20191212 プレバト!!俳句紹介【羽田空港からのモノレール】
- 2019/12/12
- 20:30
2019年12月12日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は講評の50字要約です。
挑戦者→大友康平[5],秋吉久美子[2],浅香唯[初],芦名星[初],陣内孝則[初],東国原英夫[55],梅沢富美男[85] ※数字は挑戦回数
●お題:羽田空港からのモノレール
※羽田空港にアクセスする「東京モノレール」と背後にビル・東京タワーが映る写真
※番号クリックでリンク内移動します。
→編集後記
◆発表待ちシートにて
※今回は東北・九州出身者が俳句に挑戦
★分布は才能アリ1名、凡人3名、才能ナシ1名と発表
***
→女優・秋吉久美子は映画オーディション合格を機に上京、高校時代とデビュー後の写真が公開
浜田 上京前は田舎もんですやんか。
秋吉 上京して2週間で仕事を始めていたので、スタッフに六本木に連れてってもらって、ディスコ行ったり…。
浜田 あなたの思い出話を聞いているわけじゃない。
秋吉 それが欲しいのかと思ってました。
***
→大友康平は大学在学中に軽音楽クラブの仲間とハウンド・ドッグを結成と紹介
大友 田舎もんは田舎もんでしょうがない。でも負けてたまるか!というのが凄くありましたね。
浜田 なるほど。
大友 でもレコーディングスタジオに行ったら山口百恵さんがいて、「あっ!山口百恵だよ」って。
浜田 あなたの思い出話を聞いているわけじゃない。(※2人目)
大友 あ、すみません。
浜田 すみませんじゃない。自信のほどはいかがですか。
大友 やっぱり陣内君と一緒で、曲で詩書いてますから。言葉のセレクションは天才的ですよね。
陣内 あ、それは…うん。
一同 (笑)
***
→陣内孝則はロックコンテストを機に上京
浜田 自信はどうなんですか、今日作ってみた…。
陣内 やれたと思いますけど。
秋吉 エェー!
陣内 は?いけませんか?自信持ったら。
一同 (笑)
秋吉 俳句って難しいよ。
***
→浅香唯は15歳で上京、中学時代の写真が公開される
浜田 可愛いよ、この頃はね。
浅香 ちょっと待って。「この頃は」?
一同 (笑)
▲凡人3位は浅香
東国原名人 65?
梅沢名人 まあね。
浜田 いや、点数は良いですよ。65。
浅香 良かった~。
***
→梅沢富美男は15歳で上京、海水浴をする兄との2ショット写真が公開
浜田 これ梅沢さん?確かにね。
梅沢名人 私が、オリンピック前の昭和38年(1963)に東京に出てきて、初めて海を見たんです。
浜田 初めて海を見たんですか?
梅沢名人 このくらいの時から、福島が生んだ名俳優というのが生まれたわけですよ。
浜田 (無視して)さあ、お隣は名人10段・東国原英夫さんでございます。
梅沢名人 いやっ、いや。
***
→東国原英夫は大学出身のため上京、20歳当時の写真が公開
秋吉 可愛い。
浜田 めちゃくちゃ毛ある!
一同 (笑)
東国原名人 ど~う?どう?どう? 全盛期!
一同 (笑)
***
→女優・芦名星は中学卒業後に上京、プリクラらしき高校時代の写真が公開
芦名 周りはギャルばっかりで。
浜田 あなたもそうでしょ?これは?
芦名 違いますよね?
浜田 あなたもそうですよ、これは。
▲凡人4位は芦名
芦名 うわっ、やばーい。
***
▲凡人2位は秋吉
浜田 でも68ありますから。
大友 (目を背けて)やっちゃったか。
***
大友 デビュー当時ね、(陣内は)めんたいロック。博多から来た。どぎゃん感じや!こっちは一応ロックンロールの俺は神様なんだ!みたいな。よくイベントも一緒にやりましたね。
浜田 あ~、そうなんですね?
陣内 先輩は歌が上手かったですからね。抜群に上手かった。
浜田 なるほど。何の言い合いをしてるの?
▲才能アリ1位は大友、才能ナシ最下位は陣内
大友 えぇっ!
浜田 陣内さん、芦名がずっと笑ってます。点数見て笑ってますよ。私の半分や思って笑ってますよ。
陣内 敗者の顔です!
***
浜田 何で足組んでんねん!康平!
大友 あ、すんません。
***
◆1位 才能アリ70点 大友康平
『空恋し ビルの谷間に 第九鳴る』
◎チャレンジ賞。上五で高村光太郎「智恵子抄」を思う。都会を敢えて陳腐に表現。下五で大晦日の気分を生む。
【本人談】
昔は詩人の方が「東京には空がない」と。ビルが沢山あって空が見えず、東京の空を見たときに故郷の広い空を思い出す。12月は色んな意味で切なくなるが、大みそかに第九が鳴ってもう1回(気持ちを)リセットして、来年から頑張ろうとみんなの心に光が降り注ぐのかなと思って詠んだ。
*「第九」は勿論ベートーヴェンの「交響曲第九番ニ短調作品125」を指す。合唱付きの有名な部分は第四楽章「歓喜の歌」と称される。戦後、現在のNHK交響楽団が12月に「第九コンサート」を演奏したことをきっかけに”年末第九”が習慣化したとされる(wikipedia他より)。
梅沢名人 これね、季語がないんですよ。でもね「第九鳴る」でもうホントに師走だなって感じがしますから。良い俳句なんだと思います。
夏井先生
なかなかのチャレンジ。
「空恋し」は高村光太郎『智恵子抄(ちえこしょう)』にある「東京には空が無い」という言葉を思い出した。
中七「ビルの谷間」は陳腐な言い方。上五で詩の言葉を思い浮かべると、故郷の空を恋しがっているという詩の空間が広がっているため、中七は常套句の言い方で敢えて都会を陳腐に意図的に書いたのではないかとも読めた。
問題は下五。まだ「第九」は季語ではない。しかしながら、第九が聞こえてくると、年末・大晦日と感じる新しい季節の気分が生まれている。そういう時代に私たちは生きている。
「第九鳴る」でも良いが、「鳴る第九」と最後に第九が高々に湧き上がってくる方が良いとする方法もある。
季語ではないものを新しい季語として提案する。
そういう意味でのチャレンジ賞も引っくるめてこれを1位にした。
添削後
『空恋し ビルの谷間に 鳴る第九』
◆2位 凡人68点 秋吉久美子
『オレンジの 東京タワーの 雪温し』
◎季語の温度感の感性が良い。中七と故郷の雪を心理的に比較して奥行きを出した。色を明確にして2カットに。
【本人談】
東京タワーは昔オレンジ一色だった。六本木を寒い心で歩いていても、どんな人にも心を温めてくれるのが東京タワーという想いをこめて。
梅沢名人 「オレンジの」という色を出したところは非常に東北人らしいですね。
一同 (笑)
浜田 ホンマですか?
梅沢名人 東北の冬景色の中はオレンジが多いんです。これ見たら東北人だなっていう感じがします。なかなか良い俳句なんだけどな、なんで2位だったのかな~。
東国原名人 そうですね、中七が8文字(音)というのが、ちょっともったいないですね。
梅沢名人 コレね、コレね。
浜田 いや「コレねコレね」じゃなしに。東さん言ったこと今乗ったでしょ。
梅沢名人 8つあるのは分かってましたよ。
浜田 あっ、ホントですか?
梅沢名人 郷土の人間なので、なるべく良くしてやろうと思って。
夏井先生
ウダウダ言っているが、下五の「雪温し」の感じ方が良い。
雪は本来冷たいもの。冷たいことを前提にして俳句を作ろうとするが、「温し」「東京タワー」が一句の中にあると自分の生まれた場所の雪と東京タワーのまわりに降る雪を心理的に比較して感じているかもしれないという読みも出てくる。
その奥行きが「雪温し」だけで言える。とても良い。
勿体ないのは上五。オレンジの”色”をしているなら、上五字余りにしても大丈夫なので…。
浜田 「色」か。
夏井先生 その通り。
誰かが言ったが、「オレンジ色の」。中七は「の」が不要。
「東京タワー」でカットが切れる。
オレンジ色の東京タワーがポッと浮かび上がる。カットが切り変わって雪の光景に行く。
調べもしっとりしてくる。
添削後
『オレンジ色の 東京タワー 雪温し』
◆3位 凡人65点 浅香唯
『冬日和 凛と車窓に 電波塔』
◎兼題を忠実に描く姿勢が素直で後半で映像化。「凛と」が凡人的でイメージを季語に重ね誤読を避ける語順に。
【本人談】
実際にモノレールに乗って東京タワーを見たとき、「わ~!こんな大きい建物があるっちゃ!」と凄く圧倒された。私も東京に染められずに「私」という人物で、こんな凛とした東京タワーになりたいという思いがあり、モノレールの中から見た思いに重ねた。
東国原名人 65点のわけは多分、「凛と」をもし使うんだったら「車窓に凛と電波塔」に(語順を)変えた方が良かったかもしれないという。その辺じゃないかな。
浜田 名人・梅沢さんも?
梅沢名人 まぁその通りですね。
一同 (笑)
梅沢名人 私、今言おうかなと思ってたんですよ。東君が先に言われてしまったので。同じことを言ってもね。
夏井先生 さすが。ダテに名人をやってない。
東国原名人 (ズッコケ気味に)「ダテ」?
夏井先生
兼題写真をきちんと忠実に描こうとしている。姿勢の素直さが良い。
後半「車窓に電波塔」で映像化もできている。
勉強したのが読んだだけで分かる。
問題点は指摘された部分。
「凛と」の言い方は凡人の人たちが使いたがる。
キリっと立っているものや清々しいものに「凛と」を使いたがる。
この「凛と」を活かす方向で添削したい。
季語「冬日和」が少し損している。穏やかに晴れた冬の日のこと。
この穏やかな感じと「凛と」のイメージがそぐわない。
季語を変える。空の青さを「冬晴(ふゆばれ)や」として強調する。深くて冷たい青が先に立つ。
名人の指摘通り「車窓に凛と」の語順に。
本人 なるほど、素晴らしい。
添削後
『冬晴や 車窓に凛と 電波塔』
◆4位 凡人60点 芦名星
『思い出の 東京タワーに 雪光る』
◎雪の粒が印象的ととらえた季語が良い。抽象的な上五がもどかしい。人物を描き字余りも解消しカットを切る。
【本人談】
初めて父親に東京タワーに連れて行ってもらったとき、その内部でグラスに似顔絵を描く人がいて凄く嬉しかった。思い出の東京タワーにその時のような雪がというのをそのまま詠んだ。
梅沢名人 「雪光る」というこれを使ったところが、福島県人だね。美しい。非常に良いんですよ。良いんですけど、「思い出の」とくると、これ凡人ですね。凡人の方は何でもかんでも「思い出」って書くんです。
浜田 あははは。どう変えたら良いんですか?
梅沢名人 …急に言われても。
一同 (笑)
夏井先生
おっちゃんの言う通り。でも急に言われてもなんか言えよといつも思う。
この句は言いたいことはきちんと伝わる。
「雪光る」も良い。雪の粒が見えるような光を印象深くとらえた。
勿体ないのは「思い出の」。読み手からすると、「どんな思い出なのか?」「誰と行ったのか?」というヒントが書かれていないので、もどかしい。
父と一緒に行ったなら、それを書くだけ。
「父と来た」で上五になる。
中七は極力字余りにしない。「に」は不要。
「東京タワー」でカットが切れる。カットが切り替わると、東京タワーの展望台のガラスの向こうに雪がキラキラと光りだす。
子どものもっと小さい頃を表現したいなら、「ひかる」と平仮名にすると可愛い。
これなら順位がシュッと上がる。
本人 凄いです、今感動しました。こういう風に書きたかった。
添削後
『父と来た 東京タワー 雪ひかる』
◆最下位 才能ナシ35点 陣内孝則
『ビル集い 踊る師走の スクリーン』
◎擬人化でコケた。ビル窓に師走の喧騒が映るとは伝わらない。時候の季語に映像を確保する。歌詞のような句。
梅沢名人 いやいや、これはもうね。これは、ダメですよ。
【本人談】
東京の師走は忙しい。都会の喧騒をビルの窓に移している。窓をスクリーンに見立てて一句を詠んだ。
東国原名人 「師走」が「踊る」。「ビル」が「集う」。それが「スクリーン」。もう、典型的な歌詞としては成立するんだけど、俳句としては成立してない。
大友 そう。そうなんですよ。歌詞として登場する言葉ですよね。
夏井先生
確認します!
窓がスクリーンみたいだなっていうことなんですね?
本人 そうです。
夏井先生 ビルたちが歩き出して集まってきて踊りだすというアニメのような映像を作りたかったわけではないんですね?
本人 それも含めて、師走の…師走のせわしなさを表現したかったんです。
夏井先生 この期になんで二股公約みたいなことを!
本人 だって、そうじゃないですか。
夏井先生
何が問題か。擬人化でコケている。ここは擬人化してる場合じゃない。
ちゃんと映像に持っていかないといけない。スクリーンみたいなビルの窓ですよね?それを書くだけ。
「スクリーンめく」で、スクリーン”みたいな”。「ビルの窓」で映像はひとまず確保できる。
問題は季語「師走」をどのように活かすか。時候の季語には映像がない。
「スクリーンめくビル」に何か映像が映ってほしい。映像を足す。
「空は師走」とする。これで上五。「の」は不要。最後「窓」に着地すると、師走の空・雲が動いて映る。
こうすると、俳句の映像になっていく。
本人 さっき東さんが言ったように、ちょっと歌詞書くみたいに書いちゃったんで、それが…失敗だったのかなと思いましたけどね~。
浜田 そうですね、やり方が分かればまた…。
添削後
『空は師走 スクリーンめく ビルの窓』
★永世名人への道★
玉巻アナ 東国原さんは現在星が1つです。
浜田 (前回は)現状維持でしたっけね?
東国原名人 前回現状維持で。この1年何か月ずーっと行ったり来たり…。
浜田 上がったり下がったり。
東国原名人 健康な心電図みたいな。
一同 (笑)
東国原名人 全然上がらない、下がらない。
◆『オッケーグーグル 冬銀河にのせて』 東国原英夫
※スマホなどに話しかけて操作する機能「オッケーグーグル(OK,Google)」を入れ込み、五七五を大胆に崩した一句
【本人談】
チャレンジの句。「オッケーグーグル」。独りで都会にいて、”冬銀河に乗せてくれないか”と話しかける。都会の生活に疲れて、空を見上げて田舎の方で見ていた冬銀河に乗せてくれないかなっていうような。
梅沢名人 「オッケーグーグル」を持ってきたとこなんか、凄いな~。
浜田 分かってます?オッケーグーグル。
梅沢名人 えっ?
一同 (笑)
梅沢名人 あの…スマ…ホなんかを持って…。
浜田 え?なんて?
梅沢名人 携帯持って、「オッケーグーグル」。何何が何?っていうと答えるやつでしょ。
*いわゆる音声認識AIシステム(スマートスピーカー)の一種。「OK,Google」はGoogleアシスタント(Google Home)の呼びかけの言葉。他にもApple社のSiri(Home Pad)やAmazon社のAlexa(Amazon Echo他)など、各社がこぞって開発し、商品化している。
梅沢名人 ただ、私にはこういう俳句は書けません。あ゛~~立派なもんだ!
夏井先生
この句の評価のポイントは後半「冬銀河にのせて」というお願いの是非です。
■査定結果
名人10段★2へ1つ前進
理由:取り合わせがはまった!
◎取り合わせ勝負でグーグルがやれる事では無意味。未来を予見させ作者を代弁する季語が成功。口調も可愛い。
本人 (立ち上がって)おお~!よしっ! 1年半で初めて(星)2つ。
梅沢名人 ほら!
本人 ありがとうございます。
夏井先生
やってくれたなという感じ。
「オッケーグーグル」は8音ある長い言葉。17音分のうち8音をこの単語に使うと、あとどんな季語と取り合わせるかという、取り合わせの勝負が大半を占める。
そうなると、『グーグル』に本当に頼んでやってくれるものを持ってきてもしょうがない。
『グーグル』さんは、例えばお天気を教えてくれたり、アラーム知らせてくれたり、暖房のスイッチ入れてくれたり、色々とやって下さる。
浜田 よう知ってますね!
夏井先生 知ってはいるんです、使ってはおりませんが。
例えば、「オッケーグーグルストーブつけて」なら話にならない。取扱説明書の一文になってしまう。
浜田 ハハハ、話にならない。
夏井先生
ここの選択は、今の段階で『グーグル』さんは聞いてくれないが、イメージとして未来を予見させたり、作者の気持ちを代弁したりという、そのような選択の季語になる。大変難しい。
よく「冬銀河」持ってきたなと。冬銀河の向こうから未来がやってくるイメージもある。
「のせて」の口調が可愛い。このおっちゃん(=都会で独りの人物)の口から出てくると思うとなおさら。
楽しませていただいた。当然直しなし。
浜田 1つ前進でございます。
本人 ありがとうございます。
梅沢名人 おめでとうございます。
添削なし
玉巻アナ 続いては、名人10段梅沢富美男さんのプレバト永世名人を目指した昇格試験です。
梅沢名人 今日は気合い入ってますよ!
浜田 ああ、そうですか。
梅沢名人 哀愁ただ…よう…俳句ですから。
一同 (笑)
浜田 言えてへんやん、さあいこう。
◆『笹鳴の 庭後にして 帰京せり』 梅沢富美男
【本人談】
笹鳴(ささなき)は冬の季語。「ホ~ホケキョ」と鳴く鳥がいるがまだそこまで鳴けず、雛が「コケコケコケ」と鳴く。今度田舎に帰る時までにはしっかり鳴いてくれるのか、父母を実家に残して東京へ帰るが大丈夫なのかと思いながら東京へ戻ったという。
本人 西の方は東京駅だと思いますが、北の方は(上京は)上野駅なんです。
浜田 はい。
本人 上野駅に着いたときに、井沢八郎さんの曲(『あゝ上野駅』1964年)が流れるんです。
♬どこか故郷の香りをのせて~
一同 (笑)
浜田 うるさいなあ、もう。
本人 この歌で涙したもんですよ。
浜田 ああそうですか。
本人 この哀愁漂うこの俳句。これに…ケチなんかつけてみやがれ!ホントに。
夏井先生
この句の評価のポイントは中七「後にして」の是非です。
本人 そこかい。
一同 (笑)
■査定結果
名人10段★2へ1つ後退
理由:いちいち説明するな!
◎いつになったら「説明」の意味が分かるのか。中七は完全に不要。帰京前の映像だと明確にして反復で調べを。
玉巻アナ 梅沢富美男さんは星2つに…。
本人 ふざけろよ、お前。
浜田 これで東さんと並びました。
(査定評の後)
本人 何が説明だ! お前さんは西側だから分かんねぇんだ!四国だから。
一同 (笑)
浜田 うるさいな。
夏井先生 西も東も関係ない!
一同 (笑)
夏井先生 一体、いつになったら”説明をするな”という私の言っている意味が分かるんですか!
本人 (声を荒げて)日本全国で分からない人もいるんだよ!
夏井先生 段々腹立って何言うのか忘れそうになる。
言いたいことは伝わる。平場の人たちとは全然違う。
ただ、「後にして」は完全に説明の言葉。こんなこと言わなくても、この庭を後にして帰京したと一発で分かる。
それをやらないから怒っている。こんなもの全くいらない。
本人 ウッ!
夏井先生 「ウッ!」じゃない。
簡単な話。「帰京せり」と頭の上五に。「せり」は完了なため”今、帰京した”とわかる。「後にして」など不要。
カットを切って、「笹鳴の庭」とする。しかし、これだけでは帰京した東京の自宅の庭が笹鳴きの庭だと思われては困る。
余った5音で、帰京する前の故郷の庭だと分かる映像を置く。
今ポロっと良い言葉があった。父や母の庭を後にしてということなんでしょ?
本人 そうだよ。
夏井先生 書きゃいいじゃん!
本人 書け…。
夏井先生
平仮名で書くと優しい。「ふぼ(父母)の庭」と書く。
「庭」のリフレインが故郷を思う調べになるでしょ。
本人 ジジババ書いたら怒るだろ!また!
浜田 何をやねんな、もう。
夏井先生 ジジババ書いて怒ったことはないよ。ババアって言われるから怒るだけです。
一同 (笑)
添削後
『帰京せり 笹鳴の庭 ふぼの庭』
編集後記
お題は空港からの東京モノレールと東京タワーが見える写真。乗り物繋がりで「ゆりかもめ」であれば季語でしたが、今回も季語探しが大事な一枚でした。
今回は「上京」の状況を込めやすい人選ということで、東北・九州出身者の回でした。最近は何かと共通点のあるキャスティングが続きます。
1位は2回目の才能アリとなる大友さん。「智恵子抄」からの一節の入れ込みが成功し、夏井先生の読みを広げました。下五の「第九鳴る」で季節感を上手く表現しましたが、「第九」が季語ではなかったのは意外でした。ミュージシャンらしく聴覚に着目しながら、都会の喧騒を切り取った一句です。
2位は前回才能アリだった秋吉さん。東京タワーは現在オレンジ色と白で塗られていますが、時代背景を感じる一句。中八は確かに気になりますが、「雪温し」と一瞬季語にも見える形での触覚による温度の対比が評価されました。大変手馴れているように思います。
3位は初登場の浅香さん。「凛と」は凡人的表現というのは初耳で、当番組でも過去に例はありません。しかし、先生は様々な大会や句会で見飽きているようでした。「電波塔」は過去にミッツさんが「雪晴れの高き川面の電波塔」と詠んでいます。季語のイメージもよく勉強しておきたいですね。
4位は初登場の芦名さん。「雪光る」も季語のように聞こえますが、映像描写に成功していました。ここでも中八は気になりますが、実体験から発想した姿勢は良かったですね。「雪」と同時に太陽が出て「晴」れているかもしれないという2つの天気の対比も感じ取れます。
最下位は初登場の陣内さん。イメージ画像にスポンジボブのようなビルが踊る映像が出てしまいましたが大変非現実的なので、密集したビルの合間に踊りながらYoutuberでもやっている人物でも詠んだのかと思ってしまいました。擬人化には気を付けたいところです。
永世名人査定はどちらも個性的な句で勝負。
東国原名人はまさかの音声認識AIシステムから発想。後半は人物のセリフであれば「冬銀河にのせて」と鍵括弧があると分かりやすいと思いましたが、取り合わせが成功という評価。後ろめたい人物の心情を未来的な季語に託すという姿勢が良かったです。東さんは毎回そうですが、”チャレンジ”したことを夏井先生ならどのように評価されるかという懸けが凄いです。
対する梅沢名人はまた後退。「帰郷」ではなく「帰京」なのが1つのポイント。「後にして」が説明的という指摘でしたが、個人的には時系列で叙述的な語り口の方が気になりました。「帰京せり笹鳴きの庭後にして」の方が余韻のある語順に思いますが、これでもアウトだったのでしょうか。基本的に梅沢名人は自信がある時は大概ダメで、その逆もしかりなのですが、夫婦漫才を平場の出演者も含めて楽しんでいるのが良いですよね。
これで星2つに村上名人を入れた3名が並ぶ大混戦。もう年末かという感じで時間の過ぎるのは早いものです。
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は講評の50字要約です。
挑戦者→大友康平[5],秋吉久美子[2],浅香唯[初],芦名星[初],陣内孝則[初],東国原英夫[55],梅沢富美男[85] ※数字は挑戦回数
●お題:羽田空港からのモノレール
※羽田空港にアクセスする「東京モノレール」と背後にビル・東京タワーが映る写真
※番号クリックでリンク内移動します。
1 | 才能アリ1位70点 | 大友康平 | 空恋しビルの谷間に第九鳴る | そらこいしびるのたにまにだいくなる |
2 | 凡人2位68点 | 秋吉久美子 | オレンジの東京タワーの雪温し | おれんじのとうきょうたわーのゆきぬくし |
3 | 凡人3位65点 | 浅香唯 | 冬日和凛と車窓に電波塔 | ふゆびよりりんとしゃそうにでんぱとう |
4 | 凡人4位60点 | 芦名星 | 思い出の東京タワーに雪光る | おもいでのとうきょうたわーにゆきひかる |
5 | 才能ナシ5位35点 | 陣内孝則 | ビル集い踊る師走のスクリーン | びるつどいおどるしわすのすくりーん |
6 | 名人10段★2へ 1つ前進 | ★東国原英夫 | オッケーグーグル冬銀河にのせて | おっけーぐーぐるふゆぎんがにのせて |
7 | 名人10段★2へ 1つ後退 | ★梅沢富美男 | 笹鳴の庭後にして帰京せり | ささなきのにわあとにしてききょうせり |
◆発表待ちシートにて
※今回は東北・九州出身者が俳句に挑戦
秋吉久美子 | 福島県 いわき市 | 高3の夏に応募した映画オーディション合格を機に上京 |
大友康平 | 宮城県 塩竃市 | 東北学院大学在学中にハウンド・ドッグを結成 |
陣内孝則 | 福岡県 大川市 | ヤマハ主催のロックコンテスト優勝を機に21歳で上京 |
浅香唯 | 宮崎県 | 15歳で中学卒業後その足で上京 翌日番組アシスタントでデビュー |
芦名星 | 福島県 | 中学卒業後芸能界を目指して上京 |
梅沢富美男 | 福島県 | 15歳で劇団入団のため上京 |
東国原英夫 | 宮崎県 | 大学進学を機に上京 |
★分布は才能アリ1名、凡人3名、才能ナシ1名と発表
***
→女優・秋吉久美子は映画オーディション合格を機に上京、高校時代とデビュー後の写真が公開
浜田 上京前は田舎もんですやんか。
秋吉 上京して2週間で仕事を始めていたので、スタッフに六本木に連れてってもらって、ディスコ行ったり…。
浜田 あなたの思い出話を聞いているわけじゃない。
秋吉 それが欲しいのかと思ってました。
***
→大友康平は大学在学中に軽音楽クラブの仲間とハウンド・ドッグを結成と紹介
大友 田舎もんは田舎もんでしょうがない。でも負けてたまるか!というのが凄くありましたね。
浜田 なるほど。
大友 でもレコーディングスタジオに行ったら山口百恵さんがいて、「あっ!山口百恵だよ」って。
浜田 あなたの思い出話を聞いているわけじゃない。(※2人目)
大友 あ、すみません。
浜田 すみませんじゃない。自信のほどはいかがですか。
大友 やっぱり陣内君と一緒で、曲で詩書いてますから。言葉のセレクションは天才的ですよね。
陣内 あ、それは…うん。
一同 (笑)
***
→陣内孝則はロックコンテストを機に上京
浜田 自信はどうなんですか、今日作ってみた…。
陣内 やれたと思いますけど。
秋吉 エェー!
陣内 は?いけませんか?自信持ったら。
一同 (笑)
秋吉 俳句って難しいよ。
***
→浅香唯は15歳で上京、中学時代の写真が公開される
浜田 可愛いよ、この頃はね。
浅香 ちょっと待って。「この頃は」?
一同 (笑)
▲凡人3位は浅香
東国原名人 65?
梅沢名人 まあね。
浜田 いや、点数は良いですよ。65。
浅香 良かった~。
***
→梅沢富美男は15歳で上京、海水浴をする兄との2ショット写真が公開
浜田 これ梅沢さん?確かにね。
梅沢名人 私が、オリンピック前の昭和38年(1963)に東京に出てきて、初めて海を見たんです。
浜田 初めて海を見たんですか?
梅沢名人 このくらいの時から、福島が生んだ名俳優というのが生まれたわけですよ。
浜田 (無視して)さあ、お隣は名人10段・東国原英夫さんでございます。
梅沢名人 いやっ、いや。
***
→東国原英夫は大学出身のため上京、20歳当時の写真が公開
秋吉 可愛い。
浜田 めちゃくちゃ毛ある!
一同 (笑)
東国原名人 ど~う?どう?どう? 全盛期!
一同 (笑)
***
→女優・芦名星は中学卒業後に上京、プリクラらしき高校時代の写真が公開
芦名 周りはギャルばっかりで。
浜田 あなたもそうでしょ?これは?
芦名 違いますよね?
浜田 あなたもそうですよ、これは。
▲凡人4位は芦名
芦名 うわっ、やばーい。
***
▲凡人2位は秋吉
浜田 でも68ありますから。
大友 (目を背けて)やっちゃったか。
***
大友 デビュー当時ね、(陣内は)めんたいロック。博多から来た。どぎゃん感じや!こっちは一応ロックンロールの俺は神様なんだ!みたいな。よくイベントも一緒にやりましたね。
浜田 あ~、そうなんですね?
陣内 先輩は歌が上手かったですからね。抜群に上手かった。
浜田 なるほど。何の言い合いをしてるの?
▲才能アリ1位は大友、才能ナシ最下位は陣内
大友 えぇっ!
浜田 陣内さん、芦名がずっと笑ってます。点数見て笑ってますよ。私の半分や思って笑ってますよ。
陣内 敗者の顔です!
***
浜田 何で足組んでんねん!康平!
大友 あ、すんません。
***
◆1位 才能アリ70点 大友康平
『空恋し ビルの谷間に 第九鳴る』
◎チャレンジ賞。上五で高村光太郎「智恵子抄」を思う。都会を敢えて陳腐に表現。下五で大晦日の気分を生む。
【本人談】
昔は詩人の方が「東京には空がない」と。ビルが沢山あって空が見えず、東京の空を見たときに故郷の広い空を思い出す。12月は色んな意味で切なくなるが、大みそかに第九が鳴ってもう1回(気持ちを)リセットして、来年から頑張ろうとみんなの心に光が降り注ぐのかなと思って詠んだ。
*「第九」は勿論ベートーヴェンの「交響曲第九番ニ短調作品125」を指す。合唱付きの有名な部分は第四楽章「歓喜の歌」と称される。戦後、現在のNHK交響楽団が12月に「第九コンサート」を演奏したことをきっかけに”年末第九”が習慣化したとされる(wikipedia他より)。
梅沢名人 これね、季語がないんですよ。でもね「第九鳴る」でもうホントに師走だなって感じがしますから。良い俳句なんだと思います。
夏井先生
なかなかのチャレンジ。
「空恋し」は高村光太郎『智恵子抄(ちえこしょう)』にある「東京には空が無い」という言葉を思い出した。
中七「ビルの谷間」は陳腐な言い方。上五で詩の言葉を思い浮かべると、故郷の空を恋しがっているという詩の空間が広がっているため、中七は常套句の言い方で敢えて都会を陳腐に意図的に書いたのではないかとも読めた。
問題は下五。まだ「第九」は季語ではない。しかしながら、第九が聞こえてくると、年末・大晦日と感じる新しい季節の気分が生まれている。そういう時代に私たちは生きている。
「第九鳴る」でも良いが、「鳴る第九」と最後に第九が高々に湧き上がってくる方が良いとする方法もある。
季語ではないものを新しい季語として提案する。
そういう意味でのチャレンジ賞も引っくるめてこれを1位にした。
添削後
『空恋し ビルの谷間に 鳴る第九』
◆2位 凡人68点 秋吉久美子
『オレンジの 東京タワーの 雪温し』
◎季語の温度感の感性が良い。中七と故郷の雪を心理的に比較して奥行きを出した。色を明確にして2カットに。
【本人談】
東京タワーは昔オレンジ一色だった。六本木を寒い心で歩いていても、どんな人にも心を温めてくれるのが東京タワーという想いをこめて。
梅沢名人 「オレンジの」という色を出したところは非常に東北人らしいですね。
一同 (笑)
浜田 ホンマですか?
梅沢名人 東北の冬景色の中はオレンジが多いんです。これ見たら東北人だなっていう感じがします。なかなか良い俳句なんだけどな、なんで2位だったのかな~。
東国原名人 そうですね、中七が8文字(音)というのが、ちょっともったいないですね。
梅沢名人 コレね、コレね。
浜田 いや「コレねコレね」じゃなしに。東さん言ったこと今乗ったでしょ。
梅沢名人 8つあるのは分かってましたよ。
浜田 あっ、ホントですか?
梅沢名人 郷土の人間なので、なるべく良くしてやろうと思って。
夏井先生
ウダウダ言っているが、下五の「雪温し」の感じ方が良い。
雪は本来冷たいもの。冷たいことを前提にして俳句を作ろうとするが、「温し」「東京タワー」が一句の中にあると自分の生まれた場所の雪と東京タワーのまわりに降る雪を心理的に比較して感じているかもしれないという読みも出てくる。
その奥行きが「雪温し」だけで言える。とても良い。
勿体ないのは上五。オレンジの”色”をしているなら、上五字余りにしても大丈夫なので…。
浜田 「色」か。
夏井先生 その通り。
誰かが言ったが、「オレンジ色の」。中七は「の」が不要。
「東京タワー」でカットが切れる。
オレンジ色の東京タワーがポッと浮かび上がる。カットが切り変わって雪の光景に行く。
調べもしっとりしてくる。
添削後
『オレンジ色の 東京タワー 雪温し』
◆3位 凡人65点 浅香唯
『冬日和 凛と車窓に 電波塔』
◎兼題を忠実に描く姿勢が素直で後半で映像化。「凛と」が凡人的でイメージを季語に重ね誤読を避ける語順に。
【本人談】
実際にモノレールに乗って東京タワーを見たとき、「わ~!こんな大きい建物があるっちゃ!」と凄く圧倒された。私も東京に染められずに「私」という人物で、こんな凛とした東京タワーになりたいという思いがあり、モノレールの中から見た思いに重ねた。
東国原名人 65点のわけは多分、「凛と」をもし使うんだったら「車窓に凛と電波塔」に(語順を)変えた方が良かったかもしれないという。その辺じゃないかな。
浜田 名人・梅沢さんも?
梅沢名人 まぁその通りですね。
一同 (笑)
梅沢名人 私、今言おうかなと思ってたんですよ。東君が先に言われてしまったので。同じことを言ってもね。
夏井先生 さすが。ダテに名人をやってない。
東国原名人 (ズッコケ気味に)「ダテ」?
夏井先生
兼題写真をきちんと忠実に描こうとしている。姿勢の素直さが良い。
後半「車窓に電波塔」で映像化もできている。
勉強したのが読んだだけで分かる。
問題点は指摘された部分。
「凛と」の言い方は凡人の人たちが使いたがる。
キリっと立っているものや清々しいものに「凛と」を使いたがる。
この「凛と」を活かす方向で添削したい。
季語「冬日和」が少し損している。穏やかに晴れた冬の日のこと。
この穏やかな感じと「凛と」のイメージがそぐわない。
季語を変える。空の青さを「冬晴(ふゆばれ)や」として強調する。深くて冷たい青が先に立つ。
名人の指摘通り「車窓に凛と」の語順に。
本人 なるほど、素晴らしい。
添削後
『冬晴や 車窓に凛と 電波塔』
◆4位 凡人60点 芦名星
『思い出の 東京タワーに 雪光る』
◎雪の粒が印象的ととらえた季語が良い。抽象的な上五がもどかしい。人物を描き字余りも解消しカットを切る。
【本人談】
初めて父親に東京タワーに連れて行ってもらったとき、その内部でグラスに似顔絵を描く人がいて凄く嬉しかった。思い出の東京タワーにその時のような雪がというのをそのまま詠んだ。
梅沢名人 「雪光る」というこれを使ったところが、福島県人だね。美しい。非常に良いんですよ。良いんですけど、「思い出の」とくると、これ凡人ですね。凡人の方は何でもかんでも「思い出」って書くんです。
浜田 あははは。どう変えたら良いんですか?
梅沢名人 …急に言われても。
一同 (笑)
夏井先生
おっちゃんの言う通り。でも急に言われてもなんか言えよといつも思う。
この句は言いたいことはきちんと伝わる。
「雪光る」も良い。雪の粒が見えるような光を印象深くとらえた。
勿体ないのは「思い出の」。読み手からすると、「どんな思い出なのか?」「誰と行ったのか?」というヒントが書かれていないので、もどかしい。
父と一緒に行ったなら、それを書くだけ。
「父と来た」で上五になる。
中七は極力字余りにしない。「に」は不要。
「東京タワー」でカットが切れる。カットが切り替わると、東京タワーの展望台のガラスの向こうに雪がキラキラと光りだす。
子どものもっと小さい頃を表現したいなら、「ひかる」と平仮名にすると可愛い。
これなら順位がシュッと上がる。
本人 凄いです、今感動しました。こういう風に書きたかった。
添削後
『父と来た 東京タワー 雪ひかる』
◆最下位 才能ナシ35点 陣内孝則
『ビル集い 踊る師走の スクリーン』
◎擬人化でコケた。ビル窓に師走の喧騒が映るとは伝わらない。時候の季語に映像を確保する。歌詞のような句。
梅沢名人 いやいや、これはもうね。これは、ダメですよ。
【本人談】
東京の師走は忙しい。都会の喧騒をビルの窓に移している。窓をスクリーンに見立てて一句を詠んだ。
東国原名人 「師走」が「踊る」。「ビル」が「集う」。それが「スクリーン」。もう、典型的な歌詞としては成立するんだけど、俳句としては成立してない。
大友 そう。そうなんですよ。歌詞として登場する言葉ですよね。
夏井先生
確認します!
窓がスクリーンみたいだなっていうことなんですね?
本人 そうです。
夏井先生 ビルたちが歩き出して集まってきて踊りだすというアニメのような映像を作りたかったわけではないんですね?
本人 それも含めて、師走の…師走のせわしなさを表現したかったんです。
夏井先生 この期になんで二股公約みたいなことを!
本人 だって、そうじゃないですか。
夏井先生
何が問題か。擬人化でコケている。ここは擬人化してる場合じゃない。
ちゃんと映像に持っていかないといけない。スクリーンみたいなビルの窓ですよね?それを書くだけ。
「スクリーンめく」で、スクリーン”みたいな”。「ビルの窓」で映像はひとまず確保できる。
問題は季語「師走」をどのように活かすか。時候の季語には映像がない。
「スクリーンめくビル」に何か映像が映ってほしい。映像を足す。
「空は師走」とする。これで上五。「の」は不要。最後「窓」に着地すると、師走の空・雲が動いて映る。
こうすると、俳句の映像になっていく。
本人 さっき東さんが言ったように、ちょっと歌詞書くみたいに書いちゃったんで、それが…失敗だったのかなと思いましたけどね~。
浜田 そうですね、やり方が分かればまた…。
添削後
『空は師走 スクリーンめく ビルの窓』
★永世名人への道★
玉巻アナ 東国原さんは現在星が1つです。
浜田 (前回は)現状維持でしたっけね?
東国原名人 前回現状維持で。この1年何か月ずーっと行ったり来たり…。
浜田 上がったり下がったり。
東国原名人 健康な心電図みたいな。
一同 (笑)
東国原名人 全然上がらない、下がらない。
◆『オッケーグーグル 冬銀河にのせて』 東国原英夫
※スマホなどに話しかけて操作する機能「オッケーグーグル(OK,Google)」を入れ込み、五七五を大胆に崩した一句
【本人談】
チャレンジの句。「オッケーグーグル」。独りで都会にいて、”冬銀河に乗せてくれないか”と話しかける。都会の生活に疲れて、空を見上げて田舎の方で見ていた冬銀河に乗せてくれないかなっていうような。
梅沢名人 「オッケーグーグル」を持ってきたとこなんか、凄いな~。
浜田 分かってます?オッケーグーグル。
梅沢名人 えっ?
一同 (笑)
梅沢名人 あの…スマ…ホなんかを持って…。
浜田 え?なんて?
梅沢名人 携帯持って、「オッケーグーグル」。何何が何?っていうと答えるやつでしょ。
「OK,Google」と話しかけると調べ物や家電操作が出来るシステム |
*いわゆる音声認識AIシステム(スマートスピーカー)の一種。「OK,Google」はGoogleアシスタント(Google Home)の呼びかけの言葉。他にもApple社のSiri(Home Pad)やAmazon社のAlexa(Amazon Echo他)など、各社がこぞって開発し、商品化している。
梅沢名人 ただ、私にはこういう俳句は書けません。あ゛~~立派なもんだ!
夏井先生
この句の評価のポイントは後半「冬銀河にのせて」というお願いの是非です。
■査定結果
名人10段★2へ1つ前進
理由:取り合わせがはまった!
◎取り合わせ勝負でグーグルがやれる事では無意味。未来を予見させ作者を代弁する季語が成功。口調も可愛い。
本人 (立ち上がって)おお~!よしっ! 1年半で初めて(星)2つ。
梅沢名人 ほら!
本人 ありがとうございます。
夏井先生
やってくれたなという感じ。
「オッケーグーグル」は8音ある長い言葉。17音分のうち8音をこの単語に使うと、あとどんな季語と取り合わせるかという、取り合わせの勝負が大半を占める。
そうなると、『グーグル』に本当に頼んでやってくれるものを持ってきてもしょうがない。
『グーグル』さんは、例えばお天気を教えてくれたり、アラーム知らせてくれたり、暖房のスイッチ入れてくれたり、色々とやって下さる。
浜田 よう知ってますね!
夏井先生 知ってはいるんです、使ってはおりませんが。
例えば、「オッケーグーグルストーブつけて」なら話にならない。取扱説明書の一文になってしまう。
浜田 ハハハ、話にならない。
夏井先生
ここの選択は、今の段階で『グーグル』さんは聞いてくれないが、イメージとして未来を予見させたり、作者の気持ちを代弁したりという、そのような選択の季語になる。大変難しい。
よく「冬銀河」持ってきたなと。冬銀河の向こうから未来がやってくるイメージもある。
「のせて」の口調が可愛い。このおっちゃん(=都会で独りの人物)の口から出てくると思うとなおさら。
楽しませていただいた。当然直しなし。
浜田 1つ前進でございます。
本人 ありがとうございます。
梅沢名人 おめでとうございます。
添削なし
玉巻アナ 続いては、名人10段梅沢富美男さんのプレバト永世名人を目指した昇格試験です。
梅沢名人 今日は気合い入ってますよ!
浜田 ああ、そうですか。
梅沢名人 哀愁ただ…よう…俳句ですから。
一同 (笑)
浜田 言えてへんやん、さあいこう。
◆『笹鳴の 庭後にして 帰京せり』 梅沢富美男
【本人談】
笹鳴(ささなき)は冬の季語。「ホ~ホケキョ」と鳴く鳥がいるがまだそこまで鳴けず、雛が「コケコケコケ」と鳴く。今度田舎に帰る時までにはしっかり鳴いてくれるのか、父母を実家に残して東京へ帰るが大丈夫なのかと思いながら東京へ戻ったという。
【笹鳴(ささなき)】冬の季語 冬のウグイスが舌鼓を打つように鳴くこと |
本人 西の方は東京駅だと思いますが、北の方は(上京は)上野駅なんです。
浜田 はい。
本人 上野駅に着いたときに、井沢八郎さんの曲(『あゝ上野駅』1964年)が流れるんです。
♬どこか故郷の香りをのせて~
一同 (笑)
浜田 うるさいなあ、もう。
本人 この歌で涙したもんですよ。
浜田 ああそうですか。
本人 この哀愁漂うこの俳句。これに…ケチなんかつけてみやがれ!ホントに。
夏井先生
この句の評価のポイントは中七「後にして」の是非です。
本人 そこかい。
一同 (笑)
■査定結果
名人10段★2へ1つ後退
理由:いちいち説明するな!
◎いつになったら「説明」の意味が分かるのか。中七は完全に不要。帰京前の映像だと明確にして反復で調べを。
玉巻アナ 梅沢富美男さんは星2つに…。
本人 ふざけろよ、お前。
浜田 これで東さんと並びました。
(査定評の後)
本人 何が説明だ! お前さんは西側だから分かんねぇんだ!四国だから。
一同 (笑)
浜田 うるさいな。
夏井先生 西も東も関係ない!
一同 (笑)
夏井先生 一体、いつになったら”説明をするな”という私の言っている意味が分かるんですか!
本人 (声を荒げて)日本全国で分からない人もいるんだよ!
夏井先生 段々腹立って何言うのか忘れそうになる。
言いたいことは伝わる。平場の人たちとは全然違う。
ただ、「後にして」は完全に説明の言葉。こんなこと言わなくても、この庭を後にして帰京したと一発で分かる。
それをやらないから怒っている。こんなもの全くいらない。
本人 ウッ!
夏井先生 「ウッ!」じゃない。
簡単な話。「帰京せり」と頭の上五に。「せり」は完了なため”今、帰京した”とわかる。「後にして」など不要。
カットを切って、「笹鳴の庭」とする。しかし、これだけでは帰京した東京の自宅の庭が笹鳴きの庭だと思われては困る。
余った5音で、帰京する前の故郷の庭だと分かる映像を置く。
今ポロっと良い言葉があった。父や母の庭を後にしてということなんでしょ?
本人 そうだよ。
夏井先生 書きゃいいじゃん!
本人 書け…。
夏井先生
平仮名で書くと優しい。「ふぼ(父母)の庭」と書く。
「庭」のリフレインが故郷を思う調べになるでしょ。
本人 ジジババ書いたら怒るだろ!また!
浜田 何をやねんな、もう。
夏井先生 ジジババ書いて怒ったことはないよ。ババアって言われるから怒るだけです。
一同 (笑)
添削後
『帰京せり 笹鳴の庭 ふぼの庭』
編集後記
お題は空港からの東京モノレールと東京タワーが見える写真。乗り物繋がりで「ゆりかもめ」であれば季語でしたが、今回も季語探しが大事な一枚でした。
今回は「上京」の状況を込めやすい人選ということで、東北・九州出身者の回でした。最近は何かと共通点のあるキャスティングが続きます。
1位は2回目の才能アリとなる大友さん。「智恵子抄」からの一節の入れ込みが成功し、夏井先生の読みを広げました。下五の「第九鳴る」で季節感を上手く表現しましたが、「第九」が季語ではなかったのは意外でした。ミュージシャンらしく聴覚に着目しながら、都会の喧騒を切り取った一句です。
2位は前回才能アリだった秋吉さん。東京タワーは現在オレンジ色と白で塗られていますが、時代背景を感じる一句。中八は確かに気になりますが、「雪温し」と一瞬季語にも見える形での触覚による温度の対比が評価されました。大変手馴れているように思います。
3位は初登場の浅香さん。「凛と」は凡人的表現というのは初耳で、当番組でも過去に例はありません。しかし、先生は様々な大会や句会で見飽きているようでした。「電波塔」は過去にミッツさんが「雪晴れの高き川面の電波塔」と詠んでいます。季語のイメージもよく勉強しておきたいですね。
4位は初登場の芦名さん。「雪光る」も季語のように聞こえますが、映像描写に成功していました。ここでも中八は気になりますが、実体験から発想した姿勢は良かったですね。「雪」と同時に太陽が出て「晴」れているかもしれないという2つの天気の対比も感じ取れます。
最下位は初登場の陣内さん。イメージ画像にスポンジボブのようなビルが踊る映像が出てしまいましたが大変非現実的なので、密集したビルの合間に踊りながらYoutuberでもやっている人物でも詠んだのかと思ってしまいました。擬人化には気を付けたいところです。
永世名人査定はどちらも個性的な句で勝負。
東国原名人はまさかの音声認識AIシステムから発想。後半は人物のセリフであれば「冬銀河にのせて」と鍵括弧があると分かりやすいと思いましたが、取り合わせが成功という評価。後ろめたい人物の心情を未来的な季語に託すという姿勢が良かったです。東さんは毎回そうですが、”チャレンジ”したことを夏井先生ならどのように評価されるかという懸けが凄いです。
対する梅沢名人はまた後退。「帰郷」ではなく「帰京」なのが1つのポイント。「後にして」が説明的という指摘でしたが、個人的には時系列で叙述的な語り口の方が気になりました。「帰京せり笹鳴きの庭後にして」の方が余韻のある語順に思いますが、これでもアウトだったのでしょうか。基本的に梅沢名人は自信がある時は大概ダメで、その逆もしかりなのですが、夫婦漫才を平場の出演者も含めて楽しんでいるのが良いですよね。
これで星2つに村上名人を入れた3名が並ぶ大混戦。もう年末かという感じで時間の過ぎるのは早いものです。

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