20200213 プレバト!!俳句紹介【観覧車】
- 2020/02/13
- 21:00
2020年2月13日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
今回から速報版は以下の要素を変更します。ご承知おきください。
・自解(要約)を加えます。→詳細版では【本人談】
◎夏井先生講評(要約)は50字制限を撤廃します。
★特待生一斉査定スペシャル(第5回)
挑戦者→馬場典子[10],パックン[6],岩永徹也[16],松岡充[16],ミッツ・マングローブ[27],村上健志[44],梅沢富美男[90] ※数字は挑戦回数
●お題:観覧車
※晴天の青空をバックに観覧車のゴンドラが複数映るカットの写真
※番号クリックでリンク内移動します。
→編集後記
[トーク1]
浜田 年も変わりました。
梅沢名人 そうですね。年の初めに家族と旅行で伊勢に行ってまいりまして。
浜田 あ、そうですか。
梅沢名人 私ほどのスターになれば、色んな人が集まってきましてね。その中でも一番多かったのが、「プレバト!! 頑張ってください。梅沢さんが優勝しないと僕ら観てる方はつまらないんです」。
浜田 ほんまにそんな事言いました~!?
梅沢名人 私は嘘は言いませんよ。皆さんが手を握りながら言うんです。
***
◆それでは紹介順に見ていきます
◆『緑立つ 曼荼羅のごと 観覧車』 馬場典子
【本人談】
観覧車は不思議な乗り物で、気分が落ち込んだ時に乗って1周する間に「また頑張ろう」という気持ちになる。その気持ちの中のプチ転生の感じが曼荼羅(まんだら)の見た目と世界観に似ている。
梅沢名人 素晴らしい。
本人 嬉しい。
梅沢名人 「曼荼羅」をここへ持ってきたのが素晴らしい!
★評価ポイント
「曼荼羅のごと」という比喩の是非
■査定結果
5級へ1ランク降格
理由:未発表(季語が比喩に負けている)
◎季語が比喩に負けている。季語を引き立てる描写をすべき。遠景の「観覧車」に、近景の松の新芽が見えるよう映像化。
本人 えぇ~!!
松岡 えっ?
岩永 いきなり?
パックン 梅沢さんがあんな事言った(のに)!?
→「しまった」という顔つきの梅沢名人
本人 めっちゃ褒めてくれた。
夏井先生
季語(緑立つ)が比喩(曼荼羅のごと)に負けている。
俳句は五七五という定型と季語、「有季定型」が俳句の大きな柱である。
読んだときに、季語が主役に立っているかが大事な所。
季語を映像として描写するだけのこと。
「観覧車」から始めるべき。「観覧車は曼荼羅」で「ごと」がなくても比喩だと分かる。“観覧車が曼荼羅のようである”。
「緑立つ」が主役になるように、最後に描写を入れる。「観覧車」が遠景で、季語の松の新芽が近い所で見えるように。
「緑立つ空よ」で良い。
観覧車は言われてみれば曼荼羅のようだ。手前の方に焦点が合い、ツンツンと緑の新芽が立っている。その空が広がる。
添削後なら1ランク昇格。
一同 あぁ~。
浜田 馬場ちゃん、次回頑張っていただきましょう。
[ここがポイント]
季語を主役に
※曼荼羅の印象が強かった馬場の句だが、語順を変え「緑立つ」を描写することでその印象は変化。季語を主役に立てると、17音はより鮮やかに季節感のあるものになります。
添削後
『観覧車は曼荼羅 緑立つ空よ』
[トーク2]
パックン 今まで負けなし(昇格のみ)。俳句はね、研究できるものですよ、勉強。僕の能力は並大抵のものじゃない!
あまりあのね、あまり知られていないけど…。
梅沢名人 (呼びかけて)パックン、パックン。
パックン 何だ?
梅沢名人 学歴は俳句に関係ない。
パックン 学歴言ってないですよ。
梅沢名人 お前、ハーバード(大学卒業)だろ。
パックン いやいや、違いますよ。
梅沢名人 俺は中学しか出てないんだ。
一同 (笑)
パックン 何中学校?
梅沢名人 第四中学校!
パックン 第四中か~、つらいわあ。
浜田 もうええ、もうええ。四でも三でもええ。
***
◆『廃墟に 移動観覧車 風光る』 パックン
【本人談】
アメリカの田舎の子は観覧車と聞くと「移動遊園地」をまず思い浮かべる。最近工場がよく閉鎖されて、閉鎖された工場の敷地に観覧車が設置される。
梅沢名人 破調で俳句を詠むなんてのは15年早い。
一同 (笑)
岩永 …15年。
梅沢名人 五七五を大事にしなかったら、俳句は上手になりませんよ。こういうのは五七五でやるんだよ!
浜田 どうやったらなるんですか?
梅沢名人 これはケツからいけばいいんですよ。「風光る廃墟に移動観覧車」。
浜田 なるほど。
梅沢名人 これ五七五だよ。
★評価ポイント
「廃墟」と「風光る」の関係の是非
梅沢名人 ほら見ろ。落ちろ!お前みたいなの。
本人 いや、梅沢さんもさっきから当たってませんけどね。
■査定結果
4級で現状維持
理由:語順がもったいない
◎季語が最後に付け足されて脇役になったのが損。語順を変えて定型に。季語の「風」「光」のイメージを後半に重ねれば色と動きが出る。
浜田 これ梅沢さん凄いですね(→査定評を告げる)
パックン マジっすか。
梅沢名人 ね、俺の言ってる通りだよ。
夏井先生 今回はおっちゃんが偉い。おっちゃんの言う通り。素晴らしい。第四中学校の勝利だと思う。
梅沢名人 嬉しい!
夏井先生
「移動観覧車」までで映像が先にできる。後から風を吹かす。
季語「風光る」は風そのものが見えるというより、何かを動かしたり光ったりして感じる。
季語が最後に付け足されると、前半のフレーズの印象が強くなる。
肝心の主役となる季語が、最後に付け足しで置かれている感触がある。
一番良い答えは、おっちゃんの言った通りの語順。「風光る廃墟に移動観覧車」。
梅沢名人 ほら、ほら。
夏井先生
「風光る」は春の季語。その風光りだした廃墟に、待ちに待った移動観覧車が来たぞと後半に展開すれば色・動きが出て季語が再度生き生きと明るく動き出す。
これは順番を変えるだけで1ランク昇格だった。
浜田 うわ~、勿体ない。というか、そんなに嬉しい?
梅沢名人 嬉しい!
村上名人 昇格したみたいな。
梅沢名人 夏井先生、知ってます? 今日(メガネの)フレーム変えてみたの。
浜田 知らんがな!
一同 (笑)
→首をNoと横に振る夏井先生
添削後
『風光る 廃墟に移動観覧車』
◆『花冷えや 解体前の 観覧車』 岩永徹也
【本人談】
小さい頃から通った遊園地が閉園することになり、よく乗っていた観覧車もあるが解体することが決まり、その時の寂しい気持ちを「花冷え」という季語で表現した。
村上名人 (ややはにかみながらゆっくりと)良さそう…。
浜田 えっ?
一同 (笑)
浜田 「良さそう」って何やねん。
村上名人 これといって大きな間違いがあるとは絶対思えない。
浜田 あ、そう。
梅沢名人 これは置きに来ましたね。
★評価ポイント
季語「花冷え」を選んだ是非
玉巻アナ 浜田さん、夏井先生の結果このようになっています。
浜田 よいしょ~!
■査定結果
2級へ1ランク昇格
理由:季語が効果的
◎季語とワンフレーズの基本の型を守った。効果的な季語を選んだ。桜の美しさと解体前の明暗の対比も表現。「冷え」で鉄骨の様子も感じ取れる。
本人 やった~!
夏井先生
中七・下五のフレーズで映像を作り、季語を上五で取り合わせる。
(梅沢名人の指摘した)置きに行ったというより、基本の型を守ったと褒めるべき。
しっかりと映像が出来ているため、どんな季語を取り合わせて、かつ季語を主役にできるかどうかの問題。
「花冷え」は良い。桜が咲き満ちた頃に急に冷え込む時がある。
「花冷え」の桜の美しさと「解体前の観覧車」の壊される観覧車の対比が出てくる。
さらに「冷え」で誰も乗らなくなった観覧車の鉄骨の奥まで冷えていく感触も伝わる。
かなり効果的な季語を選んだ。直しはいらない。
本人 ありがとうございます。
添削なし
◆『山笑う 赤ちゃん象に 哺乳瓶』 松岡充
【本人談】
春の胎動や生命の息吹を感じる春の季語「山笑う」を用い、兼題写真の観覧車から、観覧車があるサファリパークの景色を思い出し、発想を飛ばしてみた。
村上名人 良さそう…。
浜田 いやいやいや、何やねん。何なん。
一同 (笑)
村上名人 これ、普段と違って、特待生ばかりになると流石は流石なんですよ。
浜田 あ~、なるほど。
村上名人 「観覧車」ってきて、「いやそれやるけど」っていうのが一個もないから~。
★評価ポイント
季語「山笑う」の取り合わせの是非
■査定結果
1級へ1ランク昇格
理由:とても愉快
◎楽しい句。季語からの言葉の展開が良く、哺乳瓶の大きさも伝わる。作者の意図をコンパクトに言語化。「に」の選択も見事で「の」だと瓶のみの意味になるが、動作も映像化。
本人 よし!
梅沢名人 素晴らしい。
ミッツ おめでとう。
夏井先生
本当に楽しい良い句。
季語「山笑う」は春の山の事。春の山はあたかも笑っているかのようだと、良い日本語。
季語からの言葉の展開が良い。
「赤ちゃん」は小さいのかと思うと、「象」。
本来小さいはずの「哺乳瓶」が(象向けで)大きいという。
作者の意図をコンパクトに言語化したのが良い。
もう1つ褒めたいのは「に」。これ考えた?
本人 すっごく、悩みました。
夏井先生 どう悩んだ?
本人 あの、「の」とかにしてしまうと、哺乳瓶の絵柄と思われるのが嫌だなと思って。
夏井先生 偉い。さすが特待生ですよ。
ここは悩まないといけないところ。赤ちゃん象「の」の可能性もある。
馬場 「哺乳瓶」が主役になっちゃうんだ。
夏井先生 そう。
「の」だと哺乳瓶という物のみを指す意味になる。
「に」なら象に哺乳瓶でミルクを与える動作が膨らんでくる。
浜田 (梅沢・村上名人に)なんで自分らが言わへんの? あそこ「に」が良かったとか普通言うでしょ?
→他人事のようにそっぽを向く両名人
夏井先生
これに気付かないようではダメ。松岡さんお見事。直しはいらない。
浜田 素晴らしい。
本人 ありがとうございます。やった~、嬉しい。頑張るぞ。
添削なし
※ミッツは昇格なら名人
◆『下萌に錆びし 観覧車の威容』 ミッツ・マングローブ
【本人談】
ひとけのない観覧車を新芽が下から見上げるのも春の一つの風景だと思う。
梅沢名人 「下萌に」の「に」が気に入らない。
本人 あ、そう。ここ、悩んだところですね。
梅沢名人 「下萌に」ときたらね。
本人 待って。さっき、「に」を指摘されたから。「に」を今さら…。
梅沢名人 ミッツ、名人に対して失礼だろ!
★評価ポイント
助詞「に」の是非
梅沢名人 ほら見ろ!見ろ!
■査定結果
1級で現状維持
理由:助詞がもったいない
◎語順は良い。上五「に」と「威容」の関係に迷う。「に」は場所を指すため、解体後の鉄の塊が置いてあるとも読める。切れ字を用いてそびえ立つ観覧車のカットに。
本人 これすっごい悩んだんですよ、先生。
夏井先生
「下萌」という季語から始まる語順は良い。
問題点は上五「に」に対し、「威容」が良いのかどうか。
「に」は場所を指すため、下萌に解体された観覧車の鉄の塊が置いてある感じになる。
しかし、「威容」は解体前の描写。読み手は「に」と「威容」の関係で迷う。
助詞だけの問題。
浜田 (ボソッと)「や」です。
夏井先生 他の展開を考えました?
本人 「の」とか「と」とか。
夏井先生
色々悩んでいる。一番効果的なのは「や」。
「下萌」の下の生えてくる所を切り取り、何と美しい春の芽生えだろうか。
そして、錆びた観覧車がそびえ立ってくる感じになる。
本人 「や」をどう使ってよいか、プレバト!!で5~6年習っているが、分からないんですよ。
浜田 ハハハ。
夏井先生 でもさっき、誰か「や」って微かに聞こえたんだけど。
村上名人 浜田さんが言いましたよ。
夏井先生 誰が言ったの?
梅沢名人 浜田さんが言いました。
夏井先生 浜田さんが言ってんの?
玉巻アナ 浜田さんがおっしゃってました。
→恥ずかして下を向く浜田
梅沢名人 まあまあ、その走りを言ったのは私ですから。
一同 (笑)
岩永 「走り」?
本人 いや、浜田さんが偉いの。
浜田 「走り」って何?あ、「に」じゃないよっていうね。
[ここがポイント]
句切れの「や」
※俳句で良く聞く「や」は!(ビックリマーク)のようなもの。句の中での深い感動を表すとともに、場面を切り替える役割もあります。この「や」一音を効果的に使うだけで、読み手に与える印象はガラリと変わるのです。
添削後
『下萌や錆びし 観覧車の威容』
★永世名人への道★
村上名人 いや、「こういう俳句も楽しいじゃん」っていうのを作ってきました。
梅沢名人 偉そうに。
浜田 誰に言ってんねん!
村上名人 楽しまないと…。
◆『観覧車の列に 春ショールの教師』 村上健志(フルーツポンチ)
【本人談】
遊園地の観覧車の列に先生が並んでいる。
梅沢名人 身近な30cmぐらいの俳句を詠んでりゃいいんだよ。こういう遠い俳句を詠むから失敗するんだよ。
浜田 なるほど。
梅沢名人 中…中七!
本人 もう、すぐだから…別にそれはでも、「観覧車」外したら、なってますから。
梅沢名人 何で!?
本人 「何で」~?
梅沢名人 「列に」。
本人 (指を折り音を数えながら)「列に春ショールの教師」です。
梅沢名人 だから!?
本人 何、どうしたんですか。
梅沢名人 だから、「列に」という「に」が気に入らないの。
本人 またさっき「に」で1回成功したからって。「に」ばっかり。
梅沢名人 降格しろ、降格。こんな俳句を作ってたら、名人というの恥ずかしい!
本人 ええ、何で~分かりやすい。
浜田 あの…あの、終わったら教えて。
→ケータリングのペットボトルの水を飲む浜田
一同 (笑)
梅沢名人 今、言うよ。先生が中七に問題があるって。
本人 いやいや、楽しい。
梅沢名人 問題があるって、中七のこと言うよ。よく聞いとけ。
本人 (浜田に)終わりました。
浜田 あ、終わった?はい。
●まとめ
★評価ポイント
助詞「に」の是非
梅沢名人 今日はなっちゃんと俺の心は1つだぞ!
本人 この「に」は良い「に」ですって、絶対。
■査定結果
名人10段★2へ1つ前進
理由:未発表(「に」が大正解)
◎とても良く出来た。前半できっちり映像化。情報が被らない言葉の配置はさすが。助詞「に」の選択が見事で何でもやれるが、制服の生徒の列に「春ショール」が目立つ教師が鮮やかに映像化される効果がある。全部考えたに違いない。
本人 うわ~、よし~。
浜田 星2つになりました。
本人 よ~し、よしよしよし。
夏井先生
とても良く出来ている句。
「観覧車の列」で映像を確保する。「観覧車」「列」と続いていく。きっちりと映像化。
後半に「春ショール」の季語と「教師」という人物が出てくる。
お互いの情報が被らない言葉の配置はさすが。
助詞「に」の選択が何より見事。「の」「へ」「を」「や」とか何でも入る。
本人談で「に」を狙いで選んでいるのも何となく伝わった。
「の」なら、列の中の春ショールの教師に焦点が絞られていく。
「へ」なら、列に向かっていく教師の動作が読み取れる。
「を」なら、列をウロウロして生徒を並ばせる教師の行動が読み取れる。
「や」なら、2カットに映像が切り替わる効果がある。
「に」としたことで、観覧車の列に人が並んでいる。春ショールの人かと目を留めると思うと、教師である。「列」は生徒たちに違いないと分かる。制服を着る生徒の列に並ぶ「春ショール」の教師が鮮やかに映像化される効果がある。
全部考えたに違いないと信じる。直しはいらない。
添削なし
梅沢名人 私は最高の俳句だと思ってますから。
浜田 あ~そうですか。
梅沢名人 ただね、村上は可愛がってもらってるし、私は嫌われてますから。
浜田 いやいや。
梅沢名人 コイツ(村上名人)のダメな所はスターになれない。まあ、四番手。
浜田 なるほど。
村上名人 関係ないじゃん。
一同 (笑)
梅沢名人 プレバト!!のスターは私ですから。
浜田 アハハハ。
梅沢名人 私が昇格しないで何で番組になりましょうか。
浜田 そりゃそうですね!…はい。
◆『長閑なり かの日の 屋上遊園地』 梅沢富美男
【本人談】
これは村上には書けない。私たちの年齢でないとこういう思い出はない。昔のデパートは必ず屋上に観覧車があったが、今はなくなってオシャレなカフェになるなどしている。同じ場所に我が子を連れて行くと、かつて「うちの子はここで観覧車に乗せたな」という思いを持って詠んだ。
浜田 なるほど。さあ、村上さん。どうですか…。
本人 この字数がたまらなく良いでしょ? これが名人だ。
浜田 村上さん。どうですか。
村上名人 俺はこれ書かないですね、確かに。なんか…凡庸だなっていうか。
本人 凡庸? お前、ミスタープレバトに失礼じゃないか。
一同 (笑)
★評価ポイント
上五「長閑なり」言い切りの是非
■査定結果
名人10段★3で現状維持
理由:冒険心が無い
◎型通りの句。時候の季語を含めた前半は映像がないが、後半で「かの日」の共感性を呼ぶ。語順の展開が巧いが、全部読むと非常に普通で、冒険心の欠片もない。星4つ目は渡せない。添削の必要性が無いため腹が立つ。
ミッツ ほら。
村上名人 ほら~。
パックン 置きに行ってるじゃん!
ミッツ 一番置きに行ったわね。
村上名人 落とさないようにしてるじゃん、星。金星を落としてるんですよ、星をもう。
一同 (笑)
松岡 一番置いてる。
夏井先生
型通りにきっちり作るタイプの句。
「長閑」が春の季語。「なり」と言い切る。”なんと長閑な春の日であることよ”。
時候の季語のため、特別な映像はない。気分・気候を語り、「かの日」も映像がなく、読者がかつてのあの日を思い浮かべる。
最後に「屋上遊園地」とひとかたまりを出し、「かの日」がどの年代でどんな光景かを読者に伝えている。私とおっちゃんの年代ならなおさら。
デパートにはみんなこれあった。
本人 ありましたよ。
夏井先生
そこら辺は綺麗にキッチリと読み手に伝わる。語順の展開が上手さはさすが。
全部読んだとき、非常に普通に出来ている。冒険心の欠片もなく、星4つ目を貰うのは頭が高い。
浜田 なるほど、そりゃそうですよね。
本人 そういう問題じゃないだろ!
夏井先生 そういう問題です。
浜田 先生、これ出来てますから直しは?
夏井先生 直す必要が無いから腹が立つんですね。
浜田 直しはないんですよ。
本人 腹が立つなら落とせばいいだろ!
一同 (笑)
添削なし
編集後記
特待生一斉昇格試験は今回で5度目。毎回必ず降格者が出る厳しい試験です。特待生が多いため通常回に出られない査定回数の少ない人物を一挙に査定できる嬉しい企画の一方、査定が厳しくなりがちで全体的なランクの底上げにはなりにくいのが悩ましいところ。
お題はバレンタインデー前日を考慮してか、晴天の観覧車。「観覧車」「遊園地」はどちらも5音を占め、季語も別に入れる必要もあり、発想を飛ばす意味でも難度は高め。
馬場アナは降格査定。「曼荼羅」はチベット仏教において、一仏を取り囲む諸仏がいるのが特徴で、この諸仏を観覧車のゴンドラに見立てたのでしょう。そして、仏にふれることで安らかな気持ちになることを表現する意図も感じました。発想は面白いですが、仏教用語を用いた点が評価の分かれ目で、専門用語は固有名詞並の情報量やインパクトがあります。季語とのバランスが大変難しい所で、当方も「仏舎利塔」「諸行無常」などの句をたまに見ますが、素人には成功の可否が全く分かりません。比喩自体の意図は悪くなく、諸仏の神々しい光を感じたならば、添削例の「空や」を「ひかり」にしたり、季語を「春光や」にしたりすると、ゴンドラの塗装の眩しさが重なり、より味わいが深くなります。降格査定は厳しいですが、取り合わせの難しさを警告する意図もあったのかもしれません。
パックンは現状維持。海外ならではの発想が良く、「廃墟」の暗と「移動観覧車」の明をハッキリと打ち出しました。季語「風光る」の選択も素晴らしいですが、付け足し感は否めず定型に。梅沢名人は語順の指摘は結構できるのです。今回は高学歴相手にプライド高く、思い切り自ら添削しに行きました。「風光る」は番組5回目ですが、いずれも原句で下五に置かれており、添削されやすい印象。
岩永さんはリベンジ達成。季語+「や」+12音の基本型で、「花」と「解体前」の明暗を明確にしました。この辺は「梅雨寒やジャズレコードの傷拾う」と同じような印象です。「花冷え」は番組4回目ですが、初の成功例となりました。色鉛筆の特待生にも認められ、本当に多彩な方ですね。
松岡さんは発想を飛ばして昇格。「赤ちゃん」で小さいかと思いきや「象」、その「哺乳瓶」が大きいという大小の対比の意外性が、季語の「笑う」とマッチして楽しい句という評をもらいました。「石竜子」「空蝉」以来の動物の登場でしたが、動物の取り合わせが上手いですね。下手に比喩をせず、描写する点も気持ち良いですが、何より助詞の選択を非常に良く考えていた点を感心しました。いよいよ名人が見えてきました。
ミッツさんは現状維持。降格2回経験済で、「下萌に錆びし」という暗・小ささと「観覧車の威容」という明・大きさの対比の意図を感じますが、助詞「に」を指摘されました。助詞の”てにをは”は難しいですが、浜田さんがパッと当てるところが素晴らしい。「萌」「威容」の妖しい表現にミッツさんらしさを感じます。再度挑戦して欲しいです。
10段2名はいずれも破調の句で勝負。
村上名人の句は、事前予告で17音全て公開されていました。まさしく村上ワールド全開という印象で、句またがり・対句表現・名詞の畳みかけという最近この番組に多い手法を取り込み、「しゃ」などの拗音3つにサ行とラ行の音をちりばめて韻とリズムも踏んだ力作です。先生は「に」で生徒の列と解釈しましたが、当方は一年の指導を終えて春休みに慰安旅行する教員か、生徒と共に修学旅行する場面を思い浮かべました。梅沢名人は、一貫性のない指摘でウダウダ時間稼ぎしましたが、要は村上名人の句には「俳諧性がない」点を言いたいのでしょう。確かに今回の句もとある場面を描写しているだけで、リアリティーはあまり感じませんし、共感性も限定的かもしれません(夏井先生は元教員ですので良く分かるはずです)。しかし、村上名人は元々短歌が得意ですから、恋愛や日常の障りないことを17音にパッキングすることに挑戦しているのではないかと思います。その方向性も個性的で良いのではないでしょうか。
凡庸で冒険心がないと指摘された梅沢名人の句ですが、非常に中途半端で勿体ないとしか言いようがありません。上五「なり」の断定は「薄暑なり日常を行く喪服の吾」で既に失敗済み。当方的には「かの日」と古語のにした表現が最大のポイントで、意味は同じですが「あの日」としない点に感心致しました。より古めかしい言い方で時間的な遠さが伝わってきます。しかし、一行に繋げると「長閑なりかの日」と平仮名が続き、せっかくの断定の切れが読みにくく、逆効果になるのが問題ではないでしょうか。「彼(か)の」と1字だけ漢字表記に変えるだけでこの点は解決しますが、意味合いが多少変化し、本人の語った立場と異なってきます。「彼(か)の」という用法は「彼の岸」、いわゆる「彼岸(ひがん)」という季語を思い浮かべますが、仏教で亡き人が渡る岸を指します。当方も小さい頃良くデパートの屋上遊園地に連れて行ってもらいましたが、背景には家族という別の人物の存在があるはずです。「彼の日」と書かれると、時間以外にもう戻ってこない人物をも感じ取れます。”かつて、父に連れて行ってもらったデパートの屋上遊園地があったよ。父も遊園地も今はもう亡(無)くなってしまったけれど、今いるこの屋上もかつてのその頃も長閑な春であることよ(父も長閑な雰囲気であったことよ)。”という風に解釈した瞬間、当方は身震いをしました。仮に「彼の日」の表記で発表されていれば、感動していたのです。本人は愛娘を連れて行った思い出を語りましたが、立場が逆となると共感できる年代がより増えるのではないでしょうか。査定結果はともかく、夏井先生の言葉を借りれば、感動しそこねた点に腹が立つことということになります。梅沢名人の句は俳諧性も共感性もあるのですが、もう少し推敲していただけると、より多くの人に感動させる句が作れるのではないでしょうか。
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
今回から速報版は以下の要素を変更します。ご承知おきください。
・自解(要約)を加えます。→詳細版では【本人談】
◎夏井先生講評(要約)は50字制限を撤廃します。
★特待生一斉査定スペシャル(第5回)
挑戦者→馬場典子[10],パックン[6],岩永徹也[16],松岡充[16],ミッツ・マングローブ[27],村上健志[44],梅沢富美男[90] ※数字は挑戦回数
名人10段★3 | 梅沢 |
名人10段★1 | 村上 |
1級 | ミッツ |
2級 | 松岡 |
3級 | 岩永 |
4級 | パックン、馬場 |
●お題:観覧車
※晴天の青空をバックに観覧車のゴンドラが複数映るカットの写真
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 5級へ1ランク降格 | ●馬場典子 | 緑立つ曼荼羅のごと観覧車 | みどりたつまんだらのごとかんらんしゃ |
2 | 4級で現状維持 | ●パックン | 廃墟に移動観覧車風光る | はいきょにいどうかんらんしゃかぜひかる |
3 | 2級へ1ランク昇格 | ●岩永徹也 | 花冷えや解体前の観覧車 | はなびえやかいたいまえのかんらんしゃ |
4 | 1級へ1ランク昇格 | ●松岡充 | 山笑う赤ちゃん象に哺乳瓶 | やまわらうあかちゃんぞうにほにゅうびん |
5 | 1級で現状維持 | ●ミッツ・マングローブ | 下萌に錆びし観覧車の威容 | したもえにさびしかんらんしゃのいよう |
6 | 名人10段★2へ 1つ前進 | ★村上健志 (フルーツポンチ) | 観覧車の列に春ショールの教師 | かんらんしゃのれつにはるしょーるのきょうし |
7 | 名人10段★3で 現状維持- | ★梅沢富美男 | 長閑なりかの日の屋上遊園地 | のどかなりかのひのおくじょうゆうえんち |
[トーク1]
浜田 年も変わりました。
梅沢名人 そうですね。年の初めに家族と旅行で伊勢に行ってまいりまして。
浜田 あ、そうですか。
梅沢名人 私ほどのスターになれば、色んな人が集まってきましてね。その中でも一番多かったのが、「プレバト!! 頑張ってください。梅沢さんが優勝しないと僕ら観てる方はつまらないんです」。
浜田 ほんまにそんな事言いました~!?
梅沢名人 私は嘘は言いませんよ。皆さんが手を握りながら言うんです。
***
◆それでは紹介順に見ていきます
◆『緑立つ 曼荼羅のごと 観覧車』 馬場典子
【本人談】
観覧車は不思議な乗り物で、気分が落ち込んだ時に乗って1周する間に「また頑張ろう」という気持ちになる。その気持ちの中のプチ転生の感じが曼荼羅(まんだら)の見た目と世界観に似ている。
梅沢名人 素晴らしい。
本人 嬉しい。
梅沢名人 「曼荼羅」をここへ持ってきたのが素晴らしい!
★評価ポイント
「曼荼羅のごと」という比喩の是非
■査定結果
5級へ1ランク降格
理由:未発表(季語が比喩に負けている)
◎季語が比喩に負けている。季語を引き立てる描写をすべき。遠景の「観覧車」に、近景の松の新芽が見えるよう映像化。
本人 えぇ~!!
松岡 えっ?
岩永 いきなり?
パックン 梅沢さんがあんな事言った(のに)!?
→「しまった」という顔つきの梅沢名人
本人 めっちゃ褒めてくれた。
夏井先生
季語(緑立つ)が比喩(曼荼羅のごと)に負けている。
俳句は五七五という定型と季語、「有季定型」が俳句の大きな柱である。
読んだときに、季語が主役に立っているかが大事な所。
季語を映像として描写するだけのこと。
「観覧車」から始めるべき。「観覧車は曼荼羅」で「ごと」がなくても比喩だと分かる。“観覧車が曼荼羅のようである”。
「緑立つ」が主役になるように、最後に描写を入れる。「観覧車」が遠景で、季語の松の新芽が近い所で見えるように。
「緑立つ空よ」で良い。
観覧車は言われてみれば曼荼羅のようだ。手前の方に焦点が合い、ツンツンと緑の新芽が立っている。その空が広がる。
添削後なら1ランク昇格。
一同 あぁ~。
浜田 馬場ちゃん、次回頑張っていただきましょう。
[ここがポイント]
季語を主役に
※曼荼羅の印象が強かった馬場の句だが、語順を変え「緑立つ」を描写することでその印象は変化。季語を主役に立てると、17音はより鮮やかに季節感のあるものになります。
添削後
『観覧車は曼荼羅 緑立つ空よ』
[トーク2]
パックン 今まで負けなし(昇格のみ)。俳句はね、研究できるものですよ、勉強。僕の能力は並大抵のものじゃない!
あまりあのね、あまり知られていないけど…。
梅沢名人 (呼びかけて)パックン、パックン。
パックン 何だ?
梅沢名人 学歴は俳句に関係ない。
パックン 学歴言ってないですよ。
梅沢名人 お前、ハーバード(大学卒業)だろ。
パックン いやいや、違いますよ。
梅沢名人 俺は中学しか出てないんだ。
一同 (笑)
パックン 何中学校?
梅沢名人 第四中学校!
パックン 第四中か~、つらいわあ。
浜田 もうええ、もうええ。四でも三でもええ。
***
◆『廃墟に 移動観覧車 風光る』 パックン
【本人談】
アメリカの田舎の子は観覧車と聞くと「移動遊園地」をまず思い浮かべる。最近工場がよく閉鎖されて、閉鎖された工場の敷地に観覧車が設置される。
梅沢名人 破調で俳句を詠むなんてのは15年早い。
一同 (笑)
岩永 …15年。
梅沢名人 五七五を大事にしなかったら、俳句は上手になりませんよ。こういうのは五七五でやるんだよ!
浜田 どうやったらなるんですか?
梅沢名人 これはケツからいけばいいんですよ。「風光る廃墟に移動観覧車」。
浜田 なるほど。
梅沢名人 これ五七五だよ。
★評価ポイント
「廃墟」と「風光る」の関係の是非
梅沢名人 ほら見ろ。落ちろ!お前みたいなの。
本人 いや、梅沢さんもさっきから当たってませんけどね。
■査定結果
4級で現状維持
理由:語順がもったいない
◎季語が最後に付け足されて脇役になったのが損。語順を変えて定型に。季語の「風」「光」のイメージを後半に重ねれば色と動きが出る。
浜田 これ梅沢さん凄いですね(→査定評を告げる)
パックン マジっすか。
梅沢名人 ね、俺の言ってる通りだよ。
夏井先生 今回はおっちゃんが偉い。おっちゃんの言う通り。素晴らしい。第四中学校の勝利だと思う。
梅沢名人 嬉しい!
夏井先生
「移動観覧車」までで映像が先にできる。後から風を吹かす。
季語「風光る」は風そのものが見えるというより、何かを動かしたり光ったりして感じる。
季語が最後に付け足されると、前半のフレーズの印象が強くなる。
肝心の主役となる季語が、最後に付け足しで置かれている感触がある。
一番良い答えは、おっちゃんの言った通りの語順。「風光る廃墟に移動観覧車」。
梅沢名人 ほら、ほら。
夏井先生
「風光る」は春の季語。その風光りだした廃墟に、待ちに待った移動観覧車が来たぞと後半に展開すれば色・動きが出て季語が再度生き生きと明るく動き出す。
これは順番を変えるだけで1ランク昇格だった。
浜田 うわ~、勿体ない。というか、そんなに嬉しい?
梅沢名人 嬉しい!
村上名人 昇格したみたいな。
梅沢名人 夏井先生、知ってます? 今日(メガネの)フレーム変えてみたの。
浜田 知らんがな!
一同 (笑)
→首をNoと横に振る夏井先生
添削後
『風光る 廃墟に移動観覧車』
◆『花冷えや 解体前の 観覧車』 岩永徹也
【本人談】
小さい頃から通った遊園地が閉園することになり、よく乗っていた観覧車もあるが解体することが決まり、その時の寂しい気持ちを「花冷え」という季語で表現した。
村上名人 (ややはにかみながらゆっくりと)良さそう…。
浜田 えっ?
一同 (笑)
浜田 「良さそう」って何やねん。
村上名人 これといって大きな間違いがあるとは絶対思えない。
浜田 あ、そう。
梅沢名人 これは置きに来ましたね。
★評価ポイント
季語「花冷え」を選んだ是非
玉巻アナ 浜田さん、夏井先生の結果このようになっています。
浜田 よいしょ~!
■査定結果
2級へ1ランク昇格
理由:季語が効果的
◎季語とワンフレーズの基本の型を守った。効果的な季語を選んだ。桜の美しさと解体前の明暗の対比も表現。「冷え」で鉄骨の様子も感じ取れる。
本人 やった~!
夏井先生
中七・下五のフレーズで映像を作り、季語を上五で取り合わせる。
(梅沢名人の指摘した)置きに行ったというより、基本の型を守ったと褒めるべき。
しっかりと映像が出来ているため、どんな季語を取り合わせて、かつ季語を主役にできるかどうかの問題。
「花冷え」は良い。桜が咲き満ちた頃に急に冷え込む時がある。
【花冷え】春の季語 桜の咲く頃の急に冷え込む時 冷え冷えとした感じ |
「花冷え」の桜の美しさと「解体前の観覧車」の壊される観覧車の対比が出てくる。
さらに「冷え」で誰も乗らなくなった観覧車の鉄骨の奥まで冷えていく感触も伝わる。
かなり効果的な季語を選んだ。直しはいらない。
本人 ありがとうございます。
添削なし
◆『山笑う 赤ちゃん象に 哺乳瓶』 松岡充
【本人談】
春の胎動や生命の息吹を感じる春の季語「山笑う」を用い、兼題写真の観覧車から、観覧車があるサファリパークの景色を思い出し、発想を飛ばしてみた。
村上名人 良さそう…。
浜田 いやいやいや、何やねん。何なん。
一同 (笑)
村上名人 これ、普段と違って、特待生ばかりになると流石は流石なんですよ。
浜田 あ~、なるほど。
村上名人 「観覧車」ってきて、「いやそれやるけど」っていうのが一個もないから~。
★評価ポイント
季語「山笑う」の取り合わせの是非
■査定結果
1級へ1ランク昇格
理由:とても愉快
◎楽しい句。季語からの言葉の展開が良く、哺乳瓶の大きさも伝わる。作者の意図をコンパクトに言語化。「に」の選択も見事で「の」だと瓶のみの意味になるが、動作も映像化。
本人 よし!
梅沢名人 素晴らしい。
ミッツ おめでとう。
夏井先生
本当に楽しい良い句。
季語「山笑う」は春の山の事。春の山はあたかも笑っているかのようだと、良い日本語。
季語からの言葉の展開が良い。
「赤ちゃん」は小さいのかと思うと、「象」。
本来小さいはずの「哺乳瓶」が(象向けで)大きいという。
作者の意図をコンパクトに言語化したのが良い。
もう1つ褒めたいのは「に」。これ考えた?
本人 すっごく、悩みました。
夏井先生 どう悩んだ?
本人 あの、「の」とかにしてしまうと、哺乳瓶の絵柄と思われるのが嫌だなと思って。
夏井先生 偉い。さすが特待生ですよ。
ここは悩まないといけないところ。赤ちゃん象「の」の可能性もある。
馬場 「哺乳瓶」が主役になっちゃうんだ。
夏井先生 そう。
「の」だと哺乳瓶という物のみを指す意味になる。
「に」なら象に哺乳瓶でミルクを与える動作が膨らんでくる。
浜田 (梅沢・村上名人に)なんで自分らが言わへんの? あそこ「に」が良かったとか普通言うでしょ?
→他人事のようにそっぽを向く両名人
夏井先生
これに気付かないようではダメ。松岡さんお見事。直しはいらない。
浜田 素晴らしい。
本人 ありがとうございます。やった~、嬉しい。頑張るぞ。
添削なし
※ミッツは昇格なら名人
◆『下萌に錆びし 観覧車の威容』 ミッツ・マングローブ
【下萌(したもえ)】春の季語 早春、枯葉に隠れるように草の芽が生え出る様子 |
【本人談】
ひとけのない観覧車を新芽が下から見上げるのも春の一つの風景だと思う。
梅沢名人 「下萌に」の「に」が気に入らない。
本人 あ、そう。ここ、悩んだところですね。
梅沢名人 「下萌に」ときたらね。
本人 待って。さっき、「に」を指摘されたから。「に」を今さら…。
梅沢名人 ミッツ、名人に対して失礼だろ!
★評価ポイント
助詞「に」の是非
梅沢名人 ほら見ろ!見ろ!
■査定結果
1級で現状維持
理由:助詞がもったいない
◎語順は良い。上五「に」と「威容」の関係に迷う。「に」は場所を指すため、解体後の鉄の塊が置いてあるとも読める。切れ字を用いてそびえ立つ観覧車のカットに。
本人 これすっごい悩んだんですよ、先生。
夏井先生
「下萌」という季語から始まる語順は良い。
問題点は上五「に」に対し、「威容」が良いのかどうか。
「に」は場所を指すため、下萌に解体された観覧車の鉄の塊が置いてある感じになる。
しかし、「威容」は解体前の描写。読み手は「に」と「威容」の関係で迷う。
助詞だけの問題。
浜田 (ボソッと)「や」です。
夏井先生 他の展開を考えました?
本人 「の」とか「と」とか。
夏井先生
色々悩んでいる。一番効果的なのは「や」。
「下萌」の下の生えてくる所を切り取り、何と美しい春の芽生えだろうか。
そして、錆びた観覧車がそびえ立ってくる感じになる。
本人 「や」をどう使ってよいか、プレバト!!で5~6年習っているが、分からないんですよ。
浜田 ハハハ。
夏井先生 でもさっき、誰か「や」って微かに聞こえたんだけど。
村上名人 浜田さんが言いましたよ。
夏井先生 誰が言ったの?
梅沢名人 浜田さんが言いました。
夏井先生 浜田さんが言ってんの?
玉巻アナ 浜田さんがおっしゃってました。
→恥ずかして下を向く浜田
梅沢名人 まあまあ、その走りを言ったのは私ですから。
一同 (笑)
岩永 「走り」?
本人 いや、浜田さんが偉いの。
浜田 「走り」って何?あ、「に」じゃないよっていうね。
[ここがポイント]
句切れの「や」
※俳句で良く聞く「や」は!(ビックリマーク)のようなもの。句の中での深い感動を表すとともに、場面を切り替える役割もあります。この「や」一音を効果的に使うだけで、読み手に与える印象はガラリと変わるのです。
添削後
『下萌や錆びし 観覧車の威容』
★永世名人への道★
村上名人 いや、「こういう俳句も楽しいじゃん」っていうのを作ってきました。
梅沢名人 偉そうに。
浜田 誰に言ってんねん!
村上名人 楽しまないと…。
◆『観覧車の列に 春ショールの教師』 村上健志(フルーツポンチ)
【本人談】
遊園地の観覧車の列に先生が並んでいる。
梅沢名人 身近な30cmぐらいの俳句を詠んでりゃいいんだよ。こういう遠い俳句を詠むから失敗するんだよ。
浜田 なるほど。
梅沢名人 中…中七!
本人 もう、すぐだから…別にそれはでも、「観覧車」外したら、なってますから。
梅沢名人 何で!?
本人 「何で」~?
梅沢名人 「列に」。
本人 (指を折り音を数えながら)「列に春ショールの教師」です。
梅沢名人 だから!?
本人 何、どうしたんですか。
梅沢名人 だから、「列に」という「に」が気に入らないの。
本人 またさっき「に」で1回成功したからって。「に」ばっかり。
梅沢名人 降格しろ、降格。こんな俳句を作ってたら、名人というの恥ずかしい!
本人 ええ、何で~分かりやすい。
浜田 あの…あの、終わったら教えて。
→ケータリングのペットボトルの水を飲む浜田
一同 (笑)
梅沢名人 今、言うよ。先生が中七に問題があるって。
本人 いやいや、楽しい。
梅沢名人 問題があるって、中七のこと言うよ。よく聞いとけ。
本人 (浜田に)終わりました。
浜田 あ、終わった?はい。
●まとめ
梅沢名人 | とにかくケチを付けたい。大声で時間稼ぎをして、既に指摘で成功している中七「に」に何とか辿り着く。 |
村上名人 | 素直に指摘に応じる。最初は音数の問題だと解釈するが、「に」と指摘されて拗ねてしまう。 |
浜田 | 最初は聞いていたが、2人のウダウダするケンカに呆れてしまい、遂に見放して水飲み休憩をする。 |
★評価ポイント
助詞「に」の是非
梅沢名人 今日はなっちゃんと俺の心は1つだぞ!
本人 この「に」は良い「に」ですって、絶対。
■査定結果
名人10段★2へ1つ前進
理由:未発表(「に」が大正解)
◎とても良く出来た。前半できっちり映像化。情報が被らない言葉の配置はさすが。助詞「に」の選択が見事で何でもやれるが、制服の生徒の列に「春ショール」が目立つ教師が鮮やかに映像化される効果がある。全部考えたに違いない。
本人 うわ~、よし~。
浜田 星2つになりました。
本人 よ~し、よしよしよし。
夏井先生
とても良く出来ている句。
「観覧車の列」で映像を確保する。「観覧車」「列」と続いていく。きっちりと映像化。
後半に「春ショール」の季語と「教師」という人物が出てくる。
お互いの情報が被らない言葉の配置はさすが。
助詞「に」の選択が何より見事。「の」「へ」「を」「や」とか何でも入る。
本人談で「に」を狙いで選んでいるのも何となく伝わった。
「の」なら、列の中の春ショールの教師に焦点が絞られていく。
「へ」なら、列に向かっていく教師の動作が読み取れる。
「を」なら、列をウロウロして生徒を並ばせる教師の行動が読み取れる。
「や」なら、2カットに映像が切り替わる効果がある。
「に」としたことで、観覧車の列に人が並んでいる。春ショールの人かと目を留めると思うと、教師である。「列」は生徒たちに違いないと分かる。制服を着る生徒の列に並ぶ「春ショール」の教師が鮮やかに映像化される効果がある。
全部考えたに違いないと信じる。直しはいらない。
添削なし
梅沢名人 私は最高の俳句だと思ってますから。
浜田 あ~そうですか。
梅沢名人 ただね、村上は可愛がってもらってるし、私は嫌われてますから。
浜田 いやいや。
梅沢名人 コイツ(村上名人)のダメな所はスターになれない。まあ、四番手。
浜田 なるほど。
村上名人 関係ないじゃん。
一同 (笑)
梅沢名人 プレバト!!のスターは私ですから。
浜田 アハハハ。
梅沢名人 私が昇格しないで何で番組になりましょうか。
浜田 そりゃそうですね!…はい。
◆『長閑なり かの日の 屋上遊園地』 梅沢富美男
【本人談】
これは村上には書けない。私たちの年齢でないとこういう思い出はない。昔のデパートは必ず屋上に観覧車があったが、今はなくなってオシャレなカフェになるなどしている。同じ場所に我が子を連れて行くと、かつて「うちの子はここで観覧車に乗せたな」という思いを持って詠んだ。
浜田 なるほど。さあ、村上さん。どうですか…。
本人 この字数がたまらなく良いでしょ? これが名人だ。
浜田 村上さん。どうですか。
村上名人 俺はこれ書かないですね、確かに。なんか…凡庸だなっていうか。
本人 凡庸? お前、ミスタープレバトに失礼じゃないか。
一同 (笑)
★評価ポイント
上五「長閑なり」言い切りの是非
■査定結果
名人10段★3で現状維持
理由:冒険心が無い
◎型通りの句。時候の季語を含めた前半は映像がないが、後半で「かの日」の共感性を呼ぶ。語順の展開が巧いが、全部読むと非常に普通で、冒険心の欠片もない。星4つ目は渡せない。添削の必要性が無いため腹が立つ。
ミッツ ほら。
村上名人 ほら~。
パックン 置きに行ってるじゃん!
ミッツ 一番置きに行ったわね。
村上名人 落とさないようにしてるじゃん、星。金星を落としてるんですよ、星をもう。
一同 (笑)
松岡 一番置いてる。
夏井先生
型通りにきっちり作るタイプの句。
「長閑」が春の季語。「なり」と言い切る。”なんと長閑な春の日であることよ”。
時候の季語のため、特別な映像はない。気分・気候を語り、「かの日」も映像がなく、読者がかつてのあの日を思い浮かべる。
最後に「屋上遊園地」とひとかたまりを出し、「かの日」がどの年代でどんな光景かを読者に伝えている。私とおっちゃんの年代ならなおさら。
デパートにはみんなこれあった。
本人 ありましたよ。
夏井先生
そこら辺は綺麗にキッチリと読み手に伝わる。語順の展開が上手さはさすが。
全部読んだとき、非常に普通に出来ている。冒険心の欠片もなく、星4つ目を貰うのは頭が高い。
浜田 なるほど、そりゃそうですよね。
本人 そういう問題じゃないだろ!
夏井先生 そういう問題です。
浜田 先生、これ出来てますから直しは?
夏井先生 直す必要が無いから腹が立つんですね。
浜田 直しはないんですよ。
本人 腹が立つなら落とせばいいだろ!
一同 (笑)
添削なし
編集後記
特待生一斉昇格試験は今回で5度目。毎回必ず降格者が出る厳しい試験です。特待生が多いため通常回に出られない査定回数の少ない人物を一挙に査定できる嬉しい企画の一方、査定が厳しくなりがちで全体的なランクの底上げにはなりにくいのが悩ましいところ。
お題はバレンタインデー前日を考慮してか、晴天の観覧車。「観覧車」「遊園地」はどちらも5音を占め、季語も別に入れる必要もあり、発想を飛ばす意味でも難度は高め。
馬場アナは降格査定。「曼荼羅」はチベット仏教において、一仏を取り囲む諸仏がいるのが特徴で、この諸仏を観覧車のゴンドラに見立てたのでしょう。そして、仏にふれることで安らかな気持ちになることを表現する意図も感じました。発想は面白いですが、仏教用語を用いた点が評価の分かれ目で、専門用語は固有名詞並の情報量やインパクトがあります。季語とのバランスが大変難しい所で、当方も「仏舎利塔」「諸行無常」などの句をたまに見ますが、素人には成功の可否が全く分かりません。比喩自体の意図は悪くなく、諸仏の神々しい光を感じたならば、添削例の「空や」を「ひかり」にしたり、季語を「春光や」にしたりすると、ゴンドラの塗装の眩しさが重なり、より味わいが深くなります。降格査定は厳しいですが、取り合わせの難しさを警告する意図もあったのかもしれません。
パックンは現状維持。海外ならではの発想が良く、「廃墟」の暗と「移動観覧車」の明をハッキリと打ち出しました。季語「風光る」の選択も素晴らしいですが、付け足し感は否めず定型に。梅沢名人は語順の指摘は結構できるのです。今回は高学歴相手にプライド高く、思い切り自ら添削しに行きました。「風光る」は番組5回目ですが、いずれも原句で下五に置かれており、添削されやすい印象。
岩永さんはリベンジ達成。季語+「や」+12音の基本型で、「花」と「解体前」の明暗を明確にしました。この辺は「梅雨寒やジャズレコードの傷拾う」と同じような印象です。「花冷え」は番組4回目ですが、初の成功例となりました。色鉛筆の特待生にも認められ、本当に多彩な方ですね。
松岡さんは発想を飛ばして昇格。「赤ちゃん」で小さいかと思いきや「象」、その「哺乳瓶」が大きいという大小の対比の意外性が、季語の「笑う」とマッチして楽しい句という評をもらいました。「石竜子」「空蝉」以来の動物の登場でしたが、動物の取り合わせが上手いですね。下手に比喩をせず、描写する点も気持ち良いですが、何より助詞の選択を非常に良く考えていた点を感心しました。いよいよ名人が見えてきました。
ミッツさんは現状維持。降格2回経験済で、「下萌に錆びし」という暗・小ささと「観覧車の威容」という明・大きさの対比の意図を感じますが、助詞「に」を指摘されました。助詞の”てにをは”は難しいですが、浜田さんがパッと当てるところが素晴らしい。「萌」「威容」の妖しい表現にミッツさんらしさを感じます。再度挑戦して欲しいです。
10段2名はいずれも破調の句で勝負。
村上名人の句は、事前予告で17音全て公開されていました。まさしく村上ワールド全開という印象で、句またがり・対句表現・名詞の畳みかけという最近この番組に多い手法を取り込み、「しゃ」などの拗音3つにサ行とラ行の音をちりばめて韻とリズムも踏んだ力作です。先生は「に」で生徒の列と解釈しましたが、当方は一年の指導を終えて春休みに慰安旅行する教員か、生徒と共に修学旅行する場面を思い浮かべました。梅沢名人は、一貫性のない指摘でウダウダ時間稼ぎしましたが、要は村上名人の句には「俳諧性がない」点を言いたいのでしょう。確かに今回の句もとある場面を描写しているだけで、リアリティーはあまり感じませんし、共感性も限定的かもしれません(夏井先生は元教員ですので良く分かるはずです)。しかし、村上名人は元々短歌が得意ですから、恋愛や日常の障りないことを17音にパッキングすることに挑戦しているのではないかと思います。その方向性も個性的で良いのではないでしょうか。
凡庸で冒険心がないと指摘された梅沢名人の句ですが、非常に中途半端で勿体ないとしか言いようがありません。上五「なり」の断定は「薄暑なり日常を行く喪服の吾」で既に失敗済み。当方的には「かの日」と古語のにした表現が最大のポイントで、意味は同じですが「あの日」としない点に感心致しました。より古めかしい言い方で時間的な遠さが伝わってきます。しかし、一行に繋げると「長閑なりかの日」と平仮名が続き、せっかくの断定の切れが読みにくく、逆効果になるのが問題ではないでしょうか。「彼(か)の」と1字だけ漢字表記に変えるだけでこの点は解決しますが、意味合いが多少変化し、本人の語った立場と異なってきます。「彼(か)の」という用法は「彼の岸」、いわゆる「彼岸(ひがん)」という季語を思い浮かべますが、仏教で亡き人が渡る岸を指します。当方も小さい頃良くデパートの屋上遊園地に連れて行ってもらいましたが、背景には家族という別の人物の存在があるはずです。「彼の日」と書かれると、時間以外にもう戻ってこない人物をも感じ取れます。”かつて、父に連れて行ってもらったデパートの屋上遊園地があったよ。父も遊園地も今はもう亡(無)くなってしまったけれど、今いるこの屋上もかつてのその頃も長閑な春であることよ(父も長閑な雰囲気であったことよ)。”という風に解釈した瞬間、当方は身震いをしました。仮に「彼の日」の表記で発表されていれば、感動していたのです。本人は愛娘を連れて行った思い出を語りましたが、立場が逆となると共感できる年代がより増えるのではないでしょうか。査定結果はともかく、夏井先生の言葉を借りれば、感動しそこねた点に腹が立つことということになります。梅沢名人の句は俳諧性も共感性もあるのですが、もう少し推敲していただけると、より多くの人に感動させる句が作れるのではないでしょうか。

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