咲いているとなります。「虻」は脇役季語と分かります。切れ字で形式的に判断できる場合もありますが、例外もあるため一句の文脈で判断することが大事だと先生は忠告し、季語の判断力に関しても経験数が大事だと補足し、ケースバイケースだと述べます。
③「川セミノ来ル柳ヲ愛スカナ」。「川蝉(翡翠)」「柳」が季語ですが、この句は動詞「愛す」に切れ字の「かな」が続く形に。本来「かな」は名詞や連体形に接続するため、文法ミスを指摘する人もいますが、「愛することかな」の省略も一理あると先生は述べます。
家藤さんは、柳が沢山ある中で、川蝉が来ている柳だけを愛するという文脈のため、そう思わせる「川蝉」の方が力があると回答。
春の季語「柳」、夏の季語「川蝉」でどちらがメインか迷うものの、子規としては「川蝉」が主たる季語だと先生は解説します。たまたま川蝉が飛んできた柳を愛する気持ちが作者の中に動く感じだと述べます。カタカナ混じりの子規の句もたまにあるとのこと。
④「枇杷の実に蟻のたかりや盆の上」。季語は「枇杷(びわ)の実」「蟻」。主たる季語の判断が難しい句ですが、「蟻のたかり」が印象的にも見える一句。
下五「盆の上」によって力関係が動くと先生はヒントを述べます。
仮に「枇杷の実に蟻のたかりの猛々(たけだけ)し」とすれば、「蟻」の描写が強いため、比重が「蟻」に寄り「枇杷の実」が背景になります。
原句「盆の上」は存在している場所を示しますが、まず枇杷の実があり、その実に蟻が集っている印象に。先生は「盆の上」によって、「枇杷の実」が主たる季語となり、「蟻」が小細工として脇役季語になると解説します。家藤さんは、頭の中で映像を思い浮かべると面白いと語り、艶のある枇杷の実、蟻の集り、盆の上に鎮座する光景とカメラワークの変化を述べます。
先生は、子規の季重なりの成功句について、何を表現したいか、どの季語を最も強く言いたいかの目的が決まっている・腰が据わっていると述べます。適当に2つ入れれば良いのではなく、初心者が頑張って作ったという季重なりも目的が不明瞭な場合が多いそうです。
⑤「火串消えて鹿の嗅ぎよるあした哉」。季語は「火串(ほぐし)」「鹿」です。「火串」を知らない人はバーベキューに感じるかもしれず、「鹿」を季語だとストレートに受け取ってしまいます。しかし、「火串」は先生の著書『絶滅寸前季語辞典』にも掲載した夏の季語。鹿狩りの一種で、鹿の通り道に篝火(かがりび)を焚き、鹿の目に火が反射してキラッと光った瞬間に矢を射る照射(ともし)を行いますが、火串はその篝火のこと。主たる季語は「火串」となり、それを前提とした光景が描かれた一句となります。夕べの狩が終わり、火串が消えた場所に難を逃れた鹿が嗅ぎよる朝(あした)であることよ、という意味に。その狩の命中率についてお互いの意見を述べるお二方です。
季重なりの句は、子規の季語の強弱の作り方として学びに使って良いと総括する先生。次回は7月と予告されました。
[118]【コメント返し】次の生配信は○万人記念?<2021/6/13公開> ※当ブログ紹介動画(訂正)
約19分に及ぶ今年初のコメント返し。
動画[111][113]の歳時記の季語を数えてほしい丸投げリクエストに関しての返答コメントが【瑞木】【石井一草】両氏からありましたが、季語数に関しては改めて別動画で紹介とのこと。また、【夏野あゆね】氏によると、約1年半前に購入した歳時記に8000語収録との報告で、薄い歳時記だと先生は判断します。
要望コメント。【松下揚柳】氏から「悩みは季語と傍題との関係。句会で季語が題に出されるが、季語と傍題の微妙なニュアンスの違いが難しい。傍題で作句して良いのか」という質問。自分が表現したいこととニュアンスとの違いで、ケースバイケースだと先生は回答します。
【水蜜桃】氏の「季語は時候・天文・地理・生活行事・動物・植物に分類されるが、作句の際に分類によって気を付けるべき点はあるか」という質問。時候の季語の9割は映像を持たないため、そこを上手に使いこなすべきと答える先生は、特徴が一長一短あるため、長所を活かしながら、短所は逆転で活かすべきでケースバイケースだと忠告します。
【為右衛門】氏の「傍題がいまいち分からない」。見出し季語が主たる季語で、それに付随する関連季語が傍題となり、見出し季語と異なるニュアンスを持つ傍題を使いこなすことだと回答。
【piece rice】氏の「Yahoo!ニュースで、『爽やかな五月』が季語的におかしい(季重なり)という記事があった。日常会話に季語を持ち出すなという意見が大勢だったが、気を付けるべきか」。「日常会話くらい好きにやればよい」と答える先生ですが、初心者が俳句脳になったと気付く一つの瞬間として、誰かの会話の内容が季重なりだと判断できて感動することだと、「プレバト!!」の出演者の会話でもあったそう。NHKのアナウンサーが「爽やかな五月が…」と述べたなら、後で「季重なりやったね」と美談にすると述べる先生です。
【オール巨人ファン】氏から「句集やネットなど選句に関わらない俳句コーナーは、どのあたりまで先生は(既発表句を)把握しているのか」。全て網羅するのは時間的に無理だと語る先生は、共選に関しては各選者がどんな句を選ぶのかは勉強としてチェックするとのこと。
【gogo seigo】氏の「俳句は因果関係や説明を嫌うと『プレバト!!』でも説明されるが、その基準はあるのか」。【fukurou morino】氏の「語尾の『や』『よ』の使い方を教えてほしい」。【恩田アサキ】氏の「俳句のタネを12音+相応しい季語5音の取り合わせを教わったが、季語が動く余地を恐れてしまう」。【ガミガミ】氏の「破調と句またがりの違いを教えてほしい」と動画[110]のコメントから。今後の動画のタネにしたいと展望を語るお二方ですが、俳句は定石で済まないものが多くあり、具体例を置いて説明したいという考えがあると語る先生。句会などで他人に指摘された実際の句も一緒に送ってくれると参考にしやすいと提案する家藤さんに先生も同意します。
【すずさん】氏からのリクエスト「しり2字三角パスがもう一度見たい。兼光さんの俳句が好きです」に、落胆する先生と家藤さん。「お安い御用」であるが、動画の好き嫌いが明確に分かれると答える先生。
【natsuno fujiwara】氏より、「兼光さんの句集は買えますか?」。在庫限りとのことですが、夏井&カンパニーまで問い合わせしてほしいとのこと。
【葵新吾】氏より、「先生の動画をみて『歌手になります』と決めて大学を辞めたことを思い出した。夢は破れて別の仕事に就いたが、俳句という第二の目標に出会った」と感謝のコメント。
【熊の谷のまさる】氏は「俳人で食べていく夢はないが、『俳人』と名乗ることを最近夢見ている」とのこと。「名乗ったらよい」と薦める先生は、『プレバト!!』を観て上達した「プレバト俳人」も存在し、プロアマを問わずに一句でも作れるなら、今日から「俳人」と名乗ってよいと、一曲でも歌手だと例示して回答します。
***
ここで当ブログの紹介。動画[103]の件で、夏井先生も当ブログの当記事をパソコンでご覧になったようです(本当にありがとうございます)。サイトをまとめているのは私【プロキオン】であり、着流きるお氏ではない点を訂正して頂きました。さらに、俳号【白プロキオン】が昨年の「575でカガク!」で投句していた点に触れる家藤さん(ご紹介本当にありがとうございます)。先生は、興味津々に名前を読み上げ、白や黒を俳号につける人もいる点に言及しますが、「プロキオンと白プロキオンが同一人物か教えてください」と先生から直々にお願いされました(もちろん同一人物です)。さらに、プロキオンと着流きるお氏が別人である事実に「めんどくさい」と率直に感想を述べる先生。お二方から、「今後とも取りまとめをよろしくお願いします」と丁重にお願いされました(頑張ります(^^♪)。
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動画[112]で、フルーツポンチ【村上健志】氏本人から「ご紹介ありがとうございます。先生がまかれた俳句の種から芽を出した一つが僕だと勝手ながら思っています」とのコメントに先生は爆笑し、「偉そうなおっちゃんの面もある」と同意。「いつか俳句の話をつまみにお酒でも飲みながら話したい。わかったつもりで申し訳ないです」と本人から。先生は元々短歌に取り組んでいた村上氏本人の俳句上達を褒め、自分が美しいと思う点が明確にあるのが良いと称えます。
【かむろ坂喜奈子】氏より。この本の出版記念で「嘘」をテーマに俳句募集した企画がありましたが、ご本人の「菜の花やセルフジャッジの草野球」が村上氏選者の特選を獲得したことを報告。特選句の他2名【彼方ひらく】【せり坊】両氏もいつき組だとのこと。
【pen nat】氏から「村上さんの連載は好き。句会での様子や俳人たちの表情を収めた写真が素敵で、見ていると楽しくなる。この連載開始時期から、村上氏は『プレバト!!』タイトル戦でも好成績を収めるように。昔は他人の句に上手くコメント出来なかったが、今は的確な視点でコメントしており、連載が村上氏を大きく成長させたのかと感動した」と好意的なご意見。先生も遠い親戚のおばちゃんのように、皆さんの成長に励まされて嬉しくなると語ります。
さて、チャンネル登録者数が撮影日時点で68300人とのことですが、5万人突破時以来、句会ライブもしばらく行っていません。10万人突破がさすがに遠く、視聴者の順応性を高めるため、近いうちに行いたいと語る家藤さん。恥ずかし気な先生に対し、チャンネル登録者数7万人到達で、生配信の句会ライブを行うと気を張って家藤さんが断言しました。チャンネル登録がまだの方はぜひとも登録しましょう。
[119]【本紹介】『食卓で読む 一句、二句。』についてお話しします
<2021/6/17公開>
5月は本の執筆で忙しかった先生ですが、妹のローゼン千津氏と対談するシリーズ2冊目の新刊『食卓で読む一句、二句。お腹がぐぅ~と鳴る、17音の物語』を紹介します。
前作は『寝る前に読む一句、二句。クスリと笑える、17音の物語』。眠くなる前に読むのに丁度よい本という趣旨ですが、元々は啓発本のオファーがキッカケ。冗談じゃないと思った先生は「軽薄本」なら書けると冗談交じりに述べますが、妹さんとの対談で話がまとまったそう。梅沢富美男氏が本の帯を書いたことで話題となり、「絶対に寝る前に読むな」と書いたその帯を先生は気に入っているとのこと。読んだら面白くて眠れなくなることを逆説的に表現していますが、「おっちゃん俳句より(キャッチコピーの)才能あるやん」と先生は皮肉を述べます。山口洋佑氏がデザインした表紙も可愛くて気に入っていると語る先生は、今回の続編もデザインをお願いしたそうで、表紙の絵を簡単に説明します。
夏井家の人間関係を似顔絵付きで本編の頭に紹介していますが、家系図も前作から変更があるとのこと。先生の夫の兼光氏、妹のローゼン千津氏とその夫のニック氏と食卓を囲みながら語る形で、Zoomを用いた対談形式になっています。再び表紙の帯の話題に入り、今作より「夏井家のおふくろの味は味のしない弁当」と本人談の引用を読み上げる家藤さん。裏表紙の帯で本の雰囲気が分かると補足します。
また、注釈を多く入れた点に先生が言及。ある俳句について語り合うが、話題がどんどん多岐に飛躍しているとのこと。「食卓で読んでたらご飯食べれなくなる」と先ほどのキャッチコピーに便乗しますが、色んな食卓の話題があると理解してほしいと先生は語ります。
歯切れが悪いという先生は、食べ物に対する執着がないことを暴露し、家藤さんも同意します。お酒についても「アルコールが入ってたらそれでよい」と述べ、助け舟として兼光氏も呼んでの対談だったそう。
ローゼン家の食卓は横文字だらけだと語る先生。ローゼン夫婦は世界中を回っているため、見聞きしたこともないカタカナの食べ物・献立が多く登場。ローゼン氏の話を聞きながら、先生はどんな味がするのか?と想像するような話題が多く出てきます。そのため、読み手の知識量によって読書の味わいも変化しそうとのこと。
続編は6月22日、株式会社ワニブックスより発売。本体価格は1,400円(税込み¥1,540)です。家内制手工業で本も動画も出来上がっているとのことで、家藤さんが丁重にお願いを呼びかけました。ぜひ本を手に取ってみてください。
[120]【一句一遊ちょっといい話】新企画!一句一遊で紹介しきれなかったお便りを紹介します
<2021/6/20公開>
今回は媒体横断型企画と題して、南海放送ラジオ「夏井いつきの一句一遊」より、本編では紹介しきれなかったお便りなどを紹介します。
岡山・長野・新潟・岩手・愛媛の5局ネットで平日毎日10分ずつ放送する帯番組(※ラジコプレミアムで全国から視聴可能)ですが、投句もお便りも大量に来るため、時間が足りない番組だと述べます。
海外からもお便りが来ますが、放送内容を「落書き俳句ノート」という外部サイトで記録する通称「聞き書き隊」の協力もあるためだと紹介。投句も大量のため、1か月半から2か月に1度読まれればラッキーというほど。
俳句のお題は毎週1兼題。季語が中心ですが、漢字・カタカナ一字シリーズや「サッカー吟行」などのテーマもたまに選ばれます。読まれる句のレベルは曜日で異なり、月曜日が「おととい来なさい」という人、火曜日が「プレバト!!」の凡人、水曜日が同・才能アリ、木曜日がお便り紹介、金曜日が同・特待生名人クラスの俳句です。南海放送ラジオ「家藤正人の一句一遊 虎の巻」という木曜夜のスピンオフ番組や、「一句一遊」のディレクター・やのひろみ氏と家藤さんが登場する「やのひろみチャンネル」のシリーズにて紹介できなかった句を取り上げています。先生は本編よりも「やのひろみチャンネル」の方が面白いというお便りが来ている事実に憤慨しますが、句以外に紹介できないお便りが山のようにあることを述べ、このYouTubeチャンネルで紹介したいといきさつを語り「一句一遊ちょっといい話」と題して紹介します。
まずは夏井先生が読み上げます(●:夏井先生、◇:家藤さん、▼:兼光さん)。
①いつき組スピーディー投句部・兵庫【たらちね】氏より。「組長、俳句のお兄さん(◇たらちねさんは数少ないお兄さん呼びをしてくれる)。YouTube(動画[98])にある一句一遊の裏側を拝見しました(●スタジオを撮ったまさにそれ)。その場で選句・収録し編集までしてしまうんですね(●編集はひろみちゃんがします)。正人さんとやのさんは虎の巻とやのひろみチャンネルの収録までするんでしょ(◇虎の巻はいっぺんに、やのひろみチャンネルは後日時間を作ってやってます)。なんてハード。締め切りから放送まで短いと思っていたが、こんなにスピーディーにやっているんですね。お疲れ様でございます。私もスピーディーに投句します(●ここ大事です。投句はスピーディーに)。目指せ投句一番乗り!(◇素晴らしい、良いスローガンですね)水曜・金曜はインターバル関係なく上手い句が採用とおっしゃっていた(●そうですよ、月曜日と火曜日が2か月に1回くらい何とか読んであげたい。水曜日以上は結構実力主義。◇そう。水曜日の中でも、同じくらいの上手さだったらできる限り期間が空いている人という配慮はしています)。目指せ水曜日というのはこういう意味もあったんですね(●たらちねは子育てママでしたね。子育てしながら俳句楽しんでくれてます)。」
②大阪【戸部紅屑】氏より。「組長、2021年に向けて勝手な希望ですが、大阪のラジオ局(MBS・ABC・OBC)あるいは神戸のラジオ関西、KBS京都のどこでもよいので、一句一遊を中継してくれませんかね(◇完全に自分の住んでいる所にピンポイントで合わせてきている感じ)。関西の一句一遊ファンが集って運動でも起こしたろか!(●起こしなさい!(笑)私らには何の力もないんでね)」
③埼玉【みきまる】氏より。「組長、憧れの火曜枠に入りました(◇素晴らしい、月曜からランクアップしたんでしょうか。●みきまる、頑張れ!)。嬉しい限りです。夏井先生にハンドルネーム(●私らは俳号と呼んでます)を呼ばれるなんて、書面より嬉しくて舞い上がります。東京のラジオの採用率の低さは唖然(◇へぇ~。)南海放送さん、これからも聴き続けます(●なかなか読まれないのは放送の時間との関係もあるはず。俳句の場合は実力。腕があれば水・金いけます。頑張ってほしい。◇極論、腕さえあれば毎週登場し得る。●金曜日は、あるある)。」
続いて、家藤さんが読み上げます。
④秋田【今野淳風】氏より。「一句一遊の組長の明るい声と皆様の俳句に癒されて、体調を崩していたが何とか回復しました(●あら、嬉しい)。孫が組長をムーミンママのようだと言うので(●体型!?(笑))どういうところ?と聞くと『物事に動じないところ』とムーミンママが大好きな孫です(●ムーミンママって物事に動じないの?◇ムーミンママはどっしりとしています。優しいし。●あ~、ぴったり。今日からムーミンママということで。◇迫力がありすぎる気がします)。」
⑤新潟【野口沙魚】氏より。「組長!変な夢を見たので聞いてください。新デザインの五千円札を手にしたら、何と組長の顔と名前が!もしそんな五千円札があったら使いづらいだろうな(◇これ良いお便りなのか、何なのか?●それ、今度新しく…誰だっけ。大河ドラマの…渋沢栄一。ホント普通のおっちゃんの顔しとるよね、そこら辺に居そうな。◇ちゃんと見たことないかも。●大河ドラマのイケメンの兄ちゃんとのギャップに慄いてしまう。こないだ、渋沢栄一の関係の…どこでしたっけ。▼日本商工会議所。●日本商工会議所に取材を受けに行ったら、渋沢栄一のことがパネルになってて、しげしげと顔を見て、”大河ドラマの兄ちゃん年取ったらこんな顔なるんやな~”と言いながら。◇なるかどうか知らんけど。ムーミンママや渋沢栄一が引き合いに出されたり色々でございますな)。」
このシリーズ「一句一遊ちょっと良い話」も続けていくとのこと。感想もコメント欄にて受け付けています。
[121]【575でカガク!】新たな投句先の紹介!テーマは重力波?
<2021/6/24公開>
新たな投句先として、毎年夏の風物詩NHK Eテレ「575でカガク!」の紹介。昨年までは「サイエンスZERO(ゼロ)」の時間帯に別番組として放送されましたが、今年は「サイエンスZERO」の番組本編内での放送に変更。
昨年も動画[28][42]で投句を案内したこの企画。1年目に「ニュートリノ」「チバニアン」、2年目に「恐竜」「はやぶさ2」、3年目に「反物質」「ミトコンドリア」を取り上げました。ミトコンドリアの回で取材した大阪大学のマスコットキャラクター「マチカネワニ」を可愛がるように取り出すお二方です。
今回のテーマは「重力波」。お二方とも初耳の用語のようです。毎回、選句は事前に膨大な資料を読み込む家藤さんが先に句を分類するところから始まるそうです。俳人たちは兼題に対する内容を調べて知識を得てから、俳句を考えにいくスタイル。先生は事前に知識を一切入れず、素の状態で専門家に取材を行い、色々なやり取りを行います。予め知識を入れてしまうとロケでの言動が嘘っぽくなるため、そうしているとのこと。
家藤さんは選句分類の苦労を語ります。俳句表現が兼題の何を表現しているのか見極めるのが大変なようで、アポトーシスの句や反物質の反作用の句など細かく分類します。先生は唐突にバナナの句があったと述べ、アホな内容かと思っていたら、反陽子の表現として科学的な事実に基づいていたことに仰天したと語ります。
ロケが終わると昼食をすぐに済ませ、俳句を選ぶ場所に移動する前に、事前に家藤さんが行った俳句分類から一気に組み立てるそうで、「一句一遊」のようなスリリングな現場だと語る先生。先生は俳句の意味が分からないと、家藤さんに聞き「細胞内のタービンの回転です」などと助言をもらいます。
今までの兼題は「ミトコンドリア」は生物学などのように、どの分野かの検討がついたと語る先生ですが、「重力波」が何か現段階で分からないというお二方。家藤さんは動画収録時点で資料をもらっていないと告白します。
この番組は、重力波がどういうものかを何も解説せずに俳人に丸投げして「俳句作ってきて~!」と迫る酷な番組だと核心を突く先生ですが、科学に興味のない人が科学の扉を開き、覗いてもらうことを期待しており、俳句と科学の2つを融合する試みだと先生は言います。
また、出会う科学者が「俳句する人たち凄い!」と感動してくれるとも述べる先生。科学に興味ない人たちが知ってくれるのを喜んでくださると補足する家藤さん。「この方はよく勉強されてますね~」と専門家が述べる句もあるそうです。
「575でカガク!」(兼題:重力波)の投句締め切りは7月11日(放送は9月5日(日)23:30~)です。先生は、「スリリングな、刺激的な俳句が届くのをお待ちしています」と語って動画を締めました。
注1:7月9日、東京都への緊急事態宣言(7/12~8/22)発令による収録延期のため、投句締切は8月29日に変更と公式サイトより発表されました。
注2:放送日は10月31日(日)23:30~と公式サイトより発表されました。
[122]【人生相談】夫があまりに高圧的で逃げ出したいです<2021/6/27公開>
動画[114]以来の人生相談。「夫があまりに高圧的で逃げ出したい。誰のおかげで飯が食えているんだと言われる。でも真実だから逃げられない」。先生は、自分とほぼ同じ年代ならばこのような悩みを持つ方がいるのではないかと語りますが、「誰のおかげで…」の部分はドラマで父親が放つ決まり文句にも聞こえると述べます。事実だから受けいれるしかない、逃げられない、うっかり離婚したら一人で生きていけないなどと悩みがズルズルと繋がり、結局今の状態を維持するしかなく、心の中が悶々とするという状況。この悪循環を何かのやり方で断ち切ると、全てが良い方向に回る可能性もあると思うと忠告し、一句を提案します。
岸風三楼(きしふうざんろう)の「干してある妻のもののみ桐の花」。作者は1910年岡山県出身、富安風生に師事し、1953年「春嶺」を創刊・主宰となりました。句柄が分かりやすく、日常的な中に心にまっすぐ伝わる句が多いと先生は述べます。季語「桐の花」は5月初旬辺りに高い木につける薄紫色の花。桐は育ちが速いため、女の子が生まれたときに植えておくと、成人してお嫁に行く際に桐のタンスを持たせることができると先生は語り、そのようなイメージを含む季語だと補足します。
質問者の夫が言う「誰のおかげで…」の理屈を理屈で打ち消すのは、頭がガチガチのため難しい可能性が高く、実感として受け止めてもらうしかないとキッパリと述べます。そのため、洗濯を妻である自分の服だけ行い、自分の物だけを干してほしいと提案します。夫は洗濯物が置きっぱなしで2~3日で夫の着る物がなくなる状況となり、夫に対して「誰のおかげで清潔な下着が着られると思っているのですか」と静かにお答えになれば良いと忠告します。そして、夫が改心してくれることに期待しつつ、”妻の物を着て出かける夫であるならば、それはそれで面白い俳句の種になるのではないか”とユーモア交じりに回答しました。
[P1]「俳句ポスト365」リニューアル×5Gエリア開設キックオフイベント句会ライブ
<2021/6/30公開>俳句ポスト365リニューアル×5Gエリア開設キックオフイベント 句会ライブが6月30日(水)午後6時半から約2時間半にわたって放送され、夏井先生のYouTubeチャンネルを介して配信されました。
松山市総合コミュニティセンター キャメリアホールに、文化ホール専用としては四国で初めて5Gエリアを開設した記念として、現地から中継。野志松山市長から開会のご挨拶があり、松山市から「俳句ポスト」リニューアルについて説明がありました。
司会進行は家藤さん、選者は夏井先生、また道後温泉別館「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」からやのひろみさんが中継、現地2会場の参加者の投句から特選7句が選出されました。
動画視聴者はチャット形式でコメントを投稿でき、連動企画として俳句ポストの専用フォームから投句できる形式が取られました(入選句は後日俳句ポスト365「DIARY」にて発表されます)。
通常の句会ライブに似たような形式で、初心者向けの俳句の作り方が先生から説明されました。
投句テーマ(兼題)は午後7時半頃発表。ロケ地「あすかのゆ」にちなんで「
明日(あす)か!」「
明日(あす)か?」でした。
会場の205名は
制限時間5分、連動企画参加者は配信終了までの約90分で考えました(
約700句の投句がありました)。
以下、会場の特選7句を掲載します。
◆優秀作品 ※俳号は敬称略
| 木曜は可燃ごみの日蝸牛 | あるひと |
| まっさらな明日のにほひや蝉生まる | ピアニッシモ |
| 面接の結果は明日か梅雨の鱧 | 竜胆 |
| Lの看板二番子燕こぼれさう | あねご |
| 蝸牛許しを乞うは今日か明日か | ことまと |
| 玉さいの準備ばんたん青嵐 | わたなべ |
チャンピオン | 六月の風が見事に吹きをはる | 恋衣 |
採用された皆さま、おめでとうございました~。
[123]【季語数えてみた:完結編】季語は全部で〇〇個です!<2021/7/1公開>動画[113]の続編は、
歳時記の季語を数える完結編。前回の動画で季語数
集計を視聴者に丸投げし、コメント募集しました。調査した皆様お疲れ様でした。
最初にここまでのおさらいに触れます。次に、夏井&カンパニーのスタッフが調査した1964年版の
角川大判の大歳時記の季語数の正式な数値を記載します。
およそ2万にもなる(下表参照)そうですが、ここには特殊な事情があると説明します。
例えば、「
青草」を索引で探す際、新字体(あおくさ)と旧字体(あをくさ)の両方から検索できるため、
同じ季語を重複でカウントしている場合があり、実際にはそれより少ないとのこと。
そして、コメント欄の件へ。講談社の大歳時記について調査したのは【
すりいぴい】【
石井一草】両氏ほか、【
としなり】氏も詳細な表を送付しているとご報告。また、学研の歳時記を調査した人までいたそうです。
【
瑞木】氏は2008年版の講談社の歳時記で、
夏が
1230、傍題
3080、合計
4310の季語があったという報告。
【
としなり】氏は1983年版の講談社の歳時記で、見出し季語の合計が約
4800ほどになるという報告。
【
すりいぴい】氏は
1981年版の講談社の歳時記で、傍題を含み
21289の季語との報告がありましたが、その後
16994に訂正されました。
【
石井一草】氏は
1981年版の第二版の講談社の歳時記で細かく集計。全体で
17065季語あったようですが、夏井&カンパニーのスタッフ調べでは初版が
17063季語(下表参照)。初版と二版で2の誤差があったと家藤さんは分析します。
2000年版の講談社の歳時記では、夏井&カンパニー調べで
16763季語に。1981年版と比較して300減っています。それより新しい歳時記を調査した【
瑞木】氏の報告から考えても、
徐々に季語は減っていると結論づけます。具体的にどんな季語が消えたのか、自由研究として調べてみたいと語る先生。
最終的に
季語はおよそ1万7000ほどという形で、これから自信を持って回答したいと語り、動画を締めました。
なお、以下に動画内で記入された各歳時記の季語数を掲載します。
上段(茶):見出し、
中段(黒):傍題、
下段(赤):合計季節 | 角川 第4版 (2008) | 角川 第5版 (2019) | 角川大 歳時記 (1964) | 講談社 旧版 (1981) | 講談社 新版 (2000) |
春 | 576 1372 1948 | 596 1370 1966 | 1110
|
3672 | |
夏 | 723 1465 2188 | 745 1512 2257 | 1764
|
4885 | |
秋 | 510 1020 1530 | 542 1070 1612 | 1288
|
3762 | |
冬 | 506 823 1329 | 535 910 1445 | 1017
|
3206 | |
新年 | 223 356 579 | 232 384 616 | 688
|
1540 | |
合計 | 2537 5034 7571 | 2650 5246 7896 | 5867 14896 20763 | 4656 12407 17063-5 | 4541 12222 16763 |
[124]【本紹介】新刊「夏井いつきの俳句道場」を紹介します<2021/7/4公開>
今回は夏井先生の新刊案内。2021年6月18日出版の『NHK俳句 夏井いつきの俳句道場』(夏井いつき著 NHK出版)の紹介です。コロナ禍のため執筆・出版が進んだ時期だったと語る先生ですが、動画[85]でも紹介した『NHK俳句 夏井いつきの季語道場』の続編・姉妹本です。
新刊はNHK俳句の番組本編ではなく、月刊テキストで連載した企画から書き下ろしたもの。NHKらしい落ち着いた装丁の本ですが、「難しい俳句」をお題として取り上げています。
例えば、「孫俳句」は作ってはいけないという空気感が俳句界にあるとのことで、著書の冒頭を家藤さんに読ませます。「孫俳句がなぜいけないかという声が多数寄せられた。"孫俳句を句会で先生に注意されたが、孫のいない先生の妬みか"という極端なコメントもあるが、その孫俳句が下手だったに違いないと私は思う」と先生の考えが書かれています。
「孫俳句はやめた方が良い」という風潮がある理由として、孫がベタベタに可愛いと思うため、「世界一可愛い」「賢い」など一人カラオケ状態になり、日本中の孫に当てはまる俳句になりやすい(類想を生みやすい)とのこと。家藤さんから孫の面倒に時間を割いてほしいと懇願される先生でしたが、先例のコメントは「孫俳句」をやめるべきという意味ではなく、単に句が下手だからやめた方がいいと受け取っていると述べます。つまり、「孫俳句」は上手に詠むべきだと提案するのです。
著書で取り上げている「難しい俳句」は"難解な"という意味ではなく、"案外作りにくい・挑みにくい"もので、それに挑もうという主旨が込められた本だと家藤さんがまとめます。
毎月1兼題、読者に投げかけて寄せられた俳句とともに、そのコツや方法を解説し、1年分を収録した本だと語る先生。さらに、NHK俳句の番組でも共演していた江戸家小猫氏とのZOOM対談が巻末にあると述べます。小猫氏は自分の芸を磨くために生の動物の声をフィールドワークで実際に観察して聞き取るそうで、その態度や物真似の精度が素晴らしいと先生は褒めちぎります。まさに、俳人が行う姿勢を体現しているため、お話をするたびに刺激を受けるとのこと。対談の最初に扱われている芭蕉の有名な句を紹介します。
①松尾芭蕉の「びいと啼く尻声悲し夜の鹿」。小猫氏は鹿の様々なバリエーションの鳴き声を先生に聞かせ、先生は鳴き方のオノマトペとしてそれを文字に起こしたそうです。愛媛県・宇和島の吟行で鹿の鳴き声を聞いたのが最初の体験と語る先生は、縄張り争いや発情期の鹿の鳴き声も違うと小猫氏に伝授されたそうで、実際の「尻声」は「びい」ではないとのこと。小猫氏によると「ぴゆぅ~」のような形だと物真似をする家藤さん。また、親子のコミュニケーションで自分が伝えたいときは、戸がきしむように低い「ぎゆぅ~」といきなり声が変わるそうです。生物の生態を理解した上で、ケースバイケースで鳴き分ける小猫氏の凄みに驚くお二方。
先生は、俳句は観察記録と一緒で、小猫氏の語りからその姿勢を学んでほしいと語ります。家藤さんは音を再現するのに、フォントや文字の大きさが違う点などに興味を持ちます。文字面で音を表現しようとする編集部の手腕が表れていると先生は補足しますが、家藤さんは鹿の発情期の声をさらに再現。
オノマトペの概念が変わるかもしれないと語る先生ですが、芭蕉の鹿の句のイメージだけでなく、フィールドワークによって新たな知見を得られると綺麗に総括する家藤さん。是非とも著書を手に取ってほしいと語りました。
[125]【これで脱凡人!】新企画・夏休み凡人あるある脱出シリーズ<2021/7/8公開>
短冊型に仕切ったボードを背景に座るお二方。新シリーズ「夏休み凡人あるある脱出シリーズ」第1弾。
子どものキラキラした感性を羨ましがり、自分は感性が乏しいから凡人を脱出できないと逃げの言い訳をする大人にも向けた動画です。
先生は「子どもだから感性がキラキラしている」とは絶対に言えないと早速否定。凡人はどの年齢層にも一定数いるという現実を伝え、凡人からどう抜け出すかを提案します。
ある小規模の子ども向け俳句コンテストで選者を務めたという先生は「夏休み」を季語とした凡人的発想の句がウンザリするほど寄せられたことを語り、「凡人あるある」の句がどれほどあるか調査したと述べます。季語「夏休み」と取り合わせられたナンバー1の言葉を尋ねられた家藤さんは、「宿題」とすぐに正解を述べます。「夏休み宿題」の後に助詞が来るだけで俳句の3分の2が出来ると述べる先生。家藤さんも児童や生徒へ指導する際、宿題に対して「嫌だ」「いっぱい」という単語並べた句が大量に来ると実感していることを述べます。
『俳句の授業ができる本 創作指導ハンドブック』(日本俳句教育研究会 三浦和尚 夏井いつき編著 三省堂刊)をおもむろに取り出す家藤さんは次のような類想句を挙げます。
「夏休み宿題いっぱい大変だ」「夏休み宿題多くて大変だ」「夏休み宿題早めに終わらせよう」など宿題に苦しむ内容の句は枚挙に暇がない様子。この凡人あるあるをどのように抜け出すのか。
先生は、「夏休み」の季語を前提とし、「宿題」を一括りにするのが良くないというポイントを挙げます。どの学校も宿題があるのは当然のことで、逆に「宿題がない」と書く方がオリジナリティが出るとも述べ、「宿題」の内容をより具体的に言うべきだと指南します。
「宿題」の代わりに「自由研究」「ポスター作り」「かんさつ日記」と書くと7音の音数を占めますが、より具体的で想像しやすくオリジナリティがグッと増えるのです。これだけで凡人から一歩抜け出す手前まで来ますが、下五の着地が重要で、再び凡人の沼にハマる場合も。
「夏休み自由研究」を例にとりますが、下五を「大変だ」としても凡人パーツが残ります。これを「完成だ」に変えると宿題が終わった事実と達成感が伝わり、小さなリアリティが加わります。「社会科だ」であれば「自由研究」の内容が伝わり具体性が出てきます。3つの候補では最も上手いものの、「プレバト!!」の点数でいう60点台に相当し、まだ凡人を抜け出せないと述べる先生。
才能アリの70点台に届くためには、さらにどんな社会科の自由研究をしたのかを具体的に書くべきだと述べます。あまり社会科の自由研究に縁がなかった家藤さんでしたが、先生はインターネットで今どきの自由研究を調べると様々なネタがあるお膳立てサイトがあったと述べます。
社会科の自由研究の例でいうと、「マンホールの蓋を調べる」「町中のマーク集める」「家のまわりの地図作る」「ゴミのゆくえを調べよう」。これら12音に「夏休み」の季語を付けるだけ。
「マンホールの蓋を調べる夏休み」「町中のマーク集める夏休み」「夏休み家のまわりの地図作る」「夏休みゴミのゆくえを調べよう」。具体的に書くことで才能アリ70点以上の句になると語る先生。具体的な宿題へと発想を広げ、その内容を描写することで俳句に仕上がっていきます。ここまでの過程が腑に落ちると次回の動画も理解しやすくなると述べる先生に続き、この動画を何回も繰り返して見てほしいと忠告する家藤さん。
「夏休み凡人あるある大脱出・大作戦」と大袈裟なタイトルに変えてしまう家藤さんでしたが、子どもも大人も凡人を脱出してほしいと語る先生でした。
[126]【俳句甲子園】市民スポンサーになっていただけませんか?<2021/7/11公開>
俳句甲子園開催へ向け、市民スポンサーになって協力をして頂きたいというお願いの呼びかけ動画です。俳句甲子園の協賛金は一口1000円から可能です。
全国の高校生が毎年夏に凌ぎを削る俳句大会「俳句甲子園」は2021年で24回目ですが、創設時から関わりのある先生。最初から予算との闘いがあり、百万単位を出す大口スポンサーを募るべきか、小口からでも広く集めるべきかで議論があったそうです。
ここで先生は、初期の頃の話として年配の男性・草心(そうしん)氏を紹介します。俳句甲子園のスポンサーのお手伝いを様々な方に呼びかけていた先生へズバリ聞かれたそうです。「どの位お金がないのか、どういうところで困っているのか?」と。先生は食べ盛りの高校生へ朝食に出すウインナーの量から喩え話をすると、「子どもらにちゃんとメシを食わさんと!それはイカン!」と草心氏は途轍もない勢いで応援に飛び込みます。印刷屋を営んでいたため、軽トラでポスターを運ぶ宣伝カーの仕事をしてくれたそうです。某長時間番組のキャッチコピーにちなみ、「俳句は地球を救う」など教育の大切さを熱く語り、お金を集めることに注力して下さったことで、市民スポンサーの考えが少しずつ定着したようです。
さらに、市民スポンサーの年配の男性・竜胆(りんどう)氏も紹介します。某新聞社での先生の俳句カルチャー教室に入会した方とのことですが、その理由が「俳句甲子園のお手伝いをしたいが、どうすればいいのか分からず、講座に入った」という仰天の理由です。現在、竜胆氏は市民スポンサーの主たるメンバーとして活動中で、夏井先生のブログでも紹介をされた方です。
高校生が俳句と出会う機会を支える外側の組織に「NPO俳句甲子園実行委員会」があり、俳句甲子園を経験したOB・OGらも俳句甲子園を支えている事実があり、感謝を述べる先生。家藤さんが参加したのは第5回で、歳を取っている事実に驚く先生ですが、初期の参加者は現役社会人として多方面で活躍している世代です。
熱い組織にしたい思いがある先生は、文化・教育は何をやるにもお金がかかる現実があることを吐露し、市民スポンサーとして是非とも協力してほしいと視聴者へ呼びかけます。詳しくは動画概要欄や俳句甲子園公式ホームページを確認してほしいとのことです。是非とも市民スポンサーとして協力してみましょう。
[127]【脱凡人】3〜7音の正直な気持ちで「才能アリ」へ!<2021/7/15公開>
動画[125]に続く「凡人あるあるシリーズ」第2回。凡人の本質は大人も子どもも変わらないとのことで、今回も凡人を脱出するための考え方を伝授します。
「夏休み」との取り合わせで2番目に多いのは何か?と問いかける先生ですが、答えは意外にも「長い」「短い」で夏休みの長さについての話。3番目は家藤さんの答えた「家族」。学校に行く普段とは異なる時期だけに詠まれがちですが、詠み方を工夫したいと語る先生。
①「夏休みパパとやきゅうをしたんだよ」。微笑ましい光景の一句ですが、余計な凡人ワードを探すのがポイント。この句は下五「したんだよ」です。「夏休みパパとやきゅうを」の段階で季語、人物、状況が分かるため「した」ということは読み手に伝わります。
②「かあちゃんといっしょに勉強夏休み」。この句も微笑ましい句ですが、不要な凡人パーツは「いっしょに」。特に「かあちゃんと」とあれば「いっしょに」は言わずもがなです。さて、不要な部分の音数を何に変えればよいでしょうか。「算数」と具体的に勉強の内容を述べるのも一手ですが、その他の方法を先生は提案します。
「かあちゃんとイヤイヤ勉強夏休み」と変えるのは家藤さん。感情を入れることで、小さなリアリティが入ってきます。
「かあちゃんと朝の勉強夏休み」。時間帯を入れることで、健全な家庭が想起され、午後は遊びに行くのかもしれないことが想像できます。
様々な手法がありますが、先生はこの部分の言葉の埋める発想法について、「才能の問題ではなく、パズルの知識」だと断言します。頭に入れておけば、簡単に推敲ができるというわけです。
③「兄ちゃんと兄弟げんか夏休み」。よくある光景ですが、「兄ちゃんと」とあれば「兄弟」は不要なワードです。どうすれば才能アリになるのでしょうか。
「兄ちゃんに一言いいたい夏休み」。けんかと言わずにその先を考えた一例です。「デパートでママにつき合う夏休み」。母と夏休みにデパートに外出する句はありますが、「出かける」ではなく「つき合う」がポイント。おしゃまな感じがすると語る家藤さんに続き、飽きている子の微妙な心情が表現されています。
才能アリに変えるために大きなテクニックを要求されているわけではなく、3音~7音の部分で少し具体的に言ったり、正直な気持ちを表現するだけで良いと補足する先生。
17音全てで頑張る必要はないことに「少し希望が生まれてくる」と凡人に寄り添った意見を述べる家藤さんは、前回と今回の動画を20回ほど見てほしいと強要しますが、シリーズ第3回に続くそうです。
[128]【5Gイベント】ドコモ5G句会ライブを振り返ります<2021/7/18公開>
6月30日に放送された動画[P1]句会ライブの感想戦。先生は横にあった「窓」こと中継映像が映る電子パネルの進歩に、家藤さんは5Gの速度に驚いたそうです。
4Kカメラの微細な移り具合にも仰天した先生。また、YouTube動画でのチャットでも盛り上がったことを報告します。
俳句の都松山ファンを増やすことも1つの務めだと語る先生は、是非松山に来ていただきたいと呼びかけます。
また、いつき組を中心としたチャットが楽しそうにやっていることが羨ましい点に話を振る先生。家藤さんもチャットに参加して反応を貰いますが、配信する句会ライブに懐疑的だった先生の気持ちを変えたのがチャットだったと先生は述べます。これからも句会ライブがあるたびに賑やかしをしてほしいと語る家藤さん。
大阪のNIFRELでの生配信で行われた「生きもの五七五」でもチャットで盛り上がるリアクションがあった点に触れる先生は、パソコンを打つのが速いことを明かします。
さらに、先生が本番で気付かなかった点も、チャットでは賑わっていた点があることに可笑しみを感じたと語る先生。ある句の感想を述べる男性の後ろに映っていた女性の着ていたTシャツが「すそのTシャツ」だったため「誰なのか?」と反応していたそうです。お二方は「ハタTシャツ(いつきブルー)」「すそのTシャツ(正人ピンク)」を取り出して視聴者にお見せします。まさにいつき組の証拠であるTシャツですが、該当の人物の方がいましたら動画コメントで名乗り出てほしいとお願いをします。
句会ライブには、すそのTシャツを着る方以外にも、発言するためのマイク係を呼ぶ際に伊月庵通信の冊子を振ってアピールする人がいるなど様々な工夫があるそうです。先生は後者にあやかって、マイク係を呼び寄せる際の目立つグッズ作りを提案します。
また、声だけではなく顔出しされるのも一つのポイント。以前の花守祭で読まれた【ひでやん】氏もその一人で、チャット欄はスターを見たかのような盛り上がり。文法に強い人と褒められました。【あるひと】さんも真面目な好青年だということに仰天する先生です。
俳句ポスト365で活躍している人を「ハイポニスト」、「プレバト!!」の番組で俳句を始めた人を「プレバト!!俳人」と呼ぶ先生ですが、それぞれ非常に上手くなっていると感じているようで、全国の句会ライブでも好成績を残すそうです。
また【あねご】氏が自分の句をあたかも他人の句のように褒めた点を慣れていると絶賛した家藤さん。
生ライブ・配信ライブと形式を問わず慣れることで、句会ライブが10倍楽しくなると先生は述べます。
夏井いつき俳句チャンネルの動画登録者数が7万人達成すれば、オンライン句会ライブ決行とのことで、是非すそのTシャツも着て盛り上がってほしいと述べました。
[129]【凡人あるある】凡人パーツを推敲してみましょう<2021/7/22公開>
動画[127]以来の「凡人あるある」シリーズ第3弾。凡人パーツを見つけ出すのが推敲ポイントだと語り、復習をします。
子どもたちは「みんな」という言葉が好きだと語る先生は例句を挙げます。
①「夏休みみんなといっしょキャンプかな」、②「夏休みみんなとあそぶ川遊び」、③「夏休みみんなたのしくバーベキュー」。
俳句コンテストでこのような句が山のように届くと、さすがに子どもの感性がキラキラしているとは言い難いと第1回の動画にあやかって述べる先生。「みんな」の3音を使わずに、推敲ポイントとしたいと述べ、さらにそれ以外にも不要なパーツがあると語ります。
①はソロキャンプとは考えにくいため、「いっしょ」。②は「川遊び」とあれば「あそぶ」。③は「たのしく」。ここは「一人ですねる」ならオリジナリティが出ます。
これらは「みんな」と合わせて全て中七にあるため、7音分を変えるのがポイントです。
さらに、より具体的にする方法も復習します。前回までの2回の動画で、
A.ほんのちょっと具体的に書く
B.いらない言葉を省く
という点を解説しました。
そして、大人は子どもを連れていく場所がなくなると動物園に連れていくことに言及する先生。家藤さんは地元の動物園の年間パスポートを所持することを吐露しますが、動物園の句も沢山作られるとして、紹介を続けます。
④「夏休み動物園でえさやった」。これだと凡人60点台と述べる先生では、何に対してえさをやったのかが知りたいと語ります。
⑤「夏休み亀のエサやりおいしそう」。具体的に亀という動物が出るためオリジナリティがありますが、下五「おいしそう」に凡人的な問題があります。テレビカメラのクルーの質問に答える子の言葉では独自性が出ないとバッサリ述べる先生です。
⑥「なつ休みはじめて子牛にミルクやる」は実際の入選句。季語と動物がある点は一緒です。「エサ」が「ミルク」とさらに具体的になり、「はじめて」の体験の新鮮さの情報が付け加えられています。これが「毎日」なら子牛を飼っている状況に変化しますが、「はじめて」で動物園や牧場ではないかと想像できるのです。それぞれの言葉が具体的でオリジナリティがあり、具体的に書くことでリアリティも手に入ると解説する先生。
さて、どのように才能アリに到達する練習をすれば良いのか。俳句は言葉のパズルのようなもので、パズルの穴埋めの感覚で練習すると良いと先生は述べます。ここで練習問題が出題されます。
●「夏休み○○○○亀にえさをやる」。○の4音分を自由に考えます。亀の様子を具体的に書くのがポイントです。例えば「子どもの」と書けば、大人の亀が周囲にあると想像できます。さらに「五匹の」と数を具体的に述べる手法。映像が具体的に広がっていきます。「小さな」「年寄り」など年齢の方向に行くこともできます。「今日こそ」なら今まで怖気ていた子のえさをやる様子が想像できます。このように、言葉のパズルとして何を入れれば句のオリジナリティ・リアリティが増えるかを考えてほしいと述べます。
この練習問題を用いて、コメント欄にも書き込んで貰えると楽しいのではないかと提案する家藤さん。発想の方向性を共有する学び方に言及する先生は、「発想は才能ではなく学ぶもの」と再び語ります。
次回第4回で総括をするとのことです。
[130]【ベストシリーズ】聞いてほしい!観客が少なかった句会ライブ・ベスト3<2021/7/25公開>
日曜日の動画は雑談回。木曜日の勉強回に対し、ざっくばらんな雑談をします。ランキングのベスト3をつけるというコンセプトを家藤さんに投げかけられた先生は、句会ライブの悲しかったベスト3の発表を切り出します。「人の不幸は蜜の味」と家藤さんも笑って賛同します。
ここで、「句会ライブで1番辛い時は何か?」と質問された先生は、客入りがあるかどうか気になると答えます。今でこそ、チケット即売の人気にもなる句会ライブですが、「プレバト!!」が始まる前は特にあったそうです。地域によっても開演前の客席の騒がしさの度合いが違うらしく、ざわざわ感が少ない時は客が少ないことを心配しながら本番を迎えたと語り、家藤さんも共感します。
そして「観客が少なかったベスト(ワースト)3」を発表します。ちなみに、最も多かったのは愛媛県の県民文化会館で3000人収容の状態で25分講演をしたという先生。
第3位は台風の翌日の句会ライブ。愛媛県の南楽園での野外ライブの予定でしたが、屋内に変更したとのこと。しかし、客が来ず地元の奥様方十数人を前に行ったそうです。大勢を前に行う通常のタイプから即座に方法を切り替えるのに脳を働かせたと語る先生。
第2位は愛媛県の小田町(現・喜多郡内子町)。「俳句王国がゆく」の収録にも使われた場所ですが、その公民館での句会ライブ。朝からドカ雪の中を現場にたどり着いた先生方。講演は午後からでしたが、さらに雪が降り続いたため、麓から客が上ってこれず、結局関係者5名での参加となったそうです。先生は「みんなで雪の句作って帰ろうね」と笑いに変えてしまいます。
ここまで、台風・雪という天候を事情としたものが大きな理由。
そして第1位。山口県の光(ひかり)博での句会ライブ。ジャズを演奏する人たちにより、句会ライブで詠まれた句を即興で歌う催しも企画されたそうです。ところが、ジャズメンバーは楽器は揃っているものの肝心のボーカルがいないことが判明。手配した係の人は「句会ライブ」を「夏井さんが歌うんじゃないですか?」と勘違い。午前・午後の2ステージでしたが、想像以上の猛暑となったため、自分たちのテントの周囲に歩行者もおらず、様々なパビリオンの関係者しか歩いていなかったそう。不安を募る中、空調の効いた大きなテントの内部に客が3人座ったそうです。しかも講演が始まると、音楽ライブだと思った客がそーっと2人逃げるように出て行くことに。そして、残った1人の男性は出て行こうにも固まってしまい、ジャズチームも先生もその若い男性を願うように見つめるという句会ライブに。結局、何をやったかも覚えていないという笑い話を語ります。一方、午後のライブは10人ほど来客があったそうです。俳句の季語を音として表現してもらうトークセッションのような感じになったそうで、先生的にも「アリ」だったそうです。例えば、季語の「炎天」をドラムやサックス担当の方が音で表現するような形に。興味を示す家藤さんは、そのような企画はYouTubeに向いているのではないかと提案します。午前のライブに参加した唯一の参加者のお陰で今の夏井いつきがあると大袈裟に述べる先生です。
「なんでもランキング」ということで、次回があるかどうかは未定とのことですが、是非コメント欄にこんなベスト3を聞きたいとリクエストして欲しいと語って動画を締めました。
[131]【凡人脱出】発想は才能じゃない!〇〇だ!<2021/7/29公開>動画[129]の続き。
「凡人あるあるシリーズ」の第4回は総括回です。ある小中学生のコンテストの審査員だった先生が、寄せられた俳句を分類して子どもの中の凡人の句がどれだけあるか調べてみたのが出発点。動画[125]でも取り上げた
「俳句の授業ができる本 創作指導ハンドブック」(日本俳句教育研究会 三浦和尚 夏井いつき編著 三省堂刊)は、学校の教員向けですが、調査の概要が掲載されています。
ここで、数値のお話。コンテストの俳句総数は
10,240句。その中で季語「夏休み」を用いたのが
382句。うち、同じような発想のいわゆる
類想類句は313句。凡人あるある率は
82%に上ります。オリジナリティがあるのはわずか18%という結果に。その中から、夏休みの宿題を中心に凡人の沼から抜け出すための具体的な入選句を例句に挙げます。
①「
夏休みびっくりばこを作ったよ」。中七に小さな具体性があります。
②「
夏休みたいをまるごとさばいたよ」。海辺のワークショップのような場所で体験したのではないかと想像させる句です。
夏休みの思い出として、延々秘密基地を作ったと述べる家藤さん。外出したら中々帰ってこなかった息子を振り返る先生。家藤さんは、日常の範囲の事柄で類想類句から抜け出せることをポイントとして掲げます。
③「
夏休み三日ぼうずのプラモデル」。①②とは逆に未完に終わっている内容で、中七は他人から怒られる材料ですが、その分オリジナリティが出るのです。
④「
夏休み何をしていたボールペン」。宿題が終わらない発想を転換し、怠けていたボールペンを見事に擬人化しています。
⑤「
なつやすみぼくにはしゅくだいがない」。まだ学校に行っていない園児の台詞を思わせる句で、否定的な表現にもオリジナリティがあります。
[A]「
夏休み宿題いっぱい大変だ」は以前にも紹介した
キング・オブ・ザ・凡人の類想類句の一句。ここから抜け出す方法を探ってきました。以下に2つのポイントをまとめます。
ポイント①: ほんのちょっと具体的に書く | 「ほんのちょっと」は3音から5音程度でOK。 |
ポイント②: 要らない言葉を外す →余った音数でリアリティ・オリジナリティ | 凡人パーツ・凡人ワードを発見して極力外し、 その音数でポイント①のように具体的に書くことが大切で、 ポイント①と表裏一体にあります。 |
俳句を始めた人は、子どもも大人も皆同じところで躓き、凡人の沼を回避する方法を少しずつ覚えていくと語る先生。それにより俳句の筋力が鍛えられると補足する家藤さんは、この動画が「大変ためになる」と自負します。
発想を飛ばすのに苦労するという質問を沢山受けるという先生は、「
発想は才能ではない」と繰り返します。発想の方向性をどう向けるか、具体的なポイントを知っているかどうかが問題で、「
慣れるか・慣れないか」が本質だと語ります。俳句は
言葉のパズルでもあり、言葉を穴埋めするトレーニングによりぐっと上手になると述べます。動画[115]でも紹介した岸本尚毅氏との共著の本も実践的な本であり、「おうちde俳句くらぶ」で家藤さんが受け持つ「ドリルde俳句」でも同様の練習ができます。どのような傾向の投句があるかを毎回分析しながら解説していると語る家藤さん。その分析をデータとして手にすれば、「
発想は才能ではなく、データだ」と腑に落ちるのではないかと先生は補足します。
今後も初心者が陥りやすい落とし穴を中心に「凡人あるあるシリーズ」を続けていきたいと語る家藤さんです。
[132]【ベストシリーズ】つらかった・きつかった現場ベスト3は?<2021/8/1公開>
動画[130]に続き、先生と家藤さんの共通項の話題として、家藤さんが学生時代に南海放送でアルバイトしていた頃の話を切り出します。「季語の旅」という番組で先生と同行していた家藤さんは、当時カメラアシスタントとして携わっていました。そこで、お互いが印象深く残っている「辛かった・きつかった現場」について探ろうとします。
先生は、楽しかった現場は沢山あるため甲乙つけがたいが、逆にしんどかった・大変だったものは順位をつけやすいと同調し、自身のワースト2を語ります。
先生の第2位は南海放送「夏井いつきの季語の旅」という情報番組の俳句コーナーから。先生たちが吟行に出向いて俳句を作り、後でスタッフが編集する形。お二方とも好印象の番組だったと語り、先生は愛媛県の全市町村を回ることができた有難い番組だと述べます。撮影場所はどこかの海岸とまで思い出す先生でしたが、小学生のトライアスロン大会に出場させられた40代頃の苦い経験を語ります。番組ディレクターに「泳げますか?」と聞かれた先生は、遠泳もしていたと軽く返事をすると、あっさり出場が決定。小学6年女子の部にエントリーさせられた先生は、砂浜からのスタートで児童と混じって浅瀬を泳ぎますが、周囲がクロールで泳ぐ中、唯一できる平泳ぎで対抗したそうです。次のバイク(自転車)ですが、先生に即興で用意されたのがママチャリ。遅れを挽回しようと大人の脚力で全力疾走し、何名かを抜き去ります。最後のランは石段を登ってから迂回して戻る過酷なコース。あっという間に児童に抜き去られ、ゴール地点ではもはや先生をみんなが待つだけの状況に。その時の「頑張れ~」の歓声は凄く肌に刺さったと、ユーモラスに語ります。
次に家藤さんが、毎年8月の松山まつりの取材でのしんどさを語ります。「野球拳おどり」などがあり、商店街一帯を封鎖して練り歩くイベントです。臨場感を伝えるように撮影するため、先頭や特定グループの前でカメラを構え、通過すると「よし、次!」とカメラマンが再び先頭に走り戻ってカメラを構える動作の繰り返し。ボート部で相当鍛えていたという家藤さんでしたが、想像の上を行くハードさ。カメラマンが持つカメラも重たいですが、アシスタントもバッグに大きな電池やビデオテープを何本も入れた上、ライトも担ぐため相当な重量に。ガンマイクや音声ミキサーも下げ、三脚も担ぎながら走ったという苦労話を述べます。装備の総重量は20kgは超えていたそうです。
先生のワースト1。「季語の旅」で愛媛の大野ヶ原という高原へ冬にロケをした時のこと。ロケバスを降りた瞬間、氷の粒が肌に降り注ぎ、刺さる痛さの感覚に嫌な予感がした先生。「馬の背」という山の平たい尾根を歩いて林に向かっていた一同ですが、あいにくの猛吹雪に見舞われます。飛ばされないように四つん這いで這いながら歩きますが、ロケ用のカメラが凍って動かなくなるカメラバーンとなり、仕方なく引き返します。「もうこれだけ撮ったからよしとしましょう」と談笑も束の間、ロケバスまで戻ると車が窓下まで吹雪で埋まる状態を見て一同が唖然。スタッフ総出で車輪まで雪を掻きだし、先生は車に入るように”戦力外通告”を受けます。先生は「遭難ってこうやって起こるんだ」と納得し、遭難する現場も俳句に残したと述べます。自然の中での仕事は油断が出来ないと思い出しながら、「怖かった」と感想を述べます。
よもやま話でしたが、「これからも命は大事に互いに頑張りましょう」と笑って語る家藤さん。リクエストはコメント欄にと語って動画を締めました。
[133]【7月の正岡子規】一句の中に同じ単語や漢字を二回使っている子規の句を紹介します<2021/8/5公開>
公開が8月にずれ込んでしまった「7月」の正岡子規。「お忘れなく」という視聴者からの注意喚起のコメントがあったと報告します。
今回は、同じ単語や漢字を2回使っている子規の句を特集します。
①「田から田へうれしさうなる水の音」。「田」が2度使われているのが明確で、水を引いた田んぼが青く育ってきた様子を詠んだ一句。最初「田水(たみず)引く」の季語の様子を詠まれた句だと解釈した先生ですが、子規によると「青田(あおた)」の句として自分で分類しているそうです。「~から~へ」という叙述により、1つの田から別の田へ水が流れる映像を表現。「うれしさ(そ)うなる」は感情語ですが、水の音の描写となっており、子規らしい上手さがあると先生は解説します。これは陸奥(みちのく)に吟行旅行した際、宇都宮を汽車で出発して目にした即景(即興で景色を詠む)の句だと補足されます。見渡す限りの田んぼの段々から水が流れる様子を「うれしさうなる」と擬人化して表現しています。明確な季語は書かれてないものの、「青田」「田水」という季語の力が息づいていると家藤さんが述べます。さらに中七の補足。子規はこの後白河駅に向かいますが、「たちまち雨 たちまち晴れ 半ば照り 半ば降る」というお天気だと記録し、「定まらぬ天気は旅人をもてなすに似たり」と喜んでいたそうです。先生は、定まらない天気から俳人は沢山の句材を貰えると語り、「~から~へ」の用法もドリルde俳句だと思って練習して欲しいと続けます。
②「茗荷よりかしこさうなり茗荷の子」。「茗荷(みょうが)」「茗荷の子」と季重なりですが、主役となる季語は「茗荷の子」です。ここでそれぞれの季語のイメージを語る先生は、コロンとした茗荷の子の形が賢そうと語る発見が楽しいと述べます。「かしこさうなり」が主観でも観察でもある言葉だと述べる家藤さん。親と子の茗荷を取り合わせていますが、同じものを生育や年齢の違う形で用いる方法もあると先生は補足します。
③「瓜くれて瓜盗まれし話かな」。「瓜(うり)」が夏の季語。「西瓜(すいか)」「南瓜(かぼちゃ)」もそれぞれ季語ですが、ここでは「真桑瓜」「白瓜」が傍題となります。瓜を持ってきてくれた人が、瓜を盗まれたため少ないなどと立ち話をしていることを想像させます。頂いた「瓜」は実際の瓜ですが、別の空間と時間で盗まれた「瓜」もあり、現実と虚を取り合わせる手法です。「話かな」の納めもドリルde俳句などで練習することを先生が提案しますが、「オチとして落とし込むにはフレーズを工夫しないといけない」と家藤さんは難色を示します。
④「花守と同じ男よ氷室守」。「花守(はなもり)」が晩春、「氷室守(ひむろもり)」が晩夏の季語で「守」は人物を指します。「氷室」は天然の氷を保存する室で、かつては茅などを被せて地中の氷を保存したそうです。先生もかつて昔の氷室で吟行した経験があることを語ります。氷室を守るように立つ「氷室守」を見て、花守と同じ人物であることに気づくという一句。職業が異なるレアなケースですが、一つの型としてぜひ覚えておきたいと述べる先生。
そして、七月の句の付録として一句を紹介します。
⑤「家のなき人二万人夏の月」。「二万」という数詞にハッとしたと先生は述べます。子規の生きた明治後半(1900)で、様々な事情で家を持たない人がいたことを句に入れ込んでいますが、今はどうなのかと気になったという先生。家藤さんが読み上げる先生の記録によると、厚生労働省が実施したホームレス実態調査では、平成19(2007)年当時18,000人あまりとのこと。なお、平成30(2018)年には行政の支援もあり同5,000人弱に減少。さらに、令和2(2020)年には同3,992人と毎年500人ずつ減少しているそう。先生は統計的なデータも俳句の種になると語ります。
8月の正岡子規も楽しみに待ってほしいと家藤さんが述べました。
[134]【人生相談】頑張れ、頑張れと言われて疲れてしまいました<2021/8/8公開>
動画[122]以来の人生相談。「頑張れ、頑張れと言われて嫌になってしまいました」と切実なお悩み。先生は頑張っている人間にこれ以上「頑張れ」と言われても、と質問者に同情します。
先生も沢山の原稿を書いているさなかで、あちこちの編集者から「まだですか~?頑張ってください。締め切りは昨日でした」と連絡が多数入るそうで、「頑張ってるよ!」と言いたい気持ちがあり、大きな声で自分の気持ちをぶつけるのも良いのではないかと思うと述べます。
しかし、「頑張れない!」と正直に言ってしまうと、「頑張れ」といった立場の人物との心の齟齬が生まれ、親・上司・同僚などとの人間関係を壊すことになりかねず、この俳句を心に置いて生きてほしいと思うと述べ、一句を紹介します。
池田澄子(いけだすみこ)の「夕月やしっかりするとくたびれる」。作者は1936年生まれの神奈川県出身の俳人で、口語俳句を得意とし、若い世代にも高い人気があります。先生も好きな俳人で、口語であっけらかんと言い放つった奥底に深い意味やしみじみとした世界があると述べます。
三省堂の国語教科書で紹介された池田氏の句が若い人達にも広がったきっかけとなった句は何かと問われた家藤さんは「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」と淡々と答えます。さらに、「ピーマン切って中を明るくしてあげた」も含めて、童心・遊び心があります。
さて最初の句に戻りますが、「月」が秋の季語。後半のフレーズで自己肯定をしています。自分の心を慰めることから始め、そこから顔を上げるのです。先生は疲れた時に、この句を口に出して唱えたりもすると述べます。
さらに、この句が好きになったもう一つの理由を述べます。先生の著書『夏井いつき「月」の歳時記』(世界文化社・本体1300円)は古今東西の名句と一般から募集した句を写真と共に紹介する本です。先生も大好きなシリーズとのことですが、この池田氏の俳句と一緒に紹介する写真を何にすべきか考えていた先生は素敵な写真があったと一ページを開けて紹介します。
橙の夕暮れを背景にシルエットのように映る左向きの一人の少年。籠のようなものを背負っており、日本ではない光景の可能性もあると述べます。その写真の左側に例句が縦一行に載っていますが、このページを見た時に心がほぐれていくような感覚になり、「この子も疲れているだろうが、頑張っているのではないか。私も頑張っているよ」とこの子に話しかけるような気持ちになったと述べます。是非この句を心に唱えつつ、この本を買って下さると私は嬉しいと視聴者に語りかけ、自著の定価を最後に確認して動画を締めました。
[135]【8月の子規】8月の暑さを子規はどう表現したのか<2021/8/12公開>
8月の正岡子規シリーズ。動画撮影を忘れなかった先生が自画自賛するところから始まります。先生の著書『子規365日』から8月の例句を紹介します。8月の頭は晩夏が終わるタイミングですが、子規の句にある「暑さ」「暑し」の表現の差異を分析します。
①「痰吐けば血のまじりたる暑哉(あつさかな)」。脊椎カリエスの結核に悩まされた晩年の子規。「痰(たん)を吐く」句も数が多い中、咳きこんで痰を吐く暑さが堪えるわけですが、中七「血のまじりたる」が目で捉えている表現です。痰に混じる血の色に対し、身体感覚で捉える「暑さ」のイメージが響き合います。「痰」や「嘔吐」などは下品に思う読み手もいますが、それらをひっくるめての生きている存在となるため、美しいもの・格調高いものだけが俳句ではないという認識が必要だと先生は補足します。子規の病状が進んでいく頃の句は生々しくリアリティに富むものが多いと分析します。
②「猶熱し骨と皮とになりてさへ」。今回は「熱し」。気候の「暑し」に対して、より皮膚感覚を表現しています。猶(なお)も熱いことだと感じるが、自分は病気で痩せて骨と皮になっていく体でさえなお「熱い」と倒置法のように表現された文体に。本来「暑し」の表記を使うべきですが、自分の体の状況・発熱を表現する意図を先生は汲み取ります。ただし、基本的には「暑し」が季語とのこと。
また、「暑し」は温度と考えるのが一般的ですが、心情としても使えなくもないとして次の句を掲げます。
③病中「ぐるりからいとしがらるる熱さ哉」。「病中」は前書き。病気の自分を看病・お見舞いをする多数の人物を「ぐるりから」と表現し、「頑張って生きてね」などと愛しがられることも結構「熱さ」を感じとってしまうと読める一句です。ここで家藤さんは、季語で心情を感じるという共通点から、高浜虚子の「風生と死の話して涼しさよ」を挙げます。弟子の富安風生(とみやすふうせい)と死ぬという話をすることの何と涼やかなことであるのかという意味ですが、それぞれ「熱さ」「涼しさ」が心情描写の季語として使われています。
そして、本人の正直呟きととれる一句も紹介。
④「生きてをらんならといふもあつい事」。生きていないといけないことも何と暑いことではないか。③の句とは異なる空気感がある一句で、ドライで肯定的に生を受け止めていると述べるは家藤さん。生きてる間は死ねないのだと感じ取る先生。子規は9月に亡くなりますが、絶筆三句にずっと向かっていく日々の中の呟きの一句ととも取れると解説します。この句は制作年月日が不明のようです。
⑤「服中にのこる暑さや二万巻」。腹の中に残る暑さがあり、最後の「二万巻」の数詞が圧倒的です。先生は最初「二万巻」について、子規の読みたかった本の数だと思ったそうです。読みたい本が山ほどあり好奇心に満ち溢れていたが、病状で死に至る自分の無念さだと解釈。しかし、実際には全く違う意味だったそうです。秋田の「俳星」という俳句誌を発行していた島田五空宅が焼けた火事見舞いの一句で、本好きな人物にとって二万巻が灰と化すことを想像するだけで、まさに腹中渦巻く残暑だということが真意とのこと。「暑さ」は残暑に差し掛かる意味合いですが、火事見舞いと分かると「暑さ」の種類、「二万巻」のイメージが変わってきます。作者が作った背景を知るとまた違う解釈・鑑賞が生まれてくるタイプの句です。
「暑さ」のバリエーション・味わいが多数あると述べ、総括を始める家藤さん。「暑さ」を気候の暑さ、実際に感じとる肌身の暑さ、心理的な暑さと使い分けることができ、子規はそのような使い方を工夫しながら表現したと先生はまとめ、自分の作句のアプローチに役立てたいと述べる家藤さん。
最後に、立秋を過ぎたら秋になる点に触れ、いつかを調べて押さえておいて欲しいと語って動画を締めました。(2021年は8月7日)
[136]【季語】「八月」という季語を分析してみましょう<2021/8/15公開>
「八月」という季語に焦点を当てたお話。時候の季語で「一月」から「十二月」までありますが、先生はこういうタイプの季語は案外作句が難しいと述べます。上五を「一月や」などとし、一月らしさを感じるフレーズを置く練習法は定番とのこと。月によって難易度は異なりますが、家藤さん曰く新年の「一月」、暑さの「七月」、気忙しさの「十二月」はイメージが浮かびやすいものの、「十一月」はどうその時期らしさを出すかが難しい実感があるとのこと。先生は、11月の初旬は立冬を迎え、秋深まる気分と冬のはじめが入り混じっているイメージがあると述べ、同じく「八月」もその部類(初旬に立秋を迎える)だと語ります。
また、「八月」に関しては「文月(ふづき・ふみづき)」と呼ばれることもあると補足します。「文月」は陰暦の七月に意味する呼称ですが、陽暦の八月とほぼ重なります。「文月」のような陰暦の場合は、表記の文字の持つイメージが大きな力を発揮するため、それなりの工夫の仕方があると述べる先生は、陽暦の「八月」の難しさを説明します。
まず、季節の変わり目にある点。8月の初旬に「立秋」が訪れ季節が暦の上で切り替わりますが、世間ではまだ暑い夏の盛りのイメージ。ここで「八月」の例句を紹介します。
①正岡子規(まさおかしき)の「八月の太白低し海の上」。ここでの「太白(たいはく)」は金星のこと。明けの明星(みょうじょう)・宵の明星で一般に知られる金星を中国では「太白星」と呼んだそうです。八月の海上に金星が現れている写真のような描写句ですが、初秋に入っていった夏の暑さの名残を映像として切り取っていると先生は褒め、海の上の空気感も想像できると味わいます。
この句が詠まれた明治時代と異なり、昭和時代に入ると「八月」の季語が複雑なイメージを持ち始めるようになったと述べる先生。「八月」にはお盆(盂蘭盆会/うらぼんえ)があるため、亡き人の御霊が帰ってくる魂迎え・魂送りの行事、お盆の魂の行き来のイメージが「八月」「文月」に元々含まれていたと前置きします。
昭和20年(1945)、第二次世界大戦(太平洋戦争)の終戦を迎えたのが8月。初旬の原爆も相まって、さらに「生き死に」「魂」の印象が季語として強くなり、歴史的な変化・背景を背負っていったと家藤さんが述べます。8月6日の広島原爆、8月9日の長崎原爆、8月15日の終戦と続き、大きな八月という季語に対するイメージが乗っかっていったと述べる先生。「八月」は単純に暦の上で秋になることだけでなく、1年の中で最も人の生死を考えるイメージ・テーマを抱えている季語だと続け、それらのイメージを持った例句を挙げます。
②現代の俳人・川崎展宏(かわさきてんこう)の「八月を送る水葬のやうに」。八月をずっと過ごしていく月日がまるで水の中に葬る冷やかな心を持つようであるさまを詠んでいます。
③現代の俳人・筑紫磐井(つくしばんせい)の「八月は日干しの兵のよくならぶ」。ゾクッとしたという先生は「日干しの兵」のインパクトに驚きます。毎年、終戦の日にテレビや新聞などのメディアが「戦争について考えましょう」とメッセージを繰り返しますが、その中で日干しの兵が並ぶかのような映像が自分の脳裏に入ってくる感じで読んだと先生は述べます。
これらの句のように、「八月」の季語が新しい意味を持ち始めていると総括しますが、季語の世界でも意味の変容は時たまあることと述べる先生は、「一月」から「十二月」までの季語をそれぞれ丁寧に分析してみると興味深いものがあると語り、視聴者に自分で検証してほしいと問いかけます。歯ごたえのある修行になると家藤さんが最後に述べました。
[137]【大人の凡人脱出】データで紐解く、大人の凡人あるある脱出作戦を始めます<2021/8/19公開>【『2022年版 夏井いつきの365日季語手帖』の投句フォームのシステムエラーのお知らせと再投句のお願い→フォームへ】
背景の俳句ボードを挟むお二方。今回は「大人の凡人あるある脱出作戦」の動画です。動画[125]~[131](の奇数)でも凡人シリーズを展開しましたが、反響のコメントが多く寄せられたそうです。
「プレバト!!」でもお馴染みの感情を表す動詞・形容詞が最初のテーマ。「偲(しの)ぶ」「思う」「恋し」はよくある凡人ワードです。心情を込めたい初心者が使いたがる心情語で、作者の意図にひとまず寄り添えると述べる家藤さん。先生は選句の段階で黄色信号がともりますが、敢えて「偲ぶ」などといって効果的な場合もあるため、それ以外のフレーズでオリジナリティがあるかを意識して見るそうです。ただ、上手くいく場合の打率も高くはなくその割合も今後検証したいと先生は意気込みます。
ありがちな心情語をうっかり書いた場合、一回立ち止まって欲しいのが学びの一つ目。しかし、案外オリジナリティがあると思い込みがちな単語もあると述べる先生は、下五に置かれがちな凡人パーツとして、5音の単語を紹介します。
(1)「無人駅」は、投句の際にもやたらと出てくるそうです。映像・思い・連想力があると思う人が多いからこそいっぱい使われると分析するお二方。その結果、凡人ワードになりがちなようです。
(2)「秘密基地」も子どもの頃に作った思い出がある人が多く、それ故の郷愁を持ちがちなワードです。
(3)「観覧車」も見上げた形で描写し「ゆっくり回る」などと合わせやすい単語。
(4)「水琴窟(すいきんくつ)」は吟行句会で1句は出てくるという単語。地中の壺に水が滴り落ちる場所で、出会った喜びや気持ちの良い音ですが、「良い音色する」などと詠まれて多くの人が同じように感動するとのこと。
先生は(1)~(4)全て使ったことがある単語だと述べますが、逆に中七を相当考えないといけないと語り、うっかりやると完全なる凡人ワードとしてかえって損をするため、データとして身につけてほしいと述べます。使っていけない単語ではないものの、上手に使わなければならないと繰り返し、学びの二つ目だと述べます。蟻地獄のように凡人にズルズル引っ張られる例を「無人駅」を用いて解説します。
下五に「無人駅」を置くと懐かしみ始める人が多く、「偲ぶ」がその前に置かれます。作者は俳句が出来た匂いがしてきたと思い、偲ぶ物をさらに考えて「故郷(ふるさと)」と並べます。足りない季語を上五に置きますが、「夏草や」「秋風や」などと入れます。しかし、「故郷偲ぶ無人駅」が作者の心の中でキュンと掴むようなものに見えるのですが、「偲ぶ」は感情表現として凡人ワード、名詞としての「故郷」も良く使われるため、季語以外は凡人パーツのみで成立する一句になってしまいます。しかし、先の動画「凡人あるある」で学んだ方ならどう改善すべきか分かるはず。漠然と「故郷」とするのではなく、さらに具体的な表現に少し変えるべきとして、「父母(ちちはは)」に変えてみます。「父母偲ぶ」とすれば亡き両親を意味しますが、「父母恋し」なら存命中の人物となります。しかし、まだ凡人要素が抜けていません。家族以外の人物に変えてみる路線を思う人は、「旧友」とし、動詞を「思う」を合わせて「旧友思う」で中七を作ります。これらは俳句の形にどれも収まっていますが、「プレバト!!」ならいずれも凡人のど真ん中。季語以外が凡人ワードだけで構成されているためです。
先生は「俳句は才能だ」という人もいるが、俳句の才能は実力のてっぺん付近でやっと関係してきて、そこまでの長い道のりはほぼデータ作戦だと述べます。
では「無人駅」を活かしてどのようにすれば良いのでしょうか。「故郷」や「偲ぶ」などを一切使わず、中七を大きく勝負すべきだと先生は述べます。上五に季語、下五に「無人駅」を置く形で、中七を考えてコメント欄に作った句を書き込んで欲しいと提案します。優秀なアイデアは後日の動画で取り上げると先生は述べ、皆さんの集合知で作られていく「大作戦」だと家藤さんが述べました。皆さんも書き込んでみましょう。
[138]【偽物発見】真夏井先生!?チョコレートプラネットさんに物申す!<2021/8/22公開>
タレコミ情報に物申すという回。夏井いつき先生の「プレバト!!」添削のモノマネコントを行う人物がいるという情報を嗅ぎつけたお二方。コント番組「新しいカギ」でチョコレートプラネット・松尾さんが扮する「真夏井先生」というキャラクターが登場するのです。
パロディのコント動画を視聴した家藤さんは、先生に感想を聞かれて言葉に詰まりますが、「意外と太って見えているのかな」と率直にコメント。真似をされた当の本人は、セットの黒板が唐突に出てくる展開に笑い、理由もなくやたらめったらに赤ペンで消していくコントで、自分があんな風に見えているのかと笑いながら語ります。
モノマネされる機会はそうそうないと語る先生ですが、博多華丸・大吉が「プレバト!!」の俳句コーナーネタを披露していたと組員から連絡を受けていたことに言及。今度お会いした時、「私の目の前でやれ!」と言おうと思っていると述べます。
「真夏井先生」ネタに戻る家藤さん。甲子園に負けた野球部へ先生が生徒たちを励ます場面から始まる設定のコントで、ロッカールームに突如登場する真夏井先生がズバズバと激励文の添削をしていきます。実際にオンエアされた部分以外にも添削の赤が一杯入っていたことに気付いた家藤さん。オンエアで使えないほど苦労したパーツが相当あるのではないのかと想像したと述べるのに続き、先生も同じことを思ったようで、一体何分カメラを回したのかと気になったとのこと。コント作りの苦労に関して感心したと家藤さんが述べます。生徒役を指名しながら出てきた意見に「才能アリ」「才能ナシ」とアドリブで答えていたことにも触れます。
さて、先生は実際の「プレバト!!」の収録では台本めいた物がないと述べます。俳句コーナーのオンエアが約35分に対し、実際にカメラを回すのが40分ほどのため、ほぼ収録部分の全てを放送に使っているそうで、「経済効率がめっちゃいい」と番組を褒めちぎります。収録はぶっ通しで行い、コントをすることがない先生は、真夏井先生に「そんないっぱいカットされるようじゃまだまだ!」だとダメ出しをします。お互いに一発勝負で決めないといけない点を「精進していきましょう」とアドバイスします。
実際に真夏井先生コントを見た視聴者から「子が腹を抱えて笑った」「空気は似ていたが、やはり似ていません」と微妙なフォローも含め、メールやコメントを沢山受け取ったそう。実際に、コントの俳句紹介の部分で銀河万丈氏のナレーションが入っており、細かい部分でリアリティを追及している部分に触れる家藤さんはツボにはまった様子。先生は最後に「真夏井先生の活躍をお祈りしております」と語って動画を締めました。
[139]【凡人脱出】コメント欄から凡人を脱出した発想をご紹介します<2021/8/26公開>
動画[125][127][129][131]で展開した「凡人あるある脱出シリーズ」。その3回目[129]で登場した「夏休み○○○○亀にえさをやる」。この○の4音分を自由に考えてもらい、コメント募集しました。面白い解答やためになる解答を紹介する試みです。17音しかない俳句では4音どころか2音でも色々やれると先生は補足します。コメントした方にも「考えることが楽しい」「俳筋力が鍛えられる」などと好意的なコメントが寄せられています。
先生が取り組む場合、まずこの亀がどんな亀かを考えると述べます。「大きい」「小さい」などから考え、オリジナリティをどこに持っていくかを工夫するそうです。どんな状況・様子の亀かを考えるのは発想力の第一歩です。
【打楽器一家】氏の「夏休み群がる亀にえさをやる」。「群がる」という動詞により、複数いることや理由があって集まっていることが分かり、描写が出来ていると先生は褒めます。ほかにも「子どもの」「二匹の」などがあったそうです。
【シルマスピカ】氏の「夏休み乾いた亀にえさをやる」。面白いと笑いながら述べる先生。水辺から上がり、日向ぼっこをしていますが、季語「夏休み」によってカラカラになっていることが分かります。乾いていると気付くところが偉いと述べます。
【ぶるぶる】氏の「夏休み古代の亀にえさをやる」。亀は長生きの象徴とはいえ、同じ亀でも「年寄り亀に」なら夜店で買った年寄りの普通の亀のイメージですが、「古代」で作りが違うイメージがして面白いと先生は語ります。
【丈達末子】氏の「夏休みカミツキガメにえさをやる」。品種を中七に合わせた格好です。危険な亀だけに「えさをやる」行為にも緊張感が生まれます。これも良いと褒める先生。他に「じいちゃんの」など誰かが所有しているという発想もあったそうです。
【*nami】氏の「夏休み社長の亀にえさをやる」。仕事が増えてしまうOLや秘書を思わせる文面ですが、人間関係が想像できると述べる先生は「この段階で凡人抜け出している」と太鼓判を押します。
【澤田桂子】氏の「夏休み彼氏の亀にえさをやる」。これも面白いと述べる先生は、彼氏が自分よりも亀を愛しているのではないかと想像し、「なんか幸せになれそうにない感じがする」と冷たく返す家藤さん。皮肉な感じが伝わり、亀を通して人間関係が分かると先生は続けます。
【hatsu tig siku】氏の「夏休み旦那と亀にえさをやる」。先生は、並列でご主人と亀それぞれにご飯を与える光景ですが、亀と同等なものを旦那に食べさせているのかもしれないと想像させると述べます。助詞「の」が「と」に変わっただけですが、読みとしては「旦那と亀の2人にえさをやる」「旦那と一緒に2人で亀にえさをやる」の2つがあると捉える家藤さん。後者の読みであれば夫婦は仲良しということに。
【横浜太郎】氏の「夏休み無断で亀にえさをやる」。えさをやってはいけない看板がある場所で行う状況が分かります。亀の様子・人物の存在・状況の要素と色々な発想の方向性があることが分かります。一方、「夏休み」に引き付けた発想もあったそうです。
【Cherenkov】氏の「夏休み長くて亀にえさをやる」。発想の方向性として大いにありと述べる先生。夏休みが長くてやることがなく、仕方なく亀にえさでもやるような人物像が想像でき、柔軟で良いと述べます。
【藤なつき】氏の「夏休みも終わりだ亀にえさをやる」。亀にえさをやれるのももう少しの時間しかないという心情が読み取れます。
紹介したものはみな凡人を抜け出していると褒める先生。上記の分類に当てはまらないものもあると家藤さんは続けて紹介します。
【颯萬】氏の「夏休み絵画の亀にえさをやる」。絵に描かれた亀にえさをやるという発想。不思議な世界だと率直に先生は述べ、ハリー・ポッターの魔法学校にある動く絵のようだと語ります。
【無頼】氏の「夏休み自作の亀にえさをやる」。自由工作か何かで作った亀にえさをやるという分かりやすい発想です。
【小薮健二】氏は「夏休み双子の亀にえさをやる」→「夏休み若き双子の亀にえさ」と推敲したそうです。「に」があれば「えさ」の後の「やる」が不要ではないかと考えられたそうで、「プレバト!!」を相当見ているはずだと先生は「偉い」と褒めます。
【yoshi tsuna】氏の「夏休みくっさい亀にえさをやる」。コメントでも非常に反響があったそうで、後ろのボードにも掲示します。笑えたと述べる先生は、リアリティとオリジナリティが「くっさい」にあり、単純に「臭い」だけでないのも良いと続けます。洗われていない亀の様子を見事に描写しています。
【梵庸子】氏はこれらの分析をしながら投稿されたそうで、とても秀逸だと評されました。
①「夏休みいかつい亀にえさをやる」<亀の様子・状況>上記の「くっさい」と同じ分類。
②「夏休みこわごわ亀にえさをやる」<亀にえさをあげる自分の様子>亀と自分の関係が分かります。
③「夏休み朝から亀にえさをやる」<時間帯>時間情報を入れるのも一つの手です。
④「夏休み校長亀にえさをやる」<人物情報>えさをやる主体が人物という一句で、状況が明確に分かります。
⑤「夏休み別れる亀にえさをやる」<状況>誰かにあげる亀なのかもしれないと想像させます。
⑥「夏休み歯医者で亀にえさをやる」<場所>歯医者には行きたくないが、えさをやるのは楽しいという微妙な心境を思わせます。
この発想の糸口はどんな時でも有効に使える方法だと先生。アイデアの一つとしてフックのように持っておき、そこから言葉を探しに行くことで、凡人脱出は容易になるということ。今後もシリーズを続けていきたいとのことです。
[140]【音楽と俳句】宮崎国際音楽祭に出演しました!<2021/8/29公開>
今回は第26回宮崎国際音楽祭(2021/8/5講演)に出演した際の秘話を語ります。カッコいい表紙のパンフレットを手に紹介をします。ご主人の兼光さんや妹のローゼン千津氏は音楽が好きだと述べますが、親族で最も音楽に疎いという先生。この音楽祭は様々なジャンルの人を招き、その人の人生と音楽を絡めながらトークショーを行い、実際に音楽を生演奏するイベントだといいます。
先生の聞き手役は米良美一氏。「俳句王国がゆく」の宮崎ロケで出演されたようで、思わず「あら~懐かしや」ともらす家藤さん。
先生の講演テーマは「バッハと太一と五・七・五」。「ニック」と呼ばれる先生の義理の弟、ナサニエル・ローゼン氏はチェリストで、チャイコフスキー国際コンクールで初めてチェロ部門で優勝したアメリカ人。その方が無伴奏のバッハを全曲一晩で演奏したことがあり、その場にいて感銘を受けたというお二方。ニックがローゼン千津氏と結婚してから、バッハそのものに衝撃を受けたと先生は述べます。
「太一」は先生の一番最初の孫の名前で、家藤正人さんの姉の長男に当たります。そして、このタイトルになったきっかけとして先生は「太一と申す」というタイトルのCDを取り出します。これは、先生の俳句を歌詞とし、横尾嘉信氏が音楽をつけて歌としたもの。このCDで歌っている歌手・マユミーヌ氏も今回出演されて実際に歌われたそうです。チェロを弾いた方が荒庸子氏というチェリストで、他にピアニスト・バイオリニストを交えて先生がリクエストした曲(ビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビイなど)を演奏して頂いたと報告します。米良氏はこのCD曲を初めて視聴されたそうですが、俳句が歌詞になっていることに大変感動され、マユミーヌ氏の歌声にも「この人は声もそうだけど歌に自分の世界を持ってる」とさらに感動されたそう。この歌詞の中にある、男児の風呂上がりを拭く際の一句「金玉と呼ぶにはいとけなき涼しさ」や「長閑かな赤子の尻の穴眺め」など、やや強烈な句にも米良さんが大変ウケて下さったようです。この辺りのエピソードを色々と絡めて舞台上で講演された先生。
さらに、「五・七・五」で俳句募集をしていた事実も明かします。兼題は、バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」。全国から寄せられた俳句をもとに舞台上で特選3句を発表されたそうです。家藤さんは、クラシックファンの曲の解釈と、俳句に興味があってもクラシックは初めてという人の解釈は違うはずだと分析します。先生の俳句解説時、演奏者の方々にも座って感想を語ってもらったそうです。特選句「弦は水面 弓は光となる卯波(うなみ)」は弦は水面のように静かになり、弓が光と共に音を奏で始めるが、それはまるで卯波(旧暦4月)の波のようだという内容の句ですが、先生は「卯波」を卯の花が波のようになる時期だと解説したところ、ピアニストの山中惇史氏が「卯の花っておからですか?」と勘違い発言。会場の多くもそう思われていたご様子で、大変盛り上がったそうです。
先生の話をずっと聞いていた家藤さんは、俳句の異文化交流だと述べます。同意する先生は、俳句は色んなジャンルのものと繋がれると語り、「575でカガク!」を一例に挙げますが、音楽と俳句は凄く相性が良いと述べます。家藤さんは、耳に届くまでの音の波のような科学の話と、それを聴いて心に起こるものが両方共存できるがゆえ、双方が句材となれるため俳人心を刺激しそうな気がすると分析します。
また、演奏曲の中に「グノーのアヴェマリア」があったそうですが、覚えているかと唐突に家藤さんに尋ねる先生。家藤さんの結婚式でニック(世界一のチェリスト)に生で弾いて頂いた同名の曲だと家藤さんが答えますが、その結婚式の際の写真も会場に(プロジェクタ投影の形で)流れたようです。
さらに、太一さんの出生間もなく先生が詠まれた「みにくいアヒルの子色のバスタオルに裸子(はだかご)」は、グレーのバスタオルを太一さんの顔の周りにかけて顔だけが出ている様子の一句でしたが、その写真も会場に流れてどよめいたそうです。この歌詞をマユミーヌ氏が歌っている最中、「可愛いから(太一さんを)ずっと映しとけ」と裏でディレクターが語ったという微笑ましいエピソードを語ります。先生の家族にとってメモリアルな講演となったと感触を述べる先生。家藤さんは披露された写真が先生の携帯の待ち受け画面として長く使われていたことを明かしますが、今の携帯では待ち受け画面を設定(変更)する方法が分からなかったと先生は返します。
宮崎国際音楽祭は毎年開催されるため、クラシックに興味ある方も是非出かけてほしいと先生は述べます。先生の小さな句集「皺くちゃ玉」は娘の長男と家藤正人さんの長男が産まれた時の孫俳句句集、「日よ花よ」は娘の次男と家藤正人さんの長女が産まれた時の孫俳句句集だと紹介します。孫にずっと自分を覚えておいてもらいたいから小さな句集の形にしたと述べる先生ですが、この動画も含めて将来の孫・ひ孫のために記録を残しておくことで心が安らかになると続けます。「悪態句集」を始め、これらの句集は夏井&カンパニーのホームページでも予約を受け付けていると述べました。
[141]【おしゃべり俳句】第四回!可愛い俳句にメロメロ<2021/9/2公開>
動画[106]以来、約4ヵ月ぶりのおしゃべり俳句。前回の動画に寄せられたコメントから紹介します。
【カヅラ梅】氏からのお便り。「この度、女の子が産まれた。産まれる前に2歳の女の子を持つ知り合いから、乳児用の服や沐浴槽を頂いた。その際、女の子に貰う許可を取ろうとしたら何故か渋られ、『私が赤ちゃんに戻ったら使う』と言われ、可愛いためその言葉を使って俳句にした」とのこと。知り合いの女の子2歳より「赤ちゃんに戻る時使う夏衣」。先生は、それらの乳児用具を借りることは大事だと述べ、前半の台詞の発想が可愛すぎるとコメントします。作者によると、借りた沐浴槽とベビーベッドは返却予定で、それを伝えたら「いいよ」と許可してくれたそうです。先生も借りた側の心情を弁解しますが、作者によると実際の女の子の言葉は「私が赤ちゃんに戻る時使う」とのこと。「戻ったら」「戻る時」で微妙なニュアンスの違いに触れるお二方です。
【8の月】氏は「まゆと呼ぶ『ちゃん』はそつぎょう兄貴顔」という無季の句。作者によると"まゆちゃん"と呼んでいた兄がいきなりそう言いだしたそうで、友達が「ちゃん」「くん」を付けずに呼ぶことに影響されたご様子。先生は、成長の一歩だと周囲の大人は嬉しく思うと述べます。ここで先生は、息子の家藤正人さんが姉の「フミ」さんを「お姉ちゃん」と呼ばないことに触れ、ご本人は「さん」付けすると返します。
【ノアノア】氏の息子が3歳の頃、おままごとをしていた時からの一句。「行く春やパパ汁できた捨てとくね」。おままごとで何ができたかを子に聞いてみると、「パパ汁できたから捨てとくね」と言われ、もっと遊んでやらねばと思ったそうです。先生は「パパ汁」が何かに興味を持つと述べ、家藤さんが昔話の狸汁ではないかと持論を展開。先生はパパの汗を想像したと続けます。
【齋藤淑子】氏は「今日は魔法記念日?五月三日」。カレンダーを見て小2の娘が言った言葉とのこと。先生は、「憲法記念日」の文字を読み間違えたと推測しますが、「魔法記念日」がハリーポッターのようで楽しいと述べます。
【ベーグル】氏のいとこの子ども・ゆいと(4歳)からは「たんぽぽは吹くのがおすすめ」という自由律俳句。先生は笑いながら「可愛い」と述べ、たんぽぽの綿毛が風に乗って旅をする句は山ほどあるが、この視点は良いと褒め、家藤さんも自由律として素敵だと続けます。
【y k】氏の知り合いの子(8歳)の「遊びたいんじゃないの気になるの」は無季。「可愛い」と拍手して笑う先生は、「気になる」という感覚が大事だと述べます。子のセリフを聞き、その言葉が面白いとアンテナでキャッチする大人達の意識の成長が素晴らしいと家藤さんが見解を語ります。大人を褒めたいと先生も続けます。
【さやもち】氏の12歳の長男の言葉から「南風『俺が名前をつけていい?』」。昨年の夏に妊娠し、お腹の子が男の子と分かって長男が言ったセリフとのことで、先生は句を見てすぐさま察します。1か月ほど考え、優しい子に育つように「はると」と名前を付け、ご夫婦で漢字を考えたそうです。粋だと述べる先生は兄ちゃんの名前も知りたいと述べ、「ええ男やね~」と家藤さん。
【井原ちまた大輔】氏の娘・しずく(8歳)の「しーはまだ蛹なんです春の朝」。朝、起こしに行ったときに毛布にくるまった娘に言われた一言で「しー」は一人称の呼び名のようです。「早く蝶々になって羽ばたいて貰いたい」と親目線の作者です。先生は「可愛い」と連呼し、「蛹のしーちゃん、今から俳号を蛹にしなさい」と忠告します。
いよいよ、先生が選んだ特選3句の発表です。
【とほたかほ】氏の句は、近所の公園のトイレの男の子「うんちのねお歌うたうの春の園」。「うんちのお歌」が良いと印象を述べる先生。近所の公園のトイレで父に連れられた男の子が言った言葉を採取したという作者。どんな歌かは気になったが、知らないおじさんが横で聞いていたら危ないと思い、残念ながらその場を離れたとのこと。先生は賢明な判断をした作者をなだめ、「聞きとめる」と「付きまとう」は別だと弁解します。父と息子が「ウンチしようね」と歌いながらトイレに行く明るい気分に加え、「春の園」の季語に作者の優しさが現れていると解説します。
【無花果ジャム】氏の句は、5歳くらいの男の子「いい人だ犬もかわいい夏の雲」。犬の散歩中に公園でゴミ拾いをしていたら、声をかけて貰った場面だそう。「何してるの?」と聞かれた作者が「ゴミを拾ってるよ」と答えると、その子が大きな声で叫んでくれたセリフのようです。先生はエピソードをひっくるめて良いと述べ、「これを呟く5歳の子が何と上手く育っているか」とも印象を語ります。漫画の「よつばと!」感すらあると語る家藤さんに先生も反応。主人公のよつばなら言いそうなセリフだと続けます。
【猫宮瓜】氏の長女イチ(10歳)の「お母さんはちゃんとやってる初蛍」。親として胸につまされたという先生。宿題が進まない次女(アサ・7歳)の子育てについて悩んでいた母・猫宮瓜に長女が放ったセリフ。「私もやらんかったが、やるようになったし」と次女が続け、怒るばかりの子育てが何となく救われた気持ちになったという母のコメント。先生は、長女が母と反抗期の次女の双方の気持ちが分かっている気持ちに優しく寄り添います。季語「初蛍」はちょうどその日に出会ったので取り合わせたそうで、励ましてくれるイメージがあると先生は述べます。また、当の次女・アサの「卵から姫が生まれる夢見た春」に、奔放だという印象を持つお二方。猫宮家は、家族でラジオの一句一遊に挑戦しているそうで、色々な年代の方がいるようです。家族で言葉を楽しんでいるのが、本当に嬉しいことだと述べる先生は、「またおしゃべり俳句に投句してほしい」と続けます。
次回・第5回おしゃべり俳句への投句はこの動画のコメント欄に投句して欲しいと語って動画を締めました。
[142]【人生相談】3年ぐらいの浪人なら、人生の取り返しはつきますか?<2021/9/5公開>
動画[134]以来の人生相談。「浪人中です。2年や3年以内の浪人なら人生は取り返しはつきますか?」。どこの学部を目指すのか質問者の年齢も併せて気になる先生ですが、一般論として話を切り出します。
まず、質問内容そのものが明るい点と印象を語る先生は、人生はいくらでも取り返しはつくと結論を先に述べます。少し背中を押してもらいたく、この質問を書いたのではないかと推察します。そして、心の一句と呼べるような句を紹介します。
富安風生(とみやすふうせい)の「とうすみはとぶよりとまること多き」。作者は1885年愛知県生まれで高浜虚子に師事し、1928年俳誌「若葉」の選者となるのち、主宰となった人物。先生は、難解な言葉を使わずに心にすっと入ってくる句が多いと作者の印象を述べます。「とうすみ」は夏の季語で糸蜻蛉(イトトンボ)のこと。イトトンボは飛んでいる時間より止まっている時間の方が長いことを表現していますが、人生も同じではないかと問いかけます。
人それぞれ、その人にとって一番良いというものがあるはずだと先生は述べます。例えば、トンボでもオニヤンマやギンヤンマはグイグイといく印象があるものの、イトトンボやオハグロトンボはジーッとしていたかと思うとハタハタと飛んでまた止まるような動きをすると語ります。人それぞれ心身に丁度良い動き方や止まり方が絶対にあるという信念を述べる先生。
「2年、3年くらいなら浪人しても良いかな」と肯定的に自分を捉える一方、社会の通念として違うのではないかと小さな不安を抱えている、それだけのことだと慰めの言葉をかける先生は、自分はとうすみトンボでのようなものだと肯定する心構えで、自分を励まして頑張ってほしいと語ります。最後に、「今日から君はイトトンボです」と断定のエールを送って動画を締めました。
※動画公開日にチャンネル登録者数が7万人を突破しました。
[143]【音便シリーズ】難しくない!イ音便について学びましょう<2021/9/9公開>新シリーズ・
音便(おんびん)の解説です。最近よく使われるホワイトボードの向きを縦向きに変えて横に座るお二方ですが、「音便」と先生が言うと視聴者の気持ちを代理すると語る家藤さんが引いてしまう空気に。
音便とは、
動詞・形容詞・形容動詞の音が他の言葉と合わさると音が変化するもの。先生は、俳句で困ることが多い「
動詞の音便」に絞って解説を始めます。「ノーサンキュー」と思っている視聴者代理の家藤さんは、「心を穏やかにして聞いてほしい」と続けます。
まず、
音便には4種類あり、それを知るだけでも迷わなくて済むと述べる先生は、以前の季重なり動画[23]でも紹介した俳句を一句掲げます。
水原秋桜子(みずはらしゅうおうし)の「
蟇(ひき)ないて唐招提寺春いづこ」。この句には音便が使われていますが、果たしてどこでしょうか。上五「な
いて」の「い」がまさに音便で変化した箇所です。これは「
鳴く」という動詞の活用が関わることになります。
元中学校国語教師である先生の真骨頂ともいえる解説が始まりますが、
中学校で学習した口語文法(高校古典では文語の文法)を思い出せば大丈夫だと述べます。
まず、「鳴く」の語幹を確認。
語幹とは単語のうち活用しない部分で、「鳴く」の場合は頭の「
な」が語幹にあたります。家藤さんがボードに文字を書き込みますが、先生が象形物のようだといじります。
次に
未然形。「ず」や「ない」を「鳴く」の動詞に続けて否定をする場合、「鳴
かない」「鳴
かず」に形が変わります。活用は「
か」です。
連用形は動詞などに接続する形で、「たり」や「て」を下につけますが、「鳴
きたり」「鳴
きて」となるため、活用は「
き」に。
終止形は言い切りの形。句点の「。」を付ける形は「鳴
く」のため、活用は「
く」です。
連体形は名詞などに接続する形で、「こと」や「とき」を付けますが、「鳴
くこと」「鳴
くとき」となるため、活用は「
く」に。
已然形(文語)・
仮定形(口語)は表現によって使い分けられますが、「ども」や「ば」が続く形。「鳴
けども」「鳴
けば」となり、活用は「
け」。
命令形は他人に命令する形で、「鳴
け!」となるため、活用は「
け」。「命令形だけが得意な人もいる」と持論を述べる先生のテンションも上がります。
「
鳴く」の活用は順に「
か・き・く・く・け・け」と
四段活用になります(以下の表参照)が、どこにも俳句にある「な
いて」は存在しません。しかし、ないての「て」は連用形に接続する音で、本来は「な
きて」が活用表の表現です。作者の秋桜子は、「ないて」で言いやすい音を選んだことになります。これこそが
イ音便(いおんびん)となります。この「イ」は変化後の音をそのまま取っているそうで、
カ行・ガ行の動詞で変化すると解説します。
カ行の動詞の場合、「書
きて」も「書
いて」と同様に変化します。
ガ行の動詞の場合、「研
ぎて」は「研
いで」と変化し、「て」が「で」と濁音が振られますが、こういうケースもあるそうです。「面倒なケースとして忘れてほしい」と述べる家藤さん。
まず、最初の一歩目としてイ音便を覚えてほしいと語って動画を締めました。
基本 の形 | 語 幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 仮定 | 命令 |
ず (ない) | たり (て) | 。 | こと とき | ども (ば) | ! |
鳴く | な | か | き | く | く | け | け |
[144]【紅白俳句合戦】皆さんの投票で勝敗が決まります!<2021/9/12公開>ボードの後ろに貼る蛙と兎が本を持つ挿絵を"ラーメンズの読書対決"だと語る意外な展開から始まる動画。ラーメンズに興味を持つお二方の会話が盛り上がります。
新シリーズは
「紅白俳句合戦」というダサい(?)ネーミング。
紅組と白組の俳句を一句ずつ掲示し、どちらの句が良いと思うかを俳句甲子園の審査員感覚でコメント欄に寄せてほしいという視聴者参加型企画です。
俳句甲子園(※毎年8月に開催される全国高等学校俳句選手権大会)の審査員席に座る先生は、後ろのギャラリーが句について語るヒソヒソ声が聞こえてくると述べます。ここで話題は俳句甲子園の基本情報へ。先生は、コロナ禍以前は大街道商店街に予選リーグの会場ができ、黒山の人だかりのようなお客さんがあったと言います。紅白2チームに高校生が分かれ、最後の「判定」の声でどちらかの色の旗を審査員が挙げますが、挙げた瞬間に観客の「え~!?」という声が聞こえてくるとも述べます。
作品の"好き嫌い"と作品としての"良し悪し"は違うものと述べる先生。「プレバト!!」でも、おっちゃん(=梅沢富美男)の句は好きではないが、作品として成立しているため「掲載決定」だという話をします。
作者の思いが形として作品となっているかという冷静な分析が"良し悪し"の判断には大切なようです。
俳句歴の長短によらず、どのような立場であっても自分なりにどちらが良いかを考えて旗を挙げてほしいと述べる先生。審査員になった気分で決めてほしいという企画です。どちらも
既存の名句が取り上げられるとのこと。
そして、いよいよ俳句の発表に。1回目にふさわしい句として難しい単語を用いていない俳句が作者名を伏せて2句掲げられました。
季語は「林檎」と「バナナ」の対決です。
●紅組1句目 | あやまつて林檎落としぬ海の上 |
○白組1句目 | 川を見るバナナの皮は手より落ち |
【紅白俳句合戦 投票方法】・支持する組を
理由と共に動画のコメント欄に書き込んで欲しいとのことです。
※単純に紅白の総数の問題ではなく、中身・理由が大事とのこと。作者が分かっている人もそうでない人も自分なりの意見を出して欲しい忠告がありました。結果は後日の動画で発表するそうです。
※また、動画の最初に7万人突破の句会ライブを予定しているとアウトドア撮影で案内がありました。 [145]【9月の子規】三大切れ字「けり」を知って発想のきっかけを作りましょう<2021/9/16公開>
急に自己紹介に詰まる家藤さん。ラジオ「一句一遊」に倣って「アシスタント」の肩書を言いそうになる様子。先生は「そういう性分がこびりついていく」と息子をいじります。
今回は9月の正岡子規。三大切れ字の一つ「けり」を取り上げます。家藤さんは「や」「かな」は一般的に目にするが、「けり」は難しくて中々使えないのではないかと持論を述べます。
①「大仏に二百十日もなかりけり」。大仏には「二百十日」も関係なく泰然としている大した内容ではない意味の句ですが、季語「二百十日」は立春(2月4日頃)から数えて210日目のことで、毎年9月1日頃を指す「厄日」でもあります。台風の特異日でもあり、農家にとって警戒すべき厄日で、この句は最後の「けり」がどっしりとくる一句だと先生は述べます。
「けり」の切れ字の元々の意味に移ります。その状況は以前からずっと存在していたが、ある日自分がそれに気づくというニュアンス。よって本来「けり」は過去の助動詞でしたが、詠嘆として使われるようになり、切れ字の役割を持ち始めたそうです。①の句は王道の「けり」用法ですが、発見した喜びを格調高く表現する手法だと語る家藤さん。発見したことを書いて読者の共感を呼ぶ切れ字だと先生は続けます。
②「秋の蝶動物園をたどりけり」。子規の生きた明治時代は西洋文化の吸収が激しかった時代で、「動物園」が真新しいものに違いないと語る先生ですが、今の時代でも十分通用する一句だと補足します。動物園を散策していると、さっき見た秋の蝶が自分についてくるように再び眼前に現れる印象だと鑑賞する家藤さん。動物園の檻にいる動物ではなく、その外側にいる秋の蝶に目を留めているのが良いと先生は解説します。切れ字「けり」は気づきの一種の効果を生みます。来園者と同様に辿っていた秋の蝶に気付いた喜びを表現したものだと述べる家藤さんに、気づきも発想のきっかけの一つだと先生は語ります。
③「淋しさの三羽減りけり鴫(しぎ)の秋」。子規の弟子である小説家・長塚節(ながつかたかし)から「鴫三羽小包ニテ」との手紙が子規に届きます。手紙の内容は「百舌(もず)も鳴き出し候(そうろう)。椋(むく)どりもわたり申(もうし)候。蕎麦(そば)の花もそろそろ咲入れ候。田の出来は申分(もうしぶん)なく、秋蚕(あきご)も珍しく当(あた)りに候。」との文面で、それを詠んだ子規は「田舎の趣(おもむき)見ルガ如シ、一寸(ちょっと)往(いっ)テ見タイ」と記した記録が残っています。先生は、長塚氏の手紙の文面が良いと述べます。田舎から鴫を三羽送るという手紙の文面に対して詠まれた一句ですが、中七に「けり」が使われています。眼球に収めていた光景で、寂しい心が実は自分の中に湧き上がっていたことを自覚した感じだと語る家藤さん。先生は、この句が詠まれた場所は子規側ではなく長塚氏側の光景であり、そっちから自分に送ってもらうために三羽減った気づきであり、そちらでは寂しい鴫の秋になっているだろうというご挨拶代わりの小粋な一句だと述べます。季語の「鴫の秋」も手紙の内容が含まれ、贈答句としても上手いと続けます。
④「松に身をすつて鳴けり雨の鹿」。「鳴けり」は「なけり」と読むと、完了の助動詞「り」が接続した形のため切れ字ではありません。ここは「なきけり」と読むのが正解だと先生は解説します。「鳴く」の動詞の連用形「鳴き」に「けり」が接続する形です。この句も自分がハッと気づいた状況です。鹿が映像として見えているか否かがポイントだと悩む家藤さんの鑑賞。雨のそぼ降る中で、烟(けむ)るように見えている鹿。今まで聞こえていた音は、松に身を擦っていたのかという映像が気づきとして出てくると述べます。先生は、鳴いている状況はずっとあったが、自分が今鹿の動作にそれに気づいたという感じだと続けます。家藤さんは、中七の「けり」の解釈は一層難しく感じると述べます。
「かな」と同様に「けり」にも色んな解釈があるため、一緒に勉強をしていきましょうと語りました。
[146]【投句案内】賞金はなんと○○万円!令和相聞歌のご案内<2021/9/19公開>
今回は「令和相聞歌(れいわそうもんか)」の投句案内の紹介動画。いわゆる恋愛を詠ったもののコンテスト募集です。締め切りは11月11日(木)、対象は全員、自作の未発表作品を1人3作品までで、ホームページから応募可能です。
いつの時代から相聞が存在するのか?という家藤さんの質問に、万葉集からすでに詠まれていると答える先生。詩歌の世界と恋愛は切っても切れない縁だと続けます。
募集テーマが「恋」だという今回の令和相聞歌は、先生ではなく家藤さんが審査員の1人に選ばれています。息子さんが恋の歌など作るのかと疑念を抱く先生ですが、家藤さんの過去に作った気色悪い句に話が展開します。逆に先生の句で、恋の句の記憶が幾つかあると述べる家藤さんは以下の句を挙げます。
夏井いつき「たとえば愛は白桃におく指の痕」。NHKの「俳句王国」の番組で「愛」をテーマにした練習コーナーの前振りでお披露目した一句だそう。それ以降、収録のリハーサルで「たとえば愛は…」の俳句の一連のフリをずっと続けたことで、この句は脳裏に刻まれた一句だと述べる家藤さんは良い句だと納得します。
恋愛の句は題詠が多いと語る先生ですが、心が震える句として作った句を挙げます。
夏井いつき「黄落やなぜわたしではないのです」。心を寄せた相手が他人に奪われていくという誰しも経験する切ない失恋のさまを黄落(こうらく)に託した一句。いつき組写真部のランちゃんが、先生の句に対して撮影した写真が「オータムジャンボの宝くじ売り場」だっだそうで、恋の名句が台無しになったと自虐的に語る先生。この句を思い出す度に「オータムジャンボ」が連想されてしまい「めっちゃ迷惑」だと続けます。「写真によって落とされる名句」だと家藤さんがまとめます。
さて、「令和相聞歌」は俳句に限らず、80文字以内の短文作品が応募要項とのこと。短歌・短文詩などでも良いそうです。福井の一筆啓上の審査員を行う先生は、80文字程度の文章は逆に難しいのではないかと語ります。今年で5回目の審査員を務めるという家藤さんは、最近は俳句・短歌での応募比率が圧倒的に高く、それ以上の字数の名作が少ないと感触を語ります。具体的に書くには80文字では少なく、俳句の方が案外効率が良いとも述べる先生。家藤さんは「令和相聞歌」のホームページで過去の受賞作を閲覧できることに触れ、受賞作を後ろのボードに掲げます。
①GONZA「始まりは初雪の日の滑り台」は昨年の最優秀作品。兼題に「恋」とあるため「始まりは」の書き出しで成立しており、ある程度の年齢の男女の初恋の場面を色々と想像できると述べる先生です。
②夜行「友だちにもどる春夜の口紅をこんなきれいにぬってしまって」は昨年の優秀作品で短歌風。ドラマのワンシーンで良いと述べる先生。最近はラジオ「一句一遊」でも"短歌も俳句も党"が積極的に挑戦しているそうで、そのような方々の世界観も活かされるのではないかと挑戦を促します。
③鈴屋「毒りんごのような君の指に触れじわじわ恋を腐らせていく」は平成29年度の「平成相聞歌」時代の当時高校生の受賞作品。悪い男に引っかからないようにと警鐘を鳴らす先生。感覚が凄いと頷く家藤さんは、先生の「白桃」に置く指の句とは異なる感覚だと述べます。恋は油断したら腐っていく、まさにオータムジャンボのようだとユーモラスに語る先生。
応募期間は9月1日から11月11日ですが、最後に賞品の話に。最優秀賞(1名)は賞金10万円、優秀賞(3名)は賞金5万円、特別賞(10名)が賞金1万円。他に四国新聞社賞(5名)、四国医療専門学校賞(5名)など。賞金に目を丸くして仰天する先生は"短歌も俳句も党"がやる気を出すのではないかと推測します。初めて応募する人はお金から入るのが正しい姿勢だと続け、今日から「恋」「愛」を脳裏に置いて是非応募して欲しいと語ります。
「平成相聞歌」時代は応募無制限でしたが、今回の「令和相聞歌」は1人3作品までとのこと。どなたでも応募可能です。動画はフレーム形式で案内が表示されますが、審査員である家藤さんの顔を立てる意味でも、動画視聴者も積極的に参加して欲しいと述べる先生。応募はインターネットから可能です。
[147]【大人の凡人あるある】みなさんの「無人駅」の句を紹介します
<2021/9/23公開>
動画[137]の大人の凡人脱出シリーズの発表回前半。上五に季語、凡人ワード「無人駅」を下五に置く形の俳句を募集したところ250句以上寄せられたそうです。今回はコメントや初めて俳句を作った人の句を中心に紹介します(優秀句は次回発表)。
①今ではベテランの【かま猫】氏からお便り。「俳句始めた頃に、『金木犀香り乗り込む無人駅』(先生評:凡人)と作って自分では上手くできたと思ったら、全く選ばれなかった経験が。なるほど」とのこと。「金木犀(きんもくせい)」自体が嗅覚中心のため「香り」と書く必要がないと評す先生は、「そんな時代があったのね」と作者をいじります。
②【瑛琳】氏から「もしかして凡人から抜け出せるのでは?と三回目のコメント。『カンナ咲き単線のびる無人駅』(先生評:①よりは良い)」「カンナ」とあれば「咲く」が必要かどうか吟味すべきで、単線が伸びている様子を切り取るのもありがちな発想だと述べます。
③【みずちみわ】氏から「秋夕焼(あきゆやけ)ダムに沈んだ無人駅」。先生は困った顔つきで、ダム湖に役場・我が家・駅・学校などが沈む発想も良くあると述べます。実際、どれだけのものが歴史的に沈んでいるのかと問題提起をする家藤さんですが、そのような話が心の琴線に刺さりやすいため、どうしても句材としがちで、いざ書くと凡人あるあるに辿り着きやすいと述べる先生。工夫すればするほど凡人あるあるになりやすいのが恐ろしい所だ家藤さんも共感します。凡人の落とし穴や沼を如何に避けていくかが大切で、任天堂のゲーム「マリオカート」の操縦に喩えようとする先生です。
④【kapizo ibsk】氏から「別のネット句会でも師匠が挙げていた陳腐になりやすいワードが『無人駅』で、他に『孫』『廃屋』は特に危険で、墓前や仏壇に何かを供えるのも危険。その後に続く発想がありきたりになりがちと指摘され、冷や汗を流した経験がある」とのこと。凡人に陥りやすい傾向は確かにあり、それらをデータとして経験値を積み上げていくのが重要だと先生は述べます。「経験値」つながりで、再びマリオカートの話題を切り出す先生は、一度もゲーム内の崖(ジャンプ台)を飛び越えられずにすぐ辞めた苦い経験を語ります。
⑤【大紀直家】氏から「凡人発想歳時記のような書籍が欲しい」との要望。「書籍や公募では優秀句だけが公表されるため、何が凡人か一般人には分からない。ラジオ『一句一遊』で月曜・火曜といった凡人紹介枠があることが有難い」とのコメント。先生はこのYouTube動画こそが書籍の役割の一端を担うと述べ、動画で学んでほしいと述べます。先生自身も「凡人の発想とは何か?」という定番の質問に対し、ブログや様々な投句サイトでこの「凡人あるあるシリーズ」動画を見るように促せば良いことに嬉しく思っているご様子。夏井&カンパニーのスタッフの協力を得て、再生リストも作成しブログに貼り付けていることを報告します。
⑥【satoru izumi】氏から確認のコメント。「観覧車・水琴窟・無人駅・秘密基地はそれ自体が凡人ワードではなく、これを使用すると他のフレーズも凡人ワードを誘発しやすいため、注意を払って言葉を選定すべきというのが統計上分かったという解釈で良いか」という点。先生はこの点に同意して、「凡人ワード」「凡人パーツ」の違いに言及します。一句の中にある凡人ワードが悪者ではなく、その単語を用いることでよくある凡人パーツを作りやすくなり、そうなると手の施しにくいものになると残酷に述べます。逆に凡人パーツにしないように、凡人ワードを活かすためにどんな工夫をするかが今回の重要な試みだと述べます。
⑦【いけだいけだ】氏から「今まで俳句を作ったことがなく、これが初めてで良い記念になりました。『ストーブにかざす君の手無人駅』。新海誠監督「秒速5センチメートル」が好きで思い浮かんだ句」とのこと。まさしく「恋のアニメっぽい」と述べる先生ですが、挑戦していることを褒めます。
⑧【わわ】氏から「あるあるを避けながら『無人駅』が活きるように詠むのは難しい」とコメントしながら、「すつぴんの夏二年ぶり無人駅」など5句を初投句。中七に季語が入ってしまいましたが、句としては成立していると評します。
⑨【尾木李然】氏も初コメント(先生は「初コメ」を新米と勘違いします)。「月照らす駄菓子のゴミや無人駅」も夜の光景として成立した一句。このYouTube動画を見て一歩を踏み出しているのが嬉しいと述べる先生。
ここで、初投句のA-no-hito氏の句を紹介しようかと勿体ぶる家藤さん。良い句とのことで、次回の動画で紹介するそうです。次回は優秀句発表の動画だと予告しました。
[148]【祝7万人】チャンネル初のプレゼント企画を行います!<2021/9/26公開>
背景に島と海が見える外ロケの今回。「後ろに本箱がないだけで新鮮ではないか」と切り出す先生。チャンネル登録者数7万人到達記念のお礼と新しいお知らせがあると語る家藤さん。
撮影地である愛媛県愛南町(元内海村)・家串は夏井先生の生誕地。息子の正人さんも3歳くらいまで暮らしていた場所とのこと。夏井先生の生家から家藤さんの歩幅で100歩も歩いていない場所から撮影しているそうです。愛南町は、四国の地図の南西部、愛媛県と高知県の県境で、高茂岬と由良半島の2つの半島がある場所で、撮影地は由良半島とのこと。先生は自身が着ている青地に地図がプリントされたTシャツを見せ、由良半島の根本付近の場所だと解説します。このTシャツは愛南町の町おこし運動「よもし連」の方から頂いたものとのこと。この動画で着たことで全国に宣伝している先生ですが、「よもしれん」は"世の中で飛んでもない"という意味で、"世も知れん"の意味もかかっており、良い意味にも悪い意味にも使うそうです。
さて、7万人突破の句会ライブは日程が10月後半以降にずれ込むそうです。少し間があるため、お礼の気持ちを何かの形でお伝えしたいと先生は述べます。さらに、プレゼント企画も実施したいとのこと。今後、YouTubeでやってほしい企画をコメント欄に書き込んで頂き、何かの形でフィードバックをしていきたいと家藤さんが述べます。「これいいね!」から「できんやろアホ!!」みたいなものまで、色々書いてもらい琴線に触れたものにプレゼントしたいと先生が述べます。
要望関連のコメントも頂くようですが、様々な動画に分散して書き込まれているため、集約するという意味でもこの動画のコメントにリクエストを書き込んで欲しいとのことです。
コメントの採用者には夏井先生のミニ句集が贈呈されるそうです。今回過去の要望に応えて初めての外ロケとなりましたが、透明度の高い海を背景にただ喋るだけではなく、何か素材を集めたいと述べる家藤さんでした。
[149]【大人の凡人あるある】凡人を脱出した「無人駅」の優秀句を発表します<2021/9/30公開>
動画[147]に続き、大人の凡人あるあるシリーズ「無人駅」。いよいよ優秀句の発表です。
①【映湖陶月】氏は「蜩を一時間半無人駅」。先生は、無人駅の静けさの中で蜩(ひぐらし)の音をずっと1時間半聞いていることを、動詞を使わずに助詞「を」のみで表現したことが秀逸だと褒めます。季語も主役に立てている一句です。
②【A-no-hito】氏は「葛踏みてキセルのをとこ無人駅」。前回の動画で発表しそうになった句は家藤さんのお気に入りの一句で、先生も面白いと同調します。「無人駅」「キセル」はいくらでもありそうですが、堂々と人物を出しています。先生は蔓性の「葛(くず)」が映像化され、季語が主役に立っていると評します。俳句初心者で動画をよくご覧になっているという作者です。
ここで、「無人駅」の説明をせず、季語を主役に立てる工夫が大事なポイントだと繰り返します。
③【石井一草】氏「茸狩終え百人の無人駅」は、発想が楽しいと述べる先生。キノコ狩りで有名な山があり、そのシーズンだけ電車に乗り降りする実感が出て、日暮れ前に帰る頃に人が一斉に駅に集まってくる感じも「百」の数詞で伝わります。さすがの作者という評です。歳時記をめくると「茸」関係はユーモラスな描かれ方をしている句が多いと言う家藤さんは、雰囲気も合っている句だと所感を述べます。また、作者のコメント欄では、下五の「無人駅」に対して連想される動詞が中七に入りやすいと分析されていたそうです。「着く」「発つ」「乗る」「降りる」だと「無人駅」の説明になってしまいます。この点に関しても先生は若いのにさすがだと褒め称えます。
④【多喰身デラックスa.k.a.】氏は「桜蕊降る世田谷に無人駅」。世田谷に無人駅があるという事実にも田舎に住む人から見ると「なるほど」と思い、「世田谷」の固有名詞が効いていると評す先生。「桜蕊(さくらしべ)降る」とのバランスも上手いと述べます。
⑤小さなところに目を付けたのは【後藤佳子】氏「夏蝶の糞干からびて無人駅」。先生は、その糞が夏蝶の物だと分かる作者を褒めます。ゴキブリやネズミの糞は分かると語る先生は、物干し竿にネズミの糞らしきものを見つけた際、妹のローゼン千津氏が泊まりに来て「コウモリの糞だよ」と教えてくださったそうです。糞だけでも句材になることを改めて述べる先生です。
⑥【平本魚水】氏の「門松のすくと立ちをり無人駅」は無人駅に立つ物を描写した一句。「門松」のにぎにぎしさが良く、門松を管理している人の思いも伝わり、季語も主体となっていて良いと評します。
⑦【おーちょー】氏は「煮大根の香が何処からか無人駅」。先生は「サバ」「アジ」「サンマ」を焼く匂いはそれぞれ区別がつくと述べます。煮炊きの匂いがする点で類想はありそうですが、よくある「路地」「団地」等ではなく人気のない「無人駅」とした意外性が活きたタイプの一句です。凡人ワード同士を合わせてみると、新たなものが生まれる可能性を提示したと先生は評します。
⑧比喩を用いたのは【あいちぷるうと】氏の「蜩や出臍のごとく無人駅」。この句に印象を持っていた先生は、比喩でよく映像を描いた点を褒めないといけないと評します。なだらかな高さと傾斜を持つ広い土地の中に出臍(でべそ)のように無人駅があるさまを表現。上手くなってきたと作者を褒めます。
⑨【爽花】氏の「木の実落つ切符小箱へ無人駅」と⑩【Haruyo】氏の「団栗とキツプを箱へ無人駅」。類想として出た可能性はありますが、それぞれ頑張っていると評す先生は、頑張った先に似たようなものが出るのは俳句の宿命で、好意的に捉えてほしいと述べます。
⑪【磐田小】氏の「万緑の小腸あたり無人駅」。凄い比喩の一句に少し考える先生ですが、小腸の様子からスイッチバックで登っていく列車を想像します。比喩で攻めてきた姿勢には驚かされると述べます。
⑫【北藤詩旦】氏の「猫じやらしじやらじやり砂利の無人駅」につっかえて読む家藤さん。ワザとやっている企みが楽しい点が分かると述べ、作者の意図を見抜くは先生です。
ここで、家藤さんのベスト句を発表します。
⑬【いさな歌鈴】氏の「野は焼けて阿蘇の余熱の無人駅」。季語は「野焼き」ですが、阿蘇の広がりを見せた上、余熱の皮膚感覚を見せて「無人駅」へと展開します。まさに五感を刺激する一句です。作者は以前「俳句生活」の同じ兼題の際、先生のブログ宛に野焼きの写真を送られたそう。体験を入れているとやはり強いと述べます。
そして、先生の特選句を発表します。
⑭【染井つぐみ】氏の「磯蟹を踏みたる朝の無人駅」。夏の季語である「磯蟹(いそがに)」ですが、それを「踏む」動作に大変リアリティがあると述べる先生。先生の育った四国の海でも朝は蟹が歩いており、フナ虫なども道路を歩いているそうです。「踏みたる」感触、「朝」の時間帯、「無人駅」のハッとする意外性が見事だと評します。先生は、作者の経験から作句したと予想します。
ここで、前回のコメント欄に「凡人あるある歳時記」が欲しいとの意見がありましたが、この動画が「無人駅」というワードに対しての紹介例になるのではないかと述べる家藤さん。凡人ワードを凡人パーツにしない方法を見せる1つの辞典のようなものになると先生は補足します。凡人ワードストックは山ほどあるというお二方。今後もシリーズとして展開するとのことです。
[150]【正岡子規こぼれ話】病床で子規が見たかったものとは・・・?<2021/10/3公開>今回は
正岡子規のこぼれ話を紹介。毎月の子規シリーズ動画を公開していますが、俳句とは別の側面で紹介していきます。
好奇心の強い人ではないかと語る家藤さんですが、凄く暗い横顔の写真の印象が強い人が多いと先生が語ると物真似をする家藤さん。病人として生きながら俳句・短歌を革新したイメージが強い人が多いはずだと先生は続けますが、案外
面白い兄ちゃんだと補足します。
明治35年9月19日に亡くなった明治を代表する俳人・正岡子規は家藤さんとほぼ同じ年ごろの
36歳で没しています。死期に書かれた「
病牀六尺(びょうしょうろくしゃく)」という書物は明治35年5月から執筆を開始。面白いエピソードが多いそうで、まず5月26日の叙述を紹介します。
病に寐てより既に六、七年 車(=人力車)に載せられて一年に両三度出ることも一昨年以来全く出来なくなりて ずんずんと変つて行く東京の有様は僅かに新聞で読み来る人に聞くばかりのことで 何を見たいと思ふても最早我が力に及ばなくなつた そこで自分の見た事のないもので ちよっと見たいと思ふ物を挙げると… |
として、リストを作っていることに言及する先生。病状が悪化して新聞以外に世の中の情報を得られなくなった体でも「いっぺん見て見たい」と感じる部分に
子規の好奇心があると述べます。子規は"
脊椎カリエス"(結核性脊椎炎)という背骨の内部に侵入した結核菌によって、骨が徐々に破壊されて周囲に膿が出る病気に侵されます。そんな
子規が見たかったものを次々と紹介します。
■正岡子規が見たかったもの①活動写真 | 昔の「映画」。チャップリンに代表されるもの。 |
②自転車の競争及び曲乗 | 競輪の前身のようなものとサーカスの興行のようなものと予想します。 |
③動物園の獅子及び駝鳥 | 動画[145]「秋の蝶動物園をだどりけり」の動物園。獅子(=ライオン)、駝鳥(だちょう)の珍しさを確かめたかった点と、象やサイなど動物の絵画で想像を膨らませた点に触れます。 |
④浅草水族館 | 動物園と同様に当時真新しいもので、吟行も楽しい場所です。①~④は、西洋文明開化の影響を受けたものだと補足します。 |
⑤浅草花屋敷の狒々及び獺 | 何かの興行の噂を聞きつけたのでしょうか。狒々(ひひ)・獺(かわうそ)と③の動物繋がりで、動物好きらしい子規ですが、選ぶ動物の取り合わせのセンスに触れます。 |
⑥見付の取除け跡 | 江戸城(=現皇居)の牛込見附(うしごめみつけ)の御門が取り壊され、そこに残った土台の石のこと。恐らく取り壊される前の状態を子規は見ており、新聞か何かでこの情報を仕入れて気になったものと予想します。 |
⑦丸の内の楠公の像 | 楠公は、楠木正成(くすのきまさしげ)の愛称で、その像のこと。一瞬何かと思わせますが、出身である愛媛県にある別子銅山(べっしどうざん)の会社・住友が200周年事業として、銅山の銅を用いた楠公の像を宮内庁に差し上げたそうで、それを提案したのが初代住友総理人・広瀬宰平(ひろせさいへい)。東京美術学校が制作に関わり、高村光太郎の父・高村光雲(たかむらこううん)がチームを率いたという話を展開します。 |
⑧自働電話及び紅色郵便箱 | 江戸時代は飛脚が郵便を運んでいた時代。文化の変化に好奇心を持つにはいられないことを予想します。家藤さんの卒論の主題となった内藤鳴雪(ないとうめいせつ)は、子規の学校の寮の舎監で、学生の当時から子規の弟子になる人物。舎監の先生が刀を腰に差す写真が残っているそうです。 |
⑨ビヤホール | 屋外で酒を飲むことですが、子規は酒が強くなかったそうです。よほどハイカラなのではないかと予想します。 |
⑩女剣舞及び洋式演劇 | 落語が好きだった好奇心からきているのでしょうか。「洋式演劇」はオペラを含む西洋風劇だと予想します。 |
⑪蝦茶袴の運動会 | 「蝦茶袴(えびちゃばかま)」とは当時の女学校で着ていた蝦茶色の袴。その恰好で運動会をすることが斬新だったのかもしれません。女学校の運動会の見学は、今で言うとストーカーのような行為だと家藤さんは述べます。 |
これらをリスト化し、
病床で想像している子規が愛おしいと述べる先生。この時代にインターネットがあれば、子規の病状はどんなに救われただろうかとも思うが、妄想だから楽しめたのかもしれないと続けます。家藤さんは、病が蔓延するも外に出にくい点で、コロナ禍の現代に通ずるものがあるとも述べます。先生は「蝦茶袴の運動会」を是非想像して欲しいと述べました。
[151]【文法と解釈】「サタン離れぬ」の解釈について考えましょう<2021/10/7公開>背景のボードに貼ってある一句について解釈を考える回です。
杉田久女(すぎたひさじょ)の「
われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」。理解していたつもりだったと語る先生ですが、家藤さんらと話す機会を得た際に改めて考えたそう。家藤さんは次の2通りの読みを提示します。
①私についていたサタンが離れました | 肯定 |
②私についていたサタンが離れません | 否定 |
中七の「ぬ」の解釈によって分かれると述べ、視聴者に問いかけます。
「ぬ」は厄介な助動詞だと述べる先生は、解釈がすぐに分かる句もあれば、迷う句もあると語ります。今回のこの句の文法と解釈を考えます。
パターンA | 文語の完了「ぬ」の終止形「ぬ」 | 「…サタンが離れ(まし)た/曼珠沙華」 |
パターンB | 文語の打消「ず」の連体形「ぬ」 | 「…サタンが離れない曼珠沙華です」(名詞に続く形) |
パターンC | 口語の打消「ぬ」の終止形「ぬ」 | 「…サタンが離れません/曼珠沙華」 |
パターンB' | 口語の打消「ぬ」の連体形「ぬ」 | <パターンBと同じ意味> |
パターンAは
完了「ぬ」なので「
サタンが離れました」という最初の肯定の意味になります。
パターンBは
打消「ず」の連体形。
連体形は後ろに名詞などの体言が続くため、この場合切れがなく季語へと続きます。「
私についていたサタンが離れない曼珠沙華」という重層的な意味に。俳句では詩を作る際によく使う手法だと先生は解説します。
パターンCは口語の
打消「ぬ」。口語の打消しは他に「ない」があり、「行かぬ」「書かない」などで表現されます。この場合、口語で「
サタンが離れない」と言い切る形になります。ところが、この句の場合は
「われにつきゐし」(「し」が過去の助動詞「き」の連体形)が文語表現のため、文語・口語が同居する解釈となります。先生は弱点はありながらも、
俳句で文語と口語が混在することは許容範囲だと補足します。ただし、歴史的仮名遣いと現代仮名遣いが混在することはタブーだとも述べます。
さらに、パターンB'(ダッシュ)として、口語表現の
打消し「ぬ」の連体形も紹介。パターンBと意味は同じですが、パターンCと同様に口語・文語が混ざる形になります。
解釈はA~Cの3つありますが、まずは
肯定(A)か
否定(BC)かが重要だということに。どのように考えるか
コメント欄に書き込んで欲しいとのことです。
[152]【紅白俳句合戦】第一回紅白俳句合戦の結果発表をします<2021/10/10公開>動画[144]の
紅白俳句合戦の結果発表。9月25日時点で
292件の回答が寄せられたそうです。コメント数の伸びの凄まじさに「
炎上」してるほど俳句に語り合ってくれるのが嬉しいと印象を述べる先生。木曜日が俳句ネタ・日曜日が雑談ネタの動画ですが、日曜日しか動画を見ていないが書き込みたいという方もいたそうです。林檎とバナナの果物そのものの好き嫌い論を語るコメントを八百屋談義だと比喩して述べる先生です。
●紅組1句目 | あやまつて林檎落としぬ海の上 |
○白組1句目 | 川を見るバナナの皮は手より落ち |
赤の方が票の滑り出しが良かったと第一印象を述べる家藤さん。
良い点を述べた後、林檎が水に浮くことを確認したい先生は、「
バナナの皮も浮きました」という調査結果コメントに「林檎も試してほしかった」と俳人らしいの好奇心をのぞかせます。
また、作者談議について
。赤の句の
作者は正岡子規(まさおかしき)です。大食漢の子規を「音を立てて物を食う」と夏目漱石(なつめそうせき)が書き残していますが、
【クラウド坂の上】氏から重要な補足が。「句が読まれたのは明治29年。前年、子規は陸羯南(くがかつなん)にお願いし、日清戦争に従軍記者として大連に派遣され、帰国する船の途中で大喀血(かっけつ)をしている。ひょっとすると、この句は林檎ではなく、
吐血した子規の血のイメージではないか。吐血後、従軍志願を本人は随分後悔していたそうで、
『あやまつて』にその後悔があるかもしれない」という鋭い分析に先生は仰天しますが、子規の人生・背景からそのように深読みできる要素があることに納得します。
●あやまつて林檎落としぬ海の上(子規)林檎と海の色彩の対比が綺麗・鮮やか。 落とした林檎を食べたかった悔いや執着が印象に残る。 「あやまつて」の出だしにより状況がよく分かる。 |
「あやまつて」が説明的。プレバト!!の夏井先生なら赤ペンを入れる。 |
「あやまつて」が"誤つて"(失態として)と"謝つて"(海難事故の灯篭流しのイメージで)のどちらともとれる。 日清戦争から帰途に就く船で喀血をした作者の史実から、吐血の赤を「林檎」に比喩し、「あやまつて」に自身の心情を重ねた。
|
続いて、
白の句。作者は高浜虚子(たかはまきょし)です。先生はこちらは作者がすぐに視聴者に分かったのでは推測しますが、家藤さんは渋々否定します。歳時記の「バナナ」を調べて作者を知ったというコメントもあり、先生は虚子自身が作成した新しい歳時記からはこの句をそぎ落としたエピソードを語ります。
先生は、この句は名句ながら問題句だとも述べます。
「痴呆俳句」だと語る俳人もいれば、禅の境地・無の境地で良いと反論する人もいて賛否両論に分かれるそうです。
白の句は
途中から好意的なコメントが伸びたそう。倒置法なのかと聞かれた先生は、「川を見る」に作者の意識が集中し、気が付いたらバナナの皮が落ちているのに気付いた感じだと印象を述べます。
【ヒマラヤで平謝り】氏は「手に持っている物を落とすほど驚く何かを川で見つけたというドラマ。カッパくらいではなく、時間の経った土左衛門だ」とユーモラスな分析。
【アロイジオ】氏は「白に一票。赤は下五の巧みさや句の整っている良さはあるが、白を推す理由は、
句があまりにも空虚だから。川を見つめているどうしようもない空虚さを落下するバナナの皮が季語として受け止めていて季語が動かない。他の句にない独特の世界を築いている」と的を射た考察をしています。このコメントが投じられて以降、白派が増えた印象を述べる先生です。
○川を見るバナナの皮は手より落ち(虚子)「バナナの皮」がどこに落ちたのか読者の想像に委ねているのが面白い。 赤の句の大きな映像より焦点が定まっていて好き。 倒置法が効いている。本来は「バナナの皮は手より落ち川を見る」。 禅の境地のような空虚さがあり、季語が動かない。 |
「川」「皮」がダジャレ・オヤジギャグではないか。「プレバト!!」なら才能ナシ。 何を思い描いて詠んだのか全く分からない。激しく拒絶した。 なぜバナナか。他の物(→蜜柑など)でも良い。 「皮」をそこら辺に捨てるのは道徳的に良くない。 |
偶発的動作ではなく、何かとんでもない物(→呉の潜水艦など)が川に流れてて、それを見た衝撃で落としたのではないか。 |
最終結果は、
白115票、赤145票で、
赤の子規の勝利。先生の妹のローゼン千津氏も白が虚子の句だとすぐに分かってコメントを書き込んだそうです。家藤さんも第一印象は赤が良かったそうですが、読んでいるうちに白に移っていったとのこと。白の句は執着がなく、起きている事実をそのままに受け止めている写生の境地の一つではないかと述べます。先生は、深読みの乗せ方によって、オヤジギャグから違うものに変わる過程を楽しめるとも述べます。赤の句も白の句と同じような発見があり、それぞれの持ち味が明確に出ているため、良い対決になると思って今回の企画に至ったそうです。
第二回もネタがあるそうで続編が公開されるとのことです。
[153]【尻二字三角パス】ゲスト登場!夏井いつきの妹と尻二字三角パス!<2021/10/14公開>約20分以上にも及ぶ今回の動画は[81]以来の第二回「
尻2字3角パス」。
俳句のお尻の2文字を取り、しりとりの要領で、次の人が頭につけて俳句を詠むというルール。前回の動画が思ったほど再生数が伸びなかったものの、
やっている側はとても楽しいと述べる家藤さん。準備がいらないメリットを補足する先生です。
今回はゲストに
ローゼン千津氏が登場。夏井先生の実の妹で、声のみでの参加です。前回の動画は視聴済みなものの、ゲーム自体は人生初だと語るローゼンさんは、視聴者としては積極的に参加するが、実際にやる立場では少し自信がないと謙遜気味に述べます。
夏井先生、家藤さん、ローゼンさんの3名で、三角パスをしていく形で行います。前回同様に『子規365日』からローゼンさんが指定したページに載っている一句からスタートです。ローゼンさんは自身の結婚記念日からページを指定しました。
一句読むごとに作者が手書きした紙をお二方の後ろのボードに貼り続けていきます。
[1]自分の番でなくても積極的なローゼンさんの句が紹介されます。
最初の句は「じく」で終わっていますが、音が「じく」から始まれば表記は何でもOKなルールです。家藤さんの作句中、お酒の席なら盛り上がるという話になり、家藤さんの酒癖まで紹介されます。
最後の2文字でとにかく難しい2字を後続の人に渡せるかが醍醐味だと先生は述べます。
[2]猫の爪の句を詠んだ家藤さんから話題が転換。給食が集団食中毒を起こした小学校で、お腹を壊さなかった3名の児童の共通項が爪を噛む癖があるという調査を紹介。雑菌が関係していると分析します。
[4]意地悪な先生は最後を「青は」とし「おわ(owa)」の韻で家藤さんに渡します。表記は「おは」のため、「オハイオ州」は良いのかと質問する家藤さんですが、ローゼンルールにより許可がおります。
[5]速攻で作った家藤さんの句に季語「トウモロコシ」がアメリカ中にあることを語るローゼンさんですが、雑学に集中してしまい、自分の番であることを忘れてしまう失態に。先生は、植物で揃えた所が腰砕けで下五を勝負すべきだと句にダメ出しします。
[6]まさに組長(=夏井先生)の性格を詠った句のようです。
[7]渡された「しゃげ」を最後「しょげ」として「
悄気ている和尚自然薯を下げて」と詠んでいた先生。時間稼ぎができたとコーヒーを飲む先生ですが、
「ろも」は漢字と平仮名に分けると案外候補があるとローゼンさんがヒントを出します。
[8]
相手を困らせたいという邪念を捨てれば、即吟する作品の純度が上がると自論を述べる先生。意地悪な先生は、悪意なく作句するという息子さんを「好感度高めようとしてる」といじります。また、コロナ禍で句会が減り、俳句を作る量が減ったことも明かす家藤さんに、毎回この動画でやることを提案する先生。参加意欲の強いローゼンさんも「どこでもドア~と思ったもん」と視聴者寄りの意見で賛同します。
[9]女性用フォーマルハンドバッグの一種である「ケリーバッグ」について質問する先生。ローゼンさんは「紅葉かな」で下五を迷ったそうですが、家藤さんは
候補が沢山ある中で迷わせることと、これしか浮かばないと限定させることによる作句難度の違いに言及。「みじ」は生物以外に、人名を思いついた家藤さんは、絵本の「マップス」作者がアレクサンドラ・ミジェリンスカと明かし、本の面白さを語ります。
[10]「りに」を渡された家藤さんは、真っ先に「リニアモーターカー」を思い浮かべますが、家藤さんの好きな範疇でないなど言われ放題で使わないことに。ローゼンさんは、
人が作っている時間を過ごしている時間が楽しいと嬉しそうに述べます。松本人志が司会をする某番組名にならい「酒のツマミになる俳句」シリーズで展開すべきだとローゼンさんが提案します。
[11]ここで先生は、最後の締めをする
ローゼンさんの句の尻2字から視聴者が作った俳句をコメント欄に書き込んで貰うことを提案します。[10]で仮に「リニアモーターカー」を用いていた場合、「
リニアモーターカーバナナを投げつける」を候補としていた家藤さん。良い子の皆さんは絶対に真似しないで欲しいと警告を述べます。
最後に感想を聞かれたローゼンさんは「ドキドキが楽しい」と述べます。2人でもゲームは可能ですが、待っている一人が寂しいため、会話もできる3人でやるのが丁度よいと語る先生。逆に大人数になり過ぎると自分の番まで多く待つことになり、「早く作りたい」とせっかちな先生は苛立ってしまうことに。
そして、ローゼンさんが詠まれた句の最後の
「いえ」から始まる次の句をコメント欄に募集します。また、
選ばれた最優秀作品を次回(第3回)の最初の一句に採用すると先生が語り、「あなたの意地悪お待ちしています」と家藤さんが語って締めました。
以下、詠まれた句を記載します。
例 | 青梅をかきはじめたり果物帖 | ちょう | 子規 |
1 | 張といふ男とすする夜の無花果(いちじく) ※「張」は中国人の苗字。 | じく | いつき |
| 蝶々や過去帳開く和尚さん | | ローゼン |
2 | ぢくぢくと残暑を抉る猫の爪 ※抉(えぐ)る。 | つめ | 正人 |
3 | 爪痕のありて桜の紅葉かな | かな | ローゼン |
4 | かなしみの青なり露草の青は | おは | いつき |
5 | オハイオのトウモロコシとかナッツとか | とか | 正人 |
6 | とか言って又酒を呑む曼珠沙華 | しゃげ | ローゼン |
7 | しゃげるとは尻に敷いたる花衣 | ろも | いつき |
8 | 炉も雪も仕舞いの音になりにけり | けり | 正人 |
9 | ケリーバッグに一枚櫨紅葉 ※櫨(はぜ)。 | みじ | ローゼン |
10 | みじんこの水夏空のちりぢりに | りに | いつき |
11 | 理に適ふからががんぼはこはれます | ます | 正人 |
12 | 鱒鮨の割箸小さし母の家 ※鮨(すし)。
| いえ | ローゼン |
※冒頭に「本麒麟で一句」の投句案内。#本麒麟で一句 うまい俳句キャンペーンを実施中。キリンビール・本麒麟を飲んで投句すれば、豪華景品が当たります。締切は10月24日。11月3日18時からRCCラジオ公式YouTubeで夏井先生が結果を発表します。詳しくはRCCラジオホームページをご覧ください。
[L3]チャンネル登録者7万人到達記念句会ライブ<2021/10/17公開>前回の5万人突破句会ライブから約11か月ぶりとなる句会ライブ。
YouTubeを通して
登録者数7万人突破句会ライブが10月17日(日)午後2時から約1時間半にわたって放送されました。
チャット形式で即時に参加者が投稿でき、投句は夏井いつき先生のブログの専用フォームから送信する形式でした。
今回はお二方が特製Tシャツを着て放送に臨みました。
また、同時視聴者数は
1100人にも達し、投句も
2500句以上と盛況だったようです。
今回の投句テーマ(席題)は「
十(漢字のじゅう)」でした。
俳句の作り方 |
※句に「十」という漢字が入っていればOK ※投句終了は午後3時まで(開始から約1時間) ※動画チャット・コメント欄には投句NG(動画概要→ブログフォーム) |
投句作品で先生の目についた作品は、はがきサイズのポストカードに毛筆風に模写され、二人の前にあるホワイトボードに貼りだされていきました。また、優秀作ほど上の方に上がっていく方式がとられました。
さらに、投句締切後に「
ガチャポン俳句」というランダムに俳句を紹介する企画を敢行。先生が引いた番号くじに割り当てられた番号の俳句を正人さんが紹介し、夏井先生が3段階でベルを鳴らして評価しました。
各賞景品として、トップで賞が伊月庵通信の俳句手帖セット、ギャラリー賞には日めくりカレンダー、正人賞には筆ぐるめ(PCソフト)、いつき賞には四季の日本風景カレンダー、グランプリには特製Tシャツ(白)が贈呈されました。
また、ホワイトボードに掲示された直筆ポストカードを希望される方は夏井&カンパニーまでご連絡するとプレゼントされます(要返信用封筒)。
以下、番組で取り上げられた作品のうち受賞作品を掲載します。
◆優秀作品※俳号は敬称略
グランプリ | 十戒や光を食らふ柘榴の実 | 樫の木 |
いつき賞 | 十代は今日まで秋刀魚の骨きれい | DAZZA |
正人賞 | 死の渡るコスモス十万本の揺れ | ぐ |
ギャラリー賞 | 十二支に推薦したき子猫かな | 吉田秀 |
トップで賞 | 十五夜とは楽茶碗なる静謐か | 山城道霞 |
採用された皆さま、おめでとうございました~。
[154]【裏話】実の妹、ローゼン千津さんと共著の裏話をします<2021/10/17公開>
今回は家藤さんが声のみの出演。夏井先生の右手に座るのは動画初登場・ローゼン千津さん。夏井先生の実の妹です。この日のために山梨県・山中湖村から帰ってくださったと誇張する先生です。
夏井いつき・ローゼン千津の共著となった2冊について裏話を語ります。
①『寝る前に読む一句、二句。クスリと笑える、17音の物語』
②『食卓で読む一句、二句。お腹がぐぅ~と鳴る、17音の物語』
どちらもお二人が対談をする形で収められています。
動画[119]でも以前先生が紹介していますが、元々は"啓発本"のオファーが執筆のきっかけになったと家藤さんが紹介。最初「人様の啓発はできない」と提案を断る先生でしたが、簡単な"軽薄(ケーハク)本"なら書けるとのことで承諾したとローゼンさんが助け舟を出します。
自称「軽薄」でありながら、俳句について自身が語ることで、読み手が勝手に何か啓発されるかもしれないと思った先生。一人で語るのではなく、良い相手を探します。俳句についてある程度心得があり、言いたい放題語れ、人生経験があり年齢が近い人物とのことで、妹さんが手っ取り早かったそう。先生は「安く使える」とユーモラスに述べます。
出版社からではなく、姉から直接依頼を受けたというローゼンさんは、「さらにミーハーな私が出て、寝る前にちょっと読める」という本の趣旨だったと述べます。
お気に入りのエピソードは何かと二人に問う家藤さん。先生は、ローゼン夫妻の棺桶リストの話を聞いたことを語ります。夫婦が棺桶に入るまでにやっておきたいことを、ローゼンさんと夫のニックさんはリストにしており、人生の考え方に感銘を受けたそうです。そして、実際のリストに途轍もないことが書かれているとのこと。ローゼンさん曰く、スキー好きのニックさんの棺桶リストに載っているのは山の名前ばかりで、○○山でスキー、富士山で登山など。チリの山では、ヘリコプター移動で天辺まで強風で行けず、中腹で降りたもののそこから滑ってコケて熱を出してしまったそうです。先生は「そのまんま棺桶やんな」と揶揄しますが、危なくそうなりかけたとのこと。
ローゼンさんがアメリカ・ニューヨークに元々住んでいたこともあり、日本住まいの人とは異なる観点の話が出てくるのが面白いと述べる家藤さんですが、如月真菜の「北窓開くお前とは別れたい」の俳句を題材とした対談の離婚のエピソードが好きだと見解を述べます。出版以降、伊月庵の庵守の方に「赤裸々な」と枕詞を付けられたことを笑いながら話すローゼンさん。対岸に向かって「マザ●ァッカー」と叫んだとまで家藤さんが述べます。
先生は、対談相手がローゼンさんで凄く良かったと出版社の方が語っていた事実に触れます。ローゼンさんが話題の宝庫である点に加え、普通言わないことを明るくしゃべる"マダム赤裸々"だと快活に述べます。
また、本の表紙デザインも可愛いさにも言及。イラストレーターの山口さんのセンスが良かったと述べます。夫がチェリストだと語るローゼンさんは、おもむろに本の中のチェロの絵を見せます。そこに掲載される高浜虚子の「風生と死の話して涼しさよ」は直接的にチェロと接点はありませんが、俳人としての取り合わせの感覚としては分かるのだと家藤さんが言及し、お二方も頷きます。イラストレーターの中で、話題と全くベタな絵を掲載する方に違和感があったと述べる先生ですが、山口氏のセンスには気に入ったそうです。第1作目が完成した段階で、編集スタッフから次回作を作るという話にすぐなったそうです。
2作目の表紙は異なるタッチの表紙のイラスト。中央のスープの池に動物たちが取り囲むイラストで、細かいところまで見ても飽きない印象に仕上がっています。先生は、ローゼンさんが語る食べ物の名前が横文字で脳に入ってこないことに言及します。ローゼンさんは、スイーツベスト3というものを語ります。ベニスで食べたカンノーリ(※春巻の中にリコッタチーズを巻き込んだもので、映画『ゴッドファーザー』にも登場する。寒海苔ではない)、トルコのイスタンブールで食べたバクラヴァ(※ハチミツをたっぷりかけたお菓子で、ピスタチオの粉で作ってある)など。和風の先生と洋風のローゼンさんという形で、お互いの理解にも差がありますが、対談が成立したのは俳句のお陰だと述べます。お互いに好きな句が似通っていたのが大きいそうです。先生はスイーツ系に興味がないため、その章についてはローゼンさんの独壇場だったと述べます。
しかし、食生活から何から異なるお二方ですが、もとは同じ愛媛県・内海村で生まれ、こんな本を作るとは想像しなかったのではないかと家藤さんが述べます。
田舎の「おなぐさみ」の話にも言及。先生とローゼンさんは2歳しか違いませんが、ローゼンさんが対談で初めて知った言葉だと知って仰天していた先生。ピクニック・野遊びを指す単語で子規も「おなぐさみ」を用いていたそうです。先生は、幼少時におなぐさみに散々行っていたのに単語を知らなかった妹さんに驚き、2歳の差が大きいと述べます。
ここで、「プレバト!!」の話題に。K-1の格闘家・武尊(たける)さんが俳句を勉強したと語っていた際に、ワイプで紹介された本にこの対談本が表示されたことにローゼンさんが触れます。お二方は仰天し、「これは勉強にならん!」「お慰めの本ですから」と笑って語り、もっと良い勉強本について本人に言ってあげたいとまでローゼンさんが述べます。
最後に書店で手に取ってほしいと先生が述べ、感謝の言葉をローゼンさんが語って動画を締めました。
[155]【10月の子規】漱石は小説に書き、子規は句を作った遊郭とは...<2021/10/21公開>
10月の正岡子規シリーズ。今回は一句勝負。
「色里や十歩はなれて秋の風」。有名な句であり「色里(いろざと)」の句を子規が作っていた事実に驚く読み手も多いそう。この句は愛媛県松山市の宝厳寺(ほうごんじ)で作られたそうで、先生のいる伊月庵から三軒目と大変近い距離にあるとのこと。
明治28年10月6日、愚陀仏庵(ぐだぶつあん)に居候していた子規が漱石と一緒に吟行に出かけた際の話。「愚陀仏庵」とは夏目漱石が英語の先生として松山中学に赴任していた際に借りていた下宿で、そこに子規が帰省してきて転がり込んだそう。2人で吟行に出かけ、宝厳寺へ上る坂の両側が元々、妓楼(ぎろう)で色里・遊郭になっていました。伊月庵の立つ「上人(しょうにん)坂」という坂はかつて両サイドに遊郭がビッシリ並んでいたそうです。夏目漱石の小説『坊つちやん』の中に、「北へ登って町のはずれへ出ると左に大きな門(※現在は宝厳寺の入口を示す石碑がある)があって、門の突き当りがお寺で左右が妓楼である。山門のなかに遊郭があるなんて前代未聞の現象だ」と記されています。若き漱石も仰天した事実ですが、漱石は『坊つちやん』という小説に書き、子規はこの句に示したという経緯があると述べます。
先生の認識では、遊郭がほとんど取り壊されていた頃で、現在宝厳寺の駐車場となっている地にかつて「朝日楼」という遊郭が建物として残っていたと述べます。建築の専門家も調査したようで、当時この建物を保存するかで揉めたこともあったといいます。先生も調査の協力者として朝日楼の内部を見学した貴重な体験を語ります。コの字型の建物内部の中庭のような場所に大きな桜があったのですが、その桜が今いる伊月庵の外の駐車場の物だと窓を指さす先生に対し、新事実を知った家藤さんは驚愕します。
最も上にある朝日楼が上等な遊郭で、坂の下ほど下がるという位置付けがあったそう。さらに、両サイドの家は、間口に比べて奥行きがずっと長く、ウナギの寝床のような敷地の取り方がまさに遊郭の敷地の名残だと述べます。反対側の裏道に必ずある小道は、元は遊郭でお客さんを逃がすための抜け道だったそうで、イタリアのアルベロベッロの白い小道みたいだと率直に感想を述べる家藤さんは、間男を逃がすための裏口として利用された点を「世界ふしぎ発見!」で観たと語ります。借金取りなどが取り立てに来た際に裏口から客を逃がす手立てに使ったとも先生は続けます。
そんな歴史のある時期に作句した子規。令和という時代に生きている我々と重ねます。松山でも伊月庵のような気軽に少人数で句座を囲める場所を作りたいという思いを持っていたと述べる先生。「やっぱり上人坂がいいよね」と夫の兼光さんと二人でずっと語り合っていたそうです。家藤さんは「そう言われると有難みが増し候(そうろう)」と謙虚な姿勢になります。
宝厳寺に入り、修理の終わった山門をくぐった所に子規のこの句碑があるとのこと。松山に来られた際には、句碑を目当てに帰りにちょっと伊月庵を覗いて欲しいと述べます。「看板が掛かっている伊月庵にも是非お立ち寄りください」と畏まる家藤さん。どなたでも予約すれば10名程度の句会に利用できる貸しスペースがあると先生が述べます。ぜひご利用くださいとも語りました。
[156]【紅白俳句合戦】皆さんに審査員のジレンマを味わって欲しい<2021/10/24公開>動画[144][152]以来の
第2回紅白俳句合戦。例のホワイトボードを挟んで座るお二方ですが、前回も登場した挿絵は家藤さんの奥さんが模写したという情報を伝えます。家藤さんは絵が上手ではおらず、何かを描くと全て濁って国防色になるという面白い喩えをして述べる先生に対し、ブーバーガーならしっかり描けると対抗する家藤さん。
前回が好評だったと報告する先生ですが、今回は作者を明かして俳句を紹介すると家藤さんが告げます。
今回は
鶏(ニワトリ)対決です。
●紅組2句目 | 鶏のゆかへ上りぬ秋のくれ | 正岡子規 |
○白組2句目 | 土間に人畳の上に羽抜鶏 | 岸本尚毅 |
赤は、
鶏が床へ上がった事実と季語「秋のくれ」を取り合わせたシンプルな一句。
白は、
民家にある土足で入る通路「土間」に人が立ち、畳の上に毛が抜け変わる夏の季語「羽抜鶏(はねけどり)」がいるという一句。
同じ「鶏」をモチーフとしながら、
季語は赤が「秋のくれ」、
白が「羽抜鶏」である点に注意が必要です。
明治の子規と、
昭和・平成・令和を生きる現代俳人の岸本尚毅氏と時代も異なります。
実は先生の著書『子規365日』の中で、2句とも同じ項目に取り上げている事実を明かします。仮に俳句甲子園の審査員の立場なら、僅差で岸本氏に旗を挙げると著書で述べている先生。
さらに、先生は岸本氏の句について、
「土間に人」「畳の上に羽抜鶏」の情報量が多く、実体が鮮やかに描写されている点が良かったと褒めます。
64歳になった先生は、改めて見直すと子規の句も良いと認識が塗り替わった点に触れます。
「秋のくれ」の季語が活かされていると述べます。
鶏が床や土間という本来いない場所に居り、人物が客観的に傍観する点で状況が似ていますが、味わいやアプローチが異なる2句。
2句とも両句であっても、どちらかに判定をしないといけない
審査さながらのジレンマを視聴者に味わってほしいと述べる家藤さんに続き、先生も頷いて語ります。夏の俳句甲子園とは別に毎年1月の「あしらの俳句甲子園」では、審査員が悩んだあげく、どちらに挙げるかを考える上乗せの楽しさがあるといいます。逆にどちらもつまらなく、「判定」の一声で旗を投げ出したくなる場合もあるそう。今回の2句は楽しい迷いだと続ける先生は「
是非悩んで欲しい」と述べました。
【紅白俳句合戦 投票方法】※支持する句・組を
理由と共に動画のコメント欄に書き込んで欲しいとのことです。後日動画で結果発表を行います。
[157]【音便シリーズ】ウ音便を使って簡単に俳句の雰囲気を変えてみませんか?<2021/10/28公開>動画[143]以来の
音便シリーズ・第2回。今回は「
ウ音便」。
音便は
動詞・形容詞・形容動詞(=用言)の音が他の言葉と合わさると変化する音のこと。特に動詞での変化が多いため、その点に絞って今回も解説します。
阿波野青畝(あわのせいほ)の「
藤の花這うていみじき樹齢かな」。この句の音便は「這(は)
うて」の「う」。元の動詞は、文語の歴史的仮名遣いで「
這ふ」になります。前回同様、活用形を後ろのホワイトボードに書き込みながら確認します。
未然形は「這
はず」「這
はない」で、活用は「
は」。
連用形は「這
ひたり」「這
ひて」で、活用は「
ひ」。
終止形は「這
ふ」と言い切る形で、活用は「
ふ」。
連体形は「這
ふこと」「這
ふとき」で、活用は「
ふ」。
已然形は「這
へども」「這
へば」で、活用は「
へ」。
命令形は「這
へ!」となり、活用は「
へ」。
活用をしない語幹は「這ふ」の「
は」の部分で、「
は・ひ・ふ・ふ・へ・へ」の
四段活用となります。
ウ音便は
ハ行の動詞で変化することを解説します。
この句の本来の活用は連用形の「這
ひて」ですが、ウ音便により「這
うて」と変化しています。これは間違いではなく、作者の青畝が自分でウ音便を選んだことを先生は注意します。
「這ひて」でも意味は通じる句ですが、
なぜ音便を発生させるのでしょうか。家藤さんは、
ニュアンスや相手に伝える雰囲気が少し変化するのではないかと見解を述べます。先生は、「這ひて」なら「ハイテ」と発音しますが、「這うて」の場合、「ハウテ」「
ホウテ」とさらに音が変化することを述べます。家藤さんは、音便の方が音が柔らかい感じがすると述べ、先生も同意しながら優美な感じを出す場合もあると補足し、「
柔らかく時に優雅」と効果をまとめます。
ウ音便を使うべきか否かは自分で判断することになりますが、そのポイントとして、
句の内容に「柔らかさ」「優雅さ」を出すためにウ音便を選ぶべきかを考える(句の内容に見合う効果の是非)ことになると、先生は解説します。家藤さんは、仮にこの句の動詞が「這
ひて」であれば、
音が鋭い印象がすると述べます。
先生は、俳句は韻文であり、
内容と音・響き・調べと全てひっくるめての作品だと述べます。
シリーズは第3回に続くと家藤さんが予告しました。
基本 の形 | 語 幹 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 仮定 | 命令 |
ず (ない) | たり (て) | 。 | こと とき | ども (ば) | ! |
這ふ | は | は | ひ | ふ | ふ | へ | へ |
[158]【人生相談】勉強する意味も理由も見つからない...そんなあなたに一句<2021/10/31公開>
動画[142]以来の人生相談。「勉強する意味も理由も見つかりません」という質問ですが、小学校高学年以降に子どもが必ず一度は思うことだと先生は述べます。そう思う動機として、勉強するのが嫌だからというのもあれば、英語や数学が将来何の役に立つか真剣に見つめるという真面目なものもあると語る先生は、人生を長く広く見つめてほしいと提案し、一句を紹介します。
藤平寂信(ふじひらじゃくしん)の「あいつより長生きしたし鵙の贄(もずのにえ)」。作者は1922年生、天台宗の僧侶で元毎日新聞社副社長。黒田杏子主宰「藍生(あおい)」会員で、先生の兄弟子だと紹介します。大会や吟行などでもお会いし、心の大きな頼りになるおじちゃんのイメージで、黒田氏や先生同様「ガハガハ」笑うタイプの師系だと語る先生。
「鵙(もず)」は雀に大きさも格好も似た鳥。先生も最初は雀と鵙の見分けがつかず、眼の鋭い雀がいると思っていたら鵙だと分かった体験を話します。鋭い鳴き声かつ獰猛な鳥である鵙ですが、「贄(にえ)」は自分が狩りで獲ってきた小さな蛙などを尖った枝にプシっと刺した状態の物で、その生贄が「鵙の贄」という季語になったと先生は解説します。鵙は後で食べるために贄を刺していますが、脳みそが小さいせいか獲物のことをすぐに忘れてしまうそう。「馬鹿なのかもしれない」と笑いながら本音が出る先生ですが、家藤さんは俳句の紙を持ちながら全く動じません。
「あいつより長生きしたい」という台詞と共に、傍らに「鵙の贄」が突き刺したまま干からびている光景の句意ですが、ここで先生は質問者に問いかけます。若いうちは勉強などの意味も分かりませんが、人生を長く生きているうちに勉強とはこういうことか、面白いなどと、はたと行き当たることがあると述べます。先生の周囲の方で、高齢になってから俳句を始めた方にも同じようなことを語る方が多いようです。学ぶ楽しみに意義を見出せなかった人も、長生きして俳句と出会ってみたら、鵙の贄がなぜこんなところに刺しているのか、鵙を調べたり観察したりするだけでも楽しいと言って下さる人もいるそう。長生きすればするほど、学ぶ楽しみや意義に気付く可能性が上がるため、なんでもいいから長生きしてほしいこと、長生きするためにどうすべきか調べること、それを取っ掛かりとして人生が動き出すかもしれないと力強く述べました。
[159]【11月の子規】色彩をうまく使った子規の句を紹介します!<2021/11/4公開>
11月の正岡子規。夏井いつき著『子規365日』に掲載される俳句を紹介します。
シリーズとして既にやりつくした感があると述べる先生は、子規の句には季重なりが多い点に言及し、江戸・明治の頃には歳時記の分類も現在ほど明確ではなかったことも理由にあると前置きします。
今回は色彩が特徴的なものを紹介します。
①「鶏頭の黒きにそそぐ時雨かな」。季語は植物の「鶏頭(けいとう)」と天文の「時雨(しぐれ)」。季重なりながら映像な明確であるこの句の句意を問われた家藤さんは、"鶏頭の花がどっしりと一本立ち、そこに時雨がそっと降り注いでいる"と述べます。赤の花のイメージが強い「鶏頭」に対し、「黒」と書かれている点に注目。先生は、雨の濡れた感じの色彩の変化、枯れかかっている状態、太陽光線の関係での黒さなど複数の読みが考えられると解釈します。「時雨」も相まって、"はつらつとした感じではない"と印象を述べる家藤さんに先生も同調し、"濡れそぼっている感じ"でマイナスなイメージだと続けます。
同様に「時雨」と植物を取り合わせた句を紹介します。
②「しぐるるやいつまで赤き烏瓜」。植物の「烏瓜(からすうり)」と「時雨」の季重なりの上、①の句「黒」に対し、この句は「赤」と色が異なる形です。時期が遅くなるほど朱色の果実が熟れていく「烏瓜」ですが、なぜ「赤」と色を入れたのでしょうか。家藤さんは「いつまで赤き」で滅ぶ直前を指しながら、いつ枯れ落ちるのかという予感を指す色彩の言葉だと述べます。先生は、「烏瓜」に「赤」と書けば凡の句になりやすいものの、「いつまで赤き」が描写の言葉になると褒め、子規の写生する姿勢から生まれた句だと述べます。
①の「かな」の詠嘆に対し、②は上五「や」の詠嘆です。①②とも植物を取り合わせ、色の単語が使われている点も共通しています。しかし、①は「鶏頭」は黒くないのに敢えて「黒」と書かれ、②は「烏瓜」が赤いのは当たり前だが「赤」と書かれている点に着目する先生。さらに、正負のイメージを問われた家藤さんは、どちらかといえば負だと回答します。はつらつさではなく、"中七以降で終わりのことを思わせる描写になっている"と理由を述べ、"いつまで赤を保ち続けられるのだろうか"という目線になっていると先生も続けます。①②とも明確に映像化され、「時雨」という季語も相まって負のイメージを持つ2句だとまとめますが、さらに色彩を用いた句を続けて紹介します。
③「黒キマデニ紫深キ葡萄カナ」。季語は「葡萄(ぶどう)」ですが、前半は「黒」「紫」を用いて色彩のみを述べています。正負のイメージについて、"葡萄が熟して美味しさの極みにある印象"だと述べ、実りの豊かさという正のイメージが強いと先生も解説します。①と同様に「黒き」が用いられますが、作者の描く目的により、黒の性質が愕然と変わってくると述べます。
④「冬ざれの厨に赤き蕪かな」。冬の荒れた冷たい光景を指す「冬ざれ」と植物のカブを指す「蕪(かぶら)」とでの季重なり。「冬ざれの厨(くりや)」は今どきのキッチンではなく、土間や流しがある古い家屋の台所(※家藤さんが「となりのトトロ」を例に喩えました)において、冷たい風が吹き抜け、日差しが入らないような情景。「蕪」は白と赤の色がありますが、「蕪の赤き」ではなく「赤き蕪の」としたことで蕪の瑞々しさが上手く表現されていると先生は解説します。②と同様に「赤き」とありますが、色彩の変化がそこまで意図されず、③と同様に「成熟」した感じがあり、食べ物だからこそそのように感じると述べる家藤さん。美しく大きく実った赤カブがそこにあるという印象だと先生も述べます。②の持つ負のイメージに対し、④は「冬ざれ」のザラザラした冬の手触りがあるため、「赤き蕪」の新鮮味が際立つと効果を語ります。
季重なりはともかく、同じ色でも正負のどちらの方向にも表現できると総括する先生。色彩について、少し意識して物を見ると色んな色が見えてくるかもしれないと視聴者に投げかけました。最後に、12月のネタ作りに悩む様子のお二方でした。
[160]【投句案内】組長が自画自賛するエッセイを読んで、『年賀状に載せたい一句』を投句してみよう!【筆ぐるめ俳句大賞 2022】<2021/11/8公開>
「筆ぐるめ俳句大賞2022」の投句案内です。テーマは「年賀状に載せたい一句」。
応募資格は『筆ぐるめ』(パッケージ・ダウンロード・バンドル・書籍等全バージョン)をご利用の日本国内在住の方。同ソフトはパソコンに最初からインストールされているケースも多いため、対象かどうかを確認した方が良いと先生は述べます。
投句制限があり、一人5句まで投句可能ですが、応募は1回のみ可能です(「ポチッは1回だけ」と紹介)。大変重要な規約ですが、送った後に漢字変換ミスしていたなどの失敗がよくあるとウッカリ体験を語る先生。
『筆ぐるめ』のホームページに連載をしていると語る先生は、毎月ごと4回連続の連載を読めば、年賀状などに書く俳句の作り方が初めての人でも分かるようなエッセイを書いていると述べます。「エッセイ読んだだけで作り方が分かるの?」と素朴な質問の家藤さんに「エッセイを読みながら気が付くと作り方が積みあがっていく」と回答し、「腕が違います」と談笑しながら先生は返します。「俳人・エッセイスト」というダブルの肩書がここに実ったと意気揚々です。
「エッセイを読むだけでも楽しい」と述べる先生は「村上ポンチ君が乗り移った気持ち」と嬉しそう。家藤さんは「(村上さんを)自画自賛する男」だと補足し、「世界は美しいよね~」とノリノリな先生。
俳句作りに自信のない人はまずエッセイを読んでから考えてほしいと述べますが、「いざ自分の句を年賀状に載せるのは難しいのではないか?」と質問する家藤さんに、「まさにそれですよ!私のエッセイは!」と待っていたかのように先生は返答します。俳句をやっている人間が自分の年賀状に一句選ぶとすると凄い考えるはずだと述べ、「家藤正人君、こんな句を作るんだ」と受け取った人に思ってもらいたい見栄もあるはずだと語り、家藤さんも同調。見栄と自分の実力との葛藤の中で「よし!これならいける」といざ送るものの、俳句を全くやっていない人から「何これ?全く分からない」と言われるのは"俳人あるある"とのことですが、その件も今回のエッセイで解消したと語る先生に、「素晴らしい!」と賛辞を贈る家藤さんです。
今回のテーマのポイントは「載せたい」という部分。「載せるべき」や「載せる資格のある」とは別の視点で、どのように作るべきか…とまで語ると、再び自分の腕を叩いて誇示する先生に「珠玉のエッセイを心して読ませて頂きます」と降参する家藤さん。先生は、コンテストに是非チャレンジして欲しいと視聴者に問いかけます。
最後に賞品を確認。【最優秀賞】1万円分のJCBギフトカード(1名)、【優秀賞】5千円のお肉のギフト都券(4名)、【佳作】千円分のAmazonギフト券(50名)。応募締切は2022年1月31日(月)必着。『筆ぐるめ』のホームページ「コンテストのご応募はこちら」から可能です。奮ってご参加ください。
[161]【11月の子規こぼれ話】組長が嫉妬する子規の句がこちらです<2021/11/11公開>
動画[159]に挙げた11月の子規こぼれ話。先生は、11月の俳句を吟味していると、テーマとしては括れないが妙に好きな句が多かったと述べ、それを「こぼれ話」として紹介したかったと語ります。
①「行く秋の鐘つき料を取りに来る」。「鐘つき料」について推測するお二方。先生は、寺の鐘をついた人に和尚らが請求したり、「浄財」などと書かれた賽銭箱のようなものに金額を投じたりするものではないかと述べます。一方の家藤さんは、除夜の鐘をついた住職などが、年末に「除夜の鐘を聞きましたね」と周囲の住民にお金を請求するものだと推測しますが、先生は真っ向から否定します。さらに、セットでしみじみとしたという"鐘つき俳句"をさらに紹介します。
②「鐘つきはさびしがらせたあとさびし」。無季の句ですが、「さびし」を2つ重ねることで「行く秋」の印象を感じると述べる先生。自分が勝手に寂しがっているのではなく、鐘つきという行為によって寂しがらせた後に自分がしみじみと寂しくなるという句意だと解釈し、こんなことを敢えて書く子規が面白いと述べます。
子規の生活が見える句をさらに紹介します。先生は、俳句は立派なことを書かないといけないと思うことで、徐々に肩に力が入っていくと、だんだん俳句がしんどくなると述べますが、次の句は肩に力の抜いた一句。
③「初冬の黒き皮剥くバナナかな」。季語は「初冬(はつふゆ)」。「プレバト!!」でもバナナアートが流行し、庶民的な食べ物でもあるバナナですが、当時は高級品でした。高浜虚子が「川を見るバナナの皮は手より落ち」(動画[144][152]参照)の段階で一度歳時記に「バナナ」を載せたようですが、一度消えたのち、最近復活したと先生は述べます。この句は「黒き皮」の状態でも貴重なものとして頂く様子が分かり、「初冬」まで大事に保存したことも伝わると解説します。『子規365日』によると、日本へのバナナ伝来は戦国時代で、宣教師ルイス・フロイスが織田信長に献上したのが最初と伝えられ、商品として大量輸入されたのは20世紀以降とのこと。句は1899年の作のため、当時は貴重なバナナですが、子規はハイカラなものを多く食べていたそうで、菓子パン・ココア・ライスカレー・パインアップルの缶詰・ビスケットなどもその一つ。食べ物好きの子規を喜ばせたい同士らがバナナを与えた可能性を述べる先生です。
④「ストーヴに濡れたる靴の裏をあぶる」は生活感を感じる一句。雪に濡れた靴などをストーブに当てるというのは100年経った現代でもあり得る感覚だと先生が述べます。火鉢やかまどが主流だった当時、ストーブがあったのかを過去に調べた先生。句は明治30年作ですが、一般家庭用のストーブは明治初期には売り出されていたそうです。値段も高価な上、炭を入れる際の粉塵が上がる弱点があり、火鉢や炬燵が主役の座を奪うことはなかったとのこと。これも病床にいる子規へのプレゼントかと推測する先生は、暑い夏には木の板で作った手回しの扇風機を持ってきたり、金魚を見たければ金魚鉢を見せたりなどの記録があるようで、子規に対するお弟子さんの愛が伝わると語ります。家藤さんは、好奇心を支えてくれる仲間がいるのは良いと同意します。
⑤「片側は海はつとして寒さ哉(かな)」は見つけた際、全身に寒さが伝わってきたようだと先生が述べる一句。片側が海、反対側が恐らく山が迫るような道を歩いており、片側が海だとハッと思った瞬間に寒さが押し寄せる瞬間があるという点に共感を覚えたと述べます。家藤さんは、生まれ故郷である愛媛県愛南町を思い出すと述べ、先生も同調します。周囲が海に囲まれる場所に住む人なら共感度が高いのではないかと述べる家藤さん。先生は「はつとして」に何の衒いもなく、肩に力が入っていないのにこのような言葉が出ることが羨ましいと称賛します。
⑥「職業の分らぬ家や枇杷の花」も先生が本を執筆する際に出会った一句。「職業の分(わか)らぬ家や」のフレーズに、近所の人様を自分がこのように思っているのではないか?と考えるとだんだん愉快になったと感触を述べます。ゴミ出しなどで挨拶はするけれど、実際にどんな職業をしているのか気になることは日常にあり得るものであり、「ご主人は必ず朝方に帰宅する」などの例を挙げます。冬の季語「枇杷(びわ)の花」が絶妙に乗っかっており、愛おしいような"蛋白質な色"(淡泊?)と比喩する先生。地味な花色で毛むくじゃらなガクを持ち、目立たない花とのこと。どんなフレーズと取り合わせても親和性の高い季語だと解説します(秋の場合は「草の花」を例示しました)。家藤さんは、立派にたつきを立てる感じなのだと印象を述べます。
過去の何月の子規シリーズでもテーマにそらずに取りこぼした俳句も同様に紹介したいと述べる先生に続き、2周目になるかもと構想を述べる家藤さんでした。
[162]【懺悔があります】11月の子規こぼれ話で紹介した句について...<2021/11/14公開>
動画[161]収録からだいぶ日が経っている様子がお二方の服装・会話から読み取れますが、前回動画のコメント欄を早々とチェックされていた先生は、懺悔があることを切り出します。
①正岡子規(まさおかしき)「行く秋の鐘つき料を取りに来る」。先生は"鐘つき料"を寺の鐘をついた料金として、浄財箱に入れてない参拝客に和尚が請求する料金に捉えていたと述べます。しかし、全く違う意味だと知ったそう。「ずっと、おかしいと思っていた」と首を捻っていた家藤さんですが、「何で強く言わんのよ!」と先生に逆に窘められます。解釈というよりは知識の有無の問題で、前回動画のコメント欄に様々なご意見が寄せられたそうです。
家藤さんの調査によると、時計が普及していなかった江戸時代には寺の鐘が時報の役割を担い、町内会費のように"時報お知らせ料"として庶民に徴収する"鐘つき料"が存在していたとのこと。これを、家藤さんは今でいうサブスク(=サブスクリプション)に喩えますが、定額制であることを初耳の先生に説明をします。先生は江戸中期の発明家・平賀源内の名前を挙げ、時計などの文化が明治以降に浸透すると、"鐘つき料"のような単語が使われなくなり、現代では意味を知らない自身のような読み手が増えることで、勘違いが生まれやすいという分析をします。ただ、現在でも京都の人気の寺社では"鐘つき料"として除夜の鐘をつく予約料を徴収する場所もあるとのことで、先生の考えも強ち間違いではないと安心するご本人。
先生は、最近は年末になると俳句仲間の高橋白道氏のお寺(正観寺)に訪れ、鐘つきを行っていると語ります。読経中の和尚さんに代わり、世話係のように鐘をついていたようで、特に"鐘つき料"はなかったそう。結論として、先生も家藤さんも意見としては間違っていなかったとお互いに譲りません。
さらに、ちょっとした勘違い句を紹介します。
②作家の泉鏡花(いずみきょうか)の句「稲妻に道きく女はだしかな」。NHK松山「怖~い俳句酒場 スナックいつき」の収録時の一句。怖い俳句を肴にお酒を呑むという変わった志向の番組に、壇蜜氏やシンガーソングライターの関取花氏をゲストに招き、法話で怖い話をする「怪談和尚」役が登場。先生と壇蜜氏は、"稲妻が光り、裸足の女に道を聞かれた"と解釈し、家藤さんも同調します。先生と壇蜜氏は、この女が走らずに立っていたら怖いというポイントで話をします。ところが、関取花氏は"稲妻に道を聞いている裸足の女"だと解釈し、大変恐ろしい句だと異なる解釈を述べたそうです。壇蜜氏は途端に、"道を聞かれている人物がいなくなり、裸足で(濡れながら音のない)稲妻に道を聞く女が1人佇んでいる"として、女3人で「逆に怖っ!」と反応したそう。うっかり読みの産物の例と述べる先生に対し、京極夏彦の世界だと家藤さんも納得します。
そして、俳句を始めてから長年勘違いしていたと先生が語る一句を紹介。
③中村草田男(なかむらくさたお)の「晩夏光バットの函(はこ)に詩を誌(しる)す」。家藤さんは、"夏の終わりの光が差し込む中、野球のバットが収められた箱に詩を書いた"と解釈します。先生も最初はそう解釈したと嬉しそうに家藤さんをいじります。先生は若い人は絶対に分からないと述べ、先生もまだ若いのだと家藤さんがフォロー。先生は、「バット」がタバコの銘柄「ゴールデンバット」のことだと明かします。愛南町の実家では、郵便局やタバコ屋を営んだことがあり、先生も売ったことがあるそう。買いに来る常連客のおっちゃんはみな「バット」と略したそうです。知っていたにも拘わらず、誰かの鑑賞文を読むまで勘違いに気付かず、事実に大変驚いたと語ります。作者の時代には「バット」はタバコの銘柄を思いつきやすく、時代の違いによって受け取られやすさが変化するのではないかと分析するお二方。もしかすると、Amazonから届いた宅配の荷物の「函」の中に、調理用の「バット」が入っていることと思う読み手がいる可能性を挙げる先生。このような勘違いをはらむ俳句は逆に面白いと述べます。また、先例の「Amazon」も現代人は通販サイトと理解できますが、それを知らない昔の人なら「密林」しか思い浮かばず、そのような例も多いのではないかとなぞります。
さらに、「バット」を野球・タバコとどう解釈するかで、季語「晩夏光」の意味合いや書く詩の質が変化すると述べる先生。野球であれば、野球部の選手生活が終わるかのような内容の詩を想像すると語ります。タバコであれば、胸ポケットに入る小ささ故、俳句や短歌など大した文字数ではない詩が想像できると述べる家藤さんに対し、退廃的・健康でない感じがすると続ける先生。俳句はどのようにも解釈できますが、作者の意図としては「ゴールデンバット」の可能性が高いと補足します。
「一つ賢くなった」と感想を述べる家藤さんに対し、先生は「良かったです。あなたが私と同じ道を歩んでくれて」といじり、視聴者に解釈の同意を求める家藤さん。「そうじゃないですか!?」と元気に二人でコールしました。
[163]【文法と解釈】「サタン離れぬ」の様々な考察を紹介!<2021/11/18公開>動画[151]の解答回。今回も様々なご意見が寄せられたようで、先生も文法の勉強をやり直しているようだと印象を述べます。
杉田久女(すぎたひさじょ)の「
われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」。この句の解釈が文法的に以下のどちらに解釈できるのか整理します。
①私についていたサタンが離れました | 肯定 | パターンA |
②私についていたサタンが離れません | 否定 | パターンB・C |
ポイントは
中七の助動詞「ぬ」の解釈でした。
パターンA | 文語の完了「ぬ」の終止形「ぬ」 | 「…サタンが離れ(まし)た/曼珠沙華」 |
パターンB | 文語の打消「ず」の連体形「ぬ」 | 「…サタンが離れない曼珠沙華です」(名詞に続く形) |
パターンC | 口語の打消「ぬ」の終止形「ぬ」 | 「…サタンが離れません/曼珠沙華」 |
パターンB' | 口語の打消「ぬ」の連体形「ぬ」 | <パターンBと同じ意味> |
コメントでは、
文法的な解釈と一読の印象の違いもあったという意見。
一読の印象としては、否定「離れない」の意見が目立つものの、
文法的には肯定「離れた」の意見があり、趣向を凝らしたコメント欄に。
また、「曼珠沙華」の季語もポイントで、
曼珠沙華が魔よけの花という植物の性質から肯定「離れた」と解釈する意見、作者・
久女の年齢の境遇から肯定「離れた」と解釈する意見もあったそうです。これらは文法的な解釈とは異なりますが、様々な背景を加味して鑑賞する「
作家論的な解釈鑑賞」だと補足します。一方、俳句と作者を切り離して考えるのが「
作品論」だと先生は解説します。
家藤さんは、視聴者に
俳句の解釈を投げかけることがどういう意義なのか?というそもそも論に戻ります。先生は俳句は17音の文字面しかなく、作者から投げられたボールを
自分がどう解釈するか考えることが大変大事なことで、白黒を明確につけると解釈を他人にあげることになり、とても損になるという考えを述べます。正解の解釈があるのではなく、
違った価値観を互いに持ちながらも相手の意見を否定せずに受け入れ合う文化だと述べる家藤さん。先生は「
多様性」という言葉が俳句にも似合うと述べ、世の中も正解がつくことが少ない上、俳句を通してそれらを学び合う機会にもなると良いと語ります。
元々この句は、動画の
人生相談シリーズでの採用を予定していたものでしたが、家藤さんと二人で解釈が割れたことをきっかけに今回の企画になったという経緯を述べます。先生は肯定「離れた」の解釈で人生相談の答えにするつもりでしたが、否定「離れない」では真逆の回答になってしまいます。
先生は
肯定「離れた」との解釈を述べます。「われにつきゐし」の助動詞「し」は存続のケースもありますが、元々
過去の意味。わざわざ上五を字余りにしている点も踏まえ、われについていた状況が過去の意味だと捉えれば、"われについていたサタンが離れた"と解釈できると述べます。
コメント欄では、
中七「ぬ」が良くないとする意見、
【グリーンGreen】【Kazumi Tanaka】両氏の「サタン離れ
し」なら分かりやすいとする活用の意見も。先生は完了なら「離れぬ」しかなく、否定表現として「離れ
ず」の例も挙げます。
家藤さんはパターンCを支持する
否定「離れない」派。昔の小説などを読んだ際、「ならぬ」「たまらぬ」など否定表現が多いという経験則として解釈したと述べます。
皮肉な意味での逆説的な意見も。
京都風に舞妓さんが「はなれました」と言いながら、実は離れないというコメントもあり、家藤さんが上手く物真似。先生は
「サタン」で一度切れる解釈もあったことに仰天。記憶の中にある曼珠沙華が離れないという意味だそう。こねくり回すと「思考という名のラビリンスに入っていく」とどこかの副題のようにカッコよくフレーズを決める家藤さん。
【村人】氏は「文法上の問題点はあるものの、どちらの解釈も可能であれば
否定『離れない』を採りたい。
離れたと思ったが、実際には離れていない二重の意味を持たせたのではないか。その方が人間の業を感じられてドラマがある」との意見。先生は爆笑しながら実生活で何かあったのかと推測。
深読み繋がりで、先生は「杉田久女に申し訳ない推測」だと前置きしますが、
否定のパターンCのつもりで「ぬ」を置いたものの、結果的に肯定になってしまったという家藤さんの物真似解釈と真逆になった可能性を挙げます。
本人の離れられない情念・未練があるにもかかわらず、実際には離れてスッキリされたと言われる始末。人生相談に載せるか否かも葛藤も含めて非常に共感できる様子のお二方。先生は、結果を求める視聴者に「
色んなことを語り合うのが楽しい。"結局、正解を言え"というのはめっちゃ無粋なことで、議論することが何よりも楽しい」と語ります。家藤さんはそのために、酒を横に用意したいと述べます。
句が書かれた年代に作者の久女が置かれた精神状態について、丁寧に調べた方もいたそうで、この句を通して久女に興味を持った方は是非本を読んで欲しいと投げかける先生は、
田辺聖子(たなべせいこ)の「
花衣ぬぐやまつわる」をオススメします。もう一度読むことで、自分なりの解釈を持つことが大事だと念押しします。
「
結論というよりは、ここまでの時間が大事であった」という家藤さんの意見に「その通り!」とグーでポーズを決める先生でした。
[164]【人生相談】仕事以外に趣味も興味もありません。定年後が恐ろしい。<2021/11/21公開>
動画[158]以来の人生相談。「仕事以外に何の興味も趣味もありません。定年後が恐ろしくなります」というお悩み。「恐ろしく」の響きも恐ろしいと最初に述べる先生。馬車馬のように働き続け、将来会社に行かなくなる自分が想像できないという方々もいれば、定年後に「あれしようこれしよう」と浮かれている人々も一定数いると述べ、前者の悩みを持つ質問者へ一句を提案します。
大野林火(おおのりんか)の「期すものに老後も初心水澄めり」。作者は1904(明治37)年神奈川県の生で、「濱(はま)」を創刊し主宰。俳人協会会長を歴任し、第三回蛇笏賞を受賞しています。
先生は「老後も初心」という言葉が良いという最初に感じた句の印象を述べます。歳を取ることや老いていくことに恐怖を抱く人は多いもので、「定年」が一つの関門になると語る先生。今までずっと続けた仕事と全く違う環境になることが恐ろしいというのが今回の悩みの本質だと汲み取ります。
新しい所に飛び込むのは、今まで持っている自分の経歴・実力・人脈などとは全く違うところに放り込れる反面、新しい面白さに出会えるという真逆の考え方もできるのではないかと提案します。老いていくことを初心で受け止め、新しい面白さに出会えるということを句で感じたと続ける先生。「老い」そのものを俳句にすることに大変興味を持ち、目がぼんやりする・右耳が聞こえにくくなるなども俳句の句材だと思うと、今まで手に入らなかった句材に出会えて面白がっていると先生自身になぞらえて語ります。
将来を不安に思って、おっかながるのではなく、その先を面白がる方が実りが多いと考えを述べる先生。「ここぞ新しいスタートラインだ」と思う方が良いと提案します。老後も初心で楽しみ、秋の水は澄み渡っているという句意を述べます。
先生は「あなたこそ俳句をやるべきです」と強く断言して動画を締めました。
[165]【大賞受賞】夏井いつきが種田山頭火賞を受賞しました!<2021/11/25公開>
通常よりも引きの画角で動画スタート。部屋横の棚に生活感がうかがえ、前面の机に本が立てて並べられている状況。この度、夏井いつき先生が『第4回種田山頭火賞』を受賞されたことを報告します。
金色の文字で装飾された紺色の証書ファイルを開けると、賞状の右に「夏井いつき殿」の字があり、左側には山頭火の俳句が書いてある粋な賞状。独特の毛筆タッチは著名な書家の方が直筆で書くそうですが、受賞者のイメージに合わせて異なる俳句が贈られるようで、「カッコいい」と印象を述べる先生です。
種田山頭火(たねださんとうか)「もりもり盛りあがる雲へあゆむ」が先生の証書に選ばれた一句。先生はリモートの表彰式ながら、壇上に上がって句を見た瞬間のイメージを「それっぽい」と述べ、家藤さんも「パワフル」だと続けます。
先生は自身の"俳句の種まき活動"について、100年後の子や親の未来をイメージして行ってきたことを語ります。「もりもり盛りあがる雲へあゆむ」という句の視線とそれが重なり、感動を覚えたとも述べます。家藤さんも「誰かに贈る言葉として山頭火の句は力を持ってくると改めて思う」と述べます。
また、審査員の先生と話した際も喜びの言葉を語ったそうで、動画[19]で取り上げた山頭火の句「うしろすがたのしぐれてゆくか」ではなく一安心だと笑いながら述べます。
第4回となる今回の賞ですが、大賞受賞者は俳人として先生が初めての快挙だと家藤さんが明かします。自由律俳人の賞だと勝手に思っていたという先生は、有季定型の正統派俳人でありながら、破調や無季も作句するため「自由律俳人に思われたのか」とユーモラスに語ります。
過去の受賞者は第1回が舞踏家・俳優の麿赤兒(まろあかじ)氏で、妹のローゼン千津さんはそのことに驚愕されたそう。第2回が詩人・小説家の伊藤比呂美(いとうひろみ)氏、第3回がピアニストの碓井俊樹(うすいとしき)氏。いずれも芸術家とはいえ、受賞者の共通項が見えないと述べる先生ですが、良い意味での奔放さをお持ちの方だと見出すのは家藤さん。
受賞にあたって出版社「春陽堂」の社長さんがお話されたことを要約する先生。周囲に流されずに自分の意思を貫き、まさに奔放に活動するイメージの賞だと言いますが、「じゃあ貰っていいのか?」と先生は壇上で納得したようです。
さらに、山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」がプリントされたトートバッグも贈呈されたそうですが、何といっても先生が嬉しいのは前面に並べられた重厚感のある4冊の『新編 山頭火全集』(春陽堂刊)。現在までに第1・3・4・5巻が刊行され、順次全8巻が発売される予定。このような書物の形で整理して記録を残すことの重要性を挙げる先生。少しずつ読みかじってはいたが、改めて時間をかけて読むことで句が整理されていくことも大事だと述べます。家藤さんは、YouTubeの動画資料としても貴重で、山頭火関係の句も正岡子規同様に紹介できるのではないかと述べます。動画の新たなネタとしてどのように切り込むか話題が尽きないお二方です。
既刊の第1巻と今後刊行予定の第2巻は句集関係。第3巻以降は書簡や日記をまとめたものです。さらに、第6巻は直近の2021年12月下旬刊行予定。その後2か月おきに第7巻(2022年2月)→第8巻(4月)→第2巻(6月)と順次刊行されると紹介します。山頭火が句だけでなく破天荒な性格で知られることはミーハーな家藤さんでもご存じだと述べます。
表彰式でお世話頂いたジャニーズ系のイケメンの兄ちゃんに、フルーツポンチ村上さんの出版物(『フルーツポンチ村上健志の俳句修行』)の担当だと明かされたと述べる先生(動画[112]で紹介)。同じ出版社ながら、学術的な物から柔らかいものまで幅広く出版している点に納得の家藤さんです。
また、種田山頭火賞の選考委員に、作家でエッセイストの嵐山光三郎(あらしやまこうざぶろう)氏、国文学者の林望(はやしのぞむ)氏(※「リンボウ」先生と称しています)のお二方の名を挙げる先生。審査員の話では、先生の活動の評価とは別に、先生の句集(※伊月集 梟(ふくろう))をしっかり読みこまれたものの、お二方の好みの句が全く異なっていたそうで、林氏は夏井先生の作る句が「多様性」に満ちていたとお話しされたそうです。これは、先生の創作の考えの一つであり、作るもの・鑑賞するもの・線していくものに関して、俳句の様々なパターンや面白さを表現し、キャッチできるものを目指していた先生自身のお考えとお話が共鳴したようです。嵐山氏は授賞式後のトークショーで、ご自身が好きな句を後ろに並べて貼り出して頂いたそうで、大変熱烈な方と印象を語る先生。このことを「冥利に尽きる」と家藤さんは感心。先生は句集から選ばれた句を嬉しそうにいくつか紹介し、話が続きます。小説・国文学を専門とする選考委員のお二方が真剣に先生の句集を読み込んでいた事実に驚く先生ですが、表現者の一人として本当に嬉しかったと語ります。
家藤さんは再び証書ファイルを開き、改めて山頭火の句を鑑賞。マイページに自分のやりたいことをしっかり歩む風に見えてくると述べ、感動したご様子に。64歳という年齢でこの賞を頂けたことに感謝するご本人ですが、「この後の活動の励みになるかな」と小さく述べて感謝の言葉で締めました。
[166]【人生相談】人間関係を長く続けられない…ほどほどの関係からみんな離れていく<2021/11/29公開>
1日遅れの公開動画は、[164]以来の人生相談。「人間関係を長く続けられない。いつもほどほどの関係から皆さん離れて行ってしまう」という切実な悩みです。
最後の一文が重いと切り出す先生ですが、解決方法がありそうな気がするとポジティブに語り、次の一句を紹介します。
金子兜太(かねことうた)の「二階に漱石一階に子規秋の蜂」。作者は1919年埼玉県生・2018年没で、「海程」を創刊、主宰。第三代現代俳句協会会長を歴任し、のちに名誉会長を勤めた人物です。
作者の存命中、先生が出演するNHK松山の「俳句王国」の番組内で発表された句ではないかとのこと。松山中学校の英語教員として赴任した夏目漱石(なつめそうせき)が下宿した愚陀仏庵(ぐだぶつあん)が舞台。その1階を借りているにも拘わらず、松山に帰省した正岡子規(まさおかしき)が転がり込み、50数日を二人で暮らします。ところが、1階を子規が占領して仲間を呼び寄せて句会などを楽しむ一方、漱石は2階へ逃げてしまうことに。
社会で暮らしていく人であれば、人間関係の距離の取り方が難しいのはとても理解できると述べる先生ですが、そういう人こそ「俳句をやるべきだ」と先生は提案します。俳句の人間関係は凄く楽ちんな距離感が存在すると述べます。
俳号(※俳句専用のペンネーム)によるお付き合いであれば、本名や職業、住所を知らない場合も多く、俳句の一点だけで繋がる付き合いだと述べます。リアルの人間関係の付き合いが長続きしない点に悩んでいるのであれば、俳句で緩い居心地の良い空間を作るべきだと提案します。リアルが上手くいかなくても、俳句の人間関係が広がっていくメリットを述べる先生は、「あなたこそ今すぐ俳句をやれば良い」と続け、このYouTube動画[125]以降の凡人あるあるシリーズの視聴を最初に薦め、「今日からあなたも俳人、お悩み解消です!」とポジティブ思考で締めました。
[167]【出演決定!】NHK プロフェッショナル 仕事の流儀に出演!12月7日放送<2021/12/2公開>
今回は声のみゲストが参加。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で12月7日(火)午後10:30~午後11:15(※再放送は13日(月)深夜24:03~24:48)に夏井いつき先生が特集される予告テロップを出します。動画収録時は番組取材真っ最中のことで、番組ディレクターで俳号【下北ペダル】氏がカメラ側に待機。先生の妹であるローゼン千津氏が描いた似顔絵を貼って紹介します。俳号は松山に着いてから付けたそうです。イラストについて、少々本人をいじる場面から話が進みます。
下北氏によると、先生を取材する動機は以下の通りのよう。
「言葉に関する仕事をされる方を取材をしたかったが一口に"言葉"といっても幅が広い。世界一短い文芸が俳句だと聞き、俳句となればこの方しかいないと思った。」
この事実に「光栄だ」と述べるお二方。最初はZoomによるオンラインからの取材スタートで、当初は戦々恐々に緊張していたという下北氏は、先生曰く「卒論の口頭試験」のような雰囲気。9月第1週の出来事とのことです。
今までもNHKの関係者にお世話になられていた先生は、普通は取材アポが1~3か月先のスパンで決まっていくのに対し、「来週家串の実家を壊す算段に行く」と先生が言えばその当日2日前から取材したいと答えたディレクターのフットワークの軽さが印象的だと語ります。
最初の取材が句会ライブなどではなく、「実家の掃除」であったことにプライベートでありながら大変大切な場面だと感じ、撮り逃がしたくなかったと述べる下北氏。位牌の整理などもあったそうですが、人生の機転となるイベントが記録される下北氏のフットワークの軽さに仰天したと先生は重ねて述べます。
その後は先生の日常を記録。NHK朝ドラの視聴から始まりますが、下北氏が仕事漬けである点に驚愕したことを述べ、いつ休まれているのかと思ったそう。先生は朝ドラの15分が休みだと笑って回答します。その後、原稿書きや選句作業に追われる先生ですが、下北氏曰く、思っていた以上にパソコンでの作業時間が長いことを述べます。
また、ロケでは「おウチde俳句大賞」の授賞式にも同席して初取材。「長年続けていることもあり、百戦錬磨で場の盛り上げ方が最高に面白く、観客も喜んでおり楽しい場だった」と称賛の感想を述べる下北氏。
さらに、ラジオの「一句一遊」の選句作業にも取材。先生が1400句を超える紙の束全てに目を通す点に驚愕したそうです。先生によると、全ての句に目を通していないと疑うリスナーもいるそうですが、俳号を通じたやり取りが何よりの証拠で、そこにも仰天したという下北氏は、取材した「句会ライブ」での観客とのやり取りで、俳号を記憶してコミュニケーションをとっていたことに「なぜ一人一人を覚えていられるのか?」と驚きを隠せないご様子。
家藤さんは、コロナ禍の状況で「おウチde俳句大賞」の贈呈式の場は、再会を喜ぶという点においてもメモリアルだったと振り返ります。先生もアットホームな雰囲気で客との距離が近く、膝をくっつけ合わせる句座のイメージだったと続けます。
圧倒される取材が多いと述べる下北氏ですが、一番に「いつきさんの体力に圧倒された」と率直に述べます。朝から晩までの過労にかかわらず、集中力も高い点にも言及。集中モードに入れば絶対に話しかけられないそうです。選句など行う際は、気づけば深夜0時を回るまで撮影していることも何度かあったそうです。その集中力の高さと頭の切り替えにおいては、お子さんが「いつきさんのギロチンシャッター」と称したほど。仕事モードに入ると、今までの会話が打ち切られ、突然壁・バリアができるのだと家藤さんが補足。その呼称を当時高校生の息子さんから聞いた時は、「凄い母だ」とご自身で仰天されたそうです。下北氏は「オーラがある」と続けます。
俳句の種まき活動を長年続けてメディアにも多数出演した先生ですが、「ギロチンシャッター」の隙間から俳句を作る俳人としての姿も取材できたことに喜ぶ下北氏。面白い番組になると確信していると述べます。
ここで先生は、次の第3句集「伊月集 鶴」の句稿などのデータが入っていたUSBを紛失してしまった過去に言及。紙ベースでのコピーがあったため、パソコンに入力すれば何とか復帰できる状態ですが、如何せん時間の無い先生。そこで下北氏は入力役を買って出たそうで、「なんていい人なんだ」と述べるお二方。全て入力して頂き、そこで心が開いたという先生。先生が述べた「いい人だ犬も可愛い夏の雲」はかつてのおしゃべり俳句の句(動画[141])だと家藤さんが補足します。入力はほぼ済んでいるそうですが、先生の最新作を世界で最初にご覧になった下北氏のお陰で「鶴」ができるとユーモラスに先生は語ります。
入力して気になった点を述べる下北氏。俳句では普段使わないような難しい漢字が多く、MicrosoftのIMEパッドを多用しながら「『木通』で"あけび"と読むのか」など学びながら作業。人生初めて俳句をまとめて読む機会が今回の先生の句集書き起こしだったそうです。読みながら、笑ったり驚いたりしんみりしたりと色々と感じられたそうで、「ええ読者やな~」と先生が返します。作品集の完成の場に立ち会えたら嬉しいと感謝の言葉を述べる下北氏。
動画撮影時点では放送日時が確定していませんでしたが、字幕テロップでご紹介。「是非、観てください。ペダルさんの苦労が詰まっています」と先生が述べました。
[168]【投句案内】「あまひや」な一句を募集!キシリクリスタル発売20周年企画<2021/12/5公開>投句案内動画。「
キシリクリスタルこのままで委員会!?」と題したキャッチコピーをもとに、春日井製菓が発売20周年を記念して主催する投句企画です。「
キシリクリスタル」は、"ミルクミントのど飴"などのキャンディとして有名なブランド。言葉の魔術師・
小沢一敬(スピードワゴン)が委員長役に就任した今回の企画。夏井先生が選者として俳句の評価をします。
今回のテーマは
「あまひや」な一句です。「キシリクリスタル」の商品の魅力にちなみ、
あま~い・ひんや~りを掛け合わせた造語。一瞬、キョトンとしてしまいますが、俳人根性で果敢に挑んで欲しいと述べる家藤さん。
「キシリクリスタル」を食べた場面で句を作るのも可能ですが、それだけでは幅が狭くなりやすく、凡人の発想に留まりやすいと述べるお二方。それ以外の「あまひや」な体験を詠むのもOKです。
ここで、先生は「あまひやな人」を思い出します。前のNHK朝ドラ・「お帰りモネ」に登場した
医師・菅波光太郎がピッタリだと述べるのです。主人公・モネの恋人となる人物ですが、ビジュアルの甘さだけでなく、医者らしく人との距離感があり、心の芯がある人だといいます。気仙沼と東京での遠距離恋愛をしていましたが、時間との関係で結ばれている甘さがあると、先生は推し気味に語ります。家藤さんは、
人物やエピソードが「あまひや」という印象で括れると話を聞いて印象を述べますが、菅波先生関連の句が多く寄せられると予想する先生は、後ろに貼られた小沢さんの写真を手で覆ってしまう羽目に。「あまひや」な体験を先生に聞かれた家藤さんは「難しい」と述べ、真っ先に「かき氷」と挙げますが、先生からベタだと言われる始末。
ここで、夏井いつき先生からのヒントをおさらい。
・キシリクリスタルを食べて一句を詠むもよし。 ・「あまいキャンディと、ひんやりなキシリトールをサンドしているキシリクリスタル」のように、甘いだけではない「あまひや」な思い出を詠むもよし。 ・「あまひや」という言葉から発想を広げてみてもよし。 |
さて、根っからのゲーム好きという家藤さん。オンラインゲーム・ファイナルファンタジーXI(イレブン)に登場する氷の魔物・
スノールを題材に「
スノールの腕を切り取ってジェラート」と述べると先生は爆笑します。ハリーポッターなど、ファンタジーの世界からの発想はありそうだと述べる家藤さん。菅波・スノールばりな一句をと先生は呼びかけます。
今回の企画の賞品は以下の通り。特選ほど種類数が増える仕組みです。
特選(1名) | スピードワゴン・小沢さんと夏井いつき先生のイラスト入りキシリクリスタル型オリジナルクッション1点 +優秀句・佳作景品 |
優秀句(5名) | 夏井いつき先生サイン入りグッズ1点+佳作景品 |
佳作(50名) | 春日井製菓商品20品詰め合わせ |
また、入賞(佳作以上全ての句が対象)に選ばれた句は、
キシリクリスタルの粒を包む個包装パッケージに掲載されるとのこと。
ここで、急にマイクに拾う雨の音が強くなったようで、豪雨が降りだしたと報告する先生。雨の体験でも「あまひや」な句が詠めるかもしれないと括る家藤さんが、自身の腕を叩いて対応力を鼓舞します。
応募締切は
12/14(火)。応募方法は公式特設サイト・ツイッター・郵送の3種類です。
[169]【紅白俳句合戦】第2回戦の結果発表!いつきさんの予想は白!<2021/12/9公開>動画[156]の
紅白俳句合戦の結果発表。"老婆心"ながらと前置きする先生は、どちらがより良い句かを我々が話したいのではなく、俳句甲子園の
審査員の立場で、旗を揚げないといけない状況を仮定して考えてほしいと述べます。「何となくこっち」とするのでは作者に失礼な態度となるため、
両句の良し悪しを自分なりに明確に分析し、その上で判断しないといけないという自分なりのせめぎ合いを体験して欲しいと忠告します。
俳句の良し悪しは客観的に決められるものではなく、「結局、どちらが良いのか?」という質問が一番ムッとすると本音を語る先生。初心者から上級者までコメントされた方の段階も様々ですが、直感から詳細な分析まで個々人なりに多くの意見が寄せられたとフォローする家藤さん。前回のバナナと林檎の俳句対決で「バナナが好きだから」という理由であれ、ひとまず書いてあれば良いと述べる先生は、俳句の良さに様々な理由が出る点と、俳句に白黒をつける態度(→本来、白黒は簡単につけられない)は異なる点であることを強く強調します。
下馬評として夏井先生は
白の句が多いと予想します。
●紅組2句目 | 鶏のゆかへ上りぬ秋のくれ | 正岡子規 |
○白組2句目 | 土間に人畳の上に羽抜鶏 | 岸本尚毅 |
まずは
白○に投票した意見。
(土間という場所情報があるため)
映像がよりハッキリ浮かんでくるのが良いというコメントから。
【Nayuna Soso】氏は2つの句を対比して分析。先生が拍手して褒めます。
紅●「季語『秋のくれ』は動画を見ているような時間の流れを感じる」白○「ストロボが光った瞬間を切り取った一枚の写真のよう」【とく】氏は夏井先生の著書「子規365日」で前回紹介した先生のコメントに賛同。共感する先生は、瞬時の判定となると映像がしっかりしている方が旗を上げやすいと述べ、分析力を褒めます。
白○「白に一票。素直に情景が浮かぶ」紅●「ゆっくりと秋の景が浮かび、趣がある。瞬時の判定なら不利だが、数回の審査があるならこちらが残ると思った」【suk kuwan】氏の分析に先生も笑います。
白○「土間にいる人は羽抜鶏状態になっている薄毛のおっさんかも。私の意見は秒殺アウトでしょうか」
【北藤詩旦】氏の意見もそれに続きます。「羽抜鶏」という季語を楽しんでいると先生は感想を述べます。
白○「畳の上の羽抜鶏に人間の姿を見たのかもしれない。夏の厳しさ、夏バテ、夏痩せなどを象徴している」【かいぐりかいぐり】氏は句の瞬間の滑稽さを分析。先生も共感します。
白○「人も鶏もお互いが一瞬呆気にとられた表情や空気感が感じられて凄く滑稽さを感じる」【竹山哲也】氏は季語が動くかという点に注目。
紅●「秋のくれは別の言葉でも成り立つ」
白○「羽抜鶏は他の言葉では代用できないと思った」【kofukurairai】氏の深掘りした分析を先生が称賛。
白○「内容が単純であり、単純さの演出が好き。『土間に人』『畳の上に羽抜鶏』というリズムも人は窮屈で『羽抜鶏』の方にゆとりがあるのも"おいおい!"を演出するための魅力。結果、みすぼらしい夏の季語が主役に立っているのも魅力」紅●「『秋のくれ』のせいで、鶏と作者の関係が大事になり、句を分かりづらくしているのではないか」お互いの
句を比較して考えている時に、それぞれの長短を考えて悩むことについて聞かれた先生。その点が一番大事であり、悩むことでさらに深い分析ができるため、悩むことや疑問を持つのが大切な姿勢だと返します。
次に
紅●を中心としたコメント。まずは
【柚木】氏の分析。
紅●「紅に一票。短い動画で、句を詠んだ人と鶏の2つの者の世界。感情移入できるのは紅」白○「静物画のような味わいがある。鶏と土間にいる人、それを見ている第三者という3者の世界だと感じた」【ふくろうたかこ】氏は単語の必然性に着目して紅に一票。
白○「中七『の上』がいる理由がよく分からなかった」その点を
【黒子】氏も。
白○「『畳に』ではなく『畳の上に』は人間より偉そうな感じを出している」先生は
「の上に」は必要であると述べます。「土間に」「畳に」でも高さは読み手に伝わりますが視線がフラットになってしまい、「の上」で念押しのように視線を誘導する効果があり、人の立つ高さと鶏の高さが映像として見えると解説します。
【沼澤智美】氏は赤を推します。
紅●「床に上がる鶏の爪の音や色・形にハッとした」【モンヌ01】氏は、鶏を生体として飼っていた経験からリアリティがあるとして紅に入れたという意見。
紅●「昔じいちゃんが飼っていた凛々しいチャボを思い出した」【貴子】氏は鶏の仕草を描写することで季語を引き立たせたという分析。先生は「プレバト!!」をよく観ていると褒めます。
紅●「眠る時の習性で高い所に上がって、ふくふくと体を丸くする体勢に入っている鶏の様子ではないか。肌寒くなった秋のくれの空気の対比を感じた」【はれまふよう】氏は時代背景を考察。
白○「子規が作者という情報がなく、現在詠まれた句としたら情報量の多い白を推す」この意見に先生も持論を展開。「バナナ」はかつて高級品でしたが、
「鶏」は昔も今も人間生活においての価値がそこまで変わらないため、あまり加味しないと述べます。
【さやもち】氏も紅へ一票。季語を中心とした分析に先生は称賛。
紅●「『秋のくれ』で目線が鶏から外へ向き、秋の冷気や薄暗さにブルっと震える。鶏という生き物の温かさを感じさせることで、秋の夕暮れの冷たさ寂しさが際立ってくるため、この句が好き」先生はそれぞれの解釈の深さに感心し、学んでくれていて嬉しいと率直に述べます。
最終結果は
白○57票、紅●82票と人気なのは紅●でした。
白○は動物の季語「羽抜鶏」、紅●は時候の季語「秋のくれ」と季語の種類も異なります。季語による映像の有無の点から異なりますが、
それぞれの季語の働き方の違いが最も重要であるという点に改めて気づかされたと語る先生です。
【hi mi】氏からの「これが今回の意図の"審査員のジレンマ"か!」のコメントに笑う先生。ジレンマの上に分析する力・俳筋力がつくことを理解して欲しいとまとめました。
[170]【プレゼント企画】プレゼントの該当者はあなたかも!登録者7万人到達記念企画<2021/12/12公開> ※当ブログ紹介動画
動画[148]で予告した登録者数7万人到達記念のプレゼント企画。ご多忙のため、公約としていた7万人記念句会ライブがいつになるか分からないと愛南町の海をバックに語られていたお二方でしたが、句会ライブは10月に無事敢行(動画[L3])。コメント欄のプレゼント企画の当選者発表が12月まで延びた点を謝罪します。
プレゼント該当者を決める基準について語る家藤さん。多くのご意見が寄せられたそうですが、将来の動画撮影で企画化した際「それは私のだ!」と企画採用が決定したとしても、時間を遡って該当者にプレゼントを渡しにくいため、動画収録の11月末の時点で既に収録済となっている企画をコメント欄に書き込んでいた、通称「予言者」の方々(コメント欄の「予言」と収録決定済の企画が合致した方々)にプレゼントを渡したいと述べます(※実際には、該当のコメントを読む前から企画は決定済)。白黒をつける方法として道理がかなう方法でしたが、果たしてどの予言が合致していたのでしょうか。
先生は予告動画で「世も知れん」企画も寄せてほしいと呼びかけましたが、「宇宙に行って俳句を作って」など無茶苦茶なコメントもあったそうで、先生は淡々と「はーい、お疲れ~」と一言返すのみ。
【Nayuna Soso】氏は「チャット機能やチャットを使える機会を設けてほしい」とYouTubeの句会ライブで行われた機能を通常の動画でも取り入れてほしいという意見。生配信専用の機能だけに今回は見送り。
【酒井宏章】氏のリクエストは「方言の俳句をテーマにした企画」。方言の俳句は他所でやっている所もあるそうですが、企画として"やぶさかではない"と述べる先生。方言の俳句を募集するのではなく、投稿者によると「愛媛県の俳句から始まり、リクエストの多い都道府県を取り上げて」とのこと。腕組みをする先生は、NHKの担当番組「夏井いつきのよみ旅!」での経験を語ります。共演するローランド氏と鹿児島県でロケした際、現地の方言にお手上げになったそう。スタジオでは「さつま狂句」という現地の方言を用いる川柳のようなものが発表され、句を選んだ方が独自に七七の下の句を詠むそうですが、収録していたお二方は戸惑ったそう。まさに異国語のようだったと感想を述べます。情報を守るためにわざとそうしているという説もあるようです。頭の片隅には置きたいが、企画としてできるかは未定と結論づけます。
【蓮台寺川奈】氏からは「俳句で歌ってみた」という企画の提案。Kis-My-Ft2の横尾さんと千賀さんが歌う『王国の蝶』では、先生の俳句が歌詞となって企画化済みです。さらに、マユミーヌ氏の『太一と申す』は、先生の孫を詠んだ俳句が元に曲が付いたものです(動画[140]で紹介)。先生は同氏の『密会』の視聴をお薦めします。動画企画として新たに行うのは難しいとし、提案を断念します。
【rie】氏は以前の尻二字三角パスの動画[81]から。「特別ゲストを交えてまたやってほしい」というリクエスト。先生は松山からゲストを呼べば可能だと展望を述べますが、すでに実現済みだと述べる家藤さんは、動画[153]でローゼン千津氏を交えた回を挙げ、予言的中としてプレゼント対象に👏。
【アロイジオ】氏の提案は「ローゼン千津氏を交えてのリモート対談を拝見したい」。先生と共著の『寝る前に読む一句、二句』を挙げ、「ローゼン氏の鑑賞が素晴らしく衝撃的でファンになった」というご意見。これも動画[154]で実現済み。予言者判定と認定し、プレゼント対象に👏。
他にも、尻二字三角パスのリクエストをしていたのは【夏野あゆね】氏。先の方より具体性に欠けるという理由で残念ながら採用ならず。
【西村棗】氏と【みかんかん】氏から「先生と家藤さんの密着取材が見たい」というリクエスト。「情熱大陸」のような仕事の密着を希望されたようです。12月7日O.AのNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』で実現。先生はNHK+(プラス)と再放送まで番宣しますが、この意見は「予言」ではなく「要望」とバッサリ。
【Kazumi Tanaka】氏から「自選のポイントを教えてほしい」、【星月さやか】氏は「歴史的仮名遣いを勉強したい」、【やまとくんchannel】氏から「添削してほしい」と俳句そのものの要望。先生は要望としてお受けするが、「予言」ではないと企画対象からこれも外します。
【鰯山陽大】氏は自由律俳句について。「尾崎放哉・種田山頭火などを例句に自由律俳句を学びたい」。動画[165]で種田山頭火賞受賞の話題でも、今後の動画収録で行いたいと述べていたお二方。タイミングもバッチリ重なり、見事予言認定となります👏。
【打楽器一家】氏も。「視聴者参加型の尻二字三角パスをやってほしい」。先のローゼン千津氏の動画[153]で、最後にローゼンさんが詠んだ句の続きの句を動画コメント欄に募集しました。収録後に書き込みを見て驚いたそう。こちらも予言者認定に👏。
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ここで、予言とは別に「やった方がいいこと」として切り出す家藤さん。唐突に拙者【プロキオン】の名を挙げると先生は「いつもありがとうございます」と感謝の言葉を述べます(→とんでもございません)。「公開動画も150を超えてきている。シリーズごとに再生リストをつけるか、時系列でナンバリング(A01など)できると動画整理もしやすいのでは。当ブログ記事では連番で整理している。シリーズ単位で動画目次を作りたいと構想している」という意見に「全然意味が分からない」と困惑気味の先生です(→わかりにくくて誠に申し訳ございません)。再生リストの整理には手が掛かると述べるお二方ですが、「プロキオンにお礼を言う」と述べる先生。家内制手工業で手が回らない代わりに提案を任せたいと、先生はご自身の句集を見せるように取り上げて「ありがとう」とお茶目に述べます。さらに、「白プロキオンを外部スタッフとして」とトンデモない冗談を述べる先生に「外注みたいになっている」と家藤さんも続けます(→本当にとんでもないです、むしろ勝手にまとめてしまってすみません)。さらに「いつも本当にありがとうございます」とお二方は丁重に御礼を述べました。動画整理という重責を任せられてしまいましたが、字幕テロップ並びに動画概要欄に拙者のブログまで宣伝して頂きました。本当にありがとうございます👏。
***
先生は「予言者と白プロキオンに乾杯」とお褒めの言葉。今回プレゼント対象👏となった5名は、夏井&カンパニーに宛先を連絡する必要があります(拙者もお二方のサイン入りの先生の句集二冊を拝受いたしました。誠にありがとうございます)。
[171]【おしゃべり俳句】第5回目!今回も可愛さ溢れる子どもの俳句がたくさん!<2021/12/16公開>
動画[141]以来のおしゃべり俳句。動画では第4回と語っていますが、正しくは第5回です。今回も視聴者から可愛い俳句が沢山寄せられたそうです。
【七瀬ゆきこ】氏からのお便り。「おしゃべり俳句には年齢が少し高めだが、夏休みにZoom子守をした。」母が仕事のため、祖母がZoomの画面を通して孫とお話されたそうで、孫(すすこ)と孫の友達の俳句(①~③)を紹介します。
①【ホップたたがわすすこ8才】「アルパカを飼いたいけれど秋の朝」。ヒンヤリとした感触の季語と「アルパカ」の単語が効いています。
②その友達【空色茸子7才】は「ながれぼしさんすうが10%すきになる」。季語により、動きや速度・角度などの算数の一要素を思わせますが、僅かを表現した「10%」という割合要素が具体的です。
③さらに、別の友達【あおいみさき7才】は「無口な子としゃべるわたしは秋の海」。俳号通り、無難に綺麗にまとまっていると述べる先生ですが、「Zoom子守」で俳句の種をまいたことに驚きます。作者のお三方は、12音を自分で考えて季語をくっつけましたが、俳号も自分で考えたそうです。
④【つばき2歳】からは「ママ大変!空が海だ!と鰯雲」。玄関のドアを開けて外を見た瞬間、大慌てで言った台詞から採取したようです。可愛すぎると感想を述べる先生に、季語の出会いとしてよいと続ける家藤さん。
⑤【一輝 高山】氏が小学生の時に弟に吐かれた暴言。「出目金って兄ちゃんよりもかしこそう」。いいじゃないかと爆笑する先生。作者の年齢は不明ですが、大人になって詠まれた句と仮定すると、相当深く心に刻まれた出来事だと察するお二方です。
⑥【新海ちえ】氏の娘【まりな7歳】から「うんどうかいパパのつなひきなみだでた」。家藤さんは自分の力だけでも翻弄される綱引きの場面描写だと予想。パパ達と対決しているのか、一緒にやっているのか、はたまた客観的に観覧しているのか。紅白に分かれて親子が参加する綱引きで、パパが一気に引いてくれたのに感動する子どもの場面だと先生は味わいます。
⑦【四葉の苦労婆】氏から【4歳の男の子しょうさくちゃん】の言葉。「マッチョなお医者さんになる月の道」。誕生日にパパから「大きくなったら何になりたい?」と聞かれた時の言葉だそう。「マッチョ」「医者」のどちらが重要かという点に触れる先生ですが、コロナ禍の実感もあるとも述べ、家藤さんから将来へ向けたエールが送られます。
⑧【ノアノア】氏の息子から「秋の風はじめてひとをたたいたの」。保育園のお迎えで報告を受け、帰り道で「喧嘩したの?」と聞いた時の息子の言葉だそう。似たような話を家藤さんの娘さんからも伺っていたエピソードを先生は話します。園児自身、先生から怒られたことを胸に明確に刻んでいることがこの句からも読み取れると家藤さん。俳句として採取して記録することは凄いことだと先生は身に沁みたように述べます。
⑨【巳智みちる】氏の友人が連れてきた女の子「ニワトリのお母さん、ほら、アマガエル」。娘さんが、子どもがいらっしゃらない巳智氏を何と呼ぶか悩んだ挙句、出た言葉から採取した一句。誰の母でもない巳智氏ですが、農家でニワトリを庭先で飼っており、そのニワトリと遊んでいる最中のため「ニワトリのお母さん」という言葉を選んだのではないかと巳智氏のコメント。巳智氏は少し戸惑ったものの子どもの感性に驚かされたようです。女児がアマガエルを見せた光景の一句ですが、先生も「○○のばあちゃん」と呼ばれることを話します。
⑩【シトリン】氏の娘より「ママは皮私はあんこ秋の昼」。娘が小さく丸くなり、「ママ上から包んでー」と言った時の言葉で「ママは大福の皮みたいなの」から採取した一句で擬人化が効いています。ここで話題は再び家藤さんのお子さんに。お子さんが果実になり、家藤さんが収穫して箱に入れる遊びをしていたそうです。
⑪【まきのいっくん】氏の小一の娘【えま】から。「お洋服が花だから蟻がくるんだよ」。可愛い一句ですが、妙に納得する家藤さん。そしていよいよ先生が選出したベスト3を発表します。ここから後ろのボードに先生の直筆の紙が貼られます。
⑫【鰯山陽大】氏の上司のお子さん(当時5歳)から。「夕涼のカルピスちょっと薄いんだけど」。先生は、職場で上司が子どもを連れてきて、客人としてカルピスを出された場面だと予想します。とてもリアルな光景で、カルピスの薄め具合は人によって全く異なると述べる先生は、濃いカルピスは裕福なご家庭で出される印象があると私見を述べます。家藤さんは漫画『ジャガーさん』の「え…、これがカルピス!?」というネタに触れて先生の爆笑をさらいます。先生は「夕涼(ゆうすず)」の季語の選択も絶妙に良く、切れがなく余韻を生む終わり方で、子の遠慮している感や作者の困惑な感情も表現された感じが良いと褒めます。「字面だと少し強い口調だが、実際は申し訳なさそうに言ってくれたのが印象的」と作者コメント。きっと上司もいい人なんだと述べますが、入選した結果報告にぜひ当動画を上司にも見てもらいたいと先生は続けます。
⑬【がっちゃん バラ好き】氏の【のりあき8歳】から「秋、夜の売店で米を買う女」。自由律俳句の世界。子どもの呟きにしてはとんでもない8歳だと述べる先生。「当時小学二年生の息子が、何やら怪しい言葉を唱えながら漢字の宿題に取り組んでいた。一つの漢字を一列ずつ練習する宿題だったが、息子のクラスでは熟語や文章にしたらそれを一列練習すればよいというルールがあった」というコメントに、実際にそのような勉強法がある点に先生は触れます。「あ~でもないなどと考えた挙句、一列で宿題を終えた息子。最後の一マスが余った所に一年生で学習した『女』を入れたところに笑ってしまった。小さな頃から楽することに知恵が働く子だった」と作者の親から。しばらくフレーズが忘れられないと笑う先生ですが、読点「、」も効いており、詩としての味わいもある作品だと称賛します。
⑭【高橋弘美】氏の離れて暮らす2歳半の孫の言葉から。「ママ掻いてしっぽのとこが痒い冬」。「しっぽのとこ」の表現がリアルで、尾骶骨だとわかる部位を具体的な場所として表しています。先のZoom子守に話を引き戻す先生は、自分の子どもの呟きを祖父母に伝えることも一種のコミュニケーションであり、話題がないと言わずにこの句のようなものを伝えてほしいと述べます。寒さの中での「冬」の季語も実感があると家藤さんが述べます。「あまり出会えないうちにどんどん言葉が増えていき、生の言葉にもっと出会いたいものです」との作者コメント。先生は、このYouTubeが記念になると思うと褒め称えます。
そして、次回第6回おしゃべり俳句への投句を当動画のコメント欄に募集するとのことです。
[172]【365日季語手帖】2022年版が完成しました!<2021/12/19公開>
昨年[64]でも紹介した「365日季語手帖」最新版の完成報告。今回で6年目となった「2022年版 夏井いつきの365日季語手帖」が2021年12月24日に発売されます(価格:1650円)。今までの本を一緒にお見せする先生ですが、今回は黄緑色の表紙に。
前回も語っていましたが、最初は同じピンク色で柄のみ変えて翌年版を出版したと述べる先生。同じ色で出す方が読者にわかってもらえると思ったそうですが、読者から「今年のはまだですか?」と逆に間違えられたため、毎年表紙の色を変えることになった経緯を語ります。
中身の構成は今まで通り、一日一句の名句と季語を紹介に加え、その句への先生の鑑賞文が365日分書かれています。読者が投句した句が「特選」となれば、名句に混じって紹介され、選評として掲載されます。
投句では「何月何日の季語に投句する」と表明が必要です。2021年版を例に先生が紹介します。1月23日の季語は「福引」のため、「福引」で投句した中からの特選句が例句として載っています。有名俳人が使った季語に自分も挑戦でき、特選となれば翌年版の例句に掲載されるのです。毎日作句する際の手引きとして利用でき、自分の句をメモするスペースが一週間分の終わりに書き込めると紹介します。
ここで、大事な変更点を述べます。2022年版からはハガキのみでの投稿受付となります(ホームページからの投稿は不可)。必要な内容さえあれば、年賀状など使い古したハガキでもOK。今回の締め切り直前に想定以上の投句が来ることで、サーバートラブルに見舞われたことも変更理由の一つのようです。
先生はハガキで送る味の良さを強調します。毎日一枚ハガキを送る方もいるそうで、週や月に一枚でもよいので作句して挑んでほしいと述べ、アナログなお付き合いになることに了解を求めます。
家藤さんは季語の難易度に言及。句を作りたい季語もあれば、きつい季語もある点に触れます。先生は、難しい季語は競争率が少ないという理由で集中的に作る人もいると述べます。【河野しんじゆ】氏の「草木零落す心の相談会」を掲載した過去に触れ、難しい季語の作句について語ります。2021年版を眺める家藤さんは「傀儡師(かいらいし)」や「網代守(あじろもり)」などはアプローチが難しいと述べます。絶滅寸前季語に狙いを定める戦略もあると先生は続けます。
読者の壮大なチャレンジの結果が2022年版にまとまっているとやや大袈裟な家藤さん。ここで、先生に「競渡(ペーロン)」の季語を見せてイントネーションを確認します。長崎の小学校で句会ライブを行った家藤さんは、校長先生から「ペー(↑)ロン(↓)」ではなく、「ペーロン(→)」とイントネーションを直されたことをご報告します。
「季語との出会いが楽しい」と率直に述べる家藤さんに反応する先生。同じことをキスマイ二階堂さんが述べており、「季語って楽しい!」という「プレバト!!」での発言を紹介しますが、妙ちくりんな季語を用いながら俳句は大体失敗していると述べます。
投句締め切りは2022年8月15日(月)、投句はハガキのみです。
[173]【12月の子規】子規シリーズ最終回!? 1月から始まったシリーズがついに...<2021/12/23公開>
動画[159]以来の正岡子規シリーズも12月に。先生の著書『子規365日』に掲載される句を毎回取り上げてきました。5月を除き毎月紹介したシリーズも仮の最終回に。今回は視聴者が作句の際に参考になる技法ではなく、子規の性格など人物像を交えて紹介したいと述べます。
①「穴多きケットー疵(きず)多き火鉢かな」。「ケットー」はタオルケットなどの毛布で、「火鉢」と季重なりです。子規は季重なりに対して厳格ではないと述べる先生は、生々しい日常の一コマの句だと語ります。大学はボート部だった家藤さん。艇庫の部室にも砂まみれで灼けたような毛布の転がっていた思い出を語ります。梅津寺の砂浜に今も艇庫があるそうで、地元トークで話が盛り上がります。この句は1897年(明治30年)の作で、その2年前に大連から帰り、船の中で吐血しています。著書の解説には「便所にも火鉢を抱えていくほどで愛用のケットー・毛布には火の粉が飛ぶことなんぞ日常茶飯事だったろう」と記しています。昔の火鉢のサイズは大小様々のようで、先生のご自宅にある火鉢に喩えて話を展開します。病床の子規とはいえ、身の回りに色んな物を置いた、日常の一端を感じ取れる一句です。病になりながらも書く仕事は続けていたという子規。
②「冬の日の筆の林に暮れて行く」。先生は一読して「筆の林」が比喩的表現に思ったといいます。文章を沢山書く文筆業としての林の中に自分が置かれ、今日の冬の日が暮れて行くという意味に解釈したと述べます。「碧梧桐(へきごとう)」の語りには、「原稿や(子規にあてた俳句の)分類で、普通人の何十倍か筆を使われる。十本ずつ買いだめの筆も時には二か月ぐらいでお終いになったかとも思われる」とのこと。十本で当時10~15銭ほどの安めの筆(鉛筆・ボールペン)を使っていたそうです。筆ペンを愛用する先生は、その日の気分によって大きめから小さめの物まで使うそうですが、子規も十本を使い回していた感覚だと推測します。先生に筆ペンを勧められる家藤さんですが「字が下手だから」と謙遜しますが、字を書くのが苦手だったと語る先生も筆にならすのが一番良いと思い、筆ペンで書くようになったようです。筆と墨壺を合わせた筆記具「矢立」に憧れていたと語る先生に対し、「不思議の国のバード」という漫画の登場人物が使うものだとマニアックな話を持ち出す家藤さん。先生は筆ペンに関して、二大メーカー「ぺんてる」「呉竹」のそれぞれの書き心地について話を展開します。7万人句会ライブでの入選句の直筆では速乾性のある呉竹製、色紙ではぺんてる製の押して液を出すタイプの筆ペンを用いてカスレなどを表現するそうです。さて、句に戻りますが「筆の林」は実在する林の描写だと解説します。
③「画室成る蕪を贈つて祝ひけり」。前書きに「不折ニ寄ス」とあり、「画室」は画家・中村不折(なかむらふせつ)のアトリエ。先生の著書によると「子規庵から200mほどの所に新しい画室を不折が開いた。12月26日の画室開きには、『祝宴に湯婆(たんぽ)かかへて参りけり』のように出かけて行った」。蕪(かぶ)を祝いに贈るが、この日の趣向は参加者持ち寄りの闇汁で蕪も使われたのかもしれないと補足します。火鉢と湯たんぽを使い分けていた生活感も見えますが、友人に何か事がある場合に祝いの句を贈るのも仲間好きの子規ならではだと語る先生。句柄に人格が見えるのが良いと家藤さんも続け、友人を思う気持ちの一句をさらに紹介します。
④「何はなくと巨燵(こたつ)一つを参らせん」。明治28年の作句で前書きは「漱石来る」。夏目漱石が子規を見舞った際に贈った句です。大連から帰った子規は養生のため、松山に赴任していた漱石の下宿・愚陀仏庵に50日ほど転がり込みますが、その冬の出来事。12月26日ころ、漱石が松山を出発して子規庵を訪れますが、漱石が松山を出発した理由は見合いだったそうで、その3日後に子規と再会しています。炬燵で見合いの話でもしていたのかと想像が膨らみます。ちなみに見合いのお相手は悪妻とも言われている夏目鏡子(なつめきょうこ)氏だったとのこと。句に戻りますが、謙遜ではないにせよ、何もないところにある種の充実感があると述べる家藤さん。子規は来訪者がいることがとにかく嬉しかったに違いないと述べる先生ですが、子規と漱石が親友だったことを知らない人も多いと述べ、ぜひそのような点も調べてほしいと促します。
最後に付録があることを予告して動画を締めました。
[174]【令和相聞歌web投票】あなたの一票が10万円の行く末を左右する!<2021/12/26公開>
動画[146]でも紹介し、家藤さんが選者のメンバーの一人となっている「令和相聞歌」の続報。既に作品募集は締め切られましたが、2021年12月14日から2022年1月4日までweb投票受付中です。
「令和相聞歌」は審査員団で一次予選通過作品を選びますが、それを通過した作品がweb上で無記名であげられ、webをご覧の方が好きな一句を投票する仕組みとのこと。作者としても選ぶ側も楽しめるシステムで、作品を投稿しなかった方でも投票はOK。投票は1人1回かつ1票までです。
「あなたの投票が最優秀賞金10万円の行方を左右する」とキャッチコピーを見事に決める家藤さん。コンテストは80文字以内の短文作品のため、俳句のほか短歌、短文詩も含まれます。
家藤さん曰く、門外漢なジャンルに関しては審査が難しかったとのこと。ただ、形式は違えど挑む題材・テーマが「恋」で共通しているため、解決の糸口はあるそうです。
先生は、若い恋や老いらくの恋、死に別れた人まで様々な「恋」があり、ジャンルが幅広く詠める題材だと述べますが、審査員を務める福井の「一筆啓上」について語ります。40字分の縦書きのマス目のついた応募用紙に、誰かに手紙を書くという形式で作品を募集。毎年出題テーマは変わりますが、審査では「自分が何を追って誰にどんな気持ちを伝えるか?」という点で統一した議論が審査員の方とできると述べる先生に、家藤さんも興味を示します。見た目の字面の印象も重要になると述べる家藤さんですが、「令和相聞歌」ではエクセルで印刷したA3用紙の束が届くのみ。
「一筆啓上」では作者の現状などを書くコメント欄が別にあるそうですが、審査員らはほとんどそこを読まず、手紙本文を審査して楽しく喧嘩するように言いたい放題主張しあうと述べる先生。表現形式が自由である「令和相聞歌」は審査しにくいのではないか?と横目で見てきたと心配そうに述べ、先生の意見に一部同調する家藤さん。恋の歌を相手に送り、なおかつ相手が送ってきてこその相聞歌ですが、手紙ではない内容のものも実際にあるとのこと。ただ、送りたい気持ち、人物関係、その人の置かれた状況などオリジナリティや作者が見えてくる良質な作品は、印をつけて残しておくと述べます。
作品のレベルも上がっていると答える家藤さん。募集人数が増えるほど良くなる部分はあるそうで、先生も何割かは詩の純度が優秀な作品が必ずあると言います。「個人的にこのYouTube動画に凄く感謝している」と切り出す家藤さんは、昨年比で作品数が2倍に増え、約4500もの作品が寄せられたことを報告します。先生は、YouTube効果よりも優勝賞金に目が眩んだのではないかとユーモラスに述べます。
なお、表彰式は2022年2月13日、香川県宇多津町内で開催予定。一次予選通過作品は71点。誰でも投票は可能なので、2022年の探りとして審査への参加もOK。審査員団は学生を含む12名で組織されていますが、家藤さんら4名の審査員は別格扱いで、他の審査員が採っていなくても一押しは推させてもらえるとのこと。ざっと作品に目を通す先生は「結構凡人なのもある」と素直な感想。投票の際に、自分を試す良い教材かもしれないと述べ、選ぶことも勉強であると参加を促します。
このweb投票の結果を参考にして、二次審査に進むようです。「令和相聞歌」で検索すれば投票可能で、ぜひ投票してほしいと述べました。
[175]【子規シリーズおまけ回】子規から俳句の教訓を学ぼう!<2021/12/30公開>
動画[173]以来の正岡子規シリーズのおまけ回。「年の暮」の句を中心とした内容ですが、先生の著書「子規365日」で最後の12月31日に掲載した句から紹介します。
①「来年はよき句つくらんとぞ思ふ」。先生は年の暮れになると、必ず心に浮かべる一句だそう。1年の終わりに来年の作句姿勢に対する抱負を思う意図ですが、来年へ鼓舞しつつ慰めつつある心境です。句帳に書き記すことでもない些細な内容とはいえ、それを句として記録するのに子規らしさがあると先生は述べます。季語は明確にないものの「来年は」に「年の暮」の雰囲気があると語る家藤さん。「年の暮」の句は子規も多く作られたようですが、一番標語っぽい句で共感できると述べる先生です。
②「うかうかと鴨見て居(こ)れは年くるる」は「鴨」「年暮れる」の季重なり。たくさん来ている鴨の動きをずっと面白そうに観察している様子。これは、俳人として理想的な年末の過ごし方だと先生は述べます。何をしないといけないとか、退屈を持て余すわけではなく、気忙しい年末の過ごし方ではないことがわかります。ここで、新年最初の「一句一遊」のラジオ収録日がいつか気にするお二方。12月28日に仕事納めの収録があり、その2週間後(1月11日)収録のようで、2022年は新年早々追われることなく理想的なスケジュールだと述べます。元日に誰もいない局に入り収録した経験もお持ちのよう(※大変お疲れ様です)。鴨がガァガァいう様子をぼんやりと見る点に可愛さを感じると述べる家藤さん。年の暮れの風情を感じられる一句です。
③「年の暮財布の底を叩きけり」は下五におかしみがある一句。小銭が少なくなった財布の底を叩く様子。お金のやりくりに困るというのも「年の暮」の表情としてありますが、家藤さんは類想感を指摘します。子規は類想や凡人とかを清々しいほど気にする人ではなく、とにかく俳句を記録して収集できることを楽しんでいたのではないかと先生は述べます。できた句が下手だからと自己否定に走らず、一回置いておく・記録に残すことが重要だと忠告するお二方。分析はしてもよいが、自己否定はすべきではないと繰り返し、子規を見習うべきだと述べる先生です。
④「居酒屋に今年も暮れて面白や」。下五「面白(おもしろ)や」の表現技法が巧みです。年末に居酒屋に行き、自分たちで「面白や」と笑っている様子。先生はこの句を見て、下五に「面白や」の句が脳内に多く浮かんでしまい、大変迷惑だったと笑いながら述べます。家藤さんもこの動画に倣い、「YouTube見て面白や」とフレーズを作ります。
12月は30日が小晦(こつごもり)、31日が大年(おおどし)・大晦日(おおつごもり)と一日単位で味のある季語があると述べる先生(※昨年末の動画[71]参照)。慌ただしさのある中、一年最後の一句をそのような季語で一句捻ってもらえれば嬉しいと語ります。家藤さんの幼少時、大年(12/31)に海辺で夕日を見に行く吟行に行ったことを語る先生。夏井いつき「大年の夕日見に来る奴らなり」は先生の伊月集に収録された一句。先生曰く愛媛県・二見の夕日のようですが、一年の最後に沈む夕日を見送り、翌朝最初の朝日を迎える小さな行事を提案する意図で、去年今年(こぞことし)を味わえる一句とのこと。家藤さんは②のうかうか鴨を見る感じとは異なる格調を感じると述べます。そして、お互いに①のように来年もよい句を作ろうと視聴者に提案します。
「よいお年をお迎えください」と語って2021年の動画を締めくくりました。
→2022年分の記事はこちらをご覧下さい。
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