2020年12月17日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。
挑戦者→本仮屋リイナ[初],加藤シゲアキ[2],升毅[4],菅原初代[初],山内健司[3],小倉優子[6],東国原英夫[60],梅沢富美男[117] ※数字は挑戦回数●お題:プレゼント
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位71点 | 本仮屋リイナ
| 風の子を見守る我ら着膨れ隊 | かぜのこをみまもるわれらきぶくれたい |
2 | 才能アリ2位70点 | 加藤シゲアキ (NEWS) | セロファンのかりかりと鳴る冬の朝 | せろふぁんのかりかりとなるふゆのあさ |
3 | 凡人3位67点 | 升毅
| 天心へ未完の脚本よ寒オリオン | てんしんへみかんのほんよかんおりおん |
4 | 凡人4位65点 | 菅原初代
| 皸割れる強情我慢の父譲り | あかぎれわれるごうじょうがまんのちちゆずり |
5 | 凡人5位52点 | 山内健司 (かまいたち) | 冬銀河届きし箱に夢を見る | ふゆぎんがとどきしはこにゆめをみる |
6 | 凡人6位50点 | 小倉優子
| クリスマス鬼滅の柄のプレゼント | くりすますきめつのがらのぷれぜんと |
7 | 名人10段★4へ 1つ前進 | ★東国原英夫
| ほしかもんはなかジャングルジム冷たし | ほしかもんはなかじゃんぐるじむつめたし |
8 | 永世名人25句目に 掲載決定 | ★梅沢富美男
| 妻よりと楽屋見舞いの加湿器来 | つまよりとがくやみまいのかしつきく |
→編集後記
→升毅(ますたけし)は4回目。ここまで全て凡人査定で、前回は68点。「途轍なし天狗の仕業秋燃ゆる」と詠み、上五でたった一文字の添削だった。
升 凡人一筋(笑)。
浜田 でも次イケるんちゃいます?
升 2点を上げに来ました。
浜田 分かりました。
***
→NEWS・加藤シゲアキは2回目。前回は「めんつゆが一・五本秋の宿」で凡人4位。小説家として5作品を発表する文才の持ち主と紹介。
浜田 そんなことあるわけない…。(本の告知は)させないですよ。
加藤 させないですか?
浜田 そりゃ凡人、才能ナシはもうさせない。
加藤 才能ないと告知もさせてもらえないですか?
浜田 当然ですよ(笑)。
***
→小倉優子は特待生候補。過去5回中才能アリを2回獲得している。
浜田 ゆうこりん、自信のほどはどうですか?
小倉 そうですね。この番組、子どもたちも大好きで「ママ絶対1位取って」って言われて来てるので、1位を獲りたいと思います。
浜田 分かりました。
***
→菅原初代は初登場。岩手県在住で”魔女”の愛称で知られる大食い女王。ラーメン29杯完食という自己記録も持つ。
浜田 大食いではしょっちゅう見ますけど、俳句で来ますか(笑)。
梅沢永世名人 (大食い記録に)凄いな。
玉巻アナ 実は中学の国語の教員資格もお持ちで、句会に参加されたこともあるそうなんです。
菅原 大食いでも1位、俳句でも1位を目指したいなと思います(笑)。
浜田 いや、是非そうなれば良いですね。
***
→かまいたち・山内健司は3回目。前回「祭りの夜氷に溺れる君を救い」で才能ナシ10点。
玉巻アナ 奈良教育大学のご出身。
浜田 どこやねん。
山内 失礼じゃないですか。「どこやねん」は失礼じゃないですか。いますから。
玉巻アナ 過去2回は凡人最下位と才能ナシ最下位という結果…。
浜田 何それ?全然結果的には何も残してないね。
山内 敗因がはっきりしてて、過去2回とも梅沢さんならこの材料をどう料理するかということで、梅沢さんを乗り移らせて書いたんですけど。
浜田 言うてた。せやな、下ろしてきてやったと言うてたもんな。
山内 全然、梅沢さんダメなんですよ(笑)。
梅沢永世名人 山内、お前。いい加減なこと言うなよ。お前の所に俺が乗り移ったら、それを消化するのがお前の頭だろ!
山内 梅沢さんがもう全然ダメでした(笑)。
***
※今回は分布結果を先に明かさずに発表。
浜田 真ん中くらい、3位からいきましょう。
▼凡人3位は升(4回連続凡人)
浜田 でもね、67点なんですよ。
梅沢永世名人 点数は良いわね。
浜田 点数は良いんですよ。
升 はぁ…。
***
浜田 升さんの1個下4位を見ましょう。
▼凡人4位は菅原
浜田 ふふっ。
***
▼凡人5位は山内
山内 お~。一歩前進です(笑)。最下位脱出です。
浜田 山内がまた最下位ちゃうんかと思ったんですけど。
山内 誰か僕より下がいますね(笑)。
***
浜田 残っているのはこの3人でございます。
加藤 コレ(=山内)以下がいるってことですよね?
浜田 そうですね。コレ以下が1人おられます。
山内 コレってやめて下さい(笑)。
加藤 いや俺、山内さんより下だったらホントに小説書けないです。
山内 やめて下さい。僕を下に見るの。
玉巻アナ という中でどこを見るかですね。
浜田 コレはもう2位見ますよ。(1位と最下位残します)。
▼才能アリ2位は加藤
梅沢永世名人 70点。
加藤 まあ…でも才能アリ。
浜田 才能アリです。
加藤 あぁ…良かった。
梅沢永世名人 1位は何点なんだろ。
加藤 本出ます!3年ぶりの小説が出ます(笑)。
※加藤シゲアキ3年ぶりの長編小説「オルタネート」新潮社が絶賛発売中。
***
浜田 さあ、残っているのはこの2人。
小倉 いやぁ~。
浜田 いやでも才能アリ獲ってるじゃない。
小倉 才能アリ獲ると、翌週はなぜか最下位獲っちゃうっていう。いや、もう…行ってほしい。
浜田 リイナさん、どうですか。
本仮屋 山内さん(5位)よりかは良いと思ったんですけど、升さん(3位)より上ではないんですよ。
山内 てなったら、ここ(最下位)しかないんですよ。升さんより下で空いてる席って。あなたじゃないですか?
一同 ははははっ。
本仮屋 (首を横に振って)まだ分からないです。違います。
▼才能アリ1位は本仮屋、凡人最下位は小倉
本仮屋 (立ち上がって)ホント?やった~!
梅沢永世名人 ゆうこりん。
山内 なるほど。
浜田 でもゆうこりん、凡人やんか。
小倉 あ、凡人。まだ良かったです。
浜田 山内とは点数的には別に対して変わらんやんか。
梅沢永世名人 2点だね。
玉巻アナ 2点差ですね。
山内 全然違います。M-1もそうですけど、1点って違う(笑)。大きな差があります。
***
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ71点 本仮屋リイナ『風の子を 見守る我ら 着膨れ隊』◎
前半はややありがちな発想だが、後半で取り戻し、「着膨れ隊」が面白い。「我ら」の位置も良く、作者が着膨れ隊の一人である存在が出る。地域を見守る人を「見守り隊」と言うが、「見守る」「隊」もささやかに連想を結ぶ。「着膨れ」の句として非常に生き生きとした臨場感・現場照明のある句だと思った。お上手。※元気な子供たちが天からのプレゼントという発想。
【本人談】3歳と1歳の息子に『かみさまからのおくりもの』を毎晩読み聞かせし、その中の一節に「元気こそが神様の贈り物」だというフレーズがあり、そこから発想を飛ばした。寒い中薄着で遊んでいる子どもたちをプレゼントに見立てて詠んだ。
梅沢永世名人 素晴らしい句。「着膨れ隊」これオシャレね。ここへ持ってきたところが、う~ん。とっても良い句だわ。
本人 ありがとうございます。
夏井先生 前半は
ややありがちな発想ではある。
後半で取り戻し、特に「着膨れ隊」というフレーズが面白かった。
さらに
「我ら」がこの位置にあるのも褒めたい。
作者自身が着膨れ隊の一人としてここにいるという存在が出る。
今どきの言葉で地域を見守る人を「見守り隊」と言うが、
「見守る」「隊」もささやかに連想を結ぶ。
その意味で
「着膨れ」の句として非常に生き生きとした臨場感・現場証明のある句だと思った。
お上手。直しはいらない。
本人 え~凄い、嬉しい。ありがとうございます。
添削なし
「着膨れ」の季語を用いて、子どもを見守る様子を描写した一句。「風の子」の始まりは手垢の付いた表現にも感じますが、絵本からの発想と聞いて妙に納得します。季語に「隊」をつける度胸とオリジナリティが良いですね。炎帝戦でかつて横尾さんが詠んだ「夏の雲ぼくら(は)日陰探検隊」と同じようなリズムで読み手へ面白さを演出し、子を見守る親心の微妙な気持ちも如実に表現されました。この方は、他の句の先生の解説時に頷く様子からも既にある程度俳句を学んでいる方ではないかと思いました。
◆2位
才能アリ70点 加藤シゲアキ(NEWS)『セロファンの かりかりと鳴る 冬の朝』◎
大きな花束か何かを包んだ「セロファン」が、冬の冷たい朝のささやかな風に鳴っている音だと最初は思う。「かりかり」という感知の部分に詩人の耳があると思ったが、実際的な「かりかり」だったと。「セロファンテープ」と置いてもよい。この句は、ほんの小さなささやかな短い時間・場面を少し掬い取る。俳句はそれで十分。【本人談】冬の朝なので、プレゼントからサンタのイメージで書いた。朝届いたプレゼントの包装を大切なものだと丁寧に剥がしたい気持ちがある。セロファンテープの端っこをかりかりと丁寧に剥がすところからワクワクする。
浜田 山内、これはもう負けを認めるよね?
山内 いや、僕は非常に浅い俳句だなと(笑)。
本人 全然悔しくない。
山内 なんでこれが70(点)なんやろ。
夏井先生 パッと読むと大きな花束か何かを包んだ、まさに
「セロファン」が冬の冷たい朝のささやかな風に鳴っている音だと思った。
「かりかり」という感知・聞き留める部分に詩人の耳があると思ったが、実際的な「かりかり」だったと。
そしたら「セロファン
テープ」と置いてもよかった。
この句は、
ほんの小さなささやかな短い時間・場面を少し掬い取る。俳句はそれで十分。
それが
分からない人がこの作品の良さに気付かない人々です(笑)。
梅沢永世名人 山内。
添削後
『セロファンテープ かりかりと鳴る 冬の朝』
時候の季語とセロファンを取り合わせ、その様子を描写した一句。句を聞いた時は、恐らくセロファンテープが冬の風に煽られるか何かで「かりかり」と鳴っているのかと理解しましたが、本人の解説が全く違うことに仰天しました。梅沢名人も「暮れてゆく秋の飴色セロテープ」と詠んでいますが、「セロテープ」はニチバンの登録商標。この句は詠み手にどんな映像を与えるかで幅のある点が気になりますが、詩的センスには長けていることをまざまざと感じた次第です。
◆3位
凡人67点 升毅『天心へ 未完の脚本よ 寒オリオン』◎
「天心」「寒オリオン」両方とも空を見上げる光景で、その間に別のフレーズが入ったのが惜しい。「脚本」を「ほん」と読ませる言い方も理解できるが、音数が足りないための無理矢理感が出た。「天心へ」を諦めて「きゃくほん」と読むよう添削する。「脚本は未完」でカットを切り、「寒オリオン」の後、天心の気分を出すために「高し」と描写。最後に視点が上に行き、祈りの視点となる。素材は良いが、勿体ないことをした。※「天心」は天の真ん中という意味。
【本人談】映画「半落ち」などを手掛けた佐々部清監督が2020年3月、次回作の準備中に下関で急逝した。自分もその作品に出る予定だったが途中で終わってしまい、「何とか形にしますよ」という監督への想いを夜空に向けてプレゼントした。
梅沢永世名人 「天心」「オリオン」と空の光景が2つ重なっているんですよね。これがちょっと余分だったかもしれないな。
夏井先生 やっぱり(おっちゃんは)さすが。
「天心」「寒オリオン」両方とも空を見上げる光景で、その間に別のフレーズが入ったのが惜しいのが1点。
「脚本」を「ほん」と読ませるのは業界用語として普通の言い方なのは理解できるが、
音数が足りない無理矢理感が出るかもしれない。
1つ言葉を諦めて「きゃくほん」と読んで全然OKに。
「天心へ」を外して、「脚本
は未完」。書き上がらなかったと。真っ直ぐ季語へ。
「寒オリオン」の後、天心の気分を出すために「
高し」と描写する。
最後に「高し」で視点が上に行き、祈りの視点に。
良い素材だが、
ちょっとしたことで非常に勿体ないことをした。
本人 ほぼ前回と同じようなこと言われてます。
浜田 そうなんですか?なぜ学習しないんですか!?
本人 そうですよね(笑)
添削後
『脚本は未完 寒オリオン高し』
追悼句のような思いを持って、冬の季語と脚本を絡めた一句。「天心」は固有名詞にも多く使われますが、意味上は天の中心というやや抽象的な概念となり、個人的には「天頂」と同義だと解釈しています。季語は「オリオン」で「寒」を入れてダメ押しする必要性があるかは議論の余地がありますが、作者の未完に終わっている脚本を天にいる亡き人物へ捧げたいという心情を込めた意図がよく分かります。追悼の想いを表現するのに天文の季語はよく似合いますが、語順は常に考えるようにしたいです。
◆4位
凡人65点 菅原初代『皸割れる 強情我慢の 父譲り』◎
兼題からなぜこの発想に行ったのかは不思議だったが、話を聞いてよく分かった。自分に性格をプレゼントをする父に連想が動いてきたと。「皸割れる」と音数が溢れたのが勿体ない。「皸」は荒れて腫れるもので、説明せずに「や」の強調で十分。中七も字余りで、「の」を取って良い。ここまで初めてやれる人ならすぐコツを飲み込む方ではないかと思った。※我慢強い性格が父からのプレゼントという発想。
【本人談】父のことをふと思い出し、少し前からあかぎれが避けて血が出ていた。ふと父とあかぎれを結び付けた。親からもらった必ずしも良いことだけではないが、自分も歳を取るとしみじみと(我慢強さ)が良くも悪くも贈り物だったんだなあと。
浜田 泣くの?(笑)
夏井先生 兼題写真からなぜこの発想に行ったのかは不思議だったが、話を聞いてよく分かった。
子どもから父に連想が動いてきたと。
「皸割れる」と音数が溢れているのが勿体ない。「皸」は荒れて腫れるもの。
【皸(あかぎれ)】 手足の皮膚が乾燥して裂ける状態のこと |
「割れる」と説明せず、「や」の強調で十分。ピッタリ5音に。
中七も字余りで、
「の」を取って良い。
ここまで初めてやれる人なら、
すぐコツを飲み込む方ではないかと作品を見て思った。
本人 夏井先生に最後希望を頂いたので、また是非番組に呼んでいただいて上を目指したいと思います。
浜田 泣くの?(笑)
山内 泣かないです。ああいう喋り方なんです。
添削後
『皸や 強情我慢 父譲り』
「皸」の様子の後、その心象的な事情を後半に表現した一句。七八五のつくりも、初心者ながらに挑戦していますが、上五は「皸や」としたい点に大概気付いた視聴者も多いはず。「強情我慢」は、他人の意見を絶対に受け入れないことを指す四字熟語で、「父譲り」で親の性格も分かります。なおかつそれを感じ取ったきっかけが「皸」なので、今まで相当無理してきたことに気付いて感涙し、俳句にするきっかけとなったのではないかと伝わってきます。大食いの方なりの独自視点で良い俳句が今後も書けるかもしれません。
◆5位
凡人52点 山内健司(かまいたち)『冬銀河 届きし箱に 夢を見る』◎
見ない夢があるなら持ってこいと気付けないのが凡人。「届く」から始める。綺麗な「冬銀河」は後半に。「に」も消し、「届きたる箱よ」と詠嘆。届いた箱が目の前にポンと置かれ、なんと可愛い箱よとなる。「冬銀河の夢よ」と韻を踏む。この向こうに子どもの夢とか親の夢とかを想像してくれる読者もいるかもしれない。【本人談】子どもが2歳半になった。(子の就寝中)届いて枕元に置いてある(プレゼントの)箱に、子どもも夢を見てほしいが、こちらもどんなリアクションをしてほしいか夢を見る。完璧やと思っていた(笑)。
梅沢永世名人 (笑いながら)これは凡人中の凡人の俳句です。
本人 何なんすか!
梅沢永世名人 えっ、山内。夢は見るでしょ。
だから「見る」なんていらねぇんだよ。お前は、俺の悪口言ってるから、こういうくだらない俳句を詠むんだよ(笑)。お前はね、俺をバカにしてるから!
浜田 もう分かったって。バカにするから怒ってるみたい。
東国原名人 彼ね、この前のインタビューでね、漫才のネタとかコントのネタを100回くらい添削するらしいんですよ。
浜田 おぅ!
東国原名人 これ全然添削してない(笑)。
山内 ちょっと待ってください。
東国原名人 添削すれば全然わかるはずよ。
夏井先生 パッと見て気付かないといけない。
見ない夢があるなら持ってこい。梅沢永世名人 見ろ!山内。
夏井先生 「見る」は不要。中七から始める。
「冬銀河」と綺麗なのは後に。
「
届きたる」と今届いた。「箱」で、
「に」の用法も損で「よ」と詠嘆。届いた箱が目の前にポンと置かれる。
何と可愛い箱よ。「冬銀河
の夢よ」と韻を踏む。
この向こうに、
子どもの夢とか親の夢とかを想像してくれる読者も出てくるかもしれない。
本人 僕は五七五の概念が凄いあるんですよ。今直していただいたのが、離れすぎてないですか?五七五から。
夏井先生 句またがりっていう技なの。
プレバト!!観てないでしょ!あんた(笑)本人 一回持ち帰らせて下さい(笑)
添削後
『届きたる箱よ 冬銀河の夢よ』
個人的には最下位でもおかしくない一句でした。「夢を見る」が平凡すぎる描写で、「冬銀河届きし」が比喩のため、全く季語が立っていません。「夢を見る」が子どもの実際の描写と、箱を開けた子どもの姿を想像する「夢を見る」を掛けたと語りましたが、発想は貧困。「届きし」の過去形と「箱に」の助詞の用法も気になります。ロマンチックな光景に「冬銀河」と大袈裟な天文の季語を使いたい気持ちも理解できますが、語った説明の中身も俳句的な詩情も読み取れません。御大にも先生にもイジられたため、芸人としては美味しかったかもしれません(最下位の句のダメな理由を当てた点は評価しています)。
◆最下位
凡人50点 小倉優子『クリスマス 鬼滅の柄の プレゼント』◎
気付いて下さいよという痛恨の凡ミス。「クリスマス」なら「プレゼント」は不要。具体的にプレゼントの中身を書く方が良い。「ペンケース」「熟カバン」「バスタオル」などなんでも良い。ここに5音となるプレゼントの中身を書いたら、最下位ではなかった。【本人談】「鬼滅の刃」が流行っている。クリスマスプレゼントを開ける前から鬼滅の柄(緑と黒の市松模様)の包装紙でテンションが上がるという句。
東国原名人 (笑いながら)平凡!(笑) 発想が鬼滅の刃のプレゼント。もう。
夏井先生 気付いて下さいよという痛恨の凡ミス。(「クリスマス」なら)「プレゼント」は不要。浜田 最低でも
何か物書けばええよね~。
夏井先生 その通り。ここに
プレゼントの中身を書くべき。
「ペンケース」「塾カバン」「バスタオル」などなんでも良い。
ここに5音となるプレゼントの中身を書いたら、お隣の方(山内)よりははるか上をポーンと飛び越せた。
山内 「プレゼント」が要らないのは僕でも分かりました。
浜田 ホンマか、お前。
本人 ホントですか?
山内 「クリスマス」がプレゼントを含んでいる。
本人 (悔しそうに)ええ~。
添削後
『クリスマス 鬼滅の柄の ペンケース』
『クリスマス 鬼滅の柄の 塾カバン』
『クリスマス 鬼滅の柄の バスタオル』
兼題「プレゼント」を用い、時事的な単語の省略語と「クリスマス」を取り合わせた一句。「鬼滅の刃」が主題歌・映画で爆発的なヒットとなり、今を生きる我々に意味が伝わりやすい句ですが、「鬼滅」と省略するのはいかがなものかというのが一点。映像で出てきた緑と黒の市松模様は、主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)の服の色ですが、”鬼滅カラー”は他にも存在し、髪色や服色を変える人も多いそうで、中七が結局何色なのか分かりにくいのも問題です。語った「包装紙」を用いた添削にはなりませんでしたが、季語が引き立たずに詩情が感じ取りにくい表現に気付けなかったご本人。6回の査定で全ての結果を2回ずつ獲得し、特待生は少々遠のいたかもしれません。
★永世名人への道★浜田 東さん、こないだのタイトル戦(金秋戦)来られなかったでしょ。(額縁を)見て下さい、こうなった(→千原ジュニアが優勝)。
東国原名人 こうなったのよね~。スケジュールに合わなくて、欠席せざるをえなかったんですよ。
浜田 そうなんですよね。
東国原名人 9月の末と10月の頭は空けてるのよ、例年。例年スペシャルは9月の末か10月の頭(の収録)だから。それが今回10月の第3週になったのよ。細かい話でごめんなさいね(笑)。
浜田 だからそれを知らないから、全員が「東さん、また逃げた」。
東国原名人 逃げるわけない!(笑)
◆『ほしかもんはなか ジャングルジム冷たし』 東国原英夫◎
兼題から「欲しい物がない」方向へと発想する力が、この作家の力。「ジャングルジム」が良く、他の遊具と比べて高い所にずっといられる点があり、寂しさ・孤独と結構相性が良い。季語「冷たし」が最後にきて、冬の風や金属の持つ冷たさを生々しく伝える。【本人談】九州出身で小さい時「プレゼントは何が欲しい?」と12月に親に言われた。親は裕福ではなく、負担を掛けたくないと思い、欲しい物はあったが「欲しかもんはなか(=ない)」と強がりでやせ我慢した。公園でジャングルジムに登った時に鉄の棒が冷たい。その冷たさが心に沁みた。
梅沢永世名人 分かりますよ。私なんか特に分かります。物凄く子どもの時貧乏でしたから。これは星来ましたよ!
浜田 そうですか、山内はどう思う?
山内 僕、裕福に育ったんで全くピンと来ない(笑)
浜田 おい!
山内 欲しい物買ってもらってたんで。
本人 腹立つわ~。
★評価ポイントジャングルジムを選んだ是非
■査定結果名人10段★4へ
1つ前進理由:寂しさと相性がいい!
梅沢永世名人 遂に来ましたね。
浜田 いややっと来たよ。リーチ掛かってきた。
夏井先生 兼題写真から
「欲しい物がない」方向に発想を持ってくることができるのが、この作家の力と改めて思う。
「ジャングルジム」が良い。遊具は「鉄棒」「すべり台」「ブランコ」と他にもある。
それらの遊具と「ジャングルジム」が他と違う最も大きな点は、
高い所にずっといられる所。
寂しさ・孤独と結構相性が良い。
季語「
冷たし」が最後に来る。
冬の風や金属の持つ冷たさを皮膚で生々しく伝える。添削なし
子どもの頃の負の心情を、台詞と光景描写の2カットで表現した力作。まず、前半の台詞でオリジナリティが出ました。九州の方言でありながら、「欲しい物は無い」意味合いが良く伝わる表現で、平仮名表記が子どもの台詞だと分かり、鍵括弧がないのもわざとらしさがなく、それを前半に持ってきた語順もご本人の意図通りです。後半は比較的表現しやすい内容に切り替わりますが、「ジャングルジム」は大人が登ることはありませんから、回想だとはっきりし、四方八方に張り巡らされた鉄の温度の質感を体中で感じ取る点に作者の後ろめたい心境も表現されました。同じような体験をした視聴者からの反響も大きかったこの句。4度目の後退から前進を4つ重ねてきた東さんですが、いよいよ永世名人が見えてきました。
★永世名人 富美男のお手本★※永世名人・梅沢富美男が50句の傑作を詠んで、俳句史に残る句集完成を目指す「永世名人梅沢富美男 傑作50選」浜田 (完成まで)もう26句。
梅沢永世名人 いやいや、でもね。ハンデがありまして。劇場公演集中している時に、この俳句を作れと来たんですよ。俳句なんて考えられますか?劇場中に。
お前ら(=スタッフ)考えろよ、少し!(笑)[永世名人のお手本披露]◆『妻よりと 楽屋見舞いの 加湿器来』 梅沢富美男◎
今の時代を役者と言う立場から切り取った。一番のポイントは最後の「来」を良しとするか否か。加湿器が「届く」「送られる」と書けば意味の上ではスルっと理解できるが、最後「来」で止めようという、決心がいったはず。加湿器を擬人化したかのような「来」の踏ん切りが出来る。やっぱり永世名人。【本人談】(名古屋の)御園座で公演をした時の話。今回はコロナ(禍)の問題で誰も楽屋に一切来れない。妻が加湿器を(楽屋宛に)送ってくれたので「来」と入れた。これは深い。今の気持ちをグッと前に出した。
本人 これをなっちゃんが分からなか…。
浜田 (指を立てて)シーッ!!(笑)
本人 すみません、はい。
■査定結果永世名人25句目に
掲載決定
理由:「と」と「来」が上手い!
夏井先生 今の時代を役者と言う立場から切り取った一句。
一番のポイントは最後の「
来」で、良しとするか否とするかで評価は変わる。
加湿器が「届く」「送られる」と書けば、意味の上ではスルっと入ってくる。
最後
「来」で止めようという、ここは決心がいったのではないか。
まるで
加湿器を擬人化したかのような「来」の踏ん切りが出来る。
やっぱり永世名人ですね。
本人 なあ、山内。どうだ!?
山内 一生ついていきます。
浜田 なんやそれ。永世名人あと何句作れば本になるんですか。
玉巻アナ 残りあと25句となりました。
浜田 25句がOKになれば、
本が出来てこの番組からいなくなります!(笑)本人 ちょっと…。
添削なし
比喩表現を用いて「加湿器」が楽屋に来た状況を表現した一句。句自体は淡々とした叙述なので、一見平凡にも思いますが、永世名人らしい工夫が隠れていました。上五「妻よりと」は、妻から直接手渡されたわけではなく、加湿器が楽屋に送られてきたその手紙に「妻より」と書かれていたのではないかと伺え、妻との距離感が近い状況にないことをほのめかしています。「楽屋見舞いの加湿器」で季語を擬人化してその場所を明確に書き込み、最後の「来(く)」の終止形で言い留める形で送られてきたと伝わりますが、「より」「見舞」と相まって何か言い足りない不穏な感じが読み取れます。舞台公演もなかなか行えないコロナ禍では加湿が重要ですから、それを心配する妻の愛情が裏にあり、加湿器が見舞いに来ること自体にも一つの嬉しさを感じるという作者の孤独感・アンニュイな心情があるような気がします。最後を「来」で終える添削は中田喜子さんの句で「簀戸抜けてラジカセの声ころがり来」など2例ありましたが、原句では初めて成功。句集完成まで残り半分となりましたが、番組卒業はまだまだ先のようです。
どの作品にも驚いた新企画バルーンアートのコーナー後半となった今回、兼題は「プレゼント」でした。恐らくクリスマスが近いことから設定されたのでしょうが、非常に広範な意味合いを含むため使いにくい兼題。どんなプレゼントを誰から貰ったのか・渡したのか、作者はどんな心境にあるのかを具体的に描写する方向性で攻めた方が作りやすい印象でした。平場の上位3名は何をプレゼントと捉えたのか、少々分かりにくい点がありますが、全体として好成績でした。
ちなみに拙句は「店内の耳鳴りめいて年の暮」で、プレゼントなどを買うデパートの店内の音響を描写。年の暮は意識が飛ぶほどの高いキーのピーの音がなぜかずっと鳴り止まずになっている店があり、それを耳鳴りと表現してみました。
さて、平場が6名と多いせいか先生の解説や特待生の指摘が短く編集されているのが気になりました。ちなみに平場6名以上いたのは、今年では3月の力士大会以来。特待生候補者回や共作番宣などのテーマ回を除くと、前回は2018年11月の「結婚式」まで遡ります。さらにその前は2016年7月の「七夕」回です。
今年は残すところ放送はあと1回。次回が記念すべき300回で、夏井先生が添削した俳句(1400句以上)をもとに才能アリ俳句を選ぶ二択クイズスペシャルです。
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