2020年11月12日放送 プレバト!! 俳句金秋戦決勝戦結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第4回
金秋戦決勝で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。
→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細 →シード権順位発表 →編集後記⇒予選A・Bブロック記事
⇒予選C・Dブロック記事※過去のタイトル戦結果などは
こちらまたはブログカテゴリからどうぞ。
挑戦者:
シード獲得→<名人10段★1>
藤本敏史(FUJIWARA)[62],<名人3段>
立川志らく[38],<1級>
三遊亭円楽[19],
永世名人(予選免除)→
梅沢富美男[113]
予選1位通過→<3級>
森口瑤子[10],<名人6段>
横尾渉(Kis-My-Ft2)[45],<名人2段>
千賀健永(Kis-My-Ft2)[41],<名人5段>
中田喜子[43]
敗者復活→<名人2段>
千原ジュニア[54] ※数字は挑戦回数
見届け人:なし◇金秋戦2020のルール(※前回の炎帝戦を踏襲した形) 【予選】 ・ABCDの4ブロック制で、各ブロック4名が参加 ・ブロック分けは段位を考慮した上、玉巻アナが事前にくじ引きを行い決定 ・兼題はAB・CDの2ブロック単位で共通 ・各ブロック上位1名が決勝進出 ・各ブロック2位は補欠となり、4名中最も良い1名が決勝進出(敗者復活) 【決勝】 ・前回上位4名がシードで参加 ・決勝はシード4名(永世名人含む)、予選通過5名の合計9名 |
●お題:7時過ぎの時計
※順位クリックでリンク内移動します。次回の
シード権は3位までと発表されました。
1位 | 千原ジュニア | 名人2段 | 痙攣の吾子の吐物に林檎の香 | けいれんのあこのとぶつにりんごのか |
2位 | 横尾渉(Kis-My-Ft2) | 名人6段 | 流星のターミナル三分で蕎麦 | りゅうせいのたーみなるさんぷんでそば |
3位 | 梅沢富美男 | 永世名人 | 火恋し形見の竜頭巻く深夜 | ひこいしかたみのりゅうずまくしんや |
4位 | 千賀健永(Kis-My-Ft2) | 名人2段 | 震源の時計台無音の夜長 | しんげんのとけいだいむおんのよなが |
5位 | 立川志らく | 名人3段 | 谷崎のエロス潤目鰯の骨 | たにざきのえろすうるめいわしのほね |
6位 | 藤本敏史(FUJIWARA) | 名人10段★1 | 月光のひとつぶ受信電波時計 | げっこうのひとつぶじゅしんでんぱどけい |
7位 | 三遊亭円楽 | 1級 | 弁慶が時計している村芝居 | べんけいがとけいしているむらしばい |
8位 | 森口瑤子 | 3級 | 秋てふや夢の途中に時計鳴る | あきちょうやゆめのとちゅうにとけいなる |
最下位 | 中田喜子 | 名人5段 | 婚破れ振子響くや夜半の秋 | こんやぶれふりこひびくやよわのあき |
順位発表順:6位→5位→4位→7位→8位→3位→2位→最下位→1位●トーク集(クリックで展開)
藤本名人 連覇狙います。
梅沢永世名人 私が優勝しないといけないと思ってるんですよ。
夏井先生 レベルが物凄く上がってきている。
浜田 優勝になった方はあそこに肖像画が1年間飾られますよ!
玉巻アナ 東国原さんはスケジュールの都合で今大会は欠場となりましたので、秋の肖像画は絶対に塗り替えられることになります。
浜田 逃げたんでしょうか?(笑)
藤本名人 逃げたねえ。
***
→永世名人・梅沢富美男は過去2回タイトル戦制覇。2年前の金終戦で「廃村のポストに小鳥来て夜明け」と詠み優勝して以来タイトルから遠ざかっている。
梅沢永世名人 どうも。今回だけは私ねえ、プレッシャーかかってるんですよ。なぜかと言うと、四天王と言われた二人(東国原・村上)が今回欠場してますから。
浜田 永世名人が2年間あそこ(=肖像画)にきてないのはなかなかの話ですよ。
梅沢永世名人 おかしいですよ。私が落ちたほうが、番組の視聴率が上がるとみんな思ってるだろ!
一同 …。
***
→名人10段・藤本敏史は炎帝戦を2回制覇。前回「ラジオ体操おおおなもみのある空地」で優勝した。
浜田 連覇(を狙う)ということですけど。
藤本名人 そうなんですよ。永世名人の梅沢さんに勝っての優勝なので。
浜田 価値はありますよね。
梅沢永世名人 色々あったから、同情票もあったんじゃないの?
藤本名人 同情票なんてないでしょ(笑)。
***
→名人3段・立川志らくは前回「炎天のミミズ診察券のシミ」で2位となり、シード枠からの出場。同じく1級・三遊亭円楽も前回3位シード枠からの挑戦。
玉巻アナ 特に負けたくない相手が円楽さんだそうです。
志らく名人 ここで私が勝てば、もう円楽師匠はいらない(笑)。
円楽 まあ本業は私の方が上ですからね。
浜田 偉い言い合いやな(笑)。
***
→名人5段・中田喜子は予選から勝ち上がっての出場。
浜田 中田さん、今日の御着物も気合入ってるんでしょ?
中田名人 これはですね、予選の時に着た着物に、今日は気を引き締めて黒の帯を締めてまいりました。
円楽 黒帯。
浜田 なるほど。でもそろそろ1回くらいは獲ってほしいというところで…。
中田名人 1位になってもよろしいんですか?
浜田 いや全然いいと思います。
中田名人 ありがとうございます。
***
→3級・森口瑤子も予選から勝ち上がっての初の決勝。最も尊敬する名人である千原ジュニアを破った。
森口 ジュニアさんってこの番組観てると、俳句以外でも素晴らしい才能じゃないですか(絵手紙・消しゴムはんこ・スプレーアートで活躍)。さらに、それを突き詰めてコツコツ努力されるその才能も(笑)。
ジュニア名人 やめて下さい。努力なんか1回もしたことない。
藤本名人 してんますやん。
森口 してらっしゃる。
ジュニア名人 加えたばこでちゃちゃちゃですわ(笑)。
森口 妥協なくね、やられてるその姿が本当にすごいなと思って。
***
→名人2段・千原ジュニアは敗者復活戦から勝ち上がっての決勝。
ジュニア名人 この中で僕が一番レベルが低いわけですから。
浜田 今回に関してはね。
ジュニア名人 ここでもう、万が一勝ったらこれは盛り上がりますね。
藤本名人 万が一があったらね。
***
玉巻アナ ちなみにですが、今回予選を突破できなかった11人の方に誰が優勝すると思うかを聞いたところ、一番多かったのが梅沢富美男さんでした。
藤本名人 なんで?
梅沢永世名人 当然でしょ! 皆さんが、私が優勝しなきゃいけないと思ってるんですよ。
浜田 いや、ただ永世名人ってだけで名前言うたんじゃないんですか?
梅沢永世名人 (小声で)いやいや。
藤本名人 そうですよ。
梅沢永世名人 お前らホントにうるさいよ(笑)。
***
浜田 真ん中くらい。6位。
ジュニア名人 あ~、嫌やここ(笑)。一番嫌やねん。
円楽 これシード権かかんの?
千賀名人 シード権ありますよ。
藤本名人 絶対6位はシード権ないですよ、これ。
▼6位は藤本名人(シード権なし)
一同 え~!
梅沢永世名人 しょうがないんじゃない。
ジュニア名人 おい、おい。連覇どうなってんの?
浜田 全員がビックリした。
藤本名人 うそでしょ~?
梅沢永世名人 嘘じゃないよ。
藤本名人 いやな予感したのよね~。
梅沢永世名人 出直しなさい。
円楽 何があったんだ?
***
浜田 一こ上行きましょう。5位いきましょう。
千賀名人 いや、5位~。
中田名人 5位~。
藤本名人 5位はシード権ないよ。
▼5位は志らく名人(シード権なし)
浜田 シードの2人が消えたということになりました。
藤本名人 残念でしたね、志らく師匠。
***
浜田 志らくさんの上、4位いきましょう。
ジュニア名人 これはシードやで。
横尾名人 4位…。
円楽 (黙って歩こうとする仕草)
浜田 どこ行くねん。まだでしょ。まだでしょ。
▼4位は千賀名人(シード権なし)
千賀名人 お~!
横尾名人 そうきたか~。
浜田 ジュニアの顔。
ジュニア名人 (悔しそうに)行かれた~。
浜田 千賀、頑張ったな。
千賀名人 良かったです。シード?
藤本名人 いや、分からんで。まだまだ。シード濃厚よ。
千賀名人 シード濃厚ですね。
ジュニア名人 ええなあ。
***
浜田 これは1回フジモンの下あたり見てみますか。
藤本名人 よう言うたな。
梅沢永世名人 もう出直さないと。
浜田 7位ぐらいでね。
ジュニア名人 7位嫌やなあ。
藤本名人 こい、ジュニア。
▼7位は三遊亭円楽(シード権なし)
一同 あ~。
ジュニア名人 (志らく名人が)めっちゃ拍手してますやん。
円楽 志らくが喜んでる(笑)。
浜田 (ランキングシートの)3人が手を叩いて喜んでましたよ。
円楽 お前ら。
***
中田名人 2位・3位が女性2人ってどうですか?
浜田 あ、なるほど。
中田名人 いいですよね~。ねえ、森口さん。
森口 いいです。
梅沢永世名人 皆さん、よく健闘しましたね。
浜田 いよいよここで、久しぶりと言うか何年ぶりかに…。
梅沢永世名人 もちろんです。今、テレビ観ている人が「梅沢が優勝だ」と大騒ぎしてますよ。
浜田 円楽さんの下見ましょうか。8位。
ジュニア名人 うわ~。
横尾名人 8位?
藤本名人 梅沢さん、梅沢さん。
ジュニア名人 (祈る仕草で)梅沢さん、梅沢さん。梅沢さん、8位。
円楽 (おいでおいでの仕草で)
梅沢永世名人 何を言ってるの?
▼8位は森口瑤子(シード権なし)
森口 そうか。
浜田 まずは森口さんが8位。最下位ではなかった。初めて決勝来てね、上位に入るのはなかなか難しい。
***
浜田 残っているのはこの4人。キヒヒヒ…。もう全然聞いてへんし、人の話(笑)。これじゃあ3位見ますか。
中田名人 3位、3位。
ジュニア名人 3位でええわ。
梅沢永世名人 まぁ、シード権貰えるからね。
▼3位は梅沢永世名人(シード権あり)
千賀名人 えっ?
藤本名人 3位ですやん。
玉巻アナ 梅沢さん。
浜田 「シード権もらえるからね」って。はははっ。
藤本名人 貰えるけど、3位ですやん。
浜田 どうぞ、プリーズ。いや、ホントにタイトル獲れない永世名人ですね。
梅沢永世名人 いやいやいや。違う。今回自信があったの。おかしいでしょ。
藤本名人 いや、おかしくないですって。
梅沢永世名人 番組的にもおかしいだろ、お前(笑)。
藤本名人 いっつも言いますやん。
***
浜田 残っているのは、予選通過の3人(横尾名人・中田名人・ジュニア名人)。あら~凄い。
玉巻アナ ちなみに予選を勝ち抜いて優勝した方は今まで1人もいません。
浜田 いないです。いないです。
玉巻アナ 今回の優勝は初の快挙となります。
ジュニア名人 あ~そうか。
浜田 予選で来た人間で優勝ですから。凄いですよ、これ。
一同 …。
浜田 これ、多分何聞いても言えへんから、この状況やから。
千賀名人 ドキドキしちゃって。
浜田 これはもう1位と最下位残しましょう。2位。
横尾名人 あ~もう。
ジュニア名人 2位でええわ。
中田名人 2位お願い。
▼2位は横尾名人(シード権あり)
横尾名人 1位いきたかったけど。
浜田 2位やったね~。
→中田名人・ジュニア名人が厳しい顔を見せる
浜田 ジュニアと中田さんの顔がめっちゃおもろいんやけど。
***
浜田 いよいよ。どっちが勝っても初優勝。
中田名人 もう…、心臓がね…。
浜田 中田カメラはどこにあるんでしょうか(笑)。
中田名人 心臓が飛び出しそう。
ジュニア名人 ノーコメントで。
藤本名人 何か言いなさいよ。
ジュニア名人 え~!
▼優勝はジュニア名人(シード権あり)、最下位は中田名人(シード権なし)
ジュニア名人 (立ち上がってガッツポーズし)うお~!
横尾名人 すごっ。
ジュニア名人 え~!?
中田名人 うそ~、ほほほほ。
浜田 中田さん、ここで2つじゃなしに、下(8位・9位)で女子2つに。
中田名人 いや、ショック。
ジュニア名人 中田さ~ん。
中田名人 もうボロボロ。あ~ショック。
藤本名人 お芝居!1人芝居。
中田名人 いやいやいや、あ~。
***
ジュニア名人 ありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しい。
浜田 ジュニアは敗者復活から優勝してますから。
横尾名人 おめでとうございます。
ジュニア名人 ありがとうございます。
***
●それでは順位別に見ていきます
1位
◆『痙攣の 吾子の吐物に 林檎の香』 千原ジュニア◎
「痙攣の吾子」で状況と自分の子どもだと分かる。「吐物」の後の「林檎の香」の展開に驚く。生々しいリアリティーで、香りがした途端、食欲のない子にすりおろしたのか、大好きな林檎なら食べれるのではないかと親心を思わせる。吐物からの展開に親の切なさも出る。最後の問題。「林檎」の季語は吐物のため、確かにおいしそうではないが、この林檎の存在感は抜き差しならないものがあり、季語と認めないと主張する人に対して、逆に「無季」と言い切っても良い。このリアリティーの前に、この人が真っ当な親であること。しかもこの句は「吐物や」なら終了していた。1回私が指摘したことを吸収して復習した上の結果。真面目な学びようを皆が受け止めてほしい。藤本名人 なるほど。
【本人談】子どもが初めて熱性痙攣(けいれん)になり、(子を抱いて)バタバタと(して)時間が止まってどうしようと思い、(子の頭が)真っ白になった。(抱っこをしている時に子は自分の肩に)吐いたが、食べてた林檎の匂いがしてハッと現実に戻るという。
藤本名人 泣きそうですね。これはホントに。20代前半の触るもの皆全部傷つけてたんですよ。そのジュニアがここまで子ども愛溢れたパパの俳句を詠めるとはね。
梅沢永世名人 良い句ですね。凄い良い句です。ただ1つ私には解せないことがある。私は果物の句を(以前)詠みました。まくわ瓜(「肩上げのなおたくし上げ冷やし瓜」)。なっちゃんは「
果物はもっと美味しそうに詠め!」と私をボツにした。「林檎の香」は戻したもので、私は美味しそうに見えない。感じない。
夏井先生 おっちゃんの指摘は大事な所を言っている。
「
痙攣の吾子」で
状況と自分の子どもだと前半で全部分かる。
「
吐物」の後の「
林檎の香」の展開に驚く。
生々しいリアリティー。
香りがした途端、
食欲のない子にすりおろしたのか、大好きな林檎なら食べれるのではないかと親心を思わせる。
吐物からの展開に
親の切なさも出る。
最後の問題。
「林檎」の季語は吐物であるため、確かにおいしそうではない。
果物・食べ物の季語は「美味しく」が基本であるが、この
林檎の存在感は抜き差しならないものがある。
季語と認めたくないと主張する人に対して、逆に
「無季だと思って結構」と言い切っても良いと思う。
このリアリティーの前に、私たちは
この人が真っ当な親であること。
しかも、予選の句(「鍵盤図弾く兄の背や秋の暮」)は「兄の背や」で切り、「に」にすべきだと言った。
この句は「吐物
や」なら終了していた。
「に」して季語を活かすと。
1回私が言ったことをちゃんと吸収して復習した上でこれ。
藤本名人 偉い。
浜田 真面目!
夏井先生 真面目な学びようを皆が受け止めてほしい。
本人 違います、違います。
浜田 これはもう完璧な優勝になりました。
添削なし
熱性けいれんを起こした我が子に着目し、その吐物に含まれた林檎の香と取り合わせた一句。非常にリアリティーのある体験を描写した句で、読み手も経験の有無で共感性も左右されます。兼題から離れすぎているとご指摘もございましたが、実際に一分一秒を争う「熱性けいれん」を中七までで描写しており、親の立場としてパニックとなり時間が止まるようにも感じたことも理解できます。下五「林檎の香」の季語の扱いについて番組内で取り上げられましたが、大変な状況下で林檎の香りに気付いた作者のハッとした感覚を素直に切り取った点が良く、体調が優れない子にすりおろして与えた林檎だと想像できるため、「林檎」以外では成立しないと思いました。全体として陰・陽・陰・陽と緩急が効いてインパクトのある句に仕上がっていますが、ジュニア名人の感受性の豊かさと絶対に想像で書けない点に強さがあると思いました。
2位◆『流星のターミナル 三分で蕎麦』 横尾渉(Kis-My-Ft2)◎
「流星のターミナル」は良いフレーズで、長距離の夜行バスかなんかを思った。「流星」が秋の季語となるが、「ターミナル」が普通のターミナルではなく、銀河鉄道の夜みたいなものにも1回見え、微量のロマンチックもある。後半に「三分で蕎麦」という実感・慌ただしさに持ってくる。ここが成長した点。今まではロマンチックの沼にズボズボと沈んでいくことがあったが、そうではないと分かったのが素晴らしい。10音+7音で足すと17音の破調も上手い。この語順は、出発しそうな乗り物を横目で見ながら急いで食べていると。自分の思い通りの語順に持ってきている。新鮮で良い。【本人談】次の電車・バスが来るまでに小腹が減るが、少しだけ時間があるなとパッと見ると立ち食い蕎麦屋があった。ここでご飯を食べて次の現場に向かおうかなと。
千賀名人 「流星のターミナル」が凄く良い綺麗な句だと思います。そこに「三分で蕎麦」というあるあるをくっつけてるところが凄い好きです。
梅沢永世名人 (やや切れ気味に)素晴らしいと思いますよ。はい。これは優勝か、第2位でしょ(笑)。
浜田 そらそうですよ。優勝か2位ですから。
梅沢永世名人 私の句と横尾君の句が1位2位ですよ。それより良い句を詠んだんですか?(残った)2人(のどちらか)が?
浜田 ていうことになりますよ。2人残ってますからね。
梅沢永世名人 見せてもらおうじゃないの!
夏井先生 「
流星のターミナル」は
良いフレーズで、長距離の夜行バスかなんかを思った。勿論列車でもフェリー乗り場でも良い。
「流星」は秋の美しい季語だが、その後の「ターミナル」が
普通のターミナルではなく、銀河鉄道の夜みたいなものにも1回見える。微量のロマンチックも入っている。
このままロマンチックで終わったらちゃんちゃんだが、「
三分で蕎麦」という
実感・慌ただしさに持ってくる。
ここが横尾さんが成長した点。
今までは
ロマンチックの沼にズボズボと沈んでいくことがあったが、そうではないと分かり始めたのが素晴らしい。
10音+7音で足すと
17音の破調も上手い。
この語順は、
出発しそうな乗り物を横目で見ながら急いで今食べていると。
自分の思い通りの語順に持ってきている。新鮮で良い。
本人 ありがとうございます。
添削なし
天文の季語「流星」を修飾する手法を用いて、俗な食事動作を後半に取り合わせた五五七の破調の一句。「流星のターミナル」が面白い修飾表現で、「流星」は映画『君の名は』のイメージが強く残る人も多いはず。彗星などの塵が大気中に落下する天文現象のため、下手に受け取ると駅に隕石でも落ちたのかと思いかねませんが、天文だけにロマンチックな光景が想起され、九州を走る「ななつぼし」などの駅などを思い浮かべます。後半は蕎麦をあっという間に食べる動作ですが、いち早く別の行動に出たい人物の衝動のようなものを感じ、個人的には「流星」を観測したい人物の行動にも思いました。昨年の金秋戦は「天泣のプラチナ通り檸檬の香」で3位だった横尾さん。緩急も対比を効かせ、成長を感じさせました。
3位◆『火恋し 形見の竜頭 巻く深夜』 梅沢富美男◎
これは良い句。キッチリ出来ており、思いも伝わる。「火恋し」は秋の季語で身近に火が欲しくなって来る時季を指し、秋の深まりで朝晩が冷えてきている。「形見の竜頭」で時計を表現している。竜頭を「巻く」のは当然だが、「深夜」の時間帯も良い。「巻く」の動作を入れ、深夜に一人で偲びながら巻いていると分かる。「巻く」の行為は亡き人の時間を動かし続けたいという想い。最後に「深夜」としっとりと持ってきたのもとても良い。50句集めてるが、この句も入れてあげたい。浜田 あ、なるほどね。ふーん。
【本人談】去年は母親・おば・兄貴まで亡くした。兄貴にプレゼントした時計はローレックスの高いもの。兄貴の最期の言葉で、「これを富美男に返してくれないか?俺の形見だと思って持っててもらいたい」と遺言があった。それで、竜頭(腕時計のねじを巻くつまみ)を巻いておかないと兄貴の思い出が消えていくなと思って、深夜に巻いた見事な俳句。
浜田 「ロレックス」ね。
本人 「ロレックス」です。当時87万円したんです。
ジュニア名人 メーカーどこですか。
本人 ローレックス(笑)。これがなぜ3位なの?見てみようじゃないですか。納得させてもらおうじゃないか、なっちゃん。
夏井先生 これは良い句。
キッチリ出来ており、思いもちゃんと伝わる。
「
火恋し」は
秋の季語で身近に火が欲しくなって来る時季を指し、秋の深まりで朝晩が冷えてきていると。
「
形見の竜頭」で
時計と言わなくてもそれを表現しているのも上手い。
竜頭を「巻く」のは当然だが、
「巻く」の動作を入れて「深夜」の時間帯も良い。
深夜に一人で偲びながら巻いていると分かる。「巻く」の行為は
亡き人の時間を動かし続けたいという想い。
最後に
「深夜」としっとりと持ってきたのもとても良い。
50句集めてるが、この句も入れてあげたい。本人 いや、なっちゃん。少しは番組のことも考えろよ。こんなにみんなのレベルが上がったのは誰のせいだと思ってんだ!
夏井先生 私のおかげ。
浜田 直しなしで3位か。
本人 そんな馬鹿な!
添削なし
季語「火恋し」に亡き人の形見の時計を触る動作を描いた字足らずの一句。この句も優勝でもおかしくない印象でした。さり気ない字足らずは「火、恋し」とワンテンポ置く感覚で、寒くなる秋に火が恋しいという孤独な心情が如実に表現されています。日光の有名な滝の名前かと思った「竜頭」も「巻く」で腕時計だと想起され、非常に手馴れた言葉遣いです。最後の「深夜」で時間帯も分かりますが、季語を「秋夜」などとせず、上五に集約させたのも永世名人らしい工夫ですが、恐らく先生は作者を見破っていたはず。御大は過去にも「身近な亡き人」を想起する句を詠んでいますが、俳句に読まれやすい題材のため優勝の判断がなされなかった可能性も。悲運の永世名人、次回リベンジできるでしょうか。
4位◆『震源の時計台 無音の夜長』 千賀健永(Kis-My-Ft2)◎
「震源の時計台」の書き方では時計台が震源のど真ん中のような印象。「噂の震源」のような表現もあり、本当の震源でない捉え方をされる可能性がある。簡単なこと。「地」と入れるだけ。そうすると語順を変えた方が良い。「時計台無音」から始めて、なぜと思わせてカットが切り替わる。「震源地の夜長」で後半を作る。「無音」でなぜと思ったものが、後半に答えとして出る。夜長がしみじみ・静けさが増す。勿体なかった。梅沢永世名人 あ~惜しいな~。
【本人談】キスマイで以前に北海道の時計台にライブの時にみんなで行った。コロナの時期に北海道で地震があって、あの時計台大丈夫かなって思ってたことを思い出した。それを題材に、地震があった時の時計台は、秋なので夜も長い。無音の雰囲気が今回の句の一番のポイントかなと思って。
横尾名人 「無音の夜長」は凄いかっこいい、千賀らしいなと思う。どこの時計台か分からないなと僕は思うんですけど。
浜田 これが出た途端に永世名人が「惜しいな~」って聞こえたんですよ。どういうことでしょう。
梅沢永世名人 「震源の」が惜しい。これを入れると、時計台の下が揺れてるのか、時計台自身が揺れてるのか、グダグダしちゃう。本人 でも地震が起きた後の「時計台」なんです。一応。
梅沢永世名人 永世名人(笑)。
藤本名人 (本人が)困ってますやん。
浜田 有無を言わせない。
梅沢永世名人 助言してるのよ。
本人 ですよね。
梅沢永世名人 何でも上の人から、お芝居でも歌でも踊りでも1回「はい」って言っとくんだよ!(笑)
本人 …はい!
浜田 確かに、それはそうですよね。
梅沢永世名人 「はい」って言わなきゃ。人間大きくなりませんよ。
本人 はい。
夏井先生 議論しているのか脅してるのか分からないが、おっちゃんの指摘している部分はとても正しい。
「震源の時計台」の書き方では、時計台が震源のど真ん中のような印象。
「噂の震源」のような表現もあり、本当の震源でない捉え方をされる可能性がある。簡単なこと。「
地」と入れるだけ。そうすると
語順を変えた方が良い。
「
時計台無音」から始めて、なぜと思わせてカットが切り替わる。
「
震源地の夜長」で後半を作る。「無音」でなぜと思ったものが、後半に答えとして出る。
夜長がしみじみ・静けさが増す。これやってたらアンタ、今日は勿体なかった。
浜田 みんなだからちょっとずつ(惜しい)ですね。
夏井先生 そうですね。
梅沢永世名人 これはいいね。
本人 全然良いですね。展開もあるし。うわ~悔しい。
梅沢永世名人 どうして俺が言った時にそれを言わないの?(笑)
本人 「はい」。でも「震源地」って…。
藤本名人 1回「はい」って言うたもんな。
添削後
『時計台無音 震源地の夜長』
恐らく2018年の北海道胆振地方の震災を句材とし、時計塔と聴覚の描写を重ね合わせた一句。兼題から有名な札幌時計台へ発想する人が1人はいると踏んでましたが、「無音」と取り合わせたことで、洒落た句になりました。実は「震源」か「震源地」かは、あまり問題ではありません。地震が発生するのは地下であり、地表面は「震央」となるため、梅沢名人の説明は変なのですが、そう思わせる原因が「震源の」の「の」で、「に」「は」にも置き換え可能なため、助詞として機能的でないのが残念。原句では「時計」「夜長」が離れているため弱冠説明臭いのですが、添削でスッキリしました。4位とはいえシード権なしの結果でしたが、次回の予選から頑張ってほしいですね。また、コロナウイルス陽性報道がありましたが、元気な姿での復帰を待ちましょう。
5位◆『谷崎のエロス 潤目鰯の骨』 立川志らく◎
兼題からの発想を飛ばし方はギリ限界の句。話を聞くまでは「潤目」と言わず「鰯の骨」の後に骨を描写すれば良いと思ったが、「潤目」を活かしたいのが作者の想い。本来秋の季語である「鰯」を諦め、「潤目鰯」を「潤目」と省略し、「潤目の骨」と書けば「鰯」と通じる。「エロス」と「骨」をつなぐ描写が欲しい。「刺さる」「柔し」「ウザい」など骨に対する描写にすれば、「エロス」と釣り合うような季語の描写となる。最後の描写はご自身で完成させてほしい。これも今日は上位に行けた。勿体ない。浜田 ふふっ。
※五七五の定型を崩した破調の句。
【本人談】時計に関係ないように思えるかもしれない。谷崎文学賞では受賞者に正賞(※正しくは「副賞」)として時計を贈呈する。谷崎潤一郎(1886~1965)は独特な美意識が特徴の小説家で、谷崎の作品を読むと実に官能的になる。潤目鰯(うるめいわし)で(酒を)一杯やる時に、潤目鰯の骨までも官能的に見える。「潤目」と名前の「潤一郎」の「潤」を引っかけて遊んでみた。
円楽 「潤一郎」と「潤目」は面白いと思う。こいつまた破調が好きすぎる。作風が嫌い(笑)。
ジュニア名人 仲良くしてくださいよ。もう。
浜田 文句ばっかりやもーん。
藤本名人 仲悪すぎる。バチバチやないですか。
円楽 好き嫌いはあっていい。芸事だから。
梅沢永世名人 これ七五調にやってほしかったですね。
「潤目鰯」って書かなくてよかったと思う。「鰯の骨」なんちゃらとかで、五七五に収めた方がシャレてると思う。
夏井先生 おっちゃんホントに、人の句は見事に分析して偉い。
発想を飛ばし方はギリ限界の句。
話を聞くまでは「潤目」と言わず「鰯の骨」の後に骨を描写すれば良いと思ったが、「潤目」を活かしたいのが作者の想い。
本来
秋の季語である「鰯」を諦め、「潤目鰯」を「潤目」と省略し、「潤目の骨」と書けば「鰯」のことだと通じる。
「鰯」の3音が余るが、
「エロス」「骨」をつなぐ描写が欲しい。
「刺さる」「柔(やわ)し」「ウザい」など骨に対する描写。
「エロス」と釣り合うような季語の描写となる。
最後の描写はご自身で完成させてほしい。
これも今日は上位といい勝負だった。勿体ない。
本人 あとは円楽師匠が下位に行くことだけですね(笑)。
円楽 嫌な奴だな。
添削後
『谷崎の エロス潤目の 骨刺さる』
『谷崎の エロス潤目の 骨柔し』
『谷崎の エロス潤目の 骨ウザい』
十八番の人名と潤目鰯と取り合わせた情動的な破調の句。兼題からの発想の飛躍の仕方にも驚きますが、「エロス」を持ってくるのが挑戦的。固有名詞は三島由紀夫以来実に11度目で、「の」を用いた対句表現と完全に志らく劇場となった句で読者の好き嫌いを選びます。小型の潤目鰯は煮干しになりますが、目の潤んだ様子がまさに官能的だという気付きは独特です。「谷崎」が誰を指すかが読み手に理解されるかという点と、「エロス」「骨」の呼応が弱いのが気になりますが、少なくとも突飛な発想の点で初心者には書けない一句で先生の評価も高め。円楽師匠に言われた通り、そろそろ定型句を見たいと思うこの頃です。
6位◆『月光の ひとつぶ受信 電波時計』 藤本敏史(FUJIWARA)◎
発想は瑞々しくて好き。「月光のひとつぶ」は一粒を手にのせられたような印象があり、「電波時計」がそれを受け止めるという発想も良い。「受信」と説明しなくても、電波時計は月光の一粒の受けたと読み手に思わせてこそ。「ひとつぶ」で切れがあり、前半の感触を3音以下のオノマトペ「ぴくん」や「つん」などで、秒針が揺れる動きを表現する。後はあなたの力で完成させてほしい。完成したら1位になっていたかも。【本人談】電波時計は自動で誤差を修正する。月の光のパワーを少しだけ借りて受信して修正しているのかなと思った。
ジュニア名人 いや、いいですね。「光のひとつぶ」がまるでタピオカみたい(笑)。
本人 強引すぎる。
梅沢永世名人 これは6位でしょ。
「電波時計」なら「受信」するでしょ。いちいち「受信」と書かなくたって。出直しなさい。
本人 でも~、光を受信するのは入れとかないといけないのかな?
梅沢永世名人 出直しなさい!
本人 光を受信するってのが。
梅沢永世名人 あーそう。
本人 「あーそう」って(笑)。
夏井先生 この議論はおっちゃんの勝ち。
凄くこの発想・素材は瑞々しくて好き。「
月光のひとつぶ」は
一粒を自分の手にのせられたような印象があり、「電波時計」がそれを受け止めるという発想も良い。ところが、「受信」と
説明しなくても、電波時計は月光の一粒を受けたと読み手に思わせてこその10段。
「受信」が勿体ないので消す。
本人 でしょうね。
浜田 おいおい。
本人 どうしましょう、先生
夏井先生 「ひとつぶ」で切れがあり、前半の感触を3音のオノマトペで表現する。
「ぴくん」や「つん」。秒針が揺れる動きをオノマトペで表現する。
ここから後はあなたの力で完成させてほしい。
完成したら今日は1位になってもおかしくなかった。
本人 そうですね。「月光のひとつぶタピタピ」、あ、タピタピちゃうわ(笑)。
添削後
『月光のひとつぶ 電波時計ぴくん』
『月光のひとつぶ 電波時計つん』
季語「月光」を合わせ、ロマンチックな光景を時計に託した一句です。内容や発想は良く、「ひとつぶ受信」で月の光を光波や電磁波として受け取る時計という点に詩情があり、「ひとつぶ」と平仮名表記にした辺りも微かな弱いものでも感じ取ったとする点を強調しています。ただ、炎帝戦の優勝句「おおおなもみ」で味をしめたのか自然科学の内容に媚びてきたような印象もあります。後半の名詞の畳みかけは気になる所で、個人的には「受信」を活かして「電波」を捨てた方が詩としての味わいがある気がしました。シード権を失った10段、次回奮起してもらいましょう。
7位◆『弁慶が 時計している 村芝居』 三遊亭円楽◎
非常に俳諧味のある場面で、円楽さんらしい持ち味だと思う。「弁慶」という素材から着地する語順も良い。「している」が勿体ない。"弁慶が時計をしている"という叙述では、弁慶が脚本・演出としての台本だと読まれる可能性が残っている。弁慶がうっかり時計をしていたと分かるダメ押しが必要。「が」も勿体ない。ここは「は」。他にも何人かいるけど、この弁慶はと指差す感じで他の人はミスをしていない。「したまま」とすれば誤読は一切ない。※「村芝居」は秋の季語。
【本人談】(撮影現場で)高橋英樹さんが「よーい!本番!スタート!」と言った時に、スリッパを履いたまま「許さん!」と出てきて、それでNGになった。そんなドジが東映では多くて、それをフッと思い出した。(芝居で)弁慶が見得切って、六方踏んで「トントントントン、カーン」と見栄切った途端に、掛け声が「時計屋!」という。こういうほのぼのとしたのが好きなの。
本人 (志らく名人の)谷崎とかカタいの。
志らく名人 先輩に対してまことに申し訳ないが、
「時計している」が散文的になっている。
本人 お前の落語の方が散文的だぞ(笑)。
浜田 ケンカすなっての。
藤本名人 やめましょ×2。
志らく名人 身分制度の中で、「お前の方が上手いぞ」とは言えない。
円楽 梅沢さんの言う通り。お前も「はい」と言え。
志らく名人 はい。
夏井先生 非常に俳諧味のある場面を切り取っていて、作者が分かってみるとなるほどと、円楽さんらしい持ち味だと思う。
「
弁慶」という素材からいって
着地する語順も良い。志らく名人の指摘は当たっている。
「している」が勿体ない。"弁慶が時計をしている"という叙述では、弁慶が脚本・演出としての台本だと読まれる可能性が残っている。明らかに弁慶がうっかりしてたと分かるダメ押しが必要。
「が」も勿体ない。
ここは「
は」。他にも何人かいるけど、この弁慶はと指差す感じ。他の人はミスをしていない。
中七は「
したまま」。これならば誤読は一切ない。
本人 「したまま」か。
梅沢永世名人 この句は好きですよ。ちょうど私この後名古屋に行くんですよ。ようやくお芝居で決まったんです。御園座で弁慶やるんです。
→『梅沢富美男劇団 特別公演』は11月14日~23日に名古屋の御園座にて。
浜田 番宣ですね。はい。
梅沢永世名人 (スタッフに)お前ら、手伝えよ。この野郎(笑)。
添削後
『弁慶は 時計したまま 村芝居』
歌舞伎の演目「勧進帳」の弁慶がうっかり腕時計をして演じた場面を描いた一句。この発想は非常に粋で、落語家らしく飄々とした味わいがあります。何かの演目を演じる際に「腕時計」をしたまま出てしまう失敗は非常に共感できます。上五「が」・中七「している」と散文的な描写は恐らく意図があり、「弁慶」が昔の記録に留まらず、現代の光景だと強調したかったのかもしれません。田舎で興行する芝居を指す季語「村芝居」にその意図は内包されていたと考えるべきでしょうか。7位と低評価に沈みましたが、この句は反響が大きく、志らく名人にも堂々と句風と芸風の嫌いを指摘した円楽さん。その素晴らしい姿勢を貫いてほしいものです。
8位◆『秋てふや 夢の途中に 時計鳴る』 森口瑤子◎
詩心が十分にある。最後の着地がオチになり、夢の途中で目覚まし時計が鳴りましたで終わる。オチにせず夢うつつの中に微かに聞こえる感じにすると、上五・中七が俄然活きてくる。「鳴る時計」とすれば、「鳴る」は動作ではなく時計の方に軸足がいく。さらに。助詞の「に」を「を」にすべき。「に」はその途中のワンポイントを指すが、「を」は途中の経過していく時間をぼんやりと表現し、夢うつつの中で微かに聞こえてきたという感じになる。助詞の選択は難しいが、今日は善戦した。【本人談】普段の生活。よくわからない実体のないものを追いかける夢をよく見る。それが実は良いものの気がするが、見てる途中に必ずアラームの音で目が覚めてしまうのでそれを詠んだ。
梅沢永世名人 語順が悪い。
「時計鳴る」ではなく「鳴る時計」の方が、非常にリズムが良いですね。綺麗すぎて、綺麗に書いたなと思うだけの俳句。
夏井先生 そんなひどい言われようするほどではない。
詩心が十分にある。
まさに着地の所で、おっちゃんは偉いね。ちゃんと分かる。最後の着地がオチになった。
夢の途中で目覚まし時計が鳴りました、チャンチャンで終わってしまう。
オチにしないで、
夢うつつの中に微かに聞こえる感じにすると、上五・中七が俄然活きてくる。
「時計鳴る」ではなく「
鳴る時計」に。「鳴る」は動作ではなく時計の方に軸足がいく。
さらに、助詞の「に」を「
を」にするべき。「を」は経過する時間・場所を意味する。
「に」はその途中のワンポイントを指すが、「を」は
途中の経過していく時間をぼんやりと表現する。
夢うつつの中で微かに聞こえてきたという感じになる。
助詞の選択は難しいが、今日は善戦した。
本人 先生のYouTubeを観て、助詞の回を何回も観たのにまだ足りなかったですね。もう1回見直します。
添削後
『秋てふや 夢の途中を 鳴る時計』
季語「秋蝶」を歴史的仮名遣いで表現し、夢の中での光景と現実感のある時計の対比を描写した一句。目覚まし時計のアラーム音で無理やり夢から引き戻されるが、それは夢の中でも鳴っていたように感じる経験は多くの人が共感できるでしょう。夢に「蝶」が出てくる人物は、心理的にダメージを受けているようにも感じます。全体的に散文的な叙述でしたが、季語に実体がなく夢であったという点が評価を下げた要因の一つかもしれませんが、兼題に真っ直ぐ挑戦する姿勢は評価されるべきです。先生への賄賂として、著書とYouTube動画をちゃっかり紹介した森口さん。今後に期待したいですね。
9位◆『婚破れ 振子響くや 夜半の秋』 中田喜子◎
そんなに嘆くほどではない。問題点は時間が長すぎる。「婚破れ」から始まるため、破れるまでの色んな経緯を読み手は思う。「振子響く」で響くのも小さな時間がある。最後の季語「夜半の秋」でもまた時間が出てくる。「や」も強すぎた。時間軸を短くするだけで、簡単なこと。「振子音響く」とし、最後に「秋夜」とする。「秋の夜」がポツンと最後に残り、「しゅうや」の響きが寂しげになる。これやっとけば、上位。浜田 うん。
梅沢永世名人 うんー。
本人 ちょっと待ってください(笑)。
【本人談】結婚が破れて(=離婚して)、いつもは振り子の音は気にせずスヤスヤ眠れたのに、その振り子の音が部屋に響いているという句なんですけども~。
本人 (泣きっ面に)どうしましょう?(笑)
夏井先生 9位だから嘆くのは分かるけど、内容としてはそんなに嘆くほどのものではない。
問題点は
時間が長すぎる。「
婚破れ」から始まるため、
破れるまでの色んな経緯を読み手は思う。
色々あって婚破れたんですねと。「
振子響く」で響くのも小さな時間がある。
最後の季語「
夜半の秋」でもまた
時間が出てくる。
「や」も強すぎた。
時間軸を短くするだけで、簡単なこと。
「振子音響く」と駄目押しし、最後に「秋夜」とする。
「秋の夜」がポツンと最後に残り、「しゅうや」の響きが寂しげになる。
これやっとけば、ガーっと(上位)。
本人 はぁ。ごもっともでございます。
添削後
『振子音響く 婚破れし秋夜』
「婚破れ」という状況と振り子時計の聴覚情報に着目して詠んだ一句。離婚経験のある方だからこそ、切なくも感慨深い光景を詠めるもので、上五の原因と中七の「響く」に非常に心情がこもっています。しかし、季語以外での因果関係が気になりますし、定型句ですが発想も飛んでいません。中七+「や」+季語は、藤田湘子氏の著書にも書かれる基本の型ですが、使いこなすのが案外難しいですね。昨年の冬麗戦に続いて2度目の最下位ですが、気を取り直して挑戦ほしいものです。
◆最後に、次回タイトル戦のシード権順位を発表。
「
3位まで」と最も厳しい評価になりました。
千賀名人 (4位で)うわっ、やだ。くそ~!
浜田 さ、というわけで2020年金秋戦優勝は千原ジュニアさんでございます。
ジュニア名人 ありがとうございます。
浜田 おめでとうございます。
藤本名人 おめでとう!
浜田 素晴らしい。
※次回は色鉛筆査定を中心に特待生昇格降格一斉査定SP。兼題はゲームの「オセロ」です。
3週連続タイトル戦の最終章である決勝の兼題は「7時過ぎの時計」。当初は「時計」とのみ発表されていましたが、実際の写真は7:21頃を指すアナログ式の壁掛け時計。最近は番組後半に俳句コーナーが始まることも多く、ちょうどコーナー開始の時間帯です。朝か夜かと考える点も重要ですが、いわゆる5W1Hをどのように表現するかの自由度が高く、いかに描写するかが問われました。ツイッターにあげた拙句は「漏刻の原理や蓮の花満開」で天智天皇の水時計の仕組みから、午前9時頃に満開を迎える蓮の花を取り合わせてみました。
個人的には、上位3名は僅差で決した感があります。ジュニア名人は大変な状況下での季語の気付きが良く、2位の横尾名人も綺麗な光景と俗な光景との対比と季語の修飾表現、3位の御大は上五字足らずのさり気なさと季語の判断、亡き人への表現を通じる物や言葉の選択に見事に成功しました。
その一方、「時計」と書いた4句は4・6・7・8位と総じて下位に沈む傾向に。タイトル戦は兼題描写と言うよりは、発想力が重視される傾向があります。また、破調の3句は2・4・5位とやや上位でしたが、優勝は定型句。この辺りは難しい判断ではありますが、定型で兼題と真っ向勝負する姿勢は個人的には好きではありますし、円楽さんのご意見には賛同します。
今回は、東国原名人が参加しなかったため、低レベルな大会になるという前評判がありました。結果的に前回の炎帝戦に次ぐ多さの20名が参加し、しかも予選突破した人物が初優勝を成し遂げる快挙達成のジュニア名人は称賛に値すると思います。東国原名人は最多優勝とは言え、前回シード権を獲得していませんので、ここ最近の名人の皆さんは実力が伯仲していると感じます。もはや誰が優勝してもおかしくない大会となっており、今回のシード権の少なさから考えても予選会の厳しさも回を追うごとに増しています。例年、冬麗戦は年末年始の放送ですが、次回のタイトル戦はどのような形式になるのか、その辺りも注目していきたいところです。
最後に、ミッツさんの前回の炎帝戦決勝の幻の句が見たいと思った次第です(どこかで公開されてるのでしょうか)。
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