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【金秋戦予選CD】20201105 プレバト!!俳句紹介【ポンプのノズル】

2020年11月5日放送 プレバト!! 俳句金秋戦予選C・Dブロック結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし名人・特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
秋の季節に行われる第4回金秋戦予選C・Dブロックで名人・特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。

→結果一覧 →トーク集 →俳句詳細(Cブロック) →俳句詳細(Dブロック) →敗者復活者発表 →編集後記

予選A・Bブロック記事
決勝戦記事
※過去のタイトル戦結果などはこちらまたはブログカテゴリからどうぞ。

挑戦者:
Cブロック→<名人10段★3>村上健志(フルーツポンチ)[50],<名人2段>千賀健永(Kis-My-Ft2)[40],<4級>馬場典子[15],<5級>春風亭昇吉[4]
Dブロック→<名人5段>中田喜子[42],<名人初段>ミッツ・マングローブ[31],<4級>河合郁人(A.B.C-Z)[16],<4級>筒井真理子[9] ※数字は挑戦回数

見届け人:梅沢永世名人、ジュニア名人・岩永徹也(補欠)

◇金秋戦2020のルール(※前回の炎帝戦を踏襲した形)
【予選】
・ABCDの4ブロック制で、ブロック4名が参加
・ブロック分けは段位を考慮した上、玉巻アナが事前にくじ引きを行い決定
・兼題はAB・CDの2ブロック単位で共通
・各ブロック上位1名が決勝進出
・各ブロック2位は補欠となり、4名中最も良い1名が決勝進出(敗者復活)
【決勝】
・前回上位4名がシードで参加
決勝はシード4名(永世名人含む)、予選通過5名の合計9名




●お題:ポンプのノズル
ポンプのノズルの兼題

※各ブロック1位が無条件で決勝進出、2位は補欠
※順位クリックでリンク内移動します。
◆予選Cブロック
1千賀健永(Kis-My-Ft2)名人2段夏の海を描くスプレーの秋思なつのうみをえがくすぷれーのしゅうし
2位村上健志(フルーツポンチ)名人10段★3秋麗チョコスプレーの淡き影あきうららちょこすぷれーのあわきかげ
3位馬場典子4級空ボトルノズルは律の調かなからぼとるのずるはりちのしらべかな
4位春風亭昇吉5級コロナ禍のハンドジェルにも深む秋ころなかのはんどじぇるにもふかむあき
◆予選Dブロック
1中田喜子名人5段泡ポンプの英知秋天を仰ぐあわぽんぷのえいちしゅうてんをあおぐ
2位筒井真理子4級玻璃越しの稲妻湯の中の乳房はりごしのいなづまゆのなかのちぶさ
3位ミッツ・マングローブ名人初段飴貰うごと狭霧に手広げし子あめもらうごとさぎりにてひろげしこ
4位河合郁人(A.B.C-Z)4級秋風の終電マイバッグの梨しゅうふうのしゅうでんまいばっぐのなし
順位発表順 Cブロック:3位→2位→最下位→1位、Dブロック:最下位→2位→3位→1位


■トーク集(クリックで展開)






◆それでは順位別に見ていきます


◆予選Cブロック

1位◆『夏の海を描く スプレーの秋思 千賀健永(Kis-My-Ft2)
作者を知って感動を覚えた。9音+8音で合計17音という破調。「夏の海」から始まるため、これが季語だと誰もが思うが、「描く」で虚の季語だと初めて分かる。水彩画か油絵かと思うと「スプレー」で、大きな画面を思い、壁面画やシャッターアートかと思わせる。最後の着地が良く、「スプレーの秋思」は擬人化をした。「秋思」はセンチメンタルになり、感情が崩れやすい。名詞止もピシッと止めようと工夫した。破調・季重なり・擬人化・名詞止めと全部意図を持ってやっている。本物になりつつある。

ジュニア名人 すげぇ。
中田名人 はぁ~、凄い。

【本人談】
絵を良く描く。「夏の海を描く」は夏が爽やかでスカッとした感じのイメージ・映像。「スプレー」はアクリル用のスプレーで、Kis-My-Ft2の初めての絵の仕事でスプレーの絵を描かせてもらったこともある。「スプレー」は描いた時に小さいアクリルの粒が出る。それが乗っからないと空気に溶けてなくなっていく。その光景が良いなと思い、似合う季語を探して「秋思」。敢えて破調にし、漂っているような終わりがない感じを出したいと思い「秋思」を使った。

梅沢永世名人 素晴らしいですね。大したもんだ。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 夏から始まって海の絵を描いてたんだよね。それから、どんどん秋思に持っていくとこなんかは、さすがはタイトルホルダー。大したもんだ。
本人 ありがとうございます。
梅沢永世名人 これはもう村上君も「恐れ入りました」と…。
浜田 ちなみにどうですか?
村上名人 これは確かにカッコイイです。シンプルに俳句がカッコ良いし、最近ようみんな破調…フフッ、やりたがるじゃないですか。(笑)
浜田 何でそこで「フフッ」とか言うわけ?
村上名人 破調の方が俳句の高等技術みたいに思っている人がいる(フフ)。
浜田 笑うな!
村上名人 けど、この破調は言ったように見事に内容と合っている

夏井先生 
これが千賀さんだという事実に、ささやかな感動を覚えている。
夏の海を描く/スプレーの秋思」と9音+8音で合計17音という破調。
「夏の海」から始まるため、これが季語だと誰もが思う。「描く」で本当の季語ではなく、虚(架空)の季語だと初めて分かる
水彩画か油絵かと思うと「スプレー」で、スプレー画のような大きな画面をみんな思う。壁面画やシャッターアートかとちゃんと思わせる。
最後の着地が良い。「スプレーの秋思」は擬人化。「秋思」の季語はセンチメンタルになり、感情がぐずぐずって崩れてしまう。
名詞止もピシッと止めようと工夫した?
本人 そうです。ピシッと止めて、切ない感じを出そうとした。
夏井先生 ちゃんと分かってる。破調・季重なり・擬人化・名詞止めにすると。全部意図を持ってやっている。
浜田 ホンマか、お前?(笑) 今、先生が全部先生が言ったことホンマに全部わかってやったんか?
本人 ホンマです。
浜田 は~、そら素晴らしいわ。
夏井先生 直しは勿論いらない。本物になりつつあるじゃないか。

本人 ありがとうございます。
浜田 はぁ~?

添削なし


2位◆『秋麗 チョコスプレーの 淡き影 村上健志(フルーツポンチ)
兼題写真から「チョコスプレー」にいく。発想を企みながら他人が絶対に書かないことを書くのはさすが名人。秋の麗らかさに小さなチョコレスプレーに淡い影があるという気付きが良く、まさに俳句は発見だと思う。助詞「の」の展開で、(吹きかけられた)チョコスプレーの淡い影があったとまさに映像であり、十二分に成立した。しかし、違うかもしれないと疑ったのが「の」。こんな小さな影に気付くことのできる自分に少し嬉しくなったと本人は語り、そこが言いたいなら助詞は「に」にすべき。

【本人談】
「チョコスプレー」はカラフルなチョコの粒々で、ドーナツやチョコバナナの上に掛かっているもの。良い天気の日だとドーナツの影は下にできる。しかし、そこにはチョコスプレーの影は出ない。チョコスプレーは物体で絶対に影がある。ドーナツを見たら「あら?ここにちょっとだけチョコスプレーの影があるぞ」と気付ける麗らかさって、何か良くないですか?

一同 ………。
本人 せんせ~い!(笑)
ジュニア名人 おい!セルフで行くな!(笑)
本人 (進行が)俺だったっけ?と思っちゃって。
梅沢永世名人 失敗でしょうね。助詞が悪い。
本人 どこがですか?
梅沢永世名人 チョコスプレー「の」。「の」が悪い。「」にすれば良かった
夏井先生 (嬉しそうに拍手する)
本人 ま~、ある。あ~でも俺は…。
梅沢永世名人 お前そういう根性だから。2位なのよ。世界の梅沢に対して何なの!
本人 梅沢さん、別に前回も1位になってない…。
梅沢永世名人 何その言い方!(笑) じゃあ先生に聞いてもらいましょうよ、どっちが正しいんだか。

夏井先生 
兼題写真から普通のスプレーもあるのに「チョコスプレー」にいく。
これは発想を企みながら他の人が絶対に書かないものを書こうとする

これはさすが顔が分かって名人だなというのは思う。
秋の麗らかさに小さなチョコレスプレーに淡い影があるというこの気付きが良い。まさに俳句は発見だと。
作者の話を聞いての判断に思った点が「」。おっちゃん偉い、これはホントに偉い。
チョコスプレーの影」の展開で映像化され、(吹きかけられた)チョコスプレーの淡い・濃い・小さい・大きい影と色々あるが、淡い影だったとまさに映像。これで十二分に成立している
しかし、ひょっとしたら違うかもしれないと疑ったのが「」。
こんな小さな影に気付くことのできる自分に少し嬉しくなったと本人は語った。
そこが言いたいなら助詞は「」。
ジュニア名人 言いましたね、確かに。
本人 でも違うんです。それは思いであって着地点は「の」です、僕の。
夏井先生 うん、お疲れ(笑)。

本人 お疲れさまでした。

添削後
秋麗 チョコスプレー 淡き影




3位◆『空ボトル ノズルは律の調かな 馬場典子
「律の調」と難しい季語に目を付けた。この音をノズルから聞き留めるのは俳人の耳で、そこが良い。問題は語順で、「空ボトル」から始まると、読む人は空の容器を思い浮かべてしまい、ノズルの音は何かと考え直してしまう。読む人に分かるように伝えるべきで、中身の液体が切れかかっている状況を「液切れの」と書けば、音と手の感触は伝わる。さらに、音に気付いた作者の発見を強く押し出しても良く、「あり」と偉そうに言っても良く、作者の共感が一歩前に出る。

梅沢永世名人 ん~。

【本人談】
ボトルの中身は気付くと無くなっていることがあって、押した時にスコスコと間抜けな音がする。自分はいつもの調子で押しているが、少しもの悲しい感じがある。季語「律(りち)の調(しらべ)」は秋の趣・音の調子を表すため、引っかけてみた。

梅沢永世名人 「空ボトル」が失敗だったかな。そう言うなら。少し残ってるんですよね?「パシッ、パキッ」と音がするくらいだから。これは失敗だった。こんなこと言うのは何ですよ、私がいちいち偉そうに…。
浜田 ちょっと待ってください。ジュニアさん、面白い顔で(御大を)見るのやめて下さい。

夏井先生 
おっちゃん偉い。ホントに。この句で一番問題になるのは上五「空ボトル」。
「律の調」とよく難しい季語に目を付けた。この音をたかかノズルから聞き留めるのは俳人の耳で、そこが良かった。
問題は語順。「空ボトル」から始まると、読む人は完全に空の容器を思い浮かべてからノズルにいく
そこから「ノズル」と言われると、ノズルの音は何だろうかと一回考え直さないといけない。
この場合は、読む人に分かるように伝えた方が良い
これは中身に何か液が入っていて、それが切れかかっているはず。その状況を書くだけ。
液切れのノズル」で何の液かは言わなくとも音が聞こえてきて、液が切れている手の感触も伝わる。それなりに経験があるはず。
その音に気付いているなら、作者の発見をもう少し強く押し出しても良い。最後に「あり」と偉そうに言って良い
多くの人には気付かなかったが、作者の耳には聞こえていると共感が一歩前に出る。

添削後
の ノズル律の調


4位◆『コロナ禍の ハンドジェルにも 深む秋 春風亭昇吉
「にも」が散文的(趣のない文章)であると気付くべき。「コロナ」の問題は、同じ時代を共有する読者をもっと信じて良い。ジェルを揉み込み、秋が深まってきているという意図は良いため、もっと焦点を絞るべき。語った「揉み込む」が良く。「ハンドジェル」を揉み込めば秋も揉み込んでいくかのような表現を「深みゆく」とすれば、時間経過が出る。同じ時代を生きる読者たちは同じ思いと共感する。

【本人談】
今年の春ごろからアルコール消毒を使うことが多くなってきた。季節が移ろい、だんだんアルコール除菌自体に年季が入ってくる。ハンドジェルを使って、手を揉み込む時に秋が深まってきたなという空気を感じる。季語が主役になっている。

本人 なんで負けたんだろう?(笑)
岩永 そうですね。「にも」という言葉に説明している感じがあるかなと思いました。
梅沢永世名人 タイトル戦にしてはちょっと考えすぎたね。これじゃタイトル戦に残れませんよ。今の時代だったら「ハンドジェル」と言えばコロナ(禍)だと読んでくれる。普通の回なら良いでしょう。タイトル戦ですよ。

夏井先生 
本当におっちゃんは人の句はちゃんと分かる。本当に見事。
まず、「にも」が散文的(趣のない文章)であると気付いてほしい
次に、「コロナ」の問題。おっちゃんの言うように、同じ時代に共有している読者をもっと信じて良い
ジェルを揉み込んでいると、秋があっという間に深まってきているなと。描こうとした光景は良いため、もっと焦点を絞らないといけない。
語った「揉み込む」が良い。「ハンドジェル」を揉み込めば秋も揉み込んでいくかのような表現を「深みゆく」として、時間経過が出る。
同じ時代を生きる読者たちは同じ思いと共感を持ってくれる。

本人 初めて直されたんですけど、ホントありがとうございます(笑)。

添削後
ハンドジェル 秋 深



◆予選Dブロック

1位◆『泡ポンプの英知 秋天を仰ぐ 中田喜子
「泡ポンプ」の表現を調べた。「英知」のような抽象名詞を俳句の中に浮き上がらないように入れ込むのは難しい。開発をしている、商品の価値、研究者など全部集まって「英知」だと読み取れる。後半の納め方は実はとても難しい。秋の晴れ渡った空を「仰ぐ」で大袈裟だが、「英知」が大袈裟で抽象的な言葉のため、敢えてこの言葉を浮き上がらせないように「秋天を仰ぐ」とし、しっかり響き合わせた。際どい所をよく潜り抜けて整えた。

※中田喜子の十八番(おはこ)。前半と後半の取り合わせで勝負する破調の一句。

【本人談】
石鹸が泡で出てくるボトルが「泡ポンプ」。それを開発している人が「あと一歩で出来るのに、一体何が足りないんだろう?」と言って「どうか智慧を下さい」と天を仰いでいるという句。

浜田 永世名人?
梅沢永世名人 …。
浜田 永世名人?
梅沢永世名人 はい?
浜田 どうですか? え?死ぬの?
梅沢永世名人 いやいや、死にません。今、話を聞いて、逆に深い俳句なんだな~というのを感じてしまったので、説明ができない(笑)。さすがは1位だわ~。
浜田 これ村上に聞いた方が早いんじゃないですか。
ジュニア名人 あ~そうですね。
村上名人 …「泡ポンプ」ってね、便利ですよね。
一同 …。
村上名人 せんせ~い!(笑) 先生お願いします。
ジュニア名人 セルフすな。
浜田 先生~!

夏井先生 
泡ポンプ」と言うのだとこの句に出会って調べた。
正直言うと「英知」のような抽象名詞を俳句の中に浮き上がらないように入れ込むのは難しい
「泡ポンプの英知」で開発をしている、商品の価値、研究した人たちと全部集まって「英知」なんだと読み取れる
そこから後の納め方は、実はとても難しい。俗な物に「英知」と言っているため。
それを企んだ後半で、秋の晴れ渡った空を「仰ぐ」で大袈裟な表現。「見る」「見上げる」ではない。
「英知」が大袈裟で抽象的な言葉のため、敢えてこの言葉を浮き上がらせないように「秋天を仰ぐ」と
しっかり響き合わせた。際どい所をよく潜り抜けて整えたという一句。
これは下手に直したら崩れる。褒めましょう。

本人 ありがとうございます。

添削なし


2位◆『玻璃越しの稲妻 湯の中の乳房 筒井真理子
2カットの句またがり。ガラスの窓越しに稲妻が走ると、「湯」で風呂場の窓だと分かる構成が良い。「稲妻」は秋の季語で、雷光など光に重点がある。ガラス越しに雷が光り、湯の中に乳房があるという光景の描き方はとても良い。惜しいのは「中の」で、「湯」「乳房」で入浴中だと分かる。「に」だけでも「の中に」は伝わるため、余った音数で季語を立てるひと工夫を。「白き」で稲妻が光るとその白さがポッと湯の中に見える。

【本人談】
兼題からシャンプーやソープを思い浮かべた。「玻璃越し」はガラス越し。実家で子どもの頃はお風呂が暗かったため、稲妻が走るとビーっと分かり、その時に浴槽の湯が微量揺れたような感じがする。さっぱりと一枚の絵のように情景だけを書いて、読んでる方に想像してもらいたいと思った。

梅沢永世名人 勿体ないことをした。私は乳房は良く見てますから。(笑)
浜田 何を言うてんの?
梅沢永世名人 「中の」がいらなかったかな。これが無かったら1位だったと思いますよ。これ無駄だった。
ジュニア名人 そうか。

夏井先生 
おっちゃん、本当に偉い。
玻璃越しの稲妻」で1カットの場面。「玻璃」はガラスで、ガラスの窓越しに稲妻が走ると。
カットが変わり「湯」で風呂場の窓だと分かる構成も良い
稲妻」は秋の季語で、同じような現象「」だと夏の季語。「雷」は雷鳴の音、「稲妻」は雷光など光を表現し、性質は分かれる。
ガラス越しに雷が光り、湯の中に乳房があるという光景の描き方はとても良い惜しいのは「中の」で、重要なポイント。
「湯」「乳房」で浴槽の湯に入っているのは分かる。念押しするなら「」だけでも「の中に」は伝わる。
余った音数で季語を立てるひと工夫ができる。「湯に白き」で稲妻が光るとその白さがポッと湯の中に見えると。
ここまでやれたら良い感じになった。

本人 「白き」ってしてもらうと、なるほど。
浜田 いやいや。

添削後
玻璃越しの稲妻 湯乳房


3位◆『飴貰うごと 狭霧に手広げし子 ミッツ・マングローブ
掴めない霧を掴もうとする子の手が、まさか飴を貰う手であると表現できる人は珍しく、比喩の発想は面白い。七五五だが、リズムの悪さが気になる。さらに、前半の比喩と後半の光景との「つかず離れず」が、中々思いつかない比喩のため読み解く時間が欲しい。「飴貰うごと」と上五字余りに置き、「両手」を広げれば、霧の感触を確かめる動作が分かりやすくなる。「広ぐる」で文語、「広げる」で口語の表現に。季語がゆっくりと見えてくれば比喩も効いてくる。調べをどのように内容に寄り添わせるかが大事な勝負所。

【本人談】
この間甥っ子と電車に乗った時、消毒スプレーを自分にやった後、甥っ子にもかけようと思ってスプレーを出したら、(コロナ禍の状況下で)何の迷いもなくスッて(甥っ子の)手が出る。まるで飴玉を貰うように。「狭霧」は霧。霧が立ち込めていても、子どもは無条件に(霧に)触ろうとする。

梅沢永世名人 私にはこういう句は書けない。何かリズムが悪いかな。読めば読む程リズムが悪いんだよ。リズムが悪い。
本人 聞こえてますよ。

夏井先生 
この発想が、作者が分かると納得する。
掴めない霧をも掴もうとする子どもの手が、まさか飴を貰う手であると表現できる人は中々いない。比喩の発想は面白い
ただ、七五五で合計17音にはなるが、読んだときのリズムの悪さが気になる。
さらに、前半の「飴貰うごと」の比喩と後半の光景との「つかず離れず」が、中々思いつかない比喩のため、しっくりいくためには読み手には時間が欲しい。
それを解消する小さなコツは、「飴貰うごと」を上五字余りとして先に言う
片手を見たかもしれないが、狭霧に「両手」を広げるにすれば、霧の感触を確かめようとするのが分かりやすくなる。
「広ぐる」で文語、「広げる」で口語の表現になる
季語がゆっくりと見えてくれば比喩も効いてくる。
調べをどうやって内容に寄り添わせていくか、そこがこの句の大事な勝負所だった。

添削後
飴貰うごと 狭霧に手 広子』
『飴貰うごと 狭霧に手 広げ



4位◆『秋風の終電 マイバッグの梨 河合郁人(A.B.C-Z)
季重なりは凄く難しい。兼題から「秋風の終電」の発想までは悪くはなかった。消毒で、電車の窓が開き、秋風が来るのは換気のためだと。なぜ、そこに絞らなかったのか。「梨」まで書くと一句がバラバラになる。前半と後半の一塊が別々に存在している。それぞれを2句に切り分けてやり直してきなさい。

※五七五を崩し、「秋風(しゅうふう)」「梨」の季重なりに挑戦した一句。

【本人談】
ポンプの時点で消毒や石鹸は想像できたため、そこから膨らませてみた。今年はマイバッグやエコバッグを皆使っている。終電の窓を開けて(コロナ禍で叫ばれている)換気の良い風が当たっている中で、先ほど買ったマイバッグに入っている梨を帰ってから贅沢のために食べる楽しみ。その時の気持ちをこめて詠んだ。季語が重なっているのが駄目だったのかな?

梅沢永世名人 その通りだよ。
本人 ホント、すみません。
梅沢永世名人 何をしたの? タイトル戦よ。その予選よ。予選に季語2つもつけて、よく出てこられたもんだね(笑)。まだ10年早い!(笑) 季語を2つ使って俳句を作る。それもタイトル戦よ!
浜田 分かったよ。
岩永 季語重なり(季重なり)が凄く気になりまして、千賀さんのあのカッコイイ俳句を見た後なので、どういう思いで作られたのかな?
本人 やめてくれ!(笑) 何てこと言う!
千賀名人 まあね。
本人 千賀の知らないで作ってるから!

夏井先生 
季重なりは物凄く難しい兼題のノズルから「秋風の終電」の発想までは悪くはなかった
消毒・電車の窓が空いている、秋風が来るのは換気のためだと。なぜ、そこに絞らなかったのか
そこから「梨」まで思ったため、一句がバラバラになる。
前半と後半の一塊が別々に存在している感じになった。

「秋風の秋風」「マイバッグの梨」のそれぞれを2句に切り分けてやり直し、宿題!

本人 宿題!?(笑)
浜田 やり直しです。
夏井先生 やり直してきなさい。
本人 はい、わかりました。

添削されず



【補欠からの決勝進出者】

●各ブロック2位の俳句

A2位鍵盤図弾く兄の背や秋の暮千原ジュニア
B2位色のなき風やボカロのラブソング岩永徹也
C2位秋麗チョコスプレーの淡き影村上健志
D2位玻璃越しの稲妻湯の中の乳房筒井真理子




★次回は金秋戦決勝。兼題は「(7時過ぎの)時計⌚」です。




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コメント

No title

あくまでも個人的な意見ですが・・・

パックンさんの場合は歴史を振り返ったときに“そういえばこんなことがあったなぁ”と回想できる

昇吉さんの場合はハンドジェルとあれば例えばコロナ禍ではなくてもインフルエンザの予防なのかな?と思える部分もあると思うので不要と判断されたのでしょう
どうしてもこのコロナの時代に合わせた俳句だというのならば東大王との対戦の時の横尾名人のように前書きで「2020年」と入れていればよかったのではないかと思います

昇吉さんの句とパックンさんのボリバル札の句との比較に反響が大きいことに驚いています。
勉強になりますね。

その上で私としては「コロナ禍」と書くべきだという立ち位置は変わりません。
俳句が後に残る文芸である以上、後世でも読まれることを前提に詠むことが必要だと思うからです。

ハンドジェルでコロナ禍を思えというのは、
俳句を詠んだ場がタイトル戦という”現代の試合”であったことも一因としてあるのかなと思いました。

ツイッターでフォロワーの方と話していたのですが、村上さんの添削にやや違和感を覚えてしまいます。

というのも、先生は気付きの意味を込めて「に」に直しましたが、村上さんは「ドーナツにあるチョコスプレーの小さな影」を表現したかったと話していました。

「に」は場所を示す助詞です。なので、「チョコスプレーに淡き影」としてしまうと、「チョコスプレー自体の影」というより「何かしらの影がチョコスプレーに掛かっている」という意味合いになってしまい、本人の言いたかった事とズレてしまうのではないかと思うのですが、どうでしょうか

間違えて途中で投稿しちゃいました

何度もすいません、、、

客観的な分析や自分の書きたいことを正確に書ける意味では他の上位の方々だなと思います

連投失礼します

Cブロック
Dブロック

安定の村上名人、中田名人に
触れ幅の多い千賀さん、ミッツさん

この対決が楽しみでした。

千賀さんの句は
最初定型で
夏の海描(か)くスプレーの秋思かな
夏の海描くスプレーの散る秋思

と考えましたが、前半「夏の海を描くスプレー」が明確に映像化してるので「秋思」という映像のない季語がどうしても負けちゃいますね。

映像化してる前半はウキウキしたイメージがあって、最後で「秋思」とどんでん返しをする。夏の海の思い手を懐かしんで切ない、特に今年はコロナ禍で海に行けなかったという切ない句になってるので、やはりこの句に関しては破調で正解だなと思います。


春風亭昇吉さんの句ですが

昔、鈴木光さんが夏井先生に指摘された

俳句はこの程度やってればOk

というのがご本人の解説から感じられました。

ミッツさんはさすがの目のつけどころだなと思いましたが、ご自分の句を客観的に分析することができればと感じます。


今回の予選では、森口さんの句が断トツて好きでしたが、

自分の書きたいことを正確に書ける、他人の句を分析できるという意味では、

横尾さん、千原ジュニア、千賀さん、
惜しくも予選敗退しましたが村上名人と

私見ですが

双葉さんへ

実は僕も最初、その句が頭に浮かびましたが

その句とは分けていいものと判断しました。

理由として一番大きいのは
私たち日本人がコロナ渦という苦しみを体験したかどうかです。

私たちの生活様式や価値観を大きく変え、たとえコロナがおさまったとしても、その後の生活にも少なからず影響を与えるのは間違いないでしょう。

Aブロックの森口さんの句の「被爆」という言葉で戦後75年たった現在でもなお原爆を連想させるように

「ハンドジェル」という言葉にもコロナ禍のイメージがついてくるのかなと思います。

それに比べると
パックンさんの句は日本とは別のベネズエラという国、失礼なことを承知で書くならば日本とは親交が強いわけではなく
ある程度、世界情勢に関心を持った人じゃないとわからない特殊な事情です。
なので「ボリバル札の紙雛」という言葉の持つ意味がわからない人も少なくないでしょうし、この先の未来でそれが通じるかどうかといえば、少なくとも日本のなかでは難しいかなと思います。

私が納得行っていないのは、
昇吉さんの句で「ハンドジェルとあればコロナは要らない」というくだり。
確かに今ならコロナの消毒と読んでもらえるでしょうが、
もっと先の時代になった時に同じように読んでもらえるかどうかは疑問です。

以前パックンさんが詠んだ句に「ハイパーインフレボリバル札の紙雛」がありますが、
志らくさんの「ボリバル札とあればハイパーインフレはわかるので不要」という指摘に対し、
先生は「私たちはもっと先の時代を生きていく。
もっと先の時代になった時にボリバル札でハイパーインフレがわからなくなるので、
ハイパーインフレがあった方が句が長生きできる」と仰っていました。

今回の昇吉さんの句とこの時のパックンさんの句の時で判断が異なる理由を説明できる方、
どなたかいらっしゃいますか?

内容とは関係ありませんが

ナレーターの銀河万丈さんのコロナ陽性がニュースになりましたね。

プレバトの影の功労者の一人でもある方なので、一日も早い回復をいのります。

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