2020年8月20日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。
挑戦者→ゆきぽよ[2],渡辺満里奈[4],内海崇[2],風間トオル[3],上田彩瑛[初],横尾渉[41],梅沢富美男[106] ※数字は挑戦回数●お題:カレーライス[日本人が年間平均79回も食べている国民食]

※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位70点 | ゆきぽよ
| 海の家香るカレーは★3つ | うみのいえかおるかれーはほしみっつ |
2 | 凡人2位55点 | 渡辺満里奈
| からいからい汗拭う顔笑い皺 | からいからいあせぬぐうかおわらいじわ |
3 | 凡人3位45点 | 内海崇 (ミルクボーイ) | 白服にカレー飛ぶとておかわりし | しろふくにかれーとぶとておかわりし |
4 | 才能ナシ4位38点 | 風間トオル
| テント張り蚊遣火まさるカレー香 | てんとはりかやりびまさるかれーか |
5 | 才能ナシ5位35点 | 上田彩瑛
| 夏山にゆらぐ香りと友の顔 | なつやまにゆらぐかおりととものかお |
6 | 名人5段へ1ランク昇格 | ★横尾渉 (Kis-My-Ft2) | 遠雷の夜汽車カカオの奴隷史 | えんらいのよぎしゃかかおのどれいし |
7 | 永世名人21句で掲載ボツ | ★梅沢富美男
| ライスカレー匙のすっくと氷水 | らいすかれーさじのすっくとこおりみず |
→編集後記※収録は発表待ちシートに前後交互に挑戦者(ミルクボーイは2名とも)が座り、ランキングシートは10名席を2名分ずつ使用。特待生らはMC席左手(シュレッダーの手前)に座り、それぞれの席は透明なアクリル板で仕切られている。
→初登場・上田彩瑛(うえださえ)は2019年ミス東大。最難関・理科三類の2年生で、「鈴木光を超えるかもしれない逸材」と紹介
浜田 (ミスコンに)そんなんでんでもええやん、別に。
一同 (笑)
浜田 (今後は)どうされるんですか? お医者さん?
上田 お医者さんになります、はい。
浜田 すごいな…。
ゆきぽよ 上田さんには負けたくないですね。
浜田 そりゃそやな。
→ここでゆきぽよ・上田の高校生時代のプライベート写真が公開される
ゆきぽよ あっ…。
浜田 何なんこれ。すげえ賢そう、右(上田)が。
一同 (笑)
浜田 ミスはあれは自分で、私とりあえずミスいっとこかぁみたいな。
上田 え、まあ勢いで出しちゃったんですけど。大阪出身なんですけど、それで東京に出てきてなんか挑戦しようと思って…。
浜田 大阪かいな!
一同 (笑)
浜田 (手厳しい顔で)じゃあ扱いも変わってくるね。
***
→昨年のM-1覇者ミルクボーイ・内海は前回「夏の旅荷棚にぎわう紙袋」で才能アリ70点
内海 お願いしまーす。(ネタ見せで)あ~ありがとうございます。今、長めの茶柱をいただきました。
浜田 何を言うてんねん。
内海 もうこんなのなんぼあってもイイですからね。
駒場 ありがとうございます。
内海 (前回の才能アリに)そうなんですよ。5人中3位で、でも70点くらいで、先生からも梅沢さんからも「ベタや!ベタや!」言われまして(笑)、芸人としては一番アカンことしてしまいましたんで、ベタじゃないかも考えながらやったんでちょっと難しかったです。
浜田 なるほどね。
***
→風間トオルは3回目の挑戦。初回は「泳ぎすぎ帰路の遠雷子守唄」で才能アリだったが、前回は才能ナシと波が激しい
風間 いや~、難しいですよね。景色だとすぐ情景が出てくるんですけど、「カレーライス」って何かなって考えた時に1番に出たのが香りだったんですよ。そこをちょっと攻めた。
浜田 なるほどね。ほら経験者、才能アリ獲った人間はそういうこと考えだすんですよ。これどっちへ行くか。
***
→ランキングシートは才能アリ1名、凡人2名、才能ナシ2名
浜田 これはなかなかですね。
▼凡人3位は内海
内海 お~う。またベタやないですか。
浜田 点数もドーン下がってる(70点→45点)。
内海 まあ下がってる…。
***
浜田 2位開けましょう。ここ入ってればよしとするか~!
▼凡人2位は渡辺
渡辺 くぅ~…。
***
▼才能ナシ4位は風間
風間 ああ~!
梅沢永世名人 うそ?
浜田 はいきましたよ。(才能アリ)経験者がここへきましたよ。
梅沢永世名人 うそ?
風間 うそ? (内海の)「白い服」より下?
一同 (笑)
***
ゆきぽよ ここまで来たら絶対上田さんに勝ちたいです。
浜田 そらそやな。
梅沢永世名人 東大出てるからって俳句が上手いとは限りませんからね。
浜田 そういうことか。
上田 一応東大生なので、勝たないとヤバイです。
浜田 そうですね。
梅沢永世名人 これ(ゆきぽよに)勝ってほしいなあ。
▼才能アリ1位はゆきぽよ、才能ナシ最下位は上田
ゆきぽよ (立ち上がって)ええ~!うそ~!まじで?うわ~!
浜田 永世名人が言うた通りになった。学歴関係ない。
梅沢永世名人 ないないないない。
玉巻アナ 関係ない。
浜田 ね~、医者になろうとする人が最下位ですよ。
梅沢永世名人 うん。
浜田 イイですね~。
梅沢永世名人 イイね。
浜田 めっちゃ端っこにいますよね(笑)。
駒場 小さい。
***
●それでは順位別に見ていきます◆1位
才能アリ70点 ゆきぽよ『海の家 香るカレーは ★3つ』◎
語順がとても良い。夏の季語「海の家」が出た瞬間に、状況・場面・映像が思い出される。「香る」で海の潮の匂いかと思った瞬間に「カレー」が出る展開は得している。下五の星マークが可愛くて明るい。表記が茶目っ気のある明るさで、句の内容にも似合っている。実体験の句はやはり強い。こういう句をストレートにどんどん作ってほしい。定型のリズムの句は本当に気持ちが良い。【本人談】海の家で食べるカレーライスは安い器(=ポリ容器)に入っている。しかし、マミー(=母)が作るようなカレーと同じくらい凄く美味しい。ミシュランレベルの★(星)3つという意味。
浜田 外で食べるのも美味しいですしね。なるほどね。
梅沢永世名人 いやいや、可愛らしい。ゆきぽよが考えるような、
体験したそのままを俳句にしたのは素晴らしい。素直で良い、結構。
夏井先生 これは
語順がとても良い。
本人 やった~。
夏井先生 夏の季語「
海の家」を置いた瞬間に、
状況・場面・映像が出てくる。
この後の「
香る」で
海の潮の匂いかと思った瞬間に、「カレー」が出る展開は得している。
「香るカレーは何だ」と思うと「
★3つ」。この
マークが可愛くて明るい。
本人 ありがとうございます。
夏井先生 この
表記の明るさが茶目っ気のある明るさで、句の内容にも非常似合っている。実感から生まれた句はやはり強いと思う。こういう句をストレートにどんどん作ってほしい。
直しは不要で、
定型のリズムの句は本当に気持ちが良い。
本人 やばーい、直しなしだって。(2位以下に)ほら
もうみんな考えすぎだよ。
一同 (笑)
添削なし
夏の爽やかな季語と嗅覚表現を用い、ユーモラスにカレーの香りを表現した一句。星を★マークで表記したインパクトは強く、子どもっぽい発想が生かされました。先生は「香る」の対象が変化する語順展開を褒めましたが、カレーのおいしさを星の数で表現する発想は、こなれた表現にも感じるため、読み手によって評価が分かれる部分です。ミシュランは「三ツ星」の表現が一般的なため、堺正章さんが司会を務めた料理番組「チュー○ーですよ!」の影響を感じました。大手グルメサイトなど星5つまで評価することもあり、星三つでは可も不可もないカレーと意味を受け取る可能性もありますが、様々な解釈が可能なのが良い所かもしれません。
◆2位
凡人55点 渡辺満里奈『からいからい 汗拭う顔 笑い皺』◎
この句はメニューは関係なく、頭の展開で辛い物を想像させる。「笑う夫の」と人物を中七に入れ、上五の台詞の主を明確に表現する。「汗の皺」で季語を含めた下五に。皺に汗が伝わっているアップの映像で終わり、ほのぼのとした場面の空気が出る。これなら間違いなく才能アリに手が届く。浜田 うん。
【本人談】夫(名倉潤)とカレーを食べている情景を思い浮かべた。夫はあんな顔していて(※1)カレーなど辛い物が苦手。自分が作ったものは美味しいと食べてくれるが、ニコニコしている顔を正面から見ていると皺が増えたと感じる。もともと皺くちゃな顔ではあるが(※2)。ほんわかしている情景。
※1
浜田 (笑いながら)かまへんから。
※2
浜田 それ
お前、悪口しか言ってない!(笑)ゆきぽよ 悪口。
***
横尾名人 説明を聞いて名倉さんのことだと分かったんですけど、
それ(=夫の情報)を明確に書くべきけばよかったんじゃないかなと。
本人 そうだよね。
浜田 あ~なるほどね。永世名人どうでしょう。
梅沢永世名人 これはね、
1つ失敗してるのがカレーライスと思えない。キムチ鍋かなと思う。
本人 あははっ。そっか~。
浜田 そうですか?
夏井先生 今日は
おっちゃんの言ってることが全然わからない。この句は
メニューは関係ないんです。
→顔が固まる梅沢名人
本人 関係ないじゃないですか?
内海 あれ、ホンマに名人ですか?
夏井先生 「
からいからい」からの展開で、
辛い物を想像させるのは何の問題もない。
「夫」の情報を入れた方が良いという横尾名人の指摘が大事なポイント。
「
笑う夫の」と中七に入れ、上五の台詞の主が夫だと明確に表現する。
「
汗の皺」で季語「汗」を含めた下五に「皺」のアップに。
皺に汗が伝わっているアップの映像が出てくるり、ほのぼのとした夫婦の場面の空気が出る。
この順番なら
間違いなく才能アリに手が届く。
浜田 あら!
本人 もうちょっとだったのに~。
添削後
『からいからい 笑う夫の 汗の皺』
食事をした人物の味覚表現をリフレインでストレートに表現した一句です。中七以降の展開はこの番組でも良く出てくる凡人的表現が続きますが、情報量が多い点が気になります。上五は面白い工夫ですが、このままでは平仮名表記も相まって、子どもの台詞に感じるため、横尾名人が指摘した人物情報を入れて滑稽さをアピールすべきでしたね。初回は「しゃくしゃくと踏む足楽し霜柱」で才能アリ、「雛しまう手に桃の花はらりはらり」で凡人と繰り返しのオノマトペを多用する渡辺さんですが、一矢報いてほしい印象です。
◆3位
凡人45点 内海崇(ミルクボーイ)『白服に カレー飛ぶとて おかわりし』◎
「白服にカレー」とあれば「飛ぶとて」は全く不要。これが判断できないと凡人から抜け出せない。助詞「に」が場所の用法で、この段階で飛んでるか、ついてると読み手は判断できる。下五も曖昧な終わり方。「し」を取った方が勢いが出る。汚れが気にならない意図なら勢いを出す表現を後半に置き、2カットに。1音溢れるが、勢いよく読めば字余りは気にならない。ここまでやれば70点は確保できた。【本人談】家で沢山カレーを作った時、白い服を着てる時にカレーを食べてしまい(ルーが服に飛び散って)後悔するが、美味しさからおかわりをする(気持ちが勝る)。
横尾名人 「白服に」と言ってたら、「飛ぶとて」はいらないかな。白い服着てたら汚れるのは分かるんじゃないかなと思って。
梅沢永世名人 これはもう俳句でない。
本人 えっ?
梅沢永世名人 「白服にカレー飛ぶとておかわりし」。
自由にすれば良いじゃん(笑)。本人 そんなん言いだしたら、もうみんなそうでしょ。
夏井先生 横尾名人の指摘は重要。
おっちゃんは具体的に指摘しないからいつもイライラする。なぜダメなのかとか何が分からないとかって分析してくれないから。
梅沢永世名人 お前がこんなくだらない俳句を詠むから、俺が夏井先生に嫌味を言われるんだよ。一同 (笑)
浜田 それはあなたの解説の問題でしょ。
夏井先生 「
白服にカレー」とあれば
「飛ぶとて」は全く不要。これが判断できないと凡人から抜け出すことは絶対に出来ない。なぜなら助詞
「に」が場所の用法となり、「白服にカレー」の段階で
飛んでるかついてるかしている。
最後の「
おかわりし」も曖昧な終わり方。「おかわり」で切り、
「し」を取った方が勢いが出る。
一言入れる。気にしないことを言いたいなら「
ものともせず」と勢いを出す表現を後半に置き、2カットにする。
1音溢れるが、勢いよく読むため字余りは気にならない。ここまでやれば70点ラインは確保できた。
浜田 あ~、勿体ない。
本人 俳句おもろ!添削後
『白服にカレー ものともせずおかわり』
カレーを食べて服を汚す子のありがちな光景を第三者的視点で切り取った一句です。「白服」が夏の季語である点に注意したいですが、日常の家庭内光景だと思いにくいのが難点。「~とて」は予想外と異なる結果を生む場合に用いるため、カレーが服に飛び散ったもののおかわりの動作をする状況は、キャンプなど引率した先生がカレーを食べた”困ったちゃん”を見て思うような野外での生活感を表しているように感じたからです。とはいえ、他の平場が露骨に嗅覚・味覚に注目しているだけに着眼点は悪くなかった内海さん。前回も噛みつかれたというフリがあったことで、無様に「俳句でない」と御大にケチをつけられるお芝居は仕方ない部分ですが、相方が消しゴムはんこの特待生に認定されただけに、奮起して欲しいですね。
◆4位
才能ナシ38点 風間トオル『テント張り 蚊遣火まさる カレー香』◎
読み込む材料に時間情報を入れ過ぎたのが失敗。テントを張る・蚊遣火を焚く・それが香る・カレーを作る・それが匂う…と。17音の器には盛り込めない。「張り」「まさる」が諸悪の根源。「テントには蚊遣(かやり)」で前半を作る。「カレー香」も名詞の寸詰まりのため、助詞「の」をしっかり入れる。香りが自分に押し寄せてくるなら、「押し寄す」と最後に。3か所の「か」で韻を踏む。これは難しいことをやり過ぎ。【本人談】キャンプに行き、まずテントを張って虫を退治する(蚊取り線)香を焚く。夕方になり、夏を感じながらお腹が空いたと思ったところに、近くで作っているカレーライスの香りが蚊遣火に勝って流れてきた。いい句です。
夏井先生 読み込む材料が多すぎる上に、時間をいっぱい入れ込んだのが失敗。
テントを張る・蚊遣火を焚く・それが香る・カレーを作る・それが匂う…と。
たった17音に
全ての情報を入れるのは無理がある。
「張り」が諸悪の根源で、張る所から始めたら時間が足りない。
「
テントには」で張りあがったテントがある。音数の問題で「
蚊遣(かやり)」として前半を作りカットを切る。
「まさる」が諸悪の根源の2つ目でこれも消す。
「
カレー香(こう)」の
言い方も寸詰まりのため、
助詞「の」をしっかり入れる。「カレー
の香
の」。
香りが自分に押し寄せてきて欲しい意図なら、「
押し寄す」と最後に置く。
「蚊遣」「カレー」「香」と
3か所の「か」で韻を踏む。
これは
難しいことをやり過ぎ(笑)。添削後
『テントには蚊遣 カレーの香の押し寄す』
アウトドアの実感はよく伝わるものの、情報量が多く17音の器が鬱陶しい一句。「テント」が夏の季語「キャンプ」の傍題に載る歳時記もありますが、ここでの季語はやはり「蚊遣火」で初心者らしく取って付けた印象があります。しかも、本人の説明では蚊遣火”に”カレーの香りが勝ったとのことで、逆の意味に受け取れてしまうため、季語が生かされていません。添削の方向性は様々で、「蚊遣火に負けじと香るカレーかな」など色々作れそうな句材ですが、個人的には「キャンプ」を季語にすれば良さそうに思いました。「良い句です」と満足しているうちは再びの才能アリが難しいように思いました。
◆最下位
才能ナシ35点 上田彩瑛『夏山に ゆらぐ香りと 友の顔』◎
一見普通に出来ているタイプの句だが、とても曖昧。この句を兼題写真を見ていない人に提示した時、どういう香りか、友の顔とは何かが抽象的。上五は「や」でしっかりカットを切るのが得。「ゆらぐ」と気取っている場合ではないく、「カレー」と書かないと伝わらない。下五を消すと句の原型が残らないため、歯を食いしばって残す。これが精々。【本人談】小学校の林間学舎で飯盒炊爨(はんごうすいさん)をした時のことを思い出した。暑さとかまどの熱で揺らいで見えるが、カレーの香りがする。友達の顔も(蜃気楼のように)ゆらゆらと揺れ出してくる情景を思い浮かべた。
夏井先生 一見普通に出来ているように見えるタイプの句だが、
とても曖昧。
その理由は、この句を兼題写真を見ていない人に提示した時、どういう香りか、友の顔とは何かが
抽象的でわからない。これこそ
「カレー」と書くべき。
季語「
夏山」は「
に」とせず、「
や」で
しっかりカットを切るのが得。
「ゆらぐ」と気取っている場合ではない。しっかり、「
カレーの香り」と書かないと伝わらない。
下五「友の顔」まで消すと
句の原型が残らないため、歯を食いしばって残す。
これが精々。
本人 次はもう直されるところが1個もないぐらいにしたい。頑張っていきたいと思います。
添削後
『夏山や カレーの香りと 友の顔』
句としては確かに出来ていますが、本人の意図が全く表現されなかった一句です。季語「夏山」により、飯盒炊爨はおろか、普通に友達と登山しているか、それを思い出している光景しか浮かばず。「ゆらぐ」のが何なのか非常に困りますが、山の匂いと蜃気楼のように遠くに離れた友の顔が揺らぐという妄想に近い光景描写にも思う部分。大変抽象的な表現のため、いかようにも解釈できるのが問題点でしょうか。本人としては炎で光景や人物が揺らぐ意味で、楽しい気分を意図していましたが、当方は「ゆらぐ」の動詞でどことなく懐かしいながらも怖さのある心情描写・或いは心のわだかまりのような負の感情を受け取りました。
★特待生昇格試験★◆『遠雷の夜汽車 カカオの奴隷史』 横尾渉(Kis-My-Ft2)◎
「遠雷」が夏の季語で8音ずつの2カットの映像。夜汽車に乗っている人物が本を読むに違いないと読み手が想像できる。1音足して17音にするのは簡単。前半で「よ」の詠嘆か、後半に「は」で余韻を残す方法がある。言葉を1つ入れると全体のバランスが崩れ、16音でいく2つのバランスで押し出すことで、最初の季語が主役として読み手の心に残るのではないかと作者が判断した。かつての「奴隷史」を今年句に詠む意味も、若い作者が詠む意味も、心の中に深く受け止められる。これこそ直すとダメ。【本人談】カレーを作る際の隠し味で、カカオチョコレートを入れることから発想を飛ばした。夜汽車に乗っている時に暇で本を読んでいると、チョコレート栽培の歴史を知った。その時に悲しいと思い、もっとこの時代が良くなって欲しいなと思って書いた。
【近世~19世紀のカカオ栽培】 ヨーロッパで需要が拡大すると植民地で 事実上の奴隷制度のような重労働を強いられた |
浜田 ほぉ~…、これ。永世名人。
梅沢永世名人 いや~これね、
やっていることは実に素晴らしいと思いますよ。ただ
字足らずなんですよ。16音なの。(渋い顔になり)
さあ~、どうなのかね~。一同 (笑)
本人 そうか、そうか。
浜田 気持ち言うてるだけやん。
★評価ポイント足して16音の字足らずの是非
梅沢永世名人 ほら。これですよ。
浜田 確かに、先生はおっしゃってます。
梅沢永世名人 これがダメなの。
■査定結果名人5段へ
1ランク昇格理由:1音足さない勇気
本人 やった~!
内海 凄いな。
梅沢永世名人 素晴らしい。
(査定評の後)
本人 やっぱ、
勇気大事ですよね。
夏井先生 「
遠雷」が夏の季語。「
夜汽車」までで1カットの情景で、後半で本が出てくる。
夜汽車に乗っている人物が本を読むに違いないと読み手として十分に想像できる。
1音足して
17音にするのは案外簡単にやれる。「遠雷の夜汽車」に
「よ」の詠嘆や、「カカオの奴隷史」に
「は」で余韻を残す方法がある。
しかし、
言葉を1つ入れると全体のバランスが崩れる。16音でいく2つのバランスで押し出すことで、
最初の季語、微かな遠い雷が主役として読み手の心に残るのではないかと作者が判断した。
かつてあった
「奴隷史」を今年句に詠む意味も、若い作者が詠む意味も、心の中に深く受け止められる。
これこそ直すとダメ。
本人 ありがとうございます。
浜田 いや、素晴らしい。
添削なし
料理好きな横尾名人らしい発想から詠んだ、2カットの場面描写の一句。兼題から離れる理由があるだけの着眼点の素晴らしさはさすが名人。8音2つとバランスが良く、内容が濃いだけに言われないと字足らずには気付きません。定型ではない以上、句としての評価は非常に難しく、季語「遠雷」がどこまで効いているかという点も大きいでしょうか。自分は当事者ではないが、ある場所では無礼なことがあった。その非常に不穏な印象を初耳の読み手も感じ取れる季語です。今世紀に入り、カカオ農園の児童労働をなくす取り組みが始まっていますが、日本はそのような活動に意識が低いこともあり、社会派句材を記録するのはある種感動もので、この挑戦は素直に称賛すべきです。岩永さんがタイトル戦で詠んだ「駅弁の箸割る音や去年今年」と同じ雰囲気を感じる本人が得意な鉄道句でもありますが、「リハ室のコーヒー苦し八重桜」とタイトル戦で詠んでいるご本人。今回はよりディープな内容で久々の昇格を射止めました。他者への指摘力も梅沢御大にも引けを取らないため、今後ますます昇格に期待できそうです。
★永世名人 富美男のお手本★※永世名人・梅沢富美男が50句の傑作を詠んで、俳句史に残る句集完成を目指す「永世名人梅沢富美男 傑作50選」梅沢永世名人 前回は夏井先生が驚いた。
浜田 はい。
梅沢永世名人 こんな俳句を…。
浜田 これで
梅沢さん変わるんじゃないかと。
梅沢永世名人 変わるんじゃないかと。変えました。これ(=今回の兼題)ね、色々と詠み方はあると思うんです。私の今度の俳句は、
私が詠んだという所を全面的に出したい。
浜田 なるほど。
梅沢永世名人 これは
梅沢名人が詠んだんだという、そういう俳句を作りました。
浜田 分かりました。
***
梅沢永世名人 シュレッダーなんかもういりませんよ、ただのオブジェです。これから私はね、一皮も二皮も剥けましたから。こっから、プルっと剥けましたよ(笑)。
[永世名人のお手本披露]◆『ライスカレー 匙のすっくと 氷水』 梅沢富美男◎
語順の違いが判断できていない。「ライスカレー」の呼び方である時代の手触りを感じるのは良い。氷水の入ったコップに匙が入っている時代を生きたが、時代背景を知らない読み手の多くはライスカレーに匙を入れてご飯を掬っている様子だと思う。明確に書かないと作者の意図・映像が伝わらない。氷水から始めてカレーライスに広げる語順しかない。「すっく」とかっこいい感じの気分も分かるが、匙が真っ直ぐ突っ立ってたと書くべき。「直立す」とし、最後に「ライスカレー」と展開させ、若い人たちにも時代背景を映像として伝える。【本人談】50~60年前の子どもだった時代、店で「ライスカレー」を注文すると水が入ったコップにはスプーンがブツっと差してあり、すっくと立っていた。何のおまじないか分からないが、自分が子どもの頃に食べたカレーは、ああいうことだったのかと思い出して詠んだ。
本人 これは名人のカレーです!■査定結果永世名人21句で掲載
ボツ理由:語順が違う
本人 ボツ…。何が違うんだよお前。どこの語順だよ。
夏井先生 語順の違いが分からないからこんなことになってしまう。良い点もあり、
「ライスカレー」の呼び方である時代の手触りはある(=明治~昭和にかけてのカレーだと分かる)のが良い。
すぐ「
匙のすっくと」と出てくるため、読み手のほとんどは
ライスカレーに匙を入れてご飯を「すっくと」掬っている様子だと思う。
おっちゃんや私は氷水の入ったコップになぜか匙が入っている時代を生きた。何だろうねアレ?
本人 分からないけど差してあったの!夏井先生 それは私も分かるの!分かるが、その
時代を知らない読み手にはそれが伝わらない(=若者は氷水に匙が立っているとは読まない)。それを明確に書かないと伝えたい映像が伝わらない。
浜田 「氷水」からいかないとダメですよ。
夏井先生 その語順ですよ。
浜田 ねえ。
夏井先生 氷水のアップから始めてカレーライスに広げる語順しかない。ねえ、浜田さん。
浜田 そうですよ。
夏井先生 そうですよ、はい。
「
氷水に」から始め、「匙」に続ける。
「すっく」とかっこいい感じの気分も分かるが、消す。
匙が真っ直ぐ突っ立ってたんでしょ?
本人 そうだよ!
夏井先生 それを書くのだよ!「
直立す」と書き、最後に「
ライスカレー」と場面を展開させて光景を最後に広げる。
こんな風に
ライスカレーが出されていた時代があったのかと、若い人たちにも時代背景を映像として伝わる。
本人 何で先週フジモンに訳の分からないことあんたがまとめてさ、俺が考えたライスカレーの!浜田 …さ、というわけでね。
一同 (笑)
内海 何すか、この終わり方。
添削後
『氷水に 匙直立す ライスカレー』
「カレー」のみならず「ライス」も入れて時代背景を表現し、その思い出を詠んだ一句です。御大だけに基本は忠実に押さえた定型句で、年配の方はかなり共感できる内容に違いなく、「ライスカレー」の雰囲気は良く伝わります。今でもスプーンをコップに入れる大衆食堂はありますが、お盆を使わずに運ぶ手間を減らす、直置きの紙ナプキンを使わずに済む、冷やしておけるなど理由が諸説あるようです。「すっくと」のような擬音語・擬態語を時たま用いる御大は「シンクの西日カップ焼きそばの『ボコン』」「藻の花やペットボトルにさやさやと」でのボツ査定も記憶に新しいですが、藤本名人と異なり思い出の句が中々評価されず。時間経過の句で新境地を開いたはずだけに、また厳しい道のりに戻ってしまうかもしれません。御大は黎明期から一般に使いにくい季語・珍しい季語を用いる傾向がありましたが、最近は影を潜める印象もあります。多くのファンのためにも更なる挑戦に期待しましょう。
浜田 残念ながら
ボツということで。
玉巻アナ ということですので、浜田さんお願いいたします。
梅沢永世名人 いやいや、おかしい。
浜田 いやおかしくはないですよ。何がですか?
梅沢永世名人 なっちゃんがおかしい、全体的なことだしょ!浜田 だしょ?
一同 (笑)
浜田 永世名人の句ですから、これ世に残すとね、のちのちダメなんで、これはもう消去させていただきます。さあ、いきます。せぇーの、ドン。
→例によって掛け軸前の赤いボタンを押す浜田
→♪エレクトリカルパレード ともに俳句がシュレッダーにかけられる
※ボツの俳句は永世名人の名誉のため無かったことにゆきぽよ ああ~。
風間 うわあ~。
内海 ああ~。
浜田 (笑)
***
浜田 さあ、掲載に向けて次回頑張っていただきましょう、梅沢さん。
梅沢永世名人 街であったおばあちゃんが泣いてるぞ、なっちゃん。
浜田 あははっ、うるさいなもう。
★句集完成まであと29作
※次回8/27のお題は「コンビニのホットスナック」。番組史上最低点となる
3点の俳句が登場。
今回は消しゴムはんこの後のコーナーで、兼題は「カレーライス」。「カレー」を句に詠み込むこと自体は難しくありませんが、良い句を詠むのは少々難しいですね。どうしても子どもが背景に出やすいですが、その方が共感性もあって良い一方、安易に「香」など嗅覚や味覚に手を出すと野暮になりやすい印象もありました。
さて、梅沢名人が永世名人に認定されてから3か月以上経過しましたが、未だに3句の掲載決定に留まっており、今年中の句集発売は絶望的。一方、横尾名人は本当に苦労人で、今回の5段到達までに要した査定回数・時間は名人10段衆を入れても最多・最長でした。査定回数の不均衡が毎回SNSでもやり玉に挙げられますが、現状永世名人+もう1人の特待生(名人)しか昇格試験を受けられない制度になっているだけに、改善は必要ではないでしょうか。
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