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20191205 プレバト!!俳句紹介【洋服の試着】

2019年12月5日放送 プレバト!!
出演者が詠んだ俳句を紹介します。
◎は講評の50字要約です。

挑戦者→森口瑤子[3],土屋炎伽[初],西川史子[初],金子恵美[2],本田朋子[初],千賀健永[33],村上健志[40] ※数字は挑戦回数

●お題:洋服の試着
※黒髪ショートボブの女性が店の試着室から出て奥の店員へ見せる後ろ姿が映る写真

※番号クリックでリンク内移動します。
1才能アリ1位72点森口瑤子
ブティックの鏡うそつき落葉蹴るぶてぃっくのかがみうそつきおちばける
2凡人2位67点土屋炎伽
新しきコートの朝の羽のごとあたらしきこーとのあさのはねのごと
3凡人3位55点西川史子
貴方にはもうあきました衣替えあなたにはもうあきましたころもがえ
4凡人4位52点金子恵美
小春日や夫も鏡に試着室こはるびやつまもかがみにしちゃくしつ
5才能ナシ5位35点本田朋子
試し着て鏡に聳える雪山よためしきてかがみにそびえるゆきやまよ
6名人初段へ
1ランク昇格
千賀健永
(Kis-My-Ft2)
黒革の匂い雪の滑走路くろかわのにおいゆきのかっそうろ
7名人10段★2へ
1つ前進
村上健志
(フルーツポンチ)
代役の衣装合わせや虎落笛だいやくのいしょうあわせやもがりぶえ
→編集後記

◆発表待ちシートにて
玉巻アナ 今日は全員ミスコン受賞歴のある皆さんなんです。
浜田 そういうことなんや。腹立つ回やわ、なんか~。
森口瑤子ミス松竹1983年当時17歳
西川史子ミス日本1996年当時25歳
金子恵美ミス日本関東代表2003年当時25歳
本田朋子ミス立教グランプリ2002年当時19歳
土屋炎伽ミス・ジャパングランプリ2019年現在27歳

★分布は才能アリ1名凡人3名才能ナシ1名と発表
浜田 いやもうこうなったら、凡人でええやんって話やん。
***
◆今回は紹介とともに各人物のミスコン受賞写真を公開して進行
***
→女優・森口瑤子の夫は人気脚本家の坂元裕二
浜田 まずは森口瑤子さんでございます。
玉巻アナ 森口さんは17歳の時にミス松竹に選ばれ、映画「男はつらいよ」で女優デビューされています。
→当時の写真が公開され、「可愛い」という声が上がる
森口 17歳、高校生ですね。やだわ~。
***
→医師・タレントの西川史子は25歳の医大生時代にミス日本
浜田 あら~、あんな格好して。
西川 日本で一番美しいって言われた。
浜田 やかましいわ!
西川 ミス日本」ですから。
玉巻アナ ちなみに、学生時代は恋人が常に2人以上いたそうです。
一同 えぇ~!
浜田 やかましいな、ほんまに。
西川 母が「保険を掛けろ!」と言ってたんです。「常に股をかけろ!」と。それがうちのルールだったんで。
浜田 マジで?
西川 こっちがいなくなったら、こっちがいるよっていう風にしなさいと。
***
→元衆議院議員の金子恵美は早稲田大学卒・ミス日本の関東代表選出
西川 でもこれ関東代表でしょ?全国じゃない。
浜田 (笑)
西川 しょせん関東でしょ
金子 しょせん関東エリアですけど、ミス日本なんで今日は西川先生にだけは負けたくない
***
→元フジテレビアナウンサー・本田朋子ミス立教グランプリ
浜田 学校のミス何何とかあるじゃないですか。これってどういう…。
本田 私の時はエントリーする学生が少なくて、イベントを企画している担当の先輩の学生から「人数が足りないから手伝ってくれないか」と言われて…。
西川 「手伝って」? 自分が一番盛り上がってる。
本田 あははっ。
浜田 出たら獲ってしまったんですね?
本田 手伝ったら…なんか、獲っちゃいました
→苦笑いの西川と金子
***
土屋炎伽(ほのか)は今年のミス・ジャパングランプリ受賞、俳句才能アリだった土屋太鳳の姉
浜田 (受賞写真に)あららら。格好宜しいなあ、おい。
土屋 おっきい挑戦をしたいなと思って、応募しました。
浜田 ほんでもう、まんまとですね。
土屋 ありがとうございます。
一同 (笑)
▲凡人4位は西川(のちに3位に変更)
浜田 何なん?
西川 なぜ?
浜田 あの自信はどっからきたの?
西川 じゃあ、句を見てくださいよ~。分かりますから、見てから言ってくださいよ。
浜田 あ~そうやな。見てからな。
***
玉巻アナ ちなみに森口さんは2回連続で才能アリに輝いていますので、もし今回も才能アリなら特待生昇格も十分に考えられます。ただ、これまで3回目で最下位に沈む方がとても多いので、鬼門の3回目となります。
浜田 そういうことなんですよ。
森口 何ですか?それ。
村上名人 3回目からやっぱ見られてます。特待生になれる人間か、そうでないか…。
浜田 お前が何で喋ってるんの?
一同 (笑)
村上名人 10段って、世界に4人しかいないわけですよ。
一同 (笑)
▲凡人3位は金子(のちに減点され4位に)
金子 良かったのですね?あ、(西川)先生に勝ってますね。
浜田 まあまあね。
→ミス日本対決は下剋上ということだったが…
***
浜田 ちなみに俳句ですけど。
本田 夏井先生と同じく、俳句の街の愛媛県松山市出身なので…。
観客 えぇ~!
本田 小さい頃から授業で俳句に触れ合ったり自分たちで詠んだりしていたので、ちょっと最下位とかだと…地元には帰りづらいですね。
浜田 さあ、土屋さん。あなたは俳句は?
土屋 以前、妹(土屋太鳳)が才能アリ1位を獲られていたので、ちょっと負けられないなと。私も頑張って1位を獲れたらなと思います。
浜田 そらそうです。
▲凡人2位は土屋
土屋 良かった~。
浜田 いや、点数は高いですよ。
玉巻アナ ねえ、高得点です。
浜田 ここで一気に67(点)やもんね。
***
→どちらかが1位で特待生に
浜田 (森口に)3回目は下に落ちる人なのか、(本田に)国(テロップは「故郷」)へ帰れない人なのか。どっちかですから。
▲才能アリ1位は森口、才能ナシ最下位は本田
本田 うそ!35点!?
浜田 (お辞儀して)2度と足を踏み入れないで下さい。
本田 え~!実家に帰れないんですか?
浜田 アハハハ。
本田 ええ~、悲しすぎる。何で~?
***
●それでは順位別に見ていきます

◆1位 才能アリ72点 森口瑤子
ブティックの 鏡うそつき 落葉蹴る
◎滑稽味があり俳句のメカニズムを理解している。能動的な「蹴る」で「うそつき」の強さとバランスがとれた。

【本人談】
ブティックにある試着室の鏡は綺麗に映らないだろうか。今回、この服がすごく似合うと思い、喜んでこのまま着て帰るも、「あれ?ぽっちゃりしてないか?試着室で見たよりも」と思うことがよくあり、道の途中で落葉を蹴散らしながら「鏡うそつきめ!」と思いながら帰る様子を詠んだ。

夏井先生 
とても面白い。「ブティックの鏡」に対して「うそつき」と言う罵り具合が良い
俳句のメカニズムを分かっているから、このフレーズで伝わると作者は理解している。
落葉」という季語が最後に来る。季語を「落葉散る」にしては「うそつき」の強烈さとバランスが取れない
能動的に自分の方から「蹴る」として「うそつき」と「蹴る」とのバランスをとった
そういう所も全部わかっているんだと思う。
直しはいらない。

添削なし

浜田 3回連続で才能アリなんですけど~。
夏井先生 もう、この人は特待生になっても大丈夫です。
浜田 え?いいですか。うわ、スゲェ。森口瑤子さん、特待生~!
本人 ありがとうございます。ああ~、震える!

●特待生昇格句

◆2位 凡人67点 土屋炎伽
新しき コートの朝の 羽のごと
◎感覚が瑞々しく比喩も素直。「朝の」が朝と作者のどちらの比喩か曖昧。前者は「は」後者は「を」の助詞に。

【本人談】
何度も試着を重ね、自分のコートと決めたものを「この冬はこのコートで頑張ろう!」と思い、朝ワクワクした新鮮な気持ちで出かける冬の朝の気持ちを表現した。

村上名人 これをあと3点伸ばして才能アリにするには…。
浜田 ほぉ、ほぉ。
村上名人 ホント、先生のアドバイスを聞きましょう!
浜田 いやいや、違う違う。言えよ!
村上名人 えっ?分からないです、ちょっと。
浜田 なんやねん。

夏井先生 
しっかりしてくださいよ。
とても感覚が良い人の句。みずみずしい。
新しきコートの朝」の言葉が良い。表現が非常にみずみずしい。
羽のごと」という比喩も素直。
問題は1音だけ。
浜田 」です、「の」。
夏井先生 その通りですよ!これを名人が言わないといけないところ
この「朝の」の「の」が少し曖昧。2通り考えられる。
①「新しきコートの朝」というもの自体が、つまり「朝」自体が羽のように生まれる、という意味か。
②新しい「コート」を着た朝を「私」が、羽のように歩き出すのか。
」という助詞を変えれば、どちらの意味かを明確に伝えられる。
だよね?名人!
村上名人 (爽やかに)その通りです。
夏井先生 どうしたらいいんですか?①「朝」を比喩するときは?
村上名人 」で。お願いします。
夏井先生 その通りです。
一同 おぉ~!(拍手)
夏井先生 ②自分自身が新しいコートを着て(私が羽のようだと言いたい)なら、どうすればいいんですか?
村上名人 」です。
夏井先生 偉い!その通りです。
一同 拍手
夏井先生 この助詞だけで意味がはっきり確定する。そうすればマイナス3点分がクリアできる
この人は感覚が良い。少し勉強すると伸びる。

添削後
新しき コートの朝 羽のごと』
『新しき コートの朝 羽のごと


◆3位 凡人55点 西川史子 ※当初4位から変更
貴方には もうあきました 衣替え
◎話し言葉を率直に書いたが季語の認識に問題。「秋・飽き」の意図が分かる季語へ別れのニュアンスを込める。

【本人談】
この秋に再婚しようと思っていた人と別れた。これで一歩進んでいこうというという気持ちを込めた。余分な所が一個もない。

本人 先生は分からないかもしれないんですよ。恋とかから遠ざかっているから。
浜田 お前、怒られるで。ホンマに。
本人 私には、物凄いこれ以上の句はないと思った。(中七「あき」に)「秋」と「飽き」がかかってるんで。
村上名人 「秋」と「飽き」?
本人 「秋」と「飽き」たがかかってる。

夏井先生 
良い所を褒める。
上五・中七で口語(話し言葉)を率直に書いてある
俳句は格調の高いものを一句にしないといけないと思い込む人が多い。
これで良い。率直すぎるくらい率直。
問題は「衣替え」という季語。「飽きた」と「秋」の季節を掛けている?
本人 はい、はい。
夏井先生 
ところが、「衣替え」は俳句の世界では夏の季語
「あき」と「秋の衣替え」を掛けた意図は理解できるが、基本的に季語の認識が間違っている
素直に季語にも「」という季節を書くべき。韻は音で出るから「韻を踏む」と言える
」と入れれば、「飽き」「秋」と韻が踏める。
「秋」としてあと2音で「貴方にはもうあきました」のニュアンスを表現できる。
例えば「秋の蝶」という美しい季語にすると、別れた私はもう次に飛んでいきますと。
「秋のバラ」なら、棘のある女でございますよという感じになる。
ちなみに、恋は年齢関係ございませんので。

一同 (笑)
浜田 だから言うてるやろ!要らんこと言わん。
本人 失礼しました。すいません。

添削後
貴方には もうあきました 
『貴方には もうあきました 


◆4位 凡人52点 金子恵美 ※当初凡人3位57点から5点減点
小春日や 夫も鏡に 試着室
◎夫が試着室の鏡の比喩なら減点。中七は夫が映る文脈になる。語順を変えれば点数はグンと上がっていた。

※昔は配偶者をお互いに「つま」と呼んだ。

【本人談】
普段洋服を買いに夫(元衆議院議員の宮崎謙介)と行く。夫は試着室の前にいつも立ち、私が着ては「それ似合っているから買おう」「これはダメだからやめよう」など夫が判断と評価をする。鏡のように夫がなっているという句。

村上名人 旦那さんが鏡のように判断してくれるっていうのはこれでは伝わらない旦那さんが鏡に映ってるってなる…(小さく)思うんですけ…。
浜田 なんで語尾が小っちゃいの?
村上名人 違ったときは使わないで欲しい。あってるときだけ使ってください。
一同 (笑)

夏井先生 何を言ってるんですか、名人! 10段なんでしょ。世界に4人しかいないんでしょ!
村上名人 はい。すみません。
夏井先生 何で今のことを自信を持って言わないんですか。
浜田 なるほど。
夏井先生 確認しますよ。
これは夫が鏡みたいという比喩で良い?
本人 そうです。夫が鏡のようになってくれて、試着室で洋服を着ているという句。
夏井先生 そういうことを表現したいなら、5点は減点しないと無理です。
本人 あら?やばい。変えます! じゃあ今のなかったことに。
浜田 アカンアカン。えっ、5点減点(→52点)。(55点の)西川さんとテレコ(逆)になるよ。
西川 替わろう。
一同 ええ~!
本人 今のは違ったな…。
浜田 はい、替わって下さい!
→3位の金子と4位の西川の順位が入れ替わり、2名はランキングシートの席を移動する
千賀 なかなかないパターンですよ、これ。
浜田 せっかく、勝ちたい言うてたのに。
本人 なんで、なんで?
夏井先生 
問題は中七。「夫」と書いて”つま”と読むが、「夫も鏡に」とくれば「映る」という文脈になる。
夫も鏡に映っている試着室ですね、と。あなたが洋服を着て、自分でその姿を見ていると夫が覗き込んできて、ニコッとしている映像しか書けてない。
あなたが言いたいのは違う。夫が鏡のようだという比喩。それなら「も」が違う
「夫という鏡」とし、「小春試着室」としないと伝わらない。
こう着地すれば、むしろ点数はグッと上がる。

浜田 あららら、テレコになって。
本人 どうして、こうなっちゃったんでしょうね。
西川 (ミス日本の)関東代表はこんなもん。
一同 (笑)

[ここがポイント]
映像を正確に伝える
※洋服選びの際、夫が鏡のような存在になると伝えたかったこの句。しかし、これでは鏡に映る夫としか読み取れない。作者のイメージを読者に映像としてちゃんと伝えることが上達の第一歩です。

添削後
鏡 小春試着室

◆最下位 才能ナシ35点 本田朋子
試し着て 鏡に聳える 雪山よ
◎季語が光景なら凡人だった。衣類の比喩とは伝わらず。上五字余りで意外性から現実の光景へ展開。松山の子!

【本人談】
洋服屋で店員に色々と勧められると、押しに弱いため持ってくる服を次々と試着する。鏡の前が衣服で積み重ねられ、まるで雪山のようになるという、冬の買い物の一コマを詠んだ。

夏井先生 確認しますが、「鏡に聳える雪山」は比喩なのですね?
本人 はい、比喩です。
夏井先生 
比喩ではなく、本当に試着室の対面に窓があり、その向こうに雪山が見えて、試着室を開閉すると、鏡に映る雪山が見えると。そう言うなら、5点プラスして凡人にした。
このまんま、35点でよろしい
問題は、これが比喩だとは読者に伝わらない。比喩だと分からせるのは、17音では途轍もなく難しい。諦める。
「山」がコートを指すなら、冬の季語「コート」へ季語を変えれば、残りのフレーズを活かして言いたいことを表現することは可能。
「鏡」からいく。この中七が自分では一番工夫してるよね?
本人 「聳える」はちょっと、こだわりました。
夏井先生 外したくないよね?松山の子!
本人 はい、はい。
夏井先生 
「鏡に聳」は使う、センスは悪くない。「聳」と言い切りの終止形に
鏡に一体何が聳えているのだろうか、と。読者は「えっ?」と思う。
ここから現実の光景に。「試着」と縮める。
本人 へぇ~。
夏井先生 「へぇ~」じゃない、いいか?
「試着せし」とすれば、試着が終わって服が積んである感じになる。
「雪」なんて言ってる場合じゃない。「コートの山よ」とする。ちゃんと映像になる。
思い切って上五を字余りにすれば、ギリギリ言いたいことは表現できる。

本人 夏井先生に中学の時に教えてもらいたかったですね~。
浜田 なんや、それ。あははは。

添削後
鏡に聳 試着 山よ

★特待生昇格試験★

浜田 特待生1級なの?
千賀 そうなんですよ。
玉巻アナ そこまできてます。
千賀 次、名人なんですよ。
浜田 すげぇなぁ。
千賀 今日は名人になりに来ましたんで。お願いします。

◆『黒革の匂い 雪の滑走路 千賀健永(Kis-My-Ft2)

※この写真から、試着室で選んだ黒革の手袋を付けて旅行へ行くところへ発想を飛ばし、五七五の定型を外した型破りな一句。

【本人談】
買ったばかりの黒革の手袋と滑走路が見えている画をそのまま詠んだ。近いものと遠いものと匂いを一句に収めたというそのままの句。

夏井先生 
この句の評価のポイントは一音の字足らずの是非です。

■査定結果
名人初段へ1ランク昇格

理由:考え抜いたと信じる
◎字足らずの意図を信じる。「匂える」は新鮮さに欠け「匂いと」は季語が弱く「匂いや」はバランスが崩れる。

本人 (ガッツポーズで)よっしゃ~! やった~! ありがとうございます。やった~!めっちゃ嬉しい!

夏井先生 1音の字足らずを意図を持ってやったに違いないと信じます!
浜田 ふふふっ。
夏井先生 
黒革の匂い」は8音。「匂い」は名詞止めになるため、ここで切りたかったと判断できる。
雪の滑走路」で大きな光景にバーンといく。こちらも8音。
この2つの間に一音足して、五七五の調べに持ってくることはいくらでもできる
例えば、「黒革の匂える雪の滑走路」とすれば一句はつながっていくが、「匂い」のカットの切れがなくなる。カットが切り替わる瞬間の新鮮さ・鮮烈さというものが薄くなる
助詞を入れて「黒革の匂い雪の滑走路」と並列で並べると「雪」という季語が弱くなる
「黒革の匂い雪の滑走路」と強調すると、「匂い」を強調するため「雪」とのバランスが崩れる
色々考えた末の字足らずを選んだと信じる!
直しはいりません。

浜田 どうなんですか?ホントに?
本人 (指を差す仕草で)そうです!
村上名人 怪しいなあ。
本人 いや、もうホントに。(添削なしに)やりました!
浜田 あ、名人や!
本人 やっと(タイトル戦で)着物を着れますね。嬉しい。

添削なし

★永世名人への道★

(秋の金秋戦のVTR)
梅沢名人 村上に挑戦しましたよ。

◆『代役の 衣装合わせや 虎落笛 村上健志(フルーツポンチ)

※試着室の写真から、テレビドラマの代役騒動に発想を飛ばした一句。

【本人談】
「虎落笛(もがりぶえ)」は、強い寒い風が木とか色んな物に当たってヒューヒューと音を立てることを指す冬の季語。舞台か何かで本来出るはずだった人が何かしらの理由で降板し、急遽代役が衣装合わせをしている。不安ももちろんあるだろうし、ちょっとチャンスかもな、という気持ちもある。それと取り合わせる時に「虎落笛」ってのは、やっぱりいいかなって(少しニヤける)。
虎落笛】冬の季語
風がヒューヒューと笛のように音を立てること

浜田 腹立つ。

夏井先生 
この句の評価のポイントは季語「虎落笛」の効果の是非です。

■査定結果
名人10段★2へ1つ前進

理由:これぞつかず離れず!
◎情報をコンパクトにまとめた。前半で現場の慌ただしさを表現。不安や緊迫感の季語との距離感が計算済み。

本人 いや~~~~~!(足を一瞬上げて喜ぶ)
浜田 腹立つわぁ。
(査定評の後)
本人 ありがとうございます。ホントに。

夏井先生 
かなりの情報が入ったフレーズをコンパクトにまとめたのは見事
代役」という言葉だけで、病気や不祥事を思う
衣装合わせ」という現場を書いている。みんながドタバタと慌ただしい時間との戦いを始めているに違いないと。
問題はこの後にどんな季語を取り合わせるか。
俳句では、季語と残りのフレーズとの距離感が大事
あまりにも分りやすいのは”ベタつき”と嫌われる
離れすぎると意味が分からない
俳句の距離感は”つかず離れず”で表現される。
ややマニアックな季語「虎落笛」が不安・厳しさ・緊迫感を一挙に表現する。
季語と残りのフレーズとのつかず離れずの関係・計算がキッチリ出来ている
さすが10段。もちろん直しなし。

本人 やったよ!

添削なし

編集後記
今回のお題は試着室から出る女性の後ろ姿が映った写真。前々回の「満員電車」に続いて、季語を自分で見つけるタイプのお題です。
様々なミスコン受賞者が平場に集結し、下手な比喩をせずに発想を飛ばせるかが勝負な回となりました。

1位は前回の候補者SPでも才能アリを獲得し、「もっと大きな光景を詠んでほしい」と特待生認定に待ったがかかっていた森口瑤子さん。見事にリベンジを果たしました。「ブティック」と場所が明記され、情景が浮かびやすく素直な一句に。中七は「うそつき鏡」、下五は「蹴る紅葉」と語順を逆にもできますが、物に焦点を置くよりは動詞などを後半にすることで、心情を表現できる効果がありました。いよいよ特待生ですが、過去3句とも必ず動詞を用いる点では光浦さんと似ている点もあり、実力はまだ未知数です。

2位は昨年「決戦の熱冷めやらぬ氷水」で月間賞を獲得した土屋太鳳さんの姉で初挑戦の炎伽さん。発想は大舞台を経験している前向きでおしゃれな一句。読みに迷う指摘がありましたが、朝に新しいコートをまとい、そのダウンの羽がゆらゆらと揺れているかのように自分も羽ばたきたいという意味にとりました(②の意味に近いです)。やや不器用な村上名人より先に浜田さんが惜しい箇所を当てましたが、エンジンが後からかかる村上名人。助詞の添削を見事に正解したのは伊達に10段ではありませんね(梅沢・藤本名人なら多分当てにいかないので)。

3位は初登場の西川女医。前半のフレーズは大変素直な心境を込めた台詞でしたが、「秋」と「飽き」を掛ける意図までは読み取れませんでしたし、掛詞も失敗しやすい要素の一つ。「別れ」の3音で前半は言えてしまうため、なぜ別れたのか、その後どうなったのかを想像させる映像描写をすべきでしたね。かつて横尾さんが青春の頃を詠んだ一句「春秋の言わで別れし日の記憶」も映像はありませんが、努力の成果を認められた名句がありました。

4位は本人談後に順位を下げられ、結果的にミス日本の下剋上を果たせなかった金子さん。夫が試着の様子を教える鏡の比喩だとは!仲睦まじい夫婦を意図通り表現できませんでした。「つま」と詠むあたりは手馴れており、沢山の衣類を持って試着室に入りたくなる心情も良くわかりますが、最近は5着までなど制限がある店もあります。さぞかし、夫の心情がどうなのか想像が膨らむ一句です。

最下位は初登場の本田さん。「聳える」と結構明確な動詞があるので、眼前に「雪山」があると読んでしまいますし、そもそも試着室という場所に似合いません。むしろ、登山用具を売っている専門店の試着室で、バックの雪山を登る人物のパネルやPOPが鏡に映るという方が現実的です。先生はつまらない比喩だと見越して才能ナシ評価にしていましたが、やはり的中していました。

特待生昇格試験は「偶然」が共通のキーワードに。

千賀名人を誕生させた一句は8音のフレーズが2つある字足らずという荒技。事前予告で「黒革の匂い」は公表済でしたので、試着室からベルトを新装した人物を詠んだのかと思いましたが、後半の「雪の滑走路」で逆に金属を持つものが思いにくい句に。本人の意図通り、遠近感と五感の「匂い」は機能しました。「黒革」「雪」の色の対比もあり、「匂い」「滑走路」と嗅覚・視覚の対比も成立しています。「○○の△△」と名詞と「の」のみで構成される点も合わせて、“対句表現”のように感じました。千賀さんは人物よりは光景、理詰めより感性で詠む傾向が強く、字足らずの意図には怪しさが残り、先生も「信じる」という発言に疑念の余地を残していますが、今回はホームランが偶然でたところでしょうか。

そして村上名人は3度目の前進に成功。内容は完全に季語勝負でした。「虎落笛」は当番組で詠まれた句としては初でしたが、今年の夏の小中学生との他流試合で最終試合に登場した小学生・水野君の受賞句「もがりぶえひょうはくざいのにおいかな」で紹介されています。そして、降板騒動については来年のNHK大河がまさにタイムリーでしたが、次回出演の東国原名人が事件発覚前の11月14日収録とSNSで公表しており、そもそも俳句提出はそれ以前ですので、確実にその点は偶然です。別の事件か何かから発想のヒントを得たのでしょう。以前、羽田圭介さんの「役者」に発想を飛ばした句はありますが、「代役」の省略語が情報量の多さを指すと思います。村上さんは一句に陽と陰の両者を表現しますが、今回は全体的に陰・アンニュイな方向に特化しているように感じました。平場の句で見せた助詞の指摘も相まって、技術力が伴えば大きな失敗はなさそうです。

 
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