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20200326 プレバト!!俳句紹介【桜と校舎】

2020年3月26日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は夏井先生講評の要約です。

挑戦者→加藤諒[初],小林幸子[初],黒谷友香[3],徳勝龍誠[初],カジサック[梶原雄太][初],横尾渉[37],梅沢富美男[92] ※数字は挑戦回数

●お題:桜と校舎

※番号クリックでリンク内移動します。
1才能アリ1位73点加藤諒
桜満ちしんと突っ立つ新校舎さくらみちしんとつったつしんこうしゃ
2才能アリ2位70点小林幸子
新潟の楽屋の窓の夕桜にいがたのがくやのまどのゆうざくら
3凡人3位60点黒谷友香
校長と顔間近なり卒業証書こうちょうとかおまぢかなりそつぎょうしょうしょ
4凡人4位45点徳勝龍誠
伊勢巡業立ち合う髷に初桜いせじゅんぎょうたちあうまげにはつざくら
5才能ナシ5位37点カジサック
[梶原雄太]
(キングコング)
子の背中はねる足どり桜道このせなかはねるあしどりさくらみち
6名人4段で
現状維持
横尾渉
(Kis-My-Ft2)
風光る硬式グラブ縛る紐かぜひかるこうしきぐらぶしばるひも
7名人10段★4で
現状維持
梅沢富美男
給食費払えぬあの日の養花天きゅうしょくひはらえぬあのひのようかてん
→編集後記

◆発表待ちシートにて

***

●それでは順位別に見ていきます

◆1位 才能アリ73点 加藤諒
桜満ち しんと突っ立つ 新校舎
とても良い句。中七までで桜の大木かと思わせ、新校舎の姿が満ちた桜の向こうに浮かび上がる。このカメラワークが大変上手。中七の擬人化は下手にやると陳腐になるが、映像が描けているため成功している。「しんと」で静けさも広がる。やがて子ども達が来て声も満ちるに違いないと思うと「桜」に想いが戻り、季語を主役にした。勉強の成果だけでなく、感覚が大変良い。自信を持って良い。

【本人談】
自身が通った高校は旧校舎と新校舎があった。入学式の日に桜が一杯咲いている中、新校舎がしんと塔のように立っている様子。

夏井先生 
とても良い句。
桜満ちしんと突っ立つ」でまさか桜の大木を詠んだのかと思うと、新校舎の姿が満ちた桜の向こうに浮かび上がる。このカメラワークがとても上手。
また、中七は擬人化。擬人化は下手にやると陳腐で見てられないものになる。これはとても良い。
映像が描けていれば、擬人化は成功する
さらに、「しんと」で静けさも広がる。やがて子ども達が来て、声も満ちるに違いないと思うと「桜」に想いが戻る季語を主役にした
これは、勉強の成果だけでなく、作者の感覚がとても良い。自信を持った方が良い。直しはいらない。

本人 嬉しい。
浜田 今日は才能アリのお2人は直しはいらないと。
加藤・小林 嬉しいね~。

添削なし

◆2位 才能アリ70点 小林幸子
新潟の 楽屋の窓の 夕桜
地名・場所・時間帯が明確で、3つの「の」で映像を具体的に絞られた。「新潟」の地名の効果が大きく、雪国の遅めの桜を愛でる心を感じる。「楽屋」の言葉の経済効率が良く、舞台人の準備の場面と伝わる。下五でゆっくり暮れる桜の光が表れる。意図が全て映像化された。

【本人談】
コンサートで全国色々と回るが、新潟の県民会館は物凄く桜が綺麗。(楽屋の窓からの)桜を見て「よし、頑張ろう」と思って夜のステージに向かったその時の記憶。

横尾名人 「新潟」という情報が分かりやすくて良かったのと、「楽屋の窓」でどこにいるか分かりますし、「夕桜」で時間帯も分かるので、全てが凄いな、上手いなと思います。
梅沢名人 私も県民会館、こないだ行ってきましたけどね、昼夜満杯です。
一同 (笑)
浜田 いやいや、そんなことはどうでもええ。
梅沢名人 札止めでした。この「の」「の」「の」で映像がハッキリしているんですよ。「新潟の」で、新潟が分かりますよね。「楽屋の窓の」で、グーっと映像が楽屋の窓へくるんです。「夕桜」。綺麗な桜が咲いてたんだな。素晴らしい!

夏井先生 
名人2人が丁寧に解説した通り。横尾さんも名人になってきたなと聞いて嬉しかった。
梅沢名人 なっちゃん、俺も言ったんだよ。
横尾名人 ありがとうございます。
夏井先生 
おっちゃんの言ったのは大事な所。3つの「の」で映像を絞っていく。これも良い
全部読んだとき、「新潟」の地名の効果が大きいと思った。雪国の少し遅めの桜を愛でる心を感じる
楽屋」という言葉の経済効率が良く、舞台に立つ人が準備をする場所。
」の一字が良い。光のグラデーション、ゆっくり暮れていく桜の光が表れる
作者の意図が全て映像として入っている

本人 こんなに優しくて良いんでしょうか、私?
浜田 いやいや、先生良いものはこういう感じですよ。
夏井先生 (直しは)いりません。
本人 えぇ~!?ホントに?やった!わー!

[ここがポイント]
「の」で映像を限定する
※俳句で大事なのは映像を具体的に表現すること。具体的な場所に「の」を重ねることで、読み手の視点が限定され、映像がハッキリするのです。

添削なし

◆3位 凡人60点 黒谷友香
校長と 顔間近なり 卒業証書
良い気付き。卒業の句は多いが、校長先生の顔をまじまじと見る場面を掬い取るのはアンテナの感度が高い。語順が悪く、中七で不穏な空気が漂うため、梅沢の「セクハラかも?」発言のように世間の半数は誤読する。物から始め、校長の顔をしげしげ見る語順なら才能アリ。

【本人談】
卒業式は泣いたり感動したりで忙しい。名前を呼ばれて(証書を)受け取る時、いつも朝礼で遠めに見ていた校長が「こんな顔してたっけ?」と気付かされた。

梅沢名人 私はね、どっちかと言うと本当に下ネタばっかり言ってる男だから。そういう風に感じちゃうんですけど。「校長と顔間近なり」って言うと校長の近くにいて、校長がセクハラしてるんじゃないかって。
本人 そっちですか?違いますよ!

夏井先生 
おっちゃんの言う通り。ここら辺まではちゃんと言える、いっつも。
この句は良い気付き。卒業式の句は多く詠まれるが、校長先生の顔をまじまじと見る場面を掬い取るのは作者のアンテナの感度がとても高い。
本人 やった~!
夏井先生 
語順が悪く、「校長」から始めるから、おっちゃんみたいに思うのが絶対いる
「校長と顔が間近」で不穏な空気が漂う。世間に半数くらいは(そう誤読する人が)いる。
「卒業」から始めればよい。「卒業」と分かれば、「校長」「顔間近」が違和感ない。
上五は「卒業証書」、この後「授与」と場面を書く。「校長顔間近」で良い。
梅沢名人 いいなぁ~。
夏井先生 
最後に校長の顔がぬ~っとここら辺にあり、顔をしげしげ見ていると。
この語順なら間違いなく才能アリ

本人 あ~、惜しかった。最後の接近するのが目に浮かびますね。直された句の方が。

添削後
卒業証書 校長 顔間近

◆4位 凡人45点 徳勝龍誠
伊勢巡業 立ち合う髷に 初桜
伊勢巡業は上五字余り。中七「に」と季語で、髷に初桜のかんざしが挿してあるのでは?と思う梅沢の指摘は正しい。花びらが付いているなら簡単に直せる。語順を変え、季語を桜の「花びら」へ。迫力が出て、相手を睨みつけると花びらでほっこりとする伊勢巡業。着眼点は俳人として良い。

【本人談】
(相撲の)春巡業の最初は伊勢巡業と決まっている。その頃桜が咲いていて、屋外で巡業を行う。ちょんまげに油を付けているため、桜の花びらが付くと取れない。立ち合いの気合いが入る場面で、(相手力士の)髷につく花びらを見てほっこりした。

梅沢名人 いや、私は良い句だと思うけどね。きっと45点になったのは中七だと思うけどな。「立ち合う髷に初桜」とくると、(桜の)かんざしでも髷に挿しているんじゃないかと勘違いする。

夏井先生 
偉いですよ、おっちゃん。そこに気が付かないといけない。今日は偉い。
伊勢巡業を知らなかったので調べた。まさに外で花びらも飛んでくる場所。
伊勢巡業」は上五字余り。
中七「」ときて、髷「に」何かが挿してあると思わせてしまうのが、季語「初桜(今年初めて咲く桜)」の表現。梅沢名人の指摘通り。
花びらが付いていることを言いたいなら簡単に直せる。
「立ち合いの」から始め、「に」を活かして語順を変える
季語を桜の1枚の「花びら」(「桜」のことを指す春の季語)へ。最後に「伊勢巡業」。
梅沢名人 あ~良い!
夏井先生 
「立ち合い」の迫力から始まり、相手の髷を睨みつけると何と花びら。ほっこりとする、そんな伊勢巡業だと。
そういう所に目がいく。俳人として良い目をお持ちだと思う。

本人 こうしておけば良かったと思います。

添削後
立ち合 髷に 伊勢巡業

◆最下位 才能ナシ37点 カジサック[梶原雄太](キングコング)
子の背中 はねる足どり 桜道
この手の句は、何か書いた気になったタイプの句で本人だけが満足している。30点台は具体的な情報が何も書けない人々。「子」は何歳なのか。本人が喋っているのに自覚症状が無いのが才能ナシの証拠。「入園」なら幼稚園と分かる。「子の背中」「道」と書いてる場合ではない。季語から始め「入園の日の」で子と伝える。「跳ねる」と漢字で躍動感を。発想が普通で、直しても凡人。出直して。

【本人談】
一番下の子(※)、次女が今年入園する。その子へ贈る俳句を作った。悪くはないと思う。
※カジサックは2020年2月に第5子となる三女が生まれているため、収録日時点と思われる。

夏井先生 
この手の句は、一応何か書けてるように本人だけが思う何か書いた気になるタイプの句。
30点台の才能ナシの評価は具体的なことが何も書けない人々。
「子」は何歳くらいか、具体的な情報が入ってない。せめて何歳か分かるくらいは書くべき。
本人が良い言葉を言った。
本人 はい?自覚症状が無いです
夏井先生 
それが30点台の才能ナシの証拠
入園」なら幼稚園と思う。なぜそれに気付かない「子の背中」と言ってる場合ではない
季語「桜」から始める。「道」なんて書いてる場合ではない
子どもなら「さく」と平仮名にする。ここで描写。「子の背中」は3回消す
「入園のの」なら子と書かなくても伝わる。
ねる」は漢字で躍動感を。「どり」なんていらない
「桜さく入園の日の跳ねる足」。ここでパシッと切る。子の足が映像として見えてくる
これで凡人

一同 (笑)
本人 凡人、まだ? まだ、凡人?
夏井先生 はい。
本人 先生がどう頑張っても凡人止まりということですか?
夏井先生 
この内容は、内容そのもの(発想)が凡人。直しても凡人。出直してきなさい

一同 (笑)
浜田 カジ、どうしますか?出直してきますか、もうヤメますか?
本人 ちょっと待ってください。こんなに言われる○$♪×△…。
浜田 はっ?
一同 (笑)
小林 お疲れ様。

添削後
 の ねる足

★特待生昇格試験★

浜田 横尾はもう、冬麗戦優勝してますから。あそこに写真が入っておりますんで。
横尾名人 気持ち良いですね~。ずっと、現状維持が続いてたんですけど、優勝したんで。この流れに乗って、上がっていきたいと思います。

◆『風光る 硬式グラブ 縛る紐 横尾渉(Kis-My-Ft2)
季語「風光る」が良く、春の日差しが増えるハツラツした感じと中七の物だけで勝負する選択が良い。「縛る」の動詞が勿体ない。荷造りの紐で複数のグラブをまとめて縛っているかと誤読される。浜田が言った「締め」にすれば、革の感触も出てくる。何とこの子は勿体ないことをするのか。

【本人談】
(野球部の)新入生が新しいグラブに変える。型を作るためにボールを入れて紐で縛る。次の練習までに気合いを入れている感じを出した。

梅沢名人 素晴らしい! さすがはプレバトジュニア。
浜田 それ、アンタが勝手に言ってるだけやから
一同 (笑)
梅沢名人 これは良いんじゃないですか? いっちゃうんじゃない?
浜田 「いっちゃう」。なんちゅう言葉の使い方や。

★評価ポイント
「縛る紐」の是非

■査定結果
名人4段で現状維持

理由:一単語だけ違う!

梅沢名人 惜しい。
本人 そうですか~。

夏井先生 
季語「風光る」が良い。春の日差しが増えるハツラツした感じと「硬式グラブ」という物だけで勝負する選択が良い
風光る】春の季語
春の日差しが強まり風が光るように感じられること

「紐」は良いが、「縛る」の動詞が勿体ない。パッと読むと、荷造りの紐で複数の硬式グラブをまとめて縛って何かしているのかと誤読される
浜田 締める」。
夏井先生 
誰か言ったけど、これ締めるはず。
締め」にすれば、締めて鳴るような革の感触も出てくる
何とこの子は勿体ないことをするのか。

浜田 これは名人、梅沢さん。分からなかったんですか、最初見た時。
カジサック 確かに。
梅沢名人 今自分のことで一杯です。
一同 (笑)
梅沢名人 永世名人になるか、ならないか。
浜田 そらそう、そらそう。
梅沢名人 私、そのことだけなんです。

添削後
風光る 硬式グラブ る紐

★永世名人への道★

梅沢名人 (上機嫌に)お待ちどう様でございました。今、また視聴率がガンガン上がってる
横尾名人 上がってます、跳ね上がってます。
梅沢名人 (平場へ)このタイミングで出た人はホントに皆さん幸せですよ。今、絶好調ですから。
小林 分かった、分かった。
梅沢名人 プレバト!!の梅沢富美男と言ったら、プレバト!!なくして…。
浜田 (遮って)さあ、それでは見ていきましょう。
一同 (笑)

◆『給食費 払えぬあの日の 養花天 梅沢富美男
意図は伝わる。「給食費」から始まる語順で小さなドラマを一句に入れるのは名人ならでは。前半で切実な状況をコンパクトに表現した。憂鬱な気持ちが季語と付かず離れずの関係にある良い句。「の」を入れての中八は季語へ映像を繋げる意図は読み取れる。全体を見ると「あの日」で安易に満たすのが気に入らず、本人が使い回している表現。切実な切迫感をどうにかしないのか、考えるべき。「かの日」「あの日」はもう使うな。

【本人談】
「養花天」は桜の咲く時期の天気が暗い暗めの曇り空。私の実体験の句。幼少時は貧乏人で、母も父も役者だった。テレビの台頭で両親の仕事が減ると、自分の給食費が払えなくなった。先生が「池田(本名)」と声を掛けてくれ、12時5分前に校舎を出てじっと(給食を)我慢をして(空を見て)いた。親が役者をやっているから、子どもが苦労するのかと。今や梅沢富美男は!
養花天(ようかてん)】春の季語
桜の時期の曇り空

小林 そうです、立派!
本人 今や、梅沢(腕時計を出して)…。
浜田 もうええわ!
一同 (笑)

★評価ポイント
「あの日の」の是非

本人 入れたかったの。なっちゃん中八(中七が8音)なんです。「払えぬあの日」で止めても良いんです。「あの日の」と入れたかったんです、これが名人の句です。永世名…。
浜田 うるさいて~、もう。
一同 (笑)

■査定結果
名人10段★4で現状維持

理由:永世名人を目指す句なのに安易

小林 あははっ。
浜田 てめぇ、置きに行きやがったな、みたいな。

夏井先生 
やろうとした意図は伝わる
「給食費」から始まる語順と、小さなドラマを一句に入れるのは名人ならでは。
本人 実体験だよ。
夏井先生 分かったって。俳句の説明してんだって。
→急にネクタイを緩めだす本人
浜田 そういうことです。
夏井先生 
給食費払えぬ」で切実な状況がコンパクトに表現できている
憂鬱な気持ちが季語「養花天」と付かず離れずの関係にある
浜田 いや~、良い句じゃないですか、先生
夏井先生 
良い句。「払えぬあの日」で切っても良いが、「の」を入れて中八とし、季語へと映像を真っ直ぐ繋げたかった意図がある。
本人 そうよ。
夏井先生 
それぐらいは読み取れる。
全体を見ると「あの日」で安易に満たしているのがどうも気に入らない
以前、「長閑なりかの日の屋上遊園地」という句を作っていた。
「かの日」「あの日」も本人が使い回している感がある
なぜ、きちんと書かず、切実な切迫感をどうにかしないのか、自分で考えるべき
「かの日」「あの日」ももう使いなさんな

本人 小学生も観てるんだよ。
一同 (笑)
夏井先生 小学生も「使うまい」と心に決めたと思う。
浜田 あ~あ、言われた。

添削なし

浜田 お2人次回また頑張ってください。
横尾名人 はい。
浜田 (梅沢名人に)何その急にネクタイ緩めだして
梅沢名人 だって、現状維持ですもん。
浜田 アハハハッ。
梅沢名人 不良に…不良になるからな!
一同 (笑)

編集後記
今回は「桜と校舎」が兼題。卒業シーズンを過ぎ、入学を控える春休みの時期ですが、誰もが体験しているため、句は作りやすいお題です。今年は桜が咲くのは早いですが、中々大変なご時世でございます。
平場は黒谷さん以外の4名が俳句初挑戦。最近は、俳句がコーナーの後半の回も目立つようになってきました。

1位は武井壮さん司会「NHK俳句」初心者向けの「俳句さく咲く!」で3年間出演し、同俳句大会でも入賞していた加藤さん。前評判は十分で、平場で唯一「桜」「校舎」を両方とも入れ込みました。さり気ない描写の句は村上名人の「駐輪シール」の句を思わせる表現で、ありのままに書く姿勢が良いですね。「新校舎」で当然旧校舎も思わせ、中七の擬人化もさり気ないです。4月から武井さんはNHK俳句の別の週の司会者となり、本人はレギュラーを降りますので、今後はプレバト!!にシフトする可能性も。果たして、特待生になれるでしょうか。

2位は初登場の小林さん。場所を示す名詞と助詞「の」を繋ぐだけの一句でしたが、地名と「楽屋」の効果が大きい一句。個人的には、「夕」の効果が良く、窓の夕焼けに重なって映る桜の美しくも寂しい雰囲気を感じ取りました。横尾名人の指摘力も伸びてきているのが、良かったところです。

3位は才能アリを1度獲得していた黒谷さん。その句は「彷徨える赤鬼仰ぐ冬の星」でしたが、今回は卒業証書を渡される場面で、「桜」要素を抜いて作った一句です。確かに生徒が校長先生に近づく機会が少なく、目の付け所は面白いです。ただ、中七で「なり」と断定する必要性はありませんでした。この方は人物への洞察力がある句を詠みますが、語順を直されがちですので、もう少し推敲が欲しい所です。

4位は初登場の徳勝龍関。語ったエピソードは力士らしいですが、句に上手く表現されていません。しかも咲いたばかりの「初桜」では、花びらが散る場面を想像しにくく、季語も惜しいのが残念な所。しかし、着眼点は素晴らしい句です。春場所は残念でしたが、最近は力士の出演を番組的に推しています。また、挑戦して平場優勝を遂げて欲しいですね。

最下位はYouTuberのカジサックさん。辛うじて意味は伝わりますが、三段切れで誰の動作かが伝わりにくい句です。上五で親目線かと思いきや、中七は子と親のどちらの動作か不明で、下五もぶしつけ感があります。先生に酷評されて添削されましたが、ご愛嬌ということで。

特待生昇格試験は、1年前の4月25日以来の師弟コンビ。

横尾名人は得意の野球から。兼題から新入生へと発想を展開し、グラブの型作りを詠み込みました。以前も「スパイクやグローブ置いて夏の海」「父語る敬遠五つ夏の雲」と詠んでいますが、横尾さんの野球の句は実体験ならではの背伸びしない姿勢が良いですね。「縛る」「締める」問題は難しく、どちらが良いのか当方は判断ができませんが、野球経験者でない読み手にも誤解されない表現への気遣いが必要ということでしょうか。

さて、梅沢御大は永世名人への挑戦。前半で事情が説明され、後半で憂鬱な空を見上げる情景でしたが、今回もデジャブ感満載の一句。季語は「手放せぬティッシュの甘く養花天」と一緒。敢えての中七字余りは「秋夕焼機内に遺影の席ひとつ」「春近し鳩居堂二階句帳買ふ」があり、先生からも指摘された「あの日」は「長閑なりかの日の屋上遊園地」と同じ。以前も書きましたが、これも「か(彼)の日」の方が今は事情が違うという対照的な感じがより出るのではないかと思いました。梅沢名人は最近破調も目立ちますが、今回で92句目という最多挑戦だけに、過去の句の印象と比較されやすいのが厳しく、王手の状況は続くものの、今までと180度異なる挑戦でもしないと星5つの到達は難しいかもしれません。

さて、今回の当方の句はこちら。
散るさくら電子化前のチョーク痕(あと)

昨今の学校はかつての黒板が姿を消しつつあり、電子黒板(タッチパネル・プロジェクタ投影)の物が増えてきています。春休み中に教室改装される黒板のチョーク痕に焦点を絞り、季語でその切なさを表現しました。単純に季語を「卒業」にすれば、卒業生が書いたかもしれない痕と共に黒板が卒業する印象も感じ取れたのですが、兼題に合わせて変えてしまったのが当方の失敗であり、査定提出後にやらかしに気付く御大の気持ちが良く分かりました(笑)。

今回はフォロワーの着流きるお氏に査定を依頼しました。この方は、兼題「たんぽぽ畑」で、当方の凡句「花弁なきチューリップへと綿毛着く」に才能ナシ査定を下し、「これでもか!」と酷評して頂いたほどの辛口査定で知られる若手俳人です。
査定は凡人でした(ひとまず安心)が、語順を添削していただきました。やはり季語への気遣いがまだまだ足りない感じです。画像2枚目はきるおさんの総評です。今回も1枚目の画像を作成いただいたシュルクさん、査定と添削を頂いた着流きるおさん、ありがとうございました。
電子化前の句
きるお査定(電子化前)
また、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりによる影響が甚大になってきており、執筆時点(3/28)で世界の総感染者は60万人を超え、国内では東京都内で4日連続の40人超となり、外出自粛要請が発令されております。当方の周囲でもイベントの中止が相次いでおり、特に自営業・パートなどの方々に大きな影響が出ているように感じます。普段の一日一日の有難みを感じながら、早く日常が戻って欲しいという願いで一杯です。大変な時にもかかわらず、ブログを閲覧いただきありがとうございます

★ツイッターのご案内★
プロキオン / 着流きるおさん(今回査定して頂いた方) / シュルクさん(画像作成者)

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コメント

俳句の画像掲載に関して

皆様、コメントありがとうございます。

当方の俳句の画像掲載に関してですが、今後も査定人と画像製作者が異なる今回の形式で、当人様の許諾を得た上で掲載したいと考えております。
ただし、今後は各々の負担を鑑みまして、毎週の掲載はしない予定です。予めご了承下さい。

No title

「縛る」「締める」問題について
辞書(三省堂 大辞林 第三版)で意味を確認しました。
 ・縛る :ひもや縄などを巻きつけて結び、離れたり、動いたりしないようにする。
 ・締める:体や物の周囲にひも状・帯状のものを巻きつける。
「縛る」の意味の ”離れたり・・・しないようにする。” の部分が複数の物をまとめるという印象を持たせるのだと思います。実際、「新聞(雑誌)を縛る」というと「複数の新聞(雑誌)を紐でまとめる」というように考えるので、同様に「硬式グラブ縛る」は複数のグラブをまとめるというように考えるのだと思います。

「彼の日(あの日、かの日)」について
人間生きていれば必ず「あの日」というのが存在しますが、その「あの日」というのは千差万別なので具体的な情報は持っておらず、雰囲気だけという感じです。「あの日の養花天」として多少情報を限定していますが、過去の養花天ということなので、季語の力が弱くなっているのは問題点としてあると思います。

"散るさくら電子化前のチョーク痕"
個人的にはチョークが嫌いなので電子黒板になれば喜んだはずです。因って ”散るさくら” とは感情が正反対になります。

画像については権利関係に問題が無いのであれば、掲載は自由だと思っております。

編集お疲れ様です。

前回、写真の件お伝えしたのが伝わってないのかな...と不安になりましたが、今回から写真作成の方と句の添削の方が分かれたのですね。
中身を見て、今回の方の添削と解説には納得しました。
まだ1つなので一概に良いとは言い切れませんが、この方なら安心できそうです。
前の方には失礼かも知れませんが、相撲、絆創膏と2つ続けて私としては頂けないのが来ていたので不安ではありましたが、少し払拭できたと思います。



そしてプレバトですが、今回特に平場の加藤さん小林さんは上手かったですね。
NHK出身には武井壮さんも居ますが、彼の安定性とは違う、難しいながらもしっかり作る加藤さんに期待です。
小林さんの俳句も、番組を見ているのかな?と思える「の」の使い方でしたね。


コロナウイルスが流行っていますが気をつけていきましょうね。
特に次のプレバトは待ちに待った春光戦ですしね。

長文失礼しました。

Re: タイトルなし

Ammieさま

コメントありがとうございます。
小林幸子さんは新潟市のご出身だったんですね。
地方性のある句は特待生の柴田さんも北陸の句を詠みますので、感性が似ているのかもしれませんね。

初めてコメントします。
小林さんの句ですが、彼女は新潟県のご出身ですので、その辺の思い入れも含まれてたんじゃないかな、と思います。

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プロフィール

プロキオン

Author:プロキオン
俳号「白プロキオン」。全てのブログ記事を編集しています。
毎度閲覧いただきありがとうございます。時間があるときにでもどうぞ。
全俳句を掲載してほしいなどのリクエストはコメントしていただけると助かります。

ツイッターでは番組の放送予告などをツイートしています。以下リンクからどうぞ。
プロキオン
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番組公式ツイッター
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着流きるお氏(プレバト兼題で俳句を独自査定する若手俳人・ブログ編者とは無関係です)
***
夏井いつき氏(プレバト!!出演の俳人)

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