2020年11月19日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。
挑戦者→春風亭昇吉[5],向井慧[13],梅沢富美男[114] ※数字は挑戦回数●お題:オセロ
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 5級で現状維持 | ●向井慧 (パンサー) | すき焼の火弱め母とオセロかな | すきやきのひよわめははとおせろかな |
2 | 5級で現状維持 | ●春風亭昇吉
| 盤上に希望の病六連星 | ばんじょうにきぼうのやまいむつらぼし |
3 | 永世名人24句目に掲載決定 | ★梅沢富美男
| 何度目のオセロ薄目のこたつ猫 | なんどめのおせろうすめのこたつねこ |
→編集後記★特待生昇格試験★◆『すき焼の 火弱め母と オセロかな』 向井慧(パンサー)◎
「すき焼の」から始まる語順に問題がある。読み手は出来上がったすき焼を思い、「火弱め」で食後に満足して火を弱める光景だと思う。締めのうどんを入れる間にオセロで遊ぶ展開に8~9割の読み手は思う。語順は逆で、「母」の人物を先に出す。「母さんとオセロ」で「かな」はいらない。句またがりで場面を切り替え、「すき焼」の描写が大事で、状況を書く。「煮える間を」と最後の「を」で、母さんとオセロして待つ時間を出す。良い音や匂いがしてくる幸せな親子が伝わる。これなら文句なし。【本人談】子どもの頃の思い出ですき焼が大好きだった。すき焼を作って煮込んでいるが、最後の仕上げに火を弱めて煮込むだけとなる時間帯に、大好きな母と待つ間にオセロを楽しんでいるという情景。今まで使ったことがない「かな」の詠嘆を初めて使った。「あの時ホントに幸せな時間だったな」という意味を強めるために最後に詠嘆の「かな」を使った。
梅沢永世名人 今の説明を聞くと、この俳句にはなり得ないんんじゃないの。
本人 えっ?
梅沢永世名人 すき焼を食べながらオセロをやってるようにしか読めない。本人 はぁ~。
梅沢永世名人 だからダメなんだお前は!(笑)
★評価ポイント中七「火弱め」の是非
梅沢永世名人 ほら見ろ!
浜田 せっかく頑張った「かな」は何にも無かったね(笑)。
本人 「かな」は1回無視ですね…。あんなことは。
梅沢永世名人 詠嘆の無駄だ。
■査定結果5級で
現状維持理由:もう食べ終わってんの?
本人 でも梅沢さんがおっしゃったことなんですかね?
夏井先生 さすがおっちゃん。
語順に問題がある。「すき焼の」から始まるため、
読み手は出来上がったすき焼を脳は思う。
その後の
「火弱め」でもう食べてある程度満足して火を弱めておこうと。
浜田 あとうどん入れるだけとかね。
夏井先生 それそれそれそれ、まさにそれ。
うどん入れてる間に「遊びましょうか」という展開に8~9割の読み手は思う。
これは語
順が逆。「母」の人物を先に出す。
「母さん」という呼び方で良い?
本人 はい、はい。
夏井先生 「母さんとオセロ」で
「かな」はいらない!本人 ここがポイントなんですけどね(笑)。今日の一番の。
夏井先生 「かな」全然使いこなせてない!句またがりで場面を切り替え、後半に「すき焼」とし、ここからが大事な描写。
火を弱めたのではなく、今の状況を書く。
「
煮える間を」と最後の「を」が大事。
「間」=「時間」を母さんとオセロして待っている。
良い音や良い匂いがしてくる幸せな親子。
これなら文句なしにポンポンと。
梅沢永世名人 これはいいな。
浜田 先生、「かな」の使い方は、まだまだ勉強しないと駄目ですか?
夏井先生 (笑いながら)はい。
今度また「かな」について語りますから。
本人 お願いします。ホントに(笑)。
添削後
『母さんとオセロ すき焼煮える間を』
すき焼を作る時間経過と母とオセロをする光景を取り合わせた一句。兼題から思い出へ発想を飛ばし、「すき焼」の季語を見つける着眼点は良く、本人が語った通り“切れ字”に初挑戦しました。人物と動詞はこの方の十八番です。しかし、問題点の「火弱め」がいかにも散文的なため「かな」の詠嘆が上滑りの印象になり、寸詰まり感があるためリズムも悪くなりました。オセロで時間潰しをする展開なので、個人的にはすき焼の調理中の場面でないと季語が活きないと思いましたが、食後のオセロと捉えると詩情がないように見えました。特待生のため降格でない分、結果を前向きに受け取ってほしいですし、先生の「かな」解説にも期待したいですね。
→5級・春風亭昇吉は初の昇格試験。
玉巻アナ 東大出身の頭脳派ですが、2回目のタイトル戦挑戦となった先日の金秋戦では残念ながら最下位で予選落ちという結果でした。「初期の俳句はまぐれだったのでは?」という声が番組に届いています。
浜田 そやな。最初の頃めっちゃ褒められて良かったんですけどね。
梅沢永世名人 凄かったんですよ。早く名人になると思ってましたもん。
→「風信子数にあまれる失意あり」「万緑に提げて遺品の紙袋」で特待生に昇格
浜田 そうなんですよ。
昇吉 ちょっと戦術を変えました。今までは1日100句とか作ってました。全部で700句とか。
浜田 えっ?
昇吉 それがやり過ぎだったんで、ちょっとフラッと作ってみました。
◆『盤上に 希望の病 六連星』 春風亭昇吉◎
兼題写真を見ていれば「盤上」がオセロで、「六連星」の6つに繋がる星がオセロの白黒だと想像できなくもない。しかし、読み手への伝達力の点でハードルが高い。「希望の病」の造語として押し出す意図は認めたいが、活かし方に限りがある。「」(鍵括弧)で括ると造語と思いやすく、ハードルが下がる。「あり」と明確に上五で言い切り、「盤上に六連星」と続ける。私には「希望の病」が心の中にある。目の前の盤上には六連星のように白黒の石が並ぶ。そこまで寄せられるが、オセロまで何人の人が辿り着いてくかのハードルが残る。※中七は造語、季語「六連星(むつらぼし)」は「すばる」の別称(解説は玉巻アナ)。
【本人談】「希望の病」は射幸心の虜になってしまうこと。「俺イケるんじゃないか?」のような。要は勝負事で慢心したり、ちょっとした油断が命取りになる。(オセロの)盤上に六連星のように白い石が並び、「俺勝てるんじゃないか?」と思い、勝てると思って会心の一手を打つが、オセロは後半に一気に形勢が逆転するもの。そこら辺の季語とオセロの本質を取り合わせてみたが、どうかな~?
梅沢永世名人 これは頭が良すぎたんでしょうね。だから
ダメなの(笑)。
本人 ダメなんですか?
梅沢永世名人 頭が良すぎてあまりにも高いレベルで俳句を作ってしまったんで、
一般の人が分からない。説明を聞けばわかりますよ。
浜田 なるほど。
★評価ポイント中七「希望の病」の是非
梅沢永世名人 これだよ、なっ。
■査定結果5級で
現状維持理由:独りよがり!
向井 2人(とも)現状維持でパッとしないですね(笑)。こんなパッとしない結果が2個も続きます?
(査定評後)
梅沢永世名人 やっぱりそうだ。
本人 意味が分からないってことかな。
夏井先生 兼題写真を見ている人は「盤上」がオセロで、「六連星」の6つに繋がる星がオセロの白黒のことだと想像できなくもない。
これを急に出されて、
読み手にどこまで伝わるかの点でハードルが高い。
なにより、「
希望の病」が悩んだ。インターネットで調べてみた。
→先生が両手でブランドタッチをする仕草をみせる
浜田 両手で出来へんやろ。向井 そこ突っ込まないであげて下さい。
夏井先生 「
チッ」(舌打ち)。
ちょっと今カチンときてます(笑)。
「
希望の病」を造語として作者が押し出したいならそれは認めないといけない。
この
言葉を活かすのにどうするか、出来ることには限りがある。
造語を
「」(鍵括弧)で括ると、読み手は「これは造語かもしれない」と思いやすく、ハードルが下がる。
「病
あり」と明確に上五で言い切る。「
盤上に六連星」と続ける。
そうすると、
私には「希望の病」が心の中にある。目の前の盤上には六連星のように白黒の石が並ぶ。
そこまで寄せることはできるが、オセロまで何人の人が辿り着いてくれるか、最後のハードルが少し残る。
本人 先生、これ盤上と言ったらボードゲームしかないでしょ。別に将棋でも囲碁でも良いじゃない。
夏井先生 もちろんです。
将棋でも囲碁でも良いにしても中々伝わりにくい。
あなたは自分が作ってるから、世界で一番この句に対して理解があるのはあなたなんです。世界で一番自分の句を好きなのもあなたなんです。浜田 先生ちょっとイライラしてきてる。
夏井先生 はっきり申し上げるが、
「希望の病」はアンタです(笑)。向井 (本人に)論破です。完全論破。
梅沢永世名人 素晴らしい。
添削後
『「希望の病」あり 盤上に 六連星』
オセロの盤上の駒の置き方を牡牛座にある昴の異称「六連星」に比喩し、造語で本人の深い意味を込めた難解な一句。東大卒らしい発想で攻めてはいます。「希望の病」は持病を抱えた人物が、オセロに勝つ希望を表したいのか?と薄々感じましたが、「盤上に」で結局理解できず、かつ下五の季語は取り合わせの型のため比喩でないと受け取らざるを得ない印象でした。射幸心を表す序盤の展開で白石が6つの時の気持ちと形勢逆転する心情の変化による陽と陰を「希望の病」としたい意図のようですが、季語の力も比喩なら弱まるという問題点も。初心者らしい失敗で、私も100句程度作るとこういうタイプの句は大量にできますので、他人のことはいえないのですが、本人の発言などを見るに特待生としての行く末が心配になってしまいました。
★永世名人 富美男のお手本★※永世名人・梅沢富美男が50句の傑作を詠んで、俳句史に残る句集完成を目指す「永世名人梅沢富美男 傑作50選」
梅沢永世名人 もう私もね、考えてるんですよ。これ連続してボツが続くと(笑)。
玉巻アナ このペースでいきますと、句集の完成にはあと4年かかるという計算になります。
向井 あら~、かかりますね。
玉巻アナ そんな梅沢さんですけど、永世名人としての存在感は確かなようでして、先日俳句雑誌から対談のオファーが来たそうです。
梅沢永世名人 私、断りましたよ。
浜田 あ~、そうですか。
梅沢永世名人 当たり前じゃないですか。俳句は「プレバト!!」しかやらないんですから。
浜田 それはもう雑誌でもそうなんですね。
梅沢永世名人 ダメです。
浜田 あら?
梅沢永世名人 天下のNHKだって即行に断りましたよ。
浜田 あはははっ。
梅沢永世名人 これだけ「プレバト!!」愛が強い!
浜田 なるほど。
梅沢永世名人 この私がいつまでもボツを続けるのはおかしいでしょ。そこはお前ら(=スタッフ)も考えろよ!
向井 忖度なしってことですもんね。
浜田 そうですよ。それは夏井先生もそこはね。
向井 そうですよね。
[永世名人のお手本披露]◆『何度目の オセロ薄目の こたつ猫』 梅沢富美男◎
これは本当に良かった。「何度目のオセロ」で意味の上で切れるが、前半の言葉だけで現場の光景がありありと浮かぶ。「何度目」で何回でも勝つまでせがむ相手に、「やれやれ」と思いながら相手をする大人の表情が見える。カットが切り替わり、「薄目のこたつ猫」の展開。季語「こたつ猫」は、寒さでかじかみこたつの中やこたつ布団の上でじっとしている猫。「薄目」が大事で、ずっと寝ているくせに「勝った」「負けた」と声がすると薄っすらと目を開けて「まだやってんのか」と思うも薄っすらと目を閉じる猫の表情まで出る。今日は褒めましょう。【本人談】40年くらい前、姪っ子・甥っ子とオセロをした経験があるが、子どもは勝つまで止めずに何度も「とんこ爺(=梅沢本人)もう1回」とせがまれる(*)。「とんこ爺」と何度も言われ、勝つまで止めないのを思い出した。そして、ふと見た時に(こたつの)猫が「まだやんの?」って顔をして、眠いのかフニュっとしていたのを思い出してこれを書いた。
*
本人 (自分を指差し)
とんこ爺って呼ばれてたの。
浜田 知らんがな。
***
本人 ニューヨークで見てる。
■査定結果永世名人24句目に
掲載決定
理由:言葉以上の光景が見える!
浜田 久しぶりに来たな。
本人 久しぶりですよ、いや素晴らしい。
夏井先生 これは
本当に良かった。
「
何度目のオセロ」で意味の上で切れるが、前半の言葉だけで
本当に現場の光景がありありと浮かんでくる。
何回でも勝つまでせがんでくると。「何度目」に
「やれやれ」と思いながら相手をしている大人の表情が見える。
そして、カットが切り替わり、「
薄目のこたつ猫」の展開。
季語「
こたつ猫」は、寒さでかじかんでこたつの中に丸まる猫やこたつ布団の上でじっとしている猫。
「
薄目」が大事で、
ずっと寝ているくせに「勝った」「負けた」と声がすると薄っすらと目を開けて「まだやってんのか」と思って、薄っすらと目を閉じる猫の表情まで出る。今日は褒めましょう。
浜田 素晴らしい。とりあえずボタン押しましょうか。
本人 いえいえ、ちょっと待って。掲載決定ですから。
浜田 掲載はしますけど消しましょうか(笑)。
本人 いやいや、ダメ…。
添削なし
オセロで遊んだ過去の思い出とこたつ猫の表情をシンプルに取り合わせた秀句です。型の力を抜いた句で、思い出を詠んだのが今回も成功しました。御大は時間経過を思わせる描写が粋な展開になることが多く、「何度目のオセロ」の言い切りが余韻を残す独特の表現。「オセロ」とする理由がある句で、何度も挑戦したいとせがむ子の描写は、ルールが囲碁や将棋よりも簡単で取り組みやすいゲームの性質を見事に表し、御大の優しさも表しています。後半は「猫」では季語になりませんが、こたつ猫の描写で「薄目」と表情をしっかり描写し、人物とは無関係に眠そうにこたつに潜るような猫の特徴を表しており、非常に共感性・映像描写の点で優れています。ボツがずっと続きましたが、掲載にこぎつけた永世名人。再びペースを戻せるかにも注目です。
※次回のお題は「箱根の紅葉」。11/26にプロ野球日本シリーズ第5戦放送のため、どちらかが4連勝しない場合は「プレバト!!」は休止となります。
色鉛筆査定のメインコーナーの後に、俳句の特待生査定として3名が査定されるミニ企画の今回の兼題は「オセロ」でした。相手の色を挟むことで、自分の色に裏返すことができ、陣地の広さで勝敗を決する世界的に知られたゲームですが、白・黒の駒と緑の盤上という色に着眼しがち。個人的には、学生時代に受けた「アタック25」の予選会を思い出します(当時は児玉清氏司会でした)。1か月前には「トランプ」の兼題もありましたが、ボードゲーム全般で発想を広げても良い印象の一句。拙句は今回、若手俳人・着流きるお氏の査定済です。
結果はこちらからご覧下さい。
兼題のオセロを的確に捉えた御大に対し、5級の2名は粗が目立ち、ネット上でも厳しい意見が目立ちました。5級は崖っぷち特待生として下手な挑戦は出来ないので、確実な句で両者は決めてほしい印象です。
さて、永世名人の掲載句数が発表前の段階で24句になっていましたが、前回の金秋戦の句を含めても当ブログでの集計は23句と数が合いません。この点に気付いた方が多くおられたようです。当ブログでは今回の掲載決定が24句目と記録していますが、編集上の都合かもしれません。句発表前の紹介時に、「このペースであと4年」と玉巻アナから発言がありました。永世名人になって(2020/5/7)から先週までの27週で5句追加(18→23句)掲載だとすると、残り27句に146週(約3年)が必要な計算です。この辺りは収録日換算の可能性はありますが、恐らく今回で24句なのは間違いなさそうです。
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