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【金秋戦決勝】20201112 プレバト!!俳句紹介【7時過ぎの時計】

2020年11月12日放送 プレバト!! 俳句金秋戦決勝戦結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第4回金秋戦決勝で名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。

→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細 →シード権順位発表 →編集後記

予選A・Bブロック記事
予選C・Dブロック記事
※過去のタイトル戦結果などはこちらまたはブログカテゴリからどうぞ。

挑戦者:
シード獲得→<名人10段★1>藤本敏史(FUJIWARA)[62],<名人3段>立川志らく[38],<1級>三遊亭円楽[19],
永世名人(予選免除)梅沢富美男[113]
予選1位通過→<3級>森口瑤子[10],<名人6段>横尾渉(Kis-My-Ft2)[45],<名人2段>千賀健永(Kis-My-Ft2)[41],<名人5段>中田喜子[43]
敗者復活→<名人2段>千原ジュニア[54] ※数字は挑戦回数
見届け人:なし

◇金秋戦2020のルール(※前回の炎帝戦を踏襲した形)
【予選】
・ABCDの4ブロック制で、ブロック4名が参加
・ブロック分けは段位を考慮した上、玉巻アナが事前にくじ引きを行い決定
・兼題はAB・CDの2ブロック単位で共通
・各ブロック上位1名が決勝進出
・各ブロック2位は補欠となり、4名中最も良い1名が決勝進出(敗者復活)
【決勝】
・前回上位4名がシードで参加
決勝はシード4名(永世名人含む)、予選通過5名の合計9名




●お題:7時過ぎの時計
時計の兼題

※順位クリックでリンク内移動します。次回のシード権は3位までと発表されました。
1位千原ジュニア名人2段痙攣の吾子の吐物に林檎の香けいれんのあこのとぶつにりんごのか
2位横尾渉(Kis-My-Ft2)名人6段流星のターミナル三分で蕎麦りゅうせいのたーみなるさんぷんでそば
3位梅沢富美男永世名人火恋し形見の竜頭巻く深夜ひこいしかたみのりゅうずまくしんや
4位千賀健永(Kis-My-Ft2)名人2段震源の時計台無音の夜長しんげんのとけいだいむおんのよなが
5位立川志らく名人3段谷崎のエロス潤目鰯の骨たにざきのえろすうるめいわしのほね
6位藤本敏史(FUJIWARA)名人10段★1月光のひとつぶ受信電波時計げっこうのひとつぶじゅしんでんぱどけい
7位三遊亭円楽1級弁慶が時計している村芝居べんけいがとけいしているむらしばい
8位森口瑤子3級秋てふや夢の途中に時計鳴るあきちょうやゆめのとちゅうにとけいなる
最下位中田喜子名人5段婚破れ振子響くや夜半の秋こんやぶれふりこひびくやよわのあき
順位発表順:6位→5位→4位→7位→8位→3位→2位→最下位→1位


●トーク集(クリックで展開)





●それでは順位別に見ていきます

1位◆『痙攣の 吾子の吐物に 林檎の香 千原ジュニア
「痙攣の吾子」で状況と自分の子どもだと分かる。「吐物」の後の「林檎の香」の展開に驚く。生々しいリアリティーで、香りがした途端、食欲のない子にすりおろしたのか、大好きな林檎なら食べれるのではないかと親心を思わせる。吐物からの展開に親の切なさも出る。最後の問題。「林檎」の季語は吐物のため、確かにおいしそうではないが、この林檎の存在感は抜き差しならないものがあり、季語と認めないと主張する人に対して、逆に「無季」と言い切っても良い。このリアリティーの前に、この人が真っ当な親であること。しかもこの句は「吐物や」なら終了していた。1回私が指摘したことを吸収して復習した上の結果。真面目な学びようを皆が受け止めてほしい。

藤本名人 なるほど。

【本人談】
子どもが初めて熱性痙攣(けいれん)になり、(子を抱いて)バタバタと(して)時間が止まってどうしようと思い、(子の頭が)真っ白になった。(抱っこをしている時に子は自分の肩に)吐いたが、食べてた林檎の匂いがしてハッと現実に戻るという。

藤本名人 泣きそうですね。これはホントに。20代前半の触るもの皆全部傷つけてたんですよ。そのジュニアがここまで子ども愛溢れたパパの俳句を詠めるとはね。
梅沢永世名人 良い句ですね。凄い良い句です。ただ1つ私には解せないことがある。私は果物の句を(以前)詠みました。まくわ瓜(「肩上げのなおたくし上げ冷やし瓜」)。なっちゃんは「果物はもっと美味しそうに詠め!」と私をボツにした。「林檎の香」は戻したもので、私は美味しそうに見えない。感じない。

夏井先生 
おっちゃんの指摘は大事な所を言っている。
痙攣の吾子」で状況と自分の子どもだと前半で全部分かる
吐物」の後の「林檎の香」の展開に驚く。生々しいリアリティー
香りがした途端、食欲のない子にすりおろしたのか、大好きな林檎なら食べれるのではないかと親心を思わせる
吐物からの展開に親の切なさも出る
最後の問題。「林檎」の季語は吐物であるため、確かにおいしそうではない
果物・食べ物の季語は「美味しく」が基本であるが、この林檎の存在感は抜き差しならないものがある
季語と認めたくないと主張する人に対して、逆に「無季だと思って結構」と言い切っても良いと思う。
このリアリティーの前に、私たちはこの人が真っ当な親であること。
しかも、予選の句(「鍵盤図弾く兄の背や秋の暮」)は「兄の背や」で切り、「に」にすべきだと言った。
この句は「吐物」なら終了していた。「に」して季語を活かすと。
1回私が言ったことをちゃんと吸収して復習した
上でこれ。
藤本名人 偉い。
浜田 真面目!
夏井先生 真面目な学びようを皆が受け止めてほしい
本人 違います、違います。

浜田 これはもう完璧な優勝になりました。

添削なし


2位◆『流星のターミナル 三分で蕎麦 横尾渉(Kis-My-Ft2)
「流星のターミナル」は良いフレーズで、長距離の夜行バスかなんかを思った。「流星」が秋の季語となるが、「ターミナル」が普通のターミナルではなく、銀河鉄道の夜みたいなものにも1回見え、微量のロマンチックもある。後半に「三分で蕎麦」という実感・慌ただしさに持ってくる。ここが成長した点。今まではロマンチックの沼にズボズボと沈んでいくことがあったが、そうではないと分かったのが素晴らしい。10音+7音で足すと17音の破調も上手い。この語順は、出発しそうな乗り物を横目で見ながら急いで食べていると。自分の思い通りの語順に持ってきている。新鮮で良い。

【本人談】
次の電車・バスが来るまでに小腹が減るが、少しだけ時間があるなとパッと見ると立ち食い蕎麦屋があった。ここでご飯を食べて次の現場に向かおうかなと。

千賀名人 「流星のターミナル」が凄く良い綺麗な句だと思います。そこに「三分で蕎麦」というあるあるをくっつけてるところが凄い好きです。
梅沢永世名人 (やや切れ気味に)素晴らしいと思いますよ。はい。これは優勝か、第2位でしょ(笑)。
浜田 そらそうですよ。優勝か2位ですから。
梅沢永世名人 私の句と横尾君の句が1位2位ですよ。それより良い句を詠んだんですか?(残った)2人(のどちらか)が?
浜田 ていうことになりますよ。2人残ってますからね。
梅沢永世名人 見せてもらおうじゃないの!

夏井先生 
流星のターミナル」は良いフレーズで、長距離の夜行バスかなんかを思った。勿論列車でもフェリー乗り場でも良い
「流星」は秋の美しい季語だが、その後の「ターミナル」が普通のターミナルではなく、銀河鉄道の夜みたいなものにも1回見える。
微量のロマンチックも入っている。
このままロマンチックで終わったらちゃんちゃんだが、「三分で蕎麦」という実感・慌ただしさに持ってくる。
ここが横尾さんが成長した点。
今まではロマンチックの沼にズボズボと沈んでいくことがあったが、そうではないと分かり始めたのが素晴らしい。
10音+7音で足すと17音の破調も上手い
この語順は、出発しそうな乗り物を横目で見ながら急いで今食べていると。
自分の思い通りの語順に持ってきている。新鮮で良い。

本人 ありがとうございます。

添削なし


3位◆『火恋し 形見の竜頭 巻く深夜 梅沢富美男
これは良い句。キッチリ出来ており、思いも伝わる。「火恋し」は秋の季語で身近に火が欲しくなって来る時季を指し、秋の深まりで朝晩が冷えてきている。「形見の竜頭」で時計を表現している。竜頭を「巻く」のは当然だが、「深夜」の時間帯も良い。「巻く」の動作を入れ、深夜に一人で偲びながら巻いていると分かる。「巻く」の行為は亡き人の時間を動かし続けたいという想い。最後に「深夜」としっとりと持ってきたのもとても良い。50句集めてるが、この句も入れてあげたい。

浜田 あ、なるほどね。ふーん。

【本人談】
去年は母親・おば・兄貴まで亡くした。兄貴にプレゼントした時計はローレックスの高いもの。兄貴の最期の言葉で、「これを富美男に返してくれないか?俺の形見だと思って持っててもらいたい」と遺言があった。それで、竜頭(腕時計のねじを巻くつまみ)を巻いておかないと兄貴の思い出が消えていくなと思って、深夜に巻いた見事な俳句。

浜田 「ロレックス」ね。
本人 「ロレックス」です。当時87万円したんです。
ジュニア名人 メーカーどこですか。
本人 ローレックス(笑)。これがなぜ3位なの?見てみようじゃないですか。納得させてもらおうじゃないか、なっちゃん。

夏井先生 
これは良い句。キッチリ出来ており、思いもちゃんと伝わる
火恋し」は秋の季語で身近に火が欲しくなって来る時季を指し、秋の深まりで朝晩が冷えてきていると。
形見の竜頭」で時計と言わなくてもそれを表現しているのも上手い
竜頭を「巻く」のは当然だが、「巻く」の動作を入れて「深夜」の時間帯も良い
深夜に一人で偲びながら巻いていると分かる。「巻く」の行為は亡き人の時間を動かし続けたいという想い
最後に「深夜」としっとりと持ってきたのもとても良い
50句集めてるが、この句も入れてあげたい。

本人 いや、なっちゃん。少しは番組のことも考えろよ。こんなにみんなのレベルが上がったのは誰のせいだと思ってんだ!
夏井先生 私のおかげ。
浜田 直しなしで3位か。
本人 そんな馬鹿な!

添削なし


4位◆『震源の時計台 無音の夜長 千賀健永(Kis-My-Ft2)
「震源の時計台」の書き方では時計台が震源のど真ん中のような印象。「噂の震源」のような表現もあり、本当の震源でない捉え方をされる可能性がある。簡単なこと。「地」と入れるだけ。そうすると語順を変えた方が良い。「時計台無音」から始めて、なぜと思わせてカットが切り替わる。「震源地の夜長」で後半を作る。「無音」でなぜと思ったものが、後半に答えとして出る。夜長がしみじみ・静けさが増す。勿体なかった。

梅沢永世名人 あ~惜しいな~。

【本人談】
キスマイで以前に北海道の時計台にライブの時にみんなで行った。コロナの時期に北海道で地震があって、あの時計台大丈夫かなって思ってたことを思い出した。それを題材に、地震があった時の時計台は、秋なので夜も長い。無音の雰囲気が今回の句の一番のポイントかなと思って。

横尾名人 「無音の夜長」は凄いかっこいい、千賀らしいなと思う。どこの時計台か分からないなと僕は思うんですけど。
浜田 これが出た途端に永世名人が「惜しいな~」って聞こえたんですよ。どういうことでしょう。
梅沢永世名人 「震源の」が惜しい。これを入れると、時計台の下が揺れてるのか、時計台自身が揺れてるのか、グダグダしちゃう。
本人 でも地震が起きた後の「時計台」なんです。一応。
梅沢永世名人 永世名人(笑)。
藤本名人 (本人が)困ってますやん。
浜田 有無を言わせない。
梅沢永世名人 助言してるのよ。
本人 ですよね。
梅沢永世名人 何でも上の人から、お芝居でも歌でも踊りでも1回「はい」って言っとくんだよ!(笑)
本人 …はい!
浜田 確かに、それはそうですよね。
梅沢永世名人 「はい」って言わなきゃ。人間大きくなりませんよ。
本人 はい。

夏井先生 
議論しているのか脅してるのか分からないが、おっちゃんの指摘している部分はとても正しい。
「震源の時計台」の書き方では、時計台が震源のど真ん中のような印象。
「噂の震源」のような表現もあり、本当の震源でない捉え方をされる可能性がある。

簡単なこと。「」と入れるだけ。そうすると語順を変えた方が良い
時計台無音」から始めて、なぜと思わせてカットが切り替わる。
震源地の夜長」で後半を作る。「無音」でなぜと思ったものが、後半に答えとして出る。
夜長がしみじみ・静けさが増す。これやってたらアンタ、今日は勿体なかった。

浜田 みんなだからちょっとずつ(惜しい)ですね。
夏井先生 そうですね。
梅沢永世名人 これはいいね。
本人 全然良いですね。展開もあるし。うわ~悔しい。
梅沢永世名人 どうして俺が言った時にそれを言わないの?(笑)
本人 「はい」。でも「震源地」って…。
藤本名人 1回「はい」って言うたもんな。

添削後
時計台無音 震源の夜長


5位◆『谷崎のエロス 潤目鰯の骨 立川志らく
兼題からの発想を飛ばし方はギリ限界の句。話を聞くまでは「潤目」と言わず「鰯の骨」の後に骨を描写すれば良いと思ったが、「潤目」を活かしたいのが作者の想い。本来秋の季語である「鰯」を諦め、「潤目鰯」を「潤目」と省略し、「潤目の骨」と書けば「鰯」と通じる。「エロス」と「骨」をつなぐ描写が欲しい。「刺さる」「柔し」「ウザい」など骨に対する描写にすれば、「エロス」と釣り合うような季語の描写となる。最後の描写はご自身で完成させてほしい。これも今日は上位に行けた。勿体ない。

浜田 ふふっ。
※五七五の定型を崩した破調の句。

【本人談】
時計に関係ないように思えるかもしれない。谷崎文学賞では受賞者に正賞(※正しくは「副賞」)として時計を贈呈する。谷崎潤一郎(1886~1965)は独特な美意識が特徴の小説家で、谷崎の作品を読むと実に官能的になる。潤目鰯(うるめいわし)で(酒を)一杯やる時に、潤目鰯の骨までも官能的に見える。「潤目」と名前の「潤一郎」の「潤」を引っかけて遊んでみた。

円楽 「潤一郎」と「潤目」は面白いと思う。こいつまた破調が好きすぎる。作風が嫌い(笑)。
ジュニア名人 仲良くしてくださいよ。もう。
浜田 文句ばっかりやもーん。
藤本名人 仲悪すぎる。バチバチやないですか。
円楽 好き嫌いはあっていい。芸事だから。
梅沢永世名人 これ七五調にやってほしかったですね。「潤目鰯」って書かなくてよかったと思う。「鰯の骨」なんちゃらとかで、五七五に収めた方がシャレてると思う。

夏井先生 
おっちゃんホントに、人の句は見事に分析して偉い。
発想を飛ばし方はギリ限界の句。
話を聞くまでは「潤目」と言わず「鰯の骨」の後に骨を描写すれば良いと思ったが、「潤目」を活かしたいのが作者の想い。
本来秋の季語である「鰯」を諦め、「潤目鰯」を「潤目」と省略し、「潤目の骨」と書けば「鰯」のことだと通じる。
「鰯」の3音が余るが、「エロス」「骨」をつなぐ描写が欲しい
「刺さる」「柔(やわ)し」「ウザい」など骨に対する描写。
「エロス」と釣り合うような季語の描写となる。
最後の描写はご自身で完成させてほしい。
これも今日は上位といい勝負だった。勿体ない。

本人 あとは円楽師匠が下位に行くことだけですね(笑)。
円楽 嫌な奴だな。

添削後
谷崎の エロス潤目の 骨
『谷崎の エロス潤目の 骨
『谷崎の エロス潤目の 骨



6位◆『月光の ひとつぶ受信 電波時計 藤本敏史(FUJIWARA)
発想は瑞々しくて好き。「月光のひとつぶ」は一粒を手にのせられたような印象があり、「電波時計」がそれを受け止めるという発想も良い。「受信」と説明しなくても、電波時計は月光の一粒の受けたと読み手に思わせてこそ。「ひとつぶ」で切れがあり、前半の感触を3音以下のオノマトペ「ぴくん」や「つん」などで、秒針が揺れる動きを表現する。後はあなたの力で完成させてほしい。完成したら1位になっていたかも。

【本人談】
電波時計は自動で誤差を修正する。月の光のパワーを少しだけ借りて受信して修正しているのかなと思った。

ジュニア名人 いや、いいですね。「光のひとつぶ」がまるでタピオカみたい(笑)。
本人 強引すぎる。
梅沢永世名人 これは6位でしょ。「電波時計」なら「受信」するでしょ。いちいち「受信」と書かなくたって。出直しなさい。
本人 でも~、光を受信するのは入れとかないといけないのかな?
梅沢永世名人 出直しなさい!
本人 光を受信するってのが。
梅沢永世名人 あーそう。
本人 「あーそう」って(笑)。

夏井先生 
この議論はおっちゃんの勝ち。
凄くこの発想・素材は瑞々しくて好き。「月光のひとつぶ」は一粒を自分の手にのせられたような印象があり、「電波時計」がそれを受け止めるという発想も良い。
ところが、「受信」と説明しなくても、電波時計は月光の一粒を受けたと読み手に思わせてこその10段
「受信」が勿体ないので消す。
本人 でしょうね。
浜田 おいおい。
本人 どうしましょう、先生
夏井先生 
「ひとつぶ」で切れがあり、前半の感触を3音のオノマトペで表現する。
「ぴくん」や「つん」。秒針が揺れる動きをオノマトペで表現する
ここから後はあなたの力で完成させてほしい。
完成したら今日は1位になってもおかしくなかった。

本人 そうですね。「月光のひとつぶタピタピ」、あ、タピタピちゃうわ(笑)。

添削後
月光のひとつぶ 電波時計
『月光のひとつぶ 電波時計



7位◆『弁慶が 時計している 村芝居 三遊亭円楽
非常に俳諧味のある場面で、円楽さんらしい持ち味だと思う。「弁慶」という素材から着地する語順も良い。「している」が勿体ない。"弁慶が時計をしている"という叙述では、弁慶が脚本・演出としての台本だと読まれる可能性が残っている。弁慶がうっかり時計をしていたと分かるダメ押しが必要。「が」も勿体ない。ここは「は」。他にも何人かいるけど、この弁慶はと指差す感じで他の人はミスをしていない。「したまま」とすれば誤読は一切ない。

※「村芝居」は秋の季語。

【本人談】
(撮影現場で)高橋英樹さんが「よーい!本番!スタート!」と言った時に、スリッパを履いたまま「許さん!」と出てきて、それでNGになった。そんなドジが東映では多くて、それをフッと思い出した。(芝居で)弁慶が見得切って、六方踏んで「トントントントン、カーン」と見栄切った途端に、掛け声が「時計屋!」という。こういうほのぼのとしたのが好きなの。

本人 (志らく名人の)谷崎とかカタいの。

志らく名人 先輩に対してまことに申し訳ないが、「時計している」が散文的になっている
本人 お前の落語の方が散文的だぞ(笑)。
浜田 ケンカすなっての。
藤本名人 やめましょ×2。
志らく名人 身分制度の中で、「お前の方が上手いぞ」とは言えない。
円楽 梅沢さんの言う通り。お前も「はい」と言え。
志らく名人 はい。

夏井先生 
非常に俳諧味のある場面を切り取っていて、作者が分かってみるとなるほどと、円楽さんらしい持ち味だと思う。
弁慶」という素材からいって着地する語順も良い。志らく名人の指摘は当たっている。
「している」が勿体ない。"弁慶が時計をしている"という叙述では、弁慶が脚本・演出としての台本だと読まれる可能性が残っている。
明らかに弁慶がうっかりしてたと分かるダメ押しが必要。「が」も勿体ない
ここは「」。他にも何人かいるけど、この弁慶はと指差す感じ。他の人はミスをしていない。
中七は「したまま」。これならば誤読は一切ない。

本人 「したまま」か。
梅沢永世名人 この句は好きですよ。ちょうど私この後名古屋に行くんですよ。ようやくお芝居で決まったんです。御園座で弁慶やるんです。
→『梅沢富美男劇団 特別公演』は11月14日~23日に名古屋の御園座にて。
浜田 番宣ですね。はい。
梅沢永世名人 (スタッフに)お前ら、手伝えよ。この野郎(笑)。

添削後
弁慶 時計 村芝居


8位◆『秋てふや 夢の途中に 時計鳴る 森口瑤子
詩心が十分にある。最後の着地がオチになり、夢の途中で目覚まし時計が鳴りましたで終わる。オチにせず夢うつつの中に微かに聞こえる感じにすると、上五・中七が俄然活きてくる。「鳴る時計」とすれば、「鳴る」は動作ではなく時計の方に軸足がいく。さらに。助詞の「に」を「を」にすべき。「に」はその途中のワンポイントを指すが、「を」は途中の経過していく時間をぼんやりと表現し、夢うつつの中で微かに聞こえてきたという感じになる。助詞の選択は難しいが、今日は善戦した。

【本人談】
普段の生活。よくわからない実体のないものを追いかける夢をよく見る。それが実は良いものの気がするが、見てる途中に必ずアラームの音で目が覚めてしまうのでそれを詠んだ。

梅沢永世名人 語順が悪い。「時計鳴る」ではなく「鳴る時計」の方が、非常にリズムが良いですね。綺麗すぎて、綺麗に書いたなと思うだけの俳句。

夏井先生 
そんなひどい言われようするほどではない。詩心が十分にある
まさに着地の所で、おっちゃんは偉いね。ちゃんと分かる。最後の着地がオチになった。
夢の途中で目覚まし時計が鳴りました、チャンチャンで終わってしまう
オチにしないで、夢うつつの中に微かに聞こえる感じにすると、上五・中七が俄然活きてくる
「時計鳴る」ではなく「鳴る時計」に。「鳴る」は動作ではなく時計の方に軸足がいく。
さらに、助詞の「に」を「」にするべき。「を」は経過する時間・場所を意味する。
「に」はその途中のワンポイントを指すが、「を」は途中の経過していく時間をぼんやりと表現する
夢うつつの中で微かに聞こえてきたという感じになる。
助詞の選択は難しいが、今日は善戦した。

本人 先生のYouTubeを観て、助詞の回を何回も観たのにまだ足りなかったですね。もう1回見直します。

添削後
秋てふや 夢の途中 鳴る時計


9位◆『婚破れ 振子響くや 夜半の秋 中田喜子
そんなに嘆くほどではない。問題点は時間が長すぎる。「婚破れ」から始まるため、破れるまでの色んな経緯を読み手は思う。「振子響く」で響くのも小さな時間がある。最後の季語「夜半の秋」でもまた時間が出てくる。「や」も強すぎた。時間軸を短くするだけで、簡単なこと。「振子音響く」とし、最後に「秋夜」とする。「秋の夜」がポツンと最後に残り、「しゅうや」の響きが寂しげになる。これやっとけば、上位。

浜田 うん。
梅沢永世名人 うんー。
本人 ちょっと待ってください(笑)。

【本人談】
結婚が破れて(=離婚して)、いつもは振り子の音は気にせずスヤスヤ眠れたのに、その振り子の音が部屋に響いているという句なんですけども~。

本人 (泣きっ面に)どうしましょう?(笑)

夏井先生 
9位だから嘆くのは分かるけど、内容としてはそんなに嘆くほどのものではない。
問題点は時間が長すぎる。「婚破れ」から始まるため、破れるまでの色んな経緯を読み手は思う
色々あって婚破れたんですねと。「振子響く」で響くのも小さな時間がある。
最後の季語「夜半の秋」でもまた時間が出てくる「や」も強すぎた
時間軸を短くするだけで、簡単なこと。「振子音響く」と駄目押しし、最後に「秋夜」とする
「秋の夜」がポツンと最後に残り、「しゅうや」の響きが寂しげになる。
これやっとけば、ガーっと(上位)。

本人 はぁ。ごもっともでございます。

添削後
振子響く 婚破れ秋夜



◆最後に、次回タイトル戦のシード権順位を発表。
3位まで」と最も厳しい評価になりました。

千賀名人 (4位で)うわっ、やだ。くそ~!
浜田 さ、というわけで2020年金秋戦優勝は千原ジュニアさんでございます。
ジュニア名人 ありがとうございます。
浜田 おめでとうございます。
藤本名人 おめでとう!
浜田 素晴らしい。

※次回は色鉛筆査定を中心に特待生昇格降格一斉査定SP。兼題はゲームの「オセロ」です。




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コメント

Re: No title

コメントありがとうございます。

ご指摘の箇所ですが、放送当時「次回タイトル戦」としか明かされてなかったため、そのような表記に変更しました。

> 冬麗戦ではなく春光戦のシード権だったと思います。

No title

冬麗戦ではなく春光戦のシード権だったと思います。

Re: 志らくさんの本人談

しも様

コメントありがとうございます。
ご指摘の箇所ですが、表現を修正致しました。

志らくさんの本人談

谷崎文学賞では正賞(正しくは副賞)に時計を

とありますが、

正賞受賞者に副賞として時計を贈るのではないですか?

子供が痙攣した時はどれほどの時間痙攣したか何分おきかを医者に伝えるよう指導されるので育児経験がある者からしたらお題とそれほどかけ離れた句だとは思いませんでした

No title

ミッツさんの幻の俳句は去年に読まれた波紋の句の気がしますね。
プレバトは時系列を誤った解説が時々見られます。

例えば2020の冬麗戦でも「フジモンさんは去年の冬のタイトル戦では準優勝だった」という説明がされていましたが、2019年の準優勝はジュニアさんで藤本さんは6位でした。(恐らく、2019年の金秋戦では2位でしたが)

題材に月光と電波時計を選んだだけで自然科学に媚びてると言われる藤本名人が不憫で仕方がない

No title

>コジマイサムさん
句に時計が入っていないという指摘ですが、
・痙攣を起こした時間が兼題写真の時間あたりという可能性
・句の説明で「時間が止まっているように感じた」というところから「時が止まっていると感じた瞬間」という発想
といった感じでしょうか。

自分も家族が搬送されるほどの大病を起こした際、病院でただただ焦りで時計を見ていたという事を思い出し、そういった「(件数的には少なくあってほしいが)『あるある』とも言えるつかずはなれず」がポイントだったのかもしれません。

題材が時計なのに?

千原ジュニアさん今回の俳句には題材の時計が入っているのでしょうか?素晴らしい俳句だとは思いますが、題材に関した作品には見え無いと思う私が間違っているのでしょうか?

No title

今回の上位三人は本当に接戦でしたね
個人的には差をつけた点をもう少し番組内でも取り上げてほしいなというのが素直な感想です。御大はかなり発想が飛ばないことに苦しんでいる印象ですが、いつかまたトップをとれるのでしょうか。

予選参加者は今回一句だけ読み、本選に参加できることになってからもう一句を提出するということで「影のタイトル覇者」がもう生まれようがなくなったのは視聴者としては残念な点ですが、予選の参加者にも兼題は知られているはずで、決勝用の俳句も特に村上さんあたりは用意しているはずで、それは少し見てみたかったです。(予選と決勝のスケジュールの差がわからないので詳しいことはわかんないですけど。)

次回のタイトル戦予選が、名人10段三人と相当見ごたえのある予選になるのは間違いないでしょうが、六人くらいは突破しそうですね。そうすると、春のように二グループに分けるのか、今回のように四グループに分けて一位四人+二位二人みたいにするのかも相当気になりますね。

長くなりましたが、ジュニアさん本当におめでとうございます!

今回は

まずは千賀健永さんのコロナ感染に驚いています。

1日も早い回復をお祈りします。

ファンの方に向けたブログには、詳しい経緯が書かれていたそうです。

一度は陰性だったものの、ご自身の感染を確信されていたそうで、レギュラー番組を休んで再検査で感染が確認されたそうです。

もし無理をしていたら、どれだけの人に感染を拡げてしまったのか?と思うとゾッとする

と書かれていたそうですが、千賀さんの英断に心から敬意を捧げます。

不謹慎なことをあえて書くならば、

以前、千原ジュニアさんが交通事故で重傷になられた時のことを詠まれた句が本当に素晴らしかったので、

コロナ感染も俳句の種として、タイトル戦をもぎ取るくらいの素晴らしい俳句を詠んでいただければと思います。


さて、今回のタイトル戦の内容に触れていきたいと思います。

今回は千原ジュニアさんの圧勝だったように思えます。

リアリティー、心情のすべてが下五「林檎の香」に託されていて、

美味しそうに見えないという季語の描写が、逆に季語を主役にたてているという風に感じられました。

梅沢名人が文句をつけていましたが、
これは視聴者が感じるであろう疑問を夏井先生に問いかけることによって、納得してもらうための助け船だったように思えます。


横尾さんの句は、たぶんかなり苦心されたのだろうと想像できました。

前半と後半を逆にすれば定型におさめられますが、この句に関しては、この語順が正解だったように思えます。
以前の「天泣のプラチナ通り檸檬の香」で指摘されたこともしっかり吸収されて、夏井先生が言われていた「ロマンチックで終わらない」という言葉の通りでした。


梅沢名人は字足らずが見事でした。字足らずの余韻にご本人の心情が込められていて、伝わります。優勝を豪語されるだけのことはあるなと思いました。


下位に沈んでしまいましたが、三遊亭圓楽さんの句が好きでした。

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Author:プロキオン
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夏井いつき氏(プレバト!!出演の俳人)

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