【二択で】20191219 プレバト!!俳句紹介【才能査定SP】
- 2019/12/19
- 20:15
俳句 二択で実力査定スペシャル(第4回)
番組で紹介された俳句を紹介します。
◇スタジオ挑戦者:梅沢富美男、立川志らく、二階堂高嗣(Kis-My-Ft2)
※出演者が過去のプレバト!!俳句の二択問題に挑戦。より評価の高い句を予想してA・Bの札を挙げて解答し、その正解数を競う企画。解答者は誰が詠んだか知らない状態で判定する。
●二択紹介句
※「クイズ」はリンク内移動します。放送日・お題のリンクがあるものは通常回の各ページへ飛びます。リンク付きの作者(特待生・名人)は全俳句一覧ページへ飛びます。
クイズ | 二 択 | 放送日 | 査定 | 本句 ※簡易講評 | 作者 | 梅 沢 | 志 ら く | 二 階 堂 |
第1問 | A | 18/9/6 | 才能アリ | 朝の陽や父と煮詰めた柿のジャム ※作者のリアリティーが素直に出た | 小倉優子 | ① | ① | |
B | 19/2/28 | 凡人 | 雛しまう手に桃の花はらりはらり ※季重なりは季語に強弱をつける | 渡辺満里奈 | × | |||
第2問 | A | 19/2/7 | 凡人 | 10円の望郷流す春の雷 ※公衆電話の光景が描けてない | 三山ひろし | × | ||
B | 19/8/8 | 才能アリ | 夏の雲サイドミラーにひしめきぬ ※眼前のものを的確な言葉で描写 | 丘みどり | ② | ② | ||
第3問 | A | 19/8/1 | 凡人 | 人生のお守りとなり曼珠沙華 ※季語を活かす映像化が出来てない | IKKO | × | ||
B | 19/1/24 | 才能アリ | 冬空や商談前の缶コーヒー ※名詞による言葉の経済効率が良い | 松尾駿 (チョコレートプラネット) | ③ | ③ | ||
第4問 | A | 19/3/21 | 添削ナシ 昇格 | 道化師のギャロップのごと牧開 ※音楽と映像の見事な融合が見事 | 鈴木光 | ④ | ④ | ① |
B | 19/6/20 | 添削アリ 現状維持 | 赤錆の乾く傘立て旱梅雨 ※傘が錆びる本人の意図とズレた | 皆藤愛子 | ||||
第5問 | A | 19/2/7 | 現状維持 | 村営バス逃して不意に探梅行 ※「不意に」がゆるくて説明的に | 藤本敏史 (FUJIWARA) | |||
B | 18/8/30 | 1つ前進 | 草茂る洞窟のこと他言せず ※中七の表現が巧く想像を効かせる | 東国原英夫 | ⑤ | ⑤ | ② | |
第6問 | A | 19/7/4 | 1つ前進 | エルメスの騎士像翳りゆき驟雨 ※複合動詞が巧く季語を活かした | 村上健志 (フルーツポンチ) | ⑥ | ||
B | 19/3/21 | 現状維持 | 春昼の鳩の目ん玉見ゆる殺意 ※季語が持つ長い時間幅が損した | 東国原英夫 | × | × |
■添削で跡形もなくなった俳句ランキング ※「順位」はリンク内移動します。
1位 | 18/7/26 | 才能ナシ 10点 | 赤い糸緑の紙で白紙なり →冷房機外した穴と離婚の日 | 高畑淳子 | ※なぞなぞ俳句は添削不能。 語った実体験を一句にする。 |
2位 | 18/11/22 | 才能ナシ 10点 | クマわたし揺れる母観て露寂し →嫁ぐ秋母へ感謝のテディベア | 市川由紀乃 | ※「渡し・私」の工夫はつま らん。揺れるな!観るな! |
3位 | 17/11/30 | 才能ナシ 37点 | 落葉して都の宰杜の外 →首都落葉職を追われてよりの日々 | 舛添要一 | ※添削の方向性は本人次第。 職を追われた現状を書くべき。 |
4位 | 17/6/1 | 才能ナシ 30点 | 初運転梅雨の花道晴れ舞台 →初めてのハンドル握る梅雨の朝 | 博多華丸 | ※簡単なことを言いたいのに 言葉の無駄遣いの最たるもの。 |
◆スタジオトーク
梅沢名人 間違うことはない。
浜田 全部合うんじゃないかと。
梅沢名人 はい。
浜田 志らくはんも名人ですから。
志らく名人 俳句の力は梅沢御大にはまだまだ及ばないんですけども、まああの~、見る目は同等くらいかなと。
浜田 あはは。これはイケるんじゃないかと。
志らく名人 イケるんじゃないかと。
浜田 分かりました。(司会席に戻る仕草)さあ、頑張っていただきましょう。
二階堂 (立ち上がって)浜田さ~ん!
一同 (笑)
浜田 いやいや、二階堂がおる意味はどこにあんの?
玉巻アナ 二階堂さんは俳句査定最多出演の22回で、名人・特待生以外で最も俳句を知っている人ということで参戦していただきました。
二階堂 ありがとうございます。
浜田 あ~そう。最多なんやな。
二階堂 僕ホント数々の作品を見てますんで。
浜田 そらそうや。
二階堂 数々の名人の方々の「昇格~!」も見てきました。だから、プレイヤーじゃないんですよ。俳句は見るものだと。
一同 (笑)
第1問
▼才能アリ作品はどっち?
[A]お題:秋の味覚
『朝の陽や 父と煮詰めた 柿のジャム』 小倉優子
※兼題のさんまから同じく秋の味覚の柿に発想を飛ばし、自身の思い出を詠んだ作品
梅沢名人 うん。
浜田 う~ん、なるほど。
[B]お題:ひな祭り
『雛しまう 手に桃の花 はらりはらり』 渡辺満里奈
※雛祭りが終わり、雛人形を箱にしまう時の様子を詠んだ作品
◆解答者には誰が詠んだか教えず、俳句だけを見せている状態で判定する。果たして”才能アリ”の作品はどちらか?
梅沢名人 | 志らく名人 | 二階堂 |
A | A | B |
観客 (二階堂だけBに)えぇ~!
志らく名人 ふふふっ。
浜田 どこが良かったですか、Bの?
二階堂 「はらりはらり」ってその…落ちるような。
浜田 「はらりはらり」にちょっと引っかかったと。
二階堂 好きですね~。
梅沢名人 あ~そう。
浜田 梅沢名人はA。
梅沢名人 Bの場合は見ればすぐわかります。「雛」「桃の花」これ季語2つ入ってるんです。だからこれはもうダメでしょ。
○正解は…A(梅沢名人・志らく名人が正解)
二階堂 えっ…?何…何この回…。
一同 (笑)
→以下、通常回記事より引用
夏井先生
上五の切れが気持ちいい。「朝の陽や」という光だけ。朝という時間の光だけでカットが切れる。
中七で「父」が出てきて何をしているかも書いている。
下五で季語の「柿」が出てきてそれが「ジャム」であることがわかる。
父と柿のジャムを煮るという事実に作者なりのリアリティーがあるのが読み手にしっかりと伝わってくる。
俳句は自分の経験を素直に切り取って書くのが一番リアリティーが強く出る。素直さを大きく褒めたい。
一点だけ勿体ないのは「煮詰めた」。「煮詰めた」ってちょっと不味そうな気がしない?煮て煮て煮詰めるわけですから。
普通に「煮ている」とすると、今煮ているという感じになる。
昔父と一緒に煮ていた情景も浮かんでくるし、十分言いたいことは伝わる。
その素直さを大事に才能だと思って育ててくださいね。
本人 こんな気持ちにさせていただけるなんてほんとに…。
浜田 そんな感動の番組じゃないから。
添削後
『朝の陽や 父と煮ている 柿のジャム』
●凡人となったBの句の問題点は梅沢名人の指摘した季重なり。季語に強弱をつければ季重なりでも成立する一句に。
夏井先生
間違いなく季重なり。「雛しまう」とあるため、「雛」と「桃の花」というよりは、「雛納め」(雛祭りが終わった後に雛人形をしまうことを指す春の季語)との季重なりとなる。
季重なりがダメということではない。どちらかを主役にする配慮があればなんとかなる。
原句に一番近い形で直すなら、「桃の花」を主役にすることは可能かもしれない。
「雛しまう」は現在進行形で今しまっている。「桃の花」も今散っている。
ちょっとだけ、上五の時間を止める。雛をしまい終わったとする。
(中略)
「雛しまひたる」と完了の言い方にして、雛をしまってしまった。その手に今、桃の花が「はらり」と散っている。
(中略)
こうすると、雛をしまう行為は終わっていて、桃の花がはらりと落ちた。
本人 あと2冊本買います。
添削後
『雛しまひたる 手に桃の花はらり』
[上手な俳句の作り方]
季重なりは強弱を
※季語が2つある季重なりの場合、主役の季語がぶつかり合わないようにすることが大事。この場合、「雛しまひたる」と完了した光景にすると、目の前の「桃の花」の印象を強めることが出来ます。
第2問
[紅白演歌歌手対決]
▼才能アリ作品はどっち?
[A]お題:梅と公衆電話
『10円の 望郷流す 春の雷』 三山ひろし
※上京した春、公衆電話からふるさとに電話したくなった寂しさを雷の音が断ち切り、奮い立たせてくれたという思い出を詠んだ作品
浜田 なるほど。
[B]お題:お盆のサービスエリア
『夏の雲 サイドミラーに ひしめきぬ』 丘みどり
※サイドミラーに雲が映った様子を詠んだ作品
二階堂 りょう…。
浜田 ふふっ。
梅沢名人 | 志らく名人 | 二階堂 |
B | B | A |
*再び二階堂だけ異なる結果に観客から悲鳴が上がる
浜田 志らくはん、なぜBですか。
志らく名人 Bの方が大きい夏の雲があってポンとサイドミラーに小さくいって、これがパーッと映っているという。だからこれは絶対Bでしょ。
浜田 なるほど。これはもう梅沢さん。
梅沢名人 サービスエリアをテーマにしたんでしょうけど、その雲の方に発想を飛ばした所が、大したもん。
○正解は…B(梅沢名人・志らく名人が2問連続正解)
二階堂 なんかここまでくると凄いわ。
※「視線の誘導が素晴らしい」と絶賛されたBの句
夏井先生
目に映ったものを非常に素直に的確な言葉を選んで表現・描写できている。これは褒めないといけない。
「夏の雲」だけで視線は見上げている。
「サイドミラーに」の「に」は小さなものに焦点を絞っていく効果をもっている。
「ひしめく」という動詞を選んだのが全て。中七で、鏡の中にさらに焦点が絞られ、そこにひしめいている。夏の雲の勢いもわかる。
シンプルだけどよく作れている。作者を見て、あんぐり!
よく勉強した。偉い!
浜田 あんな感じやったのにねぇ。
夏井先生 はい。
添削なし
●Aの句は凡人査定。問題点は、公衆電話の光景が描けていない点。先生は、公衆電話の映像と故郷へ思いを寄せる心情を描く添削をしました。
添削後
『10円の望郷 受話器置く春雷』
第3問
[IKKO対決]
※エッセイを出版する本物のIKKO(イッコー)とそのモノマネでブレイクしたチョコレートプラネット松尾の対決
▼才能アリ作品はどっち?
浜田 どっちもIKKOさんですけど。
梅沢名人 どっちもIKKOじゃん。
[A]お題:猛暑日
『人生の お守りとなり 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)』 IKKO
※お墓参りに発想を飛ばし、お盆の時期に咲く曼珠沙華の花の様子を詠んだ作品
梅沢名人 なるほど。
二階堂 まんじゅしゃげ…。
浜田 なるほど。
[B]お題:冬の自動販売機
『冬空や 商談前の 缶コーヒー』 松尾駿(チョコレートプラネット)
※サラリーマンの冬の日常を描いた作品
志らく名人 う~ん。
梅沢名人 | 志らく名人 | 二階堂 |
B | B | A |
*もはや観客も予想の範囲内の反応に
二階堂 ちょっと待ってください。えっ、なんで? Bは分かりやすすぎません?
梅沢名人 いいんじゃない。風景も物語も、それから香り。コーヒーの。全部伝わってる。
○正解は…B(梅沢名人・志らく名人が3問連続正解)
二階堂 えっ!?
玉巻アナ アハハッ。
※「無駄のない言葉選び」が絶賛されたBの句
夏井先生
キッチリ出来ている。
「冬空」という季語を「や」で強調し、カットも切れる。
「商談前」という言葉の経済効率が良い。状況や人物が見える。時間もある程度想像ができる。
そして「缶コーヒー」という物が出てくる。しかも大事なのは、凡人の下の方の人たちなら、こういう展開の句を語りたいときにこの後に「飲む」とか「握って暖をとる」とか動詞を入れたくなるが、才能アリの人なら入れなくても「缶コーヒー」でわかると。それが理解できるからこういうことが出来る。
もう1つ。これは名詞と助詞だけでできている句。言葉がしっかり入っているので、意味の揺らぎが起こりにくい。言葉のメカニズムがわかってやっている人の句。
直しはいらない。
添削なし
●Aの句は凡人査定。問題点は、季語「曼珠沙華」を活かす映像化が出来ていない点。先生は、お墓の前で咲いている曼珠沙華の映像を描き、曼珠沙華の赤い色をより際立たせる光景へと添削しました。
添削後
『人生を 守り墓守(も)る 曼珠沙華』
第4問
[女性特待生対決]
※3級の現役東大生鈴木光と4級の皆藤愛子の対決
▼添削なしで昇格した作品はどっち?
[A]お題:春の旅行計画
『道化師の ギャロップのごと 牧開(まきびらき)』 鈴木光
※旅行のパンフレットの写真から春の牧場への力旅行に発想を飛ばし、放牧の様子を詠んだ一句
二階堂 あれ?なんかこれ…。
[B]お題:コンビニの傘
『赤錆の 乾く傘立て 旱梅雨(ひでりづゆ)』 皆藤愛子
※季語「旱梅雨」は梅雨の時期に雨がほとんど降らないこと。使われずに傘立てにささっているビニール傘の骨が錆びた様子を詠んだ作品
梅沢名人 | 志らく名人 | 二階堂 |
A | A | A |
*初めて三人の解答がそろう結果に
二階堂 (立ち上がって)やったぜ~! イエーイ! ワォッ!
志らく名人 (Bは)傘が錆びてるのか、傘立てが錆びてるのかが分かりづらい。
梅沢名人 その通りです。
浜田 そういうことですか。なるほど。
○正解は…A(二階堂が初の正解、梅沢名人・志らく名人は4問連続正解)
二階堂 よしっ!
梅沢名人 まあね。
二階堂 よしっ!
※Aの句の「道化師のギャロップ」はクラシックの曲名。先生は「音楽を組み合わせた映像化」を絶賛。
夏井先生
こんな展開でくると思いませんでしたね。これは~。
「道化師のギャロップ」。この曲の明るさ・勢い・元気さのイメージを音楽として聞かせながら、「のごと」比喩に展開していく。
3分の2全部を比喩に使ってしまっているので、後は季語とのガチンコ勝負しか残ってない。それが「牧開(まきびらき)」。
長い冬が終わって春になって牧場に出ていける、牛や馬が勢いよく駆けだしていくその映像が「ギャロップ」。
しかも「道化師」があるので、喜んでおどけている。そういうのが全部出てくる。
これは春を喜ぶ牛・馬の脚や蹄が全部見えてきた。
こんな風に音楽と映像を一緒に合わせて表現しようとする発想も見事。
本人 ありがとうございます。
添削なし
●Bの句は現状維持(説明次第では昇格だった)。実はたった1つのミスで昇格を逃した。
【本人談】
梅雨なのに雨が全然降らなくて、傘立てに一杯ささっているコンビニの傘やおうちの傘が赤くさびていたという句。
夏井先生
字面通りに読んだら、ワンランクアップ(昇格)だと思っていた。
なぜなら、「赤錆が乾いてしまった『傘立て』がそこにある。旱梅雨です」と。そういう解説をしていれば、何の問題もなくワンランクアップだった。
→浜田が笑いながら「傘」と言ったと東国原名人と確認をとる
しかしながら、これを読んだとき、少々疑った。
ひょっとして、これはあの「ビニール傘の骨って言い出すんちゃうかな?この子は?」と。
→顔を覆い隠してしまう本人
浜田 言い出しましたね。
夏井先生 言い出してしまいました。
特待生なら自分の思ったことと言葉が寄り添ってくれないと切ないはず。
そうなった時に、どれか諦めないと「ビニール傘の骨」と書けない。
どこを諦めるか。一番簡単なのは「立て」。「乾く」も「旱梅雨」で想像してくれると。
「ビニール傘の骨の」と書く。「赤錆旱梅雨」と続ける。
こうすると、あなたの言いたいことが言葉になる。
浜田 (ハイテンションに)傘って言っちゃったんだもん!
本人 傘立てって言えばよかったですね~。惜しかったです。
添削後
『ビニール傘の 骨の赤錆 旱梅雨』
→ここで特別企画。これまで番組で詠まれた俳句1545句の中から夏井先生の逆鱗に触れた挙句、添削で跡形もなくなったランキングを発表(いずれも才能ナシ査定)。
【添削で跡形もなくなった俳句ランキング】
◆1位 お題:離婚届
『赤い糸 緑の紙で 白紙なり』 高畑淳子(才能ナシ5位10点)
【本人談】
過去に2度離婚を経験。離婚届がどうして緑の紙なのか不思議でずっと頭にあったので、色を組み合わせたかった。
(中略)
離婚するとき「全部来た時と同じようにして」とお姑さんに言われて、嫁入り道具で持って行ったクーラーも外していこうってお母さんが言って外した。
引っ越し業者に「穴 空いてしまいましたなぁ。この穴は戻りませんね。」とええこと言うなって思い、句にしたかったがこの状況を詠むのは難しかった。
だからこの句は最高だと思ったんだけど10点!?
浜田 ようしゃべるなあ、もう。
夏井先生
しかし、これは俳句ではなく「なぞなぞ」。
[問題] 赤い糸を切るための緑の紙で白紙に戻せるもの な~に?
千原ジュニア 離婚届!
夏井先生
人はそれを離婚届と呼ぶ。
こういうのを俳句に直せと言われても私も呆然とする。これは添削不能。
しかし、今お話を聞いた穴の話はすごく良い俳句の種。一発でできる。
クーラーでもいいが、「冷房機」という季語がある。「クーラーを」でも良い。
「外した穴と離婚の日」とすれば、あなたの句として素晴らしい句。
私が作ったけどね、今。
添削不能
本人談より添削→『冷房機 外した穴と 離婚の日』
※残ったのは0音。文字通り、跡形もなし。
◆2位 お題:結婚式
『クマわたし 揺れる母観て 露寂(つゆさみ)し』 市川由紀乃(才能ナシ6位10点)
【本人談】
披露宴の最後に、自分が生まれた時と同じ体重のテディベアを母親に渡すというシーンを「クマ」を「渡す」。「わたし」は"渡し"と自分自身の"私"を掛けた。クマを受け取った母親の揺れ動く寂しい思いを娘として感じるという。
夏井先生
久しぶりにスゴイのが来た。
今話聞いて「わたし」は"私"と"渡し"を掛けてんの?
浜田 みたいですよ。
夏井先生
つまらん工夫ですね~。もう全くわからないとしか言い様がない。
(中略)
「寂し」と言わなくても寂しさは表現できるので、下五を季語として使うのは諦める。下五は消す。
次の問題点は「クマ」。「クマ」ではテディベアだとわからない。テディベアならそう書く。
「クマ」消して、(笑いながら)悪いけど下五の方に「テディベア」と…。
浜田 もう先生笑うてもうてるやん。
夏井先生
なんかね、怒る気力もなくなる。
最後に「テディベア」と出てくる語順の方がこれかとわかる。
「わたし」も言うな!「揺れる」って揺れるな!「母観て」も何言ってんだか、もう観るな!
浜田 「母」しか残ってないじゃないですか!
本人 原型がない。
夏井先生
「嫁ぐ」という状況をはっきり書く。「秋」と入れれば、いっぺんに状況と季語が入る。
「母へ」ですね。テディベアはお礼ですね。だから「感謝の」とする。
これであんたの言いたいことは一応出る。
もう久々だった、こんなの。
添削後
『嫁ぐ秋 母へ感謝の テディベア』
※残ったのは1単語「母」の2音。
◆3位 お題:初冬の代々木公園
『落葉(おちば)して 都(みやこ)の宰(つかさ) 杜(もり)の外』 舛添要一(才能ナシ5位37点)
※舛添は元東京都知事。公私混同問題の不祥事で都知事の職を追われたときの様子を一句に。都庁が近い代々木公園が兼題のため自分自身の境遇を詠んだはずだったのだが。
【本人談】
「落葉して」は私も落ちぶれたということを掛けた。「都の宰」は都知事という意味。「杜」は近くにある明治神宮。都知事の時はお客様を明治神宮へ案内していたが、外に出されて代々木公園という。その悪夢を詠ったのであまり俳句ではない。
夏井先生
これは作者が何を表現したいかによって評価が変わるタイプの句。
今の話をしっかり聞いたが、間違いなく才能ナシ。
職を追われた日々が杜の外にある。それを書かないと伝わらない。
「都」も東京だと分かるようにはっきり「首都」と書く。カッコよくしない。
「首都落葉」で無理やり上五を作る。ここから後は全ていらない。
自分の現状を書くしかない。
「職を追われてよりの日々」ぐらいでどうか。
一同 (笑)
浜田 メチャクチャやな。
梅沢名人 よく一発で出たね、その言葉。
夏井先生
最後の「日々」で落葉の散る日々と静かに重なっていく。
本人 これでね、スッキリ過去は捨てた方がいいというのが分かった。
一同 (笑)
添削後
『首都落葉 職を追われて よりの日々』
※残ったのは1単語「落葉」の3音。
◆4位 お題:雨のフロントガラス
『初運転 梅雨の花道 晴れ舞台』 博多華丸(才能ナシ5位30点)
※華丸は夏井先生と古くから親交があったが才能ナシに
【本人談】
新学期の時期に新社会人が車の免許を取得し、車を買う頃にちょうど梅雨がやってくる。初めての運転のために梅雨の道路でも私にとっては花道で、空は雨でも晴れ舞台だと。
梅沢名人 よくなっちゃんが30点くれたと思うわ。もうやめな俳句!
一同 (笑)
夏井先生
なんか意味の分かる句ではある。
意味はあるが、「初運転」という情報と「梅雨」という季語以外は、単に言葉を飾ってみただけで、この句にとって必要な情報は何一つありません。さっさと消す。
本人の話では、初めてのハンドルを握って朝出勤すると。
なぜそう書かないのか。別の意味で新たな憤りが生まれた。
「ハンドル握る」と書けば映像になる。「初めての」から始め、「ハンドル握る」で人物が出る。
ギリギリ「梅雨」を使って「梅雨の朝」とする。
こんな簡単なこと言いたいのに、「花道」だとか「晴れ舞台」だとか。
言葉の無駄遣いの最たるもの。
添削後
『初めての ハンドル握る 梅雨の朝』
※残ったのは「梅雨の」の3音。
第5問
[名人10段対決]
▼添削なしで「1つ前進」した作品はどっち?
[A]お題:梅と公衆電話
『村営バス 逃して不意に 探梅行(たんばいこう)』 藤本敏史(FUJIWARA)
※バスに乗り遅れ、歩きながら梅を探したときの様子を詠んだ作品
浜田 はぁ~。
梅沢名人 うーん。
[B]お題:夏休みの終わり
『草茂る 洞窟のこと 他言(たごん)せず』 東国原英夫
※少年時代、草むらで見つけた洞窟の思い出を詠んだ作品
志らく名人 これ、相当難しいですね。
二階堂 相当難しいですね。
梅沢名人 | 志らく名人 | 二階堂 |
B | B | B |
*またも全員揃ったため喜ぶ二階堂
梅沢名人 俳句の語順が素晴らしいですね。
浜田 そうですか。二階堂どうですか?
二階堂 Bのが…いくだろうなっていう。
一同 (笑)
梅沢名人 それも大事なことだわね。
○正解は…B(二階堂が2問目の正解、梅沢名人・志らく名人は5問連続正解)
二階堂 よしっ!
※Bの句の絶賛のポイントは?
夏井先生
「洞窟のこと」という言い方が上手い。洞窟で何か事件が起こったということは伝わる。
俳句はあまりにも短いので、洞窟の中で「何があった」「どういうことを考えた」というのを語っていくと一句はあっという間にパンクしてしまう。
17音という俳句の器をよく知った上であえて語らない。「洞窟のこと」という言い方をする。
「他言せず」という言い方もよかった。本人も語った「秘密にする」という言い方でも意味は通るが、ひょっとすると「少年の頃に起こった洞窟での事件を、絶対に大人になっても自分の中だけの秘密にしているのではないか」という意味も「他言せず」という言い切りの形にヒタヒタとある気がする。
(中略)お見事。
添削なし
●Aの句は星なしの現状維持。たった1つのミスが明暗を分けた。
夏井先生
勿体ないのは「不意に」だけ。迷ったのがありありと字面に出てる。
本人 他に言葉が思いつかなかった。
夏井先生 思いつくまでやるべきね(不意にを消す仕草)。
本人 うるさいな!うるさいな!
浜田 そらそうですよね、先生ね。そらそうですよ。
夏井先生
ただ「不意に」の三音だけだと難しいが、もう一音いらない音がある。「て」もいらない。「逃し」で良い。
「村営バス逃し」で、あぁ~行っちゃった。むしろ「逃し」で止めたほうが行っちゃった感がある。
ここから余った4音で色々やれる。
例えば、自分一人で村営バス待ってたなら、「ひとりの」と置く。
馬場 映像が出てくる。
夏井先生 出てくるよね。
それから、五人なら「五人の」とすれば、賑やかになる。
歩き出したなら「てくてく」とやればよい。可愛い感じになる。
4音で自分らしさやその時の状況を生々しく書ける。
浜田 メッチャ納得してるやん。
→本人は小刻みにうなずく仕草。
夏井先生
「不意に」なんて言葉で出来た気になってるのが「ゆるい」。
本人 メッチャ言いますやん!一発目(の収録)ですよ、今年。そんなに言わんでええんちゃいますか?
夏井先生
はい。不吉なスタートでしたね。
本人 アハハハ・・。
添削後
『村営バス 逃しひとりの 探梅行』
『村営バス 逃し五人の 探梅行』
『村営バス 逃してくてく 探梅行』
★いよいよ最終問題
浜田 お二人は今まで全部正解ですね。こっち(二階堂)は2問正解。
梅沢名人 まあ、そんなもんでしょ。
二階堂 名人(→正しくは特待生)の作品になってから正解してます。
浜田 あ、なるほど。次正解したら同点にしてあげよっか?
二階堂 やった~!
志らく名人 あはははっ。
二階堂 (嬉しそうに)ほんとですか?僕プライドとか一切ないですよ!
第6問(最終問題)
[タイトルホルダー対決]
▼添削なしで「1つ前進」した作品はどっち?
[A]お題:梅雨明けの銀座
『エルメスの騎士像 翳(かげ)りゆき驟雨(しゅうう)』 村上健志(フルーツポンチ)
※「驟雨」とは夏の季語で夕立のこと。銀座にある「エルメス」のビルの屋上に立つ騎士像。そこに夕立が降ってくる様子を詠んだ作品
梅沢名人 ああ…。
二階堂 凄い…。
[B]お題:春の旅行計画
『春昼(しゅんちゅう)の 鳩の目ん玉 見ゆる殺意』 東国原英夫
※観光地によくいる鳩に発想を飛ばし、自宅のベランダに巣を作った鳩を追い払おうとした時の鳩の様子を詠んだ作品
梅沢名人 うん。
二階堂 あっ、何だっけ。
浜田 なるほど。
***
梅沢名人 私もちょっと迷いました。
梅沢名人 | 志らく名人 | 二階堂 |
B | A | B |
*初めて梅沢名人と志らく名人で答えが割れる
二階堂 えぇ~!
浜田 はぁ~。これは中々最後に面白くなりましたよ。
梅沢名人 凄いなと思った。「鳩の目ん玉」。
浜田 志らくはんがお一人、A。
志らく名人 映像がポーンと切り替わる。ストーンと騎士像にいってそれがスーッと雨に変わっていくという。
浜田 なるほど。
○正解は…A(志らく名人が6問全問正解)
梅沢名人 私、村上の俳句嫌いなんですよ。
→浜田に肩をどつかれる
※Aの句の絶賛のポイントは?
夏井先生
「エルメスの騎士像」を知っている人は銀座のビルのあそこにあると、前半の言葉だけで映像を思い浮かべてくれる。
「騎士像」がクローズアップされる。そして「翳りゆき」。「騎士像」が「翳りゆき?」かと思うと、最後に季語「驟雨」が出てくる。
「翳りゆき」という言い方で、短い時間を映像として描写してくれる。この言葉の特徴。
夕立を連れてくる黒い雲が近づいてくる。雨の匂いもしてくる。そう思った瞬間に「驟雨」が騎士像の方から自分の方に降ってくる。
短い時間の映像・距離・皮膚感、全部伝えている。
「翳りゆく」ではなく、「翳りゆき」とすることで、時間が滑らかに季語に流れ込んでくる。
→「ゆく」「ゆき」の解説で本人が復唱するかのように合わせていました
これはいろいろよく考えて丁寧に作っている。
(終始ナルシストで優越感に浸る顔つきをする本人に)その顔は本当にイラつくけど、お上手だった。直しはいらない。
●Bの句は星なしの現状維持。季語「春昼」の使い方が明暗を分けた。
夏井先生
「目ん玉」という具体的な部位を取り上げる。ここに春という季節の光のようなものが見える、それが殺意だなと。
やはり「春昼」という季語が気になる。これは春の昼というのんびりとした昼間を指す時間軸を含んでいる季語。
これは鳩の目ん玉が一瞬光る、そこの殺意という映像の方に寄せた方が、絶対に色んな人が「鳩の目は怖い」と思ってくれる。
時間の幅が損をしている。
例えば、「鳩」からいった方が効果的。「鳩の目ん玉に」とし、「春日(はるひ)」という季語を使う。2つの意味を併せ持っている季語。「春日」とあれば読み手は「一日」のことか「太陽」のことか考えて読み解いてくれる。
季語【春日】
(1)春の一日 (2)春の太陽
「見ゆる」はこの場合いらなくなる。
「殺意」に続け、私なら「あり」と言い切る。「見ゆ」とする展開もある。
鳩の目ん玉のアップがあって、一瞬光る。それを殺意であると断定をする言い方になる。
本人 確かに「春昼」はホント迷った。この季語ねぇ~、僕は対照を重視しました。「目ん玉」と「殺意」ってのを春の光の中に逆に映えるのかなぁと、そっちを選んでしまいました。
添削後
『鳩の目ん玉に 春日の殺意あり』
※「春昼」は春の昼間という長い時間を持つ季語。この句の場合は、瞬間を切り取った方が映像が伝わりやすいと添削された。
■二択クイズの最終成績
梅沢名人 | 志らく名人 | 二階堂 |
5 | 6 | 2 |
浜田 志らくはん、全問正解~!
一同 (拍手)
浜田 素晴らしい。さあ、二階堂は2問正解。
→本人は納得しないのか首をひねる仕草
梅沢名人 1回あそこ(タイトルホルダー)に(肖像画が)載ったんだよ!
観客 えぇ~?
二階堂 誰…僕ですか?
梅沢名人 あ、違ったか。
浜田 コイツじゃないです。
二階堂 千賀じゃないですか?
→浜田に頭を叩かれる梅沢名人
二階堂 えっ、ちょっと…えっ? こんなに出てて名前まだ覚えてくれないんですか?
梅沢名人 ごめんごめん。
浜田 あははっ。
*来週はタイトル戦予選です!
編集後記
今回は復習企画として久々の二択クイズを中心とした放送でした。今回は新しい句もないので手短に。
スタジオ挑戦者は今年出演が多かった2名人と平場最多22回出演の二階堂さんでした。
まず、二択クイズは放送を毎回見ていた視聴者は簡単に判断できましたね。前半3問の句はいかに映像を描写できているかが重要でした。後半の特待生句は良句の判断が際どくなりますが、季語がマッチしているか、説明的でないかという細かい減点要素が少ない方を考えないといけません。
さて、出演回数が多いお三方が今回の紹介句で共演しているかどうか調べましたが、まず梅沢名人は第1問A・B及び第3問Bの句の合計3つの回に出演しており、クイズは答えられて当然の話。また、志らく名人は第1問Bと第6問Aの句の合計2つの回に出演しています。ここまでくると、二階堂さんは第1問から不利な展開になるのは当然で仕方のないことではあるのですが、第4問Aと第6問Bはともに春の旅行計画の回で、本人は「龍天に登る想いや地主神社」と詠んでおり、鈴木光さんの俳句は見事に正解。ただ、東さんの俳句も見ていたはずだったのですが…。それを思いだすかのような発言が放送内にありましたが、クイズは残念ながら外してしまい、挑戦前の意気込みが嘘のような結果になりました。ただ、目の肥えた名人の正解ばかりでは番組的につまらないためバラエティー的な役割を果たしてくれました。
そして、添削で跡形もなくなったランキングは4句発表されましたが、どれも3音以下しか残らない形に。しかし、実際は跡形もない添削句は他にも結構あるようです。時間稼ぎのコーナーなので、バラエティー向きな人選・句が取り上げられた様に思います。1位・2位は離婚・結婚がテーマ、3位は不祥事、4位は夏井先生の愛弟子とでしたからね。
また、番組で発表された句は1545句という発表がありましたが、当ブログでは現時点で1577句(ほかに一般19句)と集計しています。これは吟行SPを除き、夏井先生が黒板に貼った全ての句の数です(ドッキリ企画も含めます)。この誤差が何か検証していきたいところです。
さて、いよいよ次回は恒例の冬のタイトル戦・冬麗戦の開幕です。今回はドキュメンタリー的展開になるようですが、どうなるのか全く順位は読めません。当ブログは速報版・詳細版といつも通りの更新をする予定です。

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