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【冬麗戦予選】20191226 プレバト!!俳句紹介【年末年始の駅弁売り場】

2019年12月26日放送 プレバト!! 俳句冬麗戦予選結果まとめ
年4回の改変期に選ばれし特待生のみが参加を許される俳句タイトル戦。
冬の季節に行われる第3回冬麗戦・予選で特待生の面々が詠んだ俳句を紹介します。
上位4人が予選免除者の参戦する冬麗戦・決勝に進出できます。

※タイトル戦データはこちらのまとめ記事も

▼ようやく更新できました。お待たせしました。

予選挑戦者→<5級>森口瑤子[4],<4級>皆藤愛子[12],<3級>岩永徹也[15],<2級>松岡充[15],<5級>北山宏光(Kis-My-Ft2)[25],<名人初段>立川志らく[28],<名人初段>千賀健永(Kis-My-Ft2)[34],<名人10段★2>村上健志(フルーツポンチ)[41],<名人10段★2>梅沢富美男[86] ※[数字]は挑戦回数
名人10段梅沢、村上
名人初段志らく、千賀
2級松岡
3級岩永
4級皆藤
5級北山、森口

見届け人(予選免除者)→東国原名人、藤本名人、中田名人、横尾名人、ジュニア名人


●お題:年末年始の駅弁売り場
※駅売店のショーケースに数々の駅弁が並ぶ写真

※順位クリックでリンク内移動します。
1位皆藤愛子4級右肩に枯野の冷気7号車みぎかたにかれののれいきななごうしゃ
2位村上健志(フルーツポンチ)名人10段★2抜型を重ねて仕事納めかなぬきがたをかさねてしごとおさめかな
3位梅沢富美男名人10段★2初旅やほのかに匂ふポリ茶瓶はつたびやほのかににおうぽりちゃびん
4位北山宏光(Kis-My-Ft2)5級初旅や頬にぷくりとボンタンアメはつたびやほほにぷくりとぼんたんあめ
5位岩永徹也3級駅弁の箸割る音や去年今年えきべんのはしわるおとやこぞことし
6位森口瑤子5級シウマイは売り切れ駅も年の暮れしうまいはうりきれえきもとしのくれ
7位立川志らく名人初段正月の麻雀強し弁当屋しょうがつのまーじゃんつよしべんとうや
8位松岡充2級弁当あり水屋に三つ冬の朝べんとうありみずやにみっつふゆのあさ
最下位千賀健永(Kis-My-Ft2)名人初段酔い買った駅弁忘れ冬の空よいかったえきべんわすれふゆのそら

[順位発表順] 4位→5位→6位→2位→8位→3位→7位→最下位→1位
→編集後記

●梅沢名人のVTRコメント
スタッフ:ライバルは、予選では?
梅沢名人 聞くなよ、俺に。いちいちそういうことを。失礼だろ、ライバルがいるか俺の中に、え?
※移動中も駅弁を食べながら俳句を考え続けたという
梅沢名人 前回の優勝を逃したときにお手紙が来てね、小学校5年生の子かな。泣いたらしい、俺が優勝しなくて。全国のプレバトファンの90%は俺の客だよ。勘違いすんな。ん?他はその他大勢、え?

●予選免除者の決勝進出者予想
東国原藤本横尾中田ジュニア
梅沢・村上松岡千賀皆藤・森口志らく


◆発表待ちシートにて


※それでは順位別にみていきます。
1位◆『右肩に 枯野の冷気 7号車 皆藤愛子
◎うっとりする良い句。下五の状況で車内の窓側席と判明する展開が良い。下五でカーブする先頭車両も想像。

【本人談】
新幹線の車内で右の窓側に座っていると、肩に冷気がて窓を見ると枯野の風景が広がっていたという句。

藤本名人 良いです。
本人 ありがとうございます。
藤本名人 「右肩に」でどこの席に座っているか分かる。B席とかA席とか言わんでも。(新)大阪発東京行きならA席ですもんね。

夏井先生 
本当に良い句でうっとりした。上手い
右肩」と体の部位を具体的に書き、場所を示す「」の助詞。
季語「枯野」を含む中七までの展開で、なぜ右肩にだけ枯野の冷気があるのか?と小さな謎が読者の心にポンと投げ込まれる。
その瞬間に、下五「7号車」と状況が出てくる。読み終わった瞬間に、列車のどの席に座り、心持ち右の方に意識を傾けながら、窓外を眺める人物が想像できるのがとても上手い。
「7号車」の数詞が出たときに、広い枯野をゆっくりカーブする先頭の1号車が見えるかのような車窓の広がりが見えた
お上手、素晴らしい。

添削なし

2位◆『抜型を 重ねて 仕事納めかな 村上健志(フルーツポンチ)
◎情報量のある上五で職業を想像させる。動詞も的確な動作で流れが良い。安堵の詠嘆もゆったり。さすがの句。

【本人談】
「抜(ぬき)型」は野菜やクッキーの型を取る金属製の刃物。駅弁にも花びらの形の人参などがあることから発想し、それらを作る職人が年の暮に複数の抜型を重ねる動作と「仕事納め」との取り合わせが良いなと思って。

夏井先生 
これはやはり上手い
抜型」でどのような仕事かがある程度想像できる。兼題写真からだと弁当屋さんかと思うが、菓子屋さんの可能性もある。一単語で語ろうとする情報量がしっかりある
重ねて」もさり気ない動作だが、非常に的確な動作だと最後の季語「仕事納め」で判明する流れにある。
かな」の詠嘆もゆったりとしみじみとしており、単なる詠嘆ではなく安堵に近く、ねぎらいのような気持ちも表現された
「納め」の送り仮名「め」も柔らかさをあって成功
さすがだと作者に拍手を送りたい。

藤本名人 その顔なんやねん。
本人 逆に予選に出ちゃってごめんなさい。
一同 (笑)
ジュニア名人 腹立つわ~。

添削なし

3位◆『初旅や ほのかに匂ふ ポリ茶瓶 梅沢富美男
◎基本型を踏襲し安定だが置きにきた。曖昧な中七で匂い袋など想像させる展開も良い。下五で匂いも伝わる。

【本人談】
今の若い子は「ポリ茶瓶」は分からないはず。飲み物はペットボトルになってしまった。昔の駅弁を買うと一緒についてきた茶の容器「ポリ茶瓶」を飲みながら、良い年を迎えて初めて旅をする懐かしいなという句。

東国原名人 これはね、御大の戦略が見え隠れしますね。絶対外さない句です。3位以内を狙ってきてます。この定型のやり方、このね…
→本人が図星を突かれたのか笑いをこらえる
東国原名人 これはもう置きにいっていますよ、こんなもん。当たり前じゃないですか。取り合えず(予選)通過を狙ってるもん。全然勝負してないよ。芸風と全然違うから。

夏井先生 
私も作者が分かって確保しにきた、おっちゃんと思った。
初旅や」と季語+「や」で強調し、残りの12音でワンフレーズを作るという俳句の基本の型を押さえている
期せずして3位と4位(北山)の句は同じ季語で同じ型に入れた。安定感がある失敗しにくい方法を選んだ。
しかも、意図を伝える工夫がある。
心の華やぎや正月の明るさを持つ季語を強調した後、中七「ほのかに匂ふ」は曖昧な表現に見えるが、読者に1つ謎を投げている
美しい匂い袋などの雅(みやび)な物を読者に想像させておき、下五「ポリ茶瓶」で懐かしいグッズに着地する。
1回でも飲んだことある人は否応なく匂いも感触も伝わる。その狙いがある程度成功している。
「おっちゃん、置きにきやがった」と今思った。

浜田 これもうさっきから散々言われてます。皆さんにも言われてますけど、どうなんですか。どうしても予選通過したかったってことなんですか?
本人 はい、その通りです。
一同 (笑)
本人 どんな手を使っても予選だけは…通過したかったんです。
藤本名人 それできるって凄いですけどね。出来るのは凄いですよ。
本人 いやいや、それはあの…出来るんですよ。名人らしいなんて考えないで、予選だけは通ればいいな…と。
一同 (笑)

[ここがポイント]
確かな俳句の作り方
※5音の季語に12音のフレーズを取り合わせる技法は基本的な型。この句のように、型を大切にすることは確かな俳句を作る第一歩なんです。

添削なし

4位◆『初旅や 頬にぷくりと ボンタンアメ 北山宏光(Kis-My-Ft2)
◎型を踏襲した身の丈の句。下五の具体性でほのぼの感を演出。中七はありがちだが音の響きや楽しさを描写。

※駅弁を食べた後のおやつに発想を飛ばした一句。

【本人談】
小さい頃からボンタンアメ(セイカ食品)が好きで、旅の時に駅のホームで売られるイメージがある。その思い出を思い出して詠んだ。

横尾名人 
北山言ってたんですよ。「俺の俳句の作り方が最近わかった」とずっと言っていたんで。ただ、「ぷくりと」と可愛く言ってるのがスゲー腹立つ。
本人 なんで?
一同 (笑)

夏井先生 
型にキッチリ入れてきた
初旅」はその年の初めての旅のこと。良い季語。明るさや心の華やぎもある。
」の強調の後、「頬にぷくりと」。何かを食べている、入れているとわかる。
ボンタンアメ」と具体的な物を最後に出したのがとても良い。ほのぼのとした感じ。
最初迷ったのは、中七の描写はありがちかもしれないと思った。
しかし、「ボンタン」「ぷくり」の音の響きが楽しい上、「ボンタンアメ」を知っていれば、キャラメルくらいの大きさで柔らかいものと知っているので、「ぷくりと」はアメの大きさではなく、すぐに噛まずに口の中に入れている初旅の楽しさのような描写にもなっている。
そのため、全体を読むと一句の中で季語を活かす言葉として機能した。
自分の身の丈で句を詠んだ姿勢がとても良い。

浜田 いや、決勝進出おめでとう。素晴らしい。
本人 (お辞儀して)よろしくお願いします。
藤本名人 来たよ~。
横尾名人 来ちゃったか。
藤本名人 来ちゃった。
横尾名人 怖ぇよ。
藤本名人 眼中にない言うてたのに。
本人 誰の眼中にも俺多分入ってなかった!

添削なし

5位◆『駅弁の 箸割る音や 去年今年 岩永徹也
◎虚子の用いた季語への物凄い挑戦。季語は一瞬だけでなく「永遠」を備える。年またぎの一瞬を強調すべき。

梅沢名人 「去年今年(こぞことし)」を使ったか!
東国原名人 なるほど。

【本人談】
高浜虚子の「去年今年貫く棒の如(ごと)きもの」というオシャレな句を自身も作りたいと思い、この「去年今年」という季語を選んだ。一膳の割り箸は割ると2本に分かれるように、月日も本来は繋がっているが、「去年」「今年」という2つの言葉で扱いやすく分けられ、ある点を基準に分割できる。駅弁という個性が出る物を目の前にして、それぞれが新年を迎えるという気持ちを表現した。

→北山が終始首をかしげる仕草
浜田 北山に言うても分かれへんから。
一同 (笑)

藤本名人 高浜虚子の「去年今年」を引用したのは凄く良いんですけど。
ジュニア名人 知らんやろ!お前!(藤本名人を後ろから叩く) 嘘つくな。
藤本名人 高浜虚子やん。
浜田 あははっ。
藤本名人 高浜虚子の口癖や!
玉巻アナ 口癖。
ジュニア名人 「去年今年やで~」言うて?
浜田 口癖なん?口癖なん?
藤本名人 高浜虚子の口癖ですよ。
ジュニア名人 風呂入ったら「あ~、去年今年~」。
藤本名人 お風呂入る時な。

夏井先生 はっはっはっ。
藤本名人 めっちゃウケた。ありがとうございます。俳句ギャグです。
夏井先生 
物凄く頑張っている。強く褒めたい
去年今年」という難しい季語へ挑戦する姿勢を積極的に評価したい。
ただ、勿体ないところがある。
「去年今年」は、ゆく年くる年という単純な感慨を指す季語ではない
さっきまで今年だった時間が去年に切り替わる一瞬のイメージと、ゆく年くる年の感慨は永遠にまた来るというイメージを兼ね備えている。
これは”一瞬の奥に永遠を抱えている”かのような難しい季語。
虚子の句も一瞬と永遠を抱えている。
この句は、一瞬だけを意図したところが勿体ない
音や」で箸を割った瞬間の音を強調する。割った瞬間に去年になったという季語の片面だけを描いた点が勿体ない。
むしろ、興味を持った点がある。年をまたぐ時間帯に駅弁を食べていて、しかも列車に乗っている。この人物はどういう状況でこの夜に列車に乗っているのだろうか
「音や」としたい気持ちもわかるが、列車に乗る映像にしたら凄い句になる。今後のことがあるから、やってみる。
「箸割る」でカットを切る。割った瞬間の指の手ごたえや微かな音を読み手は感じ取る。
「去年今年の車窓」とし、列車の光景を持ってくる。
車窓には、暗がり・闇が続き、所々に街灯の光がスッと通り過ぎる。それが、通り過ぎる時間のイメージと重なって映像化されていく。
ここまでやっていれば、今日は1位を争った。

浜田 あら~。
本人 悔しい。

添削後
駅弁の 箸割る去年今年の

6位◆『シウマイは 売り切れ駅も 年の暮れ 森口瑤子
◎気負わず軽やかに日常を表現。上五で崎陽軒とわかり下五で忙しさも出た。散文的な助詞を変え対句表現に。

【本人談】
横浜・崎陽軒が販売する「シウマイ弁当」を父が大好きで、仕事終わりに駅で買おうとするも人気で大定番なのに完売で買えなかった。周りを見ると、いつもより人でごった返している駅も年の暮でシウマイも売り切れるのかと思った。

ジュニア名人 「シウマイ」が良いですね。これで崎陽軒と分かるのが凄く良い

夏井先生 
非常に軽やかで良い。この人の句は、気負う所なく日常の中からすくい取る。そこが上手いと思う。
上五の表記でどこのシウマイ弁当かが分かるのが粋
「売り切れ」「年の暮れ」で駅の賑やかさやせわしなさも書いている。
小さな問題点が1つある。「も」
梅沢名人 (呟くように)「」だな。
夏井先生 誰かが今言いましたね。
梅沢名人 私です!
夏井先生 なんて、おっしゃったんですか?
梅沢名人 売り切れ「も」じゃなく売り切れ駅「は」。
夏井先生 その通り。「は」でないと散文的になる。さすがですね。
一同 (笑)
夏井先生 
「シウマイ」は「売り切れ」。「駅」は「年の暮」対句表現になり、説明臭さが消える。
俳句では、「年の暮れ」の送り仮名「れ」は入れないことがある。この句の場合は入れない方が良い。
読むと「切れ」「暮れ」と「れ」の音が韻を踏むが、わざと韻を見せる感じになり、粋ではない。読んだときに「れ」の音が響く。
こうすれば、また評価が上がる。

本人 分かりました。
浜田 分かりました。
→急に自分を指さしてアピールする梅沢名人
浜田 どうしました?
梅沢名人 いや、私がちゃんと言ったことをもう1回テレビを通して言ってもらえると嬉しい。
浜田 (笑)
藤本名人 言いましたやん。
梅沢名人 いやいや、やっぱMCから。
浜田 今のを使ったらいいんでしょ?
梅沢名人 「は」を使った方が良いって私…。
浜田 やり取りも使えばいいわけでしょ?別にここ改めて言わないとダメなんですか?
梅沢名人 気づかない人もいますから。
浜田 あははっ。
藤本名人 分かってますよ。
浜田 腹立つわ~。

添削後
シウマイは売り切れ 駅年の

7位◆『正月の 麻雀強し 弁当屋 立川志らく
◎素材は良いが語順で誤解を生む。下五は場所だと誤読する。人物だと明確にして儲けてる弁当屋を表現する。

【本人談】
初詣に行き、おじさん達が「麻雀(マージャン)やると弁当屋が強い」と話しているのを聞いたことがある。なぜ弁当屋さんが強いかと思うと、弁当屋は正月三が日も忙しいためテンションが上がっていて、ぼんやりしている他の商店の連中に勝ってしまうということだと思って詠んだ。

梅沢名人 意味がつながらないんです。なんで「正月は麻雀強し弁当屋」何だろう。読んでる人は訳が分からない。失敗こいたね。

夏井先生 
今の話で「なるほどな」と思った。
この書き方では誤解を生む
中七「強し」で一旦切れ、自分か他人か誰かが強いとは分かるが、最後に「弁当屋」と唐突に出てくる
弁当屋という場所で麻雀をしているのか、麻雀中に弁当を届けてくれたのかなど読みを迷う。
弁当屋が麻雀をする4人のうちの1人で強い”が本人の意図。
それを書いたら良い。勿体ない。素材は面白い。
本人 「麻雀強”い”弁当屋」。
夏井先生 
「強い」でもいいけど、それだと言っただけで終わる。
藤本名人 ボロボロじゃないですか。
本人 ボロボロです。
夏井先生 
言っただけで終わるのは勿体ない。それくらい良いネタ。
「麻雀」で一度切る。「強い」を別の言い方にし、なおかつ弁当屋がメンバーの1人と分かれば良い
「弁当屋」の後、最後に「勝ち逃げ」はどうか。
忙しいんだよ、俺。勝ったところで抜けまっせ”みたいな。勝ち逃げする展開が、儲けている弁当屋らしさが出るのではないか。
こうしてたら順位は相当上がっていた。勿体ない。

浜田 またポカをやりました。
本人 しばらく「グッとラック!」休んだ方がいいかもしれない。
一同 (笑)
藤本名人 そらね、毎朝、毎朝。

添削後
正月の麻雀 弁当屋

8位◆『弁当あり 水屋に三つ 冬の朝 松岡充
◎三段切れが問題点。広い光景から数詞を最後にする語順なら映像が明快になる。発想は平凡で直しても7位。

※「水屋」とは台所のこと。

本人 メチャクチャ良い句ですよね~。
藤本名人 8位ですよ。

【本人談】
上五で「弁当あり」と言い切る。母親の作った弁当を想像した。台所に3つある弁当はイベントか何かと思いきや、「冬の朝」で寒さの厳しい冬の未明の時間にも早起きして子や主人の弁当を作る母を思わす句。

本人 何がダメなんですか?
中田名人 綺麗にまとめたと思うんですけど…
本人 お願いします、中田さん。
中田名人 (表情を変えず)普通の句ですね~。
一同 (笑)
本人 マジで?
ジュニア名人 これはブツブツと切れてるって先生は多分言いはりますね。
本人 それは、そうなんですよ。そうなんですよ。
藤本名人 切れてるね~、そうそう。ブツブツブツやね。

夏井先生 
ブツブツと切れている(三段切れ)。勿体ないのはただそれだけ。
上五「あり」でしっかり切れ、中七・下五で小さく切れる。これだけのこと。
本人の意図は十二分に理解できるが、広い光景から構築して最後に「三つ」が残る方が映像として分かりやすい。逆にするだけ。
「冬の朝水屋に弁当三つ」。冬の冷たい朝から水屋の映像になり、弁当が1、2、3と出てくる。意図が映像化され分かりやすくなるとは思う。

本人 直してたら(順位は)どこまで行ってたんでしょうか?
夏井先生 1つ上位かな
一同 (笑)
本人 普通の句や。普通や、普通の句やん。ありがとうございました。

添削後
冬の朝 水屋に弁当三つ

9位◆『酔い買った 駅弁忘れ 冬の空 千賀健永(Kis-My-Ft2)
◎動詞の多用で意味が分かりにくい。土産の駅弁を車内に忘れた状況を動詞を回避して季語に託す形で伝える。

【本人談】
年末に名古屋から父が来てくれるが、いつも土産にウナギを買ってきてくれる。新幹線でお酒を飲んでいたらウナギをどこかに置いてきちゃったっていうエピソードがあり、子が喜ぶ顔や姿を想像したが、置き忘れて切ない気持ちで見た冬の空も切なく感じたという句。

東国原名人 これは動詞の使い過ぎで、ごちゃごちゃして伝わりづらくなってるね。
浜田 なるほどね。
本人 え?
東国原名人 ピッチャーが振りかぶったら(バットを先に)振ってるわけ(笑)
藤本名人 投げる前に。
横尾名人 そもそも千賀さんは酒が飲めないんで、酒を飲んだ気持ちは絶対分かるはずないんですよ。
藤本名人 前もお酒飲めないのになんか、カクテルの句書いてたよね。
→前々回の炎帝戦で「ギムレット風死する夜に鳴る淡海」と詠み、決勝で最下位に沈んだ
横尾名人 カッコつけてるだけなんです。

夏井先生 
「酔い」「買った」「忘れ」と動詞を使い過ぎたのが一番大きな問題。
上五の2つの動詞は状況説明で必要だとしたら、「忘れ」と書かなくても忘れたことは伝えられる
上五も無理やり5音にした工夫は分かるが、「酔って」と字余りで自然な言い方にする。
「駅弁冬空の」とし、「忘れ」の動詞の代わりに置いてきたことを伝えるだけ。
何処(いずこ)」を用いて動詞を回避。駅弁を忘れた場所がどこかと思うと見上げた冬空の何処かなあ、という感じになる。

本人 次の句で「何処」は使わせていただきます。
藤本名人 そうなの?
浜田 なんや、それ。

添削後
買った 駅弁冬空の

***
浜田 というわけで、この4人(皆藤・村上名人・梅沢名人・北山)とこちらのメンバー(東国原名人・藤本名人・横尾名人・中田名人・ジュニア名人)で冬麗戦・決勝戦頑張っていただきましょう。
(VTR)梅沢名人 タブーに挑戦しました。はい。
→次回・決勝戦を放送するプレバト!!は2020年1月3日(金)午後6時から3時間SPです。

編集後記
今回は「年末年始の駅弁売り場」。数々の駅弁が並ぶシーンで帰省や旅行に発想を飛ばしやすいお題。ポイントは年末なのか、新年なのか、冬全般なのかで方向性を絞る点が冬麗戦では重要です。

1位は2回目の決勝進出となる皆藤さん。「枯野」は冬の季語ですが、なぜ兼題からこの季語を用いたのかが読み取れませんでした。しかし、指示語の「右」と「7号車」の具体的な数詞が大変機能し、光景「枯野」が澄み渡る効果も相まって、カーブする先頭車が車窓から見えるという味わいを先生が語ったのが1位通過の決め手でした。決勝で3位以内に入れば、タイトル戦勝率は鈴木光さんを抜いて女性トップに躍り出ますが、どうなるのか見ものです。

2位は予選から参加した村上10段。「仕事納」は年末の季語で句またがりに挑戦。「抜型」への発想力が巧みで女子っぽい考え方です。語ったように、抜型を使用する職人さんかもしれませんが、抜型を作る作業現場の人物かもしれません。最後の「かな」の使い方も自然で、まさに”してやったり”という村上さんの意図が透けて見えます。決勝では村上節がどこまで通用するのでしょうか。

3位も予選から挑戦した梅沢10段。こちらは新年の季語「初旅」でした。実際に飲んだことはないのですが、「ポリ茶瓶」という時代が読み取れる発想は旅情もあって見事です。特筆すべきは「ほのかに」という形容動詞で、梅沢名人は過去にも「にぎやか」「やはらか」と形容動詞を用いた句が特徴的。句の構築も自然で手馴れており、おそらく先生はこの句を見て御大の句だと薄々気づいていたはずです。10段の2名は決勝も考えて、いかに手を抜いて予選通過できるかが戦略上重要ですので、本当に省エネできたのかは決勝の句を見るしかありません。

4位は初通過の北山さん。こちらも御大と同じ新年の季語。非常にキッチリと出来た一句で、加点要素は多くありませんが減点要素もなく滑り込みました。北山さんは前回の「ピアスホール」の句と同様で、実体験を詠む姿勢が身に付いたのでしょう。「ボンタンアメ」の色や味わい、感触も感じられる一句です。千賀さんよりも好調な勢いになり、昇格査定も遠くないかも知れませんが、まず決勝での活躍に期待です。

ここまで4名が1月放送の決勝に進出です。

5位は5大会連続で予選敗退の岩永さん。「去年今年」は新年の季語ですが、評価の難しい一句。大変難解な語り口でしたが、要は「割り箸も年またぎの時間も本来は連続しているがある点を境に2つに分割でき、駅弁を前にその感慨を感じた」ということでしょうか。挑戦者が多い季語ですが、”瞬間”と”永遠”を抱える深い意味があるという先生の説明を真に受けると、「音や」と聴覚に焦点を絞るのは間違いだと分かります。岩永さんは「去年今年」の字面に惹かれて用いたと思いますが、中七は連続性を持つ動作に焦点を置いて「箸を割りけり」でも、作者がどんな場所にいるのか想像できるように思いました。スランプ脱出が難しい岩永さんですが、高IQを活かして誰も詠まないような独自性を確立して欲しいですね。

6位は初参加の森口さん。「年の暮」は年末の季語。新横浜駅の駅弁に着目した発想は上手く、表記にも工夫を凝らした部分はジュニアさんと似ていました。ただ、年末の忙しさを季語に重ねるのはやはりベタな感じがあるのか、加点要素が伸び悩みました。森口さんは「向日葵」「唐黍」「落葉」の季語の描写に心情を託すのが上手いのですが、今回初めて時候の季語に挑戦し、新たな一面を見せてくれました。

7位も5大会連続で予選敗退の志らく名人。「正月」は新年の季語。最後に落ちを見せる展開は落語家らしい構築の仕方で、「弁当屋」が人物だとすんなり理解できれば案外良い句です。春光戦の句、「ジョンレノンを聴く魚屋目借時」では「魚屋」が人物だと「聴く」ですんなり受け入れられましたが、今回の句は「強し」で言い切ったのが勿体ない所。「強き」なら下五に掛かりますが、麻雀の強さが強調されないのでは?と本人も判断に迷ったのかも。志らくさんは、第三者的な表現が多く、句の中に入って詠んでいる感じが弱く損しているように思います。後半は「仕出し屋に勝てん」と自分は負け組かと思わす表現なら臨場感が増すようにも思いましたが、先生の添削は一歩先をいつも行きますね。

8位は前回1位通過の松岡さん。季語「冬の朝」で駅弁から手作り弁当へ発想を展開。句としては大変無難な一句で、台所に3つの弁当があるところからそれを作る人物の背景を想像させたかったのかもしれません。「弁当あり」と敢えて最初に言い切ると、読者は後半の展開に期待感を持ちますが、ベタな発想が残念でした。三段切れは本人が敢えてやったような発言がありました。松岡さんは音楽・聴覚の発想に独自性が見られるのですが、今回鳴りを潜めてしまったので次回に期待です。

そして、予選の最下位は2大会連続で千賀さん。季語は「冬の空」。「酔い」で夜かと思わせて、最後に「冬の空」なので傍題「冬青空」のような昼間を想起させてしまい、時間帯で混乱する一句でした。「酔い買った」も不思議な音の響きですが、夜に大仕事を終えて二日酔いでベロンベロンの人物が新幹線で帰宅する人物の時間経過を詠んだなら理解できなくもないですが、一場面を切り取るという趣旨から大きく外れます。今回、千賀さんは兼題に相当悩まれたのではないでしょうか。エピソードも実体験なのかお茶を濁していましたし、「空」に着地するのは千賀さんの得意分野です。次回にリベンジを果たしてほしい所です。

総じて、今回は発想力勝負がポイントで、「駅」「駅弁」「弁当」と書いた句は見事に予選落ちし、それ以外の言葉を用いた句が決勝進出を果たしました。また、添削要素が少しでもあれば、どんなに俳句のタネが良くても下位に沈むという前々回大会以前の基準が適用されました。兼題からどれだけ発想を飛ばせるか、技術面では安定した句が詠めるか、その中で独自性をいかに発揮するかが順位を分ける要素になっています。

また、ジュニア名人が初めて予選の見届け人として免除者席に移りましたが、藤本名人との親和性が抜群でしたね。そして、句の指摘も藤本名人以上にできるような感じで勘の鋭さもあります。いよいよ次回は決勝戦と番組対抗戦もあり、当ブログも更新が大変です。皆様、よいお年をお迎えください。
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