「プレバト!!」で披露された女優 中田喜子の全俳句一覧です。
名人7段 中田喜子(なかだよしこ) 合計65句
成績(2023年6月8日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ5回、
凡人1回
<特待生時代>
1ランク昇格11回、
現状維持12回、
1ランク降格0回
第1回番組対抗戦
才能アリ3位
第1回俳桜戦4位、第1回炎帝戦8位、第1回金秋戦4位、第1回冬麗戦4位
第2回俳桜戦7位、第2回炎帝戦予選1位・決勝6位、第2回金秋戦予選3位・決勝6位、第2回冬麗戦予選1位・決勝7位
第3回春光戦決勝8位、第3回金秋戦決勝4位、第3回冬麗戦決勝9位(最下位)
第4回春光戦予選B2位・決勝3位、第4回炎帝戦決勝8位、第4回金秋戦予選D1位・決勝9位(最下位)、
第4回冬麗戦5位
第5回春光戦予選B2位・決勝5位、(第5回炎帝戦11位)、
第5回金秋戦予選A1位・決勝8位
第6回春光戦予選B4位(最下位)、
第6回炎帝戦優勝、第6回金秋戦予選B3位、第6回冬麗戦11位
第7回春光戦予選B4位、浜田杯12位春の他流試合SPで松山東高校に28-28で引き分け
通信教育査定で
よく頑張ってる!査定1回
ふるさと戦(写真俳句)で
茨城編4位、福島編2位、京都編4位査定とは別に2017年月間MVH受賞(7月)、2018年度月間MVH受賞(12月)
●昇格率 47.8%(11/23)◆添削なし秀句 17句/65句→50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ→
人物紹介◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 | 才能アリ | 春愉し房総の空ひた走る |
2 | 才能アリ | 紅梅やはるかに富士をのぞみたる |
3 | 才能アリ | 遠い日の路地の匂ひや焼き秋刀魚 |
4 | 凡人 | 梅の香やすずなり絵馬に目をみはる |
5 | 才能アリ | 発車ベル待たずやうさぎ雪の野へ |
6 | 才能アリ | 柏手のひびく境内梅ひかる |
7 | 俳桜①4位 | 初桜響けるひづめ皇居へと |
8 | 現状維持 | 雨あがる箱根うつぎの咲う径 |
9 | 炎帝①8位 | 荒神輿はねる鳳凰波けたて |
10 | 1ランク昇格 | 空蝉の転がるベンチ海の駅 |
11 | 才能アリ | ずぶ濡れの子シャツの下より甲虫 |
12 | 金秋①4位 | 東天の池の底まで紅葉降る |
13 | 1ランク昇格 | 梟の羽ばたき百夜の湯治場 |
14 | 冬麗①4位 | くら谷を震はせたるや雪の声 |
15 | 1ランク昇格 | 分校の一樹入学児一名 |
16 | 俳桜②7位 | 逆さ富士に目桜鱒天めがけ |
17 | 1ランク昇格 | 段葛きやらぶき弁当かかへゆく |
18 | 現状維持 | 白線や蟾へばりつく雨後の夜 |
19 | 現状維持 | 削氷のけづりし音や海に消へ |
20 | 炎帝②予選1位 | 光束ねるごと日焼子ら走る |
21 | 炎帝②決勝6位 | ラジカセの声ころがりて簀戸抜ける |
22 | 金秋②予選3位 | 耳すます闇の羽音や紅葉谷 |
23 | 金秋②決勝6位 | ポストへと合鍵返し秋夕焼 |
24 | 現状維持 | 渋滞追ひ越す八坂の冬鴉 |
25 | 冬麗②予選1位 | 連覇のさきぶれ沸き立つ初電車 |
26 | 冬麗②決勝7位 | 節の香のひかる結露や甘きこと |
27 | 1ランク昇格 | 梅東風や受話器の底に母国あり |
28 | 春光③決勝8位 | 焙煎香ふんぷん春陰を飛ばす |
29 | 春の他流試合△ | 囀を合図のごとく始発来る |
30 | 1ランク昇格 | 「とき」発車旅憂わしき花追風 |
31 | 現状維持 | 竹籔のかわく葉音や極暑来る |
32 | 現状維持 | 閉じる門「さよなら」は秋夕焼色 |
33 | 金秋③決勝4位 | 横断の人波秋光を放つ |
34 | 1ランク昇格 | 流れでるショコラの奥の冴ゆる巴里 |
35 | 冬麗③決勝9位 | 祝ひ歌山川響くみかん鍋 |
36 | 1ランク昇格 | 誘導鈴風花ひかる改札へ |
37 | 春光④予選B2位 | テーピングの足春泥を撥ね上ぐ |
38 | 春光④決勝3位 | 若芝に大の字身ひとつの移住 |
39 | 頑張ってる! | 巴里留学母の蕗味噌解凍す |
40 | 炎帝④決勝8位 | 早桃の香支援の客の食事券 |
41 | 1ランク昇格 | 虫の闇ジョーカーの影動きをり |
42 | 金秋④予選D1位 | 泡ポンプの英知秋天を仰ぐ |
43 | 金秋④決勝9位 | 婚破れ振子響くや夜半の秋 |
44 | 冬麗④5位 | ゴムとび競ふ声冬天に満ちる |
45 | 春光⑤予選B2位 | 艶めきて海胆握る指和ぎのごと |
46 | 春光⑤決勝5位 | 「ちょき」だす子春の光を突き破る |
47 | 現状維持 | まなざしや句読点なき恋花火 |
| 炎帝⑤11位 ※順位のみ発表 | 掛け違ふ釦思春期の白シャツ |
48 | 金秋⑤予選A1位 | しぶき上げ復活の秋ひとりじめ |
49 | 金秋⑤決勝8位 | 秋雷や絶縁破壊長き闇 |
50 | 1ランク昇格 | 肉饅どさどさ黄さんの手真つ赤 |
51 | 春光⑥予選B4位 | 花追風見知らぬ町の握りめし |
52 | 現状維持 | 竹割つて垂直線のこどもの日 |
53 | 現状維持 | またござれ七夕さんの人の和よ |
54 | 炎帝⑥優勝 | 産声送信ドバイは大夕焼 |
55 | 現状維持 | 「箸鉄」を選ぶ子らの目鰯雲 |
56 | 金秋⑥予選B3位 | 数取器始動出水に鶴来る |
57 | ふるさと戦(茨城)4位 | 星合や長き鉄橋ひた走る |
58 | ふるさと戦(福島)2位 | 秋燕レークラインの影ゆらら |
59 | 1ランク昇格 | 更待やぶっかけすすり出港す |
60 | 冬麗⑥11位 ※番組解説なし | 吉兆の輝き一村をめざす |
61 | ふるさと戦(京都)4位 | ひそと待つ花街のひと花衣 |
62 | 現状維持 | 春立つや桃色のメモ退院日 |
63 | 春光⑦予選B4位 | 春泥を引越し女房おお跨ぎ |
64 | 浜田杯12位 | 還暦の朝大幟投げ上げよ |
65 | 現状維持 | 鯱戯け尾ひれかみかみ南風 |
▼人物紹介「プレバト!!」の番組初期から出演する「渡る世間は鬼ばかり」の女優。才能アリを合計5回獲得し、晴れて通算12人目かつ女性初の特待生となる。
しかし、しばらく成果が出ないこともあってか初回の昇格で嬉しさのあまり号泣し、司会の浜田から一目置かれる存在に。
句の特徴は女性らしい綺麗な言葉づかいと豊かな描写力。知性を感じる句が多いのが特徴で、名人となってからは造語による季語で詠むなど果敢な挑戦もしている。
語順や言葉の詰めが甘く添削されることが多いが、勉強量の多さは夏井先生からも認められている。
通常査定では4回連続昇格を決めて、1級まではトントン拍子。ちなみに特待生5級から1級まで査定5回での到達は特待生としてはフルーツポンチ村上と並ぶ最少記録である。
タイトル戦はしばらく紅一点として毎回出場し、1年目は成績不振だったものの、特待生だけの第2回炎帝戦予選で遂に1位通過を果たす。その後も、金秋戦・冬麗戦でも予選通過と特待生の中での実力はピカイチであるが、名人が加わる決勝で下位に沈む傾向が強かった。タイトル戦は2年間皆勤を果たしている。また、冬麗戦の予選通過句は月間最優秀句にも選出され、カリブ海の仕事を断ってまで当企画に熱を入れていたことを告白している。
通常査定は1級となってから段位が3回連続で足踏み。現状維持査定後の「あー!」という悲鳴は定番となり、ショックからか泣きっ面になることや、返事が小さくなる場面も。また、先生に添削されるワードは本人が語っている言葉にあることも多く、大変惜しい状況が続いていたが、特待生認定から約2年で遂に通算6人目・女性初の名人に昇格し歓喜の悲鳴をあげた。
しかし、名人として初参加のタイトル戦はまさかの8位に沈み、驚愕した本人はサスペンス顔を見せることになるが、浜田からいじられるほどキャラクターが立ってきた印象もある。
その後も名人として苦戦が続くが、「火曜サスペンス劇場」のテーマとともに、厳しい評価での不安顔や驚く顔が取り上げられるようになっている。
タイトル戦・第3回金秋戦では自身最高位の4位となり歓喜の悲鳴を上げるも、決勝シードで臨んだ冬麗戦では努力むなしく最下位に撃沈し、泣きべそをかいてしまった。続く春光戦では名人としての雪辱を果たして予選突破。決勝は自身最高位の3位となり、歓喜の声をあげた。続く炎帝戦は8位と再びシード権を失ったが、金秋戦予選を1位で挽回。決勝では再び最下位となり、悲鳴をあげてしまう。冬麗戦では5位と最下位を脱出。第5回春光戦は5位でシードを得られなかった。最近は予選では順当に勝ち抜くが、決勝ではいまいち勝ちきれないことが多いが、第6回春光戦では8度目にして初めて予選で敗退。近年は苦戦を強いられることが多かったが、苦節五年の時を経て遂に58名が参加した第6回炎帝戦で優勝を果たした。
夏井先生は「俳人の耳を持って詠んだ句である」など基本的な実力を高く評価しており、雅で上品な言葉遣いや俳句への情熱の入れようは視聴者にも定評がある。
番組では"俳句女王"と紹介されることも増えているが、下からの突き上げもあり、焦りもあると語っている。
記録面でも優秀な面を見せ、名人2段から5段まではノーミスで昇格した初の名人。初段から査定6回での5段到達もフルポン村上に並ぶ当時の最少記録である。
ミッツ名人と同様に、YouTube「夏井いつきの俳句チャンネル」で動画を閲覧し、勉強していることを公言している。
2021年度は『NHK俳句』の司会を担当するなど、多方面でも活躍している。
2022年放送の「ふるさと戦」で2部門に参戦。優勝は出来なかったが福島編では梅沢名人を抑えて2位となり、名人としてのメンツを保った。
●[1] @14/04/17◆お題:春の房総半島 菜の花列車
『春愉し房総の空ひた走る』才能アリ1位80点
添削なし
●[2] @15/02/05◆お題:梅と富士山
『紅梅やはるかに富士をのぞみたる』才能アリ1位70点
添削後
『紅梅やはるかに富士の青みたる』●[3] @15/09/03◆お題:秋の秋刀魚
『遠い日の路地の匂ひや焼き秋刀魚』才能アリ1位71点
添削後
『遠い日の路地の匂ひや秋刀魚焼く』●[4] @16/02/18◆お題:梅の湯島天神
『梅の香やすずなり絵馬に目をみはる』凡人2位60点
添削後
『梅の香やすずなりの絵馬風に鳴る』
季語は「梅」。合格祈願の絵馬が沢山吊るされる様子に驚き、すずなりのようだと素直に表現したが、「もう少しイメージを膨らますべきだった。あ~悔しい」と凡人査定にへこむ。季語+「や」+フレーズの型に挑戦した姿勢を評価するも、「すずなり絵馬」という強引な表現があれば下五は言わずもがなだと指摘する先生。映像化すれば問題なく、肌寒い状況なら「風」を用いれば、「すず」と呼応して聴覚情報が引き出されると添削する。解説中、「あ~綺麗」と叫ぶ本人は「先生、まさにそれだった」とオーバー気味な反応で納得した。
●[5] @16/12/08◆お題:雪の列車
『発車ベル待たずやうさぎ雪の野へ』才能アリ2位70点
添削後
『発車ベルに驚くうさぎ雪の野へ』●[6] @17/02/09◆お題:梅と太宰府天満宮
『柏手のひびく境内梅ひかる』才能アリ1位72点
添削後
『柏手のひびける朝や梅ひかる』[ここから特待生として査定]●[7] @17/04/06◆お題:満開の桜
『初桜響けるひづめ皇居へと』第1回俳桜戦4位添削後
『皇居へと響けるひづめ初桜』●[8] @17/05/25◆お題:初夏の箱根
『雨あがる箱根うつぎの咲(わら)う径(みち)』5級で
現状維持添削後
『雨後の空箱根うつぎの咲う径』●[9] @17/06/29◆お題:海
『荒神輿はねる鳳凰波けたて』第1回炎帝戦8位添削後
『波蹴立て跳ねる鳳凰荒神輿』●[10] @17/07/13◆お題:海と駅
『空蝉の転がるベンチ海の駅』4級へ
1ランク昇格添削なし
2017年7月月間MVH受賞句●[11] @17/08/31◆お題:夏休みの宿題(第1回 番組対抗戦)
『ずぶ濡れの子シャツの下より甲虫』才能アリ3位添削後
『ずぶ濡れのシャツの下より甲虫』※「プレバト!!」チームではなく「渡る世間は鬼ばかり」チームの代表として参戦した。
●[12] @17/10/12◆お題:紅葉
『東天の池の底まで紅葉降る』第1回金秋戦4位添削後
『東天の水の底まで降る紅葉』●[13] @17/12/14◆お題:雪の露天風呂
『梟(ふくろう)の羽ばたき百夜の湯治場』3級へ
1ランク昇格添削後
『梟の羽ばたき湯治場の百夜』提出する日の前夜に語順を変えてしまったらしいが、添削後の句なら2ランクアップでも良いほど発想が褒められた一句。
●[14] @18/01/04◆お題:雪と青空
『くら谷を震はせたるや雪の声』第1回冬麗戦4位添削なし(雪が落ちた一瞬の静寂を強調する意図が成功したため)
※以下、時間経過を誇張する場合の添削例
『くら谷を震はせゆくや雪の声』●[15] @18/03/29◆お題:入学式と桜
『分校の一樹入学児一名』2級へ
1ランク昇格添削後
『分校の一樹入学児は一名』●[16] @18/04/12◆お題:
桜と富士山『逆さ富士に目桜鱒天めがけ』第2回俳桜戦7位添削後
『逆さ富士ゆらぐや桜鱒跳ねる』発想が素晴らしいだけに表現がしっかりしていればベスト3を狙えた一句。
●[17] @18/05/10◆お題:
新緑の鎌倉『段葛(だんかずら)きやらぶき弁当かかへゆく』1級へ
1ランク昇格添削なし
季語「きゃらぶき」の選択が見事と絶賛され、4連続昇格を決めた1句。
●[18] @18/06/14◆お題:
雨の路面『白線や蟾(ひき)へばりつく雨後の夜』1級で
現状維持添削後
『白線や蟾みじろがぬ雨後の夜』●[19] @18/07/05◆お題:
かき氷『削氷(けづりひ)のけづりし音や海に消へ』1級で
現状維持添削後
『削氷の音や光れる波に消ゆ』●[20] @18/08/02◆お題:
夏の太陽『光束ねるごと日焼子ら走る』第2回炎帝戦予選1位(決勝進出)添削なし
●[21] @18/08/09◆お題:
ラジカセ『ラジカセの声ころがりて簀戸(すど)抜ける』第2回炎帝戦決勝6位添削後
『簀戸抜けてラジカセの声ころがり来(く)』●[22] @18/09/27◆お題:
紅葉の絶景『耳すます闇の羽音や紅葉谷』第2回金秋戦予選3位(決勝進出)添削後
「欹(そばだ)てる闇の羽音や紅葉谷』●[23] @18/09/27◆お題:
郵便ポスト『ポストへと合鍵返し秋夕焼』第2回金秋戦決勝6位添削後
『合鍵はポストへ返し秋夕焼』●[24] @18/11/08◆お題:
京都の紅葉と渋滞『渋滞追ひ越す八坂の冬鴉』1級で
現状維持添削後
『渋滞の頭上八坂の冬鴉』
作者の位置が不明瞭であるとされ、「追ひ越す」の複合動詞で説明せず作者が渋滞の中で動けないことがわかるように添削を受けた一句。動かない「渋滞」に動く「冬鴉」を持ってくる対比や「八坂」という具体的な地名が「渋滞」をより引き立てているなど、技術的には褒める要素が多く、本当にあと一歩である。
●[25] @18/12/27◆お題:
年末の満員電車『連覇のさきぶれ沸き立つ初電車』第2回冬麗戦予選1位(決勝進出)添削なし
2018年12月月間MVH受賞句
季語は「初電車」。正月に秩父宮ラグビー場で準決勝の試合があり、そこに電車で向かう一団の心情・表情を描写した句。「連覇」から始まる展開が上手く、読み手の経験から引き出される情景を脳裏に描く表現力を先生は絶賛。全ての勢いのある言葉が破調とも似合っていると評し、気持ちの良い句として梅沢名人も「憎たらしいね」と太鼓判を押した。タイトル戦は見事特待生唯一となる3戦連続予選突破を果たした。
●[26] @19/01/03◆お題:
結露『節の香のひかる結露や甘きこと』第2回冬麗戦決勝7位添削後
『節の香にひかる結露の甘からん』
季語は「節(せち)料理」。お正月に客を迎えるため台所でお節料理を作っていると、台所の窓の結露がお節料理の様に甘いということを言いたかったが、先生から助詞の使い方の誤用を指摘され添削を受けた。「甘きこと」では実際に舐めた味の感想になっているため、この表現も直されるも、発想のセンスは抜群で優勝争いができた内容だったのにもったいないと無念の結果に。
●[27] @19/02/07◆お題:
梅と公衆電話『梅東風や受話器の底に母国あり』名人初段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「梅東風(うめごち)」。中国人留学生の子が公衆電話で久々に家へ電話している様子を詠んだと語った句。評価のポイントは「母国あり」の語順の是非と指摘されて本人はうなだれるが、査定は昇格で遂に女性初の名人に。作家として「意志のある選択」をしたと評す先生は、王道の俳句の型を押さえた点を評価。下五を「ある母国」にすれば句の据わりが良いものの暗いイメージとなってしまう。「母国あり」を選択し、「梅東風」と取り合わせることで、私の誇らしい母国からの風が日本の梅を咲かせているという意味に読み手は確実にたどり着き、作者の意図通りに成功した句と絶賛。浜田も「今日はええ酒飲むで~」と本人を祝福した。
●[28] @19/04/04◆お題:
コーヒー『焙煎香ふんぷん春陰を飛ばす』第3回春光戦決勝8位添削後
『焙煎の香の立ち春陰を飛ばす』
季語「春陰(しゅんいん)」は春の曇りがちな空模様のこと。「ふんぷん(芬々)」は強く匂うさま。コーヒー豆販売店で焙煎(ばいせん)をしている。その豆の香りが強く、曇り空を良い香りで飛ばすかのような情景を詠んだ句だが、8位という低順位の発表で驚愕し、サスペンス顔を披露してしまった。梅沢名人は「もったいない。"焙煎香"で香っているので"ふんぷん"はいらない。無駄な言葉」だと語る。先生は「春陰を飛ばす」という発想はオリジナリティがあって良いが、前半が強引な表現で、「焙煎香」も寸詰まりだと指摘。「ふんぷん」を入れると悪目立ちしてしまい、大事な後半の肝が活きないと解説し、助詞と「立ち」の動詞で、前後のバランスをとる様に添削をした。浜田から再三仰天顔をイジられてしまう羽目に。
●[29] @19/04/18◆お題:
自動ドア『囀を合図のごとく始発来る』春の他流試合SP第4試合28-28で
引き分け添削後
『囀を合図の始発電車来る』
季語は小鳥の「囀(さえずり)」。早朝に窓を開けてウグイスの囀りを聞くと、電車の音が遠くから聞こえてきた。駅に到着した始発電車の乗車扉が開く光景を、自動ドアの写真から着想した。結果は「春日のエンドロールや伊予灘線」と詠んだ高校生に引き分けた。宇多先生は「着想がフレッシュで面白い」と称賛するが、「"ごとく"が気に入らない。断定すべき」と評し、添削例を示した。高野先生も同調しつつ、「柔らかい言葉遣いは女性の特徴。女性の句と考えれば十分」と語ると、宇多先生が即座に否定。男女の考えが交錯し、浜田が「高野のバカですか?」と宇多先生に問いかける事態に発展する。高野先生は「囀を合図に電車が来る発想はとても良い」とさらに一押し。夏井先生は直喩について解説し、「意味はストレートに分かるが、食い足りないと感じる人もいる」と双方の意見に理解を示した。
●[30] @19/05/02◆お題:
大型連休の電車『「とき」発車旅憂わしき花追風』名人2段へ
1ランク昇格添削なし
「花追風(はなおいて)」は「花」に「追い風」を組み合わせた造語。本人は「辞書で見つけた」と意気込み、上越新幹線「とき」に乗る初めての新潟旅行の不安な心情を表現した。下五の是非が査定のポイントとなるが、名人として初昇格。「内容に合った造語センス」と評す先生は、「花追風」が歳時記に載っておらず、造語の季語を作る大した度胸に仰天したと語る。上五で新潟へ向かう列車の場面が想像でき、カッコいい中七の表現で、春の憂いを秘めた気分が出ていると褒めた。下五は美しい造語だが、「追い風」には『源氏物語』の用例で、花の香りをほのかに伝える風の意味もあり、熟考して造語した努力を讃えるしかないと絶賛。花を追いていく旅や、花が日本列島を咲き上る追い風とも読み取れると解説し、頭の「とき」の鳥や色のイメージとも似合ってくると添えた。名人初段としては6人目で初の昇格先行となった。
●[31] @19/08/01◆お題:
猛暑日[35℃の電光掲示板]『竹籔のかわく葉音や極暑来る』名人2段で
現状維持添削後
『極暑来る竹籔乾ききる葉音』
季語は「極暑(ごくしょ)」。兼題写真から発想を飛ばすのに苦心し、京都に吟行したという気合いの一句は、嵯峨野に住む知人の話で、毎年暑さの厳しさが増しているという心境を込めた。中七が査定ポイントとなり、結果に悲鳴を上げる本人。「音のリアリティーが足りない」と評す先生は、目の付け所はさすがで、映像を持たない時候の季語を「竹籔の葉音」で表現する姿勢は名人の挑戦と褒める。ただの暑さでも竹の葉は乾くはずで、"いよいよ極暑が来るぞ"という主役の季語が引き立たないのが問題点と指摘。この句では季語から始めるべきで、上五でカットを切り、竹藪の描写で"複合動詞を"と指南し、泣き顔になる本人。"暑い間乾いていたがもういよいよ"という臨場感と、名詞止めで音が耳に残る効果を生むことで、最初の季語を音で反芻する仕組みを作る添削に、本人は「"乾ききる"がなかなか出ない。あ~っ」と悔しがった。
●[32] @19/09/12◆お題:
夕方の買い物帰り『閉じる門「さよなら」は秋夕焼色』名人2段で
現状維持添削後
『校門の「さよなら」は秋夕焼色』
季語は「秋夕焼」。名人間近の特待生が多く焦っている本人だが、「毎回驚きの顔さえもらえれば」と浜田が切り出すと、例のサスペンス顔の画像が披露された回。小学校の校門が閉まる瞬間という句は、敢えて「閉じる門」と時間経過に工夫を凝らし、奥から児童が急いで校門を出る映像も読み取れるのではないかと語った。東国原名人に「良い句。『さよなら』を色で表現したのはおしゃれ」と褒められ上機嫌になるも、「視聴者はあの顔を見たい」とコメントされ困惑顔になる。査定ポイントは上五となり、例の驚愕顔を披露する本人は、結果にも悲鳴を上げる。「何の門なの?」と評す先生は、中七の展開で"学校の"門の意図は汲めるが、上五は人物の様々な動きが見えるに違いないからと一ひねりし、「刑務所」の門など誤解を受ける表現になったと指摘。思ったことが読み手に伝わるかの保証が工夫により弱くなったと根本的な問題点を挙げ、「校門と書くべき」と意見する浜田に先生は頷き、「素直に書けば良かった」と評して1か所のみ添削。声の人物が限定され、子や先生の「さよなら」の声は秋の夕焼け色だという比喩が綺麗に感じる句になり、「閉じる」は読み手が想像できると解説。"刑務所"説に納得する浜田は「2度とここに来るなよ。シャバに出たら」の誤読例に「ホンマにそうやわ」と激しく同意し、悔しがる本人は「普通、校門でしょ?」と返すことに。
●[33] @19/10/10◆お題:
歩行者信号『横断の人波秋光を放つ』第3回金秋戦決勝4位(次回決勝シード権あり)
添削なし
季語は「秋光(しゅうこう)」。2019年10月22日の祝日に天皇陛下の『即位礼正殿の儀』が行われ、皇居周辺の交差点に発想を飛ばしたと語った一句。先生は前半で交差点であることや人の動きを描いていると褒め、後半は詩のエッセンスを振りかけたと解説。人波に季節の光を当てる発想の句は他でも見られると語るも、比喩の文脈に持っていった点を良く工夫したと称賛する。また、即位の礼をイメージしたため後半が強い言葉になった点を納得したと述べ、句またがりの型でぶつけた力量を確かだと添えた。決勝は下位に沈む傾向があったが、自身の最高順位となる結果に、本人は大変喜んだ。
●[34] @19/11/28◆お題:
旬のスイーツバイキング『流れでるショコラの奥の冴ゆる巴里(パリ)』名人3段へ
1ランク昇格添削なし
厳しい寒さに透き通ったような冷たさを感じる「冴ゆ」が冬の季語。自信があるという一句は、兼題写真からチョコレートが噴水型に流れるショコラフォンデュへと着想。フルーツを串で指してチョコレートをまぶすが、その窓の向こうにパリの冬のような澄明な印象を受けたと語った。「ショコラの奥」から「冴ゆる巴里」への流れの是非という具体的な査定ポイントに思わずサスペンス顔になる本人。「映像の厚みがカッコイイ!」と評す先生は、後半の展開が素敵だと押さえ、前半の表現でショコラフォンデュの機械を思い浮かべると解説。ショコラの色や動きしか映像がないが、「奥の」以降の展開で、冬の冴ゆるパリへと映像が切り替わり、"1つの映像に別のイメージをかぶせて読者の想像を誘導"する効果を生み、大変難しい技術に挑んだと称賛。「ショコラ」「巴里」のイメージから、甘くて苦い大人の世界を表現し「カッコイイわ、大人やわ」と絶賛した。添削してはいけない句というべた褒め評価に終始本人は歓喜を上げた。
●[35] @20/01/03◆お題:
お鍋『祝ひ歌山川響くみかん鍋』第3回冬麗戦決勝9位(最下位・次回シード権なし)添削後
『みかん鍋故郷の山河祝ひ歌』
季語は「蜜柑」。「みかん鍋」は焼き蜜柑を使用した山口県周防大島発祥の鍋料理。最下位という結果に不満足な一句は、正月に「のど自慢」の出場者の祝い歌を歌う声が近所の山・川に響き、食卓にみかん鍋がある何とも言えない句を詠んだと泣きながら語った。村上名人は「最下位の中田さんが可哀想」、梅沢名人は「『みかん鍋』が出てきたのがビックリ。これは伝わらない」と指摘するも、先生は「『みかん鍋』が悪いとは思わない」と真っ向から否定。「みかん鍋」から始めた方が読者に伝わると語る先生は、みかんの産地で豊かな実りがある所だと分かり、「故郷の」を入れて「山河」で字余りを防ぐよう添削。「祝ふ歌」なら故郷を讃える歌の感じが出るが、「祝ひ歌」が通称であるため、わざと三段切れになる形の方が作者の思いに近いと解説。タイトル戦は初の最下位となり、シード権を失うことに。
●[36] @20/01/23◆お題:
冬の新宿駅『誘導鈴風花ひかる改札へ』名人4段へ
1ランク昇格添削なし
季語は、晴れた空を雪が舞い落ちる様子を指す「風花(かざはな)」。「誘導鈴(ゆうどうれい)」(盲導鈴)は目の不自由な人を安全に誘導する音声誘導装置。電車から駅のホームに降り立つと、誘導チャイムによって新宿駅南口の改札へと誘導されるという句。査定ポイントは下五の助詞「へ」と聞かされた本人は、驚愕して急に頭を抱え込む。「動作がリアルに再生されている」と評す先生は、季語の位置を称賛し、上五で音が響く中に「風花」が光るかのようだと読め、下五で駅という場所が判明し、「風花」「誘導鈴」も導くように鳴る・光るという描写を語る。「へ」で、視覚障がい者が白杖をついて歩く人物が見えたと解説し、人物が句に書かれてないが読み手の脳に再生させる効果を生んだ"技あり"の一句と褒めた。横尾名人と同じ4段に追いついた。
●[37] @20/03/12◆お題:
絆創膏『テーピングの足春泥を撥ね上ぐ』第4回春光戦予選Bブロック2位(決勝進出)添削後
『テーピングの足春泥を撥ね上げる』
季語は雪解けの頃のぬかるみを指す「春泥(しゅんでい)」。マラソンランナーが足にテーピングをしながら練習で走る光景を切り取り、春の泥を靴で撥ね上げる力強さを詠んだと語った。横尾名人は「情景や光景が凄く見えてくる句」と褒め、梅沢名人は「実に素晴らしい句」としながら、「考え過ぎた。少し変えただけで1位。そのくらい難しい句」と抽象的に違和感を述べる。浜田にその箇所を指摘されると、「急に言われても」とお馴染みの流れで誤魔化すが、最後に下五を指摘し、先生も褒める。「凄く工夫している」と評す先生は、足元に焦点を絞った思い切りが良く、上五で不安や故障上がりを感じると称賛。全部で17音に収めるため「上ぐ」と文語にした工夫が仇で、現場の勢いが微量削がれたと指摘し、上五字余りの定型に添削。口語「上げる」の方が生々しく、場面がありありと浮かびやすいと解説した。予選からは負けなしの4連続決勝進出を決めた。
●[38] @20/04/09◆お題:
不動産屋さん『若芝に大の字身ひとつの移住』第4回春光戦決勝3位(次回シード権あり)添削なし
季語は「若芝」。過疎の村で家具家電付きで移住希望者に用意された一軒家があり、そこに応募した若者が「長閑な村に来た」と寝転ぶ様子を表現したという句。特待生鈴木は「映像が瞬間的にパっと浮かび、”身ひとつ”で学生なのか、若い人なのか、と想像が広がる。”大の字”に広がる光景も本当に素晴らしいな」とべた褒めし、本人も喜ぶ。先生は、芝の上に大の字になる発想は決して新しい表現ではないが、後半で状況を描き切るのは上手いと称賛。「大の字」は実際の自分の生身の身体だが、「身ひとつ」は身体1つでという状態・状況を表現し、意味がささやかに響き合うと解説し、企んだに違いないと述べる。最後の「若」は大事な押さえで、「枯」なら逃亡者となるが、希望を抱く若者の印象を表現したとし、季語を主役に立て、工夫も成立した句と高評価。タイトル戦は自身最高位の3位となった。
●[39] @20/04/30◆お題:
おうちの冷凍食品(通信添削・おうちで俳句)
『巴里留学母の蕗味噌解凍す』名人4段で
よく頑張ってる!添削なし
季語は「蕗味噌(ふきみそ)」。パリに留学中の学生が、母親から手作りの食べ物が送られてきて冷凍保存をする。蕗味噌を解凍して、母の味を懐かしむ様子だと語った。「巴里と蕗味噌の取り合わせが良い」と評す先生は、非常に手堅い句と評す。地名(固有名詞)に「留学」という状況、「母」という人物に懐かしい思いを醸し出す季語を選んだと一つずつ解説し、非常に落ち着いた手堅い一句と総括した。
●[40] @20/08/06◆お題:
ポイントカード『早桃の香支援の客の食事券』第4回炎帝戦決勝8位(決勝シード権なし)添削後
『デザートは早桃支援の食事券』
季語は「早桃(さもも)」。コロナ禍の自粛期間中に飲食店オーナーが考えたのは、ネットで食事券を先に売ってお店を持たせようというアイデア。自粛期間が明けて食事券を持った常連客が来店し、デザートに桃が載っている光景を詠んだと語った。梅沢名人は「"支援"と"食事券"があれば、"客の"が無駄な言葉」だと指摘し、先生も同調。「支援の食事券」なら客以外の者は持ってこないため、「客の」は不要で、「の香」も無くても香ると赤ペンを入れる。果物をまるまる買ったのではなく、食事券で食べていると分かるような小細工をするべきだと忠告し、上五に「デザートは」と置く。最後の「食事券」が最初のデザートに戻って、美味しく頂いた食事の最後が早桃だったと分かるように添削した。解説中、情緒豊かに様々な表情を見せる点を浜田に突っ込まれた。
●[41] @20/10/15◆お題:
トランプ『虫の闇ジョーカーの影動きをり』名人5段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「虫の闇」。トランプゲームが終わり、部屋の明かりを消すと虫の音が鮮明に聴こえてきたため、ふと何か動いた気配がして、「ひょっとして『ジョーカー』?」って感じの句を作ったと演技派女優の顔を披露しながら語った。査定ポイントは下五「動きをり」の是非。「季語を活かす配慮!」と評す先生は、何気なく書かれたように見えるが、とても丁寧に構成されていると評す。「虫の闇」という暗闇の静けさの中から虫の声が聞こえる季語に続き、「ジョーカー」で今トランプをしているかと思うと「の影」と続ける展開を称賛。先ほどまでトランプをしていたと分かり、「ジョーカー」が心の不安などの比喩的な象徴を思わせると解説。最も悩んだはずの要素が下五の着地となるが、何か動いたような気がすると言い切ることで、比喩的な象徴が読み手の心に動いて入ってくる感触だと語る。「をり」の終わりで、最初の「虫の闇」をジッと目を凝らす働きもあり、再度季語を活かす工夫を名人技だと褒めた。史上6人目の5段に到達した。
●[42] @20/11/05◆お題:
ポンプのノズル『泡ポンプの英知秋天を仰ぐ』第4回金秋戦予選D1位(決勝進出)添削なし
季語は「秋天」。ハンドソープなど石鹸が泡で出てくるボトル「泡ポンプ」の開発者の心情を表現し、製品完成のために智慧を欲しがる祈願の様子を「秋天を仰ぐ」に込めた一句。浜田の呼びかけで我に返った梅沢名人は「思った以上に深い俳句だった。説明ができない」と語り、村上名人は「『泡ポンプ』って便利ですよね~」と適当にコメントする。「泡ポンプ」の表現を初めて知ったと語る先生は、正直言うと「英知」のような抽象名詞を俳句の中に浮き上がらないように入れ込むのは難しいと前置き。開発をする状況、商品の価値、研究した人たちと全部集まって「英知」だと読み取れると解説する。俗な物に「英知」と合わせたため、後半の展開が凄く難しいと意図を探る先生は、それを企んだ後半の大袈裟な表現により、一句全体のバランスをとり、大袈裟な表現「英知」を浮き上がらせないように、しっかり響き合わせたと解説。際どい所をよく潜り抜けて整えたと1位での予選通過を称賛した。
●[43] @20/11/12◆お題:
7時過ぎの時計『婚破れ振子響くや夜半の秋』第4回金秋戦決勝9位(最下位)添削後
『振子音響く婚破れし秋夜』
季語は「夜半の秋」。いつもは時計の振り子の音を気にせずスヤスヤ眠れたが、結婚が破れ(離婚し)たため、振り子の音が部屋に響いているという句。最下位の結果に「どうしましょう?」と泣きっ面な本人。先生は「内容はそんなに嘆くほどのものではない」とフォローするが、時間が長すぎる問題点を挙げる。「婚破れ」で破れるまでの色んな経緯を読み手は思い、「振子響く」でも小さな時間があり、「夜半の秋」でも時間が出ると解説し、さらに「や」も強すぎたと指摘。時間軸を短くするだけだと忠告し、季語「秋夜」を最後に置いた。「秋の夜」がポツンと残り、「しゅうや」の響きが寂しげになる添削後なら上位を狙えた結果に、本人は「ごもっともでございます」と感涙した。
●[44] @21/01/14◆お題:
輪ゴム『ゴムとび競ふ声冬天に満ちる』第4回冬麗戦5位添削後
『冬天に満つゴムとびを競う[ふ]声』
季語は「冬天(とうてん)」。ゴムとびを競い合う子どもたちがワイワイと盛り上がっている少女時代の思い出を詠んだ破調の句と語った。先生は「兼題から昔懐かしい遊びへストレートにきた」と語るも、語順が勿体ないと指摘。「冬の天」の映像から始めた方が結果的に得で、旧仮名遣いに合わせ「冬天に満つ」と文語で一回言い切るべきと指南。何が満ちているんだろう?と読み手に思わせ、最初に戻って「ゴムとびを競ふ声」とし、最後が「声」で終わる添削を行う。声に焦点が当たると、この声が冬天にもう1回響いていく効果を持つと解説し、前回の最下位を脱出した本人は嬉しそうに「うん、確かにそうですね。先生、ありがとうございます」と上品に返した。
●[45] @21/02/18◆お題:
雲丹の軍艦巻き『艶めきて海胆握る指和ぎのごと』第5回春光戦予選B2位
添削後
『和ぎのごと海胆つややかに握る指』
季語は「海胆(うに)」。寿司屋でウニの握りを頼んだ時に、シャリの上にウニを載せた瞬間、板前の握る姿が海の凪(なぎ)のような穏やかな握り方で、そこに色気さえ感じたと語った。梅沢名人は良い句だと褒める。先生は、季語「ウニ」と真っ向勝負する意欲が潔く、その精神を褒めたいと語る。さらに、握る指が凪のようだという発想の独自性も称賛する。少し障る点として「艶めく」「握る」と動詞が2つあるため、バッティングするという問題点を指摘。指の表情を言いたいなら、動詞を消すべきで、比喩からいく語順の方がカッコ良いと指南。「和(な)ぎのごと海胆」の後、「つややかに」の形容動詞に変えて、「握る指」を最後に置いた。握る指がクローズアップされ、凪だけが見えてくる光景で、これなら1位だったと感触を語った。同じく2位で補欠に回った村上名人が小声で「よし、直し入った」と添削中に発言する声を藤本名人が暴露。一発で予選通過とはならなかった。
●[46] @21/03/25◆お題:
じゃんけん『「ちょき」だす子春の光を突き破る』第5回春光戦決勝5位(次回シード権なし)添削後
『チョキで勝つ子は春光を突き破る』
季語は「春光」。じゃんけんを複数人で行い、やっと「ちょき」で勝った子が大喜びでゴールに向かって走っていく様子を詠んだと語った。梅沢名人は重箱の隅をつつく様に「『ちょき』で負けることもある」と指摘。村上名人は「『ちょき』と『突き破る』が近い」と指摘し、本人が反論する。先生は「元気で明るく、オリジナリティーもある」と評すが、梅沢名人の指摘が問題点だと賛同する。「勝つ」という情報がないため、それを入れれば「突き破る」との言葉の勢いが合体すると指南。「『ちょき』で勝つ」から始め、「子は春光を突き破る」と添削した。読み終わると「春光」の響きや季語の音読みにも勢いが出て、気持ちが良いはずと解説。本人も「確かに気持ち良いです」と応えた。
●[47] @21/08/12◆お題:
打ち揚げ花火『まなざしや句読点なき恋花火』名人5段で
現状維持添削後
『まなざしや句読点なき恋、花火』
季語は「花火」。福岡県筑後市(ちっご祭り・恋のくに花火大会)で、プロポーズをして成功するとハートの形の花火を上げる企画がある。そのプロポーズをする人の真っ直ぐな強い思いを上五・中七で表現したと語った。「問題作」と語る東国原名人は、「中七は次から次へと花火が揚がる様子に思う」と指摘。査定ポイントは「句読点なき」の比喩の是非。先生は果敢に挑んでいる句の一つと評す。季語ではない「まなざしや」で詠嘆し、後半のフレーズに季語を入れるバランスが取りにくい型に挑んだ姿勢を称賛。この文脈では「恋花火」自体に句読点がないとなるため、休みなく揚がる花火の様子に読む人が出てくると指摘する。「恋」の方が句読点のない真っ直ぐな思いの意図ならば、この句ならではの禁じ手が使えると仄めかす。「恋花火」の表現が残り5音の苦肉の策だと分析する先生は、「恋」「花火」を一発で切り離すべきだと忠告。その手法を瞬時に思い付いた本人は「鍵括弧」だと即答するも不正解。正解は「句読点なき」になぞらえた読点(、)で、「恋、花火」と先生は添削した。「恋」の下に「、」が入って「花火」が切り離されて上がってくれる効果を生み、添削後なら2ランク昇格できたと述べた。喜怒哀楽マダムらしい表情の変化が健在の本人であった。
●[48] @21/09/09◆お題:
スポーツの秋『しぶき上げ復活の秋ひとりじめ』第5回金秋戦予選A1位(決勝進出)添削なし
季語は「秋」。水泳選手が体を痛めて大会に久しく出なかったが、克服して大会に出て表彰台に乗れたという俳句だと語った。横尾名人は、言葉のそれぞれで状況が分かる良い句だとコメント。先生も「これは良い句だった」と前置きし、「しぶき」で水の映像、「上げ」で動きが出てくる効果を述べる。抽象的な「復活」という単語は俳句で使いこなすのが難しいが、「復活の秋」で水泳選手かと思い、何らかの困難を乗り越えて再び記録を伸ばしたことが想像できると解説する。この展開では最後の着地が難しくなるが、「ひとりじめ」と思い切って言い放った度胸を褒める先生。自分の意図を冷静に考え、挑戦しながら全体のバランスを考えた一句だと分析し、17音で表現することが難しい内容を敢えてやった一種の力技だと総評する。しかし、毎回成功すると思わない方が良く、今回は思い切った技が一本決まったと語った。納得がいかない様子の東国原名人は、「そんな何回も成功しないんですよ。決勝はコケます!」と予言する。本人は仰天し、眼をしょぼしょぼさせてしまった。
●[49] @21/09/30◆お題:
バッテリー切れ間近(携帯電話の電池残量)『秋雷や絶縁破壊長き闇』第5回金秋戦決勝8位(次回シード権なし)添削後
『秋雷や絶縁破壊の闇長し』
季語は「秋雷」。「絶縁破壊」は、絶縁体の機能が失われて電流が流れるようになることを指す専門用語。雷でバッテリーが壊れてしまい、長い闇になったという句で、兼題を真面目に受け止めて考えたと語るも、8位と撃沈した本人は悲鳴を上げる。先生は中七「絶縁破壊」を「何?」と思ったが、調べたらこういう言葉があると知り、長い専門用語を俳句に取り込むのも大したチャレンジだったと述べる。この句は三段切れだが、中七をこれ以上触るのが不安だったのではないかと意図を組む。三段切れを解消するため、「絶縁破壊の」とし、最後は「闇長し」と逆にして切った。本人は高い声で「そうですよね…。ホホホ、本当に。情けない~」とマダム節を見せた。
●[50] @22/01/27◆お題:
肉まん『肉饅どさどさ黄さんの手真つ赤』名人6段へ
1ランク昇格添削なし
「肉饅頭」なら冬の季語。中華の本場で肉饅頭を作るさまで、蒸し上がったものを売り子さんがドンドン袋詰めし、売り子さんの手が真っ赤でやけどしているように感じる光景と語った。査定ポイントは固有名詞「黄(こう)さん」を選んだ是非。「1粒で2度美味しい!」と評す先生は、「肉まん」を季語として載せている歳時記が少ない点に言及する。しかし、現場証明・臨場感が非常にある句で、無季として味わえるほどの作品の価値があると述べる。次に「黄さん」と固有名詞を入れる効果を2点挙げる。①中国の方、中華街ではないかという場所のイメージ。②「黄」と「赤」の視覚的効果で、脳が勝手に色彩をイメージし、明るい中華街の印象の色を思う効果。結果として、固有名詞に「黄さん」を選んだのが良い判断だと称賛した。いよいよ名人6段に達した。
●[51] @22/03/10◆お題:
ライスorパン『花追風見知らぬ町の握りめし』第6回春光戦予選B4位(最下位)添削後
『花追風吹いて三日の握りめし』[季語を主役に]
『花追風梅かこんぶか握りめし』[テーマの2択を主体に]「花追風(はなおいて)」は、花の香りがほのかに伝える風の様子のことで、以前の
[30]で本人が「『とき』発車旅憂わしき花追風」で初めて用い、作者自ら作ったと夏井先生にも認められたオリジナルの季語。花の香りがする追い風の中、初めて行った町を旅しているが、とても美味しそうなおにぎりを買ったという句だと語った。横尾名人は「自分が作った季語を使いたすぎて、他が疎かになってる」と手厳しい。「花追風」は先生も作者が作った季語だと認めていたため、余計にこの句の作者がご本人かそれ以外かと興味津々だった点を述べる先生。新しい季語はどんどん句を作らないと季語だと皆が認めないため、多作が重要だと忠告する。季語と「握りめし」の取り合わせは良いが、中七「見知らぬ町の」が漠然としているのが一番損していると指摘。ここで今回の査定のポイントを「①季語をちゃんと活かしているのか?」「②兼題写真の2択というテーマ性・イメージを押さえているか?」と2点あげ、それぞれに沿う添削を行う。花追風が吹き始めたことを、敢えて「吹いて」と書いて「吹いて三日の」とすれば、"そろそろお花も咲くからおにぎり作って出かけよう"と中七が季語に寄り添うと解説。兼題の2択のテーマ性に寄せるなら「梅かこんぶか」などと握り飯の味を示すべきだと指南。本人は、「ああ~!」と後者の添削に感嘆。最後に甲高い声で「もうホントにそうです。"梅かこんぶ"。ねえ。先生、ホントに勉強します」と反省の弁を述べた。予選決勝形式では、8回目にして初めて予選通過を逃した。
●[52] @22/04/28◆お題:
ゴールデンウィーク『竹割つて垂直線のこどもの日』名人6段で
現状維持添削後
『竹を割る垂直線やこどもの日』
季語は「こどもの日」。竹を割ったかのように、子どもがまっすぐ育ってほしいという意味の句だが、夏井先生のYouTubeチャンネルで促音便(※語中の音が「っ」に変わること)の解説を聞き、それを意識して作ったと語った。梅沢名人は淡々と素晴らしいと述べる。査定ポイントは「割つて~(中七)の」という叙述の是非。「勢いが足りない!」と評す先生は、竹を割った時の真っ直ぐな感じを硬い響きの「垂直線」で表現し、季語「こどもの日」の真っ直ぐ育つイメージと重ねたと分析。この2つのイメージが丁度良い関係で取り合わせられ、骨格の部分がとても良いと称賛する。YouTubeで促音便を学習した点を褒めるが、この句の場合は違うと忠告し、「竹を割る垂直線や」と添削。特に「や」の勢いが大事で、竹を垂直線から切り出していく作業にある「真っ直ぐ育ってほしい」思いが、この「や」によって季語「こどもの日」と合わさると解説し、最後に「ホントに勿体ない」と繰り返した。本人は残念そうに伴淳三郎のネタである「アジャパー」と述べ、時代の古さを浜田に突っ込まれた。
●[53] @22/07/07◆お題:
七夕『またござれ七夕さんの人の和よ』名人6段で
現状維持添削後
『またござれ七夕さんのこの町へ』
『またござれ七夕さんのみちのくへ』
季語は「七夕」。「またござれ」は仙台の方言で、"また来てください"の意味。「いつござれ、またござれ」という歌があるが、お店にお馴染みさんが毎年来客すると口コミで少しずつ店の名を広げてくれる、その「人の和」を詠んだと語った。「声まで聞こえてくる」と褒める森口名人。査定ポイントは下五「人の和よ」という着地の是非。「余計な一言」と評す先生は、方言の呼びかけから始まるため、空気感が出来る点を褒める。勿体ないのが「和」で、読み手が読後に懐かしい人の和を思わせる楽しみを奪っていると指摘する。例えば下五を「この町へ」とすれば、"今この町へ"となり、仙台七夕まつりを意図する場合「みちのくへ」とするなど、添削を2例挙げる。最後を「へ」とすることで余韻が広がり、「人の和を味わえるのか」と読者が感じやすいと指南。読者への楽しみを取っておくのが"作品への配慮"であると忠告した。悔しながらも「あ~、そうですよね~」と納得する本人だった。
●[54] @22/07/21◆お題:
メール『産声送信ドバイは大夕焼』第6回炎帝戦優勝(58名中)
添削なし
季語は「夕焼」。転勤先のドバイで誕生した第一子の産声を日本にいる両親に届けようとする若夫婦の動作と、大夕焼が包み込む光景を取り合わせた一句。「産声」という単語が浮かんで楽しくなったという本人。「よしいけるぞ!」と都市を考えて、やっぱりドバイだと思い、「ドバイ」と「大夕焼」が「産声」に丁度良いと思ったと語った。低順位のショックと先生から「普通」の句と言われていた梅沢名人は優勝句を褒めずに、これまた「普通」とコメントしてヒール役に徹す。東国原名人は「『ドバイ』と『産声』に参った」と称賛した。先生は、写真を送信するのではなく、生まれた瞬間の産声を送る点に新鮮さとリアリティがあり、産声に写真、動画と立て続けに送信することを匂わせることで、3通の未読を示す兼題写真にしっかり寄せたことを称賛。「ドバイ」で赴任先の出産だと伝わり、日本にいる両親の所に送るに違いないと全て手に取るように分かると述べる。季語「大夕焼」も、地名「ドバイ」の広がりも含め、生まれた安堵・喜びを示唆出来ており、一句の奥行きに気持ちの良い光景が広がっていくと評した。「苦労しただけのことがここにある」と苦節5年半を経て優勝した本人をねぎらった。本人は、数日後の収録で「あの時何が起きているか理解できなかった」と感情的になりながらも、優勝した瞬間を振り返った。
●[55] @22/08/25◆お題:
駅の売店『「箸鉄」を選ぶ子らの目鰯雲』名人6段で
現状維持添削後
『鰯雲はるか「箸鉄」選ぶ子ら』
『鰯雲はろばろ「箸鉄」選ぶ子ら』
季語は「鰯雲」。新幹線のぞみ号の運行30周年を記念し、のぞみ号がプリントされたお箸セットが駅で売られていると述べる本人。小田原駅のグッズ売り場に、子どもたちが(鰯雲のように)並んで真剣に買う物を選んでいた光景を句にしたと語った。ジュニア名人は、普段は気にも留めない点に着目する句材探しの姿勢がタイトル戦優勝に繋がったと褒める。査定ポイントは中七「選ぶ子らの目」という表現の是非。「季語が添え物になっている」と評す先生は、中七「の目」とわざわざ書いたことで「鰯雲」が弱まったと指摘。鰯雲を描写するだけで愕然と季語の力が変わると述べ、「目」を消して語順も季語から書くべきだと忠告する。鰯雲の描写の仕方として、「はるか」や「はろばろ」(※"はるばる"の意味)なら、鰯雲独特の季語が広がる感じが描写でき、「はるか」「はろばろ」のニュアンスを持ったまま「箸鉄選ぶ子ら」と展開して、「は」の音で韻を刻むように添削した。季語を描写してリズムをちょっとだけ軽やかにすると、子どもたちの生き生きした感じも"音の力"で伝わると述べた。悔しい本人は、鰯雲が添え物ではないと弁解を始めるが、「あ~、そうですね~」と自問自答で納得して場が丸く収まった。
●[56] @22/09/08◆お題:
行楽の秋[鎌倉大仏]『数取器始動出水(いずみ)に鶴来る』第6回 金秋戦予選B3位(予選敗退)添削後
『鶴来る出水よカウンター始動』
季語は「鶴来る」。鎌倉の鶴岡八幡宮から鶴を発想し、鶴の飛来地である鹿児島県出水市を句に入れ込んだ。鹿児島県出水市に毎年鶴が1万5千羽以上飛来するが、「あ~今年も鶴が来ました」とカウントする喜びに溢れている句だと語った。梅沢名人は「"出水"を"でみず"の季語に思う」、村上名人は「頭の言葉が強い」とそれぞれ指摘。先生は、「数取器始動」の後に漢字で「出水」が出てくると、夏の季語"でみず"と思い、数えるものがあるのかと読者を不安にさせる点を指摘。季語が最後に出ることで「いずみ」の地名に辿り着くのに数秒掛かるのが俳句として大変損だと述べた。語順の問題で、季語から始めて「出水」とくれば誤読を避けられると指南し、「よ」の詠嘆の後、漢字表記が続くため「カウンター」と軽やかにして添削した。「始動」に喜びがたまってもう一度鶴を見上げる視線に誘導できる効果を生む添削に。先生から「勿体なかった」と評されて予選敗退となったが、結果を前向きに捉えていた。
●[57] @22/09/22◆お題:
[霞ヶ浦の鉄道]北浦橋梁を走る列車(茨城県)『星合や長き鉄橋ひた走る』ふるさと戦①(茨城)4位★添削後
『ひた走る長き鉄橋星祭』
季語「星合」は七夕伝説を意味し、牽牛と織姫が七夕に会うという季語。低順位に思わず失敗したことを叫ぶ本人。「キュンキュンする」と語る森口名人は「ひた走る」に年に一回しか会えない心境が出ていると褒める。先生は、七夕の夜に会いたい人に会いに行くが、長き鉄橋をひた走る私がここにいるとの味わいがあり、「ひた」の良さを認める。ただ、"写真俳句"というジャンルの作品となると別問題で、後半が写真の情報とダブる点を指摘。浜田がボソッとこぼした「語順」に問題があり、写真の中の情報が句にもある場合は、写真の中の情報を先に述べ、後から写真にない情報を添えるべきだと忠告する。「ひた走る」から「長き鉄橋」とし、「星合」の傍題で5音の「星祭」という季語を下五に置いた。写真をなぞった最後に「これは夜なんだ」と夜に転換し、会いたい人に会いに行く七夕の夜だという季語の情報で、写真俳句を成立させるのも技だと解説した。
●[58] @22/09/22◆お題:
磐梯吾妻レークライン(福島県)『秋燕レークラインの影ゆらら』ふるさと戦④(福島)2位★添削後
『湖へ秋の燕の影走る』
季語は「秋燕」。秋燕が南下する時期、レークラインは木々の影が落ちており、羽休めに燕がとまった枝が揺れて、その影がゆららという感じだと語った。梅沢名人は良い句だが、「影ゆらら」が敗因だと指摘。先生は"写真俳句"として考えた時、「秋燕」を配する判断の良さを褒め、「レークライン」も湖に続くことを想像させる点で良いと述べる。1位にするための方法として、「レークライン」を「湖へ」と直接書き、「秋の燕の影」と続け、「ゆらら」を「走る」と変えて、燕の影の描写とした。写真の中にそのような秋燕がいるに違いなく、動かない写真の中に、動く燕の映像を添えることができれば、写真俳句としての味わい方がまた一段深まると解説した。本人は添削に息がつまるほど納得した。
●[59] @22/10/27◆お題:
セルフのうどん店『更待やぶっかけすすり出港す』名人7段へ
1ランク昇格添削なし
季語「更待(ふけまち)」は陰暦9月20日夜10時頃に出る半分ほど欠けた月。夜10時過ぎにぶっかけうどんを急いですすり、船に乗って「出港するぞ」とのイメージだと述べ、この句が浮かぶまで毎食うどんを食べていたとも語った。梅沢名人は季語とともに句を褒める。査定ポイントは下五「出港す」という着地の是非。「さりげない時間経過の表現」と評す先生は、季語「更待」は夜が更けて出る半ば欠けている月だと前置きし、「食べる」とせず「すする」とした表現を褒める。最後「出港す」で港の光景が浮かび、食べている人物が船員・漁師・旅客などを想像させ、「すする」から「出港」までにさりげなく時間経過が入った点も称賛。"出港する頃に更待の月が出ているのだなぁ"と思わせ、「これが名人の句」と太鼓判を押した。
●[60] @23/01/12◆お題:
ラッキー『吉兆の輝き一村をめざす』第6回冬麗戦11位(15名中)添削後
『吉兆の輝き産地の村めざす』
季語「吉兆」は商売繫盛を祈願する"福笹"につける縁起物の飾り。それが輝いたことを見て、商談に向かうことを詠んだ一句。
先生は、「一村」が旅行や故郷だと思うが、産地・商売の相手の村の意図であれば「産地の村めざす」などの言い方にすべきだと指摘。「十分にすぐに良くなるタイプの句」と評した。あと一歩の所で屈辱のランク外を味わった。
●[61] @23/01/26◆お題:
春の京都 三条大橋(京都府)『ひそと待つ花街のひと花衣』ふるさと戦⑥(京都)4位★
添削後
『ひそと待つ日々花街の花衣』
季語は「花衣」。三条大橋は待ち合わせが多く、新しくあつらえた着物を着た花街の美女が自分自身の気配を消して思い人を待っているという句だと語った。先生は、「花衣」という季語を探し出した点を褒め、花街の人の花衣で「ひそと待つ」がドラマチックでな句だとも評す。しかし、「花衣」という季語に着物を着ている人の情報が内包するため、「ひと」が不要だと指摘。後半は「花街の花衣」とし、ずっと気配を消して待ち続ける意図を、時間情報「日々」として添削した。また、写真俳句としての評価において、俳句のドラマ性が強いと写真より俳句が少し目立ってしまう問題を指摘。写真が添えられた挿絵として脇役に沈んでしまうため、ドラマ性に走らない方が上手くいくと忠告した。本人は「前回語順に気をつけろと。それをかなり気にしてドラマチックにしたんですが、それでもダメ。3回目は1位になります」とリベンジを誓った。
●[62] @23/02/09◆お題:
冷蔵庫のメモ『春立つや桃色のメモ退院日』名人7段で
現状維持添削後
『桃色のメモよ春立つ退院日』
季語は「春立つ」。娘が出産を終えて待ちに待った退院日が、カレンダー等に貼る桃色のメモに書いてあるという句だと語った。ジュニア名人から三段切れ、梅沢名人から語順の悪さを指摘される。査定ポイントは上五「春立つや」と詠嘆した効果の是非。「リズムが残念」と評す先生は、「春立つ」という季語の選択と、中七の具体性で映像を確保する判断が良い点を褒める。勿体ない点はまさに2人の永世名人の指摘だと同意し、梅沢名人が答えた「桃色」から始まる語順に添削。「メモよ」と詠嘆し、2カットの光景に直した。本人は嬉しそうに感謝の言葉を述べて反省した。
●[63] @23/03/16◆お題:
引越し[トラックの荷台]『春泥を引越し女房おお跨ぎ』第7回春光戦予選B4位(予選敗退)添削後
『引越し女房春泥をおお跨ぎ』
『引越し女房いま春泥をおお跨ぎ』
『引越し女房ほら春泥をおお跨ぎ』
季語は「春泥」。「引っ越し女房」は、嫁入りの荷物と同時に来る嫁のこと。荷物を持ち寄って所帯を持つ奥さん「引越し女房」が逞しくぬかるみをまたいで引っ越しをする様子を詠ったと語った。藤本名人は「ユーモラスだが、季語と"跨ぐ"を近づけるべき」、梅沢名人は「"引越し女房"から始めるべき」と語順を両者指摘する。先生は、句の内容が庶民的で可笑しみもあり、他の人とは全く違う目の付け所が良いと褒める。勿体ないのは、「春泥」と「おお跨ぎ」を離して真ん中に人物を入れたことで、両永世名人の指摘に同意。「引越し女房春泥をおお跨ぎ」でも良いが、「引越し女房」を上五に字余りで置き、「いま」や「ほら」を加える案をあげ、"あれが女房だよ"と指さすような感じになると解説。4位という結果に本人は「あまりにもショックすぎて、今回は言葉が出ない」と落胆した。
●[64] @23/05/11◆お題:
浜田雅功『還暦の朝大幟投げ上げよ』浜田杯12位(20名中)添削後
『還暦の朝を掲げん大幟』
季語は「幟」。おめでたい場の贈り物、幟に発想を飛ばした一句。浜田の還暦の誕生日にファンや後輩の人が幟に浜田の名前を書いて大空に掲げる光景を詠んだ一句。先生は、ストレートに「還暦」を入れた浜田へのお祝い句だと評し、「朝」の時間帯の選択も褒める。下五「投げ上げよ」が幟に対する表現として良いのか迷う点と、還暦の人なら浜田以外でも当てはまるという2つの問題点を指摘する。「投げ上げよ」の誇張表現を「掲げん」と穏やかにし、最後に「大幟」とすれば調べが落ち着くと解説。立川志らくの落語の時に揚げても良いと話をすり替えてしまう先生に、「決して志らくさんを意識したつもりはないんです」と本人は反省の弁を述べた。
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