「プレバト!!」で披露された千原兄弟・千原ジュニアの全俳句一覧です。
永世名人(名人10段★5) 千原ジュニア(ちはらじゅにあ) 合計99句+共作1句
成績(2023年8月24日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ6回、
凡人4回、
才能ナシ4回
<特待生時代>
1ランク昇格15回、
現状維持14回、
1ランク降格1回
【永世名人への道】★★★★★ 前進 6回、
現状維持 0回(うち星持ち0回)、
後退 1回(添削があれば即降格)
【永世名人のお手本】暫定27句・残り23作(50句で句集出版決定)
認定22句+
掲載決定 5句、
ボツ 4句
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第2回番組対抗戦
才能アリ1位第1回冬麗戦8位(最下位)第2回俳桜戦8位、第2回炎帝戦予選4位、第2回金秋戦予選2位・決勝3位、第2回冬麗戦予選3位・決勝2位
第3回春光戦予選2位・決勝6位、第3回炎帝戦予選2位・決勝7位、第3回金秋戦予選2位・決勝5位、第3回冬麗戦決勝7位
第4回春光戦予選B1位・決勝7位、第4回炎帝戦予選A1位・決勝7位、第4回金秋戦予選A2位・決勝優勝
、第4回冬麗戦7位
第5回春光戦決勝2位、第5回炎帝戦10位(最下位)、第5回金秋戦決勝9位、第5回冬麗戦4位
第6回春光戦予選A2位・決勝9位、(第6回炎帝戦13位)、
第6回金秋戦予選C1位・
決勝6位、第6回冬麗戦6位
第7回春光戦決勝5位、浜田杯9位、第7回炎帝戦8位夏の他流試合SPで小中学生選抜に29-27で
判定勝ち、秋の他流試合SPで東大王・鶴崎修功に8-10で
判定負け第4回番組対抗戦で
1位チームに判定負け(北山宏光[Kis-My-Ft2]と共作)
ふるさと戦(写真俳句)で
福岡編4位、京都編優勝(PRポスター掲載決定)査定とは別に2017年月間MVH受賞(12月)
●通算昇格率 56.5%(26/46) 掲載率:56%(5/9) 前進率:86%(6/7) 昇格率:50%(15/30) ◆添削なし秀句 46句/99句→50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ→
人物紹介◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 | 才能ナシ | 滝を見て蛇口を閉めたか考える |
2 | 才能アリ | 大仏が見ているつつじを僕見てる |
3 | 凡人 | 潮香りバスで浮き輪と胸膨らむ |
4 | 才能ナシ | 運動会、老い、甥追い「おーい!!」あ、人違い |
5 | 凡人 | 坂並び車にもらう秋の手形 |
6 | 才能アリ | 残業中窓下の聖樹灯が消える |
7 | 凡人 | 豆撒きはいじめ助長と鬼の声 |
8 | 凡人 | 卒業式中高一貫あくびかな |
9 | 才能ナシ | 銅像に野球帽主春夢かな |
10 | 才能アリ | 逆風を飲み込み昇る五月鯉 |
11 | 才能アリ | 五月雨を知る紙袋のビニール |
12 | 才能ナシ | 梅雨寒にボタン信号押し忘れ |
13 | 才能アリ | 大仏を拝むボクサー朝の月 |
14 | 才能アリ | 750ccのタンクにしがみつく寒夜 |
15 | 才能アリ | トランプを一旦伏せて初詣 |
16 | 冬麗①8位 | 新雪に放物線の飛ばし合い |
17 | 1ランク昇格 | 子らが木を揺らし降らせる雪の花 |
18 | 1ランク昇格 | 雛壇を静かに登る老いた猫 |
19 | 1ランク降格 | 初桜子供の笑い声で咲く |
20 | 俳桜②8位 | 噺家が魅する桜と富士の山 |
21 | 現状維持 | 迅雷や自転車チェーン黒き爪 |
22 | 現状維持 | 家族旅行上がる花火にジロ逃走 |
23 | 現状維持 | 夏休み明け名簿順抜かされる |
24 | 炎帝②予選4位 | 風死すや現場検証顰め面 |
25 | 1ランク昇格 | 舌先に鰡子の粒現れる |
26 | 金秋②予選2位 | 750ccのアクセル戻し紅葉踏む |
27 | 金秋②決勝3位 | 御出席の葉書投函秋日和 |
28 | 現状維持 | 運動会アキレス腱の切れる音 |
29 | 現状維持 | 秋日和和日傘回すMAIKOSAN |
30 | 冬麗②予選3位 | ヘビメタの担ぐギターと破魔矢かな |
31 | 冬麗②決勝2位 | 皹に窓の結露を吸わせけり |
32 | 現状維持 | 春疾風足絡み付く号外や |
33 | 春光③予選2位 | 壺焼きの壺傾きてジュッと鳴る |
34 | 春光③決勝6位 | ふらここを待つ我が子見つ飲むコーヒー |
35 | 1ランク昇格 | 子の利き手左と知りて風光る |
36 | 現状維持 | すり傷を蛇口の流す夏の空 |
37 | 1ランク昇格 | 甥っ子とおいっ子と子と夕虹と |
38 | 炎帝③予選2位 | 渋滞や花火の映るボンネット |
39 | 炎帝③決勝7位 | 破れ傘雨後の雫を垂らしけり |
40 | 夏の他流試合○ | 撮り鉄の汗拭いけり103系 |
41 | 現状維持 | 回転寿司醤油注しけり待つ秋刀魚 |
42 | 金秋③予選2位 | 長き夜のジャーの隣に立つ杓文字 |
43 | 金秋③決勝5位 | 台風やぐぅわんぐぅわんと信号機 |
44 | 1ランク昇格 | パティシエに告げる吾子の名冬うらら |
W1 | 番組対抗(共作) | 揉みくちゃの福袋抱き帰途につく |
45 | 冬麗③決勝7位 | 風邪の孫祖母の御飯を平らげる |
46 | 春光④予選B1位 | 顔面骨折カニューレの接ぐ春の朝 |
47 | 春光④決勝7位 | ボクサーの決意の引っ越し夏隣 |
48 | 現状維持 | 裸子やインターフォンに踊り出す |
49 | 炎帝④予選A1位 | 亡き猫に病院からの夏見舞 |
50 | 炎帝④決勝7位 | 消しゴムに彫刻刀の彫る花火 |
51 | 1ランク昇格 | 秋の朝卵にゆでと書かれけり |
52 | 秋の他流試合× | 試し書きに密と書かれし秋の色 |
53 | 金秋④予選A2位 | 鍵盤図弾く兄の背や秋の暮 |
54 | 金秋④決勝1位 | 痙攣の吾子の吐物に林檎の香 |
55 | 冬麗④7位 | 冬の月輪ゴムの中に入れてみる |
56 | 1ランク昇格 | 自画像に手鏡も描く春隣 |
57 | 1ランク昇格 | 銭湯の脱衣所小銭無き春よ |
58 | 春光⑤決勝2位 | サザエさんに後出しあいこ吾子の春 |
59 | 1ランク昇格 | とぅるとぅるの求肥に透けている苺 |
60 | 1ランク昇格 | ゆるキャラの汗の匂いとファンの音 |
61 | 炎帝⑤10位 | 白シャツは何より白く退院す |
62 | 1ランク昇格 | 手花火の火に手花火と手花火を |
63 | 現状維持 | 蜩に金属バット協奏曲 |
64 | 現状維持 | 公園の漫才師黙秋夕焼 |
65 | 金秋⑤決勝9位 | 夜半の秋次子に授乳の妻ZZZ(ずずず) |
66 | 現状維持 | 夕月夜名の無き猫と君を待つ |
67 | 1ランク昇格 | 手袋のまま割る箸の乾いた音 |
68 | 冬麗⑤4位 | 雪吊や登校拒否の吾と祖母と |
69 | 1ランク昇格 | 春の駅白杖の傷夥し |
70 | 現状維持 | 不登校児に届く卒業証書 |
71 | 春光⑥予選A2位 | トラクター祖父の膝乗る春休み |
72 | 春光⑥決勝9位 | 迫る電柱顔面5mmの春 |
73 | 現状維持 | 開き癖図鑑の虎に春夕焼 |
74 | 1ランク昇格 | 帰省して貼られたままの犬シール |
75 | 1つ前進 | 夏いよよサンドバッグは歪みけり |
76 | 1つ前進 | 病室の七夕竹に一礼す |
77 | 炎帝⑥13位 ※番組解説なし | 故人との弾みしメール夜の秋 |
78 | 1つ前進 | キオスクの夕刊フジに秋茜 |
79 | 金秋⑥予選C1位 | 豚饅の油染むべい独楽の紐 |
80 | ふるさと戦(福岡)4位 | 常連に席譲られし秋の夜 |
81 | 金秋⑥決勝6位 | 秋立つや十七画の名を吾子に |
82 | 1つ後退 | 銀杏落葉やカチンコの渇いた音 |
83 | 1つ前進 | カラオケの二番の途中コート脱ぐ |
84 | 1つ前進 | バス見えてバス停の毛布を畳む |
85 | 冬麗⑥6位 | 焼鳥や嗚呼隣席に郷ひろみ |
86 | 1つ前進 | おでん屋の一皿は先ず神棚へ |
87 | ふるさと戦(京都)1位 ※PRポスターに掲載 | 初蝶の止る擬宝珠の刀傷 |
88 | 掲載決定 | サンタへの手紙貼られたままの春 |
89 | ボツ | コロナ7日目レトルト絞る遅日 |
90 | 春光⑦決勝5位 | 口座開設朱肉拭き取る夏近し |
91 | ボツ | 春嵐継父と見上ぐ観覧車 |
92 | 浜田杯9位 | タイトルコール飛び立つ初夏の鳩よ |
93 | ボツ | 矯正箸はちりめんじゃこを摘まみけり |
94 | 掲載決定 | 珈琲は冷めて怯者の梅雨の闇 |
95 | 掲載決定 | 町中華日傘を開く最後尾 |
96 | ボツ | 750ccの飛魚の如大夕立 |
97 | 炎帝⑦8位 | 焼酎やけふは店主に辞儀深う |
98 | 掲載決定 | どんぐり七つ饂飩二杯に箸三膳 |
99 | 掲載決定 | 山雀の高音竹皿のカレー |
▼人物紹介「プレバト!!」では生け花・絵手紙・消しゴムはんこの特待生と多彩な特技を持つ芸人。俳句では才能アリから才能ナシへの波が激しく、下積み時代が長い俳句特待生である。また、才能ナシを経験している史上初の特待生かつ名人で、しかもその4回全てが最下位という荒っぷり。
夏井先生からは実力が信用されず、13句連続で添削を受け続けるが、才能アリを続けて出したことで14回目出場で通算13人目の特待生になんとか認定された。その認定句は自身がバイク好きがゆえ、「ナナハン(750cc)」をもとにした句であり、月間賞にも選出された。
句の特徴は自身の経験をもとに独自な視点から取り合わせる句。当初は、ボケ芸人の性が俳句にも出てしまうようで、大概失敗するときはナンセンス俳句となってお叱りを受けることが多かった。最近は発想を飛ばすことに慣れ、一物仕立てによる単純な描写でも成功句が複数見られる。また、乗り物から発想した句が特徴的だが、自身の子や甥を詠む句も多く、光景の擬人化にも挑んでいる。
特待生の当初は劣等生で、初参加のタイトル戦は「尿」の句で最下位を経験。夏井先生から「降格させたい」と言われるほど激怒され、その後の通常回査定で実際に降格。しかし、発想の良さは評価されることが多く、先生から「発想をドブに捨てる」男と言われていた。
降格後も語順や言葉の詰めの甘さが多く指摘されて段位はしばらく足踏みしていたが、梅沢も絶賛する一物仕立ての句で久々の昇格に成功。
この辺りから視点が急に俳人目線になり、最近は、実体験をもとにしたリアリティーのある情景を描く句が多く、第2回金秋戦では再び「ナナハン」の句に挑戦。特待生ながら予選・決勝とも3位以内の快挙を達成し、表記についても挑戦的な句が見られるようになる。続く冬麗戦では「ヘビメタ」を題材とした句を詠み、名人の期待に応えて予選・決勝とも3位以内と大金星となるなど勢いが出てきた。また、春光戦・炎帝戦、そして金秋戦でも見事な描写力で予選を2位で突破。金秋戦では決勝でも5位と冬麗戦の決勝シード権を獲得する活躍である。タイトル戦では「ナナハン」の句を詠ませると右に出る者はいないというイメージが定着し、東国原・藤本名人などからも適宜いじられる様になっている。
一方、通常査定の昇格率は特待生時代は3割~4割程度の低水準で推移し苦戦を強いられていたが、5級到達から最多15回もの査定を経て遂に番組8人目の名人に到達。消しゴムはんこに続き、番組初の二部門名人の快挙を達成。再び勢いに乗ってきた。
夏井先生は「ちょっとずつ手が増えてきて幅が出てきた。私を楽しませてほしい」と期待を寄せており、最近は「コツコツ学んでいる。真面目な人は好きです」と真面目キャラとして仕立て上げており、「ミスターコツコツ」と紹介されることも多い。
また、番組対抗戦ではキスマイ北山の発想を自身が添削する形の共作に挑戦したが、1位の日曜劇場「テセウスの船」チームに無念の敗北を喫した。
東大王チームと戦った秋の他流試合ではIQ165の天才・鶴崎に勝負を挑むも判定負けを喫している。
タイトル戦は計19大会に参加。初回こそ大目玉を喰らうも、以降10大会連続で予選を突破。予選突破率は実に91%とまさに「予選の男」というイメージが定着し、決勝では下位に沈みやすかったが、第4回金秋戦では初優勝し、予選から勝ち上がった初のタイトル王者となった。第5回春光戦でも2位、同冬麗戦でも14名中の4位に入るなど、タイトル戦の最近の戦績は安定している。
名人以降の査定は好調。番組初となる6連続昇格(名人初段→7段)を決め、遂に5人目の9段に到達。昇格レースでは横尾名人に一時追いつかれるも、2022年5月に遂に番組5人目となる名人10段に到達した。
永世名人への道の査定は7度挑戦。初回に幸先よく前進を決めて先を行く藤本名人に追いつき、番組初の3回連続前進を決めるなど滑り出しは好調。4度目の挑戦で初めて後退の洗礼を受けたが、すぐさま星を取り返し、3回連続前進をトントンと決めて梅沢・東国原・村上に続く番組4人目の永世名人に昇格。名人10段から挑戦7回、わずか8か月弱(34週)での認定は過去の記録(村上の17回・梅沢の94週)を遥かに凌駕する最速記録となった。
2023年1月のふるさと戦第2弾・京都編では地元を一人で背負って挑戦。永世名人の貫録を示す形で優勝を決めた。
永世名人昇格時に句集掲載に相当する句が22句認定された。これはフルーツポンチ村上名人の昇格当時と同じ数である。
永世名人のお手本にここまで9度挑戦。初回は幸先よく掲載決定を決めたが、梅沢句集完成の記念回となった2度目の査定で初めてシュレッダーの洗礼を受けてしまい、その後も連続でボツ査定となった。現在5回の掲載決定でシュレッダー率は約5割となっている。
●[1] @14/05/22◆お題:日光 華厳の滝
『滝を見て蛇口を閉めたか考える』才能ナシ8位(最下位)10点
添削後
『滝は天の蛇口のようだと考える』『滝は天の蛇口の如く迸る(ほとばしる)』●[2] @16/04/14◆お題:つつじと鎌倉大仏
『大仏が見ているつつじを僕見てる』才能アリ2位70点
添削後
『大仏が見ているつつじを僕見ている』●[3] @16/07/14◆お題:夏の海とバス
『潮香りバスで浮き輪と胸膨らむ』凡人3位60点
添削後
『潮香るバスに膨らませる浮き輪』●[4] @16/10/13◆お題:秋の運動会
『運動会、老い、甥追い「おーい!!」あ、人違い』才能ナシ5位(最下位)10点
添削後
『運動会甥見間違う我の老い』
季語は「運動会」。フルスイングで攻めた句は鍵括弧に感嘆符(!!)、さらに3つの句点を入れたものの最下位。甥の運動会に行き、徒競走をカメラで撮影するも、今は体操服に名札を付けておらず、知らない子だと気付いた体験から、ほんの数か月で自身の記憶とだいぶ異なるほど成長した甥と自身の老いとを掛けた。先生は「久しぶりに腹立たしい句」と酷評し、ダジャレ自体は悪くはないが、詩情のようなものが全くないと評す。句の半分以上は使い物にならないと語り、語った情報になるよう添削し、「こういうの嫌」と吐き捨てた。ショックの本人は「はにかめぬ」と二階堂の添削句の表現を引用して感想を述べた。
●[5] @16/11/03◆お題:紅葉 日光いろは坂
『坂並び車にもらう秋の手形』凡人2位45点
添削後
『雨の坂車体に秋の葉の手形』●[6] @16/12/15◆お題:丸の内のイルミネーション
『残業中窓下(そうか)の聖樹灯が消える』才能アリ1位72点
添削後
『残業や窓下の聖樹灯が消える』●[7] @17/02/02◆お題:節分 豆まき
『豆撒きはいじめ助長と鬼の声』凡人3位45点
添削後
『いじめ助長にあらず豆撒け鬼の声』●[8] @17/03/09◆お題:卒業式
『卒業式中高一貫あくびかな』凡人3位58点
添削後
『中高一貫卒業式の大あくび』●[9] @17/03/23◆お題:二宮金次郎と桜
『銅像に野球帽主(ぬし)春夢かな』才能ナシ5位(最下位)30点
添削後
『野球帽かぶされ春夕焼の銅像』●[10] @17/05/04◆お題:こいのぼり
『逆風を飲み込み昇る五月鯉』才能アリ1位70点
添削後
『山風を飲み込み昇る五月鯉』●[11] @17/06/15◆お題:雨の銀座
『五月雨を知る紙袋のビニール』才能アリ1位70点
添削後
『紙袋にビニール五月雨と知る』デパートの買い物中に、紙袋の上にビニールをかぶせる仕草で降雨を知ることに着眼した点が高い評価を受けた一句。
●[12] @17/06/22◆お題:学校の傘立て
『梅雨寒にボタン信号押し忘れ』才能ナシ5位(最下位)37点
添削後
『梅雨寒の押しボタン式信号機ずっと赤』●[13] @17/09/21◆お題:月と鎌倉大仏
『大仏を拝むボクサー朝の月』才能アリ1位72点
添削後
『大仏を睨むボクサー朝の月』●[14] @17/12/07◆お題:冬の帰り道
『750cc(ナナハン)のタンクにしがみつく寒夜』才能アリ1位73点
添削なし
2017年12月月間MVH受賞句ナナハンという俗な言い方と「寒夜」との取り合わせが高評価を受け、初の添削なしかつ月間最優秀句に選出。
[ここから特待生として査定]●[15] @18/01/04◆お題:初詣(第2回番組対抗戦)
『トランプを一旦伏せて初詣』才能アリ1位添削後
『トランプを伏せて初詣へ繰り出す』●[16] @18/01/04◆お題:雪と青空
『新雪に放物線の飛ばし合い』第1回冬麗戦8位(最下位)添削後
『新雪に交わす放物線の尿(しと)』「放物線」が雪合戦とも誤読される句。夏井先生から「降格させたい」と大目玉をくらうこととなる一句。
●[17] @18/01/25◆お題:つらら
『子らが木を揺らし降らせる雪の花』4級へ
1ランク昇格添削なし
「ら」と「ゆ」の韻が踏まれた工夫アリの一句として高評価。
●[18] @18/03/01◆お題:ひな祭り
『雛壇を静かに登る老いた猫』3級へ
1ランク昇格添削なし
●[19] @18/03/29◆お題:入学式と桜
『初桜子供の笑い声で咲く』4級へ
1ランク降格添削後
『子らの声とひかりを吸うて初桜』「初桜」という時点で咲いている、原因と結果を説明しているなど問題だらけとして久々の降格判定。
●[20] @18/04/12◆お題:
桜と富士山『噺家が魅する桜と富士の山』第2回俳桜戦8位
添削後
『米朝の語る桜と富士と空』●[21] @18/05/17◆お題:
公園の自転車『迅雷や自転車チェーン黒き爪』4級で
現状維持添削後
『迅雷やチェーンを直す爪黒し』●[22] @18/07/05◆お題:
かき氷『家族旅行上がる花火にジロ逃走』4級で
現状維持添削後
『家族旅行の花火にジロの遁走(とんそう)す』●[23] @18/07/26◆お題:
離婚届『夏休み明け名簿順抜かされる』4級で
現状維持添削後
『名簿順抜かされる二学期の現姓』●[24] @18/08/02◆お題:
夏の太陽『風死すや現場検証顰(しか)め面』第2回炎帝戦予選4位添削後
『現場検証風死せる日の顰め面』●[25] @18/09/06◆お題:
秋の味覚『舌先に鰡子(からすみ)の粒現れる』3級へ
1ランク昇格添削なし
季語のみに着目した上級技「一物仕立て」を駆使して見事に昇格し、3級に返り咲いた。
●[26] @18/09/27◆お題:
紅葉の絶景『750cc(ナナハン)のアクセル戻し紅葉踏む』第2回金秋戦予選2位(決勝進出)添削後
『紅葉踏む750ccアクセルを戻し』(倒置)
『アクセルを戻し750cc紅葉踏む』(時間軸)●[27] @18/09/27◆お題:
郵便ポスト『御出席の葉書投函秋日和』第2回金秋戦決勝3位添削なし
※下五「秋」は「菊」や「鵙(もず)」にする例も提示された。
●[28] @18/10/18◆お題:
運動会『運動会アキレス腱の切れる音』3級で
現状維持添削後
「秋天を仰ぐアキレス腱切れる』単なる報告であると評され、季語「運動会」をさらに状況が見える表現に変えるべきと添削を受けた。
●[29] @18/11/08◆お題:
京都の紅葉と渋滞『秋日和和日傘回すMAIKOSAN』3級で
現状維持添削後
『MAIKOSANになりきり秋の和日傘を』
季語「秋日和」に対し「日傘」も夏の季語であり、「秋日傘」という季語もあると指摘され、季語の扱いについて注意を受けた一句。「日」「和」の表記の重なりや英字の表現力は評価された。
●[30] @18/12/27◆お題:
年末の満員電車『ヘビメタの担ぐギターと破魔矢かな』第2回冬麗戦予選3位(決勝進出)
添削なし
季語は年初の「破魔矢」。ヘビメタの兄ちゃんでも日本古来の風習に従うというギャップを詠んだ句。「ヘビメタ」「破魔矢」のギャップの対比と「ギター」「破魔矢」の大小の対比を先生は高評価。「かな」の詠嘆の押さえもしっかりできており、飄々とした新年の楽しい風景として、藤本名人も「面白い」と絶賛。見事2戦連続の予選通過を果たした。
●[31] @19/01/03◆お題:
結露『皹に窓の結露を吸わせけり』第2回冬麗戦決勝2位添削なし
季語は「皹(あかぎれ)」。あかぎれた指で窓の結露を「吸わせる」という表現でふき取る様子を詠んだ句。結露に触れることで、かゆみを止めたく、また窓の向こうが気になる心情も読み取れる。必要以上のことを語らない俳人の語り口で、俳人の視線で詠まれた句だと先生は大絶賛。「けり」も吸わせる行為を印象深くしていると評価され、タイトル戦予選通過者では最高位の2位と大金星。
●[32] @19/03/07◆お題:
春の号外(特待生一斉昇格査定SP)
『春疾風足絡み付く号外や』3級で
現状維持添削後
『絡みつく号外街の春疾風』
季語は「春疾風(はるはやて)」。号外から新元号に発想を飛ばし、その時配られる号外が新元号とともに足に絡みつくような表現をしたかったと語るが、中田名人から上五に「新元号」と語った言葉を書くべきだと指摘される。評価のポイントは「足」で、結果は3回連続の現状維持。「足と書かなくても想像できる」と評す先生は、発想の仕方は悪くないが、風で飛ぶ新聞紙が絡みつくとくれば大体足辺りだと読み手はわかると指摘。「足」に音数を使わず、季語を描写すべきと指南する。下五の「や」も据わりが悪い型のため、語順を変えて「街」と空間を広げることで風の季語を活かし、号外との2カットの映像へと添削した。
●[33] @19/04/04◆お題:
春の鮮魚店『壺焼きの壺傾きてジュッと鳴る』第3回春光戦予選2位(決勝進出)添削なし
季語は「壺焼き」。サザエの壺焼きが大好きでよく店で頼むが、七輪で焼いているとクッと傾き醤油がこぼれ、ジュっと鳴る。美味しい匂いが広がるというのを詠んだと語った句。梅沢名人は「光景が見事」と称賛する。藤本名人は「壺壺言い過ぎ」とダメ出しするも、先生は「壺焼きの壺」と押さえ直した点は大事だと否定。「淡々と描写するだけでこういう一句になる。作者があなただと驚いている」と語り、「傾きて」で、傾いてないところから、傾く一瞬の短い時間を切り取れており、押さえも「ジュっと鳴る」と起こった現象だけを説明せずに書いた姿勢を高評価。読み手の脳に映像が再現される表現で、「俳句はそれでよい」と添え、ジュニアの技術を改めて高く評価。タイトル戦は3回連続で予選突破を決めた。
●[34] @19/04/04◆お題:
コーヒー『ふらここを待つ我が子見つ飲むコーヒー』第3回春光戦決勝6位添削後
『ふらここを待つ吾子見つつ飲むコーヒー』『ふらここを待つ子を見つつ飲むコーヒー』
「ふらここ」はブランコを指す春の季語で、歳時記をめくって使いたいと思い挑戦した一句。子どもを公園に連れて、ブランコに乗る別の児童を見ながら、自分はコーヒーを飲むという暖かい春の日を詠んだと語った。「中七は"見つつ"が正しい」と文法の誤りを指摘する東大生の鈴木光に、正解を言えずに面目丸潰れの梅沢名人が「気遣え」と叱ることに。先生は「場面が優しい句」と評し、ブランコの順番を待つ我が子を外から眺めて缶コーヒーを飲む、ほのぼのとした場面を上手に書こうとする意図は良いとするも、問題点はまさに「見つ」の活用で、中七の字余りを避けるために、「我が子」を「吾子(あこ)」とする方法で添削した。「子」だけでも、我が子ではと読み手は想像できるため、「子を」として、「を」の助詞で対象を明確にさせる必要性を解説。また、「待つ」「見る」「飲む」と動詞が3つあるが、ゆったりとほのぼのとした時間を描ける技術を強く褒めた。
●[35] @19/05/02◆お題:
大型連休の電車『子の利き手左と知りて風光る』2級へ
1ランク昇格添削なし
季語は「風光る」。前回と同様に我が子の経験から詠んだ。「思いだけが先走っている」と語るも自信満々な句は、長期休暇で息子と遊んだ時に子の「左利き」に気づいたことを素直に詠んだ。中田名人は「優しいお父さん。ただ"知りて"が説明」と鋭く指摘し、"知りて"がどこまで機能したかが査定のポイントとなる。先生は、大事な部分を見抜いた中田名人を褒めた上で、子どもの成長の過程で気づいた瞬間を切り取る本人の姿勢を高評価。さらに、「子」も「吾子」などではなく、後の展開で我が子とわかる書き方を学んでいるのも嬉しいと褒めた。「知りて」は本来説明の言葉だが、この句の場合はそれ以外では内容が伝わらず、親が子を毎日見つめている状況を表すのに相応しく、「理論的な言葉の選び方」だと評した。季語「風光る」の光輝く春風の生き生きとした様子も、子どもの成長に似合っており、考えた上で一句が成立していると結論付けた。
●[36] @19/05/16◆お題:
学校の蛇口『すり傷を蛇口の流す夏の空』2級で
現状維持添削後
『すり傷の砂を蛇口に流す夏』
季語は「夏の空」。思い出をそのまま描写したと語った。梅沢名人は「分かりやすい俳句だが、特待生が詠む俳句じゃない。もっと重みを」と手厳しいが、具体的に浜田から突き詰められ、指摘できず。中七がポイントとなるが、結果は7度目の現状維持。「助詞を正確に選べ」と評す先生は、直球勝負の発想や「すり傷」による皮膚感覚は良いが、中七「の」が悩ましく「が」の意味が言いたかったのではと解説。「蛇口という場所"に"おいて水で流す」という意図のはずで、正確には場所を示す助詞「に」にすべきと指南。「流す」も「洗う」にできると続けた。梅沢名人の「もう一押し」の指摘にも共感し、「すり傷」の何を流すかをより具体的に描写すべきで、「砂」を例示して「流す」が活きるよう添削。場面が上に向かう季語も勿体なく、実感がわく「夏」という季語に直された。複雑な感情が入れば重みがつくと添え、本人も頷いていた。
●[37] @19/06/27◆お題:
梅雨晴れ間の水たまり『甥っ子とおいっ子と子と夕虹と』1級へ
1ランク昇格添削なし
季語は「夕虹」。冒険したと語る句は、相方せいじと妹にいる2人の甥っ子と自身の子の3人の人物が公園で遊ぶ様子を兼題写真に閉じ込めたと語った句。鈴木光は「優しい風景で好きだが、"と"の多用がどっちに転ぶか」と客観的に語り、その点が査定のポイントに。浜田は「降格」と叫ぶが実際は昇格札。「見事な映像化」と評す先生は、一瞬「えっ?」と思うが、文字面の工夫で映像を確保した楽しい句だと高評価。「甥」「おい」の表記の使い分けで年齢差が想像でき、「子」で自身の小さな子だと伝わり、夕立後に虹が出ている光景を読み手に伝える季語の効果を解説する。押さえの「と」で一句全体に遠近感が生まれ、3人の人物と背景の夕虹の映像化ができ、「と」「子」の韻を効果的に考えて言葉を選んだと称賛した。以前の
[4]運動会の才能ナシの句を引き合いに出し、「あれは腹が立って怒ったが、こういうものに実ってくる。コツコツ真面目に学んでいる」と姿勢も評価したが、本人は認めず「破れているポスターは自分の仕業」だとヤンキーぶりのほらを吹いて返した。
●[38] @19/07/18◆お題:
打ち上げ花火『渋滞や花火の映るボンネット』第3回炎帝戦予選2位(決勝進出)添削なし
季語は「花火」。ナナハンから自動車へと発想を転換した句は、渋滞で混雑する東京都心の外苑東通りを走ると、花火は見えないがボンネットに映る様子を描写した。藤本名人は「家庭を持つと車が必要で、チャイルドシートに子を乗せて運転するジュニアの姿が思い浮かぶ」と褒め、「箱乗りや!」と不良っぷりなセリフで応対する本人。先生は「丁寧に押さえて作った句」と評し、説明になりやすい「映る」の動詞がポイントで、この句では映像の言葉として機能した点を解説。「ボンネット」で金属の感触が伝わり、最後まで読むと光景が一気に完成すると称賛。A.B.C-Zの河合の句「百本ノック蛇口に映る夏の空」を引き合いに出し、「映る」の効果を勉強して実験的に試みたのではないかと語り、ジュニアを"真面目キャラ"としていじりだす先生。その努力を褒め称え、4大会連続の決勝進出を飾った。
●[39] @19/07/25◆お題:
夏の波紋[緑の映る水紋]『破れ傘雨後の雫を垂らしけり』第3回炎帝戦決勝7位添削後
『破れ傘雨後の雫のしとどなり』
季語は「破れ傘」。番組で行った植物園で、破れ傘という草を知り、「面白い名前が付いた植物やな~」と思った雨上がりのロケを兼題写真を見て思い出して詠んだ。先生は珍しい季語の知識を褒め、「作者が分かって2度ビックリ」と真面目キャラとして本人をいじる。上級技である"一物仕立て"の挑戦は見事で、季語の描写の精度で勝負する必要があるが、「雫(しずく)」は「垂れる」と読み手は思うため、下五の精度が甘いと指摘。雨の量を書けると"びっしょり"を意味する「しとど」を用いて添削し、この挑戦を強く褒めた。本人は、「はよ帰って勉強したいですわ~」と真面目キャラで応対した。
●[40] @19/08/15◆お題:
夏空と電車『撮り鉄の汗拭いけり103系』夏の他流試合SP第3試合29-27で
判定勝ち添削なし
季語は「汗」。「103系」は国鉄が設計・製造した日本の通勤形電車の車系。電車マニアの「撮り鉄」と言われる人物が、暑い中でカメラを構えて待つところに古い電車が来た光景を詠んだ。藤本名人は「乗り物俳句が得意。ナナハン、車、そして電車」と句の傾向を引き合いに出す。対戦相手の小学生は「下五で電車のことを想像できるかが気になる」と鋭く指摘する。結果は「早緑の電車まっすぐ夏雲へ」に判定勝ち。井上先生は「現代の風景で、中七でホッとした時間を描いたのが上手い」と称賛。下五について、「何となく懐かしい電車の感じがする」と述べ、高野先生は「かつての国鉄・山手線で走っていた。満員電車のイメージがある」と饒舌に語り、浜田に制止させられる。夏井先生は「『103系』がポイント。知識がない人には具体的過ぎて分からない人もいる」と解説。長所と短所を両者の句が抱えているため、僅差の判定になると予想していたと述べた。チーム内では唯一個人戦で勝利した。
●[41] @19/09/05◆お題:
回転寿司の秋刀魚『回転寿司醤油注しけり待つ秋刀魚』1級で
現状維持添削後
『小皿に醤油回転寿司に待つ秋刀魚』
季語「秋刀魚(さんま)」を心待ちにしている距離感をどう出すかに苦心したと語る一句は、回転寿司で最初に秋刀魚の皿を取りたいが、醤油を注(さ)して時間を潰しながら待つという微妙な心境を詠んだ。志らくは「そういう事なんでしょう」と自身の句の講評でのジュニアのコメントをかぶせる。「(「注しけり」と)言う必要がない!」と評す先生は、下五で秋刀魚を食べることを待つという動作から作者の心情が読み取れるため、季語が動くとは言い難いと前置きする。査定ポイントの「注しけり」が「けり」の切れ字で「注す」動作を印象付けてしまい、この句で重要な下五「待つ」が損するのが問題点と指摘。「小皿」という小物で字余りの上五とし、アップの光景から回転寿司の広い光景へとカットを切り替える語順に添削した。作者の思い描いた映像が読み手の脳に再生され、季語が主役として最後に出てくる句に変貌すると、「残念ながら良いですね~」と本人は納得した。
●[42] @19/10/10◆お題:
冷蔵庫『長き夜のジャーの隣に立つ杓文字(しゃもじ)』第3回金秋戦予選2位(決勝進出)添削なし
季語は「長き夜」。最近の炊飯器の杓文字が自立する仕様に着目し、夜中に小腹が空いたため家族が就寝する中で1人台所に向かうと、杓文字にそそのかされているような心情を込めた。梅沢名人は「大したもん」と褒め、日常の身近な世界観を詠む姿勢を村上名人になぞらえて"村上流"と称える。発想力に仰天する先生は、当たり前の光景の中に飄々とした可笑しみがあり、褒めるべき点が沢山あると評す。「立つ杓文字」は、擬人化の表現でいて擬人化ではない映像にもなると小技を効かした点を称賛。上五の助詞「の」は、選択肢の候補として「や・を・に」があるが、最善の選択で焦点を少しずつ絞るカメラワークを実現したと解説。メカニズムと擬人化が特徴的で、「コツコツ勉強するあなたが大好き」と最後に"真面目キャラ"をいじった。本人は「違う。鼻ほじりながら書いた」と元ヤンぶりで応対するいつもの流れになるが、タイトル戦は5連続決勝進出と勢いを発揮した。
●[43] @19/10/10◆お題:
歩行者信号『台風やぐぅわんぐぅわんと信号機』第3回金秋戦決勝5位(次回決勝シード権あり)添削なし
季語は「台風」。本人がそのままの情景だと語った一句。先生は、台風被害の足跡を記録することも1つの意味があると前置きし、「オノマトペ(擬音)だけを信じた句」と評す。中七以降の展開を読み手が勝手に想像でき、下五の「信号機」は想定の範囲内だが、言われてみて気づく形だと解説する。また、肝心のオノマトペもありきたりのものでは独自性がないが、音を飛ばし過ぎると誰にも伝わらず、リアリティとオリジナリティーの両方がないと成立しないとした上で、この句は良い塩梅で、動きと映像をも読み手に見せる効果を生んだと称賛した。「こういう勝負の仕方をするのは誰だろう?と思っていたらこの人だった」と納得し、添削のしようがないと添えた。タイトル戦はまさに破竹の勢いでシード権を獲得する活躍を見せた。
●[44] @19/11/28◆お題:
旬のスイーツバイキング『パティシエに告げる吾子の名冬うらら』名人初段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「冬うらら」。当番組への愚痴を「にけつッ!!」で6分間も語り、梅沢・東国原両名人にも悪口を語ると紹介。「次から次へと宿題が来続ける。明日は消しゴムも彫らなあかんし。この番組は貴族の遊びやから」と本人が弁明した回。息子の誕生日が12月で、天気の良い日にデコレーションケーキの飾りに書く名前を店員に告げた状況を詠んだ。中田名人は「子どもの句を詠んだらピカイチ。でも名人に来てほしくない」と本音をこぼす。査定ポイントは中七の語順だが、見事に昇格。「溢れんばかりの子どもへの愛情」と評す先生は、「子が誕生日である」「特別なケーキを注文する」状況を書く必要がないことを示す見本の句と解説し、前半のフレーズで、親の愛情やパティシエの表情が伝わると称賛。中七は「吾子(あこ)の名告げる」だと動作に軸足が残るが、この句は「名」に感動の軸足がゆっくり残る語順で、大切な名前を熟考して付けたことも読者が受け取ると解説し、"良い意味での親バカ"だとまとめた。「こんな生活してるんだ~もうビックリ」と嬉しい表情の先生。志らくに続いて番組8人目の名人となった。
●[W1] @20/01/03◆お題:
福袋(第4回番組対抗戦)
『揉みくちゃの福袋抱き帰途につく』1位チーム「テセウスの船」に判定負け添削後
『揉みくちゃの福袋抱く雨の帰途』『揉みくちゃの福袋抱く星の帰途』
無季。『プレバト!!』チーム・北山宏光(Kis-My-Ft2)と臨んだ一句は、北山の原句をジュニアが添削する形での共作。原句「しわくちゃの福袋買初の乱」は新春セールで福袋を勝ち取った勢いをカッコよく表現。「福袋」と本来の季語「買初(かいぞめ)」と季節が重なるように思い、敢えて「福袋」のみの無季に直し、争奪して買った気持ちを人の手が入った感じが出るように上五を微調整したと語った。才能アリ1位となった鈴木亮平率いる日曜劇場「テセウスの船」チームの句「雑煮の香雨の銀座の生中継」に判定負けを喫す。善戦したと語る先生は、ジュニアの添削する態度と出来栄えを褒め、原句「買初の乱」の表現にダメ出し。”取ってきたぞ!”という高揚感を強調する場合、「戦利品のしわくちゃの福袋」という添削も可能とし、提出句のセンスを称賛。上五「揉み」と「抱き」の表現が良いものの、下五「につく」は不要だと指摘。3音であと1ネタ仕込めると解説して2例示す。「ここまでやれたら良い勝負だった」と振り返り、ジュニアのコツコツ勉強する姿勢を強く感心した。敗北した責任を取るため、最下位が読むはずのエンディングボードを浜田の機転で「プレバト!!」の特待生総立ちの中ジュニアが代表で読まされることに。
●[45] @20/01/03◆お題:
お鍋『風邪の孫祖母の御飯を平らげる』第3回冬麗戦決勝7位(次回シード権なし)
添削後
『祖母の飯平らげ風邪の子の朝(あした)』
「風邪」は冬の季語。風邪を引いたとき祖母のおじわを風邪気味なのに全部平らげたという自身の実体験を詠み、親戚が集まるたびに話すエピソードだと語った。連覇を逃した梅沢名人は「『孫』があれば『祖母』は不要。他人の事は分かる」と指摘。先生は「俳句の世界では『孫』の題材はありがちな表現で嫌う俳人が多い」と前置きし、「自分に『孫』が出来てからこんな面白い生き物はいないと思っているため、積極的に詠んでよい」とスタンスを語り、「あえて『孫』と書かなくても『子』で事足りる句も多いのも事実」と解説し、「孫」を1音の「子」に変える。(ジュニアの)「育ちが良いから『御』をつけたのは分かる」と切り出すも、藤本名人が育ちの悪さを指摘し、本人が「せいじに謝れ」と切れてしまう。語順を変えて「朝(あした)」を最後に加え、昨夜は食べなかったが、翌朝に食べてくれたという対比が生まれ、”あさ”よりも”あした”の方が微妙な希望・喜びが入ると解説。今回はシード権を獲得できなかった。
●[46] @20/03/12◆お題:
絆創膏『顔面骨折カニューレの接ぐ春の朝』第4回春光戦予選Bブロック1位(決勝進出)添削なし
季語は「春の朝」。2001年3月のバイク事故で死にかける実体験を詠んだ衝撃的な一句。顔面骨折による15時間に及ぶ手術で首元を切開し、気管に挿入する管状の医療器具「カニューレ」を挿入して人工呼吸器を繋げて一命をとりとめた。春の朝の病室で目覚めることができ、手術の成功で生かされたと語った。ナナハン俳句に期待していた東国原名人は「バイク関連に戻すと良いですね」と笑いを取り、「実体験で魂がこもっている」と大絶賛。先生は「こんな句が出るとはビックリ」と評し、「カニューレ」を形まで調べて納得したと語る。上五に四字の漢字をぶつけ、迫力と状況が痛々しく分かると解説。「接ぐ」の動詞の有無で出来を左右するが、淡々と言い切ったのが良いとその選択を褒めちぎる。季語が再生への希望のような象徴・イメージを持つとし、「こんな痛い目したら良い句が出来るんだ」と呆れんばかり。タイトル戦予選は6連続の決勝進出で、決勝参加は7大会連続と好調ぶりを発揮した。
●[47] @20/04/09◆お題:
不動産屋さん『ボクサーの決意の引っ越し夏隣』第4回春光戦決勝7位(次回シード権なし)添削後
『ボクサーの決意夏隣の引っ越し』
季語は「夏隣」。試合が決まったボクサーが、「ここは一発」と家賃が高い場所に引っ越して「絶対に勝つ」と意気込む知人の思いを詠んだと語った。志らく名人から中八、村上名人から映像のなさを指摘される。先生は、中八は勿体ないが、削る箇所もない状況の句と評し、「決意」が不要とも考えられるが、中八を緩和するため、切れを入れて句またがりにする方法を提案。後半の語順を変え、音数は1音多いままだが、対句表現のリズムに変えた。さらに、時候の季語で終わる語順では、村上名人の指摘通りに映像が少ない印象が残っていたが、添削で引っ越しの慌ただしさが映像化でき、得することが微量増えると解説した。今回は上位に入ることが出来なかった。
●[48] @20/05/21◆お題:
デリバリー『裸子やインターフォンに踊り出す』名人初段で
現状維持添削後
『インターフォンに裸子踊り出す玄関』『ピザ届く裸子踊り出す玄関』『母戻る裸子踊り出す玄関』
「裸子」は夏の季語。自粛でずっと家にいるため、2歳の我が子が日常との違和感を感じているように思えると語り、来客のインターフォンが鳴って、新しい風が吹くのかテンションが上がり(裸で)踊り出す様子を素直に詠んだという一句。梅沢永世名人は「情報不足」と指摘し、「母が帰ってきた状況かも」と語るが、本人は「それでも良い。そもそも身内はインターフォンを鳴らさない」と揚げ足を取る。査定ポイントは上五「裸子や」から始まる展開の是非。「ささやかな欲求不満!」と評す先生は、兼題写真でデリバリーを詠んだと理解できるが、預けた子を母が迎えに来た場面の可能性もあると名人に同調し、読者に小さな負担や不満を残したと指摘する。上五を「や」で強調し、最後に子の様子を強く言い切るのがそう思わせる原因だと解説。語順を変えて、場所「玄関」を加えて添削した。裸子の動線を示すことで、生き生きとした裸子の動きを読み手に想像させる効果があるとし、状況を具体的に入れる添削例であれば、名人に文句は言われないと補足した。
●[49] @20/07/23◆お題:
封筒『亡き猫に病院からの夏見舞』第4回炎帝戦予選A1位(決勝進出)添削なし
季語は「夏見舞」。自身が若い時に飼った猫は死んだが、病院はそれを知らずに猫の宛名で手紙が来る。「元気ですか?」と書かれた手紙を見ると、何とも言えない気持ちになるのを詠んだという一句。梅沢名人は「大したもんだ」と褒め、藤本名人は「動物を愛せる優しいジュニア・デビュー」とジャニーズになぞらえる。先生は、亡きペットに何かが届く類想句があるとしながら、中七の情報を入れた点を褒める。猫・飼い主・病院のスタッフの交流が見え、「に」「からの」の助詞の選び方も正しいと称賛。季語が出た瞬間に、本人が語ったような文面が想像でき、涼やかな手紙の絵柄や色合いが読み手に伝わると解説。「お手紙が来た」と事実を詠むのは面白くないが、季語の涼やかさで亡き猫を飼い主がしみじみと偲んでいる様子が表現されたと語り、「そつがない」句と評した。タイトル戦予選は8回中7回突破と前評判通りの実力を発揮した。
●[50] @20/08/06◆お題:
ポイントカード『消しゴムに彫刻刀の彫る花火』第4回炎帝戦決勝7位(次回シード権なし)添削なし
季語は「花火」。「プレバト!!」の番組の企画を詠みこむという挑戦。兼題写真から本人の得意な消しゴムはんこを着想し、全国の花火大会が中止になっている思いを込めた。村上・東国原両名人が、下五の比喩により季語の力が薄まると指摘。先生も同意するが、素材は面白いと褒め、「彫刻刀」とあれば「彫る」は不要だが意図的に置いたと解説する。最後の「花火」により、白い消しゴムに花火の色が出てくる展開も良いとするも。「花火」が版画であることによる季語の力の問題を挙げる。言葉がキッチリ入っており、「の」「彫る」を変えることは可能だが、作者の意図通りなので直さないと解説した。
●[51] @20/09/17◆お題:
たまご『秋の朝卵にゆでと書かれけり』名人2段へ
1ランク昇格添削後
『朝や秋卵にゆでと書かれけり』
季語は「秋の朝」。若い時、家に来て色んな料理を作ってくれた女性がいた。翌日起きると残った卵をゆで卵にしてくれて、冷蔵庫の卵に「ゆで」と書いてあったのを思い出して詠んだ一句。成長を褒める梅沢名人は、具体的な点を指摘せず。査定ポイントは下五「書かれけり」の是非。「どうでもいいことを俳句にした!」と評す先生は、俳句はどうでも良いことが俳句のタネになると気付いたところからが面白くなっていくと語り、切れ字「けり」を解説。「けり」は詠嘆を表す助動詞で、その状態が前からあるが、自分が「えっ?」と今気付いたのが元々のニュアンスだと述べ、「けり」の使い方がとても良い感じでハマったと称賛する。「秋の朝」の肝心の季語の比重が少し弱いため、季語を主役に立てるべきと指南。「朝や秋」と、「や」で朝を1回強調し、「おっ秋だよな」と展開する添削を見せる。「や」「けり」の切れ字を二つ用いる高度な技の添削後なら、2ランクアップもありえたと感触を語った。
●[52] @20/09/24◆お題:
文房具『試し書きに密と書かれし秋の色』秋の他流試合SP第3試合8-10で
判定負け添削後
『試し書きに密と文具店の秋よ』
季語は「秋の色」。文具店の筆記用具売り場にある試し書き。「密です」などの文字がうじゅうじゅに書かれているのを思い出したと語った。藤本名人は「センスの塊」などと持ち上げるが、東大王チームの心に響かない。鈴木光は「中々試し書きの文字に着目しないので、視点が素晴らしいなと思う一方、『れし』で良いのかなで引っかかる」と見事に分析。文法の指摘に返答できず、藤本名人と一緒になって「雰囲気でこうなる」と適当なノリで誤魔化す本人。結果は、大学院生博士課程に在籍しながら、先行事例がない要素をノートに苦労して書き留めた場面を詠んだ、東大王・鶴崎修功の「休暇果つノートに新規性ひとつ」に8-10で判定負け。先生は、「試し書き」の言葉の経済効率を押さえ、動作が映像化されてペン先も見える上、「密」で今年の時代の気分も出るのがとても良いと褒める。しかし、取りこぼしは「書かれし」で、「試し書きに密と」の段階でもう書いていることが伝わるため、ダメ押しとして場所情報を入れる点を提案し、「文具店」を捨て石の言葉として入れる。最大のミスは季語だと指摘する先生は、「秋の色」は具体的には黄金色の稲田や紅葉に染まる山の色をさす季語で「秋だな~」と愛でるものと解説。屋内からいきなり野外へ出る光景になってしまったのが勿体なく、少し聞きかじった季語を使ったと解説し、「秋」で押さえた。本人は「悪ノリしてしまった」と芸人らしい反省を述べた。
●[53] @20/10/29◆お題:
ピアノ『鍵盤図弾く兄の背や秋の暮』第4回金秋戦予選A2位(決勝進出)添削後
『鍵盤図弾く兄の背に秋の暮』
季語は「秋の暮」。幼少期の思い出を詠んだ一句。兄のせいじがピアノに興味があるも親に買ってもらえず、音楽の教科書の裏表紙の鍵盤を一人で弾く動作をした。その様子を見て切なくなった光景を鮮明に覚えていると語った。梅沢名人は「兄の印象が強すぎて季語が弱まった。『や』を『に』にすべき」と提案し、仰天する先生。先生は「良い場面を書いた」と評し、「鍵盤図」がリアルな上に健気な感じがあり、季語「秋の暮」の健気さ・切なさ・寂しさが取り合わせで表現された点を称賛。詠嘆の意図で用いた「や」が問題点で、第三者が読むならば季語にもう少し比重をかけるべきと指南し、梅沢名人の指摘通り「や」を「に」に添削。切なさが「秋の暮」の映像に乗ってくると解説した。予選通過を確定できずに反省する本人は、藤本名人から「俳句にせいじを出したらアカン」といじられるが、「顔出さずに背中だけにした」と見事に切り返した。予選2位として決勝進出の候補に入り、「や」の強調が本人の意図通りだと評価される形で8度目の決勝進出を果たした。
●[54] @20/11/12◆お題:
7時過ぎの時計『痙攣の吾子の吐物に林檎の香』第4回金秋戦決勝優勝
添削なし
季語は「林檎」。自身の子が初めて熱性痙攣(けいれん)を起こした時の光景を詠んだ一句。動かない子を抱いてバタバタとして時間が止まった感覚になり、頭が真っ白になったと語る本人。抱っこをした子は自分の肩辺り)吐いたが、食べていた林檎の匂いがしてハッと現実に戻ったと語った。藤本名人は「泣きそうですね。若い時は触るもの皆全部傷つけてた。そのジュニアがここまで子ども愛溢れたパパの俳句を詠めるとは」と褒め、「凄い良い句」と同意する梅沢名人は「1つ解せないことがある。以前のボツ査定で、『果物はもっと美味しそうに詠め!』と先生に指摘された。『林檎の香』は戻したもので、私は美味しそうに見えない」と重要な点を語る。先生は、「痙攣の吾子」で状況と自分の子だと前半で分かる言葉選びを称賛し、「吐物」の後の「林檎の香」の展開が生々しいリアリティーだと語る。香りがした途端、食欲のない子にすりおろしたような親心を思わせ、吐物からの展開に親の切なさも出ると味わう。梅沢名人の指摘した問題に触れ、食べ物の季語は「美味しく」が基本だと押さえた上で、この林檎の存在感は抜き差しならないものがあると評す。季語と認めたくないと主張する人に対して、「無季と思って結構」と言い切っても良いと忠告した。そして、「このリアリティーの前に、この人物が真っ当な親である」と本人の人格を褒め、さらに予選の句の助詞の指摘を吸収した点をさらに褒め、「真面目な学びようを皆が受け止めてほしい」と姿勢を絶賛。予選から参加したタイトル戦で、見事に初優勝を果たした。
●[55] @21/01/14◆お題:
輪ゴム『冬の月輪ゴムの中に入れてみる』第4回冬麗戦7位添削後
『冬月を捕う輪ゴムの輪の中に』
季語は「冬の月」。作句に迷ったと言う本人。家で輪ゴムを置いたが、空に月が出ていて、月へ輪ゴムをかざすような動作を詠んだと語った。先生は「シンプルな単純な発想も悪くない」と挑戦を褒めるが、最後「入れてみる」辺りの描写が雑だと指摘。輪ゴムのゆらゆらした感じを出すべきと指南する。「冬月を」で対象を明確に出し、「捕(とら)う」で少し詩の匂いを出す添削を試みる。「冬月」は捕えられないが、あえて「冬月を捕う」と先に出し、読み手の興味を引く展開に。「輪ゴム」の後、「輪の中に」と念押しする語順に。「輪ゴムの輪の中」というわずかな時間で、指先でゆらゆらする感じの短い映像・時間を表現できると解説し、「これなら上位争いができた」と述べた。本人は「そんなのできませんもん」と低評価時の常套句で笑いを誘った。
●[56] @21/01/28◆お題:
鏡『自画像に手鏡も描く春隣』名人3段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「春隣」。中1の3学期の時に、美術の授業で手鏡を持参して自画像を描いたと言う本人。自画像のみならず、自分は手鏡とそれを持つ手も一緒に描いたが、先生に怒られるかと思いきや「こんな生徒初めてや!」と褒められたことが、学生時代の唯一の良き思い出で、手鏡を「描いた」ことに重点を置く意図を持ったと語った。梅沢名人は投げやり気味に良いと認める。査定ポイントは中七の助詞「も」の是非。「助詞とマジメに向き合っている」と評す先生は、要注意の助詞「も」が散文的になりやすい点を押さえる。「自画像」「手鏡」で自分の顔を手鏡に映す場面と分かり、あえて手鏡も一緒に描いた点に作者の意図が強くあるため、「も」は外せないと解説する。この「も」を入れる是非は、自分の表現したい内容と相談して決めるべきで、本人の意志で決めた点が分かると判断を称賛。「に」「も」「描く」の助詞と動詞の並びで散文的に思う場合があり、「手鏡も描く自画像春隣」という語順も考えられるが、原句の「描く」か「自画像」のどちらを強く打ち出すかは作者の表現の問題だと解説。「作者に一度お返しをしたい」と先生は語り、「私はマジメに勉強する人が好きです」とイジリながら称賛した。本人は例によってストイックな性格を否定し、「食後のお薬を食前に飲むんですよ」と返して笑いを獲った。
●[57] @21/03/04◆お題:
ドライヤー『銭湯の脱衣所小銭無き春よ』名人4段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「春」。近くの銭湯ではドライヤーに20円かかるが、小銭を持っていないことに気付き、春で暖かいため濡れたままでもええか~という感じを詠んだと語った。梅沢名人は真面目な姿勢をイジって褒める。査定ポイントは、「よ」の着地の是非。「本当によく勉強している!」と評す先生は、「これは良い句」と語る。前半「銭湯の脱衣所」で洋服を脱ぐ人物が映像化され、カットが切り替わり小銭がない手の状態のアップにいく展開の巧みさを褒める。最後の着地が難しい形だが、最後の「よ」を解説。「よ」は詠嘆の気持ちを持ちながら呼びかけるようなニュアンスで、"銭湯に行って小銭が無くて小さなトホホ、でも長閑でほのぼのとした春だよね"、という感じだと語る。最後の選択肢を「や」「ぞ」とすると強すぎて、「に」だと中途半端な終わり方になり、本人の意図と異なると解説。「ちゃんと助詞を勉強して自分の言いたいことを的確に選んでいる。ご立派」と真面目な姿勢を称賛した。連続昇格で勢いに乗ってきた。
●[58] @21/03/25◆お題:
じゃんけん『サザエさんに後出しあいこ吾子の春』第5回春光戦決勝2位(次回シード権あり)添削なし
季語は「春」。アニメ『サザエさん』の番組最後のじゃんけんに注目した一句。子どもが3歳になるが、じゃんけんの概念が分かっておらず、最後にサザエさんが出した手と同じ手を出せばよいと思って後出しする様子を詠み、リズムが良くなるように「あ」の韻を踏んだと語った。藤本名人は「吾子好きやな~」と家族俳句が得意であることに言及。先生は、サザエさんの発想を最初に押さえ、じゃんけんするため日曜日の夕方あたりだと時間帯も分かると解説。「後出しあいこ吾子」で「あ」の韻を企んで踏んだことまで明確に分かると述べる。上五「に」と下五「の」の助詞が良いかどうかがポイントとなるが、上五「に」がないとサザエさん(という対象)に対して後出しするという意味ではなくなるため、字余りでも意味上は必要だと分かると述べる。下五「の」も「よ」「や」として詠嘆する選択肢があるが、「吾子や春」など下手に詠嘆すると親バカの臭いが少し強くなるため、「の」で穏やかに置くのがより良いと判断したと解説し、直しは不要だと評した。本人も驚く2位の結果に「(収録が)楽しくなってきましたね~!」と喜ぶことに。
●[59] @21/05/20◆お題:
ケーキ『とぅるとぅるの求肥に透けている苺』名人5段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「苺」。妻が買ってきたイチゴ大福の求肥(ぎゅうひ)の感触を「とぅるとぅる」と表現し、苺がぐーんと出ているさまを描写。夏を感じる一句に仕上げたと語った。梅沢名人は「自分の後継者はジュニア」だと褒めちぎる。査定ポイントは、上五「とぅるとぅる」というオノマトペの是非。「地道に真面目に観察している」と評す先生は、オノマトペを見つけた感覚とこの語順を褒める。「求肥」で大福の感触だと読み手は受け取るが、「に透けている」で映像が絞られ、最後に季語がゆっくり出現すると解説。観察したものを言葉に変換するのが俳句はとても難しいが、それを根気よく地道にやっているのを凄く褒めたいと述べる。苺大福を詠んだ句があるとしながら、オノマトペの自分なりの工夫・丁寧に描写した語順を高評価した。「やっぱりジュニアさんの努力がね」と浜田が述べると、「努力も何もしてない。適当に書いただけ。もう無茶苦茶なんですよ、僕は」といつもの卑下する言葉で応酬する本人だが、今年は3連続昇格と波に乗っている。
●[60] @21/07/08◆お題:
携帯扇風機『ゆるキャラの汗の匂いとファンの音』名人6段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「汗」。着ぐるみを着た「ゆるキャラ」は子どもたちを喜ばせるために凄い頑張って活動するが、近くに行くと、汗をかく匂いに加え、内部で「ブーン」と扇風機が回る音がし、「頑張ってはるな~」というのを詠んだと語った。査定ポイントは「ゆるキャラ」に「匂い」「音」と攻めた効果の是非。「ゆるキャラの現実が描けている!」と評す先生は、兼題写真から「ゆるキャラ」へと発想する力を褒める。「ゆるキャラ」は可愛い・人気者なイメージだが、季語の「汗」でイメージの対比を作り、嗅覚「匂い」と聴覚「音」で現実を描いたと解説。ゆるキャラと仕事をすることがあると語る先生は、着ぐるみの内部でブンブンいう音が扇風機と思ったときに、中の人の過酷な現場は一体どうなっているかと思うと語って共感。「まさにそういう汗の現場である」と総評を語った。前人未踏の5連続昇格を決めた。
●[61] @21/07/22◆お題:
Tシャツ『白シャツは何より白く退院す』第5回炎帝戦10位(60名中)添削後
『白シャツの全(まった)き白や退院す』『白シャツの白はこの白退院す』
季語は「白シャツ」。20歳の時に急性肝炎で死にかけた時の実体験の一句。大量に出る黄疸がシャツにもつくが、夏頃にやっと退院という時に新品の白シャツを着た。病室の壁もカーテンもシーツも白いが、何よりも一番白い気持ち的にも新しい白シャツを着て退院するぞという思いを詠んだ自信作だと語った。藤本名人は中七を遊べたのではないかと指摘。先生は、季語「白シャツ」のハツラツたる印象から「退院」の場面へ飛ぶ発想力と、実体験が基調とするため手応えのある点を称賛する。改善点はまさに藤本名人の指摘した部分で、「何より」が少し掴みにくい点を述べる。添削例として「白シャツの全き白や」と完全無欠の「全き」を用いる例、「白シャツの白はこの白」と「白」を畳みかける例を挙げる。本人は「俺の実力じゃ"全き"出てこない」と早速学習してコメントを返した。
●[62] @21/08/12◆お題:
打ち揚げ花火『手花火の火に手花火と手花火を』名人7段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「手花火」。初めて家族3人で手花火をした場面を描写。自分がやりだした花火に奥さんが火をつけ、初めて花火をする息子がさらに火をつける。初めて3人がそれぞれの気持ちで持つ花火を何とか詠めないかと語った。「そう来たか」と仰天する東国原名人は「最初の『手花火』に対し、後半は2つの小さな『手花火』と読め、季語の大小がある。季重なりだがバランスが取れていると思う」と鋭く指摘。査定ポイントは助詞「の」「に」「と」「を」の是非。「助詞の集大成!」と評す先生は、「助詞に本当にこだわってあれこれ苦労した方」と前置きし、助詞の効果をこの句は完璧に把握していると述べる。手花火の火を別の手花火に移す・貰うと発想自体は俳句の世界に沢山あるが、「手花火」を3つ出した勇気が工夫の一点だと語る。「手花火」が2つならカップルの印象だが、3つのため家族で行う読みも引っ張り出せていると解説する。一番褒めるべきが最後の「を」で、「近づける」という動詞が省略され、小さな手花火が添えられていると読めると先生は分析。「めちゃくちゃ嬉しい」と喜ぶ本人だが、初段から7段まで6連続昇格および季語3つでの初昇格という2つの番組記録を打ち立てた。
●[63] @21/08/19◆お題:
蜩『蜩に金属バット協奏曲』名人7段で
現状維持添削後
『蜩や金属バットの音かすか』
季語は「蜩(ひぐらし)」。ひぐらしが鳴く中、実家の近くの高校で夏の大会後の新チームになった高校球児の金属バットの音が「キーン」とよく鳴っていたことを思い出して俳句にしたと語った。「ついに壁が見えた」とほくそ笑む梅沢名人は中七を指摘するも、査定ポイントは下五「協奏曲」という比喩の是非。「陳腐!」と評す先生は、「蜩」と「金属バット」を取り合わせた感覚を褒める。しかし、「協奏曲」の比喩の用法が非常に凡たるもので、類想が山ほどあると指摘し、「気取っている場合ではない」と削除。さらに、上五「に」も散文的だとして消す。「蜩や」としっかり季語を立てた方が、「金属バット」の音を少し弱めて季語が立つと解説。促音「ッ」の詰まる音があるため、「金属バットの」と字余りにしても気にならないと述べ、「音かすか」で遠近感を出すよう添削した。耳元にひぐらしの鳴く木があり、遠くの方から野球を練習している金属バットの音がかすかに何度も聞こえてくる味わいが、作者の描きたかった光景ではないかと推測すると語り、本人も納得した。
●[64] @21/09/23◆お題:
秋の夕日『公園の漫才師黙秋夕焼』名人7段で
現状維持添削後
『漫才師の黙公園の秋夕焼』
季語は「秋夕焼」。約30年前、公園で漫才のネタ合わせをした実体験と、若手漫才師の練習光景を俯瞰した立場を重ねた一句。ネタが上手いこといっているうちは良いが、「ええ感じではない」「何かが違う」という時は長時間黙り込み、もう「こんな夕焼けか…」と感じるさまを兼題写真から思い出したと語った。査定ポイントは中七「漫才師黙(もだ)」の是非。「語順が違う!」と評す先生は、描こうとした視点が良く、話してなんぼの漫才師が黙りこくる光景があり、「公園」の場所の提示によりストーリーを想像できる点を褒める。問題は語順にあり、「公園」「秋夕焼」の光景を「漫才師」が中七で分断するため、季語の効き具合が緩くなる点を指摘する。先生は「漫才師」から始め、「公園の秋夕焼」と語順を整えた。漫才師2人の場面から、映像が徐々に引いてきて公園が分かり、漫才師・公園がそれぞれシルエットとなり、秋の夕焼けが主役として印象に残る語順になると解説する。語順を良く考えるべきだと忠告された本人は「いや~もう。黙ですね」と降参しながら自身の俳句をネタに笑いを取った。
●[65] @21/09/30◆お題:
バッテリー切れ間近(携帯電話の電池残量)『夜半の秋次子に授乳の妻ZZZ(ずずず)』第5回金秋戦決勝9位(次回シード権なし)添削後
『次子に乳あきの夜半なる妻ZZZ』
季語は「夜半の秋」。兼題から妻自身のバッテリーが切れを連想。夜中に妻が、ソファで起きている次男に授乳しているが、寝てしまっている様子を表現。バッテリーの切れた感じとアルファベットの最後の「Z」で合わせ、「次子」「授乳」「Z」と濁音で重ねたと語った。藤本名人は過去の俳句を含め、家族に焦点を絞ったことを「家族総出でやってきたな~」と自身の騒動に関連していじる。先生は、「吾子」なら1人だが、「次子」は2番目の子と分かり、なおさら育児の大変さが出る判断が良く、最後の「ZZZ」も果敢に挑んでいる点は認めたいと述べる。勿体ないのは「夜半の秋」がぼんやりとした時候の季語で、夜がドンドン更けていく感じがあるため、語順が損したと語り、「次子」から行くべきと提案する。「次子に乳(ちち)」とし、漢字表記を重ねないよう「あきの夜半なる」として、「妻ZZZ」につなげた。映像の無い時候の季語が妻を通して見える作りになり、本人は「無茶苦茶イイっすね~。今までで一番良いかも」と感心していた。
●[66] @21/10/28◆お題:
待ち合わせ『夕月夜名の無き猫と君を待つ』名人7段で
現状維持添削後
『名前なき猫と君待つ夕月夜』『まだ名前なき猫と待つ夕月夜』
季語は「夕月夜」。村上名人と1時間俳句談義した動画をYouTubeで公開していた本人。好意のある方と待ち合わせしている所に野良猫がいた。友達であり、恋人ではない関係だが、良い関係になったらいいなと思いつつ、野良猫と一緒に待っている感じを詠んだと語った。梅沢名人は「村上(名人)みたいなヤツと付き合うから、こういう句が生まれる」と批評し、語順の悪さを指摘する。査定ポイントは「夕月夜」から始まる展開の是非。「7段らしい工夫が欲しい!」と評す先生は、「夕月夜」を最初に置いたミスを指摘する。最後が動詞「待つ」で終わるため、「待つ」という動作に軸足がかかり、「夕月夜」の映像が置き去りになる問題点を挙げる。「名前なき猫と君待つ」と整理し、「夕月夜」を最後に置く添削を行うが、アドバイスを続ける。「君」を入れると村上名人っぽさが出てしまうと述べる先生に、「俺の中に小っちゃい村上が入ってんねん」と頷いてしまう本人。"君"を待つ動作を想像させるため、「まだ」を頭に入れた。「猫と」の助詞「と」のはたらきを最大限に活用した上に、村上を追放できるとユーモラスに語る先生の添削に納得の本人は、村上名人と喋り過ぎたことを後悔した。
●[67] @21/11/18◆お題:
七味唐辛子『手袋のまま割る箸の乾いた音』名人8段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「手袋」。寒さの中、バイクで寄ったサービスエリアでうどんを食べる際に、手袋を付けたまま割り箸を割ると「パ~ン」と乾燥した音が鳴る点に焦点を絞った一句。梅沢名人は「ジュニアにしか詠めない」と褒めるも、具体的に述べない。査定ポイントは、上五から下五へとつながる叙述の是非。「実感と観察力の賜物」と評す先生は、兼題写真から音へ着眼した点を見事だと称賛し、実感の勝利だと述べる。査定ポイントの「叙述」は、「手袋や」など切れ字で一度切るべきか否かの問題で、詠嘆を入れた場合、一句の姿が引き締まる効果があると述べる。この句は切らずに続けたが、着地が良かったと印象を語る。「手袋のまま割る」の感触に加え、「箸の音」とせずに「乾いた」を挟んだ語順が良く、冬の冷たく乾いた空気がまさにこの音になってくる味わいを生むと解説。「乾いた音」の下五により、「手袋」という季語の力がもう1回強められ、季語を主役に押し出す配慮が最後まであると称賛した。
●[68] @22/01/13◆お題:
人生ゲーム『雪吊や登校拒否の吾と祖母と』第5回冬麗戦4位(14名中)添削なし
季語は「雪吊(ゆきつり)」。人生ゲームはほとんどやったことないと述べる本人は、少年時代の引きこもりの頃の思い出へと発想。「学校行ってないんやったら旅行行こう」と述べる祖母と金沢の兼六園に行き、学生服を着た修学旅行生がいる中、同じ年なのに私服でいる自分の縛られているが縛られたくない微妙な心境を「雪吊」の季語に託したという一句。森口名人は「雪吊とおばあちゃんの関係が見守っている者同士みたいな感じでいい」と褒める。先生は、奥行きがとても深く時間をおいて読むほど惹かれるタイプの句と評す。「登校拒否」の状況、「の吾と祖母」で私と祖母が2人ポツンといる場面と分かるが、この2人の関係をどう読むかで物語も変わると述べ、2例の可能性を提示する。①学校に行っていない孫を見守るように祖母がそこにいる。②祖母自身が自分の記憶を紡ぐことができず、そういう祖母と学校に行っていない孫が2人いるという状況。色々に読み取れる点が非常に深いと解説する。季語「雪吊」が動くか否かで評価が分かれるが、そのような議論をしてはならず、作者にとって季語が抜き差しならない記憶の鍵となり、リアリティが強く匂うと述べた。タイトル戦は久々の上位に入った。
●[69] @22/02/03◆お題:
最終電車の表示『春の駅白杖の傷夥し』名人9段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「春」。春の新生活の雰囲気の駅で、綺麗で心も晴れやかな感じの中、白杖を持つ人が駅のホームを歩いているが、杖についた傷の量が凄く、ここに来るまでの色んな思いがある中、凛として前に進む姿を詠んだと語った。皆藤名人は「前向きな雰囲気と一歩一歩というのが凄く素敵」、馬場典子は「語順が良く、人生にまで深まっていく」とそれぞれ褒める。査定ポイントは、それぞれの単語の持つ言葉の質量のバランスの是非。「言葉の明暗を見事に操作!」と評す先生は、「春の○」という季語の使い方に否定的な考えを持つ俳人もいるが、この句では「春」も「駅」も別れと出会いの季節・場所を示すイメージが重なっており、成功していると述べる。「白杖」の1単語で人物・様子が表現され、「傷」とクローズアップして、「夥(おびたた)し」と丁寧に描写をした点を称賛。この展開により、「春」と「傷」という言葉の明暗のバランスが絶妙に取れており、春という季節の中の一生懸命生きている思いが明確に伝わると解説した。最後に「とにかくジュニアさん、腕を上げたと思います」と9段昇格を称えた。遂に10段へと王手をかけた。
●[70] @22/02/17◆お題:
宅配便『不登校児に届く卒業証書』名人9段で
現状維持添削後
『不登校児宛に卒業証書の筒』
季語は「卒業証書」。中学校に行ってなかったと述べる本人。卒業式の日に家に卒業証書が届くが、「もういよいよどっかに出ていかなきゃいけないぞ」という卒業証書の春の季語を自分なりに感じた風に詠んだと語った。査定ポイントは中七「に届く」の是非。「素っ気なさすぎる」と評す先生は、あまりにも事務的に言葉が並んでいる感じがあると指摘。詩としての手触りのようなものが、もう少しだけあれば良いと忠告する。「不登校児宛に」として「届く」を削除し、「卒業証書の」の後に物を出すように指南。最後に「筒」と入れた。卒業証書の筒が届いて、「今この手にある」というリアリティが少しだけ乗っかってくると解説。本人は「なんか、あっさりしてるなと思ってたのがこういうことなんですね」と納得した。
●[71] @22/03/10◆お題:
ライスorパン『トラクター祖父の膝乗る春休み』第6回春光戦予選A2位(決勝進出)添削なし
季語は「春休み」。新型コロナウイルスの濃厚接触者該当のため、本人は自宅からのVTR解説となり、スタジオは人型パネルで対応。農家であった祖父が田んぼに出向く際のトラクターに自分を膝に乗せてくれたのが楽しい思い出だったという本人。難しい言葉を一切使わず子どもが詠んだような形にしたと語った。梅沢名人は「誰が見ても良い」、藤本名人は「可愛らしい」と両者褒める。先生は、農作業のトラクターを乗りこなす祖父は、子から見れば英雄のようで、人物の膝に乗せてもらうと視線が広く高くなると味わいを述べ、その思い出を17音に落とし込んだ技術力を称賛。季語「春休み」は、祖父と孫との触れ合いの時間だけでなく、一句の奥に「耕し」という大きな季語を見せていると解説。さらに、「トラクター」で作っているのがコメか麦かと想像させる二択のテーマにもなぞらえていると称賛する。2位ながら補欠に回る形となった。
●[72] @22/03/31◆お題:
ハプニング『迫る電柱顔面5mmの春』第6回春光戦決勝9位(シード権なし)添削後
『顔面潰る電柱スローモーに春』
季語は「春」。21年前のバイク事故で重傷を負った壮絶なハプニングを詠んだ一句。バイクのヘルメットを半キャップに変えたその日、車が出てきて自分はよけたが、顔面5mmに電柱が迫った映像までしか記憶がない。この「5mm」は、フェイスマスクなら当たっているが、半キャップなので当たっておらず、意識を取り戻すと病院に運ばれていた過去の記憶だと語った。志らく名人も梅沢名人も「説明を聞かないと分からない」と指摘。先生は、俳句だけでを読むと「5mm」の謎がどうしても残ると指摘。野球選手がバッターでボールを打つ瞬間までスローモーションに見えると言う、あの感覚に置き換えれば臨場感が出ると忠告し、添削を試みる。顔面が潰れた場面から始め、「顔面潰る電柱」で前半を作る。「5mm」は諦め、電柱がゆっくり近づいてくる感じを「スローモーション」の略語「スローモー」を用いて、最後に「春」と季語を置いた。助詞「に」により、スローモーに電柱が近づいて来るあの季節は春であったという味わいとなり、この「春」が少しだけ立ってくると解説した。その一方、「5mm」を活かす別案を本人に委ねるも、「うん、そうしよ」と馴れ馴れしい本人。決勝は下位に沈んでしまった。
●[73] @22/05/05◆お題:
動物図鑑『開き癖図鑑の虎に春夕焼』名人9段で
現状維持添削後
『春夕焼図鑑の虎に開き癖』
季語は「春夕焼」。幼少時に虎が好きだったため、図鑑で頻繫に開く虎のページに癖がついてしまい、夕方になり夕陽が図鑑に差し込んだ光景を詠んだと語った。査定ポイントは「に」という助詞の是非。「イージーミス」と評す先生は「開き癖」からの語順では、「に」によって虎に夕陽が差し込んでいる印象を与えるが、「夕焼」は空を染める現象であって、夕陽の様に差し込んでくる印象とは少し違うと述べ、季語の理解に関して指摘をする。語順をひっくり返し、広い光景から手元の図鑑の開き癖に迫る語順へと添削。「色々難しいね、助詞は」と述べ、本人を勇気づけた。
●[74] @22/05/26◆お題:
待て(犬の写真)『帰省して貼られたままの犬シール』名人10段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「帰省」。飼い犬を亡くしたが、実家の玄関には犬がいることを示すシールが貼られたままで、帰宅しても誰も剥がしていない状況を詠んだ一句。梅沢名人は一度褒めるも、上五の表現が気になると指摘。査定ポイントは「して」「まま」の叙述の是非。「感情表現が上手くできている」と評す先生は、梅沢名人の指摘を褒め、まさに上五に評価の大きな分かれ目があると述べる。定石なら「帰省せり」と言い切るべきだが、わざとこの叙述を選ぶ可能性も考えられると解説。楽しみな帰省ではなく、何らかの事情を持つ後ろめたい帰省では、気持ちよく「せり」と言い切れず、帰省「して」みて貼られた「まま」の、とダラダラと続く言い方が自分の心に適うこともあり得ると述べる。時間が止まったみたいな故郷、カビ臭い実家、薄汚れたシールで、作者の複雑な負の心情が口語の呟きで表現されたと最終的に判断をしたと評した。番組5人目の10段に到達した本人は、「思惑通りなのか?」と聞く浜田の問いかけに、溜めながら「…うん」と曖昧に返答した。
●[75] @22/06/23◆お題:
ガッツポーズ『夏いよよサンドバッグは歪みけり』名人10段★1へ
1つ前進添削なし
季語は「夏」。いよいよ夏が来るが、試合に向けてボクサーが同じパンチを練習することで、ふと見たサンドバッグが歪んでいることに気づき、色んな人の思いが詰まっている風に思った光景だと語った。「けり」が気になると指摘する梅沢・村上両名人。査定ポイントは、切れ字「けり」を選択した是非。「切れ字がわかってきましたね」と評す先生は、問題となる「けり」の切れ字を解説。過去の意味を持つ助動詞が次第に詠嘆の意味を持つようになり、その状況がずっとあったが今本人がハッと気づいたという感触だと述べる。サンドバッグが歪む状況がずっとそこにあったが、夏がいよいよ盛んになり、ハッと見るとこの歪みは練習の成果の歪みと気づいた感動を「けり」が表現できていると評し、褒めるのは当然だと述べる。一方、「けり」がダメだとか、「かな」がいいかもしれないと指摘した2名人を降格させたいと述べ、両者を叱責した。幸先よく星を獲得し、藤本名人に並んだ。
●[76] @22/07/07◆お題:
七夕『病室の七夕竹に一礼す』名人10段★2へ
1つ前進添削なし
季語は「七夕竹」。長期間入院していた身内の見舞いに行った時、七夕の短冊に医学的項目の数値の減少を祈願する願いなど、専門的なものが多く書かれており、そこに感謝の一礼をするような思いを詠んだと語った。「一礼す」に全ての情景が見えてドキッとすると述べるは森口名人。査定ポイントは上五「病室の」の是非。「書かない勇気」と評す先生は、非常に印象的な作品で、敢えて書かない勇気を持った一句だと述べる。上五を「病院」「病棟」などと大きく捉えると個人の印象では無くなるが、「病室」と丁寧に書くことで「七夕竹」がその部屋の誰かの願いだと分かると解説。最後の「一礼す」で人物が出るが、医者・看護師・同僚・部下、あるいは加害者が一礼している様子も浮かび、読み手は様々なドラマをこの一句の奥に読み取ることが出来ると称賛。これが10段の句だと総評を述べた。本人は「冗談ジュニアのチンゲン菜」と梅沢御大のギャグをもじって連続前進を喜んだ。
●[77] @22/07/21◆お題:
メール『故人との弾みしメール夜の秋』第6回炎帝戦13位(58名中)添削されず
「夜の秋」は晩夏の時候の季語。メールに残されたやり取りを見て、故人との懐かしい思いを詠んだ一句。「凡ミス」だと指摘する先生は、俳句の場合は「故人」と書かずに、「亡くなっている人のメールに違いない」と思わせてこそだとアドバイスした。一方、「夜の秋」(※秋の気配を感じられる夏の終わりの夜)は、しみじみとした季語で良いものを選ばれたと称賛した。番組内で句が発表されない屈辱を初めて味わった。
●[78] @22/08/25◆お題:
駅の売店『キオスクの夕刊フジに秋茜』名人10段★3へ
1つ前進添削なし
季語「秋茜」はトンボのこと。JRの駅の売店「キオスク(キヨスク)」の写真から、夕陽のオレンジのイメージに「夕刊フジ」のオレンジ色のロゴ、さらにオレンジ色の「とんぼ」が止まる様子を意図的に表現した一句。査定ポイントは「キオスク」と助詞「に」の関係の是非。「さすが助詞オタク」と評す先生は、固有名詞で果敢に攻める挑戦を称賛し、「キオスク」の場所に「夕刊フジ」を買う人物像が想像できると述べる。「キオスク」の固有名詞に対し、助詞「に」が正しいか否かが重要な問題で、「に」や「の」で悩むポイントだと指摘。例えば、上五が「一番線」「下りホーム」でも駅だと分かるはずで、仮に「二番ホーム」ならホームに立つ人物が夕刊を広げて読む感じとなり、広げられた新聞に秋茜がとまるのは考えにくく、「に」の助詞に無理が出てくると解説する。敢えて「に」にしたことで、キオスクの新聞を売る売店のラックに立つ夕刊フジに秋茜がいる光景となり、「キオスク」「夕刊フジ」「秋茜」の色合いを表現した上で、秋茜が主役に立つ語順になったと述べる。主役にするための「に」を使いこなしたことを「さすが助詞オタク」だと評した。番組初となる無傷の3連続前進を決めた。
●[79] @22/09/15◆お題:
食欲の秋②『豚饅の油染むべい独楽の紐』第6回 金秋戦予選C1位(決勝進出)添削なし
季語は「べい独楽(秋)」「肉饅頭(冬)」。豚饅を食べた勢いのまま手に付いた油を独楽の紐で拭いたという、独楽を廻した幼少期の記憶から詠んだ一句。季語の扱いで梅沢・藤本両名人が応酬に。先生は「豚饅」は肉饅の類で、冬の季語として一部の歳時記に載せ始めているのがあると述べる。「独楽」は新年の季語だが、日常的に遊ぶ「べい独楽」は「海螺(ばい)廻し」(※秋の季語)が由来だと解説する。どちらが主たる季語かを考えた場合、肉饅は食べ終わって姿はないが、紐に染みた油から、肉饅の残りの匂いや子どもたちが豚饅を食べ終わって勝負を再開する情景がありありと見えると述べる。食欲の秋の意味において、一番美味しそうに描けていたため、1位に判断したと理由を語った。「よくまあこんなもん作ったなと思って。あの、密かに感心している」と述べと予選通過を称えた。
●[80] @22/09/22◆お題:
中洲の屋台(福岡県)『常連に席譲られし秋の夜』ふるさと戦②(福岡)4位★添削なし
季語は「秋の夜」。体験談だという本人。客がいっぱいの屋台で「あぁかまへん、俺開けたるよ~」みたいに常連に席を譲られ、歴史・賑わい・県民の優しさを感じ、お邪魔している者の「ありがとうございます」の雰囲気を表現したかったが、写真俳句では写真の光景が分からないのは良いのか悩んだと語った。写真俳句の難しさを勝手に喋り出す梅沢名人に浜田から「メガネ割るぞ!」の御仕置が。先生は「これも良い句」と評し、飲み屋や屋台の場所が分かり、「秋の夜」も無理した季語を持ってこずに、静かにまとめている点が良いと褒める。"写真俳句"としては微妙な判断で、兼題写真の中で常連に席を譲られている光景はあるに違いないと想像できるが、写真と俳句の場面が同じように存在し、「1+1=2」の世界観に留まっている点を指摘。"写真俳句"の醍醐味は、「写真×俳句」で掛け算の効果を生み出すことが出来ることだと忠告し、「ジュニアさんならまだまだとんでもないことを思いつくのではないか」と期待を述べた。
●[81] @22/10/13◆お題:
大谷翔平『秋立つや十七画の名を吾子に』第6回金秋戦決勝6位(シード権なし)添削なし
季語は「秋立つ」。8月頭に出産した子に夫婦が名前を付けるが、8月10日に104年ぶりの大記録(2ケタ勝利・2ケタ本塁打)を達成したため、背番号17の大谷選手にあやかって、「翔平」と同じ17画の名を子どもに付ける想いを詠んだと語った。「吾子好きやな~」と本人の癖を見破る藤本名人。先生はきっちりと作れていると評すも、「十七画」へのこだわりが読み取れず、そこがテーマ性との兼ね合いで少し損をしたと述べる。ただ、自分の子が生まれた時の句として読むと大変気持ちの良い句だとフォロー。季語「秋立つ」が立って清々しく、数字に何らかのこだわりを持つ両親が「17画」で名前を付け、切れのない「に」の最後の余韻に親の気持ちがさりげなく入ると称賛。これはこれで、人生の一頁の一句として残しておくことを忠告した。
●[82] @22/11/17◆お題:
神宮外苑の銀杏『銀杏落葉やカチンコの渇いた音』名人10段★2へ
1つ後退添削後
『カチンコの渇きや銀杏落葉霏々』
季語は「銀杏落葉」。神宮外苑がドラマや映画の撮影地として定番の場所で、寒い朝に緊張している中、「カ~ン!」とカチンコを鳴らす渇いた音を思い出したと語った。査定ポイントは「渇いた」のニュアンスを伝える工夫の是非。「あ~もったいない!」と評す先生は、大変良い素材である上に、「乾」ではなく「渇」の字を持ってきた点を強く褒める。「渇」は満たされない思いで気持ちがイライラしたり、どうしても強く欲しいなどの心情を表す漢字だと解説。勿体ない点として、「カチンコ」に「音」の情報は一緒に入っているため、「渇いた」をクローズアップした方が得だと指摘する。語順も「カチンコの渇きや」で先に詠嘆し、「銀杏落葉」と続けるが、着地が2音しかないため凄く難しいと述べる。次を目指す意味として、銀杏落葉が降りしきる感じの「霏々(ひひ)」を提案。これなら星を2つでも持ってけという気持ちだったと評した。本人は「僕が『霏々』出来ると思います?」と完全に降参した様子に。初めて後退を味わうこととなった。
●[83] @22/12/01◆お題:
カラオケ『カラオケの二番の途中コート脱ぐ』名人10段★3へ
1つ前進添削なし
季語は「コート」。カラオケに普段行かないため、カラオケが好きな人を想像したという本人。部屋に入ってすぐに歌いたい曲を入力する人が、そのまま熱唱して盛り上がり、二番の途中でコートを脱ぎだす光景が浮かんだと語った。村上名人は光景の切り取り方を称賛。査定ポイントは中七「二番の途中」の是非。「名人らしいリアリティー」と評す先生は、読んだ瞬間の強いリアリティを褒める。コートを着たまま部屋に入り、そそくさと歌い出して二番の途中から体も温まって「よし、ここから!」とコートを脱ぎ捨てる人物の顔・表情までありありと見えると味わう。室内だが、季語「コート」が主役に立っているのが大事なポイントだと解説した。前回の後退から1度の挑戦で星を取り戻すことに成功した。
●[84] @22/12/15◆お題:
観光バス『バス見えてバス停の毛布を畳む』名人10段★4へ
1つ前進添削なし
季語は「毛布」。田舎町の屋根のあるバス停(待合所)のベンチに、綺麗に畳まれた毛布が置かれていたことを思い出して詠んだ一句。待っているとバスの接近が見えて、乗り込もうと次の人のために綺麗に毛布を畳む光景だと語った。村上名人は「て」で原因結果を注意されやすいと指摘。「て」以外の候補を本人に質問されるも答えられず、浜田から「"急に言われても"や」と梅沢御大の返しが正解だと注意を受けてしまう。査定ポイントは「見えて」から「畳む」までの叙述の是非。「本来失敗するやり方なんだけどね…」と評す先生は、寒い地方に毛布が置いてあるバス停が映像として見えると述べる。1番の問題は「見えて」「畳む」の書き方が散文的になりかねず、俳句では嫌う書き方だと指摘する。しかし、この句はバスが見えてきて毛布を畳む、作中の人物の動作が映像になっており、人物の細やかな動作も想像できると提起する。毛布を「お借りしました」という感謝の気持ちを込め、キチンと畳んで次の人に「どうぞ」の思いを込めて畳むに違いないという人物の動作・心情が明確だと称賛する。本人の句柄は真面目で地味だが、滋味・心情の豊かさがあり、その意味で真骨頂の一句だと総評を述べた。髪型を変えていた本人は「金髪ヨロシク!でやってんすよ」とボケて喜ぶが、いよいよ永世名人に王手をかけた。
●[85] @23/01/12◆お題:
ラッキー『焼鳥や嗚呼隣席に郷ひろみ』第6回冬麗戦6位(15名中)添削なし
季語は「焼鳥」。美味しい焼き鳥屋に行くと、横の席に郷ひろみが座っていたという実体験を詠んだ一句。先に店を出た相手に挨拶するも、自分の分の代金まで奢ってくれていた経験を語り、今までの焼鳥屋で一番美味しかったと述べた。先生は、楽しませてもらったと述べる。「焼鳥や嗚呼」までで、酒を飲みながら愚痴を溢し、「隣席」で上司か同僚がいて悪口を言う光景を思った瞬間に「郷ひろみ」が出る展開で、これ以上ない語順を評価する。しかし、一句の世界に奥行きやポエムがどこまであるかという点で損をする向きはあるものの、「俳諧」は可笑しみ・滑稽という意味でもあり、句に直しは要らないと評した。「郷」に引っ掛けて藤本名人に「5位なら良かった」と指摘されると、本人は「ロクです!」と無理な物真似で返した。
●[86] @23/01/19◆お題:
おでん『おでん屋の一皿は先ず神棚へ』 永世名人
へ
1つ前進添削なし
季語は「おでん」。開店と同時に入ったおでん屋が、数品のおでんの皿をまず神棚に置いた光景を目にしていた本人。ここからおでん屋が始まるのをハッと思い出して、この状況を詠んだと語った。梅沢名人は「永世名人になれる」と絶賛する。査定ポイントは「の」「は」「へ」の3つの助詞の是非となるが、自句自解によって「B」の査定結果を渡す先生。「助詞オタクの集大成」と評す先生は、評価の分かれ目が中七「一皿は」にあると述べる。「一皿"を"」でも意味は通じるが、「を」は対象の意味合いで、おでん屋自身が持つ皿のニュアンスになるが、「は」は第三者目線で皿を指差すようなニュアンスで、まさに作者が入店して体験した第三者の視線を表現できた点を称賛する。「先ず」でその日の最初の一皿だと保証され、最後の助詞「へ」も神棚に供える方向と動きが一緒に出ており、「助詞オタクの集大成」として成功したと解説。最後に、「芸人は言葉を使って一歩一歩覚えていくが、作者は俳句を勉強して、細やかなニュアンスまで使えるようになった」と永世名人昇格を褒め称えた。名人10段から僅か8か月、7回の査定という驚異的なスピードで番組4人目の永世名人となった。
●[87] @23/01/26◆お題:
春の京都 三条大橋(京都府)『初蝶の止る擬宝珠(ぎぼし)の刀傷』ふるさと戦⑥(京都)1位★
添削後
『初蝶のきて擬宝珠(ぎぼうし)の刀傷』
季語「初蝶」はその年に初めて見た蝶。擬宝珠(ぎぼし・ぎぼうし)は、橋の欄干の上にあるネギの花に似た装飾。三条大橋の欄干の擬宝珠に新撰組がつけた刀傷があり、たまたま蝶々が飛んできてそこに止まる光景を詠んだと語った。志らく名人は、池田屋事件の一節を落語家でもないのになぜ知っているかを問うが、本人は「京都出身だからです」と満面の笑みで応対。先生は「初蝶」の季語の選択を褒め、古い歴史のある街の橋の欄干の光景が俳句だけで全部分かるのが良かったと評す。ただ、「止る」が都合よすぎる感じもあり、「初蝶」の後に「きて」と軽く押さえて、「ぎぼうし」と読ませる案を示す。映像は擬宝珠の刀傷に寄っていくが、初蝶は来てスッと去るような印象だと解説した。地元出身として「京都府ふるさと俳人」となった本人の句が掲載されたポスターは、府庁をはじめ府内各所に掲示されることとなった。
●[88] @23/02/09◆お題:
冷蔵庫のメモ『サンタへの手紙貼られたままの春』永世名人23句目に
掲載決定
添削なし
季語は「春」。実体験ではなく、読者が自由に内容を想像できる句だという一句。子どもが書いたサンタへの手紙が可愛らし過ぎて、捨てれずに手紙を春までずっと貼っている光景とも、事情があって別居した子の手紙を貼ってある光景ともいえると語った。梅沢名人は「良いお父さんだ」と作者の発想力を称賛する。「句に奥行きがある!」と評す先生は、読めば読むほど奥行きが深い句と褒める。単純に子が可愛いからメモを貼って残している光景から読み手が想像し始め、離婚などで親として会えない可能性も伝わると述べる。季語「春」には喜びの他、切なさ・憂いなど複雑な感情が内包され、その季語の本質を理解して作った展開の句だと称賛し、「"永世名人"になって急に立派になってきた」と姿勢も褒め称えた。幸先よく掲載決定を決めた。
●[89] @23/03/23◆お題:
レトルト『コロナ7日目レトルト絞る遅日』永世名人23句で掲載
ボツ添削後
『コロナ七日目レトルト絞り切る遅日』
季語「遅日」は春の日暮れが日に日に遅くなること。新型コロナウイルスに感染した際の実体験の一句。自宅待機期間の最終日となる七日目に最後のレトルトを「また明日から始まるぞ」という気持ちで食べた思いを詠んだと語った。しかし、「7」を漢数字ではなく算用数字にしたことを懸念する本人。「あと少しのリアルを!」と評す先生は、「コロナ7日目」の状況と「遅日」という季語の取り合わせを褒める。また、数詞は漢数字表記が基本だが、意図的に算用数字にする場合がある点を述べる。問題点は「絞る」にさらにリアリティーを入れられる点で、"もう元気になって明日から"の気持ちを出すために、最後の一滴までギューッと絞る感じを「絞り切る」として添削した。リアリティーが増す添削に本人は「そっちの方がリズムも良くなる」と添削に腑に落ちたように納得する。他人のシュレッダーを喜ぶ梅沢名人の前で、初のシュレッダーとなった。
●[90] @23/03/30◆お題:
給与明細『口座開設朱肉拭き取る夏近し』第7回春光戦決勝5位(シード権なし)添削後
『口座開設拭き取る朱肉夏近し』
季語は「夏近し」。吉本興業に入った際、100円で買ったハンコを持って銀行の口座を初めて作った心境を詠んだ一句。芸人として飯を食っていく不安とギャラが振り込まれる期待の双方が交錯した15歳の心境の春だと語った。梅沢名人は季語「夏近し」が動くと指摘するが、本人は動かないと主張して議論になる。先生は中七のリアリティを褒め、朱肉を拭き取って綺麗にしたハンコが最後に見える点を称賛。季語に溌剌とした感じと、春が終わっていく微妙なニュアンスもあり、季語に作者の思いを託した部分を認めるかにおいて、季語が動く問題の意見が半々に分かれると述べる。先生は「4月じゃなくて、ちょっと遅れて入った。自分の中では季語は動かない」との本人の主張を尊重した。また、切れが多い問題を指摘。形容詞「近し」、複合動詞「拭き取る」が揃い踏みする形で韻律がバタつくため、中七の語順を入れ替えて「拭き取る朱肉」と添削した。朱肉の色・匂いや押す手触りを残して映像を持たない「夏近し」に続くため、"季語が動かない"ともっと言い張れるようになるとの解説に、至極納得する本人だった。
●[91] @23/04/27◆お題:
遊園地『春嵐継父と見上ぐ観覧車』永世名人23句で掲載
ボツ添削後
『継父と見上ぐ春の嵐の観覧車』
季語は「春嵐」。兼題の「遊園地」は明るい景を詠みやすいが、ネガティブなことを抱える人もいると思って、挑戦したという一句。再婚相手の新しい父と観覧車に乗りに向かう状況で、密室で一緒になることの微妙なニュアンスを表現したいと思って詠んだと語った。梅沢名人は「"見上ぐ"が不要」と指摘し、場当たり的に指名されたジャングルポケット・おたけは「季語が気になる。自分なら『山嵐』にする」とコメント。「うっかりミス」と評す先生は、表現する世界観がドラマチックで奥行きがある点を褒める。問題点は「見上ぐ」の言い切りの形で、"観覧車を見上げている"という風に繋がらないという文法ミスを指摘。正しくは「見上ぐる」だが、中七字余りになるため、最後の奥の手として上五を字余りで置く添削を指南する。「継父と見上ぐ」から始め、「春の嵐の観覧車」と繋げると、梅沢名人が思わず声を上げる。嵐の風に観覧車のゴンドラが揺れているかのような映像が立ち上がっていれば、句集に太字で堂々と載っていたと述べた。
●[92] @23/05/11◆お題:
浜田雅功『タイトルコール飛び立つ初夏の鳩よ』浜田杯9位(20名中)添削なし
季語は「初夏」。「タイトルコール」は番組のタイトルを大声で張り上げること。浜田と共演したロケ番組の収録で、浜田がタイトルコールをどなると、大きい声のため公園の鳩が飛び立った思い出から、これからもっと飛躍してほしい思いを込めた浜田への挨拶句。志らく名人は「綺麗で美しいが癖がない」とコメント。先生は「気持ちよく成立している句」と評す。季語が生きているか・季語が浜田らしいかの2点がタイトル戦の評価軸となっており、清々しい「初夏」と動物「鳩」が、浜田のイメージをどこまで背負ってるかがポイントで、実体験であるなら前書きで「○○の現場にて」と情報があれば評価が上がった可能性を先生は述べる。句として添削する必要性はないが、浜田らしさをさらに入れてほしかったと忠告した。
●[93] @23/05/18◆お題:
お子様ランチ『矯正箸はちりめんじゃこを摘まみけり』永世名人23句で掲載
ボツ添削後
『矯正箸の先にちりめんじゃこ笑う』
季語は「ちりめんじゃこ」。5歳になる子がご飯の上にのった"ちりめんじゃこ"を矯正箸で摘まめている驚きを詠んだと語った。梅沢名人は「矯正箸」を用いた点をジュニアらしいと褒める。「本当はもっと嬉しいんでしょ?」と評す先生は、詩になりにくい「矯正箸」という固い単語を詠み込む姿勢は良いが、「摘まみけり」が妙に落ち着いていて客観的過ぎると指摘する。もう少し素直に可愛く喜ぶべきで、「摘まみ」と書かなくても映像が表現可能だと忠告。「矯正箸の先に」で映像を詰め、「ちりめんじゃこ笑う」と季語の擬人化で可愛らしさを出す添削を行った。子や親の嬉しい表情、ちりめんじゃこが可愛くチリチリして笑っているような表情も重なり、擬人化を上手に使うべきだと述べた。本人は「そんなんできませんて~。『ちりめんじゃこ笑う』はできへんな~」と添削に感服した。
●[94] @23/06/01◆お題:
雨の日のカフェ『珈琲は冷めて怯者の梅雨の闇』永世名人24句目に
掲載決定
添削なし
季語は「梅雨闇」。「怯者(きょうしゃ)」は臆病者のこと。喫茶店の店内で、ずっと黙って珈琲すら飲まず、ただただ何も決断できずに話が1時間2時間と進まない臆病者がテーブルに対峙している光景を客観的に詠んだと語った。梅沢名人は「素晴らしい」と絶賛。「(下五の余韻が深い)」と評す先生は、前半「珈琲は冷めて」はフレーズとしてありがちだが、「怯者」からの展開が良いと称賛。"珈琲は冷めきっている。臆病者の私はその珈琲に手を付けることもできず、飲み残している。返事も出来ず、この梅雨の闇の底に座っているだけで、辛い気持ちを持って座り続けている"と解釈でき、迫力があって引き締まっており、季語も生きていると解説。こういうのが名人の句だと述べた。久々の掲載決定となった。
●[95] @23/07/06◆お題:
冷やし中華『町中華日傘を開く最後尾』永世名人25句目に
掲載決定
添削なし
季語は「日傘」。凄く暑い日、店の行列に食べる気満々で並び、日傘を差して楽しそうに待つ女性を詠んだと語った。「考え抜いた語順」と評す先生は、この句の眼目が"最後尾に並ぶと決めて日傘を開く人物に気づいた"点にあると述べる。自分が「開く」より第三者の視点として"最後尾に日傘を開く人がいる"と読む方が季語が鮮やかだと解説。語順が迷いどころで、「最後尾に日傘を開く町中華」でも同義だが、映像や季語がキッチリ見えることを考えると、店や町の様子が分かる「町中華」からの判断が圧倒的に良かったと称賛する。最後の「最後尾」で店に並ぶ列だと読み手に伝わり、"さっきまで大した日差しではなかったが、並ぶなら日傘を開くしかない"様子も伝わり、カメラワークが大変良く、季語「日傘」が主役に立った見事な一句だと絶賛した。これで25句掲載と折り返し地点に到達した。
●[96] @23/07/20◆お題:
夕立『750ccの飛魚の如大夕立』永世名人25句で掲載
ボツ添削後
『750ccは飛魚夕立の湾岸線』
季語は「夕立」。バイク好きの本人が乗る「750cc(ナナハン)」の上五が発表された瞬間に、「出た!久しぶりに出たな」と浜田が咄嗟に反応。750ccで高速道路を走ると夕立となるが、バイクが水しぶきを上げて、「わしゃ飛魚か!」と心の中でツッコんだ経験を詠んだと語った。千賀名人は750ccの躍動感が良いと褒め、ウイリーのようだと述べる。「選択ミス」と評す先生は、750ccを飛魚に例えた点は良く、躍動感・スピード感があると述べる。"選択ミス"は比喩表現の点にあり、「のごと」を用いる直喩・用いない隠喩の違いを解説する。直喩は"作者がそう思いました"と作者の存在が一句の中に残るが、この句の場合は「750ccは飛魚」と作者の存在を残さない隠喩で表現した方が生き生きすると述べて添削。「夕立の」の後に走る場所として「湾岸線」を例示。実景としての光景がバーンと立ち上がり、そこを走っていく飛魚のような750ccの姿が映る添削に本人も感嘆する。シュレッダー処分後、先生は「直喩・隠喩の説明する際に物凄く分かりやすい見事なお手本のため、自身の研修会の例句に使わせてほしい」と本人に懇願。印象的なボツ句となった。
●[97] @23/08/03◆お題:
行きつけのお店『焼酎やけふは店主に辞儀深う』第7回炎帝戦8位添削なし
季語は「焼酎」。自分の芸歴以下の芸人にはお馴染みの店である、大阪・日本橋の居酒屋「たこしげ」での一場面。多くの芸人の会話が交わされる中、店のマスターから「お前のこと、えらい言うてる若い奴らがおるぞ」「もっとお前、絶対的な笑いでそんなこと言わすな!」などと𠮟咤激励をしてくれた日があり、「今日はありがとう」とお辞儀して帰った経験を詠んだという一句。先生は、助詞「は」で行きつけ感を出すタイプに分類されると前置き。今日"は"店主に何かの理由で深々と頭を下げてお礼を言って帰ることは伝わるが、なぜお辞儀をするのかという読みの幅が広すぎるのが少し損だと指摘する。隣席の客に絡んで迷惑かけて謝っているのか、転勤するためこの店とお別れするためお辞儀しているのかなどと読めるが、読んだ時に作者にとって凄く心に残る一夜のことだったという手触りはあるため、自分の人生の中の一句として、書き留めて作品として置くべきだと述べた。本人は立ち上がって深々とお辞儀して「ありがとうございます」とまさに辞儀深き態度を示した。
●[98] @23/08/17◆お題:
サービスエリア『どんぐり七つ饂飩二杯に箸三膳』永世名人26句目に
掲載決定
添削なし
季語は「団栗」。「吾子」と書かずに自分の子の場面を描いた意欲作。サービスエリアのドッグランのような場所で、子はどんぐりを拾ってきたが、子が一杯食べきれないうどんを2杯注文し、家族3人で分けて食べた楽しい時間を表現したと語った。武田鉄矢は後半の想像を引き立てる描写が良いと褒める。「おもしろい企み」と評す先生は、季語から順番に解説する。「どんぐり」だけで子をイメージすると限らないが「七つ」で子が拾ったことを連想できると述べる。最初に子を思うことで、「饂飩二杯」から「箸三膳」への展開で、二杯を三人で分ける両親と小さな子のいる家族像をイメージできると述べ、意図的に作者の思う方向に読者の読みを誘導する企みがあると解説。助詞「に」以外は名詞と数詞だけで構成されるが、その場の映像・人物・会話・心情を想像させると称賛した。再び、ライバル藤本名人の掲載数を先行する掲載決定を決めた。
●[99] @23/08/24◆お題:
アウトドアのカレー『山雀の高音竹皿のカレー』永世名人27句目に
掲載決定
添削なし
季語「山雀(やまがら)」は鳴き声が特徴的な人懐っこい野鳥。キャンプ中、山雀の高音の囀りを聞きながら、竹皿でカレーを食べている楽しい場を表現した一句。良い俳句だと述べる梅沢名人は定型で詠むべきだったと注文を付ける。先生は、「山雀」の季語を押さえ、取り合わせが良いと褒める。2カットの対句構造の句で、場所から手元の竹皿にポンと場面が映る瞬間に、キャンプ・コテージ・林間学校などを思い浮かべる効果があり、カレーだけでなく竹皿も自作したと自然に想像できると解説する。読み終えると季語が再度効き、人に慣れている鳥が「何を食べているんだろう?」と興味深く寄ってくるような印象まで手に入ったと述べ、コンパクトで見事だと評した。2回連続掲載で村上名人を追う展開となった。
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