春風亭昇吉の全俳句一覧

「プレバト!!」で披露された落語家　春風亭昇吉の全俳句一覧です。
特待生4級　春風亭昇吉(しゅんぷうていしょうきち)　合計16句

成績(2023年8月3日時点)
<通常挑戦者時代>才能アリ2回
<特待生時代>1ランク昇格1回、現状維持2回、1ランク降格0回
第4回炎帝戦予選C2位、第4回金秋戦予選C4位(最下位)
第5回春光戦予選C5位(最下位)、(第5回炎帝戦12位)、第5回金秋戦予選A4位
第6回春光戦予選D2位、第6回金秋戦予選A2位・決勝3位
第7回春光戦予選A1位・決勝9位、浜田杯15位、第7回炎帝戦10位
●昇格率　33.3％(1/3)
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◎全俳句目録　(番号クリックでリンク内移動します)

1	才能アリ	風信子数にあまれる失意あり
2	才能アリ	万緑に提げて遺品の紙袋
3	炎帝④予選C2位	スイカバー隣に君のいない海
4	金秋④予選C4位	コロナ禍のハンドジェルにも深む秋
5	現状維持	盤上に希望の病六連星
6	春光⑤予選C5位	雛あられ姪にひと粒ごとのおと
	炎帝⑤12位 ※順位のみ発表	海の風火薬の尽きた花火蹴る
7	金秋⑤予選A4位	負けても勝っても母秋刀魚焼く
8	春光⑥予選D2位	春雷すストレッチャーを急かす駅
9	金秋⑥予選A2位	錦秋のショーウィンドーに映る黙
10	金秋⑥決勝3位	白秋の雲穿ぐ右投げ左打ち
11	1ﾗﾝｸ昇格	露の世のいつぽん長きうどんかな
12	春光⑦予選A1位	三月の空に託せるものがない
13	春光⑦決勝9位	職を辞したる尾崎放哉鳥曇
14	浜田杯15位	お前しかおらん改札若葉風
15	現状維持	夕焼やつくばいのある美術館
16	炎帝⑦10位	キープボトル墓碑銘となる夏のBAR

▼人物紹介

「プレバト!!」では2020年に初挑戦と新生のごとく才能アリを獲得したインテリで知られる落語家で、笑点でも司会を務める春風亭昇太の弟子。
東京大学経済学部を首席で卒業と落語家初の東大卒。さらには東京大学総長大賞も受賞し、有名通信添削で全国1位獲得経験もあるなど学歴は申し分ない。また、得意教科は国語で俳句の会に月一で通うことを明かしている。
句の特徴は、初心者らしからぬ高貴な表現と描写力。俳句の基本の型ではない心情表現を行っている。通常挑戦者時代には1日に100句も作句して査定に臨むことを明かすほどの気の入れようであり、第6回春光戦では1週間に1000句作ったことを明かしている。
初回出演から高学歴で落語家になった点を浜田からいじられるが、ガチ勢としての参加を表明と自信満々。同じ落語家の立川志らくから、「(特待生は)東大は(鈴木)光ちゃんがいるし、落語家は私と(三遊亭)円楽師匠がいるから、なに合わさったヤツが来てるんだよ！」とスーパーハイブリットの本人に噛みつくが、「全然違うんで、(志らく)師匠とは」とライバル視もしないほど勝気。
発表前から2位以下の俳句を「形にもなってない」と酷評した上で、堂々と才能アリ1位を勝ち取った。
さらには、IQ148以上のみが入会できるMENSAの元会員であったことも明かし、志らく・鈴木光・岩永の3名を兼ね備えた人物だと自負した。
そして、75点という近年稀に見る高得点を叩いた一句で、梅沢名人をもうならせて見事に通算28人目、落語家として3人目の特待生に認定。わずか2回での認定は、フルポン村上、鈴木光に続く快挙であり、さらに初登場から4週での認定はこの2人よりも早い記録とまさにスピード出世である。
順位発表前から勝気な姿勢を崩さず、「志らくや円楽師匠の時代は古い。プレバト!!の俳句は私が引っ張っていきます」と上から目線だったが、宣言通りの特待生認定となった。今後の展開が大変楽しみである。
初参加のタイトル戦は師匠の円楽・志らくと並んで予選に挑戦。意気込みながら詠んだ句は補欠で2位となるも、高評価を得られずに落語家3名で唯一決勝進出できずに終わった。さらに、続く金秋戦もシードを獲得している落語家2名の待つ決勝には進めなかった。しかし、第6回金秋戦で才能が開花。予選を2位ながら通過を決め、初めて挑んだ決勝も添削なしの3位で、志らく名人を上回る意地を見せつけた。これを受けて2023年3月、自身の落語会の前座に志らく名人を出演させることに成功した。続く、春光戦でも夏井先生を久しぶりに感動させる心情句を詠み、初めての予選1位で通過を決めている。
初の昇格試験では、多作多捨を行っていた傾向と対策を変えたようで、造語を用いた難解句で現状維持査定。最初の2句の出来映えからの期待を裏切られる形で、悩ましい結果が続いていたが、2度目の昇格試験では梅沢名人も唸る一句で遂に初昇格。特待生認定後125週での初昇格は番組最長記録を更新する形となった。
2023年の春光戦、5月の浜田杯、8月の炎帝戦と立川志らくをライバル視する形でタイトル戦に出演するも、いずれも微妙な順位となって志らく名人の順位を上回ることも叶わず。志らく名人との小競り合いが続く印象を視聴者に与えている。


●[1] @20/05/07◆お題：春の花屋さん
『風信子数にあまれる失意あり』才能アリ1位72点

添削なし

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季語「風信子(ひやしんす)」は和名表記。沢山の花をつけるヒヤシンスの花言葉は「悲しみ」などネガティブな意味合い。これぐらいでは許してもらえないのではという人物の後悔や懺悔の気持ちを表現した一句。季語の表記で、噂や手紙などあだ名関係を想起させる大人の世界を象徴したと語った。先輩落語家の志らく名人は「素晴らしい句だが、ムカつきますね。落語家の粋な句じゃなく、頭でこしらえてる東大生の句で、東大王チームに行くべき」と皮肉を述べる。先生は「とても良く出来ている」と評し、中七は、ある基準の数を超えて何かがあるという意味で、小さい花で香りも強い印象的な花の数を超えるほどの失意を抱えていると解釈できると解説。上五と下五の全く関係ない物を中七が意味の上で繋ぐというテクニックの必要な技を使っていて、お見事だと絶賛した。

●[2] @20/06/04◆お題：紙袋
『万緑に提げて遺品の紙袋』才能アリ1位▸5級75点

添削なし

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季語は「万緑(ばんりょく)」。おっさんが紙袋を持っているだけの映像で、紙袋の中にアルバムなどの遺品が入っている。光と生命に満ちる季節感とおじさんとの対比だが、人は死んでも心の中に生き続ける気持ちを「万緑」という季語に託したと理論的に語った。わずか2回で特待生昇格というスピード出世に驚く梅沢名人は、「コイツは特待生になる資格はあるね。いや、この句はなかなか凄い…だから75点。」と褒めるも、具体的な良さを指摘できず。先生は、「本当に上手い。俳句の骨法が分かっている人の句」と評し、「万緑」が見渡す限りの青葉の映像に生命力のイメージの季語で、「提げ」の動作に人物の存在も匂い、季語と「遺品」の生死の対比が上手いと称賛。なぜ遺品を紙袋に入れるのか？という小さな謎から映画のようなドラマが生まれる印象すらあると語り、上五「に」は「や」など助詞の選択で悩んだのではと本人に確認をとる。「に」は空間の中に位置を示す助詞で、生命のエネルギーが溢れる万緑の中に人物がポツンといる感じとなり、季語の命のイメージを前面に押し出すことに成功したと終始絶賛。これだけのことが出来ると、梅沢も危ないと警鐘を鳴らすが、当の梅沢名人は「私のランクに来るには10年早いわ！」と大口を叩くも、浜田から指摘力のなさをイジられてしまう。鈴木光以来の75点という高評価に他の特待生らを脅かす存在となったのは間違いない。

[ここから特待生として査定]

●[3] @20/07/30◆お題：アイスクリーム売り場
『スイカバー隣に君のいない海』第4回炎帝戦予選C2位(予選敗退)

添削なし

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季語は「氷菓(スイカバー)」。岡山県出身で地元の瀬戸内海の綺麗な海を見るのが好きと語る本人。各自の夏を謳歌するが、自分は恋人がいなくて寂しい切なさを感じる。まさに夏をかたどったようなスイカバーのアイスに想いを託し、渚に1人座りながらスイカバーの底辺の角をかじる切なさがあると語った。梅沢名人は「村上のようなちまちま俳句」とけなし、予選2位の横尾名人も「勝ったなという自信はある」と批評し、呆気にとられる本人。先生は、兼題写真から目ざとくスイカバーを見つけ、具体的に言ったのは良く、後半は青春のアニメの1ページのような世界観を表現したと称賛。梅沢名人に同調し、村上2号のような若い句柄も作れると認め、1つの世界が作れているため添削は不要だと語った。結果に納得いかない本人は「1位にして下さい」と懇願するも、「1位の句見てから言って」と先生は突き放した。結局、初のタイトル戦は予選落ちとなり、敗者復活を果たした志らく名人からは「歌謡曲みたいな句」だと言われてしまった。

●[4] @20/11/05◆お題：ポンプのノズル
『コロナ禍のハンドジェルにも深む秋』第4回金秋戦予選C4位(最下位)

添削後
『ハンドジェル揉み込めば秋深みゆく』

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季語は「秋深む」。今年の春頃からアルコール消毒を使うことが多くなってきた。季節が移ろい、だんだんアルコール除菌自体に年季が入ってくるが、ハンドジェルを使って手を揉み込む時に秋が深まってきたなという空気を感じると語り、季語を主役に立てたと言うが、「なんで負けたんだろう？」と不満げな本人。補欠の岩永は「『にも』に説明している感じがある」、梅沢名人は「タイトル戦にしては考えすぎ。今の時代なら『ハンドジェル』と言えばコロナだと読んでくれる」と指摘し、先生は両者の指摘に同意する。先生は、「にも」が散文的(趣のない文章)と気付くべきだと指摘し、次に「コロナ」の問題を挙げ、同じ時代に共有している読者をもっと信じるべきだと忠告する。ジェルを揉み込み、秋があっという間に深まってきたと描く意図は良いが、焦点を絞るべきだと指南。語った「揉み込む」を入れ、「ハンドジェル」を揉み込めば秋も揉み込んでいくかのような表現を「深みゆく」とすれば、時間経過が出ると添削を行う。同じ時代を生きる読者たちは同じ思いだと共感すると解説した。初めて手直しされたことに感謝の辞を述べる本人だった。

●[5] @20/11/19◆お題：オセロ
『盤上に希望の病六連星』5級で現状維持

添削後
『「希望の病」あり盤上に六連星』

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季語は「六連星(むつらぼし)」で牡牛座の連星「昴(すばる)」の別称。「希望の病」は射幸心の虜になることを指す造語で、勝負事での慢心や油断が命取りになることを比喩した。(オセロの)盤上に六連星のように白い石が並び、勝てると思って会心の一手を打つが、後半に一気に形勢が逆転してしまう様子を表現。季語とオセロの本質を取り合わせてみたと語った一句。梅沢名人は「頭が良すぎたダメな句。一般の人が理解できない」とコメントする。査定ポイントは中七「希望の病」の是非。「独りよがり！」と評す先生は、兼題写真を見ていれば、「盤上」がオセロで、「六連星」がオセロの6つの白石だと想像は可能だが、写真を知らない読み手に伝わるかでハードルが高いと問題点を語る。「希望の病」をインターネットで調べたと言う先生は、タイピングの動作をみせるが、浜田から「両手で出来へんやろ」とツッコまれて「チッ」と舌打ちし、「今カチンときてます」と返して笑いを取る。「希望の病」の造語は認めたいが、活かし方に限りがあると解説し、鍵括弧で括れば読み手は造語だと思いやすいとし、添削を始める。「あり」と明確に上五で言い切り、「盤上に六連星」と続ければ、"私には「希望の病」が心の中にある。盤上には六連星のように白黒の石が並ぶ。"と寄せられるが、オセロまで辿り着くかのハードルが残ると総括した。本人は「盤上ならボードゲームしかない。別に将棋でも囲碁でも良いじゃない」と口答えするが、「もちろん。将棋でも囲碁でも良いにしても中々伝わりにくい。あなたは自分が作ってるから、世界で一番この句に対して理解があるのはあなたなんです」とイライラを抑えながら返すも、「はっきり申し上げるが、『希望の病』はアンタです」と句の内容から本人が弄られる始末に。

●[6] @21/02/25◆お題：きのこの山とたけのこの里
『雛あられ姪にひと粒ごとのおと』第5回春光戦予選C5位(最下位)

添削後
『雛あられかじるひと粒ごとのおと』

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季語は「雛あられ」。白・ピンク・薄い緑など春らしい色の雛あられだが、4歳くらいの姪が食べる時の一粒ごとの咀嚼音に歯の成長や子どもの成長を感じる。音が聞こえるという距離感を愛しさを表現したと語った。梅沢名人から「『雛あられ』なら女の子(姪)は当然」、志らく名人から「無駄が多い」、円楽から「『おと』が何の音か分からない」と総非難。先生は、それぞれの指摘は全て当たっているとし、兼題のチョコレートから「雛あられ」に行く発想力が上位を狙うのに厳しいと語り、兼題写真をどのように踏まえているかが大事なポイントだと問いただす。問題点は「姪に」で、伝統的な季語の意味では女の子のお祭りのため、「姪」は不要で、「に」が散文的のため消去し、3音で最後を補強すべきと忠告。「音」だと分かるように季語の後に「かじる」と入れた。かじってるのは可愛い女の子に違いないとなれば、上位を狙えたと語った。納得しない本人は、「『かじる』『おと』が被ってるように思います」と反論するも、先生は「捨て石のような補強になる。ここまで丁寧に解説して分からないのか！」と叱責し、スタジオが気まずい雰囲気に。タイトル戦は2連続最下位に沈んだ。

●[7] @21/09/09◆お題：スポーツの秋
『負けても勝っても母秋刀魚焼く』第5回金秋戦予選A4位(予選敗退)

添削後
『試合如何に子の好物の秋刀魚焼く』
『勝敗如何に子の好物の秋刀魚焼く』
『勝負如何に子の好物の秋刀魚焼く』

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季語は「秋刀魚(さんま)」。母が台所で秋刀魚を焼く後ろ姿の映像という一句。思春期の息子が部活の試合を終えて帰ってくるが、その試合が勝っていても負けていても好物の秋刀魚を焼いており、部活に限らず就職活動でも何でも良い句だと語った。東国原名人は、本人の「万緑」のデビュー句が完璧だったことを明かし、「あれで終わったね！」と厳しく見下す。落語家の2名人も様々な読みがある問題点を指摘。先生は、色んな読みがあるのがダメではないが、この句はあまりにも絞りにくく、読者に任せすぎだと指摘する。母自身が人生をかけた勝負の時期にあり、勝っても負けても自分は淡々と日々の生活の秋刀魚を焼いているという読みもあると挙げる先生は、「負けても～」の言葉で誤魔化さず、具体的に表現すべきだと指南。「試合如何(いか)に」などと上五を変え、「母」を消して「子の好物の」と添削。試合をしたのは子どもで、親が子の好物を焼こうとした形を明確にし、作者の語った光景に言葉をグッと寄せ、「俳句は言葉を寄せて自分の思いを手渡すぐらいの覚悟でやってほしい」と本人に忠告した。本人は、「『子の好物の』っていいですね。ありがとうございます！」と軽いノリで応対した。

●[8] @22/03/17◆お題：階段orエスカレーター
『春雷すストレッチャーを急かす駅』第6回春光戦予選D2位(予選敗退)

添削後
『春雷やストレッチャーを急かす駅』

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季語は「春雷」。春はのどかだが、それに対峙する物々しい場面を「春雷」という季語に託したという本人。遠景で雷の音、近景でストレッチャーの車輪の音を対比し、なおかつ「S」の音象徴(おんしょうちょう)を多く用いて、ストレッチャーがスムーズにスーッと車に入るのを表現したと長々と語った。梅沢名人は「理屈っぽい」と本人を嗾け、ジュニア名人は「春雷す」が引っ掛かると指摘。先生は、とても丁寧に構造を考えた句と評す。季語の後に、「ストレッチャー」という物が病院や救急車に違いないと分かり、「を急かす」で人の動きや慌ただしさ、最後に「駅」という場所が出て全体が一枚の映像になると解説。1000句作ったと語っていた本人の話をなぞり、多作して一句選ぶ姿勢は大事で継続すべきだと述べる。しかし、「春雷」だけでも雷の音はしており、「す」と動詞にする必要性があるかが問題点だと述べ、その点を指摘したジュニア名人を褒める。素直に詠嘆するのが一番よく、浜田が瞬時に述べた「や」で添削。「しゅ」「す」「ス」「せかす」というSの音を散りばめる企みも悪くないが、逆に裏目に出たと指摘し、本人も企みを認める。2位補欠争いでもこの一音が致命傷となり、予選敗退となった。

●[9] @22/09/01◆お題：ファッションの秋
『錦秋のショーウィンドーに映る黙』第6回金秋戦予選A2位(決勝進出)

添削なし

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季語「錦秋」は錦の織物のように美しい秋の光景。秋の煌びやかなファッションが飾られる夜のショーウインドーを見ると、ガラスに自分の様子が反射して見える。社会情勢が暗い現代との対比みたいなことを詠みこんだと語った。梅沢名人は「上等な俳句」、村上名人は「静けさが映るのが良い」と両者称賛。先生は、色々と難しいことに挑戦して、やり抜いている印象だと評す。季語は「錦」の字が邪魔をして、自然の光景で使いこなすのが大変難しいが、「ショーウインドー」は人工的に彩られた秋の光景のため、それにより"虚構の季語"のような立ち位置を与えたのがポイントだと解説。さらに、大抵は不要な「映る」も、本来映らない沈黙を映像化する際のキーワードになったと述べる。作者を知って驚く先生は、「あんた今まで理屈ばっかりこねていたが、こういうのは良い理屈」と本人を称賛した。タイトル戦は初の決勝進出となった。

●[10] @22/10/13◆お題：大谷翔平
『白秋の雲穿ぐ右投げ左打ち』第6回金秋戦決勝3位(シード権なし)

添削後
『白秋の雲裂く右投げ左打ち』
『白秋の雲撃つ右投げ左打ち』

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季語は「白秋」。「穿(う)ぐ」は穴が開くこと。「右投げ左打ち」は大谷選手の快刀乱麻の活躍で、「白秋の雲」は今の世の中の事であり、モヤがかかった空気に風穴を開けるようなスカッとしたプレーを「穿ぐ」の動詞に込めたと語った。字余りの勇気を褒めるは中田名人。先生は、内容がいかにも爽快で、打った球が雲を砕くかのようだとよく伝わる点を褒める。悩んだ所は一か所「穿ぐ」の動詞で、掘ったり削ったりして穴が開く意味だが、大谷選手のホームランのイメージより、こつこつとヒットを打って積み重ねていくようなイメージを思った点を指摘する。ストレートなホームランのイメージなら「裂く」や「撃つ」にしても良いと提案し、この2音を自身が探すべきだと指南した。3位に入ったものの、次回シード権を得ることが出来なかった。

●[11] @22/10/27◆お題：セルフのうどん店
『露の世のいつぽん長きうどんかな』4級へ1ランク昇格

添削なし

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季語「露の世」は露のように儚いこの世。手打ちのため、どんぶりの中に1本だけ長いうどんが入っていたという映像だが、「露の世」はそれぞれに色んな人生があり、うどんの白さや瑞々しさが表現できたら良いなと語った。梅沢名人は「長いうどんが入っていると良く分かる」と称賛。査定ポイントは詠嘆「かな」の是非。「難しいことをやってるのに共感できる」と評す先生は、上五「露の世」が難しい挑戦だと述べる。「露」だけで秋の季語になるが、「露の世」の使い方では人生の儚さ・思いが意味とし乗っかってくると解説。"私は1本の長いうどんを見て「露の世だ」と思ったが、皆さんはどうですか？"と読み手に投げかけるのが、「かな」という詠嘆の元々のニュアンスで、まさにそれをやれていると褒める。最後に「この人は理屈さえこねなければこういう句がちゃんと出来る」とアプローチ。特待生認定から2年4か月をかけ、ようやく初昇格を決めた。

●[12] @23/03/02◆お題：卒業[式の壇上]
『三月の空に託せるものがない』第7回春光戦予選A1位(決勝進出)

添削なし

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季語は「三月」。人生は卒業の連続であるが、進学や就職の際に確固たるもの・未来を託せるものを持っている人ばかりではないことを、落ち着いた色の三月の空と取り合わせた一句。梅沢・藤本両名人は揃って絶賛する。先生は、見た瞬間に「見事だ」と称賛。「卒業」は必ずしも"めでたい"わけではなく、誰もが希望に満ちた卒業を迎えるわけでない人生の現実への着眼点を評価する。明るい「三月の空」から始まるが、後半からグッと方向が変わり、努力しても成果がなかったという思いや、頑張る人を横目に皮肉な目で見ながら「何一つ自分は真剣にやってこなかった」という忸怩(じくじ)たる思いなど、色々な意味に読めると述べる。「空に託せるものがない」の口語の語りがリアリティーとして胸に迫り、内容に共感できる人もいるはずで、"あなた一人ではない"というエールにもなると解説した。最後に「あなたは理屈こねなくなって巧くなった。久しぶりに感動しました」と絶賛の言葉をかけた。タイトル戦は2大会連続の決勝進出となったが、予選で初の1位を獲得した。

●[13] @23/03/30◆お題：給与明細
『職を辞したる尾崎放哉鳥曇』第7回春光戦決勝9位(シード権なし)

添削後
『またも職辞せる放哉鳥曇』

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季語「鳥曇」は渡り鳥が北へ帰る頃の曇り空。「尾崎放哉」は大正時代に活躍した自由律俳句の代表的俳人で、酒におぼれ職を転々とするなど波乱の人生を送った。人は働かなければならないが、「仕事を辞めたい」「職場が合わない」ことが時たまあり、鳥が列になって飛んでいくような集団主義から取り残されるみたいなことを職を転々とした放哉に重ね合わせて詠んだと語った。志らく名人は「映像が浮かばない」、梅沢名人は「"尾崎"は不要でも通じる」、先生は「知識をねじ込もうとしやがった」と手厳しい。発想は悪くないと述べる先生は、「職を辞したる」は単純に"一度辞めた"、"定年まで勤めた"と読む可能性があるため、「またも職辞せる放哉」と手堅くまとめた。放哉らしさを出し、季語「鳥曇」に収斂していくことはできると述べ、「人名を出す場合は、もうひと工夫あっても良い」と解説した。今回志らく名人に惜しくも敗れた本人は「よく分かりました。師匠になれるように修行してきます」と反省した。

●[14] @23/05/11◆お題：浜田雅功
『お前しかおらん改札若葉風』浜田杯15位(20名中)

添削後
『お前しかおらん若葉風の改札』

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季語は「若葉風」。浜田に関するエピソードを本で調べて詠んだという一句。高校時代に学校が嫌で一旦地元に戻る最中、のちの相方となる松本人志に鶴橋で待ち合わせをするよう指図する電話をした逸話からイメージし、「お願いできるのはお前しかおらん、改札で待っていてくれるのはお前しかおらん、相方になるのはお前しかおらん」という三重の意味を込めたと語った。立川志らくから「意味が分からない」とぶった切られる。先生は、浜田本人なら思い当たる節はあるだろうが、17音で事情を察してくれは難しいというエピソード俳句の難点に嵌った句だと指摘。語順を1か所だけ変えて「若葉風の改札」とすれば、季語の現場が見える構造をつくれると忠告。本人は「まあ、おっしゃる通りです」とあっさり述べた。春光戦に続き、またもタイトル戦で志らく名人の順位を上回ることができなかった。

●[15] @23/06/15◆お題：夏の夕
『夕焼やつくばいのある美術館』4級で現状維持

添削後
『作品名「つくばい」夕焼美術館』

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季語は「夕焼」。「つくばい(蹲)」は日本庭園などにある背の低い手水鉢。自然の音・空気・光を取り入れた現代美術館で「つくばい」という作品が展示されており、静謐に水をたたえつつ光を反射させていて綺麗だった光景を思い出して詠んだと語った。志らく名人は「"つくばい"を入れるのが嫌味」だと突っぱねる。査定ポイントは中七「～のある」の是非。先生は、「のある」が一種の報告になっていて邪魔していると指摘。屋外に蹲があるなら「夕焼のつくばい」などと描写する方法もあるとし、作品としてのつくばいの意図であれば鍵括弧をして「作品(名)『つくばい』」などにすべきだと指南。後半を「夕焼美術館」とすればひとまず形になると解説した。本人は「いや～、でもちょっとすぐ今理解できない。オンエア見て勉強します」と自省のコメントを述べた。

●[16] @23/08/03◆お題：行きつけのお店
『キープボトル墓碑銘となる夏のBAR』第7回炎帝戦10位

添削後
『晩夏なるBAR墓碑銘となるボトル』

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季語は「夏」。BARの常連客が亡くなり、残されたキープボトルが墓碑銘として存在するという場面を詠んだ一句。亡くなったことを店主も知らないで「あの親父亡くなったらしいよ」とキープボトルだけが残され、語りかけているような感じがしたと語った。先生は「キープボトル」と「BAR」の2つが情報として重複するという点を指摘し、「キープ」を削除。「墓碑銘」と「ボトル」で連動させ、語順も季語から始めるよう指南する。「墓碑銘」の気分を連動させるため、季語を明確に「晩夏」に絞り、「晩夏なるBAR／墓碑銘となるボトル」と「なる」で韻を踏んだ。解説を即座に理解できなかった本人は「家で確認します」と述べるが、9位の志らく名人から「先生の講評聞けば9位と10位には相当な差がありますよね」とコメントして笑いを獲った。