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20200130 プレバト!!俳句紹介【銀座での買い物】

2020年1月30日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は講評の50字要約です。

挑戦者→髙田万由子[6],すみれ[初],山本未來[2],市川猿之助[3],小園凌央[初],森口瑤子[5],梅沢富美男[88] ※数字は挑戦回数

●お題:銀座での買い物
※時計台をバックに三越の買い物袋を提げる人物が映る写真

※番号クリックでリンク内移動します。
1才能アリ1位71点髙田万由子
寒晴れの雑踏に溶けるモーツァルトかんばれのざっとうにとけるもーつぁると
2才能アリ2位70点すみれ
冬の空ママの手離し冒険すふゆのそらままのてはなしぼうけんす
3凡人3位62点山本未來
歩行者天国をルブタンの赤冬日和ほこてんをるぶたんのあかふゆびより
4凡人4位60点市川猿之助
青柳や背広仕立てて祖父の真似あおやぎやせびろしたててそふのまね
5才能ナシ5位20点小園凌央
雪時計母と買初息白しゆきどけいははとかいぞめいきしろし
64級へ1ランク昇格森口瑤子
道草は砂町銀座おでん食ふみちくさはすなまちぎんざおでんくう
7名人10段★4へ
1つ前進
梅沢富美男
春近し鳩居堂二階句帳買ふはるちかしきゅうきょどうにかいくちょうかう
→編集後記

※今回の平場は「小さい頃からデパートで良いモノを沢山買っていそうな芸能人」という括りで挑戦。

◆発表待ちシートにて

***

◆それでは順位別にみていきます

◆1位 才能アリ71点 髙田万由子
寒晴れの 雑踏に溶ける モーツァルト
◎季語と下五の取り合わせが良い。感触と光景が表現され綺麗でそつなし。中八は句またがりの2カットで解消。

【本人談】
晴れた日に人がいっぱい買い物をしている雑踏がある。(道を歩くと)店内からフワッとBGMが聞こえる。モーツァルトの曲で、人があまりにもワサワサと動くため、うっすらとしか聞こえない。「モーツァルト」「銀座」をくっつけた。

梅沢名人 これホント、大したもんですよ。音と映像がしっかり入ってますから。素晴らしい。
森口 「溶ける」という言葉の使い方が素敵なのと、さすが音楽家の奥さんでらっしゃるから、音が聞こえてくるような句。

夏井先生 
「寒晴れ」と「モーツァルト」の取り合わせがとても良い
冷たい空気、「雑踏」で人波も見えてくる
光景が立ち上がるところ、綺麗にそつなく作れている
考えないといけないのは1箇所。中七の字余りで8音になっている
中七は極力8音を避け、7音が1つの定石。句またがりという方法がある。
句またがり
言葉が上五と中七、中七と下五にまたがる

「寒晴れの雑踏」でカットを切る。「に」は不要。ここから音を出す。
「モーツ”ア”ルト」なら6音だが、「モーツァルト」で5音。
「溶けゆく」とわざと1音分字余りにする。句またがりで展開するという方法になる。
好みになるが、「寒晴」と「れ」を省いた方が字面は綺麗になる。
こうすると、知的な量が少しだけアップするかもしれない。

本人 凄い。

添削後
寒晴の雑踏 モーツァルト溶け

◆2位 才能アリ70点 すみれ
冬の空 ママの手離し 冒険す
◎後半で子の動作や心情を表現したのは実体験の強み。具体的な物から始める語順に変え季語を主役に立てる。

※幼い頃、両親と買物に出かけたデパートで迷子になった実体験を詠んだ一句。

【本人談】
母とはぐれて迷子になる。ネガティブな迷子ではなく、ワクワクと興味津々で冒険したいという。

梅沢名人 よろしいんじゃないですか。ママの手パッと離して遊びに行っちゃったんだよね。
本人 はい。
梅沢名人 素晴らしい。すみれちゃんらしい!

夏井先生 
これも(指摘を)言って欲しかった。
中七・下五で子の動作・表情・心情が言えているのがとても良い。
体験を書くのが強いのはセオリー通り。
惜しいのは語順。「冬の空」が出てくるよりは、「ママの手」のアップから映像が始まった方が、結果的に季語「冬の空」が活きる。主役になる
俳句は季語がどこまで主役に立っているかが、大変大きな評価の基準。
頭の中で映像を思い浮かべて欲しい。
まず「ママの手」で上五。「離し冒険」で手を離してターっと駆け出す子どもが映像化される。
冬の空」が広がっていく。
最後に、主役の「冬の空」が広がって、子がどっかに行っちゃってる。
こうなると1位だったかもしれない。

浜田 勿体ない。(梅沢名人に)なぜ言わないんですか?
梅沢名人 い、いや。ねぇ…、これはイイ。すごく良い。
一同 (笑)

添削後
ママの手 離し冒険 冬の空

◆3位 凡人62点 山本未來
歩行者天国を ルブタンの赤 冬日和
◎季語の活かし方が損。色の対比を出す季語に。語順もメリハリのある2カットへ。「を」で闊歩の印象を。

本人 「ルブタン」分かりますか?
浜田 知ってますよ。裏っかわの赤いね。
クリスチャン・ルブタン
フランスのブランド
ハイヒールの赤い靴底がブランドの象徴

玉巻アナ ちなみに今日も履かれてますよね。
本人 今日は…私も普段は履かないんですけど、履いてみました。
→本人のハイヒールが公開
浜田 腹立つわ~。

【本人談】
ルブタンは銀座っぽい。歩行者天国を冬の明るい日差しの日に、道路の真ん中をヒールなのに闊歩する女性をイメージした。

森口 「ルブタンの赤」で、エレガントな大人の女性が分かるから、光景が浮かびやすいなと。
梅沢名人 非常に良い句なんですけど、語順が悪いんです。中七を頭に持ってきた方が、非常に分かりやすいかなと。この程度の句ですからね。
一同 (笑)

夏井先生
おっちゃん、偉い。一発目から素晴らしい。
「ルブタン」は聞いたことがない。最初、腹痛の薬かと思った。
浜田 何でやねん!
夏井先生 
季語の活かし方で損をしている
「ルブタンの赤」を最初にする。足元のアップから映像が始まる
句またがりで1回カットを切って、季語に行く。ここが問題の季語の活かし方。
「冬日和」も穏やかに晴れた日を指すが、日和というお日様の比重が大きい
この句は、ルブタンの「赤」と冬晴の空の「青」をイメージさせた方が鮮やか
季語を「冬晴(ふゆばれ)」とする。「の」で「歩行者天国(ほこてん)を」と続ける。
「を」は動いていく場所・経過していく時間をいうため、カツカツカツと歩いていくような人物を想像できる。
こうしたら、間違いなく才能アリ。

本人 惜しかった~。

[ここがポイント]
インパクトのあるカメラワーク
※「ルブタンの赤」のアップから、「冬晴の歩行者天国」へ切り替える。印象的なアップの光景と冬晴の歩行者天国という広い光景。2つの映像が生まれ、メリハリのある一句になります。

添削後
ルブタンの赤 冬の歩行者天国を

◆4位 凡人60点 市川猿之助
青柳や 背広仕立てて 祖父の真似
◎内容は良いが後半が散文的。「祖父」の位置が損で時間軸が巻き戻る。人物からの語順にし季語で若さを表現。

青柳(あおやぎ)】春の季語
春になり青々と芽を吹き始めた柳

【本人談】
たまたま銀座の柳の通りでブラブラと店を探していたら、聞いたことある洋服店に入ると(かつて)祖父が背広を仕立てていたという。祖父の真似をしてみようと思ったという。

梅沢名人 これ俳句になってなかったのよ。
本人 あ~そう。
梅沢名人 俳句の言葉じゃないのよ、だから語順も悪いし。
本人 どうやったら、良いんですか?
梅沢名人 まあ、急に言われてもね。
一同 (笑)

夏井先生 
おっちゃんがよもよも言ってる感じ方は合っていると思う。
書こうとしている内容は悪くない
「俳句の言葉ではない」→散文的 ということ。
「祖父の真似をしました」という最後をちぎって、俳句の音数に放り込んだ。ここが雑。
上から読むと「祖父」の位置が損している。
目の前に柳があり、背広を仕立てたと思うと、「祖父」で時間軸が巻き戻される
なぜ急に「祖父」が出てきたのかとドタバタした感じで終わる。
「祖父真似」から始め、「仕立て背広」で整う。
季語も「青柳」と強く言っても良いが、「柳」だけでも春の季語
柳の芽」という新芽を指す生き生きとした春の季語がある。柳に少しずつ芽がついてキラキラとする綺麗な光景。
祖父はダンディーで格好が良く仕立てた背広を着こなしていた。それに比べて自分はまだ柳の芽のような若い俺だけれども、と。そういう風になる。

梅沢名人 イイ!なっちゃんイイ!
→ピースをする先生
すみれ 凄い。
浜田 違う違う。猿之助だけ偉い渋い顔しているのよ。どうした?
本人 いや、俺には自分を柳の芽に喩える謙虚さはないなと。
一同 (笑)

添削後
祖父真似 仕立て背広 柳の

◆最下位 才能ナシ20点 小園凌央
雪時計 母と買初 息白し
◎季語3つで身の程知らず。季語入れるほど良いとは呆れる。1つの季語を活かす語順で映像化。やりゃあいい。

浜田 ふふっ。
玉巻アナ ははっ。
梅沢名人 ハッ!ツァ!


【本人談】
小さい時、母と新年買い物に行き(※)、買い物袋を持たされて疲れている感じ。「雪時計」は銀座で有名な和光の時計塔。時計も雪で重そうに見える。

※梅沢名人と市川猿之助が談笑する
浜田 うるさいな! 解説!
***
梅沢名人 もう1回俳句を勉強してこい、お前。「雪」は季語なんだよ、「買初(かいぞめ)」も季語なんだよ。「息白し」も季語なんだよ。これ俳句じゃないんだ。
一同 (笑)
本人 え、季語っていっぱい入れた方が良いんじゃ?
梅沢名人 バカヤロウ!

夏井先生 
季語入れるほど点数が高くなる?今の話を聞いたら20点はやりすぎた。
一句に季語を3つ入れて成功させるのは、身の程知らず
まず、後半「買初息白し」は諦める。これを使う方法もあるが、上五と「母」を活かす。
これも「母」という人物から始めた方が、季語が活きる
浜田 今日はみんなそれやなあ。
夏井先生 
「母と来て」の後、「銀座」と書けばどんな時計かが分かる。
時計」とすれば映像が出てくる。
買初」を活かすなら、「買初母と銀座の」とやりゃいい。
息白し」なら、「息白し母と銀座の」とやりゃあいいんです

本人 すいません。

添削後
母と  時計
『買初 母と 時計
『息白し 母との 時計


★特待生昇格試験★

→森口瑤子は査定3回で特待生に上がった
浜田 あなた結構トントントンとそこまで来ましたからね。
森口 ここ気持ち良いから落ちたくない。
梅沢名人 大丈夫ですよ。

◆『道草は 砂町銀座 おでん食ふ 森口瑤子

【本人談】
砂町銀座は東京都・江東区にある180店舗が並ぶ下町の商店街。江東区で育ち、砂町銀座は身近だった。中高生の頃は、道草に砂町銀座で焼き鳥やおでんを食べ歩いた。下町で食べながら歩く感じを「おでん食ふ」と表現した。

梅沢名人 素晴らしい俳句ですけど、最後「おでん」は食うものですから。おでんを懐に入れる人はいませんから。
これが余分かな。
本人 そうか。

夏井先生 
この句の評価のポイントは「道草」と「おでん」の取り合わせの是非です。
梅沢名人 違うのか。違うんかい。
一同 (笑)

■査定結果
4級へ1ランク昇格

理由:ウイットに富んでいる
◎「道草を食う」の表現を「おでん食ふ」の意味に重ねた機知がある句。固有名詞が読み手の興味をそそる。

夏井先生 
「道草を食う」は元々は馬が道端の草を食べるため進行が遅くなっていくのが語源。
道草を食う
馬が道草の草を食って進行が遅くなる

上五に「道草」と置くも、「食ふ」のは道端の草ではなく「おでん」であると表現した上五・下五の点に機知・ウイットがある
(梅沢名人の)「食ふ」がいらないという指摘は、ウイットの部分が全然わかってない
梅沢名人 四代目(市川猿之助)が来てるんだよ。えっ?
浜田 おでんは食うもんだって、ずっと言うてましたから。
夏井先生 
基本的にはおでんは食うもんだという、いつもの話になる。
この句は「道草」は「食う」もんですねと来るため、動詞「食ふ」は外してはいけない大事なポイント
もう1つのポイントは「砂町銀座」という固有名詞
場所を知っている読者は下町の光景が浮かび、知らない読者にも「砂町」の字面が興味を掻き立てる。どんな町かしらと。そういう意味でもとても良い固有名詞を選んだ。
背伸びをしない形で俳句を書くスタンスを絶対変えてはいけない
お見事。直しはいらない。

添削なし

★永世名人への道★

梅沢名人 あと2つですから。
浜田 凄いな。
梅沢名人 いっちゃいますよ!今回は、俳句のタブーに挑戦させていただきました。
浜田 大丈夫っすか?
梅沢名人 名人になればなるほど、チャレンジ精神がないとダメなんです。この番組を引っ張っていけないです。
一同 (笑)

◆『春近し 鳩居堂二階 句帳買ふ 梅沢富美男

浜田 こっちは「買ふ」んかい。
鳩居堂(きゅうきょどう)
銀座の一等地にあるお香・和紙製品の老舗毎年路線価日本一の場所として話題になる
※4560万円/m(2019年)


本人 (声を張り)まぁ私、銀座であまり買い物したことないんでちょっと…。
浜田 うるさいな!
本人 お題は非常に悩んだんですけど。

【本人談】
銀座の鳩居堂2階に俳句の帳面が売っている。普段は夏井先生が出している俳句の帳面を使っているが、銀座に行くと鳩居堂で買い物する。中八のタブーに挑戦した。「俳句の帳面は『買う』だろ、馬鹿野郎」って、言う人もいるが、わざと「買ふ」と入れた。これもタブー。これが名人の句。

夏井先生 
この句の評価のポイントは中八の是非です。

浜田 キヒヒヒ。やっぱ言うてますよ。
本人 だから1階じゃ売ってねぇんだよ。
一同 (笑)

■査定結果
名人10段★4へ1つ前進

理由:2つの選択が的確
◎「鳩居堂二階に句帳買う春よ」も可能だが中八。冬の季語は好判断。動詞も心の華やぎを表現。リズムは許容。

浜田 えぇ~!星4つですね。
本人 まあ今日は、四代目も来てるんでね~。
→市川猿之助が手を挙げて応対
本人 先輩役者の意地を見せましたよ、なっちゃん愛してる!

夏井先生 
2つの選択を解説する。
まず、俳句の1つの定石として中七は極力8音・6音にしない中八をどうするか、これが最初の問題点。
例えば、「鳩居堂二階に句帳買う春よ」なら五七五の定型に入れ込むことはいくらでもできる。
次の選択は季語「春近し」。"春"とありながら冬の季語である「春近し」が、作者にとって必要な季語かを読者が判断する必要性がある
春になったから句帳を買うというより、春が近づいて心が明るくなる・華やぐ気分を作者が言いたいに違いないと受け取れるため、「春近し」という季語を否定してはいけない。
そうなると、中八にしないと、情報が入らない。
動詞買ふ」を省略する考え方もある。しかし、まだ使っていない句帳を手にして春が来たら、句帳に春の句を書き始めようとする心の喜びが「買ふ」に表れるため、動詞を置くべきだと判断したに違いない。
その上、中七(字余り)を許容している。
中七が上手くいっているのは、「きゅ」「きょ」「ちょ」と拗音があることで、リズムが出来るため中八があまり気にならない点もある。
総合的には作者の判断を良しとした。添削するとバランスが崩れるので、さわらない。
【まとめ】
中八の問題
 →中七定型にする判断も可能ではあった
季語の選択の問題
 →作者にとって必要な季語だと解釈可能
●動詞「買ふ」を置く意味
 →作者の喜びを表現できていると判断
 →②と●より①の中八を許容できる
◆中八が気にならない効果も生んだ
 →「きゅ」などの3か所の拗音でリズムが良い
⇒総合的に判断を良しとした


浜田 星4つは誰もいない?
玉巻アナ 今まで過去にはおりません、星4つは。
本人 これがミスタープレバトですよ。私がいつもトップでいなければいけないんです。全国の…、全国の!
浜田 (無視して)さあというわけでね、皆さん。

添削なし

編集後記
銀座は5年連続で選ばれているお題で、毎回名句が生まれます。今回のポイントは固有名詞と具体的な物から始める語順でした。いつも長いですが、書きたいことのみ重点的に書きます。

1位の髙田さんは4回目の才能アリでしたが、プレバト的に褒められる句という印象。聴覚情報を主体にする点で、特待生の鈴木さんや松岡さんと似ており、人名は志らく名人も使う所ですが、この句の解釈で書き綴りたいので、最後に詳しく。

2位のすみれさんの句はいかにも村上名人が好きそうな発想です。「ママ」に子ども目線のポジティブな冒険心が強く出ています。

3位の山本さんは「ルブタン」の固有名詞が面白い所。「赤」と色まで押さえたことで映像が明確になり、本人の意図通り描けているように感じます。歩行者天国を「ほこてん」と省略して読むのが一般的なのかは気になる所。

4位の猿之助さんは才能アリを2回獲得し、今回は凡人に。梅沢先輩に厳しく句を指摘されましたが、季語が素晴らしい一句です。「青柳」と色も押さえたことで、春の清々しさと成長を感じる凛とした雰囲気も出ています。粗品さんの「夕立や形見の背広濡らすかえ」と代替わり・背広の点で同じ発想ですが、あまり特待生でも見かけない発想なので、是非とも頑張って梅沢名人を喜ばせてほしい所です。謙虚さがないという発言ですが、そのスタンスで良いのではないでしょうか。

最下位は季語を3つ入れた小園さん。「雪時計」は東国原名人の「進撃や夜時計響く雪巨人」と同じ発想で名詞の寸詰まり。「買初」は先の番組対抗戦での北山さんの原句「買初の乱」と同じ季語で、「息白し」は厚切りジェイソンさんなど4名が使っています。過去には西川貴教さんの「滝飛沫芽吹く若葉に架かる虹」と季語4つの句もありましたが、今回の句は「買初」など明らかに恣意的に季語を複数入れています。季語1つから出直して欲しい所です。

特待生昇格試験は2名とも固有名詞を入れて挑戦。

森口さんは初の昇格試験。季語は「おでん」でしたが、固有名詞「砂町銀座」が粋でした。全国に○○銀座の地名はありますが、活気ある商店街のイメージ。今回は「町」の字で下町を想起させるので選び方も上手いです。動詞「食ふ」もサラっと書いてますが、やはり心情を込めています。「道草を食う」のイメージも重なるという面白さも演出しました。

対する梅沢名人は初の星4つ獲得に成功。「鳩居堂」は銀座の一等地ですが、香典袋が有名なので、当方も利用したことがあり、結構にぎわっている店で実感を伴った句です。確かに2階への階段もありますが、この句で「二階」という情報が必要なのかが特に気になりました(「鳩居堂にて」でも句は成立します)。「鳩居堂」という固有名詞の選択も、御大のプライドの高さが見え隠れし、「二階」で名詞の強調表現のように押さえるドヤ顔まで見えてきます。2つの選択も解説が難解でしたが、当方なりにまとめさせていただきました。果たして次回永世名人になれるのでしょうか。

さて、1位の髙田さんの句に戻りますが、当方は読みを非常に迷いました。「雑踏に溶けるモーツァルト」。この解釈を3つ考えました。
(1)モーツァルトが作曲したBGMが流れ、拡散しながら雑踏へと消えていくかのような。
→「溶ける」は比喩。「モーツァルト」は聴覚情報と解釈。
(2)モーツァルトの肖像画が描かれたコンサートの告知ポスター、またはモーツァルトへ似せたショーウインドウのマネキンがあまり目立っておらず、雑踏へと消えていくかのような。
→「溶ける」は比喩。「モーツァルト」は視覚情報と解釈。
(3)モーツァルト本人が濃塩酸か何かをかけられて、身体がドロドロに溶けてしまい、背景に雑踏があるという殺戮的現場の光景をそのまま描写した。
→「溶ける」は比喩ではない。「モーツァルト」は本人(視覚情報が強い)。

大方9割の方は(1)で解釈すると思いますが、この句の問題は「溶ける」の動詞と「モーツァルト」の固有名詞にあります。まず、「溶ける」という動詞ですが、自然科学をかじったことのある人なら”物質的要素”の意味合いでとらえるのではないでしょうか。この句の「溶ける」は、A(=モーツァルト)がB(=雑踏)に溶けるという意味でしょうが、目に見えるものが目に見えないものになっていくイメージが強いため、どうも目に見えない音楽が…とは思いにくいのです。その原因は、固有名詞「モーツァルト」がもつ情報量の多さにも起因します。なぜなら、曲名ではなく音楽家の人名で書かれているので、どうしても肖像画といった視覚情報のイメージが強く出てしまいます。そのため、当方は(2)の意味で解釈した方がどうもこの句は詩的要素が強いように思うのです。先生の添削も「モーツァルト溶けゆく」と(3)のまさかのモーツァルトの最期かと思う解釈の可能性も残るのですが、この句は意味合いが曖昧なために本人の言う(1)の聴覚の意味で「溶けるモーツァルト」と置いたなら、少々比喩表現が強引ではないでしょうか(仮に理系の論文やゼミでこのような言葉の使い方をするなら、確実に公開処刑されます)。せめて下五は「クラシック」と固有名詞を諦めるか、「トルコ行進曲」など曲名にした方がストレートに意味が分かります。様々な解釈が広がるという意味では才能アリかもしれませんが、この方は以前から「モネ」「鎌倉宮」などの固有名詞や「オペラ」など気品のある名詞を使う傾向があり、今回もそれが如実に出た格好です。東大卒ならそれこそ言葉の意味を吟味して欲しいと思うところです。

※少々言い過ぎている面もございますが、あくまで個人の感想ですのでご容赦ください。

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コメント

Re: タイトルなし

着流きるお様

コメントありがとうございます!
「ホコ天」の表記は確かに言われてみればそうですね。本人は銀座のブランドイメージを強調する意図で、漢字は重たく読みは軽くしたのかもしれませんね。

西川さんの季語4つの句ですが、今回より点が高い上に番組黎明期の句ですし、季重なりの意図はなさそうです‥。

歩行者天国(ほこてん)は確かに気になったところではあります。
ほこてんという略称は有名ですが、「ホコ天」と書くのが普通やと思われます…。

季語4つの事例が…西川氏はボンクラ二世と違ってわざとじゃないと祈ってます

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