「プレバト!!」で披露された落語家 六代目 三遊亭円楽の全俳句一覧です。
名人初段 三遊亭円楽(さんゆうていえんらく) 合計22句
🔶三遊亭円楽さんは2022年9月30日、肺がんのためお亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。 |
成績(2021年9月9日時点)<通常挑戦者時代>
才能アリ1回
<特待生時代>
1ランク昇格5回、
現状維持5回、
1ランク降格0回
第1回炎帝戦7位
第2回俳桜戦4位、第2回金秋戦予選7位
第3回春光戦予選6位、第3回金秋戦予選7位
第4回春光戦予選B6位、第4回炎帝戦予選D1位・決勝3位、
第4回金秋戦決勝7位
第5回春光戦予選D2位、(第5回金秋戦19位)、
第5回金秋戦予選B3位査定とは別に2018年度月間MVH受賞(10月)
●昇格率 50.0%(5/10)→50音別一覧ページへ →ページ下へジャンプ→
人物紹介◎全俳句目録 (番号クリックでリンク内移動します)
1 | 才能アリ | み仏の指やわらかく春の風 |
2 | 現状維持 | 紫陽花の毬一つ切り軒の下 |
3 | 1ランク昇格 | 町会長犬を預かる盆踊り |
4 | 現状維持 | 漣の海を鏡や鰯雲 |
5 | 現状維持 | マスクして目は微笑みの二人づれ |
6 | 1ランク昇格 | チーママの裾はしょりたる梅雨の夜 |
7 | 炎帝①7位 | 夕凪の帆に寝葉巻の老漁師 |
8 | 1ランク昇格 | 塩鮭の喋るが如き売り子かな |
9 | 俳桜②4位 | 銭湯で花見の日取り決まりけり |
10 | 現状維持 | 前カゴでチワワ吠え背なで子の泣く暑さかな |
11 | 金秋②予選7位 | 老いてなほ色変えぬ松芸の道 |
12 | 1ランク昇格 | 段雷に靴紐きつく秋の朝 |
13 | 現状維持 | 結露拭くコタツ列車の窓の笑み |
14 | 春光③予選6位 | これ頂戴鰆の値札舐める猫 |
15 | 金秋③予選7位 | 秋天に産廃の冷蔵庫口を開け |
16 | 春光④予選B6位 | 明くる朝接木に孫の絆創膏 |
17 | 炎帝④予選D1位 | 氷壁崩落白玉を掘り出す |
18 | 炎帝④決勝3位 | サングラス外して探すカードかな |
19 | 金秋④決勝7位 | 弁慶が時計している村芝居 |
20 | 春光⑤予選D2位 | 山里や三橋美智也の春の歌 |
21 | 1ランク昇格 | 夕立や尻っぱしょりを犬が追う |
| 炎帝⑤19位 ※順位のみ発表 | 白シャツを干すハンガーの骨も痩せ |
22 | 金秋⑤予選B3位 | 病院の脂の抜けた蒸し秋刀魚 |
▼人物紹介人気演芸番組「笑点」では腹黒キャラを活かしたユーモラスな回答者で有名だが、「プレバト!!」では2013年の黎明期の吟行でも出演した数少ない出演者。スタジオの初出演は2016年である。その初回の査定で、夏井先生に確かな技術力が認められて通算8人目の特待生になる(先生からのお達しがなく特待生に上がったのは円楽が最後である)が、その後は結果に結びつかずに苦労したようで、最初の昇格で涙を流した。
句の特徴は俗な場面の切り取り方や人物描写の表現力。昇格を決めた2級までの句はいずれも人物描写の句であり、簡潔で言葉の選び方が上手い印象が強いが、破調にも挑戦するなど軽妙な切り口。落語で培われた表現力や博識さを夏井先生は高く評価している。
出演したタイトル戦では夏井先生に毎回お土産としてお茶菓子を贈るようで、番組でエピソードが紹介されると賄賂であるといじられていた。
そんな中、第2回金秋戦では桂歌丸師匠の追悼句を詠み、順位はブービーにとどまるも夏井先生の本気の添削でスタジオは拍手が起きた。第3回春光戦では6位・金秋戦では7位に沈み、タイトル戦では予選通過が果たせておらず、賄賂を諦めた第4回春光戦でも6位と厳しい結果に。しかし、7度目のタイトル戦となる炎帝戦で落語家の粋を見事に表現した句と評され、初の決勝進出を果たした。
また、ハイペースで出演していた同じ落語家の特待生・立川志らくをライバル視しており、「落語家枠は一人で良い」と発言していた。
本業が忙しいのか出演は控えめであったが、特待生となって131週かけて遂に1級に到達し、その披露句は月間最優秀句となった。
そして、落語家らしい古風な光景を描いた粋な句で、遂に11人目の遅咲きの名人へ昇格。
その後のタイトル戦は、賄賂を諦めて2回目のタイトル戦となる第4回・炎帝戦で本領発揮。5度目の予選参加で遂に決勝へ進出し、決勝でも3位と結果を残した。続く金秋戦では7位に終わるも、俳諧味のある個性的俳句が反響を呼んでいる。
近年は肺癌や大腸癌など病に苦しまれることが多く、句柄にも病状を思わせるものが目立っていた。
2022年1月、脳梗塞のため入院。既往症の治療とリハビリのため、復帰に時間が掛かると思われたが5月に退院。7月、門下の伊集院光が出演した際に「『早く番組に出たい』とウズウズしている」とも紹介されていた。
2022年8月に本業の高座復帰を果たしていたが、肺炎の病状が悪化して入院。2022年9月末日、肺癌のため72歳で逝去した。
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訃報後の出演者の反応は大きい。夏井先生は、自身のブログに「円楽さんの訃報」と題した記事を掲出。「たまらない思いで、女性セブンの連載『パパイアから人生』に追悼文を書かせていただきました。『円楽さんのお団子』という題名で」と記載し、今後出版される週刊誌の連載に追悼の思いを綴ったことを明かしている。また、同じ落語家の立川志らくも自身のYouTubeにて師匠の想いを振り返る動画を投稿。以前に笑点メンバーと乗り合わせた新幹線で、自身はメンバーでもないのに「アンパン」を奢ってもらった話や「志らく、お前は俳句も落語も破調だな」と暗に俳句の実力を認めてくれたエピソードを話している。
2022年10月6日の本放送で、円楽師匠の俳句の軌跡を緊急で特集した。
○吟行SPで詠んだ句(判明分)本句 | 星 |
花は八重団子葉[羽]二重庭の猫 | |
世間背に火の酒を飲むカウンター | ★★ |
梅ケ枝に似たる鳥居を腰ひくく | ★★★ |
※夏井先生が★の数で評価(★★★:最優秀句 ★★:秀句 ★:佳作 ★なし:未発表)
●[1] @16/04/14◆お題:つつじと鎌倉大仏
『み仏の指やわらかく春の風』才能アリ1位72点
添削後
『み仏の指やわらかし春の風』
[ここから特待生として査定]●[2] @16/06/16◆お題:江ノ電とあじさい
『紫陽花の毬一つ切り軒の下』5級で
現状維持添削後
『毬一つ剪る紫陽花の軒下に』●[3] @16/08/11◆お題:盆踊り
『町会長犬を預かる盆踊り』4級へ
1ランク昇格添削なし
●[4] @16/09/01◆お題:秋の空(特待生のみの昇級昇段試験)
『漣(さざなみ)の海を鏡や鰯雲』4級で
現状維持添削後
『海原は鏡鰯雲のさざめく』●[5] @16/12/15◆お題:丸の内のイルミネーション
『マスクして目は微笑みの二人づれ』4級で
現状維持添削後
『マスクの目ほほえみ合える二人かな』●[6] @17/06/15◆お題:雨の銀座
『チーママの裾はしょりたる梅雨の夜』」3級へ
1ランク昇格添削なし
●[7] @17/06/29◆お題:海
『夕凪の帆に寝葉巻の老漁師』第1回 炎帝戦7位
添削後
『夕凪の帆に寝て老漁夫の葉巻』●[8] @17/12/21◆お題:年末のアメ横
『塩鮭の喋るが如き売り子かな』2級へ
1ランク昇格添削なし
●[9] @18/04/12◆お題:
桜と富士山『銭湯で花見の日取り決まりけり』第2回 俳桜戦4位
添削後
『銭湯で決まる花見の日取りかな』●[10] @18/05/17◆お題:
公園の自転車『前カゴでチワワ吠え背なで子の泣く暑さかな』2級で
現状維持添削後
『前カゴでチワワ背で子の泣く暑さ』上五を10音と大幅な字余りにした挑戦的な一句だが、定型に添削された。
●[11] @18/09/27◆お題:
紅葉の絶景『老いてなほ色変えぬ松芸の道』第2回 金秋戦予選7位
添削後
『色変えぬ松高座に遺す扇子一本(かぜいっぽん)』
季語は「色変えぬ松」。2018年7月に逝去した桂歌丸師匠の百箇日を詠った追悼句だったが、人物の対象を明確にすべきと熱のこもった添削を受ける。
●[12] @18/10/18◆お題:
運動会『段雷に靴紐きつく秋の朝』1級へ
1ランク昇格添削なし
2018年10月月間MVH受賞句
季語は「秋の朝」。「段雷」は運動会開始の合図として打ち上げられる号砲。「~によって結ぶ」の文言の省略を助詞「に」託した使い方が絶賛され、遂に名人に王手をかけた。
●[13] @18/12/20◆お題:
こたつとみかん『結露拭くコタツ列車の窓の笑み』1級で
現状維持添削後
『復興の町こたつ列車の結露拭く』
『駅の小旗こたつ列車の結露拭く』
季語は「炬燵(こたつ)」。三陸鉄道の北リアス線を走る冬のこたつ列車に発想を飛ばし、こたつに入りながら車窓の結露を拭きとると、震災から復興した町並みの景色で笑みがこぼれるという情景を詠み、こたつ列車が再び走ったという地元民の安堵する意味も込めたと語った句。「笑み」の「着地が安易」としたが、それ以上に想いを詰め込みすぎたと評され、語順を含めて添削された。
●[14] @19/04/04◆お題:
春の鮮魚店『これ頂戴鰆の値札舐める猫』第3回 春光戦予選6位添削後
『振り向けば鰆の値札舐める猫』
『上目遣いに鰆の値札舐める猫』
『主人見て鰆の値札舐める猫』
季語は「鰆(さわら)」。「猫」と「魚屋」の取り合わせはベタなのでわざとやったと語り、猫が客になりきって値札を舐め、魚を欲しがる気持ちを描写した。藤本名人は「サザエさん。愉快だな~俳句」と雰囲気を発言。「魚をくわえるドラ猫は当たり前。この猫は鮮魚店で飼われている。魚を舐めると怒られるのを猫は知っている」と本人は補足するが、「"これ頂戴"がちょっと」と気になる中田名人。先生は「作者の狙いが川柳的な意味で面白がらせる」句だと評し、俳句に引き戻す方法として、後半の映像を生かし、上五の猫の気持ちを描写の言葉に直すと味わいが変わると解説し、人物や猫の表情が見える添削例を2例示す。本人も3例目を挙げて先生の烙印をもらい、どの大きさで映像化をするかが重要だと添えられた。本人は贈答品の団子の感想を問うと、先生は手を叩いて応答し、感謝の言葉を綴った。
●[15] @19/10/10◆お題:
冷蔵庫『秋天に産廃の冷蔵庫口を開け』第3回 金秋戦予選7位添削後
『秋天に口開け産廃冷蔵庫』
主の季語は「秋天」で「冷蔵庫」と季重なり。冷蔵庫の行く末を詠んだ一句は、産業廃棄物として佇む冷蔵庫のドアの開く様子が、口を開けて秋の空を飲み込もうとするさまに見え、擬人化した冷蔵庫の寂しさを下五で表現したと語った。不意打ちに指名された村上名人は、リラックスして収録に臨む態度を梅沢名人から叱責されるが「下五の擬人化で意図が伝わるか」と語る。横から口を挟んだ梅沢名人は「語順が悪い」と指摘し、先生は御大に軍配を上げる。先生は今年の俳句甲子園でも「冷蔵庫」が兼題にあり、案の定"もう使われていない冷蔵庫"を詠んだ句があったと語り、独自性を探したが、逆に類想感も出てきたのが勿体ないと指摘。しかし、"捨てられた"「冷蔵庫」のため、「秋天」を主たる季語として季重なりが成功した点は褒める。「秋天」に向かって「口を開け」るという語順にすべきと指摘し、空から地上にカメラを振り下ろすような映像を描き、最後の「冷蔵庫」から再度「秋天」へ振り上げる効果を生む添削を行った。復帰戦として挑むも結果を出せなかった。
●[16] @20/03/12◆お題:
絆創膏『明くる朝接木に孫の絆創膏』第4回 春光戦予選Bブロック6位(予選敗退)添削後
『接木にはアンパンマンの絆創膏』
『接木にはウルトラマンの絆創膏』
『接木には月光仮面の絆創膏』
季語「接木(つぎき)」は芽が出た木を切って同種の幹をつなぎ合わせて繁殖させること。人生も子へ孫への接木ではないかという発想から、接木が終わってどんな花が咲くかと思いにふけ、ひょいと別の鉢を見ると、孫がイチゴやキャラクターの柄の可愛らしい絆創膏で接木しており、春の朝のほのぼのとした風景を切り取ったと語った。梅沢名人の「何か1つ足りない」という抽象的な指摘に「絶対フワッとさせるねぇ」と浜田が苛立つ。東国原名人は「『明くる朝』が引っかかる。『翌朝』と言う必要があったのか、『春の朝』でも全然いいのでは」と例示をきっちり行い御大をかばう。先生は、子が絆創膏を貼る句は山のようにあるが、接木に貼る行為が良いと発想を褒め、季語に優しさ・成長・再生のイメージがあると語る。しかし、17音に要素を盛り込み過ぎたのが問題で、絆創膏と接木のアップで十分だと指摘し、作者が語った絆創膏の柄で子の存在と思わせる描写をする添削例を3例示し、本人も納得。今回は賄賂を止めるも決勝進出とはならなかった。
●[17] @20/07/30◆お題:
アイスクリーム売り場『氷壁崩落白玉を掘り出す』第4回 炎帝戦予選D1位(決勝進出)添削なし
「白玉」は夏の季語。宇治金時のかき氷の思い出を詠んだ一句。白玉を食べたいので氷がバラバラと崩れる様子を大袈裟に「氷壁崩落」と表現し、いつの間にか白玉を掘り出していた様子を描写。落語のオチの落差を表現したと語り、予選落ちの春風亭昇吉を説教する。梅沢名人は「粋な句。師匠でしか詠めない」と褒め、中田名人も同調。先生は「非常に楽しい句」と評し、上五はアイガー北壁や南極の氷山を匂わし、「白」で氷山崩落のイメージを脳で思うため、一瞬「白玉」だと思いにくく、考える間合いが非常に面白いと語る。頭が大袈裟なため、後半も敢えて大袈裟にしないと言葉の質量のバランスが取れないと解説し、「白」の一字の効果を見事に使って飄々とした味わいを出したと称賛した。作者が元々持っている素質がやっとこの句で出たと初の決勝進出を祝福した。
●[18] @20/08/06◆お題:
ポイントカード『サングラス外して探すカードかな』第4回 炎帝戦決勝3位(シード権獲得)添削なし
季語は「サングラス」。日常のワンシーンを切り取った実体験の一句。老眼のため明るい場所でないと探すことが出来ず、レジの店員に「ちょっと待って」と言いながら、カードを探す日常を素直に詠み、ごく平凡に見える句を作ったと語った。先生は、難解な言葉を使わず、あっさりと現場を見事に的確に書いた句だと評す。「サングラス」は本来、外が眩しいからかける物だが、「外して」と展開し季語の本質を逆から表現したと解説。何を「探す」かと思うと、最後に「カード」が出てくる展開。○○カードと名詞止めの手もあるが、「かな」の詠嘆が飄々とした感じで効いており、これで良いと解説した。自身最高位3位で初のシード権を獲得した。
●[19] @20/11/12◆お題:
7時過ぎの時計『弁慶が時計している村芝居』第4回 金秋戦決勝7位(次回シード権なし)添削後
『弁慶は時計したまま村芝居』
季語は「村芝居」。撮影現場で高橋英樹さんが「よーい!本番!スタート!」と言った時に、スリッパを履いたまま「許さん!」と出てきて、撮影NGになった。そんなドジが東映では多くて、それをフッと思い出したと語る本人。芝居で弁慶が見得を切り、六方を踏んで「トントントントン」と見得切った途端に、腕時計をしていたため「時計屋!」と掛け声がかかるほのぼのとした光景を詠んだと語った。志らく名人は「先輩に対して申し訳ないが、中七が散文的」と指摘するが、「お前の落語が散文的だ」と反論し、両者ケンカに発展。先生は「非常に俳諧味のある場面を切り取った句」と評し、円楽さんらしい持ち味で、「弁慶」の素材から着地する語順も良いと語る。「している」が勿体なく、"弁慶が時計をしている"という叙述では、弁慶が脚本・演出としての台本だと読まれる可能性が残り、弁慶がうっかり腕時計をしていたと分かるダメ押しが必要だと指摘。「が」も勿体なく、弁慶のみを指差す印象の「は」に添削し、中七は「したまま」とすれば、誤読は一切ないと解説した。最後に梅沢名人が「この句は好きですよ。ちょうど私この後名古屋に行く。お芝居が決まった。御園座(みそのざ)で弁慶やるんです」とちゃっかり番宣をすることに。
●[20] @21/02/25◆お題:
きのこの山とたけのこの里『山里や三橋美智也の春の歌』第5回 春光戦予選D2位(予選敗退)添削なし
季語は「春」。写真のお菓子からスナックのカールを連想し、三橋美智也が歌っていたCM曲に発想を飛ばした一句。「春」が歌詞の最初にあり、甘い歌声が山里を思い出して甘さが広がる様子。我々の世代はそれしか浮かばず、ストレートにほんのりと詠んだと語った。梅沢名人もご機嫌に歌を歌うが、2位の理由が今の世代には伝わらない点ではないかと指摘する。先生は、難しい技を取り入れ、季語ではない名詞「や」+固有名詞+季語のフレーズという型を解説。固有名詞は勝負をかけるしかなく、知っている人には情報が伝わるが、知らない人には何にも情報が伝わらないというリスクがある点を語る。「春」という季語が主役に立ち、「や」と最後の名詞止めは型としてキッチリ押さえたと褒める。下手なことをしないことで、見事に成功した感じだと綴った。本人は、「『山』『や』『也』で"や"の韻を踏んでいる。だから入りやすい」と補足すると、先生は笑い出し、「あそこまで自画自賛するかと思って」とコメント。添削なしの2位となったが、「三橋美智也の固有名詞に頼り過ぎた」という理由で予選敗退となった。
●[21] @21/06/10◆お題:
雨宿り『夕立や尻っぱしょりを犬が追う』名人初段へ
1ランク昇格添削なし
季語は「夕立」。落語家らしく、江戸時代へタイムスリップしたという一句。江戸の風景で、雨が降ってきた中を皆が走ってる絵があり、夕立の中を走る尻っぱしょり(尻端折:走り易くするため、着物等の裾を帯に挟んでまくること)を怪しいと追いかけている犬がいるイメージで詠んだと語った。査定ポイントは「や」「を」「が」の助詞の選択の是非。「肩の力が抜けている!」と評す先生は、非常に軽やかで、肩に力の入らないスッキリとした一句だと褒め称える。「や」で季語を詠嘆し、映像として強め、カットを切る働きもあり、「尻っぱしょり」で人物だとほぼ分かる展開も良いと語る。「を」は尻っぱしょりをした人を追っている対象を明確にし、「犬が追う」と動きで終わる展開のため、跳ねる泥や降る雨など、動詞のおかげでもう1度夕立の激しさに読み手の意識はくると解説し、語順も褒める。季語をしっかりと描こうとする意識を持っていると総括した。実に2年半ぶりとなる通常査定だったが、落語の弟子である伊集院光を前に念願の名人に昇格した。
●[22] @21/09/09◆お題:
食欲の秋『病院の脂の抜けた蒸し秋刀魚』第5回 金秋戦予選B3位(予選敗退)
添削後
『病院や脂の抜けた蒸し秋刀魚』
季語は「秋刀魚(さんま)」。入院の経験を活かした発想の一句。焼けば旨い秋刀魚は蒸すと脂が抜けてパサパサで、入院中に食欲もないという心境と、日常の自然体とを秋刀魚に掛けてみたと語った。東国原名人は「"食べ物は美味しそうに書く"のが定石。ネガティブな言葉が並ぶため、秋刀魚に対する描写が欲しい」とコメント。先生は、この指摘を定石としては正しいと同意する。頭が「病院」のため、入院中の秋刀魚を映像で出し、逆に美味しい秋刀魚を想像させる企みが裏の意図にあると受け取ったと分析する。上五を「の」とせずに「や」と詠嘆するように添削。「何という病院だ、やっぱり病院だ」という詠嘆をすると、「病院でなければあの焼いた秋刀魚が食えるのになあ」という思いが「や」で引っかかると解説し、1音の大事な押さえだと述べた。
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